説明

コラーゲン足場、それを伴う医療用埋植物、およびその使用方法

本発明は非分解性の三次元多孔質コラーゲン足場およびコーティングに関する。これらの足場は体内埋植用のセンサーの周囲で調製してもよい。本発明の特定の態様は体内埋植可能なグルコースセンサーに関する。本発明のコラーゲン足場を含むセンサーは、組織反応を最小にし同時に血管新生を促進することにより、生体適合性が向上している。本発明はまた、本発明のコラーゲン足場を調製する方法にも関する。本発明はまた、センサー外面の周囲に本発明のコラーゲン足場を持つセンサーにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2006年6月22日に提出された米国特許仮出願第60/805,495号の恩典を主張する。同仮出願は、すべての図、表、核酸配列、アミノ酸配列、および図面を含めて、参照によりその全部が本明細書に組み入れられる。
【0002】
政府援助
本発明はNational Institutes of Healthの助成金番号第1R01 EB001640-01号のもと、政府援助により行われた。政府は本発明に特定の権利を持つ。
【0003】
発明の分野
本発明は体内埋植可能なバイオセンサーおよび医療装置に関する。より具体的には、本発明は、生体適合性を増進する、体内埋植可能なセンサーおよび/または他の医療装置のためのコラーゲン足場被覆に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
長期的に体内埋植可能な装置は、組織外傷または異物に対する組織反応から、炎症および/または線維症を誘発することがある。例えばReichert et al., Handbook of Biomaterial Evaluation, Ch. 28 Biosensors, pp. 439-460, (Von Recum A., editor) (1999); Wisniewski et al., J Anal Chem 2000; 366(6-7) (p. 611-621)を参照されたい。
【0005】
埋植された装置はまた、他の望ましくない生体反応も引き起こすことがある。例えば、最近、研究者らは、薬剤コーティングステントが一部の患者において血栓形成につながる有害反応を引き起こす可能性があると述べている。Lagerqvist et al., Long-Term Outcomes with Drug-Eluting Stents versus Bare-Metal Stents in Sweden, New England Jnl. Of Medicine, March 8, 2007を参照されたい。
【0006】
望ましくない生体反応を誘発する可能性がある、長期的に体内埋植可能な他の装置は、バイオセンサーである。例えば糖尿病患者は、正常に近い血糖値(70〜120 mg/dL)を維持する目的で、1日数回指を穿刺して血液サンプルを得る必要がある店頭販売のグルコースメーターを広く使用している。血糖自己測定(SMBG)の疼痛(Lee et al., 2005)、不便、および不快は、しばしば、患者による効果的な手順遵守および糖尿病の最適な管理に対する障害となる。過去20年間において、多くの種類の連続血糖測定システムが研究されており、これには、皮下組織に埋植されるセンサー(Moussy et al., 1993; Johnson et al., 1992; Koudelka et al., 1991; Bindra et al., 1991; Pickup et al., 1989; Shichiri et al., 1986; およびErtefai et al., 1989)、血管床に埋植されるセンサー(Armour et al., 1990; Frost et al., 2002)、および、微量透析装置を用いて採取した間質液のグルコース濃度を測定するもの(Ash et al., 1992; Meyerhoff et al., 1992; Moscone et al., 1992)が含まれる。体内埋植可能なグルコースセンサーに関するいくつかの研究が報告されているが、これらバイオセンサーのいずれも、長期の埋植において確実に血糖値を連続測定する能力はないと考えられている。センサー機能の進行的な喪失は、ひとつには、バイオファウリング(biofouling)によって、ならびに、炎症、線維症、および脈管構造喪失といった異物反応の結果によって生じる(Reichert et al., 1992; Reichert et al., 1999; Sharkawy et al., 2007)。一部の研究者らは、インビボにおける膜のバイオファウリングを低減するためセンサーの表面を修飾している。Quinn et al., 1995では、タンパク質吸着を低減するアプローチにおいて、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)マトリックス中でポリ(エチレングリコール)(PEG)を使用している。PEG鎖は膜表面に対して垂直に立ち上がる傾向があるため、多くのタンパク質分子の結合に抵抗する、水に富んだ相を提供する。Rigby et al., 1995およびReddy et al., 1997では、いわゆる「不活性な」材料であるダイヤモンドライクカーボンを用いてタンパク質吸着を低減している。Shichiri et al., 1988ではセンサー部にアルギン酸塩/ポリリシン・ゲルの層を組み込んでいる。Shaw et al., 1991ではPHEMA/PU(ポリウレタン)でコーティングしたバイオセンサーの生体適合性向上が報告されている。Wilkins et al., 1995およびMoussy et al.では、NAFION(パーフルオロスルホン酸)膜(Du Pont)を導入して、センサー表面の「バイオファウリング」を低減し、且つ、尿酸塩およびアスコルビン酸塩からの干渉を低減している(Moussy et al., 1993; Moussy et al., 1994a; Moussy et al., 1994b; Moussy et al., 1994c)。センサーの血液適合性を高めるため、Armour et al., 1990ではセンサー先端を架橋アルブミンでコーティングし、Kerner et al., 1993ではセルロースコーティングしたセンサーを開発している。しかし、これらのアプローチのいずれも、長期の安定的な血糖測定に十分ではないと考えられている。
【0007】
コラーゲンおよびそれから派生するマトリックスは、抗原性が低く、生分解性があり、且つ、機械特性、止血特性、および細胞結合特性が良好であることから、組織工学などの生物医学分野において天然のポリマーとして広範に使用されている(Sheu et al., 2001; Pieper et al., 2002; Chvapil et al., 1973; Pachence et al., 1996; およびLee et al., 2001)。生物医学工学用の高度な生体材料の開発にコラーゲンを使用するための方策を立てるには、化学的または物理的な架橋方策によって、機械的強度および酵素(コラゲナーゼ)分解抵抗性を与えることが典型的に望ましい。コラーゲンを基礎とする生体材料を架橋する方策はいくつかある。グルタルアルデヒド(GA)は、コラーゲンを基礎とする生体材料の架橋剤として最も広く使われている(Sheu et al., 2001; Barbani et al., 1995)。しかし、GAおよびその反応生成物は、架橋副産物が存在すること、およびGA架橋されたコラーゲンペプチドが酵素分解中に放出されることから、インビボの細胞毒性と関連付けられている(Huang-Lee et al., 1990; van Luyn et al.,1992)。
【0008】
インビボ細胞毒性およびそれに続くGA架橋コラーゲンの石灰化を防ぐため、ポリエポキシ、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノ-プロピル)カルボジイミド(EDC)、および紫外線(UV)またはガンマ線照射など、複数の代替化合物が有望なコラーゲン架橋剤として検討されている(Khor et al., 1997; Sung et al., 1996)。Koobらは最近、抗酸化特性を持つ植物性化合物ノルジヒドログアイアレチン酸(NDGA)でI型コラーゲンファイバーを架橋する工程を説明している(Koob et al., 2002a; Koob et al., 2002b; Koob et al., 2001a; およびKoob et al., 2001b)。Koobらは、NDGAが合成コラーゲンファイバーの機械特性を大幅に向上させることを示した。さらに彼らは、NDGA架橋したコラーゲンファイバーが異物反応を誘発せず、インビボの6週間において免疫反応を促進しないことも示した。
【0009】
架橋の程度および架橋剤の選択もまた、足場の多孔度および孔径に影響を及ぼす可能性があり、そして、三次元多孔質足場内の線維被膜の厚さ、血管密度、および血管の位置に影響を及ぼす可能性がある(Joseph et al., 2004)。孔径の大きい足場(孔径が60ミクロンより大きい)では、毛細血管および支持となる細胞外基質(ECM)が深く侵入できる。Sharkawy et al., 1997では、ラットにおける4週間の皮下埋植後、異物反応に典型的なよく組織されたコラーゲンマトリックスが非多孔質の埋植物を封入し、一方、多孔質のポリビニルアルコール(PVA)埋植物では、線維性で血管新生を伴う組織嚢の生成が少ないことが示されている。
【発明の概要】
【0010】
発明の簡単な概要
本発明の態様は、生体適合性の向上および/または有害反応のリスク低減を提供するための、医療装置用の生体適合性コラーゲン被覆を提供する。本発明の態様は、長期的に体内埋植可能な医療装置のための被覆および/または足場として特に好適である可能性がある。
【0011】
いくつかの態様は、非分解性且つ生体適合性の三次元多孔質コラーゲン足場に関する。これらの足場は、体内に埋植するための装置および/またはセンサー上に形成するかもしくは置いてもよく、且つ/または、そのような装置および/またはセンサーの周囲で調製してもよい。本発明のいくつかの特定の態様は、その外面上に多孔質コラーゲン足場を伴う体内埋植可能なグルコースセンサーである。本発明のコラーゲン足場を含むセンサーは、組織反応を低減し同時に血管新生を促進することにより、生体適合性が向上する可能性がある。
【0012】
本発明の他の態様はコラーゲン足場を調製する方法に関する。三次元多孔質コラーゲン足場は、凍結乾燥法を用い、そして、グルタルアルデヒド(GA)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)、および/またはノルジヒドログアイアレチン酸(NDGA)溶液のうち少なくとも1つの、異なる濃度を用いて、それらを架橋することによって作製してもよい。
【0013】
本発明の1つの態様は、人または動物の身体または組織内に埋植可能な装置とともに用いるための生体適合性コラーゲン足場および/またはコーティングであって、インターカレートされたポリマーを中に含む足場またはコーティングに関する。
【0014】
本発明の1つの態様はまた、人または動物の体内または組織内に埋植するための装置を調製する方法であって、インターカレートされたポリマーを中に含む生体適合性コラーゲン足場またはコーティングを装置上に置く段階を含む方法に関する。
【0015】
本発明の1つの態様はまた、生体適合性のコラーゲンコーティングまたは足場を伴う体内埋植可能な装置を提供する方法であって、以下の段階を含む方法に関する:
(a)体内埋植可能な装置の構造をコラーゲン含有溶液に接触させる段階;
(b)同構造上のコラーゲン溶液を乾燥させる段階;および
(c)同構造の同コラーゲンをポリマーマトリックス中に埋め込む段階。
【0016】
本発明の1つの態様はまた、増強された生体適合性を持つ、人または動物の体内または組織内に埋植するための装置であって、インターカレートされたポリマーを中に含む生体適合性コラーゲン足場および/またはコーティングを含む装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の態様に基づく、足場コーティングした、グルコース電極の例示的な検出素子の略線図である。
【図2】図2A〜2Bは、本発明の態様に基づく、コラーゲン足場のGA(図2A)架橋およびNDGA(図2B)架橋の化学的機序の略図である。
【図3】図3A〜3Cは、本発明の態様に基づく例示的なコラーゲン足場の走査電子顕微鏡(SEM)的形態を示すSEM像である。コラーゲン足場の孔径をSEMにより測定した。図3Aは架橋のないコラーゲン足場(200X; 25.0 kV)、図3BはGA架橋のあるコラーゲン足場(200X; 25.0 kV)、図3CはNDGA架橋のあるコラーゲン足場(200X; 25.0 kV)を示している。
【図4】GA架橋足場およびNDGA架橋足場の架橋の程度(%)および吸水率(%)の棒グラフであり、本発明の態様に基づくGA架橋足場およびNDGA架橋足場のバルク特性を示している。結果は平均値±SDとして示されている(n=3)。
【図5】コラゲナーゼ処理時間(週)に対する%(もとの重量)の棒グラフであり、インビトロにおけるGA架橋足場およびNDGA架橋足場のコラゲナーゼ抵抗性を示している。結果は平均値±SDとして示されている(n=3)。
【図6】図6A〜6Dは、インビトロ分解試験後の足場のSEM形態を示すSEM像である。図6Aは2週間のコラゲナーゼ処理後のNDGA架橋足場(200X; 25.0 kV)、図6Bは2週間のコラゲナーゼ処理後のGA架橋足場(200X; 25.0 kV)、図6Cは4週間のコラゲナーゼ処理後のNDGA架橋足場(200X; 25.0 kV)、図6Dは4週間のコラゲナーゼ処理後のGA架橋足場(200X; 25.0 kV)を示している。
【図7】図7A〜7Fは、ラット皮下組織におけるGA架橋足場およびNDGA架橋足場のインビボ安定性を示すデジタル写真である。図7A〜7C:埋植後2週間;図7AはNDGA架橋足場、図7BはGA架橋足場、図7C(左側)はNDGA架橋足場、図7C(右側)はGA架橋足場を示している。図7D〜7F:埋植後4週間;図7DはNDGA架橋足場、図7EはGA架橋足場、図7F(左側)はNDGA架橋足場、図7F(右側)はGA架橋足場を示している。
【図8】図8A〜8Dは、体内埋植可能なグルコース検出素子(図8Aはコーティングなしのセンサー、図8Bは足場でコーティングしたセンサーを示す)の光学顕微鏡デジタル写真、および足場領域のSEM形態(図8Cは表面、図8Dは断面)である。
【図9】時間(分)に対する電流(nA)のグラフであり、5 mM〜15 mMのグルコース濃度におけるグルコースセンサーの電流応答曲線(応答曲線1‐コーティングなしのセンサー、応答曲線2‐GA架橋足場でコーティングしたもの、応答曲線3‐NDGA架橋足場でコーティングしたもの)を示している。T95%は最大電流変化(I15 mM - I5 mM)の95%の時点として定義される。
【図10】グルコース濃度(mM)に対する電流(nA)のグラフであり、コーティングなしおよびコラーゲン足場コーティングしたグルコースセンサーの電流応答を示している(グルコース2〜30 mM)。対照(足場なし)は塗りつぶしの四角、GA架橋足場は塗りつぶしの丸、NDGA架橋足場は塗りつぶしの三角で示されている。結果は平均値±SDとして示されている(n=3)。
【図11】浸漬サイクル数に対する感度の変化(%)のグラフであり、足場の厚さがグルコースセンサー感度に及ぼす影響を示している。結果は平均値±SDとして示されている(n=3)。
【図12】図12A〜12Lは、経時的に撮影されたデジタル画像であり、バイオセンサーの炎症反応を示している(直接埋植−組織学的アッセイ)。図12A〜12FはGA架橋足場を示す:図12A(3日)、図12B(7日)、図12C(14日)、図12D(21日)、図12E(28日)、図12F(49日)。図12G〜12LはNDGA架橋足場を示す:図12G(3日)、図12H(7日)、図12I(14日)、図12J(21日)、図12K(28日)、図12L(49日)。NDGA架橋足場では関連する炎症がより少ない。
【図13】体内埋植可能なグルコースセンサーを示す図である。二本の点線は皮膚を表し、この二本の点線より左側に示されているグルコースセンサーのすべての構成部品は皮膚内に埋植されている。この二本の点線より右側に示されているグルコースセンサーのすべての構成部品は皮膚の外にある。
【図14】体内埋植可能なグルコースセンサーを示す図である。図の上部のグルコースセンサーは長いワイヤ(30 mm)を持つ。図の下部のグルコースセンサーは短いワイヤ(10 mm)を持つ。
【図15】図15A〜15Cは、グルコースセンサーをラットの背中に埋植したインビボ試験を示す図である。
【図16】水和したコラーゲン足場を示す図である。左側はGA架橋コラーゲン足場、右側はNDGA強化コラーゲン足場である。
【図17】時間に対するセンサーの感度の変化(%)のグラフである。対照(足場なし)は塗りつぶしの四角、NDGA架橋足場を伴うセンサーは塗りつぶしの丸、GA架橋足場を伴うセンサーは塗りつぶしの三角で示されている。
【図18】埋植期間(週)に対するセンサーの感度の変化(%)のグラフである。短ワイヤのセンサーを伴う対照(足場なし)は塗りつぶしの四角(埋植したセンサー8つのうち稼動センサー6つ)、長ワイヤのセンサーを伴う対照(足場なし)は白抜きの四角(埋植したセンサー8つのうち稼動センサー4つ)、NDGA架橋足場を伴う短ワイヤのセンサーは塗りつぶしの丸(埋植したセンサー8つのうち稼動センサー4つ)、NDGA架橋足場を伴う長ワイヤのセンサーは白抜きの丸(埋植したセンサー8つのうち稼動センサー2つ)、GA架橋足場を伴う短ワイヤのセンサーは塗りつぶしの三角(埋植したセンサー8つのうち稼動センサー4つ)、GA架橋足場を伴う長ワイヤのセンサーは白抜きの三角(埋植したセンサー8つのうち稼動センサー1つ)で示されている。
【図19】図19A〜19Cは、埋植したグルコースセンサーの写真であり、4週間の埋植後のコラーゲン足場の物理的安定性を示している。図19Aでは、埋植された、NDGA強化コラーゲン足場を伴う長ワイヤのグルコースセンサーが剥離している。図19Bでは、埋植された、NDGA強化コラーゲン足場を伴う短ワイヤのグルコースセンサーが安定である。図19Cは、埋植された、GA架橋コラーゲン足場を伴う短ワイヤおよび/または長ワイヤのグルコースセンサーを示している。
【図20】図20A〜20Dは、組織学的アッセイを行った組織のデジタル画像である(センサーを伴わない足場)。図20AはGA架橋足場(2週間の埋植後)、図20BはNDGA架橋足場(2週間の埋植後)、図20CはGA架橋足場(4週間の埋植後)、図20BはNDGA架橋足場(4週間の埋植後)を示している。
【図21】生体適合性コラーゲン足場を含む本発明の装置を調製する方法のフローチャートである。点線は任意の段階を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のさらなる特徴、利点、および詳細は、図と、これ以降に示す態様の詳細な説明とを読むことによって当業者に理解されるであろう。ただしこれらの説明は本発明を例証するものにすぎない。
【0019】
発明の詳細な説明
概して、本発明の態様は、体内埋植可能な医療装置に特に好適であるコラーゲン被覆、コーティング、および/または足場、ならびに、それを作製しそして動物またはヒトの患者に用いる方法に関する。患者はヒトであってもよく、または、霊長類、ウマ科、ウシ科、ヒツジ科、イヌ科、もしくはネコ科など他の動物であってもよい。コーティング、被覆、および/または足場は、体内埋植可能な装置の全部または一部を封入してもよい組織接触表面として提供されてもよく、これにより、免疫原性反応の低減および/または埋植した装置の長寿命のインビボ機能性を提供してもよい。
【0020】
以下に、本発明の態様を示した添付の図面を参照しながら、本発明をより詳しく説明する。ただし本発明は多くの異なる形態で具現化することが可能であり、本明細書に記載の態様に限定されるものとして解釈されるべきではない。これらの態様は、本開示内容が綿密且つ完全なものとなり、そして本発明の範囲を当業者に完全に伝えるものとなるように提供される。
【0021】
本明細書全体を通して類似の数字は類似の要素を参照する。図中において、特定の線、層、構成部品、要素、または特徴の厚さは明瞭性のため誇張されている場合がある。破線は、特に指定がない限り、任意の特徴または操作を示す。
【0022】
本明細書で用いる用語は特定の態様を説明するという目的のみのためであり、本発明を限定する意図はない。本明細書において、名詞の単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、そうでないことを文脈が明確に示しているのでない限り、複数形も含むことが意図される。さらに理解されるであろう点として、「含む(comprise)」および/または「含んでいる(comprising)」という用語は、本明細書で用いられる場合、言及される特徴、整数、段階、操作、要素、および/または構成部品の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、段階、操作、要素、構成部品、および/またはそれらの群の存在または追加を除外することはない。本明細書において「および・ならびに/もしくは・または(and/or)」という用語は、関連する列挙項目のうち1つまたは複数の項目の任意およびすべての組合せを含む。本明細書において、「X〜Y/XとYとの間(between X and Y)」および「約X〜Y/約XとYとの間(between about X and Y)」などの句は、XおよびYを含むものとして解釈されるべきである。本明細書において、「約X〜Y/約XとYとの間(between about X and Y)」などの句は、「約X〜約Y/約Xと約Yとの間(between about X and about Y)」を意味する。本明細書において、「約X〜Y/約XからYまで(from about X to Y)」などの句は、「約X〜約Y/約Xから約Yまで(from about X to about Y)」を意味する。
【0023】
特に定義されていない限り、本明細書で用いるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を持つ。さらに理解されるであろう点として、一般的に使用される辞書に定義されているなどの用語は、本明細書および関連技術の文脈におけるそれら用語の意味と一致する意味を持つものとして解釈されるべきであり、本明細書において明確に定義されているのでない限り理想的または過剰に形式的な意義に解釈されるべきではない。簡潔性および/または明瞭性のため、周知の機能または構造は詳しく説明しない場合もある。
【0024】
理解されるであろう点として、要素が別の要素に対して「上にある(on)」、「取り付けられている(attached)」、「接続されている(connected)」、「連結されている(coupled)」、「接触している(contacting)」などと記述されている場合、その要素は他の要素に対して直接的に上にあるか、取り付けられているか、接続されているか、連結されているか、もしくは接触していてもよく、または介在する要素が存在していてもよい。これに対し、要素が別の要素に対して例えば「直接上にある(directly on)」、「直接取り付けられている(directly attached)」、「直接接続されている(directly connected)」、「直接連結されている(directly coupled)」、または「直接接触している(directly contacting)」などと記述されている場合、介在する要素は存在しない。これもまた当業者に理解されるであろう点として、別の特徴に「隣接して(adjacent)」置かれている構造または特徴への参照は、その隣接する特徴と重なるかまたはその下になる部分を持っていてもよい。
【0025】
理解されるであろう点として、本明細書において種々の要素、構成部品、領域、層、および/または部分を説明するために「第一の(first)」、「第二の(second)」などの用語が使用されるが、これらの要素、構成部品、領域、層、および/または部分はこれらの用語により限定されるべきではない。これらの用語は1つの要素、構成部品、領域、層、または部分を別の領域、層、または部分と区別するためだけに用いられる。したがって、以下で説明する第一の要素、構成部品、領域、層、または部分は、本発明の教示から逸脱することなく、第二の要素、構成部品、領域、層、または部分と呼ぶこともできる。操作(または段階)の順序は、そうでないことが具体的に示されるのでない限り、特許請求の範囲または図に呈示された順序に限定されることはない。
【0026】
「体内埋植可能な(implantable)」という用語は、装置が、患者の上または中に挿入、埋め込み、移植、またはその他急性的もしくは長期的に取り付けもしくは留置されうることを意味する。「組織(tissue)」という用語は、皮膚、筋肉、骨、またはその他細胞の群を意味する。「長期的に(chronically)」という用語は、装置が、その意図された機能について作動可能な状態を保ったまま、少なくとも2か月、典型的には少なくとも6か月、そしていくつかの態様において1年または複数年にわたって体内埋植状態を保つよう構成されていることを意味する。「コーティング(coating)」または「被覆(covering)」という用語は、装置の標的表面上の材料を参照する。コーティングは、その下にある装置に対する細胞および組織のファウリングを抑制できる多孔質コーティングであってもよい。コーティングは組織の増殖を促進しなくてもよい。コーティングは薄手または厚手のフィルム、発泡体、または組織ファウリングおよび生分解に対するその他の障壁であってもよい。「足場(scaffold)」という用語は、細胞、組織、血管などがその中に増殖、コロニー形成、および生息できる多孔質材料および/または構造を参照する。足場は、装置に対する細胞および組織のファウリングを抑制し、且つ/または異物による炎症反応および免疫原性反応を低減してもよく、これにより、留置された装置の機能寿命を延長させてもよい。
【0027】
コラーゲン「ミクロフィブリル(microfibril)」、「フィブリル(fibril)」、「ファイバー(fiber)」、および「天然ファイバー(natural fiber)」とは、腱の中に見られる天然の構造を参照する。ミクロフィブリルは直径が約3.5〜50 nmである。ファイバーは直径が約50 nm〜50μmである。天然ファイバーは直径が50μmより大きい。「合成ファイバー(synthetic fiber)」とは、その天然状態から形成され、および/または、化学的もしくは物理的に作製または改変された、任意のファイバー状物質を参照する。例えば、消化された腱から形成されたフィブリルの押出しファイバーは合成ファイバーであるが、哺乳動物から新たに採取された腱線維は天然ファイバーである。無論、合成コラーゲンファイバーは、ヒドロキシアパタイトまたは組織増殖を促進する薬剤など、非コラーゲン性の成分を含んでいてもよい。例えば、組成物は、塩基性線維芽細胞増殖因子、腫瘍増殖因子β、骨形成タンパク質、血小板由来成長因子、およびインシュリン様成長因子などの成長因子;フィブロネクチンおよびヒアルロナンなどの走化性因子;ならびに、アグリカン、ビグリカン、およびデコリンなどの細胞外基質分子を含んでいてもよい。無論、合成コラーゲンファイバーは、微粒子、ヒドロキシアパタイト、およびその他の鉱物相、または組織増殖を促進する薬剤など、非コラーゲン性の成分を含んでいてもよい。例えば、組成物は、カーボンナノチューブ、亜鉛ナノワイヤ、ナノ結晶ダイヤモンド、または他のナノスケール微粒子;リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、アパタイト鉱物などのより大きな結晶微粒子および非結晶微粒子を含んでいてもよい。例えば、組成物は、ビスホスホネート;抗炎症性ステロイド;塩基性線維芽細胞増殖因子、腫瘍増殖因子β、骨形成タンパク質、血小板由来成長因子、およびインシュリン様成長因子などの成長因子;フィブロネクチンおよびヒアルロナンなどの走化性因子;ならびにアグリカン、ビグリカン、およびデコリンなどの細胞外基質分子を含んでいてもよい。
【0028】
本発明の態様により企図されるコラーゲンコーティングおよび/または足場から恩典を得られうる装置の例としては以下のものがあるが、それに限定されるわけではない:心臓用、動脈用、神経(脳)用、尿道用、および他のステントを含む、体内埋植可能なステント;体内埋植可能な発電機(IPG)、ペースメーカー、除細動器、カルジオバーター;脳、中枢神経系(CNS)、または末梢神経系用の刺激装置および/またはリードシステム;心臓用またはその他の生物学的システム;心臓用の置換弁;グルコースセンサー、心臓用センサー、識別センサーまたは追跡センサー(例えばRFID)、O2、pH、温度、イオンなどを検出または測定するためのセンサーを含む体内埋植可能なセンサー;顎用、頬用、顎骨用、および鼻用などの顔面用埋植物など組織埋植物を含む整形外科用埋植物;体内埋植可能な皮下または経皮アクセスポート;エウスタキオドレーンチューブなどのドレーンチューブ;尿カテーテルなどのカテーテル;ならびに呼吸補助チューブなど。
【0029】
コラーゲン足場またはファイバーの被覆は、標的の体内埋植可能装置を実質的に入れるよう構成されていてもよく、またはその一部のみを覆ってもよい。
【0030】
足場または被覆は、任意の好適な様式によって一緒にまたは装置上に保持されたファイバーまたはフィブリルの三次元アレイであってもよく、そのような様式には、圧縮時または押出し時に一緒にくっつくという自然の親和性による様式、ゼラチン状コーティングなど粘着性のコーティングもしくは接着剤を用いる様式、またはファイバーをくっつけてアレイを形成するその他の様式が含まれる。足場または被覆はまた、任意で、押出しされた部分、エレクトロスピニングされた部分、編組みされた部分、および/またはメッシュコラーゲン部分を含んでいてもよい。「編組みされた(braided)」という用語およびその派生語は、3本以上のファイバーまたはファイバー束を任意の様式で一緒に(インター)ウィービングおよび/またはインターロックすることを意味し、これには、ニッティングおよびノッティングならびにそれらの組合せ、または他のインターロック構成が含まれる。コラーゲンは、積層ファイバー、発泡体、エレクトロスピニングしたヤム、または他の編成として提供されてもよい。
【0031】
いくつかの態様において、足場または被覆は、短期的または長期的な放出または溶出用の薬剤送達装置として構成されてもよい。例えば、コラーゲン足場または被覆の中または上にヒドロゲルマトリックスを組み込んでもよい。
【0032】
いくつかの態様において、バイオセンサーまたは他の体内埋植可能な医療装置に、NDGA処理したコラーゲン足場またはコラーゲンコーティングが適用される。本発明のコラーゲン足場またはコーティングは、身体または組織内に埋植されたセンサーおよび装置の生体適合性および寿命を向上させる。本発明の態様のコラーゲン足場および/またはコーティングを用いることにより、埋植されたバイオセンサーおよび医療装置上の組織反応(すなわち炎症および線維症)の影響が低減する。
【0033】
いくつかの態様において、装置の少なくとも一部を実質的に封入して、組織反応を低減しまた一方で血管新生を促進し且つバイオファウリングを抑制するため、体内埋植可能なグルコースセンサーの周囲に非分解性の三次元多孔質コラーゲン足場が提供される。図1にグルコースセンサーの1つの例を示す(1‐テフロン被覆したPt‐Irワイヤ;2‐Ag/AgCl基準ワイヤ;3‐コラーゲン足場;4‐電気絶縁シーラント;5‐エポキシ‐Pu外膜;6‐酵素層;7‐ストリッピングおよびコイリングされたPt‐Irワイヤ;8‐GODゲルを伴う綿ファイバー)。グルコースセンサーの例は、発行されている米国特許出願第20070131549号ならびに米国特許第6,475,750号、同第6,033,866号、同第6,965,791号、および同第6,893,545号に説明されている。
【0034】
三次元多孔質コラーゲン足場は任意の好適な様式で提供されてよい。いくつかの態様において、足場は凍結乾燥法を用いて作製され、そしてノルジヒドログアイアレチン酸(NDGA)溶液を用いて強化される。
【0035】
本発明はまた、生体適合性コラーゲン足場を含むバイオセンサーおよび他の装置にも関する。特定の態様において、装置はグルコースセンサーなどのセンサーを含む。センサーは、電気化学式、光学式、音響式、圧電式、または熱電式のセンサーであってもよいが、それに限定されるわけではない。いくつかの態様において、コラーゲン足場は、例えば米国特許第6,821,530号および同第6,565,960号に説明されているように、コラーゲン足場の中にインターカレートされたポリマーを形成するように処理される。いくつかの態様において、コラーゲン足場は、反応性キノンを生成するのに十分なpHにおいて反応性カテコールを含む架橋化合物で処理される。典型的に、反応に用いられるpHは中性またはアルカリ性である。1つの態様においてpHは7〜約8である。別の態様においてpHは約8〜約9または約9〜約11である。特定の態様において、架橋に用いられる反応性カテコールはジカテコールである。1つの例示的な態様において、コラーゲン足場はNDGAビスキノンポリマーマトリックス中に埋め込まれる。装置はまた、エポキシまたは他の保護物質層を含んでいてもよい。いくつかの態様において、エポキシ層はコラーゲン足場の下にある。装置はまた、電気絶縁層を含んでいてもよい。いくつかの態様において、電気絶縁層はコラーゲン足場の下にある。本発明のコラーゲン足場は、直径約10μm〜約200μmまたは直径約20μm〜100μmの開口孔を含んでいてもよい。いくつかの態様において、本発明のコラーゲン足場は、直径約60μm以下の平均孔径を持つ。いくつかの態様において、コラーゲン足場は、約40μm〜約80μmの平均孔径を持つ。前述のように、抗菌活性を持つ化合物、および/または炎症反応、血管新生などを変化させる化合物など、種々の治療用化合物をコラーゲン足場に装填してもよい。いくつかの態様において、抗菌性、抗炎症性、または血管形成性の化合物、薬剤、または成長因子がコラーゲン足場に装填される。
【0036】
本発明の態様はまた、身体もしくは組織または動物に埋植するための装置を調製する方法であって、装置の少なくとも一部の外面の周囲に本発明の生体適合性コラーゲン足場が調製される方法にも関する。任意で、装置またはその一部を、エポキシ‐ポリウレタンなどのエポキシ層および/または電気絶縁層でコーティングしてもよい。いくつかの態様において、同方法は、装置をコラーゲン含有溶液に接触させ、続いて装置上のコラーゲン溶液を乾燥させ、そして次に、重合したマトリックス中にコラーゲンを架橋し且つ/または埋め込む段階を含む。いくつかの態様において、コラーゲン含有溶液は約0.5%〜約10%(w/v)のコラーゲンを含み、典型的には約1%(w/v)のコラーゲンを含む。いくつかの態様において、コラーゲン含有溶液は酸性溶液中で調製される。乾燥の段階は凍結乾燥によって行ってもよい。装置をコラーゲン溶液に接触させ、続いてコラーゲン溶液を乾燥させる段階は、複数回繰り返してもよい。1つの態様において、これらの段階は約2〜4回繰り返される。特定の態様において、重合してポリマーを形成できる反応性キノンを生成するのに十分なpHにおいて、反応性カテコールを用いてポリマーマトリックス中にコラーゲンを埋め込んでもよい。いくつかの態様において、反応性カテコール用の反応溶液は、酸素で溶液をスパージングするなどにより、溶液中の溶存酸素レベルを高めるように処理してもよい。典型的に、反応に用いられるpHは中性またはアルカリ性である。1つの態様においてpHは7〜約8である。別の態様においてpHは約8〜約9または約9〜約11である。1つの例示的な態様において、反応性カテコールはNDGAなどのジカテコールである。コラーゲンコーティングした装置は、好適な時間(例えば24時間)にわたって、中性またはアルカリ性のpHのNDGAの溶液に曝露してもよい。コラーゲン足場はこれによりNDGAビスキノンポリマーマトリックス中に埋め込まれる。任意で、NDGA処理に続いて足場を洗浄してもよい。いくつかの態様において、重合したマトリックス中にコラーゲンが埋め込まれるようコラーゲンを処理した後、続いて、埋め込まれたコラーゲンを凍結乾燥してもよい。任意で、同方法は、抗菌活性、抗炎症活性、または血管形成活性を持つ化合物、薬剤、成長因子などをコラーゲン足場に装填する段階を含んでいてもよい。本方法のいくつかの態様のフローチャートを図21に示す。
【0037】
いくつかの態様において、本発明の装置は、それに取り付け、連結、または架橋された例えば核酸、タンパク質、有機化合物、または他の分子などを持つバイオセンサーである(例えばセンサーの電極に酵素を取り付けてもよい)。センサーは、グルコース、アルコール、アミノ酸、薬剤(およびその代謝産物)、尿素、ホルモン、ならびにその他関心対象の化合物および分析物の検出に用いてもよい。本発明により企図されるセンサーには、微生物、タンパク質、核酸、糖および脂肪酸などの有機化合物、ならびに他の分子または分析物を検出できるセンサーが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0038】
図1に示すように、1つの例示的な態様において、グルコースセンサーは、グルコースオキシダーゼなどの架橋された酵素を含むコイル式のグルコースセンサーである。1つの態様において、装置の外面上の足場は、直径(平均)約10μm〜約200μmまたは直径約20μm〜約100μmの開口孔を含む。特定の態様において、装置の外面周囲のコラーゲン足場の平均孔径は直径約60μm以下である。1つの態様において、コラーゲン足場の平均孔径は直径約40μm〜約80μmである。センサーはまた、任意で、エポキシ層などの層および電気絶縁層を含んでいてもよい。本発明のコラーゲン足場に、炎症反応、血管新生などを変化させる種々の化合物を装填してもよい。1つの態様において、抗菌性、抗炎症性、および/または血管形成性の薬剤または成長因子がコラーゲン足場に装填される。
【0039】
本発明はまた、本発明の生体適合性コラーゲン足場を含む本発明の装置を用いてインビボで生物学的プロセスをモニターする方法にも関する。いくつかの態様において、装置は、糖尿病患者などの患者において血糖値のモニターに使用できるグルコースセンサーである。別の態様において、装置は、人または動物において妊娠に関連するホルモンなどのホルモンレベルを検出できるセンサーである。他の態様において、装置は、心臓、脳などの機能をモニターするための心臓用または神経系用モニターである。1つの例示的な態様において、本発明の装置が人または動物の身体または組織内に埋植され、そして装置がモニターまたは検出などできる生物学的プロセスがモニターまたは検出される。足場またはコーティングがバイオファウリングに対する抵抗性を提供し、これによりインビボにおける作動の長寿命を促進するので、本装置を用いて数週間、数か月、または数年にわたって生物学的プロセスをモニターすることができる。
【0040】
本発明はまた、生物活性化合物、薬剤、成長因子、タンパク質、ペプチド、核酸、無機分子または有機分子などのインビトロ送達またはインビボ送達用に本発明のコラーゲン足場を用いることにも関する。本発明のコラーゲン足場に生物活性化合物などを装填してもよく、そして次にこの装填した足場を人または動物の身体、組織、細胞などに埋植するかまたは接触させてもよい。次に化合物は、足場から身体、組織、細胞などの中に放出されることを許容される。コラーゲン足場は生分解性または非分解性の支持構造またはマトリックス上に提供されてもよい。
【0041】
本発明で用いられるコラーゲンは合成物であってもよく、または任意の好適な動物種に由来するものでもよい。コラーゲンは脊椎動物または無脊椎動物(例えばヒトデ、ウニ、海綿など)に由来してもよい。いくつかの態様において、コラーゲンは、魚、サメ、ガンギエイ、またはエイのコラーゲンである。別の態様において、コラーゲンは、ヒト、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、またはネコのコラーゲンである。1つの例示的な態様において、コラーゲンはウシのコラーゲンである。
【0042】
本発明のコラーゲン足場は、体温において少なくとも4週間はインビトロおよびインビボの両方において安定である。また、グルコースセンサー周囲への足場の適用はセンサーの感度に有意な影響を及ぼさなかった。炎症および線維症は最小限であるが血管密度は増大した状態で、制御された局所組織環境をセンサー周囲に作り出すため、本発明の足場を用いて抗炎症性の薬剤および血管形成性の成長因子(例えばVEGF、PDGF)を送達してもよい。
【0043】
本明細書において参照または引用されるすべての特許、特許出願、仮出願、および刊行物は、本明細書の明示的な教示と矛盾しない範囲まで、すべての図および表を含めてその全内容が参照により組み入れられる。
【0044】
以下は本発明を実施するための手順を示す実施例である。これらの実施例は限定的なものとして解釈されるべきでない。特に示さない限り、すべてのパーセンテージは質量比であり、すべての溶媒混合比率は体積によるものである。
【0045】
材料および方法
材料
I型コラーゲン(ウシ胎仔の腱から精製したもの)はShriners Hospital for Children(フロリダ州Tampa)の厚意により提供された。ノルジヒドログアイアレチン酸(NDGA)はCayman Chemical Co.(ミシガン州Ann Arbor)より購入した。グルコース、ウシ血清アルブミン(BSA)、および50%(w/w)グルタルアルデヒド(GA)はFisher Scientific(ペンシルベニア州Pittsburgh)から入手した。グルコースオキシダーゼ(GOD)(EC 1.1.3.4.、タイプX-S、アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)、157,500 U/g)、エポキシ接着剤(ATACS 5104)、ポリウレタン(PU)、テトラヒドロフラン(THF)、およびコラゲナーゼ(EC 3.4.24.3、タイプI、ヒストリチクス菌(Clostridium histolyticum)由来、302 U/mg)はSigma-Aldrich(ミズーリ州St. Louis)から入手した。Sprague-Dawley非近交系ラット(雄、375〜399 g)はHarlan(バージニア州Dublin)より購入した。
【0046】
コラーゲン足場の調製および架橋
コラーゲン足場を凍結乾燥法により調製した。コラーゲンを3%酢酸に溶解して1%(w/v)溶液を調製した。この溶液を円筒形のポリプロピレン型(φ10 mm、高さ8 mm)に適用し、次に凍結乾燥させた。円筒形の三次元多孔質足場を得た。次に、溶解性を最小にし且つコラゲナーゼ分解への抵抗性を高めるため、足場をNDGAまたはGAで架橋した。
【0047】
NDGA架橋については、乾燥させたコラーゲン足場を無水エタノールに軽く浸漬し、続いて室温にて2 MのNaCl溶液に12時間浸漬した。足場を、酸素スパージングしたリン酸緩衝生理食塩水(PBS、0.1 M NaH2PO4、pH 9.0)中に室温にて30分間、再懸濁した。次に、以下のように、NDGA 3 mgの入ったPBS 1 mLで足場を処理した:NDGAを濃度30 mg/mLにて0.4 N NaOHに溶解した。足場を懸濁したPBSにNDGA溶液1 mLを直接添加し、最終濃度を3 mg/mLとした。室温にて24時間、NDGA溶液中で足場を撹拌した。足場を取り出し、水で軽くすすぎ、そして凍結乾燥させた。
【0048】
NDGA処理の有効性の比較試験として、他の足場を室温のエタノール溶液中にて0.5% GAで2時間または12時間処理した。GA架橋処理中のマトリックスの溶解または喪失を防ぐため、水の代わりに100%エタノールを用いた。架橋した足場を脱イオン水で洗浄し、再度凍結乾燥させた。標準的な手順に従って金属蒸発器内でサンプルを金スパッタコーティングした後に走査電子顕微鏡観察(SEM)を用いて架橋前後の足場の形態を調べた。
【0049】
架橋後の足場の安定性を評価するため、架橋の前後で乾燥サンプルを計量することにより架橋の程度(Dc)を推定した。Dcは次式を用いて計算した。
Dc [%] = (架橋後のサンプル質量/架橋前のサンプル質量) × 100
【0050】
吸水度を測定することにより多孔質足場の膨張特性を調べた。十分な乾燥後に足場を計量し(Wdry)、純水に浸漬した。24時間後、足場を水から取り出し、ただちに再度計量した(Wwet)。次式を用いて吸水度を計算した。
吸水度(%)= [(Wwet - Wdry)/Wwet] × 100
【0051】
コラーゲン足場のインビトロおよびインビボ評価
架橋した足場の生物学的安定性を調べるため、インビトロおよびインビボの生分解試験を行った。NDGA架橋足場およびGA架橋足場のインビトロ生分解を細菌コラゲナーゼを用いて試験した。作製したNDGA架橋コラーゲン足場およびGA架橋コラーゲン足場をコラゲナーゼ溶液(PBS中に1 mg/mL、37℃)中で最長4週間インキュベートした。インキュベーション中の所定の時間間隔(1週〜4週)にて足場を溶液から取り出し、脱イオン水ですすぎ、そして凍結乾燥させた。酵素消化前後の乾燥足場の質量差のパーセンテージとしてインビトロ分解を評価した。
【0052】
架橋した足場の安定性をインビボにおいて判定するため、NDGA架橋コラーゲン足場およびGA架橋コラーゲン足場をラットに直接埋植した。足場を70%エタノール溶液で2時間消毒し、そしてラットの背中の皮下に埋植した。埋植から7、14、21、および28日後に足場を取り出した。取り出し後、足場を肉眼観察にて調べた。
【0053】
体内埋植可能なグルコースセンサーの周囲における多孔質コラーゲン足場の調製
架橋した酵素(GOD:グルコースオキシダーゼ)を装填したコイル式のグルコースセンサーを、白金‐イリジウム(Pt/Ir)ワイヤ(Teflonコーティングしたもの、φ0.125 mm、Pt:Ir = 9:1、Medwire、Sigmund Cohn Corp.、ニューヨーク州Mount Vernon)を用いて作製した。次に、ウシの腱のI型コラーゲン足場をセンサー周囲に適用した(図1)。簡潔には、グルコースセンサーを作製するため、Pt/Irワイヤの最上部10 mmのTeflonコーティングを除去し、このワイヤを30ゲージ針に沿って巻き上げてコイル状の円筒を形成した。円筒ユニットは外径0.55 mm、内径0.3 mm、長さ1 mmであった。電極の酵素コーティング中に酵素溶液を保持するためコイルチャンバーの内部に綿糸を挿入した。1% GOD、4% BSA、および0.6%(w/w)グルタルアルデヒドを含む水溶液中にて浸漬被覆することによりセンサーにGODを添加および架橋した。エポキシ‐ポリウレタン(エポキシ‐PU)溶液(THF中に2.5%(w/v)、エポキシ:PU = 1:1)に浸漬することによりセンサーの外膜をエポキシ‐PUでコーティングした。センサーを室温にて少なくとも24時間乾燥させた。検出素子の2つの端を電気絶縁シーラント(Brush-On絶縁テープ、North American Oil Company)でシールした(Long et al., 2005; Yu et al., 2006)。
【0054】
センサー周囲にコラーゲン足場を適用するため、センサーを1%(w/v)コラーゲン溶液にて浸漬被覆し、凍結乾燥させた。グルコースセンサー周囲の多孔質足場を前述のようにNDGAまたはGAで架橋した。得られたセンターを室温の乾燥状態、または4℃のPBS中で保管した。光学顕微鏡およびSEMを用いてセンサーの形態を観察した。
【0055】
銀線(Teflonコーティングされたもの、φ0.125 mm、World Precision Instruments、Inc.)を用いてAg/AgCl基準電極を作製した。銀線をコイル巻きし、撹拌0.1 M HCl中で1晩、1 mAにて定電流的に陽極酸化処理した(Long et al., 2005; Yu et al., 2006)。
【0056】
足場でコーティングしたセンサーのインビトロ特性
PBS(pH 7.4)中で700 mVにて、実装したAg/AgCl基準電極に対してグルコースセンサーの特性を調べた。各センサーの作用電極(Pt/Irワイヤ)およびAg/AgCl基準電極をApollo 4000ポテンシオスタット(World Precision Instruments, Inc.、フロリダ州Sarasota)に接続した。背景電流を10分間安定させ、次に、感度および直線性を調べるためセンサーをグルコース溶液系列に曝露した。応答感度(S)を以下により繰返し評価した:(1)C1グルコース溶液の応答電流(I1)を測定する;(2)測定された溶液に濃縮グルコース溶液を加えてグルコース濃度をC2まで上昇させる;および、(3)得られた溶液の応答電流(I2)を測定する。感度を、1 mMのグルコース増加により生じる電流増加、すなわち S = (I2 - I1)/(C2 - C1) として表現した。
【0057】
NDGA架橋足場のインビボ抗炎症効果
NDGA架橋のインビボ抗炎症効果を評価するため、NDGA架橋足場およびGA架橋足場(対照)をSprague-Dawleyラットの背中の皮下に埋植した。埋植部位周囲の皮下組織標本を埋植から3、7、14、21、28、および49日後に取り出した。定めた時間間隔で組織標本を収集し、インサイチュー(10%緩衝ホルマリン)で固定した。固定した組織標本をパラフィン包埋し、厚さ10μmで薄切した。種々の切片をヘマトキシリン・エオシン(H&E)で染色し、デジタルカメラ付きの顕微鏡を用いて撮影した。本発明に基づくバイオセンサーの埋植に関連する炎症反応を図4に示す。
【0058】
実施例1‐多孔質架橋コラーゲン足場の調製
NDGA架橋反応の化学的性質はGA処理を用いた反応と異なる(図2)。GAは組織生物工学用のコラーゲン足場の固定に用いられる最も一般的な架橋剤である。GA分子の両方のアルデヒド官能基が、隣り合う2本のポリペプチド鎖、特にリシン側鎖の間でアミン基と反応する。残念ながら、GA架橋には、未反応の残基の存在ならびに/または酵素分解中のモノマーおよび小ポリマーの放出を原因とする潜在的な細胞毒性の問題という難点がある(Huang-Lee et al., 1990; van Luyn et al., 1992)。
【0059】
NDGAは反応性カテコールを有する代替の架橋剤である。NDGAによるコラーゲン架橋は、ガンギエイの卵嚢におけるキニン色素沈着機序と類似している。カテコール‐キノン色素沈着系は広範な種々の動物にみられ、その過程は脆弱な細胞外基質を強化するのに役立つ(例えば昆虫のクチクラ、イガイの足糸)(Koob et al., 2002a; Koob et al., 2004)。クレオソートブッシュから単離されるNDGAは、オルトカテコールを2つ含む低分子量のジカテコールである。NDGAの2つのカテコールは中性またはアルカリ性のpHにおいて自己酸化し、反応性キノンを生成する。次に2つのキノンは、アリルオキシ遊離基形成および酸化カップリングを介してカップリングし、各端でビスキノン架橋を形成する。NDGAは大きな架橋ビスキノンポリマー網の形成を続け、その中にコラーゲンフィブリルが埋め込まれる。NDGA処理はまた、コラーゲンのアミノ酸側鎖とも架橋を形成できる(Koob et al, 2002a; Koob et al., 2002b; Koob et al., 2004)。
【0060】
この試験において、非常に多孔質のコラーゲン足場を凍結乾燥法により調製した。本明細書の説明のように調製した足場は、SEM観察に基づき、開放セルおよび相互連結孔の構造を持つことが確認された(図3A)。足場の孔は規則的に分布し、直径20〜100μm(平均約60μm)であった。Sharkawy et al., 1997の報告によれば、平均孔径60μmのポリビニルアルコール(PVA)スポンジは、組織の内殖環境を提供し且つ新生血管の侵入を許容したが、線維組織の内殖は許容しなかった。NDGAおよびGAで架橋後、両足場の孔径および孔構造に大きな変化はなかった(図3Bおよび図3C)。異なる架橋法を用いた足場の架橋の程度および吸水率を図4に示す。架橋処理後、未架橋のコラーゲン成分の喪失により、質量がNDGA処理では約70%、GA処理では60%に減少した。架橋したコラーゲン足場は未架橋のコラーゲン足場より形状安定性が有意に高かった。また、NDGA架橋足場およびGA架橋足場の膨張挙動は、これら2種類の架橋剤の間で有意な差を示さなかった。両方の架橋足場の吸水度は99%を上回っていた。スポンジ状マトリックスの高い膨張特性は、良好な吸収特性を有する、足場の多孔質内部構造に依存すると考えられる(Patel et al., 1996)。
【0061】
実施例2‐多孔質コラーゲン足場のインビトロおよびインビボ評価
架橋したコラーゲン足場の生物学的安定性をインビトロおよびインビボの生分解試験により調べた。酵素消化後の足場の質量損失を測定することにより、未架橋足場(対照)および架橋足場の分解を特性決定した。未架橋足場およびGAで2時間架橋した足場はコラゲナーゼ溶液中にて数時間以内に完全に分解したが、NDGAまたはGAで(12時間)架橋した足場は24時間以内に分解しなかった。架橋後、酵素消化に対する抵抗性の有意な増大が示されえた。図5にNDGA架橋足場およびGA架橋足場の長期コラゲナーゼインビトロ分解試験(残存質量%)を示す。1週間のコラゲナーゼ曝露後、いずれのタイプの足場も酵素消化に対する高い抵抗性を示した(残存質量 >80%)。3週間および4週間後、すべての足場が当初質量の70%を保っていた。しかし、GA架橋足場の場合、4週間のコラゲナーゼ消化処理後に孔径が増大していた(図6Bと図6Dとの比較)。これに対し、NDG足場の孔径は増大していないようであった(図6Aと図6Cとの比較)。この結果から、NDGA処理またはGA処理によりコラーゲン足場に酵素生分解安定性の向上を提供できることが示唆される。コラーゲン足場の架橋によりコラゲナーゼ切断部位はより効果的にブロックされた(Angele et al., 2004)。
【0062】
架橋足場の安定性をインビボで調べるため、架橋コラーゲン足場をSprague-Dawleyラットの皮下組織中に埋植し、埋植2週間後および4週間後にサンプルを取り出した。2週間の埋植後、NDGA架橋足場は物理的損傷の証拠を示さなかったが、GA架橋足場では全体的な形状が変形しサイズもわずかに小さくなっていた(図7A)。4週間後、GA架橋足場のサイズおよび形状は劇的に変化していたが、NDGA架橋足場に大幅な変化はなかった(図7B)。このことは、NDGA処理はGA処理よりインビボにおける足場の物理的安定性をはるかに大きく向上できることを示しており、これはおそらくNDGA架橋コラーゲンの機械特性がより大きいことによるものと考えられる。Koob et al., 2002bでは、NDGA架橋コラーゲンファイバーを試験し、NDGAはGA架橋と異なりコラーゲンを化学的に架橋するのではないため、NDGA架橋ファイバーはGA架橋ファイバーより極限引張強さが有意に大きいと報告されている。代わりに、コラーゲンフィブリルが、重合したNDGAマトリックス、すなわちファイバー強化複合体の中に埋め込まれる(図2)。
【0063】
実施例3‐体内埋植可能なグルコースセンサーの周囲の多孔質コラーゲン足場
まず、架橋した酵素(GOD:グルコースオキシダーゼ)を装填したコイル式のグルコースセンサーを、白金−イリジウム(Pt/Ir)ワイヤを用いて作製した。次に、ウシの腱のI型コラーゲン足場をセンサーの周囲に適用した(図1)。Yu et al., 2006では以前、この「コイル式の」センサーがより多くのGOD装填を可能にし、より大きな電気化学的表面を提供し、そしてこれにより「針式の」センサーと比較して応答電流を増加させると報告されている。本発明のコイル式センサーは可撓性で、且つ皮下埋植用に小型化されている(直径0.5 mm)。同センサーはグルコース呈示白金電極とAg/AgCl基準電極とを伴う二電極システムで構成される。本発明のセンサーは、架橋コラーゲン足場、エポキシ‐ポリウレタン(エポキシ‐PU)、およびGODの三層膜構成を利用している。コラーゲン足場(この場合は最外層)は、グルコースおよび他の分子を含む水を、その乾燥重量の99%取り込むことができる。足場の下のエポキシ‐PU膜はグルコースおよび酸素に対して透過性であるが、ほとんどの妨害物質に対して不透過性である。BSA/GAマトリックス中に不動化したGODをPt/Irワイヤとエポキシ‐PU膜との間に挟んだ。コーティング中にチャンバー内に捕捉された気泡をなくし、チャンバー内で酵素ゲルを安定化させ、そして酵素溶液をコイル内に留まりやすくするため、コイルチャンバー内部に綿ファイバーを使用した。コラーゲン足場を凍結乾燥法によって調製し、そして、水溶性およびコラゲナーゼによる酵素消化を最小にするため架橋した。光学顕微鏡を用いて、多孔質足場がセンサー先端を十分に囲んでいることを確認した(図8Aおよび図8B)。センサー周囲の足場の表面および断面の形態もSEMを用いて観察した。表面では、多くのコラーゲンフィブリルおよび均一な開口孔構造が観察された(図8C)。断面領域では、足場内の相互接続した開口孔および150〜200μmという厚さが観察された(図8D)。
【0064】
図9に示すように、グルコース濃度を5 mMから15 mMまで変化させることにより、足場ありおよび足場なし(対照)のグルコースセンサーの電流応答曲線を得た。これらのグルコース濃度を選択したのは、これらの濃度が、試験したセンサーの線形応答領域(2〜30 mM)内にあるからである。試験の結果、センサー周囲への足場適用の前後で応答電流の有意な変化は示されなかった。しかし、足場つきのセンサーでは、平衡電流に達するまでの応答時間(T95%)が対照センサーより遅かった。応答時間T95%は、最大電流変化(I2 - I1)の95%のときの時間として定義される。対照センサーのT95%が14.0分であったのに対し、NDGA架橋足場およびGA架橋足場を伴うセンサーのT95%はそれぞれ17.9分および17.0分であった。応答時間の遅延(17.9分および17分)は、おそらく、多孔質足場という物理的障壁の追加によってもたらされたものである。
【0065】
NDGA架橋足場およびGA架橋足場を伴うセンサー、ならびに足場なしのセンサーがさまざまなグルコース濃度(2〜30 mM)に反応して生成した電流を図10に示す。グルコース濃度が高い領域(20〜30 mM)における対照センサーの応答電流は、足場を持つセンサーの応答電流よりわずかに大きいのみであった。対照、センサー周囲のNDGA架橋足場およびGA架橋足場の平均感度はそれぞれ11.0、7.1、および8.1 nA/mMであった。したがって、グルコースセンサー周囲への足場の適用がセンサーの機能に負の影響を与えることはなかった。
【0066】
コラーゲン溶液への浸漬サイクルにより制御して足場にさまざまな壁厚を持たせたセンサーの感度変化を調べた。図11に示されているように、4回浸漬被覆したセンサーの感度は、最初の感度(すなわち足場層がない状態)の60%に保たれた。センサーを5回より多く浸漬被覆した場合は、グルコースが足場の中を適切に拡散できず、感度は最初の感度の20%未満まで低下した。多孔質足場の材料は良好な吸水特性を持つが、壁厚はセンサー機能に影響を及ぼしうる。
【0067】
実施例4‐体内埋植可能なグルコースセンサーのインビトロおよびインビボ評価
これらの試験に使用した、図1に示す多層検出素子を持つ体内埋植可能なグルコースセンサーを図13に示す。創傷クリップを10、Ag/AgCl基準対電極を20、ループを30、足場Pt/Ir電極を伴うセンサーを40で示している。インビトロ試験では、37℃のPBS(pH 7.4)中に16個のセンサーを4週間留置した。ポテンシオスタット(WPI, Inc.)を用いて所定の時間間隔で(1週〜4週)感度を測定した。感度(nA/mM)=(I15mM - I5mM)/(15mM - 5mM)とした。インビボ試験では、ラットの背中の皮下に48個のセンサー(24個は短ワイヤ)を埋植し、4チャネルのポテンシオスタット(WPI, Inc.)を用いて麻酔下にて感度を毎週測定した(図14および図15を参照)。感度(nA/mM)=(Imax - I0)/(Cmax - C0)とした。標準的なFREESTYLEグルコメーターを用いて血糖の濃度(C)を測定した。
【0068】
図16に示すように、水和したNDGA強化コラーゲン足場はGA架橋コラーゲン足場より形状安定性が高かった。インビトロ感度については、足場の存在により感度のわずかな低下が観察された。しかし、足場を伴ういずれのセンサーでも、最大4週間のインビトロにおいて、最初の感度の80%より上を保った(図17を参照)。したがって、グルコースセンサー周囲への三次元足場の適用がインビトロにおけるセンサー感度に深刻な影響を及ぼすことはなかった。
【0069】
埋植したグルコースセンサーのインビボ感度については、短ワイヤのセンサーでは微動が制限されるため、短ワイヤのセンサーは長ワイヤのセンサーより全体的に性能が良好であった。NDGA強化足場を伴うセンサーは、GA架橋足場を伴うセンサーより、4週間後にはるかに高い感度を保っていた(図18を参照)。
【0070】
埋植したグルコースセンサーの物理的安定性および感度については、インビボにおける4週間の間、NDGA強化コラーゲン足場を伴う短ワイヤのセンサーはAG架橋足場を伴うセンサーより感度および物理的安定性がはるかに高かった(図19および図20を参照)。
【0071】
本明細書に説明した実施例および態様は実例的な目的のみのものであること、ならびに、それらに照らした種々の修正および変更が当業者に示唆されると考えられ、それらは本出願および添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれるものであることが理解されるべきである。さらに、本明細書に開示される任意の発明またはその態様の任意の要素または制限を、任意のおよび/またはすべての他の要素もしくは制限と(個別にまたは任意の組み合わせにおいて)組み合わせてもよく、または本明細書に開示される他の任意の発明もしくはその態様と組み合わせてもよく、そしてそのようなすべての組合せは、それに対する制限を伴わずに本発明の範囲に入るものと企図される。
【0072】
参考文献

米国特許第6,821,530号
米国特許第6,565,960号





【特許請求の範囲】
【請求項1】
人または動物の身体または組織内に埋植可能な装置とともに用いるための、ポリマーマトリックス内に埋め込まれた生体適合性のコラーゲン足場および/またはコーティング。
【請求項2】
反応性キノンを生成するのに十分なpHにおいて反応性カテコールを含む架橋化合物で処理される、請求項1記載のコラーゲン足場。
【請求項3】
反応性カテコールがジカテコールである、請求項2記載のコラーゲン足場。
【請求項4】
ノルジヒドログアイアレチン酸(NDGA)ビスキノンポリマーマトリックス中に埋め込まれる、請求項1記載のコラーゲン足場。
【請求項5】
装置がセンサーを含む、請求項1記載のコラーゲン足場。
【請求項6】
センサーがグルコースセンサーである、請求項5記載のコラーゲン足場。
【請求項7】
直径(平均)約10μm〜約200μmの開口孔を含む、請求項1記載のコラーゲン足場。
【請求項8】
平均孔径が直径約60μm以下である、請求項7記載のコラーゲン足場。
【請求項9】
平均孔径が直径約40μm〜約80μmである、請求項7記載のコラーゲン足場。
【請求項10】
抗菌性、抗炎症性、および/または血管形成性の化合物、薬剤、または成長因子のうち少なくとも1つを含む、請求項1記載のコラーゲン足場。
【請求項11】
人または動物の身体または組織内に埋植するための装置を調製するための方法であって、ポリマーマトリックス内に埋め込まれた生体適合性のコラーゲン足場またはコーティングを該装置の上に置く段階を含む方法。
【請求項12】
以下の段階を含む、請求項11記載の方法:
(a)装置をコラーゲン含有溶液に接触させる段階;
(b)該装置上の該コラーゲン溶液を乾燥させる段階;および
(c)該装置上の該コラーゲンをポリマーマトリックス中に埋め込む段階。
【請求項13】
反応性キノンを生成するのに十分なpHにおいて反応性カテコールを用いてコラーゲンがマトリックス中に埋め込まれる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
反応性カテコールがジカテコールである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
ジカテコールがNDGAである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
段階(a)および(b)が少なくとも1回繰り返される、請求項12記載の方法。
【請求項17】
段階(a)および(b)が少なくとも2〜4回繰り返される、請求項12記載の方法。
【請求項18】
乾燥させる段階が凍結乾燥を含む、請求項12記載の方法。
【請求項19】
マトリックス中に埋め込まれたコラーゲンが続いて凍結乾燥される、請求項12記載の方法。
【請求項20】
段階(a)のコラーゲン含有溶液が約1%(w/v)コラーゲンを含む、請求項12記載の方法。
【請求項21】
コラーゲン足場が直径(平均)約10μm〜約200μmの開口孔を含む、請求項12記載の方法。
【請求項22】
コラーゲン足場の平均孔径が直径約60μm以下である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
コラーゲン足場の平均孔径が直径40μm〜80μmである、請求項21記載の方法。
【請求項24】
ポリマーマトリックス内に埋め込まれた生体適合性のコラーゲンコーティングまたは足場を、体内埋植可能な装置に提供するための方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)体内埋植可能な装置の構造をコラーゲン含有溶液に接触させる段階;
(b)該構造上の該コラーゲン溶液を乾燥させる段階;および
(c)該構造の該コラーゲンをポリマーマトリックス中に埋め込む段階。
【請求項25】
反応性キノンを生成するのに十分なpHにおいて反応性カテコールを用いてコラーゲンがマトリックス中に埋め込まれる、請求項24記載の方法。
【請求項26】
反応性カテコールがジカテコールである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
ジカテコールがNDGAである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
段階(a)および(b)が少なくとも1回繰り返される、請求項24記載の方法。
【請求項29】
段階(a)および(b)が複数回繰り返される、請求項24記載の方法。
【請求項30】
乾燥させる段階が凍結乾燥である、請求項24記載の方法。
【請求項31】
マトリックス中に埋め込まれたコラーゲンが続いて凍結乾燥される、請求項24記載の方法。
【請求項32】
段階(a)のコラーゲン含有溶液が約1%(w/v)コラーゲンを含む、請求項24記載の方法。
【請求項33】
コラーゲン足場が直径(平均)約10μm〜約200μmの開口孔を含む、請求項24記載の方法。
【請求項34】
コラーゲン足場の平均孔径が直径約60μm以下である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
コラーゲン足場の平均孔径が直径40μm〜80μmである、請求項33記載の方法。
【請求項36】
人または動物の身体または組織内への埋植のために生体適合性が増強された装置であって、ポリマーマトリックス内に埋め込まれた生体適合性のコラーゲン足場またはコーティングを含む装置。
【請求項37】
足場および/またはコーティングが、反応性キノンを生成するのに十分なpHにおいて反応性カテコールを含む架橋化合物で処理される、請求項36記載の装置。
【請求項38】
反応性カテコールがジカテコールである、請求項37記載の装置。
【請求項39】
コラーゲン足場および/またはコーティングがノルジヒドログアイアレチン酸(NDGA)ビスキノンポリマーマトリックス中に埋め込まれる、請求項36記載の装置。
【請求項40】
装置がセンサーである、請求項36記載の装置。
【請求項41】
装置がグルコースセンサーである、請求項36記載の装置。
【請求項42】
コラーゲン足場および/またはコーティングの下にエポキシコーティングを含む、請求項36記載の装置。
【請求項43】
エポキシコーティングがエポキシ‐ポリウレタンコーティングである、請求項42記載の装置。
【請求項44】
足場が、直径(平均)約10μm〜約200μmの開口孔を含む、請求項36記載の装置。
【請求項45】
コラーゲン足場の平均孔径が直径約60μm以下である、請求項44記載の装置。
【請求項46】
コラーゲン足場の平均孔径が直径約40μm〜約80μmである、請求項44記載の装置。
【請求項47】
足場が、抗菌性、抗炎症性、および/または血管形成性の化合物、薬剤、または成長因子を含む、請求項36記載の装置。
【請求項48】
実質的に本明細書に記載されているとおりである生体適合性コラーゲン足場およびその使用。
【請求項49】
実質的に本明細書に記載されているとおりである、生体適合性コラーゲン足場を調製するための方法。
【請求項50】
実質的に本明細書に記載されているとおりである、人または動物の身体または組織内に埋植するための、生体適合性のコラーゲン足場および/またはコーティングを含む装置およびその使用。
【請求項51】
実質的に本明細書に記載されているとおりである、人または動物の身体または組織内に埋植するための装置を調製するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図12F】
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【図12G】
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【図12H】
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【図12I】
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【図12J】
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【図12K】
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【図12L】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2009−540936(P2009−540936A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516591(P2009−516591)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/014650
【国際公開番号】WO2008/105791
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
【出願人】(508079566)ユニバーシティー オブ サウス フロリダ (4)
【出願人】(508373279)
【Fターム(参考)】