説明

コーストストップ車両及びコーストストップ車両の制御方法

【課題】コーストストップ中、コーストストップ開始時の変速段を維持し、運転者から加速要求があった場合は変速機をダウンシフトさせるコーストストップ車両において、ダウンシフトに要する時間を短縮し、加速要求に対する遅れを小さくする。
【解決手段】コントローラ12は、コーストストップ中、変速機のダウンシフト後の変速段を実現する変速後摩擦締結要素(Lowブレーキ32)に油圧を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行中にエンジンを自動停止させるコーストストップ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、燃料消費量低減を目的として、車両走行中にエンジンを自動停止させるコーストストップの技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−164143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コーストストップ中に運転者から加速要求があった場合は、その時点でエンジンを始動するとともに変速機をダウンシフトさせ、運転者からの加速要求に応えるようにすればよい。しかしながら、ダウンシフトに時間が掛かると、運転者が要求する駆動力が得られるまでに遅れが生じてしまう。
【0005】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、運転者から加速要求があった場合は変速機をダウンシフトさせるコーストストップ車両において、ダウンシフトに要する時間を短縮し、加速要求に対する遅れを小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、車両走行時にエンジンを停止させるコーストストップを行うコーストストップ車両であって、複数の変速段を有する変速機と、前記エンジンが停止している間に前記変速機に油圧を供給する油圧供給手段と、コーストストップ開始条件の成否を判断するコーストストップ開始条件判断手段と、前記コーストストップ開始条件判断手段によって前記コーストストップ開始条件が成立したと判断された時に前記エンジンを停止させ、コーストストップ中に運転者から加速要求を受けた場合に前記エンジンを始動させるコーストストップ制御手段と、コーストストップ中に運転者から加速要求を受けた場合は前記変速機をダウンシフトさせる変速制御手段と、コーストストップ中に、前記変速機のダウンシフト後の変速段を実現する変速後摩擦締結要素に油圧を供給する油圧制御手段と、を備えたことを特徴とするコーストストップ車両が提供される。
【0007】
本発明の別の態様によれば、エンジンと、複数の変速段を有する変速機と、前記エンジンが停止している間に前記変速機に油圧を供給する油圧供給手段と、を備え、車両走行時に前記エンジンを停止させるコーストストップを行うコーストストップ車両の制御方法であって、コーストストップ開始条件の成否を判断する手順と、前記コーストストップ開始条件が成立したと判断された時に前記エンジンを停止させ、コーストストップ中に運転者から加速要求を受けた場合に前記エンジンを始動させる手順と、コーストストップ中に運転者から加速要求を受けた場合は前記変速機をダウンシフトさせる手順と、コーストストップ中に、前記変速機のダウンシフト後の変速段を実現する変速後摩擦締結要素に油圧を供給する手順と、を含むことを特徴とするコーストストップ車両の制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
これらの態様によれば、コーストストップ中に加速要求があった場合に変速機をダウンシフトさせる場合であっても、ダウンシフト後の変速段を実現する摩擦締結要素への油圧が予め供給されているので、ダウンシフトに要する時間を短縮することができる。
【0009】
したがって、加速要求があった場合には、変速機を速やかにダウンシフトさせて、運転者が要求する駆動力を速やかに発生させ、加速要求に対する遅れを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るコーストストップ車両の概略構成図である。
【図2】コントローラの内部構成を示した図である。
【図3】変速マップの一例を示した図である。
【図4】コントローラによって実行される減速〜停止時の制御内容の内容を示したフローチャートである。
【図5】本実施形態の作用効果を説明するためのタイムチャートである。
【図6】本実施形態の作用効果を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、ある変速機構の「変速比」は、当該変速機構の入力回転速度を当該変速機構の出力回転速度で割って得られる値である。また、「最Low変速比」は当該変速機構の最大変速比、「最High変速比」は当該変速機構の最小変速比である。
【0012】
図1は本発明の実施形態に係るコーストストップ車両の概略構成図である。この車両は駆動源としてエンジン1を備え、エンジン1の出力回転は、ロックアップクラッチLCを有するトルクコンバータ2、第1ギヤ列3、無段変速機(以下、単に「変速機4」という。)、第2ギヤ列5、終減速装置6を介して駆動輪7へと伝達される。第2ギヤ列5には駐車時に変速機4の出力軸を機械的に回転不能にロックするパーキング機構8が設けられている。
【0013】
変速機4には、エンジン1の回転が入力されエンジン1の動力の一部を利用して駆動されるメカオイルポンプ10mと、バッテリ13から電力供給を受けて駆動される電動オイルポンプ10eとが設けられている。電動オイルポンプ10eは、オイルポンプ本体と、これを回転駆動する電気モータ及びモータドライバとで構成され、運転負荷を任意の負荷に、あるいは、多段階に制御することができる。また、変速機4には、メカオイルポンプ10mあるいは電動オイルポンプ10eからの油圧(以下、「ライン圧PL」という。)を調圧して変速機4の各部位に供給する油圧制御回路11が設けられている。
【0014】
ロックアップクラッチLCは、車速がロックアップ開始車速を超えた時に締結され、車速がロックアップ解除車速を下回った時に解放される。例えば、ロックアップ開始車速は6km/h、ロックアップ解除車速は12km/hに設定される。
【0015】
変速機4は、ベルト式無段変速機構(以下、「バリエータ20」という。)と、バリエータ20に直列に設けられる副変速機構30とを備える。「直列に設けられる」とはエンジン1から駆動輪7に至るまでの動力伝達経路においてバリエータ20と副変速機構30が直列に設けられるという意味である。副変速機構30は、この例のようにバリエータ20の出力軸に直接接続されていてもよいし、その他の変速ないし動力伝達機構(例えば、ギヤ列)を介して接続されていてもよい。あるいは、副変速機構30はバリエータ20の前段(入力軸側)に接続されていてもよい。
【0016】
バリエータ20は、プライマリプーリ21と、セカンダリプーリ22と、プーリ21、22の間に掛け回されるVベルト23とを備える。プーリ21、22は、それぞれ固定円錐板と、この固定円錐板に対してシーブ面を対向させた状態で配置され固定円錐板との間にV溝を形成する可動円錐板と、この可動円錐板の背面に設けられて可動円錐板を軸方向に変位させる油圧シリンダ23a、23bとを備える。油圧シリンダ23a、23bに供給される油圧を調整すると、V溝の幅が変化してVベルト23と各プーリ21、22との接触半径が変化し、バリエータ20の変速比が無段階に変化する。
【0017】
副変速機構30は前進2段・後進1段の変速機構である。副変速機構30は、2つの遊星歯車のキャリアを連結したラビニョウ型遊星歯車機構31と、ラビニョウ型遊星歯車機構31を構成する複数の回転要素に接続され、それらの連係状態を変更する複数の摩擦締結要素(Lowブレーキ32、Highクラッチ33、Revブレーキ34)とを備える。各摩擦締結要素32〜34への供給油圧を調整し、各摩擦締結要素32〜34の締結・解放状態を変更すると、副変速機構30の変速段が変更される。
【0018】
例えば、Lowブレーキ32を締結し、Highクラッチ33とRevブレーキ34を解放すれば副変速機構30の変速段は1速となる。Highクラッチ33を締結し、Lowブレーキ32とRevブレーキ34を解放すれば副変速機構30の変速段は1速よりも変速比が小さな2速となる。また、Revブレーキ34を締結し、Lowブレーキ32とHighクラッチ33を解放すれば副変速機構30の変速段は後進となる。以下の説明では、副変速機構30の変速段が1速である場合に「変速機4が低速モードである」と表現し、2速である場合に「変速機4が高速モードである」と表現する。
【0019】
各摩擦締結要素は、動力伝達経路上、バリエータ20の前段又は後段に設けられ、いずれも締結されると変速機4の動力伝達を可能にし、解放されると変速機4の動力伝達を不能にする。
【0020】
また、Lowブレーキ32に油圧を供給する油路の途中にはアキュムレータ(蓄圧器)35が接続されている。アキュムレータ35は、Lowブレーキ32への油圧の供給、排出に遅れを持たせるもので、N−Dセレクト時に油圧を蓄えることによってLowブレーキ32への供給油圧が急上昇するのを抑え、Lowブレーキ32が急締結してショックが発生するのを防止する。
【0021】
コントローラ12は、エンジン1及び変速機4を統合的に制御するコントローラであり、図2に示すように、CPU121と、RAM・ROMからなる記憶装置122と、入力インターフェース123と、出力インターフェース124と、これらを相互に接続するバス125とから構成される。
【0022】
入力インターフェース123には、アクセルペダルの操作量であるアクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ41の出力信号、変速機4の入力回転速度(=プライマリプーリ21の回転速度、以下、「プライマリ回転速度Npri」という。)を検出する回転速度センサ42の出力信号、車速VSPを検出する車速センサ43の出力信号、ライン圧PLを検出するライン圧センサ44の出力信号、セレクトレバーの位置を検出するインヒビタスイッチ45の出力信号、ブレーキ液圧を検出するブレーキ液圧センサ46、車体の傾斜(≒路面勾配)を検出する傾斜センサ47の出力信号等が入力される。
【0023】
記憶装置122には、エンジン1の制御プログラム、変速機4の変速制御プログラム、これらプログラムで用いられる各種マップ・テーブルが格納されている。CPU121は、記憶装置122に格納されているプログラムを読み出して実行し、入力インターフェース123を介して入力される各種信号に対して各種演算処理を施して、燃料噴射量信号、点火時期信号、スロットル開度信号、変速制御信号、電動オイルポンプ10eの駆動信号を生成し、生成した信号を出力インターフェース124を介してエンジン1、油圧制御回路11、電動オイルポンプ10eのモータドライバに出力する。CPU121が演算処理で使用する各種値、その演算結果は記憶装置122に適宜格納される。
【0024】
油圧制御回路11は複数の流路、複数の油圧制御弁で構成される。油圧制御回路11は、コントローラ12からの変速制御信号に基づき、複数の油圧制御弁を制御して油圧の供給経路を切り換えるとともにメカオイルポンプ10m又は電動オイルポンプ10eで発生した油圧から必要な油圧を調製し、これを変速機4の各部位に供給する。これにより、バリエータ20の変速比、副変速機構30の変速段が変更され、変速機4の変速が行われる。
【0025】
図3は記憶装置122に格納される変速マップの一例を示している。コントローラ12は、この変速マップに基づき、車両の運転状態(この実施形態では車速VSP、プライマリ回転速度Npri、アクセル開度APO)に応じて、バリエータ20、副変速機構30を制御する。
【0026】
この変速マップでは、変速機4の動作点が車速VSPとプライマリ回転速度Npriとにより定義される。変速機4の動作点と変速マップ左下隅の零点を結ぶ線の傾きが変速機4の変速比(バリエータ20の変速比に副変速機構30の変速比を掛けて得られる全体の変速比、以下、「スルー変速比」という。)に対応する。この変速マップには、従来のベルト式無段変速機の変速マップと同様に、アクセル開度APO毎に変速線が設定されており、変速機4の変速はアクセル開度APOに応じて選択される変速線に従って行われる。なお、図3には簡単のため、全負荷線(アクセル開度APO=8/8の場合の変速線)、パーシャル線(アクセル開度APO=4/8の場合の変速線)、コースト線(アクセル開度APO=0/8の場合の変速線)のみが示されている。
【0027】
変速機4が低速モードの場合は、変速機4はバリエータ20の変速比を最Low変速比にして得られる低速モード最Low線とバリエータ20の変速比を最High変速比にして得られる低速モード最High線の間で変速することができる。この場合、変速機4の動作点はA領域とB領域内を移動する。一方、変速機4が高速モードの場合は、変速機4はバリエータ20の変速比を最Low変速比にして得られる高速モード最Low線とバリエータ20の変速比を最High変速比にして得られる高速モード最High線の間で変速することができる。この場合、変速機4の動作点はB領域とC領域内を移動する。
【0028】
副変速機構30の各変速段の変速比は、低速モード最High線に対応する変速比(低速モード最High変速比)が高速モード最Low線に対応する変速比(高速モード最Low変速比)よりも小さくなるように設定される。これにより、低速モードでとりうる変速機4のスルー変速比の範囲(図中、「低速モードレシオ範囲」)と高速モードでとりうる変速機4のスルー変速比の範囲(図中、「高速モードレシオ範囲」)とが部分的に重複し、変速機4の動作点が高速モード最Low線と低速モード最High線で挟まれるB領域にある場合は、変速機4は低速モード、高速モードのいずれのモードも選択可能になっている。
【0029】
また、この変速マップ上には副変速機構30の変速を行うモード切換変速線が低速モード最High線上に重なるように設定されている。モード切換変速線に対応するスルー変速比(以下、「モード切換変速比mRatio」という。)は低速モード最High変速比と等しい値に設定される。モード切換変速線をこのように設定するのは、バリエータ20の変速比が小さいほど副変速機構30への入力トルクが小さくなり、副変速機構30を変速させる際の変速ショックを抑えられるからである。
【0030】
そして、変速機4の動作点がモード切換変速線を横切った場合、すなわち、スルー変速比の実際値(以下、「実スルー変速比Ratio」という。)がモード切換変速比mRatioを跨いで変化した場合は、コントローラ12は以下に説明する協調変速を行い、高速モード−低速モード間の切換えを行う。
【0031】
協調変速では、コントローラ12は、副変速機構30の変速を行うとともに、バリエータ20の変速比を副変速機構30の変速比が変化する方向と逆の方向に変更する。この時、副変速機構30の変速比が実際に変化するイナーシャフェーズとバリエータ20の変速比が変化する期間を同期させる。バリエータ20の変速比を副変速機構30の変速比変化と逆の方向に変化させるのは、実スルー変速比Ratioに段差が生じることによる入力回転の変化が運転者に違和感を与えないようにするためである。
【0032】
具体的には、変速機4の実スルー変速比Ratioがモード切換変速比mRatioをLow側からHigh側に跨いで変化した場合は、コントローラ12は、副変速機構30の変速段を1速から2速に変更(1−2変速、アップシフト)するとともに、バリエータ20の変速比をLow側に変更する。
【0033】
逆に、変速機4の実スルー変速比Ratioがモード切換変速比mRatioをHigh側からLow側に跨いで変化した場合は、コントローラ12は、副変速機構30の変速段を2速から1速に変更(2−1変速、ダウンシフト)するとともに、バリエータ20の変速比をHigh側に変更する。
【0034】
ただし、このようなダウンシフトを行うのはアクセル開度APOが所定の低開度(例えば、アクセル開度APO=1/8)よりも大きい状態(加速要求が基準値よりも大きい状態)で車両が減速した場合である。アクセル開度APOが所定の低開度よりも小さい状態(加速要求が基準値よりも低い状態)で車両が減速し、変速機4の実スルー変速比Ratioがモード切換変速比mRatioをHigh側からLow側に跨いで変化した場合は、副変速機構30のダウンシフトは行わず、副変速機構30の変速段は2速段のままでバリエータ20の変速比をLow側に変化させる。そして、副変速機構30のダウンシフトは車両が停車した後に行うようにし、イナーシャ変化による変速ショックを抑制する。
【0035】
また、減速中の燃料消費量を抑制し燃費を向上させるために、コントローラ12は、以下に説明するコーストストップを行う。
【0036】
コーストストップは、低車速域で車両が走行している間、エンジン1を自動的に停止(コーストストップ)させて燃料消費量を抑制する技術である。アクセルオフ時に実行される燃料カットとは、エンジン1への燃料供給が停止される点で共通するが、ロックアップクラッチLCが解放されている(∵ロックアップ解除車速≧後述するコーストストップ許可車速)のでエンジン1と駆動輪7との間の動力伝達経路が遮断され、エンジン1の回転が完全に停止する点において相違する。
【0037】
コーストストップを実行するにあたっては、コントローラ12は、まず、以下に示す条件a1〜a4:
a1:アクセルペダルから足が離されている(アクセル開度APO=0)
a2:ブレーキペダルが踏み込まれている(ブレーキ液圧が所定値以上)
a3:車速がコーストストップ許可車速(例えば、9km/h)以下
a4:ロックアップクラッチLCが解放されている
を判断する。これらの条件は、言い換えれば、運転者に停車意図があるかを判断するための条件である。
【0038】
コントローラ12は、これらの条件a〜dが全て成立した場合にコーストストップ開始条件成立と判断する。
【0039】
そして、コントローラ12は、コーストストップ開始条件成立と判断したら、エンジン1を停止させ、電動オイルポンプ10eの駆動を開始する。
【0040】
上記の通り、アクセル開度が所定の低開度よりも小さい状態(加速要求が基準値よりも大きい状態)で車両が減速する場合は、コントローラ12は副変速機構30の変速を行わないので、コーストストップ中、副変速機構30の変速段はコーストストップ開始時の変速段である2速段に維持される。そして、車両が停車したら、コントローラ12は、副変速機構30のダウンシフトを行い、車両の発進性能を確保する。
【0041】
また、コントローラ12は、コーストストップ中も上記条件a1〜a4がそれぞれ継続して成立しているか、及び、セレクトレバー操作を判定し、上記条件a1〜a4の一つでも成立しなくなる、セレクトレバー操作によって走行レンジがDレンジに操作される、または、セレクトレバーによってマニュアルモードが選択されてダウンシフト操作が行われるとコーストストップ解除条件成立と判定し、コーストストップを終了、すなわち、エンジン1を始動し、メカオイルポンプ10mが十分な油圧を発生するようになった時点で電動オイルポンプ10eを停止させる。
【0042】
特に、不成立になった条件がa1、すなわち、アクセルペダルが踏み込まれたこと、または、所定のセレクトレバー操作によることである場合は、運転者からの加速要求があるので、コントローラ12は、エンジン1を始動するだけでなく、駆動力を増大させて加速性能を確保するために、副変速機構30のダウンシフトを行う。
【0043】
さらに、停車中の燃料消費量を抑制し燃費を向上させるために、コントローラ12は、以下に説明するアイドルストップを行う。
【0044】
アイドルストップは、停車中にエンジン1を自動的に停止(アイドルストップ)させて燃料消費量を抑制する技術である。
【0045】
アイドルストップを実行するにあたり、コントローラ12は、以下に示す条件b1〜b8:
b1:車両が停車中(VSP=0)
b2:ブレーキペダルが踏み込まれている(ブレーキスイッチ46=ON)
b3:アクセルペダルから足が離されている(アクセル開度APO=0)
b4:エンジン1の水温が所定範囲Xe内
b5:変速機4の油温が所定範囲Xt内
b6:車体の傾斜(≒路面勾配)が所定値以下
b7:電動オイルポンプ10eの回転速度が所定値以下(過回転していない)
b8:副変速機構30の変速段が1速段
を判定する。そして、コントローラ12は、これらの条件b1〜b8が全て成立した場合にアイドルストップ開始条件成立と判定してアイドルストップを許可し、エンジン1を自動的に停止させる。
【0046】
エンジン1の水温の所定範囲Xeは、下限値がエンジン1の暖機が完了していると判断される温度に設定され、上限値がエンジン1のアフターアイドルが必要な高温域の下限に設定される。
【0047】
また、アイドルストップ中はメカオイルポンプ10mに代えて電動オイルポンプ10eを駆動し、電動オイルポンプ10eで発生させた油圧を変速機4の摩擦締結要素に供給する。したがって、変速機4の油温の所定範囲Xtは、作動油の粘度を考慮して電動オイルポンプ10eが正常に回転できる温度範囲に設定される。
【0048】
また、コントローラ12は、アイドルストップ中も上記条件b1〜b8がそれぞれ継続して成立しているかを判定し、一つでも成立しなくなるとアイドルストップ解除条件成立と判定し、アイドルストップを終了、すなわち、エンジン1を始動し、メカオイルポンプ10mが十分な油圧を発生するようになった時点で電動オイルポンプ10eを停止させる。
【0049】
車両が減速して停止する時は、コントローラ12は上記コーストストップとアイドルストップとを続けて実行することになる。図4は、コントローラ12が実行する減速〜停止時の制御内容を示したフローチャートである。これを参照しながら減速〜停止時の制御内容についてさらに説明する。
【0050】
まず、S11では、コントローラ12は、コーストストップ開始条件が成立したか判断する。コーストストップ開始条件は、上記条件a1〜a4が全て成立した場合に成立したと判断される。コーストストップ条件が成立したと判断されるまでS11の判断を繰り返し、成立したと判断された場合は処理がS12に進む。
【0051】
S12では、コントローラ12は、コーストストップを開始する。すなわち、エンジン1への燃料供給を停止し、エンジン1を停止させる。ロックアップ解除車速がコーストストップ許可車速よりも高く、コーストストップ開始前にロックアップクラッチLCが解除されているので、エンジン1への燃料供給を停止した後は、エンジン1の回転速度はゼロに向けて低下する。また、これに伴い、メカオイルポンプ10mの回転が低下し、吐出圧がゼロに近づく。
【0052】
S13では、コントローラ12は、電動オイルポンプ10eの駆動を開始する。電動オイルポンプ10eによって発生された油圧は、コーストストップ開始時の変速段を実現する摩擦締結要素、すなわち、2速段を実現するHighクラッチ33に供給され、Highクラッチ33の締結が維持される。同時に、電動オイルポンプ10eで発生した油圧は、コーストストップ開始時の変速段よりもLow側の変速段、すなわち1速段を実現する摩擦締結要素であるLowブレーキ32にも供給され、Lowブレーキ32が締結容量を発生する直前の状態(トルクを伝達可能になる直前の状態)に制御される。
【0053】
なお、S13の処理(電動オイルポンプ10eの駆動開始)はS12の処理(コーストストップの開始)と同時又は略同時に実行される。
【0054】
S14では、コントローラ12は、コーストストップ解除条件が成立したか判断する。コーストストップ解除条件は、上記条件a1〜a4のいずれかが不成立となった場合、または、所定のセレクトレバー操作(DレンジからLレンジへの切換操作、Dレンジからマニュアルモードへの切換及びダウンシフト操作)があった場合に成立したと判断される。コーストストップ解除条件が成立した場合は処理がS15に進み、そうでない場合は処理がS19に進む。
【0055】
S15では、コントローラ12は、運転者の加速要求を判断する。コーストストップが解除された原因が条件a1の不成立、すなわち、アクセルペダルの踏込みであった場合、または、所定のセレクトレバー操作による場合には、加速要求ありと判断され、それ以外の原因でコーストストップが解除された場合は加速要求なしと判断される。加速要求ありと判断された場合は処理がS16に進み、加速要求なしと判断された場合は処理がS18に進む。
【0056】
S16では、コントローラ12は、エンジン1のクランキング、及び、燃料噴射を開始し、エンジン1を始動する。S12でエンジン1への燃料噴射を停止してからの経過時間が短く、エンジン1がまだ回転しており、燃料噴射の再開のみでエンジン1を始動できる場合は、クランキングは行わずに燃料噴射のみが行われる。
【0057】
S17では、コントローラ12は、副変速機構30のダウンシフトを行う。1速段を実現するLowブレーキ32にはS13の処理により予め油圧が供給され、Lowブレーキ32は締結容量を発生する状態に制御されているの(S13の処理)で、副変速機構30のダウンシフトは速やかに行われる。
【0058】
S18の処理はS16の処理と同じで、コントローラ12は、エンジン1のクランキング、及び、燃料噴射を開始し、エンジン1を始動する。
【0059】
一方、コーストストップ解除条件が不成立と判断されて進んだS19では、コントローラ12は、車速VSPがゼロになったか、すなわち、車両が停車したかを判断する。車速VSPがゼロになった場合は処理がS20に進む。ゼロになっていない場合は処理がS14に戻り、コーストストップが継続される。
【0060】
S20の処理はS17の処理と同じで、コントローラ12は、副変速機構30のダウンシフトを行う。
【0061】
S21では、コントローラ12は、アイドルストップ開始条件が成立しているか判断する。アイドルストップ開始条件は、上記条件b1〜b8が全て成立した場合に成立したと判断される。アイドルストップ条件が成立したと判断された場合は処理がS22に進み、成立していないと判断された場合は、処理がS24に進む。
【0062】
S22では、コントローラ12は、アイドルストップを開始する。処理がS22に移行した時点でエンジン1が既に停止しているので、S22ではそのままエンジン1の停止を継続することになる。
【0063】
S23では、コントローラ12は、アイドルストップ解除条件が成立したか判断する。アイドルストップ解除条件は、上記条件b1〜b8のいずれかが不成立となった場合に成立したと判断される。アイドルストップ解除条件が成立するまで処理がS23にとどまり、成立した場合は処理がS24に進む。
【0064】
S24では、コントローラ12は、エンジン1のクランキング、及び、燃料噴射を開始し、エンジン1を始動する。
【0065】
このように、車両が減速して停止する時は、コーストストップとアイドルストップとが続けて実施され(S12、S22)、コーストストップ中に加速要求を受けると、エンジン1が始動されるとともに副変速機構30のダウンシフトが実行される(S14〜S17)。
【0066】
続いて、上記制御を行うことによる作用効果について説明する。
【0067】
図5は、車両が減速してそのまま停車し、その後しばらくしてから発進した時の様子を示している。
【0068】
時刻t11では、コーストップ開始条件が成立し、エンジン1が停止される。これにより、メカオイルポンプ10mの駆動が止まってその吐出圧がゼロになり、これに代えて電動オイルポンプ10eの駆動が開始される。
【0069】
電動オイルポンプ10eで生成された油圧は、Highクラッチ33に供給され、これによって、Highクラッチ33は締結状態を保ち、変速段は2速段に維持される。同時に、電動オイルポンプ10eで生成された油圧は、Lowブレーキ32にも供給され、Lowブレーキ32は締結容量が発生する直前の状態(トルクを伝達可能になる直前の状態)に制御される。
【0070】
時刻t12で車両が完全に停止すると、コーストストップからアイドルストップに移行し、副変速機構30の変速段が2速段から1速段に変更される。Lowブレーキ32には予め油圧が供給されているので、副変速機構30のダウンシフトは速やかに行われる。
【0071】
時刻t13でアクセルペダルが踏み込まれると、エンジン1が始動され、車両が加速する。メカオイルポンプ10mの吐出圧が上昇すると、電動オイルポンプ10eの駆動が停止される。
【0072】
Lowブレーキ32が締結されているのでエンジン1の吹け上がりが抑制され、運転者に与える違和感を低減することができる。すなわち、エンジン1が吹け上がるとその後エンジン1の回転速度が一旦落ち込み(図中破線で示すエンジン回転速度)、車速VSPが増加するにも関わらずエンジン1の回転速度の落ち込む状態となって運転者に違和感を与えるのであるが、エンジン1の吹け上がりを抑制することで、かかる違和感が低減される。
【0073】
また、図6は、車両が減速し、コーストストップ制御によってエンジン1が停止した直後に車を再加速させた時の様子を示している。
【0074】
時刻t21では、コーストップ条件が成立し、エンジン1が停止される。これにより、メカオイルポンプ10mの駆動が止まってその吐出圧がゼロになり、これに代えて電動オイルポンプ10eの駆動が開始される。
【0075】
電動オイルポンプ10eで生成された油圧は、Highクラッチ33に供給され、Highクラッチ33は締結状態を保ち、変速段は2速段に維持される。同時に、電動オイルポンプ10eで生成された油圧は、Lowブレーキ32にも供給され、Lowブレーキ32は締結容量が発生する直前の状態(トルクを伝達可能になる直前の状態)に制御される。
【0076】
時刻t22では、車両が停車する前、すなわち、車速VSPがゼロになる前にアクセルペダルが踏み込まれている。アクセルペダルが踏み込まれると、エンジン1が始動されるとともに、副変速機構30のダウンシフトが行われる。
【0077】
Lowブレーキ32には予め油圧が供給されているので、このようにエンジン1の停止直後にアクセルペダルが踏み込まれた場合であっても、副変速機構30を速やかにダウンシフトさせ、駆動力を増大させて良好な加速性能を得ることができる(請求項1、12に対応する作用効果)。Lowブレーキ32に供給する油圧はLowブレーキ32が締結容量を発生する直前の油圧であるので、ダウンシフトに要する時間は最小限まで縮められる(請求項3に対応する作用効果)。また、エンジン1の吹け上がり(図中破線で示すエンジン回転速度)が抑制されるので、運転者に与える違和感を低減することができる(図5の例と同様)。
【0078】
また、コーストストップ中、Highクラッチ33への油圧の供給は継続されるので、コーストストップ解除時にダウンシフトが行われない場合であっても、運転者が要求する駆動力が得られるまでに要する時間が短縮される(請求項2に対応する作用効果)。
【0079】
特に、本実施形態では、コーストストップ中、Highクラッチ33が締結状態に保たれるので、ダウンシフトを行わない場合は駆動力の発生遅れがなく、また、コーストストップ開始時の変速段が維持されるので変速ショックも抑制することができる(請求項3に対応する作用効果)。
【0080】
さらに、本実施形態ではコーストストップ開始と同時(略同時も含む)にLowブレーキ32への油圧の供給を開始しているので、エンジン1の回転速度がゼロになる前にアクセルペダルが踏み込まれた場合であっても、副変速機構30を速やかにダウンシフトさせることができる(請求項4に対応する作用効果)。この場合、エンジン1の回転速度が十分にあればエンジン1への燃料噴射を再開させるだけでエンジン1を始動することができる。
【0081】
このように、上記制御によれば、コーストストップ中の加速要求を受けて副変速機構30をダウンシフトさせる場合には、副変速機構30を速やかにダウンシフトさせて、運転者が要求する駆動力を速やかに発生させ、良好な加速性能を実現することができる(請求項1、12に対応する作用効果)。
【0082】
なお、本実施形態では、ダウンシフト後の変速段を実現するために締結する必要のある摩擦締結要素はLowブレーキ32一つであるが、そのような摩擦締結要素が複数ある変速機構の場合は、コーストストップ中、それら摩擦締結要素全てに予め油圧を供給しておく必要があることはいうまでもない。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形は本発明の適用例を示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0084】
例えば、上記実施形態では、コーストストップ開始と同時にLowブレーキ32への油圧の供給を開始しているが、Lowブレーキ32への油圧の供給を開始する時期をコーストストップ開始前まで早めても良い。例えば、コーストストップ許可車速(9km/h)よりも高い車速(例えば、12km/h)まで車速が低下したら、Lowブレーキ32への油圧の供給を開始するようにする。
【0085】
コーストストップ開始前であればエンジン1がまだ運転しておりメカオイルポンプ10mによって生成された油圧をLowブレーキ32に供給することができるので、Lowブレーキ32を締結容量が発生する直前の状態に制御するのに必要な電動オイルポンプ10eの負荷が下がり、電動オイルポンプ10eを小型化することができる(請求項5に対応する作用効果)。
【0086】
なお、コーストストップ開始前にLowブレーキ32への油圧の供給を開始する場合であっても、ロックアップクラッチLCが解放された後にLowブレーキ32への油圧の供給を開始するようにする。例えば、車速を条件にLowブレーキ32への油圧の供給を開始するのであれば、Lowブレーキ32への油圧の供給を開始する車速はロックアップ解除車速以下(本実施形態では12km/h以下)に設定する。
【0087】
これにより、仮にエンジン1が回転している間にLowブレーキ32がメカオイルポンプ10mの吐出圧の脈動を受けて締結容量を発生し、副変速機構30が一時的にインターロック状態となっても、ロックアップクラッチLCが解放されているので、ショックを緩和することができる(請求項6に対応する作用効果)。
【0088】
なお、本実施形態のようにロックアップ解除車速とコーストストップ許可車速が近接している場合は、Lowブレーキ32への油圧の供給を開始する車速をロックアップ解除車速に一致させるのが好適である。このような設定とすることで、ロックアップ解除前にLowブレーキ32に油圧が供給されるのを防止するとともに、制御を簡略化することができる。
【0089】
また、上記実施形態は、アクセル開度が所定の低開度よりも小さい状態(加速要求が基準値よりも小さい状態)で車両が減速する場合は副変速機構30をダウンシフトさせず、アクセル開度が所定の低開度よりも大きく(加速要求が基準値よりも大きく)、モード切換変速線によって決まるダウンシフト車速まで車速が低下した場合に副変速機構30をダウンシフトさせる構成であるが、車速がダウンシフト車速、または、余裕を持たせてダウンシフト車速+αの車速まで車速が低下したら、すなわち、車速がダウンシフト車速まで低下する以前にLowブレーキ32への油圧の供給を開始するようにしてもよい。
【0090】
これにより、良好な加速性能を得るのに副変速機構30のダウンシフトが必要となる車速域全域においてLowブレーキ32に予め油圧を供給しておくことができ、加速要求を受けた場合には副変速機構30を速やかにダウンシフトさせて、運転者が要求する駆動力を実現することができる(請求項7に対応する効果)。
【0091】
また、逆に、コーストストップ開始よりも後にLowブレーキ32への油圧の供給を開始するようにしてもよい。この構成によれば、仮にLowブレーキ32がメカオイルポンプ10mの吐出圧の脈動を受けて締結容量を発生し、副変速機構30がインターロック状態となっても、エンジン1が停止しているので、インターロックによるショックを緩和することができる(請求項8に対応する作用効果)。
【0092】
また、エンジン1の回転速度がゼロになる前にLowブレーキ32への油圧の供給を開始しておけば、エンジン1の回転速度がゼロになる前にアクセルペダルが踏み込まれても、エンジン1の回転速度がクランキング可能な回転速度以下であれば、エンジン1をクランキングして始動するとともに、副変速機構30をダウンシフトさせることができる(請求項8に対応する作用効果)。
【0093】
また、コーストストップ中、Highクラッチ33への供給圧を締結容量が発生する直前の油圧とし、Lowブレーキ32を締結状態としてもよい。すなわち、副変速機構30を予めダウンシフトさせておく。
【0094】
この構成によれば、加速要求を受けて副変速機構30をダウンシフトさせるのに要する時間がゼロになり、駆動力の発生遅れを無くすことができる(請求項9に対応する作用効果)。なお、ダウンシフトを行わず、コーストストップ開始時の変速段(2速段)のまま走行する場合は、Highクラッチ33を再締結する必要があるが、Highクラッチ33が締結直前の状態になっているので最締結に要する時間はごく僅かであり、また、加速要求がないため駆動力の発生が遅れても運転者に与える違和感は少ない。
【0095】
また、コーストストップ中、Highクラッチ33、Lowブレーキ32への供給圧をともに締結容量が発生する直前の油圧としてもよい。
【0096】
この構成によれば、加速要求を受けてダウンシフトを行う場合、ダウンシフトを行わず、コーストストップ開始時の変速段(2速段)のまま走行する場合、いずれの場合であっても、ごく短時間のうちに運転者が要求する駆動力を実現することができる(請求項10に対応する作用効果)。Highクラッチ33を締結状態に維持する上記実施形態と比べれば、コーストストップ開始時の変速段(2速段)のまま走行する場合に僅かな駆動力発生遅れが生じるが、加速要求がない状態での駆動力の発生が遅れであるので、運転者に与える違和感は少ない。
【0097】
また、副変速機構30は3段以上の変速段を有していてもよく、その場合、コーストストップ中は、車速が低下するにつれ締結容量が発生する直前の油圧を供給する摩擦締結要素を車速に応じてLow側の変速段の摩擦締結要素に順次切り換えるようにする。すなわち、加速要求があった場合に使用することになる変速段の摩擦締結要素に油圧が供給されるようにし、これによって加速時には最適な変速段にダウンシフトさせて、良好な加速性能を実現することができる(請求項11に対応する作用効果)。
【0098】
また、上記コーストップ制御は本実施形態のように副変速機構30を有する無段変速機4だけでなく、有段変速機構のみを備えた変速機であっても適用可能である。
【0099】
また、コーストストップ中に油圧を予め供給しておく摩擦締結要素によって実現される変速段は通常の変速で使用する変速段に限定されず、ある2つの変速段の中間変速段を実現できる場合はそのような中間変速段であってもよい。この場合、加速要求時には当該中間変速段を用いて加速するようにする。
【0100】
また、エンジン1の停止時にLowブレーキ32及びHighクラッチ33に油圧を供給する手段は、本実施形態では電動オイルポンプ10eであるが、エンジン1の運転中にメカオイルポンプ10mが発生した油圧を蓄えておくアキュムレータであってもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 エンジン
4 無段変速機
10m メカオイルポンプ
10e 電動オイルポンプ
12 コントローラ
20 バリエータ
30 副変速機構(変速機)
32 Lowブレーキ(変速後摩擦締結要素)
33 Highクラッチ(当初摩擦締結要素)
LC ロックアップクラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両走行時にエンジンを停止させるコーストストップを行うコーストストップ車両であって、
複数の変速段を有する変速機と、
前記エンジンが停止している間に前記変速機に油圧を供給する油圧供給手段と、
コーストストップ開始条件の成否を判断するコーストストップ開始条件判断手段と、
前記コーストストップ開始条件判断手段によって前記コーストストップ開始条件が成立したと判断された時に前記エンジンを停止させ、コーストストップ中に運転者から加速要求を受けた場合に前記エンジンを始動させるコーストストップ制御手段と、
コーストストップ中に運転者から加速要求を受けた場合は前記変速機をダウンシフトさせる変速制御手段と、
コーストストップ中に、前記変速機のダウンシフト後の変速段を実現する変速後摩擦締結要素に油圧を供給する油圧制御手段と、
を備えたことを特徴とするコーストストップ車両。
【請求項2】
請求項1に記載のコーストストップ車両であって、
コーストストップ中、コーストストップ開始時の変速段を実現する当初摩擦締結要素にも油圧を供給する、
ことを特徴とするコーストストップ車両。
【請求項3】
請求項2に記載のコーストストップ車両であって、
コーストストップ中、前記当初摩擦締結要素を締結状態とし、前記変速後摩擦締結要素への供給圧を締結容量が発生する直前の油圧とする、
ことを特徴とするコーストストップ車両。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載のコーストストップ車両であって、
前記油圧制御手段は、コーストストップ開始と同時に前記変速後摩擦締結要素への油圧の供給を開始する、
ことを特徴とするコーストストップ車両。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一つに記載のコーストストップ車両であって、
前記油圧制御手段は、コーストストップ開始前に前記変速後摩擦締結要素への油圧の供給を開始する、
ことを特徴とするコーストストップ車両。
【請求項6】
請求項5に記載のコーストストップ車両であって、
前記変速機はロックアップクラッチ付きトルクコンバータを有し、
前記油圧制御手段は、前記ロックアップクラッチが解放された後であってコーストストップ開始前に前記変速後摩擦締結要素への油圧の供給を開始する、
ことを特徴とするコーストストップ車両。
【請求項7】
請求項3に記載のコーストストップ車両であって、
前記変速制御手段は、コーストストップ中、運転者からの加速要求が基準値よりも小さい場合はコーストストップ開始時の変速段を維持し、前記基準値よりも大きい場合は車速がダウンシフト車速となった時に前記変速機をダウンシフトさせ、
前記油圧制御手段は、車速が前記ダウンシフト車速まで低下する以前に前記変速後摩擦締結要素への油圧の供給を開始する、
ことを特徴とするコーストストップ車両。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか一つに記載のコーストストップ車両であって、
前記油圧制御手段は、コーストストップ開始後、かつ、前記エンジンの回転速度がゼロになる前に前記変速後摩擦締結要素への油圧の供給を開始する、
ことを特徴とするコーストストップ車両。
【請求項9】
請求項1または2に記載のコーストストップ車両であって、
前記油圧制御手段は、コーストストップ中、コーストストップ開始時の変速段を実現する当初摩擦締結要素への供給圧を締結容量が発生する直前の油圧とし、前記変速後摩擦締結要素を締結状態とする、
ことを特徴とするコーストストップ車両。
【請求項10】
請求項1または2に記載のコーストストップ車両であって、
前記油圧制御手段は、コーストストップ中、コーストストップ開始時の変速段を実現する当初摩擦締結要素にも油圧を供給し、前記当初摩擦締結要素及び前記変速後摩擦締結要素への供給圧をそれぞれ締結容量が発生する直前の油圧とする、
ことを特徴とするコーストストップ車両。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一つに記載のコーストストップ車両であって、
前記変速機は3つ以上の変速段を有し、
前記油圧制御手段は、車速が低下するほどよりLow側の変速段を実現する摩擦締結要素を前記変速後摩擦締結要素として前記変速後摩擦締結要素に油圧を供給する、
ことを特徴とするコーストストップ車両。
【請求項12】
エンジンと、複数の変速段を有する変速機と、前記エンジンが停止している間に前記変速機に油圧を供給する油圧供給手段と、を備え、車両走行時に前記エンジンを停止させるコーストストップを行うコーストストップ車両の制御方法であって、
コーストストップ開始条件の成否を判断する手順と、
前記コーストストップ開始条件が成立したと判断された時に前記エンジンを停止させ、コーストストップ中に運転者から加速要求を受けた場合に前記エンジンを始動させる手順と、
コーストストップ中に運転者から加速要求を受けた場合は前記変速機をダウンシフトさせる手順と、
コーストストップ中に、前記変速機のダウンシフト後の変速段を実現する変速後摩擦締結要素に油圧を供給する手順と、
を含むことを特徴とするコーストストップ車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−112463(P2012−112463A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262435(P2010−262435)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】