説明

コンクリート壁面の表面研掃処理装置

【課題】水道水等を貯留する貯水槽の広大な面積の垂直なコンクリート壁面に対して、ウォータージェットによる研掃を効率良く行えるようにする表面研掃処理装置を提供する。
【解決手段】表面研掃処理装置10は、ベースマシン14と、縦方向スライドガイド部16と、横方向スライドガイド部19と、ウォータージェット噴射ノズル11を備えるウォータージェット治具13とを含んで構成される。ベースマシン14は、基台部23と走行部22とからなる。縦方向スライドガイド部16は、基台部23上の支持架台21に固定される縦方向固定ガイド部17と、縦方向固定ガイド部17に沿って昇降可能な昇降ガイド部18とからなる。横方向スライドガイド部19は、ウォータージェット治具13の横巾の略3倍の長さを有し、昇降ガイド部18に沿って昇降可能である。ウォータージェット治具13は、横方向スライドガイド部19に沿って横方向に移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート壁面の表面研掃処理装置に関し、特にウォータージェットによって水道水や雨水や排水等を貯留する貯水槽のコンクリート壁面(柱の壁面を含む)の研掃を行なうコンクリート壁面の表面研掃処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンクリートの表面に付着した汚れや有害物質等を除去したり、コンクリートの打継ぎの際に既設のコンクリートの表面を目粗ししたり、コンクリートの表面を覆って塗布された防護剤や止水剤等のコーティング剤を新たに塗布し直す際に劣化した塗膜やコンクリートの表層部分を除去したりするために、ウォータージェットによってコンクリートの表面を研掃する方法が採用されている。
【0003】
また、ウォータージェットによってコンクリートの表面を研掃する作業は、複数の圧力水の噴射孔が設けられたウォータージェットガンや、バキューム機能付きの小型のウォータージェット処理装置を使用して、人力による操作で行われていたが、人力による操作では、効率良く作業を行うことができないことから、ウォータージェット噴射ノズルを備える装置を自動制御して、コンクリート構造物の研掃作業を効率良く行えるようにしたコンクリート表面の研掃装置が種々開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−169000号公報
【特許文献2】特開2000−141354号公報
【特許文献3】特開2005−254156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、例えば、水道水や雨水や排水等を貯留する貯水槽は、コンクリート構造物による大規模空間として地中に形成される場合が多いが、貯留される水の影響でコンクリートが劣化したり止水性が損われるのを防止するために、貯水槽の内側のコンクリートの表面を覆って防護剤や止水剤等のコーティング剤が塗布されるのが一般的である。これらのコーティング剤の塗膜もまた、貯水槽の長期間の使用によって劣化することから、維持管理のために、所定期間の経過後に、好ましくは劣化した塗膜を除去した後にコーテイング剤を新たに塗布し直す必要があり、劣化した塗膜を除去する際に、ウォータージェットによるコンクリート表面の研掃装置を採用することが考えられる。
【0006】
しかしながら、ウォータージェットによって貯水槽の内側のコンクリートの表面を研掃する場合、例えば貯水槽の底面の水平又は略水平なコンクリート面に対しては、例えば道路の舗装面を研掃する特許文献2に開示されるような公知の装置を用いて、効率良く研掃作業を行うことが可能であるが、相当の高さで垂直又は略垂直に立設する貯水槽の外壁や仕切壁や柱のコンクリ−ト壁面に対しては、これらのコンクリ−ト壁面は広大な面積を有していることから、例えば特許文献3に開示されるような垂直又は略垂直な壁面に対して研掃を行う装置を用いたとしても、広大な面積のコンクリ−ト壁面に対して、均質又は略均質な研掃状態となるように効率良く研掃作業を行うことは困難である。
【0007】
すなわち、特許文献3の研掃装置は、例えば焼却炉や下水施設等の表面に付着した汚染物質を除去するために、耐火煉瓦やコンクリートによる壁面の研掃を行なうものであり、必要なポイントを的確に研掃することが可能なように、外周カバー体の内側にウォータージェット噴射ノズルを備える噴射装置を、リフトや昇降手段を介して上下方向に移動させることができるようになっているが、貯水槽の広大な面積を有する垂直又は略垂直に立設するコンクリ−ト壁面を研掃するために用いる場合には、移動装置(ベースマシーン)を横方向に移動させて据付け直す回数が多くなり過ぎると共に、広大な面積を有する貯水槽のコンクリ−ト壁面の広範囲な領域に亘って、噴射装置を一定又は略一定の速度で上下左右に移動させるように制御することが難しく、コンクリ−ト壁面が均質又は略均質な研掃状態となるように研掃作業を行うことは困難である。
【0008】
本発明は、ウォータージェット噴射ノズルが設けられたウォータージェット治具が、コンクリ−ト壁面に沿って一定又は略一定の速度で上下左右に移動するように容易に制御できるようにして、水道水や雨水や排水等を貯留する貯水槽における、広大な面積の垂直又は略垂直に立設するコンクリート壁面に対して、均質又は略均質な研掃状態となるように効率良く研掃作業を行ってゆくことのできるコンクリート壁面の表面研掃処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、回転可能なウォータージェット噴射ノズルがカバー体の内側に設けられたウォータージェット治具を壁面に沿ってスライド移動させて、貯水槽のコンクリート壁面の研掃を行なうウォータージェットによるコンクリート壁面の表面研掃処理装置であって、ベースマシンと、縦方向スライドガイド部と、横方向スライドガイド部と、ウォータージェット治具とを含んで構成されており、前記ベースマシンは、支持架台が設置される基台部と、基台部を移動させる走行部とからなり、前記縦方向スライドガイド部は、前記支持架台のコンクリート壁面と対向させる部分に固定される縦方向固定ガイド部と、該縦方向固定ガイド部に沿って縦方向に昇降可能に取り付けられる昇降ガイド部とからなり、前記横方向スライドガイド部は、前記ウォータージェット治具のカバー体の横巾の少なくとも略3倍の横方向の長さを有すると共に、前記昇降ガイド部に沿って縦方向に昇降可能に取り付けられており、前記ウォータージェット治具は、前記カバー体を保持するカバー体保持部材が前記横方向スライドガイド部に沿ってスライドすることにより、前記横方向スライドガイド部に沿って横方向に移動可能に取り付けられており、前記ウォータージェット噴射ノズルをコンクリート壁面と対向配置させた前記ベースマシンの各据付け位置で、前記縦方向固定ガイド部に沿った前記昇降ガイド部の昇降移動と、前記昇降ガイド部に沿った前記横方向スライドガイド部の昇降移動と、前記横方向スライドガイド部に沿った前記ウォータージェット治具の横方向の移動とを制御して、前記ウォータージェット噴射ノズルから高圧水をコンクリート壁面に向けて噴射させながら、前記ウォータージェット治具を一定又は略一定の速度で上下左右に移動させて、少なくとも前記カバー体の横巾の略3倍の研掃巾で、前記ベースマシンの各据付け位置において前記コンクリート壁面の下端部から上端部に至る領域の研掃作業を行なうコンクリート壁面の表面研掃処理装置を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
そして、本発明のコンクリート壁面の表面研掃処理装置は、前記支持架台が、前記ベースマシンの前記基台部に取り付けられたレール部材の上に載置されて、該レール部材に沿ってコンクリート壁面と対向する方向に進退可能に設置されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明のコンクリート壁面の表面研掃処理装置は、前記カバー体保持部材が、前記カバー体を一体として保持するカバー体保持枠と、前記横方向スライドガイド部にスライド可能に取り付けられるスライド基部と、該スライド基部に対して前記カバー体支持枠を進退可能に位置決めする位置決め間隔調整機構とを含んで構成されることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明のコンクリート壁面の表面研掃処理装置は、前記位置決め間隔調整機構が、前記カバー体保持枠と、前記スライド基部との間に介在して取り付けられてこれらを進退可能に連結する、複数のスライドガイドと複数のエアシリンダーとによって構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコンクリート壁面の表面研掃処理装置によれば、ウォータージェット噴射ノズルが設けられたウォータージェット治具が、コンクリ−ト壁面に沿って一定又は略一定の速度で上下左右に移動するように容易に制御できるようにして、水道水や雨水や排水等を貯留する貯水槽における、広大な面積の垂直又は略垂直に立設するコンクリート壁面に対して、均質又は略均質な研掃状態となるように効率良く研掃作業を行ってゆくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート壁面の表面研掃処理装着の構成を説明する、(a)は略示側面図、(b)はコンクリート壁面側から見た略示正面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート壁面の表面研掃処理装着の側面図である。
【図3】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート壁面の表面研掃処理装着の、縦方向スライドガイド部を延ばした状態の側面図である。
【図4】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート壁面の表面研掃処理装着の、図8(b)のA−Aに沿った要部断面図である。
【図5】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート壁面の表面研掃処理装着の、図9(b)のB−Bに沿った要部断面図である。
【図6】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート壁面の表面研掃処理装着を用いた表面処理方法を説明する、(a)は略示側面図、(b)はコンクリート壁面側から見た略示正面図である。
【図7】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート壁面の表面研掃処理装着を用いた表面処理方法を説明する、(a)は略示側面図、(b)はコンクリート壁面側から見た略示正面図である。
【図8】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート壁面の表面研掃処理装着を用いた表面処理方法を説明する、(a)は略示側面図、(b)はコンクリート壁面側から見た略示正面図である。
【図9】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート壁面の表面研掃処理装着を用いた表面処理方法を説明する、(a)は略示側面図、(b)はコンクリート壁面側から見た略示正面図である。
【図10】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート壁面の表面研掃処理装着を用いた表面処理方法を説明する、(a)は略示側面図、(b)はコンクリート壁面側から見た略示正面図である。
【図11】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート壁面の表面研掃処理装着を用いた表面処理方法を説明する、(a)は略示側面図、(b)はコンクリート壁面側から見た略示正面図である。
【図12】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート壁面の表面研掃処理装着を用いた表面処理方法を説明する、(a)は略示側面図、(b)はコンクリート壁面側から見た略示正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1(a),(b)に示す本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート壁面の表面研掃処理装置10は、コンクリート構造物として、例えば地中に形成された大規模空間である水道水や雨水や排水等を貯留するための貯水槽において、これの内部の垂直又は略垂直に立設する広大な面積のコンクリート壁面(柱の壁面を含む)20に塗布された防護剤や止水剤等のコーティング剤の塗膜が、長期間の貯水槽の使用によって劣化して、新たにコーティング剤を塗布し直す必要が生じた際に、コーティング剤を塗布する作業に先立って、コンクリート壁面20をウォータージェットによって研掃して、所望の研掃状態で劣化した塗膜を効率良く除去できるようにするための装置として採用されたものである。また、本実施形態の表面研掃処理装置10は、貯水槽の水平な底面に対しては、例えば道路の舗装面を研掃する公知の装置を採用して、効率良く研掃作業を行うことが可能であり、貯留槽の水平な天井面に対しては、足場の確保が容易ではなく、他の特別の装置を必要とすることから、これらを対象外として、特に、例えば5〜8m程度の相当の高さで垂直又は略垂直に立設する貯留槽のコンクリ−ト壁面20に対して、効率良く研掃作業を行えるようにするための装置として採用されたものである。
【0016】
そして、本実施形態のコンクリート壁面の表面研掃処理装置10は、図2〜図5にも示すように、回転可能なウォータージェット噴射ノズル11がカバー体12の内側に設けられたウォータージェット治具13を壁面20に沿ってスライド移動させて、貯水槽のコンクリート壁面20の研掃を行なうウォータージェットによる表面処理装置であって、ベースマシン14と、縦方向スライドガイド部16と、横方向スライドガイド部19と、ウォータージェット治具13とを含んで構成されている。また、ベースマシン14は、支持架台21が設置される基台部23と、基台部23を移動させる走行部22とからなり、縦方向スライドガイド部16は、支持架台21のコンクリート壁面20と対向させる部分に固定される縦方向固定ガイド部17と、縦方向固定ガイド部17に沿って縦方向に昇降可能に取り付けられる昇降ガイド部18とからなり、横方向スライドガイド部19は、ウォータージェット治具13のカバー体12の横巾の少なくとも略3倍(本実施形態では略3倍)の横方向の長さを有すると共に、昇降ガイド部18に沿って縦方向に昇降可能に取り付けられており、ウォータージェット治具13は、カバー体12を保持するカバー体保持部材24が横方向スライドガイド部19に沿ってスライドすることにより、横方向スライドガイド部19に沿って横方向に移動可能に取り付けられている。さらに、ウォータージェット噴射ノズル11をコンクリート壁面20と対向配置させたベースマシン14の各据付け位置で、縦方向固定ガイド部17に沿った昇降ガイド部18の昇降移動と、昇降ガイド部18に沿った横方向スライドガイド部19の昇降移動と、横方向スライドガイド部19に沿ったウォータージェット治具13の横方向の移動とを制御して、ウォータージェット噴射ノズル11から高圧水をコンクリート壁面20に向けて噴射させながら、ウォータージェット治具13を一定又は略一定の速度で上下左右に移動させて、少なくともカバー体12の横巾の略3倍の研掃巾で、ベースマシン14の各据付け位置においてコンクリート壁面20の下端部から上端部に至る領域の研掃作業を行なうようになっている。
【0017】
本実施形態の表面研掃処理装置10を構成するベースマシン14は、図2及び図3に示すように、例えばキャタピラ形式の走行部22と、ターンテーブルを介して走行部22に対して回動可能に設けられた基台部23とからなる、例えばバックフォーに用いるベースマシンと略同様の公知の機構を備えるものである。ベースマシン14の基台部23は、好ましくは矩形平面形状を備えている。基台部23には、例えば六面体形状に組み付けられた鋼製枠からなる支持枠体21が、基台部23の上面に取り付けられた好ましくは一対のレール部材40の上に載置されて、レール部材40に沿ってコンクリート壁面20と対向する方向X(図2参照)に進退可能に設置されている。
【0018】
すなわち、支持枠体21は、これの底枠部21bから下方に突出して設けられた複数のスライド脚部41をレール部材40にスライド可能に各々係止して、当該レール部材40によって案内されるようになっている。また支持枠体21は、例えば両側の一対のレール部材40の中間部分において底枠部21bから下方に突出して設けられたジャッキ連結リブ42と連結して、基台部23の後端部に取り付けられた好ましくは油圧ジャッキ44の駆動力によって、コンクリート壁面20に対して例えば400mm程度のストロークで、コンクリート壁面20と対向する方向Xに進退スライド可能に設置されている。
【0019】
支持枠体21が、基台部23に取り付けられたレール部材40に沿って進退可能に設置されていることにより、各据付け位置において、ウォータージェット治具13をコンクリート壁面20に対向させてベースマシン14を据付けた後に、後述するようにウォータージェット治具13を前進させて、カバー体12の先端の周縁ブラシ部材29がコンクリート壁面20に接触するように制御する操作を、精度良く容易に行うことが可能になる。
【0020】
また、本実施形態では、支持枠体21のコンクリート壁面20に面して配置される前方の一対の縦枠部21aには、縦方向スライドガイド部16の縦方向固定ガイド部17の一対の縦枠部材17aが、基台部23に対して垂直に立設して、溶接接合やボルト接合等によって縦枠部21aに沿って各々接合固定されている。また、基台部23には、好ましくは支持枠体21の内部に配設されて、油圧駆動機構、コンプレッサ、バッテリー、制御装置、コントロールボックス等を備える駆動制御ユニット(図示せず)が、支持枠体21と共にコンクリート壁面20と対向する方向Xに進退スライド可能に設置されている。
【0021】
縦方向スライドガイド部16は、支持枠体21の縦枠部21aに沿って固定された一対の縦枠部材17aを含む縦方向固定ガイド部17と、縦長矩形の枠形状の昇降ガイド部18とからなる。縦方向固定ガイド部17は、上述のように支持枠体21の一対の縦枠部21aに支持固定されて、縦枠部材17aが垂直に立設するように取り付けられる。昇降ガイド部18は、例えばチェーンやスプロケットからなる公知の移動駆動機構を介して、縦方向固定ガイド部17に昇降可能に取り付けられる。昇降ガイド部18は、その両側の一対の縦枠部材18aを縦方向固定ガイド部17の両側の一対の縦枠部材17aに沿わせるようにして、当該一対の縦枠部材17aをガイドとして上下にスライド移動することができるようになっている。また、昇降ガイド部18の縦枠部材18aには、横方向スライドガイド部19を上下方向にスライド可能に案内する縦方向案内レール18b(図4、図5参照)が取り付けられている。
【0022】
横方向スライドガイド部19は、図1、図4、及び図5にも示すように、横長矩形の枠形状のフレーム部材からなり、上述のように、ウォータージェット治具13のカバー体12の横巾の略3倍の横方向の長さを有している。横方向スライドガイド部19は、水平又は略水平に延設させた状態で、その中央部分の背面側が、昇降ガイド部18の一対の縦枠部材18aに取り付けられた縦方向案内レール18bに跨って上下にスライド移動可能に接合されることにより、その両側部を昇降ガイド部18の外側に張り出させた状態で、昇降ガイド部18に取り付けられる。横方向スライドガイド部19は、例えばチェーン50aやスプロケット50bからなる公知の移動駆動機構により牽引されて、一対の縦枠部材18aの縦方向案内レール18bにガイド治具19cをガイドさせながら、昇降ガイドフレーム18に対して上下にスライド移動することができるようになっている。また、横方向スライドガイド部19には、これの上部横枠部材19aに支持させて、ウォータージェット治具13の左右方向への移動を案内する横方向案内レール33aが取り付けられており(図4参照)、下部横枠部材19bに支持させて、ウォータージェット治具13を左右方向へ走行させる横方向走行車輪34bの軌道となる横方向走行レール33bが取り付けられている(図5参照)。
【0023】
これらよって、ウォータージェット治具13をコンクリート壁面20と対向配置させたベースマシン14の各据付け位置で、図2及び図3に示すように、縦方向固定ガイド部17に沿った昇降ガイド部18の昇降移動と、昇降ガイド部18に沿った横方向スライドガイド部19の昇降移動とを制御して、コンクリート壁面20の下端部と上端部との間で、ウォータージェット治具13を容易にスライド移動させることが可能になる。また、横方向スライドガイド部19に沿ったウォータージェット治具13の横方向の移動を制御して、少なくともカバー体12の横巾の略3倍の研掃巾で、ウォータージェット治具13を容易にスライド移動させることが可能になる(図6〜図12参照)。
【0024】
ウォータージェット治具13は、本実施形態では、図4及び図5に示すように、回転可能に設けられたウォータージェット噴射ノズル11と、ウォータージェット噴射ノズル11の周囲を囲んで設けられたカバー体12と、カバー体12と一体として設けられたカバー体支持枠24と、横方向スライドガイド部19の横枠部材19aにスライド可能に取り付けられるスライド基部25と、スライド基部25に対してカバー体支持枠24を進退可能に位置決めする位置決め間隔調整機構26とを含んで構成される。
【0025】
ウォータージェット噴射ノズル11は、コンクリート面や舗装面の研掃を行う際に使用される公知のノズル部材である。本実施形態では、ウォータージェット噴射ノズル11は、ウォータージェット治具13に一対設けられた、例えばエアモータや電動モータ(図示せず)により回転する回転シャフト11aの先端から、放射方向に延設して、各回転シャフト11aに複数本設けられている。ウォータージェット噴射ノズル11は、各回転シャフト11aの回転によって回転しながら、高圧水供給装置(図示せず)から高圧ホースを介して圧送される例えば100〜250MPa程度に加圧された高圧水を、先端の噴射口からコンクリート壁面20に向けて噴射することで、コンクリート壁面20を研掃する。また回転シャフト11aは、カバー体12の開口面に対して進退可能に構成されており、これによって、ウォータージェット噴射ノズル11とコンクリート壁面20との間の間隔を適宜調整できるようになっている。
【0026】
カバー体12は、本実施形態では、例えばステンレス板によって形成された、正面側が開口面となった扁平な中空六面体形状の函体であり、例えば縦巾470mm程度、横巾720mm程度の大きさの横長矩形の正面形状を有すると共に、例えば100mm程度の奥行きを有している。カバー体12の内側には、上述のように、一対の回転シャフト11aに回転可能に支持されて、例えば4本のウォータージェット噴射ノズル11が、好ましくはその長さを異ならせた状態で、周方向に90°の等角度ピッチで回転シャフト11aを中心とする放射方向に延設して設けられている。また、カバー体12は、カバー体支持枠24に一体として取り付けられており、位置決め間隔調整機構26を構成するエアシリンダー27によって、カバー体支持枠24と共に、コンクリート壁面10に対して例えば位置決めされた位置から前後方向に75mmづつ、合計150mm程度のストロークで弾性的に進退移動することができるようになっている。カバー体12の正面側の開口面の周縁部には、周面板12aの先端から前方に突出して、周縁ブラシ部材29が取り付けられている。
【0027】
カバー体支持枠24は、山形鋼や角形パイプ部材を組み付けて、略六面体の立体骨組形状に形成される枠体である。カバー体支持枠24には、コンクリート壁面10と対向して配置される部分に、内側にウォータージェット噴射ノズル11が取り付けられたカバー体12が、これの開口面を前方に向けて配置した状態で、前部枠24cに嵌め込むようにして接合固定される。これによって、カバー体12は、カバー体支持枠24によって強固に支持されて、これと一体となって上下左右及び前後に移動することになる。
【0028】
また、本実施形態では、カバー体支持枠24の上部及び下部には、これの上部枠24a及び下部枠24bから上方又は下方に突出して接合固定された車輪支持ブラケット30a、30bに支持されて、上部車輪31a及び下部車輪31bが、カバー体支持枠24の両側部に配置されると共に、カバー体12を挟んだ上方及び下方に配置されて、各々一対設けられている。上部車輪31a及び下部車輪31bは、コンクリート壁面20への近接方向先端が、コンクリート壁面20と対向するカバー体12の開口面の周縁部に配設された周縁ブラシ部材29の先端と、面一又は略面一に配置されるように取り付けられる。上部車輪31a及び下部車輪31bは、回転可能なキャスター機構を備えており、ウォータージェット治具13の前後左右の移動に追随して車輪31a、31bの方向を変えることで、ウォータージェット治具13をコンクリート壁面20に沿ってさらに安定した状態でスムーズにスライド移動させることができるようになっている。
【0029】
さらに、本実施形態では、カバー体支持枠24の後部枠24dには、後述する位置決め間隔調整機構26を構成するスライドガイド28のガイドスリーブ28aが、後方に突出して取り付けられている。またカバー体支持枠24の前部枠24cには、後述する位置決め間隔調整機構26を構成するエアシリンダー27の先端部が接合されることになる。
【0030】
横方向スライドガイド部19の横枠部材19aに左右方向にスライド可能に取り付けられるスライド基部25は、本実施形態では、山形鋼や角形パイプ部材を組み付けて、略矩形の正面形状を備えるように形成される枠体である。スライド基部25の前面側の所定の位置には、支持プレート32a、32bが横方向に横断して取り付けられている。これらの支持プレート32a、32bに基端部が接合されて、位置決め間隔調整機構26を構成するスライドガイド28のガイドロッド28bや、エアシリンダー27が、スライド基部25とカバー体支持枠24とを、位置決めされた位置から所定のストロークで弾性的に進退可能に連結接続した状態で取り付けられる。
【0031】
また、スライド基部25の上部枠25aの背面側の所定の位置には、横方向スライドガイド部19の上部横枠部材19aに支持された横方向案内レール33aにスライド移動可能に嵌合装着される、横方向案内金物34aが取り付けられており、またスライド基部25の下部枠25bの背面側の所定の位置には、横方向スライドガイド部19の下部横枠部材19bに支持された横方向走行レール33bに沿って走行移動する横方向走行車輪34bが、取付けブラケット34cを介して取り付けられている。これらによって、ウォータージェット治具13は、防水ギアモーター35からの駆動力により、ラックギア35aを介して、スライド基部25と共に、横方向スライドガイド部19に沿って左右方向に、安定した状態でスムーズにスライド移動できるようになっている。
【0032】
スライド基部25に対してカバー体支持枠24を、位置決めされた位置から所定のストロークで弾性的に進退可能に連結接続する位置決め間隔調整機構26は、本実施形態では、スライドガイド28とエアシリンダー27とによって構成される。またスライドガイド28は、ガイドスリーブ28aと、ガイドスリーブ28aに摺動可能に挿通されるガイドロッド28bとからなる。
【0033】
ガイドスリーブ28aは、両端が開口する金属製の円筒形状のスリーブ部材であり、その接合基端部に外側に張り出して設けられた接合フランジ28cを介して、カバー体支持枠24の後部枠24dの背面側に強固に接合固定される。ガイドスリーブ28aは、矩形形状の後部枠24dの4隅部分に配置されて4箇所に設けられると共に、カバー体支持枠24の後部枠24dから後方に突出して各々取り付けられる。
【0034】
ガイドロッド28bは、ガイドスリーブ28aの内径と略同じ外径を備える金属製の円柱形状のロッド部材であり、ガイドスリーブ28aと対応する位置として、スライド基部25の4隅部分に配置されて4箇所に設けられる。ガイドロッド28bは、例えばガイドスリーブ28aの長さの4倍程度の長さを有しており、スライド基部25に取り付けられた支持プレート32aにその基端部を一体として接合固定して、スライド基部25から片持ち梁状に前方に突出した状態で各々取り付けられる。4本のガイドロッド28bは、4箇所のガイドスリーブ28aに各々摺動可能に挿通されることで、カバー体支持枠24をスライド基部25から安定した状態で進退可能に支持する。また、各ガイドロッド28bの先端には、ストッパーフランジ28dが、外周部分を外側に張り出した状態で接合固定されており、スライド基部25に対してカバー体支持枠24が前進した際に、カバー体支持枠24が過度に前進してガイドロッド28bから脱落するのを防止できるようになっている。
【0035】
エアシリンダー27は、例えば圧縮空気の作用によってピストンロッド27aを伸縮可能な公知のシリンダーである。エアシリンダー27は、その基端部をスライド基部25に取り付けられた支持プレート32bにピン結合により接合固定すると共に、その先端部をカバー体支持枠24の前部枠24cの背面側にピン結合により接合固定して、スライドガイド28の内側に配置されて一対取り付けられる。エアシリンダー27が設けられていることで、スライドガイド28によってガイドさせつつ、カバー体12を装着したカバー体支持枠24を、コンクリート壁面20に対して位置決めされた位置から弾性的に前後に進退させることができるようになっている。またこれによって、コンクリート壁面20に傾斜や凹凸がある場合でも、好ましくはカバー体12の先端の周縁ブラシ部材29をコンクリート壁面20に接触させた状態を保持しつつ、ウォータージェット噴射ノズル11をカバー体12の内部に備えるウォータージェット治具13を、コンクリート壁面20の傾斜や凹凸に追随させながら、コンクリート壁面20に沿って上下左右にスライド移動させることができるようになっている。
【0036】
ここで、本実施形態では、位置決め間隔調整機構26にエアシリンダー27を用いていることで、ウォータージェット治具13のカバー体12を、遊びを持った状態でコンクリート壁面20に押し付けて容易に位置決め配置することが可能になる。これによって、コンクリート壁面20の傾斜や凹凸を効果的に吸収しながら、ウォータージェット治具13を上下左右にスライド移動させつつウォータージェットによるコンクリート壁面20の研掃作業を行うことが可能になる。また、カバー体12の周面板12aの先端に周縁ブラシ部材29が設けられていることで、コンクリート壁面20の傾斜や凹凸をさらに効果的に吸収しながら、ウォータージェット治具13をコンクリート壁面20に沿って上下左右にスライド移動させることが可能になる。
【0037】
そして、上述の構成を備える本実施形態の表面研掃処理装着10によれば、例えば以下のような工程に従って、ウォータージェット噴射ノズル11から高圧水をコンクリート壁面20に向けて噴射させながら、ウォータージェット治具13を一定又は略一定の速度で上下左右に移動させて、カバー体12の横巾の略3倍の研掃巾で、ベースマシン14の各据付け位置においてコンクリート壁面20の下端部から上端部に至る領域の研掃作業を行なうことができる。
【0038】
すなわち、例えば図1に示すように、ベースマシン14を移動させて、ウォータージェット治具13によってコンクリート壁面20の研掃を行う所定の位置に据え付けた後に、ウォータージェット治具13を、横方向スライドガイド部19の一方の側部として、コンクリート壁面20側から見た正面図である図1(b)における左側の側部に移動させると共に、縦方向スライドガイド部16の昇降ガイド部18を縦方向固定ガイド部17に沿って最下部まで移動させ、且つ横方向スライドガイド部19を昇降ガイド部18の最下部まで移動させて、ウォータージェット治具13を最下部に配置させた状態とする。また、ベースマシン14の基台部23の上に設置した支持枠体21をレール部材40に沿って前方にスライド移動させ、カバー体支持枠24を、ウォータージェット治具13のカバー体12の先端の周縁ブラシ部材29がコンクリート壁面20に接触するまで前進させて、位置決めする。この状態では、位置決め間隔調整機構26のエアシリンダー27は、ストロークの中立の位置に来るように設定されていて、例えば前後方向に75mmづつ、弾性的に進退伸縮できるようになっている。
【0039】
しかる後に、支持枠体21の内部に配設された高圧水供給装置を駆動して加圧された高圧水をウォータージェット治具13のウォータージェット噴射ノズル11に供給し、ウォータージェット噴射ノズル11を回転させながら先端の噴射口からコンクリート壁面20に向けて高圧水を噴射することで、カバー体12の開口面と対向する部分のコンクリート壁面20の研掃を開始する。また、これと略同時に、図6(a)、(b)及び図7(a)、(b)に示すように、ウォータージェット治具13を横方向スライドガイド部19の左側の側部に移動させたままの状態で、ウォータージェット治具13を垂直又は略垂直なコンクリート壁面20に沿って下端部から上端部に移動させる。
【0040】
ウォータージェット治具13をコンクリート壁面20に沿って下端部から上端部に移動させるには、例えば昇降ガイド部18における下端部から上端部に横方向スライドガイド部19を移動させた後に(図6(a)、(b)参照)、昇降ガイド部18を縦方向固定ガイド部17に沿って上方にスライド移動させる(図7(a)、(b)参照)方法を採用することができる。これによって、昇降ガイド部18が横方向スライドガイド部19の上方に相当の突出長さで突き出たままの状態でウォータージェット治具13が上昇するのを回避して、ウォータージェット治具13よりも上方に突出する部分の昇降ガイド部18によって、貯水槽の天井面等を傷付けることになるのを効果的に回避することが可能になる。
【0041】
また、ウォータージェット治具13のコンクリート壁面20に沿った下端部から上端部への移動は、例えば昇降ガイド部18における下端部から上端部への横方向スライドガイド部19の移動と、昇降ガイド部18の縦方向固定ガイド部17に沿った上方へのスライド移動とを、同時に行わせる方法を採用することもできる。
【0042】
これらの方法によるウォータージェット治具13の移動は、例えばインバータ制御等の公知の制御方法を採用して、昇降ガイド部18に対する横方向スライドガイド部19の移動や、縦方向固定ガイド部17に対する昇降ガイド部18の移動を制御することで、コンクリート壁面20に沿って一定又は略一定の速度で容易に行わせることができる。
【0043】
ウォータージェット治具13をコンクリート壁面10の上端部に移動させたら、図8(a)、(b)に示すように、引き続きウォータージェット噴射ノズル11からコンクリート壁面20に向けて高圧水を噴射させながら、ウォータージェット治具13を横方向スライドガイド部19に沿ってこれの中央部分に移動させる。このようなウォータージェット治具13の防水ギアモーター35やラックギア35a(図4参照)による横方向(左右方向)への移動は、例えばインバータ制御等の公知の制御方法を採用して、上述の昇降ガイド部18に対する横方向スライドガイド部19の移動や、縦方向固定ガイド部17に対する昇降ガイド部18の移動と共に制御することで、上下方向の移動速度と同様の一定又は略一定の速度で容易に行わせることができる。
【0044】
ウォータージェット治具13を横方向スライドガイド部19に沿ってこれの中央部分に移動させたら、図9(a)、(b)に示すように、引き続きウォータージェット噴射ノズル11からコンクリート壁面20に向けて高圧水を噴射させながら、ウォータージェット治具13を垂直又は略垂直なコンクリート壁面20に沿って上端部から下端部に移動させる。
【0045】
このようなウォータージェット治具13のコンクリート壁面20に沿った上端部から下端部への移動は、例えば昇降ガイド部18を縦方向固定ガイド部17に沿って下方にスライド移動させた後に、昇降ガイド部18の上端部から下端部に横方向スライドガイド部19を移動させる方法を採用して行わせることができる。また、例えば昇降ガイド部18における上端部から下端部への横方向スライドガイド部19の移動と、昇降ガイド部18の縦方向固定ガイド部17に沿った下方へのスライド移動とを、同時に行わせる方法を採用することもできる。これらの方法によるウォータージェット治具13の移動は、例えばインバータ制御等の公知の制御方法を採用して、一定又は略一定の速度で容易に行わせることができる。
【0046】
横方向スライドガイド部19の中央部分に配置されたウォータージェット治具13を、コンクリート壁面20に沿った下端部へ移動させたら、図10(a)、(b)に示すように、引き続きウォータージェット噴射ノズル11からコンクリート壁面20に向けて高圧水を噴射させながら、ウォータージェット治具13を、横方向スライドガイド部19に沿って、これの他方の側部である図10(b)における右側の側部に移動させる。このようなウォータージェット治具13の横方向(左右方向)への移動は、上述と同様に、例えばインバータ制御等の公知の制御方法を採用して、上述の昇降ガイド部18に対する横方向スライドガイド部19の移動や、縦方向固定ガイド部17に対する昇降ガイド部18の移動と共に制御することで、上下方向の移動速度と同様の一定又は略一定の速度で容易に行わせることができる。
【0047】
ウォータージェット治具13を横方向スライドガイド部19に沿ってこれの右側の側部に移動させたら、図11(a)、(b)及び図12(a)、(b)に示すように、引き続きウォータージェット噴射ノズル11からコンクリート壁面20に向けて高圧水を噴射させながら、ウォータージェット治具13を垂直又は略垂直なコンクリート壁面20に沿って下端部から上端部に移動させる。
【0048】
このようなウォータージェット治具13のコンクリート壁面20に沿った下端部から上端部への移動は、上述と同様に、例えば昇降ガイド部18の下端部から上端部に横方向スライドガイド部19を移動させた後に、昇降ガイド部18を縦方向固定ガイド部17に沿って上方にスライド移動させる方法を採用して行わせることができる。また、例えば昇降ガイド部18における下端部から上端部への横方向スライドガイド部19の移動と、昇降ガイド部18の縦方向固定ガイド部17に沿った上方へのスライド移動とを、同時に行わせる方法を採用することもできる。これらの方法によるウォータージェット治具13の移動は、例えばインバータ制御等の公知の制御方法を採用して、一定又は略一定の速度で容易に行わせることができる。
【0049】
ウォータージェット治具13がコンクリート壁面20に沿って下端部から上端部に移動して、図12(a)、(b)に示すように、右側上端部に配置されるまで、ウォータージェットによるコンクリート壁面20の研掃を行ったら、高圧水供給装置の駆動を停止して、ウォータージェット噴射ノズル11から高圧水が噴射されないようにする。しかる後に、例えばウォータージェット治具13の横方向スライドガイド部19に沿った左側への移動と、横方向スライドガイド部19の昇降ガイド部18に沿った下方への移動と、昇降ガイド部18の縦方向固定ガイド部17に沿った下方へのスライド移動とを同時に制御して、ウォータージェット治具13を対角方向に斜め下方に移動させて、図1(b)に示すウォータージェット治具13が左側下端部に配置された元の状態に復帰させる。
【0050】
ウォータージェット治具13を元の位置に復帰させたら、油圧ジャッキ44を駆動して支持枠体21をレール部材40に沿って後方にスライド移動させた後に、ベースマシン14を駆動して表面研掃処理装着10を移動し、例えば隣接する次の施工対象領域のコンクリート壁面20に対向するように表面研掃処理装着10を据付け直す。また油圧ジャッキ44の駆動して支持枠体21をレール部材40に沿って前方にスライド移動させて、ウォータージェット治具13のカバー体12を位置決めすることで、上述と同様の工程でコンクリート壁面20の研掃を行うことが可能になる。
【0051】
すなわち、本実施形態のコンクリート壁面の表面研掃処理装置10によれば、ウォータージェット噴射ノズル11をコンクリート壁面20と対向配置させたベースマシン14の各据付け位置で、縦方向固定ガイド部17に沿った昇降ガイド部18の昇降移動と、昇降ガイド部18に沿った横方向スライドガイド部19の昇降移動と、横方向スライドガイド部19に沿ったウォータージェット治具13の横方向の移動とを制御して、ウォータージェット噴射ノズル11から高圧水をコンクリート壁面20に向けて噴射させながら、ウォータージェット治具13を一定又は略一定の速度で上下左右に移動させて、少なくともカバー体12の横巾の略3倍の研掃巾で、ベースマシン14の各据付け位置においてコンクリート壁面20の下端部から上端部に至る領域の研掃作業を容易に行なうことができるようになっている。これによって、ウォータージェット噴射ノズル11が設けられたウォータージェット治具13は、コンクリ−ト壁面20に沿って相当の広さの領域をカバーして一定又は略一定の速度で上下左右に移動するように容易に制御することが可能になるので、水道水や雨水や排水等を貯留する貯水槽における、広大な面積の垂直又は略垂直に立設するコンクリート壁面20に対して、均質又は略均質な研掃状態となるように効率良く研掃作業を行ってゆくことが可能になる。
【0052】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、横方向スライドガイド部は、少なくともカバー体の横巾の略3倍の長さとして、カバー体の横巾の4倍以上の長さを有していても良い。これによって、ベースマシンの各据付け位置において、カバー体の横巾の4倍以上の研掃巾で、コンクリート壁面の研掃を行うこともできる。また、上記実施形態では、ベースマシンの各据付け位置において、コンクリート壁面側から見た正面図でウォータージェット治具を左側最下部に配置した状態から研掃を開始して、右側最上部で研掃を終了するように、ウォータージェット治具を一定又は略一定の速度で上下左右に移動させているが、本発明の表面研掃処理装置を用いた表面処理方法は、これに限定されることなく、例えば右側最下部から研掃を開始して左側最上部で研掃を終了させる方法の他、ウォータージェット治具を一定又は略一定の速度で上下左右に移動させることで均質又は略均質な所望の研掃状態が得られるような経路を適宜選択して、ウォータージェット治具を上下左右に移動させながらコンクリート壁面の研掃行うことができる。
【符号の説明】
【0053】
10 表面研掃処理装着
11 ウォータージェット噴射ノズル
12 カバー体
13 ウォータージェット治具
14 ベースマシン
16 縦方向スライドガイド部
17 縦方向固定ガイド部
18 昇降ガイド部
19 横方向スライドガイド部
20 コンクリート壁面
21 支持枠体
24 カバー体支持枠
25 スライド基部
26 位置決め間隔調整機構
27 エアシリンダー
28 スライドガイド
28a ガイドスリーブ
28b ガイドロッド
29 周縁ブラシ部材
40 レール部材
41 スライド脚部
44 油圧ジャッキ
X コンクリート壁面と対向する方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なウォータージェット噴射ノズルがカバー体の内側に設けられたウォータージェット治具を壁面に沿ってスライド移動させて、貯水槽のコンクリート壁面の研掃を行なうウォータージェットによるコンクリート壁面の表面研掃処理装置であって、
ベースマシンと、縦方向スライドガイド部と、横方向スライドガイド部と、ウォータージェット治具とを含んで構成されており、
前記ベースマシンは、支持架台が設置される基台部と、基台部を移動させる走行部とからなり、
前記縦方向スライドガイド部は、前記支持架台のコンクリート壁面と対向させる部分に固定される縦方向固定ガイド部と、該縦方向固定ガイド部に沿って縦方向に昇降可能に取り付けられる昇降ガイド部とからなり、
前記横方向スライドガイド部は、前記ウォータージェット治具のカバー体の横巾の少なくとも略3倍の横方向の長さを有すると共に、前記昇降ガイド部に沿って縦方向に昇降可能に取り付けられており、
前記ウォータージェット治具は、前記カバー体を保持するカバー体保持部材が前記横方向スライドガイド部に沿ってスライドすることにより、前記横方向スライドガイド部に沿って横方向に移動可能に取り付けられており、
前記ウォータージェット噴射ノズルをコンクリート壁面と対向配置させた前記ベースマシンの各据付け位置で、前記縦方向固定ガイド部に沿った前記昇降ガイド部の昇降移動と、前記昇降ガイド部に沿った前記横方向スライドガイド部の昇降移動と、前記横方向スライドガイド部に沿った前記ウォータージェット治具の横方向の移動とを制御して、前記ウォータージェット噴射ノズルから高圧水をコンクリート壁面に向けて噴射させながら、前記ウォータージェット治具を一定又は略一定の速度で上下左右に移動させて、少なくとも前記カバー体の横巾の略3倍の研掃巾で、前記ベースマシンの各据付け位置において前記コンクリート壁面の下端部から上端部に至る領域の研掃作業を行なうコンクリート壁面の表面研掃処理装置。
【請求項2】
前記支持架台は、前記ベースマシンの前記基台部に取り付けられたレール部材の上に載置されて、該レール部材に沿ってコンクリート壁面と対向する方向に進退可能に設置されている請求項1記載のコンクリート壁面の表面研掃処理装置。
【請求項3】
前記カバー体保持部材は、前記カバー体を一体として保持するカバー体保持枠と、前記横方向スライドガイド部にスライド可能に取り付けられるスライド基部と、該スライド基部に対して前記カバー体支持枠を進退可能に位置決めする位置決め間隔調整機構とを含んで構成される請求項1又は2に記載のコンクリート壁面の表面研掃処理装置。
【請求項4】
前記位置決め間隔調整機構は、前記カバー体保持枠と、前記スライド基部との間に介在して取り付けられてこれらを進退可能に連結する、複数のスライドガイドと複数のエアシリンダーとによって構成される請求項3記載のコンクリート壁面の表面研掃処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−24695(P2012−24695A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165671(P2010−165671)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】