説明

ケーブル摩擦ダンパ

構造部材(4a,4b,5)の間の相対運動を減衰させるための、特に建造物あるいは土木構造物のステイケーブル内の振動をさせるための方法および装置に関する。低摩擦のポリマー材料(2a,2b,3a,3b)から成る摩擦面間の摩擦係合部(1a,1b)により減衰する運動を提供する振動減衰装置が開示されている。ポリマー材料は分散した潤滑剤を含むのが好ましい。低摩擦ポリマーの使用により、広い範囲の移動および力にわたって効果的な一定の減衰が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の要素間の相対運動を減衰する技術分野に関し、特に構造的なステイケーブル内の振動の減衰に関する。
【背景技術】
【0002】
斜張橋、吊橋及び高鉄塔、通信鉄塔および風力タービンのような他のケーブルに支持されるかあるいは補強される建造物には、それらの構造強度と安定性を保証するためのケーブルが必要である。
【0003】
このようなケーブルは、風と雨により生じる振動あるいは構造体の運動により誘発された振動にさらされることが多い。これらの力がケーブの横方向の振動を引き起こすことが
観測されてきた(非特許文献1参照)。振動が終わると、特にケーブルがアンカーポイントに確実に固定されているケーブルの領域内において、このような反復運動によりケーブルは深刻な被害を受ける恐れがある。
【0004】
ケーブル振動ダンパを提供することによりこのようなケーブル振動を抑制することがすでに提案されてきた。ネオプレン、油圧ダンパ、同調マスシステムによる減衰部および渦電流ブレーキのような幾つかの減衰の原理が使用されるかあるいは提案されてきた。しかしながら、これらの装置は全て重大な欠点を伴っている。油圧ダンパの減衰作用は振動の開始時には零に近くで極めて低い値で始まる。これらの力は減衰されるべき点の速度に実質的に比例している。従って、このようなダンパは常に作動中であり、シール部はすぐに傷付き、それによりダンパを無能にする漏洩をもたらす。粘性ダンパと油圧ダンパの別の短所は、ダンパがただ一つのモードのためだけにしか最適化されていないことである。同調マスシステムはあまりにも手に負えなさ過ぎず、かつ技術的に実現するのが困難である。同調マスシステムはただ一つの特殊な固有周波数を減衰させるにすぎない。同調マスシステムの減衰作用は極めて小さい相対的なケーブルの振動にとってすら効果的であり、各動作により磨耗が生じるので、同調マスシステムを使用することは不利であるとこれまで考えられてきた。このようなシステムは高い割合で磨耗し、従ってメンテナンスにかなりの手間が必要である。さらにこれらの減衰システムの一部は滑りと遊びを欠点として有しており、その結果として減衰機能は変わりやすくかつ一貫していない。
【0005】
小さい運動にとって効果的なダンパを使用することの気づいた短所を克服するために、
特許文献1において、比較的大きな力を包含している運動にとってのみ有効である振動減衰装置を使用することが提案された。このことは静摩擦係数よりも著しく高い動摩擦係数を有する摩擦ダンパを使用することにより達せられる。実際の処、鋳鉄が適切な摩擦材料として使用されていることは特許文献1には述べてなかった。その理由は、鋳鉄がその動摩擦係数よりも少なくとも40%高い静摩擦係数を備えた摩擦係合を生じさせるために使用されたことにある。この従来技術の摩擦ダンパはスティックスリップ特性を有する摩擦材料を利用する。用語「スティックスリップ」は、両摩擦面間の摩擦境界面の静摩擦係数と動摩擦係数の間の著しい差の結果として生じる効果に関連する。比較的大きな接線方向力は、摩擦要素間の運動を始めるのに必要とされる。しかしながら、一度この大きな接線を超え、摩擦要素が互いに動き出すと、運動を維持するために必要とされる接線方向力は著しく小さい。このモードにおいて、静摩擦係数は一定に閾値より低い接線方向力のために運動を防止するバリアあるいはフィルタとして作用する。摩擦面が一度動きを開始すると、動摩擦係数が摩擦面の相対運動に抗して作用する接線方向減衰力を決定し、それにより運動を減衰させるように作用する。鋳鉄のような従来技術で使用される摩擦材料の動摩擦係数は、その静摩擦係数の60%の範囲内にあるのが一般的である。しかしながら、湿度のような環境要因に依存して、かつ摩擦面上の磨耗あるいは凹凸の量に依存して、これらの摩擦係数は両方とも変わりえる。従って、従来技術の摩擦ダンパは大きく、かつ高エネルギーの振動だけを減衰させるように設計されていた。さらに鋳鉄の摩擦パッドも寿命に関係した効果の損害を深刻に受けている。例えばその減衰性能を損なう鋳鉄の面は磨かれる恐れがある。あるいは両面が共に融解する危険がある程度に高い、鋳鉄内の温度を摩擦が生じさせるおそれがある。
【0006】
特許文献1に開示された従来技術のダンパは、二つの摩擦面間の比較的一定な法線力を加えるためにバネを使用することにより、両摩擦係数の変動を減らそうとした。このようにして、熱的な膨張と収縮が摩擦材料内の法線力に与える影響はほとんどなくなる。
【0007】
しかしながら、従来技術の摩擦ダンパは以下の短所を有している。
【0008】
− 第一に、従来技術のダンパは、一定の閾値よりも大きい、力と大きさを備えた運動しか減衰させないように設計されている。このように、摩擦面間の相対運動の数を減らすことが期待されていて、それによりダンパ内の磨耗(と従ってメンテナンス費用)が減った。ダンパが小さい大きさあるいは低エネルギーの振動を減衰しないことを意味する事実にも関らず、この解決手段が提案された。しかしながら、低エネルギーの振動を含んだ振動の範囲、あるいは小さい力と大きさの運動の範囲をできるだけ広く減衰させることが所望可能であることが多い。その理由は、小さい運動でも減衰されるべき構造体内の加工硬化と磨耗を生じさせるおそれがあることである。小さくて低エネルギーの振動を減衰させることにより、さらに例えば累積共振効果により大きくさらに有害な振動への増幅を防ぐことが可能である。
− 第二に、たとえ前記摩擦ダンパが摩擦要素間の運動の数を減らすように設計されたとしても、従来技術の摩擦ダンパにおける鋳鉄の使用は、前記摩擦ダンパが依然として摩擦面の比較的急速な磨耗を欠点として有することを意味しており、従って定期的な検査、調整およびメンテナンスが必要とされる。
− 第三に、従来技術に使用された摩擦材料は、特にこれらのダンパが斜張橋のような曝露条件で使用される場所で、さらに湿度と水の浸入を防ぐのが難しい場所では腐食を欠点として有している。
− 第四に、従来技術のダンパのスティックスリップ特性により、その相対運動が減衰される摩擦面間の運動は突然途切れる。接線方向力がダンパの静摩擦係数を克服するために十分大きくなる拍子に突然のジャンプが起こる。これが起こると、減衰されるべき構造要素の材料(普通は鋼)は、突然でかつ比較的大きな変形を被る。このタイプの不連続な変形を繰返すと、機械的磨耗と加工硬化のために、鋼内の構造欠陥が深刻になるおそれがある。ダンパは例えばケーブルの横方向の運動を減衰させるために、ステイケーブルのアンカーポイント近くに位置決めされることが多く。それによりダンパが固定されたアンカーに入るケーブルの変形量は減る。その目的は、ケーブルとアンカーの連結部における鋼の変形の数と大きさを減らすことであり、したがって磨耗および構造的損傷の危険は少なくなる。
− 第五に、従来技術のダンパーのブレーキ摩擦(および従ってダンパの減衰機能)は、摩擦面が湿度により影響を受けると著しく変わるおそれがある。水はこのようなダンパーに関する特殊な問題を提示する。その理由は、水により摩擦面上に腐食が生じるだけでなく、摩擦面上の如何なる湿気でもダンパの摩擦係数を著しく減らすおそれがある、摩擦面上での予測できない潤滑効果を形成するからである。
− 第六に、従来技術のダンパーにより、ダンパーが作動中に、ノイズのレベルが顕著になるおそれがある。鋳鉄の摩擦パッド(s)に対する鋼製ケーブルの各運動により、長期の構造的保全性に影響を与える構造体を通る、不快な可聴音の放射と高周波振動の伝導が生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第1035350号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】I. Kovacs, ”Zur Frage der Seilschwingungen und der Seildaempfung“, DieBautechnik 3〜10頁 1982年10月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は上記の問題の一部あるいは全てを解決する保守の手間がかからない減衰方法と装置を提供することである。特に本発明は、改善された周波数幅あるいは振動エネルギー応答、変動する環境条件下でさらに一定の減衰性能そして改善された耐摩耗性を有する減衰機能を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明で言及した減衰は、アンカーポイントのような固定された構造体に対するケーブルの横方向の振動運動を使って説明してある。特許文献1は、本発明の方法と装置がどのようにかつどこで達せられるのかの図示した例として使用してある。しかしながら、本発明の減衰部がこの形状に限定される必要がないこと、どこに減衰部が必要とされるのか、特に広い周波数あるいは振動エネルギーの応答および/または一定の減衰特性を有するためにどこに減衰部が必要とされるのかを本発明の減衰部がどの状況下でも適用できることが予想される。減衰部はただ一方向だけでは必要とされず、例えば一平面内で複数の方向で、あるいは三次元内にある。振動減衰装置は一つ、二つあるいはそれより多くの組の摩擦面を含んでいてもよく、これらの組の摩擦面は空間的な配設が特別な用途に合うように配置されている。本発明のダンパは構造要素の減衰する振動運動の環境で説明されてきたが、他の種類の相対運動を減衰させるために使用することもできる。
【0013】
本発明の課題は、建造中の第一の構造部材と第二の構造部材の間の相対運動を減衰させるための振動減衰装置を提供することであり、前記振動減衰装置は第一の摩擦要素と第二の摩擦要素を備えており、第一の摩擦要素は第一の構造部材と機械式に結合しており、第一の摩擦要素は第一の摩擦材料でできた第一の摩擦面を備えており、第二の摩擦要素は第二の構造部材と機械式に結合しており、第二の摩擦要素は第二の摩擦材料でできた第二の摩擦面を備えており、第一及び第二の摩擦面の間の相対運動は、第一及び第二の摩擦面の間の摩擦係合部により減衰されるように、第一及び第二の摩擦面は相互的な摩擦係合部であり、振動減衰装置は、第一及び第二の摩擦材料の少なくとも一つが低摩擦のポリマー材料であることを特徴とする。
【0014】
本発明の一実施例において、本発明の振動減衰に使用される低摩擦のポリマー材料は分散した潤滑油を備えている。
【0015】
本発明の他の実施例において、低摩擦ポリマー材料はポリエチレンテレフタレートである。
【0016】
本発明の他の実施例において、第一摩擦面の第一摩擦材料と第二摩擦面の第二摩擦材料の間の摩擦係合部の静摩擦係数と動摩擦係数は、静摩擦係数の25%より少ない量だけ異なっている。
【0017】
本発明の他の実施例において、第一及び第二の構造部材の内少なくとも一つはテンションのかかったケーブルである。
【0018】
本発明の他の実施例において、バイアス手段が第一及び第二の摩擦面を互いに対して押圧するバイアス力を供給するために設けられている。この実施例の変形によれば、バイアス手段は少なくとも一つのバネである。
【0019】
本発明の他の実施例において、摩擦調節手段(7a,7b)が第一及び第二の摩擦面の間の摩擦係合部の摩擦係数を調節するために設けられている。この実施例の変形において、摩擦調節手段はバイアス力を調節するためのバイアス調節手段を備えている。
【0020】
本発明の他の実施例において、第一及び第二の摩擦材料は、どちらも低摩擦ポリマー材料である。
【0021】
本発明の他の実施例において、第一及び第二の摩擦材料の内少なくとも一方は低摩擦ポリマー材料であり、他方は金属である。
【0022】
さらに本発明の課題は、第一の構造部材及び第二の構造部材を備えた土木構造物を提供することであって、土木構造物が上記記載の、一つあるいはそれより多くの振動減衰装置を備えている。本発明による土木構造物の一実施例において、第一の構造部材は構造用ケーブルであり、テンションを受けて、第二の構造部材において少なくとも一つのアンカーポイントに取付けられている。この実施例の変形において、振動減衰装置、あるいは振動減衰装置の少なくとも一つが、少なくとも一つの別のポイントに隣接したケーブル内の振動運動を減衰させるように配置されている。
【0023】
本発明の他の課題は、第一の構造部材と第二の構造部材の間の相対運動を減衰させる方法であって、この方法が以下の工程、すなわち第一の摩擦材料を備えた第一の摩擦面を有する第一の構造部材を備える第一の工程と、第二の摩擦材料を備えた第二の摩擦面を有する第二の構造部材を備える第二の工程と、第一および第二の摩擦面の間の相対運動が、第一および第二の摩擦面の間の摩擦係合部により減衰するように、第一および第二の摩擦面を相互的な摩擦係合部内で互いに押圧するための力を供給する第三の工程とを備えており、この方法は、第一および第二の摩擦材料の内の少なくとも一つが、低摩擦ポリマー材料であることを特徴とする。
【0024】
これらのこと及び本発明の他の長所は以下の説明と図から理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ケーブ内の振動を減衰させるための、本発明の一実施例の一部を断面で表した正面図である。
【図2】本発明がケーブ内の振動を減衰させるためにどのように使用できるのかの僅かに異なる実施例の一部を断面で表した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0026】
本発明の実施例を図1及び2に示してある。各図の上半分は断面図で示してあるが、下半分は正面図で示してある。以下の記述はどこを示したのかを除いて図1及び2の両方に言及している。図1と2に描いた配設は、異なる参照符合ではあるが、特許文献1の図に対応している。
【0027】
両図において、多数の束ねられたケーブルストランドから成るケーブル10を長手方向軸線12でもって示してある。実質的に二つの部分組立品、すなわちケーブルに機械式に固定されている第一の部分組立体と(図示していない)基準点に機械式に固定されている第二の部分組立体を備えたケーブル減衰システムが示してある。基準点はケーブルの固着部あるいはケーブルが固定される構造体の一部のような一定の基準であるのが普通である。しかしながら、ケーブル減衰システムは、振動減衰装置と共に動作して、ケーブルに対するその運動がそれ自体減衰される質量減衰システムを提供するためのバネと質量の組立体である。
【0028】
ケーブルに固定された第一のダンパ部分組立体は、ケーブル10の周囲に固定されたカラー9と、直交要素5と直交要素に取付けられた二つの摩擦要素3aと3bを備えている。
【0029】
基準点に固定された第二のダンパ部分組立体は、二つの別の摩擦要素2aと2bを備えており、これらの摩擦要素はフレーム4aと4b内に順番に取付けられたネジが切られた調節可能なホルダ7aと7b内に取付けられている。フレーム4aと4bは板バネ5aと5bに対して端部に固定されており、板バネ5aと5bの他方の両端部は、固定部11により一緒にかつ基準点に固定されている。バネとフレームの配設は、特許文献1に開示されたものと同じであり、かつ摩擦要素を一緒に推進めている一定の正常な力を保証するように含まれている。
【0030】
1aと1bは摩擦面が係合し、かつ減衰に必要な摩擦を生じさせる領域を示す。
【0031】
図1と2は、摩擦パッド2a,2b、3a及び3bの形状だけが異なっている。図1は
各摩擦パッド対の半分が、ネジが切られた調節可能なホルダ7aと7b内に取付けられた摩擦要素のブロックである配設例を示す。ネジが切られたユニットは、他の摩擦要素3a,3bに向かって、あるいは前記摩擦要素から離間するようにブロックを進めるかあるいは引込めるために使用することができ、前記他の摩擦要素はケーブルに対して固定されている部品5に接着される低摩擦ポリマー材料の一片である。
【0032】
図2は摩擦面がより大きく、かつ適宜ホルダ13a,13bもしくは中央部品5の面に接着される摩擦パッド2a,2b、3a及び3bの組合せの対として使用されていること以外は類似の配設を示している。
【0033】
両図が二対の摩擦面を示し、これらの摩擦面が同じ低摩擦ポリマー材料でできていてもよいが、摩擦係合部1a,1bは、異なる数の面を使用することにより、摩擦パッド用の同じポリマー材料を使用することにより、あるいは摩擦面の一つもしくは幾つかのためのポリマー材料を使用することにより、そして金属のような異なる材料を使用することにより達せられることを留意すべきである。
【0034】
図1及び2に示した摩擦要素(2a,2b、3a及び3b)の一部あるいは全ては、分散した潤滑剤を含んだポリエチレンテレフタレート(PET)のような低摩擦ポリマー材料から成るのが好ましい。このような材料により、極めて低くかつ一定の摩擦係数と同じく、高い体磨耗性も得られる。低摩擦ポリマー材料は非常に弾力があり、かつ高荷重に耐えることができ、著しい変形あるいは圧縮力下においても形状を維持する。このような材料の一つは、Ertalyte TXTMの名称下で米国クアドラント社により市場で取引されている。この種の低摩擦ポリマーは、軸受、ブッシング、滑動レール、ローラ及びスライドパッドのような低摩擦以外に機械的強度を要求する応用範囲で使用されている。摩擦係数が極めて低いので、これらの材料は摩擦ブレーキ型ダンパのためには反直感的選択である。しかしながら、Ertalyte TXTMの摩擦係数が極めて低いにもかかわらず、板バネ5aと5b及びホルダ7aと7bは、必要量の摩擦係合を与えるために十分な法線力が摩擦要素に作用するように設計されてもよい。摩擦要素2a,2b、3a及び3bの係合面(1a,1b)の領域は、要求される摩擦係合を与えるように選定されてもよい。
【0035】
このような低摩擦ポリマー材料の使用は、それらの摩擦係数が年とともに著しくは変わらない、すなわちそれらの摩擦係数が水あるいは湿度がある状態で変化しないという別の長所を有している。低摩擦ポリマー材料は実質的に作動中は静かであり、低摩擦ポリマー材料の摩擦特性は従来技術と比べて、極めて減少したスティックスリップ挙動を示す。
【0036】
各対の摩擦面の一方あるいは両方がErtalyte TXTMでできている好ましい配設において、結果として生じる摩擦係数は、0.15〜0.18の範囲内に見出されるのが一般的である。静摩擦係数は動摩擦係数に比べて約25%高い。これを従来技術のダンパと比較すると、鋳鉄の摩擦面は0.5〜1.0の間の摩擦係数を有しており、静摩擦係数は動摩擦係数に比べて50〜60%高い。
【0037】
潤滑剤を含むPETはさらに磨耗に対して極めて減少した傾向を示しており、磨耗は多少とも一定の割合でおこる。実験結果から、運転開始時(いわゆる慣らし運転期間あるいは初期運転期間)での2000振動周期毎における約0.05mmの磨耗率がわかった。しかしながら、この初期期間後、磨耗率は無視できるほど小さい。比較により、慣らし運転期間時の従来技術の鋳鉄の磨耗率は250周期毎において0.5mmのオーダーである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造中の第一の構造部材と第二の構造部材の間の相対運動を減衰させるための振動減衰装置であって、前記振動減衰装置が第一の摩擦要素(2a,2b)と第二の摩擦要素(3a,3b)を備えており、
第一の摩擦要素(2a,2b)が第一の構造部材と機械式に結合しており、第一の摩擦要素(2a,2b)が第一の摩擦材料でできた第一の摩擦面を備えており、
第二の摩擦要素(3a,3b)が第二の構造部材と機械式に結合しており、第二の摩擦要素(3a,3b)が第二の摩擦材料でできた第二の摩擦面を備えており、
第一及び第二の摩擦面の間の相対運動が、 第一及び第二の摩擦面の間の摩擦係合部(1a,1b)により減衰されるように、第一及び第二の摩擦面が相互的な摩擦係合部(1a,1b)であり、
振動減衰装置が、第一及び第二の摩擦材料の少なくとも一つが低摩擦ポリマー材料であることを特徴とする振動減衰装置。
【請求項2】
低摩擦ポリマー材料が分散した潤滑油を備えていることを特徴とする請求項1記載の振動減衰装置。
【請求項3】
低摩擦ポリマー材料がポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1または2に記載の振動減衰装置。
【請求項4】
第一摩擦面の第一摩擦材料と第二摩擦面の第二摩擦材料の間の摩擦係合部(1a,1b)の静摩擦係数と動摩擦係数は、静摩擦係数の25%より少ない量だけ異なっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の振動減衰装置。
【請求項5】
第一及び第二の構造部材の内少なくとも一つがテンションのかかったケーブルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の振動減衰装置。
【請求項6】
第一及び第二の摩擦面を互いに対して押圧するバイアス力を供給するためのバイアス手段(5a,5b)を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の振動減衰装置。
【請求項7】
バイアス手段(5a,5b)が少なくとも一つのバネであることを特徴とする請求項6に記載の振動減衰装置。
【請求項8】
第一及び第二の摩擦面の間の摩擦係合部の摩擦係数を調節するための摩擦調節手段(7a,7b)を備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の装置。
【請求項9】
摩擦調節手段(7a,7b)がバイアス力を調節するためのバイアス調節手段を備えていることを特徴とする請求項8に記載の振動減衰装置。
【請求項10】
第一及び第二の摩擦材料が、どちらも低摩擦ポリマー材料であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の振動減衰装置。
【請求項11】
第一及び第二の摩擦材料の内少なくとも一方が低摩擦ポリマー材料であり、他方が金属であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の装置。
【請求項12】
第一の構造部材及び第二の構造部材を備えた土木構造物において、
土木構造物が請求項1〜11のいずれか一つに記載の、一つあるいはそれより多くの振動減衰装置を備えていることを特徴とする土木構造物。
【請求項13】
第一の構造部材が構造用ケーブルであり、テンションを受けて、第二の構造部材において少なくとも一つのアンカーポイントに取付けられていることを特徴とする請求項12に記載の土木構造物。
【請求項14】
振動減衰装置の少なくとも一つが、少なくとも一つの別のポイントに隣接したケーブル内の振動運動を減衰させるように配置されていることを特徴とする請求項13に記載の土木構造物。
【請求項15】
第一の構造部材と第二の構造部材の間の相対運動を減衰させる方法であって、
この方法が以下の工程、すなわち
第一の摩擦材料を備えた第一の摩擦面を有する第一の構造部材を備える第一の工程と、
第二の摩擦材料を備えた第二の摩擦面を有する第二の構造部材を備える第二の工程と、
第一および第二の摩擦面の間の相対運動が、第一および第二の摩擦面の間の摩擦係合部(1a,1b)により減衰するように、 第一および第二の摩擦面を相互的な摩擦係合部
(1a,1b)内で互いに押圧するための力を供給する第三の工程とを備えており、
この方法が、第一および第二の摩擦材料の内の少なくとも一つが、低摩擦ポリマー材料であることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−515880(P2013−515880A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545106(P2012−545106)
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067870
【国際公開番号】WO2011/076277
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(511226524)ファウ・エス・エル・インターナツイオナール・アクチエンゲゼルシヤフト (8)
【Fターム(参考)】