クランクシャフトの製造方法、その製造装置、およびクランクシャフト
【課題】簡単な構成で、保持型とケースの寿命が短くなるのを容易に且つ確実に防止することができるクランクシャフトの製造方法と、その製造方法を提供する。
【解決手段】素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分pを保持型の円形孔部35,36でそれぞれ保持して軸方向に加圧し、ウエブ部となる部分wを保持型の間で潰すように成形して所定の厚さのウエブ部Wを有するクランクシャフトを製造する場合において、素材のピン部となる部分pとジャーナル部となる部分少なくとも一方の断面形状を、対応する保持型の円形孔部35,36の底部(36a)に当接させ、且つ、その保持型31の円形孔部36の開口部(36b)との間に隙間を生じさせる形状に成形して、素材の軸方向への加圧を開始する。
【解決手段】素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分pを保持型の円形孔部35,36でそれぞれ保持して軸方向に加圧し、ウエブ部となる部分wを保持型の間で潰すように成形して所定の厚さのウエブ部Wを有するクランクシャフトを製造する場合において、素材のピン部となる部分pとジャーナル部となる部分少なくとも一方の断面形状を、対応する保持型の円形孔部35,36の底部(36a)に当接させ、且つ、その保持型31の円形孔部36の開口部(36b)との間に隙間を生じさせる形状に成形して、素材の軸方向への加圧を開始する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトの製造方法、その製造装置、およびクランクシャフトに関し、特に、素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための方法とその装置、および、そのクランクシャフト自体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クランクシャフトの製造に関する従来の技術として、例えば、特許文献1が知られている。特許文献1には、冷間鍛造用材料からなる丸棒を切断して所定長さのビレット材を形成し、該ビレット材を油圧ベンダで曲げ加工し、本願の図24にも示すように、各ジャーナル部となる部分j’と各ピン部となる部分p’とが軸直角方向へオフセットされたオフセット材料10’(本明細書でいう粗形材の一例にあたる)を形成し(曲げ工程と称されているが、本明細書でいう予備成形工程の一例にあたる)、次に、本願の図25にも示すように、該オフセット材料10’を軸方向に加圧して、本願の図26にも示すように、連接壁(本発明のウエブ部の一例にあたる)W’間のピッチが所定寸法に形成されたクランク本体100’を圧縮成形(据え込み工程と称されているが、本明細書でいう仕上成形工程の一例にあたる)することが開示されている。
【0003】
ここで、本願の図26に示すように、複数のピン部とウエブ部とを有するクランクシャフトを製造する場合には、予備成形工程で、図24に示すようにピン部およびウエブ部となる部分の曲げ加工を、製造するクランクシャフトに応じて順次行って、粗形材を成形する。
【0004】
一方、仕上成形工程を行う装置は、本願の図25に示したように、粗形材10’のジャーナル部となる部分j’とピン部となる部分p’をそれぞれ保持する保持型30’,31’と、これらを内部に摺動可能に収容して拘束するケース32’と、粗形材10’を軸方向に加圧する軸方向加圧手段とを備えている。粗形材10’のジャーナル部となる部分j’とピン部となる部分p’をそれぞれ保持する板状の保持型30’,31’は、ケース32’内で軸方向に移動するよう構成されている。そして、仕上成形工程では、粗形材10’のジャーナル部となる部分j’とピン部となる部分p’をそれぞれ保持型30’,31’に保持し、これをケース32’内に摺動可能に収容して拘束した状態で、軸方向加圧手段により軸方向に圧縮するよう加圧し、図26に示したように粗形材10’のウエブ部となる部分w’を潰すように所定の厚さに成形して、ウエブ部W’間のピッチを所定寸法に形成する。
【0005】
保持型30’,31’は、粗形材10’の保持と成形されたクランク本体100’の取り出しのために、一般に割型により構成されている。そして、クランク本体100’のジャーナル部J’とピン部P’の断面形状が高い真円度であることを要求されることから、ジャーナル部となる部分j’とピン部となる部分p’をそれぞれ保持する孔部は、割型からなる保持型30’,31’を型合わせした状態で、円形となるように成形されている。また、粗形材10’を保持した保持型30’,31’の配置と、成形されたクランクシャフト100’を保持した保持型30’,31’の取り出しとを容易にするため、ケース32’を開閉可能な半割状に構成されている。
【0006】
さらに、据え込み工程を行う際には、粗形材10’のジャーナル部となる部分j’とピン部となる部分p’との偏心量から、クランクシャフト100’のジャーナル部J’とピン部P’との偏心量が増大することから、本願の図5に参照されるように、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の少なくとも一方を、ケース32の内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライド41と、この軸方向スライド41に保持されてケース32の径方向に移動可能に摺動する径方向スライド42とを備えた構成とすることが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−9595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
仕上成形工程(据え込み工程)では、割型からなる保持型30’,31’の円形孔部で粗形材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分とを保持して軸方向に加圧し、ウエブ部となる部分w’を保持型30’,31’の間で潰すように所定の厚さに成形する際に、図27に矢印Fで示すように、ウエブ部となる部分w’の材料がジャーナル部やピン部となる部分j’、p’に流れ、図27に矢印Gで示すようにその径を拡大させるように作用し、その結果、図28の(b)に矢印Kで示すように、割型からなる保持型30’,31’の円形孔部を押し広げることとなる。そのため、図28の(c)に示すように保持型30’,31’の円形孔部の開口部が開く(径が拡がる)ように力が作用し、ジャーナル部Jとピン部Pの断面形状の真円度が低下するという問題が発生することとなる。また、ウエブ部となる部分w’の材料の流動によるジャーナル部やピン部となる部分j’、p’の径を拡大させるように力が作用することにより、保持型30’,31’およびケース32’が変形したり破損し、また特に、ジャーナル部保持型30’のケース32’に対する摩擦、および、ピン部保持型31’の径方向スライドの軸方向スライドに対する摩擦、或いはピン部保持型31’の軸方向スライドのケースに対する摩擦が増大することとなり、それぞれの互いの摺動面が摩耗して、保持型30’,31’およびケース32’の寿命が短くなり、さらに、ウエブ部の伸長する方向(ピン部のジャーナル部に対する偏心方向)の位相の成形精度が低下するなどの問題が発生することとなる。
なお、図28では、ピン部保持型31’を構成する軸方向スライド(開口を鎖線で示した)と、これに保持された径方向スライドとを示したが、ケース32’内に保持されたジャーナル部保持型30’についても同様の問題が発生することとなる。
【0009】
さらに、上記のように予備成形工程と仕上成形工程とを行う場合において、ウエブ部となる部分の材料が自由に流動するため、ウエブ部の肉引けが大きくなることから、かかるウエブ部の剛性を向上させることが困難であるという問題もあった。
【0010】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、ジャーナル部とピン部の断面形状を高い真円度で容易に且つ確実に成形することができ、また、仕上成形装置のジャーナル部とピン部となる部分を把持する保持型およびケースの寿命が短くなるのを容易に且つ確実に防止することができるクランクシャフトの製造方法と、その製造装置を提供することを目的とする。また、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、ウエブ部の剛性を容易に且つ確実に向上させることができる構造のクランクシャフトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための方法であって、前記素材のジャーナル部となる部分を、割型からなるジャーナル部保持型により形成される円形孔部で保持すると共に、ピン部となる部分を割型からなるピン部保持型により形成される円形孔部で保持し、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する場合において、前記素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方を、対応する前記割型の円形孔部の底部に当接させ、且つ、該割型の円形孔部の開口部との間に隙間を生じさせた状態として、前記素材の軸方向への加圧を開始することを特徴とする。
請求項2のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明において、素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施し、該予備成形された素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することを特徴とする。
請求項3のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項2に記載の発明において、前記予備成形で、前記素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方を、対応する前記割型の円形孔部の底部に当接させ、且つ、該割型の開口部との間に隙間を生じさせ得る断面形状に成形することを特徴とする。
請求項4のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項3に記載の発明において、前記予備成形で、前記素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方の断面形状を、長軸方向の端部が対応する前記割型の円形孔部の底部に当接し、短軸方向の端部が前記割型の開口部と対向することとなる楕円または長円に成形することを特徴とする。
請求項5のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項4に記載の発明において、前記予備成形で、前記素材のピン部となる部分をパンチで把持すると共に、該ピン部となる部分の両端に隣接するジャーナル部となる部分をダイで把持し、前記パンチを素材の軸直交方向に移動させると共に前記ダイを前記パンチに寄せるよう軸方向に加圧する場合において、前記パンチおよび/またはダイの、素材の断面を楕円または長円に成形する部分を把持する部分の形状を、前記パンチの移動方向と平行に短軸が位置し、且つ、該短軸と素材の軸方向とに直交する方向に長軸が位置するように成形しておくことを特徴とする。
請求項6のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型をケース内に軸方向へ摺動可能に配置して拘束し、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することを特徴とする。
請求項7のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項6に記載の発明において、少なくとも前記ピン部保持型を、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えた構成とし、前記軸方向スライドと径方向スライドとをそれぞれ割型により構成し、該割型からなる径方向スライドを互いに合わせることにより円形孔部を形成して前記素材のピン部となる部分を保持することを特徴とする。
請求項8のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための方法であって、製造するクランクシャフトが複数のピン部とウエブ部とを有しており、前記素材のピン部およびウエブ部となる部分毎に順次曲げ加工し、該素材のジャーナル部となる部分を割型からなるジャーナル部保持型により形成される円形孔部で保持すると共に、ピン部となる部分を割型からなるピン部保持型により形成される円形孔部で保持し、該素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する場合において、前記素材を曲げ加工するに際して、少なくとも最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、後の他のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときの位相の基準となる位相基準面を成形することを特徴とする。
請求項9のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項8に記載の発明において、前記素材を曲げ加工するに際して、素材のピン部となる部分をパンチで把持すると共に、該ピン部となる部分の両端に隣接するジャーナル部となる部分をダイで把持し、前記パンチを素材の軸直交方向に移動させると共に前記ダイを前記パンチに寄せるよう軸方向に加圧する場合に、前記パンチまたはダイの一方に前記位相基準面を形成する側面壁を設けておき、前記曲げ加工において、最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、ウエブ部となる部分が前記側面壁に接することにより前記位相基準面を形成することを特徴とする。
請求項10のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項9に記載の発明において、前記側面壁は、前記パンチの移動方向と平行に延びる平面により形成されており、前記素材のウエブ部となる部分の側面の流動を規制するものであることを特徴とする。
請求項11のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための方法であって、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施し、該予備成形された素材のジャーナル部となる部分を、割型からなるジャーナル部保持型により形成される円形孔部で保持すると共に、ピン部となる部分を割型からなるピン部保持型により形成される円形孔部で保持し、該素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する場合において、前記予備成形時に素材のウエブ部となる部分の側面の流動を規制することにより、該素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形するときにウエブ部のジャーナル側およびピン部側の端部の肉を張り出させることを特徴とする。
請求項12のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための方法であって、前記素材のジャーナル部となる部分を、割型からなるジャーナル部保持型により形成される円形孔部で保持すると共に、ピン部となる部分を割型からなるピン部保持型により形成される円形孔部で保持し、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する場合において、前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方を、ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束することを特徴とする。
請求項13のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項12に記載の発明において、前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方を、さらに、前記ケース内で周方向に弾性的に回動可能に拘束することを特徴とする。
請求項14のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項12または13のいずれかに記載の発明において、前記ピン部保持型を、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとにより構成し、前記ケースを開閉可能な半割状に構成するとともに、該半割状のケースに前記割型からなるジャーナル部保持型とピン部保持型の軸方向スライドとを保持する保持キーを前記半割状のケースにそれぞれ設け、前記保持キーにより、前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方を、前記ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に、または、前記ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に且つ所定の周方向位置に弾性復帰可能に付勢することを特徴とする。
請求項15のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項12〜14のいずれか1項に記載の発明において、素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施し、該予備成形された素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することを特徴とする。
請求項16のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための装置であって、割型からなり前記素材のジャーナル部となる部分を保持する円形孔部を形成するジャーナル部保持型と、割型からなり前記素材のピン部となる部分を保持する円形孔部を形成するピン部保持型と、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する軸方向加圧手段とを有しており、さらに、前記素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方を、前記ジャーナル部保持型および/またはピン部保持型に保持したときに、対応する前記割型の円形孔部の底部に当接し、且つ、該割型の開口部との間に隙間が生じる断面形状に成形する成形手段を備えていることを特徴とする。
請求項17のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項16に記載の発明において、素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形装置を備えていることをと特徴とする。
請求項18のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項17に記載の発明において、前記予備成形装置は、前記成形手段を含むことを特徴とする。
請求項19のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項18に記載の発明において、前記予備成形装置の成形手段は、素材の前記ジャーナル部保持型および/またはピン部保持型に保持されるジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方の断面形状を、長軸方向の端部が対応する前記割型の円形孔部の底部に当接し、短軸方向の端部が前記割型の開口部と対向することとなる楕円または長円に成形するものであることを特徴とする。
請求項20のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項19に記載の発明において、前記予備成形装置は、前記素材のピン部となる部分を把持するパンチと、該ピン部となる部分の両端に隣接するジャーナル部となる部分を把持するダイと、前記パンチを素材の軸直交方向に移動させる軸直交方向加圧手段と、前記ダイを前記パンチに寄せるよう軸方向に加圧する軸方向加圧手段とを備えており、前記予備成形装置の成形手段は、素材の断面を楕円または長円に成形する部分が把持される成形手段の形状を、前記パンチの移動方向と平行に短軸が位置し、且つ、該短軸と素材の軸方向とに直交する方向に長軸が位置するように、前記パンチまたはダイに形成されていることを特徴とする。
請求項21のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項16〜20のいずれか1項に記載の発明において、前記素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型を軸方向に摺動可能に収容して拘束するケースをさらに備えていることを特徴とする。
請求項22のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項15〜18のいずれか1項に記載の発明において、少なくとも前記ピン部保持型は、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えており、前記軸方向スライドと径方向スライドは、それぞれ、割型により構成されており、該割型からなる径方向スライドを互いに合わせることにより前記素材のピン部となる部分を保持する円形孔部を形成するものであることを特徴とする。
請求項23のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項に記載の発明において、素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための装置であって、製造するクランクシャフトが複数のピン部とウエブ部とを有しており、前記素材のピン部およびウエブ部となる部分毎に、素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、順次曲げ加工し、前記素材の各ピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形装置を有する場合に、該予備成形装置は、少なくとも最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、後の他のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときの位相の基準となる位相基準面を形成するための側面壁を備えていることを特徴とする。
請求項24のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項23に記載の発明において、前記予備成形装置は、前記素材のピン部となる部分を把持するパンチと、該ピン部となる部分の両端に隣接するジャーナル部となる部分を把持するダイと、前記パンチを素材の軸直交方向に移動させる軸直交方向加圧手段と、前記ダイを前記パンチに寄せるよう軸方向に加圧する軸方向加圧手段とを備え、最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工する前記パンチまたはダイの一方に、ウエブ部となる部分が接することにより前記位相基準面を形成する側面壁が設けられていることを特徴とする。
請求項25のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項24に記載の発明において、前記側面壁は、前記パンチの移動方向と平行に延びる平面により形成されており、前記粗形材のウエブ部となる部分の側面の流動を規制するものであることを特徴とする。
請求項26のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための装置であって、製造するクランクシャフトが複数のピン部とウエブ部とを有しており、割型からなり前記素材のジャーナル部となる部分を保持する円形孔部を形成するジャーナル部保持型と、割型からなり前記素材のピン部となる部分を保持する円形孔部を形成するピン部保持型と、前記素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型が軸方向へ摺動可能に配置され拘束するケースと、ケース内で前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さのウエブ部を成形する軸方向加圧手段とを有する場合において、前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方が、前記ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束されていることを特徴とする。
請求項27のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項26に記載の発明において、前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方が、さらに、前記ケース内で周方向に弾性的に回動可能に拘束されていることを特徴とする。
請求項28のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項26または27に記載の発明において、少なくとも前記ピン部保持型は、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとにより構成されており、前記ケースは、開閉可能な半割状に構成されるとともに、該半割状のケースに前記割型からなるジャーナル部保持型とピン部保持型の軸方向スライドとを保持する保持キーが前記半割状のケースにそれぞれ設けられており、前記保持キーにより、前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方が、前記ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束され、または、前記ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束され且つ前記ケース内で所定の周方向位置に弾性復帰可能に付勢されていることを特徴とする。
請求項29のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項26〜28のいずれか1項に記載の発明において、素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施す予備成形装置をさらに備えていることを特徴とする。
請求項30のクランクシャフトに係る発明は、上記目的を達成するため、素材を偏心据え込みすることにより、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とが成形されたクランクシャフトであって、素材を曲げ加工し、軸方向に加圧してそのウエブ部となる部分が所定の厚さに成形されてなるものである場合において、前記素材を曲げ加工するときにそのウエブ部となる部分の側面が材料の流動を規制されて平面状に成形され、軸方向に加圧することにより、ウエブ部のジャーナル側およびピン部側の端部の肉が張り出していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1のクランクシャフトの製造方法に係る発明によれば、素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方を、対応する割型の円形孔部の底部に当接させ、且つ、この割型の円形孔部の開口部との間に隙間を生じさせた状態として、素材の軸方向への加圧を開始する。素材のウエブ部となる部分を潰すようにして所定の厚さに成形するときに、材料がジャーナル部とピン部に流動するが、割型の円形孔部は、その底部が素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方に押圧されているために、開口部が閉じる方向に変形しようとする力が作用するとともに、粗形材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の材料が開口部との間の隙間を埋めるように流動することとなり、開口部が閉じる方向に変形しようとする力が相殺される。そのため、割型からなる保持型の変形が防止され、円形孔部の形状が維持されることから、ジャーナル部とピン部との少なくとも一方の断面形状を高い真円度で成形することができ、また、割型からなる保持型の摩耗が低減されることから、保持型の寿命を延ばすことができる。
なお、素材を軸方向に加圧するのに先立って、予め、素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施しておくことにより、素材を軸方向に加圧するときに必要な力を低減させることができる。さらに、この予備成形を行うときに、素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方を、対応する前記割型の円形孔部の底部に当接させ、且つ、該割型の開口部との間に隙間を生じさせ得る断面形状に成形することにより、少ない工程数で容易にクランクシャフトを製造することができる。そして予備成形で、素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方の断面形状を、長軸方向の端部が対応する前記割型の円形孔部の底部に当接し、短軸方向の端部が前記割型の開口部と対向することとなる楕円または長円に成形することにより、対応する前記割型の円形孔部の底部に当接させ、且つ、該割型の開口部との間に隙間を生じさせ得る断面形状に成形することを具現化することができる。この予備成形において、パンチおよび/またはダイの、素材の断面を楕円または長円に成形する部分を把持する部分の形状を、前記パンチの移動方向と平行に短軸が位置し、且つ、該短軸と素材の軸方向とに直交する方向に長軸が位置するように成形しておくことにより、予備成形で、素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方の断面形状を、長軸方向の端部が対応する前記割型の円形孔部の底部に当接し、短軸方向の端部が前記割型の開口部と対向することとなる楕円または長円に成形することを具現化することができる。
また、素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型をケース内に軸方向へ摺動可能に配置して拘束し、素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することにより、素材の軸方向への加圧により素材のウエブ部となる部分を確実に保持型の間で潰して所定の厚さに成形することができる。さらに、少なくともピン部保持型を、ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、この軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えた構成として、軸方向スライドと径方向スライドとをそれぞれ割型により構成し、この割型からなる径方向スライドを互いに合わせることにより円形孔部を形成して素材のピン部となる部分を保持することにより、素材を軸方向に加圧することにより、ジャーナル部に対するピン部の偏心量の変化に対応することができる。
請求項8のクランクシャフトの製造方法に係る発明によれば、素材を曲げ加工するに際して、少なくとも最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、後の他のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときの位相の基準となる位相基準面を成形することにより、複数のピン部を有するクランクシャフトを製造するに際して、予備成形工程で最初のピン部となる部分およびこのピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに形成された位相基準面を基準として、正確な位相で後の他のピン部となる部分およびこのピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工することができる。そのため、素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を所定の厚さに成形するときに保持型に無理な力が加わり変形されるのを防止することができるため、したがって、保持型の摩耗が低減されることから、保持型の寿命を延ばすことができる。
なお、素材を曲げ加工するに際して、素材のピン部となる部分をパンチで把持すると共に、該ピン部となる部分の両端に隣接するジャーナル部となる部分をダイで把持し、パンチを素材の軸直交方向に移動させると共にダイをパンチに寄せるよう軸方向に加圧する場合に、パンチまたはダイの一方に位相基準面を形成するための側面壁を予め設けておくことにより、曲げ加工で、最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、ウエブ部となる部分が前記側面壁に接することにより位相基準面を確実且つ容易に形成することができる。さらに、側面壁は、パンチの移動方向と平行に延びる(ジャーナル部に対するピン部の偏心方向および素材の軸方向に延びる、ともいえる)平面により形成されており、素材のウエブ部となる部分の側面の流動を規制するものであることにより、位相基準面を確実且つ容易に形成することが具現化できるとともに、ウエブ部の材料が側方に流動して設定された厚さとならない、或いは、設定された形状に成形されないなどの事態を回避でき、したがって設定された剛性を有するウエブ部を成形することができる。
請求項11のクランクシャフトの製造方法に係る発明発明によれば、予備成形時に素材のウエブ部となる部分の側面の流動を規制することにより、この素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分をジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形するときにウエブ部のジャーナル側およびピン部側の端部の肉を張り出させるため、ウエブ部の剛性を容易に且つ確実に向上させることができる。
請求項12のクランクシャフトの製造方法に係る発明によれば、ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方を、ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束することにより、ジャーナル部に対する各ピン部の偏心方向の位相が正確でない場合であっても、素材を軸法王に加圧するときに、保持型に無理な力が加わり変形されるのを防止することができるため、したがって、保持型の摩耗が低減されることから、保持型の寿命を延ばすことができる。
なお、さらに、ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方の、ケース内で周方向に弾性的に回動可能に拘束することにより、ジャーナル部に対する各ピン部の偏心方向の位相が正確でない場合であっても、素材を軸法王に加圧するときに、保持型に無理な力が加わり変形されるのをさらに確実に防止することができる。また、ピン部保持型を、ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとにより構成し、ケースを開閉可能な半割状に構成するとともに、この半割状のケースに割型からなるジャーナル部保持型とピン部保持型の軸方向スライドとを保持する保持キーを前記半割状のケースにそれぞれ設け、保持キーにより、ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方を、ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に、または、ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に且つ所定の周方向位置に弾性復帰可能に付勢することにより、ジャーナル部に対する各ピン部の偏心方向の位相が正確でない場合であっても、素材を軸法王に加圧するときに、保持型に無理な力が加わり変形されるのをさらに確実に防止することができる。さらにまた、素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施しておくことにより、素材を軸方向に加圧するときに必要な力を低減させることができる。
請求項16のクランクシャフトの製造装置に係る発明によれば、割型からなり前記素材のジャーナル部となる部分を保持する円形孔部を形成するジャーナル部保持型と、割型からなり前記素材のピン部となる部分を保持する円形孔部を形成するピン部保持型と、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する軸方向加圧手段とを有しており、さらに、前記素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方を、前記ジャーナル部保持型および/またはピン部保持型に保持したときに、対応する前記割型の円形孔部の底部に当接し、且つ、該割型の開口部との間に隙間が生じる断面形状に成形する成形手段を備えていることにより、素材の軸方向への加圧に先立って、成形手段によって、素材のピン部とジャーナル部となる部分の少なくとも一方の断面形状が、対応する割型の円形孔部の底部に当接し、且つ、割型の開口部との間に隙間が生じるように成形されている。そして、素材を保持型に保持して軸方向への加圧を開始してウエブ部となる部分を潰すようにして所定の厚さに成形するときに、材料がジャーナル部とピン部に流動する。このとき、割型の円形孔部は、その底部が素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方に押圧されているために、開口部が閉じる方向に変形しようとする力が作用するとともに、粗形材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の材料が開口部との間の隙間を埋めるように流動することとなり、開口部が閉じる方向に変形しようとする力が相殺される。そのため、割型からなる保持型の変形が防止され、円形孔部の形状が維持されることから、ジャーナル部とピン部との少なくとも一方の断面形状を高い真円度で成形することができ、また、割型からなる保持型の摩耗が低減されることから、保持型の寿命を延ばすことができる。
なお、素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形装置を備えていることにより、素材を軸方向に加圧するのに先立って、予め、予備成形装置によって素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施しておくことができ、したがって、素材を軸方向に加圧するときに必要な力を低減させることができる。さらに、この予備成形装置によって素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方を、対応する前記割型の円形孔部の底部に当接させ、且つ、該割型の開口部との間に隙間を生じさせ得る断面形状に成形することにより、少ない工程数で容易にクランクシャフトを製造することができる。予備成形装置の成形手段が、素材の前記ジャーナル部保持型および/またはピン部保持型に保持されるジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方の断面形状を、長軸方向の端部が対応する前記割型の円形孔部の底部に当接し、短軸方向の端部が前記割型の開口部と対向することとなる楕円または長円に成形するものとすることにより、対応する前記割型の円形孔部の底部に当接させ、且つ、該割型の開口部との間に隙間を生じさせ得る断面形状に成形することを具現化することができる。予備成形装置が、素材のピン部となる部分を把持するパンチと、このピン部となる部分の両端に隣接するジャーナル部となる部分を把持するダイと、前記パンチを素材の軸直交方向に移動させる軸直交方向加圧手段と、前記ダイを前記パンチに寄せるよう軸方向に加圧する軸方向加圧手段とを備えており、成形手段が、素材の断面を楕円または長円に成形する部分が把持される成形手段の形状を、前記パンチの移動方向と平行に短軸が位置し、且つ、該短軸と素材の軸方向とに直交する方向に長軸が位置するように、前記パンチまたはダイに形成されていることにより、予備成形で、素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方の断面形状を、長軸方向の端部が対応する前記割型の円形孔部の底部に当接し、短軸方向の端部が前記割型の開口部と対向することとなる楕円または長円に成形することを具現化することができる。
また、素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型を軸方向に摺動可能に収容して拘束するケースをさらに備えていることにより、素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型をケース内に軸方向へ摺動可能に配置して拘束し、素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することができ、したがって、素材の軸方向への加圧により素材のウエブ部となる部分を確実に保持型の間で潰して所定の厚さに成形することができる。さらに、少なくともピン部保持型は、ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、この軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えており、前記軸方向スライドと径方向スライドは、それぞれ、割型により構成されており、この割型からなる径方向スライドを互いに合わせることにより素材のピン部となる部分を保持する円形孔部を形成するものであることとすることにより、素材を軸方向に加圧するときに、ジャーナル部に対するピン部の偏心量の変化に対応することができる。
請求項23のクランクシャフトの製造装置に係る発明によれば、予備成形装置が、少なくとも最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、後の他のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときの位相の基準となる位相基準面を形成するための側面壁を備えていることにより、素材を曲げ加工するに際して、少なくとも最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、後の他のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときの位相の基準となる位相基準面が成形される。そのため、複数のピン部を有するクランクシャフトを製造するに際して、予備成形工程で最初のピン部となる部分およびこのピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに形成された位相基準面を基準として、正確な位相で後の他のピン部となる部分およびこのピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工することができることから、素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を所定の厚さに成形するときに保持型に無理な力が加わり変形されるのを防止することができ、したがって、保持型の摩耗が低減されることから、保持型の寿命を延ばすことができる。
なお、予備成形装置が、素材のピン部となる部分を把持するパンチと、このピン部となる部分の両端に隣接するジャーナル部となる部分を把持するダイと、パンチを素材の軸直交方向に移動させる軸直交方向加圧手段と、ダイを前記パンチに寄せるよう軸方向に加圧する軸方向加圧手段とを備え、最初のピン部となる部分およびこのピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するパンチまたはダイの一方に、ウエブ部となる部分が接することにより位相基準面を形成する側面壁が設けられていることにより、曲げ加工で、最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、ウエブ部となる部分が前記側面壁に接することにより位相基準面を確実且つ容易に形成することができる。さらに、側面壁は、パンチの移動方向と平行に延びる(ジャーナル部に対するピン部の偏心方向および素材の軸方向に延びる、ともいえる)平面により形成されており、素材のウエブ部となる部分の側面の流動を規制するものであることにより、位相基準面を確実且つ容易に形成することが具現化できるとともに、ウエブ部の材料が側方に流動して設定された厚さとならない、或いは、設定された形状に成形されないなどの事態を回避でき、したがって設定された剛性を有するウエブ部を成形することができる。
請求項26のクランクシャフトの製造装置に係る発明によれば、複数のピン部とウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するに際して、素材のジャーナル部となる部分を割型からなるジャーナル部保持型の円形孔部に保持するとともに、ピン部となる部分を割型からなるピン部保持型の円形孔部に保持してケース内に収容し拘束した状態で、軸方向加圧手段により素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さのウエブ部を成形する。このとき、ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方が、ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束されていることにより、ジャーナル部に対する各ピン部の偏心方向の位相が正確でない場合であっても、素材を軸法王に加圧するときに、保持型に無理な力が加わり変形されるのを防止することができるため、したがって、保持型の摩耗が低減されることから、保持型の寿命を延ばすことができる。
なお、ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方が、さらに、前記ケース内で周方向に弾性的に回動可能に拘束されていることにより、ジャーナル部に対する各ピン部の偏心方向の位相が正確でない場合であっても、素材を軸法王に加圧するときに、保持型に無理な力が加わり変形されるのをさらに確実に防止することができる。また、少なくともピン部保持型が、ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとにより構成されており、ケースは、開閉可能な半割状に構成されるとともに、この半割状のケースに割型からなるジャーナル部保持型とピン部保持型の軸方向スライドとを保持する保持キーが半割状のケースにそれぞれ設けられており、保持キーにより、ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方が、ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束され、または、ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束され且つケース内で所定の周方向位置に弾性復帰可能に付勢されていることにより、ジャーナル部に対する各ピン部の偏心方向の位相が正確でない場合であっても、素材を軸法王に加圧するときに、保持型に無理な力が加わり変形されるのをさらに確実に防止することができる。さらにまた、素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施す予備成形装置をさらに備えていることにより、素材を軸方向に加圧するときに必要な力を低減させることができる。
請求項30のクランクシャフトに係る発明によれば、素材を曲げ加工するときにそのウエブ部となる部分の側面が材料の流動を規制されて平面状に成形され、軸方向に加圧してウエブ部を所定の厚さに成形することにより、ウエブ部のジャーナル側およびピン部側の端部の肉が張り出しているため、ウエブ部の剛性を容易に且つ確実に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明により成形される粗形材の実施の一形態を示した正面図である。
【図2】本発明により成形されるクランクシャフトの実施の一形態を示した正面図である。
【図3】本発明の実施の一形態における予備成形装置の全体を説明するために示した概略図である。
【図4】図3の部分拡大断面図である。
【図5】本発明の実施の一形態における仕上成形装置の全体を説明するために示した概略図である。
【図6】本発明における予備成形装置のパンチとダイのいずれか一方の成形手段の、実施の一形態を部分的に示した説明図である。
【図7】本発明における予備成形装置のパンチとダイのいずれか一方の成形手段の、図6とは異なる実施の一形態を部分的に示した説明図である。
【図8】図7に示したように構成された予備成形装置のパンチにより粗形材のピン部となる部分を、仕上成形装置の割型からなるピン部保持型の円形孔部の底部に長軸方向の端部が当接するとともに、ピン部保持型の開口部と短軸方向の端部が隙間を生じて対向することとなる楕円または長円に成形する状態を示した説明図である。
【図9】本発明により仕上成形工程を開始するときの状態を説明するために示した断面である。
【図10】図9の状態から、仕上成形工程の途中の状態を説明するために示した断面である。
【図11】図10の状態から、仕上成形工程を完了したときの状態を説明するために示した断面である。
【図12】本発明の位相基準面を予備成形装置のダイに形成した場合の実施の一形態を説明するために示した断面図である。
【図13】図12に示したダイにより粗形材のウエブ部となる部分に位相基準面を形成する状態を示した説明図である。
【図14】位相基準面が形成された粗形材を部分的に示した説明図である。
【図15】予備成形工程で、最初のピン部となる部分とこれに連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに形成された位相基準面に基づいて、次の他のピン部となる部分とこれに連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときの、ジャーナル部となる部分の軸回りの位相を位置決めされる状態を説明するために示した部分断面図である。
【図16】図15に示した粗形材を仕上成形することにより成形された本発明のクランクシャフトのウエブ部の形状を説明するために部分的に示した正面図とその断面図である。
【図17】図16に示したクランクシャフトと比較するために、図15に示したように平面状の位相基準面が形成されていない粗形材を仕上成形することにより成形されたクランクシャフトのウエブ部の形状を説明するために部分的に示した正面図とその断面図である。
【図18】本発明の仕上成形装置の実施の一形態を説明するために示した仕上成形工程を開始する前の状態の断面図である。
【図19】図18の状態から、仕上成形工程を完了した状態の断面図である。
【図20】図19の断面図である。
【図21】半割状のケースと割型からなるピン部保持型を開いて成形されたクランクシャフトを取り出す状態を説明するために示した図19の分解図である。
【図22】ピン部保持型をケース内で回動可能に構成した場合の実施の形態を説明するために示した断面図である。
【図23】ピン部保持型をケース内で回動可能に且つケース内で所定の周方向位置に弾性的に回動可能に拘束された構成とした場合を説明するために示した断面図である。
【図24】従来の技術により予備成形された粗形材を説明するために示した部分拡大図である。
【図25】従来の技術において、粗形材を軸方向に加圧して圧縮成形する仕上成形工程を説明するために示した断面図である。
【図26】従来の技術により、ウエブ部間のピッチが所定寸法に形成されたクランクシャフトを説明するために示した部分拡大図である。
【図27】従来の技術における予備成形工程で、粗形材を軸方向に加圧して圧縮成形する時の材料の流動を説明するために示した部分拡大断面図である。
【図28】割型からなる保持型が、仕上成形工程中に材料が流動してピン部が拡径することによる力を受けて変形する様子を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
最初に、本発明のクランクシャフトの製造装置の実施の一形態を図に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態においては、直列4気筒の内燃機関に使用されるクランクシャフト100を製造する場合により説明するが、本発明はこの実施の形態に限定されることはなく、直列4気筒以外の他の形態の内燃機関、さらには、内燃機関以外の装置などに用いられるクランクシャフトと、その製造装置および製造方法にも適用することができる。
【0015】
本発明のクランクシャフトの製造装置は、概略、素材1,10を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部Jと、このジャーナル部Jから偏心する断面円形のピン部Pと、ジャーナル部Jとピン部Pとの間に延びるウエブ部Wとを有するクランクシャフト100を製造するための装置であって、割型からなり素材1,10のジャーナル部となる部分jを保持するための円形孔部35を形成するジャーナル部保持型30と、割型からなり素材1,10のピン部となる部分pを保持するための円形孔部36を形成するピン部保持型31と、素材1,10を軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さに成形する軸方向加圧手段33とを有しており、さらに、素材1,10のジャーナル部となる部分jをジャーナル部保持型30に保持するとともに、ピン部となる部分pをピン部保持型31に保持したときに、ジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pの少なくとも一方を、対応する割型の円形孔部35と36の一方または双方の底部35aと36aの一方または双方に当接し、且つ、割型の開口部35bと36bの一方または双方にとの間に隙間が生じるような断面形状に成形するための成形手段27を備えている。
【0016】
この実施の形態におけるクランクシャフトの製造装置は、大きく分けて、棒状のまた線状(本発明では、これらを総じて棒状という)の素材1を曲げ加工してウエブ部となる部分wを所定の厚さでピン部となる部分pとジャーナル部となる部分jとに対して曲げ成形して、ピン部となる部分pをジャーナル部となる部分jに対して所定量偏位させる予備成形装置2と、この予備成形された素材(この実施の形態では、このように予備成形された素材を粗形材10と称することとする。)をその軸方向に加圧してそのウエブ部となる部分wを潰すようにして所定の厚さにウエブ部Wを成形する仕上成形装置3とを含んでいる。
【0017】
図1〜図5は、棒状の素材1を予備成形してなる粗形材10と、この粗形材10から製造されるクランクシャフト100の実施の一形態と、このようなクランクシャフト100を製造するための装置2,3の基本的な構成の実施の一形態を示したものである。なお、以下の記載と図面において、特に複数のピン部Pを有することに限定されないクランクシャフト100について説明する場合には、ジャーナル部J、ピン部P、ウエブ部Wと、また、その粗形材10について説明する場合には、ジャーナル部となる部分j、ピン部となる部分p、ウエブ部となる部分wと記載することとし、一方、特に複数のピン部Pを有するクランクシャフト100について説明する場合には、各部のジャーナル部J、ピン部P、ウエブ部Wとを、また、その粗形材10について説明する場合には、各部のジャーナル部となる部分j、ピン部となる部分p、ウエブ部となる部分wとを、それぞれ特定するために、それぞれのアルファベット符号の後に続けて番号を付して記載することとする。また、本発明のクランクシャフトの製造装置における各部材の形状を容易に特定するために、図において部材の端面など断面でない部分にもハッチングを描いている場合があることに注意されたい。図において、同一符号は同様の部分または相当する部分に付すものとする。
【0018】
図1は、棒状の金属素材1を曲げ加工して(予備成形工程)成形された粗形材10の実施の一形態を示したものであり、図2は、図1に示した粗形材10を軸方向に加圧して(仕上成形工程)成形されたクランクシャフト100を示したものである。クランクシャフト100は、回転中心軸となるジャーナル部Jと、このジャーナル部Jから偏心するピン部Pと、ジャーナル部Jとピン部Pとの間に延びるウエブ部Wとを有しており、ジャーナル部Jとピン部Pの断面が円形に形成される。図2に示した実施の形態におけるクランクシャフト100は、ピン部P2とP3が同じ方向に偏心しており、また、ピン部P1とP4が同じ方向に偏心している。なお、成形されたクランクシャフト100は、所定のウエブ部Wにカウンタウエイトを設け、ジャーナル部Jとピン部Pを研削し、また、油孔を形成するなど、必要に応じて別の工程をさらに行うこともできる。
【0019】
予備成形装置2は、素材1のピン部となる部分pを軸直交方向に加圧するとともに、ピン部となる部分pとこれに隣接するジャーナル部となる部分jとの軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、素材1のピン部となる部分pをジャーナル部となる部分jに対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分wを所定の厚さでピン部となる部分pとジャーナル部となる部分jとに対して曲げるものであり、この実施の形態では、素材1のピン部となる部分pを拘束し把持するパンチ20と、素材1のパンチ20に把持されたピン部となる部分pに隣接するジャーナル部となる部分jを拘束し把持するダイ21,21と、パンチ20をダイ21に対して相対的に素材の軸直交方向に偏位させるよう駆動する軸直交方向駆動手段(後述する)と、ダイ21をパンチ20に対して近付けるように素材1の軸方向に駆動する軸方向駆動主段26とを備えており、予備成形装置2に成形手段27が含まれている。成形手段27は、素材1のジャーナル部保持型30とピン部保持型31に保持されるジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pの少なくとも一方の断面形状を、長軸方向の端部が対応する割型の円形孔部35と36の一方または双方の底部35aと36aの一方または双方に当接し、短軸方向の端部が割型の開口部35bと36bの一方または双方にとの間に隙間が生じる断面形状に成形するものである。
【0020】
予備成形装置2のパンチ20は、素材1を軸直交方向に加圧する本体20aと、この本体20aの下方に設けられて素材1のピン部となる部分pを把持するパンチ押え20bとを有している。本体20aとパンチ押え20bにより形成される素材1のピン部となる部分pと接して把持する部分は、粗形材10のピン部となる部分pを所定の断面形状(後述する)に成形するための成形手段27を構成する。パンチ押え20bは、本体20aに対して開閉または着脱可能に取り外すことができる。素材1は、本体20aに対してパンチ押え20bを開いた状態または取り外した状態で配置され、その後本体20aに対してパンチ押え20bを閉じまたは取り付けてクランプなどによってその状態を保持することにより、そのピン部となる部分pが把持される。パンチ20は、上盤23に取り付けられる。上盤23は、軸直交方向駆動手段として例えば素材1の軸直交方向に伸長退縮駆動するプレスのラムに接続されている。本体20aは、上盤23を下降させることによって把持した素材1のピン部となる部分pを軸直交方向(図3および図4の上下方向)に加圧する(矢印R)。
【0021】
予備成形装置2のダイ21は、パンチ20と同様に、パンチ20との間でウエブ部となる部分wを潰すように成形する本体21aと、この本体21aの上方に設けられて素材1のジャーナル部jとなる部分を把持するダイ押え21bとを有しており、ダイ押え21bは、本体21aに対して開閉または着脱可能に取り外すことができる。そして、ダイ21は、素材1の軸方向(図3および図4の左右方向)に移動可能に設けられている。本体21aとダイ押え21bにより形成される素材1のジャーナル部となる部分jを把持する部分は、粗形材のジャーナル部となる部分jを所定の断面形状(後述する)に成形するための成形手段27を構成する。
【0022】
軸方向駆動手段26は、例えば図3に参照されるように、上盤23の下降によって互いに寄せるように移動するカム機構により構成することができる(以下、カム機構26とする)。軸方向駆動手段を構成するカム機構26は、駆動カム26aと、従動カム26bによって構成されている。なお、図3に示した実施の形態におけるカム機構26は、一対のダイ21,21をそれぞれ軸方向に移動させる両カム機構26のカム面が同じ角度に設定されており、上盤23の下降によって両ダイ21,21を同様に寄せるように軸方向に移動させるものとなっている。駆動カム26aと従動カム26bは、パンチ20とダイ21によって把持された素材1と干渉することがないように、素材1の側部(図3においては、紙面に対して手前と奥)に位置し、両カム26a、26bのカム面が対向するように配設される。駆動カム26aは、軸方向に対して移動することがないように上盤23の下面に設けられており、従動カム26bは、軸方向に移動可能に設けられてダイ21と連結されている。上盤23の下降に伴って駆動カム26aが押し下げられると、従動カム26bによって一対のダイ21,21が互いに寄るように軸方向に移動する。この実施の形態におけるカム機構26は、駆動カム26aが下降しておらず従動カム26bが互いに寄るように軸方向に移動していない(すなわち、素材1の予備成形が開始されていない)状態で、駆動カム26aと従動カム26bのカム面が互いに接するよう設定されている。従って、この実施の形態では、上盤23の下降による素材の軸直交方向の加圧とカム機構26による素材の軸方向の加圧とが同時に開始される構造となっている。なお、軸方向駆動手段26は、カム機構に限定されることはなく、軸方向に伸長・退縮する油圧シリンダなど、他のアクチュエータにより構成することもできる。
【0023】
この実施の形態における仕上成形装置3は、図5に示すように、割型からなり粗形材10のジャーナル部となる部分jを保持するための円形孔部35を形成するジャーナル部保持型30と、割型からなり粗形材10のピン部となる部分pを保持するための円形孔部36を形成するピン部保持型31と、保持型30,31をケース32内で軸方向に移動させて粗形材10のウエブ部となる部分wを型板30,31の間で潰して所定の厚さのウエブWを成形するよう軸方向に圧力を加える軸方向加圧手段33とを備えており、さらに、保持型30,31を径方向(軸直交方向)に拘束した状態で軸方向に移動可能に保持するケース32も備えている。
【0024】
仕上成形装置3の保持型30,31は、それぞれジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pとを保持し、また取外すことができるように開閉または着脱可能に取り外すことができるよう分割してなる割型(後述する)により構成されている。各保持型30,31の外縁は、ケース32の内周面と対応した形状および大きさに成形されており、この実施の形態ではほぼ円形に成形されている。そして、各保持型30,31は、この実施の形態の場合、円形孔部35,36(ジャーナル部Jおよびピン部Pの断面)の中心を通り、ジャーナル部Jに対するピン部Pの偏心方向に沿った分割線で2つに分割された割型からなることから、各割型はほぼ全体の形状がそれぞれ半円形に成形されており、互いの割型を合わせることにより、それぞれジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pとを保持するための円形の孔部35,36が形成される。仕上成形工程を行う際に端部に位置するジャーナル部となる部分jを保持するジャーナル部保持型30は、そのジャーナル部となる部分jから少なくとも粗形材10の端部までの長さ以上に軸方向に延びる被加圧部30aを有している。
【0025】
さらに、この実施の形態におけるピン部保持型31は、ケース32の内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライド41と、この軸方向スライド41に保持されてケース32の径方向に移動可能に摺動する径方向スライド42とにより構成されており、軸方向スライド41と径方向スライド42がそれぞれ分割した構成41Aと41B、42Aと42Bとなっている。ピン部保持型31の軸方向スライド41は、少なくとも成形するクランクシャフト100のピン部Pの軸方向長さとこのピン部Pの両端を支持する両ウエブ部W,Wを成形する厚さとを加えた厚さ以下の厚さを有する板状に成形されたもので、その外周形状がケース32の内部の断面形状と相似形で、ケース32の内部で軸方向に摺動できるようケース32の内面よりも僅かに小さく成形されている。そして、ピン部保持型31の軸方向スライド41は、成形するクランクシャフト100のウエブ部Wの形状や大きさ(幅と長さ)などに応じて径方向に延在する開口43が厚さ方向に貫通するよう形成されており、この開口43の長手方向に沿って中央で分割された一対の部材41A,41Bにより構成されている。さらに、開口43の長手方向側壁には、径方向スライド42の側縁を摺動可能に保持するための溝44がそれぞれ形成されている。
【0026】
次に、本発明のクランクシャフトの製造装置のさらなる詳細を、図6〜図11に基づいて説明する。なお、本発明の実施の一形態には、上述したクランクシャフトの製造装置の基本的な構成が含まれており、同じ部分または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0027】
本発明のクランクシャフトの製造装置は、予備成形装置2のパンチ20とダイ21の少なくとも一方が、粗形材10のジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pの少なくとも一方を、仕上成形装置3の対応する保持型30および/または保持型31を構成する割型の、円形孔部35および/または36の底部に粗形材10の当接させ、且つ、この円形孔部35および/または36の開口部との間に隙間が生じるような断面形状に成形するための成形手段27を有している。そして、この成形手段27は、パンチ20の移動方向と平行に短軸D1が位置し、且つ、この短軸D1と素材1の軸方向との双方に直交する方向に長軸Dが位置するように成形されている。
【0028】
図6は、ピン部となる部分pを把持するパンチの成形手段27の実施の一形態を説明するために示したものであり、図7は図6と異なる実施の形態を説明するために示したものである。
図6に示した実施の形態では、パンチ本体20aとパンチ押え20bの衝合面を本来の衝合面(図6に鎖線で示されている)から、それぞれ所定量Tを切削することなどにより除去した構成とされている。このように構成することにより、パンチ本体20aに対してパンチ押え20bを開放または取り外し、素材1のピン部となる部分pをパンチ本体20aとパンチ押え20bとの間に配置し、パンチ本体20aに対してパンチ押え20bを閉じまたは取り付けてクランプなどによって締め付け保持して、予備成形を行う。すると、図8の(b)に参照されるように、ピン部となる部分pの断面形状が、ジャーナル部となる部分jに対するピン部となる部分pの偏心方向が短軸D1方向となり、この方向に対して図8の直交する方向が長軸D方向となるほぼ楕円または長円の粗形材10が形成されることとなる。
【0029】
また、図7に示した実施の形態では、素材1の径dがピン部Pの径Dよりも小さく、ピン部となる部分pの短軸D1とほぼ同じに成形されており、パンチ本体20aとパンチ押え20bにより形成される成形手段27の開口の幅(長軸)は、図7に鎖線で示した成形するピン部Pの径Dとほぼ同じに成形されている。このように構成されたパンチ本体20aとパンチ押え20bとにより素材1のピン部となる部分を保持すると、図8の(a)に示すように、素材と、パンチ本体およびパンチ押えの衝合面近くとの間には隙間が生じていることとなる。そして、パンチ20を下降させて予備成形を行うと、図8の(b)に示したように、粗形材10のピン部となる部分pは、これに隣接するウエブ部となる部分wから材料がピン部となる部分pに流動してその径を拡大させ、パンチ本体20aおよびパンチ押え20bの衝合面近くに生じていた隙間が無くなり、成形手段27の形状に応じて長軸Dと短軸D1を有する楕円または長円の断面形状に成形されることとなる。
【0030】
なお、上述した実施の形態では予備成形装置2のパンチ20の成形手段27がピン部となる部分pの断面形状を楕円または長円に成形するよう構成した場合により説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されることはなく、パンチ20の成形手段27と同様に、ジャーナル部となる部分jの断面形状が楕円または長円となるように成形するようダイ21の成形手段27だけを単独で、または、上述したようにパンチ20と共に構成することもできる。
【0031】
次に、本発明のクランクシャフトの製造方法の実施の一形態を、上述したように構成された製造装置を用いる場合によって、その作動と共に、主に図9〜図11に基づいて詳細に説明する。
本発明のクランクシャフトの製造方法は、概略、素材1,10を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部Jと、このジャーナル部Jから偏心する断面円形のピン部Pと、ジャーナル部Jとピン部Pとの間に延びるウエブ部Wとを有するクランクシャフト100を製造するための方法であって、素材1,10のジャーナル部となる部分jを、割型からなるジャーナル部保持型30により形成される円形孔部35で保持すると共に、ピン部となる部分pを割型からなるピン部保持型31により形成される円形孔部36で保持し、素材1,10を軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さに成形する場合において、素材1,10のジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pの一方または双方を、対応する保持型30と31の一方または双方の円形孔部35と36の一方または双方の底部(図では36aのみを示した)に当接させ、且つ、その保持型30と31の一方または双方の円形孔部35と36の一方または双方の開口部との間に隙間を生じさせた状態として、素材1,10の軸方向への加圧を開始するものである。そして、この実施の形態においては、棒状の素材1のピン部となる部分pを軸直交方向に加圧するとともに、このピン部となる部分pとこれに隣接するジャーナル部となる部分j、jとの軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、ピン部となる部分pをジャーナル部となる部分jに対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分wを所定の厚さでピン部となる部分pとジャーナル部となる部分jとに対して曲げる予備成形を施し、さらに、この予備成形で、素材10のジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pの一方または双方を、対応する割型の円形孔部35,36の底部(図では36aのみを示した)と接し且つ開口(図では36bのみを示した)との間に隙間が生じるように成形するものである。
【0032】
クランクシャフト100を製造するにあたり、前もって、予備成形装置2のパンチ20および/またはダイ21の、素材1のジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pの少なくとも一方の断面を、楕円または長円に成形する部分を把持する成形手段27が、パンチ20の移動方向と平行に短軸D1方向が位置し、且つ、この短軸D1方向と素材1の軸方向との双方に直交する方向に長軸Dが位置するように成形されていることは、上述したとおりである。
【0033】
クランクシャフト100を製造するに際して、最初に棒状また線状の金属素材1のジャーナル部となる部分jを予備成形装置2のダイ21,21に把持させ、ピン部となる部分pをパンチ20に把持させ、パンチ20を素材1の径方向に移動させると共にダイ21,21を互いに近付けるように移動させて、予備成形工程を行う。素材1のジャーナル部となる部分jおよび/またはピン部となる部分pは、ダイ21,21および/またはパンチ20の成形手段27により、後の仕上成形工程で、仕上成形装置3の割型からなる保持型30および/または31の円形孔部35および/または36の底部(図では36aのみを示した)に当接し、開口部(図では36bのみを示した)と隙間が生じることとなるように、断面形状が楕円または長円に成形されることは、上述したとおりである。
【0034】
このようにジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pの少なくとも一方の断面形状が楕円または長円に成形された粗形材10は、図9に示すように、仕上成形装置3の割型からなる保持型(図ではピン部保持型31のみを示した)の間にジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pをそれぞれ配置し、割型を互いに合わせることにより形成された円形孔部35,36に保持させる。このとき、割型からなる保持型30,31のそれぞれに形成されて互いに合わせたときに円形孔部35,36を構成する半円形孔部は、その底部(図では36aのみを示した)に粗形材10のジャーナル部となる部分jおよび/またはピン部となる部分pの長軸D方向の端部が接しており、粗形材10のジャーナル部となる部分jおよび/またはピン部となる部分pの短軸D1方向の端部が円形孔部35および/または36の開口(図では36bのみを示した)に対して隙間が生じた状態となっている。
【0035】
この状態で、保持型30,31と共に粗形材10を半割状のケース32A,32Bの間に配置してケース32を閉じ拘束する。そして、仕上げ成形を開始すべく、図5に示したように、軸方向加圧手段33により軸方向に加圧して保持型30,31をケース32内で軸方向に移動させ、粗形材10のウエブ部となる部分wを型板30,31の間で潰し所定の厚さ、所定のピッチでウエブWを形成する。
【0036】
このとき、ウエブ部となる部分wの材料がジャーナル部Jとピン部Pに流動してその径を拡大させるように作用する(図27を参照)。このとき、本発明では、上述したように、粗形材10のジャーナル部となる部分jおよび/またはピン部となる部分pは、その長軸D方向の端部が保持型30および/または31の円形孔部35,36を構成する半円形孔部の底部(図では36aのみを示した)に接しており、その短軸D1方向の端部が円形孔部35,36を構成する半円形孔部の開口部(図では36bのみを示した)に対して離れている状態となっている。そのため、ウエブ部となる部分wの材料流動によるジャーナル部Jとピン部Pの径を拡大させる作用は、図10に示すように、仕上成形を開始したときには保持型30および/または31の半円形孔部の底部(図では36aのみを示した)に集中荷重Lを付与することとなり、その結果、割型からなる保持型30および/または31の互いの合わせ面を閉じさせる方向に作用する力Mが発生することとなる。そして、ジャーナル部Jおよび/またはピン部Pは、ウエブ部となる部分wの材料流動によりその径が拡大しようとする結果、図11に示すように、円形孔部35,36を構成する半円形孔部に対して生じていた隙間が無くなって接することとなり、断面を高い真円度で成形することができる。そのため、仕上成形が完了するときには、図10に示したような集中荷重Lも、互いの合わせ面を閉じさせる方向に作用する力Mも無くなり、保持型30および/または31を実際に変形させるようなことはなく、したがって、ジャーナル保持型30の外周面とケース32の内周面との摩耗、および/または、ピン部保持型31の径方向スライド42と軸方向スライド41との摺動面ならびに軸方向スライド41の外周面とケース32の内周面との摩耗を低減させることができ、型寿命を向上させることができる。なお、本発明の方法においては、上述した実施の形態に限定されることはなく、予備成形工程以外の別の工程で、粗形材10のジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pの少なくとも一方を、仕上成形装置3の対応する保持型30,31の円形孔部35および/または36の底部(図では36aのみを示した)に当接させ、且つ、この保持型30,31の開口部(図では36bのみを示した)との間に隙間を生じさせ得る断面形状に成形することも含まれる。
【0037】
次に、本発明のクランクシャフトの製造装置の別の実施の形態を、図12〜図17に基づいて説明する。なお、上述した実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明することとする。
【0038】
本発明のクランクシャフトの製造装置は、概略、素材1、10を偏心据え込みして、複数のピン部Pと各ピン部Pの両端をそれぞれ支持するウエブ部Wとを有するクランクシャフト100を製造するためのものであり、予備成形装置2が、棒状の素材1のピン部およびウエブ部となる部分p、w毎に、ピン部となる部分pを軸直交方向に加圧するとともに、このピン部となる部分pとこれに隣接するジャーナル部となる部分j、jとの軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、順次曲げ加工し、各ピン部となる部分pをジャーナル部となる部分jに対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分wを所定の厚さでピン部となる部分pとジャーナル部となる部分jとに対して曲げてなる粗形材10を成形する予備成形装置2を含み、少なくとも最初のピン部となる部分pおよびこのピン部と連続するウエブ部となる部分wを曲げ加工するときに、後の他のピン部となる部分pおよびこのピン部と連続するウエブ部となる部分wを曲げ加工するときの位相の基準となる位相基準面15を成形し、後のピン部となる部分pおよびこのピン部と連続するウエブ部となる部分wを曲げ加工するときに先に形成された位相基準面15と接して素材1の軸回りの位相を位置決めするための側面壁28を備えている。そして、この予備成形装置2は、素材1のピン部となる部分pを拘束し把持するパンチ20と、素材1のパンチ20に把持されたピン部となる部分pに隣接するジャーナル部となる部分jを拘束し把持するダイ21,21と、パンチ20をダイ21に対して相対的に素材の軸直交方向に偏位させるよう駆動する軸直交方向駆動手段と、ダイ21をパンチ20に対して近付けるように素材1の軸方向に駆動する軸方向駆動主段26とを備えており、側面壁28は、パンチ20またはダイ21の一方に設けられている。さらに、側面壁28は、パンチ20の移動方向および素材1の軸方向と平行に延びる平面により形成されており、粗形材10のウエブ部となる部分Wの側面の流動を規制するものである。
【0039】
側面壁28は、素材1を曲げ加工することによりウエブ部となる部分wの両側に位置するように設けられており、予備成形時にウエブ部となる部分wが接することによりその材料の側方への流動を規制して位相基準面15を形成するよう形成されている。そして、図12および図13に示した実施の形態では、側面壁28が予備成形装置2の最初に予備成形するダイ21のダイ本体21aに形成されている。また、図15に示したように、後の工程で、次にピン部となる部分pおよびこのピン部と連続するウエブ部となる部分wを予備成形するときにそのウエブ部となる部分wに連続するジャーナル部となる部分jを保持するダイ21の、先の工程で位相基準面15が形成されたウエブ部となる部分w側にも、その形成された位相基準面15と接するように形成されている。なお、この後の予備成形するときにジャーナル部となる部分jを保持するダイ21の、先に位相基準面15が形成されたウエブ部となる部分w側に設けられる側面壁28は、図15に鎖線で示したように、ピン部となる部分pの偏心方向が異なる場合にもそのウエブ部となる部分に形成された位相基準面15と接することができるような長さ(図15においては高さ)に形成されている。本発明はこの実施の形態に限定されることはなく、予備成形装置2のパンチ20のパンチ本体20aなどに側面壁28を設けることもできる。
【0040】
次に、本発明のクランクシャフトの製造方法の別の実施の形態を、図12〜図17に基づいて説明した実施の形態における製造装置を用いる場合によって、その作動と共に説明する。なお、上述した実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみを説明することとする。
【0041】
本発明のクランクシャフトの製造方法は、概略、素材1,10を偏心据え込みして、複数のピン部Pと各ピン部Pの両端をそれぞれ支持するウエブ部Wと各ウエブ部Wの基端部を支持して回転中心となるジャーナル部Jとを有するクランクシャフト100を製造するためのものであり、棒状の素材1をピン部およびウエブ部となる部分p、w毎に順次曲げ加工する予備成形を行って粗形材10を成形し、この粗形材10の、ジャーナル部となる部分jを割型からなるジャーナル部保持型30により形成される円形孔部35で保持すると共に、ピン部となる部分pを割型からなるピン部保持型31により形成される円形孔部36で保持し、この粗形材10軸方向に加圧してウエブ部となる部分をwジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さに成形する場合において、予備成形を行うに際して、少なくとも最初のピン部となる部分pおよびこのピン部と連続するウエブ部となる部分wを曲げ加工するときに、後の他のピン部となる部分pおよびこのピン部と連続するウエブ部となる部分wを曲げ加工するときの素材1の軸周りの位相の基準となる位相基準面15を成形するものである。そして、予備成形を行うに際して、素材のピン部となる部分pをパンチ20で把持すると共に、このピン部となる部分pの両端に隣接するジャーナル部となる部分jをダイ21、21で把持し、パンチ20を素材1の軸直交方向に移動させると共にダイ21、21をパンチ20に寄せるよう軸方向に加圧する場合に、パンチ20またはダイ21の一方に位相基準面15を形成する側面壁28を予め設けておき、予備成形において、最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、ウエブ部となる部分wが側面壁28に接することにより位相基準面15を形成するものである。さらに、側面壁28は、パンチ20の移動方向および素材1の軸方向と平行に延びる平面により形成されており、この側面壁28によりウエブ部となる部分wの側面の流動を規制する。
【0042】
クランクシャフト100を製造するにあたり、前もって、予備成形装置のダイ21またはパンチ20に側面壁28を設けておくことは上述したとおりである。クランクシャフト100を製造するに際して、最初の棒状また線状の金属素材1のジャーナル部となる部分jを予備成形装置2のダイ21,21に把持させ、ピン部となる部分pをパンチ20に把持させ、パンチ20を素材1の径方向に移動させると共にダイ21,21を互いに近付けるように移動させて、最初の予備成形工程を行う。このジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pとの間の部分、すなわちウエブ部となる部分wは、ダイ本体21aとパンチ本体20との間で所定量押し潰されることにより、ジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pの軸方向からみて側方に材料が流動して拡がろうとしながら成形される。しかしながら、この実施の形態では、ウエブ部となる部分wの両側に側面壁28が形成されているため、図13に鎖線で示すように、ウエブ部となる部分wの側方への材料の流動が規制される。そのため、図14に示すように、ウエブ部となる部分wの側面には平面状の位相基準面15が形成されることとなる。
【0043】
最初の曲げ加工でピン部となる部分pとこれに連続するウエブ部となる部分wの予備成形が終わると、図15に示すように、次の曲げ加工でピン部となる部分pをパンチ20に把持させ、また、このピン部となる部分pに隣接するジャーナル部jとなる部分をダイ21に把持させる。このとき、先に曲げ加工されたウエブ部となる部分wに形成された位相基準面15にダイ21の側面壁28が当接されて、素材1の軸回りの位相が正確且つ容易に位置決めされる。そのため、後の予備成形でピン部となる部分pとウエブ部となる部分wを、ジャーナル部となる部分jに対して軸回りに正確な位相で容易に成形することができることから、後の仕上成形工程で、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31とのケース32内での位相が変化することがなく、したがって、ジャーナル保持型30の外周面とケース32の内周面との摩耗や、ピン部保持型31の外周面とケース32の内周面との摩耗、特に、ピン部保持型31が軸方向スライド41と径方向スライド42とを備えた構成である場合には、径方向スライド42と軸方向スライド41との摺動面ならびに軸方向スライド41の外周面とケース32の内周面との摩耗を低減させることができ、また、軸方向スライド41と径方向スライド42に無理な力が加わるのを防止することができることから、型寿命を向上させることができる。さらにまた、予備成形時にウエブ部となる部分wの側面がダイ21の側面壁28によってその材料の流動を規制されることにより、仕上成形工程において、粗形材10を軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さに成形するときに、ウエブ部WのジャーナルJ側およびピン部P側の端部の肉を張り出させ、したがって、ウエブ部Wの剛性が向上したクランクシャフト100を製造することができる。
【0044】
なお、本発明の方法では、予備成形装置2のパンチ20またはダイ21に側面壁28を設けて、かかる側面壁28により位相基準面15を形成することに限定されることはなく、他の構成要素により位相基準面15を形成することも含まれる。
【0045】
次に、本発明のクランクシャフトの実施の一形態を、主に図16に基づいて説明する。なお、この実施の形態における説明では、上述した装置と方法の実施の形態で説明した事項について同じ符号を付してその説明を省略し、新たな事項についてのみ説明することとする。
本発明のクランクシャフト100は、概略、素材1,10を偏心据え込みすることにより、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部Jと、このジャーナル部Jから偏心する断面円形のピン部Pと、ジャーナル部Jとピン部Pとの間に延びるウエブ部Wとが成形されたクランクシャフト100であって、素材1を曲げ加工し、軸方向に加圧してそのウエブ部となる部分wを潰し、ウエブ部Wが所定の厚さに成形されてなるものである場合において、素材1を曲げ加工するときにそのウエブ部となる部分wの側面が材料の流動を規制されて平面状に成形されており、その後に軸方向に加圧して所定の厚さのウエブ部Wを成形することにより、ウエブ部WのジャーナルJ側およびピン部P側の端部の肉が張り出している。
【0046】
図16は本発明により成形されたクランクシャフト100のウエブ部W(a)と、その拡大した破断面(b)を示したものであり、図17は本発明と比較するために、側方への材料の流動を規制することなく、自由に材料を流動させて成形したクランクシャフト100’のウエブ部W’(a)と、その拡大した破断面(b)を示したものである。
上述したように、ダイ21に設けられた側面壁28により予備成形でウエブ部となる部分wの側面は材料の流動が規制されて平面状に形成されている(図13を参照)。そのため、後の仕上成形工程で、ウエブ部となる部分wを保持型30,31間で潰すようにして所定の厚さのウエブ部Wを成形すると、予備成形工程でウエブ部となる部分wの側面が平面状の部分を形成されたことによって、仕上成形工程でウエブ部Wの側方への材料の流動が阻害され、その結果、図16の(a)に示すように、ウエブ部Wのピン部Pとジャーナル部Jの側の端部に材料が流動し、かかる端部の肉が張り出すこととなる。そのため、ウエブ部Wの剛性を向上させることができる。
【0047】
これに対して、ダイ21などに側面壁28を設けることなく、予備成形でウエブ部となる部分wの側面の材料を自由に流動させた場合には、後の仕上成形工程で、ウエブ部となる部分wを保持型30,31間で潰すようにして所定の厚さのウエブ部W’を成形すると、図17(a)に示すように、ウエブ部W’のピン部Pとジャーナル部Jの側の端部に材料が流動せず、したがって、かかる端部の肉が張り出すことがない。そのため、ウエブ部W’の剛性を向上させることは困難となる。
【0048】
なお、上述した実施の形態では、予備成形時に粗形材10のウエブ部となる部分wの側面の材料の流動を規制して平面状の位相基準面15を形成した場合で説明したが、仕上成形装置3における軸方向スライド41の開口43を成形するクランクシャフト100のウエブ部Wに応じた所定の幅H(図11に示した)に成形し、仕上成形工程においても、ウエブ部Wを成形するときに幅方向への材料の流動を規制して、ウエブ部Wのジャーナル部J側およびピン部P側の端部の肉を張り出させるように構成してもよい。
【0049】
次に、本発明のクランクシャフトの製造装置のさらに別の実施の形態を、図18〜図23に基づいて説明する。なお、上述した実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明することとする。
【0050】
本発明のクランクシャフトの製造装置は、概略、素材1、10を偏心据え込みして、複数のピン部Pと各ピン部Pの両端をそれぞれ支持するウエブ部Wとを有するクランクシャフト100を製造するためのものであり、割型からなり素材10のジャーナル部となる部分jを保持する円形孔部35を形成するジャーナル部保持型30と、割型からなり素材1,10のピン部となる部分pを保持する円形孔部36を形成するピン部保持型31と、素材10を保持したジャーナル部保持型30とピン部保持型31が軸方向へ摺動可能に配置され拘束するケース32と、ケース32内で素材10を軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さに成形する軸方向加圧手段33とを有する場合において、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の少なくとも一方が、ケース32内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束されている。さらに、この実施の形態にいては、棒状の素材1をピン部およびウエブ部となる部分p、w毎に順次曲げ加工して、各ピン部となる部分pをジャーナル部となる部分jに対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分wを所定の厚さでピン部となる部分pとジャーナル部となる部分jとに対して曲げてなる粗形材10を成形する予備成形装置2を備えている。
【0051】
上述したように、ピン部保持型31は、ケース32の内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライド41と、軸方向スライド41に保持されてケース32の径方向に移動可能に摺動する径方向スライド42とにより構成されており、ケース32は、開閉可能な半割状に構成されている。
【0052】
そして、半割状のケース32A,32Bは、割型からなるジャーナル部保持型30とピン部保持型31の軸方向スライド41とを保持するための保持キー50がそれぞれ設けられており、保持キー50は、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の少なくとも一方を、ケース32内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束し、または、ケース32内で周方向に所定の範囲内で弾性的に回動可能に拘束するよう構成されている。
【0053】
粗形材10を仕上成形装置2に取り付け、また、成形されたクランクシャフト100を仕上成形装置から取り出すために、図21に示すように、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31は、割型により構成されており、ケース32もまた、半割状に形成されている。これらのジャーナル部保持型30とピン部保持型31がケース32からそれぞれ脱落などしないようにするために、図18および図19に示すように、半割状のケース32A,32Bの互いの衝合面には、ケース32の軸方向に延びる保持キー50が、ケース32A,32Bの内周面に突出するように配設されている。また、ピン部保持型31の軸方向スライド41A,41Bには、保持キー50を受ける凹部41aがそれぞれ形成されている。そして、ケース32A,32Bの内周面に軸方向スライド41A,41Bを配置し、軸方向スライド41A,41Bの凹部41aに保持キー50を係合させた状態でボルト51によってケース32A,32Bにそれぞれ締結されている。なお、図20に示すように、ピン部保持型31を構成する軸方向スライド41と径方向スライド42とは蟻溝44により摺動可能に係合されている。また、ジャーナル部保持形30も、軸方向スライド41A,41Bと同様に、凹部を形成して、保持キー50に係合されている。
【0054】
このように構成することにより、図21に示したように、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31がケース32から脱落などすることがなく、仕上成形時の軸方向の加圧にしたがってケース32の軸方向に移動することができるが、ケース32内で周方向に回転することはない。そのため、複数のピン部Pを有するクランクシャフト100を製造する場合に、粗形材10の各ピン部となる部分pの、ジャーナル部となる部分jに対する偏心方向の位相に誤差が生じていると、仕上成形時に保持型30と31、特にピン部保持型31に無理な力が加わり、ケース32の内周面と軸方向スライド41の外周面との間、および、軸方向スライド41と径方向スライド42との間の摺動面が摩耗したり変形するなどして型寿命が短くなる原因となる。
【0055】
そこで、この実施の形態では、図22に示すように、ピン部保持型31の軸方向スライド41A,41Bに形成する凹部41aに周方向の幅を持たせてある。これにより、ピン部保持型31は、ケース32内で凹部41aの周方向の幅の範囲内で周方向に回動可能に拘束されている。そのため、粗形材10の各ピン部となる部分pの、ジャーナル部となる部分jに対する偏心方向の位相に誤差が生じている場合であっても、ピン部保持型31がその位相の誤差に応じて周方向に回動するため、無理な力を受けないようにすることができる。なお、この実施の形態では、ピン部保持型31についてのみ説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されることはなく、ジャーナル部保持型部30も、軸方向スライド41A,41Bと同様に、周方向に所定の幅を有する凹部を形成して、ケース32内で凹部の周方向の幅の範囲内で周方向に回動可能に拘束するよう構成することができる。また、これとは反対に、ジャーナル部保持型部30の凹部を保持キー50の幅に応じて形成し、ジャーナル部保持型部30は、ケース32内で周方向に回動することなく、軸方向のみに移動するよう構成することもできる。
【0056】
次に、図23に基づいて本発明のクランクシャフトの製造装置の変形例を説明する。この実施の形態では、保持キー33の、軸方向スライド41A,41Bの凹部41aに係合する部分50aが周方向に弾性変形可能に構成されており、この構成によって、ピン部保持型31がケース32内で所定の範囲内で周方向に弾性的に回動可能に拘束されている。
【0057】
各保持キー50の、少なくともケース32内に突出する部分50aは、弾性変形可能に構成されている。図23に示した実施の形態では、各保持キー50のケース32内に突出する部分50aを弾性変形可能に構成するために、ケース32に固定されている部分よりも薄く一体成形している。しかしながら、各保持キー50は、ケース32の径方向における全長(幅)にわたって同じ薄さで成形することもできる。各保持キー50のケース32内に突出する部分50aの先端は、互いに面接触している側と反対側に突出するほぼ鉤形に形成されている。そして、図23に示した実施の形態では、図22に示した実施の形態と比較して、ピン部保持型31の軸方向スライド41A,41Bに形成する凹部41aの周方向の幅が小さく設定されている。
【0058】
このように構成されていることにより、ピン部保持型31を、ケース32内で凹部41aの周方向の幅と、保持キー50の凹部41a内での弾性変形の範囲内で周方向に弾性的に回動可能に拘束することができる。そのため、粗形材10の各ピン部となる部分pの、ジャーナル部となる部分jに対する偏心方向の位相に誤差が生じている場合であっても、ピン部保持型31がその位相の誤差に応じて周方向に回動することができる。そして、各保持キー50のケース32内に突出する部分50aの先端が軸方向スライド41A,41Bに形成する凹部の周方向壁面に接しても弾性変形するため、その接したときの衝撃を吸収するとともに、ピン部保持型31のケース32内で周方向に回動できる自由度が増加し、しかも、軸方向スライド41A,41Bに形成する凹部41aの周方向の幅を小さくすることができる。その結果、粗形材10の各ピン部となる部分pの、ジャーナル部となる部分jに対する偏心方向の位相に誤差が生じている場合であっても、ピン部保持型31がその位相の誤差に応じて周方向に回動するため、無理な力をさらに受けないようにすることができる。
【0059】
なお、この実施の形態においても、ピン部保持型31についてのみ説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されることはなく、保持キー50の少なくともケース内に突出する部分50aを、ケース32の軸方向にわたって全体に、弾性変形可能に構成し、かかる部分50aに対してジャーナル部保持型部30の凹部を係合させ拘束することもできる。また、上述した実施の形態と同様に、ジャーナル部保持型部30の凹部を保持キー50の幅および形状と対応させて形成し、ジャーナル部保持型部30は、ケース32内で周方向にほぼ回動することなく、軸方向のみに移動するよう構成することもできる。
【0060】
次に、本発明のクランクシャフトの製造方法のさらに別の実施の形態を、図18〜図23に示したように構成された装置を用いる場合により、その作動とともに説明する。なお、上述した実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明することとする。
【0061】
本発明のクランクシャフトの製造方法は、概略、素材1,10を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部Jと、ジャーナル部Jから偏心する断面円形のピン部Pと、ジャーナル部Jとピン部Pとの間に延びるウエブ部Wとを有するクランクシャフト100を製造するためのもので、ジャーナル部となる部分jを、割型からなるジャーナル部保持型30により形成される円形孔部35で保持すると共に、ピン部となる部分pを割型からなるピン部保持型31により形成される円形孔部36で保持してケース32内に配置し、軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さに成形する場合において、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の少なくとも一方を、ケース32内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束するものである。そして、この実施の形態においては、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の少なくとも一方を、さらに、ケース32内で周方向に弾性的に回動可能に拘束する。さらにまた、この実施の形態においては、ピン部保持型31を、ケース32の内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライド41と、この軸方向スライド41に保持されてケース32の径方向に移動可能に摺動する径方向スライド42とにより構成し、軸方向スライド41と径方向スライド42をそれぞれ分割して41Aと41B、42Aと42Bにより構成しており、ケース32開閉可能な半割状に分割して32Aと32Bにより構成し、この半割状のケース32に割型からなるジャーナル部保持型30とピン部保持型31の軸方向スライド41とを保持する保持キー50を半割状のケース32にそれぞれ設け、保持キー50により、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の少なくとも一方を、ケース32内で周方向に所定の範囲内で回動可能に保持するか、または、ケース32内で周方向に所定の範囲内で回動可能に且つ所定の周方向位置に弾性復帰可能に付勢する。
【0062】
この実施の形態においては、棒状の素材1のピン部となる部分pを軸直交方向に加圧するとともに、このピン部となる部分pとこれに隣接するジャーナル部となる部分j、jとの軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、ピン部となる部分pをジャーナル部となる部分jに対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分wを所定の厚さでピン部pとなる部分とジャーナル部となる部分jとに対して曲げる予備成形を施してなる粗形材10を予め成形する。
【0063】
次いで、この粗形材10のジャーナル部となる部分jをジャーナル部保持型30の円形孔部35で保持するとともに、ピン部となる部分pをピン部保持型31の円形孔部36で保持して、ケース32内に配置し、軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さに成形する場合に、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の少なくとも一方を、ケース32内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束する。そして、この実施の形態においては、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の少なくとも一方を、さらに、ケース32内で周方向に弾性的に回動可能に拘束する。さらにまた、この実施の形態においては、ピン部保持型31を、ケース32の内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライド41と、この軸方向スライド41に保持されてケース32の径方向に移動可能に摺動する径方向スライド42とにより構成し、軸方向スライド41と径方向スライド42をそれぞれ分割して41Aと41B、42Aと42Bにより構成しており、ケース32開閉可能な半割状に分割して32Aと32Bにより構成し、この半割状のケース32に割型からなるジャーナル部保持型30とピン部保持型31の軸方向スライド41とを保持する保持キー50を半割状のケース32にそれぞれ設け、保持キー50により、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の少なくとも一方を、ケース32内で周方向に所定の範囲内で回動可能に保持するか、または、ケース32内で周方向に所定の範囲内で回動可能に且つ所定の周方向位置に弾性復帰可能に付勢する。
【0064】
このように構成することにより、予備成形で粗形材10の各ピン部となる部分pの、ジャーナル部となる部分jに対する偏心方向の位相に誤差が生じている場合であっても、仕上成形でピン部保持型31がその位相の誤差に応じて周方向に所定の範囲内で回動することができる。また、各保持キー50のケース32内に突出する部分50aの先端が軸方向スライド41A,41Bに形成する凹部の周方向壁面に接して弾性変形することができる場合には、その接したときの衝撃を吸収するとともに、ピン部保持型31のケース32内で周方向に回動できる自由度が増加し、しかも、軸方向スライド41A,41Bに形成する凹部41aの周方向の幅を小さくすることができる。その結果、粗形材10の各ピン部となる部分pの、ジャーナル部となる部分jに対する偏心方向の位相に誤差が生じている場合であっても、ピン部保持型31がその位相の誤差に応じて周方向に回動するため、無理な力をさらに受けないようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、特に複数のピン部を有するクランクシャフトを製造する場合などと限定しない限り、単気筒(単一のピン部P)あるいは4気筒(1番ピン部P1〜4番ピン部P4)以外の複数の気筒の内燃機関、さらには、直列以外の複数の気筒数を有する内燃機関、または、内燃機関以外の他の機関に使用されるクランクシャフトを製造する場合にも適用することができる。また、本発明は、必要に応じて所定温度の熱間または冷間で行うことができる。また、上述した実施の形態は、本発明を詳細に説明するための一例を示したものであり、必要に応じて単独で適用することができ、また、これらの実施の形態を組み合わせて適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1:棒状の素材、 10:粗形材(素材)、 100:クランクシャフト、 15:位相基準面、 D:断面の長軸、 D1:断面の短軸、 27:成形手段、 28:側面壁、 30:ジャーナル部保持型、 31:ピン部保持型、 32:ケース、 33:軸方向加圧手段、 35:円形孔部、 36:円形孔部、 36a:底部、 36b:開口部、 41:軸方向スライド、 42:径方向スライド、 44:蟻溝、 50:保持キー、 51a:係合部分、 51:締結手段、 P:ピン部、 J:ジャーナル部、 W:ウエブ部、 p:ピン部となる部分、 j:ジャーナル部となる部分、 w:ウエブ部となる部分
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトの製造方法、その製造装置、およびクランクシャフトに関し、特に、素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための方法とその装置、および、そのクランクシャフト自体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クランクシャフトの製造に関する従来の技術として、例えば、特許文献1が知られている。特許文献1には、冷間鍛造用材料からなる丸棒を切断して所定長さのビレット材を形成し、該ビレット材を油圧ベンダで曲げ加工し、本願の図24にも示すように、各ジャーナル部となる部分j’と各ピン部となる部分p’とが軸直角方向へオフセットされたオフセット材料10’(本明細書でいう粗形材の一例にあたる)を形成し(曲げ工程と称されているが、本明細書でいう予備成形工程の一例にあたる)、次に、本願の図25にも示すように、該オフセット材料10’を軸方向に加圧して、本願の図26にも示すように、連接壁(本発明のウエブ部の一例にあたる)W’間のピッチが所定寸法に形成されたクランク本体100’を圧縮成形(据え込み工程と称されているが、本明細書でいう仕上成形工程の一例にあたる)することが開示されている。
【0003】
ここで、本願の図26に示すように、複数のピン部とウエブ部とを有するクランクシャフトを製造する場合には、予備成形工程で、図24に示すようにピン部およびウエブ部となる部分の曲げ加工を、製造するクランクシャフトに応じて順次行って、粗形材を成形する。
【0004】
一方、仕上成形工程を行う装置は、本願の図25に示したように、粗形材10’のジャーナル部となる部分j’とピン部となる部分p’をそれぞれ保持する保持型30’,31’と、これらを内部に摺動可能に収容して拘束するケース32’と、粗形材10’を軸方向に加圧する軸方向加圧手段とを備えている。粗形材10’のジャーナル部となる部分j’とピン部となる部分p’をそれぞれ保持する板状の保持型30’,31’は、ケース32’内で軸方向に移動するよう構成されている。そして、仕上成形工程では、粗形材10’のジャーナル部となる部分j’とピン部となる部分p’をそれぞれ保持型30’,31’に保持し、これをケース32’内に摺動可能に収容して拘束した状態で、軸方向加圧手段により軸方向に圧縮するよう加圧し、図26に示したように粗形材10’のウエブ部となる部分w’を潰すように所定の厚さに成形して、ウエブ部W’間のピッチを所定寸法に形成する。
【0005】
保持型30’,31’は、粗形材10’の保持と成形されたクランク本体100’の取り出しのために、一般に割型により構成されている。そして、クランク本体100’のジャーナル部J’とピン部P’の断面形状が高い真円度であることを要求されることから、ジャーナル部となる部分j’とピン部となる部分p’をそれぞれ保持する孔部は、割型からなる保持型30’,31’を型合わせした状態で、円形となるように成形されている。また、粗形材10’を保持した保持型30’,31’の配置と、成形されたクランクシャフト100’を保持した保持型30’,31’の取り出しとを容易にするため、ケース32’を開閉可能な半割状に構成されている。
【0006】
さらに、据え込み工程を行う際には、粗形材10’のジャーナル部となる部分j’とピン部となる部分p’との偏心量から、クランクシャフト100’のジャーナル部J’とピン部P’との偏心量が増大することから、本願の図5に参照されるように、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の少なくとも一方を、ケース32の内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライド41と、この軸方向スライド41に保持されてケース32の径方向に移動可能に摺動する径方向スライド42とを備えた構成とすることが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−9595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
仕上成形工程(据え込み工程)では、割型からなる保持型30’,31’の円形孔部で粗形材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分とを保持して軸方向に加圧し、ウエブ部となる部分w’を保持型30’,31’の間で潰すように所定の厚さに成形する際に、図27に矢印Fで示すように、ウエブ部となる部分w’の材料がジャーナル部やピン部となる部分j’、p’に流れ、図27に矢印Gで示すようにその径を拡大させるように作用し、その結果、図28の(b)に矢印Kで示すように、割型からなる保持型30’,31’の円形孔部を押し広げることとなる。そのため、図28の(c)に示すように保持型30’,31’の円形孔部の開口部が開く(径が拡がる)ように力が作用し、ジャーナル部Jとピン部Pの断面形状の真円度が低下するという問題が発生することとなる。また、ウエブ部となる部分w’の材料の流動によるジャーナル部やピン部となる部分j’、p’の径を拡大させるように力が作用することにより、保持型30’,31’およびケース32’が変形したり破損し、また特に、ジャーナル部保持型30’のケース32’に対する摩擦、および、ピン部保持型31’の径方向スライドの軸方向スライドに対する摩擦、或いはピン部保持型31’の軸方向スライドのケースに対する摩擦が増大することとなり、それぞれの互いの摺動面が摩耗して、保持型30’,31’およびケース32’の寿命が短くなり、さらに、ウエブ部の伸長する方向(ピン部のジャーナル部に対する偏心方向)の位相の成形精度が低下するなどの問題が発生することとなる。
なお、図28では、ピン部保持型31’を構成する軸方向スライド(開口を鎖線で示した)と、これに保持された径方向スライドとを示したが、ケース32’内に保持されたジャーナル部保持型30’についても同様の問題が発生することとなる。
【0009】
さらに、上記のように予備成形工程と仕上成形工程とを行う場合において、ウエブ部となる部分の材料が自由に流動するため、ウエブ部の肉引けが大きくなることから、かかるウエブ部の剛性を向上させることが困難であるという問題もあった。
【0010】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、ジャーナル部とピン部の断面形状を高い真円度で容易に且つ確実に成形することができ、また、仕上成形装置のジャーナル部とピン部となる部分を把持する保持型およびケースの寿命が短くなるのを容易に且つ確実に防止することができるクランクシャフトの製造方法と、その製造装置を提供することを目的とする。また、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、ウエブ部の剛性を容易に且つ確実に向上させることができる構造のクランクシャフトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための方法であって、前記素材のジャーナル部となる部分を、割型からなるジャーナル部保持型により形成される円形孔部で保持すると共に、ピン部となる部分を割型からなるピン部保持型により形成される円形孔部で保持し、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する場合において、前記素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方を、対応する前記割型の円形孔部の底部に当接させ、且つ、該割型の円形孔部の開口部との間に隙間を生じさせた状態として、前記素材の軸方向への加圧を開始することを特徴とする。
請求項2のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明において、素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施し、該予備成形された素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することを特徴とする。
請求項3のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項2に記載の発明において、前記予備成形で、前記素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方を、対応する前記割型の円形孔部の底部に当接させ、且つ、該割型の開口部との間に隙間を生じさせ得る断面形状に成形することを特徴とする。
請求項4のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項3に記載の発明において、前記予備成形で、前記素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方の断面形状を、長軸方向の端部が対応する前記割型の円形孔部の底部に当接し、短軸方向の端部が前記割型の開口部と対向することとなる楕円または長円に成形することを特徴とする。
請求項5のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項4に記載の発明において、前記予備成形で、前記素材のピン部となる部分をパンチで把持すると共に、該ピン部となる部分の両端に隣接するジャーナル部となる部分をダイで把持し、前記パンチを素材の軸直交方向に移動させると共に前記ダイを前記パンチに寄せるよう軸方向に加圧する場合において、前記パンチおよび/またはダイの、素材の断面を楕円または長円に成形する部分を把持する部分の形状を、前記パンチの移動方向と平行に短軸が位置し、且つ、該短軸と素材の軸方向とに直交する方向に長軸が位置するように成形しておくことを特徴とする。
請求項6のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型をケース内に軸方向へ摺動可能に配置して拘束し、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することを特徴とする。
請求項7のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項6に記載の発明において、少なくとも前記ピン部保持型を、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えた構成とし、前記軸方向スライドと径方向スライドとをそれぞれ割型により構成し、該割型からなる径方向スライドを互いに合わせることにより円形孔部を形成して前記素材のピン部となる部分を保持することを特徴とする。
請求項8のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための方法であって、製造するクランクシャフトが複数のピン部とウエブ部とを有しており、前記素材のピン部およびウエブ部となる部分毎に順次曲げ加工し、該素材のジャーナル部となる部分を割型からなるジャーナル部保持型により形成される円形孔部で保持すると共に、ピン部となる部分を割型からなるピン部保持型により形成される円形孔部で保持し、該素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する場合において、前記素材を曲げ加工するに際して、少なくとも最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、後の他のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときの位相の基準となる位相基準面を成形することを特徴とする。
請求項9のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項8に記載の発明において、前記素材を曲げ加工するに際して、素材のピン部となる部分をパンチで把持すると共に、該ピン部となる部分の両端に隣接するジャーナル部となる部分をダイで把持し、前記パンチを素材の軸直交方向に移動させると共に前記ダイを前記パンチに寄せるよう軸方向に加圧する場合に、前記パンチまたはダイの一方に前記位相基準面を形成する側面壁を設けておき、前記曲げ加工において、最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、ウエブ部となる部分が前記側面壁に接することにより前記位相基準面を形成することを特徴とする。
請求項10のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項9に記載の発明において、前記側面壁は、前記パンチの移動方向と平行に延びる平面により形成されており、前記素材のウエブ部となる部分の側面の流動を規制するものであることを特徴とする。
請求項11のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための方法であって、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施し、該予備成形された素材のジャーナル部となる部分を、割型からなるジャーナル部保持型により形成される円形孔部で保持すると共に、ピン部となる部分を割型からなるピン部保持型により形成される円形孔部で保持し、該素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する場合において、前記予備成形時に素材のウエブ部となる部分の側面の流動を規制することにより、該素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形するときにウエブ部のジャーナル側およびピン部側の端部の肉を張り出させることを特徴とする。
請求項12のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための方法であって、前記素材のジャーナル部となる部分を、割型からなるジャーナル部保持型により形成される円形孔部で保持すると共に、ピン部となる部分を割型からなるピン部保持型により形成される円形孔部で保持し、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する場合において、前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方を、ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束することを特徴とする。
請求項13のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項12に記載の発明において、前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方を、さらに、前記ケース内で周方向に弾性的に回動可能に拘束することを特徴とする。
請求項14のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項12または13のいずれかに記載の発明において、前記ピン部保持型を、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとにより構成し、前記ケースを開閉可能な半割状に構成するとともに、該半割状のケースに前記割型からなるジャーナル部保持型とピン部保持型の軸方向スライドとを保持する保持キーを前記半割状のケースにそれぞれ設け、前記保持キーにより、前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方を、前記ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に、または、前記ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に且つ所定の周方向位置に弾性復帰可能に付勢することを特徴とする。
請求項15のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項12〜14のいずれか1項に記載の発明において、素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施し、該予備成形された素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することを特徴とする。
請求項16のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための装置であって、割型からなり前記素材のジャーナル部となる部分を保持する円形孔部を形成するジャーナル部保持型と、割型からなり前記素材のピン部となる部分を保持する円形孔部を形成するピン部保持型と、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する軸方向加圧手段とを有しており、さらに、前記素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方を、前記ジャーナル部保持型および/またはピン部保持型に保持したときに、対応する前記割型の円形孔部の底部に当接し、且つ、該割型の開口部との間に隙間が生じる断面形状に成形する成形手段を備えていることを特徴とする。
請求項17のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項16に記載の発明において、素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形装置を備えていることをと特徴とする。
請求項18のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項17に記載の発明において、前記予備成形装置は、前記成形手段を含むことを特徴とする。
請求項19のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項18に記載の発明において、前記予備成形装置の成形手段は、素材の前記ジャーナル部保持型および/またはピン部保持型に保持されるジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方の断面形状を、長軸方向の端部が対応する前記割型の円形孔部の底部に当接し、短軸方向の端部が前記割型の開口部と対向することとなる楕円または長円に成形するものであることを特徴とする。
請求項20のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項19に記載の発明において、前記予備成形装置は、前記素材のピン部となる部分を把持するパンチと、該ピン部となる部分の両端に隣接するジャーナル部となる部分を把持するダイと、前記パンチを素材の軸直交方向に移動させる軸直交方向加圧手段と、前記ダイを前記パンチに寄せるよう軸方向に加圧する軸方向加圧手段とを備えており、前記予備成形装置の成形手段は、素材の断面を楕円または長円に成形する部分が把持される成形手段の形状を、前記パンチの移動方向と平行に短軸が位置し、且つ、該短軸と素材の軸方向とに直交する方向に長軸が位置するように、前記パンチまたはダイに形成されていることを特徴とする。
請求項21のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項16〜20のいずれか1項に記載の発明において、前記素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型を軸方向に摺動可能に収容して拘束するケースをさらに備えていることを特徴とする。
請求項22のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項15〜18のいずれか1項に記載の発明において、少なくとも前記ピン部保持型は、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えており、前記軸方向スライドと径方向スライドは、それぞれ、割型により構成されており、該割型からなる径方向スライドを互いに合わせることにより前記素材のピン部となる部分を保持する円形孔部を形成するものであることを特徴とする。
請求項23のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項に記載の発明において、素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための装置であって、製造するクランクシャフトが複数のピン部とウエブ部とを有しており、前記素材のピン部およびウエブ部となる部分毎に、素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、順次曲げ加工し、前記素材の各ピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形装置を有する場合に、該予備成形装置は、少なくとも最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、後の他のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときの位相の基準となる位相基準面を形成するための側面壁を備えていることを特徴とする。
請求項24のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項23に記載の発明において、前記予備成形装置は、前記素材のピン部となる部分を把持するパンチと、該ピン部となる部分の両端に隣接するジャーナル部となる部分を把持するダイと、前記パンチを素材の軸直交方向に移動させる軸直交方向加圧手段と、前記ダイを前記パンチに寄せるよう軸方向に加圧する軸方向加圧手段とを備え、最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工する前記パンチまたはダイの一方に、ウエブ部となる部分が接することにより前記位相基準面を形成する側面壁が設けられていることを特徴とする。
請求項25のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項24に記載の発明において、前記側面壁は、前記パンチの移動方向と平行に延びる平面により形成されており、前記粗形材のウエブ部となる部分の側面の流動を規制するものであることを特徴とする。
請求項26のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための装置であって、製造するクランクシャフトが複数のピン部とウエブ部とを有しており、割型からなり前記素材のジャーナル部となる部分を保持する円形孔部を形成するジャーナル部保持型と、割型からなり前記素材のピン部となる部分を保持する円形孔部を形成するピン部保持型と、前記素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型が軸方向へ摺動可能に配置され拘束するケースと、ケース内で前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さのウエブ部を成形する軸方向加圧手段とを有する場合において、前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方が、前記ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束されていることを特徴とする。
請求項27のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項26に記載の発明において、前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方が、さらに、前記ケース内で周方向に弾性的に回動可能に拘束されていることを特徴とする。
請求項28のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項26または27に記載の発明において、少なくとも前記ピン部保持型は、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとにより構成されており、前記ケースは、開閉可能な半割状に構成されるとともに、該半割状のケースに前記割型からなるジャーナル部保持型とピン部保持型の軸方向スライドとを保持する保持キーが前記半割状のケースにそれぞれ設けられており、前記保持キーにより、前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方が、前記ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束され、または、前記ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束され且つ前記ケース内で所定の周方向位置に弾性復帰可能に付勢されていることを特徴とする。
請求項29のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項26〜28のいずれか1項に記載の発明において、素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施す予備成形装置をさらに備えていることを特徴とする。
請求項30のクランクシャフトに係る発明は、上記目的を達成するため、素材を偏心据え込みすることにより、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とが成形されたクランクシャフトであって、素材を曲げ加工し、軸方向に加圧してそのウエブ部となる部分が所定の厚さに成形されてなるものである場合において、前記素材を曲げ加工するときにそのウエブ部となる部分の側面が材料の流動を規制されて平面状に成形され、軸方向に加圧することにより、ウエブ部のジャーナル側およびピン部側の端部の肉が張り出していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1のクランクシャフトの製造方法に係る発明によれば、素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方を、対応する割型の円形孔部の底部に当接させ、且つ、この割型の円形孔部の開口部との間に隙間を生じさせた状態として、素材の軸方向への加圧を開始する。素材のウエブ部となる部分を潰すようにして所定の厚さに成形するときに、材料がジャーナル部とピン部に流動するが、割型の円形孔部は、その底部が素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方に押圧されているために、開口部が閉じる方向に変形しようとする力が作用するとともに、粗形材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の材料が開口部との間の隙間を埋めるように流動することとなり、開口部が閉じる方向に変形しようとする力が相殺される。そのため、割型からなる保持型の変形が防止され、円形孔部の形状が維持されることから、ジャーナル部とピン部との少なくとも一方の断面形状を高い真円度で成形することができ、また、割型からなる保持型の摩耗が低減されることから、保持型の寿命を延ばすことができる。
なお、素材を軸方向に加圧するのに先立って、予め、素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施しておくことにより、素材を軸方向に加圧するときに必要な力を低減させることができる。さらに、この予備成形を行うときに、素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方を、対応する前記割型の円形孔部の底部に当接させ、且つ、該割型の開口部との間に隙間を生じさせ得る断面形状に成形することにより、少ない工程数で容易にクランクシャフトを製造することができる。そして予備成形で、素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方の断面形状を、長軸方向の端部が対応する前記割型の円形孔部の底部に当接し、短軸方向の端部が前記割型の開口部と対向することとなる楕円または長円に成形することにより、対応する前記割型の円形孔部の底部に当接させ、且つ、該割型の開口部との間に隙間を生じさせ得る断面形状に成形することを具現化することができる。この予備成形において、パンチおよび/またはダイの、素材の断面を楕円または長円に成形する部分を把持する部分の形状を、前記パンチの移動方向と平行に短軸が位置し、且つ、該短軸と素材の軸方向とに直交する方向に長軸が位置するように成形しておくことにより、予備成形で、素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方の断面形状を、長軸方向の端部が対応する前記割型の円形孔部の底部に当接し、短軸方向の端部が前記割型の開口部と対向することとなる楕円または長円に成形することを具現化することができる。
また、素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型をケース内に軸方向へ摺動可能に配置して拘束し、素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することにより、素材の軸方向への加圧により素材のウエブ部となる部分を確実に保持型の間で潰して所定の厚さに成形することができる。さらに、少なくともピン部保持型を、ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、この軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えた構成として、軸方向スライドと径方向スライドとをそれぞれ割型により構成し、この割型からなる径方向スライドを互いに合わせることにより円形孔部を形成して素材のピン部となる部分を保持することにより、素材を軸方向に加圧することにより、ジャーナル部に対するピン部の偏心量の変化に対応することができる。
請求項8のクランクシャフトの製造方法に係る発明によれば、素材を曲げ加工するに際して、少なくとも最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、後の他のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときの位相の基準となる位相基準面を成形することにより、複数のピン部を有するクランクシャフトを製造するに際して、予備成形工程で最初のピン部となる部分およびこのピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに形成された位相基準面を基準として、正確な位相で後の他のピン部となる部分およびこのピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工することができる。そのため、素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を所定の厚さに成形するときに保持型に無理な力が加わり変形されるのを防止することができるため、したがって、保持型の摩耗が低減されることから、保持型の寿命を延ばすことができる。
なお、素材を曲げ加工するに際して、素材のピン部となる部分をパンチで把持すると共に、該ピン部となる部分の両端に隣接するジャーナル部となる部分をダイで把持し、パンチを素材の軸直交方向に移動させると共にダイをパンチに寄せるよう軸方向に加圧する場合に、パンチまたはダイの一方に位相基準面を形成するための側面壁を予め設けておくことにより、曲げ加工で、最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、ウエブ部となる部分が前記側面壁に接することにより位相基準面を確実且つ容易に形成することができる。さらに、側面壁は、パンチの移動方向と平行に延びる(ジャーナル部に対するピン部の偏心方向および素材の軸方向に延びる、ともいえる)平面により形成されており、素材のウエブ部となる部分の側面の流動を規制するものであることにより、位相基準面を確実且つ容易に形成することが具現化できるとともに、ウエブ部の材料が側方に流動して設定された厚さとならない、或いは、設定された形状に成形されないなどの事態を回避でき、したがって設定された剛性を有するウエブ部を成形することができる。
請求項11のクランクシャフトの製造方法に係る発明発明によれば、予備成形時に素材のウエブ部となる部分の側面の流動を規制することにより、この素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分をジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形するときにウエブ部のジャーナル側およびピン部側の端部の肉を張り出させるため、ウエブ部の剛性を容易に且つ確実に向上させることができる。
請求項12のクランクシャフトの製造方法に係る発明によれば、ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方を、ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束することにより、ジャーナル部に対する各ピン部の偏心方向の位相が正確でない場合であっても、素材を軸法王に加圧するときに、保持型に無理な力が加わり変形されるのを防止することができるため、したがって、保持型の摩耗が低減されることから、保持型の寿命を延ばすことができる。
なお、さらに、ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方の、ケース内で周方向に弾性的に回動可能に拘束することにより、ジャーナル部に対する各ピン部の偏心方向の位相が正確でない場合であっても、素材を軸法王に加圧するときに、保持型に無理な力が加わり変形されるのをさらに確実に防止することができる。また、ピン部保持型を、ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとにより構成し、ケースを開閉可能な半割状に構成するとともに、この半割状のケースに割型からなるジャーナル部保持型とピン部保持型の軸方向スライドとを保持する保持キーを前記半割状のケースにそれぞれ設け、保持キーにより、ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方を、ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に、または、ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に且つ所定の周方向位置に弾性復帰可能に付勢することにより、ジャーナル部に対する各ピン部の偏心方向の位相が正確でない場合であっても、素材を軸法王に加圧するときに、保持型に無理な力が加わり変形されるのをさらに確実に防止することができる。さらにまた、素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施しておくことにより、素材を軸方向に加圧するときに必要な力を低減させることができる。
請求項16のクランクシャフトの製造装置に係る発明によれば、割型からなり前記素材のジャーナル部となる部分を保持する円形孔部を形成するジャーナル部保持型と、割型からなり前記素材のピン部となる部分を保持する円形孔部を形成するピン部保持型と、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する軸方向加圧手段とを有しており、さらに、前記素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方を、前記ジャーナル部保持型および/またはピン部保持型に保持したときに、対応する前記割型の円形孔部の底部に当接し、且つ、該割型の開口部との間に隙間が生じる断面形状に成形する成形手段を備えていることにより、素材の軸方向への加圧に先立って、成形手段によって、素材のピン部とジャーナル部となる部分の少なくとも一方の断面形状が、対応する割型の円形孔部の底部に当接し、且つ、割型の開口部との間に隙間が生じるように成形されている。そして、素材を保持型に保持して軸方向への加圧を開始してウエブ部となる部分を潰すようにして所定の厚さに成形するときに、材料がジャーナル部とピン部に流動する。このとき、割型の円形孔部は、その底部が素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方に押圧されているために、開口部が閉じる方向に変形しようとする力が作用するとともに、粗形材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の材料が開口部との間の隙間を埋めるように流動することとなり、開口部が閉じる方向に変形しようとする力が相殺される。そのため、割型からなる保持型の変形が防止され、円形孔部の形状が維持されることから、ジャーナル部とピン部との少なくとも一方の断面形状を高い真円度で成形することができ、また、割型からなる保持型の摩耗が低減されることから、保持型の寿命を延ばすことができる。
なお、素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形装置を備えていることにより、素材を軸方向に加圧するのに先立って、予め、予備成形装置によって素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施しておくことができ、したがって、素材を軸方向に加圧するときに必要な力を低減させることができる。さらに、この予備成形装置によって素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方を、対応する前記割型の円形孔部の底部に当接させ、且つ、該割型の開口部との間に隙間を生じさせ得る断面形状に成形することにより、少ない工程数で容易にクランクシャフトを製造することができる。予備成形装置の成形手段が、素材の前記ジャーナル部保持型および/またはピン部保持型に保持されるジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方の断面形状を、長軸方向の端部が対応する前記割型の円形孔部の底部に当接し、短軸方向の端部が前記割型の開口部と対向することとなる楕円または長円に成形するものとすることにより、対応する前記割型の円形孔部の底部に当接させ、且つ、該割型の開口部との間に隙間を生じさせ得る断面形状に成形することを具現化することができる。予備成形装置が、素材のピン部となる部分を把持するパンチと、このピン部となる部分の両端に隣接するジャーナル部となる部分を把持するダイと、前記パンチを素材の軸直交方向に移動させる軸直交方向加圧手段と、前記ダイを前記パンチに寄せるよう軸方向に加圧する軸方向加圧手段とを備えており、成形手段が、素材の断面を楕円または長円に成形する部分が把持される成形手段の形状を、前記パンチの移動方向と平行に短軸が位置し、且つ、該短軸と素材の軸方向とに直交する方向に長軸が位置するように、前記パンチまたはダイに形成されていることにより、予備成形で、素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方の断面形状を、長軸方向の端部が対応する前記割型の円形孔部の底部に当接し、短軸方向の端部が前記割型の開口部と対向することとなる楕円または長円に成形することを具現化することができる。
また、素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型を軸方向に摺動可能に収容して拘束するケースをさらに備えていることにより、素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型をケース内に軸方向へ摺動可能に配置して拘束し、素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することができ、したがって、素材の軸方向への加圧により素材のウエブ部となる部分を確実に保持型の間で潰して所定の厚さに成形することができる。さらに、少なくともピン部保持型は、ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、この軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えており、前記軸方向スライドと径方向スライドは、それぞれ、割型により構成されており、この割型からなる径方向スライドを互いに合わせることにより素材のピン部となる部分を保持する円形孔部を形成するものであることとすることにより、素材を軸方向に加圧するときに、ジャーナル部に対するピン部の偏心量の変化に対応することができる。
請求項23のクランクシャフトの製造装置に係る発明によれば、予備成形装置が、少なくとも最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、後の他のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときの位相の基準となる位相基準面を形成するための側面壁を備えていることにより、素材を曲げ加工するに際して、少なくとも最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、後の他のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときの位相の基準となる位相基準面が成形される。そのため、複数のピン部を有するクランクシャフトを製造するに際して、予備成形工程で最初のピン部となる部分およびこのピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに形成された位相基準面を基準として、正確な位相で後の他のピン部となる部分およびこのピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工することができることから、素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を所定の厚さに成形するときに保持型に無理な力が加わり変形されるのを防止することができ、したがって、保持型の摩耗が低減されることから、保持型の寿命を延ばすことができる。
なお、予備成形装置が、素材のピン部となる部分を把持するパンチと、このピン部となる部分の両端に隣接するジャーナル部となる部分を把持するダイと、パンチを素材の軸直交方向に移動させる軸直交方向加圧手段と、ダイを前記パンチに寄せるよう軸方向に加圧する軸方向加圧手段とを備え、最初のピン部となる部分およびこのピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するパンチまたはダイの一方に、ウエブ部となる部分が接することにより位相基準面を形成する側面壁が設けられていることにより、曲げ加工で、最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、ウエブ部となる部分が前記側面壁に接することにより位相基準面を確実且つ容易に形成することができる。さらに、側面壁は、パンチの移動方向と平行に延びる(ジャーナル部に対するピン部の偏心方向および素材の軸方向に延びる、ともいえる)平面により形成されており、素材のウエブ部となる部分の側面の流動を規制するものであることにより、位相基準面を確実且つ容易に形成することが具現化できるとともに、ウエブ部の材料が側方に流動して設定された厚さとならない、或いは、設定された形状に成形されないなどの事態を回避でき、したがって設定された剛性を有するウエブ部を成形することができる。
請求項26のクランクシャフトの製造装置に係る発明によれば、複数のピン部とウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するに際して、素材のジャーナル部となる部分を割型からなるジャーナル部保持型の円形孔部に保持するとともに、ピン部となる部分を割型からなるピン部保持型の円形孔部に保持してケース内に収容し拘束した状態で、軸方向加圧手段により素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さのウエブ部を成形する。このとき、ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方が、ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束されていることにより、ジャーナル部に対する各ピン部の偏心方向の位相が正確でない場合であっても、素材を軸法王に加圧するときに、保持型に無理な力が加わり変形されるのを防止することができるため、したがって、保持型の摩耗が低減されることから、保持型の寿命を延ばすことができる。
なお、ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方が、さらに、前記ケース内で周方向に弾性的に回動可能に拘束されていることにより、ジャーナル部に対する各ピン部の偏心方向の位相が正確でない場合であっても、素材を軸法王に加圧するときに、保持型に無理な力が加わり変形されるのをさらに確実に防止することができる。また、少なくともピン部保持型が、ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとにより構成されており、ケースは、開閉可能な半割状に構成されるとともに、この半割状のケースに割型からなるジャーナル部保持型とピン部保持型の軸方向スライドとを保持する保持キーが半割状のケースにそれぞれ設けられており、保持キーにより、ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方が、ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束され、または、ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束され且つケース内で所定の周方向位置に弾性復帰可能に付勢されていることにより、ジャーナル部に対する各ピン部の偏心方向の位相が正確でない場合であっても、素材を軸法王に加圧するときに、保持型に無理な力が加わり変形されるのをさらに確実に防止することができる。さらにまた、素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施す予備成形装置をさらに備えていることにより、素材を軸方向に加圧するときに必要な力を低減させることができる。
請求項30のクランクシャフトに係る発明によれば、素材を曲げ加工するときにそのウエブ部となる部分の側面が材料の流動を規制されて平面状に成形され、軸方向に加圧してウエブ部を所定の厚さに成形することにより、ウエブ部のジャーナル側およびピン部側の端部の肉が張り出しているため、ウエブ部の剛性を容易に且つ確実に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明により成形される粗形材の実施の一形態を示した正面図である。
【図2】本発明により成形されるクランクシャフトの実施の一形態を示した正面図である。
【図3】本発明の実施の一形態における予備成形装置の全体を説明するために示した概略図である。
【図4】図3の部分拡大断面図である。
【図5】本発明の実施の一形態における仕上成形装置の全体を説明するために示した概略図である。
【図6】本発明における予備成形装置のパンチとダイのいずれか一方の成形手段の、実施の一形態を部分的に示した説明図である。
【図7】本発明における予備成形装置のパンチとダイのいずれか一方の成形手段の、図6とは異なる実施の一形態を部分的に示した説明図である。
【図8】図7に示したように構成された予備成形装置のパンチにより粗形材のピン部となる部分を、仕上成形装置の割型からなるピン部保持型の円形孔部の底部に長軸方向の端部が当接するとともに、ピン部保持型の開口部と短軸方向の端部が隙間を生じて対向することとなる楕円または長円に成形する状態を示した説明図である。
【図9】本発明により仕上成形工程を開始するときの状態を説明するために示した断面である。
【図10】図9の状態から、仕上成形工程の途中の状態を説明するために示した断面である。
【図11】図10の状態から、仕上成形工程を完了したときの状態を説明するために示した断面である。
【図12】本発明の位相基準面を予備成形装置のダイに形成した場合の実施の一形態を説明するために示した断面図である。
【図13】図12に示したダイにより粗形材のウエブ部となる部分に位相基準面を形成する状態を示した説明図である。
【図14】位相基準面が形成された粗形材を部分的に示した説明図である。
【図15】予備成形工程で、最初のピン部となる部分とこれに連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに形成された位相基準面に基づいて、次の他のピン部となる部分とこれに連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときの、ジャーナル部となる部分の軸回りの位相を位置決めされる状態を説明するために示した部分断面図である。
【図16】図15に示した粗形材を仕上成形することにより成形された本発明のクランクシャフトのウエブ部の形状を説明するために部分的に示した正面図とその断面図である。
【図17】図16に示したクランクシャフトと比較するために、図15に示したように平面状の位相基準面が形成されていない粗形材を仕上成形することにより成形されたクランクシャフトのウエブ部の形状を説明するために部分的に示した正面図とその断面図である。
【図18】本発明の仕上成形装置の実施の一形態を説明するために示した仕上成形工程を開始する前の状態の断面図である。
【図19】図18の状態から、仕上成形工程を完了した状態の断面図である。
【図20】図19の断面図である。
【図21】半割状のケースと割型からなるピン部保持型を開いて成形されたクランクシャフトを取り出す状態を説明するために示した図19の分解図である。
【図22】ピン部保持型をケース内で回動可能に構成した場合の実施の形態を説明するために示した断面図である。
【図23】ピン部保持型をケース内で回動可能に且つケース内で所定の周方向位置に弾性的に回動可能に拘束された構成とした場合を説明するために示した断面図である。
【図24】従来の技術により予備成形された粗形材を説明するために示した部分拡大図である。
【図25】従来の技術において、粗形材を軸方向に加圧して圧縮成形する仕上成形工程を説明するために示した断面図である。
【図26】従来の技術により、ウエブ部間のピッチが所定寸法に形成されたクランクシャフトを説明するために示した部分拡大図である。
【図27】従来の技術における予備成形工程で、粗形材を軸方向に加圧して圧縮成形する時の材料の流動を説明するために示した部分拡大断面図である。
【図28】割型からなる保持型が、仕上成形工程中に材料が流動してピン部が拡径することによる力を受けて変形する様子を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
最初に、本発明のクランクシャフトの製造装置の実施の一形態を図に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態においては、直列4気筒の内燃機関に使用されるクランクシャフト100を製造する場合により説明するが、本発明はこの実施の形態に限定されることはなく、直列4気筒以外の他の形態の内燃機関、さらには、内燃機関以外の装置などに用いられるクランクシャフトと、その製造装置および製造方法にも適用することができる。
【0015】
本発明のクランクシャフトの製造装置は、概略、素材1,10を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部Jと、このジャーナル部Jから偏心する断面円形のピン部Pと、ジャーナル部Jとピン部Pとの間に延びるウエブ部Wとを有するクランクシャフト100を製造するための装置であって、割型からなり素材1,10のジャーナル部となる部分jを保持するための円形孔部35を形成するジャーナル部保持型30と、割型からなり素材1,10のピン部となる部分pを保持するための円形孔部36を形成するピン部保持型31と、素材1,10を軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さに成形する軸方向加圧手段33とを有しており、さらに、素材1,10のジャーナル部となる部分jをジャーナル部保持型30に保持するとともに、ピン部となる部分pをピン部保持型31に保持したときに、ジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pの少なくとも一方を、対応する割型の円形孔部35と36の一方または双方の底部35aと36aの一方または双方に当接し、且つ、割型の開口部35bと36bの一方または双方にとの間に隙間が生じるような断面形状に成形するための成形手段27を備えている。
【0016】
この実施の形態におけるクランクシャフトの製造装置は、大きく分けて、棒状のまた線状(本発明では、これらを総じて棒状という)の素材1を曲げ加工してウエブ部となる部分wを所定の厚さでピン部となる部分pとジャーナル部となる部分jとに対して曲げ成形して、ピン部となる部分pをジャーナル部となる部分jに対して所定量偏位させる予備成形装置2と、この予備成形された素材(この実施の形態では、このように予備成形された素材を粗形材10と称することとする。)をその軸方向に加圧してそのウエブ部となる部分wを潰すようにして所定の厚さにウエブ部Wを成形する仕上成形装置3とを含んでいる。
【0017】
図1〜図5は、棒状の素材1を予備成形してなる粗形材10と、この粗形材10から製造されるクランクシャフト100の実施の一形態と、このようなクランクシャフト100を製造するための装置2,3の基本的な構成の実施の一形態を示したものである。なお、以下の記載と図面において、特に複数のピン部Pを有することに限定されないクランクシャフト100について説明する場合には、ジャーナル部J、ピン部P、ウエブ部Wと、また、その粗形材10について説明する場合には、ジャーナル部となる部分j、ピン部となる部分p、ウエブ部となる部分wと記載することとし、一方、特に複数のピン部Pを有するクランクシャフト100について説明する場合には、各部のジャーナル部J、ピン部P、ウエブ部Wとを、また、その粗形材10について説明する場合には、各部のジャーナル部となる部分j、ピン部となる部分p、ウエブ部となる部分wとを、それぞれ特定するために、それぞれのアルファベット符号の後に続けて番号を付して記載することとする。また、本発明のクランクシャフトの製造装置における各部材の形状を容易に特定するために、図において部材の端面など断面でない部分にもハッチングを描いている場合があることに注意されたい。図において、同一符号は同様の部分または相当する部分に付すものとする。
【0018】
図1は、棒状の金属素材1を曲げ加工して(予備成形工程)成形された粗形材10の実施の一形態を示したものであり、図2は、図1に示した粗形材10を軸方向に加圧して(仕上成形工程)成形されたクランクシャフト100を示したものである。クランクシャフト100は、回転中心軸となるジャーナル部Jと、このジャーナル部Jから偏心するピン部Pと、ジャーナル部Jとピン部Pとの間に延びるウエブ部Wとを有しており、ジャーナル部Jとピン部Pの断面が円形に形成される。図2に示した実施の形態におけるクランクシャフト100は、ピン部P2とP3が同じ方向に偏心しており、また、ピン部P1とP4が同じ方向に偏心している。なお、成形されたクランクシャフト100は、所定のウエブ部Wにカウンタウエイトを設け、ジャーナル部Jとピン部Pを研削し、また、油孔を形成するなど、必要に応じて別の工程をさらに行うこともできる。
【0019】
予備成形装置2は、素材1のピン部となる部分pを軸直交方向に加圧するとともに、ピン部となる部分pとこれに隣接するジャーナル部となる部分jとの軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、素材1のピン部となる部分pをジャーナル部となる部分jに対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分wを所定の厚さでピン部となる部分pとジャーナル部となる部分jとに対して曲げるものであり、この実施の形態では、素材1のピン部となる部分pを拘束し把持するパンチ20と、素材1のパンチ20に把持されたピン部となる部分pに隣接するジャーナル部となる部分jを拘束し把持するダイ21,21と、パンチ20をダイ21に対して相対的に素材の軸直交方向に偏位させるよう駆動する軸直交方向駆動手段(後述する)と、ダイ21をパンチ20に対して近付けるように素材1の軸方向に駆動する軸方向駆動主段26とを備えており、予備成形装置2に成形手段27が含まれている。成形手段27は、素材1のジャーナル部保持型30とピン部保持型31に保持されるジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pの少なくとも一方の断面形状を、長軸方向の端部が対応する割型の円形孔部35と36の一方または双方の底部35aと36aの一方または双方に当接し、短軸方向の端部が割型の開口部35bと36bの一方または双方にとの間に隙間が生じる断面形状に成形するものである。
【0020】
予備成形装置2のパンチ20は、素材1を軸直交方向に加圧する本体20aと、この本体20aの下方に設けられて素材1のピン部となる部分pを把持するパンチ押え20bとを有している。本体20aとパンチ押え20bにより形成される素材1のピン部となる部分pと接して把持する部分は、粗形材10のピン部となる部分pを所定の断面形状(後述する)に成形するための成形手段27を構成する。パンチ押え20bは、本体20aに対して開閉または着脱可能に取り外すことができる。素材1は、本体20aに対してパンチ押え20bを開いた状態または取り外した状態で配置され、その後本体20aに対してパンチ押え20bを閉じまたは取り付けてクランプなどによってその状態を保持することにより、そのピン部となる部分pが把持される。パンチ20は、上盤23に取り付けられる。上盤23は、軸直交方向駆動手段として例えば素材1の軸直交方向に伸長退縮駆動するプレスのラムに接続されている。本体20aは、上盤23を下降させることによって把持した素材1のピン部となる部分pを軸直交方向(図3および図4の上下方向)に加圧する(矢印R)。
【0021】
予備成形装置2のダイ21は、パンチ20と同様に、パンチ20との間でウエブ部となる部分wを潰すように成形する本体21aと、この本体21aの上方に設けられて素材1のジャーナル部jとなる部分を把持するダイ押え21bとを有しており、ダイ押え21bは、本体21aに対して開閉または着脱可能に取り外すことができる。そして、ダイ21は、素材1の軸方向(図3および図4の左右方向)に移動可能に設けられている。本体21aとダイ押え21bにより形成される素材1のジャーナル部となる部分jを把持する部分は、粗形材のジャーナル部となる部分jを所定の断面形状(後述する)に成形するための成形手段27を構成する。
【0022】
軸方向駆動手段26は、例えば図3に参照されるように、上盤23の下降によって互いに寄せるように移動するカム機構により構成することができる(以下、カム機構26とする)。軸方向駆動手段を構成するカム機構26は、駆動カム26aと、従動カム26bによって構成されている。なお、図3に示した実施の形態におけるカム機構26は、一対のダイ21,21をそれぞれ軸方向に移動させる両カム機構26のカム面が同じ角度に設定されており、上盤23の下降によって両ダイ21,21を同様に寄せるように軸方向に移動させるものとなっている。駆動カム26aと従動カム26bは、パンチ20とダイ21によって把持された素材1と干渉することがないように、素材1の側部(図3においては、紙面に対して手前と奥)に位置し、両カム26a、26bのカム面が対向するように配設される。駆動カム26aは、軸方向に対して移動することがないように上盤23の下面に設けられており、従動カム26bは、軸方向に移動可能に設けられてダイ21と連結されている。上盤23の下降に伴って駆動カム26aが押し下げられると、従動カム26bによって一対のダイ21,21が互いに寄るように軸方向に移動する。この実施の形態におけるカム機構26は、駆動カム26aが下降しておらず従動カム26bが互いに寄るように軸方向に移動していない(すなわち、素材1の予備成形が開始されていない)状態で、駆動カム26aと従動カム26bのカム面が互いに接するよう設定されている。従って、この実施の形態では、上盤23の下降による素材の軸直交方向の加圧とカム機構26による素材の軸方向の加圧とが同時に開始される構造となっている。なお、軸方向駆動手段26は、カム機構に限定されることはなく、軸方向に伸長・退縮する油圧シリンダなど、他のアクチュエータにより構成することもできる。
【0023】
この実施の形態における仕上成形装置3は、図5に示すように、割型からなり粗形材10のジャーナル部となる部分jを保持するための円形孔部35を形成するジャーナル部保持型30と、割型からなり粗形材10のピン部となる部分pを保持するための円形孔部36を形成するピン部保持型31と、保持型30,31をケース32内で軸方向に移動させて粗形材10のウエブ部となる部分wを型板30,31の間で潰して所定の厚さのウエブWを成形するよう軸方向に圧力を加える軸方向加圧手段33とを備えており、さらに、保持型30,31を径方向(軸直交方向)に拘束した状態で軸方向に移動可能に保持するケース32も備えている。
【0024】
仕上成形装置3の保持型30,31は、それぞれジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pとを保持し、また取外すことができるように開閉または着脱可能に取り外すことができるよう分割してなる割型(後述する)により構成されている。各保持型30,31の外縁は、ケース32の内周面と対応した形状および大きさに成形されており、この実施の形態ではほぼ円形に成形されている。そして、各保持型30,31は、この実施の形態の場合、円形孔部35,36(ジャーナル部Jおよびピン部Pの断面)の中心を通り、ジャーナル部Jに対するピン部Pの偏心方向に沿った分割線で2つに分割された割型からなることから、各割型はほぼ全体の形状がそれぞれ半円形に成形されており、互いの割型を合わせることにより、それぞれジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pとを保持するための円形の孔部35,36が形成される。仕上成形工程を行う際に端部に位置するジャーナル部となる部分jを保持するジャーナル部保持型30は、そのジャーナル部となる部分jから少なくとも粗形材10の端部までの長さ以上に軸方向に延びる被加圧部30aを有している。
【0025】
さらに、この実施の形態におけるピン部保持型31は、ケース32の内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライド41と、この軸方向スライド41に保持されてケース32の径方向に移動可能に摺動する径方向スライド42とにより構成されており、軸方向スライド41と径方向スライド42がそれぞれ分割した構成41Aと41B、42Aと42Bとなっている。ピン部保持型31の軸方向スライド41は、少なくとも成形するクランクシャフト100のピン部Pの軸方向長さとこのピン部Pの両端を支持する両ウエブ部W,Wを成形する厚さとを加えた厚さ以下の厚さを有する板状に成形されたもので、その外周形状がケース32の内部の断面形状と相似形で、ケース32の内部で軸方向に摺動できるようケース32の内面よりも僅かに小さく成形されている。そして、ピン部保持型31の軸方向スライド41は、成形するクランクシャフト100のウエブ部Wの形状や大きさ(幅と長さ)などに応じて径方向に延在する開口43が厚さ方向に貫通するよう形成されており、この開口43の長手方向に沿って中央で分割された一対の部材41A,41Bにより構成されている。さらに、開口43の長手方向側壁には、径方向スライド42の側縁を摺動可能に保持するための溝44がそれぞれ形成されている。
【0026】
次に、本発明のクランクシャフトの製造装置のさらなる詳細を、図6〜図11に基づいて説明する。なお、本発明の実施の一形態には、上述したクランクシャフトの製造装置の基本的な構成が含まれており、同じ部分または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0027】
本発明のクランクシャフトの製造装置は、予備成形装置2のパンチ20とダイ21の少なくとも一方が、粗形材10のジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pの少なくとも一方を、仕上成形装置3の対応する保持型30および/または保持型31を構成する割型の、円形孔部35および/または36の底部に粗形材10の当接させ、且つ、この円形孔部35および/または36の開口部との間に隙間が生じるような断面形状に成形するための成形手段27を有している。そして、この成形手段27は、パンチ20の移動方向と平行に短軸D1が位置し、且つ、この短軸D1と素材1の軸方向との双方に直交する方向に長軸Dが位置するように成形されている。
【0028】
図6は、ピン部となる部分pを把持するパンチの成形手段27の実施の一形態を説明するために示したものであり、図7は図6と異なる実施の形態を説明するために示したものである。
図6に示した実施の形態では、パンチ本体20aとパンチ押え20bの衝合面を本来の衝合面(図6に鎖線で示されている)から、それぞれ所定量Tを切削することなどにより除去した構成とされている。このように構成することにより、パンチ本体20aに対してパンチ押え20bを開放または取り外し、素材1のピン部となる部分pをパンチ本体20aとパンチ押え20bとの間に配置し、パンチ本体20aに対してパンチ押え20bを閉じまたは取り付けてクランプなどによって締め付け保持して、予備成形を行う。すると、図8の(b)に参照されるように、ピン部となる部分pの断面形状が、ジャーナル部となる部分jに対するピン部となる部分pの偏心方向が短軸D1方向となり、この方向に対して図8の直交する方向が長軸D方向となるほぼ楕円または長円の粗形材10が形成されることとなる。
【0029】
また、図7に示した実施の形態では、素材1の径dがピン部Pの径Dよりも小さく、ピン部となる部分pの短軸D1とほぼ同じに成形されており、パンチ本体20aとパンチ押え20bにより形成される成形手段27の開口の幅(長軸)は、図7に鎖線で示した成形するピン部Pの径Dとほぼ同じに成形されている。このように構成されたパンチ本体20aとパンチ押え20bとにより素材1のピン部となる部分を保持すると、図8の(a)に示すように、素材と、パンチ本体およびパンチ押えの衝合面近くとの間には隙間が生じていることとなる。そして、パンチ20を下降させて予備成形を行うと、図8の(b)に示したように、粗形材10のピン部となる部分pは、これに隣接するウエブ部となる部分wから材料がピン部となる部分pに流動してその径を拡大させ、パンチ本体20aおよびパンチ押え20bの衝合面近くに生じていた隙間が無くなり、成形手段27の形状に応じて長軸Dと短軸D1を有する楕円または長円の断面形状に成形されることとなる。
【0030】
なお、上述した実施の形態では予備成形装置2のパンチ20の成形手段27がピン部となる部分pの断面形状を楕円または長円に成形するよう構成した場合により説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されることはなく、パンチ20の成形手段27と同様に、ジャーナル部となる部分jの断面形状が楕円または長円となるように成形するようダイ21の成形手段27だけを単独で、または、上述したようにパンチ20と共に構成することもできる。
【0031】
次に、本発明のクランクシャフトの製造方法の実施の一形態を、上述したように構成された製造装置を用いる場合によって、その作動と共に、主に図9〜図11に基づいて詳細に説明する。
本発明のクランクシャフトの製造方法は、概略、素材1,10を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部Jと、このジャーナル部Jから偏心する断面円形のピン部Pと、ジャーナル部Jとピン部Pとの間に延びるウエブ部Wとを有するクランクシャフト100を製造するための方法であって、素材1,10のジャーナル部となる部分jを、割型からなるジャーナル部保持型30により形成される円形孔部35で保持すると共に、ピン部となる部分pを割型からなるピン部保持型31により形成される円形孔部36で保持し、素材1,10を軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さに成形する場合において、素材1,10のジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pの一方または双方を、対応する保持型30と31の一方または双方の円形孔部35と36の一方または双方の底部(図では36aのみを示した)に当接させ、且つ、その保持型30と31の一方または双方の円形孔部35と36の一方または双方の開口部との間に隙間を生じさせた状態として、素材1,10の軸方向への加圧を開始するものである。そして、この実施の形態においては、棒状の素材1のピン部となる部分pを軸直交方向に加圧するとともに、このピン部となる部分pとこれに隣接するジャーナル部となる部分j、jとの軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、ピン部となる部分pをジャーナル部となる部分jに対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分wを所定の厚さでピン部となる部分pとジャーナル部となる部分jとに対して曲げる予備成形を施し、さらに、この予備成形で、素材10のジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pの一方または双方を、対応する割型の円形孔部35,36の底部(図では36aのみを示した)と接し且つ開口(図では36bのみを示した)との間に隙間が生じるように成形するものである。
【0032】
クランクシャフト100を製造するにあたり、前もって、予備成形装置2のパンチ20および/またはダイ21の、素材1のジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pの少なくとも一方の断面を、楕円または長円に成形する部分を把持する成形手段27が、パンチ20の移動方向と平行に短軸D1方向が位置し、且つ、この短軸D1方向と素材1の軸方向との双方に直交する方向に長軸Dが位置するように成形されていることは、上述したとおりである。
【0033】
クランクシャフト100を製造するに際して、最初に棒状また線状の金属素材1のジャーナル部となる部分jを予備成形装置2のダイ21,21に把持させ、ピン部となる部分pをパンチ20に把持させ、パンチ20を素材1の径方向に移動させると共にダイ21,21を互いに近付けるように移動させて、予備成形工程を行う。素材1のジャーナル部となる部分jおよび/またはピン部となる部分pは、ダイ21,21および/またはパンチ20の成形手段27により、後の仕上成形工程で、仕上成形装置3の割型からなる保持型30および/または31の円形孔部35および/または36の底部(図では36aのみを示した)に当接し、開口部(図では36bのみを示した)と隙間が生じることとなるように、断面形状が楕円または長円に成形されることは、上述したとおりである。
【0034】
このようにジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pの少なくとも一方の断面形状が楕円または長円に成形された粗形材10は、図9に示すように、仕上成形装置3の割型からなる保持型(図ではピン部保持型31のみを示した)の間にジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pをそれぞれ配置し、割型を互いに合わせることにより形成された円形孔部35,36に保持させる。このとき、割型からなる保持型30,31のそれぞれに形成されて互いに合わせたときに円形孔部35,36を構成する半円形孔部は、その底部(図では36aのみを示した)に粗形材10のジャーナル部となる部分jおよび/またはピン部となる部分pの長軸D方向の端部が接しており、粗形材10のジャーナル部となる部分jおよび/またはピン部となる部分pの短軸D1方向の端部が円形孔部35および/または36の開口(図では36bのみを示した)に対して隙間が生じた状態となっている。
【0035】
この状態で、保持型30,31と共に粗形材10を半割状のケース32A,32Bの間に配置してケース32を閉じ拘束する。そして、仕上げ成形を開始すべく、図5に示したように、軸方向加圧手段33により軸方向に加圧して保持型30,31をケース32内で軸方向に移動させ、粗形材10のウエブ部となる部分wを型板30,31の間で潰し所定の厚さ、所定のピッチでウエブWを形成する。
【0036】
このとき、ウエブ部となる部分wの材料がジャーナル部Jとピン部Pに流動してその径を拡大させるように作用する(図27を参照)。このとき、本発明では、上述したように、粗形材10のジャーナル部となる部分jおよび/またはピン部となる部分pは、その長軸D方向の端部が保持型30および/または31の円形孔部35,36を構成する半円形孔部の底部(図では36aのみを示した)に接しており、その短軸D1方向の端部が円形孔部35,36を構成する半円形孔部の開口部(図では36bのみを示した)に対して離れている状態となっている。そのため、ウエブ部となる部分wの材料流動によるジャーナル部Jとピン部Pの径を拡大させる作用は、図10に示すように、仕上成形を開始したときには保持型30および/または31の半円形孔部の底部(図では36aのみを示した)に集中荷重Lを付与することとなり、その結果、割型からなる保持型30および/または31の互いの合わせ面を閉じさせる方向に作用する力Mが発生することとなる。そして、ジャーナル部Jおよび/またはピン部Pは、ウエブ部となる部分wの材料流動によりその径が拡大しようとする結果、図11に示すように、円形孔部35,36を構成する半円形孔部に対して生じていた隙間が無くなって接することとなり、断面を高い真円度で成形することができる。そのため、仕上成形が完了するときには、図10に示したような集中荷重Lも、互いの合わせ面を閉じさせる方向に作用する力Mも無くなり、保持型30および/または31を実際に変形させるようなことはなく、したがって、ジャーナル保持型30の外周面とケース32の内周面との摩耗、および/または、ピン部保持型31の径方向スライド42と軸方向スライド41との摺動面ならびに軸方向スライド41の外周面とケース32の内周面との摩耗を低減させることができ、型寿命を向上させることができる。なお、本発明の方法においては、上述した実施の形態に限定されることはなく、予備成形工程以外の別の工程で、粗形材10のジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pの少なくとも一方を、仕上成形装置3の対応する保持型30,31の円形孔部35および/または36の底部(図では36aのみを示した)に当接させ、且つ、この保持型30,31の開口部(図では36bのみを示した)との間に隙間を生じさせ得る断面形状に成形することも含まれる。
【0037】
次に、本発明のクランクシャフトの製造装置の別の実施の形態を、図12〜図17に基づいて説明する。なお、上述した実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明することとする。
【0038】
本発明のクランクシャフトの製造装置は、概略、素材1、10を偏心据え込みして、複数のピン部Pと各ピン部Pの両端をそれぞれ支持するウエブ部Wとを有するクランクシャフト100を製造するためのものであり、予備成形装置2が、棒状の素材1のピン部およびウエブ部となる部分p、w毎に、ピン部となる部分pを軸直交方向に加圧するとともに、このピン部となる部分pとこれに隣接するジャーナル部となる部分j、jとの軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、順次曲げ加工し、各ピン部となる部分pをジャーナル部となる部分jに対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分wを所定の厚さでピン部となる部分pとジャーナル部となる部分jとに対して曲げてなる粗形材10を成形する予備成形装置2を含み、少なくとも最初のピン部となる部分pおよびこのピン部と連続するウエブ部となる部分wを曲げ加工するときに、後の他のピン部となる部分pおよびこのピン部と連続するウエブ部となる部分wを曲げ加工するときの位相の基準となる位相基準面15を成形し、後のピン部となる部分pおよびこのピン部と連続するウエブ部となる部分wを曲げ加工するときに先に形成された位相基準面15と接して素材1の軸回りの位相を位置決めするための側面壁28を備えている。そして、この予備成形装置2は、素材1のピン部となる部分pを拘束し把持するパンチ20と、素材1のパンチ20に把持されたピン部となる部分pに隣接するジャーナル部となる部分jを拘束し把持するダイ21,21と、パンチ20をダイ21に対して相対的に素材の軸直交方向に偏位させるよう駆動する軸直交方向駆動手段と、ダイ21をパンチ20に対して近付けるように素材1の軸方向に駆動する軸方向駆動主段26とを備えており、側面壁28は、パンチ20またはダイ21の一方に設けられている。さらに、側面壁28は、パンチ20の移動方向および素材1の軸方向と平行に延びる平面により形成されており、粗形材10のウエブ部となる部分Wの側面の流動を規制するものである。
【0039】
側面壁28は、素材1を曲げ加工することによりウエブ部となる部分wの両側に位置するように設けられており、予備成形時にウエブ部となる部分wが接することによりその材料の側方への流動を規制して位相基準面15を形成するよう形成されている。そして、図12および図13に示した実施の形態では、側面壁28が予備成形装置2の最初に予備成形するダイ21のダイ本体21aに形成されている。また、図15に示したように、後の工程で、次にピン部となる部分pおよびこのピン部と連続するウエブ部となる部分wを予備成形するときにそのウエブ部となる部分wに連続するジャーナル部となる部分jを保持するダイ21の、先の工程で位相基準面15が形成されたウエブ部となる部分w側にも、その形成された位相基準面15と接するように形成されている。なお、この後の予備成形するときにジャーナル部となる部分jを保持するダイ21の、先に位相基準面15が形成されたウエブ部となる部分w側に設けられる側面壁28は、図15に鎖線で示したように、ピン部となる部分pの偏心方向が異なる場合にもそのウエブ部となる部分に形成された位相基準面15と接することができるような長さ(図15においては高さ)に形成されている。本発明はこの実施の形態に限定されることはなく、予備成形装置2のパンチ20のパンチ本体20aなどに側面壁28を設けることもできる。
【0040】
次に、本発明のクランクシャフトの製造方法の別の実施の形態を、図12〜図17に基づいて説明した実施の形態における製造装置を用いる場合によって、その作動と共に説明する。なお、上述した実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみを説明することとする。
【0041】
本発明のクランクシャフトの製造方法は、概略、素材1,10を偏心据え込みして、複数のピン部Pと各ピン部Pの両端をそれぞれ支持するウエブ部Wと各ウエブ部Wの基端部を支持して回転中心となるジャーナル部Jとを有するクランクシャフト100を製造するためのものであり、棒状の素材1をピン部およびウエブ部となる部分p、w毎に順次曲げ加工する予備成形を行って粗形材10を成形し、この粗形材10の、ジャーナル部となる部分jを割型からなるジャーナル部保持型30により形成される円形孔部35で保持すると共に、ピン部となる部分pを割型からなるピン部保持型31により形成される円形孔部36で保持し、この粗形材10軸方向に加圧してウエブ部となる部分をwジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さに成形する場合において、予備成形を行うに際して、少なくとも最初のピン部となる部分pおよびこのピン部と連続するウエブ部となる部分wを曲げ加工するときに、後の他のピン部となる部分pおよびこのピン部と連続するウエブ部となる部分wを曲げ加工するときの素材1の軸周りの位相の基準となる位相基準面15を成形するものである。そして、予備成形を行うに際して、素材のピン部となる部分pをパンチ20で把持すると共に、このピン部となる部分pの両端に隣接するジャーナル部となる部分jをダイ21、21で把持し、パンチ20を素材1の軸直交方向に移動させると共にダイ21、21をパンチ20に寄せるよう軸方向に加圧する場合に、パンチ20またはダイ21の一方に位相基準面15を形成する側面壁28を予め設けておき、予備成形において、最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、ウエブ部となる部分wが側面壁28に接することにより位相基準面15を形成するものである。さらに、側面壁28は、パンチ20の移動方向および素材1の軸方向と平行に延びる平面により形成されており、この側面壁28によりウエブ部となる部分wの側面の流動を規制する。
【0042】
クランクシャフト100を製造するにあたり、前もって、予備成形装置のダイ21またはパンチ20に側面壁28を設けておくことは上述したとおりである。クランクシャフト100を製造するに際して、最初の棒状また線状の金属素材1のジャーナル部となる部分jを予備成形装置2のダイ21,21に把持させ、ピン部となる部分pをパンチ20に把持させ、パンチ20を素材1の径方向に移動させると共にダイ21,21を互いに近付けるように移動させて、最初の予備成形工程を行う。このジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pとの間の部分、すなわちウエブ部となる部分wは、ダイ本体21aとパンチ本体20との間で所定量押し潰されることにより、ジャーナル部となる部分jとピン部となる部分pの軸方向からみて側方に材料が流動して拡がろうとしながら成形される。しかしながら、この実施の形態では、ウエブ部となる部分wの両側に側面壁28が形成されているため、図13に鎖線で示すように、ウエブ部となる部分wの側方への材料の流動が規制される。そのため、図14に示すように、ウエブ部となる部分wの側面には平面状の位相基準面15が形成されることとなる。
【0043】
最初の曲げ加工でピン部となる部分pとこれに連続するウエブ部となる部分wの予備成形が終わると、図15に示すように、次の曲げ加工でピン部となる部分pをパンチ20に把持させ、また、このピン部となる部分pに隣接するジャーナル部jとなる部分をダイ21に把持させる。このとき、先に曲げ加工されたウエブ部となる部分wに形成された位相基準面15にダイ21の側面壁28が当接されて、素材1の軸回りの位相が正確且つ容易に位置決めされる。そのため、後の予備成形でピン部となる部分pとウエブ部となる部分wを、ジャーナル部となる部分jに対して軸回りに正確な位相で容易に成形することができることから、後の仕上成形工程で、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31とのケース32内での位相が変化することがなく、したがって、ジャーナル保持型30の外周面とケース32の内周面との摩耗や、ピン部保持型31の外周面とケース32の内周面との摩耗、特に、ピン部保持型31が軸方向スライド41と径方向スライド42とを備えた構成である場合には、径方向スライド42と軸方向スライド41との摺動面ならびに軸方向スライド41の外周面とケース32の内周面との摩耗を低減させることができ、また、軸方向スライド41と径方向スライド42に無理な力が加わるのを防止することができることから、型寿命を向上させることができる。さらにまた、予備成形時にウエブ部となる部分wの側面がダイ21の側面壁28によってその材料の流動を規制されることにより、仕上成形工程において、粗形材10を軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さに成形するときに、ウエブ部WのジャーナルJ側およびピン部P側の端部の肉を張り出させ、したがって、ウエブ部Wの剛性が向上したクランクシャフト100を製造することができる。
【0044】
なお、本発明の方法では、予備成形装置2のパンチ20またはダイ21に側面壁28を設けて、かかる側面壁28により位相基準面15を形成することに限定されることはなく、他の構成要素により位相基準面15を形成することも含まれる。
【0045】
次に、本発明のクランクシャフトの実施の一形態を、主に図16に基づいて説明する。なお、この実施の形態における説明では、上述した装置と方法の実施の形態で説明した事項について同じ符号を付してその説明を省略し、新たな事項についてのみ説明することとする。
本発明のクランクシャフト100は、概略、素材1,10を偏心据え込みすることにより、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部Jと、このジャーナル部Jから偏心する断面円形のピン部Pと、ジャーナル部Jとピン部Pとの間に延びるウエブ部Wとが成形されたクランクシャフト100であって、素材1を曲げ加工し、軸方向に加圧してそのウエブ部となる部分wを潰し、ウエブ部Wが所定の厚さに成形されてなるものである場合において、素材1を曲げ加工するときにそのウエブ部となる部分wの側面が材料の流動を規制されて平面状に成形されており、その後に軸方向に加圧して所定の厚さのウエブ部Wを成形することにより、ウエブ部WのジャーナルJ側およびピン部P側の端部の肉が張り出している。
【0046】
図16は本発明により成形されたクランクシャフト100のウエブ部W(a)と、その拡大した破断面(b)を示したものであり、図17は本発明と比較するために、側方への材料の流動を規制することなく、自由に材料を流動させて成形したクランクシャフト100’のウエブ部W’(a)と、その拡大した破断面(b)を示したものである。
上述したように、ダイ21に設けられた側面壁28により予備成形でウエブ部となる部分wの側面は材料の流動が規制されて平面状に形成されている(図13を参照)。そのため、後の仕上成形工程で、ウエブ部となる部分wを保持型30,31間で潰すようにして所定の厚さのウエブ部Wを成形すると、予備成形工程でウエブ部となる部分wの側面が平面状の部分を形成されたことによって、仕上成形工程でウエブ部Wの側方への材料の流動が阻害され、その結果、図16の(a)に示すように、ウエブ部Wのピン部Pとジャーナル部Jの側の端部に材料が流動し、かかる端部の肉が張り出すこととなる。そのため、ウエブ部Wの剛性を向上させることができる。
【0047】
これに対して、ダイ21などに側面壁28を設けることなく、予備成形でウエブ部となる部分wの側面の材料を自由に流動させた場合には、後の仕上成形工程で、ウエブ部となる部分wを保持型30,31間で潰すようにして所定の厚さのウエブ部W’を成形すると、図17(a)に示すように、ウエブ部W’のピン部Pとジャーナル部Jの側の端部に材料が流動せず、したがって、かかる端部の肉が張り出すことがない。そのため、ウエブ部W’の剛性を向上させることは困難となる。
【0048】
なお、上述した実施の形態では、予備成形時に粗形材10のウエブ部となる部分wの側面の材料の流動を規制して平面状の位相基準面15を形成した場合で説明したが、仕上成形装置3における軸方向スライド41の開口43を成形するクランクシャフト100のウエブ部Wに応じた所定の幅H(図11に示した)に成形し、仕上成形工程においても、ウエブ部Wを成形するときに幅方向への材料の流動を規制して、ウエブ部Wのジャーナル部J側およびピン部P側の端部の肉を張り出させるように構成してもよい。
【0049】
次に、本発明のクランクシャフトの製造装置のさらに別の実施の形態を、図18〜図23に基づいて説明する。なお、上述した実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明することとする。
【0050】
本発明のクランクシャフトの製造装置は、概略、素材1、10を偏心据え込みして、複数のピン部Pと各ピン部Pの両端をそれぞれ支持するウエブ部Wとを有するクランクシャフト100を製造するためのものであり、割型からなり素材10のジャーナル部となる部分jを保持する円形孔部35を形成するジャーナル部保持型30と、割型からなり素材1,10のピン部となる部分pを保持する円形孔部36を形成するピン部保持型31と、素材10を保持したジャーナル部保持型30とピン部保持型31が軸方向へ摺動可能に配置され拘束するケース32と、ケース32内で素材10を軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さに成形する軸方向加圧手段33とを有する場合において、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の少なくとも一方が、ケース32内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束されている。さらに、この実施の形態にいては、棒状の素材1をピン部およびウエブ部となる部分p、w毎に順次曲げ加工して、各ピン部となる部分pをジャーナル部となる部分jに対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分wを所定の厚さでピン部となる部分pとジャーナル部となる部分jとに対して曲げてなる粗形材10を成形する予備成形装置2を備えている。
【0051】
上述したように、ピン部保持型31は、ケース32の内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライド41と、軸方向スライド41に保持されてケース32の径方向に移動可能に摺動する径方向スライド42とにより構成されており、ケース32は、開閉可能な半割状に構成されている。
【0052】
そして、半割状のケース32A,32Bは、割型からなるジャーナル部保持型30とピン部保持型31の軸方向スライド41とを保持するための保持キー50がそれぞれ設けられており、保持キー50は、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の少なくとも一方を、ケース32内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束し、または、ケース32内で周方向に所定の範囲内で弾性的に回動可能に拘束するよう構成されている。
【0053】
粗形材10を仕上成形装置2に取り付け、また、成形されたクランクシャフト100を仕上成形装置から取り出すために、図21に示すように、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31は、割型により構成されており、ケース32もまた、半割状に形成されている。これらのジャーナル部保持型30とピン部保持型31がケース32からそれぞれ脱落などしないようにするために、図18および図19に示すように、半割状のケース32A,32Bの互いの衝合面には、ケース32の軸方向に延びる保持キー50が、ケース32A,32Bの内周面に突出するように配設されている。また、ピン部保持型31の軸方向スライド41A,41Bには、保持キー50を受ける凹部41aがそれぞれ形成されている。そして、ケース32A,32Bの内周面に軸方向スライド41A,41Bを配置し、軸方向スライド41A,41Bの凹部41aに保持キー50を係合させた状態でボルト51によってケース32A,32Bにそれぞれ締結されている。なお、図20に示すように、ピン部保持型31を構成する軸方向スライド41と径方向スライド42とは蟻溝44により摺動可能に係合されている。また、ジャーナル部保持形30も、軸方向スライド41A,41Bと同様に、凹部を形成して、保持キー50に係合されている。
【0054】
このように構成することにより、図21に示したように、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31がケース32から脱落などすることがなく、仕上成形時の軸方向の加圧にしたがってケース32の軸方向に移動することができるが、ケース32内で周方向に回転することはない。そのため、複数のピン部Pを有するクランクシャフト100を製造する場合に、粗形材10の各ピン部となる部分pの、ジャーナル部となる部分jに対する偏心方向の位相に誤差が生じていると、仕上成形時に保持型30と31、特にピン部保持型31に無理な力が加わり、ケース32の内周面と軸方向スライド41の外周面との間、および、軸方向スライド41と径方向スライド42との間の摺動面が摩耗したり変形するなどして型寿命が短くなる原因となる。
【0055】
そこで、この実施の形態では、図22に示すように、ピン部保持型31の軸方向スライド41A,41Bに形成する凹部41aに周方向の幅を持たせてある。これにより、ピン部保持型31は、ケース32内で凹部41aの周方向の幅の範囲内で周方向に回動可能に拘束されている。そのため、粗形材10の各ピン部となる部分pの、ジャーナル部となる部分jに対する偏心方向の位相に誤差が生じている場合であっても、ピン部保持型31がその位相の誤差に応じて周方向に回動するため、無理な力を受けないようにすることができる。なお、この実施の形態では、ピン部保持型31についてのみ説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されることはなく、ジャーナル部保持型部30も、軸方向スライド41A,41Bと同様に、周方向に所定の幅を有する凹部を形成して、ケース32内で凹部の周方向の幅の範囲内で周方向に回動可能に拘束するよう構成することができる。また、これとは反対に、ジャーナル部保持型部30の凹部を保持キー50の幅に応じて形成し、ジャーナル部保持型部30は、ケース32内で周方向に回動することなく、軸方向のみに移動するよう構成することもできる。
【0056】
次に、図23に基づいて本発明のクランクシャフトの製造装置の変形例を説明する。この実施の形態では、保持キー33の、軸方向スライド41A,41Bの凹部41aに係合する部分50aが周方向に弾性変形可能に構成されており、この構成によって、ピン部保持型31がケース32内で所定の範囲内で周方向に弾性的に回動可能に拘束されている。
【0057】
各保持キー50の、少なくともケース32内に突出する部分50aは、弾性変形可能に構成されている。図23に示した実施の形態では、各保持キー50のケース32内に突出する部分50aを弾性変形可能に構成するために、ケース32に固定されている部分よりも薄く一体成形している。しかしながら、各保持キー50は、ケース32の径方向における全長(幅)にわたって同じ薄さで成形することもできる。各保持キー50のケース32内に突出する部分50aの先端は、互いに面接触している側と反対側に突出するほぼ鉤形に形成されている。そして、図23に示した実施の形態では、図22に示した実施の形態と比較して、ピン部保持型31の軸方向スライド41A,41Bに形成する凹部41aの周方向の幅が小さく設定されている。
【0058】
このように構成されていることにより、ピン部保持型31を、ケース32内で凹部41aの周方向の幅と、保持キー50の凹部41a内での弾性変形の範囲内で周方向に弾性的に回動可能に拘束することができる。そのため、粗形材10の各ピン部となる部分pの、ジャーナル部となる部分jに対する偏心方向の位相に誤差が生じている場合であっても、ピン部保持型31がその位相の誤差に応じて周方向に回動することができる。そして、各保持キー50のケース32内に突出する部分50aの先端が軸方向スライド41A,41Bに形成する凹部の周方向壁面に接しても弾性変形するため、その接したときの衝撃を吸収するとともに、ピン部保持型31のケース32内で周方向に回動できる自由度が増加し、しかも、軸方向スライド41A,41Bに形成する凹部41aの周方向の幅を小さくすることができる。その結果、粗形材10の各ピン部となる部分pの、ジャーナル部となる部分jに対する偏心方向の位相に誤差が生じている場合であっても、ピン部保持型31がその位相の誤差に応じて周方向に回動するため、無理な力をさらに受けないようにすることができる。
【0059】
なお、この実施の形態においても、ピン部保持型31についてのみ説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されることはなく、保持キー50の少なくともケース内に突出する部分50aを、ケース32の軸方向にわたって全体に、弾性変形可能に構成し、かかる部分50aに対してジャーナル部保持型部30の凹部を係合させ拘束することもできる。また、上述した実施の形態と同様に、ジャーナル部保持型部30の凹部を保持キー50の幅および形状と対応させて形成し、ジャーナル部保持型部30は、ケース32内で周方向にほぼ回動することなく、軸方向のみに移動するよう構成することもできる。
【0060】
次に、本発明のクランクシャフトの製造方法のさらに別の実施の形態を、図18〜図23に示したように構成された装置を用いる場合により、その作動とともに説明する。なお、上述した実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明することとする。
【0061】
本発明のクランクシャフトの製造方法は、概略、素材1,10を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部Jと、ジャーナル部Jから偏心する断面円形のピン部Pと、ジャーナル部Jとピン部Pとの間に延びるウエブ部Wとを有するクランクシャフト100を製造するためのもので、ジャーナル部となる部分jを、割型からなるジャーナル部保持型30により形成される円形孔部35で保持すると共に、ピン部となる部分pを割型からなるピン部保持型31により形成される円形孔部36で保持してケース32内に配置し、軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さに成形する場合において、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の少なくとも一方を、ケース32内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束するものである。そして、この実施の形態においては、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の少なくとも一方を、さらに、ケース32内で周方向に弾性的に回動可能に拘束する。さらにまた、この実施の形態においては、ピン部保持型31を、ケース32の内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライド41と、この軸方向スライド41に保持されてケース32の径方向に移動可能に摺動する径方向スライド42とにより構成し、軸方向スライド41と径方向スライド42をそれぞれ分割して41Aと41B、42Aと42Bにより構成しており、ケース32開閉可能な半割状に分割して32Aと32Bにより構成し、この半割状のケース32に割型からなるジャーナル部保持型30とピン部保持型31の軸方向スライド41とを保持する保持キー50を半割状のケース32にそれぞれ設け、保持キー50により、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の少なくとも一方を、ケース32内で周方向に所定の範囲内で回動可能に保持するか、または、ケース32内で周方向に所定の範囲内で回動可能に且つ所定の周方向位置に弾性復帰可能に付勢する。
【0062】
この実施の形態においては、棒状の素材1のピン部となる部分pを軸直交方向に加圧するとともに、このピン部となる部分pとこれに隣接するジャーナル部となる部分j、jとの軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、ピン部となる部分pをジャーナル部となる部分jに対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分wを所定の厚さでピン部pとなる部分とジャーナル部となる部分jとに対して曲げる予備成形を施してなる粗形材10を予め成形する。
【0063】
次いで、この粗形材10のジャーナル部となる部分jをジャーナル部保持型30の円形孔部35で保持するとともに、ピン部となる部分pをピン部保持型31の円形孔部36で保持して、ケース32内に配置し、軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さに成形する場合に、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の少なくとも一方を、ケース32内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束する。そして、この実施の形態においては、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の少なくとも一方を、さらに、ケース32内で周方向に弾性的に回動可能に拘束する。さらにまた、この実施の形態においては、ピン部保持型31を、ケース32の内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライド41と、この軸方向スライド41に保持されてケース32の径方向に移動可能に摺動する径方向スライド42とにより構成し、軸方向スライド41と径方向スライド42をそれぞれ分割して41Aと41B、42Aと42Bにより構成しており、ケース32開閉可能な半割状に分割して32Aと32Bにより構成し、この半割状のケース32に割型からなるジャーナル部保持型30とピン部保持型31の軸方向スライド41とを保持する保持キー50を半割状のケース32にそれぞれ設け、保持キー50により、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の少なくとも一方を、ケース32内で周方向に所定の範囲内で回動可能に保持するか、または、ケース32内で周方向に所定の範囲内で回動可能に且つ所定の周方向位置に弾性復帰可能に付勢する。
【0064】
このように構成することにより、予備成形で粗形材10の各ピン部となる部分pの、ジャーナル部となる部分jに対する偏心方向の位相に誤差が生じている場合であっても、仕上成形でピン部保持型31がその位相の誤差に応じて周方向に所定の範囲内で回動することができる。また、各保持キー50のケース32内に突出する部分50aの先端が軸方向スライド41A,41Bに形成する凹部の周方向壁面に接して弾性変形することができる場合には、その接したときの衝撃を吸収するとともに、ピン部保持型31のケース32内で周方向に回動できる自由度が増加し、しかも、軸方向スライド41A,41Bに形成する凹部41aの周方向の幅を小さくすることができる。その結果、粗形材10の各ピン部となる部分pの、ジャーナル部となる部分jに対する偏心方向の位相に誤差が生じている場合であっても、ピン部保持型31がその位相の誤差に応じて周方向に回動するため、無理な力をさらに受けないようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、特に複数のピン部を有するクランクシャフトを製造する場合などと限定しない限り、単気筒(単一のピン部P)あるいは4気筒(1番ピン部P1〜4番ピン部P4)以外の複数の気筒の内燃機関、さらには、直列以外の複数の気筒数を有する内燃機関、または、内燃機関以外の他の機関に使用されるクランクシャフトを製造する場合にも適用することができる。また、本発明は、必要に応じて所定温度の熱間または冷間で行うことができる。また、上述した実施の形態は、本発明を詳細に説明するための一例を示したものであり、必要に応じて単独で適用することができ、また、これらの実施の形態を組み合わせて適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1:棒状の素材、 10:粗形材(素材)、 100:クランクシャフト、 15:位相基準面、 D:断面の長軸、 D1:断面の短軸、 27:成形手段、 28:側面壁、 30:ジャーナル部保持型、 31:ピン部保持型、 32:ケース、 33:軸方向加圧手段、 35:円形孔部、 36:円形孔部、 36a:底部、 36b:開口部、 41:軸方向スライド、 42:径方向スライド、 44:蟻溝、 50:保持キー、 51a:係合部分、 51:締結手段、 P:ピン部、 J:ジャーナル部、 W:ウエブ部、 p:ピン部となる部分、 j:ジャーナル部となる部分、 w:ウエブ部となる部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための方法であって、
前記素材のジャーナル部となる部分を、割型からなるジャーナル部保持型により形成される円形孔部で保持すると共に、ピン部となる部分を割型からなるピン部保持型により形成される円形孔部で保持し、
前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する場合において、
前記素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方を、対応する前記割型の円形孔部の底部に当接させ、且つ、該割型の円形孔部の開口部との間に隙間を生じさせた状態として、前記素材の軸方向への加圧を開始することを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
【請求項2】
素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施し、
該予備成形された素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項3】
前記予備成形で、前記素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方を、対応する前記割型の円形孔部の底部に当接させ、且つ、該割型の開口部との間に隙間を生じさせ得る断面形状に成形することを特徴とする請求項2に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項4】
前記予備成形で、前記素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方の断面形状を、長軸方向の端部が対応する前記割型の円形孔部の底部に当接し、短軸方向の端部が前記割型の開口部と対向することとなる楕円または長円に成形することを特徴とする請求項3に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項5】
前記予備成形で、前記素材のピン部となる部分をパンチで把持すると共に、該ピン部となる部分の両端に隣接するジャーナル部となる部分をダイで把持し、
前記パンチを素材の軸直交方向に移動させると共に前記ダイを前記パンチに寄せるよう軸方向に加圧する場合において、
前記パンチおよび/またはダイの、素材の断面を楕円または長円に成形する部分を把持する部分の形状を、前記パンチの移動方向と平行に短軸が位置し、且つ、該短軸と素材の軸方向とに直交する方向に長軸が位置するように成形しておくことを特徴とする請求項4に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項6】
前記素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型をケース内に軸方向へ摺動可能に配置して拘束し、
前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項7】
少なくとも前記ピン部保持型を、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えた構成とし、前記軸方向スライドと径方向スライドとをそれぞれ割型により構成し、該割型からなる径方向スライドを互いに合わせることにより円形孔部を形成して前記素材のピン部となる部分を保持することを特徴とする請求項6に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項8】
素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための方法であって、
製造するクランクシャフトが複数のピン部とウエブ部とを有しており、
前記素材のピン部およびウエブ部となる部分毎に順次曲げ加工し、
該素材のジャーナル部となる部分を割型からなるジャーナル部保持型により形成される円形孔部で保持すると共に、ピン部となる部分を割型からなるピン部保持型により形成される円形孔部で保持し、
該素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する場合において、
前記素材を曲げ加工するに際して、少なくとも最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、後の他のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときの位相の基準となる位相基準面を成形することを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
【請求項9】
前記素材を曲げ加工するに際して、素材のピン部となる部分をパンチで把持すると共に、該ピン部となる部分の両端に隣接するジャーナル部となる部分をダイで把持し、
前記パンチを素材の軸直交方向に移動させると共に前記ダイを前記パンチに寄せるよう軸方向に加圧する場合に、
前記パンチまたはダイの一方に前記位相基準面を形成する側面壁を設けておき、
前記曲げ加工において、最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、ウエブ部となる部分が前記側面壁に接することにより前記位相基準面を形成することを特徴とする請求項8に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項10】
前記側面壁は、前記パンチの移動方向と平行に延びる平面により形成されており、前記素材のウエブ部となる部分の側面の流動を規制するものであることを特徴とする請求項9に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項11】
素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための方法であって、
前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施し、
該予備成形された素材のジャーナル部となる部分を、割型からなるジャーナル部保持型により形成される円形孔部で保持すると共に、ピン部となる部分を割型からなるピン部保持型により形成される円形孔部で保持し、該素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する場合において、
前記予備成形時に素材のウエブ部となる部分の側面の流動を規制することにより、該素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形するときにウエブ部のジャーナル側およびピン部側の端部の肉を張り出させることを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
【請求項12】
素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための方法であって、
前記素材のジャーナル部となる部分を、割型からなるジャーナル部保持型により形成される円形孔部で保持すると共に、ピン部となる部分を割型からなるピン部保持型により形成される円形孔部で保持し、
前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する場合において、
前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方を、前記ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束することを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
【請求項13】
前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方を、さらに、前記ケース内で周方向に弾性的に回動可能に拘束することを特徴とする請求項12に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項14】
前記ピン部保持型を、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとにより構成し、
前記ケースを開閉可能な半割状に構成するとともに、該半割状のケースに前記割型からなるジャーナル部保持型とピン部保持型の軸方向スライドとを保持する保持キーを前記半割状のケースにそれぞれ設け、
前記保持キーにより、前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方を、前記ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に、または、前記ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に且つ所定の周方向位置に弾性復帰可能に付勢することを特徴とする請求項12または13のいずれかに記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項15】
素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施し、
該予備成形された素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項16】
素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための装置であって、
割型からなり前記素材のジャーナル部となる部分を保持する円形孔部を形成するジャーナル部保持型と、割型からなり前記素材のピン部となる部分を保持する円形孔部を形成するピン部保持型と、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する軸方向加圧手段とを有しており、
さらに、前記素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方を、前記ジャーナル部保持型および/またはピン部保持型に保持したときに、対応する前記割型の円形孔部の底部に当接し、且つ、該割型の開口部との間に隙間が生じる断面形状に成形する成形手段を備えていることを特徴とするクランクシャフトの製造装置。
【請求項17】
素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形装置を備えていることを特徴とする請求項16に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項18】
前記予備成形装置は、前記成形手段を含むことを特徴とする請求項17に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項19】
前記予備成形装置の成形手段は、素材の前記ジャーナル部保持型および/またはピン部保持型に保持されるジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方の断面形状を、長軸方向の端部が対応する前記割型の円形孔部の底部に当接し、短軸方向の端部が前記割型の開口部と対向することとなる楕円または長円に成形するものであることを特徴とする請求項18に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項20】
前記予備成形装置は、前記素材のピン部となる部分を把持するパンチと、該ピン部となる部分の両端に隣接するジャーナル部となる部分を把持するダイと、前記パンチを素材の軸直交方向に移動させる軸直交方向加圧手段と、前記ダイを前記パンチに寄せるよう軸方向に加圧する軸方向加圧手段とを備えており、
前記予備成形装置の成形手段は、素材の断面を楕円または長円に成形する部分が把持される成形手段の形状を、前記パンチの移動方向と平行に短軸が位置し、且つ、該短軸と素材の軸方向とに直交する方向に長軸が位置するように、前記パンチまたはダイに形成されていることを特徴とする請求項19に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項21】
前記素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型を軸方向に摺動可能に収容して拘束するケースをさらに備えていることを特徴とする請求項16〜20のいずれか1項に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項22】
少なくとも前記ピン部保持型は、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えており、
前記軸方向スライドと径方向スライドは、それぞれ、割型により構成されており、該割型からなる径方向スライドを互いに合わせることにより前記素材のピン部となる部分を保持する円形孔部を形成するものであることを特徴とする請求項15〜18のいずれか1項に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項23】
素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための装置であって、
製造するクランクシャフトが複数のピン部とウエブ部とを有しており、
前記素材のピン部およびウエブ部となる部分毎に、素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、順次曲げ加工し、前記素材の各ピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形装置を有する場合に、
該予備成形装置は、少なくとも最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、後の他のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときの位相の基準となる位相基準面を形成するための側面壁を備えていることを特徴とするクランクシャフトの製造装置。
【請求項24】
前記予備成形装置は、前記素材のピン部となる部分を把持するパンチと、該ピン部となる部分の両端に隣接するジャーナル部となる部分を把持するダイと、前記パンチを素材の軸直交方向に移動させる軸直交方向加圧手段と、前記ダイを前記パンチに寄せるよう軸方向に加圧する軸方向加圧手段とを備え、
最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工する前記パンチまたはダイの一方に、ウエブ部となる部分が接することにより前記位相基準面を形成する側面壁が設けられていることを特徴とする請求項23に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項25】
前記側面壁は、前記パンチの移動方向と平行に延びる平面により形成されており、前記粗形材のウエブ部となる部分の側面の流動を規制するものであることを特徴とする請求項24に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項26】
素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための装置であって、
製造するクランクシャフトが複数のピン部とウエブ部とを有しており、
割型からなり前記素材のジャーナル部となる部分を保持する円形孔部を形成するジャーナル部保持型と、割型からなり前記素材のピン部となる部分を保持する円形孔部を形成するピン部保持型と、前記素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型が軸方向へ摺動可能に配置され拘束するケースと、ケース内で前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する軸方向加圧手段とを有する場合において、
前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方が、前記ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束されていることを特徴とするクランクシャフトの製造装置。
【請求項27】
前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方が、さらに、前記ケース内で周方向に弾性的に回動可能に拘束されていることを特徴とする請求項26に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項28】
少なくとも前記ピン部保持型は、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとにより構成されており、
前記ケースは、開閉可能な半割状に構成されるとともに、該半割状のケースに前記割型からなるジャーナル部保持型とピン部保持型の軸方向スライドとを保持する保持キーが前記半割状のケースにそれぞれ設けられており、
前記保持キーにより、前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方が、前記ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束され、または、前記ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束され且つ前記ケース内で所定の周方向位置に弾性復帰可能に付勢されていることを特徴とする請求項26または27に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項29】
素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施す予備成形装置をさらに備えていることを特徴とする請求項26〜28のいずれか1項に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項30】
素材を偏心据え込みすることにより、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とが成形されたクランクシャフトであって、
素材を曲げ加工し、軸方向に加圧してそのウエブ部となる部分が所定の厚さに成形されてなるものである場合において、
前記素材を曲げ加工するときにそのウエブ部となる部分の側面が材料の流動を規制されて平面状に成形され、軸方向に加圧することにより、ウエブ部のジャーナル側およびピン部側の端部の肉が張り出していることを特徴とするクランクシャフト。
【請求項1】
素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための方法であって、
前記素材のジャーナル部となる部分を、割型からなるジャーナル部保持型により形成される円形孔部で保持すると共に、ピン部となる部分を割型からなるピン部保持型により形成される円形孔部で保持し、
前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する場合において、
前記素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方を、対応する前記割型の円形孔部の底部に当接させ、且つ、該割型の円形孔部の開口部との間に隙間を生じさせた状態として、前記素材の軸方向への加圧を開始することを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
【請求項2】
素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施し、
該予備成形された素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項3】
前記予備成形で、前記素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方を、対応する前記割型の円形孔部の底部に当接させ、且つ、該割型の開口部との間に隙間を生じさせ得る断面形状に成形することを特徴とする請求項2に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項4】
前記予備成形で、前記素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方の断面形状を、長軸方向の端部が対応する前記割型の円形孔部の底部に当接し、短軸方向の端部が前記割型の開口部と対向することとなる楕円または長円に成形することを特徴とする請求項3に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項5】
前記予備成形で、前記素材のピン部となる部分をパンチで把持すると共に、該ピン部となる部分の両端に隣接するジャーナル部となる部分をダイで把持し、
前記パンチを素材の軸直交方向に移動させると共に前記ダイを前記パンチに寄せるよう軸方向に加圧する場合において、
前記パンチおよび/またはダイの、素材の断面を楕円または長円に成形する部分を把持する部分の形状を、前記パンチの移動方向と平行に短軸が位置し、且つ、該短軸と素材の軸方向とに直交する方向に長軸が位置するように成形しておくことを特徴とする請求項4に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項6】
前記素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型をケース内に軸方向へ摺動可能に配置して拘束し、
前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項7】
少なくとも前記ピン部保持型を、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えた構成とし、前記軸方向スライドと径方向スライドとをそれぞれ割型により構成し、該割型からなる径方向スライドを互いに合わせることにより円形孔部を形成して前記素材のピン部となる部分を保持することを特徴とする請求項6に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項8】
素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための方法であって、
製造するクランクシャフトが複数のピン部とウエブ部とを有しており、
前記素材のピン部およびウエブ部となる部分毎に順次曲げ加工し、
該素材のジャーナル部となる部分を割型からなるジャーナル部保持型により形成される円形孔部で保持すると共に、ピン部となる部分を割型からなるピン部保持型により形成される円形孔部で保持し、
該素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する場合において、
前記素材を曲げ加工するに際して、少なくとも最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、後の他のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときの位相の基準となる位相基準面を成形することを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
【請求項9】
前記素材を曲げ加工するに際して、素材のピン部となる部分をパンチで把持すると共に、該ピン部となる部分の両端に隣接するジャーナル部となる部分をダイで把持し、
前記パンチを素材の軸直交方向に移動させると共に前記ダイを前記パンチに寄せるよう軸方向に加圧する場合に、
前記パンチまたはダイの一方に前記位相基準面を形成する側面壁を設けておき、
前記曲げ加工において、最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、ウエブ部となる部分が前記側面壁に接することにより前記位相基準面を形成することを特徴とする請求項8に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項10】
前記側面壁は、前記パンチの移動方向と平行に延びる平面により形成されており、前記素材のウエブ部となる部分の側面の流動を規制するものであることを特徴とする請求項9に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項11】
素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための方法であって、
前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施し、
該予備成形された素材のジャーナル部となる部分を、割型からなるジャーナル部保持型により形成される円形孔部で保持すると共に、ピン部となる部分を割型からなるピン部保持型により形成される円形孔部で保持し、該素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する場合において、
前記予備成形時に素材のウエブ部となる部分の側面の流動を規制することにより、該素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形するときにウエブ部のジャーナル側およびピン部側の端部の肉を張り出させることを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
【請求項12】
素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための方法であって、
前記素材のジャーナル部となる部分を、割型からなるジャーナル部保持型により形成される円形孔部で保持すると共に、ピン部となる部分を割型からなるピン部保持型により形成される円形孔部で保持し、
前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する場合において、
前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方を、前記ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束することを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
【請求項13】
前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方を、さらに、前記ケース内で周方向に弾性的に回動可能に拘束することを特徴とする請求項12に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項14】
前記ピン部保持型を、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとにより構成し、
前記ケースを開閉可能な半割状に構成するとともに、該半割状のケースに前記割型からなるジャーナル部保持型とピン部保持型の軸方向スライドとを保持する保持キーを前記半割状のケースにそれぞれ設け、
前記保持キーにより、前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方を、前記ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に、または、前記ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に且つ所定の周方向位置に弾性復帰可能に付勢することを特徴とする請求項12または13のいずれかに記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項15】
素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施し、
該予備成形された素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項16】
素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための装置であって、
割型からなり前記素材のジャーナル部となる部分を保持する円形孔部を形成するジャーナル部保持型と、割型からなり前記素材のピン部となる部分を保持する円形孔部を形成するピン部保持型と、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する軸方向加圧手段とを有しており、
さらに、前記素材のジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方を、前記ジャーナル部保持型および/またはピン部保持型に保持したときに、対応する前記割型の円形孔部の底部に当接し、且つ、該割型の開口部との間に隙間が生じる断面形状に成形する成形手段を備えていることを特徴とするクランクシャフトの製造装置。
【請求項17】
素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形装置を備えていることを特徴とする請求項16に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項18】
前記予備成形装置は、前記成形手段を含むことを特徴とする請求項17に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項19】
前記予備成形装置の成形手段は、素材の前記ジャーナル部保持型および/またはピン部保持型に保持されるジャーナル部となる部分とピン部となる部分の少なくとも一方の断面形状を、長軸方向の端部が対応する前記割型の円形孔部の底部に当接し、短軸方向の端部が前記割型の開口部と対向することとなる楕円または長円に成形するものであることを特徴とする請求項18に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項20】
前記予備成形装置は、前記素材のピン部となる部分を把持するパンチと、該ピン部となる部分の両端に隣接するジャーナル部となる部分を把持するダイと、前記パンチを素材の軸直交方向に移動させる軸直交方向加圧手段と、前記ダイを前記パンチに寄せるよう軸方向に加圧する軸方向加圧手段とを備えており、
前記予備成形装置の成形手段は、素材の断面を楕円または長円に成形する部分が把持される成形手段の形状を、前記パンチの移動方向と平行に短軸が位置し、且つ、該短軸と素材の軸方向とに直交する方向に長軸が位置するように、前記パンチまたはダイに形成されていることを特徴とする請求項19に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項21】
前記素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型を軸方向に摺動可能に収容して拘束するケースをさらに備えていることを特徴とする請求項16〜20のいずれか1項に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項22】
少なくとも前記ピン部保持型は、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えており、
前記軸方向スライドと径方向スライドは、それぞれ、割型により構成されており、該割型からなる径方向スライドを互いに合わせることにより前記素材のピン部となる部分を保持する円形孔部を形成するものであることを特徴とする請求項15〜18のいずれか1項に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項23】
素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための装置であって、
製造するクランクシャフトが複数のピン部とウエブ部とを有しており、
前記素材のピン部およびウエブ部となる部分毎に、素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、順次曲げ加工し、前記素材の各ピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形装置を有する場合に、
該予備成形装置は、少なくとも最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときに、後の他のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工するときの位相の基準となる位相基準面を形成するための側面壁を備えていることを特徴とするクランクシャフトの製造装置。
【請求項24】
前記予備成形装置は、前記素材のピン部となる部分を把持するパンチと、該ピン部となる部分の両端に隣接するジャーナル部となる部分を把持するダイと、前記パンチを素材の軸直交方向に移動させる軸直交方向加圧手段と、前記ダイを前記パンチに寄せるよう軸方向に加圧する軸方向加圧手段とを備え、
最初のピン部となる部分および該ピン部と連続するウエブ部となる部分を曲げ加工する前記パンチまたはダイの一方に、ウエブ部となる部分が接することにより前記位相基準面を形成する側面壁が設けられていることを特徴とする請求項23に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項25】
前記側面壁は、前記パンチの移動方向と平行に延びる平面により形成されており、前記粗形材のウエブ部となる部分の側面の流動を規制するものであることを特徴とする請求項24に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項26】
素材を偏心据え込みして、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有するクランクシャフトを製造するための装置であって、
製造するクランクシャフトが複数のピン部とウエブ部とを有しており、
割型からなり前記素材のジャーナル部となる部分を保持する円形孔部を形成するジャーナル部保持型と、割型からなり前記素材のピン部となる部分を保持する円形孔部を形成するピン部保持型と、前記素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型が軸方向へ摺動可能に配置され拘束するケースと、ケース内で前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する軸方向加圧手段とを有する場合において、
前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方が、前記ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束されていることを特徴とするクランクシャフトの製造装置。
【請求項27】
前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方が、さらに、前記ケース内で周方向に弾性的に回動可能に拘束されていることを特徴とする請求項26に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項28】
少なくとも前記ピン部保持型は、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとにより構成されており、
前記ケースは、開閉可能な半割状に構成されるとともに、該半割状のケースに前記割型からなるジャーナル部保持型とピン部保持型の軸方向スライドとを保持する保持キーが前記半割状のケースにそれぞれ設けられており、
前記保持キーにより、前記ジャーナル部保持型とピン部保持型の少なくとも一方が、前記ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束され、または、前記ケース内で周方向に所定の範囲内で回動可能に拘束され且つ前記ケース内で所定の周方向位置に弾性復帰可能に付勢されていることを特徴とする請求項26または27に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項29】
素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施す予備成形装置をさらに備えていることを特徴とする請求項26〜28のいずれか1項に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項30】
素材を偏心据え込みすることにより、回転中心軸となる断面円形のジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心する断面円形のピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とが成形されたクランクシャフトであって、
素材を曲げ加工し、軸方向に加圧してそのウエブ部となる部分が所定の厚さに成形されてなるものである場合において、
前記素材を曲げ加工するときにそのウエブ部となる部分の側面が材料の流動を規制されて平面状に成形され、軸方向に加圧することにより、ウエブ部のジャーナル側およびピン部側の端部の肉が張り出していることを特徴とするクランクシャフト。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2012−170974(P2012−170974A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34547(P2011−34547)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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