説明

クランプ

【課題】ケーブルに対して仮留めが可能なクランプを提供する。
【解決手段】係止孔106が形成された車体パネル101にケーブル100を固定するためのクランプ10であって、ケーブルの外周部の少なくとも一部に当接可能な底部を有する溝部19と、係止孔に係合可能な脚部16とを備えるベース部材11と、仮留め位置および本留め位置の間で変位可能にベース部材に支持され、底部との間にケーブルを収容可能な収容空間を画成する挟持部材12とを有し、挟持部材は、仮留め位置から本留め位置へと変位することによって収容空間を縮小させるように、その外形が構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプに係り、詳しくはケーブル等の索状体を壁面等の構造体表面に固定するクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルを取付孔が形成された取付板に固定するクランプとして、ケーブルの外周部を外囲する略C字状の把持部と、把持部の両端にそれぞれ延設された2つの延在部と、延在部の一方に形成された切欠部と、延在部の他方に突設された係止部とを備えたものがある(例えば、特許文献1)。このクランプは、把持部内にケーブルを配置し、係止部が切欠部を通過するように両延在部を重ね合わせ、切欠部を通過した係止部の先端部を取付孔に係合させることによって、ケーブルを取付板に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平5−37623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のクランプでは、係止部を取付孔に係合させることによって初めてケーブルとクランプとの結合状態が完成される。すなわち、係止部と取付孔との係合によって把持部とケーブルとの係合状態が維持されるため、クランプとケーブルとの結合(仮留め)のみを行うことができないという問題がある。クランプとケーブルとの仮留めが可能になれば、クランプとケーブルとを一体にして組立現場に供給することができ、作業者はクランプを所定の取付部位に結合させるだけでケーブルを所定位置に配置することができ、取付作業性が向上する。
【0005】
本発明は、以上の問題を鑑みてなされたものであって、ケーブルに対して仮留めが可能なクランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、係止孔(106)が形成された被取付部材(101)に索状体(100)を固定するためのクランプ(10)であって、前記索状体の外周部の少なくとも一部に当接可能な受け部(20)と、前記係止孔に係合可能な脚部(16)とを備えるベース部材(11)と、仮留め位置および本留め位置の間で変位可能に前記ベース部材に支持され、前記受け部との間に前記索状体を収容可能な収容空間(60)を画成する挟持部材(12)とを有し、前記挟持部材は、前記仮留め位置から前記本留め位置へと変位することによって前記収容空間を縮小させるように、その外形が構成されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、クランプは、挟持部材と受け部との間に索状体を収容することができ、被取付部材と結合していない状態でも、索状体に被着可能となっている。また、挟持部材を変位させることにより収容空間の大きさを変化させることができるため、挟持部材が仮留め位置にある場合においては、クランプの索状体に対する相対移動を可能にする一方、挟持部材が本留め位置にある場合においては、クランプによる索状体の締め付けを強めてクランプと索状体との相対位置を固定することができる。
【0008】
本発明の他の側面は、前記ベース部材には、支持孔(24)が形成され、前記挟持部材は、基端部(41)から挿入端部(42)へと延在し、前記支持孔に少なくとも挿入端部が挿入され、前記支持孔に対する挿入深さが浅い前記仮留め位置と前記支持孔に対する挿入深さが深い前記本留め位置との間で変位可能に支持され、前記基端部側の前記支持孔から突出した部分において前記受け部との間に前記収容空間を画成し、前記挿入端部側より前記基端部側の方が、前記受け部側へと突出していることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、挟持部材を支持孔に対して軸線方向に押し込むという簡単な操作で、挟持部材を仮留め位置から本留め位置へと変位させることができ、索状体の取付作業を容易にすることができる。
【0010】
本発明の他の側面は、前記ベース部材は、底部(20)および前記底部の両側にそれぞれ連続して互いに対向する壁部(21,22)を有する溝部(19)を備え、前記受け部は、前記底部に設けられ、前記両壁部の一方には前記両壁部の他方側を向くように前記支持孔が形成されるとともに、前記両壁部の他方には前記支持孔に対向するように貫通孔である挿通孔(25)が形成され、前記挟持部材は、前記挿通孔および前記支持孔に挿入されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、溝部内に索状体を確実に保持することができる。また、挿通孔に挟持部材を挿通させたことによって、挟持部材と受け部との間に索状体を挟持する際に、挟持部材の倒れを防止することができる。
【0012】
本発明の他の側面は、前記受け部は、前記挟持部材の長手方向と平行な方向に突出し、
前記挟持部材は、前記基端部に前記受け部側へと突出する拡頭部(401)を有することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、挟持部材の拡頭部によって索状体の収容空間からの脱離を防止することができる。
【0014】
本発明の他の側面は、前記受け部は、その突出端に前記挟持部材側へと突出する引掛部(501)を備えることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、受け部の引掛部によって索状体の収容空間からの脱離を防止することができる。
【0016】
本発明の他の側面は、前記支持孔は、前記脚部内へと延在し、前記脚部は、前記挟持部材が前記仮留め位置から前記本留め位置へと変位することによって、前記挟持部材に押圧されて、前記支持孔の径方向外方へと拡開されることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、挟持部材を仮留め位置から本留め位置に変位させる際に同時に、脚部と被取付部材の係止孔との係合状態を強固にすることができる。
【0018】
本発明の他の側面は、前記支持孔は、前記脚部内へと延在し、前記脚部は、前記係止孔に係合可能であるとともに、前記支持孔内へと傾倒可能な弾性爪(201)を有し、前記挟持部材は、前記仮留め位置にあるときには、前記弾性爪の前記支持孔内への傾倒を許容する一方、前記本留め位置にあるときには、前記弾性爪に当接し、前記支持孔内への傾倒を阻止することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、挟持部材を仮留め位置から本留め位置に変位させる際に同時に、脚部と被取付部材の係止孔との係合状態を強固にすることができる。
【0020】
本発明の他の側面は、係止孔(106)が形成された被取付部材(101)に索状体(100)を固定するためのクランプ(600)であって、前記索状体の外周部の少なくとも一部に当接可能な受け部(20)と、支持孔である支持孔(25)とが形成されたベース部材(11)と、基端部(41)から挿入端部(42)へと延在し、前記挿入端部側から前記支持孔を貫通し、前記支持孔に対する挿入深さが浅い仮留め位置と挿入深さが深い本留め位置との間で変位可能に前記ベース部材に支持され、前記基端部側の前記支持孔から突出した部分において前記受け部との間に前記索状体を収容可能な収容空間(60)を画成する挟持部材(12)とを有し、前記挟持部材は、前記仮留め位置から前記本留め位置へと変位することによって前記収容空間を縮小させるように、前記挿入端部側より前記基端部側の方が、前記受け部側へと突出し、前記挿入端部の前記支持孔を通過した部分において前記係止孔に係合することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、クランプは索状体に被着可能となっており、挟持部材を変位させることにより収容空間の大きさを変化させることができ、挟持部材が仮留め位置にある場合においては、クランプの索状体に対する相対移動を可能にする一方、挟持部材が本留め位置にある場合においては、クランプによる索状体の締め付けを強めてクランプと索状体との相対位置を固定することができる。また、ベース部材に被取付部材の係止孔と係合するための脚部を設ける必要がない。
【発明の効果】
【0022】
本発明のクランプは、挟持部材が仮留め位置にある場合において索状体に相対移動可能に結合することができる一方、挟持部材を本留め位置に変位させることによってクランプと索状体との結合状態を強固にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態に係るクランプを用いたケーブルの車体パネルへの取付構造を示す斜視図
【図2】第1実施形態に係るクランプの分解斜視図
【図3】ベース部材の断面図(図2のIII−III断面図)
【図4】挟持部材の断面図(図2のIV−IV断面図)
【図5】第1実施形態に係るクランプによるケーブルの仮留め状態を示す断面図
【図6】第1実施形態に係るクランプを用いたケーブルの車体パネルへの取付構造(本留め状態)を示す断面図
【図7】第2実施形態に係るクランプによるケーブルの仮留め状態を示す断面図
【図8】第3実施形態に係るクランプによるケーブルの仮留め状態を示す断面図
【図9】第4実施形態に係るクランプによるケーブルの仮留め状態を示す断面図
【図10】第5実施形態に係るクランプによるケーブルの仮留め状態を示す断面図
【図11】第6実施形態に係るクランプによるケーブルの仮留め状態を示す断面図
【図12】第7実施形態に係るクランプによるケーブルの仮留め状態を示す断面図
【図13】第8実施形態に係るクランプによるケーブルの仮留め状態を示す断面図
【図14】第9実施形態に係るクランプによるケーブルの仮留め状態を示す断面図
【図15】第10実施形態に係るクランプによるケーブルの仮留め状態を示す断面図
【図16】図15のXVI−XVI断面図
【図17】第10実施形態に係るクランプによるケーブルの本留め状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明を自動車のパーキングブレーキケーブルを車体パネルの適所に配設するためのクランプに適用した実施形態について詳細に説明する。以下の説明では、図1に示す座標軸に基づいて各方向を定める。
【0025】
<第1実施形態>
図1および2に示すようように、クランプ10は、索状体としてのパーキングブレーキケーブル(以下、ケーブルという)100を、自動車の車体パネル(被取付部材)101に固定するものであり、ベース部材11と、挟持部材12とを備えている。ベース部材11および挟持部材12は、例えばポリアセタール(POM)やポリプロピレン(PP)等の樹脂材料を成形することによって形成されている。
【0026】
図1〜3に示すように、ベース部材11は、略直方体状の本体部15と、本体部15の下面から下方へと向けて突設された略直方体状の脚部16とを備えている。本体部15は、その左側面に開口するとともに、その前側面および後側面を連通するように前後方向に延設された溝部19を備えている。溝部19によって本体部15は、略コ字状を呈する。溝部19の右端に位置する底部20は、円形断面のケーブル100に適合するように、断面が半円形状に形成されている。底部20の上下両端からそれぞれ左方へと延びる壁部を、上壁部21および下壁部22とする。底部20の内面には、複数の突起23が形成されている。突起23は、左右方向およびまたは上下方向に延設されていることが好ましい。
【0027】
下壁部22および脚部16には、上下方向に延在して下壁部22の上面から脚部16の下端へと貫通する断面四角形状の支持孔24が形成されている。上壁部21には、支持孔24と同軸に、上下方向に貫通する断面四角形状の挿通孔25が形成されている。平面視において、支持孔24および挿通孔25の各辺は、左右方向または前後方向に延在しており、挿通孔25は、支持孔24を外囲するように、支持孔24よりも大きく形成されている。
【0028】
上壁部21の挿通孔25に近接する部分には、上壁部21を上下方向に貫通する肉抜き孔26が少なくとも1つ形成されている。本実施形態では、肉抜き孔26は、挿通孔25の右方に形成されている。肉抜き孔26によって、挿通孔25の孔壁の一部分は、薄肉化され、可撓性が高められている。挿通孔25の孔壁の適所には複数の凸部27が形成されている。凸部27の少なくとも1つは、挿通孔25の肉抜き孔26によって可撓性が高められた部分(孔壁の右側部分)に形成されている。これにより、凸部27の少なくとも1つは、挿通孔25の径方向外方に変位可能となっている。
【0029】
脚部16は、その右側壁部および左側壁部に下端へと連続する切欠部31をそれぞれ有する。各切欠部31の上端部には、切欠部31内を下方へ向けて延びる弾性片32がそれぞれ突設されている。各弾性片32は、可撓性を有し、弾性変形することによって脚部16の外方へと傾倒可能になっている。各弾性片32は、その下端部に互いに近接する方向に膨らみ出た膨出部33を有している。各膨出部33は、その上半部に、下方へと進むにつれて互いに近接する方向への突出量が増大するテーパ部34を備えている。各膨出部33の下半部35は、両膨出部33間の距離が等距離となるように、互いに平行となっている。テーパ部34と下半部35との境界部分のそれぞれには、各テーパ部34よりも更に互いに近接する方向へと突出する係止凸部36がそれぞれ形成されている。
【0030】
ベース部材11の上壁部21、下壁部22、弾性片32の適所には、肉盗み部37が形成されている。
【0031】
図15、4に示すように、挟持部材12は、上下方向に延在する軸状部材であって、上方に位置する基端部41と、基端部41の下部に同軸に連続し、下方へと延びる挿入端部42とを備えている。基端部41は、挿入端部42に対して左右方向に幅が広くなっている。基端部41は挿通孔25内に挿通可能な大きさに形成され、挿入端部42は支持孔24に挿入可能な大きさに形成されている。
【0032】
挿入端部42の左右側部の先端(下端)近傍には、各弾性片32の各膨出部33を受容可能な受容凹部44がそれぞれ形成されている。図3に示すように、各受容凹部44は、その上半部に先端側へと進むにつれて深さが増大するテーパ部45を有し、テーパ部45の下方には深さが概ね一定な底部46が設けられている。底部46は、挿入端部42の先端まで延びている。テーパ部45と底部46との境界部分には、前後方向に延在し、底部46よりも深さが深くなる係止凹部47が形成されている。
【0033】
基端部41の左右側部のそれぞれには、第1係止凹部48および第2係止凹部49がそれぞれ形成されている。第1係止凹部48および第2係止凹部49は、上下方向に延びる仮想線上に配置され、第1係止凹部48は第2係止凹部49の下方に形成されている。
【0034】
挟持部材12の基端部41および挿入端部42の適所には、肉盗み部50が形成されている。
【0035】
次に、第1実施形態に係るクランプ10を用いてケーブル100を車体パネル101に取り付ける手順およびその取付構造について説明する。図1に示すように、パーキングブレーキケーブル100は、金属製のインナワイヤ104と、可撓性を有する樹脂材料から形成され、インナワイヤ104を摺動自在に収容するアウタケース105とから構成されている。車体パネル101は、金属板から構成されており、ベース部材11の脚部16が通過可能な四角形状の貫通孔である係止孔106が形成されている。
【0036】
最初に、図2に示すように、ベース部材11と挟持部材12とを分離した状態で、ベース部材11の溝部19にケーブル100を径方向から挿入する。溝部19の上壁部21と下壁部22との間の距離は、ケーブル100を受容可能な大きさに形成されている。ケーブル100は、溝部19内で支持孔24よりも右側にくるまで挿入される。
【0037】
ケーブル100が溝部19内に配置された状態で、挟持部材12が挿入端部42側から、ベース部材11の挿通孔25に上方より挿入される。挟持部材12は、挿通孔25を通過し、溝部19を横切った後、支持孔24内に突入する。挟持部材12は、断面四角形状の支持孔24および挿通孔25に適合し、軸方向回りの回転が規制される。挟持部材12の支持孔24に対する挿入が進むと、脚部16の弾性片32は、各係止凸部36において挿入端部42の各受容凹部44の各底部46に押圧され、脚部16の外方へと弾性変形する。更に挿入が進むと、各係止凸部36は、挿入端部42の各係止凹部47内に突入し、弾性片32は復元力によって初期位置へと復帰する。この各係止凸部36と各係止凹部47との係合によって、挟持部材12はベース部材11に支持される。このときの挟持部材12のベース部材11に対する位置を挟持部材12の仮留め位置といい、挟持部材12が仮留め位置にあるときのクランプ10の状態を仮留め状態という(図1、図5参照)。
【0038】
また、図5に示すように、挟持部材12が仮留め位置にあるときには、挟持部材12の基端部41の第1係止凹部48に、ベース部材11の挿通孔25の凸部27が係合している。この第1係止凹部48と凸部27との係合によっても、挟持部材12はベース部材11に対して仮留め位置に支持されている。基端部41の左右方向における幅は、挿通孔25の左右内壁に形成された凸部27間の距離よりも若干大きく、基端部41が挿通孔25に挿入される際には、挿通孔25の肉抜き孔26に対応する部分が弾性変形して基端部41の通過を許容する。
【0039】
挟持部材12が仮留め位置に支持された状態で、ベース部材11の底部20、上壁部21、下壁部22と、挟持部材12との間に収容空間60が画成され、ケーブル100は収容空間60内に保持される。挟持部材12が仮留め位置にある場合には、挟持部材12の溝部19内に位置する部分は大部分が挿入端部42であり、挿入端部42が基端部41よりも左右方向において幅が狭いことから、収容空間60は比較的広くなっている。このとき、ケーブル100がその長手方向(軸線方向)に収容空間60内を変位できるように、溝部19および挟持部材12の形状および距離が設定されている。
【0040】
次に、ケーブル100を保持したクランプ10の仮留め状態から、クランプ10をケーブル100の長手方向に変位させて脚部16を車体パネル101の係止孔106に対応させ、脚部16を係止孔106に挿入する。脚部16の係止孔106に対する挿入は、ベース部材11の本体部15の下部が車体パネル101の表面に当接するまで行われる。この状態から、挟持部材12を、ベース部材11の挿通孔25および支持孔24に対して更に押し込むと、図6に示すように、挿入端部42のテーパ部45が、弾性片32のテーパ部34を押圧し、弾性片32が脚部16の外方へと押し広げられる(拡開される)。これにより、脚部16は、係止孔106よりも幅が広くなり、係止孔106から脱離できなくなる。また、同時に、挿通孔25の凸部27は、第1係止凹部48から離脱して、第2係止凹部49に係合する。凸部27と第2係止凹部49との係合によって、挟持部材12の挿通孔25および支持孔24(ベース部材11)に対する挿入深さが保持される。このときの挟持部材12のベース部材11に対する位置を挟持部材12の本留め位置といい、挟持部材12が本留め位置にあるときのクランプ10の状態を本留め状態という(図6参照)。
【0041】
挟持部材12が本留め位置にある場合には、挟持部材12の溝部19内に位置する部分は大部分が基端部41であり、基端部41が挿入端部42よりも左右方向において幅が狭いことから、収容空間60は仮留め状態に比べて狭くなっている。ケーブル100は、基端部41に底部20側へと押圧され、基端部41と底部20との間に仮留め状態の時よりも強く挟持される。これにより、ケーブル100とクランプ10とは、ケーブル100の長手方向への相対変位が阻止される。また、底部20に形成された突起23がケーブル100のアウタケース105に食い込むことによって、クランプ10とケーブル100との相対位置がより強固に固定される。
【0042】
以上に説明したように、第1実施形態に係るクランプ10は、車体パネル101から分離された状態で、ケーブル100に変位可能に被着され、仮留め状態を形成することができる。これによって、例えば、ケーブル100にクランプ10を組み付けた1つの組立体として、車体組立現場に供給することができる。また、クランプ10は、仮留め状態ではケーブル100の長手方向に変位可能となっており、車体パネル101の係止孔106の位置に合わせて位置を調整することができる。クランプ10の車体パネル101への取り付けは、脚部16を係止孔106に挿入し、挟持部材12をベース部材11に押し込むだけでよく、取り付け作業が容易である。
【0043】
また、挟持部材12は、軸線方向において基端部41と挿入端部42とで幅が変化しており、挟持部材12をベース部材11に変位させることによって、挟持部材12と受け部としての底部20との最短距離が短くなり、収容空間60が縮小される。これにより、挟持部材12と底部20との間にケーブル100がより強固に挟持され、クランプ10とケーブル100の相対位置が固定される。
【0044】
<第2実施形態>
第2実施形態に係るクランプ200は、第1実施形態に係るクランプ10と比較して脚部16の構成が異なる。クランプ200について、クランプ10と同一の構成については、クランプ10と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0045】
図7に示すように、クランプ200の脚部16は、その左右側壁部に弾性爪201をそれぞれ有している。脚部16は、支持孔24によって上下方向に貫通されており、左右側壁部に外部と支持孔24とを連通する逆U字状の切欠部202がそれぞれ形成されている。弾性爪201は、切欠部202内を下端の基端部から上方へと延びる片持ち梁状の弾性片部203と、弾性片部203の外面に突設された逆止爪部204とを備えている。弾性片部203は、可撓性を有し、脚部16の内部(すなわち、支持孔24内)へと傾倒可能になっている。挟持部材12は、第1係止凹部48がベース部材11の凸部27と係合することによって仮留め位置に保持され、第2係止凹部49がベース部材11の凸部27と係合することによって本留め位置に保持される。
【0046】
図7に示すように、挟持部材12が仮留め位置に位置する場合には、弾性爪201は支持孔24内へと傾倒可能になっており、弾性爪201が傾倒することによって脚部16が車体パネル101の係止孔106内に挿入可能となっている。図示しないが、挟持部材12が本留め位置に位置する場合には、挟持部材12の挿入端部42が弾性爪201の背部(支持孔24側の部分)に当接し、弾性爪201の傾倒が阻止される。この構成によって、挟持部材12が仮留め位置にある状態で脚部16を係止孔106に挿入し、その後に、挟持部材12を本留め位置に変位させて弾性爪201の傾倒を阻止し、脚部16の係止孔106からの抜け止めを行うことができる。
【0047】
<第3実施形態>
第3実施形態に係るクランプ300は、図8に示すように、第1および第2実施形態に係るクランプ10,200と比較して支持孔24が脚部16の内部に延在していない点で構成が異なる。クランプ300について、クランプ10と同一の構成については、クランプ10と同一の符号を付し、説明を省略する。クランプ300では、第2実施形態に係るクランプ200との同様の構成の弾性爪301(弾性爪201)を備えている。クランプ300では、クランプ200と異なり、脚部16の弾性爪301は、挟持部材12の位置(仮留め位置または本留め位置)によって傾倒が許容される、あるいは阻止されるといった影響を受けない。クランプ300は、車体パネル101の係止孔106に係合させる前に、ケーブル100との相対位置を固定(本留め)することができる。
【0048】
<第4実施形態>
第4実施形態に係るクランプ400は、図9に示すように、ベース部材11が溝部19を有さず、挟持部材12の基端部41に拡頭部401を有する点が第1実施形態に係るクランプ10と大きく相違する。クランプ400について、クランプ10と同一の構成については、クランプ10と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0049】
図9に示すように、ベース部材11の本体部15は、板状を呈し、支持孔24の軸線方向と概ね平行となる方向であって、脚部16側と相反する方向に壁部(受け部)402が突設されている。挟持部材12の基端部41は、上端側に進むにつれて壁部402側(右方)へと突出するようにテーパ部403を有しており、その上端に壁部402側(右方)へと突出する拡頭部401を有している。
【0050】
挟持部材12が仮留め位置にある状態において、拡頭部401と壁部402との間の距離は、ケーブル100の外径よりも小さくなっており、ベース部材11と挟持部材12とによって画成される収容空間410からケーブル100が離脱できないようになっている。挟持部材12が支持孔24に押し込まれ、本留め位置へと移動すると、ケーブル100は、拡頭部401およびテーパ部403と、本体部15および壁部402との間に挟持される。
【0051】
<第5実施形態>
第5実施形態に係るクランプ500は、図10に示すように、第4実施形態に係るクランプ400と比較して、拡頭部401の形状および壁部402の形状が異なる。クランプ500について、クランプ400と同一の構成については、クランプ400と同一の符号を付し、説明を省略する。クランプ400は、壁部402の上端に挟持部材12側へと突出する引掛部501を有している。挟持部材12が仮留め位置にある状態において、拡頭部401およびテーパ部403と、引掛部501との間の距離は、ケーブル100の外径よりも小さくなっており、ベース部材11と挟持部材12とによって画成される収容空間510からケーブル100が離脱できないようになっている。
【0052】
<第6実施形態>
第6実施形態に係るクランプ600は、図11に示すように、第3実施形態に係るクランプ300と比較して、ベース部材11に支持孔24が形成されていない点、挟持部材12の挿入端部42が短い点で異なる。クランプ600について、クランプ300と同一の構成については、クランプ300と同一の符号を付し、説明を省略する。挟持部材12は、仮留め位置において、基端部41の一部と挿入端部42とが、溝部19内に突出し、一部が開口した空間601を画成する。ケーブル100は、この空間601に変位可能に保持される。クランプ200と同様に、挟持部材12を貫通孔25に対して押し込み、本留め位置へと変位させることによって、溝部19内に基端部41の大部分が進入し、空間601が縮小される。これにより、ケーブル100は、挟持部材12と底部20との間に挟持される。
【0053】
<第7実施形態>
第7実施形態に係るクランプ700は、図12に示すように、第1実施形態に係るクランプ10と比較して、ベース部材11が脚部16を有さず、挟持部材12の挿入端部42に車体パネル101の係止孔106と係合する弾性爪701が形成されている点で異なる。クランプ700について、クランプ10と同一の構成については、クランプ10と同一の符号を付し、説明を省略する。図12に示すように、挿入端部42は、中空部702を有し、その下端部から中空部702内を上方へと延びる弾性爪701を一対有している。弾性爪701は、その外面に逆止爪部703が突設されているとともに、可撓性を有し、中空部702の内方へと弾性変形して傾倒可能になっている。
【0054】
図12に示すように、挟持部材12が仮留め位置にある状態では、逆止爪部703が支持孔24の内壁に押圧されて、各弾性爪701は中空部602内に傾倒した状態となる。図示しないが、挟持部材12が仮留め位置にある状態で、挿入端部42を車体パネル101の係止孔106に挿入し、挟持部材12をベース部材11に対して押し込むと、各弾性爪701の逆止爪部703が支持孔24を下方へと通過し、弾性爪701の復元力によって逆止爪部703が挿入端部42の外方へと突出し、係止孔106に係合する。
【0055】
<第8実施形態>
第8実施形態に係るクランプ800は、図13に示すように、第7実施形態に係るクランプ700と比較して、ベース部材11の上部の形状および挟持部材12の上部の形状が異なる。クランプ800のベース部材11は、第4実施形態のクランプ400と同様の壁部の壁部402を有し、挟持部材12は、拡頭部401およびテーパ部403を有する。クランプ800について、クランプ700およびクランプ400と同一の構成については、クランプ700およびクランプ400と同一の符号を付し、説明を省略する。また、挟持部材12をベース部材11に対して仮留め位置に保持するべく、支持孔24の壁面に弾性爪701が引っ掛かる凹部801が形成されている。
【0056】
<第9実施形態>
第9実施形態に係るクランプ900は、図14に示すように、第8実施形態に係るクランプ800と比較して、拡頭部401の形状および壁部402の形状が異なる。壁部402は、第5実施形態と同様の引掛部501を有している。クランプ900について、クランプ800およびクランプ500と同一の構成については、クランプ800およびクランプ500と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0057】
<第10実施形態>
第10実施形態に係るクランプ1000は、第1実施形態に係るクランプ10と比較して、挟持部材1001がベース部材1002に対して相対回転することによって、仮留め位置と本留め位置との間で変位する点で大きく相違する。
【0058】
図15に示すように、ベース部材1002の本体部1003は、板状を呈し、その上面に有底円形状の支持孔1004と、上方へと向けて突設されるともに上端に支持孔側へと延びる引掛部1005を備えた壁部(受け部)1006とを有し、その下面に下方へと突設された脚部1007を有している。脚部1007は、その側面に一対の弾性爪1008を備え、車体パネル101の係止孔106に係合可能となっている。連続する本体部1003、壁部1006、引掛部1005は、コ字状を呈し、その内部にケーブル100を収容可能となっている。挟持部材1001は、支持孔1004に回転中心1020回りに回転可能に嵌着される軸部1011と、軸部1011と同軸に設けられた楕円状の挟持部1012とを有している。挟持部材1001は、ケーブル100が本体部1003、壁部1006、引掛部1005の間に配置された後にベース部材1002に嵌め付けられる。挟持部材1001がベース部材1002に取り付けられると、ケーブル100は、本体部1003、壁部1006、引掛部1005および挟持部材1001によって画成された収容空間1015から離脱することができないようになっている。
【0059】
挟持部1012と壁部1006との最短距離が最も大きくなる(収容空間1015が最も大きくなる)ときの挟持部材1001のベース部材1002に対する回転位置を仮留め位置とし(図15、16参照)、挟持部1012と壁部1006との最短距離が最も小さくなる(収容空間1015が最も小さくなる)ときの挟持部材1001のベース部材1002に対する回転位置を本留め位置とする(図17参照)。挟持部材1001が仮留め位置にあるとき、クランプ1000はケーブル100に対して相対位置が可能である一方、挟持部材1001が本留め位置にあるとき、ケーブル100は、挟持部1012と壁部1006との間に挟持され、クランプ1000はケーブル100に対して相対位置不能に固定される。
【0060】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、ケーブル100は、電気配線用ワイヤや、オイル等の液体が流通するパイプ等であってよい。また、被取付部材としての車体パネル101は、樹脂材からなるトリム等の構造体であってもよい。また、クランプが取り付けられる被取付部材は、車体の構成要素に限られず、建造物や装置等の様々な構造物であってよい。
【符号の説明】
【0061】
10,200,300,400,500,600,700,800,900,1000…クランプ、11,1002…ベース部材、12,1001…挟持部材、15…本体部、16…脚部、19…溝部、20…底部(受け部)、21…上壁部、22…下壁部、23…突起、24,1004…支持孔、25…挿通孔、27…凸部、32…弾性片、33…膨出部、36…係止凸部、41…基端部、42…挿入端部、44…受容凹部、47…係止凹部、48…第1係止凹部、49…第2係止凹部、60,410,510,1015…収容空間、100…ケーブル、101…車体パネル、106…係止孔、201,601…弾性爪、401…拡頭部、402、1006…壁部、403…テーパ部、501,1005…引掛部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
係止孔が形成された被取付部材に索状体を固定するためのクランプであって、
前記索状体の外周部の少なくとも一部に当接可能な受け部と、前記係止孔に係合可能な脚部とを備えるベース部材と、
仮留め位置および本留め位置の間で変位可能に前記ベース部材に支持され、前記受け部との間に前記索状体を収容可能な収容空間を画成する挟持部材と
を有し、
前記挟持部材は、前記仮留め位置から前記本留め位置へと変位することによって前記収容空間を縮小させるように、その外形が構成されていることを特徴とするクランプ。
【請求項2】
前記ベース部材には、支持孔が形成され、
前記挟持部材は、基端部から挿入端部へと延在し、前記支持孔に少なくとも挿入端部が挿入され、前記支持孔に対する挿入深さが浅い前記仮留め位置と前記支持孔に対する挿入深さが深い前記本留め位置との間で変位可能に支持され、前記基端部側の前記支持孔から突出した部分において前記受け部との間に前記収容空間を画成し、前記挿入端部側より前記基端部側の方が、前記受け部側へと突出していることを特徴とする請求項1に記載のクランプ。
【請求項3】
前記ベース部材は、底部および前記底部の両側にそれぞれ連続して互いに対向する壁部を有する溝部を備え、
前記受け部は、前記底部に設けられ、
前記両壁部の一方には前記両壁部の他方側を向くように前記支持孔が形成されるとともに、前記両壁部の他方には前記支持孔に対向するように貫通孔である挿通孔が形成され、
前記挟持部材は、前記挿通孔および前記支持孔に挿入されていることを特徴とする、請求項2に記載のクランプ。
【請求項4】
前記受け部は、前記挟持部材の長手方向と平行な方向に突出し、
前記挟持部材は、前記基端部に前記受け部側へと突出する拡頭部を有することを特徴とする、請求項2に記載のクランプ。
【請求項5】
前記受け部は、その突出端に前記挟持部材側へと突出する引掛部を備えることを特徴とする、請求項4に記載のクランプ。
【請求項6】
前記支持孔は、前記脚部内へと延在し、
前記脚部は、前記挟持部材が前記仮留め位置から前記本留め位置へと変位することによって、前記挟持部材に押圧されて、前記支持孔の径方向外方へと拡開されることを特徴とする、請求項2〜請求項5のいずれかの項に記載のクランプ。
【請求項7】
前記支持孔は、前記脚部内へと延在し、
前記脚部は、前記係止孔に係合可能であるとともに、前記支持孔内へと傾倒可能な弾性爪を有し、
前記挟持部材は、前記仮留め位置にあるときには、前記弾性爪の前記支持孔内への傾倒を許容する一方、前記本留め位置にあるときには、前記弾性爪に当接し、前記支持孔内への傾倒を阻止することを特徴とする、請求項2〜請求項5のいずれかの項に記載のクランプ。
【請求項8】
係止孔が形成された被取付部材に索状体を固定するためのクランプであって、
前記索状体の外周部の少なくとも一部に当接可能な受け部と、貫通孔である支持孔とが形成されたベース部材と、
基端部から挿入端部へと延在し、前記挿入端部側から前記支持孔を貫通し、前記支持孔に対する挿入深さが浅い仮留め位置と挿入深さが深い本留め位置との間で変位可能に前記ベース部材に支持され、前記基端部側の前記支持孔から突出した部分において前記受け部との間に前記索状体を収容可能な収容空間を画成する挟持部材と
を有し、
前記挟持部材は、前記仮留め位置から前記本留め位置へと変位することによって前記収容空間を縮小させるように、前記挿入端部側より前記基端部側の方が、前記受け部側へと突出し、前記挿入端部の前記支持孔を通過した部分において前記係止孔に係合することを特徴とするクランプ。
【請求項9】
前記ベース部材は、底部および前記底部の両側にそれぞれ連続して互いに対向する壁部を有する溝部を備え、
前記受け部は、前記底部に設けられ、
前記両壁部の一方には前記両壁部の他方側を向くように前記支持孔が形成されるとともに、前記両壁部の他方には前記支持孔に対向するように貫通孔である挿通孔が形成され、
前記挟持部材は、前記挿通孔および前記支持孔に挿入されていることを特徴とする、請求項8に記載のクランプ。
【請求項10】
前記受け部は、前記挟持部材の長手方向と平行な方向に突出し、
前記挟持部材は、前記基端部に前記受け部側へと突出する拡頭部を有することを特徴とする、請求項8に記載のクランプ。
【請求項11】
前記受け部は、その突出端に前記挟持部材側へと突出する引掛部を備えることを特徴とする、請求項10に記載のクランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−2323(P2012−2323A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140051(P2010−140051)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】