説明

コンベア用洗浄ユニット

【課題】構成が簡単、スペースを取らず、既設のコンベアにも簡単に取付可能、装置全体の製作費、設置施工費、メンテナンス費が安価なコンベア用洗浄ユニットを提供する。
【解決手段】二股フォーク形状とした上下一対のノズルヘッド4、5と、該ノズルヘッドをコンベアフレーム1cに取り付けるための取付部材6とを備え、前記ノズルヘッドは、走行体1aの幅方向に配列された複数の噴射ノズル4a,5aを有し、各噴射ノズル4a,5aの噴射方向が、上下それぞれ走行体1aの進行方向に対して逆向き方向で、しかも、走行体1aの上下面に対して傾斜した状態に設定されていると共に、前記ノズルヘッドの連通管は、継ぎ手を介して高温・高圧の洗浄水供給手段に接続可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に食品、医薬品製造業界等で使用されるコンベアの洗浄ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄手段のないコンベアの洗浄は、定期的に、或いは、作業終了後、その他、必要時点で作業者がブラシを使用して手作業で洗浄している。
上記手作業による洗浄は、多大な労力が必要であり、洗浄ムラが避けられず、下面(裏面)側の洗浄が不可能ないし不十分となりやすく、作業時間も長くなり、非能率であるばかりでなく、細菌の残留など衛生上でも問題があった。
上記問題を解決するための洗浄装置をコンベアに取り付けたものは、既に種々提案されて公知である(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開昭53−69893号公報
【特許文献2】実開昭63−190213号公報
【特許文献3】特開平5−192064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の洗浄装置は、洗浄手段のない既設のコンベアに後から簡単に装着するようにしたものではなく、既設のコンベアに大幅な改造を必要とする点で問題があった。
例えば、上記特許文献1のものは、みそ又は麹の搬送用ベルトの返り側に該ベルトを挟んでその横幅一杯に射水する高圧水噴射孔を上下に設け、該ベルトの一部及び高圧水噴射孔を箱体で囲繞した洗浄装置を設け、該洗浄装置の後方に高温気体噴気孔を設け、ベルトの一部と高温気体噴気孔を前記とは別の箱体で囲繞した滅菌装置を連設し、さらに、該洗浄装置及び滅菌装置の後方に空気吹出口を設け、ベルトの一部と空気吹出口を前記とはさらに別の箱体で囲繞した通風乾燥装置を連設してもよいと記載している。
【0004】
上記特許文献1のものは、洗浄装置と滅菌装置と通風乾燥装置とをそれぞれ別の箱体に収納してそれぞれ別ユニットとしてコンベアに別々に取り付けるようにしているため、これら各装置の設置に広いスペースが必要となり、既設のコンベアに後から簡単に取り付けるには、多くの障害がある。例えば、洗浄装置と滅菌装置と通風乾燥装置とをそれぞれ別の箱体に収納してそれぞれ別ユニットとしているために、装置全体の製作費、設置施工費、メンテナンス費が嵩み、その上、既設のコンベアの大幅な改造が必要となるなどの問題点がある。
【0005】
また、特許文献2のものは、ベルト通溝を形成したケーシング内にベルト搬送面に沿って回転ブラシ洗浄手段、散水手段、乾燥手段、および薬液散布手段を並列配置するとともに、前記ケーシングをベルト通溝部でベルトコンベアに着脱可能としたベルトコンベアの洗浄滅菌装置を記載しているが、この装置においても、回転ブラシ洗浄手段、散水手段、乾燥手段、および薬液散布手段を並列配置したケーシングをコンベアフレームの側方から挿入及び抜脱可能とする必要があるために、既設のコンベアフレームの側面を大きく切除する必要があり、コンベアフレームの補強工事が別途必要となるのみならず、回転ブラシ洗浄手段、散水手段、乾燥手段、および薬液散布手段を別々に配列しているために装置全体の製作費、設置施工費、メンテナンス費が嵩むなどの問題点がある。なお、特許文献2の装置は、ベルトの上面だけを洗浄しているだけであり、下面を洗浄していないため、ベルト下面に細菌が付着繁殖し、衛生面でも問題がある。この場合、ベルト下面も同様に洗浄させることも可能であるが、そのようにした場合では、前記した問題点が益々大きくなる。また、上記回転ブラシ洗浄手段は、駆動モータをブラシ回転軸の端部に連結しておく必要があり、この手段全体の重量及び形態が大型化し、既設のコンベアフレームに後付けすることが困難となる問題点もある。
【0006】
更に、特許文献3のものは、洗浄液ノズルとすすぎ水ノズルとを兼用し、これとは別にロールブラシ及びエアーブローノズルをフードカバー内に連設した装置を記載しているが、この装置においても、洗浄液ノズルとは別にロールブラシ及びエアーブローノズルを配列しているため、広い設置スペースが必要となるのみならず、ロールブラシは軸の両端を支持し、駆動モータを連結する必要があるため、コンベアフレームの一側から挿脱する構造とすることが難しくなり、装置全体の製作費、設置施工費、メンテナンス費が嵩み、その上、既設のコンベアの大幅な改造が必要となるなどの問題点がある。
【0007】
このように、従来の洗浄装置は、既設のコンベアに後から簡単に装着するようにしたものではない。
そのため、従来の洗浄装置は、既設のコンベアを大幅に改造するか、或いは、コンベア全体を取り替え交換する必要があり、高額の設備投資が必要となるといった問題点があった。
本発明は、従来の洗浄装置の上記問題点に鑑みて開発されたものであって、その目的とするところは、構成が簡単で、スペースを取らず、既設のコンベアにも簡単に取り付けることができ、その上、装置全体の製作費、設置施工費、メンテナンス費が安価なコンベア用洗浄ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明は、コンベアの走行体の上面と下面に洗浄水を噴射することにより走行体の上面と下面を洗浄するためのコンベア用洗浄ユニットであって、該ユニットは、基端側を連通管により上下に連結し、先端側を上下に離隔分離させて二股フォーク形状とした上下一対のノズルヘッドと、該ノズルヘッドをコンベアフレームに取り付けるための取付部材とを備えており、前記ノズルヘッドは、走行体の幅方向に配列された複数の噴射ノズルを有し、各噴射ノズルの噴射方向が、上下それぞれ走行体の進行方向に対して逆向き方向で、しかも、走行体の上下面に対して傾斜した状態に設定されていると共に、前記連通管は、継ぎ手を介して高温・高圧の洗浄水供給手段に接続可能とされていることを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、コンベアフレームに取り付けるべき主要部材が上下一対のノズルヘッドだけからなるため構成が非常に簡単であり、スペースを取らないと共に、上下一対のノズルヘッドが二股フォーク形状の先端側をコンベアフレームの側方から走行体の上面と下面に向けて挿入して取付部材によりコンベアフレームに取り付ければよいため、既設のコンベアにも簡単に取り付けることができ、その上、装置全体の製作費、設置施工費、メンテナンス費が安価なコンベア用洗浄ユニットを提供することができる。そして、コンベアの走行体の上下面の付着物は、上下一対のノズルヘッドから高温・高圧の洗浄水を供給することによって、自動的に短時間で剥離除去して洗浄・殺菌消毒することができる。
【0010】
また、前記上下一対のノズルヘッドは、走行体の幅方向に配列された複数の噴射ノズルを有し、各噴射ノズルの噴射方向が、上下それぞれ走行体の進行方向に対して逆向き方向で、しかも、走行体の上下面に対して傾斜した状態に設定されているため、コンベアの走行体の上下面の付着物(例えば、原材料や製品カスなど)に対して高温・高圧の洗浄水を斜め方向から噴き付けて付着物を膨潤させながら走行体の上下面から積極的に剥離させることができる。この場合、走行体の上下面に対する付着物の剥離力は、噴射ノズルからの高温・高圧の洗浄水の噴射力に走行体の走行動作が加算されるため大きくなり、しかも、コンベアの走行体が噴射ノズルに向けて近づいてくるほど洗浄水の噴射力が強まるようになるため洗浄力が向上する。そして、この洗浄力は、コンベアの走行体の上下両面の幅方向全長に及ぶため、該走行体の上下面を幅方向全長に亘って効率よく洗浄・殺菌処理することができる。
【0011】
前記連通管は、継ぎ手を介して洗浄水供給手段又は乾燥用空気供給手段に切り替え接続可能とされていることを特徴としている。
上記構成によれば、上下一対のノズルヘッドを洗浄水の噴射手段と乾燥用空気の噴射手段とに兼用することができ、2種類のノズルヘッドを設けるものに比べて、取付スペースが半分で済み、既設のコンベアに取り付ける場合の後付けを容易とすることができる。なお、洗浄後、続けてコンベアを使用する場合は、洗浄水供給手段から乾燥用空気供給手段に切り替えて洗浄後のコンベアの乾燥を短時間で完了させることができるが、続けて使用しない場合には、乾燥用空気の供給をせず、自然乾燥させることもできる。
【0012】
前記洗浄水供給手段は、前記ノズルヘッドに高温・高圧の温水を供給するための高圧ポンプと高温水生成手段とを備え、それらが台車上に搭載され、前記連通管の継ぎ手にホースで接続・分離可能とされていることを特徴としている。
上記構成によれば、コンベアフレームから洗浄水供給手段を分離独立させることができ、洗浄水供給手段を移動させて複数のコンベアに対して共用可能とできる。
前記走行体の上面と下面とに接触可能な上下一対のスクレーパーが前記ノズルヘッドの設置位置よりも走行体の進行方向下流側に配置可能とされていることを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、ノズルヘッドからの洗浄水の噴射力で剥離除去できなかった走行体の付着物や残留物をスクレーパーで掻き取って確実に除去することができ、この場合、走行体の付着物や残留物に対して、先に洗浄水を吹き付けて膨潤軟化させた上でスクレーパーで掻き取らせることができるため、付着物や残留物の除去効率をアップさせることができる。
前記コンベアフレームには、前記ノズルヘッド及びスクレーパーに対応する水回収用受け箱がコンベアフレームにヒンジを介して開閉可能に設置されていることを特徴としている。
【0014】
上記構成によれば、ノズルヘッドから噴射される洗浄水及びスクレーパーで掻き取らせた洗浄水を回収してその飛散を防止することができると共に、点検時などには、水回収用受け箱をコンベアフレームに対してヒンジを中心として開放することができるため、ノズルヘッドの点検整備を容易に行うことができる。
前記水回収用受け箱は、回収された水を濾過して循環使用する手段に接続可能とされていることを特徴としている。
上記構成によれば、洗浄水の使用量を削減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、構成が簡単で、スペースを取らず、既設のコンベアにも簡単に取り付けることができ、その上、装置全体の製作費、設置施工費、メンテナンス費が安価なコンベア用洗浄ユニットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るコンベア用洗浄ユニットの実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3は、本発明に係るコンベア用洗浄ユニットの側面図、正面図及び平面図を示すもので、これらの図において、1はコンベア、2は本発明に係るコンベア用洗浄ユニットを示している。
コンベア1は、駆動ローラ(図示省略)と従動ローラ(図示省略)との間に無端状に張設されたベルトなどの走行体1aを有しており、被搬送物(図示省略)を一定方向に搬送するように構成されている。上記両ローラと、両ローラ間に適宜の間隔で設置されるガイドローラ1bとは、コンベアフレーム1cに回転自在に支持されている。コンベアフレーム1cは、走行体1aの幅方向両側全長に亘って設置されている。コンベア1の走行体1aは、被搬送物を搬送する送り側を上側とし、空で戻る戻り側を下側として並行に配置されている。
【0017】
本発明に係るコンベア用洗浄ユニット2は、コンベア1に対して、コンベア1の走行体1aの戻り側で該走行体1aの上面と下面に洗浄水を噴射することにより該走行体1aの上面と下面とを洗浄し、送風乾燥・殺菌処理させ得るように取付配置可能に構成されている。
上記ユニット2は、基端側を連通管3により上下に連結し、先端側を上下に離隔分離させて二股フォーク形状とした上下一対のノズルヘッド4、5と、該ノズルヘッド4、5をコンベアフレーム1cに取り付けるための取付部材6とを備えている。
【0018】
ノズルヘッド4、5の上下間隔は、個々のコンベア1に応じて連通管3の長さを適宜選択することにより設定変更可能とされている。また、上下のノズルヘッド4、5の長さは、コンベア1の走行体1aの幅方向寸法よりも長く設定されており、上下同じ長さとしてもよいが、本実施形態では、上側を短くし、下側を長くしている。このように上側を短くし、下側を長くすることによって、上側のノズルヘッド4の取付用孔1dをコンベア1の走行体1aの幅方向の片側のコンベアフレーム1cにだけ設ければよいようにしており、また、下側のノズルヘッド5をコンベア1の走行体1aの幅方向両側でコンベアフレーム1cの下面に取付部材6を介して両持ち状態に安定して取付支持させ得るようにしている。なお、コンベアフレーム1cへのノズルヘッド4、5の取付方法は、個々のコンベアフレーム1cの形状などに応じて適宜変更可能である。
【0019】
取付部材6は、上下一対のノズルヘッド4、5をコンベア1の走行体1aに対して、適切な高さ位置となるように、そして、コンベアフレーム1cに簡単に取り付け得るように構成されており、本実施形態においては、下側のノズルヘッド5を走行体1aの幅方向両側でコンベアフレーム1cに取り付け得るように構成されている。本実施形態における取付部材6は、上下に分割されたクランプ片6a、6bで構成され、上側のクランプ片6aをコンベアフレーム1cにボルト・ナットなどの締結具6cで取り付け、この上側のクランプ片6aに対して、下側のクランプ片6bをボルト・ナットなどの締結具6dで取り付けることにより下側のノズルヘッド5を上下のクランプ片6a、6bで挟持固定するようにしている。
【0020】
上記構成によって、上下一対のノズルヘッド4、5は、二股フォーク形状の先端側をコンベアフレーム1cの側方から走行体1aの上面と下面に向けて挿入及び抜脱可能とされている。
また、連通管3は、継ぎ手7を介して前記コンベア用洗浄ユニット2とは別ユニットとして構成された洗浄水供給手段8又は空気供給手段9にホース接続可能とされて高温・高圧の洗浄水又は乾燥用空気を切り替え供給可能とされている。上記継ぎ手7は、ホース接続及び分離を簡単に行うためのワンタッチカップリングが採用されている。
【0021】
洗浄水供給手段8は、図5〜図7に例示するように、前記ノズルヘッド4、5に高温・高圧の温水を供給するための高圧ポンプと高温水生成手段(図示省略)とを本体8a内に内蔵し、それらが台車8b上に搭載され、前記連通管3の継ぎ手7にホースで接続・分離可能とされている。本体8aの前面には、制御盤8cが設けられており、この制御盤8cに洗浄水供給手段8の運転操作釦、洗浄水温度設定器、洗浄時間設定タイマーなどが装備されている。
高温水生成手段は、電気温水機又はガス温水機その他、各種形式の熱交換機などにより高温水、例えば、70℃〜80℃の高温水を生成して高圧ポンプによりノズルヘッド4、5へ連続して供給しうる構成のものが適宜採用される。
【0022】
空気供給手段9は、図示を省略したが、コンプレッサーと空気タンクとを台車上に搭載装備した圧縮空気供給ユニットからなるか、又は、既存の圧縮空気供給設備が利用可能な場合では、その圧縮空気供給設備を利用することができ、いずれの場合においても、前記連通管3の継ぎ手7に、前記洗浄水供給手段8のホースと切り替えてホース接続可能とされている。
前記上下一対のノズルヘッド4、5は、走行体1aの幅方向に配列された複数の噴射ノズル4a、5aを有し、各噴射ノズル4a、5aの噴射方向が、上下それぞれ走行体1aの進行方向に対して逆向き方向で、しかも、走行体1aの上下面に対して傾斜した状態に設定されている。上記噴射ノズル4a、5aの噴射角度は、連通管3に対してノズルヘッド4、5を管軸回りで回動させることにより、所定角度に設定変更可能とされている。また、上記噴射ノズル4a、5aは、本実施形態では上下一対のノズルヘッド4、5に対して、3個設置した場合を例示しているが、設置個数は3個に限定されるものではなく、走行体1aの幅方向寸法に応じて適宜設定されるものである。
【0023】
前記コンベアフレーム1cには、前記ノズルヘッド4、5に対応する水回収用受け箱10がコンベアフレーム1cにヒンジ11(図4参照)を介して開閉可能に設置されている。水回収用受け箱10は、コンベア1の走行体1aの幅方向片側でコンベアフレーム1cにヒンジ11で取り付けられ、上記走行体1aの幅方向他側でコンベアフレーム1cに係脱操作部材12(図4参照)を介して係脱可能に係止されている。この係脱操作部材12は、基部12aを水回収用受け箱10に回動可能に枢着されたボルト形状先端部12bをコンベアフレーム1cの係止溝部(二股状部)に跨るように嵌合させて上から締付ハンドル12cを回動させて閉鎖状態に保持させる構成とされている。
【0024】
上記水回収用受け箱10は、図1〜図3に示すように、走行体1aの幅方向両側を覆う側壁10aと、走行体1aの進行方向前後を覆う前後壁10bと、傾斜底壁10cとを有し、ノズルヘッド4、5の設置範囲及びスクレーパー13、14の設置範囲を包囲して水の飛散を防止し、回収して出口10eから取り出せるように構成されている。側壁10aの上部には、下側のノズルヘッド5の位置に対応させて切り欠き凹部が形成されている。また、上記水回収用受け箱10の上面には、上部を被覆する上部カバー10dがコンベアフレーム1cに着脱可能に設置され、この上部カバー10dは、コンベア1の洗浄時に取り付けられ、通常時には被搬送物の搬送に支障とならないように取り外される。なお、上下一対のノズルヘッド4、5に取り付けられた噴射ノズル4a、5aは、洗浄水を走行体1aの進行方向に逆向きに噴射するので、この洗浄水の飛散を防止し、回収させるために、図1に示すように、上側の送り側の走行体1aと下側の戻り側の走行体1aとの間及び下側の戻り側の走行体1aの下側には、遮蔽板10f、10gがコンベアフレーム1cに取り付けられており、この遮蔽板10f、10gは、水回収用受け箱10とは別にコンベアフレーム1cに取り付けられており、これによって、水回収用受け箱10の開閉には無関係とされている。また、上記遮蔽板10f、10gは、上側の走行体1a及び下側の走行体1aの走行通過部にスリット10h、10iが形成されている。
【0025】
前記走行体1aの上面と下面とに接触可能な上下一対のスクレーパー13、14が前記ノズルヘッド4、5の設置位置よりも走行体1aの進行方向下流側に配置可能とされている。上記スクレーパー13、14は、取付部材15、16によりコンベアフレーム1cに高さ調整可能に取り付けられ、走行体1aの進行方向に対して中央から両側へ付着物を振り分けて除去するように横V字形とされている(図3参照)。このスクレーパー13、14は、コンベア1の非洗浄時には、走行体1aから離隔させ、洗浄時には走行体1aに接触させることができるようにコンベアフレーム1cの側方からワンタッチで操作可能とされている。
【0026】
前記水回収用受け箱10は、回収された水を濾過して循環使用する手段17に接続可能とされている。この手段17は、図8〜図10に例示するように、台車17a上に搭載されたタンク17bとポンプ17cを備えており、タンク17b内には濾過用スクリーン17dが着脱可能に設置されている。このタンク17bは、前記水回収用受け箱10の出口10eにホース(図示省略)を介して接続される入口17eを上部に有し、底部の出口17fがポンプ17cの吸い込み側に接続され、該ポンプ17cの吐出側がホース(図示省略)を介して前記洗浄水タンク8c又は仕上げ水タンク8bに接続可能とされている。
【0027】
上記タンク17b内には、フロートスイッチ17gが設置され、タンク17b内の水位が規定以下になると、フロートスイッチ17gにより、ポンプ17cの運転が自動的に停止するように構成されている。
本発明に係るコンベア用洗浄ユニット2の実施形態は、以上の構成からなるもので、次に、コンベア1への取付要領及び洗浄動作などを説明する。
先ず、上下一対のノズルヘッド4、5を取付部材6によりコンベアフレーム1cに取り付ける。この場合、コンベアフレーム1cの片側に上側のノズルヘッド4を挿入するための取付用孔1dを形成し、また、取付部材6の上側クランプ片6aを取り付けるボルト孔を明けて上側クランプ片6aを先に締結具6cでコンベアフレーム1cに取り付ける。そして、上下一対のノズルヘッド4、5を先端側から取付用孔1dに挿入し、下側ノズルヘッド5を下側クランプ片6bで挟んで上側クランプ片6aに締結具6dで締結する。上記締結時には、噴射ノズル4a、5aの噴射角度を所定角度に設定調節して取り付けるものである。
【0028】
次に、スクレーパー13、14を取付部材15、16を介してコンベアフレーム1cに取り付ける。続いて、水回収用受け箱10をコンベアフレーム1cにヒンジ11を介して取り付ける。そして、係脱操作部材12の嵌合する係止溝部(二股状部)を持つ部材をコンベアフレーム1cに取り付ける。さらに上部カバー10dをコンベアフレーム1cに取り付ける。
上記により、本発明に係るコンベア用洗浄ユニット2のコンベア1への取付作業は終了する。このように、本発明のコンベア用洗浄ユニット2の構成によれば、主要部材が上下一対のノズルヘッド4、5だけからなるため非常にシンプルであり、これによって、コンベア1への取付が簡単で、スペースを取らず、既設のコンベア1にも簡単な準備工事で取付設置が可能である。
【0029】
上記ノズルヘッド4、5に対して、先ず、洗浄水供給手段8を接続する。この洗浄水供給手段8は、ノズルヘッド4、5とは別体の台車8bに搭載してあり、ホースを介して連通管3に接続すればよく、この接続は、ワンタッチカップリング構造からなる継ぎ手7を介して行えばよいため、簡単迅速に行うことができる。
次に、スクレーパー13、14を走行体1aに接触させ、水回収用受け箱10の上部に上部カバ10dを取り付ける。そして、水回収用受け箱10の出口10eに排水ホースを接続するか、又は、回収水の濾過循環使用手段17にホース接続する。この状態で、洗浄水供給手段8の制御盤8cの洗浄水温度設定器で高温水の温度を設定し、また、洗浄時間設定タイマーで洗浄時間を設定して、運転操作釦をONにする。これにより、洗浄水供給手段8の本体8aに内蔵された高圧ポンプ及び高温水生成手段が作動し、高温・高圧の洗浄水がノズルヘッド4、5に向けて圧送され、噴射ノズル4a、5aからコンベア1の走行体1aの上下面に同時に噴き付けられる。
【0030】
上記噴射ノズル4a、5aは、コンベア1の走行体1aの上下面の付着物に対して高温・高圧の洗浄水を斜め方向から噴き付けて付着物を膨潤させながら走行体1aの上下面から積極的に剥離させることができる。この場合、走行体1aの上下面に対する付着物の剥離力は、噴射ノズル4a、5aからの高温・高圧の洗浄水の噴射力に走行体1aの走行動作が加算されるため大きくなり、しかも、コンベア1の走行体1aが噴射ノズル4a、5aに向けて近づいてくるほど高温高圧の洗浄水の噴射力が強まるようになるため洗浄力が向上する。そして、この洗浄力は、コンベア1の走行体1aの上下両面の幅方向全長に及ぶため、該走行体1aの上下面を幅方向全長に亘って効率よく洗浄・殺菌処理することができる。
【0031】
一般に、大腸菌や食中毒菌は、35℃〜37℃で最も増殖すると言われ、これらの細菌の増殖を防止するには、高温水による洗浄が良いとされ、例えば、サルモネラ菌の場合、72℃で1分以上加熱すれば死滅すると言われている。
上記洗浄において、ノズルヘッド4、5からの高温・高圧の洗浄水の噴射力で剥離除去できなかった走行体1aの付着物や残留物は、スクレーパー13、14で掻き取って確実に除去することができ、この場合、走行体1aの付着物に対して、先に高温・高圧の洗浄水を噴き付けて膨潤軟化させた上でスクレーパー13、14で掻き取らせることができるため、付着物の除去効率をアップさせることができる。
【0032】
上記洗浄中、水回収用受け箱10内に回収した温湯は、循環使用手段17により、濾過して再使用される。万一、渇水が発生すれば、ポンプ17cが自動的に停止され、そのことがブザーで報知されると共に、赤色ランプで点灯表示される。この場合には、洗浄水供給手段8に給水して再度運転を開始すればよい。
タイマーで設定した洗浄運転時間が経過すると、洗浄水供給手段8の高圧ポンプや循環使用手段17のポンプ17cが自動的に停止され、そのことをブザーなどで報知させる共に、赤色ランプで点滅表示させることができる。
【0033】
上記洗浄運転において、用途によっては洗浄水に洗剤を混入することも可能であるが、食品関係では、洗剤の残存を回避するために洗剤を使用せず、高温水のみで洗浄を行わせるのが好ましい。なお、洗剤を使用する場合には、高温水のみによる仕上げ洗浄を十分に行わせるようにすることも可能である。
上記洗浄後、続いて、コンベア1を使用する必要がある場合には、乾燥運転を行う。この場合は、上下一対のノズルヘッド4、5の連通管3に空気供給手段9のホースを付け替え接続する。この接続は、ワンタッチカップリング構造の継ぎ手7により簡単迅速に行うことが出来る。この接続が完了すれば、コンベア1を駆動して空気供給手段9からノズルヘッド4、5に乾燥用空気を圧送し、噴射ノズル4a、5aからコンベア1の走行体1aの上下面に噴き付けて乾燥させる。これを所定時間に亘って継続して乾燥させる。なお、コンベア1の洗浄後、次の使用時点までに時間的な余裕がある場合では、乾燥運転を省略して自然乾燥させることも可能である。
【0034】
このようにしてコンベア1の洗浄、殺菌処理が終了すれば、上部カバー10dを外し、スクレーパー13、14を走行体1aから離隔させ、水回収用受け箱10を開放して、上下のノズルヘッド4、5及びスクレーパー13、14並びに水回収用受け箱10内を洗浄しておく。また、回収水の濾過循環使用手段17のタンク17b内及び濾過用スクリーン17dの洗浄を行っておく。コンベア1が複数台ある場合には、上記動作を各コンベアについて順次行えばよい。
本発明に係るコンベア用洗浄ユニット2の実施形態は以上の構成と動作からなるが、本発明は、この実施形態にのみ制約されるものではなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内で自由に変更して実施することができる。例えば、本発明のコンベア用洗浄ユニット2は、既存のコンベアに後付することができ、勿論、新設されるコンベアに取り付けることもできる。その際、主要部品は標準化・汎用化して、条件の異なる個々のコンベアに対応させるようにすることができる。また、洗浄水供給手段8や回収水の濾過循環使用手段17は、実施形態以外の適宜の手段を採用してもよい。なお、本発明は、食品、医薬品、その他、衛生を必要とする用途で使用される搬送用コンベアの洗浄装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るコンベア用洗浄ユニットの実施形態を示す縦断側面図である。
【図2】その縦断正面図である。
【図3】その横断平面図で、下側のノズルヘッドとスクレーパーとを示す。
【図4】コンベアフレームへの水回収用受け箱の取付構造の説明図である。
【図5】洗浄水供給手段の概略正面図である。
【図6】その側面図である。
【図7】その平面図である。
【図8】回収水濾過循環使用手段の平面図である。
【図9】その側面図である。
【図10】その正面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 コンベア
1a 走行体
1c コンベアフレーム
2 コンベア用洗浄ユニット
3 連通管
4、5 上下一対のノズルヘッド
4a、5a 噴射ノズル
6 取付部材
7 継ぎ手
8 洗浄水供給手段
9 空気供給手段
10 水回収用受け箱
11 ヒンジ
12 係脱操作部材
13、14 スクレーパー
17 回収水濾過循環使用手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベア(1)の走行体(1a)の上面と下面に洗浄水を噴射することにより走行体(1a)の上面と下面を洗浄するためのコンベア用洗浄ユニット(2)であって、
該ユニット(2)は、基端側を連通管(3)により上下に連結し、先端側を上下に離隔分離させて二股フォーク形状とした上下一対のノズルヘッド(4,5)と、該ノズルヘッド(4,5)をコンベアフレーム(1c)に取り付けるための取付部材(6)とを備えており、
前記ノズルヘッド(4,5)は、走行体(1a)の幅方向に配列された複数の噴射ノズル(4a,5a)を有し、各噴射ノズル(4a,5a)の噴射方向が、上下それぞれ走行体(1a)の進行方向に対して逆向き方向で、しかも、走行体(1a)の上下面に対して傾斜した状態に設定されていると共に、前記連通管(3)は、継ぎ手(7)を介して高温・高圧の洗浄水供給手段(8)に接続可能とされていることを特徴とするコンベア用洗浄ユニット。
【請求項2】
前記連通管(3)は、継ぎ手(7)を介して洗浄水供給手段(8)又は乾燥用空気供給手段(9)に切り替え接続可能とされていることを特徴とする請求項1に記載のコンベア用洗浄ユニット。
【請求項3】
前記洗浄水供給手段(8)は、前記ノズルヘッド(4,5)に高温・高圧の温水を供給するための高圧ポンプと高温水生成手段とを備え、それらが台車上に搭載され、前記連通管(3)の継ぎ手(7)にホースで接続分離可能とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンベア用洗浄ユニット。
【請求項4】
前記走行体(1a)の上面と下面とに接触可能な上下一対のスクレーパー(13,14)が前記ノズルヘッド(4,5)の設置位置よりも走行体(1a)の進行方向下流側に配置可能とされていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のコンベア用洗浄ユニット。
【請求項5】
前記コンベアフレーム(1c)には、前記ノズルヘッド(4a,5a)及びスクレーパー(13,14)に対応する水回収用受け箱(10)がコンベアフレーム(1c)にヒンジ(11)を介して開閉可能に設置されていることを特徴とする請求項4に記載のコンベア用洗浄ユニット。
【請求項6】
前記水回収用受け箱(10)は、回収された水を濾過して循環使用する手段(17)に接続可能とされていることを特徴とする請求項5に記載のコンベア用洗浄ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−56482(P2008−56482A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239065(P2006−239065)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(506300350)株式会社高橋工作所 (2)
【Fターム(参考)】