説明

クレンジング機能を有する皮膚外用剤

【課題】 皮膚バリア機能を損なわずに角層脱離促進、油脂汚れ除去ができる皮膚外用剤を提供する
【解決手段】 1)アシル化ポリグリセリンと、2)尿素乃至はその誘導体とを皮膚外用剤に含有させる。 前記尿素の誘導体としては、ヒドロキシアルキルウレアが好ましい。更に、アシル化ポリグリセリンは、ジグリセリンモノイソステアレート、ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンテトラオレート、トリグリセリンモノイソステアレート、トリグリセリンジイソステアレート、トリグリセリンモノオレート及びトリグリセリンジオレートから選択されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関し、更に詳細には、化粧料に好適な皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
日本人の食生活において、欧米化が進行し、タンパク質や脂質の摂取が増えてきて、肥満などの生活習慣病の増加が社会問題となっている。このような食生活の変化は、健康問題のみでなく、以前はあまり問題となっていなかった皮膚状態においても、脂性の人が急増していることに一端をかいま見るように大きな影響を与えており、かかる脂質の過剰分泌が、ニキビ等の肌トラブルの原因になっているとも言われている。この様な肌トラブルを防止するために優れた脂質除去作用を有するクレンジング化粧料の開発は、化粧品業界の重要な課題となっている。一方、クレンジング化粧料に要求される品質としては、この様な脂質除去作用に止まらず、新陳代謝によって脱落する古くなった角層の除去も加わってきている。これは、古くなった角層においては、角層細胞自体の光透過性が低下しており、加えて、古い角層が不均一に皮膚上に存在することにより、表面での光拡散が原因となって皮膚そのものが黒ずんで見え、第三者印象を著しく低下させるためである。即ち、従前のクレンジングの油性汚れ除去機能に加えて、角層脱離促進機能の付与が望まれるようになってきていると言える。
【0003】
この様な角層除去機能を有する成分としては、角質溶解剤としての尿素及びその誘導体、乳酸などのα−ヒドロキシ酸、角質溶解酵素としてのパパインなどが知られている(例えば、特許文献1を参照)が、この様な成分を単に用いて角層除去を行うと、皮膚バリア機能が低下し、経表皮水分蒸散が上昇する場合が存した。即ち、皮膚バリア機能を損なわずに角層脱離促進、油脂汚れ除去ができる皮膚外用剤の開発が望まれていたと言える。
【0004】
一方、尿素には前記の角質溶解作用以外に、皮膚保湿作用が存することが知られている(例えば、特許文献2を参照)し、ヒドロキシアルキル尿素の内、ヒドロキシエチル尿素については、毛髪洗浄料において保湿効果を奏することが知られている(例えば、特許文献3を参照)。又、アシル化ポリグリセリンについては界面活性能力が存することが知られており、油脂汚れの除去効果に優れることも知られている(例えば、特許文献4を参照)。しかしながら、この二者を組み合わせて皮膚外用剤に含有させる技術は全く知られておらず、この二者の組合せにより、皮膚バリア機能を損なわずに角層脱離促進、油脂汚れ除去ができる皮膚外用剤が提供できることも全く知られていなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−60319号公報
【特許文献2】特開2005−53817号公報
【特許文献3】特開2006−265246号公報
【特許文献4】特開2000−26238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、皮膚バリア機能を損なわずに角層脱離促進、油脂汚れ除去ができる皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、皮膚バリア機能を損なわずに角層脱離促進、油脂汚れ除去ができる皮膚外用剤を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、1)アシル化ポリグリセリンと、2)尿素乃至はその誘導体とを含有する皮膚外用剤がその様な特性を備えていることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
<1>1)アシル化ポリグリセリンと、2)尿素乃至はその誘導体とを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
<2>前記アシル化ポリグリセリンは、ジグリセリンモノイソステアレート、ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンテトラオレート、トリグリセリンモノイソステアレート、トリグリセリンジイソステアレート、トリグリセリンモノオレート及びトリグリセリンジオレートから選択されるものであることを特徴とする、<1>に記載の皮膚外用剤。
<3>前記尿素の誘導体は、ヒドロキシアルキルウレアであることを特徴とする、<1>又は<2>に記載の皮膚外用剤。
<4>前記尿素乃至はその誘導体の質量の和は、アシル化ポリグリセリンの質量の和に対して、1〜5質量%であることを特徴とする、<1>〜<3>何れか1項に記載の皮膚外用剤。
<5>クレンジング用の化粧料であることを特徴とする、<1>〜<4>何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、皮膚バリア機能を損なわずに角層脱離促進、油脂汚れ除去ができる皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(1)本発明の皮膚外用剤の必須成分であるアシル化ポリグリセリン
本発明の皮膚外用剤はアシル化ポリグリセリンを必須成分として含有することを特徴とする。前記アシル化ポリグリセリンにおけるアシル基としては、炭素数10〜30のものが好ましく、不飽和結合を有するか、分岐構造を有するものがより好ましい。具体的には、例えば、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ベヘノイル基、オレオイル基、リノロイル基、イソステアロイル基、イソパルミトイル基などが好適に例示でき、オレオイル基、イソステアロイル基が特に好ましい。アシル化ポリグリセリンにおいては、唯一種のアシル基を有することも出来るし、二種以上のアシル基を有することも出来るが、唯一種のアシル基を有することが物性を良くコントロールできることから好ましい。又、アシル化ポリグリセリンを構成するポリグリセリン残基としては、縮合度2〜10のものが好ましく、2〜5のものが特に好ましい。具体的にはジグリセリン残基、トリグリセリン残基、テトラグリセリン残基、ペンタグリセリン残基等が好適に例示できる。本発明の皮膚外用剤に於いては、アシル化ポリグリセリンは、フリーの水酸基を有さないか、有していてもアシル化された水酸基の基数に比して小さいことが好ましい。本発明の皮膚外用剤に於いて好ましく使用されるアシル化ポリグリセリンとしては、例えば、ジグリセリンモノイソステアレート、ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンテトライソステアレート、ジグリセリントリオレート、ジグリセリンテトライソステアレート、ジグリセリンテトラオレート、トリグリセリンモノイソステアレート、トリグリセリンジイソステアレート、トリグリセリンモノオレート、トリグリセリントリイソステアレート、トリグリセリントリオレート、トリグリセリンテトライソステアレート、トリグリセリンテトラオレート、トリグリセリンペンタイソステアレート、トリグリセリンペンタイソステアレート及びトリグリセリンジオレートから選択されるものが好ましく例示でき、ジグリセリンモノイソステアレート、ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンテトラオレート、トリグリセリンモノイソステアレート、トリグリセリンジイソステアレート、トリグリセリンモノオレート及びトリグリセリンジオレートから選択されるものがより好ましく例示でき、特にジグリセリンテトラオレートが好ましく例示できる。かかるアシル化ポリグリセリンは、グリシドールを重合させて得られたポリグリセリンに、脂肪酸に塩化チオニルなどのハロゲン化剤を反応させて得られた酸ハライドを反応させることにより得ることが出来る。又、ジグリセリンテトラオレートであれば、坂本薬品工業株式会社製の「SY−024」の様な市販を購入して利用することも出来る。斯くして得られたアシル化ポリグリセリンは油脂汚れを容易に離脱せしめ、且つ、古い角層が除去された皮膚表面に後記尿素乃至は尿素誘導体とともに作用し、皮膚バリア機能を補完する作用を発現する。又、尿素は魚燐癬、老人性乾皮症の改善の有効成分として医薬品に含有されるが、この様な医薬品においては、損なわれた皮膚バリア機能の補完を行い、尿素による治療効果を助け、この様な症状の治癒を促進する効果を奏する。この様な効果を奏するためには、アシル化ポリグリセリンは皮膚外用剤全量に対して、全量で5〜50質量%含有させることが好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。
【0010】
(2)本発明の洗浄料の必須成分である尿素、尿素誘導体
本発明の皮膚外用剤は、尿素乃至は尿素誘導体を含有することを特徴とする。前記尿素誘導体としては、例えば、ヒドロキシアルキルウレアが好ましく例示できる。前記ヒドロキシアルキルウレアとしては、ヒドロキシエチルウレア、ヒドロキシプロピルウレア、ヒドキシブチルウレアなどが好ましく例示でき、これらは、アルカリ触媒の存在下、尿素と対応するアルキレンオキシドを反応させることにより得ることが出来る。これらの内で、特に好ましいものは、ヒドロキシエチルウレアであり、このものは、市販品が存するのでかかる市販品を購入して利用することが出来る。市販としては、日本エヌエスシー株式会社より販売されている「HYDROVANCE(登録商標)」(ヒドロキシエチルウレア)が特に好ましく例示できる。かかる成分は、古くなった角層細胞を速やかに離脱せしめ、肌のくすみ感を除去する作用を有する。又、元来はかかる成分は角層に保湿層を形成し、皮膚バリア機能を向上させる作用を有するが、本願発明の如くに、古い角層細胞を除去する作用が発現するような使用態様、具体的には、皮膚外用剤を投与し、塗擦した後、皮膚外用剤を直ちに除去する使用態様で使用する場合には、保湿効果以上に、角層除去による皮膚バリア機能の損失が大きいので、他の成分によりこの損失を補完しないと皮膚バリア機能が低下してしてしまう場合が存する。尿素乃至は尿素誘導体はこの様な補完効果を奏する。この様な効果を奏するためには、本発明の皮膚外用剤に於いては、尿素乃至は尿素誘導体を皮膚外用剤全量に対して、総量で0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%含有させることが好ましい。又、この数値は、前記アシル化ポリグリセリンの効果との関係において、前記尿素乃至はその誘導体の質量の和は、前記アシル化ポリグリセリンの質量の和に対して、1〜5質量%であることが好ましく、2〜4質量%であることがより好ましい。
【0011】
(3)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、前記必須成分を含有することを特徴とし、クレンジング用の化粧料、尿素の有効成分としての作用を利用した皮膚外用医薬に好適に適用される。勿論、クレンジング化粧料以外の化粧料、易溶性の薬剤を含有する皮膚外用医薬にも好適に適用することが出来る。これらの剤形は、前記必須成分が含有できるものであれば特段の限定はされず、例えば、ローション、エッセンス、乳液、クリームなどに適用できるが、アシル化ポリグリセリンが脂質としての特性を有することと、尿素乃至はその誘導体が水溶性を示すこととを考え合わせると、両者を包含できる乳化剤形が特に好ましく例示できる。
【0012】
本発明の皮膚外用剤においては、かかる成分以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ビス(N−ラウロイルグルタミン酸)リジン等のアシル(ポリ)アミノ酸及び/又はその塩;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノール等の抗菌剤などが好ましく例示できる。
【0013】
これらの任意成分の内、特に好ましいものは、ビス(N−ラウロイルグルタミン酸)リジン等のアシル(ポリ)アミノ酸及び/又はその塩である。かかる成分のアシル基としては、炭素数10〜20の直鎖、分岐乃至は環状構造を有するアシル基が好ましく、具体的には、カプリル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、イソステアロイル基、オレオイル基、ベヘノイル基などが好適に例示できる。(ポリ)アミノ酸残基としては、ジグルタミルリジン残基が特に好ましい。かかるアシル(ポリ)アミノ酸はアミノ酸にアシルクロリドなどのアシル化剤を反応させ、しかる後に、所望によりDCC等のペプチド合成試薬を用いて縮合することにより製造することが出来る。かかるアシル(ポリ)アミノ酸には既に市販品が存し、かかる市販品を購入し利用することも出来る。好ましい市販品としては、例えば、旭化成ケミカルズから販売されている「ペリセア(登録商標)L−30」(ビス(N−ラウロイルグルタミル)リジン)等が存する。かかる成分は皮膚バリア機能を補完するとともに、有効成分を内包し、生体内へと配向させる作用を有する。この様な作用を発揮するためには、かかる成分は0.001〜1質量%含有させることが好ましく、0.005〜0.5質量%含有することが特に好ましい。
【0014】
かかる成分、特にビス(N−ラウロイルグルタミル)リジンにおいては、双子型で、両親媒性であるため、フィトステロール、セラミドなどの他の成分とともにベシクルに加工して用いることが好ましい。この様な形態を取ることによりフィトステロールなどの有効成分の経皮吸収を促進することが出来る。かかるベシクルは、油相成分と水相成分とを80℃混合し、マイクロフルイダイザー処理などを行うことにより得ることが出来る。この場合、ビス(N−ラウロイルグルタミル)リジンとフィトステロール、セラミドの好ましい量比は、それぞれセラミド、或いは、フィトステロール1質量部に対して、ビス(N−ラウロイルグルタミル)リジン1〜5質量部、より好ましくは2〜4質量部であることである。セラミドとフィトステロールとをともに含有する形態が特に好ましい。ベシクルの壁を補強するために補助的に非イオン界面活性剤を含有させることも出来、この様な補強効果のある非イオン界面活性剤としては、例えば、ジグリセリンモノ脂肪酸エステル、トリグリセリンジ脂肪酸エステル、ペンタグリセリンテトラ脂肪酸エステルなどが好適に例示でき、これらの脂肪酸残基としては、オレイン酸、イソステアリン酸などの不飽和脂肪酸残基乃至は分岐脂肪酸残基が好ましい。かかる補助的な非イオン界面活性剤の含有量は、総量でビス(N−ラウロイルグルタミル)リジンと等量乃至は3倍質量であることが好ましい。この様なベシクルの内水相には種々の有効成分を含有させることが出来、ベシクルに内包させることにより、経皮吸収性の向上と内包させた有効成分の安定性の向上が確保できる。この様な有効成分としては、セイヨウノコギリソウエキス、オトギリソウエキス、オウレンエキス、ジュエキスなどの生薬エキス、ポリメタクリロイルリジン、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・アクリル酸ブチル共重合体、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・アクリル酸ステアリル共重合体などが好適に例示できる。この様な形態を取ることにより、経皮吸収性を高めることが出来る。又、ベシクルの外殻に前記ビス(N−ラウロイルグルタミル)リジンを含有せしめることにより、前記必須成分である炭酸ジエステルの溶媒効果でベシクルの外殻が崩壊するのを防ぐことも出来る。
【0015】
本発明の皮膚外用剤は、これらの成分を常法に従って処理することにより製造することが出来る。斯くして得られた本発明の皮膚外用剤は、皮膚バリア機能に影響あまり与えずに脂質除去性、古い角層の除去制に優れる。これにより、クレンジング後においては、透き通った、透明感の高い、白さを感じさせつつ血色の良い肌となる。又、皮膚バリア機能についても、クレンジング前の状態を維持乃至はクレンジング前より向上する。この為、皮膚バリア機能が低下し、刺激感を感じやすい人のためのクレンジング化粧料として好適に使用できる。
【0016】
以下に、実施例を挙げて更に詳細に本発明について説明を加える。
【実施例1】
【0017】
以下に示す処方に従って、本発明の洗浄用の皮膚外用剤である、クレンジング化粧料を作成した。即ち、イ、ロの成分を80℃に加温し、イに徐々にロを加え粗ベシクルを作成し、これをエクストルーダーで処理し、ベシクル分散液1を得た。ベシクルであることは偏光顕微鏡により、脂質二重膜構造の存在から確認した。別途、ハ、ニをそれぞれ80℃に加温し、ハ、ニ、ホを80℃に温度調整した後、ハに攪拌下ニの成分を加えて乳化し、更にホを加え中和し、攪拌冷却を行った。温度が50℃になったところでへのベシクル分散液1を加え、30℃まで攪拌冷却し、クレンジング化粧料1を得た。同様に処置して、クレンジング化粧料1のジグリセリンテトラオレートを2−エチルヘキサン酸セチルエステルに置換した比較例1、「HYDROVANCE」を水に置換した比較例2、ジグリセリンテトラオレートを2−エチルヘキサン酸セチルエステルに、且つ、「HYDROVANCE」を水に置換した比較例3も同様に作成した。
【0018】
【表1】

【0019】
<試験例1>
クレンジング化粧料1、比較例1〜3の油性汚れに対するクレンジング効果を調べた。即ち、前腕内側部に2cm×4cmの部位を4つ設け、コニカミノルタ色彩色差計CR400で測色し、しかる後に下記のリップカラーを40mg塗布し、5分静置した後、検体40mgを乗せて、良く擦過、混合させ、クレンジングを行い、温水下で擦過してウォッシュオフした。タオルを乗せて良く水気をぬぐった後、20分間静置して、再び色彩色差計で測色を行い、地肌との色差を求めた。(n=5)結果を表3に示す。これより、本発明の皮膚外用剤であるクレンジング化粧料1は優れたクレンジング作用を有することがわかる。
【0020】
【表2】

【0021】
【表3】

【0022】
<試験例2>
クレンジング化粧料1、比較例1〜3の油性汚れに対する古い角層の除去作用を調べた。即ち、前腕内側部に2cm×4cmの部位を4つ設け、コニカミノルタ色彩色差計CR400で測色し、しかる後に0.1%ピクリン酸で染色し、5分静置した後、検体40mgを乗せて、良く擦過、混合させ、クレンジングを行い、温水下で擦過してウォッシュオフした。タオルを乗せて良く水気をぬぐった後、20分間静置して、再び色彩色差計で測色を行い、地肌との色差を求めた。(n=1)結果を表4に示す。これより、本発明の皮膚外用剤であるクレンジング化粧料1は古い角層除去効果に優れることがわかる。
【0023】
【表4】

【0024】
<試験例3>
試験例2の試験の30分後に「テヴァメーター」(インテグラル社製)を用いて経表皮水分蒸散(l/m・h)を計測した。結果を表5に示す。これより、クレンジング操作後も皮膚バリア機能は保全されていることがわかる。
【0025】
【表5】

【実施例2】
【0026】
クレンジング化粧料1と同様にクレンジング化粧料2を下記の処方に従って作成し、試験例2の手技で評価したところ、4.9であった。又、この時のTEWLは8.1でコントロールのTEWLは8.2であった。
【0027】
【表6】

【実施例3】
【0028】
クレンジング化粧料1と同様にクレンジング化粧料3を下記の処方に従って作成し、試験例2の手技で評価したところ、5.1であった。又、この時のTEWLは8.3でコントロールのTEWLは8.3であった。
【0029】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明はクレンジング化粧料等皮膚外用剤に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)アシル化ポリグリセリンと、2)尿素乃至はその誘導体とを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
【請求項2】
前記アシル化ポリグリセリンは、ジグリセリンモノイソステアレート、ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンテトラオレート、トリグリセリンモノイソステアレート、トリグリセリンジイソステアレート、トリグリセリンモノオレート及びトリグリセリンジオレートから選択されるものであることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
前記尿素の誘導体は、ヒドロキシアルキルウレアであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
前記尿素乃至はその誘導体の質量の和は、アシル化ポリグリセリンの質量の和に対して、1〜5質量%であることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
クレンジング用の化粧料であることを特徴とする、請求項1〜4何れか1項に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2009−256255(P2009−256255A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108266(P2008−108266)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】