説明

コンクリート構造物の蓄熱システム

【課題】高架橋等のコンクリート構造物に太陽熱や地熱等の自然エネルギーを蓄積する蓄熱体を備え、この蓄熱体からのエネルギーを路面上に於ける積雪を融雪すること又は緊急時の電力並びに厳冬期に於ける暖房等の熱源へ供給可能とする技術を提供する。
【解決手段】梁16には、第1蓄熱部材17を所定部位に埋設し又は固定している。該第1蓄熱部材17の内部又は表面には往復路(閉ループ)を形成した第1配管17Aと、該第1配管17Aから発散された熱エネルギーを吸収しかつ蓄熱すると共に往復路(閉ループ)を形成した第2配管17Bとを有している。この第2配管17Bの出力側には第4配管17Dを接続し必要に応じて熱伝導媒体を該第4配管17Dを介して負荷24にポンプ手段23で圧送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高架橋等のコンクリート構造物に太陽熱や地熱等の自然エネルギーを蓄積する蓄熱体を備え、この蓄熱体からのエネルギーを路面上に於ける積雪を融雪すること又は緊急時の電力並びに厳冬期に於ける暖房等の熱源へ供給可能とするコンクリート構造物の蓄熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種、従来の技術に於ける第1の例として風力利用融雪システムであって、図3に示すような特開2003−35250号公開特許公報に開示された技術がある。これについて説明すれば、このシステムにおいて、風力発電装置Aは、ダリウス型の風車1と同期発電機(交流発電機)2とによって構成されている。風車1が風Wによって回転すると、同期発電機2の回転軸が回転され、この回転によって同期発電機2において交流電力が発生する。この交流電力は電力供給路3によって電気ヒーターに供給される。電力供給路3には、変圧器(電圧調整器)3aが設けられており、供給電圧の調節が行える。電気ヒーター4は電力を得て発熱するものであり、例えば、カーボン(炭素)を含有する面状発熱体を利用して構成する。また、面状発熱体を屋外に設置するので、樹脂等から成る被覆材にて覆い、防水加工を施しておく。この電気ヒーター4上には、これに接するようにして潜熱蓄熱材5が設けられている。潜熱蓄熱材5は、雪Sが融ける温度において潜熱温度が設定されており、図3に示すものは約5℃としている。すなわち、約5℃の温度において与えられた熱を状態変化に費やすことで蓄熱する性質を有する潜熱蓄熱材5を用いている。この潜熱蓄熱材5としては、無機水和塩を樹脂袋(容器)内に封止して成るものを用いる。そして、潜熱蓄熱材5上には、これを覆うための覆い部材6が設けられる構成である。
【0003】
また、この種、従来の技術に於ける第2の例として蓄熱材を格納した舗装道路であって、図4に示すような特開平7−243202号公開特許公報に開示された技術がある。これについて説明すれば、図4は、蓄熱材Bを格納した舗装道路の断面図を示している。図4に於いて、表層7、基層8、路盤9、路床10をそれぞれ示しており、上記蓄熱材Bを格納した格納容器11は基層8に埋設されている。図4はアスファルト舗装道路の場合であるが、コンクリート舗装道路の場合には上記表層7と基層8は同一層を形成することに成る。そして、例えば表層7の厚さは5cm、基層8の厚さも5cmと成っている。勿論、これら各層7、8の厚さを限定することはないが、傷んだり、老化したりした路面を補修する際に削り取られる表層7は充分な厚さが必要とされ、上記格納容器11、11…は補修の際に障害にならない深さに設けられた基層8内に埋設されている。したがって、コンクリート舗装道路の場合には表層7の上面から数cmないし7cm〜8cmの深さに設けられる。そして、上記構成の作用としては格納容器11に格納されている蓄熱材Bが液体の状態にある場合、該蓄熱材Bが冷却されるならば凝固点以下になり、その後蓄熱材Bは液体から固体へ相変化する。該蓄熱材Bによっては過冷却する場合もあるが、液体から固体に相変化する場合には凝固点温度を維持しながら凝固を続ける。したがって、この際に蓄熱材Bは潜熱を放出し、路面Cに熱エネルギーを与え、その結果、路面Cの凍結を防止する。この第2の例では、路面Cが凍結する温度よりも僅かに高い温度で相変化する蓄熱材Bを使用する。場合によっては1℃〜8℃で相変化する蓄熱材Bを使用してもある程度の効果は得られる。上記蓄熱材Bが全て固体に相変化するまでは熱エネルギーを放出し、路面へ熱を与えることになる訳で、一旦固体に相変化した蓄熱材Bは逆に路面から熱エネルギーを与えられて再び液体に戻る。これは、日中気温が上昇して路面温度が高くなり、該路面Cから蓄熱材Bへ熱が伝わって、固体から液体へ相変化する。液体となって潜熱を得た蓄熱材Bは、明け方の気温低下時に再び液体から固体へ相変化して路面Cに熱を与える。この第2の例では蓄熱材Bの相変化を利用して路面の凍結を防止する技術である。
【特許文献1】特開2003−35250号公開特許公報
【特許文献2】特開平7−243202号公開特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術は、前述した構成、作用であるので次の課題が存在した。すなわち、従来の技術に於ける第1の例としての風力利用融雪システムによれば、採取したエネルギーを直接的に融雪に利用する技術であって、風Wのエネルギーが風車1を回転し、この回転力を同期発電機2で電気信号に変換し、この電気信号を直接に電気ヒータ4に導入し路面下の該電気ヒータ4を発熱させ、潜熱蓄熱材5を介して、路面上の雪Sを融雪する技術であり、融雪機能を路面の部位毎に上記電気ヒータ4や潜熱蓄熱材5を備える必要があり、融雪装置や融雪システムが複雑かつ大規模化して高価となり、また融雪効果は直接生み出されるエネルギーの大、小によって大きく影響を受け、融雪効率が悪く、実用に適さないという問題点があった。
また、従来の技術に於ける第2例としての蓄熱材を格納した舗装道路によれば、蓄熱材Bが数℃前・後にて液体から個体に相変化する性質を有し、この相変化する際に生じる凝固熱を利用した凍結防止技術であって、該蓄熱材Bから熱エネルギーを採取しかつ導出し、これを利用する技術ではなく、積極的に路面上に於ける融雪技術に適しないという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るコンクリート構造物の蓄熱システムは、風力、太陽熱、地熱、微生物による有機物の分解熱、振動力等の運動エネルギー等の自然エネルギーを、熱もしくは電気エネルギーとしてコンクリート構造物の内部に設けられた蓄熱体又はコンデンサー等に積極的に蓄積する蓄熱システムであって、コンクリート構造物の蓄熱体等に蓄えられた熱又は電気エネルギーは例えば融雪システムに利用し、路面上の積雪や凍結の防止に利用し、コンクリート構造物に蓄熱体等を備えることでシステム全体の省スペース化が図れ、都市部や設置スペースを確保できないような箇所への適用が可能となり、施工費用の低減が可能となり、加えて、地中熱利用などの初期費用が高くなるようなシステムに対して、蓄熱された熱又は電気エネルギーを補助的に利用することで当該システムを小規模化し、初期費用を縮少した技術であって、次の構成・手段から成立する。
すなわち、請求項1記載の発明によれば、コンクリート構造物の所定部位に埋設し又は固定されかつ地盤からの熱エネルギーを採取・蓄熱する蓄熱部材であって、該蓄熱部材が閉ループを構成した第1、第2配管からの熱エネルギーを吸収及び蓄えると共に該第1配管に隣接・配置した第2配管を有し、該第1、第2配管内に充填・封入した熱伝導媒体を負荷に圧送・流送することを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明によれば、コンクリート構造物の所定部位に埋設し又は固定されかつ地盤又は太陽光からの地中熱エネルギー又は太陽熱エネルギーを採取・蓄熱する第1及び第2蓄熱部材であって、一方では前記第1蓄熱部材が閉ループを構成した第1配管及び該第1配管から熱エネルギーを吸収及び蓄えると共に該第1配管に隣接・配置した第2配管を有し、該第1、第2配管内に充填・封入した熱伝導媒体を負荷に圧送し、並びに他方では前記第2蓄熱部材が前記コンクリート構造物に設置した太陽熱吸収板から太陽熱エネルギーを伝導・蓄熱する閉ループを構成した第1、第2ヒートパイプから太陽熱エネルギーを吸収すると共に第1ヒートパイプに隣接・配置した第2ヒートパイプを有し、該第1、第2ヒートパイプ内に充填・封入した熱伝導媒体を前記負荷に流送することを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明によれば、コンクリート構造物の所定部位に埋設し又は固定されかつ地盤からの地中熱を採取・蓄熱する蓄熱部材であって、該蓄熱部材が閉ループを構成した第1、第2配管からの熱エネルギーを吸収及び蓄えると共に該第1配管に隣接・配置した第2配管を有し、該第1、第2配管内に充填・封入した熱伝導媒体を負荷に圧送・流送し並びに前記地盤に前記地中熱を温水に熱変換させる熱交換杭を埋設し、前記負荷に該温水を流送することを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明によれば、請求項2記載の発明に於いて、前記第2蓄熱部材は太陽熱エネルギーを電気エネルギーに変換しかつ蓄電するコンデンサ手段で構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るコンクリート構造物の蓄熱システムは、上述した構成、作用を有するので次の効果がある。
すなわち、請求項1ないし4記載の本発明によれば、コンクリート構造物に蓄熱体等を設置することで、エネルギーを融雪システム以外に2次的に利用することが可能となり、その用途としては、緊急時の電力並びに厳冬期における暖房などの熱源への供給が可能となり、蓄熱体等は熱エネルギーの場合、潜熱又は顕熱であり、該蓄熱体等の設置対象としては、コンクリート構造物の杭、地中梁、均しコンクリート又は柱などのコンクリート構造物、貯水槽、浄化槽等が好適であり、エネルギー貯蓄機能を持つ複合構造物内にエネルギーを平素より蓄えて置くことで、融雪システムのほかに電源及び熱源として多目的な用途例えば、照明、暖房などへのエネルギーの活用が可能となり、コンクリート構造物と蓄熱体等を一体とすることで、システムの省スペース化と施工費の削減が可能となり、併せて初期費用が大きいような従来の掘削杭利用などの融雪システムと併用することで、従来の融雪システムのエネルギー負担分が軽減され、当該システムの初期費用が削減されるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係るコンクリート構造物の蓄熱システムに於ける実施の形態について添付図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明に係るコンクリート構造物の蓄熱システムに於ける実施の形態の一例を示す垂直断面図である。
図2は、図1に示す本発明に係るコンクリート構造物の蓄熱システムの熱又は電気エネルギーの伝導経路を示すシステム構成図である。
【0011】
12は高架橋、道路橋又はコンクリート床版等のコンクリート構造物である。該コンクリート構造物12は例えば高架橋の場合には、図1に示すようにコンクリート床版13と、該コンクリート床版13の下面に固定された複数本の橋脚又は柱14と、該橋脚又は柱14を固定すると共にその下面に杭15を固定してあって、地盤Rに埋設された梁16とで構成している。該梁16はフーチングで構成してもよい。
【0012】
上記梁16には、第1蓄熱部材17を所定部位に埋設し又は固定している。該第1蓄熱部材17は全体が例えば、箱状ケースや矩形板状部材等で構成され、その材料は電気エネルギー又は熱エネルギーが伝導する金属製材料で作成されている。該第1蓄熱部材17の内部又は表面には往復路(閉ループ)を形成した第1配管17Aと、該第1配管17Aから発散された熱エネルギーを吸収しかつ蓄熱すると共に往復路(閉ループ)を形成した第2配管17Bとを有している。この第2配管17Bの出力側には第4配管17Dを接続し必要に応じて熱伝導媒体を該第4配管17Dを介して負荷24にポンプ手段23で圧送する。また、第2配管17Bは第1配管17Aに隣接配置している。
【0013】
上記第1及び第2配管17A及び17Bはパイプで構成され、地盤Rより熱エネルギーを採取する機能を有しており、金属製鋼管、ポリエチレン、塩化ビニール等で構成され、その内部に熱伝導液体又は気体若しくは循環水等熱伝導媒体(図示せず)が充填・封入されている。該熱伝導媒体は、顕熱の場合には水等の熱容量が大きいもの、潜熱の場合にはパラフィン、硫酸ナトリウム、その他水溶液が採用される。この熱伝導媒体が上記第1及び第2配管17A及び17B内を移動することにより熱エネルギーの受け渡しが行なわれる。
尚、第1及び第2配管17A及び17Bに於ける熱伝導媒体としての循環水の循環作用は、例えばポンプや送風機を利用して行なう。
【0014】
上記第1配管17Aは上記杭15の表面又は内部に引き廻された第3配管17Cを接続し、閉ループを構成し、その一部にポンプ手段18を介設し、このポンプ手段18により該杭15からの熱エネルギーを吸収した該第3配管17C内の熱伝導媒体を上記第1配管17A内へ圧送する。
尚、上記第1配管17Aと上記第3配管17Cは図1に示すように一体形成してもよく、該第1配管17Aを杭15の部分まで伸張させ該第1配管17Aで第3配管17Cも代用することも可能である。
上記第2配管17B、上記第4配管17D及び負荷24への配管経路は通常時に於ける熱利用経路を意味する。
【0015】
19は太陽熱吸収板であって、例えば、上記コンクリート構造物12のコンクリート床版13の側面13aに固定されている。20は入力側ヒートパイプであって、その一端は上記太陽熱吸収板19に、その他端は第2蓄熱部材21に接続されている。ここで、該第2蓄熱部材21は、上記第1蓄熱部材17と同一の形状・構成であり、コンクリート構造物12の上記橋脚又は柱14の所定部位に埋設又は固定されている。該第2蓄熱部材21の内部又は表面には第1ヒートパイプ21Aと、この第1ヒートパイプ21Aから発散する熱エネルギーを吸収しかつ蓄熱すると共に第2ヒートパイプ21Bとを有している。尚、上記太陽熱吸収板19はコンクリート床版13以外の部位に固定してもよい。
【0016】
上記第1ヒートパイプ21A及び上記第2ヒートパイプ21Bは太陽光Lによる太陽熱エネルギーを吸収した上記太陽熱吸収板19から該太陽熱エネルギーを入力側ヒートパイプ20で伝導して蓄熱する働きをする。該第2ヒートパイプ21Bは蓄熱した太陽熱エネルギーを出力側ヒートパイプ22に流送又は伝導する。該出力側ヒートパイプ22は、必要に応じて負荷24に出力側ヒートパイプ22内の熱伝導媒体を流送する。
ここで、上記第1及び第2ヒートパイプ21A、21Bは例えば金属管の中にウイックという特殊繊維製の中空の筒が内装され、常温付近の温度で液化又は気化する熱伝導媒体が充填・封入されているものであって、該第1及び第2ヒートパイプ21A、21Bを傾けて設置し、下部を加熱すると該熱伝導体は蒸発し該第1及び第2ヒートパイプ21A、21Bの上部に移動する。そして、上記第1及び第2ヒートパイプ21A、21Bの上部を冷却すると、気体状の熱伝導媒体は凝縮し液化して上記ウイック中を流れて下部に移行する機能を備えている。
尚、非常時や必要時に応じて上記融雪機構付き舗装道路以外の負荷24例えば屋根や床等にも熱伝導媒体を伝導させることもできる。また、前記した第1蓄熱部材17の内部又は表面には往復路(閉ループ)を形成した第1配管17Aと、該第1配管17Aから発散された熱エネルギーを吸収しかつ蓄熱すると共に往復路(閉ループ)を形成した第2配管17Bとを有し、この第2配管17Bの出力側には第4配管17Dを接続し必要に応じて熱伝導媒体を該第4配管17Dを介して負荷24にポンプ手段23で圧送する構成としてもよい。
【0017】
上記負荷24は例えば図1に示すものは、地盤Rの上面R1に設置した融雪機構付き舗装道路であり、上記第4配管17D及び/又は上記出力側ヒートパイプ22から圧送し又は流送された熱伝導媒体により、該融雪機構付き舗装道路の表面に積雪した雪S1を融解する。
【0018】
尚、上記した第1及び第2蓄熱部材17及び21は梁(フーチング)16並びに橋脚又は柱14に埋設する場合に代えて杭15や貯水槽、浄化槽又は基礎コンクリート(図示せず)等に埋設しても本発明の目的を達成できる。
【0019】
次に、本発明に係るコンクリート構造物の蓄熱システムに於ける実施の形態について、その動作等を説明する。
【0020】
地盤Rからの地中熱を杭15の表面等に設けた上記第3配管17C又は上記第1蓄熱部材17の第1配管17Aが温度差により採取する。この地中熱は、地盤R内の微生物や有機物質による分解熱の場合や生活排水等の余熱の場合もある。上記第1蓄熱部材17の第3配管17C内及び第1配管17A内に於ける充填・封入された水やパラフィン、硫酸ナトリウムその他水溶液等の液体又は気体でなる熱伝導媒体が上記地中熱や分解熱を該第3及び第1配管17C、17Aから受け、該第3配管17Cの経路に存在するポンプ18で図2に示す矢印A1方向に圧送される。この第3及び第1配管17C、17A内の熱伝導媒体は管内を循環流送すると共に該第1配管17Aから隣接した上記第2配管17Bに熱エネルギーを伝導し、該第1配管17Aと第2配管17B間で熱エネルギーの受け渡しが行なわれる。かくして、上記第1配管17A及び上記第2配管17Bを有した第1蓄熱部材17は熱エネルギーを蓄える。
【0021】
そして、負荷24が図2に示すように融雪機構付き舗装道路での場合、この表面に雪S1が積雪されているとき上記第4配管17D内の熱伝導媒体が図2に示す矢印A2方向からポンプ手段23により該負荷24に圧送され融雪動作を行なう。
また、当該負荷24を暖房装置として家屋の屋根や床に配置したとき、本発明の蓄熱システムは家屋の暖房システムとして機能する。
【0022】
一方、コンクリート構造物12の所定部位に固定された太陽熱吸収板19に太陽光Lが照射されると該太陽熱吸収板19は太陽熱エネルギーを吸収する。そして、吸収された太陽熱エネルギーは、熱伝導媒体に化体され、図2の矢印B1方向で示すように入力側ヒートパイプ20内及び第1ヒートパイプ21A内の熱伝導媒体が流送される。該第1ヒートパイプ21A内を循環流送した熱伝導媒体の働きにより熱エネルギーは上記第2ヒートパイプ21Bに吸収される。而して、上記第1及び第2ヒートパイプ21A、21Bを備えた第2蓄熱部材21は太陽熱エネルギーを蓄熱する。
【0023】
そして、負荷24が図2に示すように融雪機構付き舗装道路での場合、この表面に雪S1が積雪されているとき上記出力側ヒートパイプ22内の熱伝導媒体が図2に示す矢印B2方向から該負荷24に圧送され融雪動作を行なう。
また、当該負荷24を暖房装置として家屋の屋根や床に配置したとき、本発明の蓄熱システムは家屋の暖房システムとして機能する。
【0024】
尚、上述した太陽熱吸収板19からの太陽熱エネルギーは本蓄熱システムに於いて、非常時や必要に応じて負荷24としての融雪機構付き舗装道路の表面に積雪した雪S1を融雪するときや家屋の暖房等に利用する。
【実施例1】
【0025】
次に、本発明に係るコンクリート構造物の蓄熱システムに於ける実施例1について説明する。
【0026】
当該実施例1は、上述した本発明に係るコンクリート構造物の蓄熱システムに於ける実施の形態の例に於ける構成要素に新たに加えた構成又は一部を変更した構成で成立する。すなわち、上記図1及び上記図2に於いて、特に、地盤Rに熱交換杭25を埋設した点である。この熱交換杭25は例えば、所定長さを有し、鉄等の金属製や硬質の樹脂製等で成形され、外筒及び内筒の二重筒で構成される。また、該熱交換杭25は分離したそれぞれを単一管で構成し、熱交換機能を備えたものであってもよく、該内筒はコンクリート床版や舗装道路等の負荷24で加熱された温水を第1配管内を流過させて取り入れ地盤Rの所定深さまで流送し、地盤R内の冷却温度で熱気が吸収され、冷水にする。そして、該外筒はこの冷水を押し上げ第2配管内を流送し、コンクリート床版や舗装道路等の負荷24を冷却する。而して、夏期に於ける舗装道路等の負荷24のヒートアイランド現象を防止する。また、この実施例1の構成は、上述した実施の形態の例に於ける構成要素のうち、第1蓄熱部材17又は第2蓄熱部材21のいずれかを省略した構成としてもよい。
当実施例1に於ける他の構成部材は上述した実施の形態に於ける構成部材と略同一であり、同一番号及び同一符号を付し、その機能及び動作等の説明を省略する。
【実施例2】
【0027】
次に、本発明に係るコンクリート構造物の蓄熱システムに於ける実施例2について説明する。
【0028】
当該実施例2は上述した本発明に係るコンクリート構造物の蓄熱システムに於ける実施の形態の例に於ける構成要素に於いて上記図1及び上記図2に示す第2蓄熱部材21を蓄熱機能を果すコンデンサに変えると共に該第2蓄熱部材21に備えた第1及び第2ヒートパイプ21A、21Bや入力側ヒートパイプ20、出力側ヒートパイプ22を電線に置換える。かかる構成としてすれば、太陽熱エネルギーを電気エネルギーに変換してこの電気エネルギーをコンデンサ(図示せず)手段で蓄電して非常時や必要時に融雪機構付き舗装道路等の負荷24に通電し、雪S1を融解する。このように実施例2は本蓄熱システムに於ける補助熱源として利用することができる。
当実施例2に於ける他の構成部材は上述した実施の形態に於ける構成部材と略同一であり、同一番号及び同一符号を付し、その機能及び動作等の説明を省略する。
また、本実施例2は太陽熱吸収板19に代えて別の風力エネルギーや振動による運動エネルギーを生み出す装置を設け、これを電気エネルギーに変換して利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るコンクリート構造物の蓄熱システムに於ける実施の形態の一例を示す垂直断面図である。
【図2】図1に示す本発明に係るコンクリート構造物の蓄熱システムの熱又は電気エネルギーの伝導経路を示すシステム構成図である。
【図3】従来の技術に於ける第1の例として風力利用融雪システムを示す図である。
【図4】従来の技術に於ける第2の例として蓄熱材を格納した舗装道路を示す垂直断面図である。
【符号の説明】
【0030】
12 コンクリート構造物
13 コンクリート構造物のコンクリート床版
13a コンクリート構造物のコンクリート床版の側面
14 橋脚(柱)
15 杭
16 梁
17 第1蓄熱部材
17A 第1蓄熱部材の第1配管
17B 第1蓄熱部材の第2配管
17C 第1蓄熱部材の第3配管
17D 第1蓄熱部材の第4配管
18 ポンプ手段
19 太陽熱吸収板
20 入力側ヒートパイプ
21 第2蓄熱部材
21A 第2蓄熱部材の第1ヒートパイプ
21B 第2蓄熱部材の第2ヒートパイプ
22 出力側ヒートパイプ
23 ポンプ手段
24 負荷
25 熱交換杭
S1 雪
L 太陽光
R 地盤
R1 地盤の上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物の所定部位に埋設し又は固定されかつ地盤からの熱エネルギーを採取・蓄熱する蓄熱部材であって、該蓄熱部材が閉ループを構成した第1、第2配管からの熱エネルギーを吸収及び蓄えると共に該第1配管に隣接・配置した第2配管を有し、該第1、第2配管内に充填・封入した熱伝導媒体を負荷に圧送・流送することを特徴とするコンクリート構造物の蓄熱システム。
【請求項2】
コンクリート構造物の所定部位に埋設し又は固定されかつ地盤又は太陽光からの地中熱エネルギー又は太陽熱エネルギーを採取・蓄熱する第1及び第2蓄熱部材であって、一方では前記第1蓄熱部材が閉ループを構成した第1配管及び該第1配管から熱エネルギーを吸収及び蓄えると共に該第1配管に隣接・配置した第2配管を有し、該第1、第2配管内に充填・封入した熱伝導媒体を負荷に圧送し、並びに他方では前記第2蓄熱部材が前記コンクリート構造物に設置した太陽熱吸収板から太陽熱エネルギーを伝導・蓄熱する閉ループを構成した第1、第2ヒートパイプから太陽熱エネルギーを吸収すると共に第1ヒートパイプに隣接・配置した第2ヒートパイプを有し、該第1、第2ヒートパイプ内に充填・封入した熱伝導媒体を前記負荷に流送することを特徴とするコンクリート構造物の蓄熱システム。
【請求項3】
コンクリート構造物の所定部位に埋設し又は固定されかつ地盤からの地中熱を採取・蓄熱する蓄熱部材であって、該蓄熱部材が閉ループを構成した第1、第2配管からの熱エネルギーを吸収及び蓄えると共に該第1配管に隣接・配置した第2配管を有し、該第1、第2配管内に充填・封入した熱伝導媒体を負荷に圧送・流送し並びに前記地盤に前記地中熱を温水に熱変換させる熱交換杭を埋設し、前記負荷に該温水を流送することを特徴とするコンクリート構造物の蓄熱システム。
【請求項4】
前記第2蓄熱部材は太陽熱エネルギーを電気エネルギーに変換しかつ蓄電するコンデンサ手段で構成したことを特徴とする請求項2記載のコンクリート構造物の蓄熱システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−321378(P2007−321378A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150837(P2006−150837)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000216025)鉄建建設株式会社 (109)
【Fターム(参考)】