説明

クランプ

【課題】大径部と小径部の双方を有する配管部材であっても車体側部材へ取り付けることが可能なクランプを得る。
【解決手段】クランプ12の収容部20には、側面部22から下側へ円弧部24が形成され、さらに円弧部24を下方に拡径した円弧状の大径部収容部26が形成される。大径部収容部26の半径は、配管部材102の配管大径部の半径と略等しいか、もしくは僅かに大きくされている。配管部材102が収容部20に最も奥まで押し込まれると、配管大径部102Lが大径部収容部26に収容される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管部材を保持した状態で車体側部材に取り付けられて、配管部材を車体に取り付けるために用いられるクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の配管を車体に取り付けるために、クランプ構造が用いられることがある。たとえば特許文献1には、流体が流れるパイプの要所を車体の所定位置に止め付けるために、車体結合部とパイプ抱持部とを備えたパイプクランプが記載されている。
【0003】
ところで、車体に取り付けられる配管部材には、その外周に保護部材(プロテクタ)等が装着されることで、長手方向と直交する断面で見たときに部分的に大径の箇所が生じることがある。このように大径の部分と、それ以外の小径の部分とを有する非真円の配管部材であっても、クランプを用いて車体側部材に取り付けできるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−230674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、大径部と小径部の双方を有する配管部材であっても車体側部材へ取り付けることが可能なクランプを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、車体側部材への取付用とされる取付部と、配管部材の長手方向の一部を収容する収容部と、前記収容部に収容された配管部材に係合して配管部材の収容部からの抜けを抑制する係合部と、を備え、前記配管部材として、長手方向と直交する断面を見たときに周方向に部分的に大径とされた配管大径部と、この配管大径部以外の相対的に小径な配管小径部とを備えた非真円配管部材に対し、前記収容部が、前記配管大径部を収容可能となるように拡径された大径部収容部を有している。
【0007】
このクランプの収容部に、配管部材の長手方向の一部を収容し、係合部の係合によって抜けを抑制して、配管部材を保持する。この状態で、取付部が車体側部材へ取り付けられることで、配管部材もクランプを介して車体側部材に取り付けられる。
【0008】
本発明のクランプにおいて車体側部材への取付対象としている配管部材は、長手方向と直交する断面を見たときに周方向に部分的に大径とされた配管大径部と、この配管大径部以外の相対的に小径な配管小径部とを備えた非真円配管部材である。クランプの収容部には、配管大径部を収容可能となるように拡径された大径部収容部が形成されている。したがって、配管大径部を有する配管部材(非真円配管部材)であっても、収容部に収容して保持することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記収容部に、収容された前記配管部材の前記配管大径部の周方向の端面と対向する対向部が形成されている。
【0010】
非真円配管部材が収容部に収容された状態で周方向に回転しようとすると、対向部に対し配管大径部の周方向の端面が接触するので、収容された配管部材の回転を抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記収容部が、前記配管部材の収容方向先端側の全面において半円弧状に形成された前記大径部収容部とされている。
【0012】
したがって、非真円配管部材の周方向における配管大径部の位置にかかわらず、非真円配管部材を収容部に収容することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記構成としたので、大径部と小径部の双方を有する配管部材であっても車体側部材へ取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態のクランプを示す正面図であり、(A)はクランプが取り付けられていない状態、(B)はクランプが取り付けられている状態をそれぞれ示す。
【図2】本発明の第1実施形態のクランプを示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態のクランプを配管部材が取り付けられた状態で部分的に拡大して示す正面図である。
【図4】本発明の第2実施形態のクランプを示す正面図であり、(A)はクランプが取り付けられていない状態、(B)はクランプが取り付けられている状態をそれぞれ示す。
【図5】本発明の第2実施形態のクランプを配管部材が取り付けられた状態で部分的に拡大して示す正面図である。
【図6】本発明の第3実施形態のクランプを示す正面図であり、(A)はクランプが取り付けられていない状態、(B)はクランプが取り付けられている状態をそれぞれ示す。
【図7】本発明の第3実施形態のクランプを配管部材が取り付けられた状態で部分的に拡大して示す正面図である。
【図8】本発明のクランプを用いて車体側部材に取り付けられる配管部材を示し、(A)は斜視図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び図2には、本発明の第1実施形態のクランプ12が示されている。また、図8(A)及び(B)には、このクランプ12によって車体側部材(図示省略)に取り付けられる配管部材102が示されている。本実施形態では、配管部材102として、燃料を送るための燃料配管104にプロテクタ106が装着されたものを想定している。プロテクタ106は、燃料配管104の長手方向を外側から部分的に被う円弧状のプロテクタ本体部106Mと、このプロテクタ本体部106Mの両端に設けられた装着部106Cと、を有している。なお、図8(A)では、燃料配管104として、長手方向の途中で屈曲された形状のものを挙げており、プロテクタ106のプロテクタ本体部106Mもこれに合わせて曲げられているが、プロテクタ106の形状は、配管部材104の装着部位の形状に合わせたものとされる。
【0016】
プロテクタ本体部106Mは、燃料配管104の長手方向と直交する断面で見たとき、周方向に部分的にのみ燃料配管104を被っている。したがって、配管部材102には、図8(B)にも詳細に示すように、プロテクタ106が装着された部分では大径の配管大径部102L(半径R1、中心角θ1)と、この配管大径部102Lよりも小径の配管小径部102S(半径R2)とを備えた非真円の形状となっている。配管大径部102Lの中心角θ1は、後述するように、収容部20への収容性(収容しやすさ)と、燃料配管104の保護を両立する観点から、概ね60度以上120度以下の範囲とされる。
【0017】
図8(A)から分かるように、装着部106Cは、金属板材を略「U」字状に湾曲させて形成されており、装着部106Cの内側に燃料配管104を押し込むと、装着部106C自体の弾性によって燃料配管104を挟み込むようになっている。このような装着部106Cがプロテクタ本体部106Mの両端で燃料配管104を挟み込むので、プロテクタ106は不用意にずれたり脱落したりすることなく、燃料配管104に装着される。そして、プロテクタ本体部106Mにより、燃料配管104が衝突物等から保護される。
【0018】
クランプ12は、図2にも詳細に示すように、全体として略直方体のブロック状に形成されており、一端側が車体側部材に取り付けられる取付部14とされている。取付部14にはスタッド挿入孔16が形成され、さらにその内部に係止爪18が形成されている。スタッド挿入孔16に、車体側部材のスタッドボルト(図示省略)を挿入することで、クランプ12が車体側部材に取り付けられる。この状態で、係止爪18がスタッドボルトに係合し、クランプ12の不用意な移動や脱落が抑制される。なお、以下では、スタッド挿入孔16が開口された側をクランプ12の上側として説明するが、クランプ12が実際に使用されるときの向き(姿勢)には特に制限はない。
【0019】
クランプ12にはさらに、1又は複数(本実施形態では、長手方向の略中央部及び他端側にそれぞれ1つ)の収容部20が形成されている。図3にも詳細に示すように、収容部20は上側に向かって開放されると共に、平行な一対の側面部22と、この側面部22の下側の円弧部24とが形成され、さらに円弧部24を下方に拡径した円弧状の大径部収容部26が形成されている。第1実施形態では、大径部収容部26を図2に示す矢印A方向で見て左右対称な形状に形成している。
【0020】
円弧部24の半径は、配管小径部102Sの半径R2と略等しいか、若しくは僅かに大きくされている。これに対し、大径部収容部26の半径は、配管大径部102Lの半径R1と略等しいか、もしくは僅かに大きくされている。また、大径部収容部26の中心角は、配管大径部102Lの中心角θ1と等しいか、若しくはθ1よりも僅かに大きくされている。
【0021】
大径部収容部26と円弧部24との境界面は、大径部収容部26に収容された配管大径部102Lの周方向の2つの端面108と対向する(若しくは接触する)対向部28とされている。収容部20の所定位置に収容された配管部材102が周方向のいずれの方向に回転しようとしても、周方向の端面108が対向部28と接触することで、この回転が抑制される。
【0022】
収容部20の上部には、クランプ12の上面から一対の係合爪30が形成されている。係合爪30は、斜め下方に向かって互いに接近する向きに延出されており、係合爪30の間隔D1は、配管小径部102Sの直径よりも短くされている。収容部20に配管部材102を収容するときは、係合爪30を下方に撓ませながら押し込む。そして、配管部材102が収容部20の所定位置に収容されると、係合爪30は配管部材102に上方から接触して、配管部材102の抜けを抑制している。
【0023】
次に、本実施形態のクランプ12の作用を説明する。
【0024】
本実施形態のクランプ12を用いて配管部材102を車体側部材に取り付ける場合には、収容部20に配管部材102を押し込んで係合爪30を下方に撓ませる。このとき、配管大径部102Lが大径部収容部26に収容されるように、配管大径部102Lが下側になる向きで押し込む。
【0025】
図1(B)及び図3に示すように、配管部材102が最も奥まで押し込まれると、配管大径部102Lが大径部収容部26に収容され、配管小径部102Sはその上方で、円弧部24に接触して対向部28の間に位置する。このとき、係合爪30が弾性復元して配管部材102に上方から接触するので、所定位置からの配管部材102の抜けが抑制される。そして、スタッド挿入孔16に図示しないスタッドが挿入されるように、クランプ12を車体側部材に取り付ける。これにより、クランプ12を介して、配管部材102が車体側部材に取り付けられる。
【0026】
このように、本実施形態のクランプ12では、配管部材102が配管大径部102Lと配管小径部102Sの双方を備えた非真円であることを考慮し、配管大径部102Lを収容可能な大径部収容部26を形成している。すなわち、非真円の断面を有する配管部材102であっても、収容部20に収容することができる。
【0027】
なお、上記第1実施形態では、大径部収容部26と円弧部24との間に対向部28が形成されている構造のクランプ12を挙げているが、このような対向部28が形成されていない構造でもよい。
【0028】
図4には、対向部28が形成されていない第2実施形態のクランプ62が示されている。すなわち、図5にも詳細に示すように、大径部収容部26から円弧部24を経て側面部22に至るまで半径が連続的(滑らかに)に変化するように形成されており、収容部20の下半分が半円弧状(収容部20全体で見ると長円状)になっている。換言すれば、図5において、二点鎖線で囲った領域E1では、実質的に第1実施形態のクランプ12におけるクランプの材料(樹脂)が除去されており、収容部20への配管部材102の収容方向の先端側(一対の側面部22の間で側面部22と連続している部分)の全面が大径部収容部26とされている。
【0029】
このような構造とされた第2実施形態のクランプ62においても、大径部収容部26が形成されているので、非真円の断面を有する配管部材102であっても、収容部20に収容することができる。しかも、第2実施形態では、配管大径部102Lの周方向における位置を考慮することなく、収容部20に押し込んで保持させることができる。
【0030】
そして、第2実施形態では、対向部28を形成する必要がないので、クランプ12の成形が容易となる。加えて、領域E1の部分の材料が不要となるので、材料コストの低減及び軽量化を図ることができる。
【0031】
しかも、配管部材102における配管大径部102Lの周方向での位置に関わらず、配管部材102を収容部20に収容して固定することができる。
【0032】
図6には、本発明の第3実施形態のクランプ82が示されている。第3実施形態のクランプ82では、図7にも詳細に示すように、大径部収容部26が、図2に示す矢印Aと同方向で見て、左右のいずれか(図7では向かって右側)に偏った位置に形成されている。そして、大径部収容部26と円弧部24との境界部分は、相対的に下方の境界部分では第1実施形態と同様に対向部28が形成されているが、相対的に上方の境界部分では対向部28が形成されず、大径部収容部26から円弧部24を経て側面部22へと滑らかに連続している。
【0033】
したがって、第3実施形態のクランプ82においても、所定位置に収容された配管部材102が矢印R2方向に回転しようとすると、一方の端面108が対向部28に当たって、この回転が抑制される。
【0034】
なお、上記では、本発明に係る配管部材、すなわち、クランプによって車体側部材に取り付けられる取付対象物として、燃料配管104にプロテクタ106が取り付けられることで配管大径部102Lが構成された配管部材102を挙げているが、プロテクタ106以外の部材によって、配管大径部が構成されている(結果的に配管大径部以外は配管小径部となっている)構造の配管部材でもよい。
【0035】
本発明のクリップとしても、上記した形状のクランプ12、62、82に限定されない。たとえば、本発明の取付部として、車体側のスタットボルトが挿入されるスタッド挿入孔16に限定されず、車体側の部材の形状に合わせたものとすればよい。取付部の数も1つに限定されず、複数でもよい。同様に、収容部としても、配管部材102の長手方向の一部を収容することができれば、上記した収容部20に限定されず、その数も1つあるいは3つ以上でもよい。収容部は、クランプの下面側に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0036】
12 クランプ
14 取付部
16 スタッド挿入孔
18 係止爪
20 収容部
22 側面部
24 円弧部
26 大径部収容部
28 対向部
30 係合爪(係合部)
62 クランプ
82 クランプ
102 配管部材
102S 配管小径部
102L 配管大径部
104 燃料配管
106 プロテクタ
106M プロテクタ本体部
106C 装着部
108 端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部材への取付用とされる取付部と、
配管部材の長手方向の一部を収容する収容部と、
前記収容部に収容された配管部材に係合して配管部材の収容部からの抜けを抑制する係合部と、
を備え、
前記配管部材として、長手方向と直交する断面を見たときに周方向に部分的に大径とされた配管大径部と、この配管大径部以外の相対的に小径な配管小径部とを備えた非真円配管部材に対し、
前記収容部が、前記配管大径部を収容可能となるように拡径された大径部収容部を有しているクランプ。
【請求項2】
前記収容部に、収容された前記配管部材の前記配管大径部の周方向の端面と対向する対向部が形成されている請求項1に記載のクランプ。
【請求項3】
前記収容部が、前記配管部材の収容方向先端側の全面において半円弧状に形成された前記大径部収容部とされている請求項1に記載のクランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−47453(P2011−47453A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195738(P2009−195738)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】