説明

クレーンの制御油圧回路

【課題】 電磁比例減圧弁にスティックが生じても、暴走を停止できるようにする。
【解決手段】 電磁比例減圧弁12a,12bと油圧式アクチュエータ16のメインオペレート弁13のパイロットポート22a,22bを繋ぐパイロットライン21a,21bに、スロットルチェック弁27a,27bを設け、その下流側位置より分岐させた各分岐パイロットライン28a,28bの先端側ポートA1,B1に、セルフシール継手29a,29bを設ける。油戻しライン24の分岐油戻しライン30の先端側ポートT1にセルフシール継手31を設ける。両端部にセルフシール継手33を取り付けたゴムホース32を別途備える。電磁比例減圧弁12a,12bにスティックが生じた場合は、スロットルチェック弁27a,27bの絞りを全閉とすることで、メインオペレート弁13のパイロットポート22a,22bに作用するパイロット圧を遮断させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキクレーン等のクレーンにおける油圧式アクチュエータのメインオペレート弁のパイロット圧を電磁比例減圧弁により制御する形式のクレーンの制御油圧回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
貨物船のような船舶の甲板上に設置して、海上輸送貨物の積み込み及び陸揚げ作業に使用する荷役機械の1つとしてデッキクレーンがある。
【0003】
かかるデッキクレーンの一般的な構成は、図5に示す如く、船舶の甲板(図示せず)上に設置してある所要の高さ寸法を備えた円筒状のクレーンポスト1の頂部に、機械室3と運転室4を備えた回転体2が、旋回自在に取り付けてある。更に、上記回転体2に、ジブ(ブーム)5の基端部を俯仰可能に取り付けると共に、上記機械室3内に、上記ジブ5をワイヤロープの巻上下を介して俯仰させるための俯仰用ウインチ6と、上記ジブ5の先端部より吊り下ろしたフック7に接続してあるワイヤロープ8を巻上下するための巻用ウインチ9と、上記回転体2をクレーンポスト1上で旋回させるための旋回用ユニット10を備えた構成としてある(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、上記俯仰用ウインチ6における俯仰モータ、巻用ウインチ9における巻モータ、旋回用ユニット10における旋回モータは、いずれも油圧モータであり、個別のメインオペレート弁(方向切換弁)を備えて、圧油の供給量及び供給方向を切り替えて正逆転駆動できるようにしてある。
【0005】
上記デッキクレーンにおける俯仰モータ、巻モータ、旋回モータ、あるいは、各種建設機械における油圧モータや油圧シリンダ等の油圧式アクチュエータのメインオペレート弁を操作レバーの操作量に応じて操作するための手段としては、図6に示す如く、電気式操作レバー装置11からの入力指令量に応じて電磁比例減圧弁12a,12bを駆動制御することでメインオペレート弁を切換操作する方式の制御油圧回路が広く用いられている。
【0006】
具体的には、スプリングセンタ形の3位置4ポート形式のメインオペレート弁13を備えて、該メインオペレート弁13のポンプポートPがメインの油圧ポンプ14に接続され、タンクポートTはタンク15に接続され、2つのアクチュエータポートAとBが、油圧式アクチュエータ(図では一例として油圧シリンダ形式のアクチュエータが示してある)16に接続してある。これにより、上記メインオペレート弁13を切換操作することにより、油圧ポンプ14から上記アクチュエータ16へ供給する圧油の流れ方向と流量を制御することができるようにして、該アクチュエータ16の作動方向と速度を制御できるようにしてある。
【0007】
上記油圧式アクチュエータ16に具備されたメインオペレート弁13の切換操作を制御するためのパイロット回路は、上記アクチュエータ16の駆動を指令する電気式の操作レバー装置11と、該操作レバー装置11からの指令信号を入力し、その指令信号に応じた駆動信号を出力するコントローラ17と、このコントローラ17からの駆動信号により作動する一対の電磁比例減圧弁12aと12bを備えている。
【0008】
上記各電磁比例減圧弁12a,12bの一次ポートは油供給ライン(第1管路)18a,18bを介してパイロット油圧ポンプ19の吐出路20に並列に接続してある。又、各電磁比例減圧弁12a,12bの二次ポート(制御圧力ポート)は、パイロットライン(第2管路)21a,21bを介して上記メインオペレート弁13の2つのパイロットポート22a,22bに個別に接続してある。更に、各電磁比例減圧弁12a,12bのタンクポートは、油排出ライン(タンクライン)23a,23bと油戻しライン24を介してタンク25に接続してある。
【0009】
26は上記パイロット油圧ポンプ19の吐出圧を一定の規定圧力に保持するためのリリーフ弁である。
【0010】
以上の構成としてある制御油圧回路によれば、上記パイロット油圧ポンプ19の運転により出力される一次パイロット圧が吐出路20、油供給ライン18a,18bを経て上記各電磁比例減圧弁12a,12bに導かれた状態にて、該各電磁比例減圧弁12a,12bが上記コントローラ17からの駆動信号に応じて作動することで上記一次パイロット圧を減圧して二次パイロット圧を生成し、この二次パイロット圧が上記各パイロットライン21a,21bを介して上記メインオペレート弁13の各パイロットポート22a,22bへ導かれることで、該メインオペレート弁13を切換操作できるようにしてある。よって、作業者の上記操作レバー装置11の操作に応じて上記油圧式アクチュエータ16を作動方向と速度を制御しながら駆動させることができるようにしてある(たとえば、特許文献2参照)。
【0011】
ところで、図示してないが、図5に示したデッキクレーンでは、俯仰用ウインチ6における俯仰モータ、巻用ウインチ9における巻モータ、旋回用ユニット10における旋回モータの個別のメインオペレート弁を制御するための上記図6に示したと同様の制御油圧回路中における2つの電磁比例減圧弁12a,12bとしては、互いのバルブ内部のスプールを一体に連結して1つのハウジング内に収め、上記一体に連結した内部スプールを、一対のソレノイドにより軸心方向の両側から駆動する形式のものが従来用いられていた。又、近年では、2つの電磁比例減圧弁12a,12bを1つのハウジング内に収めて一体化するに当り、内部スプールは互いに分離した状態で、個別のソレノイドによって独立して作動させることができるようにした形式のものも用いられるようになってきている。
【0012】
【特許文献1】特開昭61−86387号公報
【特許文献2】特開2003−278710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、上記図6に示した如き制御油圧回路により油圧式アクチュエータ16のメインオペレート弁13を制御している場合、電磁比例減圧弁12a,12bにてコンタミネーション等の影響により内部スプールがスティックした場合には、上記油圧式アクチュエータ16の暴走につながる虞がある。
【0014】
すなわち、上記電磁比例減圧弁12a,12bの内部スプールがスティックすると、いずれか一方の電磁比例減圧弁12a,12bの二次ポート側に二次パイロット圧が常時発生したままとなることがあり、この場合、上記二次パイロット圧が上記メインオペレート弁13の一方のパイロットポート22a又は22bに作用し続けるため、該メインオペレート弁13が切り換えられたままとなり、その結果、上記油圧式アクチュエータ16が勝手に動作することになる。
【0015】
そのため、油圧式アクチュエータとして、図5に示したデッキクレーンにおける俯仰用ウインチ6の俯仰モータや、巻用ウインチ9の巻モータのメインオペレート弁の制御を行うようにしてある電磁比例減圧弁にスティックが生じた場合は、操作レバー装置が中立状態であるにもかかわらず、上記俯仰用ウインチ6のドラムや巻用ウインチ9のドラムが勝手に回転を開始してしまうことで、ジブ5の勝手な俯仰や、フック7に接続してあるワイヤロープ8の勝手な巻上下といった現象のクレーンの暴走につながる虞が懸念される。
【0016】
又、油圧式アクチュエータとして、図5に示したデッキクレーンにおける旋回用ユニット10の旋回モータのメインオペレート弁の制御を行うための電磁比例減圧弁にスティックが生じた場合は、操作レバー装置が中立状態であるにもかかわらず、上記デッキクレーンが勝手に旋回を開始してしまうといった現象のクレーンの暴走が生じる虞が懸念される。
【0017】
なお、通常、上記デッキクレーンでは、各ウインチ6,9には暴走検出機構がそれぞれ装備されており、該各ウインチ6,9の操作レバー装置が中立状態のときに、該各ウインチ6,9のドラムが、たとえば、315度回転すると、上記暴走検出機構によりドラムの暴走として検知されて、上記各ウインチ6,9の油圧モータへ圧油を供給するメインの油圧ポンプを駆動している電動機が非常停止されるようになる。
【0018】
その後は、上記電磁比例減圧弁のスティックが解消されない限り、電動機のスター始動時に直ぐに暴走が始まるようになるため、再起動と暴走検出機構による上記電動機の非常停止が繰り返されるようになるというのが実状である。
【0019】
そのため、上記デッキクレーンにおける油圧式アクチュエータである俯仰モータ、巻モータ、旋回モータのメインオペレート弁を制御するための電磁比例減圧弁にスティックが生じた場合は、このスティックを解消する必要がある。
【0020】
上記電磁比例減圧弁のスティックを解消する場合、2つの電磁比例減圧弁の内部スプールを一体に連結して、該一体に連結した内部スプールを一対のソレノイドにより軸心方向の両側から作動させるようにした形式の電磁比例減圧弁であれば、上記各ソレノイドの外側にそれぞれ装備されている手動操作用の押しねじを操作すると、上記一体に連結した内部スプールをハウジング内で軸心方向の両側へ強制的に動かすことができるため、上記2つの手動操作用の押しねじを交互に操作して内部スプールを軸心方向へ交互に動かすことで、上記内部スプールのスティックを解消させたり、内部スプールを中立位置まで戻したりすることが可能であった。
【0021】
しかし、近年使用されるようになってきている2つの電磁比例減圧弁の内部スプールを互いに分離した状態で1つのハウジング内に収めて、該各内部スプールを個別のソレノイドで独立に作動させるようにした形式のものでは、スティック発生時に各ソレノイドの外側に装備されている手動操作用の押しねじを操作しても、内部スプールを押し込み方向となる一方向へしか強制操作できないため、各内部スプールを中立位置へ戻すことができない場合があり、しかも、上記押しねじをねじ込むと、最終的には内部スプールが開放の方向に操作されてしまう。
【0022】
したがって、この形式の電磁比例減圧弁にスティックが生じた場合の対処としては、クレーンの暴走を止め、ジブをレスト位置まで退避させる等、安定した姿勢とした後、電磁比例減圧弁の取り外しと洗浄を行ってから、復旧作業を行う必要がある。
【0023】
この際、上記クレーンの暴走を止めること自体は、メインの油圧ポンプを駆動するための電動機を停止させることで可能であり、又、ジブをレスト位置まで退避させる等、デッキクレーンを安定した姿勢とするための作業自体は、たとえば、ジブを倒伏方向へ動かすのであれば、電動機停止状態で、俯仰用ウインチ6のドラムのブレーキ開放を手動で行う等、俯仰用ウインチ6、巻用ウインチ9、旋回用ユニット10を手動操作することによって対応可能になると考えられるが、ジブの俯仰の手動操作は安全性の確保が難しいため、回避することが望まれる。
【0024】
そこで、本発明は、クレーンの油圧式アクチュエータに装備したメインオペレート弁のパイロット圧を制御するための電磁比例減圧弁にスティックが生じたとしても、上記油圧式アクチュエータの暴走を停止させることができると共に、クレーンを安定姿勢となるまで油圧的に操作することができるようにするためのクレーンの制御油圧回路を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、パイロット油圧ポンプに一対の電磁比例減圧弁のポンプポートを並列に接続し、該各電磁比例減圧弁の圧力制御ポートを、油圧式アクチュエータのメインオペレート弁の各パイロットポートに個別のパイロットラインを介して接続し、且つ上記各電磁比例減圧弁のタンクポートを、油戻しラインを介してタンクに接続してなる構成を有するクレーンの制御油圧回路において、上記各パイロットラインに、スロットルチェック弁を設けると共に、該各パイロットラインにおけるスロットルチェック弁よりも下流側位置と、上記油戻しラインの途中位置とを遮断可能に連通接続するための接続手段を備えてなる構成とする。
【0026】
又、上記構成における各パイロットラインにおけるスロットルチェック弁よりも下流側位置と、上記油戻しラインの途中位置とを遮断可能に連通接続するための接続手段を、各パイロットラインにおけるスロットルチェック弁よりも下流側位置より分岐させて先端側にセルフシール継手を設けた分岐パイロットラインと、油戻しラインより分岐させて先端側にセルフシール継手を設けた分岐油戻しラインと、上記各分岐パイロットラインのセルフシール継手及び分岐油戻しラインのセルフシール継手に着脱可能なセルフシール継手を両端部に設けてなるゴムホースとからなる構成とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明のクレーンの制御油圧回路によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)パイロット油圧ポンプに一対の電磁比例減圧弁のポンプポートを並列に接続し、該各電磁比例減圧弁の圧力制御ポートを、油圧式アクチュエータのメインオペレート弁の各パイロットポートに個別のパイロットラインを介して接続し、且つ上記各電磁比例減圧弁のタンクポートを、油戻しラインを介してタンクに接続してなる構成を有するクレーンの制御油圧回路において、上記各パイロットラインに、スロットルチェック弁を設けると共に、該各パイロットラインにおけるスロットルチェック弁よりも下流側位置と、上記油戻しラインの途中位置とを遮断可能に連通接続するための接続手段を備えてなる構成としてあるので、いずれか一方の電磁比例減圧弁にスティックが生じ、このスティックに伴い該一方の電磁比例減圧弁の制御圧力ポートに常時立つパイロット圧がメインオペレート弁の一方のパイロットポートに導かれることで、油圧式アクチュエータに暴走が生じた場合は、上記スティックが生じた電磁比例減圧弁に接続してあるパイロットライン上のスロットルチェック弁の絞りを全閉とすることで、上記スティックを生じた一方の電磁比例減圧弁の制御圧力ポートに常時立っているパイロット圧を、上記メインオペレート弁の一方のパイロットポートより遮断できる。よって、上記メインオペレート弁を中立状態に復帰させることができるため、上記油圧式アクチュエータの暴走を停止させることができる。又、この状態で、上記油圧式アクチュエータへ圧油を供給するメインの油圧ポンプを駆動するための電動機を起動させることが可能になる。
(2)上記(1)のようにして油圧式アクチュエータの暴走を停止させた後、上記スティックが生じた電磁比例減圧弁に接続してあるパイロットライン上のスロットルチェック弁の絞りをゆっくりと開くことで、上記メインオペレート弁の一方のパイロットポートに徐々にパイロット圧を作用させることができるため、上記油圧式アクチュエータを暴走した方向と同一の方向へ徐々に動かすことが可能となる。
(3)上記(1)のようにして油圧式アクチュエータの暴走を停止させた後、スティックが生じた電磁比例減圧弁に接続してあるパイロットラインにおけるスロットルチェック弁よりも下流側位置と、油戻しラインの途中位置とを連通接続した後、他方の健全な電磁比例減圧弁の制御圧力ポートに制御されたパイロット圧を立てると、このパイロット圧が上記メインオペレート弁の他方のパイロットポートへ導かれることで、上記油圧式アクチュエータを暴走した方向とは逆の方向へ駆動させることができる。
(4)したがって、いずれか一方の電磁比例減圧弁にスティックが生じたとしても、上記油圧式アクチュエータの暴走を停止させることができると共に、その後、上記油圧式アクチュエータをいずれの方向にも駆動することが可能なため、クレーンを安定姿勢となるまで油圧的に操作することが可能となる。
(5)各パイロットラインにおけるスロットルチェック弁よりも下流側位置と、上記油戻しラインの途中位置とを遮断可能に連通接続するための接続手段を、各パイロットラインより分岐させて先端側にセルフシール継手を設けた分岐パイロットラインと、油戻しラインより分岐させて先端側にセルフシール継手を設けた分岐油戻しラインと、上記各分岐パイロットラインのセルフシール継手及び分岐油戻しラインのセルフシール継手に着脱可能なセルフシール継手を両端部に設けてなるゴムホースとからなる構成とすることにより、上記(1)の装置構成を容易に実現することができる。又、部材点数の削減化と、装置のコンパクト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0029】
図1乃至図4は本発明のクレーンの制御油圧回路の実施の一形態を示すもので、図6に示したと同様に、油圧式アクチュエータ(図では一例として油圧モータの場合が示してある)16に、油圧ポンプ14から上記油圧式アクチュエータ16へ供給する圧油の流れ方向と流量を制御することで該アクチュエータ16の作動方向と速度を制御することができるようにしてあるメインオペレート弁13を備え、且つ一次ポートを油供給ライン18a,18bを介してパイロット油圧ポンプ19の吐出路20に並列に接続した一対の電磁比例減圧弁12a,12bの二次ポートを、パイロットライン21a,21bを介して上記メインオペレート弁13の2つのパイロットポート22a,22bに個別に接続し、更に、上記各電磁比例減圧弁12a,12bのタンクポートを油排出ライン23a,23bと油戻しライン24を介してタンク25に接続した構成において、上記各パイロットライン21a,21bの途中位置に、メータイン用のスロットルチェック弁27a,27bをそれぞれ設ける。
【0030】
上記各パイロットライン21a,21bにおける上記各スロットルチェック弁27a,27bよりも下流位置には、それぞれ分岐パイロットライン28a,28bを設けて、該各分岐パイロットライン28a,28bの先端側のポートA1,B1に、セルフシール継手29a,29bをそれぞれ設ける。
【0031】
更に、上記油戻しライン24の途中位置に、分岐油戻しライン30を設けて、該分岐油戻しライン30の先端側のポートT1に、上記セルフシール継手29a,29bと同様のセルフシール継手31を設ける。
【0032】
更に又、所要の長さ寸法を有し且つ長手方向の両端部に、上記各分岐パイロットライン28a,28bの先端側のポートA1,B1のセルフシール継手29a,29b、及び、上記分岐油戻しライン30の先端側のポートT1のセルフシール継手31に着脱自在に接続可能なセルフシール継手33を取り付けてなるゴムホース32を別途備えてなる構成とする。
【0033】
具体的には、上記図1に示した回路構成における2つの電磁比例減圧弁12a,12bは、図2に示すように、1つのハウジング34内に上記2つの電磁比例減圧弁12a,12b個別の内部スプール(図示せず)を互いに分離した状態で収納すると共に、該各内部スプールを個別のソレノイド35a,35bで独立に作動させる形式としてある。なお、上記ハウジング34の底面には、モジュラー弁と集積して連結できるようにするための所要のポートパターンで、上記各電磁比例減圧弁12aと12bの双方の一次ポートに連通したポンプポートP0と、各電磁比例減圧弁12aと12bの双方のタンクポートに連通したタンクポートT0と、一方の電磁比例減圧弁12aの二次ポートに連通した第1の制御圧力ポートA0と、他方の電磁比例減圧弁12bの二次ポートに連通した第2の制御圧力ポートB0を設けた構成としてある。
【0034】
上記各スロットルチェック弁27a,27bとしては、2つのスロットルチェック弁27,27bを一体にモジュラー化してなるA・Bラインメータイン用スロットルチェックモジュラー弁36を用いるようにしてある。
【0035】
上記2つのパイロットライン21a,21bのうちの一方のパイロットライン21aより分岐する分岐パイロットライン28aと、油戻しライン24より分岐する分岐油戻しライン30は、たとえば、モジュラー弁用のA・Tライン用コネクティングプレート37におけるAラインより外部に連通するよう設けてある分岐流路と、Tラインより外部に連通するよう設けてある分岐流路を用いることでそれぞれ形成するようにしてあり、上記A・Tライン用コネクティングプレート37におけるAラインの分岐流路としての上記分岐パイロットライン28aの外部に連通するポートA1と、Tラインの分岐流路としての上記分岐油戻しライン30の外部に連通するポートT1には、上記セルフシール継手29aと31をそれぞれ取り付けるようにしてある。
【0036】
一方、他方のパイロットライン21bより分岐する分岐パイロットライン28bは、たとえば、モジュラー弁用のP・Bライン用コネクティングプレート38におけるBラインより外部に連通する分岐流路を用いることで形成するようにしてあり、上記P・Bライン用コネクティングプレート38におけるBラインの分岐流路としての上記分岐パイロットライン28bの外部に連通するポートB1には、上記セルフシール継手29bを取り付けるようにしてある。なお、図示してないが、上記P・Bライン用コネクティングプレート38には、Pラインより外部に連通する分岐流路が存在するため、このPラインの分岐流路については、外部に連通するポートをめくらプラグ等により閉塞させるようにしてあるものとする。
【0037】
したがって、上記構成としてある電磁比例減圧弁12a,12bのハウジング34の下側に、上記A・Bラインメータイン用スロットルチェックモジュラー弁36と、上記A・Tライン用コネクティングプレート37と、上記P・Bライン用コネクティングプレート38とを順に配置した状態で、図示しないモジュラー弁用の連結ボルトで一体に連結することで、図1に示した如き回路構成を形成するようにしてある。
【0038】
なお、上記において、各分岐パイロットライン28a及び28bの先端側ポートA1及びB1に、後述するように上記分岐油戻しライン30の先端側ポートT1を上記ゴムホース32を介して接続する際、上記ゴムホース32内のエアが上記各分岐パイロットライン28a及び28bを経て各パイロットライン21a,21b側へ混入する虞を回避するという観点からすると、上記分岐油戻しライン30の先端側ポートT1は、上記各分岐パイロットライン28a及び28bの先端側ポートA1及びB1よりも高い位置に配置することが望ましい。
【0039】
なお、上記各電磁比例減圧弁12a,12bは、図示しない操作レバー装置からの指令信号に応じて作動できるようにしてあるものとする。39は上記各電磁比例減圧弁12a,12bの上流側に設けた圧力調整弁、40は油圧式アクチュエータ16へ圧油を供給するメインの油圧ポンプ14を駆動するための電動機である。その他、図6に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0040】
以上の構成としてある本発明のクレーンの制御油圧回路は、たとえば、図1に示したと同様のデッキクレーンにおける油圧式アクチュエータ16としての俯仰用ウインチ6の俯仰モータ、及び、巻用ウインチ9の巻きモータ、及び、旋回用ユニット10における旋回モータの個別のメインオペレート弁13に、それぞれの制御油圧回路として装備した構成としておく。
【0041】
この状態で、上記本発明のクレーンの制御油圧回路を使用する場合、平常時は、上記各スロットルチェック弁27a及び27bの絞りを全開状態としておくようにする。
【0042】
この状態で、図6に示したものと同様に、パイロット油圧ポンプ19の運転により出力される一次パイロット圧を、吐出路20、油供給ライン18a,18bを経て上記各電磁比例減圧弁12a,12bの一次ポートへ導いた状態にて、該各電磁比例減圧弁12a,12bを、上記図示しない操作レバー装置からの指令信号に応じて作動させると、上記各電磁比例減圧弁12a,12bにて一次パイロット圧が減圧されて二次パイロット圧が適宜生成され、この二次パイロット圧が上記各パイロットライン21a,21bを介して上記メインオペレート弁13の各パイロットポート22a,22bへそれぞれ導かれることで、該メインオペレート弁13が切換操作されるようになる。よって、上記油圧式アクチュエータ16が俯仰モータの場合は、作業者の図示しない操作レバー装置の操作に応じて、該俯仰モータの駆動を介してデッキクレーンの俯仰用ウインチ6が、作動方向と速度を制御しながら駆動されることで、ジブ5(図5参照)の俯仰が行われるようになる。
【0043】
又、同様に、上記油圧式アクチュエータ16が巻モータの場合は、作業者の図示しない操作レバー装置の操作に応じて、該巻モータの駆動を介して巻用ウインチ9が、作動方向と速度を制御しながら駆動されることで、上記ジブ5の先端部より吊り下ろしたフック7に接続してあるワイヤロープ8(図5参照)が巻上下されるようになる。
【0044】
更に、同様に、上記油圧式アクチュエータ16が旋回モータの場合は、作業者の図示しない操作レバー装置の操作に応じて、該旋回モータの駆動を介してデッキクレーンの旋回用ユニット10が、作動方向と速度を制御しながら駆動されることで、デッキクレーンの旋回動作(図5参照)が行われるようになる。
【0045】
上記のような油圧式アクチュエータ16である俯仰モータや巻モータや旋回モータの運転中に、これらの油圧アクチュエータ16に備えたメインオペレート弁13のパイロット圧を制御するようにしてある上記電磁比例減圧弁12aと12bのうち、たとえば、一方の電磁比例減圧弁12aの内部スプールにスティックが生じると、該電磁比例減圧弁12a,12bのハウジング34における第1の制御圧力ポートA0には、上記一方の電磁比例減圧弁12aの内部スプールの作動状況に応じて、二次パイロット圧(以下P圧と云う)か、又は、油排出ライン23aと油戻しライン24を介し連通するタンク25側の圧力(以下T圧と云う)のいずれか一方が常時立つようになる。このうち、上記第1の制御圧力ポートA0にP圧が立つ場合は、この第1の制御圧力ポートA0より出力されるP圧が、一方のパイロットライン21aを経て上記メインオペレート弁13の一方のパイロットポート22aに常に作用するようになるため、操作レバー装置を中立状態としても、該メインオペレート弁13により制御されている油圧式アクチュエータ16が勝手に回転して、ジブの俯仰や、フックの巻上げ下げ、デッキクレーンの旋回等の現象によるデッキクレーンの暴走が始まる。なお、これらの暴走が生じた場合は、該暴走の発生がデッキクレーンに通常装備されている暴走検出機構によって検出された時点で、上記油圧式アクチュエータ16へ圧油を供給するためのメインの油圧ポンプ14の電動機40が非常停止されるようになる。
【0046】
上記のようにして電磁比例減圧弁12aのスティックに起因してクレーンの暴走が生じた場合は、先ず、上記一方のパイロットライン21a上に設けてあるスロットルチェック弁27aの絞りを全閉とする。これにより、上記電磁比例減圧弁12aのスティックに伴い電磁比例減圧弁12a,12bのハウジング34における第1の制御圧力ポートA0に立っているP圧が、上記油圧式アクチュエータ16のメインオペレート弁13における一方のパイロットポート22aに伝えられなくなる。よって、上記メインオペレート弁13では、スプールが一旦中立位置に復帰される。
【0047】
その後、上記デッキクレーンを安定した姿勢とさせるために上記油圧式アクチュエータ16を、暴走方向と同じ方向へ駆動する必要がある場合は、上記状態のままメインの油圧ポンプ14の電動機40を起動し、次いで、全閉状態とした上記一方のパイロットライン21a上のスロットルチェック弁27aの絞りをゆっくりと開いていく。これにより、上記電磁比例減圧弁12aのスティックに伴って第1の制御圧力ポートA0に立っているP圧が、一方のパイロットライン21aを介して上記メインオペレート弁13の一方のパイロットポート22aに徐々に伝えられるようになるため、該メインオペレート弁13のスプールが、中立位置から暴走したときと同一の方向に徐々に切り替えられ、よって、上記油圧式アクチュエータ16が暴走方向と同一の方向に作動を開始する。
【0048】
上記のように油圧式アクチュエータ16の暴走方向と同一方向へ作動し始めたら、上記スロットルチェック弁27aの絞りを全閉とする。このとき、上記メインオペレート弁13の一方のパイロットポート22aには、圧力が閉じ込められた状態となるため、上記油圧式アクチュエータ16の作動は継続される。
【0049】
その後、上記油圧式アクチュエータ16の作動を停止させる場合は、上記メインの油圧ポンプ14の電動機を停止させるようにする。
【0050】
しかる後、上記スロットルチェック弁27aの絞りを全閉としてから上記の手順を繰り返すことで、上記油圧式アクチュエータ16を暴走した方向と同一方向へ徐々に動かして、デッキクレーンを安定した姿勢とさせるようにすればよい。
【0051】
一方、上記一方のパイロットライン21a上に設けてあるスロットルチェック弁27aの絞りを全閉とすることで、上記電磁比例減圧弁12aのスティックに伴い第1の制御圧力ポートA0に立っているP圧が、上記メインオペレート弁13の一方のパイロットポート22aに伝えられないようにした後、上記デッキクレーンを安定した姿勢とさせるために上記油圧式アクチュエータ16を、暴走方向とは逆の方向へ駆動する必要がある場合は、図3に示すように、上記一方のパイロットライン21aの分岐パイロットライン28aの先端側ポートA1に設けてあるセルフシール継手29aと、分岐油戻しライン30の先端側ポートT1に設けてあるセルフシール継手31に、上記ゴムホース32の両端部のセルフシール継手33をそれぞれ繋ぐ。これにより、上記メインオペレート弁13の一方のパイロットポート22aが、上記一方のパイロットライン21aとその分岐パイロットライン28a、ゴムホース32、分岐油戻しライン30及び油戻しライン24を介してタンク25へ連通されるようになる。
【0052】
次いで、上記メインの油圧ポンプ14の電動機40を起動させてから、他方の健全な電磁比例減圧弁12bを操作して、第2の制御圧力ポートB0に二次パイロット圧が生成されるようにすると、この二次パイロット圧が上記メインオペレート弁13の他方のパイロットポート22bに導かれる。この際、上記一方のパイロットポート22a側の圧力はタンク25へ逃がすことができるため、上記メインオペレート弁13が中立位置より上記暴走したときとは逆の方向に切換操作されるようになる。これにより、作業者の図示しない操作レバー装置の操作に応じて上記油圧式アクチュエータ16を、暴走方向とは逆の方向へ速度を制御しながら駆動させることができる。よって、該油圧式アクチュエータ16の駆動を制御することで、デッキクレーンを安定した姿勢とさせるようにすればよい。
【0053】
又、図1の状態にて、上記油圧式アクチュエータ16であるデッキクレーンの俯仰モータや巻モータや旋回モータの運転中に、これらの油圧アクチュエータ16に備えたメインオペレート弁13のパイロット圧を制御するようにしてある上記電磁比例減圧弁12aと12bのうち、他方の電磁比例減圧弁12bの内部スプールにスティックが生じると、第2の制御圧力ポートB0には、上記他方の電磁比例減圧弁12bの内部スプールの作動状況に応じてP圧か又はT圧のいずれかが常時立つようになり、このうち、上記第2の制御圧力ポートB0にP圧が立つ場合は、該第2の制御圧力ポートB0より出力されるP圧が、他方のパイロットライン21bを経て上記メインオペレート弁13の他方のパイロットポート22bに常に作用するようになるため、操作レバー装置を中立状態としても油圧式アクチュエータ16が勝手に回転して、ジブの俯仰、フックの上げ下げ、デッキクレーンの旋回等によるデッキクレーンの暴走が始まり、これらの暴走の発生が暴走検出機構によって検出されると、メインの油圧ポンプ14の電動機40が非常停止されるようになる。
【0054】
この場合は、先ず、上記他方のパイロットライン21b上に設けてあるスロットルチェック弁27bの絞りを全閉として、上記電磁比例減圧弁12bのスティックに伴い第2の制御圧力ポートB0に立っているP圧が、上記メインオペレート弁13の他方のパイロットポート22bに伝わらないようにさせる。これにより、上記メインオペレート弁13は一旦中立位置に復帰される。
【0055】
その後、上記デッキクレーンを安定した姿勢とさせるために上記油圧式アクチュエータ16を、暴走方向と同じ方向へ駆動する必要がある場合は、上記一方の電磁比例減圧弁12aがスティックした場合と同様に、上記状態のままメインの油圧ポンプ14の電動機40を起動し、次いで、全閉状態とした上記他方のパイロットライン21b上のスロットルチェック弁27bの絞りをゆっくりと開いていく。これにより、上記電磁比例減圧弁12bのスティックに伴って第2の制御圧力ポートB0に立っているP圧が、他方のパイロットライン21bを介して上記メインオペレート弁13の他方のパイロットポート22bに徐々に伝えられるようになるため、該メインオペレート弁13のスプールが、中立位置から暴走したときと同一方向へ徐々に切り替えられる。よって、上記油圧式アクチュエータ16が暴走方向と同一の方向に作動を開始する。
【0056】
上記のように油圧式アクチュエータ16の暴走方向と同一方向へ作動し始めたら、上記スロットルチェック弁27bの絞りを全閉とする。このとき、上記メインオペレート弁13の他方のパイロットポート22bには、圧力が閉じ込められた状態となるため、上記油圧式アクチュエータ16の作動は継続される。
【0057】
その後、上記油圧式アクチュエータ16の作動を停止させる場合は、上記メインの油圧ポンプ14の電動機を停止させるようにする。
【0058】
しかる後、上記スロットルチェック弁27bの絞りを全閉としてから上記の手順を繰り返すことで、上記油圧式アクチュエータ16を暴走した方向と同一方向へ徐々に動かして、デッキクレーンを安定した姿勢とさせるようにすればよい。
【0059】
一方、上記他方のパイロットライン21b上に設けてあるスロットルチェック弁27bの絞りを全閉として、第2の制御圧力ポートB0に立っているP圧が、上記メインオペレート弁13の他方のパイロットポート22bに伝えられないようにした後、上記デッキクレーンを安定した姿勢とさせるために、上記油圧式アクチュエータ16を暴走方向とは逆の方向へ駆動する必要がある場合は、図4に示すように、上記他方のパイロットライン21bの分岐パイロットライン28bの先端側ポートB1に設けてあるセルフシール継手29bと、分岐油戻しライン30の先端側ポートT1に設けてあるセルフシール継手31に、上記ゴムホース32の両端部のセルフシール継手33をそれぞれ繋ぐ。これにより、上記メインオペレート弁13の他方のパイロットポート22bが、上記他方のパイロットライン21b、その分岐パイロットライン28b、ゴムホース32、分岐油戻しライン30及び油戻しライン24を介してタンク25へ連通されるようになる。
【0060】
次いで、上記メインの油圧ポンプ14の電動機40を起動させてから、一方の健全な電磁比例減圧弁12aを操作して、第1の制御圧力ポートA0に二次パイロット圧が生成されるようにすると、この二次パイロット圧が上記メインオペレート弁13の一方のパイロットポート22aに導かれる。この際、上記他方のパイロットポート22b側の圧力はタンク25へ逃がすことができるため、上記メインオペレート弁13は、中立位置より上記暴走したときとは逆の方向に切換操作されるようになる。これにより、作業者の図示しない操作レバー装置の操作に応じて上記油圧式アクチュエータ16を、暴走方向とは逆の方向へ速度を制御しながら駆動させることができる。よって、該油圧式アクチュエータ16の駆動を制御することで、デッキクレーンを安定した姿勢とさせるようにすればよい。
【0061】
このように、本発明のクレーンの制御油圧回路によれば、油圧式アクチュエータ16のメインオペレート弁13のパイロット圧を図示しない操作レバー装置の操作に応じて制御するようにしてある電磁比例減圧弁12aと12bのいずれかにスティックが生じ、この電磁比例減圧弁12a又は12bのスティックに伴い油圧式アクチュエータ16に暴走が生じても、上記メインオペレート弁13を一旦中立位置へ復帰させて暴走を停止させることができると共に、その後、上記油圧式アクチュエータ16を暴走した方向と同一方向と、逆の方向のいずれにも油圧的に制御しながら駆動させることができる。よって、デッキクレーンにおける油圧式アクチュエータ16である俯仰モータ、巻きモータ、旋回モータのそれぞれのメインオペレート弁13を個別に制御するようにしてある電磁比例減圧弁12a又は12bのスティックに伴い、上記デッキクレーンに暴走が生じたとしても、手動操作によることなく、該デッキクレーンのジブ5(図5参照)を、安全にレスト位置まで退避させる等の安定した姿勢とさせることができる。よって、その後は、電磁比例減圧弁12a,12bの取り外しと洗浄を行ってから、復旧作業を行うようにすればよい。
【0062】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、部材点数を削減する観点、及び、装置の寸法をコンパクトにするという観点からは、前述したように、分岐パイロットライン28aの先端側ポートA1と、分岐油戻しライン30の先端側ポートT1との接続、及び、分岐パイロットライン28bの先端側ポートB1と、分岐油戻しライン30の先端側ポートT1との接続は、必要な場合にのみゴムホース32を介して行うようにすることが望ましいが、通常は上記分岐パイロットライン28aの先端側ポートA1と分岐パイロットライン28bの先端側ポートB1と分岐油戻しライン30の先端側ポートT1をすべて遮断させることができると共に、必要に応じて、上記分岐パイロットライン28aの先端側ポートA1を分岐油戻しライン30の先端側ポートT1に連通させた状態と、上記分岐パイロットライン28bの先端側ポートB1を分岐油戻しライン30の先端側ポートT1に連通させた状態に切り替えることができるようにしてあれば、たとえば、上記分岐パイロットライン28aの先端側ポートA1に一端部を接続した開閉弁付きの連結用配管の他端部と、上記分岐パイロットライン28bの先端側ポートB1に一端部を接続した開閉弁付きの連結用配管の他端部とを、合流させて上記分岐油戻しライン30の先端側ポートT1に接続した構成等、常設の配管を用いるようにしてもよい。
【0063】
図1に示した回路を構成することができれば、電磁比例減圧弁12a,12bは、図2に示した以外の形式のもの、すなわち、1つのハウジング34内に上記2つの電磁比例減圧弁12a,12b個別の内部スプール(図示せず)を互いに分離した状態で収納すると共に、該各内部スプールを個別のソレノイド35a,35bで独立に作動させる形式以外の形式のものを用いるようにしてもよい。又、各スロットルチェック弁27a,27bは、装置構成を容易に構築するという観点及び構成をコンパクトにするという観点からすると、A・Bラインメータイン用スロットルチェックモジュラー弁36を用いることが好ましいが、個別に設けるようにしてもよい。更に、一方のパイロットライン21aより分岐する分岐パイロットライン28aと、油戻しライン24より分岐する分岐油戻しライン30は、装置構成を容易に構築するという観点及び構成をコンパクトにするという観点からすると、モジュラー弁用のA・Tライン用コネクティングプレート37を用いることが好ましいが、個別に設けるようにしてもよい。他方のパイロットライン21bより分岐する分岐パイロットライン28bは、装置構成を容易に構築するという観点からすると、モジュラー弁用のP・Bライン用コネクティングプレート38を用いることが好ましいが、別の手段で形成するようにしてもよい。
【0064】
電磁比例減圧弁12a,12bによりメインオペレート弁13のパイロット圧を制御することで油圧式アクチュエータ16の作動方向と速度を制御しながら駆動する形式の駆動機構を備えていれば、油圧シリンダ等、油圧モータ以外の油圧式アクチュエータ16を備えたデッキクレーンにも適用できる。又、デッキクレーン以外のクレーンにも適用でき、更には、上記と同様の駆動機構を備えていれば、クレーン以外の建設機械の油圧式アクチュエータ16の制御油圧回路に適用してもよい。
【0065】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明のクレーンの制御油圧回路の実施の一形態を示す概要図である。
【図2】図1の制御油圧回路の外観を示す概略正面図である。
【図3】図1の制御油圧回路の使用状態の一例を示す図である。
【図4】図1の制御油圧回路の別の使用状態を示す図である。
【図5】従来のデッキクレーンの概要を示す斜視図である。
【図6】油圧式アクチュエータのメインオペレート弁を操作レバー装置の操作量に応じて操作するために従来用いられている制御油圧回路を示す概要図である。
【符号の説明】
【0067】
12a,12b 電磁比例減圧弁
13 メインオペレート弁
16 油圧式アクチュエータ
19 パイロット油圧ポンプ
21a,21b パイロットライン
22a、22b パイロットポート
24 油戻しライン
25 タンク
27a,27b スロットルチェック弁
28a,28b 分岐パイロットライン
29a,29b セルフシール継手
30 分岐油戻しライン
31 セルフシール継手
32 ゴムホース
33 セルフシール継手
A0 圧力制御ポート
B0 圧力制御ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイロット油圧ポンプに一対の電磁比例減圧弁のポンプポートを並列に接続し、該各電磁比例減圧弁の圧力制御ポートを、油圧式アクチュエータのメインオペレート弁の各パイロットポートに個別のパイロットラインを介して接続し、且つ上記各電磁比例減圧弁のタンクポートを、油戻しラインを介してタンクに接続してなる構成を有するクレーンの制御油圧回路において、上記各パイロットラインに、スロットルチェック弁を設けると共に、該各パイロットラインにおけるスロットルチェック弁よりも下流側位置と、上記油戻しラインの途中位置とを遮断可能に連通接続するための接続手段を備えてなる構成を有することを特徴とするクレーンの制御油圧回路。
【請求項2】
各パイロットラインにおけるスロットルチェック弁よりも下流側位置と、上記油戻しラインの途中位置とを遮断可能に連通接続するための接続手段を、各パイロットラインにおけるスロットルチェック弁よりも下流側位置より分岐させて先端側にセルフシール継手を設けた分岐パイロットラインと、油戻しラインより分岐させて先端側にセルフシール継手を設けた分岐油戻しラインと、上記各分岐パイロットラインのセルフシール継手及び分岐油戻しラインのセルフシール継手に着脱可能なセルフシール継手を両端部に設けてなるゴムホースとから構成した請求項1記載のクレーンの制御油圧回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−263061(P2009−263061A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113298(P2008−113298)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】