説明

クリーニング装置及びクリーニング方法

【課題】成膜材料等に影響を与えることなく、大型の成膜用マスクに対して均一なクリーニングを高速且つ効率良く行うことができる技術を提供する。
【解決手段】クリーニングガス供給部8から供給されたクリーニングガスを放電させ、クリーニングガスのラジカルをマスク6に向って放出するためのラジカル放出器10を真空槽内に備える。ラジカル放出器10は、面状のシャワープレート15と、面状のメッシュ状部材16を有する。シャワープレート15とメッシュ状部材16とが電気的に絶縁されるとともに、シャワープレート15に高周波電力を印加することにより、シャワープレート15とメッシュ状部材16の間のプラズマ形成室18においてクリーニングガスのプラズマを生成し、メッシュ状部材16からマスク6に向ってクリーニングガスのラジカルを放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機ELディスプレイ等や有機EL照明デバイス等、また蒸着重合膜など有機膜があるデバイスを作製する際に用いる成膜用マスクをクリーニングする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のクリーニング技術としては、例えば特許文献1〜4に記載されたものが知られている。
特許文献1に記載された発明では、成膜室内において蒸着マスクをプラズマによってクリーニングを行うようにしている。
【0003】
しかし、この従来技術では、クリーニングの際に発生するラジカルや荷電粒子等によって蒸発源内の蒸発材料を壊してしまうおそれがある。
また、この従来技術では、電極を移動させるようにしているため、大型のマスクに対して均一なクリーニングを行うことが困難である。
【0004】
一方、特許文献2〜4に記載された従来技術においては、クリーニング用ガスのプラズマを用いてマスクのクリーニングを行うようにしているが、これらの従来技術では、マスクの近傍において高密度のプラズマを発生することが困難であり、高速で高効率のクリーニングを行い難い。
【0005】
また、特許文献1〜4に記載された従来技術においては、真空槽内の全領域においてクリーニングを行うことから、プラズマやラジカルの圧力が真空槽内の圧力であり、その結果、クリーニングに利用されないプラズマやラジカルの割合が大きく、効率良くクリーニングを行うことは困難である。
さらに、特許文献3及び4に記載された従来技術は、クリーニング効果のあるイオンの衝撃を利用し難い構成であるため、クリーニング効率が悪いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−313654号公報
【特許文献2】特開2009−185362号公報
【特許文献3】特開2007−173175号公報
【特許文献4】特開2008−88483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、成膜材料等に影響を与えることなく、大型の成膜用マスクに対して均一なクリーニングを高速且つ効率良く行うことができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明は、成膜用マスクが配置される真空槽と、前記真空槽の外部に設けられたクリーニングガス供給源と、前記クリーニングガス供給源から供給されたクリーニングガスを放電させ、当該クリーニングガスのラジカルを前記成膜用マスクに向って放出するためのラジカル放出器とを備え、前記ラジカル放出器は、前記クリーニングガス供給源から供給されたクリーニングガスを導入するクリーニングガス導入室を有し、当該クリーニングガス導入室の前記成膜用マスク側に、導電体からなる面状のシャワープレートが設けられるとともに、当該クリーニングガス導入室の前記シャワープレートの前記成膜用マスク側には、前記シャワープレートに対応する大きさ及び形状の導電体からなる面状のラジカル放出部材が設けられ、前記シャワープレートと前記ラジカル放出部材とが電気的に絶縁されるとともに、当該シャワープレートに高周波電力を印加することにより、当該シャワープレートと当該ラジカル放出部材の間のプラズマ形成室において前記クリーニングガスのプラズマを生成し、前記ラジカル放出部材から前記成膜用マスクに向って当該クリーニングガスのラジカルを放出するよう構成されているクリーニング装置である。
本発明では、前記ラジカル放出部材が、メッシュ状部材からなる場合にも効果的である。
本発明では、前記メッシュ状部材が、複数枚のメッシュを重ねて構成されている場合にも効果的である。
本発明では、前記ラジカル放出部材が接地されるとともに、前記成膜用マスクに対してバイアス電力を印加するためのバイアス電源を有する場合にも効果的である。
本発明では、前記クリーニングガス導入室内に、前記クリーニングガスを前記ラジカル放出器内に導入する手段として、放射状にクリーニングガスを放出するノズル部が設けられている場合にも効果的である。
本発明では、前記ラジカル放出器は、前記クリーニングガス供給源から供給されたクリーニングガスを拡散するための複数のクリーニングガス拡散部を有し、前記複数のクリーニングガス拡散部は、当該クリーニングガスの導入側から放出側に向って段階的に区分けされ且つ互いの雰囲気が隔離された複数の拡散室を有するとともに、当該複数の拡散室は、互いに隣接する拡散室が前記クリーニングガスが通過可能な連通口を介して接続され、さらに、当該複数の拡散室のうち最終段の拡散室が、前記クリーニングガスが通過可能な連通口を介してそれぞれ前記プラズマ形成室に接続されている場合にも効果的である。
本発明では、前記面状のクリーニングガス放出器におけるクリーニングガス拡散部の複数の拡散室に、互いの雰囲気を隔離するための隔壁部が設けられている場合にも効果的である。
本発明では、前記面状のクリーニングガス放出器におけるクリーニングガス拡散部の複数の連通口は、前記クリーニングガスの導入側から放出側に向って2n−1個(nは自然数)で増加するように構成されている場合にも効果的である。
また、本発明は、成膜用マスクが配置される真空槽と、前記真空槽の外部に設けられたクリーニングガス供給源と、前記クリーニングガス供給源から供給されたクリーニングガスを放電させ、当該クリーニングガスのラジカルを前記成膜用マスクに向って放出するためのラジカル放出器とを備え、前記ラジカル放出器は、前記クリーニングガス供給源から供給されたクリーニングガスを導入するクリーニングガス導入室を有し、当該クリーニングガス導入室の前記成膜用マスク側に、導電体からなる細長形状のシャワープレートが設けられるとともに、当該クリーニングガス導入室の前記シャワープレートの前記成膜用マスク側には、前記シャワープレートに対応する大きさ及び形状の導電体からなる細長形状のラジカル放出部材が設けられ、前記成膜用マスクが、前記ラジカル放出器の延びる方向に対して相対的に移動するように構成され、前記シャワープレートと前記ラジカル放出部材とが電気的に絶縁されるとともに、当該ラジカル放出部材に所定の電力を印加することにより、当該シャワープレートと当該ラジカル放出部材の間のプラズマ形成室において前記クリーニングガスのプラズマを生成し、前記ラジカル放出部材から前記成膜用マスクに向って当該クリーニングガスのラジカルを放出するよう構成されているクリーニング装置である。
一方、本発明は、上述したいずれかのクリーニング装置を用い、真空中で成膜用マスクの表面に対してクリーニングを行う方法であって、前記成膜用マスクが装着される基板上に真空蒸着によって有機材料を蒸着する前に、前記クリーニング装置のラジカル放出器から前記クリーニングガスのラジカルを放出して当該成膜用マスクの表面のクリーニングを行う工程を有するクリーニング方法である。
【0009】
本発明の場合、シャワープレートとラジカル放出部材とが電気的に絶縁されるとともに、シャワープレートに高周波電力を印加することにより、シャワープレートと当該ラジカル放出部材の間のプラズマ形成室においてクリーニングガスのプラズマを生成し、ラジカル放出部材から成膜用マスクに向ってクリーニングガスのラジカルを放出するようにしたことから、大型基板に用いる成膜用マスクに対してクリーニングを行う場合に当該成膜用マスク上の各領域において均一な表面処理を行うことができ、また、成膜材料等に影響を与えることもない。
さらに、本発明によれば、クリーニングガスのプラズマを高密度で形成することができるので、成膜用マスクに対して高速且つ効率良くクリーニングを行うことができる。
本発明において、ラジカル放出部材が、メッシュ状部材からなる場合には、プラズマが均一化されるため、ラジカルが均一化されるという効果がある。
本発明において、メッシュ状部材が、複数枚のメッシュを重ねて構成されている場合には、プラズマやラジカルが更に均一化されるため、より均一的なラジカル等が得られるという効果がある。
本発明において、ラジカル放出部材が接地されるとともに、成膜用マスクに対してバイアス電力を印加するためのバイアス電源を有する場合には、クリーニングガスのプラズマのうちイオン種がラジカル放出部材によって捕獲されるとともに、当該イオン種が成膜用マスクに到達しにくくなるので、成膜用マスクに対するダメージを抑制することができる。
本発明において、クリーニングガス導入室内に、クリーニングガスをラジカル放出器内に導入する手段として、放射状にクリーニングガスを放出するノズル部が設けられている場合には、プラズマ形成室において均一なプラズマを生成することができ、これにより、例えば円形形状の成膜用マスク表面に対してより均一なプラズマ処理を行うことができる。
本発明において、ラジカル放出器が、クリーニングガス供給源から供給されたクリーニングガスを拡散するための複数のクリーニングガス拡散部を有し、これら複数のクリーニングガス拡散部が、クリーニングガスの導入側から放出側に向って段階的に区分けされ且つ互いの雰囲気が隔離された複数の拡散室を有するとともに、当該複数の拡散室が、互いに隣接する拡散室がクリーニングガスが通過可能な連通口を介して接続され、さらに、複数の拡散室のうち最終段の拡散室が、クリーニングガスが通過可能な連通口を介してそれぞれ前記プラズマ形成室に接続されている場合には、複数のクリーニングガス拡散部において例えば異なるクリーニングガスを確実に拡散した後に、プラズマ形成室おいて例えば異なるクリーニングガスを十分に混合することができる。
その結果、本発明によれば、例えば大型基板に対してプラズマ処理を行う場合に当該大型基板上の各領域に対して均一な処理を行うことができる。
さらに、本発明においては、クリーニングガス拡散部が、例えば水平方向と鉛直方向のようにクリーニングガスを導く方向が異なる複数のクリーニングガス拡散部を有する場合には、例えば同体積の曲管によってクリーニングガスを分流する場合に比べクリーニングガスの分散拡散回数が多く、クリーニングガスの流量が均一即ち一定になるため、より均一なガス分配を行うことができる。
一方、本発明において、クリーニングガス導入室の成膜用マスク側に、導電体からなる細長形状のシャワープレートが設けられるとともに、クリーニングガス導入室の前記シャワープレートの前記成膜用マスク側に、シャワープレートに対応する大きさ及び形状の導電体からなる細長形状のラジカル放出部材が設けられ、成膜用マスクが、ラジカル放出器の延びる方向に対して直交する方向へ相対的に移動するように構成されている場合には、クリーニング装置の大きさを小さくすることができるため、コストを抑えることができ、また、所謂インライン装置に適用することができるという効果がある。
さらに、上述したいずれかのクリーニング装置を用い、成膜用マスクが装着される基板上に真空蒸着によって材料を蒸着する前に、クリーニング装置のラジカル放出器からクリーニングガスのラジカルを放出して成膜用マスクの表面のクリーニングを行えば、常にクリーニングされた成膜用マスクを用いて高精細の蒸着を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、成膜材料等に影響を与えることなく、大型の成膜用マスクに対して均一なクリーニングを高速且つ効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るクリーニング装置を用いた有機EL製造装置の概略平面図
【図2】同クリーニング装置のラジカル放出器の構成を示す断面図
【図3】同ラジカル放出器の構成を示す斜視図
【図4】(a)(b):本発明に係るクリーニング装置の他の実施の形態を示すものであり、図4(a)は横断面図、図4(b)は縦断面図
【図5】同実施の形態におけるノズル部の構成を示す拡大正面図
【図6】本発明に係るクリーニング装置の他の実施の形態におけるラジカル放出器の外観構成を示す斜視図
【図7】同実施の形態におけるラジカル放出器の内部構成を示す概略図
【図8】同実施の形態におけるラジカル放出器の水平方向拡散部の内部構成を示す概略図
【図9】同実施の形態におけるラジカル放出器の水平方向拡散部の内部構成を示す概略図
【図10】(a)(b):図7〜図9に示す実施の形態におけるラジカル放出器の他の例を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係るクリーニング装置を用いた有機EL製造装置の概略平面図、図2は、同クリーニング装置のラジカル放出器の構成を示す断面図、図3は、同ラジカル放出器の構成を示す斜視図である。
以下、上下関係については図2及び図3に示す構成に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0013】
図1に示すように、本実施の形態の有機EL製造装置1は、マルチチャンバー方式のものであり、図示しない真空排気系に接続された搬送室2を有している。
搬送室2内には搬送ロボット3が設けられており、搬送室2の周囲に設けられた仕込み/取り出し室4A、マスククリーニング室4B、有機層成膜室4C及び4D、電極成膜室4E、封止室4Fとの間において、搬送ロボット3を用いて基板5及びマスク6(成膜用マスク)の受け渡しを行うように構成されている。
【0014】
なお、仕込み/取り出し室4A、マスククリーニング室4B、有機層成膜室4C及び4D、電極成膜室4E、封止室4Fと搬送室2との間には、それぞれ図示しない仕切り弁が設けられている。
【0015】
これら仕込み/取り出し室4A、マスククリーニング室4B、有機層成膜室4C及び4D、電極成膜室4E、封止室4Fは、それぞれ図示しない真空排気系に接続され、独立して真空排気を行うようになっている。
【0016】
本実施の形態の場合、以下に説明するラジカル放出器10をマスククリーニング室4B内に有するクリーニング装置20が設けられている。
図2に示すように、本実施の形態のクリーニング装置20は、真空槽12内に、箱形形状の本体部11を有するラジカル放出器10を備えている。
【0017】
ラジカル放出器10の本体部11は、例えばステンレス等の導電性を有する金属材料を用いて一体的に構成され、この本体部11を介して後述するシャワープレート15に対して例えば高周波電源13から高周波電力(例えば13.56MHz)を印加するように構成されている。
【0018】
ラジカル放出器10は、例えば本体部11内の下部に、クリーニングガスを導入するクリーニングガス導入室(以下、「ガス導入室」という。)14が設けられている。
このガス導入室14は、例えばその下部に、供給管7の一方の端部に接続され分岐されたガス導入管7cが接続され、このガス導入管7cによってガス導入室14の周囲からガス導入室14内にクリーニングガスを導入するように構成されている。
【0019】
一方、供給管7の他方の端部は、真空槽12の外部に設けられたクリーニングガス供給部8に接続されている。
本実施の形態の場合、供給管7の中腹部分に絶縁性材料からなる絶縁管7aが設けられ、本体部11を電気的にフローティング状態にさせている。同時にラジカル放出器10のガス導入室14がクリーニングガス供給部8に対して電気的に絶縁された状態になっている。
【0020】
クリーニングガス供給部8は、クリーニングガス供給源8Aと放電補助ガス供給源8Bとを有している。
クリーニングガス供給源8Aは、反応ガスを供給する反応ガス源8aを有し、この反応ガス源8aが流量調整部8b及びバルブ8cを介して供給管7に接続されている。
【0021】
本発明の場合、反応ガスとしては、例えば、水素(H2)ガス、酸素(O2)ガス、オゾン(O3)ガス、フッ素(F)ガス、塩素(Cl2)ガス、臭素(Br2)ガス、三フッ化窒素(NF3)ガス、三フッ化塩素(ClF3)ガス、4フッ化炭素(CF4)ガス、三フッ化メタン(CHF3)ガス、六フッ化エタン(C26)ガス、八フッ化プロパン(C38)ガス、ジフルオロメタン(CH22)ガス、二酸化炭素(CO2)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、一酸化二窒素(N2O)ガス、三塩化ホウ素(BCl3)ガス等を好適に用いることができる。
【0022】
これらのうちでも、クリーニングする材料(膜)の種類によって適性の良いガスを用いるとより効果的である。
一方、放電補助ガス供給源8Bは、放電補助ガスを供給する放電補助ガス源8dを有し、この放電補助ガス源8dが流量調整部8e及びバルブ8fを介して供給管7に接続されている。
【0023】
本発明の場合、放電補助ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガス、アルゴン(Ar)ガス、ネオン(Ne)ガス等を好適に用いることができる。
これらのうちでも、上記反応ガスをイオン化しやすくする観点からは、対応する放電補助ガスを用いるとより効果的である。
【0024】
一方、真空槽12内のラジカル放出器10の上方には、導電性の金属(Al、Cu等)からなるマスクホルダー6Aによって密着保持されたマスク6が配置され、真空槽12の外部に設けられたバイアス電源13aからマスクホルダー6Aに対し所定の交流電力(50Hz〜2MHz)を印加するように構成されている。
【0025】
本発明においては、例えば液体の冷媒を循環させる構成の冷却手段(図示せず)をマスクホルダー6Aの内部又はマスクホルダー6Aの表面に設けることも効果的である。
このような冷却手段を設ければ、クリーニング時にプラズマが照射されるマスク6を低温に保持することができるという効果がある。
【0026】
そして、ラジカル放出器10のガス導入室14のマスク6側の部分には、面状の、例えば平板(面)状のシャワープレート15が設けられている。このシャワープレート15には、マスク6の大きさに対応する領域に、多数のガス放出口15aが設けられている。
【0027】
さらに、ラジカル放出器10のシャワープレート15のマスク6側には、シャワープレート15に対応する大きさ及び形状を有する平板(面)状のメッシュ状部材(ラジカル放出部材)16が設けられている。
【0028】
メッシュ状部材16は、例えばステンレス等の導電性の材料からなり、接地されている。そして、このメッシュ状部材16は、絶縁部17を介してラジカル放出器10の本体部11の上部に取り付けられている。
【0029】
なお、メッシュ状部材16は、1枚のメッシュから構成してもよいし、複数枚のメッシュを重ねて構成することもできる。複数枚のメッシュを重ねて構成した場合には、プラズマやラジカルが更に均一化されるため、より均一的なラジカル等が得られるという効果がある。
【0030】
このような構成を有する本実施の形態においてマスク6表面のクリーニングを行う場合には、真空槽12内を所定の圧力にした状態で、クリーニングガス供給部8から供給管7及びガス導入管7cを介して反応ガスと放電補助ガスをラジカル放出器10のガス導入室14内に導入する。
【0031】
そして、高周波電源13からラジカル放出器10のシャワープレート15に対して高周波電力を印加するとともに、バイアス電源13aからマスクホルダー6Aを介してマスク6に対し所定の交流電力を印加することにより、ラジカル放出器10のシャワープレート15とメッシュ状部材16の間の空間、すなわち、プラズマ形成室18内において、クリーニングガスを放電させてプラズマ化する。
【0032】
その結果、プラズマ形成室18内のクリーニングガスのプラズマのうち特に中性の活性種(ラジカル種)が、メッシュ状部材16を通過してマスク6に向って放出され、このラジカル種がマスク6表面の各領域の有機材料等と反応し、これによりマスク6全表面のクリーニングが行われる。
【0033】
以上述べた本実施の形態においては、シャワープレート15とメッシュ状部材16の間のプラズマ形成室18においてクリーニングガスのプラズマを形成してマスク6と同等の大きさ及び形状のメッシュ状部材16から中性のラジカル種をマスク6に向って放出するようにしたことから、大型のマスク6に対してクリーニングを行う場合にマスク6上の各領域において均一で効率的な表面処理を行うことができ、また、成膜材料等に影響を与えることもない。
【0034】
さらに、本実施の形態によれば、クリーニングガスのプラズマを高密度で形成することができるので、マスク6に対して高速且つ効率良くクリーニングを行うことができる。
【0035】
また、本実施の形態においては、メッシュ状部材16がフローティング状態となっており、このメッシュ状部材16によって一定量のイオンを捕捉するとともに、バイアス電源13aからマスク6に対して低周波の交流電力を印加することから、プラズマ中のイオンがマスク6へ到達することを抑制するとともにイオンのエネルギーを低減することができ、これによりマスク6に対するイオンの衝撃を抑制してダメージを最小限にすることができる。
【0036】
さらにまた、本実施の形態によれば、マスク6が装着される基板5上に真空蒸着によって材料を蒸着する前に、クリーニング装置20のラジカル放出器10からクリーニングガスのラジカルを放出してマスク6の表面のクリーニングを行えば、常にクリーニングされたマスク6を用いて高精細の蒸着を行うことが可能になる。
【0037】
図4(a)(b)は、本発明の他の実施の形態を示すものであり、図4(a)は横断面図、図4(b)は縦断面図である。また、図5は、同実施の形態におけるノズル部の構成を示す拡大正面図である。
以下、上記実施の形態と対応する部分には、同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0038】
図4(a)(b)に示すように、本実施の形態のクリーニング装置20cは、円形形状のマスク6cに対してクリーニングを行うもので、円筒形状の真空槽12を有している。
そして、ラジカル放出器10cの本体部11cが円筒形状に形成されるとともに、円形形状のシャワープレート15c及びメッシュ状部材16cをそれぞれ有している。
【0039】
さらに、本実施の形態においては、円筒形状に形成されたガス導入室14cの中央部に、クリーニングガスを放射状に放出するノズル部19が設けられている。
図5に示すように、本実施の形態におけるノズル部19は、供給管7の先端部に接続された円筒形状のノズル本体部19aを有し、このノズル本体部19aの側面に、複数のガス放出口19bが設けられている。
【0040】
このような構成を有する本実施の形態によれば、ノズル部19から放射状にクリーニングガスを放出してラジカル放出器10c内に導入するようにしたことから、より均一なプラズマを生成することができ、これにより円形形状のマスク6c表面に対してより均一なプラズマ処理を行うことができる。
【0041】
その他の構成及び作用効果については上述の実施の形態と同一であるのでその詳細な説明を省略する。
図6は、本発明の他の実施の形態を示す縦断面図であり、以下、上記実施の形態と対応する部分には、同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0042】
図6に示すように、本実施の形態のクリーニング装置20Lは、真空槽12内に、細長形状に形成された本体部11Lを有するリニア方式のラジカル放出器10Lが設けられている。
そして、本実施の形態においては、マスク6及びマスクホルダー6Aが、一体となってラジカル放出器10Lの上方を、ラジカル放出器10Lの延びる方向と直交する方向に例えばレール(図示せず)によって連続的に搬送するように構成されている。
【0043】
そして、本体部11Lの上部には、高周波電源13から高周波電力が印加されるシャワープレート15Lが設けられ、シャワープレート15Lの上方には、電位的にフローティング状態にされているメッシュ状部材16Lが設けられている。
【0044】
本実施の形態においては、上記実施の形態と同様に、供給管7を介してクリーニングガスをガス導入室14L内に導入し、高周波電源13から高周波電力を印加することにより、プラズマ形成室18L内においてクリーニングガスのプラズマを生成し、中性のラジカル種をマスク6に向って放出する。
【0045】
このような構成を有する本実施の形態によれば、クリーニング装置の大きさを小さくすることができるため、コストを抑えることができ、また、所謂インライン装置に適用することができる。
【0046】
図7〜図9は、本発明に係るクリーニング装置の他の実施の形態を示すものであり、図7は同実施の形態におけるラジカル放出器の外観構成を示す斜視図、図8は、同実施の形態におけるラジカル放出器の内部構成を示す概略図、図9は、同実施の形態におけるラジカル放出器の水平方向拡散部の内部構成を示す概略図である。
以下、上記実施の形態と対応する部分には、同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0047】
本実施の形態のラジカル放出器10Aは、上述した真空槽12内に設けられるもので、図7に示すように、クリーニングガスを水平方向に導いて拡散させる水平方向拡散部10Hと、クリーニングガスを鉛直方向に導いて拡散させる鉛直方向拡散部10Vとを有している。
【0048】
ここで、ラジカル放出器10Aは、例えば導電性の金属からなる断面矩形状の複数のボックスセルを組み合わせることにより構成された複数のガス分岐ユニットを用いるもので、本実施の形態の場合は、一つのガス分岐ユニットからなる水平方向拡散部10Hの上部に、複数のガス分岐ユニットを並べて構成される鉛直方向拡散部10Vが取り付けられて一体的に構成されている。
【0049】
図7〜図9に示すように、水平方向拡散部10Hは、クリーニングガスの導入側から放出側に向って、拡散室として、複数段(本例では4段)の第1〜第4の拡散室21、22、23、24がこの順序で設けられている。
【0050】
そして、本実施の形態においては、以下に説明するように、クリーニングガスの導入側から放出側に向って2n−1個(nは自然数)で増加する数の第1〜第5連通口31〜35が設けられている。
ここで、第1の拡散室21には、上述した供給管7が接続され、一つの第1連通口31を介してクリーニングガスが導入されるように構成されている。
【0051】
第1の拡散室21は、そのクリーニングガス放出側の部分(第2の拡散室22のクリーニングガス導入側の部分)に設けられた二つの第2連通口32を介して第2の拡散室22に接続されている。
【0052】
本発明の場合、特に限定されることはないが、クリーニングガスの逆流れを生じさせない、即ち圧力勾配を保持する観点からは、第2連通口32のそれぞれの面積の和が、第1連通口31の面積の和より大きくならない(小さくなる)ように設定することが好ましい。
【0053】
更には、クリーニングガス流を均等に分配する観点からは、同一段における連通口の面積並びに形状を同一にすること、本実施の形態では第1〜第5連通口31〜35の面積並びに形状を同一にすることがより好ましい。
【0054】
また、第2連通口32は、第2の拡散室22のクリーニングガス放出側の部分と対向するように位置が設定されており、これによりクリーニングガスが第2の拡散室22のクリーニングガス放出側の壁部に衝突してクリーニングガスの拡散が促進されるように構成されている(図8においては、理解を容易にするため、第2連通口32及び第3連通口33の位置が重なるように描かれている)。
【0055】
さらに、本実施の形態においては、二つの隔壁部22aによって第2の拡散室22が二つの領域に仕切られ、各領域の雰囲気が互いに隔離されている。これら隔壁部22aはクリーニングガスが衝突することによってその拡散を促進するために有効となるものである。
【0056】
なお、本発明の場合、隔壁部22aを設ける位置は特に限定されることはないが、クリーニングガスをより均一に拡散させる観点からは、隔壁部22aによって隔離される第2の拡散室22の各領域の容積及びクリーニングガスの通過速度が等しくなる位置に設けることが好ましい。
【0057】
第2の拡散室22は、そのクリーニングガス放出側の部分(第3の拡散室23のクリーニングガス導入側の部分)に設けられた四つの第3連通口33を介して第3の拡散室23に接続されている。
【0058】
本発明の場合、特に限定されることはないが、クリーニングガスの逆流れを生じさせない、即ち圧力勾配を保持する観点からは、第3連通口33のそれぞれの面積の和が、上述した第2連通口32の面積の和より大きくならない(小さくなる)ように設定することが好ましい。
【0059】
また、第3連通口33は、第3の拡散室23のクリーニングガス放出側の部分と対向するように位置が設定されており、これにより導入されたクリーニングガスが第3の拡散室23のクリーニングガス放出側の壁部に衝突してクリーニングガスの拡散が促進されるように構成されている(図8においては、理解を容易にするため、第3連通口33及び第4連通口34の位置が重なるように描かれている)。
【0060】
また、本実施の形態においては、第3の拡散室23が例えば六つの隔壁部23aによって四つの領域に仕切られ、各領域の雰囲気が互いに隔離されている。これらの隔壁部23aはクリーニングガスが衝突することによってその拡散を促進するために有効となるものである。
【0061】
なお、本発明の場合、隔壁部23aを設ける位置は特に限定されることはないが、クリーニングガスをより均一に拡散させる観点からは、隔壁部23aによって仕切られる第3の拡散室23の各領域の容積及びクリーニングガスの通過速度が等しくなる位置に設けることが好ましい。
【0062】
さらに、第3の拡散室23のクリーニングガス放出側の部分には、第4の拡散室24が設けられている。
ここで、第4の拡散室24は、そのクリーニングガス導入側の部分(第3の拡散室23のクリーニングガス放出側の部分)に設けられた八つの第4連通口34を介して第4の拡散室24に接続されている。
【0063】
本発明の場合、特に限定されることはないが、クリーニングガスの逆流れを生じさせない、即ち圧力勾配を保持する観点からは、第4連通口34のそれぞれの面積の和が、上述した第3連通口33の面積の和より大きくならない(小さくなる)ように設定することが好ましい。
【0064】
また、第4連通口34は、第4の拡散室24のクリーニングガス放出側の部分と対向するように位置が設定されており、これによりクリーニングガスが第4の拡散室24のクリーニングガス放出側の壁部に衝突してクリーニングガスの拡散が促進されるように構成されている。
【0065】
さらに、本実施の形態においては、第4の拡散室24が七つの隔壁部24aによって八つの領域に仕切られ、各領域の雰囲気が互いに隔離されている。これらの隔壁部24aはクリーニングガスが衝突することによってその拡散を促進するために有効となるものである。
【0066】
なお、本発明の場合、隔壁部24aを設ける位置は特に限定されることはないが、クリーニングガスをより均一に拡散させる観点からは、隔壁部24aによって仕切られる第4の拡散室24の各領域の容積及びクリーニングガスの通過速度が等しくなる位置に設けることが好ましい。
【0067】
図9に示すように、本実施の形態では、水平方向拡散部10Hの第4の拡散室24が、第4の拡散室24のクリーニングガス放出側に設けられた複数(本例では16個)の第5連通口35を介して連結室50にそれぞれ接続されている。
【0068】
また、図7及び図8に示すように、各連結室50は、それぞれ鉛直(Z軸)方向に延びるように形成されており、各連結室50の上部には、上述したガス分岐ユニットから構成されるラジカル放出器10Aの鉛直方向拡散部10Vが設けられている。
【0069】
本実施の形態では、ラジカル放出器10Aの鉛直方向拡散部10Vは、複数個(本例では16個)のクリーニングガス分岐ユニットから構成されている。
ここで、各連結室50は、その上部に設けられた第1連通口61を介して第1の拡散室51に接続されている。
【0070】
図8に示すように、ラジカル放出器10Aの鉛直方向拡散部10Vは、クリーニングガスの導入側から放出側に向って2n−1個(nは自然数)で増加する数の第2〜第4連通口62〜64が設けられている。
【0071】
ここで、ラジカル放出器10Aの鉛直方向拡散部10Vの第1〜第4の拡散室51〜54並びに第2〜第4連通口62〜64は、上述した水平方向拡散部10Hの第1〜第4の拡散室21〜24並びに第2〜第4連通口32〜34に対応するもので、それぞれ同一の構成を有し、同一の条件で設けられている。
【0072】
また、隔壁部52a、53a、54aについても、上述した水平方向拡散部10Hの隔壁部22a、23a、24aに対応するもので、それぞれ同一の構成を有し、同一の条件で設けられている。
一方、第4の拡散室54の上部には、クリーニングガスを放出するためのガス放出口15aが複数個(本例では16個)設けられている。
【0073】
これらのガス放出口15aは、各ガス分岐ユニットの第4の拡散室54の各上部において、所定の間隔で水平方向である矢印Y方向に沿って配置され、これによりシャワープレート15が構成されるようになっている。
【0074】
本発明の場合、ガス放出口15aの間隔は特に限定されることはないが、表面処理の均一性を確保する観点からは、等間隔で設けることが好ましい。
そして、図7に示すように、第4の拡散室54の上方には、絶縁性材料からなる接続部7aを介して上述したメッシュ状部材16が設けられている。
【0075】
このような構成を有する本実施の形態においてマスク6表面のクリーニングを行う場合には、上述した真空槽12内を所定の圧力にした状態で、上述したクリーニングガス供給部8から供給管7を介して反応ガスと放電補助ガスをラジカル放出器10Aの水平方向拡散部10Hの第1の拡散室21内に導入する。
【0076】
これにより、クリーニングガスは、水平方向拡散部10Hにおいて、第1〜第4の拡散室21〜24並びに第1〜第4連通口31〜34を通過してそれぞれ拡散された後、第5連通口35を介して各ガス分岐ユニットの連結室50内にそれぞれ導入される。
【0077】
そして、各連結室50内のクリーニングガスは、鉛直方向拡散部10Vの第1の拡散室51内に導入され、さらに、それぞれ第2〜第4の拡散室52〜54並びに第2〜第4の連通口62〜64を通過してそれぞれ拡散された後、ガス放出口15aを介してプラズマ形成室18内に導入される。
この状態で、上述した高周波電源13から高周波電力をシャワープレート15に印加することにより、プラズマ形成室18内において、クリーニングガスの放電が行われる。
【0078】
これにより、クリーニングガスのプラズマのうち特に中性の活性種(ラジカル種)が、メッシュ状部材16からマスク6に向って面状に放出される。その結果、このラジカル種がマスク6表面の各領域の有機物等と反応して、マスク6全表面のクリーニングが行われる。
【0079】
以上述べたように本実施の形態によれば、ラジカル放出器10Aが、水平方向拡散部10Hと、鉛直方向拡散部10Vを有し、これら水平方向拡散部10H並びに鉛直方向拡散部10Vは、当該クリーニングガスの導入側から放出側に向って段階的に区分けされた第1〜第4の拡散室21〜24並びに第1〜第4の拡散室51〜54を有するとともに、当該第1〜第4の拡散室21〜24並びに第1〜第4の拡散室51〜54は、互いに隣接する拡散室がクリーニングガスが通過可能な第2〜第5連通口32〜35並びに第1〜第4連通口61〜64を介して接続され、鉛直方向拡散部10Vの最終段の第4の拡散室54が、当該クリーニングガスが通過可能なガス放出口15aを介してそれぞれプラズマ室18に接続されていることから、水平方向拡散部10H及び鉛直方向拡散部10Vにおいてクリーニングガスを確実に拡散した後に、プラズマ形成室18においてクリーニングガスを十分に混合することができる。
【0080】
その結果、本実施の形態によれば、例えば大型基板に対応するマスク6に対してクリーニングを行う場合に当該マスク6上の各領域における均一な分布の処理を行うことができる。
さらに、本実施の形態においては、クリーニングガス拡散部10は、クリーニングガスを導く方向が異なる水平方向拡散部10H及び鉛直方向拡散部10Vを有することから、クリーニングガスの分散拡散回数が多く、例えば曲管によってクリーニングガスを分流する場合に比べ、クリーニングガスの流量が均一即ち一定になるため、より均一な表面処理を行うことができる。
【0081】
加えて、本実施の形態においては、ボックスセルを用いてラジカル放出器10Aを構成しているので、コンパクトで構成が簡素なクリーニング装置を提供することができる。
その他の構成及び作用効果については上述の実施の形態と同一であるのでその詳細な説明を省略する。
【0082】
図10(a)(b)は、図7〜図9に示す実施の形態におけるラジカル放出器の他の例を示す概略構成図であり、以下、上記実施の形態と対応する部分には、同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0083】
図10(a)(b)に示すように、本例のラジカル放出器10Bは、水平方向拡散部10Hにおける第1〜第4の拡散室21〜24並びに鉛直方向拡散部10Vの第1〜第4の拡散室51〜54において、隔壁部を設けないものであり、その他の構成は上述したガス分岐ユニットと同一の構成を有している。
【0084】
このような構成を有する本例のラジカル放出器10Bによれば、より構成が簡素でコストを抑えることができる。
ただし、クリーニングガスをより均一に拡散及び混合を行う観点からは、図7〜図9に示す実施の形態のように、ラジカル放出器10Aの水平方向拡散部10Hにおける第1〜第4の拡散室21〜24並びに鉛直方向拡散部10Vの第1〜第4の拡散室51〜54において、隔壁部を設けることが好ましい。その他の構成及び作用効果については上記実施の形態と同一であるのでその詳細な説明を省略する。
【0085】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、図6に示す実施の形態においては、マスク6を移動させるようにしたが、本発明はこれに限られず、ラジカル放出器10Lを移動させることもできる。
【0086】
ただし、装置構成の簡素化及び生産効率を向上させる観点からは、上記実施の形態のように、マスク6を移動させることが好ましい。
また、図7〜図9に示す実施の形態においては、水平方向拡散部10Hの上部に鉛直方向拡散部10Vを設けるようにしたが、本発明はこれに限られず、水平方向拡散部10Hの下部に鉛直方向拡散部10Vを設けることも可能である。
【0087】
この場合には、クリーニングガスを下方に放出する構成のクリーニング装置を得ることができる。
また、水平方向拡散部10Hに導入されたクリーニングガスを例えば水平方向に放出するように構成することもできる。
【0088】
一方、拡散室に設ける連通口の数は上記実施の形態のものには限られず、適宜変更することができる。
ただし、クリーニングガスを確実に拡散する観点からは、プラズマ形成室の底部に8個以上の連通口を設けることが好ましい。
【0089】
さらにまた、水平方向拡散部10Hについては、水平方向に設置する場合のみならず、成膜用マスクの配置方向に応じて、傾斜させて設置したり、鉛直方向に向けて設置することもできる。
【0090】
加えて、上述した各実施の形態においては、ラジカル放出部材としてメッシュ状部材を用いた場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限られず、メッシュ状部材の代わりにノズルプレートを用いることもできる。
【0091】
この場合、メッシュ状部材の代わりにノズルプレートを用い、対向するノズルプレートのノズル孔とシャワープレートのガス放出口を千鳥状に配置すれば、より確実にクリーニングガスを拡散させることができる。
また、複数のノズルプレートを用い、対向するノズルプレートのノズル孔を千鳥状に配置することによっても、より確実にクリーニングガスを拡散させることができる。
【符号の説明】
【0092】
1…有機EL製造装置
6…マスク(成膜用マスク)
8…クリーニングガス供給部
10…ラジカル放出器(面状のラジカル放出器)
11…本体部
13…高周波電源
13a…バイアス電源
15…シャワープレート
16…メッシュ状部材(面状のラジカル放出部材)
18…プラズマ形成室
20…クリーニング装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜用マスクが配置される真空槽と、
前記真空槽の外部に設けられたクリーニングガス供給源と、
前記クリーニングガス供給源から供給されたクリーニングガスを放電させ、当該クリーニングガスのラジカルを前記成膜用マスクに向って放出するためのラジカル放出器とを備え、
前記ラジカル放出器は、前記クリーニングガス供給源から供給されたクリーニングガスを導入するクリーニングガス導入室を有し、
当該クリーニングガス導入室の前記成膜用マスク側に、導電体からなる面状のシャワープレートが設けられるとともに、
当該クリーニングガス導入室の前記シャワープレートの前記成膜用マスク側には、前記シャワープレートに対応する大きさ及び形状の導電体からなる面状のラジカル放出部材が設けられ、
前記シャワープレートと前記ラジカル放出部材とが電気的に絶縁されるとともに、当該シャワープレートに高周波電力を印加することにより、当該シャワープレートと当該ラジカル放出部材の間のプラズマ形成室において前記クリーニングガスのプラズマを生成し、前記ラジカル放出部材から前記成膜用マスクに向って当該クリーニングガスのラジカルを放出するよう構成されているクリーニング装置。
【請求項2】
前記ラジカル放出部材が、メッシュ状部材からなる請求項1記載のクリーニング装置。
【請求項3】
前記メッシュ状部材が、複数枚のメッシュを重ねて構成されている請求項2記載のクリーニング装置。
【請求項4】
前記ラジカル放出部材が接地されるとともに、前記成膜用マスクに対してバイアス電力を印加するためのバイアス電源を有する請求項1乃至3のいずれか1項記載のクリーニング装置。
【請求項5】
前記クリーニングガス導入室内に、前記クリーニングガスを前記ラジカル放出器内に導入する手段として、放射状にクリーニングガスを放出するノズル部が設けられている請求項1乃至4のいずれか1項記載のクリーニング装置。
【請求項6】
前記ラジカル放出器は、
、前記クリーニングガス供給源から供給されたクリーニングガスを拡散するための複数のクリーニングガス拡散部を有し、
前記複数のクリーニングガス拡散部は、当該クリーニングガスの導入側から放出側に向って段階的に区分けされ且つ互いの雰囲気が隔離された複数の拡散室を有するとともに、当該複数の拡散室は、互いに隣接する拡散室が前記クリーニングガスが通過可能な連通口を介して接続され、さらに、当該複数の拡散室のうち最終段の拡散室が、前記クリーニングガスが通過可能な連通口を介してそれぞれ前記プラズマ形成室に接続されている請求項1乃至5のいずれか1項記載のクリーニング装置。
【請求項7】
前記面状のクリーニングガス放出器におけるクリーニングガス拡散部の複数の拡散室に、互いの雰囲気を隔離するための隔壁部が設けられている請求項6記載のクリーニング装置。
【請求項8】
前記面状のクリーニングガス放出器におけるクリーニングガス拡散部の複数の連通口は、前記クリーニングガスの導入側から放出側に向って2n−1個(nは自然数)で増加するように構成されている請求項6又は7のいずれか1項記載のクリーニング装置。
【請求項9】
成膜用マスクが配置される真空槽と、
前記真空槽の外部に設けられたクリーニングガス供給源と、
前記クリーニングガス供給源から供給されたクリーニングガスを放電させ、当該クリーニングガスのラジカルを前記成膜用マスクに向って放出するためのラジカル放出器とを備え、
前記ラジカル放出器は、前記クリーニングガス供給源から供給されたクリーニングガスを導入するクリーニングガス導入室を有し、
当該クリーニングガス導入室の前記成膜用マスク側に、導電体からなる細長形状のシャワープレートが設けられるとともに、
当該クリーニングガス導入室の前記シャワープレートの前記成膜用マスク側には、前記シャワープレートに対応する大きさ及び形状の導電体からなる細長形状のラジカル放出部材が設けられ、
前記成膜用マスクが、前記ラジカル放出器の延びる方向に対して直交する方向へ相対的に移動するように構成され、
前記シャワープレートと前記ラジカル放出部材とが電気的に絶縁されるとともに、当該ラジカル放出部材に所定の電力を印加することにより、当該シャワープレートと当該ラジカル放出部材の間のプラズマ形成室において前記クリーニングガスのプラズマを生成し、前記ラジカル放出部材から前記成膜用マスクに向って当該クリーニングガスのラジカルを放出するよう構成されているクリーニング装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載のクリーニング装置を用い、真空中で成膜用マスクの表面に対してクリーニングを行う方法であって、
前記成膜用マスクが装着される基板上に真空蒸着によって有機材料を蒸着する前に、前記クリーニング装置のラジカル放出器から前記クリーニングガスのラジカルを放出して当該成膜用マスクの表面のクリーニングを行う工程を有するクリーニング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−102341(P2012−102341A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248843(P2010−248843)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】