説明

クエン酸を含む多糖誘導体

式I(式中、Xは、OH、OM、NH−R、O−Rであり;Mは、アルカリもしくはアルカリ土類金属、遷移金属、または第四級窒素原子を含む陽イオンであり;Yは、HまたはRであり;Rは、オリゴ糖/多糖の残基であり;Rは、C1〜C4直鎖状脂肪族カルボン酸またはクエン酸の残基であるが;少なくとも1個のXが、NH−RまたはO−Rであり、他の2個のXが、酸(OH)または塩化形態(OM)で存在することを条件とする)で示されるオリゴ糖/多糖の非架橋誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クエン酸とのエステル結合またはアミド結合を有し、出発の糖に関して架橋されておらず、水溶性であることを特徴とするオリゴ糖/多糖に関する。そのエステル結合またはアミド結合は、クエン酸のカルボキシル官能基および出発オリゴ糖/多糖上に存在するヒドロキシルまたはアミノ官能基を含む。
【0002】
製造に必要となる穏やかで制御可能な条件を考慮すると、これらの誘導体は、出発オリゴ糖/多糖に比較して、明確で再生可能な特性を有し、更なる構造または分子量の改変が存在しない。
【0003】
それらは、非常に高い、重量単位あたりの水和能を有し、その結果、水和状態では、接触部の外部の系(例えば、皮膚組織または粘膜)を水和するための高い能力を有する。これらの誘導体は、調節能力も示し、金属イオン(例えば、Ag、Zn、Fe、Cuなど)を錯化/塩化する。これらの特性、ならびに特にそれらの一定した組成および再生能を考慮すると、本発明の生成物は、水和剤もしくは医薬品の成分として、またはびらんの治癒における金属イオン(例えば、Ag、Zn、FeまたはCu)の錯体/塩として、医薬および化粧品業界で有利に用いることができる。その錯体/塩は、静菌/抗菌剤として用いることもできる。
【0004】
本発明は、水溶液、水/溶媒、または有機溶媒のみ、しかし好ましくは有機溶媒の中での製造方法にも関する。非常に穏やかな温度の反応条件では、置換度に関して均一であるオリゴ糖/多糖は分解されない。その上、クエン酸残基は、C1〜C4直鎖状脂肪族カルボン酸またはクエン酸によりヒドロキシル上でエステル化することができる。本発明は、得られたエステルにも関する。
【0005】
先行技術
【0006】
デンプンおよびセルロースをクエン酸誘導体(クエン酸または無水クエン酸)と反応させる方法が、公知である。これらの方法は、基本的に以下のステップを含む:1)所定の期間、混合することにより、中間体のクエン酸エステル化剤(通常は無水クエン酸)の形成を潜在的に誘導し得る薬剤の存在下で、水をほとんどまたは全く含まない多糖およびクエン酸のペーストまたは懸濁液を形成させるステップ;2)混合物が乾燥するまで水を除去するステップ;3)高温で(180℃まで)乾燥生成物を加熱するステップ。これらのステップ、特に乾燥および加熱処理により、最初の多糖(分子量の減少、酸化および脱離による糖鎖の破壊)および最後の多糖(ランダムで非制御的な分子間架橋など)において広範な分解的構造変化が起こり易くなり、最終的な物質の一定した組成および再生能が保証されなくなる。しかし以下に述べるとおり、これらの要件が業界で不可欠ではなく調節的な事で特別に必要とされ、それらが広範囲で変動したとしても技術的に許容され得るような平均的特性(例えば、金属イオン封鎖能、液体吸収能など)を十分に満たす適用分野のために、得られた生成物の使用が設定されたが、とりわけその適用は非常に大量で付加価値の低い市場に向けて設定されているため、それらは低い製造コストを含まなければならない。この後者の態様は、はるかに高価である無水クエン酸よりもクエン酸が用いられ、その結果、クエン酸からのin situ形成が好まれた理由も説明している(先に述べた組成および再生能の関連問題の全てを含めて)。
【0007】
これらの生成物で提案される使用は:
1.冷凍食品の離液を防ぐ能力により食品添加物として、または食物繊維として;
2.廃水の処理における重金属封鎖樹脂として、または単に生分解性イオン交換樹脂として、
である。
【0008】
こうして、例えば、US2,461,139には、クエン酸および無水酢酸からその場で(in situ)得られる無水クエン酸を用いたデンプン誘導体の合成が記載されており、乾燥法およびアルカリ水性懸濁液中での方法の両方が用いられている。得られた誘導体は、紡織、紙および食品業界で用いることができる。
【0009】
US2,935,510には、架橋剤としてクエン酸を用いた水性懸濁液中でのデンプンの酢酸エステルおよびプロピオン酸エステルの合成方法が記載されている。これらの誘導体は、冷凍食品の添加剤として使用される。
【0010】
110〜140℃の温度での乾燥法によるクエン酸を用いたデンプンの誘導体化法が、多数の参考文献に記載されているが(Starch, 30, 1978, No.2, pp.47-51)、これらの研究から、乾燥法では反応パラメータ(温度など)を非常に精密に制御して、過剰な架橋を防ぐ必要があることが示された(Starch, 48, 1996, No. 7/8, pp.275-279)。乾燥法は高い置換度を含まず、12.2%〜14.4%(Starch, 51, 1999, No. 10, pp. 354-361)および16.0%(Starch, 56, 2004, pp.364-370)のDS値(クエン酸残基のモル数と多糖のモル数との比)が、報告されている。多糖を高温に保持するため、乾燥法は、ポリマー鎖の部分的分解および副生成物の形成を引き起こす(Starch, 54, 2002, pp. 185-192)。
【0011】
幾つかの特許は、クエン酸を用いたセルロースまたは木材の誘導体化に関する。
【0012】
US2,759,787には、水および有機溶媒に不溶性のポリマーマトリックスを製造するセルロース誘導体の乾燥合成法が記載されており、得られた生成物は、水溶液中の大分子またはイオンを封鎖する樹脂として用いることができる。他の多糖用にも、架橋剤としてクエン酸を使用することが報告されている。
1.機械抵抗性フィルムを製造するための、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Carb. Pol, 51, 2003, pp. 265-271);
2.抗菌性を備えた織物を得るための、木材繊維と架橋されたキトサン(J. Appl. Polym. Sci, 94, 2004, pp. 1999-2007);
3.抗菌活性を備えた生成物を得るための、クエン酸架橋によりキトサンに結合したβ−シクロデキストリン。
【0013】
先行技術の文書の多くは、熱の作用によるクエン酸の脱水(乾燥法)または適切な乾燥剤による続く処理を利用して得られる無水クエン酸の形成を提案している。
【0014】
EP282289には、長鎖脂肪族アルコールでエステル化されたクエン酸モノエステルの塩の合成方法およびその化粧品での使用が報告されている。アルコールを炭水化物(オリゴ糖または多糖)から誘導するクエン酸のモノエステルは、引用されてない。
【0015】
結論として、デンプンおよびセルロースによるクエン酸の誘導体は、既に記載されているが、二官能性架橋として作用するクエン酸によりエステル化されたシクロデキストリンに結合するキトサンが、用いられている。
【0016】
公知の生成物は、約150〜180℃での粗多糖およびクエン酸からの乾燥法により得られるか、または粗デンプン、クエン酸および有機酸の無水物から塩基性水性スラリー中で得られる。しかし、これらの方法により得られる生成物は、先に定義されたとおり低い置換度を示し(最大DS=16%)、分子量の減少およびグルコール単位上の二重結合の形成、または他の付随反応により、ポリマーが分解作用を受ける。これらの作用は、多くの場合、設定された生成物にとって(例えば、廃水中の金属イオンの凝集/封鎖剤として)重要ではない。それゆえその合成条件は、これらの性質を向上させるために、架橋を促進するよう設定されている。
【0017】
それゆえ、明確で再生可能な特性を有し、構造が天然多糖と根本的に異ならないために適用可能性が広範に及ぶ、クエン酸を用いた多糖のエステルが求められている。
【0018】
発明の記載
【0019】
本発明は、予期しない吸湿性を有し、化粧製剤または医薬製剤の成分として有用な非架橋性クエン酸化水溶性多糖に関する。
【0020】
本発明の多糖は、合成が非常に穏やかな条件(周囲温度、不活性溶媒、例えばホルムアミドまたはDMF、および見かけ上のpH条件が6.5〜9.0でのトリエチルアミンによる活性化)を含み、それゆえ分解性でないため、出発オリゴ糖/多糖成分の不可逆的構造変化を示さない(医薬および化粧品利用での前提条件)。
【0021】
本発明の方法は、C1〜C4直鎖状脂肪族カルボン酸(ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸または酪酸)を用いた公知の方法により、ヒドロキシルがエステル化され得る環状無水クエン酸の合成および単離も含む。その後、これらの誘導体をオリゴ糖/多糖と反応させて、クエン酸とのエステル結合またはアミド結合、架橋の非存在および水溶性を特徴とする生成物を得る。そのエステル結合またはアミド結合は、クエン酸のカルボキシル官能基および出発オリゴ糖/多糖に存在するヒドロキシルまたはアミノ官能基を含む。
【0022】
記載された穏やかな条件下で環状無水クエン酸を直接使用することで、クエン酸の一方のカルボキシルのみが糖残基に結合し、他の2個は酸または塩化形態で存在することが可能となる。
【0023】
本発明の誘導体は、以下の式:
【0024】
【化1】

【0025】
(式中、
Xは、OH、O−M、NH−R、O−Rであり;
Mは、アルカリもしくはアルカリ土類金属、遷移金属、または第四級窒素原子を含む陽イオンであり;
Yは、H、Rであり;
は、オリゴ糖/多糖の残基であり;
は、C1〜C4直鎖状脂肪族カルボン酸またはクエン酸の残基であるが;
ここで、少なくとも1個のXが、NH−RまたはO−Rであり、他の2個のXが、酸(OH)または塩化形態(OM)で存在することを条件とする)を有する。
【0026】
オリゴ糖/多糖は、キトサン、プルラン、カラゲナンから選択されるか、またはヒアルロナン、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、低分子量デキストリンおよびアルキルセルロース(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース)の溶解性誘導体から選択されるグリコサミノグリカンである。
【0027】
前記オリゴ糖/多糖は、代表的には、10〜10ダルトンの分子量を有する。
【0028】
本発明の生成物の製造方法は、環状無水クエン酸またはC1〜C4直鎖状脂肪族カルボン酸もしくはクエン酸でヒドロキシルにエステル化された環状無水クエン酸を含む溶液の添加、あるは適切な有機溶媒(ホルムアミド、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシド)中での前記無水クエン酸および塩基とオリゴ−多糖の溶液との混合物の添加を含む。
【0029】
塩基の例は、脂肪族(例えば、トリエチルアミン、DBO、DBU,DABCOまたはヘキサミン)、芳香族(例えば、イミダゾール、ピリジンまたはジメチルアミノピリジン)または複素環(例えば、ピロリジン)であってもよい、三置換された窒素を1原子含む有機塩基、無機塩基(例えば、KPO、KHPO、酢酸カリウムまたはMCO(M=アルカリまたはアルカリ土類金属))、またはそれらの混合物である。トリエチルアミンが、好ましい。
【0030】
本発明の生成物は、糖の反復単位に関して0.01〜1.00、好ましくは0.16〜0.50である、クエン酸エステル中の置換度を有する。
【0031】
本発明の生成物は、酸の形態、あるいはアルカリもしくはアルカリ土類金属塩、遷移金属(例えば、Zn、CuおよびAg)または第四級窒素原子を有する陽イオンの形態のカルボキシルが存在する。
【0032】
本発明の生成物は、医薬製剤中で、可能ならば適宜、陽イオン性抗生物質または抗真菌剤を配合する、保湿化粧製剤、スキンケアおよび個人衛生(personal hygiene)のための添加剤として、または殺菌もしくは抗菌作用などを有する医療補助剤(medical aids)として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図において、CMCおよびクエン酸化CMC(実施例1)の流動曲線を示す。
【0034】
以下の実施例は、本発明をより詳細に示している。
【0035】
実施例
H NMR分析を、グラジエントz(gradient z)の5mm多核プローブを備えたBruker Avance 400分光計により、DO中で300°Kで実施した。分析は、拡散秩序化実験(diffusion-ordered experiments)(DOSY:Diffusion Ordered Spectroscopy)も利用した。
【0036】
実施例1.カルボキシメチルセルロースクエン酸エステルの合成
カルボキシメチルセルロースナトリウム塩5.0gを、95℃でホルムアミド165mlに5時間溶解し、その後、その温度を25℃に低下させた。ホルムアミド30mlに溶解した無水クエン酸3.9g、およびトリエチルアミン15.0mlを添加した。撹拌しながら、反応を25℃で6時間保持した。その後、水200mlを添加し、混合物を限外ろ過により精製した。その後、その水溶液凍結し、凍結乾燥した。凍結乾燥品5.3gを回収した。
【0037】
凍結乾燥品10mgをDO 0.7mlに溶解し、NMR分析管に移した。クエン酸に関連するメチレンシグナル(2.8ppm)の積分値から、23%のDS値が得られた。
【0038】
実施例2.キトサンクエン酸アミドの合成
キトサン316mgを、pH3のトリフルオロ酢酸で酸性化した水35mlに溶解し、その後、凍結乾燥し、凍結乾燥品457mgを回収して、周囲温度のホルムアミド23mlに溶解した。ホルムアミド2mlに溶解した無水クエン酸121mg、およびトリエチルアミン230μlを添加した。撹拌しながら、反応を25℃で16時間保持した。その後、水30mlを添加し、混合物を透析により精製した。その後、その水溶液凍結し、凍結乾燥した。凍結乾燥品240mgを回収した。
【0039】
凍結乾燥品10mgをDO 0.7mlに溶解し、NMR分析管に移した。クエン酸に関連するメチレンシグナル(2.8ppm)の積分値から、29%のDS値が得られた。
【0040】
実施例3.プルランクエン酸エステルの合成
プルランデンプン125mgを、80℃でホルムアミド4mlに15分間溶解し、その後、その温度を25℃に低下させた。ホルムアミド1.5mlに溶解した無水クエン酸121mg、およびトリエチルアミン430μlを添加した。撹拌しながら、反応を25℃で16時間保持した。その後、水30mlを添加し、溶液をpH7に中和した。最後に、混合物を限外ろ過により精製した。その後、その水溶液凍結し、凍結乾燥した。凍結乾燥品157mgを回収した。
【0041】
凍結乾燥品10mgをDO 0.7mlに溶解し、NMR分析管に移した。クエン酸に関連するメチレンシグナル(2.8ppm)の積分値から、36%のDS値が得られた。
【0042】
実施例4.ヒアルロン酸クエン酸エステルの合成
ヒアルロン酸ナトリウム塩200mgを、80℃のホルムアミド6.6mlに4時間溶解し、その後、その温度を25℃に低下させた。ホルムアミド1.0mlに溶解した無水クエン酸87mg、およびトリエチルアミン278μlを添加した。撹拌しながら、反応を25℃で16時間保持した。その後、水100mlを添加し、溶液をpH7に中和した。最後に、混合物を透析および限外ろ過により精製した。その後、その水溶液凍結し、凍結乾燥した。凍結乾燥品235mgを回収した。
【0043】
凍結乾燥品10mgをDO 0.7mlに溶解し、NMR分析管に移した。クエン酸に関連するメチレンシグナル(2.8ppm)の積分値から、18%のDS値が得られた。
【0044】
実施例5.デキストリンクエン酸エステルの合成
デキストリン10 105mgを、25℃のホルムアミド4mlに溶解し、ホルムアミド1.5mlに溶解した無水クエン酸112mg、およびトリエチルアミン460μlを添加した。撹拌しながら、反応を25℃で4時間保持した。その後、反応混合物をTFAで酸性化し、激しく撹拌しながらアセトンに滴下した。得られた沈殿物をデカントし、遠心分離してアセトン10mlで2回洗浄し、再度遠心分離して最後に乾燥させた。
【0045】
乾燥した多糖10mgをDO 0.7mlに溶解し、NMR分析管に移した。クエン酸に関連するメチレンシグナル(2.8ppm)の積分値から、27%のDS値が得られた。
【0046】
実施例6、保湿クリーム 油/水の製造
クエン酸化された多糖を含む保湿クリームの製造を、報告する。その油/水クリーム製剤は、皮膚用化粧品で一般に用いられる賦形剤(例えば、乳化剤、増粘剤、油、ゼリー(jellying)、防腐剤など)と混合された保湿剤としての実施例1で製造された化合物を、1%w/w濃度で含有した。
【0047】
要約すると、製造を以下に詳細に示すとおり行った。
【0048】
脱イオン水600mlを、ターボ乳化機に添加し(エマルジョンの総重量の約60%に対応する)、油を約70℃で撹拌しながら添加した。混合物を乳化し、温度を40℃まで低下させた。その後、揮発物および易熱性成分を、実施例1に記載したとおり製造されたCMCクエン酸エステルの水溶液と共に添加した。エマルジョンを緩やかに撹拌しながら放置し、25〜30℃に加温して、最終生成物を適切な容器に移した。
【0049】
以下の組成物を含むクリームを製造した(%p/p):
CMCクエン酸エステル(実施例1) 1
油(パルミチン酸およびカプリル酸トリグリセリド) 12
非イオン系乳化剤 6
セチルアルコール 2
ジメチコン 4
MgAlケイ酸 2
グリセリン 3
キシリトール 2
メチル/エチル−パラベン 0.7
O 総量100になるまで
【0050】
実施例7.流動学的実験
流動学的測定のために、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびクエン酸化CMC(実施例1により製造)の水性系を検査した。生理食塩水に10%w/wの濃度で溶解した試料で、テストを実施した。
【0051】
応力制御型レオメーター:Rheostress Haake RS150を用いた。その装置は、高次または低次構造系用に、それぞれ粗面または滑面センサー(rough or smooth surface sensors)を備えており、測定は全て、専用の温度コントローラを用いて25℃で実施した。
【0052】
我々の系の流動学的挙動を予め定義および比較するために、広範囲のせん断応力で粘度の連続/定常状態測定(流動曲線)を実施した。
【0053】
図において、CMCおよびクエン酸化CMC(実施例1)の流動曲線を示す。
【0054】
本来のCMCプロファイルは、構造系に特有で、中等度のゼロせん断粘度、加えられた応力の上昇に応じた見かけ上の上昇、および臨界応力に達した時の粘度降下を特徴とする。これに対して、クエン酸化CMCは、溶液のように挙動し、せん断応力の範囲全体での低粘度および加えられた応力への非常に低い依存性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化2】


(式中、
Xは、OH、O−M、NH−R、O−Rであり;
Mは、アルカリもしくはアルカリ土類金属、遷移金属、または第四級窒素原子を含む陽イオンであり;
Yは、HまたはRであり;
は、オリゴ糖/多糖の残基であり;
は、C1〜C4直鎖状脂肪族カルボン酸またはクエン酸の残基であるが;
ここで、少なくとも1個のXが、NH−RまたはO−Rであり、他の2個のXが、酸(OH)または塩化形態(OM)で存在することを条件とする)を有する、オリゴ糖/多糖の非架橋誘導体。
【請求項2】
が、キトサン、プルラン、カラゲナンの残基であるか、またはヒアルロナン、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸から選択されるグリコサミノグリカンの残基である、請求項1記載の誘導体。
【請求項3】
が、低分子量のデキストリンである、請求項1記載の誘導体。
【請求項4】
が、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースの残基である、請求項1記載の誘導体。
【請求項5】
が、残存のN−アセチルグルコサミンを異なる割合で含むキトサンの残基である、請求項1記載の誘導体。
【請求項6】
10〜10ダルトン、好ましくは10〜5×10ダルトンの分子量を有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の誘導体。
【請求項7】
0.01〜1.00×Nの、クエン酸エステル中の置換度を有し、ここでNが、糖の反復単位に含まれるヒドロキシルの数と等しい、請求項1〜6のいずれか1項記載の誘導体。
【請求項8】
糖の反復単位に関して0.16〜0.50の、クエン酸エステル中の置換度を有する、請求項7記載の誘導体。
【請求項9】
カルボキシルが、酸の形態、あるいはアルカリもしくはアルカリ土類金属、遷移金属または第四級窒素原子を有する陽イオンの塩形態で存在する、請求項1〜8のいずれか1項記載の誘導体。
【請求項10】
環状無水クエン酸またはC1〜C4直鎖状脂肪族カルボン酸もしくはクエン酸でエステル化されたヒドロキシルを有する環状無水クエン酸を含む溶液の添加、あるいは適切な有機溶媒中での前記無水クエン酸および塩基とオリゴ−多糖の溶液との混合物の添加を含む、請求項1〜9のいずれか1項記載の誘導体の製造方法。
【請求項11】
溶媒が、ホルムアミドである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
塩基が、三置換された窒素を1原子含む脂肪族、芳香族もしくは複素環有機塩基、無機塩基、またはそれらの混合物である、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
塩基が、トリエチルアミンである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
保湿化粧製剤、スキンケアおよび個人衛生のための添加剤としての、請求項1〜9のいずれか1項記載の誘導体の使用。
【請求項15】
場合により適切な賦形剤、担体または活性成分と混合された、請求項1〜9のいずれか1項記載の誘導体を含む、医薬組成物または医薬補助剤。

【図1】
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【公表番号】特表2010−514879(P2010−514879A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543535(P2009−543535)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【国際出願番号】PCT/IB2007/003980
【国際公開番号】WO2008/081257
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(501401021)シジェア ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (2)
【Fターム(参考)】