説明

コネクタ

【課題】 コンタクトの破損の虞が少ないコネクタを提供する。
【解決手段】 2つのプリント配線板の対向方向D1へ貫通する孔31をハウジング3に設ける。絶縁部材5を孔31内に収容する。絶縁部材5の軸方向へ延びる第1信号コンタクトを絶縁部材5の内周面に設ける。両端部が弾性部材72,72で形成される柱状の接触部材7を、2つのプリント配線板によってそれらの対向方向D1へ圧縮できるように、両端部を筒状の絶縁部材5から突出させて絶縁部材5に収容する。接触部材7の両端部が圧縮されたときに第1信号コンタクトに接触する第2信号コンタクト8を接触部材7に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はコネクタに関し、特に相対する2つの接続対象物の間に配置され、それらを接続するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、相対する2つの接続対象物の間に配置され、それらを接続するコネクタとして、エラストマー本体とフィルムコンタクタ基体とからなるエラストマー電気コネクタが知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
エラストマー本体はシリコンゴム等のエラストマで形成され、円筒状中央部分とベース部分とを有する。円筒状中央部分の断面形状はほぼ菱形である。ベース部分は円筒状であり、円筒状中央部分の両端にそれぞれ形成されている。ベース部分の軸方向は円筒状中央部分の断面形状の長い方の対角線と平行である。ベース部分には支持スリーブが挿入される。支持スリーブはエラストマよりも固い材料で形成されている。円筒状中央部分の寸法(2つの接続対象物の対向方向の寸法)はベース部分の寸法(2つの接続対象物の対向方向の寸法)よりも大きい。
【0004】
フィルムコンタクタ基体は、誘電ポリマーフィルムと、この誘電ポリマーフィルムの一面に互いに平行に複数配置された導電線とを有する。フィルムコンタクタ基体はエラストマー本体の円筒状中央部分に巻き付けられる。フィルムコンタクタ基体を円筒状中央部分に巻き付けた状態のとき、導電線は誘電ポリマーフィルムの外側面上にあり、円筒状中央部分の周方向に沿って延びている。
【0005】
このエラストマー電気コネクタを用いて2つの印刷回路板を接続するには、まず、相対向する2つの印刷回路板の間にエラストマー電気コネクタを配置するとともに、2つの印刷回路板にそれぞれ形成されたボルト挿通孔に支持スリーブを対向させる。
【0006】
次に、この状態でボルト挿通孔及び支持スリーブにボルトを挿入すると、エラストマー本体の円筒状中央部分が2つの印刷回路板によって挟まれる。
【0007】
最後に、ボルトの先端にナットを嵌め、このナットをねじ込むと、円筒状中央部分の両端部が圧縮され、2つの印刷回路板の間隔が狭まり、2つの印刷回路板が支持スリーブに突き当たる。これにより、2つの印刷回路板とエラストマー電気コネクタとが結合されるとともに、圧縮された円筒状中央部分の弾力によって導電線が印刷回路板のパッドに押し付けられる。この結果、導電線によって2つの印刷回路板が電気的に接続される。
【特許文献1】特開昭61−284078号公報(第4頁左下欄第10行〜16行、第4頁右下欄第18行〜第5頁左上欄第3行、第5頁左上欄第16行〜19行、図1、図11参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように上述のコネクタでは、円筒状中央部分の両端部を圧縮して導電線を印刷回路板のパッドに接触させるので、導電線の一部(円筒状中央部分の両端部に位置する部分)に集中的に荷重が加わり、強いストレスが生じる。
【0009】
このため、コンタクトとして機能する導電線が断線する虞があった。
【0010】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題はコンタクトの破損の虞が少ないコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題を解決するため請求項1の発明のコネクタは、相対する2つの接続対象物の間に配置され、それらを接続するコネクタにおいて、前記2つの接続対象物の対向方向へ貫通する孔を有するハウジングと、前記孔内に収容された筒状の絶縁部材と、前記絶縁部材の内周面に設けられ、前記絶縁部材の軸方向へ延びる第1コンタクトと、少なくとも両端部が弾性部材で形成され、前記両端部が前記絶縁部材から突出するように前記絶縁部材に収容され、前記2つの接続対象物によってそれらの対向方向へ圧縮される柱状の接触部材と、前記接触部材の両端部にそれぞれ設けられ、前記2つの接続対象物に接触するとともに、前記接触部材の両端部が圧縮されたときに前記第1コンタクトに接触する第2コンタクトとを備えていることを特徴とする。
【0012】
上述のように絶縁部材の内周面に第1コンタクトが設けられ、絶縁部内に収容された接触部材の両端部にそれぞれ第2コンタクトが設けられているので、接触部材の両端部が2つの接続対象物によって圧縮されると、それに伴って第2コンタクトは移動する。このため、接触部材を圧縮する圧縮力が第2コンタクトに殆ど作用しない。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1記載のコネクタにおいて、前記絶縁部材の外周面に形成された導電膜と、前記ハウジングの前記孔の一端側に保持され、前記導電膜と前記2つの接続対象物の一方とを導通させる第3コンタクトと、前記ハウジングの前記孔の他端側に保持され、前記導電膜と前記2つの接続対象物の他方とを導通させる第4コンタクトとを備えていることを特徴とする。
【0014】
上述のように導電膜と第3コンタクトと第4コンタクトとを備えているので、第1コンタクト及び第2コンタクトと、絶縁部材と、導電膜、第3コンタクト及び第4コンタクトとで擬似同軸構造が構成される。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載のコネクタにおいて、前記第1コンタクトが一対の導電路で構成され、前記第2コンタクトが前記一対の導電路にそれぞれ接触する一対の導電体で構成されていることを特徴とする。
【0016】
上述のように第1コンタクトが一対の導電路で構成され、第2コンタクトが一対の導電路にそれぞれ接触する一対の導電体で構成されているので、第1及び第2コンタクトによって差動信号も伝送できる。
【0017】
請求項4の発明のコネクタは、相対する2つの接続対象物の間に配置され、それらを接続するコネクタにおいて、前記2つの接続対象物の対向方向へ貫通する孔を有するハウジングと、前記孔内に収容された筒状の絶縁部材と、少なくとも両端部が弾性部材で形成され、前記両端部が前記絶縁部材から突出するように前記絶縁部材に収容され、前記2つの接続対象物によってそれらの対向方向へ圧縮される柱状の接触部材と、前記絶縁部材の内周面に設けられ、前記絶縁部材の軸方向へ延びるとともに両端部が前記接触部材の両端面に配置されるフレキシブル配線板とを備えていることを特徴とする。
【0018】
上述のように絶縁部材と、両端部が絶縁部材から突出するように絶縁部材に収容され、2つの接続対象物によって圧縮される接触部材と、絶縁部材の内周面に設けられ、両端部が接触部材の両端面に配置されるフレキシブル配線板とを備えているので、2つ接続対象物によって接触部材が圧縮されると、その動きに伴ってフレキシブル配線板の両端部は撓み、フレキシブル配線板の両端部が圧縮されることはない。
【0019】
請求項5の発明は、請求項4記載のコネクタにおいて、前記絶縁部材の外周面に形成された導電膜と、前記ハウジングの前記孔の一端側に保持され、前記導電膜と前記2つの接続対象物の一方とを導通させる第3コンタクトと、前記ハウジングの前記孔の他端側に保持され、前記導電膜と前記2つの接続対象物の他方とを導通させる第4コンタクトとを備えていることを特徴とする。
【0020】
上述のように導電膜と第3コンタクトと第4コンタクトとを備えているので、フレキシブル配線板と、絶縁部材と、導電膜、第3コンタクト及び第4コンタクトとで擬似同軸構造が構成される。
【0021】
請求項6の発明は、請求項4又は5記載のコネクタにおいて、1つの前記絶縁部材に2つの前記フレキシブル配線板が用いられることを特徴とする。
【0022】
上述のように1つの絶縁部材に2つのフレキシブル配線板が用いられるので、2つのフレキシブル配線板によって差動信号を伝送できる。
【0023】
請求項7の発明のコネクタは、相対する2つの接続対象物の間に配置され、それらを接続するコネクタにおいて、前記2つの接続対象物の対向方向へ貫通する孔を有するハウジングと、前記両端部が前記孔から突出するように前記孔に収容され、前記2つの接続対象物によってそれらの対向方向へ圧縮される柱状の弾性部材と、前記弾性部材の一端面から他端面に設けられ、前記2つの接続対象物に接触するコンタクトとを備えていることを特徴とする。
【0024】
上述のようにコンタクトが弾性部材の一端面から他端面に設けられているので、弾性部材が圧縮されたとき、コンタクトは全体的に圧縮されるので、コンタクトの一部に圧縮力が集中することが無く、コンタクトの破損の虞が少ない。
【0025】
請求項8の発明は、請求項7記載のコネクタにおいて、前記弾性部材を収容する筒状の絶縁部材の外周面に形成された導電膜と、前記ハウジングの前記孔の一端側に保持され、前記導電膜と前記2つの接続対象物の一方とを導通させる第3コンタクトと、前記ハウジングの前記孔の他端側に保持され、前記導電膜と前記2つの接続対象物の他方とを導通させる第4コンタクトとを備えていることを特徴とする。
【0026】
上述のように導電膜と第3コンタクトと第4コンタクトとを備えているので、コンタクトと、絶縁部材と、導電膜、第3コンタクト及び第4コンタクトとで擬似同軸構造が構成される。
【0027】
請求項9の発明は、請求項7又は8記載のコネクタにおいて、前記コンタクトが一対の導電路で構成されていることを特徴とする。
【0028】
上述のようにコンタクトが一対の導電路で構成されているので、コンタクトによって差動信号を伝送できる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように請求項1の発明のコネクタによれば、コンタクトが破損する虞を少なくすることができる。
【0030】
請求項2の発明のコネクタによれば、擬似同軸構造によってクロストーク等を防止することができる。
【0031】
請求項3の発明のコネクタによれば、差動信号を伝送することができる。
【0032】
請求項4の発明のコネクタによれば、コンタクトの役目をするフレキシブル配線板が破損する虞を少なくすることができる。
【0033】
請求項5の発明のコネクタによれば、擬似同軸構造によってクロストーク等を防止することができる。
【0034】
請求項6の発明のコネクタによれば、差動信号を伝送することができる。
【0035】
請求項7の発明のコネクタによれば、コンタクトが破損する虞を少なくすることができる。
【0036】
請求項8の発明のコネクタによれば、擬似同軸構造によってクロストーク等を防止することができる。
【0037】
請求項9の発明のコネクタによれば、差動信号を伝送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0039】
図1はこの発明の第1実施形態に係るコネクタの斜視図、図2は図1のII−II線に沿う断面図、図3は図1に示すコネクタのハウジングの斜視図、図4は図1に示すコネクタの接続部品組立体の斜視図、図5は図4に示す接続部品組立体の筒状の絶縁部材の斜視図、図6は図4に示す接続部品組立体の接触部材及び第2信号コンタクトの斜視図、図7は図4に示す接続部品組立体の接触部材の斜視図、図8は図4に示す接続部品組立体の第2信号コンタクトの斜視図、図9は図4に示す第1信号コンタクトと第2信号コンタクトとの関係を示す概念図、図10は図1に示すコネクタの第1グランドコンタクトの斜視図である。
【0040】
図1、2に示すように、このコネクタ1はハウジング3と接続部品組立体4と導電膜9と第1グランドコンタクト11と第2グランドコンタクト12とを備える。
【0041】
ハウジング3は絶縁材、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)等で形成され、ほぼ直方体状である。ハウジング3には複数の孔31が等間隔で形成されている。孔31は第1のプリント配線板21(接続対象物:図11参照)と第2のプリント配線板22(接続対象物:図11参照)との対向方向D1へ延び、ハウジング3を貫通している。ハウジング3には孔31の上部及び下部をそれぞれ挟むように複数の収容溝32が形成されている。複数の収容溝32はハウジング3の幅方向D2に沿って並び、それぞれ孔31と平行に延びている。また、収容溝32は孔31に通じ、その対向方向D1の一端は開口している。
【0042】
図3に示すように、ハウジング3の前面及び背面には複数の溝33が等間隔に形成されている。溝33は対向方向D1へ延びている。ハウジング3の両側面の上部及び下部にはそれぞれガイド溝34,35が形成されている。ガイド溝34,35は対向方向D1へ延びている。また、ハウジング3の両側面にはそれぞれ係合凹部36,37が形成されている。係合凹部36はガイド溝34の下端に、係合凹部37はガイド溝35の上端にそれぞれ通じている。
【0043】
図4に示すように、接続部品組立体4は筒状の絶縁部材5と第1信号コンタクト(第1コンタクト)6と接触部材7と一対の第2信号コンタクト(第2コンタクト)8とで構成されている。接続部品組立体4は第1プリント配線板21の導体パターン(図示せず)と第2プリント配線板22の導体パターン(図示せず)とを電気的に接続する。
【0044】
図5に示すように、筒状の絶縁部材5は円筒状であり、絶縁材で形成されている。筒状の絶縁部材5の材料としてはハウジング3と同じ材料が適する。
【0045】
第1信号コンタクト6は金属板を打ち抜いて形成され、ほぼ帯状であり、筒状の絶縁部材5の内周面に固定されている。第1信号コンタクト6は絶縁部材5の一端から他端へ軸方向へ延びている。第1信号コンタクト6の形状が単純である為、インピーダンスの調整を容易にできる。
【0046】
図6に示すように、接触部材7は棒状部材71と一対の弾性部材72とで構成されている。
【0047】
棒状部材71はほぼ円柱状であり、その両端面にはキー溝71aが形成されている。棒状部材71は剛性を有する絶縁材(例えば、PBT)で形成されている。
【0048】
図6、7に示すように、弾性部材72はほぼ円柱状であり、その一端面にはキー72aが形成されている。キー72aはキー溝71aに挿入される。弾性部材72はシリコンゴム等の弾性材で形成されている。キー72aがキー溝71aに挿入された状態で弾性部材72と棒状部材71とが結合される。
【0049】
図4に示すように、接触部材7は絶縁部材5に収容される。棒状部材71は絶縁部材5の中央部に固定される。弾性部材72の一部は筒状の絶縁部材5から突出する。弾性部材72は第1プリント配線板21と第2プリント配線板22とによって対向方向Dへ圧縮される。
【0050】
図6、8に示すように、第2信号コンタクト8は弾性部材72の軸方向の他端面から外周面にかけて延びている。第2信号コンタクト8は金属薄膜等の導電体からなり、スパッタリング、蒸着、メッキ等によって弾性部材72に形成されている。
【0051】
図9に示すように、接触部材7が筒状の絶縁部材5に収容された状態で、第2信号コンタクト8の一端部は第1信号コンタクト6に重なる。
【0052】
図5に示すように、導電膜9は絶縁部材5の外周面全体を覆っている。導電膜9は金属薄膜等の導電体からなり、スパッタリング、蒸着等によって形成される。導電膜9と絶縁部材5と第1及び第2信号コンタクト6,8とで擬似同軸構造が構成されている。
【0053】
図10に示すように、第1グランドコンタクト11はクランク状部11aと接触部11bとを有する。
【0054】
図2に示すように、第1グランドコンタクト11はハウジング3の収容溝32に収容されている。クランク状部11aは収容溝32の内面に圧接する。これにより、第1グランドコンタクト11は収容溝32の内面に固定されている。接触部11bは導電膜9に接触する。第1グランドコンタクト11の一端部は収容溝32から突出している。
【0055】
第2グランドコンタクト12は第1グランドコンタクト11と同構成であるので、第2グランドコンタクト12の詳細な説明を省略する。
【0056】
図11はコネクタによって第1プリント配線板と第2プリント配線板とを接続する前の状態の斜視図、図12はコネクタによって第1プリント配線板と第2プリント配線板とが接続された状態を示す斜視図である。
【0057】
図11、12に示すように、第1及び第2プリント配線板21,22にはそれぞれ嵌合ハウジング24が取り付けられている。嵌合ハウジング24はほぼ筒状であり、ハウジング3と同じ材料で形成されている。嵌合ハウジング24の内側の前面及び背面にはキー241が等間隔で形成されている。キー241はハウジング3の溝33に挿入される。嵌合ハウジング24の内側の両側面にはそれぞれ係合凸部242が形成されている。係合凸部242はほぼ半球状であり、ハウジング3の係合凹部36,37に嵌る。嵌合ハウジング24の両側面の係合凸部242同士間の間隔はハウジング3の両側面のガイド溝34,35同士間の間隔よりも狭い。
【0058】
次に、コネクタ1の接続作業について説明する。
【0059】
まず、図11に示すように、相対する第1プリント配線板21と第2プリント配線板22との間にコネクタ1を配置する。このとき、コネクタ1のハウジング3を対向方向Dで2つの嵌合ハウジング24,24に対向させる。
【0060】
次に、第1プリント配線板21と第2プリント配線板22との間隔を狭め、2つの嵌合ハウジング24,24の複数のキー241をそれぞれハウジング3の溝33の一端に挿入する。
【0061】
その後、更に第1プリント配線板21と第2プリント配線板22の間隔を狭めると、嵌合ハウジング24,24の係合凸部242,242がそれぞれガイド溝34,35に乗り上げ、係合凸部242同士間の間隔が広がり、嵌合ハウジング24,24の両側壁が外側へ変形する。更に第1プリント配線板21と第2プリント配線板22の間隔を狭めると、接触部材7の両端にある第2信号コンタクト8,8が、それぞれ第1及び第2プリント配線板21,22の導体パターン(図示せず)に接触するととともに、第1及び第2グランドコンタクト11,12の一端部がそれぞれ第1及び第2プリント配線板21,22のグランドパターン(図示せず)に導通したスルーホール(図示せず)に挿入される。これにより、コネクタ1の導電膜9が第1及び第2グランドコンタクト11,12を通じてそれぞれ第1及び第2プリント配線板21,22のグランドパターンに導通する。更に第1プリント配線板21と第2プリント配線板22の間隔を狭めると、係合凸部242,242がそれぞれガイド溝34,35を通って係合凹部36,37内に入り、嵌合ハイジング24,24の変形状態が解除され、嵌合ハウジング24,24がもとの状態に戻る。これにより、ハウジング3と嵌合ハウジング24とが簡単に離脱しなくなる。このとき、接触部材7の両端にある弾性部材72,72は第1及び第2プリント配線板21,22によって対向方向Dに沿って圧縮され、それに伴い弾性部材72,72が対向方向Dと直交する方向へ広がり、第2信号コンタクト8,8がそれぞれ第1信号コンタクト6に接触する。その結果、第1及び第2及び信号コンタクト6,8,8を通じて第1プリント配線板21と第2プリント配線板22とが電気的に接続される。
【0062】
弾性部材72,72が対向方向Dで圧縮されるとき、第2信号コンタクト8,8は対向方向Dへ移動できるので、弾性部材72,72に加わる圧縮力は第2信号コンタクト8,8に殆ど作用しない。また、弾性部材72,72と第1信号コンタクト6とは別部材であるので、弾性部材72,72に加わる圧縮力は第1信号コンタクト6に作用しない。
【0063】
第1プリント配線板21と第2プリント配線板22との電気的な接続を解くには、係合凸部242,242がそれぞれガイド溝34,35に乗り上げるようにハウジング3と嵌合ハウジング24,24とを引き離せばよい。
【0064】
この第1実施形態によれば、弾性部材72,72に加わる圧縮力は第1及び第2信号コンタクト6,8,8に殆ど作用しないので、第1及び第2プリント配線板21,22の接続作業によって第1及び第2コンタクト6,8,8が破損する虞が極めて少ない。
【0065】
また、導電膜9と筒状の絶縁部材5と第1及び第2信号コンタクト6,8とで擬似同軸構造が構成されるので、接続部品組立体4同士間のクロストークを防止することができる。
【0066】
なお、第1実施形態では、絶縁部材5の外周面に導電膜9を形成したが、導電膜9を必ずしも絶縁部材5に設ける必要はない。
【0067】
また、第1実施形態では、棒状部材71を絶縁部材5に固定したが、棒状部材71を必ずしも絶縁部材5に固定する必要はない。
【0068】
なお、第1実施形態では、接触部材7を棒状部材71と一対の弾性部材72とで構成したが、接触部材7を一対の弾性部材72だけで構成してもよいし、1つの弾性部材で構成してもよい。接触部材7を1つの弾性部材で構成する場合、弾性部材の両端部に第2信号コンタクト8を設ける。
【0069】
また、第1実施形態では、弾性部材72を棒状部材71に固定したが、弾性部材72を必ずしも棒状部材71に固定する必要はない。
【0070】
なお、第1実施形態では、第1信号コンタクト6を金属薄板で形成したが、第1信号コンタクト6をスパッタリング、蒸着、メッキ等によって絶縁部材5に形成してもよい。
【0071】
また、第1実施形態では、第2信号コンタクト8をスパッタリング、蒸着、メッキ等によって形成したが、第2信号コンタクト8を金属板に打抜き加工及び曲げ加工を施して形成してもよい。
【0072】
なお、第1実施形態では第1及び第2コンタクトを信号コンタクトにしたが、第1及び第2コンタクトは信号コンタクトに限られない。
【0073】
また、第1実施形態のコネクタ1は2つのプリント配線板21,22の接続用コネクタであるが、この発明のコネクタを例えば、半導体装置とプリント配線板とを接続するためのコネクタとしても、半導体装置同士の接続用コネクタとしても用いることができ、接続対象物はプリント配線板に限られない。
【0074】
図13はこの発明の第2実施形態に係るコネクタの斜視図、図14は図13のXIV−XIV線に沿う断面図である。
【0075】
第2実施形態のコネクタは第1実施形態のコネクタとほぼ同様の構成であるので、第1実施形態のコネクタと共通する部分については同一符号を付してその説明を省略する。以下、相違部分についてだけ説明する。
【0076】
第1実施形態のコネクタ1と第2実施形態のコネクタ201とでは接続部品組立体4,204の構成が異なる。
【0077】
第2実施形態のコネクタ201の接続部品組立体204は筒状の絶縁部材205と第1信号コンタクト(図示せず)と棒状部材(図示せず)と弾性部材472と第2信号コンタクト208と導電膜9とで構成されている。
【0078】
筒状の絶縁部材205は角筒状である。第1信号コンタクトは絶縁部材205の内側の両側面にそれぞれ形成されている。
【0079】
棒状部材は角柱状であり、第1実施形態のコネクタ1の棒状部材71に対応する。
【0080】
弾性部材472は角柱状であり、棒状部材の両端に固定されている。
【0081】
第2信号コンタクト208は1つの弾性部材472に2つ設けられている。第2信号コンタク208は弾性部材472の一端面から側面にかけて延び、絶縁部材205内で第1信号コンタクトに対向する。
【0082】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、一対の第1信号コンタクトと一対の第2信号コンタクト208とで位相をずらして高周波信号を伝送することにより、ノイズを低減することができる。
【0083】
図15は第3実施形態のコネクタの接続用組立体の斜視図である。
【0084】
第3実施形態は接続用組立体の構成の点で第1実施形態と異なる。
【0085】
第3実施形態のコネクタの接続用組立体304は絶縁部材5と接触部材307とFPC(フレキシブル配線板)310と導電膜9とで構成されている。
【0086】
接触部材307は円柱状の弾性部材だけで構成されている。接触部材307は筒状の絶縁部材5内に収容される。接触部材307の両端部は絶縁部材5から突出する。
【0087】
FPC310は絶縁部材5の内周面に固定され、絶縁部材5の軸方向ヘ延びている。FPC310の両端部は絶縁部材5から突出する。また、FPC310の両端部はそれぞれ円弧状に折り曲げられ、接触部材307の両端面に配置される。FPC310の一面には導電路310aが形成されている。導電路310aはFPC310の一端から他端へ延びる。導電路310aの両端部は絶縁部材5の内周面に対向している。
【0088】
第1実施形態と同様に接続時において、接触部材307は圧縮されるが、FPC310は接触部材307の両端面の動きに連れて曲がるだけであり、圧縮されない。
【0089】
したがって、第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0090】
第3実施形態の変形例として、第2実施形態と同様に、FPC310を絶縁部材5の内周面に2本平行に取り付けたものが考えられる。
【0091】
この変形例によれば、第2実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0092】
図16は第4実施形態のコネクタの接続用組立体の斜視図である。
【0093】
第4実施形態は接続用組立体の構成の点で第1実施形態と異なる。
【0094】
第4実施形態のコネクタの接続用組立体404は絶縁部材5と弾性部材472とコンタクト410と導電膜9とで構成されている。
【0095】
弾性部材472は円柱状であり、絶縁部材5内に収容される。弾性部材472の両端部は絶縁部材5から突出する。弾性部部材472の外径及び絶縁部材5の内径は一定であり、弾性部材472の外径は絶縁部材5の内径よりも小さい。
【0096】
コンタクト410は弾性部材472の一端面から他端面にかけて形成されている。
【0097】
第1実施形態と同様に接続時において、弾性部材472は圧縮されるが、この圧縮力はコンタクト410の全体で受け止められるので、圧縮力がコンタクト410の一部分に集中することがない。
【0098】
したがって、第4実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0099】
第4実施形態の変形例として、第2実施形態と同様に、コンタクト410を2つの導電路で構成したものが考えられる。
【0100】
この変形例によれば、第2実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0101】
第4実施形態の他の変形例としては、絶縁部材5を用いずにコンタクト410が設けられた弾性部材472をハウジング(図示せず)の孔に直接収容するようにしたものが考えられる。但し、この変形例は擬似同軸構造ではない。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】図1はこの発明の第1実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【図2】図2は図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図3は図1に示すコネクタのハウジングの斜視図である。
【図4】図4は図1に示すコネクタの接続部品組立体の斜視図である。
【図5】図5は図4に示す接続部品組立体の筒状の絶縁部材の斜視図である。
【図6】図6は図4に示す接続部品組立体の接触部材及び第2信号コンタクトの斜視図である。
【図7】図7は図4に示す接続部品組立体の接触部材の斜視図である。
【図8】図8は図4に示す接続部品組立体の第2信号コンタクトの斜視図である。
【図9】図9は図4に示す第1信号コンタクトと第2信号コンタクトとの関係を示す概念図である。
【図10】図10は図1に示すコネクタの第1グランドコンタクトの斜視図である。
【図11】図11はコネクタによって第1プリント配線板と第2プリント配線板とを接続する前の状態の斜視図である。
【図12】図12はコネクタによって第1プリント配線板と第2プリント配線板とが接続された状態を示す斜視図である。
【図13】図13はこの発明の第2実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【図14】図14は図13のXIV−XIV線に沿う断面図である。
【図15】図15は第3実施形態のコネクタの接続用組立体の斜視図である。
【図16】図16は第4実施形態のコネクタの接続用組立体の斜視図である。
【符号の説明】
【0103】
1,201 コネクタ
3,203 ハウジング
31,231 孔
5,205 絶縁部材
6 第1信号コンタクト(第1コンタクト)
7,207,307 接触部材
72,472 弾性部材
8,208 第2信号コンタクト(第2コンタクト)
9 導電膜
310 FPC(フレキシブル配線板)
310a 導電路
410 コンタクト
11 第1グランドコンタクト(第3コンタクト)
12 第2グランドコンタクト(第4コンタクト)
21 第1プリント配線板(接続対象物)
22 第2プリント配線板(接続対象物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対する2つの接続対象物の間に配置され、それらを接続するコネクタにおいて、
前記2つの接続対象物の対向方向へ貫通する孔を有するハウジングと、
前記孔内に収容された筒状の絶縁部材と、
前記絶縁部材の内周面に設けられ、前記絶縁部材の軸方向へ延びる第1コンタクトと、
少なくとも両端部が弾性部材で形成され、前記両端部が前記絶縁部材から突出するように前記絶縁部材に収容され、前記2つの接続対象物によってそれらの対向方向へ圧縮される柱状の接触部材と、
前記接触部材の両端部にそれぞれ設けられ、前記2つの接続対象物に接触するとともに、
前記接触部材の両端部が圧縮されたときに前記第1コンタクトに接触する第2コンタクトと
を備えていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記絶縁部材の外周面に形成された導電膜と、
前記ハウジングの前記孔の一端側に保持され、前記導電膜と前記2つの接続対象物の一方とを導通させる第3コンタクトと、
前記ハウジングの前記孔の他端側に保持され、前記導電膜と前記2つの接続対象物の他方とを導通させる第4コンタクトと
を備えていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第1コンタクトが一対の導電路で構成され、前記第2コンタクトが前記一対の導電路にそれぞれ接触する一対の導電体で構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のコネクタ。
【請求項4】
相対する2つの接続対象物の間に配置され、それらを接続するコネクタにおいて、
前記2つの接続対象物の対向方向へ貫通する孔を有するハウジングと、
前記孔内に収容された筒状の絶縁部材と、
少なくとも両端部が弾性部材で形成され、前記両端部が前記絶縁部材から突出するように前記絶縁部材に収容され、前記2つの接続対象物によってそれらの対向方向へ圧縮される柱状の接触部材と、
前記絶縁部材の内周面に設けられ、前記絶縁部材の軸方向へ延びるとともに両端部が前記接触部材の両端面に配置されるフレキシブル配線板と
を備えていることを特徴とするコネクタ。
【請求項5】
前記絶縁部材の外周面に形成された導電膜と、
前記ハウジングの前記孔の一端側に保持され、前記導電膜と前記2つの接続対象物の一方とを導通させる第3コンタクトと、
前記ハウジングの前記孔の他端側に保持され、前記導電膜と前記2つの接続対象物の他方とを導通させる第4コンタクトと
を備えていることを特徴とする請求項4記載のコネクタ。
【請求項6】
1つの前記絶縁部材に2つの前記フレキシブル配線板が用いられることを特徴とする請求項4又は5記載のコネクタ。
【請求項7】
相対する2つの接続対象物の間に配置され、それらを接続するコネクタにおいて、
前記2つの接続対象物の対向方向へ貫通する孔を有するハウジングと、
前記両端部が前記孔から突出するように前記孔に収容され、前記2つの接続対象物によってそれらの対向方向へ圧縮される柱状の弾性部材と、
前記弾性部材の一端面から他端面に設けられ、前記2つの接続対象物に接触するコンタクトと
を備えていることを特徴とするコネクタ。
【請求項8】
前記弾性部材を収容する筒状の絶縁部材の外周面に形成された導電膜と、
前記ハウジングの前記孔の一端側に保持され、前記導電膜と前記2つの接続対象物の一方とを導通させる第3コンタクトと、
前記ハウジングの前記孔の他端側に保持され、前記導電膜と前記2つの接続対象物の他方とを導通させる第4コンタクトと
を備えていることを特徴とする請求項7記載のコネクタ。
【請求項9】
前記コンタクトが一対の導電路で構成されていることを特徴とする請求項7又は8記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−40774(P2006−40774A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221139(P2004−221139)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】