説明

クランクシャフトの製造装置、及び、クランクシャフトの製造方法

【課題】多気筒のクランクシャフトの製造工程に冷間鍛造を用いて、コンパクトな装置構成でジャーナル部に対するピン部の偏芯量を確保することができ、かつ、作業効率及び生産性を向上させることが可能となる、クランクシャフトの製造装置、及び、クランクシャフトの製造方法を提供する。
【解決手段】クランクシャフトの製造装置100は、可動型20及び第一ジャーナル型30から第三ジャーナル型50を固定型10と平行な状態のままで固定型10に近接させることにより、各偏芯ブロックが棒状素材Wの軸方向に摺動し、それぞれの偏芯ブロックが第一ピン型60から第四ピン型90を棒状素材Wの軸方向と垂直な偏芯方向に押圧することにより、ピン部をジャーナル部である棒状素材Wの軸心から偏芯させて、クランクシャフトCを成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトの製造装置、及び、クランクシャフトの製造方法に関し、詳しくは、多気筒のクランクシャフトを冷間鍛造で成形する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クランクシャフトの製造工程において、棒状素材に対する軸方向の荷重を利用して鍛造を行い、ピン部をジャーナル部に対して偏芯させる、いわゆる偏芯据え込み方法による成形技術が用いられている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−155275号公報
【特許文献2】特開平3−60837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来技術では、高周波で部分的に加熱を行う熱間鍛造を用いた成形が行われている。熱間鍛造による成形では熱ひずみが発生するため、後工程で機械加工を行う必要が生じることから、コストが増大するという問題があった。
【0005】
一方、冷間鍛造によるクランクシャフトの成形においては、クランクシャフトを座屈させることによってピン部を偏芯させる技術も存在する。しかし、前記技術はクランクシャフトにおける一気筒分の成形に適しており、多気筒のクランクシャフトを同時に成形する場合は全てのピン部において適切な偏芯量を確保することが困難であった。
【0006】
また、ピン部の偏芯量を確保するために、ピン部を挟持する型(ピン型)に対して偏芯方向に押圧する力を、装置の外部に配設したシリンダー等から得る技術も存在する。しかし、偏芯させるピン部の数だけシリンダーを配設する必要があるため、多気筒のクランクシャフトを成形する場合には装置構成が大型化するという問題があった。
【0007】
さらに、多気筒のクランクシャフトのうち一気筒毎にピン部を偏芯させる構成の場合においては、ピン型を割型で構成し、クランクシャフトのピン部毎に挟持したピン型をリング等の拘束部材に嵌挿させた状態で、順にピン部を偏芯させていく技術も存在する。前記技術においては、全てのピン部を同時に偏芯させてクランクシャフトを成形できないため、生産性に劣る。また、成形後のクランクシャフトを脱型する際に、多数あるピン部毎にピン型のリングをピン型から取外し、さらにピン型をクランクシャフトから取外すという作業を行う必要がある。このため、クランクシャフトを型から取外す作業に時間がかかり、さらに生産性が悪化するという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、上記現状に鑑み、多気筒のクランクシャフトの製造工程に冷間鍛造を用いて、コンパクトな装置構成でジャーナル部に対するピン部の偏芯量を確保することができ、かつ、作業効率及び生産性を向上させることが可能となる、クランクシャフトの製造装置、及び、クランクシャフトの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、固定型と、固定型に対して近接離間可能に配置される可動型と、固定型と可動型との間に、前記固定型に対して近接可能に配置される少なくとも1個のジャーナル型と、前記固定型、ジャーナル型、及び、可動型のそれぞれの間隙に1個ずつ、前記固定型に対して近接可能かつ前記可動型が前記固定型に対して近接離間する方向と直交する方向にスライド可能に配置されるピン型と、を備え、成形対象となる棒状素材の両端部のそれぞれを、前記固定型における固定型側保持部と前記可動型における可動型側保持部とで保持し、前記棒状素材のジャーナル部を、前記ジャーナル型におけるジャーナル型挟持部で挟持し、かつ、前記棒状素材のピン部を、前記ピン型における挟持部で挟持した状態で、前記可動型及び前記ジャーナル型を前記固定型に近接させることにより前記棒状素材を軸方向に圧縮すると同時に、前記ピン型が前記ピン部を前記棒状素材の軸方向と垂直な偏芯方向に押圧することにより、前記ピン部をジャーナル部である前記棒状素材の軸心から偏芯させる、クランクシャフトの製造装置であって、前記固定型、ジャーナル型、及び、可動型のそれぞれの間隙に配置される、所定の傾斜角を有する傾斜面が形成された複数の偏芯ブロックを備えるとともに、前記ピン型は前記偏芯ブロックに当接しており、前記可動型及び前記ジャーナル型を前記固定型に近接させることにより前記偏芯ブロックが前記棒状素材の軸方向に摺動し、前記傾斜面の作用により前記偏芯ブロックが前記ピン型を前記棒状素材の軸方向と垂直な偏芯方向に押圧するものである。
【0011】
請求項2においては、前記偏芯ブロックにおける傾斜面の傾斜角は、前記ピン型が前記可動型、前記ジャーナル型、又は、前記固定型に近接する幅である据え込み量と、前記ピン部がジャーナル部である前記棒状素材の軸心から偏芯する偏芯量と、の関係より算出されるものである。
【0012】
請求項3においては、前記可動型、前記ジャーナル型、及び、前記ピン型は、前記固定型に対して近接離間可能に構成された枠体に収納され、前記可動型及び前記ジャーナル型は、前記枠体によって、前記可動型が前記固定型に対して近接離間する方向と直交する方向には移動しないように拘束され、前記ピン型は、前記枠体によって、前記可動型が前記固定型に対して近接離間する方向と直交する方向のうち一つの方向には移動しないように拘束されるものである。
【0013】
請求項4においては、前記偏芯ブロックは、前記ジャーナル型に配設される固定ブロックと、前記ピン型と当接するスライドブロックと、前記固定ブロックと前記スライドブロックとの間にくさび状に介挿される中央ブロックと、で構成されるものである。
【0014】
請求項5においては、前記ジャーナル型は前記可動型側から順に配設される3個の第一ジャーナル型から第三ジャーナル型で構成され、前記ピン型は前記固定型、第一ジャーナル型から第三ジャーナル型、及び、可動型のそれぞれの間隙に前記可動型側から順に備えられる4個の第一ピン型から第四ピン型で構成され、前記偏芯ブロックは、前記第一ピン型から第四ピン型のそれぞれを前記棒状素材の軸方向と垂直な偏芯方向に押圧する、第一偏芯ブロックから第四偏芯ブロックであって、前記第一偏芯ブロックは、前記可動型に配設される第一固定ブロックと、前記第一ピン型と当接する第一スライドブロックと、前記第二ジャーナル型に配設されて前記第一固定ブロックと前記第一スライドブロックとの間にくさび状に介挿される第一中央ブロックと、で構成され、前記第二偏芯ブロックは、前記第二ジャーナル型に配設される第二固定ブロックと、前記第二ピン型と当接する第二スライドブロックと、前記第可動型に配設されて前記第二固定ブロックと前記第二スライドブロックとの間にくさび状に介挿される第二中央ブロックと、で構成され、前記第三偏芯ブロックは、前記第二ジャーナル型に配設される第三固定ブロックと、前記第三ピン型と当接する第三スライドブロックと、前記固定型に配設されて前記第三固定ブロックと前記第三スライドブロックとの間にくさび状に介挿される第三中央ブロックと、で構成され、前記第四偏芯ブロックは、前記固定型に配設される第四固定ブロックと、前記第四ピン型と当接する第四スライドブロックと、前記第二ジャーナル型に配設されて前記第四固定ブロックと前記第四スライドブロックとの間にくさび状に介挿される第四中央ブロックと、で構成されるものである。
【0015】
請求項6においては、クランクシャフトの成形初期には、前記偏芯ブロックの前記ピン型に対する押圧力を大きく付与し、クランクシャフトの成形終期には、前記偏芯ブロックの前記ピン型に対する押圧を解除するものである。
【0016】
請求項7においては、前記可動型の前記可動型側保持部よりも固定型側と、前記固定型の前記固定型側保持部よりも可動型側と、前記ジャーナル型の前記ジャーナル型挟持部よりも可動型側及び固定型側と、における、前記偏芯方向と反対側の面のそれぞれには、前記棒状素材のピン部が偏芯する際における前記棒状素材の前記偏芯方向と反対側への変形を抑制する、可動型素材拘束部、固定型素材拘束部、及び、ジャーナル型素材拘束部、が形成され、前記ピン型の前記挟持部よりも可動型側及び固定型側における、前記偏芯方向側の面のそれぞれには、前記棒状素材のピン部が偏芯する際における前記棒状素材の前記偏芯方向側への変形を抑制する、第一ピン型素材拘束部が形成されるものである。
【0017】
請求項8においては、棒状素材を軸線の方向へ圧縮しながら、前記棒状素材のピン部を前記軸線と直交する方向へ押圧して座屈させる据え込み加工を行う、クランクシャフトの製造方法であって、前記棒状素材のピン部を前記軸線と直交する方向へ押圧する押圧力は、前記棒状素材を前記軸線方向へ圧縮する圧縮力の方向を、所定の傾斜角を有する面同士を摺動させることにより前記軸線と直交する方向へ変換したものである。
【0018】
請求項9においては、成形対象となる棒状素材の両端部のそれぞれを、固定型における固定型側保持部と、固定型に対して近接離間可能に配置される可動型における可動型側保持部と、で保持し、前記棒状素材のジャーナル部を、固定型に対して近接離間可能に配置される少なくとも1個のジャーナル型におけるジャーナル型挟持部で挟持し、かつ、前記棒状素材のピン部を、前記固定型、ジャーナル型、及び、可動型のそれぞれの間隙に1個ずつ、前記固定型に対して近接離間可能かつ前記可動型が前記固定型に対して近接離間する方向と直交する方向にスライド可能に配置されるピン型における挟持部で挟持した状態で、前記可動型及び前記ジャーナル型を前記固定型に近接させることにより前記棒状素材を軸方向に圧縮すると同時に、前記ピン型が前記ピン部を前記棒状素材の軸方向と垂直な偏芯方向に押圧することにより、前記ピン部をジャーナル部である前記棒状素材の軸心から偏芯させる、クランクシャフトの製造方法であって、前記固定型、ジャーナル型、及び、可動型のそれぞれの間隙に配置され、所定の傾斜角を有する傾斜面が形成され、前記ピン型が当接した複数の偏芯ブロックを、前記可動型及び前記ジャーナル型を前記固定型に近接させることにより前記棒状素材の軸方向に摺動させて、前記傾斜面の作用により前記ピン型を前記棒状素材の軸方向と垂直な偏芯方向に押圧するものである。
【0019】
請求項10においては、前記偏芯ブロックにおける傾斜面の傾斜角は、前記ピン型が前記可動型、前記ジャーナル型、又は、前記固定型に近接する幅である据え込み量と、前記ピン部がジャーナル部である前記棒状素材の軸心から偏芯する偏芯量と、の関係より算出するものである。
【0020】
請求項11においては、前記可動型、前記ジャーナル型、及び、前記ピン型を、前記固定型に対して近接離間可能に構成された枠体に収納し、前記可動型及び前記ジャーナル型を、前記枠体によって、前記可動型が前記固定型に対して近接離間する方向と直交する方向には移動しないように拘束し、前記ピン型を、前記枠体によって、前記可動型が前記固定型に対して近接離間する方向と直交する方向のうち一つの方向には移動しないように拘束するものである。
【0021】
請求項12においては、前記偏芯ブロックを、前記ジャーナル型に配設される固定ブロックと、前記ピン型と連結されるスライドブロックと、前記固定ブロックと前記スライドブロックとの間にくさび状に介挿される中央ブロックと、で構成するものである。
【0022】
請求項13においては、前記ジャーナル型を前記可動型側から順に配設される3個の第一ジャーナル型から第三ジャーナル型で構成し、前記ピン型を前記固定型、第一ジャーナル型から第三ジャーナル型、及び、可動型のそれぞれの間隙に前記可動型側から順に備えられる4個の第一ピン型から第四ピン型で構成し、前記偏芯ブロックは、前記第一ピン型から第四ピン型のそれぞれを前記棒状素材の軸方向と垂直な偏芯方向に押圧する、第一偏芯ブロックから第四偏芯ブロックであって、前記第一偏芯ブロックを、前記可動型に配設される第一固定ブロックと、前記第一ピン型と連結される第一スライドブロックと、前記第二ジャーナル型に配設されて前記第一固定ブロックと前記第一スライドブロックとの間にくさび状に介挿される第一中央ブロックと、で構成し、前記第二偏芯ブロックを、前記第二ジャーナル型に配設される第二固定ブロックと、前記第二ピン型と連結される第二スライドブロックと、前記第可動型に配設されて前記第二固定ブロックと前記第二スライドブロックとの間にくさび状に介挿される第二中央ブロックと、で構成し、前記第三偏芯ブロックを、前記第二ジャーナル型に配設される第三固定ブロックと、前記第三ピン型と連結される第三スライドブロックと、前記固定型に配設されて前記第三固定ブロックと前記第三スライドブロックとの間にくさび状に介挿される第三中央ブロックと、で構成し、前記第四偏芯ブロックを、前記固定型に配設される第四固定ブロックと、前記第四ピン型と連結される第四スライドブロックと、前記第二ジャーナル型に配設されて前記第四固定ブロックと前記第四スライドブロックとの間にくさび状に介挿される第四中央ブロックと、で構成するものである。
【0023】
請求項14においては、クランクシャフトの成形初期には、前記偏芯ブロックの前記ピン型に対する押圧力を大きく付与し、クランクシャフトの成形終期には、前記偏芯ブロックの前記ピン型に対する押圧を解除するものである。
【0024】
請求項15においては、前記可動型の前記可動型側保持部よりも固定型側と、前記固定型の前記固定型側保持部よりも可動型側と、前記ジャーナル型の前記ジャーナル型挟持部よりも可動型側及び固定型側と、における、前記偏芯方向と反対側の面のそれぞれには、前記棒状素材のピン部が偏芯する際における前記棒状素材の前記偏芯方向と反対側への変形を抑制し、前記ピン型の前記挟持部よりも可動型側及び固定型側における、前記偏芯方向側の面のそれぞれには、前記棒状素材のピン部が偏芯する際における前記棒状素材の前記偏芯方向側への変形を抑制するものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0026】
本発明により、多気筒のクランクシャフトの製造工程に冷間鍛造を用いて、コンパクトな装置構成でジャーナル部に対するピン部の偏芯量を確保することができ、かつ、作業効率及び生産性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第一実施形態に係るクランクシャフトの製造装置における成形前の状態を示した断面図。
【図2】図1におけるA−A線断面図。
【図3】(a)は第一実施形態に係る可動型の底面図、(b)は同じく可動型の断面図、(c)は同じく第一ジャーナル型の断面図、(d)は同じく第一ジャーナル型の平面図。
【図4】図1におけるB−B線断面図。
【図5】(a)は第一実施形態に係る第一ジャーナル型の底面図、(b)は同じく第一ジャーナル型の断面図、(c)は同じく第二ジャーナル型の断面図、(d)は同じく第二ジャーナル型の平面図。
【図6】図1におけるC−C線断面図。
【図7】(a)は第一実施形態に係る第二ジャーナル型の底面図、(b)は同じく第二ジャーナル型の断面図、(c)は同じく第三ジャーナル型の断面図、(d)は同じく第三ジャーナル型の平面図。
【図8】図1におけるD−D線断面図。
【図9】(a)は第一実施形態に係る第一ジャーナル型を分割した状態の平面図、(b)は同じく第一ピン型を分割した状態の平面図。
【図10】第一実施形態に係るクランクシャフトの製造装置における成形途中の状態を示した断面図。
【図11】第一実施形態に係るクランクシャフトの製造装置における成形後の状態を示した断面図。
【図12】(a)は第一実施形態に係るクランクシャフトの製造装置における据え込み量hを示した断面図、(b)は同じく偏芯量dを示した断面図。
【図13】第一実施形態に係るクランクシャフトの製造装置における成形時の力の作用状態を示した断面図。
【図14】第一実施形態に係るクランクシャフトの製造装置における脱型時の状態を示した断面図。
【図15】第一実施形態に係る第一ジャーナル型の脱型時の状態を示した平面図。
【図16】(a)は第一実施形態に係るクランクシャフトの製造装置において偏芯ブロックの傾斜角が大きい場合の力の作用状態を示した断面図、(b)は同じく偏芯ブロックの傾斜角が小さい場合の力の作用状態を示した断面図。
【図17】第二実施形態に係るクランクシャフトの製造装置における成形前の状態を示した断面図。
【図18】(a)は第二実施形態に係るクランクシャフトの製造装置における据え込み量hを示した断面図、(b)は同じく偏芯量dを示した断面図。
【図19】第二実施形態に係るクランクシャフトの製造装置における成形時の力の作用状態を示した断面図。
【図20】第三実施形態に係るクランクシャフトの製造装置における成形前の状態及び成形時の力の作用状態を示した断面図。
【図21】(a)はストロークと偏芯量との関係を示した図、(b)はストロークと偏芯力との関係を示した図。
【図22】第四実施形態に係るクランクシャフトの製造装置における成形前の状態を示した断面図。
【図23】(a)はストロークと第四実施形態に係るメインプレスの平面図、(b)は同じくスライドガイドの平面図。
【図24】第四実施形態に係るクランクシャフトの製造装置における成形途中の状態を示した断面図。
【図25】第四実施形態に係るクランクシャフトの製造装置における成形後の状態を示した断面図。
【図26】(a)はストロークと偏芯量との関係を示した図、(b)はストロークと偏芯力との関係を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
【0029】
[第一実施形態]
まず始めに、本発明の第一実施形態に係るクランクシャフトの製造装置100の概略について、図1及び図2を用いて説明する。なお、本明細書においては説明の便宜上、図1における上側を上方、下側を下方とし、同じく左側を前方、右側を後方、同じく紙面奥側を右側方、紙面手前側を左側方として説明する。また、各図には方向を示す矢印を示している。
【0030】
図1は本実施形態に係るクランクシャフトの製造装置100において、左右方向に向けた軸線に対して垂直となる平面で、クランクシャフトの製造装置100における左右方向の略中央部分で切断した際に右側方に現れる断面図を示している。図2は図1におけるA−A線断面図であり、前後方向に向けた軸線に対して垂直となる平面で、クランクシャフトの製造装置100の後部で切断した際に前方に現れる断面図を示している。つまり、図1は図2におけるE−E線断面図を示している。
【0031】
本実施形態に係るクランクシャフトの製造装置100は、固定型10と、該固定型10に対して近接離間可能に配置される可動型20と、を備えている。
具体的には、固定型10は基台101の上面に固設されている。また、固定型10の上方には図示しないプレスラムが基台101及び固定型10に対して上下方向に近接離間可能に配設されている。そして、プレスラムの下面には枠体であるスライドガイド102が固設されている。スライドガイド102は大きな外力を受けても変形しないように十分な厚さで形成された、一面に開口部を有する四角筒状の中空部材である。スライドガイド102は、開口部を固定型10の方向である下方に向けた状態でプレスラムに固設されている。
【0032】
さらに、スライドガイド102の内側の上面には、平面視における外形がスライドガイド102の内周形状と略同一に形成された可動型20が配設されている。つまり、可動型20は、スライドガイド102によって、可動型20が固定型10に対して近接離間する方向と直交する方向である水平方向には移動しないように拘束されているのである。そして、スライドガイド102は開口部を固定型10の側に向けた状態で、プレスラムの上下動にあわせて固定型10に対して近接離間し、可動型20はプレスラムの上下動に伴って、スライドガイド102と一体的に固定型10に対して近接離間するのである。
【0033】
また、固定型10と基台101のそれぞれには、スライドガイド102の下部である開口部を挿入可能な溝部10aおよび溝部101aが上下方向に形成されている。即ち、スライドガイド102が下降し、固定型10及び基台101に近接すると、スライドガイド102の下部である開口部が溝部10a及び溝部101aに挿入されるのである(図10及び図11参照)。
【0034】
さらに、クランクシャフトの製造装置100には、可動型20と固定型10との間に、固定型10に対して近接可能に構成される第一ジャーナル型30、第二ジャーナル型40、及び、第三ジャーナル型50が上から順に配置されている。
【0035】
具体的には、第一ジャーナル型30、第二ジャーナル型40、及び、第三ジャーナル型50の平面視における形状は、スライドガイド102の平面視における内周形状と略同一に形成されており、それぞれがスライドガイド102の内周に沿って上下方向に摺動可能にスライドガイド102の内部に収納されているのである。つまり、第一ジャーナル型30、第二ジャーナル型40、及び、第三ジャーナル型50のそれぞれは、スライドガイド102によって、可動型20が固定型10に対して近接離間する方向と直交する方向である水平方向には移動しないように拘束されているのである。
【0036】
また、可動型20、第一ジャーナル型30、第二ジャーナル型40、第三ジャーナル型50、及び、固定型10のそれぞれの間隙に1個ずつ、固定型10に対して近接可能かつ可動型20が固定型10に対して近接離間する上下方向に対して直交する前後方向にスライド可能に構成される第一ピン型60、第二ピン型70、第三ピン型80、及び、第四ピン型90が上から順に配置されている。
【0037】
具体的には、第一ピン型60、第二ピン型70、第三ピン型80、及び、第四ピン型90の左右方向長さは、スライドガイド102の内部の左右方向長さと略同一に形成されている。また、第一ピン型60、第二ピン型70、第三ピン型80、及び、第四ピン型90の前後方向長さは、スライドガイド102の内部の前後方向長さよりも短く形成されている。そして、それぞれがスライドガイド102の内周に沿って上下方向に摺動しつつ、前後方向にスライド可能にスライドガイド102の内部に収納されているのである。つまり、第一ピン型60、第二ピン型70、第三ピン型80、及び、第四ピン型90のそれぞれは、スライドガイド102によって、可動型20が固定型10に対して近接離間する方向である上下方向と直交する方向のうち一つの方向である左右方向(後述する棒状素材Wの偏芯方向と直交する方向)には移動しないように拘束されているのである。
【0038】
なお、本実施形態においては、前記ジャーナル型及びピン型の個数はそれぞれ3個及び4個で構成したが、それぞれの個数は限定されるものではなく、成形対象であるクランクシャフトの形状によって変更することができる。
【0039】
そして、クランクシャフトの製造装置100は成形前において、図1に示す如く、成形対象である棒状素材Wの上端部を可動型20における可動型側保持部25で保持すると同時に、下端部を固定型10における固定型側保持部15で保持する構成としている。そして、前記棒状素材Wのジャーナル部を第一ジャーナル型30、第二ジャーナル型40、第三ジャーナル型50で挟持し、さらに棒状素材Wのピン部を第一ピン型60、第二ピン型70、第三ピン型80、及び、第四ピン型90で挟持する構成としている。
【0040】
クランクシャフトの製造装置100でクランクシャフトを成形するときは、上記の状態でスライドガイド102を下降させる。そして、可動型20及び第一ジャーナル型30、第二ジャーナル型40、第三ジャーナル型50を、固定型10と平行な状態のままで固定型10に近接させることにより、棒状素材Wを軸方向に圧縮するのである。それと同時に、後述するように第一ピン型60、第二ピン型70、第三ピン型80、及び、第四ピン型90がピン部を棒状素材Wの軸方向と垂直な偏芯方向に押圧することにより、ピン部をジャーナル部である棒状素材の軸心から偏芯させるのである(図10及び図11参照)。
【0041】
次に、本実施形態に係るクランクシャフトの製造装置100における偏芯機構について、図1から図8を用いて説明する。
前記固定型10、第一ジャーナル型30、第二ジャーナル型40、第三ジャーナル型50、及び、可動型20には、それぞれの間隙に、所定の傾斜角を有する傾斜面が形成された複数の偏芯ブロックが配設されている。
【0042】
具体的には、可動型20の下面前部右端及び下面前部左端には、可動型偏芯ブロック22R・22Lが下方に突出して配設されている。また、第一ジャーナル型30の上面前部略中央部には、第一偏芯ブロック31R・31Lが上方に突出して配設され、下面後部略中央部には、第一偏芯ブロック32R・32Lが下方に突出して配設されている。また、第二ジャーナル型40の上面後部右端及び上面後部左端には、第二偏芯ブロック41R・41Lが上方に突出して配設され、下面後部右端及び下面後部左端には、第二偏芯ブロック42R・42Lが下方に突出して配設されている。また、第三ジャーナル型50の上面後部右寄り及び上面後部左寄りには、第三偏芯ブロック51R・51Lが上方に突出して配設され、下面前部略中央部には、第三偏芯ブロック52R・52Lが下方に突出して配設されている。そして、固定型10の上面前部右端及び上面前部左端には、固定型偏芯ブロック11R・1Lが上方に突出して配設されているのである。
【0043】
可動型20、第一ジャーナル型30、及び、第一ピン型60の具体的な構成について説明する。
図3(a)及び図3(b)に示す如く、可動型20の下面前部右端には可動型偏芯ブロック22Rが、下面前部左端には可動型偏芯ブロック22Lが下方に突出して配設されている。なお、図3(b)は図3(a)におけるF−F線断面図である。そして、それぞれの可動型偏芯ブロック22R・22Lには、水平面である可動型20の下面に対する角度が傾斜角θ1となるように、傾斜面24R・24Lが形成されている(図12参照)。また、可動型20の下面略中央部には、棒状素材Wの上端部を保持する円形孔である可動型側保持部25が形成されている。さらに、可動型側保持部25の周囲には、クランクシャフトの肩部を形成する肩部溝26が形成されている。
【0044】
図3(c)及び図3(d)に示す如く、第一ジャーナル型30の上面前部略中央部には、第一偏芯ブロック31R・31Lが上方に突出して配設され、下面後部略中央部には、第一偏芯ブロック32R・32Lが下方に突出して配設されている。なお、図3(c)は図3(d)におけるG−G線断面図である。そして、それぞれの第一偏芯ブロック31R・31L・32R・32Lには、水平面である第一ジャーナル型30の上面及び下面に対する角度が傾斜角θ1となるように、傾斜面33R・33L・34R・34Lが形成されている。また、第一ジャーナル型30の略中央部には、棒状素材Wのジャーナル部を挟持する円形孔である第一ジャーナル型側挟持部35が上下方向に開口されている。さらに、第一ジャーナル型側挟持部35の周囲には、上面及び下面のそれぞれに、クランクシャフトの肩部を形成する肩部溝36U・36Dが形成されている。
【0045】
また、クランクシャフトの製造装置100でクランクシャフトを成形する際に、可動型20と第一ジャーナル型30とは近接する(図11及び図12(b)参照)。その際、前記偏芯ブロックと干渉しあわないように、可動型20の前部には切欠き部27が、第一ジャーナル型30の前部及び後部にはそれぞれ切欠き部37R・37L・38R・38Lが形成されている。即ち、可動型20と第一ジャーナル型30とが近接した際には、可動型偏芯ブロック22R・22Lがそれぞれ切欠き部37R・37Lに挿入され、第一偏芯ブロック31R・31Lが切欠き部27に挿入されることにより、それぞれの型が偏芯ブロックと干渉することを防いでいるのである。なお、切欠き部38R・38Lには、後述するように第二ジャーナル型40の第二偏芯ブロック41R・41Lが挿入される。
【0046】
上記の如く配設された可動型20と第一ジャーナル型30との間に、可動型偏芯ブロック22R・22Lの傾斜面24R・24Lと、第一偏芯ブロック31R・31Lの傾斜面33R・33Lと、に当接して、第一ピン型60が配設される。詳細には、図4に示す如く、第一ピン型60の前端部上側には当接面61R・61Lが水平面からの角度が前記傾斜角θ1となるように形成されており、該当接面61R・61Lが傾斜面24R・24Lに対して当接しているのである。また、第一ピン型60の前端部下側には図示しない当接面が水平面からの角度が前記傾斜角θ1となるように形成されており、該当接面が傾斜面33R・33Lに対して当接しているのである。
【0047】
また、図4に示す如く、第一ピン型60の略中央部には、棒状素材Wのピン部を挟持する円形孔である第一ピン型側挟持部65が上下方向に開口されている。さらに、第一ピン型側挟持部65の周囲には、上面にクランクシャフトの肩部を形成する肩部溝66Uが形成され、下面にクランクシャフトの肩部を形成する図示しない肩部溝が形成されている。
【0048】
上記の如くクランクシャフトの製造装置100は、クランクシャフトを成形する際に、可動型20と第一ジャーナル型30とが近接することにより、可動型偏芯ブロック22R・22L及び第一偏芯ブロック31R・31Lと当接する第一ピン型60が後方にスライドするように構成されている。詳しくは、前記傾斜面24R・24L及び傾斜面33R・33Lの作用により、即ち傾斜面24R・24L及び傾斜面33R・33Lが第一ピン型60の前端部を挟むようにして摺動することにより、上下方向の力が水平方向への力に変換され、第一ピン型60は後方への力を受けてスライドするのである。そして、第一ピン型60がピン部を棒状素材Wの軸方向と垂直な偏芯方向である後方に押圧することにより、ピン部をジャーナル部である棒状素材Wの軸心から偏芯させるのである。
【0049】
次に、第一ジャーナル型30、第二ジャーナル型40、及び、第二ピン型70の具体的な構成について説明する。
図5(a)及び図5(b)に示す如く、第一ジャーナル型30には前記の通り、傾斜面33R・33L・34R・34Lが形成された第一偏芯ブロック31R・31L・32R・32Lが配設されている。なお、図5(b)は図5(a)におけるH−H線断面図である。
【0050】
図5(c)及び図5(d)に示す如く、第二ジャーナル型40の上面後部右端及び上面後部左端には、第二偏芯ブロック41R・41Lが上方に突出して配設され、下面後部右端及び下面後部左端には、第二偏芯ブロック42R・42Lが下方に突出して配設されている。なお、図5(c)は図5(d)におけるI−I線断面図である。そして、それぞれの第二偏芯ブロック41R・41L・42R・42Lには、水平面である第二ジャーナル型40の上面及び下面に対する角度が傾斜角θ1となるように、傾斜面43R・43L・44R・44Lが形成されている。また、第二ジャーナル型40の略中央部には、棒状素材Wのジャーナル部を挟持する円形孔である第二ジャーナル型側挟持部45が上下方向に開口されている。さらに、第二ジャーナル型側挟持部45の周囲には、上面及び下面のそれぞれに、クランクシャフトの肩部を形成する肩部溝46U・46Dが形成されている。
【0051】
また、第二ジャーナル型40の後部には切欠き部47R・47Lが形成されている。即ち、第一ジャーナル型30と第二ジャーナル型40とが近接した際には、第一偏芯ブロック32R・32Lがそれぞれ切欠き部47R・47Lに挿入され、第二偏芯ブロック41R・41Lが切欠き部38R・38Lに挿入されることにより、それぞれの型が偏芯ブロックと干渉することを防いでいるのである。
【0052】
上記の如く配設された第一ジャーナル型30と第二ジャーナル型40との間に、第一偏芯ブロック32R・32Lの傾斜面34R・34Lと、第二偏芯ブロック41R・41Lの傾斜面43R・43Lと、に当接して、第二ピン型70が配設される。詳細には、図6に示す如く、第二ピン型70の後端部上側には当接面71R・71Lが水平面からの角度が前記傾斜角θ1となるように形成されており、該当接面71R・71Lが傾斜面34R・34Lに対して当接しているのである。また、第二ピン型70の後端部下側には図示しない当接面が水平面からの角度が前記傾斜角θ1となるように形成されており、該当接面が傾斜面43R・43Lに対して当接しているのである。
【0053】
また、図6に示す如く、第二ピン型70の略中央部には、棒状素材Wのピン部を挟持する円形孔である第二ピン型側挟持部75が上下方向に開口されている。さらに、第二ピン型側挟持部75の周囲には、上面にクランクシャフトの肩部を形成する肩部溝76Uが形成され、下面にクランクシャフトの肩部を形成する図示しない肩部溝が形成されている。
【0054】
上記の如くクランクシャフトの製造装置100は、クランクシャフトを成形する際に、第一ジャーナル型30と第二ジャーナル型40とが近接することにより、第一偏芯ブロック32R・32L及び第二偏芯ブロック41R・41Lと当接する第二ピン型70が前方にスライドするように構成されている。詳しくは、前記傾斜面34R・34L及び傾斜面43R・43Lの作用により、即ち傾斜面34R・34L及び傾斜面43R・43Lが第二ピン型70の後端部を挟むようにして摺動することにより、上下方向の力が水平方向への力に変換され、第二ピン型70は前方への力を受けてスライドするのである。そして、第二ピン型70がピン部を棒状素材Wの軸方向と垂直な偏芯方向である前方に押圧することにより、ピン部をジャーナル部である棒状素材Wの軸心から偏芯させるのである。
【0055】
次に、第二ジャーナル型40、第三ジャーナル型50、及び、第三ピン型80の具体的な構成について説明する。
図7(a)及び図7(b)に示す如く、第二ジャーナル型40には前記の通り、傾斜面43R・43L・44R・44Lが形成された第二偏芯ブロック41R・41L・42R・42Lが配設されている。なお、図7(b)は図7(a)におけるJ−J線断面図である。
【0056】
図7(c)及び図7(d)に示す如く、第三ジャーナル型50の上面後部右寄り及び上面後部左寄りには、第三偏芯ブロック51R・51Lが上方に突出して配設され、下面前部略中央部には、第三偏芯ブロック52R・52Lが下方に突出して配設されている。なお、図7(c)は図7(d)におけるK−K線断面図である。そして、それぞれの第三偏芯ブロック51R・51L・52R・52Lには、水平面である第三ジャーナル型50の上面及び下面に対する角度が傾斜角θ1となるように、傾斜面53R・53L・54R・54Lが形成されている。また、第三ジャーナル型50の略中央部には、棒状素材Wのジャーナル部を挟持する円形孔である第三ジャーナル型側挟持部55が上下方向に開口されている。さらに、第三ジャーナル型側挟持部55の周囲には、上面及び下面のそれぞれに、クランクシャフトの肩部を形成する肩部溝56U・56Dが形成されている。
【0057】
また、第三ジャーナル型50の前部及び後部にはそれぞれ切欠き部57R・57L・58R・58Lが形成されている。即ち、第二ジャーナル型40と第三ジャーナル型50とが近接した際には、第二偏芯ブロック42R・42Lがそれぞれ切欠き部57R・57Lに挿入され、第三偏芯ブロック51R・51Lが切欠き部47R・47Lに挿入されることにより、それぞれの型が偏芯ブロックと干渉することを防いでいるのである。
【0058】
また、図2に示す如く、第一偏芯ブロック32R・32Lと第三偏芯ブロック51R・51Lとは左右方向に位置をずらして配設されている。これにより、第一ジャーナル型30と第二ジャーナル型40、第二ジャーナル型40と第三ジャーナル型50が近接した際に干渉することを防いでいるのである。
【0059】
上記の如く配設された第二ジャーナル型40と第三ジャーナル型50との間に、第二偏芯ブロック42R・42Lの傾斜面44R・44Lと、第三偏芯ブロック51R・51Lの傾斜面53R・53Lと、に当接して、第三ピン型80が配設される。詳細には、図8に示す如く、第三ピン型80の後端部上側には当接面81R・81Lが水平面からの角度が前記傾斜角θ1となるように形成されており、該当接面81R・81Lが傾斜面44R・44Lに対して当接しているのである。また、第三ピン型80の後端部下側には図示しない当接面が水平面からの角度が前記傾斜角θ1となるように形成されており、該当接面が傾斜面53R・53Lに対して当接しているのである。
【0060】
また、図8に示す如く、第三ピン型80の略中央部には、棒状素材Wのピン部を挟持する円形孔である第三ピン型側挟持部85が上下方向に開口されている。さらに、第三ピン型側挟持部85の周囲には、上面にクランクシャフトの肩部を形成する肩部溝86Uが形成され、下面にクランクシャフトの肩部を形成する図示しない肩部溝が形成されている。
【0061】
上記の如くクランクシャフトの製造装置100は、クランクシャフトを成形する際に、第二ジャーナル型40と第三ジャーナル型50とが近接することにより、第二偏芯ブロック42R・42L及び第三偏芯ブロック51R・51Lと当接する第三ピン型80が前方にスライドするように構成されている。詳しくは、前記傾斜面44R・44L及び傾斜面53R・53Lの作用により、即ち傾斜面44R・44L及び傾斜面53R・53Lが第三ピン型80の後端部を挟むようにして摺動することにより、上下方向の力が水平方向への力に変換され、第三ピン型80は前方への力を受けてスライドするのである。そして、第三ピン型80がピン部を棒状素材Wの軸方向と垂直な偏芯方向である前方に押圧することにより、ピン部をジャーナル部である棒状素材Wの軸心から偏芯させるのである。
【0062】
なお、第三ジャーナル型50、固定型10、及び、第四ピン型90の具体的な構成については、可動型20、第一ジャーナル型30、及び、第一ピン型60の構成を上下対象に配置したものと略同一であるため、説明を省略する。
【0063】
前記第一ジャーナル型30から第三ジャーナル型50、及び、第一ピン型60から第四ピン型90は、左右に分割可能に構成されている。即ち、例えば図9(a)に示す如く、第一ジャーナル型30は右側第一ジャーナル型30Rと左側第一ジャーナル型30Lとに分割できるのである。また、図9(b)に示す如く、第一ピン型60は右側第一ピン型60Rと左側第一ピン型60Lとに分割できるのである。
【0064】
本実施形態においては、それぞれのジャーナル型及びピン型には電磁石が内蔵される。具体的には、図9(a)及び(b)に示す如く、第一ジャーナル型30及び第一ピン型60にはそれぞれ電磁石39・39・・・、及び、電磁石69・69・・・が内蔵されている。そして、それぞれの型が棒状素材Wを挟持する際には電磁石39・39・・・、及び、電磁石69・69・・・が互いに引きあう方向に電流を流して型を一体化するのである。一方、それぞれの型を棒状素材Wから取外す際には電磁石39・39・・・、及び、電磁石69・69・・・が互いに反発しあう方向に電流を流して型を分割するのである。
なお、それぞれのジャーナル型及びピン型を一体化する方法は電磁石によるものに限らず、ばね等の付勢力を用いた構成や、ボルト等の締結部材を用いた構成にすることも可能である。
【0065】
本実施形態に係るクランクシャフトの製造装置100においては上記の如く、可動型20及び第一ジャーナル型30から第三ジャーナル型50を固定型10と平行な状態のままで固定型10に近接させることにより、各偏芯ブロックが棒状素材Wの軸方向に摺動し、それぞれの偏芯ブロックが第一ピン型60から第四ピン型90を棒状素材Wの軸方向と垂直な偏芯方向に押圧するように構成されているのである。
具体的には図10及び図11に示す如く、第一ピン型60及び第四ピン型90が後方にスライドし、第二ピン型70及び第三ピン型80が前方にスライドしてピン部を押圧することにより、ピン部をジャーナル部である棒状素材Wの軸心から偏芯させて、クランクシャフトCを成形するのである。
【0066】
本実施形態においては上記の如く構成することにより、プレスラムによる圧縮のみによって、棒状素材Wの圧縮加工と多気筒のクランクシャフトCにおける全てのピン部の偏芯加工とを同時に行うことが可能となる。即ち、上下方向の圧縮力を各偏芯ブロックと第一ピン型60から第四ピン型90との摺動によって各傾斜面の作用で前後方向の押圧力に変換することにより、単一の圧縮手段によって上下方向の圧縮と前後方向の偏芯とを同時に行うことができるのである。
【0067】
また、本実施形態においては上記の如く力の方向の変換機構として、偏芯ブロックとピン型との摺動を利用しているため、変換機構の剛性を高めることができる。即ち、リンク機構等と比較して高い剛性を得ることが可能であるため、冷間鍛造でクランクシャフトを成形する場合であっても、ピン部を偏芯させるために必要な偏芯力を容易に棒状素材Wに与えることができるのである。
【0068】
また、本実施形態においては、前記変換機構は偏芯ブロックとピン型として全てがスライドガイド102に収納されている。即ち、装置の外部に別の機構を配設する必要がないため、多気筒のクランクシャフトを成形する場合であっても装置構成をコンパクトにすることができるのである。
【0069】
さらに、クランクシャフトの成形初期においては、スライドガイド102による各ジャーナル型及び各ピン型を拘束する強さは小さいため、各ジャーナル型及び各ピン型のスライドガイド102に対する摺動性を確保することができる。一方、クランクシャフトの成形終期においては、棒状素材Wが圧縮されることによって内部の圧力が高まり、スライドガイド102による各ジャーナル型及び各ピン型を拘束する強さは大きくなる。これにより、スライドガイド102によって棒状素材Wに対する十分な型締め力を得ることができるのである。また、棒状素材Wの型締めに際して他の部品を必要としないため、装置構成をコンパクトにすることができ、作業効率及び生産性を向上させることが可能となるのである。
【0070】
本実施形態に係るクランクシャフトの製造装置100においては、前記偏芯ブロックにおける傾斜面の傾斜角θ1は、ピン型が可動型、ジャーナル型、又は、固定型に近接する幅である据え込み量hと、ピン部がジャーナル部である棒状素材Wの軸心から偏芯する偏芯量dと、の関係より算出される。
【0071】
具体的には図12(a)に示す如く、第一ピン型60においては、成形前の状態における可動型20及び第一ジャーナル型30との間隔が据え込み量hとなる。実際は、クランクシャフトCの成形後に図12(b)に示す状態となった際は、第一ピン型60と可動型20及び第一ジャーナル型30との間には小さな隙間ができる。このため、実際の据え込み量hは、第一ピン型60と、可動型20及び第一ジャーナル型30との成形前の状態における間隔の長さから前記隙間の長さを引いた長さとなる。ただし、本明細書においては便宜上、成形前の各図におけるピン型と可動型、ジャーナル型、又は、固定型との間隔を据え込み量hとして説明する。
また、図12(b)に示す如く、ピン部がジャーナル部である棒状素材Wの軸心から偏芯した長さが偏芯量dとなる。
【0072】
それぞれの偏芯ブロックにおける傾斜面の傾斜角θ1は、上記の据え込み量hと偏芯量dとから、tanθ1が据え込み量h/偏芯量dとなるように形成される。例えば可動型20及び第一ジャーナル型30においては、図12(a)に示す如く、傾斜面24R、傾斜面33Rの傾斜角θ1が上記の関係を満たす大きさで形成されているのである。つまり、各偏芯ブロックの傾斜面の勾配は、偏芯量dだけピン型が偏芯すると据え込み量hだけピン型が可動型、ジャーナル型、又は、固定型に近接するように形成されるのである。
【0073】
本実施形態においては上記の如く構成することにより、所望の偏芯量d及び偏芯力を得ることが可能となる。即ち、偏芯ブロックの傾斜角を調整することにより、所定の据え込み量hに対する偏芯量d及び偏芯力を変更することが可能となるのである。換言すれば、成形するクランクシャフトの形状に応じて据え込み量hと偏芯量dの関係を調整する場合は、偏芯ブロックの傾斜角を変更すれば良い。具体的には、偏芯量dを大きくする場合には偏芯ブロックの傾斜角を小さくし、偏芯量dを小さくする場合には偏芯ブロックの傾斜角を大きくすれば良いのである。
【0074】
また、本実施形態に係るクランクシャフトの製造装置100においては図13に示す如く、可動型20の可動型側保持部25よりも固定型10の側における、偏芯方向と反対側の面には、棒状素材Wのピン部が偏芯する際における棒状素材Wの偏芯方向と反対側への変形を抑制する、可動型素材拘束部26aが形成されている。また、第一ピン型60の第一ピン型側挟持部65よりも可動型20の側、及び、固定型10の側における、偏芯方向側の面のそれぞれには、棒状素材Wのピン部が偏芯する際における棒状素材Wの偏芯方向側への変形を抑制する、第一ピン型素材拘束部66a・66aが形成される。
【0075】
クランクシャフトの製造装置100においては、図13に示すように、可動型20の可動型素材拘束部26a並びにテーパ面26bのそれぞれが棒状素材Wに与える力Pa11・Pa12、及び、棒状素材Wが第一ピン型60のテーパ面66b並びに第一ピン型素材拘束部66aに与える力Pb11・Pb12が発生する。つまり、これらの力Pa11・Pa12・Pb11・Pb12の水平方向の合力が、第一ピン型60に対する偏芯方向又は反偏芯方向の力となり、偏芯量dに影響を与えるのである。
【0076】
ここで、可動型素材拘束部26a及び第一ピン型素材拘束部66aは水平面に対して直立しているため、可動型素材拘束部26aが棒状素材Wに与える力Pa11、及び、棒状素材Wが第一ピン型素材拘束部66aに与える力Pb12は、図13に示す如く偏芯方向と同一の方向に向かってはたらく。
一方、テーパ面26b及びテーパ面66bは水平面に対して傾斜しているため、テーパ面26bが棒状素材Wに与える力Pa12、及び、棒状素材Wがテーパ面66bに与える力Pb11は、反偏芯方向に対して傾斜してはたらく。つまり、力Pa12及び力Pb11のそれぞれの水平方向成分が反偏芯方向への合力としてはたらくため、力Pa11及び力Pb12の偏芯方向への合力よりも小さくなるのである。
即ち、力Pa11・Pa12・Pb11・Pb12の水平方向の合力は偏芯方向にはたらき、第一ピン型60の偏芯を促進する方向に加わるのである。
【0077】
換言すれば、本実施形態に係るクランクシャフトの製造装置100においては、可動型素材拘束部26aにより、棒状素材Wのピン部が偏芯する際における前記偏芯方向と反対側への前記棒状素材Wの変形を抑制し、第一ピン型素材拘束部66aにより、棒状素材Wのピン部が偏芯する際における偏芯方向側への棒状素材Wの変形を抑制するように構成されているのである。
【0078】
即ち、上記の如く構成することにより、ジャーナル部に対するピン部の偏芯量dを確保し易くしているのである。詳細には、力Pa11・Pa12・Pb11・Pb12の合力を偏芯方向、即ち第一ピン型60の偏芯を促進する方向に加えることにより、ジャーナル部に対するピン部の偏芯量dをより大きくすることができるのである。換言すれば、プレスラムによる圧縮力を必要以上に大きくすることがなく、偏芯量dを得ることが可能となるのである。
【0079】
なお、各ジャーナル型及び固定型10と各ピン型との関係においても、上記と同様に構成されている。つまり、固定型10及び各ジャーナル型と各ピン型との間にも同様に偏芯方向又は反偏芯方向に力が発生する構成としているが、可動型20と第一ピン型60における関係と同様のため省略する。
【0080】
上記の如くクランクシャフトCを成形した後でクランクシャフトCを脱型する際には、図14に示す如く、プレスラム、スライドガイド102、可動型20を一体的に上昇させる。そして、第一ジャーナル型30をクランクシャフトCから取外す場合は、図15に示す如く、治具105R・105Lで右側第一ジャーナル型30Rと左側第一ジャーナル型30Lをそれぞれクランプする。その後、電磁石39・39・・・が互いに反発しあう方向に電流を流して第一ジャーナル型30を分割することにより、第一ジャーナル型30をクランクシャフトCから取外すのである。さらに、他のジャーナル型及びピン型についても同様に取外していくのである。
【0081】
本実施形態においては上記の如く構成することにより、スライドガイド102を上昇させるだけで各ジャーナル型及びピン型を分割できる状態となる。即ち、それぞれの型ごとにリング等の拘束部材で拘束する必要がないため、型開きの機構を単純化することが可能となる。これにより、成形後のクランクシャフトCを型から取外す作業にかかる時間を短縮することができ、生産性を向上させることが可能となるのである。
【0082】
上記の如く、本実施形態に係るクランクシャフトの製造方法においては、まず、成形対象となる棒状素材Wの両端部のそれぞれを、固定型10における固定型側保持部15と、固定型10に対して近接離間可能に配置される可動型20における可動型側保持部25と、で保持する。そして、棒状素材Wのジャーナル部を、固定型10に対して近接離間可能に配置される第一ジャーナル型30、第二ジャーナル型40、及び、第三ジャーナル型50における第一ジャーナル型側挟持部35、第二ジャーナル型側挟持部45、及び、第三ジャーナル型側挟持部55で挟持する。さらに、棒状素材Wのピン部を、固定型10、第一ジャーナル型30、第二ジャーナル型40、第三ジャーナル型50、及び、可動型20のそれぞれの間隙に1個ずつ、可動型20が固定型10に対して近接離間する方向と直交する方向にスライド可能に配置される第一ピン型60、第二ピン型70、第三ピン型80、及び、第四ピン型90における第一ピン型側挟持部65、第二ピン型側挟持部75、第三ピン型側挟持部85、第四ピン型側挟持部95、で挟持するのである。
【0083】
上記の状態で、可動型20及び第一ジャーナル型30、第二ジャーナル型40、第三ジャーナル型50を固定型10に近接させることにより棒状素材Wを軸方向に圧縮すると同時に、第一ピン型60、第二ピン型70、第三ピン型80、及び、第四ピン型90がピン部を棒状素材Wの軸方向と垂直な偏芯方向に押圧することにより、ピン部をジャーナル部である棒状素材Wの軸心から偏芯させるのである。
【0084】
ここで、本実施形態に係るクランクシャフトの製造方法においては、固定型10、第一ジャーナル型30、第二ジャーナル型40、第三ジャーナル型50、及び、可動型20のそれぞれの間隙に配置され、所定の傾斜角を有する傾斜面が形成され、第一ピン型60、第二ピン型70、第三ピン型80、及び、第四ピン型90が当接した偏芯ブロックを、可動型20及び第一ジャーナル型30、第二ジャーナル型40、第三ジャーナル型50を固定型10に近接させることにより棒状素材Wの軸方向に摺動させて、傾斜面の作用により、第一ピン型60、第二ピン型70、第三ピン型80、及び、第四ピン型90を棒状素材Wの軸方向と垂直な偏芯方向に押圧するのである。
換言すれば、棒状素材Wを前記軸方向へ圧縮する圧縮力の方向が所定の傾斜角を有する面同士を摺動させて前記軸線と直交する方向へ変換されることにより、棒状素材Wのピン部を前記軸方向と垂直な偏芯方向へ押圧する押圧力が得られるのである。
【0085】
本実施形態においては上記の如く構成することにより、プレスラムによる圧縮のみによって、棒状素材Wの圧縮加工と多気筒のクランクシャフトCにおける全てのピン部の偏芯加工とを同時に行うことが可能となる。即ち、上下方向の圧縮力を各偏芯ブロックと第一ピン型60から第四ピン型90との摺動によって前後方向の押圧力に変換することにより、単一の圧縮手段によって上下方向の圧縮と前後方向の偏芯とを同時に行うことができるのである。
【0086】
また、本実施形態においては上記の如く力の方向の変換機構として、偏芯ブロックとピン型との摺動を利用しているため、変換機構の剛性を高めることができる。即ち、リンク機構等と比較して高い剛性を得ることが可能であるため、冷間鍛造でクランクシャフトを成形する場合であっても、ピン部を偏芯させるために必要な偏芯力を容易に棒状素材Wに与えることができるのである。
【0087】
また、本実施形態に係るクランクシャフトの製造方法においては、偏芯ブロックにおける傾斜面の傾斜角θ1は、ピン型60〜90が可動型20、ジャーナル型30〜50、又は、固定型10に近接する幅である据え込み量hと、ピン部がジャーナル部である棒状素材Wの軸心から偏芯する偏芯量dと、の関係より算出するのである。
【0088】
本実施形態においては上記の如く構成することにより、所望の偏芯量d及び偏芯力を得ることが可能となる。即ち、偏芯ブロックの傾斜角を調整することにより、所定の据え込み量hに対する偏芯量d及び偏芯力を変更することが可能となるのである。換言すれば、成形するクランクシャフトの形状に応じて据え込み量hと偏芯量dの関係を調整する場合は、偏芯ブロックの傾斜角を変更すれば良い。具体的には、偏芯量dを大きくする場合には偏芯ブロックの傾斜角を小さくし、偏芯量dを小さくする場合には偏芯ブロックの傾斜角を大きくすれば良いのである。
【0089】
また、本実施形態に係るクランクシャフトの製造方法においては、可動型20、ジャーナル型30〜50、及び、ピン型60〜90を、固定型10に対して近接離間可能に構成された枠体であるスライドガイド102に収納している。そして、可動型20及びジャーナル型30〜50を、スライドガイド102によって、可動型20が固定型10に対して近接離間する方向と直交する方向には移動しないように拘束する。また、ピン型60〜90を、スライドガイド102によって、可動型20が固定型10に対して近接離間する方向と直交する方向のうち一つの方向、即ち左右方向には移動しないように拘束するのである。
【0090】
本実施形態においては上記の如く、変換機構の全てを偏芯ブロック及びピン型としてスライドガイド102に収納している。これにより、装置の外部に別の機構を配設する必要がないため、多気筒のクランクシャフトを成形する場合であっても装置構成をコンパクトにすることができるのである。
【0091】
さらに、クランクシャフトの成形初期においては、スライドガイド102による各ジャーナル型及び各ピン型を拘束する強さは小さいため、各ジャーナル型及び各ピン型のスライドガイド102に対する摺動性を確保することができる。一方、クランクシャフトの成形終期においては、棒状素材Wが圧縮されることによって内部の圧力が高まり、スライドガイド102による各ジャーナル型及び各ピン型を拘束する強さは大きくなる。これにより、スライドガイド102によって棒状素材Wに対する十分な型締め力を得ることができるのである。また、棒状素材Wの型締めに際して他の部品を必要としないため、装置構成をコンパクトにすることができるのである。
【0092】
[第二実施形態]
前記の第一実施形態においては、クランクシャフトにおけるピン部の偏芯量の大きさによって、偏芯ブロックの傾斜面の傾斜角θ1が定められる。例えば、偏芯量の小さいクランクシャフトの場合、図16(a)に示す如く、偏芯ブロック22R・31Rの傾斜面24R・33Rの傾斜角θHは大きくなる。一方、偏芯量の大きいクランクシャフトの場合、図16(b)に示す如く、偏芯ブロック22R・31Rの傾斜面24R・33Rの傾斜角θLは小さくなるのである。
【0093】
ここで、図16(a)に示すように、必要な偏芯力を矢印FBで示すと、傾斜面24Rが第一ピン型60を垂直に押圧する力は矢印FHとなる。一方、図16(b)に示すように、必要な偏芯力の大きさが矢印FBで変わらない場合、傾斜面24Rが第一ピン型60を垂直に押圧する力は矢印FLとなり、矢印FHに比べると大きくなる。
つまり、偏芯量の大きいクランクシャフトを成形する場合に、偏芯ブロックの傾斜面における傾斜角が小さくなると、ピン型との間での面圧が大きくなり、かじりを生じるおそれがあるのである。
【0094】
上記の問題を解決する、本発明の第二実施形態に係るクランクシャフトの製造装置200について、図17を用いて説明をする。
本実施形態に係るクランクシャフトの製造装置200は、前記実施形態と同様に、基台201の上面に固設された固定型210と、該固定型210に対して近接離間可能に配置される可動型220と、を備えている。また、固定型210の上方には図示しないプレスラムが基台201及び固定型210に対して上下方向に近接離間可能に配設されている。そして、プレスラムの下面には枠体であるスライドガイド202が固設されている。
【0095】
さらに、スライドガイド202の内側の上面には、平面視における外形がスライドガイド202の内周形状と略同一に形成された可動型220が配設されている。つまり、可動型220は、スライドガイド202によって、可動型220が固定型210に対して近接離間する方向と直交する方向である水平方向には移動しないように拘束されているのである。
また、固定型210と基台201のそれぞれには、スライドガイド202の下部である開口部を挿入可能な溝部210aおよび溝部201aが上下方向に形成されている。
【0096】
さらに、クランクシャフトの製造装置200には、可動型220と固定型210との間に、固定型210に対して近接可能に構成される第一ジャーナル型230、第二ジャーナル型240、及び、第三ジャーナル型250が上から順に配置されている。
【0097】
具体的には、第一ジャーナル型230、第二ジャーナル型240、及び、第三ジャーナル型250の平面視における形状は、スライドガイド202の平面視における内周形状と略同一に形成されており、それぞれがスライドガイド202の内周に沿って上下方向に摺動可能にスライドガイド202の内部に収納されているのである。つまり、第一ジャーナル型230、第二ジャーナル型240、及び、第三ジャーナル型250のそれぞれは、スライドガイド202によって、可動型220が固定型210に対して近接離間する方向と直交する方向である水平方向には移動しないように拘束されているのである。
【0098】
また、可動型220、第一ジャーナル型230、第二ジャーナル型240、第三ジャーナル型250、及び、固定型210のそれぞれの間隙に1個ずつ、固定型210に対して近接可能かつ可動型220が固定型210に対して近接離間する上下方向に対して直交する前後方向にスライド可能に構成される第一ピン型260、第二ピン型270、第三ピン型280、及び、第四ピン型290が上から順に配置されている。
【0099】
具体的には、第一ピン型260、第二ピン型270、第三ピン型280、及び、第四ピン型290の左右方向長さは、スライドガイド202の内部の左右方向長さと略同一に形成されている。また、第一ピン型260、第二ピン型270、第三ピン型280、及び、第四ピン型290の前後方向長さは、スライドガイド202の内部の前後方向長さよりも短く形成されている。そして、それぞれがスライドガイド202の内周に沿って上下方向に摺動しつつ、前後方向にスライド可能にスライドガイド202の内部に収納されているのである。つまり、第一ピン型260、第二ピン型270、第三ピン型280、及び、第四ピン型290のそれぞれは、スライドガイド202によって、可動型220が固定型210に対して近接離間する方向である上下方向と直交する方向のうち一つの方向である左右方向(後述する棒状素材Wの偏芯方向と直交する方向)には移動しないように拘束されているのである。
【0100】
なお、本実施形態においては、前記ジャーナル型及びピン型の個数はそれぞれ3個及び4個で構成したが、それぞれの個数は限定されるものではなく、成形対象であるクランクシャフトの形状によって変更することができる。
【0101】
そして、クランクシャフトの製造装置200は成形前において、図17に示す如く、成形対象である棒状素材Wの上端部を可動型220における可動型側保持部で保持すると同時に、下端部を固定型210における固定型側保持部で保持する構成としている。そして、前記棒状素材Wのジャーナル部を第一ジャーナル型230、第二ジャーナル型240、第三ジャーナル型250で保持し、さらに棒状素材Wのピン部を第一ピン型260、第二ピン型270、第三ピン型280、及び、第四ピン型290で挟持する構成としている。
【0102】
クランクシャフトの製造装置200でクランクシャフトを成形するときは、上記の状態でスライドガイド202を下降させる。そして、可動型220及び第一ジャーナル型230、第二ジャーナル型240、第三ジャーナル型250を、固定型210と平行な状態のままで固定型210に近接させることにより、棒状素材Wを軸方向に圧縮するのである。それと同時に、後述するように第一ピン型260、第二ピン型270、第三ピン型280、及び、第四ピン型290がピン部を棒状素材Wの軸方向と垂直な偏芯方向に押圧することにより、ピン部をジャーナル部である棒状素材の軸心から偏芯させるのである。
【0103】
本実施形態に係るクランクシャフトの製造装置200においては、固定型210、第一ジャーナル型230、第二ジャーナル型240、第三ジャーナル型250、及び、可動型220に、それぞれの間隙に、所定の傾斜角を有する傾斜面が形成された複数の偏芯ブロックが前後方向にスライド可能に配設されている。
【0104】
前記偏芯ブロックは、具体的には、第一ピン型260から第四ピン型290のそれぞれを棒状素材Wの軸方向と垂直な偏芯方向に押圧する、第一偏芯ブロックから第四偏芯ブロックである。
そして、第一偏芯ブロックは、第一ジャーナル型230の上面前端に配設される第一固定ブロック231Uと、第一ジャーナル型230の上面前部に配設され、第一ピン型260の前端と当接する第一スライドブロック232Uと、可動型220の下面前部に配設されて第一固定ブロック231Uと第一スライドブロック232Uとの間にくさび状に介挿される第一中央ブロック221Dと、で構成される。
第二偏芯ブロックは、第一ジャーナル型230の下面後端に配設される第二固定ブロック231Dと、第一ジャーナル型230の下面後部に配設され、第二ピン型270の後端と当接する第二スライドブロック232Dと、第二ジャーナル型240の上面後部に配設されて第二固定ブロック231Dと第二スライドブロック232Dとの間にくさび状に介挿される第二中央ブロック241Uと、で構成される。
第三偏芯ブロックは、第三ジャーナル型250の上面後端に配設される第三固定ブロック251Uと、第三ジャーナル型250の上面後部に配設され、第三ピン型280の後端と当接する第三スライドブロック252Uと、第二ジャーナル型240の下面後部に配設されて第三固定ブロック251Uと第三スライドブロック252Uとの間にくさび状に介挿される第三中央ブロック241Dと、で構成される。
第四偏芯ブロックは、第三ジャーナル型250の下面前端に配設される第四固定ブロック251Dと、第三ジャーナル型250の下面前部に配設され、第四ピン型290の前端と当接する第四スライドブロック252Dと、固定型10の上面前部に配設されて第四固定ブロック251Dと第四スライドブロック252Dとの間にくさび状に介挿される第四中央ブロック211Uと、で構成されるのである。
【0105】
なお、固定型210、可動型220、及び、各ジャーナル型230〜250には、互いに近接した際に、それぞれの偏芯ブロックと干渉しあわないように切欠き部が形成されている(例えば、固定型210における切欠き部217や、可動型220における切欠き部227など)。即ち、例えば可動型220と第一ジャーナル型230とが近接した際には、第一固定ブロック231Uと第一スライドブロック232Uとが可動型220の切欠き部に挿入され、第一中央ブロック221Dが第一ジャーナル型230の切欠き部に挿入されるのである。
【0106】
上記の如くクランクシャフトの製造装置200は、クランクシャフトを成形する際に、可動型220と第一ジャーナル型230とが近接することにより、第一スライドブロック232Uと当接する第一ピン型260が後方にスライドするように構成されている。
【0107】
詳しくは、第一中央ブロック221Dが第一固定ブロック231Uと第一スライドブロック232Uとの間に挿入されることにより、図18(a)に示す如く傾斜面223Dが傾斜面233Uと摺動し、傾斜面224Dが傾斜面234Uと摺動することにより、上下方向の力が水平方向への力に変換され、第一中央ブロック221D及び第一スライドブロック232Uが後方にスライドするのである。これにより、第一ピン型260は後方への力を受けてスライドするのである。そして、第一ピン型260がピン部を棒状素材Wの軸方向と垂直な偏芯方向である後方に押圧することにより、ピン部をジャーナル部である棒状素材Wの軸心から偏芯させるのである。
【0108】
クランクシャフトの製造装置200は、上記と同様に、第二スライドブロック232Dと当接する第二ピン型270が前方にスライドするように構成され、第三スライドブロック252Uと当接する第三ピン型280が前方にスライドするように構成され、第四スライドブロック252Dと当接する第四ピン型290が後方にスライドするように構成されているのである。
【0109】
本実施形態においては上記の如く構成することにより、プレスラムによる圧縮のみによって、棒状素材Wの圧縮加工と多気筒のクランクシャフトCにおける全てのピン部の偏芯加工とを同時に行うことが可能となる。即ち、上下方向の圧縮力を各偏芯ブロックと第一ピン型260から第四ピン型290との摺動によって前後方向の押圧力に変換することにより、単一の圧縮手段によって上下方向の圧縮と前後方向の偏芯とを同時に行うことができるのである。
【0110】
また、本実施形態においては上記の如く力の方向の変換機構として、偏芯ブロックとピン型との摺動を利用しているため、変換機構の剛性を高めることができる。即ち、リンク機構等と比較して高い剛性を得ることが可能であるため、冷間鍛造でクランクシャフトを成形する場合であっても、ピン部を偏芯させるために必要な偏芯力を容易に棒状素材Wに与えることができるのである。
【0111】
本実施形態に係るクランクシャフトの製造装置200においても、前記偏芯ブロックにおける傾斜面の傾斜角θ2は、ピン型が可動型、ジャーナル型、又は、固定型に近接する幅である据え込み量hと、ピン部がジャーナル部である棒状素材Wの軸心から偏芯する偏芯量dと、の関係より算出される。
【0112】
具体的には図18(a)に示す如く、第一ピン型260においては、可動型220及び第一ジャーナル型230との間隔が据え込み量hとなる。また、図18(b)に示す如く、ピン部がジャーナル部である棒状素材Wの軸心から偏芯した長さが偏芯量dとなる。
【0113】
それぞれの偏芯ブロックにおける傾斜面の傾斜角θ2は、上記の据え込み量hと偏芯量dとから、tanθ2が(据え込み量h×4)/偏芯量dとなるように形成される。つまり、それぞれの傾斜面同士を摺動させることにより、一定の偏芯量を得るための傾斜面の横方向長さは半分となる。さらに、傾斜面を二組用いることにより、それぞれの傾斜面における傾斜面の横方向長さをさらに半分とすることができるのである。即ち、一定の偏芯量を得るための傾斜面の横方向長さを、前記第一実施形態の4分の1の長さにすることができるため、上記の式が得られるのである。例えば可動型220及び第一ジャーナル型230においては、図18(a)に示す如く、傾斜面223D・224D、傾斜面233U・234Uの傾斜角θ2が上記の関係を満たす大きさで形成されているのである。
【0114】
本実施形態においては上記の如く構成することにより、所望の偏芯量d及び偏芯力を得ることが可能となる。即ち、偏芯ブロックの傾斜角を調整することにより、所定の据え込み量hに対する偏芯量d及び偏芯力を変更することが可能となるのである。
また、偏芯ブロックの傾斜面における傾斜角を大きくして、かじりを防止する構成としている。具体的には前記の如く、傾斜面の傾斜角θ2を、前記第一実施形態における傾斜面の傾斜角θ1と比較して大きくすることができるため、各偏芯ブロックの傾斜面での面圧が小さくなり、かじりを発生しにくくできるのである。
【0115】
[第三実施形態]
前記の第二実施形態においてクランクシャフトを成形するときは、可動型220及び第一ジャーナル型230、第二ジャーナル型240、第三ジャーナル型250を固定型210に近接させる。その際に、可動型220、第一ジャーナル型230、第二ジャーナル型240、第三ジャーナル型250、及び、固定型210のそれぞれは、偏芯ブロックから反力を受ける。具体的には図19に示す如く、可動型220及び第一ジャーナル型230は第一偏芯ブロックから矢印a2・a2で示す反力を受ける。また、第一ジャーナル型230及び第二ジャーナル型240は第二偏芯ブロックから矢印b2・b2で示す反力を受ける。また、第二ジャーナル型240及び第三ジャーナル型250は第三偏芯ブロックから矢印c2・c2で示す反力を受ける。また、第三ジャーナル型250及び固定型210は第四偏芯ブロックから矢印d2・d2で示す反力を受けるのである。
【0116】
上記の如く反力を受けた場合、第一ジャーナル型230には図19の矢印αの方向にモーメントが発生し、また、第三ジャーナル型250には図19の矢印βの方向にモーメントが発生する。これにより、クランクシャフトを成形する最中に、第一ジャーナル型230及び第三ジャーナル型250がスライドガイド202の中で傾斜し、かじりを生じるおそれがある。
【0117】
上記の問題を解決する、本発明の第三実施形態に係るクランクシャフトの製造装置300について、図20を用いて説明をする。
本実施形態に係るクランクシャフトの製造装置300は、前記実施形態と同様に、基台301の上面に固設された固定型310と、該固定型310に対して近接離間可能に配置される可動型320と、を備えている。また、固定型310の上方には図示しないプレスラムが基台301及び固定型310に対して上下方向に近接離間可能に配設されている。そして、プレスラムの下面には枠体であるスライドガイド302が固設されている。
【0118】
さらに、スライドガイド302の内側の上面には、平面視における外形がスライドガイド302の内周形状と略同一に形成された可動型320が配設されている。つまり、可動型320は、スライドガイド302によって、可動型320が固定型310に対して近接離間する方向と直交する方向である水平方向には移動しないように拘束されているのである。
また、固定型310と基台301のそれぞれには、スライドガイド302の下部である開口部を挿入可能な溝部310aおよび溝部301aが上下方向に形成されている。
【0119】
さらに、クランクシャフトの製造装置300には、可動型320と固定型310との間に、固定型310に対して近接可能に構成される第一ジャーナル型330、第二ジャーナル型330、及び、第三ジャーナル型350が上から順に配置されている。
【0120】
また、可動型320、第一ジャーナル型330、第二ジャーナル型340、第三ジャーナル型350、及び、固定型310のそれぞれの間隙に1個ずつ、固定型310に対して近接可能かつ可動型320が固定型310に対して近接離間する上下方向に対して直交する前後方向にスライド可能に構成される第一ピン型360、第二ピン型370、第三ピン型380、及び、第四ピン型390が上から順に配置されている。
【0121】
そして、クランクシャフトの製造装置300は成形前において、図20に示す如く、成形対象である棒状素材Wの上端部を可動型320における可動型側保持部で保持すると同時に、下端部を固定型310における固定型側保持部で保持する構成としている。そして、前記棒状素材Wのジャーナル部を第一ジャーナル型330、第二ジャーナル型340、第三ジャーナル型350で保持し、さらに棒状素材Wのピン部を第一ピン型360、第二ピン型370、第三ピン型380、及び、第四ピン型390で挟持する構成としている。
【0122】
クランクシャフトの製造装置300でクランクシャフトを成形するときは、上記の状態でスライドガイド302を下降させる。そして、可動型320及び第一ジャーナル型330、第二ジャーナル型340、第三ジャーナル型350を、固定型310と平行な状態のままで固定型310に近接させることにより、棒状素材Wを軸方向に圧縮するのである。それと同時に、後述するように第一ピン型360、第二ピン型370、第三ピン型380、及び、第四ピン型390がピン部を棒状素材Wの軸方向と垂直な偏芯方向に押圧することにより、ピン部をジャーナル部である棒状素材の軸心から偏芯させるのである。
【0123】
本実施形態に係るクランクシャフトの製造装置300においては、固定型310、第二ジャーナル型340、及び、可動型320に、それぞれの間隙に、所定の傾斜角を有する傾斜面が形成された複数の偏芯ブロックが前後方向にスライド可能に配設されている。
【0124】
前記偏芯ブロックは、具体的には、第一ピン型360から第四ピン型390のそれぞれを棒状素材Wの軸方向と垂直な偏芯方向に押圧する、第一偏芯ブロックから第四偏芯ブロックである。
そして、第一偏芯ブロックは、可動型320の下面前端に配設される第一固定ブロック322Dと、可動型320の下面前部に配設され、第一ピン型360の前端と当接する第一スライドブロック323Dと、第二ジャーナル型340の上面前部に配設されて第一固定ブロック322Dと第一スライドブロック323Dとの間にくさび状に介挿される第一中央ブロック341Uと、で構成される。
第二偏芯ブロックは、第二ジャーナル型340の上面後端に配設される第二固定ブロック342Uと、第二ジャーナル型340の上面後部に配設され、第二ピン型370の後端と当接する第二スライドブロック343Uと、可動型320の下面後部に配設されて第二固定ブロック342Uと第二スライドブロック343Uとの間にくさび状に介挿される第二中央ブロック321Dと、で構成される。
第三偏芯ブロックは、第二ジャーナル型340の下面後端に配設される第三固定ブロック342Dと、第二ジャーナル型340の下面後部に配設され、第三ピン型380の後端と当接する第三スライドブロック343Dと、固定型310の上面後部に配設されて第三固定ブロック342Dと第三スライドブロック343Dとの間にくさび状に介挿される第三中央ブロック311Uと、で構成される。
第四偏芯ブロックは、固定型310の上面前端に配設される第四固定ブロック312Uと、固定型310の上面前部に配設され、第四ピン型390の前端と当接する第四スライドブロック313Uと、第二ジャーナル型340の下面前部に配設されて第四固定ブロック312Uと第四スライドブロック313Uとの間にくさび状に介挿される第四中央ブロック341Dと、で構成されるのである。
【0125】
なお、固定型310、可動型320、及び、各ジャーナル型330〜350には、互いに近接した際に、それぞれの偏芯ブロックと干渉しあわないように切欠き部が形成されている。即ち、例えば可動型320と第一ジャーナル型330とが近接した際には、第一固定ブロック322Dと第一スライドブロック323Dとが第一ジャーナル型330の切欠き部に挿入され、第一中央ブロック341Uが可動型220の切欠き部に挿入されるのである。
【0126】
上記の如くクランクシャフトの製造装置300は、クランクシャフトを成形する際に、可動型320と第二ジャーナル型340とが近接することにより、第一スライドブロック323Dと当接する第一ピン型360が後方にスライドするように構成されている。
【0127】
詳しくは、第一中央ブロック341Uが第一固定ブロック322Dと第一スライドブロック323Dとの間に挿入されることにより、傾斜面同士が摺動し、上下方向の力が水平方向への力に変換され、第一中央ブロック341U及び第一スライドブロック323Dが後方にスライドするのである。これにより、第一ピン型360は後方への力を受けてスライドするのである。そして、第一ピン型360がピン部を棒状素材Wの軸方向と垂直な偏芯方向である後方に押圧することにより、ピン部をジャーナル部である棒状素材Wの軸心から偏芯させるのである。
【0128】
クランクシャフトの製造装置300は、上記と同様に、第二スライドブロック343Uと当接する第二ピン型370が前方にスライドするように構成され、第三スライドブロック343Dと当接する第三ピン型380が前方にスライドするように構成され、第四スライドブロック313Uと当接する第四ピン型390が後方にスライドするように構成されているのである。
【0129】
本実施形態においては上記の如く構成することにより、偏芯ブロックの傾斜面における傾斜角を大きくして、かじりを防止することができる。具体的には、固定型310と第二ジャーナル型340、第二ジャーナル型340と可動型320というように、一つおきに偏芯ブロックを配設することにより、前記第二実施形態に比べて一定の偏芯量を得るための据え込み量を2倍確保することができるのである。これにより、それぞれの偏芯ブロックにおける傾斜面の傾斜角θ3は、tanθ3が(据え込み量h×8)/偏芯量dとなるように形成される。即ち、第一実施形態に比べて一定の偏芯量を得るための傾斜面の縦方向長さを8倍にすることができるのである。
【0130】
本実施形態においては上記の如く構成することにより、所望の偏芯量d及び偏芯力を得ることが可能となる。即ち、偏芯ブロックの傾斜角を調整することにより、所定の据え込み量hに対する偏芯量d及び偏芯力を変更することが可能となるのである。
また、偏芯ブロックの傾斜面における傾斜角を大きくして、かじりを防止する構成としている。具体的には、傾斜面の傾斜角θ3を、前記第二実施形態における傾斜面の傾斜角θ2と比較して大きくすることができるため、各偏芯ブロックの傾斜面での面圧が小さくなり、かじりを発生しにくくできるのである。
【0131】
また、本実施形態においては、偏芯ブロックは固定型310、第二ジャーナル型340、及び、可動型320のみに一つおきに配設されるため、第二実施形態におけるモーメントを発生しない。具体的には図20に示す如く、可動型320及び第二ジャーナル型340は第一偏芯ブロック及び第二偏芯ブロックから矢印a3・a3及び矢印b3・b3で示す反力を受ける。また、第二ジャーナル型340及び固定型310は第三偏芯ブロック及び第四偏芯ブロックから矢印c3・c3及び矢印d3・d3で示す反力を受けるのである。
【0132】
上記の如く反力を受けた場合であっても、第二ジャーナル型340への力は相殺され、また、第一ジャーナル型330及び第三ジャーナル型350については力が加わらないため、各ジャーナル型にはモーメントが発生しないのである。即ち、クランクシャフトを成形する最中に、ジャーナル型330〜350がスライドガイド302の中で傾斜することがなく、かじりの発生を防止することができるのである。
【0133】
[第四実施形態]
前記の第三実施形態においては、大きな偏芯力が必要な場合は、偏芯ブロックの間に発生する垂直抗力を大きくする必要がある。このとき、偏芯ブロック間での摩擦力も増大するため、プレスラムによる成形荷重が増大するという問題がある。
【0134】
図21(a)に、第三実施形態、及び、数値解析結果によるストロークと偏芯量との関係を示す。また、図21(b)に、それぞれにおけるストロークと偏芯力との関係を示す。
【0135】
図21(a)のラインL1に示す如く、第三実施形態ではストロークの増加とともに偏芯量は一次関数的に増加するように構成されている。この場合、図21(b)のラインL1に示す如く、ストロークの増加に伴って偏芯力(反偏芯力)Fh2は増加し、特に成形の終期には型形状が膨張することによる反力を受けるために、偏芯力が大幅に増加する結果となるのである。
一方、図21(a)のラインL2に示す如く、数値解析によって成形初期で大きな偏芯量を与えて、成形終期で型形状が膨張することによる反力によって逆偏芯量d1だけ逆に偏芯させた場合は、図21(b)のラインL2に示す如く、偏芯力(反偏芯力)Fh1を一定に保つことができたのである。
【0136】
上記の知見に基づいて、成形荷重が増大するという問題を解決する、本発明の第四実施形態に係るクランクシャフトの製造装置400について、図22から図26を用いて説明をする。
本実施形態に係るクランクシャフトの製造装置400は、固定型410と、該固定型410に対して近接離間可能に配置される可動型420と、を備えている。また、固定型410の上方にはメインプレス407と第二プレス406a・406bからなる復動プレス機が固定型410に対して上下方向に近接離間可能に配設されている。メインプレス407の下面には、偏芯スライドガイド402a・402b、型締めスライドガイド403a・403bからなるスライドガイドが配設される。第二プレス406a・406bはメインプレス407に対して上下方向に摺動可能に構成されており、その下端は偏芯スライドガイド402a・402bと連結されている。つまり、第二プレス406a・406bがメインプレスに対して下方に摺動すると、偏芯スライドガイド402a・402bは型締めスライドガイド403a・403bに対して下方にスライドするように構成されているのである。
【0137】
さらに、スライドガイドの内側の上面には、平面視における外形がスライドガイドの内周形状と略同一に形成された可動型420が配設されている。つまり、可動型420は、図22に示す成形前の状態では、スライドガイドによって、可動型420が固定型410に対して近接離間する方向と直交する方向である水平方向には移動しないように拘束されているのである。
また、固定型410には、偏芯スライドガイド402a・402bを挿入可能な溝部410aが上下方向に形成されている。
【0138】
さらに、クランクシャフトの製造装置400には、可動型420と固定型410との間に、固定型410に対して近接可能に構成される第一ジャーナル型430、第二ジャーナル型430、及び、第三ジャーナル型450が上から順に配置されている。
【0139】
また、可動型420、第一ジャーナル型430、第二ジャーナル型440、第三ジャーナル型450、及び、固定型410のそれぞれの間隙に1個ずつ、固定型410に対して近接可能かつ可動型420が固定型410に対して近接離間する上下方向に対して直交する前後方向にスライド可能に構成される第一ピン型460、第二ピン型470、第三ピン型480、及び、第四ピン型490が上から順に配置されている。
【0140】
そして、クランクシャフトの製造装置400は成形前において、図22に示す如く、成形対象である棒状素材Wの上端部を可動型420における可動型側保持部で保持すると同時に、下端部を固定型410における固定型側保持部で保持する構成としている。そして、前記棒状素材Wのジャーナル部を第一ジャーナル型430、第二ジャーナル型440、第三ジャーナル型450で保持し、さらに棒状素材Wのピン部を第一ピン型460、第二ピン型470、第三ピン型480、及び、第四ピン型490で挟持する構成としている。
【0141】
クランクシャフトの製造装置400でクランクシャフトを成形するときは、上記の状態でメインプレス407と第二プレス406a・406bを下降させる。そして、可動型420及び第一ジャーナル型430、第二ジャーナル型440、第三ジャーナル型450を、固定型410と平行な状態のままで固定型410に近接させることにより、棒状素材Wを軸方向に圧縮するのである。それと同時に、後述するように第一ピン型460、第二ピン型470、第三ピン型480、及び、第四ピン型490がピン部を棒状素材Wの軸方向と垂直な偏芯方向に押圧することにより、ピン部をジャーナル部である棒状素材の軸心から偏芯させるのである。
【0142】
本実施形態に係るクランクシャフトの製造装置400においては、固定型410、第二ジャーナル型440、及び、可動型420に、それぞれの間隙に、所定の傾斜角を有する傾斜面が形成された複数の偏芯ブロックが前後方向にスライド可能に配設されている。
【0143】
前記偏芯ブロックは、具体的には、第一ピン型460から第四ピン型490のそれぞれを棒状素材Wの軸方向と垂直な偏芯方向に押圧する、第一偏芯ブロックから第四偏芯ブロックである。
そして、第一偏芯ブロックは、可動型420の下面前端に配設される第一固定ブロック422Dと、可動型420の下面前部に配設され、第一ピン型460の前端と当接する第一スライドブロック423Dと、第二ジャーナル型440の上面前部に配設されて第一固定ブロック422Dと第一スライドブロック423Dとの間にくさび状に介挿される第一中央ブロック441Uと、で構成される。
第二偏芯ブロックは、第二ジャーナル型440の上面後端に配設される第二固定ブロック442Uと、第二ジャーナル型440の上面後部に配設され、第二ピン型470の後端と当接する第二スライドブロック443Uと、可動型420の下面後部に配設されて第二固定ブロック442Uと第二スライドブロック443Uとの間にくさび状に介挿される第二中央ブロック421Dと、で構成される。
第三偏芯ブロックは、第二ジャーナル型440の下面後端に配設される第三固定ブロック442Dと、第二ジャーナル型440の下面後部に配設され、第三ピン型480の後端と当接する第三スライドブロック443Dと、固定型410の上面後部に配設されて第三固定ブロック442Dと第三スライドブロック443Dとの間にくさび状に介挿される第三中央ブロック411Uと、で構成される。
第四偏芯ブロックは、固定型410の上面前端に配設される第四固定ブロック412Uと、固定型410の上面前部に配設され、第四ピン型490の前端と当接する第四スライドブロック413Uと、第二ジャーナル型440の下面前部に配設されて第四固定ブロック412Uと第四スライドブロック413Uとの間にくさび状に介挿される第四中央ブロック441Dと、で構成されるのである。
【0144】
上記の如くクランクシャフトの製造装置400は、クランクシャフトを成形する際に、可動型420と第二ジャーナル型440とが近接することにより、第一スライドブロック423Dと当接する第一ピン型460が後方にスライドするように構成されている。
【0145】
詳しくは、第一中央ブロック441Uが第一固定ブロック422Dと第一スライドブロック423Dとの間に挿入されることにより、傾斜面同士が摺動し、第一中央ブロック441U及び第一スライドブロック423Dが後方にスライドするのである。これにより、上下方向の力が水平方向への力に変換され、第一ピン型460は後方への力を受けてスライドするのである。そして、第一ピン型460がピン部を棒状素材Wの軸方向と垂直な偏芯方向である後方に押圧することにより、ピン部をジャーナル部である棒状素材Wの軸心から偏芯させるのである。
【0146】
クランクシャフトの製造装置400は、上記と同様に、第二スライドブロック443Uと当接する第二ピン型470が前方にスライドするように構成され、第三スライドブロック443Dと当接する第三ピン型480が前方にスライドするように構成され、第四スライドブロック413Uと当接する第四ピン型490が後方にスライドするように構成されているのである。
【0147】
本実施形態に係るクランクシャフトの製造装置400においては、偏芯ブロックの傾斜面における傾斜角θ4を、前記第三実施形態の傾斜面における傾斜角θ3よりもやや小さく形成している。即ち、それぞれの偏芯ブロックにおける傾斜面の傾斜角θ4は、tanθ4が(据え込み量h×8)/偏芯量dよりもやや小さくなるように形成されているのである。つまり、偏芯ブロックによるピン型の偏芯量が大きくなるように傾斜角を調整しているのである。
【0148】
そして、本実施形態に係るクランクシャフトの製造装置400においては、クランクシャフトの成形初期には、前記偏芯ブロックの前記ピン型に対する押圧力を大きく付与し、クランクシャフトの成形終期には、前記偏芯ブロックの前記ピン型に対する押圧を解除する構成としている。
【0149】
具体的には、成形初期においては、図24に示す如く、メインプレス407と第二プレス406a・406bとを同時に下降させることにより、棒状素材Wを軸方向に圧縮する。それと同時に、第一ピン型460、第二ピン型470、第三ピン型480、及び、第四ピン型490がピン部を棒状素材Wの軸方向と垂直な偏芯方向に押圧することにより、ピン部をジャーナル部である棒状素材の軸心から偏芯させるのである。この際、傾斜面の傾斜角θ4に調整したことにより、必要な偏芯量に加えてさらに偏芯量(逆偏芯量)が与えられるのである。
【0150】
前記の如く必要な偏芯量と逆偏芯量とが与えられた後、成形終期においては、第二プレス406a・406bのみを下降させるのである。これにより、図25に示す如く、偏芯スライドガイド402a・402bは型締めスライドガイド403a・403bに対して下方にスライドする。そして、それぞれの偏芯ブロックの前記ピン型に対する拘束がなくなり、押圧が解除されるのである。さらに、偏芯ブロックの拘束が解除されたことによって、クランクシャフトの偏芯が戻り、必要な偏芯量が確保できるのである。
【0151】
本実施形態においては上記の如く構成することにより、成形荷重を低減することが可能となる。具体的には、図26(a)のラインL3に示す如く、第四実施形態では成形初期で大きな偏芯量を与えて、成形終期で逆偏芯量d2だけ逆に偏芯させたため、図26(b)のラインL3に示す如く、偏芯力(反偏芯力)Fh3を第三実施形態における偏芯力(反偏芯力)Fh2よりも小さくすることができたのである。
【0152】
詳細には、座屈による偏芯効果が高い成形初期で偏芯力を付加することにより、偏芯を先行させる。そして、偏芯に使われるエネルギーを成形初期に分散させることにより、最大の成形荷重を低減させることができるのである。つまり、本実施形態においては、偏芯ブロックの傾斜面の傾斜角を、かじりが生じない程度に小さくして、成形初期に偏芯を先行させて逆偏芯量を確保したのである。その後、成形終期において偏芯ブロックの拘束を解除させて型形状が膨張することによる反力によって逆に偏芯させることにより、最大の成形荷重を小さくできたのである。
【符号の説明】
【0153】
10 固定型
20 可動型
30 第一ジャーナル型
40 第二ジャーナル型
50 第三ジャーナル型
60 第一ピン型
70 第二ピン型
80 第三ピン型
90 第四ピン型
100 クランクシャフトの製造装置
W 棒状素材
C クランクシャフト
h 据え込み量
d 偏芯量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型と、固定型に対して近接離間可能に配置される可動型と、固定型と可動型との間に、前記固定型に対して近接可能に配置される少なくとも1個のジャーナル型と、前記固定型、ジャーナル型、及び、可動型のそれぞれの間隙に1個ずつ、前記固定型に対して近接可能かつ前記可動型が前記固定型に対して近接離間する方向と直交する方向にスライド可能に配置されるピン型と、を備え、
成形対象となる棒状素材の両端部のそれぞれを、前記固定型における固定型側保持部と前記可動型における可動型側保持部とで保持し、前記棒状素材のジャーナル部を、前記ジャーナル型におけるジャーナル型挟持部で挟持し、かつ、前記棒状素材のピン部を、前記ピン型における挟持部で挟持した状態で、前記可動型及び前記ジャーナル型を前記固定型に近接させることにより前記棒状素材を軸方向に圧縮すると同時に、前記ピン型が前記ピン部を前記棒状素材の軸方向と垂直な偏芯方向に押圧することにより、前記ピン部をジャーナル部である前記棒状素材の軸心から偏芯させる、クランクシャフトの製造装置であって、
前記固定型、ジャーナル型、及び、可動型のそれぞれの間隙に配置される、所定の傾斜角を有する傾斜面が形成された複数の偏芯ブロックを備えるとともに、
前記ピン型は前記偏芯ブロックに当接しており、
前記可動型及び前記ジャーナル型を前記固定型に近接させることにより前記偏芯ブロックが前記棒状素材の軸方向に摺動し、前記傾斜面の作用により前記偏芯ブロックが前記ピン型を前記棒状素材の軸方向と垂直な偏芯方向に押圧する、
ことを特徴とする、クランクシャフトの製造装置。
【請求項2】
前記偏芯ブロックにおける傾斜面の傾斜角は、前記ピン型が前記可動型、前記ジャーナル型、又は、前記固定型に近接する幅である据え込み量と、前記ピン部がジャーナル部である前記棒状素材の軸心から偏芯する偏芯量と、の関係より算出される、
ことを特徴とする、請求項1に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項3】
前記可動型、前記ジャーナル型、及び、前記ピン型は、前記固定型に対して近接離間可能に構成された枠体に収納され、
前記可動型及び前記ジャーナル型は、前記枠体によって、前記可動型が前記固定型に対して近接離間する方向と直交する方向には移動しないように拘束され、
前記ピン型は、前記枠体によって、前記可動型が前記固定型に対して近接離間する方向と直交する方向のうち一つの方向には移動しないように拘束される、
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項4】
前記偏芯ブロックは、前記ジャーナル型に配設される固定ブロックと、前記ピン型と当接するスライドブロックと、前記固定ブロックと前記スライドブロックとの間にくさび状に介挿される中央ブロックと、で構成される、
ことを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか1項に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項5】
前記ジャーナル型は前記可動型側から順に配設される3個の第一ジャーナル型から第三ジャーナル型で構成され、前記ピン型は前記固定型、第一ジャーナル型から第三ジャーナル型、及び、可動型のそれぞれの間隙に前記可動型側から順に備えられる4個の第一ピン型から第四ピン型で構成され、
前記偏芯ブロックは、前記第一ピン型から第四ピン型のそれぞれを前記棒状素材の軸方向と垂直な偏芯方向に押圧する、第一偏芯ブロックから第四偏芯ブロックであって、
前記第一偏芯ブロックは、前記可動型に配設される第一固定ブロックと、前記第一ピン型と当接する第一スライドブロックと、前記第二ジャーナル型に配設されて前記第一固定ブロックと前記第一スライドブロックとの間にくさび状に介挿される第一中央ブロックと、で構成され、
前記第二偏芯ブロックは、前記第二ジャーナル型に配設される第二固定ブロックと、前記第二ピン型と当接する第二スライドブロックと、前記第可動型に配設されて前記第二固定ブロックと前記第二スライドブロックとの間にくさび状に介挿される第二中央ブロックと、で構成され、
前記第三偏芯ブロックは、前記第二ジャーナル型に配設される第三固定ブロックと、前記第三ピン型と当接する第三スライドブロックと、前記固定型に配設されて前記第三固定ブロックと前記第三スライドブロックとの間にくさび状に介挿される第三中央ブロックと、で構成され、
前記第四偏芯ブロックは、前記固定型に配設される第四固定ブロックと、前記第四ピン型と当接する第四スライドブロックと、前記第二ジャーナル型に配設されて前記第四固定ブロックと前記第四スライドブロックとの間にくさび状に介挿される第四中央ブロックと、で構成される、
ことを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか1項に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項6】
クランクシャフトの成形初期には、前記偏芯ブロックの前記ピン型に対する押圧力を大きく付与し、
クランクシャフトの成形終期には、前記偏芯ブロックの前記ピン型に対する押圧を解除する、
ことを特徴とする、請求項1から請求項5の何れか1項に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項7】
前記可動型の前記可動型側保持部よりも固定型側と、前記固定型の前記固定型側保持部よりも可動型側と、前記ジャーナル型の前記ジャーナル型挟持部よりも可動型側及び固定型側と、における、前記偏芯方向と反対側の面のそれぞれには、前記棒状素材のピン部が偏芯する際における前記棒状素材の前記偏芯方向と反対側への変形を抑制する、可動型素材拘束部、固定型素材拘束部、及び、ジャーナル型素材拘束部、が形成され、
前記ピン型の前記挟持部よりも可動型側及び固定型側における、前記偏芯方向側の面のそれぞれには、前記棒状素材のピン部が偏芯する際における前記棒状素材の前記偏芯方向側への変形を抑制する、第一ピン型素材拘束部が形成される、
ことを特徴とする、請求項1から請求項6の何れか1項に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項8】
棒状素材を軸線の方向へ圧縮しながら、前記棒状素材のピン部を前記軸線と直交する方向へ押圧して座屈させる据え込み加工を行う、クランクシャフトの製造方法であって、
前記棒状素材のピン部を前記軸線と直交する方向へ押圧する押圧力は、前記棒状素材を前記軸線方向へ圧縮する圧縮力の方向を、所定の傾斜角を有する面同士を摺動させることにより前記軸線と直交する方向へ変換したものである、
ことを特徴とする、クランクシャフトの製造方法。
【請求項9】
成形対象となる棒状素材の両端部のそれぞれを、固定型における固定型側保持部と、固定型に対して近接離間可能に配置される可動型における可動型側保持部と、で保持し、前記棒状素材のジャーナル部を、固定型に対して近接離間可能に配置される少なくとも1個のジャーナル型におけるジャーナル型挟持部で挟持し、かつ、前記棒状素材のピン部を、前記固定型、ジャーナル型、及び、可動型のそれぞれの間隙に1個ずつ、前記固定型に対して近接離間可能かつ前記可動型が前記固定型に対して近接離間する方向と直交する方向にスライド可能に配置されるピン型における挟持部で挟持した状態で、前記可動型及び前記ジャーナル型を前記固定型に近接させることにより前記棒状素材を軸方向に圧縮すると同時に、前記ピン型が前記ピン部を前記棒状素材の軸方向と垂直な偏芯方向に押圧することにより、前記ピン部をジャーナル部である前記棒状素材の軸心から偏芯させる、クランクシャフトの製造方法であって、
前記固定型、ジャーナル型、及び、可動型のそれぞれの間隙に配置され、所定の傾斜角を有する傾斜面が形成され、前記ピン型が当接した複数の偏芯ブロックを、前記可動型及び前記ジャーナル型を前記固定型に近接させることにより前記棒状素材の軸方向に摺動させて、前記傾斜面の作用により前記ピン型を前記棒状素材の軸方向と垂直な偏芯方向に押圧する、
ことを特徴とする、クランクシャフトの製造方法。
【請求項10】
前記偏芯ブロックにおける傾斜面の傾斜角は、前記ピン型が前記可動型、前記ジャーナル型、又は、前記固定型に近接する幅である据え込み量と、前記ピン部がジャーナル部である前記棒状素材の軸心から偏芯する偏芯量と、の関係より算出する、
ことを特徴とする、請求項9に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項11】
前記可動型、前記ジャーナル型、及び、前記ピン型を、前記固定型に対して近接離間可能に構成された枠体に収納し、
前記可動型及び前記ジャーナル型を、前記枠体によって、前記可動型が前記固定型に対して近接離間する方向と直交する方向には移動しないように拘束し、
前記ピン型を、前記枠体によって、前記可動型が前記固定型に対して近接離間する方向と直交する方向のうち一つの方向には移動しないように拘束する、
ことを特徴とする、請求項9又は請求項10に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項12】
前記偏芯ブロックを、前記ジャーナル型に配設される固定ブロックと、前記ピン型と連結されるスライドブロックと、前記固定ブロックと前記スライドブロックとの間にくさび状に介挿される中央ブロックと、で構成する、
ことを特徴とする、請求項9から請求項11の何れか1項に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項13】
前記ジャーナル型を前記可動型側から順に配設される3個の第一ジャーナル型から第三ジャーナル型で構成し、前記ピン型を前記固定型、第一ジャーナル型から第三ジャーナル型、及び、可動型のそれぞれの間隙に前記可動型側から順に備えられる4個の第一ピン型から第四ピン型で構成し、
前記偏芯ブロックは、前記第一ピン型から第四ピン型のそれぞれを前記棒状素材の軸方向と垂直な偏芯方向に押圧する、第一偏芯ブロックから第四偏芯ブロックであって、
前記第一偏芯ブロックを、前記可動型に配設される第一固定ブロックと、前記第一ピン型と連結される第一スライドブロックと、前記第二ジャーナル型に配設されて前記第一固定ブロックと前記第一スライドブロックとの間にくさび状に介挿される第一中央ブロックと、で構成し、
前記第二偏芯ブロックを、前記第二ジャーナル型に配設される第二固定ブロックと、前記第二ピン型と連結される第二スライドブロックと、前記第可動型に配設されて前記第二固定ブロックと前記第二スライドブロックとの間にくさび状に介挿される第二中央ブロックと、で構成し、
前記第三偏芯ブロックを、前記第二ジャーナル型に配設される第三固定ブロックと、前記第三ピン型と連結される第三スライドブロックと、前記固定型に配設されて前記第三固定ブロックと前記第三スライドブロックとの間にくさび状に介挿される第三中央ブロックと、で構成し、
前記第四偏芯ブロックを、前記固定型に配設される第四固定ブロックと、前記第四ピン型と連結される第四スライドブロックと、前記第二ジャーナル型に配設されて前記第四固定ブロックと前記第四スライドブロックとの間にくさび状に介挿される第四中央ブロックと、で構成する、
ことを特徴とする、請求項9から請求項11の何れか1項に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項14】
クランクシャフトの成形初期には、前記偏芯ブロックの前記ピン型に対する押圧力を大きく付与し、
クランクシャフトの成形終期には、前記偏芯ブロックの前記ピン型に対する押圧を解除する、
ことを特徴とする、請求項9から請求項13の何れか1項に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項15】
前記可動型の前記可動型側保持部よりも固定型側と、前記固定型の前記固定型側保持部よりも可動型側と、前記ジャーナル型の前記ジャーナル型挟持部よりも可動型側及び固定型側と、における、前記偏芯方向と反対側の面のそれぞれには、前記棒状素材のピン部が偏芯する際における前記棒状素材の前記偏芯方向と反対側への変形を抑制し、
前記ピン型の前記挟持部よりも可動型側及び固定型側における、前記偏芯方向側の面のそれぞれには、前記棒状素材のピン部が偏芯する際における前記棒状素材の前記偏芯方向側への変形を抑制する、
ことを特徴とする、請求項9から請求項14の何れか1項に記載のクランクシャフトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−110592(P2011−110592A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270766(P2009−270766)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】