説明

コラーゲン合成促進剤及びこれを含む皮膚外用剤組成物

本発明はコラーゲン合成促進剤及びこれを含む皮膚外用剤組成物に関し、より詳しくは、下記の式1で示される化合物の中から選択される1種以上を有効成分として含むコラーゲン合成促進剤及び下記の式1で示される化合物の中から選択される1種以上のコラーゲン合成促進成分を含む皮膚外用剤組成物に関するものである。
[式1]


[式1]
(式1において、Rは水素、メトキシ基または3-メチル-2-ブテニル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコラーゲン合成促進剤及びこれを含む皮膚外用剤組成物に関し、より詳しくはコラーゲン合成促進効果に優れるコラーゲン合成促進剤ならびに及び皮膚シワ改善効果と傷治療効果に優れた皮膚外用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞外マトリックスの主要構成成分であるコラーゲンは、皮膚の繊維芽細胞で生成される主要構造蛋白質であって細胞間マトリックスに存在する。人体蛋白質全重量の約30%を占める重要な蛋白質であって、堅固な3重螺旋構造を有する。コラーゲンは皮膚、腱(tendon)、骨及び歯の有機物質のほとんどを占めるが、特に、骨と皮膚(真皮)にその含有量が高い。ほとんどの他の構造物では繊維状封入体として存在する。
【0003】
コラーゲンは比較的弱い免疫原性であり、コラーゲンの螺旋構造が潜在的な抗原決定基を遮蔽するのがその原因の一部となっている。この螺旋構造はまた、コラーゲンに蛋白質分解に対する耐性を付与する。コラーゲンの主な機能としては、皮膚の機械的堅固性、結合組織の抵抗力と組織の結合力、細胞接着の支え、細胞分割と分化(生体の成長あるいは傷治療の間)の誘導などが知られている(Van der Rest等、Ann NY Acad Sci,1990)。このようなコラーゲンは加齢及び紫外線照射による光老化に
よって減少し、これは皮膚のシワ形成と密接な関連があることが知られている(Arthur K.Balinら, Aging and the skin, 1989)。また、コラーゲンは傷の治療においても重要な役割を担っており、損傷された上皮でコラーゲンの合成を促進させることにより、傷を速かに傷跡なく治癒させることができる。
【0004】
従来はコラーゲンの皮膚保湿効果及び傷治療効果を利用するために化粧品または軟膏のような皮膚外用剤組成物にコラーゲンを配合した製品が市販されていた。これらの製品はコラーゲン自体を皮膚表面に塗布するものであるが、高分子物質であるコラーゲンの経皮吸収が難しいために保湿作用または傷治療効果を期待することができなかったことから、本質的に皮膚機能の改善及び傷治療の機能を果たすとは言えなかった。
【0005】
このような問題を解決するためにコラーゲン合成促進物質に関する関心が高まっており、従来知られているコラーゲン合成促進物質にはビタミンC、レチノイン酸、トランスフォーミング増殖因子(TGF:transforming growth factor、
Cardinale G.ら, Adv. Enzymol., 41,p.425,1974)、動物胎盤に由来した蛋白質(JP8-231370)、ベツリン酸(JP8-208424)、クロレラ抽出物(JP9-40523、JP10-36283、繊維芽細胞増殖促進作用)などがある。
【0006】
しかし、これらの物質は皮膚に適用する時、刺激と発赤などの安全性の問題から使用量の制限があるか、効果が微少であるために実質的に皮膚機能の改善または傷治療の効果を期待することができない。したがって、従来の皮膚外用剤組成物よりも生体に安全であり、しかもより効果の高い新たな皮膚外用剤組成物の開発が切実に求められているのが実情である。
【特許文献1】JP8-231370
【特許文献2】JP8-208424
【特許文献3】JP9-40523
【特許文献4】JP10-36283
【非特許文献1】Van der Restら、Ann NY Acad Sci,1990
【非特許文献2】Arthur K.Balinら, Aging and the skin, 1989
【非特許文献3】Adv. Enzymol., 41,p.425,1974
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点を解決するためのものであって、本発明の目的は、コラーゲン合成の促進効果に優れたコラーゲン合成促進剤を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、皮膚シワ改善効果と傷治療効果に優れた皮膚外用剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、下記式1で示される化合物の中から選択される1種以上を有効成分として含むコラーゲン合成促進剤を提供する。
【0009】
【化3】

[式1]
【0010】
(上式1において、Rは水素、メトキシ基または3-メチル-2-ブテニル基である。)
本発明はまた、前記式1で示される化合物の中から選択される1種以上のコラーゲン合成促進成分を含む皮膚外用剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコラーゲン合成促進剤は皮膚の繊維芽細胞のコラーゲン合成を促進する効果に優れている。さらに、本発明の皮膚外用剤組成物は皮膚の弾力を向上させ、皮膚のシワを改善する効果に極めて優れ、傷治療効果と抗炎症効果、抗酸化効果にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明者らは皮膚シワ改善効果または傷治療効果があるコラーゲン促進剤及び皮膚外用剤組成物の有効成分として優れたコラーゲン合成促進効果を有する物質を開発し、下記の式1で示される化合物に極めて強力なコラーゲン合成の促進効果があることを発見して本発明を完成した。
【0013】
【化4】

[式1]
【0014】
(前記の式1において、Rは水素、メトキシ基または3-メチル-2-ブテニル基である。

本発明のコラーゲン合成促進剤は前記式1で示される化合物の中から選択される1種以上を有効成分として含む。
【0015】
前記式1で示される化合物の中で、Rが水素であるのがキサントトキソル(Xanthotoxol:8-hydroxypsoralen)、Rがメトキシ基であるのが8-ヒ
ドロキシベルガプテン(8-hydroxybergapten:5-benzofura
nacrylic acid、6,7-dihydroxy-4-methoxy-delt
a-lactone)、及びRが3-メチル-2-ブテニル基であるのがプランゲニジン(Prangenidin:5-Benzofuranacrylic acid、6,7-dihydroxy-4-(3-methyl-2-butenyl)-delta-lacton
e)である。
【0016】
前記の式1の化合物は生体に安全であり、皮膚の繊維芽細胞のコラーゲン合成を促進する効果があるためにコラーゲン合成促進剤としての使用に適しており、皮膚の弾力性を向上させる皮膚シワ改善効果及び傷治療効果が著しく優れている。
【0017】
前記式1の化合物は主にセリ科植物の根に存在する化合物であり、多様な抽出方法によって得られる。例えば、セリ科植物であるヨロイグサの根(白し)を細かく切って、水、炭素数1〜4の無水または含水低級アルコール、酢酸エチル、アセトン、クロロホルムまたはこれらの混合物を添加して加熱抽出し、溶媒分画した後、再結晶化することによって得ることができる。
【0018】
また、有効成分の抽出効率を上げるために、白しの主成分であるイムペラトリン(imperatorin)とクニジリン(cnidirin)を先に抽出した後、これをクライセン再配列反応(Claisen rearrangement)をさせて前記式1の化合物を得ることもできる。
【0019】
本発明のコラーゲン合成促進剤に含まれる前記式1の化合物の含有量は特に制限されない。したがって、強力なコラーゲン合成促進効果を必要とする場合、前記化合物がコラーゲン合成促進剤中に100重量%含まれてもよく、必要に応じて有効な含有量の範囲で自由に調節して用いることができ、例えば、0.00001〜5重量%の範囲で含まれてもよい。
【0020】
本発明のコラーゲン合成促進剤は多様な形態で人体に適用することができるものであり、経口または非経口方法で投与でき、薬理学的に許容される液相または固相タイプの担体をさらに含むこともできる。
【0021】
また、本発明の皮膚外用剤組成物は前記の式1の化合物をコラーゲン合成促進成分として含む。本発明の皮膚外用剤組成物は人体に適用しても毒性がなく、優れた皮膚弾力及び皮膚のシワ改善効果と傷治療効果が得られる。
【0022】
本発明の皮膚外用剤組成物は前記式1の化合物を組成物全重量に対して0.000001重量%〜10重量%含むことができ、より好ましくは0.001〜10重量%、最も好ましくは0.1重量%〜10重量%含むことができる。前記化合物の含量が0.000001重量%未満である場合には明確な効果を期待することができず、10重量%を超える場合には含有量の増加に対応する効果の増加が現れない。
【0023】
前記皮膚外用剤組成物は皮膚シワ改善用の化粧料組成物の用途として使用され、または傷治療用組成物の用途として使用され得る。
前記皮膚外用剤組成物は粉末剤、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤または液剤などのタイプで製造することができ、皮膚外用剤組成物に配合される一般的な成分、例えば、抗生剤、結合剤、崩壊剤、希釈剤、滑沢剤、安定剤、保存料または香料などを1種以上適切に配合して使用することができる。
【0024】
また、前記皮膚外用剤組成物はクリーム、泡沫剤、化粧水、化粧パック、皮膚柔軟水、乳液、ファンデーション、メーキャップベース、エッセンス、石鹸、液体洗浄剤(リンス)、入浴剤、日焼け止めクリームまたはサンオイル、スプレー型液剤などの剤形で製造することができ、化粧料組成物に配合される一般的な成分、例えば、油分、水、界面活性剤、保湿剤、低級アルコール、増粘剤、キレート化剤、色素、防腐剤または香料などを1種以上適切に配合することができる。
【0025】
以下、本発明の更なる理解のために好ましい実施例を提示する。下記の実施例は本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるわけではない。
【実施例1】
【0026】
キサントトキソルの抽出
1-1.メタノールを使用したキサントトキソルの抽出
白し(ヨロイグサ(Angelica dahurica)または野当帰(Angel
ica dahurica var.formosana)の乾燥させた根1kgをメタノール10Lに入れ、リービッヒ還流冷却器が付けられている抽出機で、80℃で3時間加
熱抽出して、85gのメタノール抽出液を得た。溶媒分画によって前記メタノール抽出液からヘキサン画分を分離し、得られた画分をクロロホルムで3回分画して9gのクロロホルム画分を得た。前記得られたクロロホルム画分を数回にわたってシリカカラムクロマトグラフィを行ってキサントトキソルを含む画分0.3gを得て、この画分を分取用HPLC(Prep-HPLC)及び再結晶化法を使用して下記の式2のキサントトキソルを得
た。前記方法で得たキサントトキソルはNMRと質量分析を通じて成分と含有量(99.7重量%)を確認した。前記NMRスペクトルは図1(1H-NMRスペクトル)及び図2(13C-NMRスペクトル)に示され、各ピーク上に記載された数字は図1及び2の式に
記載された数字に対応する。また、前記キサントトキソルの質量スペクトルは図3に示した。
【0027】
【化5】

[式2]
【0028】
1-2.クロロホルムを使用したキサントトキソル抽出
白しの乾燥根1kgをクロロホルム10Lに入れて、リービッヒ還流冷却器が取り付け
られた抽出機を用いて、100℃で3時間加熱抽出してクロロホルム抽出液12gを得た。前記クロロホルム抽出液をクロロホルムに溶かしてアルカリ水溶液(0.1MのNaOH水溶液)で溶媒分画してアルカリ水溶液可溶部を得た後、これをHClで中和した。これをクロロホルムで溶媒分画して得られたクロロホルム画分1gを分取用HPLC及び再結晶化法を使用してキサントトキソルを得た。前記方法で得られたキサントトキソルはNMRと質量分析によって成分と含量(99.7重量%)を確認した。
1-3:メタノールを使用したイムペラトリン、クニジリンの抽出及び化学修飾
白し(Angelica dahuricaまたはAngelica dahuricavar.formosana)の乾燥根1kgをメタノール10Lに入れて、リービッヒ
還流冷却器が付けられた抽出機で80℃の温度で3時間加熱抽出して85gのメタノール抽出液を得た。溶媒分画を通じて前記メタノール抽出液からクロロホルムで3回分画して11gのクロロホルム画分を得た。前記得られたクロロホルム画分をシリカカラムクロマトグラフィによって白しの主成分であるイムペラトリンとクニジリンを含有する画分を7g得た。この画分に25gのN,N-Diethylanilinを加えて220℃で1
時間加熱するクライセン再配列反応を行った。その生成物を5Nの塩酸溶液で洗浄し、クロロホルムに溶かして冷蔵放置することにより沈澱を製造した。得られた沈澱を分取用HPLC及び再結晶化法を使用してキサントトキソルを得た。前記方法で得られたキサントトキソルはNMRと質量分析によって成分と含量(99.7重量%)を確認した。
【実施例2】
【0029】
8-ヒドロキシベルガプテンの抽出
2-1:メタノールを使用した8-ヒドロキシベルガプテンの抽出
白し(Angelica dahuricaまたはAngelica dahuricavar.formosana)の乾燥根1kgをメタノール10Lに入れて、リービッヒ
還流冷却器が付けられた抽出機で80℃の温度で3時間加熱抽出して、85gのメタノール抽出液を得た。溶媒分画を通じて前記メタノール抽出液からヘキサン画分を分離し、得られた画分をクロロホルムで3回分画して9gのクロロホルム画分を得た。前記得られたクロロホルム画分を数回にわたってシリカカラムクロマトグラフィによって8-ヒドロキ
シベルガプテンを含む画分0.2gを得て、この画分を分取用HPLC及び再結晶化法を使用して下記式3の8-ヒドロキシベルガプテンを得た。前記方法で得られた8-ヒドロキシベルガプテンは核磁気共鳴(NMR)と質量分析によって成分と含量(99.7重量%)を確認した。図4及び図5は各々前記8-ヒドロキシベルガプテンの1H-NMRスペク
トルと13CNMRスペクトルを示しており、各ピーク上に記載された数字は図4及び5の式に記載された数字に対応する。また、図6は前記8-ヒドロキシベルガプテンの質量ス
ペクトルを示す。
【0030】
【化6】

[式3]
【0031】
2-2:クロロホルムを使用した8-ヒドロキシベルガプテン抽出
白しの乾燥根1kgをクロロホルム10Lに入れて、リービッヒ還流冷却器が付けられ
た抽出機で100℃の温度で3時間加熱抽出してクロロホルム抽出液12gを得た。そのクロロホルム抽出液をクロロホルムに溶かしてアルカリ水溶液(0.1MのNaOH水溶液)で溶媒分画してアルカリ水溶液可溶部を得た後、HClで中和した。これをクロロホルムで溶媒分画して得られたクロロホルム画分1gを分取用HPLC及び再結晶化法を使用して8-ヒドロキシベルガプテンを得た。前記方法で得られた8-ヒドロキシベルガプテンは核磁気共鳴(NMR)と質量分析によって成分と含量(99.7重量%)を確認した。
2-3:メタノールを使用したイムペラトリン、クニジリンの抽出及び化学修飾
白し(Angelica dahuricaまたはAngelica dahurica
var.formosana)の乾燥根1kgをメタノール10リットルに入れて、リ
ービッヒ還流冷却器が付けられた抽出機で80℃の温度で3時間加熱抽出して85gのメタノール抽出液を得た。前記メタノール抽出液から溶媒分画を通じてクロロホルムで3回分画して11gのクロロホルム画分を得た。得られたクロロホルム画分をシリカカラムクロマトグラフィによって白しの主成分であるイムペラトリンとクニジリンを含有する画分、7gを得た。この画分に25gのN,N-Diethylanilinを加えて220
℃で1時間加熱するクライセン再配列反応を行った。その生成物を5Nの塩酸溶液で洗浄し、クロロホルムに溶かして冷蔵放置することによって沈澱を製造した。得られた沈澱を分取用HPLC及び再結晶化法を使用して8-ヒドロキシベルガプテンを得た。前記方法
で得られた8-ヒドロキシベルガプテンはNMRと質量分析を通じて成分と含量(99.
7重量%)を確認した。
【実施例3】
【0032】
プランゲニジンの抽出
3-1:メタノールを使用したプランゲニジンの抽出
白し(Angelica dahuricaまたはAngelica dahurica
var.formosana)の乾燥根1kgをメタノール10リットルに入れて、リ
ービッヒ還流冷却器が付けられた抽出機で80℃の温度で3時間加熱抽出して、85gのメタノール抽出液を得た。溶媒分画を通じてこのメタノール抽出液からヘキサン画分を分離し、得られた画分をクロロホルムで3回分画して、9gのクロロホルム画分を得た。得られたクロロホルム画分を数回にわたってシリカカラムクロマトグラフィーによってプランゲニジンを含む画分0.3gを得て、該画分を分取用HPLC及び再結晶化法を使用して下記式4のプランゲニジンを得た。前記方法で得られたプランゲニジンは核磁気共鳴(NMR)と質量分析によって成分とその含量(99.7重量%)を確認した。図7と図8は各々前記プランゲニジンの1H-NMRスペクトルと13C-NMRスペクトルを示してお
り、各ピーク上に記載された数字は、図7及び8の式に記載された数字に対応する。また
、図9は前記プランゲニジンの質量スペクトルを示す。
【0033】
【化7】

[式4]
【0034】
3-2:クロロホルムを使用したプランゲニジン抽出
白しの乾燥根1kgをクロロホルム10Lに入れて、リービッヒ還流冷却器が付けられ
た抽出機で100℃の温度で3時間加熱抽出してクロロホルム抽出液12gを得た。このクロロホルム抽出液をクロロホルムに溶かしてアルカリ水溶液(0.1MのNaOH水溶液)で溶媒分画してアルカリ水溶液可溶部を得た後、HClで中和した。これをクロロホルムで溶媒分画して得られたクロロホルム画分1gを分取用HPLC及び再結晶化法を使用してプランゲニジンを得た。前記方法で得られたプランゲニジンは核磁気共鳴(NMR)と質量分析によって成分と含量(99.7重量%)を確認した。
3-3:メタノールを使用したイムペラトリン、クニジリンの抽出及び化学修飾
白し(Angelica dahuricaまたはAngelica dahurica
var.formosana)の乾燥根1kgをメタノール10リットルに入れて、リ
ービッヒ還流冷却器が付けられた抽出機で80℃の温度で3時間加熱抽出して85gのメタノール抽出液を得た。前記メタノール抽出液から溶媒分画を通じてクロロホルムで3回分画して11gのクロロホルム画分を得た。前記得られたクロロホルム画分をシリカカラムクロマトグラフィを行うことによって白しの主成分であるイムペラトリンとクニジリンを含有する画分、7g得た。この画分に25gのN,N-Diethylanilinを
加えて、220℃で1時間加熱するクライセン再配列反応を行った。その生成物を5Nの塩酸溶液で洗浄した後、クロロホルムに溶かして冷蔵放置することによって沈澱を製造した。得られた沈澱を分取用HPLC及び再結晶化法を使用してプランゲニジンを得た。前記方法で得られたプランゲニジンはNMRと質量分析によって成分と含量(99.7重量%)を確認した。
[試験例1]
キサントトキソルのコラーゲン合成促進効果試験
キサントトキソルをヒト由来の繊維芽細胞培養液に添加して細胞レベルでコラーゲン合成促進効果を調べた。合成されたコラーゲンの測定は、PICP EIAキット(Pro
collagen Type I C-Peptide Enzyme Immuno Ass
ay KIT)を使用して定量した。
【0035】
キサントトキソルは最終濃度0.5μg/mL、1μg/mL、2μg/mL、5μg/mL、10μg/mLになるように、各々ヒト由来の繊維芽細胞(human fibrobla
st細胞)の培養培地に添加して1日間培養した。その後、培養液を取ってPICP E
IAキットで各濃度における合成コラーゲンの量を、分光光度計を使用して450nmで測定した。
【0036】
効果の比較のために何も添加していない繊維芽細胞の培養培地(対照群)と、ビタミンCを最終濃度52.8μg/mLになるように添加した培養培地に対して同様な方法でコラーゲン合成の程度を測定した。
【0037】
コラーゲン生成量は分光光度計の使用によりUV吸光度として測定し、コラーゲン生成の増加率は、対照群に対する相対的なコラーゲン生成量の比率で計算してその結果を表1に示した。
【0038】
濃度による細胞レベルにおけるコラーゲン合成促進効果(*反復数=6)
【表1】

【0039】
表1に見られるように、本発明のキサントトキソルはヒト由来の繊維芽細胞に対して優れたコラーゲン合成促進能を持っており、コラーゲン合成促進能力があると一般に知られているビタミンCを適用した場合よりも少ない濃度でさらに優れたコラーゲン合成促進効果が得られることがわかる。
[試験例2]
8-ヒドロキシベルガプテンのコラーゲン合成促進効果試験
キサントトキソルの代わりに8-ヒドロキシベルガプテンを使用したことを除いては、
試験例1と同様な方法でコラーゲン生成量とコラーゲン生成増加率を測定し、その結果を表2に示した。
【0040】
濃度による細胞レベルにおけるコラーゲン合成促進効果(*反復数=6)
【表2】

【0041】
表2に示されるように、8-ヒドロキシベルガプテンはヒト由来の繊維芽細胞に対して
優れたコラーゲン合成促進能があり、一般にコラーゲン合成促進能力があると知られてい
るビタミンCを適用した場合より少ない濃度でさらに優れたコラーゲン合成促進効果が得られることがわかる。
【0042】
[試験例3]
プランゲニジンのコラーゲン合成促進効果
キサントトキソルの代わりにプランゲニジンを使用したことを除いては、試験例1と同様な方法でコラーゲン生成量とコラーゲン生成増加率を測定しており、その結果を表3に示した。
【0043】
濃度による細胞レベルにおけるコラーゲン合成促進効果(*反復数=6)
【表3】

【0044】
表3に示されるように、プランゲニジンはヒト由来の繊維芽細胞に対して優れたコラーゲン合成促進能があり、コラーゲン合成促進能力があることが一般に知られているビタミンCを適用した場合より少ない濃度でさらに優れたコラーゲン合成促進効果が得られることがわかる。
[試験例4]
皮膚シワ改善効果試験
6週齢のへアレスマウスを使用して光照射によって誘発された皮膚シワに対するキサントトキソル、8-ヒドロキシベルガプテン及びプランゲニジンの皮膚シワ改善効果を試験
した。試料として実施例1〜3の方法で抽出されたキサントトキソル、8-ヒドロキシベ
ルガプテン及びプランゲニジンを1,3-ブチレングリコールにそれぞれ溶解して5mg/mLの試料溶液を調製した。へアレスマウスに太陽光照射装置を使用して2 MED(最小紅斑量Minimum Erythema Dose)で1週間に3日、10週間照射して皮膚シワを形成させ
た。試料を添加していない1,3-ブチレングリコールで処置した対照群と5mg/mLの
試料溶液を1日2回0.5mL/cm2(キサントトキソルで2.5mg/cm2)ずつ6週
間処理した群を対象として改善程度を定性的に判断した。
【0045】
シワ改善程度の判断は、まず、試料処理部位を肉眼と写真撮影によって肉眼判定し、判定基準は試料処理群及び対照群を試料処理前と比較し、改善なし、若干の改善、相当な改善の3段階で判定し、その結果を表4に示した。
【0046】
マウスに対する皮膚シワ改善効果(各群の個体数=10)
【表4】

【0047】
表4で見られるように、キサントトキソル、8-ヒドロキシベルガプテン及びプラン
ゲニジンの皮膚シワ改善効果が優れていることがわかる。
[試験例5]
抗炎症症効果試験
抗炎症効果はへアレスマウスのイアースウェリング(ear swelling)方法
で評価した。6週齢のへアレスマウスを使用して各々の個体の左側耳を対照部位とし、右側耳を試験部位とし、試料を適用する前に両側耳を3回測定した。前記実施例2及び3の方法で抽出された8-ヒドロキシベルガプテン及びプランゲニジンを各々エタノールに1
重量%で溶かした後、前記溶液をマウスの右側耳に20μL/earずつ塗って、左側耳に
はエタノール20μL/earを塗った。1時間経過後、両側耳にアラキドン酸を2mg/
ear塗った。再び1時間経過後、耳の浮腫(ear edema)の程度をマイクロメ
ーターを使用して3回ずつ測定した。また、抗炎症効果の比較のために一般的な抗炎症剤として知られているインドメタシン(Indomethacine)を使用して同様な方法で抗炎症効果を測定した。
【0048】
抗炎症効果は対照部位に対する試験部位において耳の厚さの測定値の比率として下記式1に基づいて計算した阻害率で表し、その計算結果を表5に示した。
【0049】
【数1】

【0050】
マウスに対する抗炎症効果(各群の個体数=3)
【表5】

【0051】
表5で見られるように、本発明のキサントトキソル、8-ヒドロキシベルガプテン及
びプランゲニジンが抗炎症剤として知られたインドメタシンに劣らず、良好な抗炎症効果を示すことがわかる。
[試験例6]
コラーゲン合成による傷治療効果試験
5週齢雄性ラットを用いて、切開窓における傷部位の再生の質とその量を良好に反映する張力強度法(tension stiffness method)を使用して創傷治療効果を試験した。ラットの背中部位の毛を除去した後、メスで切開して切開部位を縫いあわせた。実施例2及び3の方法で抽出された8-ヒドロキシベルガプテン及びプランゲニジンをそれぞれエタノー
ルに1重量%溶かして調製した後、その溶液を毎日1回0.5mL/cm2ずつ6日間切開
部位に投与した。6日後、実験に用いたラットを屠殺して創傷部位の皮膚を摘出し、切開線に交差して1cm幅の皮膚片を個体ごとに3標本ずつ作成した後、レオメーター(rheometer)でそれぞれの引張強さ(g/cm)を測定した。この測定された引張強さ(Tensil strength)を再生されたコラーゲン繊維の強度の指標とした。引
張強さの増加率は、試料を添加していないエタノールのみを適用した対照群の引張強さを100%として、それに対する相対強度で示した。測定の結果を表6に示す。
【0052】
ラットにおける創傷治癒効果
【表6】

【0053】
[試験例7]
抗酸化効果試験
8-ヒドロキシベルガプテン及びプランゲニジンの抗酸化効果の測定は1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazy
l、DPPH)を使って測定した。各試料のラジカル消去活性は分光光度計を用いて517nmの吸光度を測定することによって計算した。前記実施例2及び3の方法で抽出された8-ヒドロキシベルガプテン及びプランゲニジンを、それぞれ3μg/mL、5μg/mL
、10μg/mL、12μg/mL、50μg/mL、80μg/mL、100μg/mLの濃度に調製した。これらの試料液アリコート、500μLと1.5×10-4M濃度のDPPHメ
タノール溶液500μLとを混合して検液とした。製造後30分間置いた検液の残ってい
るDPPH量を、517nmで分光光度計を用いて測定した。検液の測定値から試料固有の吸光度値を差し引くために、同一濃度の試料液を517nmで測定した。1.5×10-4M濃度のDPPHメタノール溶液500μLをメタノール500μLと混合して30分間放置した液を対照群として用いた。各試料のラジカル消去能は次式2で計算した。
【0054】
【数2】

【0055】
各試料の濃度別ラジカル消去能は、各濃度におけるラジカル消去能と関係のある値である相関係数(R)を求め、DPPHを50%除去する値であるIC 50を算出した。ま
た、抗酸化効果の比較のためにビタミンCについて同様の実験を行って下記表7にその計算値を示した。
【0056】
DPPH方法による抗酸化効果
【表7】

【0057】
表7に見られるように、本発明の8-ヒドロキシベルガプテン及びプランゲニジンは
ビタミンCより優れた抗酸化効果を示すことがわかる。
【0058】
以下、本発明の有効成分を含有する皮膚外用剤組成物の剤形別製造実施例を説明する。[実施例4〜6及び比較例1]
化粧料エッセンス
下記表8のような組成を有する化粧料エッセンスを製造した。
【0059】
【表8】

【0060】
[試験例8]
パネルテストによる化粧料エッセンスのシワ改善効果試験
実施例4〜6と比較例1の化粧料エッセンスについて、その皮膚シワ改善効果に関するパネルテストを実施した。
【0061】
35才から50才までの健康な女性60名を15名ずつ4つの群に区分し、1群は実施例4のエッセンスを、2群は実施例5のエッセンスを、3群は実施例6のエッセンスを、4群は比較例1のエッセンスを、顔面部に毎日1回、3ヶ月間塗布した。3ヶ月後に皮膚シワの改善程度を被験者のアンケート調査を通じて評価した。
【0062】
被験者のアンケートは、皮膚シワ改善及び皮膚弾力増進について使用前と比較して、改善なし、若干の改善、相当な改善の3段階で判定し、その結果を表9に示す。
【0063】
本発明による実施例の皮膚シワ改善効果(アンケート調査)
【表9】

【0064】
表9に見られるように、本発明による実施例4〜6のエッセンスを用いた場合、皮膚シワ改善効果が優れていることがわかる。
[試験例9]
画像分析による化粧料エッセンスのシワ改善効果試験
試験例8と同様な方法で35才から50才の健康な女性を対象として前記実施例4〜6と比較例1の化粧料エッセンスの皮膚シワ改善効果に関するパネルテストを実施し、ビデオ画像分析によって前記実施例4〜6及び比較例1のシワ改善効果を調べた。
【0065】
シワのビデオ画像分析による評価は、実験が始まる前に、目の下のレプリカ(replica)を採取し(Xantopren、Bayer)、実験終了直後にもレプリカを目の下の同一部位で採取して、画像分析により皮膚シワの2次元的解析で皮膚シワの密度を測定した。
【0066】
画像分析に基づく皮膚シワ密度の減少率は、エッセンスを使用する前の皮膚シワ密度に対する使用後の皮膚シワ密度の比についての平均値であり、測定結果を表10に示した。
【0067】
皮膚シワ改善効果(画像分析)
【表10】

【0068】
表10からわかるように、本発明による実施例4〜6のエッセンスを使用した場合、皮膚シワの密度が比較例1の化粧料組成物に比べて著しく減少した。
【0069】
また、前記試験過程で実施例4〜6のエッセンスによる皮膚刺激や副作用は発見されなかった。
[実施例7〜9及び比較例2]
皮膚外用軟膏
下記表11のような組成を含む皮膚外用軟膏を製造した。
【0070】
【表11】

【0071】
[実施例10〜12及び比較例3]
化粧料クリーム
下記表12のような組成を含む化粧料クリームを製造した。
【0072】
【表12】

【0073】
[実施例13〜15及び比較例4]
柔軟化粧水
下記表13のような組成を含む柔軟化粧水を製造した。
【0074】
【表13】

【0075】
[実施例16〜18及び比較例5]
栄養化粧水
下記表14のような組成を含む栄養化粧水を製造した。
【0076】
【表14】

【0077】
[実施例19〜21及び比較例6]
化粧料パック
下記表15のような組成を含む化粧料パックを製造した。
【0078】
【表15】

【0079】
[実施例22〜24及び比較例7]
男性用スキン柔軟剤
下記表16のような組成を含む男性用スキン柔軟剤を製造した。
【0080】
【表16】

【0081】
以上のように、有効成分としてキサントトキソル、プランゲニジンおよび8-ヒドロキ
シベルガプテンの中から選択される1種以上を含むコラーゲン合成促進剤は、皮膚の繊維芽細胞に対して著しく強力なコラーゲン合成促進効果を示しており、これを含む皮膚外用剤組成物はシワ改善効果と傷治療効果及び抗炎症症効果、抗酸化効果が極めて優れていることがわかった。
【0082】
前記皮膚外用剤組成物は皮膚のシワ改善または傷治療効果のある粉末剤、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤または液状などの剤形で製造することができる。さらにクリーム、泡沫剤、化粧水、パック、柔軟水、乳液、ファンデーション、メークアップベース、エッセンス、石鹸、液体洗浄剤、入浴剤、日焼け止めクリーム或いはサンオイル、スプレイ型液剤などの剤形でも製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】実施例1で得られたキサントトキソルの1H-NMRスペクトルである。
【図2】実施例1で得られたキサントトキソルの13C-NMRスペクトルである。
【図3】実施例1で得られたキサントトキソルの質量スペクトルである。
【図4】実施例2で得られた8-ヒドロキシベルガプテンの1H-NMRスペクトルである。“Methoxy”はメトキシ基である。
【図5】実施例2で得られた8-ヒドロキシベルガプテンの13C-NMRスペクトルである。“Methoxy”はメトキシ基である。
【図6】実施例2で得られた8-ヒドロキシベルガプテンの質量スペクトルである。
【図7】実施例3で得られたプランゲニジンの1H-NMRスペクトルである。
【図8】実施例3で得られたプランゲニジンの13C-NMRスペクトルである。
【図9】実施例3で得られたプランゲニジンの質量スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で示される化合物の中から選択される1種以上を有効成分として含むコラーゲン合成促進剤:
【化1】

[式1]
(式1において、Rは水素、メトキシ基または3-メチル-2-ブテニル基である)。
【請求項2】
下記式1で示される化合物の中から選択される1種以上のコラーゲン合成促進成分を含む皮膚外用剤組成物:
【化2】

[式1]
(式1において、Rは水素、メトキシ基または3-メチル-2-ブテニル基である)。
【請求項3】
前記式1で示される化合物が、全組成物に対して0.000001重量%〜10重量%の範囲で含まれる、請求項2に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項4】
粉末、ゲル、軟膏、クリームまたは液状の剤形の中から選択される、請求項2に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項5】
クリーム、泡沫剤、化粧水、パック、皮膚柔軟水、乳液、ファンデーション、メーキャップベース、エッセンス、石鹸、液体洗浄剤、入浴剤、日焼け止めクリーム、サンオイルまたはスプレー型液剤のタイプの中から選択される、請求項2に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項6】
前記皮膚外用剤組成物は皮膚シワ改善用化粧料組成物である、請求項2に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項7】
前記皮膚外用剤組成物は傷治療用組成物である、請求項2に記載の皮膚外用剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−508369(P2007−508369A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535260(P2006−535260)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【国際出願番号】PCT/KR2004/002418
【国際公開番号】WO2005/037270
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(501264013)エルジー ハウスホールド アンド ヘルス ケア エルティーディー. (7)
【Fターム(参考)】