説明

クリーニング部材、画像形成装置およびクリーニング方法

【課題】装置の簡易化とクリーニング部材の装着作業の簡易化の両立を図ることを目的とする。
【解決手段】クリーニング部材100は、装置本体に着脱可能となるプロセスユニットに設けられる感光ドラムをクリーニングするための部材であり、感光ドラムに接触するシート状のクリーニング部110と、クリーニング部110の両端側に設けられ、プロセスユニットの一対の部位に取り付けられる一対の取付部120,130と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光ドラムをクリーニングするためのクリーニング部材と、このクリーニング部材を取り付けることが可能なプロセスユニットを有する画像形成装置と、クリーニング部材による感光ドラムのクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、搬送ローラをクリーニングするクリーニング部材として、画像形成装置の装置本体に設けられたフックに係止される係止孔が形成されたクリーニングシートが知られている(特許文献1参照)。具体的に、この技術では、装置本体に、用紙の搬送経路へ出没可能なフックと、係止孔を検知するセンサとが設けられている。
【0003】
そして、この技術では、クリーニングシートを各搬送ローラで搬送している途中で、センサで係止孔が検知されると、フックが搬送経路中に飛び出して係止孔に入り込み、クリーニングシートの動きが止められる。これにより、止まったクリーニングシートに対して搬送ローラが摺動することで、当該搬送ローラがクリーニングされる。なお、トナー像を担持する感光ドラムも用紙を搬送する機能を有するため、前述したクリーニングシートで感光ドラムをクリーニングすることも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−92834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した技術では、係止孔を検知するセンサや、出没可能なフックを設ける必要があるので、装置が複雑になるといった問題があった。これに対し、センサ等を設けない場合には、装置が簡易になるが、装置本体の開口から内部に手を入れ、クリーニングシートの係止孔を装置本体の一部に係止させる必要があるので、その装着作業が煩雑となるといった問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、装置の簡易化とクリーニング部材の装着作業の簡易化の両立を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明は、装置本体に着脱可能となるプロセスユニットに設けられる感光ドラムをクリーニングするためのクリーニング部材であって、感光ドラムに接触するシート状のクリーニング部と、クリーニング部の両端側に設けられ、プロセスユニットの一対の部位に取り付けられる一対の取付部と、を有していることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、装置本体から取り外したプロセスユニットにクリーニング部材の一対の取付部を装着すればよいので、従来のようなフックやセンサが不要となり、装置を簡易化することができる。また、装置本体から取り外したプロセスユニットにクリーニング部材を装着すればよいので、装置本体の開口から内部に手を入れてクリーニング部材を装置本体に装着する方法に比べ、クリーニング部材の装着作業が容易になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、装置の簡易化とクリーニング部材の装着作業の簡易化の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラープリンタを簡略化して示す説明図である。
【図2】ドロワを上方から見た斜視図である。
【図3】ドロワを下から見上げた斜視図である。
【図4】クリーニング部材を示す斜視図である。
【図5】ドロワにクリーニング部材を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図6】クリーニング部の層構成を示す説明図(a)と、折り目を示す拡大図(b)である。
【図7】感光ドラムと現像ローラの離間を説明する図である。
【図8】クリーニングモード時の制御を示すフローチャートである。
【図9】印字制御を示すフローチャートである。
【図10】クリーニング部の層構成の変形例を示す説明図(a)〜(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、画像形成装置の一例としてのカラープリンタの全体構成を説明した後、本発明の特徴部分の詳細を説明することとする。
【0012】
以下の説明において、方向は、カラープリンタ使用時のユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1において、紙面に向かって左側を「前側(手前側)」、紙面に向かって右側を「後側(奥側)」とし、紙面に向かって奥側を「左側」、紙面に向かって手前側を「右側」とする。また、紙面に向かって上下方向を「上下方向」とする。
【0013】
図1に示すように、カラープリンタ1は、装置本体10内に、用紙Pを供給する給紙部20と、給紙された用紙Pに画像を形成する画像形成部30と、画像が形成された用紙Pを排出する排紙部90とを備えている。
【0014】
給紙部20は、用紙Pを収容する給紙トレイ21と、給紙トレイ21から用紙Pを画像形成部30へ搬送する用紙搬送装置22を主に備えている。
【0015】
画像形成部30は、スキャナユニット40と、プロセスユニット50と、転写ユニット70と、定着ユニット80とから主に構成されている。
【0016】
スキャナユニット40は、装置本体10内の上部に設けられ、図示しないレーザ発光部、ポリゴンミラー、レンズおよび反射鏡などを備えている。そして、スキャナユニット40では、レーザビームが図の2点鎖線で示す経路を通って、プロセスユニット50の各感光ドラム51の表面上に高速走査にて照射される。
【0017】
プロセスユニット50は、装置本体10の前面に配置されたフロントカバー11を開放することによって形成される開口部10Aを通して、装置本体10に着脱可能となっている。プロセスユニット50は、第1フレームの一例としてのドロワ60と、ドロワ60によって回転可能に支持される4つの感光ドラム51と、各感光ドラム51に対応するようにドロワ60に着脱可能に設けられる第2フレームの一例としての4つの現像カートリッジ52を主に備えている。
【0018】
各感光ドラム51は、プロセスユニット50を装置本体10に装着している状態において、前後方向(所定方向)に沿って配列されている。ドロワ60には、図示しない公知の帯電器などが適宜設けられ、現像カートリッジ52には、感光ドラム51にトナー(現像剤)を供給する現像ローラ53が回転可能に設けられるとともに、公知のトナー収容室、供給ローラ等が設けられている。なお、ドロワ60の構造の詳細については、後で説明する。
【0019】
転写ユニット70は、給紙部20とプロセスユニット50との間に設けられ、公知の駆動ローラ71、従動ローラ72、搬送ベルト73および転写ローラ74を備えている。
【0020】
駆動ローラ71および従動ローラ72は、前後方向に離間して平行に配置され、その間にエンドレスベルトからなる搬送ベルト73が張設されている。搬送ベルト73は、その外側の面が各感光ドラム51に接している。また、搬送ベルト73の内側には、各感光ドラム51との間で搬送ベルト73を挟持する転写ローラ74が、各感光ドラム51に対向して4つ配置されている。この転写ローラ74には、転写時に定電流制御によって転写バイアスが印加される。
【0021】
定着ユニット80は、プロセスユニット50および転写ユニット70の奥側に配置され、加熱ローラ81と、加熱ローラ81と対向配置され加熱ローラ81を押圧する加圧ローラ82とを備えている。
【0022】
このように構成される画像形成部30では、まず、各感光ドラム51の表面が、帯電器により一様に帯電された後、スキャナユニット40で露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、各感光ドラム51上に画像データに基づく静電潜像が形成される。その後、現像カートリッジ52に回転可能に支持される現像ローラ53によって、現像カートリッジ52内のトナー(現像剤)が、感光ドラム51上の静電潜像に供給されることで、感光ドラム51上にトナー像が担持される。
【0023】
次に、搬送ベルト73上に供給された用紙Pが各感光ドラム51と各転写ローラ74との間を通過することで、各感光ドラム51上に形成されたトナー像が用紙P上に転写される。そして、用紙Pが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過することで、用紙P上に転写されたトナー像が熱定着される。
【0024】
排紙部90は、用紙Pを搬送する複数の搬送ローラ91を主に備えている。トナー像が転写され、熱定着された用紙Pは、搬送ローラ91によって搬送され、装置本体10の外部に排出される。
【0025】
<ドロワの構造>
次に、前述したカラープリンタ1内の各感光ドラム51をクリーニングするためのクリーニング部材100(図4参照)について説明する。まず、このクリーニング部材100が取り付けられるドロワ60について詳細に説明する。
【0026】
図2および図3に示すように、ドロワ60は、上方に開口する箱状に形成されており、その底部に、4つの感光ドラム51が下方(外部)に露出するように配置されている。また、ドロワ60内には、前後に間隔を空けて配置される3つの仕切り壁61が設けられており、これにより、ドロワ60内に、4つの現像カートリッジ52を装着するための4つの装着空間60Aが形成されている。
【0027】
また、図3に示すように、ドロワ60の前壁62には、ユーザの指をかける部分である凹状の前側取手部62Aが設けられている。また、図2に示すように、ドロワ60の後壁63の上端には、ユーザの指をかける部分であるコ字状の後側取手部63Aが上方に突出するように設けられている。
【0028】
具体的には、図3に示すように、前側取手部62Aは、下方に開口する凹状に形成されており、その内部にユーザの指を下から挿入することが可能となっている。また、図2に示すように、後側取手部63Aは、下方に開口するコ字状に形成されており、この後側取手部63Aと後壁63の上端とで形成される穴63Bにユーザの指を前後方向から挿入することが可能となっている。
【0029】
また、ドロワ60の前壁62の内側下部には、クリーニング部材100の後述する取付部120(詳しくは、係合部123)が取り付けられる被取付部64が形成されている。被取付部64は、鉤状部64Aと、この鉤状部64Aの左右に隣接して配置される一対の凹部64B,64Cとで構成されている。
【0030】
鉤状部64Aは、先端が鉤状に屈曲するように形成されており(図3参照)、一対の凹部64B,64Cはそれぞれ異なる幅で形成されている。そのため、被取付部64が、左右に(クリーニング部材100の係合部123を取り付ける方向から見て)非対称な形状で形成されるので、後述する非対称形状の係合部123の下端部123Aが誤って被取付部64に取り付けられることが防止されている。すなわち、クリーニング部材100を誤って表裏逆にしてドロワ60に取り付けてしまうのを防止することが可能となっている。
【0031】
<クリーニング部材の構造>
次に、図4を参照して、クリーニング部材100の構造を説明する。
図4に示すように、クリーニング部材100は、4つの感光ドラム51に接触可能な大きさで形成されるシート状のクリーニング部110と、クリーニング部110の前後方向の両端側に設けられる一対の取付部120,130とを有している。そして、クリーニング部材100は、図5に示すように、クリーニング部110が4つの感光ドラム51の外部に露出した部分(図3参照)に接触した状態で、一対の取付部120,130がドロワ60の前後端側の部位(被取付部64と後側取手部63A)に外側から回り込むようにして取り付けられる。
【0032】
クリーニング部110は、図6(a)に示すように、一対の取付部120,130に連結されるシート状の基層111と、基層111に固着される複数の中間層112と、各中間層112の表面112Aに設けられ、研磨材を有する複数の研磨層113と、を有している。
【0033】
基層111は、クリーニング時において搬送ベルト73と摺接する部位であり、例えば紙などの中間層112よりも帯電し難い材料(中間層112とは異なる材料)で形成されている。そして、このように基層111が帯電し難い材料で形成されることで、搬送ベルト73との摺接により基層111が帯電して搬送ベルト73に貼り付くことが抑制されている。
【0034】
中間層112は、樹脂などの研磨層113の形成が容易となる材料で形成されており、各感光ドラム51に対応するように前後に所定の間隔を空けて複数配置されている。具体的に、クリーニング部材100をドロワ60に取り付けた状態において、中間層112の前後方向における中心位置CPが、対応する感光ドラム51の回転軸線51Aよりも、回転する感光ドラム51から力を受ける方向(後方)とは反対方向(前方)に偏って配置されている。
【0035】
研磨層113は、中間層112の表面全体に形成されている。これにより、研磨層113の中心位置CPも、中間層112と同様に感光ドラム51の回転軸線51Aからずれて配置されている。そして、このように研磨層113の中心位置CPが回転軸線51Aよりも前方に偏って配置されることで、クリーニング時(感光ドラム51の回転時)に、感光ドラム51からの力を受けて研磨層113が感光ドラム51から後方に外れてしまうのを抑制することが可能となっている。
【0036】
また、基層111の略中央部111A(感光ドラム51と対向しない部位)には、図6(b)に示すように、上方(感光ドラム51側)に向けて凸状にクリーニング部110を折り曲げ可能にするための折り目111Bがついている。これにより、クリーニング部材100の未使用時には、折り目111Bを基準にしてクリーニング部材100を折り畳んで、コンパクトに収容することが可能となっている。
【0037】
また、感光ドラム51と対向しない位置に折り目111Bが形成されるので、折り目111Bで感光ドラム51が傷付くのを防止することが可能となっている。さらに、折り目111Bが上を向いているので、折り目111Bで搬送ベルト73が傷付くのを防止することも可能となっている。
【0038】
図4に示すように、一対の取付部120,130は、それぞれ異なる形状に形成されている。これにより、一対の取付部120,130を誤って前後逆にしてドロワ60に取り付けてしまうのを防止することが可能となっている。
【0039】
具体的に、一対の取付部120,130のうち前側の取付部120は、ドロワ60の前壁62を覆うように延びる前側延在部121と、前側延在部121の上端から略後方に延びる装着規制部122と、装着規制部122の略中央部を切り曲げして形成される係合部123とを備えている。
【0040】
前側延在部121は、その下端が基層111に固着されており、その下端付近には、図3に示すドロワ60の前側取手部62A(詳しくは前側取手部62Aの開口)を外部に露出させるための開口部121Aが形成されている。これにより、クリーニング部材100をドロワ60に取り付けた状態においても、ユーザがドロワ60の前側取手部62Aを掴むことができるので、操作性を向上させることが可能となっている。
【0041】
装着規制部122は、図5に示すように、クリーニング部材100がドロワ60に取り付けられた状態において、現像カートリッジ52の装着空間60Aに迫り出すように、前側延在部121から折り曲げられて形成されている。これにより、クリーニング部材100をドロワ60に取り付けた際には、所定の現像カートリッジ52をドロワ60に装着することができないようになっている。
【0042】
ここで、所定の現像カートリッジ52としては、内部にモノクロ印字用のトナー(例えばブラックのトナー)が収納されているカートリッジを採用するのが望ましい。この理由としては、一般に、カラープリンタ1では、モノクロ印字用の現像カートリッジ52内にトナーが入っていないと、印字制御を禁止するようになっているからである。すなわち、後で詳述するように、クリーニング部材100をドロワ60に取り付けた場合には、モノクロ印字用の現像カートリッジ52をドロワ60に取り付けられないようにすることで、クリーニング部材100に誤って印字してしまうことを防止することが可能となっている。
【0043】
係合部123は、装着規制部122に形成された穴122Aの前側の縁から略下方に折り曲げられており、その下端部123A(先端部)には、ドロワ60の鉤状部64Aに係合する係合孔123Bが形成されている。そして、この係合孔123Bは、下端部123Aに対して右側に偏るように形成されている。
【0044】
これにより、下端部123Aのうち係合孔123Bの左右両側の部位の幅が、前述した一対の凹部64B,64C(図2参照)内に入り込むことが可能な幅となっている。すなわち、係合部123の下端部123Aの形状は、前述した被取付部64(図2参照)と同様に、左右で(係合部123を鉤状部64Aに取り付ける方向から見て)非対称形状に形成されている。
【0045】
後側の取付部130は、ドロワ60の後壁63を覆うように延びる後側延在部131と、後側延在部131の上端から前方に延びる上壁部132とを備えている。
【0046】
後側延在部131は、側面視で略C字状に形成されており、その下端が基層111(図4参照)に固着されている。そして、この後側延在部131の上下方向略中央部から上壁部132の前後方向略中央部にかけて、ドロワ60の後側取手部63Aに前側から係合する略矩形の係合孔132Aが形成されている。
【0047】
係合孔132Aは、その前側の縁が後側取手部63Aに引っ掛かるようになっており、このように引っ掛かった状態において、後側取手部63Aと後壁63の上端とで形成される穴63Bを後方に開口させるように、この穴63Bよりも大きく形成されている。これにより、ドロワ60にクリーニング部材100を取り付けた状態でも、ユーザが後側取手部63Aの穴63Bに後側から手を入れて把持することが可能となるので、操作性を向上することが可能となっている。
【0048】
また、上壁部132のうち係合孔132Aの左右両側には、下方に切り曲げされた取付補助部132Bが1つずつ形成されている。各取付補助部132Bは、上壁部132から下斜め後方に延びるように形成されており、ドロワ60の後壁63に前側から係合するようになっている。これにより、上壁部132が、係合孔132Aによって後側取手部63Aに引っ掛かるだけでなく、一対の取付補助部132Bによって後壁63の上端にも引っ掛かるので、後側の取付部130を確実にドロワ60に取り付けることができる。
【0049】
<カラープリンタの詳細構成>
次に、前述したクリーニング部材100によるクリーニングに関係するカラープリンタ1の構造について説明する。
【0050】
図1に示すように、カラープリンタ1の装置本体10には、制御ユニット200が設けられるとともに、検知部材の一例としての光センサ300が設けられている。具体的に、光センサ300は、現像カートリッジ52に設けられる一方の透過窓を通してトナー収容室に光を通し、他方の透過窓から出てくる光を受光することで、トナー収容室内のトナー量を検知している。
【0051】
また、カラープリンタ1には、図7に示すように、感光ドラム51から現像ローラ53を離間させる接離機構210が設けられている。
【0052】
なお、本実施形態では、ブラック用、イエロー用、マゼンタ用およびシアン用の各色のトナーが入った現像カートリッジ52(52K,52Y,52M,52C)が、用紙Pの搬送方向(図1参照)上流からこの順で並んで配置されているものとする。また、以下の説明や図7においては、トナーの色に対応した感光ドラム51、現像カートリッジ52、現像ローラ53などを特定する場合には、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンのそれぞれに対応させて、K、Y、M、Cの記号を付することとする。
【0053】
制御ユニット200は、CPU,ROM,RAMなどを有し、予め用意されたプログラムに従い、印字指令(印刷データ)の受信、給紙部20、画像形成部30、排紙部90および接離機構210の制御を行うように構成されている。
【0054】
そして、制御ユニット200は、カラーモードを実行する際には、すべての現像ローラ53K,53Y,53M,53Cが、それぞれ対応する感光ドラム51K,51Y,51M,51Cに接触するように、接離機構210を制御している。また、制御ユニット200は、モノクロモードを実行する際には、ブラック用の現像ローラ53Kのみが感光ドラム51Kに接触し、現像ローラ53Kよりも下流側に位置するその他の3色の現像ローラ53Y,53M,53C(他色印字用の現像ローラ)が、対応する感光ドラム51Y,51M,51Cから離間するように、接離機構210を制御している。
【0055】
そして、本実施形態においては、制御ユニット200は、クリーニング部材100で感光ドラム51をクリーニングする場合(以下、「クリーニングモード」ともいう。)には、接離機構210をモノクロモードと同じ様に制御することで、3色の感光ドラム51Y,51M,51Cから現像ローラ53Y,53M,53Cを離間させている。ここで、ブラックの現像ローラ53Kは、クリーニングモードでは、前述したようにドロワ60から取り外されているので、特に離間する必要はない。
【0056】
具体的に、制御ユニット200は、図8に示すフローチャートに従ってクリーニングモードを実行する。
【0057】
図8に示すように、制御ユニット200は、まず、クリーニングモードを開始させる指令があったか否かを判断する(S1)。ここで、「クリーニングモードの指令があったか否かの判断」は、例えば、装置本体10に設けられるクリーニングモードを開始するためのスイッチがユーザによって押されたか否かで判断してもよいし、パソコンから出力されるクリーニングモードを開始するための信号を受信したか否かで判断してもよい。
【0058】
ステップS1において、クリーニングモードの指令があった場合には(Yes)、制御ユニット200は、前述したように現像ローラ53を離間させるとともに(S2)、感光ドラム51を所定時間駆動させる(S3)。これにより、回転する感光ドラム51が、クリーニング部材100の各研磨層113(図6参照)に摺接して、感光ドラム51の表面がクリーニングされる。
【0059】
また、制御ユニット200は、図9に示すフローチャートに従って印字制御を実行する。
【0060】
図9に示すように、制御ユニット200は、まず、印字指令があるか否かを判断する(S11)。ここで、「印字指令」は、装置本体10に設けられるスイッチからの指令であってもよいし、パソコンなどから出力される指令であってもよい。
【0061】
ステップS11において、印字指令があった場合には(Yes)、制御ユニット200は、ブラック用の光センサ300からの信号に基づいて、ブラック用の現像カートリッジ52K内のトナーが所定値以上あるか否かを判断する(S12)。制御ユニット200は、トナーがある場合には(S12;Yes)、印字制御を実行し(S13)、トナーがない場合には(S12;No)、印字制御を禁止して、本制御を終了する。
【0062】
そして、このようなフローで印字制御を行うように構成することで、クリーニング部材100を取り付けたドロワ60を装置本体10に装着している場合には、誤って印字制御に入ることが禁止されている。つまり、前述したように、本実施形態では、ドロワ60にクリーニング部材100を取り付けた場合にはドロワ60にブラック用の現像カートリッジ52Kが装着できないようになっているため、ステップS12でNoと判定されて、印字制御が禁止される。
【0063】
すなわち、クリーニング部材100を取り付けたドロワ60を装置本体10に装着した場合には、ドロワ60にはブラック用の現像カートリッジ52Kがないので、ブラック用の光センサ300では光がトナーで遮られずにそのまま受光器に受光される。これは、ブラック用の現像カートリッジ52K内のトナーが空の状況と同じ状況であるため、ステップS12で確実にNoと判定され、印字制御に入ることを確実に防止することができる。
【0064】
ここで、本実施形態では、光センサ300で検知した「受光量が所定値以上という情報」が、「トナーが空であること」、「ドロワ60から現像カートリッジ52が取り外されていること」および「クリーニング部材100が取り付けられたドロワ60(プロセスユニット50)が装置本体10に装着されていること」を示すようになっている。
【0065】
つまり、トナー量の検知用の光センサ300は、「ドロワ60から現像カートリッジ52が取り外されているか否か」を検知することが可能であるとともに、「クリーニング部材100が取り付けられたドロワ60(プロセスユニット50)が装置本体10に装着されているか否か」を検知することも可能となっている。そして、制御ユニット200は、「ドロワ60から現像カートリッジ52が取り外されていることを示す情報」または「クリーニング部材100が取り付けられたプロセスユニット50が装置本体10に装着されたことを示す情報」を光センサ300から受けた場合には、印字制御を禁止するようになっている。
【0066】
<クリーニング方法>
最後に、クリーニング部材100を用いた感光ドラム51のクリーニング方法について説明する。
【0067】
ユーザは、まず、図4に示すクリーニング部材100の一対の取付部120,130を、図5に示すように装置本体10から取り外されているドロワ60の被取付部64および後側取手部63A(一対の部位)に取り付ける(第1のステップ)。次に、ユーザは、クリーニング部材100が取り付けられたドロワ60を、装置本体10に装着する(第2のステップ)。
【0068】
この際、図6(a)に示すように、クリーニング部材100のクリーニング部110(研磨層113)は、感光ドラム51に向けて付勢される転写ローラ74からのニップ圧によって、確実に感光ドラム51に接触するようになっている。
【0069】
その後、ユーザは、例えば装置本体10に設けられたスイッチを押すことで、クリーニングモードを開始させる。これにより、図8に示すように、現像ローラ53が離間された後、感光ドラム51が所定時間回転駆動される(第3のステップ)。以上により、感光ドラム51がクリーニング部材100に摺接して、良好にクリーニングされる。
【0070】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
装置本体10から取り外したドロワ60にクリーニング部材100の一対の取付部120,130を装着すればよいので、従来のようなフックやセンサが不要となり、装置を簡易化することができる。また、装置本体10から取り外したドロワ60にクリーニング部材100を装着すればよいので、装置本体の開口から内部に手を入れてクリーニング部材を装置本体に装着する方法に比べ、クリーニング部材の装着作業が容易になる。
【0071】
クリーニング部110が複数の感光ドラム51に接触するように構成されているので、複数の感光ドラム51をまとめてクリーニングすることができる。
【0072】
クリーニング部110が複数の感光ドラム51の外部に露出した部分に接触した状態で、一対の取付部120,130がドロワ60に外側から取り付けられるので、本実施形態のようにプロセスユニットに転写ローラがない構造(すなわち転写ローラと感光ドラムとの間でクリーニング部材を挟持することができない構造)であっても、一対の取付部120,130でクリーニング部材100を確実にドロワ60に取り付けることができる。
【0073】
クリーニング部110の基層111と中間層112とを異なる材料で形成したので、例えば、本実施形態のように、基層111を紙などの帯電し難い材料で形成し、中間層112を樹脂などの研磨層113の形成が容易となる材料で形成することができる。また、例えば、基層および中間層の一方を他方よりもコストの安い材料で形成することができる。
【0074】
研磨層113が、複数の感光ドラム51に対応して複数設けられ、それぞれ間隔を空けて配置されているので、例えば図10(a)に示すように、研磨層113(および中間層112)を基層111の略全体にわたって形成する場合に比べ、材料費を削減することができる。
【0075】
研磨層113の中心位置CPが感光ドラム51の回転軸線51Aよりも、回転する感光ドラム51から力を受ける方向とは反対方向に偏って配置されているので、クリーニング時に感光ドラム51からの力を受けて研磨層113が感光ドラム51から外れてしまうのを抑制することができる。
【0076】
クリーニング部110の感光ドラム51と対向しない部位に、感光ドラム51に向けて凸状となる折り目111Bがついているので、折り目111Bを基準にしてクリーニング部材100をコンパクトに折り畳むことができるとともに、感光ドラム51や搬送ベルト73を折り目111Bで傷つけるのを防止することができる。
【0077】
取付部120に、現像カートリッジ52の装着空間60Aに迫り出すように延びる装着規制部122を設けたので、クリーニング部材100をドロワ60に取り付けた際には、所定の現像カートリッジ52をドロワ60に装着するのを禁止することができる。これにより、クリーニング部材100付きのドロワ60を装置本体10に装着している際に、誤って印字制御がなされることを確実に防止することができる。
【0078】
取付部120に、ドロワ60の前側取手部62Aを外部に露出させるための開口部121Aが形成されているので、前側取手部62Aがクリーニング部材100で隠されず、クリーニング部材100付きのドロワ60の操作性を向上させることができる。
【0079】
クリーニング部材100で感光ドラム51をクリーニングする場合には、接離機構210を制御して感光ドラム51から現像ローラ53を離間させるので、感光ドラム51と現像ローラ53の間でトナーが摺接されることによるトナーの劣化を抑えることができる。
【0080】
制御ユニット200が、クリーニング部材100が取り付けられたドロワ60が装置本体10に装着されている場合に印字制御を禁止するので、クリーニング部材100に誤って印字することにより、クリーニング部材100が汚れてしまうのを防止できる。
【0081】
クリーニング部材100の一対の取付部120,130がそれぞれ異なる形状に形成されるとともに、一方の取付部120の被取付部64が非対称形状に形成されるので、クリーニング部材100がドロワ60に対して前後逆または表裏逆にして取り付けられるのを防止することができる。
【0082】
一対の取付部120,130が、ドロワ60の用紙Pの搬送方向(転写媒体の移動方向)における前後端部に取り付けられるので、感光ドラム51や搬送ベルト73との摩擦でクリーニング部材100が搬送方向に引っ張られても、各取付部120,130をドロワ60に確実に保持させておくことができる。
【0083】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、中間層112および研磨層113をともに複数設けたが、本発明はこれに限定されず、例えば、図10(b)に示すように、中間層112を1枚の板状の層として形成し、研磨層113のみを複数設けてもよい。
【0084】
前記実施形態では、中間層112を設けたが、本発明はこれに限定されず、例えば図10(c)に示すように、中間層112を設けずに、基層111に直接研磨層113を形成してもよい。
【0085】
前記実施形態では、クリーニング部材100が取り付けられたプロセスユニット50が装置本体10に装着されたか否かを検知する検知部材としてトナー残量検知用の光センサ300を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばクリーニング部材の存在を直接検知する専用の光センサや圧力センサなどを採用することができる。また、ドロワ60から現像カートリッジ52が取り外されているか否かを検知する検知部材としては、例えば現像カートリッジの存在を直接検知する専用の光センサや圧力センサなどを採用してもよい。
【0086】
なお、クリーニング部材の取付部としては、どのような材料で形成してもよいが、コスト面を考慮すると、カラープリンタの販売時に最初にドロワにセットされている貼り付き防止シートの取付部を再利用するのが望ましい。ここで、貼り付き防止シートとは、感光ドラムと搬送ベルトの間に配置されて、感光ドラムと搬送ベルトとが張り付くのを防止するシートである。
【0087】
通常、この貼り付き防止シートは、ユーザにカラープリンタが提供された後、メーカに回収されるものであるため、このように回収された貼り付き防止シートの取手部を、クリーニング部材の取手部に再利用することでコストを大幅に削減することができる。
【0088】
また、前記実施形態の構成に加え、感光ドラムに接触して感光ドラム上のトナーを吸着するクリーニングローラを設けてもよい。この場合、クリーニング部材による感光ドラムのクリーニング中に、クリーニングローラで感光ドラム上のトナーを回収することができるので、クリーニング部材がトナーで汚れることをより抑えることができる。
【0089】
この場合、例えば、ベルト駆動をON、帯電器をON、転写ローラの転写バイアスをOFF、ドラムクリーナにトナーとは逆極性のバイアスを印加、定着装置をOFFといった条件を満たすように、各構成部品を制御ユニットによって制御すればよい。
【0090】
前記実施形態では、カラープリンタ1のプロセスユニット50にクリーニング部材100を取り付けるようにしたが、本発明はこれに限定されず、モノクロ用のプリンタの装置本体に着脱されるプロセスユニットにクリーニング部材を取り付けてもいい。
【0091】
前記実施形態では、カラープリンタ1に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他の画像形成装置、例えば複写機や複合機などに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 カラープリンタ
10 装置本体
50 プロセスユニット
51 感光ドラム
52 現像カートリッジ
60 ドロワ
63A 後側取手部
64 被取付部
100 クリーニング部材
110 クリーニング部
120,130 取付部
200 制御ユニット
210 接離機構
300 光センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に着脱可能となるプロセスユニットに設けられる感光ドラムをクリーニングするためのクリーニング部材であって、
感光ドラムに接触するシート状のクリーニング部と、
クリーニング部の両端側に設けられ、プロセスユニットの一対の部位に取り付けられる一対の取付部と、を有していることを特徴とするクリーニング部材。
【請求項2】
所定方向に沿って配列された複数の感光ドラムを有するプロセスユニットに取り付けられる請求項1に記載のクリーニング部材であって、
クリーニング部が、複数の感光ドラムに接触するように構成されることを特徴とするクリーニング部材。
【請求項3】
複数の感光ドラムが外部に露出するように配置されるプロセスユニットに取り付けられる請求項2に記載のクリーニング部材であって、
前記クリーニング部が複数の感光ドラムの外部に露出した部分に接触した状態で、前記一対の取付部がプロセスユニットに外側から取り付けられることを特徴とするクリーニング部材。
【請求項4】
前記クリーニング部は、
一対の取付部に連結される基層と、
基層に設けられ、研磨材を有する研磨層と、を有していることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のクリーニング部材。
【請求項5】
前記クリーニング部は、
一対の取付部に連結される基層と、
基層に固着される中間層と、
中間層の表面に設けられ、研磨材を有する研磨層と、を有し、
基層と中間層とが異なる材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のクリーニング部材。
【請求項6】
前記研磨層は、複数の感光ドラムに対応して複数設けられ、それぞれ間隔を空けて配置されていることを特徴とする請求項5に記載のクリーニング部材。
【請求項7】
クリーニング部材をプロセスユニットに取り付けた状態において、
研磨層は、その中心位置が感光ドラムの回転軸線よりも、回転する感光ドラムから力を受ける方向とは反対方向に偏って配置されていることを特徴とする請求項6に記載のクリーニング部材。
【請求項8】
クリーニング部の感光ドラムと対向しない部位には、感光ドラムに向けて凸状にクリーニング部を折り曲げ可能にするための折り目がついていることを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載のクリーニング部材。
【請求項9】
感光ドラムを支持する第1フレームと、現像ローラを支持するとともに第1フレームに着脱可能に設けられる第2フレームとを有するプロセスユニットに取り付けられる請求項1〜請求項8の少なくとも1項に記載のクリーニング部材であって、
少なくとも1つの取付部には、第2フレームが装着される第1フレームの装着空間に迫り出すように延びる装着規制部が設けられていることを特徴とするクリーニング部材。
【請求項10】
少なくとも1つの取付部は、プロセスユニットの取手部を外部に露出させるための開口部を有していることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のクリーニング部材。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のクリーニング部材を取り付けることが可能なプロセスユニットと、
プロセスユニットが着脱可能となる装置本体と、
プロセスユニットに設けられる感光ドラムと、
感光ドラムに現像剤を供給する現像ローラと、
感光ドラムから現像ローラを離間させる接離機構と、
接離機構を制御する制御ユニットと、を備えた画像形成装置であって、
前記制御ユニットは、
クリーニング部材で感光ドラムをクリーニングする場合に、接離機構を制御して感光ドラムから現像ローラを離間させた後、感光ドラムを回転させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
装置本体には、クリーニング部材が取り付けられたプロセスユニットが装置本体に装着されたかを検知可能な検知部材が設けられ、
制御ユニットは、
クリーニング部材が取り付けられたプロセスユニットが装置本体に装着されたことを示す情報を検知部材から受けた場合には、印字制御を禁止することを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記クリーニング部材の一対の取付部は、それぞれ異なる形状に形成され、
さらに、
1対の取付部のうち少なくとも1つは、当該取付部を取り付ける方向から見て非対称形状に形成され、
前記プロセスユニットには、前記非対称形状の取付部が取り付けられる非対称形状の被取付部が設けられていることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
請求項9に記載のクリーニング部材を取り付けることが可能なプロセスユニットと、
プロセスユニットが着脱可能となる装置本体と、
プロセスユニットに設けられる感光ドラムと、
感光ドラムに現像剤を供給する現像ローラと、
感光ドラムの回転を制御する制御ユニットと、を備えた画像形成装置であって、
装置本体には、前記第1フレームから前記第2フレームが取り外されているかを検知可能な検知部材が設けられ、
制御ユニットは、
第1フレームから第2フレームが取り外されていることを示す情報を検知部材から受けた場合には、印字制御を禁止することを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のクリーニング部材を用いて感光ドラムをクリーニングするクリーニング方法であって、
プロセスユニットの一対の部位に、クリーニング部材の一対の取付部を取り付ける第1のステップと、
クリーニング部材が取り付けられたプロセスユニットを装置本体に装着する第2のステップと、
感光ドラムを回転駆動させる第3のステップとを有するクリーニング方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−232530(P2011−232530A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102421(P2010−102421)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】