説明

コポリマー、脂肪モノカルボン酸の塩および脂肪モノカルボン酸および/または脂肪アルコールを含む粉末状または粒状組成物

本発明は、少なくとも30質量%までの(a)アクリル酸もしくはメタクリル酸のC1−からC4−アルキルエステルの重合単位およびアルキル基内に3級アミノ基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーから構成されるコポリマーと、(b)(a)に基づいて5〜28質量%の10〜18個の炭素原子を有する脂肪モノカルボン酸の塩と、および(c)(a)に基づいて10〜30質量%の8〜18個の炭素原子を有する脂肪モノカルボン酸および/または8〜18個の炭素原子を有する脂肪アルコールとの混合物を含む粉末状または粒状組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、栄養補助食品または化粧品の分野における活性成分をコーティングまたは結合するためのすぐ使用できる水性分散液としてのコポリマー、脂肪モノカルボン酸の塩および/または脂肪モノカルボン酸および/または脂肪アルコールを含む粉末状または粒状組成物に関する。
【0002】
技術背景
PCT出願公開第WO02067906A1号(第US20030064036A1号)は、改良された貯蔵安定性を有するコーティング剤および結合剤であって、本質的に
(a)アクリル酸もしくはメタクリル酸のラジカル重合したC1−〜C4−アルキルエステルおよび官能性3級アミノ基を含む他のアルキル(メタ)アクリレートモノマーから成るコポリマーであって、1〜40μmの平均粒径を有する粉末の形状にあるコポリマーと、
(b)(a)に基づいて3〜15質量%の少なくとも14のHLB値を有する乳化剤と、
(c)(a)に基づいて5〜50質量%のC12〜C18−モノカルボン酸またはC12〜C18−ヒドロキシル化合物とから成るコーティング剤および結合剤について記載している。
【0003】
本発明の有益な作用の1つは、水蒸気透過性が低下することである。化合物(a)は、好ましくはEUDRAGIT(登録商標)EPOである。実施例における好ましい化合物(b)は、化合物(c)としてのラウリン酸、ステアリン酸またはラウリルアルコールと一緒に使用できるラウリル硫酸ナトリウムである。この実施例の分散処理時間は、およそ3〜6時間である。
【0004】
課題と解決
医薬品、栄養補助食品または化粧品のための改良されたコーティング剤および結合剤に対する永続的な需要がある。顧客は、コーティングまたは結合プロセスのためにそれらを水中に分散させた後に使用できる適切なコポリマーを含むすぐ使用できる粉末状または粒状組成物を好む。
【0005】
一般的課題は、迅速な分散時間を可能にする目的でコーティングまたは結合プロセスのために使用できるコポリマーに乳化剤のような添加物を加えなければならないことである。しかし迅速な分散時間を可能にする添加物は、他方では分散の粘度に不都合な影響を及ぼす、または水蒸気透過性を増加させることがある。特に分散液の粘度が高過ぎる場合は、これはその後のコーティングまたは結合プロセスにおける課題をもたらす可能性がある。
【0006】
さらに、例えばラウリル硫酸ナトリウムのような幾つかの頻回に使用される添加物(例、PCT出願公開第WO02067906A1号を参照のこと)は、一般に製薬目的に適切で許容されるが、現時点では、過度に高いレベルの毒性を示すと見なされている。これは、対象の医薬品、栄養補助食品または化粧品形の1日量中に存在するポリマーおよび添加物組成物の総量に依存する可能性がある。しかし一般には、当然ながら可能な限り低い毒性を有する添加物が好ましい。
【0007】
そこで本発明の1つの目的は、可能な限り短いプロセス時間を有する、水中に完全に分散するコーティングまたは結合のための粉末状または粒状組成物を提供することである。迅速な分散時間を支持するために使用される添加物は、可能な限り低い毒性レベルでなければならない。さらに分散液の粘度は、引き続いてコーティングまたは結合手順を成功させる範囲内になければならない。
【0008】
この課題は、少なくとも30質量%の
(a)アクリル酸もしくはメタクリル酸のC1−〜C4−アルキルエステルの重合単位およびアルキル基内に3級アミノ基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーから構成されるコポリマーと、
(b)(a)に基づいて5〜28質量%の10〜18個の炭素原子を有する脂肪モノカルボン酸の塩と、
(c)(a)に基づいて10〜30質量%の8〜18個の炭素原子を有する脂肪モノカルボン酸および/または8〜18個の炭素原子を有する脂肪アルコールとの混合物を含む粉末状または粒状組成物によって解決される。
【0009】
本発明の組成物は、粉末または顆粒を水中に迅速に溶解させられるように使用することを目的とする。分散した水性組成物は低粘度を示すので、このため医薬品、栄養補助食品または化粧品のためのコーティング剤および結合剤として直接的に加工処理することができる。好ましい実施形態は、30%(質量/体積)までの乾燥質量含量を有する分散液として調製することができる。主要な成分(a)、(b)および(c)は、好ましくは2,000mg/kgのLD50(ラット)またはそれよりいっそう低毒性の範囲内の極めて低い毒性データを示す。
【0010】
成分(a)
成分(a)は、アクリル酸もしくはメタクリル酸のC1−〜C4−アルキルエステルの重合単位およびアルキル基内に3級アミノ基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーから構成されるコポリマーである。
【0011】
アミノメタクリレートコポリマー
コポリマー成分(a)は、EUDRAGIT(登録商標)Eタイプであるいわゆる「アミノメタクリレートコポリマー(USP/NF)」、「塩基性ブチル化メタクリレートコポリマー(欧州薬局方(Ph. Eur)」または「アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(JPE)」であってよい。適切なEUDRAGIT(登録商標)Eタイプのコポリマーは、例えば、欧州特許第0058765B1号から公知である。
【0012】
アミノ(メタ)アクリレートコポリマーは、例えば、30〜80質量%のアクリル酸もしくはメタクリル酸のフリーラジカル重合したC1−〜C4−アルキルエステル、および70〜20質量%のアルキル基内に3級アミノ基を有する(メタ)アクリレートモノマーから構成されてよい。
【0013】
官能性3級アミノ基を有する適切なモノマーは、米国特許第4705695号第3段落第64行〜第4段落第13行に詳述されている。特に言及しておかなければならないのは、ジメチルアミノエチルアクリレート、2−ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノベンジルアクリレート、ジメチルアミノベンジルメタクリレート、(3−ジメチルアミノ−2,2−ジメチル)プロピルアクリレート、ジメチルアミノ−2,2−ジメチル)プロピルメタクリレート、(3−ジエチルアミノ−2,2−ジメチル)プロピルアクリレート、ジエチルアミノ−2,2−ジメチル)プロピルメタクリレート、およびジエチルアミノエチルメタクリレートである。特に好ましいのは、ジメチルアミノエチルメタクリレートである。
【0014】
コポリマー内の3級アミノ基を有するモノマーの含量は、有益には20〜70質量%、および好ましくは40〜60質量%であってよい。アクリル酸もしくはメタクリル酸のC1−〜C4−アルキルエステルの比率は、70〜30質量%である。言及しておかなければならないのは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレートおよびブチルアクリレートである。
【0015】
適切なアミノ(メタ)アクリレートコポリマーは、例えば、20〜30質量%のメチルメタクリレート、20〜30質量%のブチルメタクリレートおよび60〜40質量%のジメチルアミノエチルメタクリレートから重合させられてよい。
【0016】
特に適切な市販のアミノ(メタ)アクリレートコポリマーは、例えば、25質量%のメチルメタクリレート、25質量%のブチルメタクリレートおよび50質量%のジメチルアミノエチルメタクリレート(EUDRAGIT(登録商標)E100またはEUDRAGIT(登録商標)EPO(粉末形))から形成される。EUDRAGIT(登録商標)E100およびEUDRAGIT(登録商標)EPOは、およそpH5.0未満で水溶性であるので、さらに胃液溶解性である。
【0017】
成分(b)
成分(b)は、10〜18個の炭素原子を有する1つ以上の脂肪モノカルボン酸の塩である。適切な量は、コポリマー成分(a)に基づいて5〜28、好ましくは5〜25、好ましくは5〜20、好ましくは5〜15、または好ましくは8〜12質量%である。一般的に、10〜18個の炭素原子を有する脂肪モノカルボン酸の塩は、水溶性または水分散性である。
【0018】
ポリマー成分(a)内のカチオン性基に対して、成分(b)は、5〜35、好ましくは5〜25、または好ましくは12〜25モル%のモル比で存在してよい。
【0019】
本発明のまた別の好ましい実施形態では、成分(b)と関連する塩は、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩からなる群から選択される。
【0020】
本発明の特に好ましい実施形態では、成分(b)と関連する塩は、10〜18、好ましくは10〜14または16〜18個の炭素原子を有する飽和した、好ましくは非分枝状、好ましくは未置換のモノカルボン酸(脂肪酸)の塩であり、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、もしくはステアリン酸またはそれらの混合物の塩からなる群から選択されてよい。いっそうより好ましくは、アルカリ金属塩またはそのアンモニウム塩である。いっそうさらに好ましいのはカプリン酸の塩であり、特に好ましいのはカプリン酸ナトリウム=ナトリウムカプレート(C919COO-Na+)である。
【0021】
以下の飽和モノカルボン酸の塩は、本発明のために特に適合する:
10:カプリン酸(C919COOH)、
12:ラウリン酸(C1123COOH)、
14:ミリスチン酸(C1327COOH)、
16:パルミチン酸(C1531COOH)、
18:ステアリン酸(C1735COOH)。
【0022】
10〜18個の炭素原子を有するモノカルボン酸(脂肪酸)の塩以外の有機酸または無機酸の塩は、本発明の目的には適合しないと推定される。
【0023】
10〜18個の炭素原子を有する飽和した、モノカルボン酸(脂肪酸)は、それらがアルカリ金属塩または水酸化アンモニウムと一緒に適用されてin situで塩形に反応しない限り、本発明の目的には適合しない。
【0024】
10〜18個、好ましくは10〜14個、または16〜18個の炭素原子を有する飽和した、好ましくは非分枝状のモノカルボン酸(脂肪酸)の塩は、好ましくは未置換である。
【0025】
本発明の意味において適合する10〜18個、好ましくは10〜14個または16〜18個の炭素原子を有する飽和した、好ましくは非分枝状の、好ましくは未置換のモノカルボン酸(脂肪酸)の塩は全部が医薬品または栄養補助食品成分として許容できなければならないと理解される。
【0026】
10〜18個の炭素原子を有する脂肪モノカルボン酸の塩は、さらにまた成分(c)としての対応する酸および塩基、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)または水酸化カリウム(KOH)を加えることによって生成することもできる。これはin situ塩形成による脂肪モノカルボン酸の酸(成分(c))と対応する塩(成分(b))との間のバランスを生じさせる。必要とされる塩基の量は、モル中和度の計算によって決定することができる。
【0027】
成分(c)
成分(c)は、8〜18個の炭素原子を有する1つ以上の脂肪モノカルボン酸、8〜18個の炭素原子を有する1つ以上の脂肪アルコールである。適切な量は、コポリマー成分(a)に基づいて10〜30、好ましくは10〜28、好ましくは10〜20、または好ましくは12〜18質量%である。
【0028】
ポリマー成分(a)内のカチオン性基に対して、成分(c)は、10〜50、好ましくは15〜40モル%のモル比で存在してよい。
【0029】
8〜18個の炭素原子を有する脂肪モノカルボン酸
以下のモノカルボン酸は、本発明のために適合する:
8:カプリル酸(C715COOH)、
10:カプリン酸(C919COOH)、
12:ラウリン酸(C1123COOH)、
14:ミリスチン酸(C1327COOH)、
16:パルミチン酸(C1531COOH)、
18:ステアリン酸(C1735COOH)。
【0030】
8〜18個、好ましくは8または10または16または18個の炭素原子を有する飽和した、好ましくは非分枝状のモノカルボン酸(脂肪酸)は、好ましくは未置換である。好ましいのは、単一成分(c)としてのカプリン酸(C919COOH)またはステアリン酸(C1735COOH)またはそれらの混合物であり、最も好ましいのは成分(b)としてのカプリン酸ナトリウム(C919COONa)との組み合わせである。
【0031】
8〜18個の炭素原子を有する脂肪アルコール
以下のC8−C18脂肪アルコールは、本発明のために適合する:
8:カプリルアルコール(1−オクタノール)
8:2−エチルヘキサノール(分枝状)
9:ペラルゴニックアルコール(1−ノナノール)
10:カプリンアルコール(1−デカノール、デシルアルコール)
11:ウンデカノール
12:ラウリルアルコール(1−ドデカノール)
14:ミリスチルアルコール(1−テトラデカノール)
16:セチルアルコール(1−ヘキサデカノール)
16:パルミトレイルアルコール(シス−9−ヘキサデセンー1−オール;未飽和)
18:ステアリルアルコール(1−オクトデカノール)
18:イソステアリルアルコール(16−メチルヘプタデカン−1−オール;分枝状)
18:エライジルアルコール(9E−オクタデセン−1−オール;未飽和)
18:オレイルアルコール(シス−9−オクタデセン−1−オール;未飽和)
18:リノレイルアルコール(9Z,12Z−オクタデセン−1−オール;ポリ不飽和)
18:エライドリノレイルアルコール(9E,12E−オクタデカジエン−1−オール;ポリ不飽和)
18:リノレニルアルコール(9Z,12Z,15Z−オクタデカトリエン−1−オール;ポリ不飽和)
18:エライドリノレニルアルコール(9E,12E,15−E−オクタデカトリエン−1−オール;ポリ不飽和)
18:リシノレイルアルコール(12−ヒドロキシ−9−オクタデセン−1−オール;不飽和、ジオール)
好ましいのは、C8−C10脂肪アルコールである。最も好ましいのは、カプリルアルコール(1−オクタノール)およびドデカノールである。
【0032】
医薬品、栄養補助食品または化粧品用賦形剤
本発明による組成物は、成分(a)、(b)および(c)の総質量に基づいて200質量%まで、70質量%まで、60質量%まで、50質量%まで、40質量%まで、30質量%まで、20質量%まで、または10質量%までの成分(a)、(b)および(c)とは相違する医薬品、栄養補助食品または化粧品用賦形剤を含有できることもまた特徴とする。しかし本発明による組成物は、同様に任意または本質的に任意の医薬品、栄養補助食品または化粧品用賦形剤を含有することができる。そこで本組成物は、100%の成分(a)、(b)および(c)から成ってよい、または本質的に成ってよい。
【0033】
用語「医薬品、栄養補助食品または化粧品用賦形剤」は、当業者には周知である。そのような賦形剤は製薬学においてだけではなく栄養補助食品または化粧品の分野においてもまた慣習的なものであり、時にはそれらは慣習的添加物としてもまた言及される。当然ながら、使用される全ての賦形剤または慣習的添加物が、毒性学的に許容でき、特に食品または医薬品において顧客または患者に危険性を伴わずに使用可能であることが常に必要である。
【0034】
これらの要件は製薬学の分野においては通常はより高いが、製薬目的に使用される賦形剤と栄養補助食品の目的に使用される賦形剤とには広範囲の重複が見られる。通常は、すべての医薬品賦形剤は栄養補助食品の目的に使用することができ、少なくとも極めて多数の栄養補助食品用賦形剤は医薬品目的に同様に使用することが許容されている。本発明の配合物には賦形剤を、好ましくは粉末の混合中、顆粒の製造中に、活性成分をコーティングまたは結合するため、固体もしくはパッチをコーティングするため、または半固体を分散させるために加えることができる。
【0035】
成分(a)、(b)および(c)とは相違する医薬品、栄養補助食品または化粧品用賦形剤は、実用的理由のために、例えば粘性を回避させる、または色を加えるために含有されてよい。しかしこれらの賦形剤は、通常は本明細書で主張した本発明自体には寄与しない、または何らかの作用を示さない、またはほとんど全く示さない。
【0036】
成分(a)、(b)および(c)とは相違する医薬品、栄養補助食品または化粧品用賦形剤は、成分(a)、(b)および(c)の相互作用に基づくという狭い意味では本発明に寄与しない。成分(a)、(b)および(c)とは相違する、および本発明の主要な有益な作用、例えば調製時間または分散液の粘度に本質的な有害作用を有する可能性がある医薬品、栄養補助食品または化粧品用賦形剤は、回避しなければならず、除外することができる。例えば成分(b)および(c)とは相違する乳化剤特性を有する本質的な量のドデシル硫酸ナトリウムまたは類似の物質の添加は回避されなければならない。好ましくは成分(b)および(c)とは相違する乳化剤特性を有する本質的な量のドデシル硫酸ナトリウムまたは類似の物質の任意の添加が回避されなければならない。
【0037】
成分(a)、(b)および(c)とは相違する典型的な医薬品、栄養補助食品または化粧品用賦形剤については、当業者であれば習熟している。例は、酸化防止剤、光沢剤、フレーバー剤、流動助剤、フレグランス、流動促進剤(離型剤)、浸透促進剤、顔料、可塑剤、ポリマー、孔形成剤または安定剤である。それらは加工用アジュバントとして使用することができ、信頼性および再現性のある調製プロセスならびに優れた長期貯蔵安定性を保証することを目的とし、またはそれらは医薬品剤形にある追加の有益な特性を達成する。それらは加工処理する前にポリマー配合物に加えられ、コーティングの透過性に影響を及ぼすことができる。この特性は、必要であれば追加の制御パラメーターとして使用できる。
【0038】
ポリマー成分(a)と相互作用する可能性があるアニオン性ポリマーまたはアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーは除外することができる。3〜10個の炭素原子を有するジカルボン酸も同様に除外することができる。
【0039】
可塑剤
可塑剤は、ポリマーとの物理的相互作用を通してガラス転移温度での還元を達成し、加えられた量に応じて塗膜形成を促進する。適切な物質は、通常は100〜20,000の分子量を有し、分子内において1つ以上の親水基、例えばヒドロキシル、エステルまたはアミノ基を含んでいる。
【0040】
適切な可塑剤の例は、アルキルシトレート、グリセロールエステル、アルキルフタレート、アルキルセバケート、スクロースエステル、ソルビタンエステル、ジエチルセバケート、ジブチルセバケートおよびポリエチレングリコール200〜12000である。好ましい可塑剤は、トリエチルシトレート(TEC)、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、ジエチルセバケートおよびジブチルセバケート(DBS)である。さらに、室温で通常は液体であるエステル、例えばシトレート、フタレート、セバケートまたはヒマシ油について言及しておかなければならない。好ましくは、クエン酸およびセバシン酸のエステルが使用される。
【0041】
配合物への可塑剤の添加は、公知の方法で、水溶液中で直接的に、または混合物の熱前処理後に実施することができる。さらに可塑剤の混合物を使用することもまた可能である。
【0042】
流動促進剤/離型剤/剥離剤:
流動促進剤、離型剤または剥離剤は、通常は親油特性を有し、通常はスプレー懸濁液に加えられる。それらは、塗膜形成中のコアの凝集を防止する。好ましくは、タルク、ステアリン酸マグネシウムもしくはカルシウム、粉砕シリカ、カオリンまたは2〜8のHLB値を有する非イオン性乳化剤が使用される。本発明のコーティング剤および結合剤中に離型剤を使用するための標準比率は、成分(a)、(b)および(c)に対して0.5〜70質量%の範囲に及ぶ。
【0043】
顔料:
極めて希に、顔料は可溶形で加えられる。概して、酸化アルミニウムまたは酸化鉄顔料は、分散形で使用される。二酸化チタンは、白化顔料として使用される。本発明のコーティング剤および結合剤中に顔料を使用するための標準比率は、成分(a)、(b)および(c)に対して20〜200質量%の範囲に及ぶ。
【0044】
当然ながら使用される全ての種類の賦形剤は、もちろん毒性学的に安全でなければならず、顧客または患者に危険性を伴わずに栄養補助食品または医薬品において使用できなければならない。
【0045】
調製プロセス
本発明による組成物を製造するための方法は、成分(a)、(b)および(c)が、粉末混合、乾式造粒、湿式造粒、溶融造粒、スプレー乾燥または凍結乾燥によって相互に混合されることを特徴とすることができる。
【0046】
成分(a)、(b)および(c)は粉末状態で相互に、または乾式、湿式もしくは溶融造粒プロセスであってよい造粒プロセスによって混合されてよい。代替法として、成分は水性分散層内に続いて加えることができる。
【0047】
粉末混合プロセス
成分(a)、(b)および(c)は粉末状態で相互に、ミキサー装置を使用して混合される。粉末状態は、成分の粒子が1mm未満、好ましくは0.5mm未満、特別には100μm以下、好ましくは10〜100μmの範囲内にある平均粒径を有してよい。粉末混合のプロセスは、当業者には周知である。平均粒径は、ふるい分け技法によって、またはレーザー回折法によって決定することができる。
【0048】
乾式造粒プロセス
成分(a)、(b)および(c)は顆粒の形態で相互に、ミキサー装置を使用して混合される。顆粒は、1mm以上、好ましくは1〜5mmの範囲内の平均粒径を有していてよい。
【0049】
湿式造粒プロセス
成分(a)、(b)および(c)の粉末または顆粒は、湿潤状態で相互に、粉末または顆粒を水または有機溶媒を用いて湿潤させ、その後にミキサーまたは混練装置を使用して混合される。湿潤状態とは、例えば10〜100質量%の範囲内の含水量を用いて手作業で混練することのできる湿塊が存在することを意味する。各々混練する湿潤化および混合する工程の後に、湿塊は乾燥させられ、その後に再び顆粒または粉末へ変化させられる。湿潤造粒のプロセスは、当業者には周知である。有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチルまたはアセトン中の成分(a)、(b)および(c)またはそれらの組み合わせの溶液は、湿式造粒プロセスにおいてもまた使用できる。有機溶媒は、任意で50%(v/v)までの水を含有していてよい。
【0050】
溶融造粒プロセス
成分(a)、(b)および(c)の粉末または顆粒は、高い温度で通常は追加の溶媒を使用せずに相互に混合されるが、このとき少なくともコポリマーは溶融状態にある。これは、加熱ミキサーまたは押し出し機内で、好ましくは2軸押し出し機内で実施することができる。混合する工程の後に、溶融塊は冷却させられ、その後に再び顆粒または粉末へ変化させられる。溶融造粒のプロセスは、当業者には周知である。
【0051】
スプレー乾燥または凍結乾燥プロセス
成分(a)、(b)および(c)は、水または有機溶媒もしくは水と有機溶媒との混合液中に、個別に、またはプレミックスとして溶解または分散させられ、続いて乾燥させられ、おそらくはふるいにかけられる。これらの化合物は、10μm〜2mm以上、好ましくは20μm〜1.5mmの範囲内の平均粒径を有していてよい。
【0052】
分散または溶解プロセス
成分(a)、(b)および(c)は、室温で従来型スターラーを用いて緩徐に攪拌しながら、水性分散液または溶解液、好ましくは精製水に粉末混合物、顆粒または1つの成分として次々に加えられる。有益にも、本発明によると、高剪断ミキサーまたは特定分散液は必要ではない。さらに、懸濁液を加熱する工程も必要ではない。3時間未満攪拌した後、コーティングまたは造粒プロセスおよび/または乾燥工程後に膜を形成するために噴霧することのできる分散液または溶液が形成される。分散液または溶液は、35質量%未満、好ましくは25質量%未満の固体の総含量および7〜11のpH値を有していてよい。分散液または溶液のpH値は、8〜10、好ましくは9〜10の範囲内にあってよい。
【0053】
分散液調製時間
例えば、分散液調製時間は、偏光顕微鏡によって観察および決定することができる。粉末状または粒状混合物が水に加えられる時間が開始点と規定されている。水性分散混合物は、さらに室温(約22℃)で攪拌される。最初に、初めは白くなり、次に攪拌中にはより透明になっていく混濁分散液が生じる。次に水性分散混合物の液滴は、10分毎に取り出され、位相フィルターに支持されて倍率100倍の偏光顕微鏡下で観察される。顕微鏡下でそのような液滴の液体中に粒子が全く、またはほとんど(視野内に粒子が少なくとも10粒未満しか)観察されない時点が、分散プロセスの終点と見なされる。この決定法の精度は、大多数の場合に様々な分散廃合物の調製時間を相互から区別するためには十分である。本組成物は、3時間未満、好ましくは2.5時間以下、最も好ましくは1.5時間以下の分散液または溶液調製時間によって特徴付けることができる。調製時間は、乾燥粉末状または粒子状混合物を水に室温で加える時点から始まり、さらに成分を攪拌してそれにより溶解させて各々透明な溶液または分散液が生じる時点で終了する。
【0054】
実用的な適用:
本発明による分散液は、栄養補強品、栄養補助食品、化粧品、薬用化粧品、医薬品中間体または医薬品の開発および製造における造粒またはコーティングプロセスにおいて使用できる。本発明の分散した化合物中に保持されるポリマーの物理化学的特性のために、例えば着色、味覚マスキング、水分防護、光線防護、悪臭マスキングまたは膨潤のしやすさなどの機能が最終剤形に導入される。
【0055】
当業者には公知の適用手順およびプロセスは、例えば下記に公表されている:
G. Cole, J. Hogan, M. Aulton, Pharmceutical coating Technology Taylor & Francis, 1995
K. H. Bauer, K. Lehmann, H. P. Osterwald, G. Rothgang, "Coated Dosage Forms", CRC Press 1998
Pharmaceutical Manufacturing Encyclopedia, William Andrew Publishing; Third Edition, 2005
Encyclopedia of Pharmaceutical Technology, Third Edition,. Informa Healthcare, 2006
J. W. McGinity, L. A. Felton, aqueous Polymeric Coatings for Pharmaceutical Dosage Forms, Third Edition, Informa Healthcare, 2008
栄養補助食品
栄養補助食品は、ヒトの健康に医療効果を及ぼすと主張される食品の抽出物であると規定できる。栄養補助食品は、通常は処方量にある医学的形式、例えばカプセル剤、錠剤または散剤中に含有される。栄養補助食品の例は、酸化防止剤としてのブドウ製品からのレスベラトロール、可溶性食物繊維製品、例えば高コレステロール血症を低下させるためのオオバコ種子の殻、ガン予防薬としてのブロッコリー(スルファン)、および動脈の健康状態を改良するための大豆もしくはクローバー(イソフラボノイド)である。その他の栄養補助食品の例は、フラボノイド、酸化防止剤、亜麻仁由来のα−リノール酸、マリーゴールドの花弁由来のβ−カロテンまたはベリー由来のアントシアニンである。時には、「栄養補助食品」は、「栄養補給食品」の同義語として使用されている。
【0056】
化粧品
化粧品は、ヒトの身体の外観または臭気を増強または保護するために使用される物質である。典型的な化粧品活性成分は、ビタミン類、植物化学物質、酵素、酸化防止剤、およびエッセンシャルオイル(精油)を含むことができる。化粧品は、スキンケアクリーム、ローション、パウダー、香水、リップスティック、手指の爪および足指の爪研磨剤、眼およびフェイシャルメークアップ、パーマネント・ウェーブ、カラーコンタクトレンズ、ヘアカラー、ヘアスプレーおよびヘアジェル、デオドラント、ベビー用製品、バスオイル、バブルバス、バスソルト、バターならびに多数の他のタイプの製品を含むことができる。それらの使用は、特に女性であるが、さらに男性にもまた広範囲に及ぶ。一部の化粧品は、「メーキャップ」と呼ばれており、これは主として使用者の外観を変化させることを目的とする着色製品を意味する。多数の製造業者は、装飾用化粧品と手入れ用化粧品とを区別している。用語「化粧品」は、典型的には応用形、例えばいわゆる薬用化粧品ならびに経口摂取される形態、例えばいわゆる栄養化粧品を包含するものとする。
【0057】
活性成分
本組成物は、あらゆる種類の医薬品、栄養補助食品または薬用化粧品用活性成分と組み合わせたコーティング剤および結合剤として使用できる。しかし追加して有益な作用は、味覚遮蔽形または耐湿形で処方される必要があるそれらの種類の活性成分と組み合わせて得ることができる。
【0058】
医薬品、栄養補助食品または化粧品用活性成分は、それらが生物の健康、例えばヒトの健康に有益な作用を有する活性成分であるという共通点がある。それらは、それらの配合物が同一である、または極めて類似するという共通点もある。しばしばさらに、同一種類の賦形剤または添加物がこれらの種類の活性成分と組み合わせて使用される。医薬品活性成分は、疾患を治癒させるため、および生物の健康、例えばヒトの健康に多かれ少なかれ直接的に影響を及ぼすために使用される。栄養補助食品用活性成分は、栄養を補給するため、したがって生物の健康、例えばヒトの健康または動物の健康を間接的に支援するために使用される。化粧品用活性成分は、例えばヒトの皮膚の含水量のバランスを整えることによって、ヒトの健康を間接的に支援することが意図されている。
【0059】
方法
本発明はさらに、本組成物を製造するための方法であって、成分(a)、(b)および(c)が、粉末混合、乾式造粒、湿式造粒または溶融造粒によって相互に混合される方法に関する。湿式造粒の場合には、成分(a)、(b)もしくは(c)またはそれらの組み合わせは、有機溶液の形態で使用できる。
【0060】
使用
本発明は、医薬品、栄養補助食品または化粧品組成物のスプレーコーティングまたは結合のためのコーティング剤または結合剤としての組成物の使用を開示している。好ましい活性成分含有組成物は、散剤、ペレット剤、顆粒剤、ミニ錠剤、サシェ剤、ドライシロップ剤、錠剤もしくはカプセル剤または栄養補助食品組成物または化粧品組成物の形態にあってよい。コーティング溶液としての使用は、他のコーティング剤と組み合わせたサブコートまたはトップコートとしての使用を包含するものとする。
【0061】
実施例:
実施例では、以下のコポリマーを使用した。
【0062】
コポリマー
塩基性ブチル化メタクリレート化コポリマーEUDRAGIT(登録商標)EPOまたはEUDRAGIT(登録商標)E100
EUDRAGIT(登録商標)Eは、25質量%のメチルメタクリレート、25質量%のブチルメタクリレートおよび50質量%のジメチルアミノエチルメタクリレートから構成されるコポリマーである。
【0063】
モデル薬物
マーカーとしての硫酸キニジン(直ちに苦味を感じる)またはシリカゲル(総量550mg、直径11mm)を有する錠剤(300mg)を用いた試験を実施した。
【0064】
賦形剤
全賦形剤は、薬学的品質で使用した。
【0065】
分解試験:
分解は、USP 28<701>, Disintegrationにしたがって試験した。
【0066】
溶解試験
コーティング錠は、USP 28−NF23, General Chapter<711>, Dissolutionにしたがって試験した。
【0067】
溶解パラメーター:
装置:USP II型(パドル法)
RPM:50/分
温度:37.5±0.5℃
溶解体積:900mL
波長:250nm
溶解媒体1:
0.1モルの塩酸(HCl)、(欧州薬局方=EP)
溶解媒体2:
リン酸緩衝液(pH6.0)(欧州薬局方=EP)
結果
下記の表は、本発明ならびに非発明比較実施例による調製実施例1〜25について説明している:
分散液は、成分(b)、(a)および(c)をこの順序で個別に、または精製水中の全成分の粒状もしくはブレンドされた予混合物を規定の乾燥固体含量を提供する量で加えることによって調製する。攪拌は、マグネティックスターラーまたは低剪断力を提供する単純な攪拌器を用いて実施した。
【0068】
実施例23、24および25では、造粒のために有機溶媒を使用する。EUDRAGIT(登録商標)E100をイソプロパノール(95(w/w)%)中に溶解させ、緩徐に攪拌しながら15(w/w)%溶液を形成した。続いて成分(b)および(c)を加え、完全に溶解するまで攪拌した。流動促進剤もまた使用する場合は、流動促進剤は透明な溶液に加え、短時間攪拌して均質な懸濁液を得た。最終懸濁液は、50℃で24時間にわたり真空オーブン中で完全に乾燥させた。乾燥した膜を製粉すると、粒径が約0.5mmの粉末が得られた。粉末は、実施例1〜22にしたがって試験した。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
【表5】

【0074】
実施例35
コーティング分散液の調製:
コーティング組成物は、実施例1の配合物をタルク(ポリマーに対して50(w/w)%)と混合し、この粉末化合物を精製水中に緩徐に攪拌して分散させることによって調製した。コーティング分散液は、18(w/w)%の乾燥固体含量を有していた。全コーティングプロセスを通して攪拌を継続する。
【0075】
コーティングプロセス:
1,800gの硫酸キニジン錠剤を側面通気式コーティングパンのHi Coater LHC30(Loedige社)内に装填し、適切な条件、つまりおよそ1kgのコア当たりコーティング懸濁液7g/分のスプレー速度およびおよそ30〜35℃の床温度下でコーティング懸濁液を用いてコーティングした。乾燥ポリマー質量増加は、2mg/cm2(錠剤表面積)へ調整した。コーティング後、錠剤は45℃のコーター内で5分間および40℃のオーブン上のトレイ上で2時間にわたり乾燥させた。
【0076】
結果:
全錠剤は、10分間を超えて当たり障りのない味であった。
【0077】
実施例36
コーティング分散液の調製:
コーティング組成物は、実施例1の配合物をタルク(ポリマーに対して50(w/w)%)と混合し、この粉末化合物を精製水中に緩徐に攪拌して分散させることによって調製した。コーティング分散液は、18(w/w)%の乾燥固体含量を有していた。全コーティングプロセスを通して攪拌を継続する。
【0078】
コーティングプロセス:
1,800gの硫酸キニジン錠剤を側面通気式コーティングパンのHi Coater LHC30(Loedige社)内に装填し、適切な条件、つまりおよそ1kgのコア当たりコーティング懸濁液7g/分のスプレー速度およびおよそ30〜35℃の床温度下でコーティング懸濁液を用いてコーティングした。乾燥ポリマー質量増加は、10mg/cm2(錠剤表面積)へ調整した。コーティング後、錠剤は45℃のコーター内で5分間および40℃のオーブン上のトレイ上で2時間にわたり乾燥させた。
【0079】
結果:
全錠剤を溶解媒体1および2中での薬物放出について試験すると、どちらの媒体中でも15分間で90%を超える薬物放出率であった。精製水中で試験した同一錠剤は、60分後に5%未満の薬物放出率であった。
【0080】
実施例37
コーティング分散液の調製:
コーティング組成物は、実施例11の配合物をタルク(ポリマーに対して100(w/w)%)と混合し、この粉末化合物を精製水中に緩徐に攪拌して分散させることによって調製した。コーティング分散液は、18(w/w)%の乾燥固体含量を有していた。全コーティングプロセスを通して攪拌を継続する。
【0081】
コーティングプロセス:
1,800gの硫酸キニジン錠剤を側面通気式コーティングパンのHi Coater LHC30(Loedige社)内に装填し、適切な条件、つまりおよそ1kgのコア当たりコーティング懸濁液7g/分のスプレー速度およびおよそ30〜35℃の床温度下でコーティング懸濁液を用いてコーティングした。乾燥ポリマー質量増加は、2mg/cm2(錠剤表面積)へ調整した。コーティング後、錠剤は45℃のコーター内で5分間および40℃のオーブン上のトレイ上で2時間にわたり乾燥させた。
【0082】
結果:
全錠剤は、10分間を超えて当たり障りのない味であった。
【0083】
実施例38
コーティング分散液の調製:
コーティング組成物は、実施例11の配合物をタルク(ポリマーに対して100(w/w)%)と混合し、この粉末化合物を精製水中に緩徐に攪拌して分散させることによって調製した。コーティング分散液は、18(w/w)%の乾燥固体含量を有していた。全コーティングプロセスを通して攪拌を継続する。
【0084】
コーティングプロセス:
1,800gの硫酸キニジン錠剤を側面通気式コーティングパンのHi Coater LHC30(Loedige社)内に装填し、適切な条件、つまりおよそ1kgのコア当たりコーティング懸濁液7g/分のスプレー速度およびおよそ30〜35℃の床温度下でコーティング懸濁液を用いてコーティングした。乾燥ポリマー質量増加は、10mg/cm2(錠剤表面積)へ調整した。コーティング後、錠剤は45℃のコーター内で5分間および40℃のオーブン上のトレイ上で2時間にわたり乾燥させた。
【0085】
結果:
全錠剤は、媒体1中では2〜5分間、および精製水中では30〜60分間で分解した。全錠剤を溶解媒体1および2中で試験すると、15分間で90%を超える薬物放出率であった。精製水中で試験した同一錠剤は、60分後に5%未満の薬物放出率であった。
【0086】
実施例39
コーティング分散液の調製:
コーティング組成物は、実施例1の配合物をタルク(ポリマーに対して50(w/w)%)と混合し、この粉末化合物を精製水中に緩徐に攪拌して分散させることによって調製した。コーティング分散液は、18(w/w)%の乾燥固体含量を有していた。全コーティングプロセスを通して攪拌を継続する。
【0087】
コーティングプロセス:
1,800gのシリカゲル錠剤または硫酸塩錠剤を側面通気式コーティングパンのHi Coater LHC30(Loedige社)内に装填し、適切な条件、つまりおよそ1kgのコア当たりコーティング懸濁液7g/分のスプレー速度およびおよそ30〜35℃の床温度下でコーティング懸濁液を用いてコーティングした。乾燥ポリマー質量増加は、10mg/cm2(錠剤表面積)へ調整した。コーティング後、錠剤は45℃のコーター内で5分間および40℃のオーブン上のトレイ上で2時間にわたり乾燥させた。
【0088】
結果:
コーティング錠および非コーティング錠は、40℃および相対湿度75%の蓋の開いた容器内に貯蔵した。8時間の試験後、コーティング錠の吸湿は、100%として設定した非コーティング錠と比較して15%未満であった。
【0089】
実施例40
コーティング分散液の調製:
コーティング組成物は、実施例11の配合物をタルク(ポリマーに対して100(w/w)%)と混合し、この粉末化合物を精製水中に緩徐に攪拌して分散させることによって調製した。コーティング分散液は、18(w/w)%の乾燥固体含量を有していた。全コーティングプロセスを通して攪拌を継続する。
【0090】
コーティングプロセス:
1,800gのシリカゲル錠剤または硫酸塩錠剤を側面通気式コーティングパンのHi Coater LHC30(Loedige社)内に装填し、適切な条件、つまりおよそ1kgのコア当たりコーティング懸濁液7g/分のスプレー速度およびおよそ30〜35℃の床温度下でコーティング懸濁液を用いてコーティングした。乾燥ポリマー質量増加は、10mg/cm2(錠剤表面積)へ調整した。コーティング後、錠剤は50℃のコーター内で5分間および40℃のオーブン上のトレイ上で2時間にわたり乾燥させた。
【0091】
結果:
コーティング錠および非コーティング錠は、40℃および相対湿度75%の蓋の開いた容器内に貯蔵した。8時間の試験後、コーティング錠の吸湿は、100%として設定した非コーティング錠と比較して15%未満であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状または粒状組成物であって、
(a)アクリル酸もしくはメタクリル酸のC1−〜C4−アルキルエステルおよびアルキル基内に3級アミノ基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位から構成されるコポリマーと、
(b)(a)に基づいて5〜28質量%の10〜18個の炭素原子を有する脂肪モノカルボン酸の塩と、
(c)(a)に基づいて10〜30質量%の8〜18個の炭素原子を有する脂肪モノカルボン酸および/または8〜18個の炭素原子を有する脂肪アルコールと
の混合物少なくとも30質量%を含む粉末状または粒状組成物。
【請求項2】
前記成分(a)は、30〜80質量%のアクリル酸もしくはメタクリル酸のC1−〜C4−アルキルエステル、および70〜20質量%のアルキル基内に3級アミノ基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位から構成されるコポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記成分(a)は、20〜30質量%のメチルメタクリレート、20〜30質量%のブチルメタクリレートおよび60〜40質量%のジメチルアミノエチルメタクリレートの重合単位から構成されるコポリマーであることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記成分(b)は、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸もしくはステアリン酸またはそれらの混合物の塩であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記成分(b)は、カプリン酸ナトリウムであることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記成分(c)は、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸もしくはステアリン酸またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記成分(c)は、カプリルアルコール(1−オクタノール)または1−ドデカノールであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記成分(a)、(b)および(c)の総質量に基づいて、前記成分(a)、(b)および(c)とは相違する医薬品、栄養補助食品もしくは化粧品用賦形剤が70質量%まで含有されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記賦形剤は、酸化防止剤、光沢剤、フレーバー剤、流動助剤、フレグランス、流動促進剤、浸透促進剤、顔料、可塑剤、ポリマー、孔形成剤または安定剤のクラスから選択されることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は、5〜40(質量/体積)%の乾燥質量含量を有する水性分散液の溶解形で存在することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
室温で前記乾燥粉末状または粒状混合物を水中で攪拌し、さらに攪拌してそれにより前記成分を透明な溶液もしくは分散液各々が製造されるまで溶解することから測定される分散液または溶液調製時間が3時間未満であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記成分(a)、(b)および(c)は、粉末混合、乾式造粒、湿式造粒、溶融造粒、スプレー乾燥または凍結乾燥法によって相互に混合されることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の組成物を製造するための方法。
【請求項13】
前記成分(a)、(b)および(c)は、湿式造粒によって相互に混合され、それにより前記ポリマー成分(a)が有機溶液の形態で使用されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
医薬品、栄養補助食品もしくは化粧品組成物のためのコーティング剤または結合剤としての請求項1から11までのいずれか1項に記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2013−500292(P2013−500292A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522042(P2012−522042)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053447
【国際公開番号】WO2011/012335
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee, D−64293 Darmstadt, Germany
【Fターム(参考)】