説明

クラッド形成用樹脂組成物、樹脂フィルム及びそれらを用いた光導波路

【課題】同等の破断強度及び破断伸び率を確保しつつ引張弾性率を高くし得ると共に、低い線膨張率及び同等以下の屈折率を得ることができるクラッド形成用樹脂組成物、樹脂フィルム及びそれらから得られる光導波路を提供する。
【解決手段】(A)バインダ樹脂、(B)光重合性化合物、(C)無機フィラー及び(D)重合開始剤を含有する樹脂組成物であって、(A)、(B)及び(C)の合計量中の(C)の含有量が1〜28質量%であることを特徴とするクラッド形成用樹脂組成物、それから得られる樹脂フィルム及びそれらを上部クラッド及び/又は下部クラッドに用いてなる光導波路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高引張弾性率、低屈折及び低線膨張率であるクラッド形成用樹脂組成物、それを用いた樹脂フィルム、樹脂フィルム硬化物及び光導波路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インターネットやLAN(Local Area Network)の普及に伴う情報容量の増大に対応するため、幹線やアクセス系といった通信分野のみならず、ルータやサーバ装置内のボード間あるいはボード内の短距離信号伝送にも光信号を用いる光インターコネクション技術の開発が進められている。具体的には、ルータやサーバ装置内のボード間あるいはボード内の短距離信号伝送に光を用いるために、電気配線板に光伝送路を複合した光電気混載基板の開発がなされている。
この場合の光伝送路としては、光ファイバーに比べ、配線の自由度が高く、かつ高密度化が可能な光導波路を用いることが望ましく、中でも、加工性や経済性に優れたポリマー材料を用いた光導波路が有望である。
【0003】
これらのポリマー材料として、フッ素化ポリイミド(例えば非特許文献1)やエポキシ樹脂(例えば非特許文献2)、ビスフェノールA/ビスフェノールF共重合型フェノキシ樹脂(例えば特許文献1)が提案されている。
しかしながら、ポリマー材料以外の材料を用いて、クラッドの屈折率、引張弾性率及び線膨張率を簡便に調節する技術は開発なされていないのが実情である。
【0004】
【非特許文献1】エレクトロニクス実装学会誌、Vol.7、No.3、pp.213−218、2004年
【非特許文献2】光学、31巻2号、pp.81−83、2002年
【特許文献1】特開2007−84773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、ポリマー材料以外の材料を添加することにより、同等の破断強度及び破断伸び率を確保しつつ引張弾性率を高くし得ると共に、低い線膨張率及び同等以下の屈折率を得ることができるクラッド形成用樹脂組成物を提供すること、また、光伝播損失をさらに低下し得る光導波路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、無機フィラーを含有するクラッド形成用樹脂組成物を用いることで、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち本発明は、
1.(A)バインダ樹脂、(B)光重合性化合物、(C)無機フィラー及び(D)重合開始剤を含有する樹脂組成物であって、(A)、(B)及び(C)の合計量中の(C)の含有量が1〜28質量%であることを特徴とするクラッド形成用樹脂組成物、
2.(A)バインダ樹脂が、ビスフェノールA、ビスフェノールA型エポキシ化合物及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種並びにビスフェノールF、ビスフェノールF型エポキシ化合物及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種を共重合成分の構成単位として含むことを特徴とする上記1に記載のクラッド形成用樹脂組成物、
3.(C)無機フィラーの平均粒子径が、50nm以下であることを特徴とする上記1又は2に記載のクラッド形成用樹脂組成物、
4.(C)無機フィラーの平均粒子径が、用いる波長の1/10以下であることを特徴とする上記1又は2に記載のクラッド形成用樹脂組成物、

5.(C)無機フィラーが、シリカフィラーであることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のクラッド形成用樹脂組成物、
6.(C)無機フィラーが、有機溶媒にシリカを分散させたオルガノシリカゾル中のシリカであることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のクラッド形成用樹脂組成物、
7.前記有機溶媒が、アミド系溶媒及びケトン系溶媒の少なくとも1種を含有する上記6に記載のクラッド形成用樹脂組成物、
8.(B)光重合性化合物が、芳香族骨格を有しないことを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載のクラッド形成用樹脂組成物、
9.(B)光重合性化合物が、後述する化学式(1)〜(5)で表わされることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載のクラッド形成用樹脂組成物、
10.(B)光重合性化合物が、脂環式エポキシ化合物であることを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載のクラッド形成用樹脂組成物、
11.(D)重合開始剤が、光重合開始剤を含むことを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載のクラッド形成用樹脂組成物、
12.(D)重合開始剤が、光重合開始剤と硬化促進剤との混合物であることを特徴とする上記1〜11のいずれかに記載のクラッド形成用樹脂組成物、
13.上記1〜12のいずれかに記載のクラッド形成用樹脂組成物を硬化してなる厚み0.2mmの樹脂フィルムのヘイズ値(%)が10以下であることを特徴とするクラッド形成用樹脂組成物、
14.上記1〜13のいずれかに記載のクラッド形成用樹脂組成物を用いた樹脂フィルム、
15.上記1〜13のいずれかに記載のクラッド形成用樹脂組成物を上部クラッド及び/又は下部クラッドに用いてなる光導波路、及び
16.上記14に記載の樹脂フィルムを上部クラッド及び/又は下部クラッドに用いてなる光導波路
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のクラッド形成用樹脂組成物、樹脂フィルム及び樹脂フィルム硬化物は、同等の破断強度及び破断伸び率を確保しつつ引張弾性率を高くし得ると共に、同等以下の屈折率及び低い線膨張率を得ることができる。またこの樹脂フィルム及び樹脂フィルム硬化物を上部クラッド及び/又は下部クラッドに用いる光導波路は、光伝播損失をさらに低下し得ることとなった。さらに、線膨張率が低くなりリジッド基板の線膨張率に近づくことにより、リジッド基板を用いた場合さらに基板と剥離しにくくなった。また、クラッドの引張弾性率が高くなったことにより、光導波路の剛性も高くなりクラッド層のより薄膜化も可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のクラッド形成用樹脂組成物は、(A)バインダ樹脂、(B)光重合性化合物、(C)無機フィラー及び(D)重合開始剤を含有する樹脂組成物であって、(A)、(B)及び(C)の合計量中の(C)の含有量が1〜28質量%であることを特徴とする。(C)無機フィラーの含有量が1質量%未満であると線膨張率を下げることができず、一方、28質量%を超えるとクラッド形成用樹脂組成物をフィルム化することができないので、いずれも本発明の課題を達成できない。
本発明のクラッド形成用樹脂組成物に(C)無機フィラーを上記範囲内で添加することにより、同等の破断強度及び破断伸び率を確保しつつクラッドの引張弾性率を高くし得ると共に、クラッドの屈折率及び/又は線膨張率を低下させることができる。
【0009】
本発明における(C)無機フィラーの平均粒子径は、50nm以下であることが好ましい。50nm以下であれば、クラッドの透明性に悪影響を与え難いからである。また1nm未満では入手が困難である。この観点から、1〜30nmがさらに好ましい。
さらに、無機フィラーの平均粒子径が、光導波路に用いる光の波長の1/10以下であることが好ましい。
【0010】
また、本発明における(C)無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化ジルコニア等が挙げられるが、透明性を損ない難く且つ屈折率を低下させることができる点でシリカが好ましい。
このシリカとしては、ゾル−ゲル法等で得られるオルガノシリカゾルや四塩化ケイ素等シラン類を酸素と水素の炎中で加水分解して製造される方法等で得られるヒュームドシリカが挙げられるが、クラッド形成用樹脂組成物内に均一に分散させるためには有機溶媒にシリカを分散させたオルガノシリカゾルが好ましい。
【0011】
上記のオルガノシリカゾルの有機溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、1−ブタノール、2−ブタノール、1−プロパノール、イソプロパノール(IPA)、キシレン・n-ブタノール混合溶媒(XBA)、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒などや、これらの混合溶媒が挙げられ、中でもシリカゾルの分散安定性の観点からは、アミド系溶媒及びケトン系溶媒が好ましく、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)及びメチルエチルケトン(MEK)がより好ましい。
【0012】
上記のオルガノシリカゾルの具体例としては、商品名「DMAC−ST」、「MEK−ST」、「IPA−ST」、「IPA−ST−UP」、「IPA−ST−ZL」、「EG−ST」、「NPA−ST−30」、「MIBK−ST」、「XBA−ST」、「PMA−ST」、「PGM−ST」等(いずれも日産化学(株)製)が挙げられる。
【0013】
本発明のクラッド形成用樹脂組成物に用いられる(A)バインダ樹脂は、フィルム等の硬化物を形成する場合に、その強度を確保するためのものであり、その目的を達成し得るものであれば特に限定されず、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン等、あるいはこれらの誘導体等が挙げられる。これらのバインダ樹脂は1種単独でも、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0014】
上記で例示したバインダ樹脂のうち、耐熱性が高いとの観点から、主鎖に芳香族骨格を有することが好ましく、ビスフェノールA、ビスフェノールA型エポキシ化合物及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種並びにビスフェノールF、ビスフェノールF型エポキシ化合物及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種を共重合成分の構成単位として含むフェノキシ樹脂が更に好ましい。
【0015】
ビスフェノールA若しくはビスフェノールA型エポキシ化合物若しくはそれらの誘導体としては、テトラブロモビスフェノールA若しくはテトラブロモビスフェノールA型エポキシ化合物等が好適に挙げられる。また、ビスフェノールF若しくはビスフェノールF型エポキシ化合物若しくはその誘導体としては、テトラブロモビスフェノールF若しくはテトラブロモビスフェノールF型エポキシ化合物等が好適に挙げられる。
本発明の(A)バインダ樹脂としては、上記のフェノキシ樹脂のうち、ビスフェノールA/ビスフェノールF共重合型フェノキシ樹脂が特に好適に挙げられ、例えば、東都化成(株)製、商品名「フェノトートYP−70」として入手可能である。
【0016】
(A)バインダ樹脂の配合量は、(A)成分及び(B)成分の合計量中、5〜80質量%とすることが好ましい。この配合量が5質量%以上であると、光重合性化合物及び光重合開始剤を含有する樹脂組成物をフィルム化することが容易となる。特に、10質量%以上であるとフィルムを形成する場合に、膜厚50μm以上の厚膜フィルムでも容易に製造することが可能であり、より好ましい。
一方、(A)成分が80質量%以下であると光硬化反応が十分に進行する。以上の観点から、(A)バインダ樹脂の配合量は、20〜70質量%とすることがさらに好ましい。
【0017】
次に(B)光重合性化合物は紫外線等の光の照射によって重合する化合物であれば特に制限はないが、光に対する反応性の観点から、分子内に少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物(好ましくは、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物)、分子内に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物(好ましくは、分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物)及び2官能性以上の多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基又はメタクリロイル基を示し、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートを示す。
また、コアとの屈折率差を拡大する観点からは、芳香族骨格を有しない光重合性化合物が好ましい。
そして、硬化性の観点からは、(B)光重合性化合物は、下記化学式(1)〜(5)で表わされることがさらに好ましい。
【0018】
【化1】

[式中、Z1及びZ2はそれぞれ独立に下記式(a−1)、(a−2)及び(a−3)のいずれかであり、R1は、−(CH2j−(jは2〜18の整数である。)又は下記式(b)である。]
【0019】
【化2】

【0020】
【化3】

[上記式(b)中、R2はそれぞれ独立に水素原子、メチル基又は下記式(c)であり、kは1〜10の範囲の平均値である。]
【0021】
【化4】

[上記式(c)中、R3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基又は下記式(d)であり、m及びnはそれぞれ独立に1〜10の範囲の平均値である。]
【0022】
【化5】

[上記式(d)中、R4はそれぞれ独立に水素原子、メチル基又は下記式(e)であり、m及びnはそれぞれ独立に1〜10の範囲の平均値である。]
【0023】
【化6】

[上記式(e)中、R5はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R6は下記式(f−1)、(f−2)、(f−3)、(f−4)、(f−5)及び(f−6)のいずれかであり、m及びnはそれぞれ独立に1〜10の範囲の平均値である。]
【0024】
【化7】

【0025】
【化8】

【0026】
【化9】

[式中、R7は−(CH2p−(pは1〜8の整数である。)である。]
【0027】
【化10】

[式中、R8は−(CH2q−(qは1〜8の整数である。)である。]
【0028】
【化11】

[式中、Z3は、下記式(g)、(h)及び(j)のいずれかであり、R9は下記式(f−1)、(f−2)、(f−3)、(f−4)、(f−5)及び(f−6)のいずれかであり、rは1〜10の範囲の平均値である。]
【0029】
【化12】

【0030】
【化13】

【0031】
上述の化学式(1)で表わされる(B)光重合性化合物の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、エトキシ化2−メチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、プロポキシ化シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、エトキシ化トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール型エポキシジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールA型エポキシジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールF型エポキシジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレートや、ポリエチレングリコール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ネオペンチルグリコール型エポキシ樹脂、1,6−ヘキサンジオール型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリシクロデカンジメタノール型エポキシ樹脂、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルなどのエポキシ化合物が挙げられる。
【0032】
上述の化学式(2)で表わされる(B)光重合性化合物の具体例としては、アリサイクリックジエポキシカルボキシレートが挙げられる。
【0033】
上述の化学式(3)で表わされる(B)光重合性化合物の具体例としては、エチレングリコールジアリサイクリックエポキシカルボキシレート、1,3−プロパンジオールジアリサイクリックエポキシカルボキシレート、1,4ジアリサイクリックエポキシカルボキシレート、1,6−ヘキサンジオールジアリサイクリックエポキシカルボキシレート、1,8−オクタンジオールジアリサイクリックエポキシカルボキシレート等が挙げられる。
【0034】
上述の化学式(4)で表わされる(B)光重合性化合物の具体例としては、アリサイクリックジエポキシアジペート、アリサイクリックジエポキシジサクシネート、アリサイクリックジエポキシスベシエート、アリサイクリックジエポキシセバシエート等が挙げられる。
【0035】
上述の化学式(5)で表わされる(B)光重合性化合物の具体例としては、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添2,2’−ビフェノール型エポキシ樹脂、水添4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂ジ(メタ)アクリレート、水添2,2’−ビフェノール型エポキシ樹脂ジ(メタ)アクリレート、水添4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
また、本発明に係る(B)光重合性化合物は、脂環式エポキシ化合物であるであることが好ましい。ここで、脂環式エポキシ化合物とは、脂環骨格にエポキシ基を有する化合物をいう。脂環式エポキシ化合物の内、脂環式エポキシ樹脂が好ましく、脂環式エポキシ樹脂の具体例としては、例えばアリサイクリックエポキシカルボキシレート、エチレングリコールジアリサイクリックエポキシカルボキシレート、1,3−プロパンジオールジアリサイクリックエポキシカルボキシレート、1,4ジアリサイクリックエポキシカルボキシレート、1,6−ヘキサンジオールジアリサイクリックエポキシカルボキシレート、1,8−オクタンジオールジアリサイクリックエポキシカルボキシレート、アリサイクリックジエポキシアジペート、アリサイクリックジエポキシジサクシネート、アリサイクリックジエポキシスベシエート、アリサイクリックジエポキシセバシエート等が挙げられる。
以上の本発明に係る(B)光重合性化合物は、単独又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0037】
上記の脂環式エポキシ樹脂として好適に使用できる市販品としては、商品名「UVR−6100」、「UVR−6105」、「UVR−6110」、「UVR−6128」、「UVR−6200」(以上、ユニオンカーバイド社製)、商品名「セロキサイド2021」、「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2081」、「セロキサイド2083」、「セロキサイド2085」、「セロキサイド2000」、「セロキサイド3000」、「サイクロマーA200」、「サイクロマーM100」、「サイクロマーM101」、「エポリードGT−301」、「エポリードGT−302」、「エポリード401」、「エポリード403」、「ETHB」、「エポリードHD300」(以上、ダイセル化学工業(株)製)、商品名「KRM−2110」、「KRM−2199」(以上、株式会社ADEKA製)等を挙げることができる。
【0038】
本発明における(D)重合開始剤としては、紫外線等の光の照射により重合を開始する光重合開始剤、加熱により重合を開始する熱重合開始剤、エポキシ樹脂等の硬化反応を促進する硬化促進剤等が挙げられる。(D)重合開始剤として、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
上述のうち、光重合開始剤を含むことが好ましく、光重合開始剤単独又は光重合開始と硬化促進剤との混合物であることがさらに好ましい。
【0039】
上記の光重合開始剤としては、紫外線等の光の照射により酸を発生する感光性酸発生剤が特に好ましい。この感光性酸発生剤としては、例えばトリアリールスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、ジアリールホスホニウム塩等を挙げることができる。
【0040】
上記トリアリールスルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、4−フェニルチオフェニルジフェニルテトラフルオロボレート、4−フェニルチオフェニルジフェニルヘキサフルオロホスホネート、4−フェニルチオフェニルジフェニルヘキサフルオロアルセネート、4−フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロメタンスルホネート、4−フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロアセテート、4−フェニルチオフェニルジフェニルp−トルエンスルホネート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等を挙げることができる。これらのトリアリールスルホニウム塩のうち、特にトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート及びトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートが好ましい。
【0041】
上記ジアリールヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムp−トルエンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロアセテート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムp−トルエンスルホネート等を挙げることができる。これらのジアリールヨードニウム塩のうち、特に、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネートが好ましい。
上記ジアリールホスホニウム塩としては、例えば、(1−6−η−クメン)(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスホネート等を挙げることができる。
【0042】
(D)重合開始剤のうち、光重合開始剤として用いる感光性酸発生剤の市販品としては、ジアリールヨードニウム塩として例えばUVI−6950、UVI−6970、UVI−6974、UVI−6990(以上、ユニオンカーバイド社製)、MPI−103、BBI−103(以上、みどり化学(株)製)等;
【0043】
トリアリールスルホニウム塩として例えば商品名「アデカオプトマーSP−150」、「アデカオプトマーSP−151」、「アデカオプトマーSP−170」、「アデカオプトマーSP−171」(以上、(株)ADEKA製)、商品名「CI−2481」、「CI−2624」、「CI−2639」、「CI−2064」(以上、日本曹達(株)製)、商品名「DTS−102」、「DTS−103」、「NAT−103」、「NDS−103」、「TPS−103」、「MDS−103」(以上、みどり化学(株)製)、商品名「CD−1010」、「CD−1011」、「CD−1012」(以上、サートマー社製)等;
【0044】
ジアリールホスホニウム塩として例えば、商品名「イルガキュアー261」(チバスペシャルティケミカルズ(株)製);商品名「PCI−061T」、「PCI−062T」、「PCI−020T」、「PCI−022T」(以上、日本化薬(株)製)等を、それぞれ挙げることができる。
【0045】
これらの市販品のうち、「UVI−6970」、「UVI−6974」、「UVI−6990」、「アデカオプトマーSP−170」、「アデカオプトマーSP−171」、「CD−1012」、「MPI−103」等が、得られる保護膜が高い表面硬度を有することとなる点で好ましい。
上記感光性酸発生剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0046】
本発明における(D)重合開始剤として熱重合開始剤を用いる場合は、感熱性酸発生剤を用いても良い。
感熱性酸発生剤としては、例えばスルホニウム塩(ただし、トリアリールスルホニウム塩を除く。)、ベンゾチアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。
上記スルホニウム塩の具体例としては、アルキルスルホニウム塩、ベンジルスルホニウム塩、ジベンジルスルホニウム塩、置換ベンジルスルホニウム塩等を挙げることができる。
【0047】
これらの具体例としては、アルキルスルホニウム塩として、例えば4−アセトフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ジメチル−4−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル−4−(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル−4−(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ジメチル−3−クロロ−4−アセトキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等;
【0048】
ベンジルスルホニウム塩として、例えばベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−2−メチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等;
【0049】
ジベンジルスルホニウム塩として、例えばジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−アセトキシフェニルジベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−メトキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ジベンジル−3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−メトキシベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等;
【0050】
置換ベンジルスルホニウム塩として、例えばp−クロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−ニトロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−クロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、p−ニトロベンジル−3−メチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、3,5−ジクロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、o−クロロベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等を、それぞれ挙げることができる。
【0051】
上記ベンゾチアゾニウム塩の具体例としては、3−ベンジルベンゾチアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジルベンゾチアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、3−ベンジルベンゾチアゾニウムテトラフルオロボレート、3−(p−メトキシベンジル)ベンゾチアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジル−2−メチルチオベンゾチアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジル−5−クロロベンゾチアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート等のベンジルベンゾチアゾニウム塩が挙げられる。
【0052】
これらのうち、スルホニウム塩またはベンゾチアゾニウム塩が好ましく用いられ、特に4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートまたは3−ベンジルベンゾチアゾニウムヘキサフルオロアンチモネートが好ましく用いられる。
【0053】
これらの市販品としては、商品名「サンエイドSI−L85」、「同SI−L110」、「同SI−L145」、「同SI−L150」、「同SI−L160」(以上、三新化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0054】
なお、本発明において、(B)光重合性化合物として、分子内に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物(好ましくは、分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物)、2官能性以上の多官能性(メタ)アクリレート等を用いる場合は、市販の分子内開裂型又は水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤を適宜用いれば良い。
【0055】
本発明における(D)重合開始剤として用いる硬化促進剤としては、各種イミダゾール類を使用することが望ましい。イミダゾールとしては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−4−フェニルイミダゾール等が挙げられ、2MZ、2E4MZ、2PZ−CN、2PZ−CNS、(四国化成工業(株)製)等がある。
本発明における(D)重合開始剤として、光重合開始剤と硬化促進剤との混合物を用いると、硬化度を上げやすいので好ましい。
【0056】
(D)重合開始剤の使用割合は、(A)及び(B)の合計量100質量部に対する(D)重合開始剤の使用量として、好ましくは0.05〜20質量部であり、さらに好ましくは0.1〜10質量部である。
(D)重合開始剤の含有量が0.05質量部以上であると、光感度が十分であり、一方20質量部以下であれば、光導波路の表面のみが選択的に硬化し、硬化が不十分となることがなく、また、重合開始剤自身の吸収により伝搬損失が増大することもなく好適である。以上の観点から、(C)光重合開始剤の含有量は、0.2〜6質量部とすることがさらに好ましい。
【0057】
また、このほかに必要に応じて、本発明のクラッド形成用樹脂組成物中に内部離型剤、酸化防止剤、黄変防止剤、紫外線吸収剤、可視光吸収剤、着色剤、可塑剤、安定剤、充填剤等のいわゆる添加剤を本発明の効果に悪影響を与えない割合で添加してもよい。
【0058】
本発明のクラッド形成用樹脂組成物からなるクラッド形成用樹脂フィルムは、(A)〜(D)成分を含有する樹脂組成物を溶媒に溶解して、基材に塗布し、溶媒を除去することにより容易に製造することができる。ここで用いる溶媒としては、該樹脂組成物を溶解し得るものであれば特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶媒又はこれらの混合溶媒を用いることができる。樹脂溶液中の固形分濃度は、通常30〜60質量%程度であることが好ましい。
本発明のクラッド形成用樹脂フィルムの厚みについては、光の閉じ込めやコアの埋込みが可能であれば特に制限はないが、通常20〜200μmである。
本発明のクラッド形成用樹脂フィルムは、光導波路の下部クラッド及び/又は上部クラッドとして使用することができる。
【0059】
以下、本発明の樹脂フィルムを最も好適な用途であるクラッド形成用樹脂フィルムとして用いた場合の適用例について詳細に説明する。
本発明のクラッド形成用樹脂フィルムの製造過程で用いる基材は、光導波路形成用フィルムを支持する支持体であって、その材料については特に限定されず、リジッド基板及びフレキシブル基材のいずれでも良い。
リジッド基板としては、シリコン基板、ガラスエポキシ樹脂基板、セラミック基板、ガラス基板、金属基板、プラスチック基板等が挙げられる。
フレキシブル基材としては、プラスチックフィルム、樹脂層付きプラスチックフィルム等が挙げられるが、後に光導波路形成用フィルムを剥離することが容易であり、かつ、耐熱性及び耐溶剤性を有するとの観点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン等が好適に挙げられる。
リジッド基板の厚みは、10〜2000μmの範囲であることが好ましい。
10μm以上であると、支持体としての強度が得やすいという利点があり、
2000μm以下であると、パターン形成時のマスクとのギャップが小さくなり、より微細なパターンが形成できるという利点がある。
また、フレキシブル基材の厚みは、5〜50μmの範囲であることが好ましい。5μm以上であると、支持体としての強度が得やすいという利点があり、50μm以下であると、パターン形成時のマスクとのギャップが小さくなり、より微細なパターンが形成できるという利点がある。
【0060】
以下、リジッド基板を用いて光導波路を形成するための製造手法について詳述する。その方法としては、例えば、下部クラッドフィルムを、保護フィルムが存在する場合には、保護フィルムを除去後、リジッド基板上に加熱しながら圧着することにより積層する方法等が挙げられる。ここで、密着性及び追従性の見地から減圧下で積層することが好ましい。該樹脂フィルムの加熱温度は50〜130℃とすることが好ましく、圧着圧力は、0.1〜1.0MPa程度(1〜10kgf/cm2程度)とすることが好ましいが、これらの条件には特に制限はない。次いで、下部クラッドフィルムを光又は加熱により硬化し、下部クラッドフィルムより屈折率の高いコアフィルムを同様な方法で積層する。このようにして積層した樹脂フィルムは、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線が画像状に照射される。活性光線の光源としては、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に放射する公知の光源が挙げられる。また、他にも写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものも用いることができる。
【0061】
次いで、露光後、ウェット現像、ドライ現像等で未露光部を除去して現像し、コアパターンを製造する。ウェット現像の場合は、有機溶剤、アルカリ性水溶液、水系現像液等の前記樹脂フィルムの組成に対応した現像液を用いて、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により現像する。
現像液としては、有機溶剤、アルカリ性水溶液等の安全かつ安定であり、操作性が良好なものが好ましく用いられる。前記有機溶剤系現像液としては、例えば、1,1,1−トリクロロエタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、引火防止のため、1〜20質量%の範囲で水を添加してもよい。
【0062】
上記アルカリ性水溶液の塩基としては、例えば、リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等の水酸化アルカリ、リチウム、ナトリウム、カリウム若しくはアンモニウムの炭酸塩又は重炭酸塩等の炭酸アルカリ、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩等が用いられる。また、現像に用いるアルカリ性水溶液としては、例えば、0.1〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%四ホウ酸ナトリウムの希薄溶液等が好ましく挙げられる。また、現像に用いるアルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光性樹脂組成物の層の現像性に合わせて調節される。また、アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。
【0063】
上記水系現像液としては、水又はアルカリ水溶液と一種以上の有機溶剤とからなる。ここでアルカリ物質としては、前記物質以外に、例えば、ホウ砂、メタケイ酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、2ーアミノ−2−ヒドロキシメチル−1、3−プロパンジオール、1、3−ジアミノプロパノール−2、モルホリン等が挙げられる。現像液のpHは、レジストの現像が充分にできる範囲でできるだけ小さくすることが好ましく、pH8〜12とすることが好ましく、pH9〜10とすることがより好ましい。上記有機溶剤としては、例えば、三アセトンアルコール、アセトン、酢酸エチル、炭素数1〜4のアルコキシ基をもつアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。有機溶剤の濃度は、通常、2〜90質量%とすることが好ましく、その温度は、現像性にあわせて調整することができる。また、水系現像液中には、界面活性剤、消泡剤等を少量混入することもできる。
【0064】
また、必要に応じて2種類以上の現像方法を併用してもよい。現像の方式としては、例えば、ディップ方式、バトル方式、高圧スプレー方式等のスプレー方式、ブラッシング、スラッピング等が挙げられる。
現像後の処理として、必要に応じて60〜250℃程度の加熱又は0.1〜1000mJ/cm2程度の露光を行うことによりコアパターンをさらに硬化して用いてもよい。
【0065】
次いで、コアフィルムより屈折率の低い上部クラッドフィルムを同様の方法で積層し、光導波路を作製する。
本発明のクラッド形成用樹脂フィルム及びその硬化物を下部クラッドとして用いると、線膨張率の低い下部クラッドが形成されるので、線膨張率の低いリジッド基板と、より剥離しにくくなり好ましい。また、本発明のクラッド形成用樹脂フィルム及びその硬化物を上部クラッドとして用いると、無機フィラーの増量により屈折率を大幅に低くできるので、曲線形状導波路を形成の際に光をより閉じ込めやすくなり、光導波路の伝播損失を低くすることができるので好ましい。
【0066】
本発明のクラッド形成用樹脂フィルム硬化物は、厚み0.2mmにおけるヘイズ値(%)が10以下であることが好ましい。ヘイズ値が10以下であれば、コアパターンの露光に悪影響を与えないからである。
【実施例】
【0067】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、引張試験による破断強度、引張弾性率及び破断伸び率、線膨張係数並びにへイズは以下の方法により評価した。
【0068】
1.引張試験
(株)テイ・エスエンジニアリング社製、テンシロン引張試験機(商品名「RTM−100」)を用いた。測定には長さ70mm、幅10mm、厚み200μmのものを用い、チャック間距離50mm、引っ張り速度5mm/minにて実施し、得られる応力−変位曲線から、引張弾性率、破断強度、破断伸び率を求めた。
【0069】
2.線膨張係数
セイコーインスツルメンツ(株)製、TMA測定装置(商品名「TMA/SS6000」)を用いた。測定には長さ20mm、幅2mm、厚み200μmのものを用い、測定間距離10mmにて、−40℃から120℃まで、昇温速度5℃/minにて実施した。
【0070】
3.へイズ
日本電色工業(株)製、色度測定器(「300A」)を用いた。測定には40×40mm、厚み200μmの試験片を使用した。
【0071】
実施例1
250mlのポリエチレン容器にバインダ樹脂としてフェノキシ樹脂(東都化成(株)製、商品名「YP−70」)を固形分として39.2g及びメチルエチルケトンを39.2gを混ぜ、均一になるまで室温で溶解した。別途、光重合性化合物としてエポキシ樹脂(株式会社ADEKA製、商品名「KRM−2110」)を58.8g、オルガノシリカゾル(日産化学(株)製、商品名「MEK・ST」)を6.7g(シリカとして2.0g)、シランカップリング剤(信越化学工業(株)製、商品名「KBM402」)を0.02g加え、よく撹拌したものを、前述記載の容器に少しずつ加え、均一になるまで撹拌した。次に光重合開始剤(株式会社ADEKA製、商品名「SP−170」)を4.0g(固形分として2.0g)配合し、均一になるまで撹拌した。
これをPETフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「A4100」)上に、アプリケーターを用いて塗布し、80℃で20分乾燥させてクラッド形成用フィルムを得た。このとき、感光性樹脂層の厚さはアプリケーターの間隔(ギャップ)を調整することで、5〜100μmの間に調整可能であり、本実施例では50μmとした。
【0072】
次に真空加圧式ラミネータを用い、感光性樹脂層同士を60℃、圧力0.4MPaにて2枚に重ね合わせ感光性樹脂層の厚みが100μmのクラッド形成用フィルムを得た。その後、PETフィルムを片面のみ剥がし、真空加圧式ラミネータを用いて同様に行い、感光性樹脂層の厚みが200μmのクラッド形成用フィルムを得た。
その後、紫外線露光機を用い、上記クラッド形成用フィルムに紫外線(波長365nm)を2000mJ/cm2照射した。その後、両面のPETフィルムを剥がし、160℃で1時間ベークすることでクラッド形成用フィルム硬化物を得た。
得られたクラッド形成用フィルム硬化物はダイサーで切断し、長さ70mm、幅10mmの引張特性評価用試験片、また幅2mm、長さ20mmのTMA評価用試験片、長さ40mm、幅40mmの光学特性評価用試験片を作成し、評価に用いた。評価結果を第1表に示す。
【0073】
実施例2
実施例1と同じ(A)、(B)、(C)、(D)及びシランカップリング剤を用いた。フェノキシ樹脂を固形分として38.4g、メチルエチルケトンを38.4g、エポキシ樹脂を57.6g、オルガノシリカゾルを13.3g(シリカとして4.0g)、シランカップリング剤を0.04g用いた以外は実施例1と同様に行った。評価結果を第1表に示す。
【0074】
実施例3
実施例1と同じ(A)、(B)、(C)、(D)及びシランカップリング剤を用いた。フェノキシ樹脂を固形分として37.2g、メチルエチルケトンを37.2g、エポキシ樹脂を55.8g、オルガノシリカゾルを23.3g(シリカとして7.0g)、シランカップリング剤を0.07g用いた以外は実施例1と同様に行った。評価結果を第1表に示す。
【0075】
実施例4
実施例1と同じ(A)、(B)、(C)、(D)及びシランカップリング剤を用いた。フェノキシ樹脂を固形分として36.0g、メチルエチルケトン36.0g、エポキシ樹脂を54.0g、オルガノシリカゾルを33.3g(シリカとして10.0g)、シランカップリング剤を0.10g用いた以外は実施例1と同様に行った。評価結果を第1表に示す。
【0076】
実施例5
実施例1と同じ(A)、(B)、(D)及びシランカップリング剤を用いた。250mlのポリエチレン容器にフェノキシ樹脂を固形分として32.0g、オルガノシリカゾル(日産化学(株)製、商品名「DMAC−ST」)を100g(シリカとして20.0g)、シランカップリング剤を0.2g加え、均一になるまで室温で溶解した。その後、エポキシ樹脂を48.0g、光重合開始剤を4.0g(固形分として2.0g)、硬化促進剤(四国化成(株)製、商品名「2PZ−CN」)を1.0g配合し、均一になるまで撹拌した。
これをPETフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「A4100」)上に、アプリケーターを用いて塗布し、100℃で20分乾燥させてクラッド形成用フィルムを得た。その後、真空加圧式ラミネータを用い、樹脂層同士を70℃、圧力0.4MPaにて2枚に重ね合わせ樹脂層の厚みが100μmのクラッド形成用フィルムを得た。その後、PETフィルムを片面のみ剥がし、真空加圧式ラミネータを用いて同様に行い、樹脂層の厚みが200μmのクラッド形成用フィルムを得た。その後、両面のPETフィルムを剥がし、160℃で1時間ベークすることでクラッド形成用フィルム硬化物を得た。得られたクラッド形成用フィルム硬化物はダイサーで切断し、実施例1と同じ形状の光学特性評価用試験片を作成し、評価に用いた。評価結果を第1表に示す。
【0077】
比較例1
実施例1と同じ(A)、(B)及び(D)を用いた。フェノキシ樹脂を固形分として40.0g、メチルエチルケトン40.0g、エポキシ樹脂を60.0g用い、オルガノシリカゾル及びシランカップリング剤を用いない以外は実施例1と同様に行った。評価結果を第1表に示す。
【0078】
比較例2
実施例5と同じ(A)、(B)、(D)及びシランカップリング剤を用いた。250mlのポリエチレン容器にフェノキシ樹脂を固形分として28.0g、オルガノシリカゾル(日産化学(株)製、商品名「DMAc−ST」)を150g(シリカとして30.0g)、シランカップリング剤を0.3g加え、均一になるまで室温で溶解した。その後、エポキシ樹脂を42.0g、光重合開始剤を4.0g(固形分として2.0g)、硬化促進剤(四国化成(株)製、商品名「2PZ−CN」)を1.0g配合し、均一になるまで撹拌した。
これをPETフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「A4100」)上に、アプリケーターを用いて塗布し、100℃で20分乾燥させたところ、大きくひび割れてしまい、フィルムが得られなかった。
【0079】
【表1】

[注]
1)バインダ樹脂:フェノキシ樹脂のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(固形分40質量%)、東都化成(株)製、商品名「YP70」
2)光重合性化合物:エポキシ樹脂[アリサイクリックジエポキシカルボキシレート]、株式会社ADEKA製、商品名「KRM−2110」
3)無機フィラー1:N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)中に分散したゾル−ゲル法によるオルガノシリカゾル(SiO2:20質量%、粒子径10〜20nm)、日産化学工業(株)製、商品名「DMAC−ST」
4)無機フィラー2:メチルエチルケトン(MEK)中に分散したゾル−ゲル法によるオルガノシリカゾル(SiO2:30質量%、粒子径10〜20nm)、日産化学工業(株)製、商品名「MEK−ST」
5)光重合開始剤:カチオン重合開始剤[トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩の溶液(固形分50質量%)]、株式会社ADEKA製、商品名「SP−170」
6)硬化促進剤:1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、四国化成工業(株)製、商品名「2PZ−CN」
【0080】
第1表から明らかなように、実施例1〜5のクラッド形成用樹脂組成物は、比較例1のクラッド形成用樹脂組成物と比較して、同等の破断強度及び破断伸び率を確保しつつ引張弾性率が向上した。さらに、同等以下の屈折率を得ることが出来、光導波路の光伝播損失をさらに低下させることが可能になった。また、線膨張率が低くなりリジッド基板の線膨張率に近づき、さらに基板と剥離しにくくなった。
【0081】
実施例6〜10、比較例3
実施例1〜5及び比較例1の樹脂組成物を用いて、PETフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「A4100」)上に同様に塗工することにより実施例6〜10及び比較例3の6種類の下部クラッド層形成用樹脂フィルム(硬化後の膜厚:25μm)及び6種類の上部クラッド層形成用樹脂フィルム(硬化後の膜厚:75μm)を得た。これら12種類の樹脂フィルムの上面に保護フィルム(PETフィルム:東洋紡績(株)製、商品名「A1517」)を被覆して表面保護した。
次に、保護フィルムを除去した6種類の下部クラッド層形成用樹脂フィルムをそれぞれシリコンウエハ基板上にラミネートした。
【0082】
また、コア部形成用樹脂フィルムを以下のようにして得た。
250mlのポリエチレン容器にバインダ樹脂としてフェノキシ樹脂(東都化成(株)製、商品名「YP−70」)を固形分として30g及びメチルエチルケトンを60g混ぜ、均一になるまで室温で溶解した。別途、光重合性化合物としてエトキシ化ジフェニルフルオレンジアクリレート(大阪ガスケミカル(株)製、商品名「EA−0500」)35g及びエトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(新中村化学(株)製、商品名「A−BPE−4」を35gを上記の容器に少しずつ加え、均一になるまで撹拌した。次に光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ(株)製、商品名「イルガキュア2959」を固形分として1.0g、同製、商品名「イルガキュア819」を固形分として1.0g)を配合し、均一になるまで撹拌した。
これをキャリアフィルム(PETフィルム:東洋紡績(株)製、商品名「A4100」)上に、アプリケーターを用いて塗布し、80℃で20分乾燥させてコア部形成用樹脂フィルム(硬化後の膜厚:50μm)を得た。
【0083】
次に、紫外線露光機(大日本スクリーン株式会社製、商品名MAP−1200−L)を用い、シリコンウエハ基板上に配置された下部クラッド層形成用樹脂フィルムに紫外線(波長365nm)を2000mJ/cm2照射し、その後PETフィルムを剥離した。硬化して得られた下部クラッド層に、ロールラミネータ(日立化成テクノプラント株式会社製、商品名HLM−1500)を用いて、コア部形成用樹脂フィルムを、圧力0.4MPa、温度80℃及び速度0.4m/minの条件で積層した。
【0084】
次いで、幅50μmのネガ型フォトマスクを介し、上記紫外線露光機で紫外線(波長365nm)を500mJ/cm2照射し、さらに80℃で5分間露光後加熱を行った後、キャリアフィルムを剥離した。
現像液(総量を100質量部として、N,N−ジメチルアセトアミド20質量部とイソプロピルアルコール80質量部の混合溶媒)を用い、コア部を現像した後、イソプロピルアルコール、次いで純水を用いて洗浄し、100℃で1時間加熱乾燥した。
【0085】
次に、上記真空加圧式ラミネータを用い、保護フィルムを除去した上部クラッド層形成用樹脂フィルムを、コア部及び下部クラッド層上に、圧力0.5MPa、温度50℃及び加圧時間30秒の条件で積層した。
その後、紫外線(波長365nm)を2000mJ/cm2照射し、保護フィルムを除去した後、120℃で1時間加熱処理することによって、上部クラッド層を形成し、6種類の光導波路を得た。その後、ダイシングソー(株式会社ディスコ製、商品名DAD−341)を用いて導波路長10cmの光導波路を切り出した。
なお、上部及び下部クラッド層形成用樹脂組成物として、実施例6の光導波路はいずれも実施例1の樹脂組成物を用い、実施例7の光導波路はいずれも実施例2の樹脂組成物を用い、実施例8の光導波路はいずれも実施例3の樹脂組成物を用い、実施例9の光導波路はいずれも実施例4の樹脂組成物を用い、実施例10の光導波路はいずれも実施例5の樹脂組成物を用い、比較例3の光導波路はいずれも比較例1の樹脂組成物を用いた。
得られた実施例6〜10の光導波路はいずれも比較例3の光導波路と比較して下部クラッドの線膨張率が低くなり、シリコンウエハ基板とより剥離しにくくなった。また、実施例7〜10の光導波路はいずれも比較例3の光導波路と比較して上部クラッドの屈折率が低くなり、光を閉じ込め易くなった。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のクラッド形成用樹脂組成物及び該樹脂組成物からなるクラッド形成用樹脂フィルムは、例えば、光導波路、レンズ、光学用封止材、光学用接着剤、導光板、回折格子等として用いることができ、特に光導波路用の樹脂フィルムとして好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バインダ樹脂、(B)光重合性化合物、(C)無機フィラー及び(D)重合開始剤を含有する樹脂組成物であって、(A)、(B)及び(C)の合計量中の(C)の含有量が1〜28質量%であることを特徴とするクラッド形成用樹脂組成物。
【請求項2】
(A)バインダ樹脂が、ビスフェノールA、ビスフェノールA型エポキシ化合物及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種並びにビスフェノールF、ビスフェノールF型エポキシ化合物及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種を共重合成分の構成単位として含むことを特徴とする請求項1に記載のクラッド形成用樹脂組成物。
【請求項3】
(C)無機フィラーの平均粒子径が、50nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のクラッド形成用樹脂組成物。
【請求項4】
(C)無機フィラーの平均粒子径が、用いる波長の1/10以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のクラッド形成用樹脂組成物。
【請求項5】
(C)無機フィラーが、シリカフィラーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のクラッド形成用樹脂組成物。
【請求項6】
(C)無機フィラーが、有機溶媒にシリカを分散させたオルガノシリカゾル中のシリカであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のクラッド形成用樹脂組成物。
【請求項7】
前記有機溶媒が、アミド系溶媒及びケトン系溶媒の少なくとも1種を含有する請求項6に記載のクラッド形成用樹脂組成物。
【請求項8】
(B)光重合性化合物が、芳香族骨格を有しないことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のクラッド形成用樹脂組成物。
【請求項9】
(B)光重合性化合物が、下記化学式(1)〜(5)で表わされることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のクラッド形成用樹脂組成物。
【化1】

[式中、Z1及びZ2はそれぞれ独立に下記式(a−1)、(a−2)及び(a−3)のいずれかであり、R1は、−(CH2j−(jは2〜18の整数である。)又は下記式(b)である。]
【化2】

【化3】

[上記式(b)中、R2はそれぞれ独立に水素原子、メチル基又は下記式(c)であり、kは1〜10の範囲の平均値である。]
【化4】

[上記式(c)中、R3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基又は下記式(d)であり、m及びnはそれぞれ独立に1〜10の範囲の平均値である。]
【化5】

[上記式(d)中、R4はそれぞれ独立に水素原子、メチル基又は下記式(e)であり、m及びnはそれぞれ独立に1〜10の範囲の平均値である。]
【化6】

[上記式(e)中、R5はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R6は下記式(f−1)、(f−2)、(f−3)、(f−4)、(f−5)及び(f−6)のいずれかであり、m及びnはそれぞれ独立に1〜10の範囲の平均値である。]
【化7】

【化8】

【化9】

[式中、R7は−(CH2p−(pは1〜8の整数である。)である。]
【化10】

[式中、R8は−(CH2q−(qは1〜8の整数である。)である。]
【化11】

[式中、Z3は、下記式(g)、(h)及び(j)のいずれかであり、R9は下記式(f−1)、(f−2)、(f−3)、(f−4)、(f−5)及び(f−6)のいずれかであり、rは1〜10の範囲の平均値である。]
【化12】

【化13】

【請求項10】
(B)光重合性化合物が、脂環式エポキシ化合物であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のクラッド形成用樹脂組成物。
【請求項11】
(D)重合開始剤が、光重合開始剤を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のクラッド形成用樹脂組成物。
【請求項12】
(D)重合開始剤が、光重合開始剤と硬化促進剤との混合物であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のクラッド形成用樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のクラッド形成用樹脂組成物を硬化してなる厚み0.2mmの樹脂フィルムのヘイズ値(%)が10以下であることを特徴とするクラッド形成用樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のクラッド形成用樹脂組成物を用いた樹脂フィルム。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに記載のクラッド形成用樹脂組成物を上部クラッド及び/又は下部クラッドに用いてなる光導波路。
【請求項16】
請求項14に記載の樹脂フィルムを上部クラッド及び/又は下部クラッドに用いてなる光導波路。

【公開番号】特開2010−18717(P2010−18717A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180750(P2008−180750)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】