説明

コンベアチェーンの交換時期検出装置及びコンベアチェーンの交換時期検出方法

【課題】 磨耗が激しい1ピッチ分のチェーンのみを交換することを可能としたコンベアチェーンの交換時期検出装置と方法を提供する。
【解決手段】 投光−受光ユニット22が隣接する一方のドッグ11の後端を検出した時点で、同時に変位量測定ユニット23によって他方のドッグ11の後端の基準位置からのズレ量を制御装置20で算出し、その値が閾値を超えている場合には、塗装ガン24に作動信号を出力する。そして、前記ドッグ11が塗装ガン24の正面にきたならば、塗装ガン24からドッグ11に塗料を噴出し、交換すべき1ピッチ分を示す目印をドッグ11に付着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベアチェーンの伸びた部分を検知して所定の長さだけコンベアチェーンを交換する装置とその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場内における重量物の搬送にコンベアチェーンが用いられている。一般的なコンベアチェーンは一定間隔でドッグを備え、このドッグに重量物を引っ掛けて搬送するようにしている。
【0003】
コンベアチェーンは多数のリンクをピンで連結した構造であり、走行中には常に緊張と弛緩が繰り返され、その結果構成部品が磨耗し、コンベアチェーンが伸び、ドッグ間の距離も長くなってしまう。すると、重量物の取り上げのタイミングがずれてしまうなどの不具合が発生する。この不具合を解消する提案が特許文献1及び特許文献2になされている。
【0004】
特許文献1には、リンクチェーンコンベアを挟んで、トリガー用投光器−受光器対と、このトリガー用投光器−受光器対と所定距離だけ離れた位置に別の検出用投光器−受光器対をそれぞれ対向して配置し、トリガー用投光器−受光器対がリンクチェーンの端部を検知した時点での、別のリンクチェーン端部近傍における前記検出用投光器−受光器対の受光量を検出することにより、別のリンクチェーン端部の相対的位置変化を受光量の変化として検知するようにした測定方法が提案されている。
【0005】
特許文献2には、チェーンコンベアのチェーンの伸張度を測定するため、隣接する2つのローラ、ブッシュまたはピンに2つのレーザ光源よりレーザ光を照射し、このレーザ光が照射された部分を撮像装置により撮像し、隣接する2つのローラ、ブッシュまたはピンの中心位置間の距離を算出し、これと基準中心位置間距離を比較し、閾値を超えた場合、チェーン交換の警報を出力するようにした提案がなされている。
【0006】
【特許文献1】特開平7−285642号公報
【特許文献2】特開平10−332342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に提案される方法では、リンクチェーンの端部には常時潤滑油が付着し、また溶接ラインでリンクチェーンコンベアを使用した場合には、ヘム、ゴミ、煤などが付着するため、リンクチェーンの端部を正確に測定することが困難で、誤検出が多発する不具合がある。
【0008】
また、リンクチェーンには前記したように一定ピッチで搬送ハンガー(ドッグ)が取り付けられており、個々のリンクチェーン間の磨耗によるズレが閾値以下であっても1ピッチにすると、ズレが大きくなり、コンベア間において搬送ハンガーをプッシャーによって移載するとき、移載遅れが発生し、移載後のコンベアにおいて1ピッチ分の空きが生じ生産に支障を来たすおそれもある。
【0009】
特許文献2に提案される方法では、チェーンコンベア全体を交換することを前提としている。したがってまだ磨耗がすくなく使用に耐えられる部分があっても、その部分を含めて全体を交換するため、コスト高となっている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は、一定間隔でドッグが吊り下げられているコンベアチェーンの交換時期を検出する装置であって、この装置は、隣接する2つのドッグのうちの一方のドッグが測定範囲に入ったことを検知する検知装置と、この検知装置からの信号を受ける制御装置と、この制御装置からの作動信号を受けて前記一方のドッグの特定位置を検出する投光−受光ユニットと、前記制御装置からの作動信号を受けて他方のドッグの特定位置の基準位置からの変位量を検出する変位量測定ユニットと、この変位量測定ユニットの測定値に基づいて算出した2つのドッグ間ピッチが閾値を越えていた時に前記制御装置からの作動信号を受けて前記一方のドッグと他方のドッグとの間のコンベアチェーンの交換を指示する交換指示手段とを備える構成とした。
【0011】
具体的部材の配置例としては、前記一方のドッグの特定位置を検出する投光−受光ユニットを、他方のドッグの特定位置の基準位置からの変位量を検出する変位量測定ユニットよりも上流側に位置し、前記交換指示手段を投光−受光ユニットと変位量測定ユニットの間に位置せしめることが考えられるが、これに限定されない。
【0012】
また、前記交換指示手段としては、塗装ガンが簡単に配置できるため好ましいが、これに限定されない。
【0013】
また、本発明に係るコンベアチェーンの交換時期検出方法は、上記の検出装置を用いることを前提とし、前記検知装置によって隣接する2つのドッグのうちの一方のドッグが測定範囲に入ったことを前記検知装置によって検出して前記制御装置に検出信号を出力し、この検出信号を受けて前記制御装置は前記投光−受光ユニット及び変位量測定ユニットに作動信号を出力し、前記投光−受光ユニットは作動信号を受けて前記一方のドッグの特定位置を検出し、同時に前記変位量測定ユニットは作動信号を受けて前記他方のドッグの特定位置の基準位置からの変位量を測定し、この測定値に基づいて2つのドッグ間ピッチを算出し、この算出値が閾値を越えていた時に前記交換指示手段に前記制御装置から前記一方のドッグに交換すべき目印をつける作動信号を出力する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、磨耗が激しい1ピッチ分のチェーンを正確に特定することができるので、1ピッチ分だけ、つまり必要最小限の長さだけ交換すればよいので、交換に要する時間が短くて済み、コスト的にも有利である。
【0015】
また、1ピッチの測定をドッグで行うようにしているので、ヘム、塗装ミスト、ゴミ、煤などがドッグに堆積或いは付着しても、ドッグがハンガーと係合する際または離脱する際の衝撃で前記堆積物(付着物)は剥離、落下するため、堆積物(付着物)に起因する誤検出を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、図1は本発明に係るコンベアチェーンの交換時期検出装置の平面図、図2は同コンベアチェーンの交換時期検出装置の側面図、図3は図1のA−A線断面図、図4は図1のB−B線断面図、図5はコンベアチェーンのうちドッグを取り付けた部分の側面図、図6は図5を平面から見た図、図7は変位量測定ユニットを配置した部分の平面図である。
【0017】
図1,2において左から右に走行するコンベアチェーンは、90°位相が異なるリンク1,2をピン3で連結している。そして、各リンク1,2は互いに対向するリンク片1a,1a及び2a,2aからなり、リンク片2a,2a間にはセンタプレート4が介在している。
【0018】
前記リンク片1a,1a間にはピン5を介して水平ローラ6が回転自在に支持されている。一方、レール7はコ字状をなす左右の半体7a,7aを対向させて構成され、前記水平ローラ6はレール7の左右の半体7a,7aの内側面に当接することで、走行中の左右のブレと振動を吸収する。
【0019】
また前記リンク片2a,2aの外側にはピン8を介して1対の垂直ローラ9,9が回転自在に支持されている。この垂直ローラ9,9はレール7の左右の半体7a,7aの内側に折曲した底面に接触して転動する。
【0020】
また前記センタプレート4の下面には一対の支持プレート10が設けられ、この支持プレート10間にドッグ11の基端部が回動自在に支持され、更に一対の支持プレート10間には規制部材12が設けられ、この規制部材12によってドッグ11の時計方向の回転が規制される。その結果、ドッグ11はハンガーが取り付けられていない状態では先端が下方に傾いた図5に示す姿勢を維持する。
【0021】
前記ドッグ11の側面には後述する検知装置によって検出される反射マーカ13が磁石或いは接着剤によって取り付けられている。この反射マーカ13は全てのドッグに取り付けてもよいし、或いは1つおき2つおきなどのように所定の間隔を空けて取り付けてもよいし、任意のドッグに取り付けてもよい。
【0022】
一方、図中20は制御装置であり、この制御装置20には検知装置21、投光−受光ユニット22、変位量測定ユニット23、交換指示手段としての塗装ガン24と警告灯25と警告ブザー26およびサーボモータ27が接続されている。
【0023】
前記検知装置21は例えば発行素子と受光素子を組み込んで構成され、前記反射マーカ13を検出することで所定のドッグ11が測定範囲に入ったことを検知し、それを前記制御装置20に出力する。
【0024】
前記検知装置21からの検知信号を受けて制御装置20は、投光−受光ユニット22および変位量測定ユニット23に作動信号を出力する。
【0025】
投光−受光ユニット22はレーザ光の投光装置22aと受光装置22bをチェーンコンベアを挟んで対向配置し、遮光状態から受光状態になった時点つまりドッグの後端部が投光装置22aと受光装置22bの間から離れた時点をドッグ11の後端部の通過時点と判断する。
【0026】
一方、変位量測定ユニット23もレーザ光の投光装置23aと受光装置23bをチェーンコンベアを挟んで対向配置して構成され、特にこの変位量測定ユニット23にあっては、レーザ光の投光装置23aによる照射を所定の面積(図2の四角で囲った部分)とし、受光装置23bの受光面積も所定の面積としている。したがって、ドッグ11の後端の一部が照射領域にかかっている場合には、受光面積がそれだけ少なくなる。そこで予め検量しておいた基準の受光面積と当該受光面積とを比較することで、ドッグ11の後端のズレ量を知ることができる。
【0027】
投光−受光ユニット22が隣接する一方のドッグ11の後端を検出した時点で、同時に変位量測定ユニット23によって他方のドッグ11の後端の基準位置からのズレ量を制御装置20で算出し、その値が閾値を超えている場合には、前記塗装ガン24、警告灯25および警告ブザー26に作動信号を出力する。
【0028】
また、制御装置20は検知装置21が反射マーカ13を検出した時点からサーボモータ27の制御信号をカウントしており、反射マーカ13を検出した時点からのドッグ11の移動距離を正確に知ることができる。そこで、ドッグ11が塗装ガン24の正面にきたならば、塗装ガン24からドッグ11に塗料を噴出し、交換すべき1ピッチ分を示す目印をドッグ11に付着する。
【0029】
この後、上記1ピッチ分のチェーンコンベアを取り外して新規の1ピッチ分のチェーンコンベアを追加して交換作業は終了する。
【0030】
尚、図1および図2では、コンベアチェーンが左から右へ走行する例を説明したが、他の部材の配置をそのままにして、コンベアチェーンを右から左に走行させてもよい。
また、ドッグの移動距離を検出する手段として、モータは必ずしもサーボモータである必要はなく、塗装ガンの近傍にドッグを検出する接触式、非接触式のセンサを配設する構成でもよい。更に交換指示手段として塗装ガンは必ずしも必要ではなく、警告灯と警告ブザーの作動を作業者が認識し、作業者が塗料を塗布したり、テープを貼着する構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るコンベアチェーンの交換時期検出装置の平面図
【図2】同コンベアチェーンの交換時期検出装置の側面図
【図3】図1のA−A線断面図
【図4】図1のB−B線断面図
【図5】コンベアチェーンのうちドッグを取り付けた部分の側面図
【図6】図5を平面から見た図
【図7】変位量測定ユニットを配置した部分の平面図
【符号の説明】
【0032】
1,2…コンベアチェーンを構成するリンク、1a,2a…リンク片、3…ピン、4…センタプレート、5…ピン、6…水平ローラ、7…レール、7a,7a…レールの半体、8…ピン、9…垂直ローラ、10…支持プレート、11…ドッグ、12…規制部材、13…反射マーカ、20…は制御装置、21…検知装置、22…投光−受光ユニット、22a…投光装置、22b…受光装置、23…変位量測定ユニット、23a…投光装置、23b…受光装置、24…塗装ガン、25…警告灯、26…警告ブザー、27…サーボモータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定間隔でドッグが吊り下げられているコンベアチェーンの交換時期を検出する装置であって、この装置は、隣接する2つのドッグのうちの一方のドッグが測定範囲に入ったことを検知する検知装置と、この検知装置からの信号を受ける制御装置と、この制御装置からの作動信号を受けて前記一方のドッグの特定位置を検出する投光−受光ユニットと、前記制御装置からの作動信号を受けて他方のドッグの特定位置の基準位置からの変位量を検出する変位量測定ユニットと、この変位量測定ユニットの測定値に基づいて算出した2つのドッグ間ピッチが閾値を越えていた時に前記制御装置からの作動信号を受けて前記一方のドッグと他方のドッグとの間のコンベアチェーンの交換を指示する交換指示手段とを備えることを特徴とするコンベアチェーンの交換時期検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のコンベアチェーンの交換時期検出装置において、前記一方のドッグの特定位置を検出する投光−受光ユニットは他方のドッグの特定位置の基準位置からの変位量を検出する変位量測定ユニットよりも上流側に位置し、前記交換指示手段は投光−受光ユニットと変位量測定ユニットの間に位置することを特徴とするコンベアチェーンの交換時期検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコンベアチェーンの交換時期検出装置において、前記交換指示手段が塗装ガンであることを特徴とするコンベアチェーンの交換時期検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載のコンベアチェーンの交換時期検出装置を用いたコンベアチェーンの交換時期検出方法において、前記検知装置によって隣接する2つのドッグのうちの一方のドッグが測定範囲に入ったことを前記検知装置によって検出して前記制御装置に検出信号を出力し、この検出信号を受けて前記制御装置は前記投光−受光ユニット及び変位量測定ユニットに作動信号を出力し、前記投光−受光ユニットは作動信号を受けて前記一方のドッグの特定位置を検出し、同時に前記変位量測定ユニットは作動信号を受けて前記他方のドッグの特定位置の基準位置からの変位量を測定し、この測定値に基づいて2つのドッグ間ピッチを算出し、この算出値が閾値を越えていた時に前記交換指示手段に前記制御装置から前記一方のドッグと他方のドッグとの間のコンベアチェーンの交換を指示する作動信号を出力することを特徴とするコンベアチェーンの交換時期検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−127581(P2007−127581A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321999(P2005−321999)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】