説明

ギヤポンプ及びこれを備えた冷蔵庫

【課題】移送する液体が移送経路以外に留まりにくくして、衛生面で優れたギヤポンプ及びこれを備えた冷蔵庫を提供することを目的とする。
【解決手段】駆動源2によって回転する駆動ギヤ7と、駆動ギヤ7とかみ合い回転する従動ギヤ8と、駆動ギヤ7と従動ギヤ8を配置したポンプ室と、を備えたギヤポンプにおいて、駆動ギヤ8及び従動ギヤ7は、上面と下面を連通する連通孔7e,8eがそれぞれ形成されて、駆動ギヤ8及び従動ギヤ7のそれぞれの上面又は下面に入り込んだ液体を連通孔か7e,8eら下側又は上側に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤポンプ及びこれを備えた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開平7−293453号公報(特許文献1)がある。
特許文献1には、ケーシング内で噛み合って回転する駆動ギヤ及び従動ギヤとこれらを支持する軸との間あるいはこの軸と該軸を支持するケーシング側の軸受との間にギヤップG1あるいはG2のいずれか一方もしくは双方を設けて各ギヤを径方向に微動可能に支持し、歯先面とケーシング内周壁との間のギヤップを調整可能とし、空気のような圧縮性流体を吸引するときにはギヤ間に作用するギヤ軸間距離を広げようとする力で歯先面とケーシング内周壁との間のギヤップを狭めて自吸能力を向上させ、かつ圧縮性流体が吸引されたときには圧縮性流体の力によってギヤが軸間距離を狭める方向に押されてギヤップを広くしポンプノイズの発生を防止する点が記載されている(要約参照)。
【0003】
また、特開平7−127957号公報(特許文献2)がある。特許文献2には、ギヤのスラスト面(両面)には、成型時の歯車の歯先のヒケを防止するためのテーパ状の凹部が設けられている点、この凹部に埋め込む樹脂製のピースを装着している点が記載されている(特許文献2段落〔0033〕〔0034〕)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−293453号公報
【特許文献2】特開平7−127957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載の駆動ギヤ及び従動ギヤは、樹脂で中実に成型されている。この構成では、型に液状の樹脂を注入する時間や、樹脂が凝固して温度低下するまでの時間が長期化し、生産効率が低下する。
【0006】
また、型に樹脂を注入する際の注入点近傍(例えば、軸孔が形成されるギヤ上面又は下面)は、成型完了後に突起、いわゆるバリが残るため、ギヤの個体差が生じて、寸法精度が低下する。また、このバリを仕上げ加工すると、完全には平面にならず、多少の段差が残る。この段差によりギヤの重心がずれて、ギヤ回転時に振れ回りを起こし、ケーシング又は他方のギヤと接触して吸引能力の低下や騒音の原因となる。
【0007】
さらに、駆動ギヤ及び従動ギヤとこれらを支持する軸との間にギヤップがあると、ギヤの歯が一枚ずつ移動して流体を巻き込む度に、半径方向の圧力が変動して、ギヤが軸に対して半径方向に位置変動し、振動が生じて騒音が大きくなる。
【0008】
また、ギヤ上面に移送流体である水等の液体が流入すると、排出されずに留まり、駆動後に長期未使用状態が続くと、雑菌が繁殖するおそれがある。
【0009】
特許文献2でも同様に、ギヤの凹部に液体が流入して溜まり、不衛生となるおそれがある。
【0010】
そこで本発明は、移送する液体が移送経路以外に留まりにくくして、衛生面で優れたギヤポンプ及びこれを備えた冷蔵庫を提供することを目的とする。
【0011】
さらには、吸入効率を向上したギヤポンプ及びこれを備えた冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、上述の課題を解決するため、例えば特許請求の範囲に記載の手段を採用する。一例として、駆動源によって回転する駆動ギヤと、該駆動ギヤとかみ合い回転する従動ギヤと、前記駆動ギヤと前記従動ギヤを配置したポンプ室と、を備えたギヤポンプにおいて、前記駆動ギヤ及び前記従動ギヤは、上面と下面を連通する連通孔がそれぞれ形成されて、前記駆動ギヤ及び前記従動ギヤのそれぞれの上面又は下面に入り込んだ液体を前記連通孔から下側又は上側に排出する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、移送する液体が移送経路以外に留まりにくくして、衛生面で優れたギヤポンプ及びこれを備えた冷蔵庫を提供することを目的とする。
【0014】
さらには、吸入効率を向上したギヤポンプ及びこれを備えた冷蔵庫を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るギヤポンプの外観斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るギヤポンプ全体の分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るギヤポンプの要部断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るギヤポンプ全体の縦断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る冷蔵庫本体の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。尚、以下は本発明における一実施例であり、本発明がこれに限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るギヤポンプの外観斜視図である。図2は、本発明の一実施形態に係るギヤポンプ全体の分解斜視図である。図3は、本発明の一実施形態に係るギヤポンプの要部断面図である。図4は、本発明の一実施形態に係るギヤポンプ全体の縦断面図である。
【0018】
まず、ギヤポンプの全体構成について説明する。ギヤポンプ1は、内部に駆動源であるモータ2を収納したモータ収納部4と、モータ収納部4の上部に配置された下部ケーシング9と、下部ケーシング9の上に位置する上部ケーシング10と、上部ケーシングと下部ケーシングの間に配置される中部ケーシング11で全体の外観が構成されている。
【0019】
上部ケーシング10には、ケースの対向する側面に、それぞれ吸入口10a、吐出口10bが設けられている。
【0020】
上部ケーシング10と中部ケーシング11とで区画された空間、いわゆるポンプ室は、吸入口10a、吐出口10bによって外部と連通しており、その内部には、互いに噛み合う一対の駆動ギヤ7と、従動ギヤ8が収納されている。駆動ギヤ7は、モータ2の回転が減速ギヤ(第一減速ギヤ3a、第二減速ギヤ3b)によって減速されて伝達されることで、回転駆動する。従動ギヤ8は、駆動ギヤ7が回転することによって歯がかみ合い、回転駆動する。
【0021】
ギヤポンプは一対の駆動ギヤ7、従動ギヤ8の回転によって、吸入口10aから流体(例えば、氷を生成するために製氷皿に供給する水等の液体)を吸入して、駆動ギヤ7、従動ギヤ8のそれぞれの歯先間領域7c、8cと上部ケーシング10の内周壁10eとの間の空間にて圧送し、吐出口10bから吐出する基本構成である。
【0022】
次に、各ケーシングの組み立て構成及び内部構成部品について、さらに説明する。モータ収納部4は、有底中空円筒形状であり、その上部は開放している。この開放縁部の少なくとも一部には、係合爪4aが形成されている。下部ケーシング9は、モータ2収納空間と減速ギヤ列(第一減速ギヤ3a、第二減速ギヤ3b)の配置空間とを仕切る機能を有するものであり、断面O字状の有底中空円筒形状である。モータ収納部4の係合爪4aは、下部ケーシング9の下端部に弾性的に係合することで、モータ収納部4と下部ケーシング9が組み合わされている(図4参照)。また、下部ケーシング9底面には、ネジ孔17が複数形成されている。このネジ孔17にネジ16を挿通することで、モータ2と下部ケーシング9が固定される。
【0023】
モータ2の上部には出力軸2aが設けられている。この出力軸2aは、下部ケーシング9に形成された出力軸連通孔9e1を通して、下部ケーシング9の下方から上方(モータ収納空間から減速ギヤ列配置空間)に突出している。また、出力軸連通孔9e1周縁にシール部材3cを設けることで、出力軸連通孔9e1からモータ収納部4へ液体が流入することを阻止している。さらに、出力軸連通孔9e1の縁部は、上方に立設した立ち上がり部9e2を有する。これにより、シール部材3cが劣化してシール性が低下しても、立ち上がり部9e2によって、モータ収納部4への液体の流入を阻止している。
【0024】
出力軸2a上端(シール部材3及び立ち上がり部9e2よりも上方)には、出力軸2aと一体に回転駆動するように、第一減速ギヤ3aが中心の軸孔を介して挿入されている。
第一減速ギヤ3aとかみ合う第二減速ギヤ3bは、下部ケーシング9と中部ケーシング11とで囲まれた空間に配置されている。第二減速ギヤ3aは、中心の軸孔に駆動軸5が挿通されている。この駆動軸5は、中部ケーシング11に形成された駆動軸挿通孔11e1を通り、上部ケーシング10の上面壁内面に達している。駆動軸5の下端は、下部ケーシング9に設けた、駆動軸支持部9fによって支持されている。駆動軸5の上端は、上部ケーシング10に設けた、駆動軸支持部10fによって支持されている。すなわち、駆動軸支持部9f及び駆動軸支持部10fによって、駆動軸5は下端及び上端が回動可能に軸支されている。
【0025】
駆動軸5の中部ケーシング11から上部に突出した部分には、駆動ギヤ7が円筒部7に形成された駆動軸挿通孔7aを介して挿通されている。また、駆動ギヤ7とかみ合う同ピッチの従動ギヤ8が、駆動ギヤ7と併設されている。
【0026】
中部ケーシング11の下面であって、駆動軸5の周囲(駆動軸挿通孔11e1の下部周囲)には、駆動軸5を経由してモータ2側に水等が浸入するのを防止する軸封部材6が設けられている。
【0027】
従動ギヤ8は、円筒部8fを中央に有し、この円筒部8fに形成された回転支持軸挿通孔8aに回転支持軸25が挿通される。回転支持軸15は、その下端が中部ケーシング11に形成された回転支持軸下端支持部11e2によって支持される。
【0028】
ここで、円筒部8fは、その上端が回転支持軸挿通孔上端部8bで閉塞された有底中空円筒状である。すなわち、回転支持軸15は、下端が支持されて、上端が自由端である、いわゆる片持ち支持の状態となる。
【0029】
上部ケーシング10の中部ケーシング11と接する面の外周には、断面U字状の溝部10gに環状シール部材19が配置される。これにより、ポンプ室(上部ケーシング10と中部ケーシング11で区画された空間)からの移送流体の流出を抑制している。
【0030】
これらの部品は、上部ケーシング10、中部ケーシング11、下部ケーシング9が組み合わされて構成される。具体的に、上部ケーシング10の締結孔10c、中部ケーシング11の締結孔11c、下部ケーシング9の締結孔9cが、それぞれのケーシングの4隅に設けられており、組み合わされたときに、これらが上下方向でそれぞれ対応するように位置している。そして、各ケーシングは、締結孔10c、締結孔11c、締結孔9cで上下に連通したネジ孔を貫くように、締結部材(ネジ)で締結される。
【0031】
上部ケーシング10、中部ケーシング11、下部ケーシング9を締結部材12で締結する場合、締結孔10c、締結孔11c、締結孔9cの位置が所定位置に来るように調整する必要がある。本実施例では、各締結孔の位置決め及び組み立て精度向上のために、複数の係合部を備えている。
【0032】
具体的に、上部ケーシング10の側壁外面であって、一の締結孔10cと他の締結孔10cとの間に、上部第一係合部10d1、上部第二係合部10d2、上部第三係合部10d3が形成されている。上部第一係合部10d1、上部第二係合部10d2、上部第三係合部10d3は、それぞれ所定間隔で上下に延在した長方形状部であり、組み合わされたとき中部ケーシング11の側面に接する下方長さを有する。
【0033】
また、中部ケーシング11の側壁外面には、所定間隔で上下に延在した長方形状の中部第一係合部11d1、中部第二係合部11d2が形成されている。中部第一係合部11d1は、上部第一係合部10d1と上部第二係合部10d2との間に挿通して、中部第二係合部11d2は上部第二係合部10d2と上部第三係合部10d3との間に挿通する位置関係である。
【0034】
また、下部ケーシング9の側壁外面には、中部第一係合部11d1と中部第二係合部11d2との間に挿通される長方形状の下部係合部9d1が形成されている。
【0035】
なお、各係合部は、吸入口10aと吐出口10bとを通る面を隔てて一側と他側に、対称にそれぞれ配置されている。
【0036】
この構成において、各係合部を所定位置に係合させて、上部ケーシング10、中部ケーシング11、下部ケーシング9を組み立てた場合、締結部材12で締結する前後において、外部から、係合部を視認可能である。これにより、組み立てに誤りがないか視覚的に確認することができる。
【0037】
さらに、上部第二係合部10d2と下部係合部9d1は、上下方向に延長線上に所定間隔を空けて配置されている。締結部材12で締結する際、上部ケーシングの下面外周に配置したシール部材3cは、弾性的に変形する。4隅を締結部材12で締結する場合、それぞれで締結力にばらつきがあると、シール性に偏りが生じる可能性がある。本実施例では、先の合上部第二係部10d2と下部係合部9d1との間の間隔の大小により、締結力が適切か、又は吸入口10aと吐出口10bとを通る面を隔てて一側と他側とにおける締結力が均等であるか、等を確認することができる。
【0038】
次に、移送流体の吸入−吐出工程について説明する。図3に示すように、駆動ギヤ7がr1方向に回転駆動すると、かみ合っている従動ギヤ8もr2方向に回転駆動する。これにより、吸入側(吸入口10a)と吐出側(吐出口10b)とで圧力差が生じて、吸入口10aから移送流体(例えば、空気等の気体が吸い込まれてから水等の液体)がポンプ室内に吸い込まれる(図3における矢印a方向)。ポンプ室に吸い込まれた移送流体は、駆動ギヤ7、従動ギヤ8のそれぞれの歯先間領域7c、8cと上部ケーシング10の内周壁10eとの間の空間にて、吐出側へと圧送されて、吐出口10bまで移送されてから吐出される(図3における矢印b方向)。
【0039】
ここで、本実施例の駆動ギヤ7の駆動軸挿通孔7aは、駆動軸5と一体に回転するような嵌め合い寸法で形成されている。また、駆動軸5にはDカット部5aが形成されており、駆動軸挿通孔7aにも対応した形状が形成されている。これにより、モータ2の駆動力が駆動軸5と駆動軸挿通孔7aとの隙間で損失することなく伝わり、吸入−吐出効率を向上している。
【0040】
駆動ギヤ7と従動ギヤ8がかみ合う位置の下面には、溝18が形成されている。これは、駆動ギヤ7と従動ギヤ8との歯先間で挟まれた移送流体が、ギヤの回転に伴って容積変動する際、水等の液体、すなわち非圧縮性流体は、容積が減少すると非常に高圧となる。
また、圧力変動が断続的に起こると、ギヤが振動して騒音の原因となる。さらに、吐出圧力が脈動してポンプとしての寿命が短くなる原因となる。そこで、容積変動を防ぐ手段として、駆動ギヤ7と従動ギヤ8との歯先間における容積変動を逃がすための溝18を設けたものである。
【0041】
次に、駆動ギヤ7と従動ギヤ8の構成について説明する。駆動ギヤ7は円筒部7fと歯先面7dとをつなぐ連結部7gを有する。この連結部7gは、歯先面7d及び円筒部7fよりも高さ方向の厚みが小さい。より具体的には、歯先面7d高さ>円筒部7f高さ>連結部7g高さ、の順となる。なお、連結部7gは、歯先面7dの高さ方向のほぼ中央付近から、円筒部7fに近づくように水平方向に連結している。
【0042】
上部ケーシング9の駆動軸支持部10fは、図4に示すように、上部ケーシング9上面から下方に突出した円筒形状である。そして、駆動軸支持部10f下端は、歯先面7dよりも下がった高さの円筒部7f上端近傍に位置する。この構成によれば、駆動軸5を支持するのに十分な長さを有しながら、上部ケーシング9上部に突出する部分がない。よって、ギヤポンプ全体の外形高さ寸法を低く抑えることができる。また、駆動軸5の上下の軸支長さ(駆動軸支持部10f−駆動軸支持部9f)をなるべく短くすることができ、支持部を支点とした振れ回りによって、駆動ギヤ7に与える影響を抑えることができる。また、駆動軸5の長さを抑えることで、軸のたわみが少なく、さらに材料費の低減となる。
【0043】
また、駆動ギヤ7の円筒部7f高さ方向の寸法は、設置状態で横断面中央より上側が下側よりも低い。これにより、組み立て時に目視でいずれが上面か下面かを判断可能であり、組み立ての誤りを防止できる。
【0044】
さらに、駆動ギヤ7の連結部7gの円周方向には、駆動ギヤ7の上面と下面を連通する連通孔7eが、所定間隔で複数設けられている。この連通孔7eは、円筒部7f周りに同心円状に配置されている。
【0045】
ここで、この連通孔7eの作用効果について説明する。従来のギヤポンプは、ギヤを中実で隙間がない構成とすることで、水等の液体がギヤ内(歯先−回転軸間)に流入して滞留しない構成としている。一方、本実施例では連通孔7eを設け、この連通孔7e上方と下方の相対的な圧力差を利用して水の排出を可能にしている。
【0046】
すなわち、駆動ギヤ7の上部又は下部の一方の空間に存在する液体は、駆動ギヤ7上下の圧力差によって圧力が低い側の空間(液体が存在しない駆動ギヤ7下部又は上部の他方空間、或いは液体が少ない空間)に、連通孔7eを介して移動する。
【0047】
駆動ギヤ7(及び従動ギヤ8)が回転すると、駆動ギヤ7の円筒部7f−歯先面7d間に溜まった移送流体である液体には、遠心力により駆動ギヤ7中心から外側へ排出する力が作用する。
【0048】
しかし、円筒部7f−歯先面7d間に連通孔7eが無く単なる凹部を形成した場合、駆動ギヤ7回転時に凹部内は減圧状態となり、凹部に溜まった液体が凹部外へ排出されにくくなる。
【0049】
そこで、本実施例のように連通孔7eを設けることで凹部の減圧状態を解除して、円筒部7f−歯先面7d間の液体を駆動ギヤ7外方へ排出することができ、滞留を抑制することができる。このように、駆動ギヤ7の上面又は下面に入り込んだ液体を、反対(上面の場合は下面、下面の場合は上面)側に排出することができる。排出された液体は、駆動ギヤ7の回転による遠心力で外側に排出されて、歯先間7c又は溝18等から吐出口10b側に導かれる。すなわち、移送流体、例えば水等が長期間滞留することを防止し、衛生性に優れたポンプ構成とすることができる。
【0050】
また、型に樹脂を注入する際の注入点を、駆動ギヤ7の連結部7g等に設ける。これにより、バリ等が上部ケーシング9、中部ケーシング11から十分離れた位置となるため、駆動ギヤ7の回転時にバリ等が上部ケーシング9、中部ケーシング11に接触することを抑制して、吸引能力の低下や騒音を抑制することができる。
【0051】
次に、従動ギヤ8も同様に、円筒部8fと歯先面8dとを連結する連結部8gを有する。この連結部8gは、歯先面8d及び円筒部8fよりも高さ方向の厚みが小さい。より具体的には、歯先面8d高さ≒円筒部8f高さ>連結部8g高さ、の順となる。なお、連結部8gは、歯先面8dの高さ方向のほぼ中央付近から、円筒部8fに近づくように水平方向に連結している。連結部8gの円周方向には、従動ギヤ8の上面と下面を連通する連通孔8eが、所定間隔で複数設けられている。この連通孔8eは、円筒部8f周りに同心円状に配置されている。この連通孔8eにより、従動ギヤ8の円筒部8f−歯先面8d間の凹部の減圧状態を解除して、円筒部8f−歯先面8d間の液体を従動ギヤ8外方へ排出することができ、滞留を抑制することができる。凹部の液体排出の原理については、駆動ギヤ7での説明と同様である。排出された液体は、従動ギヤ8の回転による遠心力で外側に排出されて、歯先間8c又は溝18等から吐出口10b側に導かれる。すなわち、移送流体、例えば水等が長期間滞留することを防止し、衛生性に優れたポンプ構成とすることができる。
【0052】
従動ギヤ8の回転支持軸挿通孔上端部8bは、歯先面8d高さとほぼ同程度の高さに位置している。そして、回転支持軸挿通孔上端部8b内面から下方に所定距離を空けて、回転支持軸15の上端部が位置する。これにより、従動ギヤ8が回転して上下に変動した場合でも、回転支持軸挿通孔上端部8bが回転支持軸15の上端部に接することがなく、騒音の発生を抑制できる。
【0053】
また、型に樹脂を注入する際の注入点を、従動ギヤ8の連結部8g等に設ける。これにより、バリ等が上部ケーシング9、中部ケーシング11から十分離れた位置となるため、従動ギヤ8の回転時にバリ等が上部ケーシング9、中部ケーシング11に接触することを抑制して、吸引能力の低下や騒音を抑制することができる。
【0054】
駆動ギヤ7及び従動ギヤ8は、樹脂製であるが、連通孔7e,8e、連結部7g,8gを有するため、中実成型品ではない。これにより、使用材料を抑えてコストが低減できる。また、離型までに要する待ち時間が短縮されて生産性を向上することができる。また、潤滑性のある樹脂とすれば、回転抵抗が少なくスムーズに回転することができる。
【0055】
駆動ギヤ7及び従動ギヤ8が樹脂製である一方、駆動軸5及び回転支持軸15は金属製(例えば、鋼製)である。駆動軸5及び回転支持軸15は金属製とすることで、軸を細く形成することができる。軸は、細い方がラジアル負荷に対する回転負荷トルクが小さいので(トルク=ラジアル負荷×半径×摩擦係数)回転抵抗が少なくスムーズに回転することができる。
【0056】
ここで、例えば、駆動ギヤ7及び従動ギヤ8も金属製とすると、質量が過大となり、ギヤポンプの小型軽量化に適さない。一方、駆動軸5及び回転支持軸15を樹脂製とすると、軸強度が不足して大径化する。
【0057】
また、本実施例の駆動ギヤ7−駆動軸5の隙間、従動ギヤ8−回転支持軸15の隙間のいずれか、又はその両方は、軸が挿通できて、かつ各ギヤとともに一体に回転する程度の寸法にする。このように、軸−ギヤ隙間をなるべく詰めれば、歯先面7d,8dと上部ケーシング10の内周壁10eとの隙間を均一に保つことができるので、歯先面7d,8dと上部ケーシング10の内周壁10eとの接触を防止して低騒音化できる。
【0058】
一方、軸−ギヤ隙間が大きい場合、ギヤの歯が一枚ずつ移動して流体を巻き込む度に、半径方向の圧力が変動して、ギヤが軸に対して半径方向に位置変動し、振動が生じて騒音が大きくなるため、好ましくない。さらに、ギヤの回転中心位置精度が悪化するので、ギヤ同士の中心距離が変動してかみ合いが悪くなり、騒音が大きくなり、負荷トルクも増大する。
【0059】
そこで、本実施例のように、軸−ギヤ隙間をなるべく詰めることで、歯先面7d,8dと上部ケーシング10の内周壁10eとの隙間寸法を小さく設定することも可能であり、これにより、粘度の小さい空気(圧縮性流体)が吸引し易くなり、吸込を良好にできる。
【0060】
次に、ギヤポンプを備えた冷蔵庫について説明する。図5に示すように、本実施形態の冷蔵庫本体101は、上方から、冷蔵室102、製氷室103及び上段冷凍室104、下段冷凍室105、野菜室106を有する。一例として、冷蔵室102及び野菜室106は、およそ3〜5℃の冷蔵温度帯の貯蔵室である。また、製氷室103、上段冷凍室104及び下段冷凍室105は、およそ−18℃の冷凍温度帯の貯蔵室である。
【0061】
冷蔵庫本体101の庫外と庫内は、内箱110aと外箱110bとの間に発泡断熱材(発泡ポリウレタン)を充填することにより形成される断熱箱体110により隔てられている。また、冷蔵庫本体101の断熱箱体110は複数の真空断熱材118を実装している。
【0062】
庫内は、断熱仕切壁112aにより冷蔵室102と、上段冷凍室104及び製氷室103(図1参照、図2中で上段冷凍室104は図示されていない)とが隔てられ、断熱仕切壁112bにより、下段冷凍室105と野菜室106とが隔てられている。
【0063】
製氷室103内には、給水された水を凍らせて製氷する製氷皿125と、製氷皿125の下方の貯氷容器内の氷の多少を判定するためのレバーである検氷レバー124と、製氷皿125と検氷レバー124とを駆動する駆動手段である駆動ユニット123と、を備えた自動製氷機122が設けられている。
【0064】
また、冷蔵室102内には、取り外して給水できる水貯蔵部である給水タンク126と、給水タンク126内部から水を汲み上げるギヤポンプ1と、ギヤポンプ1から製氷皿125に給水する給水経路129が設けられている。
【0065】
本実施例のギヤポンプを備えた冷蔵庫であれば、ギヤポンプの振動及び騒音が低減されているため、冷蔵庫本体に組み込んだ場合の共振や共鳴による影響を低減することができる。
【0066】
以上より、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
【0067】
まず、駆動源によって回転する駆動ギヤと、該駆動ギヤとかみ合い回転する従動ギヤと、前記駆動ギヤと前記従動ギヤを配置したポンプ室と、を備えたギヤポンプにおいて、前記駆動ギヤ及び前記従動ギヤは、上面と下面を連通する連通孔がそれぞれ形成されて、前記駆動ギヤ及び前記従動ギヤのそれぞれの上面又は下面に入り込んだ液体を前記連通孔から下側又は上側に排出する。これにより、移送流体、例えば水等が長期間ギヤ上面又は下面に滞留することを防止し、衛生性に優れたポンプ構成とすることができる。
【0068】
また、前記駆動ギヤは駆動軸を挿通する駆動軸挿通孔が形成されて、前記駆動軸を支持するケーシング上面に形成された駆動軸支持部は、前記ケーシング外面よりも内方に突出した形状である。これにより、駆動軸を支持するのに十分な長さを有しながら、上部ケーシング外方に突出する部分がなく、ギヤポンプ全体の外形高さ寸法を低く抑えることができる。
【0069】
また、前記駆動ギヤは駆動軸を挿通する駆動軸挿通孔が形成されて、前記従動ギヤは回転支持軸を挿通する回転支持軸挿通孔が形成されて、前記駆動軸挿通孔と前記駆動軸との隙間、及び/又は前記回転支持軸挿通孔と前記回転支持軸との隙間は、前記駆動軸又は前記回転支持軸が挿通でき、且つ前記駆動ギヤ又は前記従動ギヤが一体に回転する寸法である。これにより、歯先面7d,8dと上部ケーシング10の内周壁10eとの隙間を均一に保つことができるので、歯先面7d,8dと上部ケーシング10の内周壁10eとの接触を防止して低騒音化できる。
【0070】
また、冷蔵温度帯室と冷凍温度帯室とが区画された冷蔵庫であって、前記冷蔵温度帯室に配置された水貯蔵部と、前記冷凍温度帯室に配置されて前記水貯蔵部から給水を受ける製氷皿と、を備え、前記水貯蔵部の水を吸入して前記製氷皿に吐出する上記いずれかのギヤポンプを備える。これにより、ギヤポンプの振動及び騒音が低減されて、冷蔵庫本体に組み込んだ場合の共振や共鳴による影響を低減することができる。
【0071】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能である。また、実施例の構成の一部について、追加・削除をすることが可能である。
【0072】
また、上部ケーシング10、中部ケーシング11、下部ケーシング9は、説明のための便宜上の名称であって、上下の位置を限定するものではない。本実施例では、これらを上から順に配置する例(すなわち、モータ2が下方に位置する例)について説明したが、例えば、下部ケーシング9、中部ケーシング11、上部ケーシング10の順に上から配置する構成(すなわち、モータ2が上方に位置するような構成)であってもよい。すなわち、如何なる姿勢であっても、ギヤ上部又は下部の液体を排出することができ、衛生性に優れたギヤポンプ及びこれを備えた冷蔵庫を提供することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 ギヤポンプ
2 モータ(駆動源)
2a 出力軸
3a 第一減速ギヤ
3b 第二減速ギヤ
3c シール部材
4 モータ収納部
4a 係合爪
5 駆動軸
5a Dカット面
6 封孔部材
7 駆動ギヤ
7a,11e1 駆動軸挿通孔
7c,8c 歯先間領域
7d,8d 歯先面
7e,8e 連通孔
7f,8f 円筒部
7g,8g 連結部
8 従動ギヤ
8a 回転支持軸挿通孔
8b 回転支持軸挿通孔上端部
9 下部ケーシング
9c,10c,11c 締結孔(ネジ孔)
9d1 下部係合部
9e1 出力軸連通孔
9e2 立ち上がり部
9f,10f 駆動軸支持部
10 上部ケーシング
10a 吸入口
10b 吐出口
10d1 上部第一係合部
10d2 上部第二係合部
10d3 上部第三係合部
10e 内周壁
10g 溝部
11 中部ケーシング
11d1 中部第一係合部
11d2 中部第二係合部
11e2 回転支持軸下端支持部
12 締結部材(ネジ)
15 回転支持軸
16 ネジ
17 ネジ孔
18 溝
19 環状シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源によって回転する駆動ギヤと、該駆動ギヤとかみ合い回転する従動ギヤと、前記駆動ギヤと前記従動ギヤを配置したポンプ室と、を備えたギヤポンプにおいて、
前記駆動ギヤ及び前記従動ギヤは、上面と下面を連通する連通孔がそれぞれ形成されて、前記駆動ギヤ及び前記従動ギヤのそれぞれの上面又は下面に入り込んだ液体を前記連通孔から下側又は上側に排出することを特徴とするギヤポンプ。
【請求項2】
前記駆動ギヤは駆動軸を挿通する駆動軸挿通孔が形成されて、前記駆動軸を支持するケーシング上面に形成された駆動軸支持部は、前記ケーシング外面よりも内方に突出した形状であることを特徴とする、請求項1記載のギヤポンプ。
【請求項3】
前記駆動ギヤは駆動軸を挿通する駆動軸挿通孔が形成されて、前記従動ギヤは回転支持軸を挿通する回転支持軸挿通孔が形成されて、前記駆動軸挿通孔と前記駆動軸との隙間、及び/又は前記回転支持軸挿通孔と前記回転支持軸との隙間は、前記駆動軸又は前記回転支持軸が挿通でき、且つ前記駆動ギヤ又は前記従動ギヤが一体に回転する寸法であることを特徴とする、請求項1記載のギヤポンプ。
【請求項4】
冷蔵温度帯室と冷凍温度帯室とが区画された冷蔵庫であって、前記冷蔵温度帯室に配置された水貯蔵部と、前記冷凍温度帯室に配置されて前記水貯蔵部から給水を受ける製氷皿と、を備え、前記水貯蔵部の水を吸入して前記製氷皿に吐出する請求項1乃至3のいずれか記載のギヤポンプを備えたことを特徴とする冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−76347(P2013−76347A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215913(P2011−215913)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【出願人】(500333567)株式会社亀屋工業所 (28)
【Fターム(参考)】