説明

クランプシリンダ

【課題】切粉等による動作不良や強度低下による破損のおそれを低減して信頼性や耐久性に優れるクランプシリンダを提供する。
【解決手段】クランプシリンダ1において、ピストンロッド7とクランプアーム13とを第1、第2リンク21,23で連結し、ピストンロッド7の収縮動作に伴い、第1、第2リンク21,23を介してクランプアーム13をアンクランプ位置へ回転させると共に、ピストンロッド7内に、第1リンク21をクランプアーム13のアンクランプ位置側へ回転付勢する付勢手段(プッシュロッド29及びコイルバネ30)を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク等の対象物をテーブル等に固定するために用いられるクランプシリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
クランプシリンダは、空圧や油圧等によって軸線方向へ移動するピストンと、そのピストンの移動に応じてクランプ/アンクランプ動作するクランプアームとを備えたものが知られている。例えば特許文献1には、ピストンを保持するロッドカバーに、クランプアームを揺動可能に軸着し、クランプアームの一方の揺動端をピストンに係合させることで、ピストンの移動に応じたクランプアームの動作を得るようにしている。特にここでは、バネによって突出付勢されるピストン先端のクランプ軸とクランプアームとの互いの係合面を、面取りした傾斜面とすることで、楔効果を発生させ、駆動源からの圧力が解除されてもクランプアームによるクランプ状態が維持されるようになっている。
また、ロッドカバーにおけるクランプアームの軸着部位には、クランプアームをアンクランプ位置に付勢してアンクランプの際の対象物との干渉を回避するトーションスプリングが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−63942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のクランプシリンダにおいては、トーションスプリングがクランプアームに形成した切欠き内に露出した格好で設けられているため、切粉等が付着しやすく、動作不良の原因となってしまう。また、切欠きの形成によってクランプアームの強度が低くなり、長期の繰り返し使用によって破損するおそれも生じていた。
【0005】
そこで、本発明は、クランプアームをアンクランプ位置に付勢する構成を具備したものであっても、切粉等による動作不良や強度低下による破損のおそれを低減して信頼性や耐久性に優れるクランプシリンダを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ピストンロッドとクランプアームとをリンク機構で連結し、ピストンロッドの収縮動作に伴い、リンク機構を介してクランプアームをアンクランプ位置へ回転させると共に、ピストンロッド内に、リンク機構をクランプアームのアンクランプ位置側へ回転付勢する付勢手段を設けたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、リンク機構を、ピストンロッドへ回転可能に設けられた軸部材の端部に基端を連結した第1リンクと、その第1リンクの先端に一端が連結され、他端がクランプアームに連結される第2リンクとから形成する一方、付勢手段を、軸部材の偏心部位に形成された押圧部に対して進退動可能に設けられるプッシュロッドと、そのプッシュロッドを軸部材側へ押圧する弾性部材とで形成したことを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成において、ロッドカバーに、ピストンロッドが摺接し、クランプアームのクランプ位置でピストンロッドを挟んでクランプアームの反対側に位置する保持部を形成したことを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項3の構成において、保持部におけるピストンロッドの摺接面を、ピストンロッドと直交する軸を中心とした円弧軌跡に沿って膨出する曲面としたことを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れかの構成において、ピストンロッドの伸長側端部に、ピストンロッドの伸長動作に伴ってクランプアームをクランプ位置へ押圧する先細り傾斜状のクサビ面と、そのクサビ面よりも先端側に位置してクサビ面よりも大きい傾斜角度を有し、アンクランプ位置でクランプアームが当接する面取部とを形成したことを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れかの構成において、クランプアームにおけるピストンロッドとの当接部分を、クランプアームの揺動軸と平行な軸を中心とした円弧軌跡に沿って膨出する曲面部としたことを特徴とするものである。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の何れかの構成において、クランプアームにおけるピストンロッドとの当接部分に、ピストンロッドの伸縮動作に伴って回転し、ピストンロッドの伸長側端部を相対的に摺動するキーを設けたことを特徴とするものである。
請求項8に記載の発明は、請求項7の構成において、キーをクランプアームのアンクランプ位置での摺動位置に付勢する回転付勢手段を設けたことを特徴とするものである。
請求項9に記載の発明は、請求項3乃至8の何れかの構成において、ロッドカバーに、クランプ位置のピストンロッドにおける保持部との当接部位をアンクランプ位置のピストンロッドに対して潤滑する潤滑部材を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、付勢手段が外部へ露出することがなく、切粉等の付着による動作不良のおそれがなくなる。また、クランプアームにトーションスプリング用の切欠きを設ける必要がないため、クランプアームの強度も確保でき、長期の繰り返し使用においても破損するおそれが低減される。よって、信頼性や耐久性に優れたクランプシリンダが得られる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、ピストンロッド内で切粉や切削油等の影響を受けにくい付勢手段が簡単に得られる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加えて、クランプ状態でのピストンロッドの倒れ防止が図られる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項3の効果に加えて、ピストンロッドが傾くようなことがあっても、保持部のエッジにピストンロッドが接触することがなく、ピストンロッドに損傷が生じない。
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の何れかの効果に加えて、クサビ面による楔効果でクランプ力が増力されると共に、クランプ位置でのクランプアーム保持(ロック)の確実性が高まる一方、アンクランプ位置ではクランプアームが面取部に当接してその退避量が大きくなるので、クランプアームとワークとの干渉が効果的に回避される。また、クランプアームの動作もスムーズとなると共に、面取部との接触面圧が低くなるため、クランプアームの摩耗が抑えられる。
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至5の何れかの効果に加えて、クランプ高さ(ワークの高さ)のばらつきに対応してクサビ面と確実に係合可能となり、クランプの信頼性がより高くなる。
請求項7に記載の発明によれば、請求項1乃至6の何れかの効果に加えて、ピストンロッドの摩耗を抑えることができると共に、クランプ位置の高さのばらつきにも対応可能となる。
請求項8に記載の発明によれば、請求項7の効果に加えて、回転付勢手段の採用により、クランプアームの動作をスムーズに行うことができる。
請求項9に記載の発明によれば、請求項3乃至8の何れかの効果に加えて、潤滑部材の採用により、ピストンロッドにおける保持部との当接部位を確実に潤滑でき、摩耗を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】形態1のクランプシリンダの説明図で、(A)が平面、(B)が背面、(C)が側面を夫々示す。
【図2】A−A線断面図で、(A)がクランプ位置、(B)がアンクランプ位置を夫々示している。
【図3】B−B線断面図である。
【図4】C−C線断面図である。
【図5】保持部の拡大断面図である。
【図6】ワークの高さのばらつきによるクランプ状態の説明図で、(A)が中間位置、(B)がオーバークランプ位置を夫々示す。
【図7】形態2のクランプシリンダにおけるピストンロッドの上端部分及びクランプアームの後端部分を示す拡大図である。
【図8】クランプ動作の説明図で、(A)がアンクランプ位置、(B)が中間位置を夫々示す。
【図9】クランプ動作の説明図で、(A)が中間位置、(B)がクランプ位置を夫々示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[形態1]
図1,2に示すクランプシリンダ1は、工作機械のテーブル等に設置されるロッドカバー2の下面に、有底筒状のシリンダボディ3をボルト4,4で固定して、内部にシリンダ室5を形成している。シリンダ室5には、ピストン6が図2の上下方向へ移動可能に設けられて、その上部へ一体に形成されたピストンロッド7が、ロッドカバー2を貫通して上方へ突出している。また、ロッドカバー2の上部後方(図1の右側を前方とする。)には、ピストンロッド7の後方側面に当接してピストンロッド7の伸縮動作をガイドする保持部8が形成されている。この保持部8におけるピストンロッドの摺接面9は、図5に示すように、ピストンロッド7と直交する軸を中心とした円弧軌跡に沿って膨出する曲面となっている。10は、ロッドカバー2におけるピストンロッド7の貫通部上面に設けられたダストシール、11は、潤滑剤保持機能を有する潤滑部材としての潤滑剤保持リング(合成繊維をゴム弾性体で融合した繊維集合素材にグリス等の油分を含浸させたもの)である。
【0010】
さらに、ロッドカバー2の上部前方には、上向きに連結部12が形成され、連結部12の上端にクランプアーム13が連結されている。このクランプアーム13は、下向きの端部14が左右方向の揺動軸15によって前後方向へ揺動可能に軸着される倒L字状で、前方へ突出する端部16には、当該端部16を貫通して下端を下方へ突出させたクランプボルト17が螺合されている。
また、ピストンロッド7の上部には、図3,4に示すように、左右方向に貫通孔18が形成されてその貫通孔18内に軸部材19が回転可能に収容されて、軸部材19の両端に突設された断面正方形状の嵌合部20,20に、左右一対の第1リンク21,21の下端が夫々嵌着されて、両第1リンク21,21が軸部材19と一体に回転可能となっている。軸部材19の下面中央には、偏心部位で面取され、第1リンク21が鉛直姿勢となる状態で貫通孔18との隙間が後方へ向けて開く格好で傾斜する押圧部22が形成されている。
【0011】
第1リンク21,21の上端には、第2リンク23,23の一端がピン24によって夫々回転可能に連結されており、第2リンク23,23の他端は、クランプアーム13における揺動軸15の上方部位に、ピン24によって回転可能に連結されている。この第1リンク21と第2リンク23とが本発明のリンク機構となる。
ピストンロッド7の上端前面には、上方へ行くに従って後退する傾斜状のクサビ面25と、そのクサビ面25の上端から連続し、クサビ面25よりも傾斜角度が大きい面取部26とが形成されて、対するクランプアーム13の上端後面には、揺動軸15と平行な軸を中心とした円弧軌跡に沿って膨出する曲面部27が形成されている。ピストンロッド7が伸長した際には、この曲面部27にクサビ面25が当接することで、クランプアーム13が前方へ押圧されて右回転することになる。
【0012】
一方、ピストンロッド7の軸心には、貫通孔18と連通して下側のシリンダ室5と連通する軸孔28が形成されている。この軸孔28には、プッシュロッド29が上下動可能に収容されると共に、プッシュロッド29の下方にコイルバネ30が収容されている。31は、軸孔28の下端に螺合されてコイルバネ30の下端を支持するネジである。よって、プッシュロッド29は、コイルバネ30によって上方へ付勢され、その上端を軸部材19の押圧部22に当接させることで、軸部材19及び第1リンク21,21に左回転方向への付勢力を付与することになる。このプッシュロッド29及び弾性部材としてのコイルバネ30が本発明の付勢手段となる。
【0013】
以上の如く構成されたクランプシリンダ1においては、ワークWがセットされる工作機械のテーブルT等の上面にロッドカバー2の下面が当接する状態で固定されると共に、ロッドカバー2に背面に設けた押し側ポート34と引き側ポート35とに図示しない配管を介して圧力流体(油又は空気等)の駆動源が接続される。よって、駆動源から押し側ポート34に圧力流体が供給されると、ピストンロッド7が伸長し、前述のように下側のクサビ面25がクランプアーム13の曲面部27に当接してクランプアーム13を前方へ回転させる。すると、図2(A)に示すように、前端のクランプボルト17がワークWの上面に当接してワークWをクランプする。
【0014】
このとき、クランプアーム13を介してピストンロッド7には後方への反力が加わるが、保持部8によって後方への移動が規制されているため、クランプアーム13は安定状態でワークWをクランプできる。このクランプ状態では、保持部8とクランプアーム13の曲面部27との間にピストンロッド7の上端が圧入される格好となるため、いわゆる楔効果が発生し、駆動源からの圧力の供給が絶たれるようなことがあっても、クランプアーム13によるクランプ状態は維持される。また、保持部8におけるピストンロッド7との摺接面9は曲面となっているため、楔の分力でピストンロッド7が傾くようなことがあっても、保持部8のエッジにピストンロッド7が接触することがない。
【0015】
さらに、クランプ状態の楔効果は、ワークWの高さHにばらつきがあっても、クサビ面25にクランプアーム13の曲面部27が当接する範囲で発揮される。すなわち、図6(A)に示すようにワークWの高さが大きい(H+α)と、クサビ面25の上側に曲面部27の下側が当接する中間位置で楔効果が発揮され、同図(B)に示すようにワークWの高さが小さい(H−α)と、クサビ面25の下側に曲面部27の下側が当接するオーバークランプ位置で夫々クランプは可能である。中間位置とオーバークランプ位置との間でも同様である。
【0016】
一方、ワークWのクランプを解除する(アンクランプする)場合、駆動源から引き側ポート35に圧力流体を供給すると、ピストンロッド7が下方へ収縮し、クサビ面25によるクランプアーム13の曲面部27の押圧を解除する。しかし、クランプアーム13は第1、第2リンク21,23を介してピストンロッド7と連結されているので、ピストンロッド7の下降に連れて左回転し、図2(B)に示すピストンロッド7の下死点で、クランプアーム13は、曲面部27がピストンロッド7の面取部26に当接する位置に達する。よって、ワークWの取出や交換が可能となる。
【0017】
このアンクランプ位置で、クランプボルト17を含むクランプアーム13は、ロッドカバー2の前面よりも前方へ突出しないようになっているため、ワークWの交換等を行う際にワークWがクランプアーム13と干渉するおそれが低減される。特に、クランプアーム13の押圧解除によってプッシュロッド29による軸部材19への回転付勢力が働いて第1リンク21,21が第2リンク23,23を介してクランプアーム13を左回転方向へ付勢するため、アンクランプ状態でクランプアーム13が自重等によってクランプ位置側へ偶発的に右回転することはない。
なお、ピストンロッド7において、アンクランプ位置でロッドカバー2に設けた潤滑剤保持リング11が接触する部位(図2のS部)は、クランプ位置で保持部8の摺接面9に当接部位となる位置設定となっている。よって、ピストンロッド7によって大きい面圧を受ける摺接面9が潤滑剤保持リング11の油分によって潤滑され、摺接面9の摩耗が抑えられる。
【0018】
このように、上記形態1のクランプシリンダ1によれば、ピストンロッド7とクランプアーム13とを第1、第2リンク21,23で連結し、ピストンロッド7の収縮動作に伴い、第1、第2リンク21,23を介してクランプアーム13をアンクランプ位置へ回転させると共に、ピストンロッド7内に、第1リンク21をクランプアーム13のアンクランプ位置側へ回転付勢する付勢手段(プッシュロッド29及びコイルバネ30)を設けたことで、付勢手段が外部へ露出することがなく、切粉等の付着による動作不良のおそれがなくなる。また、クランプアーム13にトーションスプリング用の切欠きを設ける必要がないため、クランプアーム13の強度も確保でき、長期の繰り返し使用においても破損するおそれが低減される。よって、信頼性や耐久性に優れたクランプシリンダ1が得られる。
【0019】
特にここでは、リンク機構を、ピストンロッド7へ回転可能に設けられた軸部材19の端部に基端を連結した第1リンク21と、その第1リンク21の先端に一端が連結され、他端がクランプアーム13に連結される第2リンク23とから形成する一方、付勢手段を、軸部材19の偏心部位に形成された押圧部22に対して進退動可能に設けられるプッシュロッド29と、そのプッシュロッド29を軸部材19側へ押圧するコイルバネ30とで形成したことで、ピストンロッド7内で切粉や切削油等の影響を受けにくい付勢手段が簡単に得られる。
【0020】
また、ロッドカバー2に、ピストンロッド7が摺接し、クランプアーム13のクランプ位置でピストンロッド7を挟んでクランプアーム13の反対側に位置する保持部8を形成したことで、クランプ状態でのピストンロッド7の倒れ防止が図られる。
さらに、保持部8におけるピストンロッド7の摺接面9を、ピストンロッド7と直交する軸を中心とした円弧軌跡に沿って膨出する曲面としているので、ピストンロッド7が傾くようなことがあっても、保持部8のエッジにピストンロッド7が接触することがなく、ピストンロッド7に損傷が生じない。
【0021】
一方、ピストンロッド7の伸長側端部に、ピストンロッド7の伸長動作に伴ってクランプアーム13をクランプ位置へ押圧する先細り傾斜状のクサビ面25と、そのクサビ面25よりも先端側に位置してクサビ面25よりも大きい傾斜角度を有し、アンクランプ位置でクランプアーム13が当接する面取部26とを形成したことで、クサビ面25による楔効果でクランプ力が増大すると共に、クランプ位置でのクランプアーム13の保持(ロック)の確実性が高まる一方、アンクランプ位置ではクランプアーム13が面取部26に当接してその退避量が大きくなるので、クランプアーム13とワークWとの干渉が効果的に回避される。また、クランプアーム13の動作もスムーズとなると共に、面取部26との接触面圧が低くなるため、クランプアーム13の摩耗が抑えられる。
【0022】
そして、クランプアーム13におけるピストンロッド7との当接部分を、クランプアーム13の揺動軸15と平行な軸を中心とした円弧軌跡に沿って膨出する曲面部27としたことで、クランプ高さ(ワークWの高さ)のばらつきに対応してクサビ面25と確実に係合可能となり、クランプの信頼性がより高くなる。
加えて、ロッドカバー2に、クランプ位置のピストンロッド7における保持部8との当接部位Sをアンクランプ位置のピストンロッド7に対して潤滑する潤滑剤保持リング11を設けたことで、当該当接部位Sを確実に潤滑でき、摩耗を少なくすることができる。
【0023】
[形態2]
次に、本発明の他の形態を説明する。但し、形態1と同じ構成部には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
図7に示すクランプシリンダ1aにおいて、クランプアーム13の後端には、後面に開口する横断面半円形状の溝36が左右方向に凹設され、その溝36内に、溝36よりも切欠き部分が小さくなって面取部38がクランプアームの後面から突出する横断面半円形状のキー37が、溝36と同軸で回転可能に収容されている。また、キー37における上側の周面で回転中心との偏心部位には切欠部39が形成されている。
【0024】
一方、キー37の上方には、溝36と連通してクランプアーム13の上面に開口する挿入孔40が形成されて、挿入孔40内に、キー37の切欠部39に対して進退動可能な押圧ピン41と、その押圧ピン41を切欠部39側へ付勢して切欠部39に当接させるコイルバネ42とが設けられている。43は、挿入孔40の開口に螺合されてコイルバネ42の上端を位置決めするネジである。よって、キー37は、回転付勢手段となる押圧ピン41とコイルバネ42とによって左回転方向へ付勢されることになる。
【0025】
以上の如く構成されたクランプシリンダ1aにおいては、アンクランプ位置では、図8(A)に示すように、ピストンロッド7は下死点にあってクランプアーム13も左回転位置に付勢されている。このとき、ピストンロッド7の面取部26にはキー37の面取部38が当接している。
ここからピストンロッド7を上昇させると、同図(B)に示すように、クランプアーム13もキー37を介して押圧されて右回転するが、キー37は押圧ピン41による回転付勢が働いているため、面取部38を面取部26に当接させた状態を維持する。
【0026】
そして、クランプアーム13の回転が進むと、図9(A)のようにキー37の面取部38の当接位置がクサビ面25に切り替わり、楔効果が発生する。そのままピストンロッド7が上昇すると、同図(B)に示すように、キー37の面取部38はクサビ面25を相対的に下方へ摺動してクランプアーム13をワークWのクランプ位置に押圧することになる。
なお、クランプ位置からピストンロッド7を下降させた場合は、上記と逆の動作で図8(A)のアンクランプ位置までクランプアーム13が回転することになる。
【0027】
このように、上記形態2のクランプシリンダ1aにおいても、付勢手段が外部へ露出することがなく、切粉等の付着による動作不良のおそれがなくなると共に、クランプアーム13の強度も確保できて信頼性や耐久性に優れるという、形態1と同様の効果が得られる。
特にここでは、クランプアーム13におけるピストンロッド7との当接部分に、ピストンロッド7の伸縮動作に伴って回転し、ピストンロッド7の伸長側端部を相対的に摺動するキー37を設けたことで、ピストンロッド7のクサビ面25と面取部26との摩耗を抑えることができると共に、クランプ位置の高さのばらつきにも対応可能となる。
【0028】
また、キー37をクランプアーム13のアンクランプ位置での摺動位置に付勢する回転付勢手段を設けたことで、キー37の面取部38がピストンロッド7側のクサビ面25と面取部26との間で切り替わる際のクランプアーム13の動作をスムーズに行うことができる。
【0029】
なお、上記形態1,2において、リンク機構のリンクは2つに限らず、例えばL字状のリンクを一つ用いたり、逆に3つ以上のリンクを用いて構成したりしてもよい。また、各リンクは必ずしも左右一対のものである必要はなく、ピストンロッドとクランプアームとに夫々形成したスリット間に跨って中央に配置する構成も考えられる。
さらに、リンク機構の付勢手段も、上記形態では軸部材に面取り形成した押圧部をプッシュロッドで押圧する構成としているが、軸部材から突出させた押圧片を押圧する構成とすることも可能である。
加えて、ピストンロッドの上端形状も、面取部を省略してクサビ面のみとしたり、クサビ面と面取部とを連続した曲面部にしたり等の設計変更が可能である。
一方、形態2のキー形状も、切欠部でなくキーから突出させた押圧片を押圧させるようにしたり、回転付勢手段も押圧ピンとコイルバネとからなるものに限らず、コイルバネや板バネ等の弾性部材のみを用いて回転付勢したりすることができる。
【符号の説明】
【0030】
1,1a・・クランプシリンダ、2・・ロッドカバー、3・・シリンダボディ、5・・シリンダ室、6・・ピストン、7・・ピストンロッド、8・・保持部、9・・摺接面、11・・潤滑剤保持リング、13・・クランプアーム、15・・揺動軸、19・・軸部材、21・・第1リンク、22・・押圧部、23・・第2リンク、25・・クサビ面、26・・面取部、27・・曲面部、28・・軸孔、29・・プッシュロッド、30・・コイルバネ、36・・溝、37・・キー、41・・押圧ピン、W・・ワーク、T・・テーブル、S・・当接部位。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの圧力流体の供給によって伸縮動作するピストンロッドと、そのピストンロッドの伸縮動作を案内するロッドカバーと、そのロッドカバーへクランプ位置とアンクランプ位置との間で揺動可能に連結され、前記ピストンロッドの伸長動作に伴って前記クランプ位置へ回転するクランプアームと、を備えるクランプシリンダであって、
前記ピストンロッドとクランプアームとをリンク機構で連結し、前記ピストンロッドの収縮動作に伴い、前記リンク機構を介して前記クランプアームをアンクランプ位置へ回転させると共に、前記ピストンロッド内に、前記リンク機構を前記クランプアームのアンクランプ位置側へ回転付勢する付勢手段を設けたことを特徴とするクランプシリンダ。
【請求項2】
前記リンク機構を、前記ピストンロッドへ回転可能に設けられた軸部材の端部に基端を連結した第1リンクと、その第1リンクの先端に一端が連結され、他端が前記クランプアームに連結される第2リンクとから形成する一方、
前記付勢手段を、前記軸部材の偏心部位に形成された押圧部に対して進退動可能に設けられるプッシュロッドと、そのプッシュロッドを前記軸部材側へ押圧する弾性部材とで形成したことを特徴とする請求項1に記載のクランプシリンダ。
【請求項3】
前記ロッドカバーに、前記ピストンロッドが摺接し、前記クランプアームのクランプ位置で前記ピストンロッドを挟んで前記クランプアームの反対側に位置する保持部を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のクランプシリンダ。
【請求項4】
前記保持部における前記ピストンロッドの摺接面を、前記ピストンロッドと直交する軸を中心とした円弧軌跡に沿って膨出する曲面としたことを特徴とする請求項3に記載のクランプシリンダ。
【請求項5】
前記ピストンロッドの伸長側端部に、前記ピストンロッドの伸長動作に伴って前記クランプアームをクランプ位置へ押圧する先細り傾斜状のクサビ面と、そのクサビ面よりも先端側に位置して前記クサビ面よりも大きい傾斜角度を有し、前記アンクランプ位置で前記クランプアームが当接する面取部とを形成したことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のクランプシリンダ。
【請求項6】
前記クランプアームにおける前記ピストンロッドとの当接部分を、前記クランプアームの揺動軸と平行な軸を中心とした円弧軌跡に沿って膨出する曲面部としたことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のクランプシリンダ。
【請求項7】
前記クランプアームにおける前記ピストンロッドとの当接部分に、前記ピストンロッドの伸縮動作に伴って回転し、前記ピストンロッドの伸長側端部を相対的に摺動するキーを設けたことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のクランプシリンダ。
【請求項8】
前記キーを前記クランプアームのアンクランプ位置での摺動位置に付勢する回転付勢手段を設けたことを特徴とする請求項7に記載のクランプシリンダ。
【請求項9】
前記ロッドカバーに、前記クランプ位置の前記ピストンロッドにおける前記保持部との当接部位を前記アンクランプ位置の前記ピストンロッドに対して潤滑する潤滑部材を設けたことを特徴とする請求項3乃至8の何れかに記載のクランプシリンダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−179429(P2010−179429A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26381(P2009−26381)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000241588)豊和工業株式会社 (230)
【Fターム(参考)】