説明

コネクタ

【課題】端子の弾性変形によって可動ハウジングを固定ハウジングに対して移動自在に支持するようにした構成においても、高周波信号の高速伝送と端子の高密度化を可能とするコネクタを提供する。
【解決手段】各端子30における各ハウジング10,20間に露出する部分を絶縁性の樹脂層30dによって被覆するようにしたので、これらの部分のインピーダンスと各ハウジング10,20で覆われた他の部分のインピーダンスとの差を小さくすることができ、各端子30内のインピーダンスの不整合による電気信号の乱れを効果的に防止することができる。また、各端子30の第1の弾性片部34が固定ハウジング10の幅方向に弾性変形する際、隣接する第1の弾性片部34同士が接触しても、樹脂層30dによって短絡を防止することができるので、各端子30のピッチを小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプリント基板に取付けられ、基板同士を電気的に接続するために用いられるコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコネクタとしては、互いに幅方向に間隔をおいて配列された複数の端子と、各端子の一端側が保持された固定ハウジングと、各端子の他端側が保持され、相手側コネクタに接続される可動ハウジングとを備え、各端子の各ハウジング間に亘る部分の弾性変形によって可動ハウジングを固定ハウジングに対して移動自在に支持することにより、相手側コネクタを可動ハウジングに嵌合する際、各端子の連結部の弾性変形によって固定ハウジングに対する可動ハウジングの位置ずれを許容するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−108560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記コネクタでは、各端子の一端側と他端側はそれぞれ各ハウジングによって覆われているが、各端子の各ハウジング間に亘る部分は各ハウジング間に露出しており、しかも変形量を十分に確保するために長く形成されていることから、ハウジングで覆われた部分よりもインピーダンスが大きくなり、端子内にインピーダンスの不整合が生じていた。このため、端子によって電送される電気信号に乱れが生じやすくなり、高周波信号の高速伝送には適さないという課題があった。また、近年の電子部品の小型化に伴い、多極コネクタにおける端子の高密度化が望まれているが、前記コネクタでは、各端子のピッチを小さくすると、各端子の連結部が弾性変形する際、隣接する連結部同士が接触して短絡を生じやすくなるため、ピッチを小さくすることができないという課題があった。
【0005】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、端子の弾性変形によって可動ハウジングを固定ハウジングに対して移動自在に支持するようにした構成においても、高周波信号の高速伝送と端子の高密度化を可能とするコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するために、互いに幅方向に間隔をおいて配列された複数の端子と、各端子の一端側が保持された固定ハウジングと、各端子の他端側が保持され、相手側コネクタに接続される可動ハウジングとを備え、各端子の各ハウジング間に亘る部分の弾性変形により、可動ハウジングを固定ハウジングに対して移動自在に支持するようにしたコネクタにおいて、前記各端子の各ハウジング間に露出する部分を絶縁性の樹脂で被覆している。
【0007】
これにより、各端子の各ハウジング間に露出する部分が絶縁性の樹脂で被覆されていることから、この部分のインピーダンスと各ハウジングで覆われた他の部分のインピーダンスとの差が小さくなる。また、各端子が弾性変形する際に隣接する端子同士が接触しても、樹脂の被覆によって短絡が防止される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、各端子の各ハウジング間に露出する部分と各ハウジングで覆われた他の部分のインピーダンスとの差を小さくすることができるので、各端子内のインピーダンスの不整合による電気信号の乱れを効果的に防止することができ、高周波信号の高速伝送が可能となる。また、各端子が弾性変形する際に隣接する端子同士が接触しても、樹脂の被覆によって短絡を防止することができるので、各端子のピッチを小さくすることができ、端子の高密度化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態を示すコネクタの斜視図
【図2】コネクタの平面図
【図3】コネクタの底面図
【図4】コネクタの側面断面図
【図5】端子の側面図
【図6】図5におけるA部拡大断面
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至図6は本発明の一実施形態を示すものである。同図に示すコネクタは、コネクタは、図示しない基板に固定される固定ハウジング10と、固定ハウジング10に対して幅方向(図中X方向)及び前後方向(図中Y方向)に移動可能に設けられた可動ハウジング20と、一端側が固定ハウジング10に保持され、他端側が可動ハウジング20に保持された複数の端子30とを備えている。
【0011】
固定ハウジング10は合成樹脂の成形品からなり、上面及び下面を開口した角筒形状に形成されている。固定ハウジング10は、前面部11、背面部12及び側面部13からなり、前面部11及び背面部12の下端側には各端子30の一端側をそれぞれ保持する複数の端子保持溝14が互いに幅方向に等間隔で設けられ、前面部11及び背面部12の内壁面には各端子30の中間部分を収容する端子孔15が設けられている。また、固定ハウジング10の両側面には、各側面部13の外面を覆うシールド部材16が取付けられており、各シールド部材16は導電性の金属板によって形成されている。更に、固定ハウジング10の下面には、基板の位置決め用孔(図示せず)に係合する突起17が幅方向二箇所に設けられている。
【0012】
可動ハウジング20は合成樹脂の成形品からなり、上面を開口した角筒形状に形成されている。可動ハウジング20は、前面部21、背面部22、側面部23及び底面部24からなり、その内側には底面部24から上方に突出する嵌合部25が設けられている。底面部24には各端子30の他端側をそれぞれ保持する複数の端子保持溝26が設けられ、嵌合部25の前面及び背面には各端子30の先端側をそれぞれ収容する複数の端子孔27が設けられている。また、可動ハウジング20の外壁面と固定ハウジング10の内壁面との間には、可動ハウジング20が前後方向及び幅方向に移動可能な隙間が設けられている。
【0013】
各端子30は弾性変形可能な導電性の金属からなり、各ハウジング10,20の前後にそれぞれ幅方向一列ずつ配列されている。各端子30は、図示しない基板に接続される接続部31と、接続部31から上方に向かって延びる第1の固定片部32と、第1の固定片部32の上端から下方に屈曲する屈曲部33と、屈曲部33から下方に延びる第1の弾性片部34と、第1の弾性片部34の下端から前後方向に延びる第2の固定片部35と、第2の固定片部35から上方に延びる第2の弾性片部36と、第2の弾性片部36の上端側に形成された接触部37とからなり、接触部37は第1の固定片部34側に向かって山形に突出している。接続部31は前後方向に延びるように形成され、固定ハウジング10の下面側に配置されている。第1の固定片部32は固定ハウジング10の端子孔15内に配置され、その下端側を固定ハウジング10の端子保持溝14に保持されている。第1の弾性片部34は可動ハウジング20の外壁面と固定ハウジング10の内壁面との間に配置され、その下端側を可動ハウジング20の端子保持溝26に保持されている。第2の固定片部35は接続部31の反対側に向かって延びように形成され、可動ハウジング20の下面側に配置されている。第2の弾性片部36及び接触部37は可動ハウジング20の端子孔27内に配置され、第2の弾性片部36は接触部37が端子孔27の外部に突出するように上下方向に対して斜めに形成されている。即ち、可動ハウジング20は各端子30を介して固定ハウジング10に前後方向及び幅方向に移動自在に支持されている。
【0014】
また、端子30は、図6に示すように、銅合金等の金属からなる母材30aに、母材30aの表面全体に施された下地層30b(例えばCuメッキ)と、下地層30bの表面全体に施された表面メッキ層30c(例えばSnメッキ)と、表面メッキ層30cの一部の表面に施された絶縁性の樹脂層30dとを形成してなり、絶縁層30dは第1の固定片部32の上端側から屈曲部33、第1の弾性片部34及び第2の固定片35に亘って端子30を被覆している。樹脂層30dの形成方法としては、電着塗装により表面メッキ層30cの上に樹脂の被膜を形成した後、光の現像処理によって樹脂の被膜を定着させることにより、樹脂をコーティングする。この場合、電着塗装では樹脂層30d以外の部分にも樹脂が被着するが、樹脂層30dとなる部分のみに光を照射して定着させた後、樹脂層30d以外の部分の樹脂を除去することにより、樹脂層30dのみが形成される。
【0015】
以上のように構成されたコネクタは、図示しない基板の位置決め孔に固定ハウジング10の各突起17を係合するとともに、各端子30の接続部31を基板に半田付けされることにより、基板に取付けられる。
【0016】
前記コネクタに図示しない相手側コネクタを接続する場合は、相手側コネクタが可動ハウジング20に嵌合し、相手側コネクタの端子が各端子30の接触部37に接触する。その際、各端子30の第2の弾性片部36が弾性変形し、接触部37が相手側コネクタの端子に圧接する。また、相手側コネクタを可動ハウジング20に嵌合する際、各端子30の第1の弾性片部34が固定ハウジング10の前後方向及び幅方向に弾性変形することにより、固定ハウジング10に対する可動ハウジング20の位置ずれが許容される。この場合、各端子30の第1の固定片部32の上端側、屈曲部33、第1の弾性片部34及び第2の固定片35は各ハウジング10,20の外部に露出しているが、これらの部分は樹脂層30dによって被覆されているため、各ハウジング10,20で覆われた他の部分とのインピーダンスの差が小さくなる。また、各端子30の第1の弾性片部34が固定ハウジング10の幅方向に弾性変形する際、隣接する第1の弾性片部34同士が接触しても、樹脂層30dによって短絡が防止される。
【0017】
このように、本実施形態のコネクタによれば、各端子30における各ハウジング10,20間に露出する第1の固定片部32の上端側、屈曲部33、第1の弾性片部34及び第2の固定片35を絶縁性の樹脂層30dによって被覆するようにしたので、これらの部分のインピーダンスと各ハウジング10,20で覆われた他の部分のインピーダンスとの差を小さくすることができ、各端子30内のインピーダンスの不整合による電気信号の乱れを効果的に防止することができる。これにより、高周波信号の高速伝送が可能となる。また、各端子30の第1の弾性片部34が固定ハウジング10の幅方向に弾性変形する際、隣接する第1の弾性片部34同士が接触しても、樹脂層30dによって短絡を防止することができるので、各端子30のピッチを小さくすることができ、端子30の高密度化を図ることができる。
【符号の説明】
【0018】
10…固定ハウジング、20…可動ハウジング、30…端子、30a…母材、30b…下地層、30c…シールド層、30d…樹脂層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに幅方向に間隔をおいて配列された複数の端子と、各端子の一端側が保持された固定ハウジングと、各端子の他端側が保持され、相手側コネクタに接続される可動ハウジングとを備え、各端子の各ハウジング間に亘る部分の弾性変形により、可動ハウジングを固定ハウジングに対して移動自在に支持するようにしたコネクタにおいて、
前記各端子の各ハウジング間に露出する部分を絶縁性の樹脂で被覆した
ことを特徴とするコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−212020(P2010−212020A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55330(P2009−55330)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(390012977)イリソ電子工業株式会社 (76)
【Fターム(参考)】