クランプ取付け構造
【課題】柔軟な素材からなる保護チューブとクランプとのズレ動きを防止するとともに、配線箇所などからの振動あるいはベルトクランプの過大な締付け荷重を原因として、保護チューブ内のワイヤハーネスに断線等の不具合が生じるのを解消する。
【解決手段】柔軟な素材を円筒状に丸めた形状の保護チューブ10内にワイヤハーネス14が収められているとともに、このワイヤハーネスを配線箇所に留めるためのクランプ30が、保護チュウーブ10の外周を把持した状態で取付けられるクランプ取付け構造であって、保護チューブに10おける円筒の合わせ部を押し広げることで、その内部に所定の剛性を有するクランプガイド20が組み込まれている。そして、クランプガイド20は、保護チューブ内のワイヤハーネス14を囲む形状に設定され、このクランプガイド20がクランプ30によって保護チューブ10の外周側から把持されている。
【解決手段】柔軟な素材を円筒状に丸めた形状の保護チューブ10内にワイヤハーネス14が収められているとともに、このワイヤハーネスを配線箇所に留めるためのクランプ30が、保護チュウーブ10の外周を把持した状態で取付けられるクランプ取付け構造であって、保護チューブに10おける円筒の合わせ部を押し広げることで、その内部に所定の剛性を有するクランプガイド20が組み込まれている。そして、クランプガイド20は、保護チューブ内のワイヤハーネス14を囲む形状に設定され、このクランプガイド20がクランプ30によって保護チューブ10の外周側から把持されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として車両に配線されるワイヤハーネスが、柔軟な素材を円筒状に丸めた形状の保護チューブ内に収められ、この保護チューブの外周にクランプを取付けるためのクランプ取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のワイヤハーネスは、その保護のためにコルゲートチューブ等の中に収められ、このチューブの外周面をコルゲートクランプによって把持し、このクランプを車両のボデーパネル等に留めることでワイヤハーネスを配線している。その一例が、特許文献1に開示されている。
コルゲートチューブは薄肉で剛性が高く、その切断面が鋭利なエッジになっていてワイヤハーネスにキズをつける場合がある。そこで、布や塩化ビニールなどの柔軟な素材を円筒状に丸めた形状の保護チューブを使用し、その中にワイヤハーネスを収めることが実施されているとともに、保護チューブ自体も新素材が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−221373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コルゲートクランプは、コルゲートチューブ外周の凹凸に係合するリブを有して相互のズレ動きを防止している。しかし、このコルゲートクランプによって柔軟な素材の保護チューブを把持した場合は、相互間において係合がないことから滑りやすく、ズレ動きが生じる。
これに対し、ベルトクランプを使用した場合は、ベルトの締付け力によって保護チューブとの間でのズレ動きを防止できるものの、ベルトを締付け過ぎるとワイヤハーネスの断線等の不具合を招く。また、保護チューブ内のワイヤハーネスが車両側からの振動を直接受け、金属疲労による断線等も生じやすい。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、柔軟な素材からなる保護チューブとクランプとのズレ動きを防止するとともに、配線箇所などからの振動あるいはベルトクランプの過大な締付け荷重を原因として、保護チューブ内のワイヤハーネスに断線等の不具合が生じるのを解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
第1の発明は、柔軟な素材を円筒状に丸めた形状の保護チューブ内にワイヤハーネスが収められているとともに、このワイヤハーネスを配線箇所に留めるためのクランプが、保護チューブの外周を把持した状態で取付けられるクランプ取付け構造であって、保護チューブにおける円筒の合わせ部を押し広げることで、その内部に所定の剛性を有するクランプガイドが組み込まれている。そして、クランプガイドは、保護チューブ内のワイヤハーネスを囲む形状に設定され、このクランプガイドがクランプによって保護チューブの外周側から把持されている。
【0007】
これにより、保護チューブはその内側のクランプガイドと外側のクランプとに挟み込まれ、柔軟な素材からなる保護チューブとクランプとのズレ動きが防止されるとともに、保護チューブ内のワイヤハーネスはクランプガイドによってフリー状態に保たれる。したがって、フリー状態にあるワイヤハーネスが配線箇所などからクランプを通じて振動を直接受けることが防止され、金属疲労による断線等が解消される。また、ワイヤハーネスがフリー状態にあることから、配線箇所の形状に合わせて保護チューブを容易に曲げることができる。
そして、クランプにベルトクランプを用いた場合でも、その締付け力はクランプガイドで受けられてワイヤハーネスには直接作用しないので、過大な締付け荷重による断線等の不具合も回避できる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、クランプガイドが、これを保護チューブの内部に組み込むときの作業用の摘み部を備えているとともに、この摘み部はクランプガイドに対してヒンジ部によって結合されている。
【0009】
この構成においては、作業用の摘み部によってクランプガイドを保護チューブの内部に組み込む作業が容易になるとともに、この作業を終えた状態での摘み部は、ヒンジ部によって倒れ込んで保護チューブの合わせ部の間に位置し、クランプを取付ける箇所の目印になる。
【0010】
第3の発明は、第1又は2の発明において、クランプガイドの外側面に、コルゲートクランプの幅が収まる寸法を隔てて規制部が設けられている。
【0011】
これにより、コルゲートクランプを用いてクランプガイドを保護チューブの外周側から把持した場合に、クランプガイドに対するコルゲートクランプの取付け位置が規制部によって定位置に保たれ、コルゲートクランプのズレ動きがより確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】保護チューブ内に収まったワイヤハーネスを表した斜視図。
【図2】クランプガイドの上面側を表した斜視図。
【図3】クランプガイドの下面側を表した斜視図。
【図4】クランプガイドを表した正面図。
【図5】クランプガイドを表した側面図。
【図6】保護チューブ内にクランプガイドを組み込む手順を表した説明図。
【図7】コルゲートクランプによる把持状態を側面から見た断面図。
【図8】コルゲートクランプによる把持状態を正面から見た断面図。
【図9】ベルトクランプによる把持状態を表した断面図。
【図10】実施の形態2におけるクランプガイドの一部を表した斜視図。
【図11】実施の形態3におけるクランプガイドを表した側面図。
【図12】実施の形態4におけるクランプガイドの下面側を表した斜視図。
【図13】実施の形態4におけるクランプガイドを表した側面図。
【図14】実施の形態5におけるクランプガイドを表した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
実施の形態1
図1に示されている保護チューブ10は、布や塩化ビニールといった柔軟な素材を円筒状に丸めた形状をしており、その中にワイヤハーネス14が収められている。この保護チューブ10は、パーマネント加工等によって円筒形状を保つように構成され、その合わせ部12には所定の重なり代が設定されている。そして、ワイヤハーネス14は、合わせ部12を押し広げながら保護チューブ10の中に収められる。
なお、保護チューブ10は、後述するようにクランプ(コルゲートクランプ30あるいはベルトクランプ40)によって把持される。このクランプは、ワイヤハーネス14の長さ方向に関する複数の箇所に設けられ、個々に車両のボデーパネル等に結合され、結果としてワイヤハーネス14が配線箇所に沿って留められる。
【0014】
図2〜図5に示されているクランプガイド20は、例えば樹脂材による一体成形品であって、ベルトクランプ40の締付け荷重等では変形しない程度の剛性をもっている。このクランプガイド20は、円筒の周壁に一定幅の開放部23を有する形状、つまり側面から見た形状が「C字」状になっている(図5)。
クランプガイド20の左右両側は、それぞれ案内部22になっている。これらの案内部22は、それぞれの先端部をやや尖らせたヘラ状になっており、保護チューブ10の合わせ部12を押し広げるのに適した形状になっている。
【0015】
クランプガイド20における片側の案内部22の外周部には、板状の摘み部24が一体に成形されている。この摘み部24の付け根は、可撓性を有する肉薄のヒンジ部26になっている。また、クランプガイド20の外側面には、リブ形状をした一対の規制部28が一体に成形されている。これらの両規制部28の間隔は、後述のコルゲートクランプ30の幅よりも僅かに大きい寸法に設定され、両規制部28の間がコルゲートクランプ30による把持部21になっている。
なお、摘み部24については、クランプガイド20における左右の案内部22の外周部にそれぞれ設けてもよく、あるいはクランプガイド20の左右方向の中間である把持部21の外周部に設けてもよい。一方、両規制部28は周方向に連続している必要はなく、措定間隔で分断された形状でもよい。
【0016】
図7および図8で示されているコルゲートクランプ30は、個々に半円弧状に成形された受け部32と蓋部34との一端部が肉薄のヒンジ36で連結されている。受け部32の他端部には、上下両面で開口した中空のソケット32aが設けられ、蓋部34の他端部には、ソケット32a内に差し込むことで相互にロックされる挿入爪34aが設けられている。受け部32および蓋部34の内周部には、それぞれリブ32b,34bが共に二列ずつ設けられている(図8)。なお、受け部32の外周部には係止脚38が設けられ、この係止脚38を配線箇所のボデーパネル等に開けられた取付け孔に挿入することで、コルゲートクランプ30がボデーパネル等に結合される。
コルゲートクランプ30の受け部32と蓋部34とによって保護チューブ10の外周面を挟み込み、ソケット32aに挿入爪34aを差し込んでロックすることにより、保護チューブ10がコルゲートクランプ30で把持される。つまり、コルゲートクランプ30では、受け部32と蓋部34とによって構成される内径が保護チューブ10の外径に応じて異なるので、使用する保護チューブ10の外径に対応した各種サイズのものが用意されている。
【0017】
図9で示されているベルトクランプ40は、バックル部42と、このバックル部42に一体に結合されたベルト部44とを備えている。そして、ベルト部44を保護チューブ10の外周に巻き付け、かつ、バックル部42に挿通させて引き締めることにより、そのときの引き締め位置でロックされて保護チューブ10を把持することができる。
バックル部42には係止脚46が設けられ、この係止脚46を配線箇所のボデーパネル等に開けられた取付け孔に挿入することで、ベルトクランプ40がボデーパネル等に結合される。
【0018】
つづいて、保護チューブ10をクランプガイド20とコルゲートクランプ30とによって把持する場合について説明する。まず、図6で示す手順にしたがって保護チューブ10の内部にクランプガイド20を組み込む。この作業は、クランプガイド20の摘み部24を指先で持ち、図6の(A)で示す保護チューブ10の合わせ部12にクランプガイド20の一方の案内部22を差し込む。そして、該案内部22によって合わせ部12を押し広げながら図6の(B)で示すように保護チューブ10の内部にクランプガイド20を入れる。クランプガイド20が、図6の(C)で示すように保護チューブ10の中に完全に組み込まれると、この保護チューブ10はクランプガイド20の外周に密着しており、ワイヤハーネス14はクランプガイド20の開放部23から内部に入り込み、該クランプガイド20によって囲まれた格好になっている。
なお、摘み部24はヒンジ部26の可撓性によって倒れ込み、保護チューブ10が円筒状に復帰しようとする作用によって合わせ部12の間に挟み込まれている。この状態における摘み部24の端部は、図6の(C)で示すように合わせ部12からはみ出ており、これがクランプガイド20の位置の目印になる。
【0019】
つぎに、保護チューブ10の外周側からクランプガイド20をコルゲートクランプ30によって把持する(図7および図8)。このコルゲートクランプ30による把持については、前述したように受け部32と蓋部34とによって保護チューブ10の外周面を挟み込み、ソケット32aに挿入爪34aを差し込んでロックする。この後、コルゲートクランプ30の係止脚38をボデーパネル等に開けられた取付け孔に挿入し、コルゲートクランプ30をボデーパネル等に結合する。
このようにして保護チューブ10の外周を把持したコルゲートクランプ30は、クランプガイド20における両規制部28の間の把持部21を、保護チューブ10の外周側から把持している。これによって保護チューブ10は、クランプガイド20の把持部21とコルゲートクランプ30のリブ32b,34bとによって挟み付けられている(図8)。
【0020】
これらのことから、柔軟な素材からなる保護チューブ10とコルゲートクランプ30との間の滑りによるズレ動きが防止される。しかも、ワイヤハーネス14はクランプガイド20で囲まれたスペースにおいてフリー状態に保たれているので、このワイヤハーネス14がボデーパネル等からの振動を直接受けず、かつ、保護チューブ10を必要に応じて容易に曲げることができる。
また、保護チューブ10にクランプガイド20を併用することにより、これまでコルゲートチューブ専用であった各種サイズのコルゲートクランプ30を、そのまま使用することができる。
【0021】
ベルトクランプ40を使用する場合は、保護チューブ10の外周側からクランプガイド20をベルト部44で締付けることによって把持する(図9)。ベルト部44による締付けは、前述のように該ベルト部44をバックル部42に挿通させて引き締めれば、その位置でロックされる。この後、ベルトクランプ40の係止脚46をボデーパネル等の取付け孔に挿入し、ベルトクランプ40をボデーパネル等に結合する。
ベルトクランプ40を用いた場合でも、コルゲートクランプ30を用いたときと同様の機能が得られる。加えてベルトクランプ40においては、ベルト部44を締付け過ぎても、その締付け荷重はクランプガイド20(把持部21)で受けられ、ワイヤハーネス14には直接作用することはない。これにより、ベルト部44の過大な締付け荷重によるワイヤハーネス14の断線等といった不具合も回避される。なお、ベルトクランプ40についても、現状で使用しているものを使用できるのは言うまでもない。
【0022】
実施の形態2
クランプガイド20の案内部22は、図10で示すようにクランプガイド20の端部において、開放部23を挟んで対向する一対の案内部22Aに代えてもよい。
実施の形態3
図11で示すクランプガイド20は、その開放部23の両縁部を内側に折り曲げた形状のハーネスガイド片23aを有する。これらのハーネスガイド片23aにより、図6において既に説明したように開放部23からクランプガイド20の内部に導き込まれるワイヤハーネス14がスムースに案内される。したがって、図11で示すクランプガイド20においては、両ハーネスガイド片23aの先端同士を突き合わせて開放部23を閉じた構成とすることも可能である。
【0023】
実施の形態4
図12及び図13で示すクランプガイド20は、その開放部23の両縁部をそのまま延長したハーネスガイド片23bを有する。これらのハーネスガイド片23bの両縁は、ワイヤハーネス14をクランプガイド20内に導き込むための斜面23cになっている。なお、これらのハーネスガイド片23bにおいても、開放部23を閉じるか僅かな隙間をもたせるようになっている。
【0024】
実施の形態5
図14で示すクランプガイド20は、リブ形状をした一対の規制部28に代えて、コルゲートクランプ30の把持部21を除く両端部(両案内部22)の外周面に複数の突起を成形することで、コルゲートクランプ30の規制部28Aを構成している。
【符号の説明】
【0025】
10 保護チューブ
12 合わせ部
14 ワイヤハーネス
20 クランプガイド
24 摘み部
28 規制部
30 コルゲートクランプ
40 ベルトクランプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として車両に配線されるワイヤハーネスが、柔軟な素材を円筒状に丸めた形状の保護チューブ内に収められ、この保護チューブの外周にクランプを取付けるためのクランプ取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のワイヤハーネスは、その保護のためにコルゲートチューブ等の中に収められ、このチューブの外周面をコルゲートクランプによって把持し、このクランプを車両のボデーパネル等に留めることでワイヤハーネスを配線している。その一例が、特許文献1に開示されている。
コルゲートチューブは薄肉で剛性が高く、その切断面が鋭利なエッジになっていてワイヤハーネスにキズをつける場合がある。そこで、布や塩化ビニールなどの柔軟な素材を円筒状に丸めた形状の保護チューブを使用し、その中にワイヤハーネスを収めることが実施されているとともに、保護チューブ自体も新素材が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−221373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コルゲートクランプは、コルゲートチューブ外周の凹凸に係合するリブを有して相互のズレ動きを防止している。しかし、このコルゲートクランプによって柔軟な素材の保護チューブを把持した場合は、相互間において係合がないことから滑りやすく、ズレ動きが生じる。
これに対し、ベルトクランプを使用した場合は、ベルトの締付け力によって保護チューブとの間でのズレ動きを防止できるものの、ベルトを締付け過ぎるとワイヤハーネスの断線等の不具合を招く。また、保護チューブ内のワイヤハーネスが車両側からの振動を直接受け、金属疲労による断線等も生じやすい。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、柔軟な素材からなる保護チューブとクランプとのズレ動きを防止するとともに、配線箇所などからの振動あるいはベルトクランプの過大な締付け荷重を原因として、保護チューブ内のワイヤハーネスに断線等の不具合が生じるのを解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
第1の発明は、柔軟な素材を円筒状に丸めた形状の保護チューブ内にワイヤハーネスが収められているとともに、このワイヤハーネスを配線箇所に留めるためのクランプが、保護チューブの外周を把持した状態で取付けられるクランプ取付け構造であって、保護チューブにおける円筒の合わせ部を押し広げることで、その内部に所定の剛性を有するクランプガイドが組み込まれている。そして、クランプガイドは、保護チューブ内のワイヤハーネスを囲む形状に設定され、このクランプガイドがクランプによって保護チューブの外周側から把持されている。
【0007】
これにより、保護チューブはその内側のクランプガイドと外側のクランプとに挟み込まれ、柔軟な素材からなる保護チューブとクランプとのズレ動きが防止されるとともに、保護チューブ内のワイヤハーネスはクランプガイドによってフリー状態に保たれる。したがって、フリー状態にあるワイヤハーネスが配線箇所などからクランプを通じて振動を直接受けることが防止され、金属疲労による断線等が解消される。また、ワイヤハーネスがフリー状態にあることから、配線箇所の形状に合わせて保護チューブを容易に曲げることができる。
そして、クランプにベルトクランプを用いた場合でも、その締付け力はクランプガイドで受けられてワイヤハーネスには直接作用しないので、過大な締付け荷重による断線等の不具合も回避できる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、クランプガイドが、これを保護チューブの内部に組み込むときの作業用の摘み部を備えているとともに、この摘み部はクランプガイドに対してヒンジ部によって結合されている。
【0009】
この構成においては、作業用の摘み部によってクランプガイドを保護チューブの内部に組み込む作業が容易になるとともに、この作業を終えた状態での摘み部は、ヒンジ部によって倒れ込んで保護チューブの合わせ部の間に位置し、クランプを取付ける箇所の目印になる。
【0010】
第3の発明は、第1又は2の発明において、クランプガイドの外側面に、コルゲートクランプの幅が収まる寸法を隔てて規制部が設けられている。
【0011】
これにより、コルゲートクランプを用いてクランプガイドを保護チューブの外周側から把持した場合に、クランプガイドに対するコルゲートクランプの取付け位置が規制部によって定位置に保たれ、コルゲートクランプのズレ動きがより確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】保護チューブ内に収まったワイヤハーネスを表した斜視図。
【図2】クランプガイドの上面側を表した斜視図。
【図3】クランプガイドの下面側を表した斜視図。
【図4】クランプガイドを表した正面図。
【図5】クランプガイドを表した側面図。
【図6】保護チューブ内にクランプガイドを組み込む手順を表した説明図。
【図7】コルゲートクランプによる把持状態を側面から見た断面図。
【図8】コルゲートクランプによる把持状態を正面から見た断面図。
【図9】ベルトクランプによる把持状態を表した断面図。
【図10】実施の形態2におけるクランプガイドの一部を表した斜視図。
【図11】実施の形態3におけるクランプガイドを表した側面図。
【図12】実施の形態4におけるクランプガイドの下面側を表した斜視図。
【図13】実施の形態4におけるクランプガイドを表した側面図。
【図14】実施の形態5におけるクランプガイドを表した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
実施の形態1
図1に示されている保護チューブ10は、布や塩化ビニールといった柔軟な素材を円筒状に丸めた形状をしており、その中にワイヤハーネス14が収められている。この保護チューブ10は、パーマネント加工等によって円筒形状を保つように構成され、その合わせ部12には所定の重なり代が設定されている。そして、ワイヤハーネス14は、合わせ部12を押し広げながら保護チューブ10の中に収められる。
なお、保護チューブ10は、後述するようにクランプ(コルゲートクランプ30あるいはベルトクランプ40)によって把持される。このクランプは、ワイヤハーネス14の長さ方向に関する複数の箇所に設けられ、個々に車両のボデーパネル等に結合され、結果としてワイヤハーネス14が配線箇所に沿って留められる。
【0014】
図2〜図5に示されているクランプガイド20は、例えば樹脂材による一体成形品であって、ベルトクランプ40の締付け荷重等では変形しない程度の剛性をもっている。このクランプガイド20は、円筒の周壁に一定幅の開放部23を有する形状、つまり側面から見た形状が「C字」状になっている(図5)。
クランプガイド20の左右両側は、それぞれ案内部22になっている。これらの案内部22は、それぞれの先端部をやや尖らせたヘラ状になっており、保護チューブ10の合わせ部12を押し広げるのに適した形状になっている。
【0015】
クランプガイド20における片側の案内部22の外周部には、板状の摘み部24が一体に成形されている。この摘み部24の付け根は、可撓性を有する肉薄のヒンジ部26になっている。また、クランプガイド20の外側面には、リブ形状をした一対の規制部28が一体に成形されている。これらの両規制部28の間隔は、後述のコルゲートクランプ30の幅よりも僅かに大きい寸法に設定され、両規制部28の間がコルゲートクランプ30による把持部21になっている。
なお、摘み部24については、クランプガイド20における左右の案内部22の外周部にそれぞれ設けてもよく、あるいはクランプガイド20の左右方向の中間である把持部21の外周部に設けてもよい。一方、両規制部28は周方向に連続している必要はなく、措定間隔で分断された形状でもよい。
【0016】
図7および図8で示されているコルゲートクランプ30は、個々に半円弧状に成形された受け部32と蓋部34との一端部が肉薄のヒンジ36で連結されている。受け部32の他端部には、上下両面で開口した中空のソケット32aが設けられ、蓋部34の他端部には、ソケット32a内に差し込むことで相互にロックされる挿入爪34aが設けられている。受け部32および蓋部34の内周部には、それぞれリブ32b,34bが共に二列ずつ設けられている(図8)。なお、受け部32の外周部には係止脚38が設けられ、この係止脚38を配線箇所のボデーパネル等に開けられた取付け孔に挿入することで、コルゲートクランプ30がボデーパネル等に結合される。
コルゲートクランプ30の受け部32と蓋部34とによって保護チューブ10の外周面を挟み込み、ソケット32aに挿入爪34aを差し込んでロックすることにより、保護チューブ10がコルゲートクランプ30で把持される。つまり、コルゲートクランプ30では、受け部32と蓋部34とによって構成される内径が保護チューブ10の外径に応じて異なるので、使用する保護チューブ10の外径に対応した各種サイズのものが用意されている。
【0017】
図9で示されているベルトクランプ40は、バックル部42と、このバックル部42に一体に結合されたベルト部44とを備えている。そして、ベルト部44を保護チューブ10の外周に巻き付け、かつ、バックル部42に挿通させて引き締めることにより、そのときの引き締め位置でロックされて保護チューブ10を把持することができる。
バックル部42には係止脚46が設けられ、この係止脚46を配線箇所のボデーパネル等に開けられた取付け孔に挿入することで、ベルトクランプ40がボデーパネル等に結合される。
【0018】
つづいて、保護チューブ10をクランプガイド20とコルゲートクランプ30とによって把持する場合について説明する。まず、図6で示す手順にしたがって保護チューブ10の内部にクランプガイド20を組み込む。この作業は、クランプガイド20の摘み部24を指先で持ち、図6の(A)で示す保護チューブ10の合わせ部12にクランプガイド20の一方の案内部22を差し込む。そして、該案内部22によって合わせ部12を押し広げながら図6の(B)で示すように保護チューブ10の内部にクランプガイド20を入れる。クランプガイド20が、図6の(C)で示すように保護チューブ10の中に完全に組み込まれると、この保護チューブ10はクランプガイド20の外周に密着しており、ワイヤハーネス14はクランプガイド20の開放部23から内部に入り込み、該クランプガイド20によって囲まれた格好になっている。
なお、摘み部24はヒンジ部26の可撓性によって倒れ込み、保護チューブ10が円筒状に復帰しようとする作用によって合わせ部12の間に挟み込まれている。この状態における摘み部24の端部は、図6の(C)で示すように合わせ部12からはみ出ており、これがクランプガイド20の位置の目印になる。
【0019】
つぎに、保護チューブ10の外周側からクランプガイド20をコルゲートクランプ30によって把持する(図7および図8)。このコルゲートクランプ30による把持については、前述したように受け部32と蓋部34とによって保護チューブ10の外周面を挟み込み、ソケット32aに挿入爪34aを差し込んでロックする。この後、コルゲートクランプ30の係止脚38をボデーパネル等に開けられた取付け孔に挿入し、コルゲートクランプ30をボデーパネル等に結合する。
このようにして保護チューブ10の外周を把持したコルゲートクランプ30は、クランプガイド20における両規制部28の間の把持部21を、保護チューブ10の外周側から把持している。これによって保護チューブ10は、クランプガイド20の把持部21とコルゲートクランプ30のリブ32b,34bとによって挟み付けられている(図8)。
【0020】
これらのことから、柔軟な素材からなる保護チューブ10とコルゲートクランプ30との間の滑りによるズレ動きが防止される。しかも、ワイヤハーネス14はクランプガイド20で囲まれたスペースにおいてフリー状態に保たれているので、このワイヤハーネス14がボデーパネル等からの振動を直接受けず、かつ、保護チューブ10を必要に応じて容易に曲げることができる。
また、保護チューブ10にクランプガイド20を併用することにより、これまでコルゲートチューブ専用であった各種サイズのコルゲートクランプ30を、そのまま使用することができる。
【0021】
ベルトクランプ40を使用する場合は、保護チューブ10の外周側からクランプガイド20をベルト部44で締付けることによって把持する(図9)。ベルト部44による締付けは、前述のように該ベルト部44をバックル部42に挿通させて引き締めれば、その位置でロックされる。この後、ベルトクランプ40の係止脚46をボデーパネル等の取付け孔に挿入し、ベルトクランプ40をボデーパネル等に結合する。
ベルトクランプ40を用いた場合でも、コルゲートクランプ30を用いたときと同様の機能が得られる。加えてベルトクランプ40においては、ベルト部44を締付け過ぎても、その締付け荷重はクランプガイド20(把持部21)で受けられ、ワイヤハーネス14には直接作用することはない。これにより、ベルト部44の過大な締付け荷重によるワイヤハーネス14の断線等といった不具合も回避される。なお、ベルトクランプ40についても、現状で使用しているものを使用できるのは言うまでもない。
【0022】
実施の形態2
クランプガイド20の案内部22は、図10で示すようにクランプガイド20の端部において、開放部23を挟んで対向する一対の案内部22Aに代えてもよい。
実施の形態3
図11で示すクランプガイド20は、その開放部23の両縁部を内側に折り曲げた形状のハーネスガイド片23aを有する。これらのハーネスガイド片23aにより、図6において既に説明したように開放部23からクランプガイド20の内部に導き込まれるワイヤハーネス14がスムースに案内される。したがって、図11で示すクランプガイド20においては、両ハーネスガイド片23aの先端同士を突き合わせて開放部23を閉じた構成とすることも可能である。
【0023】
実施の形態4
図12及び図13で示すクランプガイド20は、その開放部23の両縁部をそのまま延長したハーネスガイド片23bを有する。これらのハーネスガイド片23bの両縁は、ワイヤハーネス14をクランプガイド20内に導き込むための斜面23cになっている。なお、これらのハーネスガイド片23bにおいても、開放部23を閉じるか僅かな隙間をもたせるようになっている。
【0024】
実施の形態5
図14で示すクランプガイド20は、リブ形状をした一対の規制部28に代えて、コルゲートクランプ30の把持部21を除く両端部(両案内部22)の外周面に複数の突起を成形することで、コルゲートクランプ30の規制部28Aを構成している。
【符号の説明】
【0025】
10 保護チューブ
12 合わせ部
14 ワイヤハーネス
20 クランプガイド
24 摘み部
28 規制部
30 コルゲートクランプ
40 ベルトクランプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟な素材を円筒状に丸めた形状の保護チューブ内にワイヤハーネスが収められているとともに、このワイヤハーネスを配線箇所に留めるためのクランプが、保護チューブの外周を把持した状態で取付けられるクランプ取付け構造であって、
保護チューブにおける円筒の合わせ部を押し広げることで、その内部に所定の剛性を有するクランプガイドが組み込まれており、該クランプガイドは、保護チューブ内のワイヤハーネスを囲む形状に設定され、このクランプガイドがクランプによって保護チューブの外周側から把持されているクランプ取付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載されたクランプ取付け構造であって、
クランプガイドが、これを保護チューブの内部に組み込むときの作業用の摘み部を備えているとともに、この摘み部はクランプガイドに対してヒンジ部によって結合されているクランプ取付け構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたクランプ取付け構造であって、
クランプガイドの外側面に、コルゲートクランプの幅が収まる寸法を隔てて規制部が設けられているクランプ取付け構造。
【請求項1】
柔軟な素材を円筒状に丸めた形状の保護チューブ内にワイヤハーネスが収められているとともに、このワイヤハーネスを配線箇所に留めるためのクランプが、保護チューブの外周を把持した状態で取付けられるクランプ取付け構造であって、
保護チューブにおける円筒の合わせ部を押し広げることで、その内部に所定の剛性を有するクランプガイドが組み込まれており、該クランプガイドは、保護チューブ内のワイヤハーネスを囲む形状に設定され、このクランプガイドがクランプによって保護チューブの外周側から把持されているクランプ取付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載されたクランプ取付け構造であって、
クランプガイドが、これを保護チューブの内部に組み込むときの作業用の摘み部を備えているとともに、この摘み部はクランプガイドに対してヒンジ部によって結合されているクランプ取付け構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたクランプ取付け構造であって、
クランプガイドの外側面に、コルゲートクランプの幅が収まる寸法を隔てて規制部が設けられているクランプ取付け構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−266050(P2010−266050A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120044(P2009−120044)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(308011351)大和化成工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(308011351)大和化成工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】
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