説明

コンプレッサハウジング、排気タービン過給機、及びコンプレッサハウジングの製造方法

【課題】シール部材が固定される被固定体の体格を小さくしてシール部材を固定する工程を簡易なものとすることができる。
【解決手段】コンプレッサハウジング10は、インペラを囲繞する。また、コンプレッサハウジング10は、筒状をなすとともにインペラに対して快削性を有する樹脂材料により形成されるシール部材50を備えている。シール部材50の内周面53によりインペラの外周が覆われている。コンプレッサハウジング10は、ハウジング本体20とは別体であってシール部材50の外周面が固設されるシュラウド部材30を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心式過給機のインペラを囲繞するコンプレッサハウジング、同コンプレッサハウジングを備える排気タービン過給機、及びコンプレッサハウジングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンプレッサホイール及び排気タービン過給機としては例えば特許文献1に記載のコンプレッサハウジング及び排気タービン過給機がある。
特許文献1に記載のコンプレッサハウジングは、略円筒状をなすとともにその内周面によりインペラの外周が覆われるシール部材を備えている。このシール部材は、インペラに対して快削性を有する材料、例えば樹脂材料によって形成されており、所謂アブレーダブルシールと称される。ちなみに、特許文献1では、コンプレッサハウジングのハウジング本体に対して射出成形を行なうことによってシール部材が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004―299381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、コンプレッサハウジングのハウジング本体に対してシール部材を直接成形する場合には、ハウジング本体全体を射出成形装置内に載置する必要が生じる。そのため、射出成形装置の体格が大きくなるといった問題やその製造工程が煩雑なものとなるといった問題が生じる。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シール部材が固定される被固定体の体格を小さくしてシール部材を簡易な態様にて固定することのできるコンプレッサハウジング、排気タービン過給機、及びコンプレッサハウジングの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、インペラを囲繞するコンプレッサハウジングであって、筒状をなすとともにインペラに対して快削性を有する材料により形成されるシール部材を備え、同シール部材の内周面によりインペラの外周が覆われるコンプレッサハウジングにおいて、コンプレッサハウジングのハウジング本体とは別体であって前記シール部材の外周面が固設されるシュラウド部材を備えてなることをその要旨としている。
【0007】
同構成によれば、シール部材が固定される部位がハウジング本体と一体形成される構成とは異なり、シュラウド部材に対してシール部材を固定した後に、この部分組立品をハウジング本体に組み付けることができる。すなわち、シール部材を固定する際にハウジング本体を扱う必要が無くなる。従って、シール部材が固定される被固定体の体格を小さくしてシール部材を簡易な態様にて固定することができる。
【0008】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンプレッサハウジングにおいて、前記シュラウド部材は全体として筒状をなすとともに複数に分割されてなり、前記シール部材は複数に分割された前記シュラウド部材により外周側から挟み込まれてなることをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、全体として筒状をなすとともに複数に分割されたシュラウド部材によって外周側からシール部材を挟み込むことでシュラウド部材の内周面にシール部材を固定することが容易にできる。
【0010】
(3)請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のコンプレッサハウジングにおいて、前記シュラウド部材は二つ割りにされてなることをその要旨としている。
同構成によれば、二つ割りにされた一対のシュラウド部材によって外周側からシール部材を挟み込むことでシュラウド部材の内周面にシール部材を固定することが容易にできる。また、シール部材を挟み込む上でシュラウド部材が必要最小限に分割されているため、シュラウド部材の構成が複雑なものとなることを好適に抑制することができる。
【0011】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のコンプレッサハウジングにおいて、前記シール部材は前記シュラウド部材の内周面上に直接成形されてなることをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、シュラウド部材の内周面上にシール部材を直接成形する際にハウジング本体が不要となる。このため、シール部材が直接成形される被成形体の体格を小さくすることができる。従って、シール部材を直接成形する装置の体格を小さくすることができる。
【0013】
(5)請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のコンプレッサハウジングにおいて、前記シール部材は圧縮成形により形成されてなることをその要旨としている。
同構成によれば、シュラウド部材がシール部材を圧縮成形するための成形型の一部とされるため、成形型の体格を小さくすることができ、圧縮成形装置の体格を小さくすることができる。また、圧縮成形によってシール部材が形成されるため、シュラウド部材に熱歪みが生じることはない。
【0014】
(6)請求項6に記載の発明は、請求項4に記載のコンプレッサハウジングにおいて、前記シール部材は射出成形により形成されてなることをその要旨としている。
同構成によれば、シュラウド部材の内周面上にシール部材を射出成形する際にハウジング本体が不要となる。このため、シール部材が射出成形される被成形体の体格を小さくすることができる。従って、射出成形装置の体格を小さくすることができる。
【0015】
(7)請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のコンプレッサハウジングにおいて、前記シュラウド部材の内周面には凸部或いは凹部が形成され、前記シール部材の外周面には前記凸部或いは凹部に嵌合する凹部或いは凸部が形成されてなることをその要旨としている。
【0016】
同構成によれば、シュラウド部材の内周面に形成された凸部或いは凹部と、シール部材の外周面に形成された凹部或いは凸部とが互いに嵌合することによってシュラウド部材からシール部材が抜け出すことを好適に抑制することができる。
【0017】
また、例えば筒状のシール部材がその軸線方向に沿ってシュラウド部材に圧入される構成にあっては、こうした凸部(凹部)及び凹部(凸部)によって当該圧入自体が困難なものとなる。しかしながら、請求項2及び請求項3に記載の発明によれば、シュラウド部材が複数に分割されており、複数に分割されたシュラウド部材によって外周側からシール部材を挟み込むことによってシール部材が固定される。このため、上記凸部(凹部)及び凹部(凸部)の存在がシュラウド部材にシール部材を固定する際に問題となることはない。
【0018】
また、請求項4〜請求項6に記載の発明によれば、シュラウド部材の内周面上にシール部材が直接成形される。このため、上記凸部(凹部)及び凹部(凸部)の存在がシュラウド部材にシール部材を固定する際に問題となることはない。
【0019】
(8)請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のコンプレッサハウジングを備える排気タービン過給機をその要旨としている。
同構成によれば、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の発明の作用効果に準じた作用効果を奏することができる。
【0020】
(9)請求項9に記載の発明は、インペラを囲繞するコンプレッサハウジングであって、筒状をなすとともにインペラに対して快削性を有する材料により形成されるシール部材を備え、同シール部材の内周面によりインペラの外周が覆われるコンプレッサハウジングの製造方法において、全体として筒状をなすとともに二つ割りにされてなるシュラウド部材をコンプレッサハウジングのハウジング本体とは別体にて形成する工程と、前記シール部材を形成する工程と、一対の前記シュラウド部材により前記シール部材を外周側から挟み込んだ部分組立品を前記ハウジング本体に組み付ける工程とを備えることをその要旨としている。
【0021】
同構成によれば、シール部材が固定される部位がハウジング本体と一体形成される構成とは異なり、シュラウド部材に対してシール部材を固定した後に、この部分組立品をハウジング本体に組み付けることができる。すなわち、シール部材を固定する際にハウジング本体を扱う必要が無くなる。従って、シール部材が固定される被固定体の体格を小さくしてシール部材を簡易な態様にて固定することができる。また、シュラウド部材の構成が複雑なものとなることを好適に抑制しつつ、シール部材を容易に固定することができる。
【0022】
(10)請求項10に記載の発明は、インペラを囲繞するコンプレッサハウジングであって、筒状をなすとともにインペラに対して快削性を有する材料により形成されるシール部材を備え、同シール部材の内周面によりインペラの外周が覆われるコンプレッサハウジングの製造方法において、前記シール部材が固定されるシュラウド部材をコンプレッサハウジングのハウジング本体とは別体にて形成する工程と、前記シュラウド部材の内周面上に前記シール部材を直接成形する工程と、前記シュラウド部材に前記シール部材が形成された部分組立品を前記ハウジング本体に組み付ける工程とを備えることをその要旨としている。
【0023】
同構成によれば、シュラウド部材の内周面上にシール部材を直接成形する際にハウジング本体が不要となる。このため、シール部材が直接成形される被成形体の体格を小さくすることができる。従って、シール部材を直接成形する装置の体格を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る排気タービン過給機を構成するコンプレッサの断面構造を示す断面図。
【図2】同実施形態におけるコンプレッサハウジングについて、(a)コンプレッサハウジングの断面構造を部分的に示す部分断面図、(b)(a)のA方向から視た平面構造を示す平面図。
【図3】本発明の第2実施形態に係るシール部材を成形するための圧縮成形装置の断面構造を示す断面図であって、(a)圧縮前における断面構造を示す断面図、(b)圧縮後における断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
以下、図1及び図2を参照して、本発明を具体化した第1実施形態について詳細に説明する。
【0026】
図1に、本実施形態における排気タービン過給機(以下、過給機1と略す)を構成するコンプレッサ2の断面構造を示す。
以降において、インペラ3の軸線方向Cにおいて図1における右側を基端側と称し、図1における左側を先端側と称する。
【0027】
図1に示すように、過給機1のコンプレッサ2は遠心式圧縮機であり、図示しないタービンに軸連結されたインペラ3と、インペラ3を囲繞するコンプレッサハウジング10とを備えている。
【0028】
コンプレッサハウジング10は、コンプレッサ2の筐体であるハウジング本体20、ハウジング本体20の内部に設けられるシュラウド部材30及びリア部材40、並びにシュラウド部材30の内周面に圧入されるシール部材50とを備えている。すなわち、シュラウド部材30はハウジング本体20とは別体とされている。
【0029】
ハウジング本体20の内部には断面略半円状且つ全体として渦巻き状のスクロール空間Sを区画する内壁を有するスクロール部21が形成されている。また、スクロール部21の先端からは先端側に向けて延びる筒部22が形成されている。
【0030】
シュラウド部材30は略円筒状をなしており、その外周面には断面円弧状をなすとともにハウジング本体20のスクロール部21よりも基端側に位置してこれと共に上記スクロール空間Sを区画するスクロール部31が形成されている。
【0031】
シュラウド部材30の内周面32においてインペラ3の外周に対向する部分には全周にわたって溝部33が形成されている。この溝部33は基端側に開放されている。また、シュラウド部材30には溝部33の先端側に、先端側に向けて延びる筒状の延設部36が形成されており、この延設部36の外周面がハウジング本体20の筒部22の内周面に圧接されている。
【0032】
溝部33には略円筒状をなすシール部材50が圧入されている。この溝部33はインペラ3に対して快削性を有する樹脂材料によって形成されている。すなわち、シール部材50の内周面が所謂、アブレーダブルシールとして機能する。尚、シール部材50の軸線方向はインペラ3の軸線方向Cと同一である。
【0033】
リア部材40は略円筒状をなしており、その内周面は断面円弧状をなすとともにシュラウド部材30のスクロール部31よりも外周側に位置して同スクロール部31及びハウジング本体20のスクロール部21と共に上記スクロール空間Sを区画するスクロール部41が形成されている。
【0034】
尚、ハウジング本体20、シュラウド部材30、及びリア部材40は共に鋳造よって形成されている。
次に、図2を参照して、シュラウド部材30の形状及びシュラウド部材30に対するシール部材50の固定態様について詳細に説明する。
【0035】
図2(a)に、コンプレッサハウジング10の断面構造を部分的に示す。また、図2(b)に、図2(a)の矢印A方向から視た平面構造を示す。尚、図(2)(a)はシール部材50の内周面53が切削加工される前の断面構造を示している。
【0036】
図2(a)及び図2(b)に併せ示すように、シュラウド部材30は全体として略円筒状をなすとともに二つ割りの分割構造を有している。すなわち、シュラウド部材30は中心軸線Cに沿った平面Hによって第1シュラウド部材30aと、第2シュラウド部材30bとの分割構造とされている。
【0037】
図2(a)に示すように、第1シュラウド部材30aの溝部33aには内周側(図2(a)において上側)に突出した凸部35aが周方向全体(半周)にわたって形成されている。また、シール部材50の外周面51には第1シュラウド部材30aの凸部35aに嵌合する凹部55が周方向全体(全周)にわたって形成されている。また、シール部材50は二つ割りにされた一対のシュラウド部材30a,30bにより外周側から挟み込まれており、シール部材50の外周面51は第1シュラウド部材30aの溝部33aに圧接されている。また、シール部材50の先端面は溝部33aの段差部34aに圧接されている。尚、第2シュラウド部材30bの形状は第1シュラウド部材30aの形状と基本的に同一である。また、第2シュラウド部材30bに対するシール部材50の固定態様は第1シュラウド部材30aに対するシール部材50の固定態様と基本的に同一である。従って、ここでは説明を割愛する。
【0038】
次に、コンプレッサハウジング10の製造方法について説明する。
コンプレッサハウジング10の製造に際しては、まず、上記シール部材50単体を射出成形により形成する。また、上記ハウジング本体20、上記一対のシュラウド部材30a,30b、リア部材40をそれぞれ鋳造にて形成する。そして、一対のシュラウド部材30a,30bによりシール部材50を外周側から挟み込むことによって部分組立品SAとする。このとき、シュラウド部材30の溝部33aに形成された凸部35aをシール部材50の外周面51に形成された凹部55に嵌合させる。
【0039】
次に、ハウジング本体20の筒部22に対して基端側からシュラウド部材30の延設部36を圧入することによってハウジング本体20に部分組立品SAを組み付ける。
次に、ハウジング本体20に対して基端側からリア部材40を圧入することによってハウジング本体20にリア部材40を組み付ける。これにより、コンプレッサハウジング10の組み付けが完了する。
【0040】
次に、本実施形態の作用について説明する。
こうした過給機1では、内燃機関から排出される排気のエネルギによってタービンホイール(図示略)が回転駆動されると、タービンホイールに軸連結されたインペラ3が回転する。これにより、吸気がコンプレッサ2を通過する際に圧縮されることで過給が行なわれる。
【0041】
また、シール部材50が固定されるシュラウド部材30がコンプレッサハウジング10を構成するハウジング本体20とは別体にて形成されている。また、シュラウド部材30は全体として筒状をなすとともに二つ割りにされている。また、シール部材50は一対のシュラウド部材30a,30bにより外周側から挟み込まれている。このため、シール部材が固定される部位がハウジング本体と一体形成される構成とは異なり、シュラウド部材30に対してシール部材50を固定した後に、この部分組立品SAをハウジング本体20に組み付けることができる。すなわち、シール部材50を固定する際にハウジング本体20を扱う必要が無くなる。
【0042】
以上説明した本実施形態によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(1)コンプレッサハウジング10は、ハウジング本体20とは別体であってシール部材50の外周面が固設されるシュラウド部材30を備えている。こうした構成によれば、シール部材50が固定される被固定体(シュラウド部材30)の体格を小さくしてシール部材50を簡易な態様にて固定することができる。
【0043】
(2)シュラウド部材30は全体として筒状をなすとともに二つ割りにされており、シール部材50は二つ割りにされた一対のシュラウド部材30a,30bによって外周側から挟み込まれている。こうした構成によれば、シュラウド部材30の内周面にシール部材50を固定することが容易にできる。また、シール部材50を挟み込む上でシュラウド部材30が必要最小限に分割されているため、シュラウド部材30の構成が複雑なものとなることを好適に抑制することができる。
【0044】
(3)シュラウド部材30の溝部33aには凸部35aが形成され、シール部材50の外周面51には凸部35aに嵌合する凹部55が形成されている。こうした構成によれば、シュラウド部材30の溝部33aに形成された凸部35aと、シール部材50の外周面51に形成された凹部55とが互いに嵌合することによってシュラウド部材30からシール部材50が抜け出すことを好適に抑制することができる。
【0045】
また、例えば筒状のシール部材がその軸線方向に沿ってシュラウド部材に圧入される構成にあっては、こうした凸部及び凹部によって当該圧入自体が困難なものとなる。しかしながら、本実施形態の上記構成によれば、シュラウド部材30が二つ割りの分割構造とされており、2つに分割されたシュラウド部材30a,30bによって外周側からシール部材50を挟み込むことによってシール部材50が固定される。このため、上記凸部35a及び凹部55の存在がシュラウド部材30にシール部材50を固定する際に問題となることはない。
【0046】
(4)コンプレッサハウジング10の製造方法は、全体として筒状をなすとともに二つ割りにされてなるシュラウド部材30a,30bをコンプレッサハウジング10のハウジング本体20とは別体にて形成する工程と、円筒状をなすとともにインペラ3に対して快削性を有する樹脂材料により形成されるシール部材50を形成する工程とを備えている。また、コンプレッサハウジング10の製造方法は、一対のシュラウド部材30a,30bによりシール部材50を外周側から挟み込んだ部分組立品SAをハウジング本体20に組み付ける工程を備えている。こうした構成によれば、上記作用効果(1)、(2)を奏することができる。
【0047】
[第2実施形態]
以下、図3を参照して、本発明の第2実施形態について詳細に説明する。
尚、本実施形態では、シュラウド部材130の溝部133上に圧縮成形によりシール部材150を直接成形する点が先の第1実施形態と異なる。また、これら以外の構成は先の第1実施形態と基本的に同一であるため、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付すことにより重複する説明を割愛する。
【0048】
図3に、本実施形態のシール部材150を形成するための圧縮成形装置100の断面構造を示す。尚、図3(a)は圧縮前における断面構造を示す断面図であり、図3(b)は圧縮後における断面構造を示す断面図である。
【0049】
図3(a),(b)に併せ示すように、略円筒状をなす支持台101の内部空間には略円柱状をなす内周型102が下方から挿通されている。ここで、内周型102の下端部は支持台101の内径よりも拡径されている。また、内周型102の上端部は支持台101の上端部よりも上方に突出している。
【0050】
支持台101の上面には、略筒状をなすシュラウド部材130が載置されている。シュラウド部材130には先の第1実施形態の構成に対応した構成、すなわちスクロール部131、内周面132、溝部133、段差部134、凸部135、及び延設部136が形成されている。ここで、シュラウド部材130の延設部136の内径は内周型102の外径よりも僅かに大きくされている。
【0051】
シュラウド部材130の上面(基端側の端面)には、円筒状をなす内側ガイド部材103がシュラウド部材130と同軸上に載置されている。この内側ガイド部材103の内径はシュラウド部材130の溝部133の内径と同一とされている。
【0052】
支持台101、シュラウド部材130、及び内側ガイド部材103は全周にわたって円筒状をなす外側ガイド部材105により案内される。
また、圧縮成形装置100は略円筒状をなす上型104を備えている。この上型の下端部は、その内径が内周型102の外径よりも僅かに大きくされ、その外径は内側ガイド部材103の内径よりも僅かに小さくされている。また、上型の中央部は下端部よりも拡径され、上型の上端部は中央部よりも拡径されている。尚、この中央部の外径は外側ガイド部材105の内径よりも僅かに小さくされている。
【0053】
次に、圧縮成形装置100を用いたシール部材150の圧縮成形の手順について説明する。
図3(a)に示すように、まずは、シュラウド部材130の溝部133、段差部134、内側ガイド部材103、及び内周型102によって区画される略円筒状の空間に対して上方の開口から粒状の樹脂材料を導入する。
【0054】
次に、内側ガイド部材103の内周面と内周型102の外周面との間の空間に上方から上型104の下端部を挿入する。そして、既に導入されている樹脂材料に対して上型104により所定の圧力を印加することによりこれを圧縮する。これにより、シュラウド部材130の溝部133上に円筒状のシール部材150が圧縮成形される。
【0055】
こうしてシュラウド部材130にシール部材150が形成された部分組立品SA及びリア部材40を先の第1実施形態と同様にしてハウジング本体20に圧入することによりコンプレッサハウジング10の組み付けが完了する。
【0056】
以上説明した本実施形態によれば、上記第1実施形態の作用効果(1)に加えて、新たに以下に示す作用効果が得られるようになる。
(5)シール部材150はシュラウド部材130の溝部133上に圧縮成形により直接成形されている。こうした構成によれば、シュラウド部材130の内周面上にシール部材150を直接成形する際にハウジング本体が不要となる。しかも、シュラウド部材130がシール部材150を圧縮成形するための成形型の一部とされるため、成形型の体格を小さくすることができ、圧縮成形装置100の体格を小さくすることができる。また、圧縮成形によってシール部材150が形成されるため、シュラウド部材130に熱歪みが生じることはない。
【0057】
(6)シュラウド部材130の溝部133には凸部135が形成され、シール部材150の外周面151には凸部135に嵌合する凹部155が形成されている。こうした構成によれば、シュラウド部材130の溝部133に形成された凸部135と、シール部材150の外周面151に形成された凹部155とが互いに嵌合することによってシュラウド部材130からシール部材150が抜け出すことを好適に抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態の上記構成によれば、シュラウド部材130の溝部133上にシール部材150が直接成形される。このため、上記凸部135及び凹部155の存在がシュラウド部材130にシール部材150を固定する際に問題となることはない。
【0059】
(7)コンプレッサハウジングの製造方法は、シール部材150が固定されるシュラウド部材130をコンプレッサハウジング10を構成するハウジング本体20とは別体にて形成する工程、及びシュラウド部材130の溝部133上にシール部材150を直接成形する工程を備えている。また、コンプレッサハウジングの製造方法は、シュラウド部材130にシール部材150が形成された部分組立品SAをハウジング本体20に組み付ける工程とを備えている。こうした構成によれば、上記作用効果(5)を奏することができる。
【0060】
尚、本発明に係るコンプレッサハウジング、排気タービン過給機、及びコンプレッサハウジングの製造方法は、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、これを適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
【0061】
・上記各実施形態では、樹脂材料によって形成されるシール部材50について例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。インペラ3に対して快削性を有する材料であればインペラよりも脆弱な材料、例えば金属材料によってシール部材を形成するようにしてもよい。
【0062】
・上記実施形態では、ハウジング本体20とリア部材40とを別体にて形成したが、これに代えて、ハウジング本体とリア部材とを一体にて形成し、これら全体をハウジング本体とすることもできる。
【0063】
・上記各実施形態では、シール部材50の外周面51が軸線方向Cに沿うように形成されている。すなわち、シュラウド部材30の溝部33が軸線方向Cに沿うように形成されている。これに代えて、シール部材の外周面を基端側ほど同シール部材の中心軸線に近接するように傾斜する傾斜面とし、これに併せてシュラウド部材の溝部を基端側ほど上記中心軸線に近接するように傾斜する傾斜面とすることができる。この場合、シュラウド部材からシール部材が基端側に抜け出すことを一層抑制することができる。
【0064】
・上記各実施形態では、シュラウド部材30の溝部33aに1つの凸部35aが形成され、シール部材50の外周面51に1つ凹部55が形成されるものについて例示した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、シュラウド部材の溝部に軸線方向Cにおいて複数の凸部が形成され、これに対応するように、シール部材の外周面に軸線方向Cにおいて複数の凹部が形成されるものであってもよい。
【0065】
・上記各実施形態では、シュラウド部材30の溝部33aに凸部35aが形成され、シール部材50の外周面51に凸部35aに嵌合する凹部55が形成されるものについて例示した。これに代えて、シュラウド部材の溝部に凹部が形成され、シール部材の外周面に上記凹部に嵌合する凸部が形成されるものとしてもよい。この場合、シュラウド部材の凹部と、シール部材の凸部とが互いに嵌合することによってシュラウド部材からシール部材が抜け出すことを好適に抑制することができる。
【0066】
・上記各実施形態及びその変形例によるように、シュラウド部材の溝部に凸部或いは凹部を形成し、シール部材の外周面に上記凸部或いは凹部に嵌合する凹部或いは凸部を形成することが、シュラウド部材からシール部材が抜け出すことを好適に抑制する上では望ましい。しかしながら、例えば、前述したように、シール部材の外周面を基端側ほど同シール部材の中心軸線に近接するように傾斜する傾斜面とし、これに併せてシュラウド部材の溝部を基端側ほど上記中心軸線に近接するように傾斜する傾斜面とすることでシール部材の抜け出しが好適に抑制できる場合には、こうした凸部や凹部を割愛することもできる。
【0067】
・上記第2実施形態では、圧縮成形によってシール部材150を形成したが、本発明はこれに限られるものではない。シュラウド部材の内周面上にシール部材が直接形成されるものであればよく、射出成形によってシール部材を形成することもできる。この場合、シュラウド部材の内周面上にシール部材を射出成形する際にハウジング本体が不要となる。このため、シール部材が射出成形される被成形体の体格を小さくすることができ、射出成形装置の体格を小さくすることができる。
【0068】
・上記第1実施形態では、シュラウド部材30が2つに分割されるものについて例示したが、これに代えて、シュラウド部材が3つ以上に分割されるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…過給機、2…コンプレッサ、3…インペラ、10…コンプレッサハウジング、20…ハウジング本体、21…スクロール部、22…筒部、30,130…シュラウド部材、30a…第1シュラウド部材、30b…第2シュラウド部材、31,31a,131…スクロール部、32,32a,132…内周面、33,33a,133…溝部、34a,134…段差部、35a,135…凸部、36,36a,136…延設部、40…リア部材、41…スクロール部、50,150…シール部材、51,151…外周面、53,153…内周面、55,155…凹部、100…圧縮成形装置、101…支持台、102…内周型、103…内側ガイド部材、104…上型、105…外側ガイド部材、SA…部分組立品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラを囲繞するコンプレッサハウジングであって、筒状をなすとともにインペラに対して快削性を有する材料により形成されるシール部材を備え、同シール部材の内周面によりインペラの外周が覆われるコンプレッサハウジングにおいて、
コンプレッサハウジングのハウジング本体とは別体であって前記シール部材の外周面が固設されるシュラウド部材を備えてなる
ことを特徴とするコンプレッサハウジング。
【請求項2】
請求項1に記載のコンプレッサハウジングにおいて、
前記シュラウド部材は全体として筒状をなすとともに複数に分割されてなり、
前記シール部材は複数に分割された前記シュラウド部材により外周側から挟み込まれてなる
ことを特徴とするコンプレッサハウジング。
【請求項3】
請求項2に記載のコンプレッサハウジングにおいて、
前記シュラウド部材は二つ割りにされてなる
ことを特徴とするコンプレッサハウジング。
【請求項4】
請求項1に記載のコンプレッサハウジングにおいて、
前記シール部材は前記シュラウド部材の内周面上に直接成形されてなる
ことを特徴とするコンプレッサハウジング。
【請求項5】
請求項4に記載のコンプレッサハウジングにおいて、
前記シール部材は圧縮成形により形成されてなる
ことを特徴とするコンプレッサハウジング。
【請求項6】
請求項4に記載のコンプレッサハウジングにおいて、
前記シール部材は射出成形により形成されてなる
ことを特徴とするコンプレッサハウジング。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のコンプレッサハウジングにおいて、
前記シュラウド部材の内周面には凸部或いは凹部が形成され、
前記シール部材の外周面には前記凸部或いは凹部に嵌合する凹部或いは凸部が形成されてなる
ことを特徴とするコンプレッサハウジング。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のコンプレッサハウジングを備える排気タービン過給機。
【請求項9】
インペラを囲繞するコンプレッサハウジングであって、筒状をなすとともにインペラに対して快削性を有する材料により形成されるシール部材を備え、同シール部材の内周面によりインペラの外周が覆われるコンプレッサハウジングの製造方法において、
全体として筒状をなすとともに二つ割りにされてなるシュラウド部材をコンプレッサハウジングのハウジング本体とは別体にて形成する工程と、
前記シール部材を形成する工程と、
一対の前記シュラウド部材により前記シール部材を外周側から挟み込んだ部分組立品を前記ハウジング本体に組み付ける工程とを備える
ことを特徴とするコンプレッサハウジングの製造方法。
【請求項10】
インペラを囲繞するコンプレッサハウジングであって、筒状をなすとともにインペラに対して快削性を有する材料により形成されるシール部材を備え、同シール部材の内周面によりインペラの外周が覆われるコンプレッサハウジングの製造方法において、
前記シール部材が固定されるシュラウド部材をコンプレッサハウジングのハウジング本体とは別体にて形成する工程と、
前記シュラウド部材の内周面上に前記シール部材を直接成形する工程と、
前記シュラウド部材に前記シール部材が形成された部分組立品を前記ハウジング本体に組み付ける工程とを備える
ことを特徴とするコンプレッサハウジングの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−36440(P2013−36440A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175195(P2011−175195)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】