説明

コークス原料を製造する廃棄物の押出し成形設備及びこれを用いた成形品の製造方法

【課題】成形する廃棄物の成分、水分等の変動幅が大きくなっても、成形製品がコークス原料として使用可能な品質を確保でき、しかも経済的でかつ安全に処理の自動化が可能な押出し成形機における成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】破砕されたプラスチック主体の廃棄物を押出し成形機14に投入して加熱状態で先部のノズル25から押し出して成形品38とし、更に成形品38を切断して、コークス原料として使用可能な塊状の成形製品13を製造する方法において、押出し成形機14には、成形品38の成形温度を測定する成形品温度センサー29と、廃棄物を加熱するヒータとが設けられ、成形品温度センサー29による測定値tが設定温度taを超えた場合に、投入された廃棄物に所定量の注水を自動的に行い、更に、成形品温度センサー29を監視しながらヒータの入切を行い、成形品38の処理温度を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、コークス炉設備の石炭代替原料に利用できるように、分別された家庭ごみ等のプラスチック系一般廃棄物を成形して、コークス原料を製造する押出し成形機における成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日大量に生産されているプラスチックは、微生物によっても分解されず、また空気中、水中でも安定しており、さらに燃焼させると発熱量が大きく高熱を出すため、ごみ処理焼却炉を傷める等の問題を有している。そこで、例えば、分別された家庭ごみ等のプラスチック系一般廃棄物の処理として、ごみの減容化が図られており、ごみの減容化のために押出し成形機によってごみをペレット状の成形品に成形している。
成形品の製造方法においては、例えば、圧縮梱包体のプラスチックを開梱、破砕、選別及び細破砕してから、細破砕されたプラスチックを定速回転のスクリュー式の押出し成形機に供給し、押出し成形機のスクリューの押出しによる圧縮、摩擦熱、プラスチック間の摩擦熱によって溶解し、ノズルを介して成形品を製造し、成形品を所定の長さに切断して塊状の成形製品を製造している。
【0003】
しかしながら、前記従来の押出し成形機における成形品の製造方法においては、ごみの埋立処分容量の削減を目的としているため、成形製品の品質管理(サイズ、嵩比重、塊率等)は行われておらず、また、一定の品質管理をしようとして、廃棄物の含水量に応じて水分量を調整しようとしても、水分量を連続的に測定する手段がなかった。このため、例えば、廃棄物に含まれる水分量が少ないときには、過熱により処理温度が適正な成形可能温度以上に上昇してしまい、熱可塑性樹脂が過剰に溶融した状態でノズルから押出されるため、成形物を切断し難くなり、押出し後に装置の周辺に付着して固化してしまい、このため装置の故障の原因となっていた。一方、廃棄物に含まれる水分量が多いときには、処理温度が適正な成形可能温度まで上昇せず、この結果、成形製品に粉が多く発生して崩壊しやすくなったり、又はサイズ調整のための切断処理時に粉が多く発生するという問題があり、成形製品を埋め立てる場合には、大した問題とはならなかったが、成形製品をコークス原料として有効利用することが困難であった。なお、押出し成形機にはヒータが設けられており、ヒータは立ち上げ時(運転開始時)にプラスチックを溶融するためのみ使用するが、過加熱による発火を防止するために通常運転時には停止させている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−178388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の課題を解決するために、出願人は特許文献1(特願2000−377825)において、処理温度が適正な成形可能温度を維持でき、これによってコークス原料として有効利用できる成形製品を製造できるようにするため、押出し成形機に投入された廃棄物に所定量の注水を自動的に行うことを特徴とする押出し成形機における成形品の製造方法を提案した。
しかしながら、この成形品の製造方法においては、ヒータは立ち上げ時のみ使用しており、成形品の温度を注水のみで制御するので、成形されるプラスチックの組成や、水分量の変動が大きい場合に、制御可能な温度範囲や応答性に限界があり、特に、水分の多いプラスチックを成形する場合には、注水量を0(零)にしても成形品の温度が所定の温度に達せず、コークス原料として満足できる性能の成形製品を製造することが出来ない恐れがあった。
また、スクリューの押出しによる圧縮、摩擦熱、プラスチック間の摩擦熱によってのみ成形可能温度を維持する方法であるため、電気エネルギーを機械エネルギー、さらに熱エネルギーに変換して成形する方法であり、より経済的な成形方法が望まれた。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、成形する廃棄物の成分、水分等の変動幅が大きくなっても、成形製品がコークス原料として使用可能な品質を確保でき、しかも経済的でかつ安全に、処理の自動化が可能な押出し成形機における成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る押出し成形機における成形品の製造方法は、破砕されたプラスチック主体の廃棄物を押出し成形機に投入して加熱状態で先部のノズルから押し出して成形品とし、更に該成形品を切断して、コークス原料として使用可能な塊状の成形製品を製造する方法において、押出し成形機には、成形品の成形温度を測定する成形品温度センサーと、廃棄物を加熱するヒータとが設けられ、成形品温度センサーによる測定値が設定温度になるように、投入された廃棄物に所定量の注水を自動的に行い、更に、成形品温度センサーを監視しながらヒータの入切を行い、成形品の処理温度を維持する。これによって、成形品の成形温度を注水量による制御と同時に、ヒータの入切による制御によって行うことができる。
【0007】
廃棄物中に含まれる熱可塑性樹脂を溶融、固化させるとき、熱可塑性樹脂の組成は一定ではなく、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン等の材料の構成の違いや、プラスチックの厚さの構成の違い等、また、含まれる水分量も一定にならないのが通常である。さらに、例えば、廃棄物中に含まれている水分量が多い場合には、スクリューと廃棄物との摩擦熱が不足し、廃棄物を固めることができず粉状の成形品となる。逆に、廃棄物中に含まれている水分量が少ないときに押出し成形する場合には、スクリューと廃棄物との摩擦熱が過剰となり、適正な成形温度範囲の上限値を超えてしまうことがある。上限値を超えた状態で成形を行ったときには、熱可塑性樹脂が半固形状物又は液状物の状態で押出し成形機から排出されるため、所定の形状を確保することが困難で、また、成形品同士が付着してしまうこともある。このような成形品はコークス原料のように品質を重視する製品として使用することができない。
しかしながら、本発明においては、成形品の処理温度が設定値になるように廃棄物に注水制御を行うと共に、成形品の処理温度を監視しながらヒータの入切を行なうようにしているので、成形品の成形温度を維持することができ、適正温度範囲内で成形を行うので、製品の品質を確保することができる。また、温度に応じて自動的に散水を行うと共に、ヒータの入切を自動的に行うので、操作者の勘にた頼ることなく、押出し成形機に投入される廃棄物の含有水分等の条件に応じて成形条件を確実且つ容易に制御することができる。
【0008】
本発明に係る押出し成形機における成形品の製造方法において、成形品温度センサーを監視しながらヒータの入切を行う制御は、成形品の設定温度とヒータの入切の温度とに差を持たせて行うこともできる。これによって、ヒータの使用割合を自由に変えることができ、例えば、成形品の設定温度よりヒータの入切の温度を高く設定すると、ヒータの使用割合が高い運転とすることができる。
本発明に係る押出し成形機における成形品の製造方法において、ノズルはダイスプレートに設けられ、成形品温度センサーは、成形品と直接又は間接的に接触するように、ノズル又はノズルに連通する孔を備えたダイスプレートに設けられ、成形品の処理温度は、100〜140℃の範囲にあるように構成することもできる。これによって、成形品温度センサーが成形品と直接接触する条件では、より正確な成形品の温度の測定ができる。一方、成形品温度センサーが成形品と間接的に接触する条件では、溶融状態にある熱可塑性樹脂、又は押出し後の成形品が移動して、安定して成形品の温度を測定することができない場合でも、成形品の外形を形成するノズル又はダイスプレートの温度を測定し、成形品の温度を間接的に測定することができ、また、移動する成形品の代わりに固定されたノズル又はダイスプレートの温度を測定するので、安定して温度を測定することができる。ここで、成形品の処理温度を100〜140℃の範囲にしている理由は、処理温度が100℃未満であれば成形品の品質が低下するためであり、一方、処理温度が140℃を超えると成形品が形成されず、また発火の恐れがあり、危険性が増すためである。
【0009】
本発明に係る押出し成形機における成形品の製造方法において、ヒータは、ダイスプレートに連接された加熱プレートに埋め込まれ、加熱プレートには、温度センサーがあって、温度センサーにより測定された加熱プレートの温度が異常温度になるとヒータの電源が切れるようにすることもできる。これによって、加熱プレートを介してノズルの付いたダイスプレートを加熱することができ、また、加熱プレートが異常温度になるとヒータの電源を切って加熱プレートの過加熱を防止することができる。なお、ヒータは、ダイスプレートに連接された加熱プレートに埋め込まれているが、より効果的な加熱を行うため、ヒータを直接ダイスプレートに埋め込むことも可能である。
本発明に係る押出し成形機における成形品の製造方法において、ヒータの入切は、成形温度より高い温度で行うこともできる。これによって、ヒータの使用割合が大きくなる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1〜5記載の押出し成形機における成形品の製造方法においては、成形品の成形温度を注水量による制御と同時に、ヒータの入切による制御によって行うことができるので、成形品の処理温度を維持することができ、適正温度範囲内で成形を行うので、製品の品質を確保することができる。また、成形品の温度に応じて自動的に散水を行うと共に、ヒータの入切を自動的に行うので、投入される破砕物の含有水分、成分等の変動に応じて、確実で容易に、且つ応答性の高い制御が行える。さらに、押出し成形機のスクリューによる電気エネルギーを、機械品(ギア等)を介して熱エネルギーに変換するというような効率の悪い割合が小さくなると共に、ヒータにより電気エネルギーを直接、熱エネルギーに効率よく変換することができるので、経済的な運転ができる。
【0011】
特に、請求項2記載の押出し成形機における成形品の製造方法においては、ヒータの使用割合を自由に変えることができ、例えば、成形品の設定温度よりヒータの入切の温度を高く設定すると、ヒータの使用割合が高い運転とすることができるので、さらに経済的な運転ができる。
請求項3記載の押出し成形機における成形品の製造方法においては、成形品に直接接触する成形品温度センサーによって、より正確な成形品の処理温度の測定ができるので、精度の高い制御ができる。一方、成形品温度センサーによって、成形品の外形を形成するノズル又はダイスプレートの温度を測定し、成形品の温度を間接的に測定することができるので、成形品温度センサーの使用期間が延びると共に、安定して温度を測定することができるので、成形品の品質を安定させることができる。さらに、成形品の処理温度を100〜140℃の範囲にしているので、成形品の品質が低下することがなく、しかも、発火の危険性も無くなる。
【0012】
請求項4記載の押出し成形機における成形品の製造方法においては、加熱プレートを介してノズルの付いたダイスプレートを加熱することができるので、摩耗して取り替える必要のあるノズルの付いたダイスプレートのみを、ヒータに関係なく交換することができる。また、加熱プレートが異常温度になるとヒータの電源を切って成形品の処理温度が高過ぎないようにできるので、発火の恐れが無くなる。
請求項5記載の押出し成形機における成形品の製造方法においては、ヒータの使用割合が大きくなるので、ヒータによる熱エネルギーの変換割合が大きくなり、より経済的となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
図1は本発明の一実施の形態に係る押出し成形機における成形品の製造方法の概略説明図、図2は同押出し成形機における成形品の製造方法を適用する廃棄物の押出し成形設備の構成図、図3は押出し成形機の押出部の詳細断面図である。
図1及び図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る押出し成形機における成形品の製造方法を適用する廃棄物の押出し成形設備10は、破砕されたプラスチック主体の廃棄物を搬送する供給コンベヤ11と、供給コンベヤ11の搬送端部の下方に配置され、ホッパー機能を有する定量供給機12と、定量供給機12から供給される廃棄物を、回転刃37により切断してコークス原料として使用可能な塊状の成形製品13にする前の成形品38に製造するための押出し成形機14とを有している。以下、図を参照しながら詳しく説明する。
【0014】
図2に示すように、別途破砕されたプラスチック主体の廃棄物は供給コンベヤ11により定量供給機12に搬送される。
定量供給機12は、平断面積が下方に沿って小さく形成されたホッパー15と、ホッパー15の底部に水平に配置されたスクリューフィーダ16と、ホッパー15内の上部に取付けられたブリッジブレーカー17とを備えている。
ブリッジブレーカー17は、スクリューフィーダ16の軸心と平行にホッパー15の内側の両側壁に架け渡されており、滞留した廃棄物を掻き落とすもので、例えば、モータによって所定速度で回転する回転軸に複数の掻き取りアームを取付けた構造のものを使用している。かかる構成によって、供給コンベヤ11からホッパー15へ投入された廃棄物は、ブリッジブレーカー17によりブリッジを形成することなく、スクリューフィーダ16によって安定的に移送され、定量供給機12の下方に配置された押出し成形機14に向けて一定量ずつ連続的に送り出される。
【0015】
図2に示すように、押出し成形機14のケーシング18の上部には、廃棄物を投入可能な開口部19が形成され、ケーシング18の内部には、スクリューフィーダ20の一対のスクリュー21が軸心を平行にしてそれぞれ水平に配置されている。また、図3にも詳細に示すように、一対のスクリュー21の軸方向のケーシング18の下流側端部には、加熱プレート22及び加熱プレート22の下流側に連接されたダイスプレート23が設けられている。ダイスプレート23の下流側には廃棄物の流れ方向に貫通した押出口24がそれぞれ形成されたノズル25が、一対のスクリュー21の軸心を中心とする周方向に多数設けられている。ノズル25は、一例として、孔径は25〜50mmである。図3に詳細に示すように、ダイスプレート23にはノズル25の押出口24に連通する孔26が形成されている。加熱プレート22及びケーシング18の下流側端部の内側には、耐摩耗性を備えた交換可能なライナー27、28が設けられている。
図2に示すように、成形品温度センサーの一例である熱電対29がノズル25に、複数箇所に設けられており、成形品38の成形温度を測定することができる。
【0016】
図3に詳細に示すように、ダイスプレート23にボルト等により取り外し可能に連接された加熱プレート22には、主としてダイスプレート23を加熱するヒータを構成する複数のヒータエレメント31が埋め込まれて取付けられている。また、加熱プレート22に埋め込まれた温度センサーの一例である熱電対30により加熱プレート22の温度を測定することができる。通常運転時、押出し成形機14の開口部19から投入された廃棄物中のプラスチックに含まれる熱可塑性樹脂は、一対のスクリュー21の回転、圧縮等による摩擦熱と、成形品38の成形温度を制御するために必要に応じて使用するヒータによる加熱によって溶融される。また、図1に示すように、熱電対29による成形品38の成形温度(成形品温度)の測定値tと、予め制御盤に入力されている設定値(ヒータの入・切の設定温度tb)とを比較してヒータの入切を自動制御している。即ち、t<tbでは、ヒータを「入」とし、t≧tbでは、ヒータを「切」としている。更に、加熱プレート22には、過熱防止用としても機能する熱電対30が設けられており、熱電対30によって加熱プレート22が異常温度(加熱プレート22の上限温度TH)を検出すると、ヒータの電源が自動的に切れるように制御している。
【0017】
図2に示すように、押出し成形機14の上方には、開口部19に向けて所定量の注水が可能な噴出ノズル32が設けられている。噴出ノズル32からの注水量の調整を行う流量調整弁33と、ノズル25に設けられた熱電対29は、温度指示調節計(TIC)34に電気配線を介してそれぞれ接続されている。
図1に示すように、温度指示調節計34は、PID制御機能を有しており、熱電対29による成形品38の成形温度の測定値tと、予め制御盤に入力されている設定値(成形温度の設定値ta)とを比較して所要の注水量を演算し、注水量調節計(FIC)35を介し流量調整弁33を開閉させ、成形品38の成形温度(処理温度)が設定値(設定温度)taとなるような注水所要量を供給するように制御している。
【0018】
図2に示すように、押出し成形機14のダイスプレート23の下流側には、モータ36に接続された回転刃37が設けられ、ノズル25から円筒状に成形されて押出された成形品38は所定長さごとに切断されて成形製品13となり、回転刃37の下方に落下し、集積されて次工程に搬送される。かかる構成によって、押出し成形機14のノズル25から押し出された成形品38を所定形状の成形製品13に効率よく製造することができる。
【0019】
次に、押出し成形機14を含む廃棄物の押出し成形設備10を適用した本発明の一実施の形態に係る押出し成形機における成形品の製造方法の手順について、図を参照して説明する。
(1)まず、図2及び図3に示すように、多数のヒータエレメント31に電流を流してヒータを入りにし、加熱プレート22及び加熱プレート22を介してダイスプレート23が加熱される。
(2)図1及び図2に示すように、加熱プレート22が所定の温度に達すると、定量供給機12のスクリューフィーダ16が所定速度で回転し、プラスチック主体の破砕物が押出し成形機14に連続的に供給される。供給された破砕物中のプラスチックに含まれる熱可塑性樹脂は、加熱プレート22及びダイスプレート23からの供給熱と、スクリュー21の回転、圧縮等による摩擦熱とによって、半溶融されながら、ダイスプレート23の孔26に押し込まれる。
【0020】
(3)図1及び図2に示すように、成形品38の成形温度が予め設定した設定温度になるように、押出し成形機14のスクリューフィーダ20に投入された破砕物には、温度指示調節計34による自動制御によって噴出ノズル32からの水分添加が制御されると共に、ヒータの入切が制御される。
(4)適正な成形温度に制御されて先部のノズル25から押し出された成形品38は、回転刃37により所定長さの成形製品13に切断される。
(5)成形製品13はコークス原料として使用可能な処理を行うために次工程に送られる。
【0021】
前記(3)の工程における温度指示調節計34による自動制御及びヒータの入切制御による成形品38の処理温度の制御について、図1及び図2を参照して、詳しく説明する。
制御盤には、以下の温度、即ち、目標とする成形品の成形温度ta、ヒータ入切の設定温度tb、及び加熱プレート22の上限温度THを予め入力しておく。ここで、説明を簡略にするため、ta=tbとして説明する。
【0022】
温度指示調節計34は、熱電対29を介して測定された成形品38の温度の測定値tと、予め入力されている設定温度ta(目標とする成形品の成形温度)とを比較して所要の注水量を演算し、注水量調節計35を介してPID制御により流量調整弁33を開閉させ、これによって、成形品38の成形温度が設定温度taとなるように制御している。これと同時に、成形品38の測定値tをヒータ入切の設定温度tbと比較してヒータの入・切(ON/OFF)制御を行う。即ち、測定値tが設定温度設定温度tb未満では、ヒータは常に入とし、一方、測定値tが設定温度tb以上では、ヒータは常に切とする。このように成形過程においてヒータによって熱を与えることにより、これまで成形温度を高くしないと成形できないような組成の破砕物や、水分量の多い破砕物に対しても所定の品質の成形品を自動で製造することが可能となる。また、モータ及び減速機を介して回転するスクリュー21とダイスプレート23の摩擦熱により破砕物に熱を与えるだけではなく、電気エネルギーをヒータの電熱線により直接破砕物に与えることにより、より経済性の高い自動運転が可能となる。
ヒータの入の状態が継続しており、しかも加熱プレート22に取付けた温度センサーである熱電対30を介して測定した加熱プレート22の測定値Tが加熱プレート22の上限温度THを超えれば、ヒータを切とする。また、ヒータは、成形品38の温度が設定温度taに達しない場合でも、上限温度THを超えれば、自動的に切となる。これにより、加熱プレート22やダイスプレート23が異常な高温になることを防ぎ、安全な運転が可能となる。
【0023】
上述のtb=taの条件においては、ヒータは成形温度taを境として入・切を繰り返すことになるが、tb>taとした場合には、ヒータは成形温度taよりやや高い温度で入・切を繰り返すことになる。例えば、ta=120℃、tb=122℃とすると、測定値tが122℃になるまでヒータは「入」状態であり、ヒータの使用割合が大きくなる。一方、tb<taとした場合には、ヒータは成形温度taより低い温度で入・切を繰り返すことになり、ヒータの使用割合が小さくなる。このような制御を行うことで、水分が多い傾向の破砕物の場合は、ヒータの使用率を上げて(ヒータによる加熱を重視した運転)成形品の品質を確保し、水分が少ない傾向の破砕物の場合は、ヒータの使用率を下げた(注水による冷却を重視した運転)経済的な運転となり、破砕物の組成に応じて適切な運転が可能となる。
【0024】
本実施の形態において、成形品温度センサーである熱電対29を成形品38と直接接触するようにノズル25に設けたが、これに限定されず、熱電対を成形品38に直接接触しないで、間接的にノズル25又はダイスプレート23に設け、その分、温度の補正を行って、成形品38の処理温度を推定することができる。さらに、成形品38の成形温度は、120℃として説明したが、これに限定されず、破砕物の種類(性状、水分や発熱量等)や破砕物の配合割合等を考慮して、100〜140℃の範囲とすることもできる。
【0025】
ヒータを構成する多数のヒータエレメント31を加熱プレート22に埋め込み、更に加熱プレート22に温度センサーを設けたが、これに限定されず、ヒータ(又はヒータエレメント31)をその他の場所に設け、また温度センサーを設けなくても構わない。また、ヒータはヒータエレメント以外の手段で構成することもできる。
処理温度を適正温度に保つ注水制御の方法として、PID制御としたが、これに限定されず、他の制御方法、例えば、比例制御、PI制御等も適用できる。
加熱プレート22を介してダイスプレート23を加熱したが、これに限定されず、ヒータを直接ダイスプレートに設け、ダイスプレートを直接加熱することもできる。
【0026】
スクリューフィーダ20に一対のスクリュー21を設けたが、これに限定されず、1本のスクリューを設けることもできる。
成形品の温度を測定する過熱防止のための温度センサーとして、加熱プレート22に取付けた熱電対30の代わりに放射温度計を用いて、押出口24から出てきた成形品38の温度を非接触で測定するように構成することも可能である。
また、押出し成形機の代わりに射出成形機を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態に係る押出し成形機における成形品の製造方法の概略説明図である。
【図2】同押出し成形機における成形品の製造方法を適用する破砕物の押出し成形設備の構成図である。
【図3】押出し成形機の押出部の詳細断面図である。
【符号の説明】
【0028】
10:廃棄物の押出し成形設備、11:供給コンベヤ、12:定量供給機、13:成形製品、14:押出し成形機、15:ホッパー、16:スクリューフィーダ、17:ブリッジブレーカー、18:ケーシング、19:開口部、20:スクリューフィーダ、21:スクリュー、22:加熱プレート、23:ダイスプレート、24:押出口、25:ノズル、26:孔、27、28:ライナー、29:熱電対(成形品温度センサー)、30:熱電対(温度センサー)、31:ヒータエレメント、32:噴出ノズル、33:流量調整弁、34:温度指示調節計、35:注水量調節計、36:モータ、37:回転刃、38:成形品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕されたプラスチック主体の廃棄物を押出し成形機に投入して加熱状態で先部のノズルから押し出して成形品とし、更に該成形品を切断して、コークス原料として使用可能な塊状の成形製品を製造する方法において、
前記押出し成形機には、前記成形品の成形温度を測定する成形品温度センサーと、前記廃棄物を加熱するヒータとが設けられ、前記成形品温度センサーによる測定値が設定温度になるように、投入された前記廃棄物に所定量の注水を自動的に行い、更に、前記成形品温度センサーを監視しながら前記ヒータの入切を行い、前記成形品の処理温度を維持することを特徴とする押出し成形機における成形品の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の押出し成形機における成形品の製造方法において、前記成形品温度センサーを監視しながら前記ヒータの入切を行う制御は、前記成形品の設定温度と前記ヒータの入切の温度とに差を持たせて行うことを特徴とする押出し成形機における成形品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の押出し成形機における成形品の製造方法において、前記ノズルはダイスプレートに設けられ、前記成形品温度センサーは、前記成形品と直接又は間接的に接触するように、前記ノズル又は前記ノズルに連通する孔を備えた前記ダイスプレートに設けられ、前記成形品の処理温度は、100〜140℃の範囲にあることを特徴とする押出し成形機における成形品の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の押出し成形機における成形品の製造方法において、前記ヒータは、前記ダイスプレートに連接された加熱プレートに埋め込まれ、該加熱プレートには、温度センサーがあって、該温度センサーにより測定された前記加熱プレートの温度が異常温度になると前記ヒータの電源が切れることを特徴とする押出し成形機における成形品の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の押出し成形機における成形品の製造方法において、前記ヒータの入切は、前記成形温度より高い温度で行われることを特徴とする押出し成形機における成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−15384(P2007−15384A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199785(P2006−199785)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【分割の表示】特願2001−375443(P2001−375443)の分割
【原出願日】平成13年12月10日(2001.12.10)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
【Fターム(参考)】