説明

ケミカルマシンポリッシャの研磨盤用研磨ドレッサ

【課題】研磨パッドとの接触部において面接触となるようにして使用時の摩耗を軽減すると共に、研磨パッドを研磨する際に発生する研磨粉等がベース部材の内側部分から外部に排出し易くする。
【解決手段】回転する円形平盤状のベース部材29の外周部を所定幅で円周方向に盛り上げた凸形の円弧状曲面の表面に研磨グリッド34を略均一に分布させて固着した研磨面31を、研磨盤の研磨パッドの表面に上方から押し付けて該研磨パッドを上記研磨面の凸形の円弧状曲面に倣った形で弾性変形させ、上記研磨面と研磨パッドとの接触において面接触の状態として研磨し、上記円周方向に盛り上げられた研磨面に等間隔で形成され、上記ベース部材の中心Oから外方に延びる半径方向に対して該ベース部材の回転方向Rと反対側に傾斜して延びる複数の凹溝33により、上記研磨パッドを研磨する際に発生する研磨粉等がベース部材の内側部分29aから外部に排出し易くしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平坦で回転可能な研磨盤の表面に張り付けられ弾性変形可能な研磨パッドに化学研磨剤を供給して該研磨パッド上でウェハ等の被研磨物の表面を研磨するケミカルマシンポリッシャの上記研磨パッドを研磨する研磨ドレッサに関し、特に、上記研磨パッドとの接触部において面接触となるようにして使用時の摩耗を軽減し長寿命化を図ると共に、研磨パッドを研磨する際に発生する研磨粉等がベース部材の内側部分から外部に排出し易いようにしたケミカルマシンポリッシャの研磨盤用研磨ドレッサに係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路等の半導体製品の製造において、集積回路の容量の増大化の要求に応じて回路の集積度が高まりつつあるが、それに伴って回路の層間の絶縁膜も薄くなりつつある。このような要求に応じて、図10に示すように、シリコン基板1上に配線パターンに従って配線溝2を形成し、この状態でシリコン基板1の全表面にアルミニウム等の金属層3を形成し、この金属層3を研磨して上記配線溝2内にのみ金属層3を残して平坦な配線パターンを形成し、これを多層に積層することにより集積回路を製造する技術が採用されている。
【0003】
図11は、上記集積回路の製造においてシリコン基板1の全表面に形成された配線用の金属層3を研磨する際に用いられるケミカルマシンポリッシャ(以下「CMP」と略称する)の研磨盤4を示す断面図である。図11に示すように、この研磨盤4は、平盤状の基台5上に平坦な研磨パッド6を張り付けて構成されている。そして、例えば酸等の化学研磨剤に微細な研磨材を混ぜ、これを上記研磨盤4の研磨パッド6の表面に供給し、該研磨盤4を回転させて、保持具7に保持されたシリコン基板1の金属層3を上記研磨パッド6の表面に接触させることにより、上記金属層3を化学研磨剤及び研磨材で研磨する。
【0004】
一方、上記研磨盤4の研磨パッド6も上記金属層3の研磨時に摩耗し、研磨パッド6の平坦度を維持できなくなるため、上記CMPには、該研磨パッド6を研磨する研磨装置が備えられている。そして、この研磨装置に備えられた研磨ドレッサで上記研磨パッド6を研磨するようになっている。
【0005】
図12は従来の研磨ドレッサ8を示す中央横断面図であり、図13のA−A線断面図である。この研磨ドレッサ8は、例えば円形の平盤状のベース部材9の外周部を所定幅で円周方向に盛り上げ、その盛上げ部10の断面形状を上記ベース部材9の中央横断面で所定の半径を有する凸形の円弧状曲面に形成し、その表面にダイヤモンドグリッドからなる研磨グリッドを略均一に分布させて固着し研磨面11を形成して成っていた。
【0006】
また、図13は従来の研磨ドレッサ8を示す平面図である。ここで、上記盛上げ部10の研磨面11の円周方向には、ベース部材9の中心から半径方向に直線状に延びて放射状に走る凹溝13が所定間隔で形成されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
そして、図14に示すように、上記研磨ドレッサ8を保持具12で保持し、上記研磨盤4を回転させて該保持具12に保持された研磨ドレッサ8の研磨面11を研磨パッド6の表面に上方から接触させることにより、上記研磨盤4の研磨パッド6の表面を研磨していた。このとき、保持具12の中心部に矢印Pのように加工圧力Pをかけて上記研磨ドレッサ8の研磨面11を研磨盤4の研磨パッド6に上方から押し付けると、該研磨面11の押圧力で上記研磨パッド6はその弾性により少し沈んだ状態で変形する。そして、この研磨面11による研磨パッド6の研磨により、該研磨パッド6の表面の平坦度を維持するとともに、パッド表面のクリーニングも行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3295888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記従来の研磨ドレッサ8においては、図12に示すように、円形の平盤状のベース部材9の外周部を所定幅で円周方向に盛り上げ、その盛上げ部10の断面形状を上記ベース部材9の中央横断面で所定の半径を有する凸形の円弧状曲面に形成し、その表面に研磨グリッドを略均一に分布させて固着し研磨面11を形成していたので、その研磨面11の内周側面11aが立ち上がり、ベース部材9の内側部分9aが凹んだ状態となっていた。このことから、図14に示すように、研磨ドレッサ8の研磨面11を上記研磨盤4の研磨パッド6の表面に上方から接触させて該研磨パッド6の表面を研磨すると、その研磨により発生した研磨粉やスラリー等が研磨面11の内周側面11aに遮られて研磨ドレッサ8の外部に排出されず、内側部分9aに溜まることがあった。
【0010】
そして、研磨ドレッサ8の内側部分9aに溜まった研磨粉等がそこに固着すると、その固着した研磨粉等の全体の面積(例えばS1)で研磨パッド6の表面を押圧することになり、外周部にて所定幅で円周方向に盛り上げられた研磨面11(面積がS2として、S2<S1とする)で研磨パッド6を押圧する圧力は、加工圧力Pが一定である限り小さくなる。このように、研磨面11による研磨パッド6に対する押圧力が小さくなると、研磨ドレッサ8による研磨レートが低下するものであった。
【0011】
一方、従来の研磨ドレッサ8においては、図13に示すように、上記研磨面11の円周方向には複数本の凹溝13が所定間隔で形成されているが、この凹溝13は、ベース部材9の中心から半径方向に直線状に延びて放射状に走るように形成されていた。このとき、上記研磨ドレッサ8の回転速度が速い場合は、内側部分9aに溜まった研磨粉等は、遠心力の作用により放射状に走る凹溝13を通って外部に排出される。しかし、実際の研磨ドレッサ8の回転速度は例えば毎秒1〜1.5回転程度と遅く、殆ど遠心力が働かず、内側部分9aに溜まった研磨粉等は、上記凹溝13を通って殆ど外部に排出されなかった。したがって、上述のように、研磨ドレッサ8による研磨レートが低下するのを改善することはできなかった。
【0012】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、研磨パッドを研磨する際に発生する研磨粉等がベース部材の内側部分から外部に排出し易いようにしたケミカルマシンポリッシャの研磨盤用研磨ドレッサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明によるケミカルマシンポリッシャの研磨盤用研磨ドレッサは、平坦で回転可能な研磨盤の表面に張り付けられ弾性変形可能な研磨パッドに化学研磨剤を供給して該研磨パッド上で被研磨物の表面を研磨するケミカルマシンポリッシャの上記研磨パッドを研磨するものであって、回転する円形平盤状のベース部材の外周部を所定幅で円周方向に盛り上げその表面にダイヤモンドグリッドからなる研磨グリッドを略均一に分布させて固着し研磨面を形成し、該研磨面の断面形状を上記ベース部材の中央横断面で所定の半径を有する凸形の円弧状曲面に形成して成る研磨ドレッサにおいて、上記円周方向に盛り上げられた研磨面に、上記ベース部材の中心から外方に延びる半径方向に対して該ベース部材の回転方向と反対側に傾斜して延びる複数の凹溝を等間隔で形成して成り、上記研磨面を上記研磨盤の研磨パッドの表面に上方から所定の押圧力で押し付けて該研磨パッドを上記研磨面の凸形の円弧状曲面に倣った形で弾性変形させ、上記研磨面と研磨パッドとの接触において円周方向に延びる面接触の状態として研磨するようにしたものである。
【0014】
このような構成により、回転する円形平盤状のベース部材の外周部を所定幅で円周方向に盛り上げた凸形の円弧状曲面の表面にダイヤモンドグリッドからなる研磨グリッドを略均一に分布させて固着した研磨面を、研磨盤の研磨パッドの表面に上方から所定の押圧力で押し付けて該研磨パッドを上記研磨面の凸形の円弧状曲面に倣った形で弾性変形させ、上記研磨面と研磨パッドとの接触において円周方向に延びる面接触の状態として研磨し、上記円周方向に盛り上げられた研磨面に等間隔で形成され、上記ベース部材の中心から外方に延びる半径方向に対して該ベース部材の回転方向と反対側に傾斜して延びる複数の凹溝により、上記研磨パッドを研磨する際に発生する研磨粉等がベース部材の内側部分から外部に排出し易いようにする。
【0015】
また、上記研磨面に形成された凹溝は、少なくともその前半部は、円周方向に盛り上げられた研磨面の内周側面を形成する円に対して接線方向に延びるようにしたものである。これにより、少なくともその前半部が、円周方向に盛り上げられた研磨面の内周側面を形成する円に対して接線方向に延びるように形成された凹溝によって、ベース部材の回転に伴ってその回転方向と反対側にずれる研磨粉等がベース部材の内側部分からスムーズに外部に排出する。
【0016】
さらに、上記研磨面に形成された凹溝の深さは、円周方向に盛り上げられた研磨面の高さと同じ寸法の深さとされている。これにより、円周方向に盛り上げられた研磨面の高さと同じ寸法の深さとされた凹溝によって、上記研磨面を研磨盤の研磨パッドの表面に上方から所定の押圧力で押し付けて該研磨パッドを上記研磨面の凸形の円弧状曲面に倣った形で弾性変形させても、上記凹溝の入口部が研磨粉等で塞がれることがない。
【0017】
さらにまた、上記研磨面に形成された凹溝の深さは、円周方向に盛り上げられた研磨面の高さより大きい寸法の深さとされている。これにより、円周方向に盛り上げられた研磨面の高さより大きい寸法の深さとされた凹溝によって、上記研磨面を研磨盤の研磨パッドの表面に上方から所定の押圧力で押し付けて該研磨パッドを上記研磨面の凸形の円弧状曲面に倣った形で弾性変形させても、上記凹溝の入口部が研磨粉等で塞がれることがない。
【0018】
また、上記研磨面に形成された凹溝の入口部は、円周方向に盛り上げられた研磨面の内周側面より内側まで張り出している。これにより、円周方向に盛り上げられた研磨面の内周側面より内側まで張り出している凹溝の入口部によって、ベース部材の回転に伴ってその回転方向と反対側にずれる研磨粉等を捕捉して、ベース部材の内側部分からスムーズに外部に排出する。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によれば、回転する円形平盤状のベース部材の外周部を所定幅で円周方向に盛り上げその表面にダイヤモンドグリッドからなる研磨グリッドを略均一に分布させて固着した研磨面を、研磨盤の研磨パッドの表面に上方から所定の押圧力で押し付けて該研磨パッドを上記研磨面の凸形の円弧状曲面に倣った形で弾性変形させ、上記研磨面と研磨パッドとの接触において円周方向に延びる面接触の状態として研磨し、上記円周方向に盛り上げられた研磨面に等間隔で形成され、上記ベース部材の中心から外方に延びる半径方向に対して該ベース部材の回転方向と反対側に傾斜して延びる複数の凹溝により、上記研磨パッドを研磨する際に発生する研磨粉等がベース部材の内側部分から外部に排出し易いようにすることができる。したがって、上記ベース部材の内側部分に発生した研磨粉等が上記凹溝を通って外部に排出されて、研磨ドレッサによる研磨レートが低下するのを防止することができる。
【0020】
また、請求項2に係る発明によれば、少なくともその前半部が、円周方向に盛り上げられた研磨面の内周側面を形成する円に対して接線方向に延びるように形成された凹溝によって、ベース部材の回転に伴ってその回転方向と反対側にずれる研磨粉等がベース部材の内側部分からスムーズに外部に排出することができる。したがって、上記ベース部材の内側部分に発生した研磨粉等が上記凹溝を通って外部に排出されて、研磨ドレッサによる研磨レートが低下するのを防止することができる。
【0021】
さらに、請求項3に係る発明によれば、円周方向に盛り上げられた研磨面の高さと同じ寸法の深さとされた凹溝によって、上記研磨面を研磨盤の研磨パッドの表面に上方から所定の押圧力で押し付けて該研磨パッドを上記研磨面の凸形の円弧状曲面に倣った形で弾性変形させても、上記凹溝の入口部が研磨粉等で塞がれることがない。したがって、上記ベース部材の内側部分に発生した研磨粉等が上記凹溝を通って外部に排出されて、研磨ドレッサによる研磨レートが低下するのを防止することができる。
【0022】
さらにまた、請求項4に係る発明によれば、円周方向に盛り上げられた研磨面の高さより大きい寸法の深さとされた凹溝によって、上記研磨面を研磨盤の研磨パッドの表面に上方から所定の押圧力で押し付けて該研磨パッドを上記研磨面の凸形の円弧状曲面に倣った形で弾性変形させても、上記凹溝の入口部が研磨粉等で塞がれることがない。したがって、上記ベース部材の内側部分に発生した研磨粉等が上記凹溝を通って外部に排出されて、研磨ドレッサによる研磨レートが低下するのを防止することができる。
【0023】
また、請求項5に係る発明によれば、円周方向に盛り上げられた研磨面の内周側面より内側まで張り出している凹溝の入口部によって、ベース部材の回転に伴ってその回転方向と反対側にずれる研磨粉等を捕捉して、ベース部材の内側部分からスムーズに外部に排出することができる。したがって、上記ベース部材の内側部分に発生した研磨粉等が上記凹溝を通って外部に排出されて、研磨ドレッサによる研磨レートが低下するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるケミカルマシンポリッシャの研磨盤用研磨ドレッサを示す中央横断面図であり、図2のB−B線断面図である。
【図2】上記研磨ドレッサを示す平面図である。
【図3】上記研磨ドレッサの盛上げ部及び研磨面を示す拡大図であり、図1のD部を示す拡大断面図である。
【図4】図2のE部を示す拡大図であり、(a)はE部の平面図であり、(b)はE部の斜視図である。
【図5】図2のE部を示す他の実施例の拡大斜視図である。
【図6】図7において、研磨面を研磨盤の研磨パッドの表面に上方から所定の押圧力で押し付けて該研磨パッドを上記研磨面の凸形の円弧状曲面に倣った形で弾性変形させた状態の拡大説明図である。
【図7】上記研磨ドレッサの使用状態を示す断面説明図である。
【図8】上記研磨ドレッサを備えたCMPを示す平面図である。
【図9】上記CMPの要部を示す斜視図である。
【図10】CMPによって研磨されるシリコン基板を示す断面図である。
【図11】CMPによってシリコン基板を研磨する状態を示す断面説明図である。
【図12】従来の研磨ドレッサを示す中央横断面図であり、図13のA−A線断面図である。
【図13】上記従来の研磨ドレッサを示す平面図である。
【図14】従来の研磨ドレッサの使用状態を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明によるケミカルマシンポリッシャの研磨盤用研磨ドレッサを示す中央横断面図であり、図2のB−B線断面図である。また、図2は上記研磨ドレッサを示す平面図である。この研磨ドレッサ15は、平坦で回転可能な研磨盤の表面に張り付けられ弾性変形可能な研磨パッドに化学研磨剤を供給して該研磨パッド上でウェハ等の被研磨物の表面を研磨するケミカルマシンポリッシャ(以下「CMP」と略称する)において上記研磨パッドを研磨するものである。
【0026】
まず、上記CMP16の概要について図8及び図9を参照して説明する。図8において、ロードステーション17は、ウェハカセット(図示せず)を載置するために設けられた場所である。このウェハカセットには、図10に示すようなシリコン基板1上に金属層3が形成された処理前のウェハ14が収納されている。クリーンステーション18は、搬送アーム19に上記ウェハ14を渡すために設けられた場所である。上記搬送アーム19は、クリーンステーション18でウェハ14を吸着等して支持し、図中、矢印方向に回転して後述の各位置に搬送する。
【0027】
プライマリプラテン20は、上記ウェハ14の金属層3を実際に研磨する場所であり、図11に示すように、平坦で回転可能な研磨盤4が設けられており、その表面には平坦な研磨パッド6が張り付けられている。また、温度上昇を抑えるための冷却装置等(図示せず)が配設されている。
【0028】
パッドコンディショナ21は、上記プライマリプラテン20の研磨パッド6の表面を研磨するものであり、ドレッサアーム22の先端には、図9に示すように位置調節具23を介して本発明の研磨ドレッサ15が回転自在に取り付けられている。そして、上記パッドコンディショナ21は、ドレッサアーム22の基端部を支点として矢印C−C’方向に回動するようになっている。尚、パッドコンディショナ21は、上記のように矢印C−C’方向に回動するのではなく、ドレッサアーム22の全体を横方向に平行移動させるような構成であってもよい。
【0029】
スラリー供給ノズル24は、pHの小さい硝酸等の酸の化学研磨剤に研磨材を混合させたスラリーをプライマリプラテン20上の研磨パッド6に供給するノズルである。
【0030】
ファイナルプラテン25は、回転可能な平坦な定盤であり、上記プライマリプラテン20上での研磨により処理対象のウェハ14の表面に付着した研磨剤等を洗い落とすために設けられたものである。そして、純水供給ノズル26は、このファイナルプラテン25の表面に純水を供給するノズルである。
【0031】
エンドステーション27は、上記ファイナルプラテン25で洗滌後のウェハ14を搬送アーム19から受け取って一旦置くための場所である。アンロードステーション28は、以上の処理済みのウェハ14を収納するウェハカセットを載置するために設けられた場所である。なお、上記クリーンステーション18とエンドステーション27は、ロードステーション17からアンロードステーション28に向かうウェハ14の搬送経路の途中に設けられている。
【0032】
次に、上記のような構成のCMP16において、プライマリプラテン20に設けられた研磨盤4の研磨パッド6(図11参照)を研磨する研磨ドレッサ15について、図1〜図5を参照して説明する。この研磨ドレッサ15の全体構成は、図2に示すように回転する円形の平盤状のベース部材29の外周部を図1に示すように所定幅で円周方向に盛り上げ、その盛上げ部30の表面にダイヤモンドグリッドからなる研磨グリッドを略均一に分布させて固着し、研磨面31を形成して成る。なお、上記研磨ドレッサ15の回転速度は、従来と同様に例えば毎秒1〜1.5回転程度である。
【0033】
上記ベース部材29は、研磨グリッドを金属電着により固着することができる金属材料で形成され、又はシリコンで形成され、或いは化学研磨剤に対する耐性に優れたベークライト等のジュラコン樹脂で形成されている。また、このベース部材29の板面の例えば2箇所には、図8に示すドレッサアーム22の先端に研磨ドレッサ15を取り付けるための取付け用孔29bがあけられている。
【0034】
そして、図3に示すように、上記円周方向に盛り上げられた研磨面31の断面形状が上記ベース部材29の中央横断面で所定の半径を有する凸形の円弧状曲面に形成されている。即ち、図3において、上記盛上げ部30の断面形状が所定の半径を有する凸形の円弧状曲面に形成され、この凸形の円弧状曲面の盛上げ部30の表面にダイヤモンドグリッドからなる研磨グリッド34が固着されて研磨面31が形成されている。これにより、この研磨面31の断面形状も所定の半径を有する凸形の円弧状曲面に仕上げられることとなる。
【0035】
さらに、上記盛上げ部30の表面への研磨グリッドの固着は、ニッケル等の金属を用いた金属電着によりダイヤモンドグリッドを略均一に分布させて固着し、研磨面31を形成している。なお、金属電着に限られず、ロウ付けで固定してもよい。或いは、ガラスボンド又はレジンボンド等の化学研磨剤に対する耐性を有する接着剤を用いて、上記盛上げ部30の表面へダイヤモンドグリッドを略均一に分布させて接着してもよい。
【0036】
なお、上記研磨面31への研磨グリッドの固着を、金属電着により固着させたものにおいては、該研磨グリッドの固着を容易且つ強固にすることができる。また、上記研磨面31への研磨グリッドの固着を、化学研磨剤に対する耐性を有する接着剤で接着したものにおいては、化学研磨剤による研磨グリッドの剥がれ落ちを防止することができる。さらに、上記研磨グリッドをダイヤモンドグリッドとしたので、ダイヤモンドグリッドは材質が硬いと共に化学研磨剤にも強いので、前記研磨盤4の研磨パッド6を研磨するのに最も適している。
【0037】
ここで、本発明においては、図2に示すように、上記円周方向に盛り上げられた研磨面31に、複数の凹溝33,33,…が等間隔で形成されている。この凹溝33は、前記研磨パッド6を研磨する際に発生する研磨粉やスラリー等がベース部材29の凹んだ状態の内側部分29a(図1参照)から外部に排出し易いようにするもので、上記ベース部材29の中心Oから外方に延びる半径方向に対して該ベース部材29の回転方向Rと反対側に傾斜して延びている。そして、図4(a)に示すように、上記凹溝33は、少なくともその前半部は、ベース部材29の円周方向に盛り上げられた研磨面31の内周側面31aを形成する円に対して接線方向に延びている。このようにすると、上記ベース部材29の回転に伴ってその回転方向Rと反対側にずれる研磨粉等が、ベース部材29の内側部分29aから矢印Qのようにスムーズに外部に排出する。
【0038】
なお、図2及び図4(a)においては、凹溝33の全長が内周側面31aを形成する円の接線方向に直線状に延びている状態を示しているが、本発明はこれに限られず、凹溝33の後半部は上記円の内方又は外方に向けて湾曲する曲線状であってもよい。また、凹溝33の傾斜方向は、上記内周側面31aを形成する円に対して接線方向に限られず、適宜の角度でベース部材29の回転方向Rと反対側に傾斜していればよい。
【0039】
また、図4(b)に示すように、上記研磨面31に形成された凹溝33の深さは、円周方向に盛り上げられた研磨面31の高さhより大きい寸法の深さとされている。すなわち、図4(b)において、ベース部材29の内側部分29aの平面からの研磨面31の高さをhとし、上記凹溝33の底部がベース部材29の内側部分29aの平面より深さtだけ掘られているとすると、この凹溝33の全体の深さは(h+t)となる。このようにすると、後述の図7に示すように、上記研磨面31を研磨盤4の研磨パッド6の表面に上方から所定の押圧力で押し付けて該研磨パッド6を上記研磨面31の凸形の円弧状曲面に倣った形で弾性変形させても、その弾性変形量よりも凹溝33の全体の深さ(h+t)の方が大きく、上記凹溝33の入口部が研磨粉等で塞がれることがない。
【0040】
さらに、図4(a)に示すように、上記研磨面31に形成された凹溝33の入口部33aは、円周方向に盛り上げられた研磨面31の内周側面31aより内側まで張り出している。この入口部33aは、ベース部材29の回転に伴ってその回転方向Rと反対側にずれる研磨粉等を捕捉するもので、その先端部が上記内周側面31aを形成する円の内側まで延びている。これにより、上記ベース部材29の内側部分29aに発生した研磨粉等がスムーズに外部に排出する。
【0041】
なお、図5に示すように、上記研磨面31に形成された凹溝33の深さは、円周方向に盛り上げられた研磨面31の高さhと同じ寸法の深さであってもよい。すなわち、図5において、ベース部材29の内側部分29aの平面からの研磨面31の高さをhとし、上記凹溝33の底部がベース部材29の内側部分29aの平面と同一面であるとすると、この凹溝33の全体の深さはhのみとなる。この場合も、後述の図7に示すように、上記研磨面31を研磨盤4の研磨パッド6の表面に上方から所定の押圧力で押し付けて該研磨パッド6を上記研磨面31の凸形の円弧状曲面に倣った形で弾性変形させても、その弾性変形量よりも研磨面31の高さhの方が大きく、上記凹溝33の入口部が研磨粉等で塞がれることがない。
【0042】
ここで、本発明による研磨ドレッサ15の具体的な寸法を一例として示すと、図2において、ベース部材29の直径は約100mmであり、そのベース部材29の外周部にて円周方向に盛り上げられた研磨面31の所定幅(直径方向の幅)は約7mmであり、該研磨面31の円周方向に等間隔で形成された複数の凹溝33は8本である。そして、図6は、後述の図7において、研磨面31を研磨盤4の研磨パッド6の表面に上方から所定の押圧力で押し付けて該研磨パッド6を上記研磨面31の凸形の円弧状曲面に倣った形で弾性変形させた状態の拡大説明図である。図6において、図4(b)に示す研磨面31の高さhは約0.8mmであり、同じく図4(b)に示す凹溝33の底部がベース部材29の内側部分29aの平面より掘られた深さtは約0.2mmであり、上記研磨パッド6の弾性変形による沈み量cは約0.3mmであり、その弾性変形後の上記凹溝33の入口部の高さdは約0.5mmとなる。しかし、これらの具体的な寸法は、一例であり、適宜変更してもよい。
【0043】
このように構成された研磨ドレッサ15を用いて図8及び図9に示すプライマリプラテン20に設けられた研磨盤4の研磨パッド6を研磨するには、図7に示すように、上記研磨ドレッサ15を図9に示すドレッサアーム22の先端に設けられた位置調節具23の保持具12で保持し、上記研磨盤4を回転させて該保持具12に保持された研磨ドレッサ15の研磨面31を研磨パッド6の表面に上方から接触させることにより、該研磨パッド6の表面を研磨する。
【0044】
このとき、保持具12の中心部に矢印Pのように加工圧力をかけて上記研磨ドレッサ15の研磨面31を研磨盤4の研磨パッド6に上方から押し付けると、該研磨面31の押圧力で上記研磨パッド6はその弾性により少し沈んだ状態で変形する。本発明においては、上記円周方向に盛り上げられた研磨面31の断面形状がベース部材29の中央横断面で所定の半径を有する凸形の円弧状曲面に形成されているので、図7に示すように、まずその円弧状曲面の頂部だけで研磨パッド6の表面に接触し、さらに押圧力が大きくなるに従って研磨パッド6が変形して研磨面31と研磨パッド6との接触が深まると共に、接触部分が上記円弧状曲面の頂部の両側方に広がって行く。
【0045】
そして、上記円周方向に盛り上げられた研磨面31が所定の押圧力で研磨パッド6の表面に押し付けられた状態では、該研磨パッド6の表面は研磨面31の凸形の円弧状曲面に倣った形で変形し、該円弧状曲面の頂部を中心とした或る広がりのある幅で接触して、結果的に研磨面31と研磨パッド6との接触において円周方向に延びる面接触の状態が得られる。
【0046】
このことから、上記研磨面31に分布固着された研磨グリッド34は、或る広がりのある幅で分布固着されたものが研磨パッド6に面として接触して研磨することとなり、一部分のみが早く摩耗してしまうことを防止することができ、研磨ドレッサ15の寿命を長くすることができる。したがって、該研磨ドレッサ15の交換間隔を延長することができ、一つの研磨ドレッサ15で多くの枚数の研磨盤4の研磨パッド6を研磨して、研磨盤4の研磨効率を向上することができる。
【0047】
また、本発明においては、上記円周方向に盛り上げられた研磨面31に、上記ベース部材29の中心Oから外方に延びる半径方向に対して該ベース部材29の回転方向Rと反対側に傾斜して延びる複数の凹溝33が等間隔で形成されているので、上記研磨パッド6を研磨する際に発生する研磨粉等がベース部材29の内側部分29aから外部に排出し易いようにすることができる。したがって、上記ベース部材29の内側部分29aに発生した研磨粉等が上記凹溝33を通って外部に排出されて、研磨ドレッサ15による研磨レートが低下するのを防止することができる。このことから、該研磨ドレッサ15の交換間隔を延長することができる。
【符号の説明】
【0048】
4…研磨盤
5…基台
6…研磨パッド
12…保持具
14…ウェハ
15…研磨ドレッサ
16…CMP
20…プライマリプラテン
21…パッドコンディショナ
22…ドレッサアーム
29…ベース部材
29a…ベース部材の内側部分
30…盛上げ部
31…研磨面
31a…研磨面の内周側面
33…凹溝
33a…凹溝の入口部
34…研磨グリッド
O…ベース部材の中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦で回転可能な研磨盤の表面に張り付けられ弾性変形可能な研磨パッドに化学研磨剤を供給して該研磨パッド上で被研磨物の表面を研磨するケミカルマシンポリッシャの上記研磨パッドを研磨するものであって、回転する円形平盤状のベース部材の外周部を所定幅で円周方向に盛り上げその表面にダイヤモンドグリッドからなる研磨グリッドを略均一に分布させて固着し研磨面を形成し、該研磨面の断面形状を上記ベース部材の中央横断面で所定の半径を有する凸形の円弧状曲面に形成して成る研磨ドレッサにおいて、
上記円周方向に盛り上げられた研磨面に、上記ベース部材の中心から外方に延びる半径方向に対して該ベース部材の回転方向と反対側に傾斜して延びる複数の凹溝を等間隔で形成して成り、上記研磨面を上記研磨盤の研磨パッドの表面に上方から所定の押圧力で押し付けて該研磨パッドを上記研磨面の凸形の円弧状曲面に倣った形で弾性変形させ、上記研磨面と研磨パッドとの接触において円周方向に延びる面接触の状態として研磨するようにしたことを特徴とするケミカルマシンポリッシャの研磨盤用研磨ドレッサ。
【請求項2】
上記研磨面に形成された凹溝は、少なくともその前半部は、円周方向に盛り上げられた研磨面の内周側面を形成する円に対して接線方向に延びるものであることを特徴とする請求項1記載のケミカルマシンポリッシャの研磨盤用研磨ドレッサ。
【請求項3】
上記研磨面に形成された凹溝の深さは、円周方向に盛り上げられた研磨面の高さと同じ寸法の深さであることを特徴とする請求項1又は2記載のケミカルマシンポリッシャの研磨盤用研磨ドレッサ。
【請求項4】
上記研磨面に形成された凹溝の深さは、円周方向に盛り上げられた研磨面の高さより大きい寸法の深さであることを特徴とする請求項1又は2記載のケミカルマシンポリッシャの研磨盤用研磨ドレッサ。
【請求項5】
上記研磨面に形成された凹溝の入口部は、円周方向に盛り上げられた研磨面の内周側面より内側まで張り出していることを特徴とする請求項4記載のケミカルマシンポリッシャの研磨盤用研磨ドレッサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−228082(P2010−228082A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81501(P2009−81501)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(391061510)株式会社フォー・ユー (20)
【Fターム(参考)】