説明

コエンザイムQ10ナノ粒子、その製造方法及び上記ナノ粒子を含む組成物

本発明は、コエンザイムQ10ナノ粒子、その製造方法及び上記ナノ粒子を含む組成物に関する。本発明によれば、コエンザイムQ10を水混和性有機溶媒のみを単独で使用して溶解させ、低いエネルギー条件である単純撹拌によって容易にナノ化及び可溶化させることができ、アミノ酸またはタンパク質によって分散安定化させることができる。コエンザイムQ10がナノサイズを持って可溶化されることによって、体内吸収率が増加し、ナノ粒子とともにアミノ酸及びタンパク質を同時に伝達することができるので、コエンザイムQ10ナノ粒子を含む食品、化粧品、医薬への効果的な活用が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コエンザイムQ10ナノ粒子、その製造方法及び上記ナノ粒子を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コエンザイムQ10は、ユビデカレノンまたは助酵素Q10とも言い、2、3−ジメトキシ−5−メチル−6−ポリプレニル−1、4−ベンゾキノン側鎖のイソプレン単位が10である、高等動物に存在するユビキノン類(C5990、分子量863.34)である。コエンザイムQ10は、助酵素として活性を有するだけでなく、酸素利用効率を改善させる作用を有するビタミン類似作用物質として知られている。また、ミトコンドリア中のアデノシン3リン酸の生産に必須な助酵素であり、免疫機能を向上させて、心臓病、高血圧、リューマチ性弁(valve)疾患、歯槽の炎症などに対する有効性を有するものと報告されている。また、鬱血性心不全、脳血管障害、抗癌剤の副作用防止(アドリアマイシン(adriamycin)による心臓障害の防止)、疲労回復、エネルギー復活、生体内の活性酸素に対する抗酸化などに使用されていて、皮膚外用剤としての老化防止に対する有効性も期待される。
【0003】
しかし、水に対して難溶性であり、光、熱またはpH変化によって安定性が劣化する問題点があり、現在、コエンザイムQ10の安定性を確保し、体内吸収率を高めるための研究が多様に行われている。
【0004】
水難溶性活性成分を可溶化する従来技術として、次のようなものなどがある。
特許文献1には、ポリエチレングリコール、硬化ひまし油ポリオキシエチレン−(20)−エーテルなどの非イオン性界面活性剤を使用し、マントンゴリン(Manton Gaulin)型の高圧ホモゲナイザー(500〜550kg/cm2)で処理された脂肪乳剤が開示された。
【0005】
特許文献2及び3には、ユビキノンを油脂に溶解し、哺乳類の乳のうち脂肪球被膜を利用して乳化し、粒径1〜5μmの粒子を分画し、吸収性を改善させた組成物が開示された。
【0006】
また、水難溶性活性成分を非極性オイルに均質に溶解させ、ポリオールまたは多価アルコールにレシチンを付加し、界面活性剤を加えて加温撹拌した後、レシチンが均質に分散した時、これに水難溶性活性成分が溶解された非極性オイルを添加し、プレエマルジョン化させ、上記プレエマルジョンを高圧乳化器(microfluidizer)に通過させて、自己乳化伝達体を生成する製造方法が特許文献4に開示された。
【0007】
特許文献5には、コエンザイムQ10を含有するナノ粒子を製造する方法として、生体内で分解しない難分解性高分子であるポリメチルメタクリレートとコエンザイムQ10をジクロロメタンのように水とほとんど混ぜなく且つ沸騰点があまり高くない有機溶媒に溶解させた後、界面活性剤を含有する水性溶液に1次乳化させ、高圧乳化器(500bar〜1,500bar圧力、20mL/min〜150mL/min流速)を利用して2次乳化させてナノ乳化物を収得し、溶媒抽出によりジクロロメタンを除去しながら乳化物を硬化させて、内部に活性成分としてコエンザイムQ10を含有する経皮吸収型ナノ粒子を製造する方法が開示されている。
【0008】
また、特許文献6には、水難溶性であるパクリタキセル(paclitaxel)をクロロホルムに溶解させた後、ヒト血清アルブミン水溶液に添加させて一次撹拌させた後、9,000〜40,000psiの高い圧力を利用した高圧ホモゲナイザーを使用してアルブミンと結合したパクリタキセルナノエマルジョンを製造し、40℃で減圧の下に有機溶媒を除去し、160〜220nmの大きさを有するパクリタキセルナノ粒子を製造する製造方法が開示された。上記方法によれば、水混和性溶媒を単独で使用する場合には、ナノからマイクロサイズの広範囲な結晶性粒子が形成されるので、ナノサイズの粒子のみを製造する場合には、水不混和性溶媒と混合して使用しなければならないし、また、高圧ホモゲナイザーのような高エネルギーを必要とする装置を使用しなければならない。
【0009】
前述したように、水難溶性活性成分を可溶化するための従来の方法は、乳化剤を含めた多数の添加剤を使用しなければならないし、または、加温と1次撹拌及び2次に高い圧力を利用した分散方法を使用しなければならないので、多いエネルギーを必要とし、様々な工程を進行しなければならないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】日本国特開昭60−199814号公報
【特許文献2】ヨーロッパ特許EP494651B1号明細書
【特許文献3】米国特許US5298246号明細書
【特許文献4】韓国特許登録10−0835250号公報
【特許文献5】韓国特許登録10−0463167号公報
【特許文献6】米国特許公開US2008/0160095号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、水難溶性であるコエンザイムQ10を可溶化し、体内吸収率を高めたコエンザイムQ10ナノ粒子を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、製造工程を単純化し、低いエネルギーを使用して製造効率を高めたコエンザイムQ10ナノ粒子の製造方法及び上記ナノ粒子を含む組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、アミノ酸及びタンパク質よりなる群から選択される1つまたは2つ以上の成分が結合したコエンザイムQ10ナノ粒子を提供する。また、水混和性溶媒のみを単独で使用してコエンザイムQ10を溶解させ、上記溶液にアミノ酸またはタンパク質を加えた後、水混和性溶媒を除去し、コエンザイムQ10ナノ粒子を製造する方法及び上記コエンザイムQ10ナノ粒子を含む組成物を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コエンザイムQ10を水混和性有機溶媒のみを単独で使用して溶解させ、低いエネルギー条件である単純撹拌により容易にナノ化及び可溶化させることができ、アミノ酸またはタンパク質により分散安定化させることができる。コエンザイムQ10がナノサイズを持って可溶化されることによって、体内吸収率が増加し、ナノ粒子とともにアミノ酸及びタンパク質を同時に伝達することができるので、コエンザイムQ10ナノ粒子を含む食品、化粧品、医薬への効果的な活用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】システインで可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の粒度分布図である。
【図2】セリンで可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の粒度分布図である。
【図3】魚の皮膚から抽出したゼラチンで可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の粒度分布図である。
【図4】豚の皮膚から抽出したゼラチンで可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の粒度分布図である。
【図5】牛の皮膚から抽出したゼラチンで可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の粒度分布図である。
【図6】卵白アルブミンで可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の粒度分布図である。
【図7】牛血清アルブミンで可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の粒度分布図である。
【図8】ヒト血清アルブミンで可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の粒度分布図である。
【図9】1)コエンザイムQ10粉末、2)コエンザイムQ10粉末を水に分散させた時、上層として層分離された水溶液、3)コエンザイムQ10が牛血清アルブミンで可溶化されて生成された半透明の黄色水溶液の写真である。
【図10】牛血清アルブミンで可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真である。
【図11】ヒト血清アルブミンで可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の長期間の分散安定性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、アミノ酸及びタンパク質よりなる群から選択される1つまたは2つ以上の成分が結合したコエンザイムQ10ナノ粒子を提供する。
【0017】
コエンザイムQ10を水と親和力がある水混和性有機溶媒に溶解させた後、上記溶液をアミノ酸及びタンパク質よりなる群から選択される1つまたは2つ以上の成分を含む溶液内に添加して撹拌し、上記有機溶媒を除去することによって、アミノ酸またはタンパク質と結合したコエンザイムQ10ナノ粒子を得ることができる。上記アミノ酸またはタンパク質とコエンザイムQ10との結合は、例えば、疎水性相互作用(hydrophobic interaction)、水素結合(hydrogen bonding)、静電相互作用(electrostatic interaction)、ファンデルワールス力(van der waals forces)などの物理的結合であることができる。上記アミノ酸またはタンパク質と結合したコエンザイムQ10ナノ粒子は、アミノ酸またはタンパク質により保護され、安定しながらも、水中に可溶化されることができ、水溶液内でのかたまり現象や水より低い比重によるコエンザイムQ10の水面浮上効果が発生しないので、本発明は、水に可溶化され、体内吸収が容易であり、且つ安定性が増加したコエンザイムQ10ナノ粒子を提供する。本発明のアミノ酸及びタンパク質よりなる群から選択される1つ以上の成分が結合したコエンザイムQ10ナノ粒子を製造するために、上記アミノ酸とタンパク質をそれぞれ使用することもでき、アミノ酸とタンパク質を混合使用することもできる。
【0018】
本発明の1つの具体例において、上記アミノ酸は、システインまたはセリンよりなる群から選択される1つ以上であることができる。
【0019】
本発明の他の具体例において、上記アミノ酸は、水溶性アミノ酸をさらに含むことができる。例えば、上記水溶性アミノ酸は、メチオニン、アルギニン、グリシン、グルタミン、スレオニン、プロリン、イソロイシン、アラニン、リシン及びグルタミン酸よりなる群から選択される1つ以上であることができる。
【0020】
本発明の他の具体例において、上記タンパク質は、ゼラチン、アルブミン、フィブリノゲン、リゾチーム、絹フィブロイン、セリシン、トリプシノゲン及びペプシンよりなる群から選択される1つ以上であることができる。上記ゼラチン、血清アルブミンなどは、疎水性相互作用または静電相互作用のような吸着作用を有し、このような吸着作用に起因してコロイド粒子を溶液内で分散安定化させる機能を有することが報告された(Lakshmi-narasimhan Krishnamurthy et al., Journal of Colloid and Interface Science, 280, 264-275, 2004)。
【0021】
本発明のさらに他の具体例において、上記タンパク質は、水溶性タンパク質をさらに含むことができる。
【0022】
本発明の1つの具体例において、上記アミノ酸の含量は、コエンザイムQ10 1重量部に対して0.5〜100重量部であることができる。アミノ酸の含量が0.5重量部未満の場合には、コエンザイムQ10を充分に取り囲んで安定化させることができない。また、100重量部超過の場合には、粘度が非常に高いため、可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子を製造することができない。
【0023】
本発明のさらに他の具体例において、上記タンパク質の含量は、コエンザイムQ10 1重量部に対して0.5〜100重量部であることができる。タンパク質の含量が0.5重量部未満の場合には、コエンザイムQ10を充分に取り囲んで安定化させることができない。また、100重量部超過の場合には、粘度が非常に高いため、可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子を製造することができない。
【0024】
また、本発明は、可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の製造方法を提供する。具体的な製造方法は、次のように、1)コエンザイムQ10を水混和性有機溶媒の中に溶解させて、コエンザイムQ10が溶解された混合溶液を製造する段階と;2)段階1)の混合溶液をアミノ酸及びタンパク質よりなる群から選択される1つまたは2つ以上の成分を含む水溶液に加えて撹拌し、上記アミノ酸及びタンパク質よりなる群から選択される1つまたは2つ以上の成分が結合したコエンザイムQ10のナノ粒子を生成する段階と;3)上記水混和性有機溶媒を除去する段階と;を含む。
【0025】
段階1)は、界面活性剤を含めた乳化剤または多数の添加剤を使用する必要なく、水混和性有機溶媒のみを使用してコエンザイムQ10を溶解させることを特徴とする。上記水混和性有機溶媒は、これに限定されるものではないが、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン、ピロリドン、1、3−ジメチル−3、4、5、6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、アセトン及びアセトニトリルよりなる群から選択されることができる。
【0026】
段階2)は、アミノ酸及びタンパク質よりなる群から選択される1つまたは2つ以上の成分を含む水溶液内に段階1)の混合溶液を添加して撹拌すれば、水混和性有機溶媒が水に速く拡散しながらコエンザイムQ10がアミノ酸及びタンパク質と結合し、水溶液内で可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子を形成する段階である。本発明によれば、従来技術のように、高エネルギーのホモゲナイザー(homogenizer)、ホモミキサー(homomixer)などを使用する必要なく、低いエネルギー水準の単純撹拌だけでコエンザイムQ10の可溶化及びナノ化が可能である。本発明の1つの具体例において、上記単純撹拌の撹拌速度は、100〜1000rpmであることができる。
【0027】
本発明の可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子を製造するために、上記アミノ酸とタンパク質はそれぞれ使用することもでき、アミノ酸とタンパク質を混合使用することもできる。
【0028】
段階3)で、水混和性有機溶媒を除去する方法は、特定の方法に限定されず、当業界に公知された方法を利用することができる。例えば、揮発性溶媒を使用する場合、撹拌による溶媒蒸発方法、減圧による溶媒蒸発方法または凍結乾燥方法を使用することができ、場合によっては、分画分子量(Molecular Weight of Cut-Off)分離膜フィルターを利用して相対的に分子量が低い有機溶媒のみを選択的に分離し、有機溶媒を除去することができる。
【0029】
例えば、タンパク質が結合したコエンザイムQ10ナノ粒子から水混和性有機溶媒を除去する場合には、分離膜フィルターを利用しても、コエンザイムと結合せず、水溶液内に残っている分子量が大きいタンパク質をも精製することができる。但し、アミノ酸が結合したコエンザイムQ10ナノ粒子から水混和性有機溶媒を除去するために分離膜フィルターを使用する場合には、コエンザイムQ10と結合せず、水溶液の中に残っているアミノ酸は、分子量が小さいため、分離膜フィルターを通過して抜け出るので、残っているアミノ酸を再使用することができないので、凍結乾燥することが好ましい。
【0030】
また、本発明は、上記可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子を含む組成物を提供する。
【0031】
本発明の1つの具体例において、上記可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子を含む組成物は、食品組成物であることができる。
【0032】
その用途において特に制限されず、すべての種類の食品に適用することが可能である。コエンザイムQ10ナノ粒子を含む組成物を含有する食品の例としては、清凉飲み物、スポーツ飲み物、炭酸飲み物、果汁飲み物、乳酸菌飲み物、アルコール飲み物、ビタミン・ミネラル飲み物、ドリンク剤などの飲み物;うどんやスパゲッティなどの麺類;チョコレート、パン、ビスケット、キャンデー、ゼリーなどのパン・お菓子類;アイスクリーム、氷果子などの氷果子類;ヨーグルト、ハムなどの乳肉加工食品;みそ、ソース、液状スープ、たれ、ドレッシングなどの調味料;豆腐、麺類などの加工食品;マーガリン、脂肪(fat)スプレッド、ショートニングなどの油脂加工食品などを挙げることができるが、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。また、当業者に広く公知された技術によって食品に通常使用される添加剤を含めて、コエンザイムQ10を含有する食品を製造することができる。
【0033】
本発明の他の具体例において、上記可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子を含む組成物は、化粧品組成物であることができる。
【0034】
コエンザイムQ10は、抗酸化、抗炎、疲労回復、皮膚保湿及び老化防止効果を提供するところ、コエンザイムQ10ナノ粒子を含む組成物を化粧品に利用可能である。本発明による化粧品組成物は、その剤形において特に限定されないが、例えば、柔軟化粧水、栄養化粧水、マッサージクリーム、栄養クリーム、パック、ジェル、エッセンス、リップスティック、メーキャップベース、ファウンデーション、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、クレンジング、洗顔剤、せっけん、シャンプー、リンス、トリートメント及び美容液などに含まれることができる。このような化粧品は、水性ビタミン、油性ビタミン、高分子ペプチド、高分子多糖、スフィンゴ脂質などの通常の成分を含むことができ、当業者に広く公知された技術によって容易に製造されることができる。また、上記成分と共に化粧品に通常使用される添加剤、例えば、抗酸化剤、紫外線遮断剤、角質層剥離剤、界面活性剤、香料、色素、防腐剤、pH調整剤、キレート剤などを適切に配合することが可能である。
【0035】
本発明のさらに他の具体例において、上記可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子を含む組成物は、医薬組成物であることができる。
【0036】
コエンザイムQ10は、抗酸化、抗炎及び免疫機能促進効果があるものと知られている。したがって、本発明のアミノ酸及びタンパク質よりなる群から選択される1つ以上の成分が結合したコエンザイムQ10ナノ粒子を含む医薬組成物は、特定疾患の治療用医薬組成物にだけ限定されるものではなく、上記の効果を得ようとする医薬に追加的な有効成分として利用されることができる。例えば、心臓病、高血圧、リューマチ性弁(valve)疾患、歯槽の炎症、鬱血性心不全、脳血管障害、抗癌剤副作用(アドリアマイシン(adriamycin)による心臓障害)に有用な医薬などに利用されることができるが、これらに制限されるものではない。
【0037】
また、有効成分以外に薬剤学的に適合し、生理学的に許容される補助剤を使用して製造されることができ、上記補助剤としては、賦形剤、崩壊剤、甘味剤、結合剤、被覆剤、膨張剤、潤滑剤、滑沢剤または香味剤などの可溶化剤を使用することができる。
【0038】
本発明の医薬組成物は、投与のために有効成分以外に、薬剤学的に許容可能な担体を1種以上さらに含み、医薬組成物として好ましく製剤化することができる。
【0039】
液状溶液に製剤化される組成物において許容可能な薬剤学的担体としては、滅菌及び生体に適したものであって、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれら成分の中で1成分以上を混合して使用することができ、必要に応じて、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に添加し、水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。さらに、当該分野の適切な方法でRemington’s Pharmaceutical Science、Mack Publishing Company、Easton PAに開示されている方法を利用して各疾患によって、または成分によって好ましく製剤化することができる。
【0040】
本発明の医薬組成物の薬剤製剤形態は、顆粒剤、散剤、被覆錠、錠剤、カプセル剤、坐剤、シロップ、汁、懸濁剤、乳剤、点滴剤または注射可能な液剤及び活性化合物の徐放性製剤などになることができる。
【0041】
本発明の医薬組成物は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、腹腔内、胸骨内、経皮、鼻側内、吸入、局所、直腸、経口、眼球内または皮内経路を通じて通常的な方式で投与することができる。
【0042】
本発明の医薬組成物の有効成分の有効量は、疾患の予防または治療、または骨成長誘導効果を奏するのに要求される量を意味する。したがって、疾患の種類、疾患の重症度、組成物に含有された有効成分及び他の成分の種類及び含量、剤形の種類及び患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、同時使用される薬物を含めた多様な因子によって調節されることができる。例えば、大人の場合、上記コエンザイムQ10の有効量は、1日1〜100mg/kgであり、上記投与は、一日に1回または数回に分けて投与することもできる。
【0043】
本発明の医薬組成物は、例えば、人間、オランウータン、チンパンジー、マウス、レット、犬、牛、ニワトリ、豚、山羊、羊などに投与することができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例により詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明の内容を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が下記実施例によって限定されるものではない。本発明の実施例は、当該技術分野における通常の知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例】
【0045】
〔実施例1〕システインにより可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の製造
コエンザイムQ10 5mgをアセトン1mLにとかした。この混合溶液を500rpmで撹拌される1%システイン水溶液30mLに速く一括添加し、分散させて、コエンザイムQ10を可溶化させた後、6時間500rpmで撹拌させて、溶媒を除去した。コエンザイムQ10ナノ粒子が分散された水溶液は、半透明の黄色を示した。可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子水溶液は、4℃に保管した。
【0046】
図1は、レーザー光散乱法を利用した装置(ELS−Z、大塚、日本国)を使用して測定した実施例1のナノ粒子の粒度分布を示した粒度分布図である。可溶化されたナノ粒子の粒度分布は、平均135〜280nmであることを確認した。
【0047】
〔実施例2〕セリンにより可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の製造
コエンザイムQ10 5mgをN−メチルピロリドン1mLにとかした。この混合溶液を500rpmで撹拌される1%セリン水溶液30mLに速く一括添加し、分散させて、コエンザイムQ10を可溶化させた後、−20℃で凍結させて、凍結乾燥装置(EYELA FDU−2100、EYELA、日本国)を利用して24時間減圧凍結乾燥し、薄い黄色の粉末を得た。その後、粉末を滅菌された蒸留水に再分散させて、コエンザイムQ10ナノ粒子が分散された水溶液が半透明の黄色を示すことを観察した。可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子水溶液は、4℃に保管した。
【0048】
図2は、レーザー光散乱法を利用した装置(ELS−Z、大塚、日本国)を使用して測定した実施例2のナノ粒子の粒度分布を示す粒度分布図である。可溶化されたナノ粒子の粒度分布は、平均70〜315nmであることを確認した。
【0049】
〔実施例3〕魚の皮膚から抽出したゼラチンにより可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の製造
コエンザイムQ10 10mgをN−メチルピロリドン1mLにとかした。この混合溶液を500rpmで撹拌される1%魚の皮膚から抽出したゼラチン水溶液30mLに速く一括添加し、分散させて、コエンザイムQ10を可溶化させた。その後、分画分子量(Molecular Weight of Cut-Off)分離膜フィルターを利用して分子量が低い有機溶媒を除去し、コエンザイムQ10ナノ粒子が分散された水溶液は、半透明の黄色を示した。可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子水溶液は、4℃に保管した。
【0050】
図3は、レーザー光散乱法を利用した装置(ELS−Z、大塚、日本国)を使用して測定した実施例3のナノ粒子の粒度分布を示した粒度分布図である。可溶化されたナノ粒子の粒度分布は、平均110〜550nmであることを確認した。
【0051】
〔実施例4〕豚の皮膚から抽出したゼラチンにより可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の製造
豚の皮膚から抽出したゼラチンを使用したことを除いて、実施例3と同一である。
【0052】
図4は、レーザー光散乱法を利用した装置(ELS−Z、大塚、日本国)を使用して測定した実施例4のナノ粒子の粒度分布を示した粒度分布図である。可溶化されたナノ粒子の粒度分布は、平均250〜850nmであることを確認した。
【0053】
〔実施例5〕牛の皮膚から抽出したゼラチンにより可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の製造
牛の皮膚から抽出したゼラチンを使用したことを除いて、実施例3と同一である。
【0054】
図5は、レーザー光散乱法を利用した装置(ELS−Z、大塚、日本国)を使用して測定した実施例5のナノ粒子の粒度分布を示した粒度分布図である。可溶化されたナノ粒子の粒度分布は、平均100〜700nmであることを確認した。
【0055】
〔実施例6〕卵白アルブミンにより可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の製造
卵白アルブミンを使用したことを除いて、実施例3と同一である。
【0056】
図6は、レーザー光散乱法を利用した装置(ELS−Z、大塚、日本国)を使用して測定した実施例6のナノ粒子の粒度分布を示した粒度分布図である。可溶化されたナノ粒子の粒度分布は、平均40〜300nmであることを確認した。
【0057】
〔実施例7〕牛血清アルブミンにより可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の製造
牛血清アルブミンを使用したことを除いて、実施例3と同一である。
【0058】
図7は、レーザー光散乱法を利用した装置(ELS−Z、大塚、日本国)を使用して測定した実施例7のナノ粒子の粒度分布を示した粒度分布図である。可溶化されたナノ粒子の粒度分布は、平均70〜500nmであることを確認した。
【0059】
〔実施例8〕ヒト血清アルブミンにより可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の製造
ヒト血清アルブミンを使用したことを除いて、実施例3と同一である。
【0060】
図8は、レーザー光散乱法を利用した装置(ELS−Z、大塚、日本国)を使用して測定した実施例8のナノ粒子の粒度分布を示した粒度分布図である。可溶化されたナノ粒子の粒度分布は、平均70〜400nmであることを確認した。
【0061】
上記実施例1〜8で製造されたナノ粒子の粒径をレーザー光散乱法を利用した装置(ELS−Z、大塚、日本国)を使用して1回測定時に100回ずつ、総3回測定し、平均粒径を表1に示した。
【0062】
【表1】

【0063】
〔実験例1〕コエンザイムQ10ナノ粒子の可溶化確認
図9の1)は、コエンザイムQ10粉末、2)は、コエンザイムQ10粉末を水に分散させた時、上層として相分離された水溶液、3)は、本発明の実施例7のコエンザイムQ10ナノ粒子水溶液の写真を示すものである。
【0064】
図9から分かるように、水にとけなく、水から分離された層を形成した難溶性コエンザイムQ10がアルブミンと結合し、可溶化され、水にとけて、半透明の黄色水溶液を形成した。
【0065】
〔実験例2〕透過電子顕微鏡を利用したコエンザイムQ10ナノ粒子の観察
実施例7で製造されたナノ粒子の形態を観察するために、タンパク質により可溶化されたナノ粒子を遠心分離方法を利用して4℃で17000rpmで3回洗浄した後、試験片を製作し、透過電子顕微鏡(FE−TEM、JEOL、日本国)を利用して観察した。
【0066】
図10は、牛血清アルブミンで可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope)写真を示すものである。牛血清アルブミンで取り囲まれたコエンザイムQ10ナノ粒子が真黒く観察された。
【0067】
〔実験例3〕コエンザイムQ10ナノ粒子の安定性確認
コエンザイムQ10ナノ粒子水溶液の長期間の安定性を調査するために、実施例8の製造方法を利用して製造された半透明の黄色水溶液を3群で製造し、UVが遮断された条件で5ヶ月間室温で放置し、1ヶ月単位で平均粒径を測定し、分散安定性を調査した。上記実験は、滅菌された条件で行い、その他、防腐剤及び添加剤は使用しなかった。
【0068】
図11は、ヒト血清アルブミンで可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の長期間の分散安定性を示すものである。コエンザイムQ10ナノ粒子の製造後、5ヶ月が経過した後にも、ナノ粒子の平均粒径が大きく変わらないことを確認した。
【0069】
〔製造例1〕透明ゲル形態の可溶化剤形の製造
下記表2の組成で透明ゲル形態の可溶化剤形で製造例1を製造した。剤形の粘度は、約4,000cpsである。一方、粘度は、Brookfield(LVDVII+)を利用して30℃、12rpmで測定した。
【0070】
【表2】

【0071】
〔製造例2〕不透明ゲル形態の可溶化剤形の製造
下記表3の組成で不透明ゲル形態の可溶化剤形で製造例2を製造した。それぞれの油相と水相を70℃で完全溶解させ、7,000rpmで5分間乳化させて、不透明ゲル形態のローションを製造した。ローションの粘度は、約2,500cpsである。一方、粘度は、Brookfield(LVDVII+)を利用して30℃、12rpmで測定した。
【0072】
【表3】

【0073】
〔製造例3〕クリーム剤形の製造
下記表4の組成でクリーム剤形の製造例3を製造した。製造過程は、上記製造例2と同一である。
【0074】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸及びタンパク質よりなる群から選択される1つまたは2つ以上の成分が結合されている、可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子。
【請求項2】
上記アミノ酸は、システインまたはセリンよりなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子。
【請求項3】
上記アミノ酸は、水溶性アミノ酸をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子。
【請求項4】
上記水溶性アミノ酸は、メチオニン、アルギニン、グリシン、グルタミン、スレオニン、プロリン、イソロイシン、アラニン、リシン及びグルタミン酸よりなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする請求項3に記載の可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子。
【請求項5】
上記タンパク質は、ゼラチン、アルブミン、フィブリノゲン、リゾチーム、絹フィブロイン、セリシン、トリプシノーゲン及びペプシンよりなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子。
【請求項6】
上記タンパク質は、水溶性タンパク質をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子。
【請求項7】
上記アミノ酸の含量は、コエンザイムQ10 1重量部に対して0.5〜100重量部であることを特徴とする請求項1に記載の可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子。
【請求項8】
上記タンパク質の含量は、コエンザイムQ10 1重量部に対して0.5〜100重量部であることを特徴とする請求項1に記載の可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子。
【請求項9】
1)コエンザイムQ10を水混和性有機溶媒の中に溶解させて、コエンザイムQ10が溶解された混合溶液を製造する段階と;
2)段階1)の混合溶液をアミノ酸及びタンパク質よりなる群から選択される1つまたは2つ以上の成分を含む水溶液に付加し、撹拌し、上記アミノ酸及びタンパク質よりなる群から選択される1つまたは2つ以上の成分が結合したコエンザイムQ10のナノ粒子を生成する段階と;
3)上記水混和性有機溶媒を除去する段階と;を含む、可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の製造方法。
【請求項10】
上記水混和性有機溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン、ピロリドン、1、3−ジメチル−3、4、5、6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、アセトン及びアセトニトリルよりなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする請求項9に記載の可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
上記アミノ酸及びタンパク質よりなる群から選択される1つまたは2つ以上の成分を含む水溶液の濃度は、0.001〜50%であることを特徴とする請求項9に記載の可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
水混和性有機溶媒を除去する段階は、撹拌による溶媒蒸発方法、減圧による溶媒蒸発方法、凍結乾燥方法または分離膜フィルターを利用して行うことを特徴とする請求項9に記載の可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれかに記載の可溶化されたコエンザイムQ10ナノ粒子を含む組成物。
【請求項14】
上記組成物は、食品組成物であることを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
上記組成物は、化粧品組成物であることを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
上記組成物は、医薬組成物であることを特徴とする請求項13に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−522835(P2012−522835A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504607(P2012−504607)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002112
【国際公開番号】WO2010/117199
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(508010879)コリア リサーチ インスティチュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (2)
【Fターム(参考)】