説明

コンデンサマイクロホン及びコンデンサマイクロホンの製造方法

【課題】 感度が高く製造コストが低いコンデンサマイクロホン及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 固定電極と通孔を有するプレートと、可動電極を有し音波によって振動するダイヤフラムと、前記プレートと前記ダイヤフラムとを絶縁しながら支持し、前記固定電極と前記可動電極の間に空隙を形成しているスペーサとを備え、前記プレート、前記ダイヤフラムの少なくとも一方は、前記スペーサに近い近端部の少なくとも一部の比抵抗が残部領域よりも高い単層半導体膜である、コンデンサマイクロホン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンデンサマイクロホン及びその製造方法に関し、特に半導体膜を用いたコンデンサマイクロホン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスの製造プロセスを応用して製造可能なコンデンサマイクロホンが知られている。コンデンサマイクロホンは、プレートと音波によって振動するダイヤフラムのそれぞれに電極を有し、プレートとダイヤフラムとは絶縁性のスペーサによって互いに離間した状態で支持されている。コンデンサマイクロホンは、ダイヤフラムの変位による容量変化を電気信号に変換して出力する。コンデンサマイクロホンの感度は、電極間距離に対するダイヤフラムの変位の割合を増大させ、スペーサのリーク電流を低減し、寄生容量を低減することによって向上する。
【0003】
非特許文献1には、プレートと音波によって振動するダイヤフラムのそれぞれを導電性の薄膜で構成したコンデンサマイクロホンが開示されている。しかし、ダイヤフラムに音波が伝搬してもスペーサに固定されている外周に近い近端部(近端部とは端に近い部分である。)はほとんど変位しないため、導電性の薄膜で構成されているダイヤフラムとプレートの、スペーサに固定された外周に近いそれぞれの近端部はコンデンサマイクロホンの感度を低下させている。
【0004】
特許文献1には、絶縁性の膜の中央部に導電性材料からなる電極が固定された構造のダイヤフラムを備えたコンデンサマイクロホンが開示されている。この構造では、コンデンサマイクロホンの感度が高くなるものの、製造工程が複雑であるため、製造歩留まりが低下し、製造コストが増大するという問題がある。また、ダイヤフラムとプレートの間に空隙を形成するための犠牲層をエッチングにより除去する工程において、電極が固定されている絶縁膜も少なからずエッチングされるため、この対策をプロセスに組み入れる必要があることも、製造コストを押し上げる。
【0005】
【非特許文献1】電気学会M22−01−34
【特許文献1】特表2004−506394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、感度が高く製造コストが低いコンデンサマイクロホン及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)前記課題を解決するためのコンデンサマイクロホンは、固定電極と通孔とを有するプレートと、可動電極を有し音波によって振動するダイヤフラムと、前記プレートと前記ダイヤフラムとを絶縁しながら支持し、前記固定電極と前記可動電極の間に空隙を形成しているスペーサを備え、前記プレート、前記ダイヤフラムの少なくとも一方は、前記スペーサに近い近端部の少なくとも一部の比抵抗が残部よりも高い単層半導体膜である。
通孔を有するプレート、音波によって振動するダイヤフラムの少なくとも一方のスペーサに近い近端部の少なくとも一部の比抵抗を残部よりも高くすることによって、コンデンサマイクロホンの感度が高くなる。比抵抗が領域によって異なる単層半導体膜でプレート又はダイヤフラムを構成することにより、コンデンサマイクロホンの構造が簡素になり、感度が高いコンデンサマイクロホンを低コストで製造することができる。
【0008】
(2)前記単層半導体膜は、中央部に、ドナー又はアクセプタとなる不純物が、前記近端部の少なくとも一部よりも高濃度に拡散していてもよい。
【0009】
(3)前記単層半導体膜は、前記中央部の周囲に前記不純物である第一不純物と逆電導型の半導体を形成するための第二不純物が、前記第一不純物よりも低濃度に拡散していてもよい。
第一不純物が拡散している中央部の周囲に、電極を形成している不純物と逆導電型の半導体を形成するための第二不純物を拡散させることにより、第一不純物が拡散している領域の周囲の電気的障壁を大きくできるため、コンデンサマイクロホンの感度がさらに高くなる。
【0010】
(4)前記課題を解決するためのコンデンサマイクロホンの製造方法は、固定電極と通孔とを有するプレートと、可動電極を有し音波によって振動するダイヤフラムと、前記プレートと前記ダイヤフラムとを絶縁しながら支持し、前記固定電極と前記可動電極の間に空隙を形成しているスペーサとを備えるコンデンサマイクロホンの製造方法であって、前記プレート、前記ダイヤフラムの少なくとも一方を構成する半導体膜を形成し、前記半導体膜の前記スペーサに近い近端部の少なくとも一部を除いた領域に、ドナー又はアクセプタとなる不純物を、前記半導体膜の前記スペーサに近い近端部の少なくとも一部よりも高濃度にドープする、ことを含む。
通孔を有するプレート、音波によって振動するダイヤフラムの少なくとも一方のスペーサに近い近端部の比抵抗を中央部よりも高くすることによって、コンデンサマイクロホンの感度が高くなる。半導体膜に不純物をドープすることにより比抵抗の低い領域を限定的に形成することにより、コンデンサマイクロホンの構造が簡素になり、プレート又はダイヤフラムのスペーサに近い縁部の比抵抗を残部よりも高くできるため、感度が高いコンデンサマイクロホンの製造コストを低減できる。
【0011】
(5)前記コンデンサマイクロホンの製造方法は、前記不純物を前記半導体膜にイオン注入し、前記不純物がイオン注入された前記半導体膜をアニールする、ことを含んでもよい。
不純物をイオン注入により半導体膜にドープすることにより、正確に不純物の分布を制御でき、プロセス温度を低減できる。
【0012】
(6)前記コンデンサマイクロホンの製造方法は、前記不純物である第一の不純物と逆導電型の半導体を形成するための第二不純物を前記半導体膜の前記中央部の周囲にドープする、ことを含んでもよい。
半導体膜の第一不純物がドープされる中央部の周囲に、第一不純物と逆導電型の半導体を形成するための第二不純物をドープすることにより、第一不純物がドープされる領域の周囲の電気的障壁障壁を大きくできるため、コンデンサマイクロホンの感度がさらに高くなる。
【0013】
尚、請求項に記載された方法の各動作の順序は、技術上の阻害要因がない限り、記載順に限定されるものではなく、どのような順番で実行されてもよく、また同時に実行されてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、複数の実施例に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
(第一実施例)
図1は、第一実施例によるコンデンサマイクロホン1の構成を示す模式図である。コンデンサマイクロホン1は、図1(B)に断面図として描かれた感音部と図1(B)に回路図として描かれた検出部とを備えている。
【0015】
(感音部の構成)
バックプレート10の端部とダイヤフラム30の端部とはスペーサ44にそれぞれ固定されている。すなわち、バックプレート10とダイヤフラム30は、スペーサ44によって両者の間に圧力室46を形成した状態で互いに平行に支持されている。図1(A)はバックプレート10及びその周辺部と、バックプレート10のパッド部13のみを示している。バックプレート10とその周辺部の平面視における形状は、特に限定されず、図1(A)に示すように円形であってもよいし、他の形状であってもよい。またバックプレート10は、バックプレート10を貫通する通孔としての複数の音響ホール18を有する。音響ホール18の平面視における形状は特に限定されず、図1(A)に示すように円形であってもよいし、他の形状であってもよい。
【0016】
バックプレート10とそのパッド部13は、多結晶Si等の半導体膜22で構成される。バックプレート10は、半導体膜22の絶縁膜45に固着していない円盤形の部分で構成されている。半導体膜22の、バックプレート10の円盤形の中央部14と、中央部14からパッド部13まで伸びるバックプレート10の線形の接続部16と、パッド部13とに対応する領域には、ドナー又はアクセプタとなる不純物が残部領域よりも高濃度に拡散している。中央部14の面積は、例えば、ある音波が伝搬しているときにダイヤフラム30が振動する軌跡の体積をダイヤフラム30の中心の振幅で割った値とする。具体的には例えば、中央部14の面積をダイヤフラム30の面積の3分の1から2分の1とする。中央部14の外形は、例えばダイヤフラム30の外形と相似の円盤形とする。ドナーとなる不純物は、例えばP、As、Sbである。アクセプタとなる不純物は例えばBである。スペーサ44に固定される端部に近いバックプレート10の近端部20は、ドナー又はアクセプタとなる不純物が拡散していないため、比抵抗が中央部14に比べて高い。尚、ドナー又はアクセプタとなる不純物がバックプレート10の近端部20に中央部14より低濃度に拡散していてもよい。例えば、中央部14の不純物濃度のオーダを1020/cm3、近端部20の不純物濃度を1016〜1017/cm3とする。
【0017】
ダイヤフラム30とそのパッド部31は、多結晶Si等の半導体膜32で構成される。ダイヤフラム30は、半導体膜32の絶縁膜43、45に固着していない円盤形の部分で構成されている。ダイヤフラム30とそのパッド部31を構成する半導体膜32の全体にはドナー又はアクセプタとなる不純物が高濃度に拡散している。尚、不純物は、バックプレート10を構成する半導体膜22に拡散している不純物と同一でもよいし、異なっていてもよい。また、半導体膜22のドナー又はアクセプタとなる不純物が高濃度に拡散している領域の電導型は、半導体膜32の電導型と同一でも良いし、逆でも良い。また、バックプレート10と同様に、ダイヤフラム30を構成する半導体膜32の不純物拡散領域を限定することにより、ダイヤフラム30の近端部の比抵抗を中央部より高くしてもよい。ただし、ダイヤフラム30、バックプレート10のいずれか一方の近端部の比抵抗が中央部より高ければ、たとえ他方の比抵抗が均一でも、コンデンサマイクロホン1の感度は向上する。つまり、ダイヤフラム30を構成する半導体膜32の不純物拡散領域を限定し、バックプレート10を構成する半導体膜22の全体に不純物を拡散させても同様の効果が得られる。また、近端部の比抵抗が中央部に比べて高い半導体膜をダイヤフラム30、バックプレート10の一方のみにすることで、不純物拡散領域を限定するために必要になるマスクのリソグラフィ工程及びマスクの除去工程が不要になるため、コンデンサマイクロホン1の製造プロセスを簡素化することができる。
【0018】
スペーサ44は、圧力室46の側壁面47を構成している絶縁膜45と、半導体膜22、32の圧力室46の側壁面47より外側の部分とで構成されている。
ダイヤフラム30の端部はベース40に固定されている。バックプレート10の音響ホール18を通過した音波はダイヤフラム30を振動させる。ベース40は、ダイヤフラム30に対応する圧力緩衝室33を有し、ダイヤフラム30を構成している半導体膜32が固定される絶縁膜43と、絶縁膜43の反半導体膜32側に設けられ圧力緩衝室33の側壁面52を形成している基膜51とで構成されている。圧力緩衝室33の容積を大きくすることにより、圧力緩衝室33を封止した状態でダイヤフラム30に音波が伝搬したときに圧力緩衝室33の内圧によってダイヤフラム30の振動が抑制されにくくなる。
尚、ダイヤフラム30がバックプレート10よりも音源側に位置し、ダイヤフラム30に直接音波が伝搬するように構成してもよい。この場合、音響ホール18はバックプレート10とダイヤフラム30の間に形成されている圧力室46とその外部空間とを連通する空気通路として機能する。
【0019】
(検出部の構成)
ダイヤフラム30のパッド部31には、抵抗器100の一端に接続されるリード線104が接続されている。そしてバックプレート10のパッド部13には、コンデンサマイクロホン1が実装されている基板のグランドに接続されるリード線106が接続されている。抵抗器100の他端には、バイアス電源回路102の出力端に接続されるリード線108が接続されている。抵抗器100としては抵抗値が大きなものを使用する。具体的には、抵抗器100はGΩオーダーの電気抵抗を有するものが望ましい。プリアンプ110の入力端には、コンデンサ112の一端に接続されるリード線114が接続されている。そしてダイヤフラム30と抵抗器100を接続しているリード線104は、コンデンサ112の他端にも接続されている。
【0020】
(コンデンサマイクロホンの作動)
音波がバックプレート10の音響ホール18を通過してダイヤフラム30に伝搬すると、ダイヤフラム30は音波により振動する。ダイヤフラム30が振動すると、その振動によりバックプレート10とダイヤフラム30との間の距離が変化し、ダイヤフラム30とバックプレート10とにより構成されているコンデンサの静電容量が変化する。
【0021】
ダイヤフラム30はそのパッド部31を介して抵抗値が大きい抵抗器100に接続されているため、コンデンサの静電容量が上述したようにダイヤフラム30の振動により変化したとしても、コンデンサに蓄積されている電荷が抵抗器100を流れることは殆どない。すなわち、ダイヤフラム30とバックプレート10とにより形成されるコンデンサに蓄積されている電荷は、変化しないものとみなすことができる。したがって、コンデンサの静電容量の変化は、ダイヤフラム30とバックプレート10との間の電圧の変化として取り出すことが可能である。
【0022】
コンデンサマイクロホン1は、ダイヤフラム30のグランドに対する電圧の変化をプリアンプ110で増幅することにより、コンデンサの静電容量の極めてわずかな変化を電気信号として出力する。すなわち、コンデンサマイクロホン1は、ダイヤフラム30に加わる音圧の変化をコンデンサの静電容量の変化に変換し、コンデンサの静電容量の変化を電圧の変化に変換することにより、音圧の変化に相関する電気信号を出力する。
【0023】
ダイヤフラム30は、その端部を固定端として振動する。つまり、ダイヤフラムの端部から最も離れている中心は、最も大きな振幅で振動する。これに対して、ダイヤフラム30のスペーサ44に固定されている端部に近い近端部20の振幅は小さい。
ところで、一様な導電性を有する薄膜電極を備えたコンデンサマイクロホンの図2(A)に示す等価回路は、全く振動しないと考えられるダイヤフラムの近端部とバックプレートによって形成される容量Csとある振幅で平坦形状を維持して振動すると考えられるダイヤフラムの中央部で形成される容量Cbとが並列接続されたものである。ダイヤフラム30がある振幅で平坦形状を維持して振動する中央部と全く振動しない近端部とで構成されていると考えるとき、ダイヤフラム30の振動にともなって近端部と中央部との間で電荷の移動が起こると、バックプレート10の近端部に対するダイヤフラム30の近端部の電位が変動し、バックプレート10の中央部に対するダイヤフラムの中央部の電位変動幅が小さくなる。バックプレート10の近端部に対するダイヤフラム30の近端部の電位変動はコンデンサマイクロホン1の出力信号のノイズ成分であり、バックプレート10の中央部に対するダイヤフラムの中央部の電位変動はコンデンサマイクロホン1の出力信号の真の信号成分である。
【0024】
本実施例によるコンデンサマイクロホン1は、バックプレート10のスペーサ44に固定される端部に近い近端部20にドナー又はアクセプタとなる不純物が拡散していないため、近端部20の比抵抗が中央部14に比べて高い。従って本実施例によるコンデンサマイクロホン1の等価回路は、図2(B)に示すように、全く振動しないと考えられるダイヤフラム30の近端部とバックプレート10によって形成される容量Csとある振幅で平坦形状を維持して振動すると考えられるダイヤフラム30中央部で形成される容量Cbとの間に大きい内部抵抗Rが接続されたものである。内部抵抗Rはダイヤフラム30の振動にともなって容量Csと容量Cbとの間に起こる電荷の移動を妨げるため、バックプレート10の近端部20に対するダイヤフラム30の近端部の電位変動を抑制する。したがって、本実施例によるコンデンサマイクロホン1は、一様な導電性を有する薄膜電極を備えたコンデンサマイクロホンに比べて感度が高い。
【0025】
(製造方法)
図3から図5は、第一実施例によるコンデンサマイクロホン1の製造方法を示す断面図である。
はじめに図3(A)に示すように、基膜51及び絶縁膜43を形成する。具体的には例えば基膜51である単結晶シリコン基板の表面にCVD法によりSiO2を堆積させる。単結晶シリコン基板の熱酸化により絶縁膜43を形成しても良いが、後述するSiO2からなる絶縁膜45とSiO2からなる絶縁膜43とのエッチングレートを同一にするため、CVD法によりSiO2を堆積させることが好ましい。
【0026】
次に図3(B)に示すように、ダイヤフラム30及びそのパッド部31を構成する半導体膜32を絶縁膜43上に形成する。具体的には例えばLPCVD法によりSiを絶縁膜43上に堆積させた後、堆積したSi膜に、ドナー又はアクセプタとなる不純物を高濃度のイオン注入によりドープし、Si膜をアニールで活性化させることによって半導体膜32を形成する。尚、LPCVD法でSiを絶縁膜43上に堆積する際、ドナー又はアクセプタとなる不純物をインサイチュでSiにドープしてもよい。
【0027】
次に図3(C)に示すように、半導体膜32を所望の形状にパターニングする。具体的には、まずマスクを半導体膜32上にリソグラフィで形成した後、Cl2とO2の混合ガスによって半導体膜32をエッチングし、マスクを除去する。
次に図3(D)に示すように、スペーサ44を構成する絶縁膜45を半導体膜32上に形成する。具体的には例えばCVD法によりSiO2を半導体膜32上に堆積させる。
【0028】
次に図4(A)に示すように、バックプレート10及びそのパッド部13を構成する半導体膜22を絶縁膜45上に形成する。具体的には例えば、CVD法によりSiを絶縁膜45上に堆積させる。
次に図4(B)に示すように、レジスト等からなる所定のパターンのマスク60を半導体膜22上にリソグラフィで形成する。マスク60は、イオン注入用のマスクであり、バックプレート10の中央部14及び接続部16並びにパッド部13に対応する開口部62を有する。不純物をイオン注入でドープすることにより、半導体膜22内での不純物の量、深さ、分布を正確に制御でき、低温でプロセスを進行できる。尚、拡散で不純物を半導体膜22にドープしてもよく、その場合、マスク60にはSi34等を用いる。
【0029】
次に図4(C)に示すように、半導体膜22にドナー又はアクセプタとなる不純物を高濃度のイオン注入によりドープし、マスク60を除去し、アニールにより半導体膜22を活性化する。
次に図5(A)に示すように、半導体膜22を所望の形状にパターニングし、半導体膜22に音響ホール18を形成する。具体的には、まずマスクを半導体膜22上にリソグラフィで形成した後、Cl2とO2の混合ガスによって半導体膜22をエッチングし、マスクを除去する。
【0030】
次に図5(B)に示すように、基膜51の表面上に所定のパターンのマスク64をリソグラフィで形成する。マスク64は、ベース40の圧力緩衝室33の一部を形成するためのエッチング用のマスクであり、圧力緩衝室33に対応する部位に開口部66を有する。
次に図5(C)に示すように、基膜51の開口部66内に露出する部位をDeepRIEで除去することで基膜51に圧力緩衝室33の側壁面52を形成した後、マスク64を除去する。
【0031】
次に、絶縁膜43及び絶縁膜45を基膜51及び半導体膜22をマスクとしてBHF等を用いてエッチングすると、図1に示すコンデンサマイクロホン1の感音部が得られる。エッチング液が、基膜51に形成された圧力緩衝室33の一部と半導体膜22に形成された音響ホール18とを通って絶縁膜43及び絶縁膜45に到達し絶縁膜43及び絶縁膜45をエッチングすることにより、圧力緩衝室33の残部と圧力室46が形成される。
以上説明したように、半導体膜22の一部に不純物を高濃度にドープするという半導体デバイスの汎用的な製造プロセスを用いることにより、感度の高いコンデンサマイクロホンを低コストで製造することができる。
【0032】
(第二実施例)
バックプレート10の近端部20に、中央部14と逆の電導型の半導体を形成する第二の不純物を低濃度に拡散させてもよい(図1参照)。例えば上述の製造方法において、半導体膜22のバックプレート10の中央部14に対応する領域に第一の不純物を高濃度にイオン注入するためのマスク60を形成する(図4(B)参照)前に、中央部14と逆の電導型の半導体を形成する第二の不純物を半導体膜22の全面に低濃度でイオン注入によりドープする。これにより、図2(C)に示す等価回路のように、バックプレート10にpn接合ダイオードDを形成することになる。pn接合ダイオードDを逆バイアス状態にすることにより、中央部14と近端部20との間の電気的障壁を大きくすることができるため、感度をさらに増大することができる。尚、半導体膜22のバックプレート10の中央部14に対応する領域に第一の不純物をイオン注入した後に、半導体膜22のバックプレート10の近端部20に対応する領域に第二の不純物をイオン注入してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(A)は本発明の第一実施例によるコンデンサマイクロホンのダイヤフラムを示す平面図、(B)は本発明の第一実施例によるコンデンサマイクロホンを示す模式図。
【図2】本発明の第一実施例によるコンデンサマイクロホンの等価回路を示す回路図。
【図3】本発明の第一実施例によるコンデンサマイクロホンの製造方法を示す断面図。
【図4】本発明の第一実施例によるコンデンサマイクロホンの製造方法を示す断面図。
【図5】本発明の第一実施例によるコンデンサマイクロホンの製造方法を示す断面図。
【符号の説明】
【0034】
1 コンデンサマイクロホン、10 バックプレート、13 パッド部、14 中央部、16 接続部、18 音響ホール、20 近端部、22 半導体膜、30 ダイヤフラム、32 半導体膜、44 スペーサ、46 圧力室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定電極と通孔とを有するプレートと、
可動電極を有し音波によって振動するダイヤフラムと、
前記プレートと前記ダイヤフラムとを絶縁しながら支持し、前記固定電極と前記可動電極の間に空隙を形成しているスペーサとを備え、
前記プレート、前記ダイヤフラムの少なくとも一方は、前記スペーサに近い近端部の少なくとも一部の比抵抗が残部よりも高い単層半導体膜である、
コンデンサマイクロホン。
【請求項2】
前記単層半導体膜は、中央部に、ドナー又はアクセプタとなる不純物が、前記近端部の少なくとも一部よりも高濃度に拡散している、
請求項1に記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項3】
前記単層半導体膜は、前記中央部の周囲に前記不純物である第一不純物と逆電導型の半導体を形成するための第二不純物が、前記第一不純物よりも低濃度に拡散している、
請求項2に記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項4】
固定電極と通孔とを有するプレートと、可動電極を有し音波によって振動するダイヤフラムと、前記プレートと前記ダイヤフラムとを絶縁しながら支持し、前記固定電極と前記可動電極の間に空隙を形成しているスペーサとを備えるコンデンサマイクロホンの製造方法であって、
前記プレート、前記ダイヤフラムの少なくとも一方を構成する半導体膜を形成し、
前記半導体膜の中央部に、ドナー又はアクセプタとなる不純物を、前記半導体膜の前記スペーサに近い近端部の少なくとも一部よりも高濃度にドープする、
ことを含むコンデンサマイクロホンの製造方法。
【請求項5】
前記不純物を前記半導体膜にイオン注入し、
前記不純物がイオン注入された前記半導体膜をアニールする、
ことを含む請求項4に記載のコンデンサマイクロホンの製造方法。
【請求項6】
前記不純物である第一の不純物と逆電導型の半導体を形成するための第二不純物を前記半導体膜の前記中央部の周囲にドープする、
ことを含む請求項4又は5に記載のコンデンサマイクロホンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−67659(P2007−67659A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249458(P2005−249458)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【特許番号】特許第3876915号(P3876915)
【特許公報発行日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】