ゴムクローラの製造方法
【課題】ゴムクローラにバリが発生するのを抑制し、ゴムクローラの生産性を向上させる。
【解決手段】外型3と内型10の間に空間を形成する。内型10は、外周に環状のゴムクローラの成型部を備える。外型3は、内型10の周方向の一部に組み合わされる。外型3と内型10の間の空間に未加硫ゴムを射出して、未加硫ゴムクローラ90の一部を成型する。空間の形成と未加硫ゴムの射出を内型10の全周で繰り返して、未加硫ゴムクローラ90を成型する。内型10と未加硫ゴムクローラ90を加硫缶に入れて、未加硫ゴムクローラ90を加硫する。
【解決手段】外型3と内型10の間に空間を形成する。内型10は、外周に環状のゴムクローラの成型部を備える。外型3は、内型10の周方向の一部に組み合わされる。外型3と内型10の間の空間に未加硫ゴムを射出して、未加硫ゴムクローラ90の一部を成型する。空間の形成と未加硫ゴムの射出を内型10の全周で繰り返して、未加硫ゴムクローラ90を成型する。内型10と未加硫ゴムクローラ90を加硫缶に入れて、未加硫ゴムクローラ90を加硫する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未加硫ゴムクローラを加硫してゴムクローラを製造するゴムクローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クローラ式の車両では、ゴム製のクローラ(ゴムクローラ)が使用されている。ゴムクローラは、ゴム等からなる構成部材により環状に形成される。また、ゴムクローラは、加硫機により加硫成型されて製造される。従来、ゴムクローラを帯状部材から形成する製造方法が知られている。
【0003】
図12は、従来の製造方法により製造されるゴムクローラを示す斜視図である。
ゴムクローラ100は、図示のように、帯状部材110から製造される。帯状部材110(図12A参照)は、未加硫ゴムにより帯状に形成され、プレス加硫機が備える上型と下型の間に挟み込まれる。プレス加硫機は、上型と下型により帯状部材110をプレスして、帯状部材110を成型する。同時に、帯状部材110を加熱して加硫する。帯状部材110の両端には、接合部111が設けられる。接合部111(図12B参照)は、重ねた状態で、接合用型により加硫されて接合される。これにより、ゴムクローラ100が環状に形成される。ゴムクローラ100の内周と外周には、複数の突起101、102が形成される。
【0004】
この従来の製造方法では、長尺状に延在する帯状部材110を、ゴムクローラ100の長さに接合部111の長さを加えた長さに形成する。その結果、上型と下型が長くなるため、プレス加硫機を設置するスペースが大きくなり、かつ、プレス加硫機のコストが高くなる。また、上型と下型により帯状部材110を一旦加硫した後、接合用型により接合部111を再び加硫する。そのため、ゴムクローラ100の製造工程が複雑になる傾向がある。ゴムクローラ100を少ない数だけ製造するときでも、長い上型と下型、及び、接合用型を予め準備する必要もある。従って、ゴムクローラ100をより簡便に製造する観点から、改良が求められている。
【0005】
これに対し、従来、環状の未加硫ゴムクローラを加硫して、接合部のないゴムクローラを製造する製造方法が知られている(特許文献1参照)。
従来のゴムクローラの製造方法では、成形ドラムの外周に、環状の未加硫ゴムクローラを形成する。未加硫ゴムクローラは、成形ドラムと環状の外型の間で加硫成型される。外型は、周方向に複数に分割され、未加硫ゴムクローラに押し付けられる。
【0006】
ところが、ゴムクローラの内周には複数の突起があるため、成形ドラムは、ゴムクローラから単純に取り外すことはできない。これに伴い、成形ドラムの構造は、複雑になる。外型は、分割して移動させるとともに、大きな荷重に耐えられるように形成する必要がある。そのため、外型は、大型になり、構造も複雑になる。また、外型は、ゴムクローラのトレッドパターン毎に、1周分作製する必要がある。従って、ゴムクローラを簡便に製造するのは難しく、複雑さに起因して、成形ドラムと外型に故障が発生する虞がある。成形ドラムと外型のコストも高くなる。
【0007】
未加硫ゴムクローラは、加硫中に熱膨張するため、膨張した未加硫ゴムが、成形ドラムや外型の隙間に入り込み、隙間内で加硫されることがある。これにより、加硫後のゴムクローラにバリが生じたときには、バリを複雑な形状のゴムクローラから除去する。また、バリが、成形ドラムや外型の隙間に残ったときには、高温の成形ドラムや外型を分解して清掃する。このように、バリが発生するときには、ゴムクローラの製造に要する手間や工数が増加するため、ゴムクローラの生産性が低下する。
【0008】
また、従来、筒型と外型の間に未加硫ゴムを充填し、外型内で未加硫ゴムを加硫するゴムクローラの成形方法が知られている(特許文献2参照)。
しかしながら、従来のゴムクローラの成形方法では、上記と同様に外型のコストが高くなる。外型の隙間にバリが発生する虞もある。加えて、分割された複数の外型により、未加硫ゴムを加硫しつつ、ゴムクローラを周方向に沿って順に形成する。ゴムクローラの最初と最後の部分は、完全には加硫せずに、繋いだ後に加硫を完了させる。そのため、ゴムクローラの製造工程が複雑になる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−291299号公報
【特許文献2】特開2002−301774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、簡便にゴムクローラを製造するとともに、ゴムクローラにバリが発生するのを抑制することである。また、ゴムクローラの生産性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、外周に環状のゴムクローラの成型部を備えた内型に未加硫ゴムクローラを形成する形成工程と、未加硫ゴムクローラを加硫する加硫工程とを有するゴムクローラの製造方法であって、前記形成工程が、内型の周方向の一部に組み合わされる外型と内型の間に空間を形成する第1の工程と、外型と内型の間の空間に未加硫ゴムを射出して未加硫ゴムクローラの一部を成型する第2の工程と、第1の工程及び第2の工程を内型の全周で繰り返して未加硫ゴムクローラを成型する工程とを有し、前記加硫工程が、内型と未加硫ゴムクローラを加硫缶に入れて、未加硫ゴムクローラを加硫する工程を有するゴムクローラの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡便にゴムクローラを製造できるとともに、ゴムクローラにバリが発生するのを抑制できる。また、ゴムクローラの生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の内型を示す斜視図である。
【図2】内型を図1のX−X線で切断した断面図である。
【図3】内型を図1の矢印Y方向から見た側面図である。
【図4】未加硫ゴムクローラの形成装置を示す斜視図である。
【図5】未加硫ゴムクローラを成型する外型と内型を示す図である。
【図6】形成途中の未加硫ゴムクローラと内型を示す図である。
【図7】トレッドゴムを形成する射出装置を示す斜視図である。
【図8】トレッドゴムを成型する外型と内型を示す図である。
【図9】未加硫ゴムクローラと内型を示す図である。
【図10】加硫機の要部を示す斜視図である。
【図11】未加硫ゴムクローラのホルダーを示す斜視図である。
【図12】従来の製造方法により製造されるゴムクローラを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のゴムクローラの製造方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態のゴムクローラの製造方法では、環状ゴムが設けられた環状の未加硫ゴムクローラを加硫して、ゴムクローラを製造する。ゴムクローラは、外周に環状のゴムクローラの成型部を備えた内型により製造される。環状ゴムは、環状に形成された未加硫ゴム部材であり、未加硫ゴムクローラに1又は複数設けられる。未加硫ゴムクローラは、未加硫ゴムにより無端状に形成された環状体であり、内型の外周(成型部)に形成される。ゴムクローラは、内型を備えた製造装置により、内型の周りで、環状の形状に、かつ、エンドレスな構造に形成される。
【0015】
図1は、内型を示す斜視図である。図2は、内型を図1のX−X線で切断した断面図である。
内型10は、図示のように、周方向に複数に分割された分割型である。内型10は、複数のセグメント11、12と、一対の固定部材13と、キャビティ14と、複数の凹部15とを有する。セグメント11、12は、それぞれ弧状に形成され、内型10の周方向に隙間なく組み合わされる。これにより、セグメント11、12は、全体として環状をなし、内型10の外周を構成する。固定部材13は、環状の固定リングであり、環状のセグメント11、12の側面に取り付けられる。固定部材13は、ボルト16により、各セグメント11、12に固定される。セグメント11、12は、固定部材13により、環状の形状で保持される。
【0016】
キャビティ14は、ゴムクローラの成型部10Aであり、内型10の外周に環状に形成される。キャビティ14は、セグメント11、12に凹状に形成され、内型10の周方向の全体に設けられる。キャビティ14は、ゴムクローラの内周側の形状と同じ形状をなし、未加硫ゴムクローラの内周部分を収容する。内型10は、キャビティ14内で、未加硫ゴムクローラの内周部分を成型する。凹部15は、キャビティ14内で、内型10の幅方向に並べて2つ(一対)配置される。一対の凹部15は、内型10の周方向に所定間隔で形成され、内型10の周方向の全体に設けられる。一対の凹部15内には、後述するように、ゴムクローラの芯金が配置される。セグメント11、12は、形状の異なる2種類の板状部材からなり、内型10の周方向に沿って交互に配置される。
【0017】
図3は、内型10を図1の矢印Y方向から見た側面図である。図3では、固定部材13を透視して、セグメント11、12を示している。
一方のセグメント11は、図示のように、側面から見て、内型10の半径方向内側に向かって次第に広がる形状に形成されている。他方のセグメント12は、側面から見て、内型10の半径方向外側に向かって次第に広がる形状に形成されている。セグメント11、12の端面11A、12Aは、同じ角度で傾斜する。端面11A、12Aが密着して、セグメント11、12が環状に組み合わされる。
【0018】
内型10をゴムクローラから取り外すときには、まず、一対の固定部材13をセグメント11、12から外す。次に、一方のセグメント11を、内型10の半径方向内側に移動させて、ゴムクローラ内から取り出す。続いて、他方のセグメント12を、内型10の半径方向内側に移動させて、ゴムクローラ内から取り出す。これにより、内型10を分解して加硫後のゴムクローラから取り外す。内型10を組み立てるときには、セグメント11、12を環状に配置して、一対の固定部材13を、ボルト16により、セグメント11、12に固定する。内型10の外周には、ゴムクローラの構成部材が順に配置されて、未加硫ゴムクローラが形成される。
【0019】
図4は、未加硫ゴムクローラの形成装置(以下、単に形成装置という)を示す斜視図である。本実施形態の形成装置1は、複数の装置により構成される。図4では、形成装置1の一部の装置を示している。
形成装置1は、図示のように、内型10の回転装置20と、未加硫ゴムの射出装置30(第1の射出装置)と、コードCの巻付装置40とを備えている。
【0020】
回転装置20は、支柱21と、支柱21に支持された回転軸22と、回転軸22に固定された保持部材23と、回転軸22を回転させる回転手段(図示せず)とを有する。内型10は、円盤状の保持部材23に取り付けられる。回転手段は、モータにより回転軸22を回転させて、保持部材23と内型10を回転させる。内型10は、回転装置20により、所定のタイミングで回転及び停止する。また、回転装置20は、内型10を所定の角度ずつ回転させる。
【0021】
射出装置30は、円筒状のシリンダ31と、円柱状のプランジャ32と、未加硫ゴムの押出機33と、ノズル34と、外型(第1の外型)2とを有する。また、射出装置30は、移動手段(図示せず)により移動する。押出機33は、シリンダ31に取り付けられ、シリンダ31内に未加硫ゴムを押し出す。シリンダ31内には、所定量の未加硫ゴムが充填される。プランジャ32は、シリンダ31内に押し込まれて、未加硫ゴムをシリンダ31から射出する。シリンダ31の先端には、ノズル34が取り付けられている。外型2は、ノズル34の先端に取り付けられ、内型10に向けて配置される。射出装置30は、未加硫ゴムをノズル34から外型2内に射出する。
【0022】
外型2は、ブロック状をなし、内型10の周方向の一部に組み合わされる。外型2の内型10に対向する面は、ゴムクローラを成型する成型部2Aであり、円弧状に形成されている。成型部2Aは、未加硫ゴムクローラが有する環状ゴムの周方向の一部を成型する。外型2は、内型10の外周に組み合わされて、内型10の周方向の所定範囲に配置される。移動手段は、射出装置30を内型10に接近させて、外型2を内型10に押し付ける。また、移動手段は、射出装置30を内型10から離して、外型2を内型10から離す。外型2は、射出装置30に1つ設けられて、未加硫ゴムクローラの周方向(循環方向)の一部を成型する。
【0023】
図5は、未加硫ゴムクローラを成型する外型2と内型10を示す図である。図5では、外型2と内型10を模式的に断面図で示している。図5Aでは、図2と同じ内型10を示す。図5Bでは、外型2と内型10を、図5Aの矢印Z方向から見て透視して示す。
図示のように、外型2が内型10に組み合わされたときに、外型2の下面(成型部2A)が、内型10の外周面(成型部10A)に対向する。成型部2Aは、内型10のキャビティ14内に配置されて、未加硫ゴムGの外周面を成型する。外型2に設けられた突起2Bは、内型10の凹部15内に配置される。キャビティ14外で、外型2の縁部が、内型10の外周面に接する。
【0024】
外型2は、キャビティ14内に、未加硫ゴムGが充填される空間17を区画する。空間17は、内型10の一部と外型2(成型部2A)の間に形成される。外型2は、ノズル34から空間17まで繋がる流路2Cを内部に有する。射出装置30は、未加硫ゴムGを流路2Cに射出し、内型10と外型2の間の空間17に未加硫ゴムGを充填する。未加硫ゴムGは、内型10と外型2により、空間17内で所定形状に成型される。これにより、内周ゴム91の一部が成型される。内周ゴム91は、ゴムクローラを構成する環状ゴムであり、未加硫ゴムクローラの内周に設けられる。
【0025】
内周ゴム91用の外型2(図5B参照)は、内型10の外周に、内周ゴム91の周方向の一部を成型する。続いて、外型2を内型10から離して、回転装置20により、内型10を回転させる。内型10は、外型2が成型する内周ゴム91の長さに応じた所定角度だけ回転する。外型2は、内型10の周方向に沿って相対的に移動する。これにより、内型10の外周で、内周ゴム91を成型する位置を変える。射出装置30は、成型済みの内周ゴム91に続けて、次の内周ゴム91の一部を成型する。形成装置1は、内型10を回転させて、空間17の形成と未加硫ゴムGの射出を内型10の全周で繰り返す。外型2は、内型10の外周に、内周ゴム91の一部を順に成型する。内周ゴム91は、内型10の周方向に沿って成型され、内型10の外周に環状に形成される。その後、内型10の外周に、他の構成部材を配置して、未加硫ゴムクローラを形成する。
【0026】
図6は、形成途中の未加硫ゴムクローラと内型10を示す図である。図6A、図6Bは、それぞれ図5A、図5Bに対応する図である。
図示のように、内周ゴム91を形成した後、複数の芯金92が内型10に配置される。芯金92に設けられた一対の突起92Aは、内型10の一対の凹部15に挿入される。芯金92は、内周ゴム91の外面に押し付けられ、内型10の外周に等間隔に配置される。
【0027】
続いて、一対の帯状の中間ゴム93が、内型10の外周に巻き付けられる。中間ゴム93は、内型10に1周配置されて、複数の芯金92を押さえる。複数の芯金92は、中間ゴム93の巻き付けまで、押さえ治具(図示せず)により押さえられる。その後、一対のコードCにより、一対の補強層94を形成する。補強層94は、ゴムクローラの構成部材であり、未加硫ゴムクローラの内部に設けられる。補強層94は、コードCからなり、ゴムクローラを補強する。一対のコードCは、巻付装置40により、中間ゴム93の外周に同期して巻き付けられる。
【0028】
巻付装置40(図4参照)は、コードCが巻き付けられた一対のロール41と、コードCの送出手段42と、コードCの計測手段43とを有する。コードCは、一対のロール41から送出手段42へ供給される。一対のコードCは、送出手段42に設けられた2つの回転体42Aに巻き付けられる。送出手段42は、回転体42Aを回転させて、一対のコードCを内型10へ向かって送り出す。一対のコードCは、送出手段42により、一定のテンションを維持して内型10へ供給される。計測手段43は、回転体42Aの回転を検出して、送り出されたコードCの長さを計測する。
【0029】
コードCの先端は、内型10上の中間ゴム93に押し付けられて、内型10に固定される。形成装置1は、内型10を回転させて、巻付装置40から一対のコードCを引き出す。巻付装置40は、変位機構(図示せず)により、一対のコードCを、内型10の幅方向に変位させる。これにより、コードCが、内型10の外周に螺旋状に巻き付けられる。
【0030】
本実施形態では、スチール製のコードC(スチールコード)を内型10に巻き付ける。また、一対のコードCは、巻付装置40により、内型10の幅方向の中央から両外側へ向かって巻き付けられる。巻付装置40は、一対のコードCを、内型10に同時に、かつ、対称に巻き付ける。これにより、内型10の外周に一対の補強層94を形成する。その後、内型10の外周にトレッドゴム(外周ゴム)が形成される。トレッドゴムは、ゴムクローラを構成する環状ゴムであり、未加硫ゴムクローラの外周に設けられる。形成装置1は、射出装置により、環状のトレッドゴムを、形成中の未加硫ゴムクローラの外周に形成する。
【0031】
図7は、トレッドゴムを形成する射出装置を示す斜視図である。図7では、形成後のトレッドゴム95も示す。
形成装置1は、図示のように、内型10の回転装置50と、未加硫ゴムGの射出装置60(第2の射出装置)とを備えている。回転装置50は、上記した回転装置20と同様に構成されている。即ち、回転装置50は、支柱51と、回転軸52と、保持部材53と、回転手段(図示せず)とを有する。回転装置50は、保持部材53により、補強層94を形成した内型10を保持し、内型10を回転させる。
【0032】
射出装置60は、上記した射出装置30と同様に構成されている。即ち、射出装置60は、シリンダ61と、プランジャ62と、押出機63と、ノズル64と、外型(第2の外型)3と、移動手段(図示せず)とを有する。未加硫ゴムGは、押出機63から押し出されて、シリンダ61内に充填される。射出装置60は、プランジャ62をシリンダ61内に押し込んで、未加硫ゴムGをノズル64から外型3内に射出する。
【0033】
外型3は、ブロック状をなし、内型10の周方向の一部に組み合わされる。外型3の内型10に対向する面は、ゴムクローラを成型する成型部3Aであり、円弧状に形成されている。成型部3Aは、トレッドゴム95の周方向の一部を成型する。外型3は、内型10の外周に組み合わされて、内型10の周方向の所定範囲に配置される。移動手段は、射出装置60を移動させて、外型3を内型10に押し付ける。また、移動手段は、外型3を内型10から離す。外型3は、射出装置60に1つ設けられて、トレッドゴム95の一部を成型する。これにより、未加硫ゴムクローラ90の周方向の一部を成型する。
【0034】
トレッドゴム95には、複数の突起96が形成される。突起96は、ゴムからなるブロック状のラグであり、未加硫ゴムクローラ90(トレッドゴム95)の外周に、周方向に沿って繰り返し設けられる。複数の突起96は、それぞれ未加硫ゴムクローラ90の幅方向に延び、トレッドゴム95の外周に等間隔に形成される。射出装置60は、外型3により、複数の突起96を1ユニット又は複数ユニットずつ成型する。本実施形態では、1つの突起96が、1ユニットを構成する。外型3は、1つの突起96を成型する。形成装置1は、突起96を1ユニットずつ成型して、トレッドゴム95を環状に形成する。
【0035】
図8は、トレッドゴム95を成型する外型3と内型10を示す図である。図8A、図8Bは、それぞれ図5A、図5Bに対応する図である。
外型3は、図示のように、凹状のキャビティ3Bと、流路3Cとを有する。キャビティ3Bは、成型部3Aであり、ゴムクローラの外周側の形状と同じ形状に形成されている。キャビティ3Bは、未加硫ゴムクローラ90の外周部分を成型する。流路3Cは、外型3の内部に設けられて、ノズル64からキャビティ3Bまで繋がる。外型3は、キャビティ3B内で、1つの突起96を成型する。
【0036】
外型3が内型10に組み合わされたときに、外型3の下面(成型部3A)が、内型10に対向する。外型3の縁部は、キャビティ3B外で、内型10の外周面に接する。外型3は、内型2との間に、未加硫ゴムGが充填される空間18を区画する。空間18は、内型10の一部と外型3(成型部3A)の間に形成される。射出装置60は、未加硫ゴムGを流路3Cに射出し、内型10と外型3の間の空間18に未加硫ゴムGを充填する。未加硫ゴムGは、内型10と外型3により、空間18内で所定形状に成型される。成型部3Aは、未加硫ゴムGの外周面を成型する。これにより、1つの突起96とトレッドゴム95の一部が成型される。同時に、トレッドゴム95内で、複数の突起96の間の部分も成型される。
【0037】
トレッドゴム95用の外型3(図8B参照)は、内型10の外周に、トレッドゴム95の周方向の一部を成型する。トレッドゴム95の一部には、1つの突起96が含まれる。続いて、外型3を内型10から離して、回転装置50により、内型10を回転させる。内型10は、外型3が成型するトレッドゴム95の長さに応じた所定角度だけ回転する。回転装置50は、隣り合う突起96の間隔分だけ内型10を回転させる。外型3は、内型10の周方向に沿って相対的に移動する。これにより、内型10の外周で、トレッドゴム95を成型する位置を変える。
【0038】
射出装置60は、成型済みのトレッドゴム95に続けて、次のトレッドゴム95の一部を成型する。次のトレッドゴム95は、前のトレッドゴム95の縁に接合される。形成装置1は、内型10を回転させて、空間18の形成と未加硫ゴムGの射出を内型10の全周で繰り返す。外型3は、内型10の外周に、トレッドゴム95の一部を順に成型する。トレッドゴム95は、内型10の周方向に沿って成型され、内型10の外周に環状に形成される。複数の突起96も、1つずつ順に成型され、トレッドゴム95の周方向の全体に配置される。
【0039】
図9は、形成後の未加硫ゴムクローラ90と内型10を示す図である。図9A、図9Bは、それぞれ図5A、図5Bに対応する図である。
未加硫ゴムクローラ90は、図示のように、内型10の外周に環状に形成される。続いて、内型10を回転装置50から取り外す。内型10と未加硫ゴムクローラ90は、一体のまま加硫機まで搬送される。
【0040】
図10は、加硫機の要部を示す斜視図である。
加硫機70は、図示のように、加硫缶71と、加熱媒体の供給手段(図示せず)とを備えている。加硫缶71は、圧力容器であり、容器72と蓋73とを有する。蓋73を容器72に組み付けることで、加硫缶71が密閉される。内型10は、容器72内に寝かせて配置される。内型10と環状の未加硫ゴムクローラ90は、加硫缶71内に一体に収容される。加硫機70は、供給手段により、加硫缶71内に所定温度の加熱媒体を供給する。未加硫ゴムクローラ90は、加熱媒体により加硫缶71内で加熱される。
【0041】
本実施形態では、130℃〜180℃に加熱した蒸気を加硫缶71内に注入する。蒸気の温度と圧力により、未加硫ゴムクローラ90の加硫を進行させる。これにより、未加硫ゴムクローラ90を、加硫用外型を使用せずに、内型10の外周で加硫する。加硫完了後、内型10と加硫後のゴムクローラ97を加硫缶71から取り出す。内型10を分解して、ゴムクローラ97から内型10を取り外す。
【0042】
次に、ゴムクローラ97を製造する手順と工程を説明する。
まず、射出装置30の外型2(図4、図5参照)により、内型10に、内周ゴム91の一部を順に成型して、環状の内周ゴム91を形成する。その際、内型10と外型2の間に空間17を形成し、空間17に未加硫ゴムGを射出する。これにより、内周ゴム91の周方向の一部を成型する。また、内型10を回転させて、空間17の形成と未加硫ゴムGの射出を内型10の全周で繰り返し、内型10に内周ゴム91の一部を順に成型する。次に、内型10(図6参照)に、複数の芯金92と一対の中間ゴム93を組み付け、巻付装置40により一対の補強層94を形成する。巻付装置40(図4参照)は、内型10の幅方向の中央から両外側に向かって、コードCを内型10に同時に巻き付けて、補強層94を形成する。
【0043】
続いて、射出装置60の外型3(図7〜図9参照)により、内型10に、トレッドゴム95の一部を順に成型して、環状のトレッドゴム95を形成する。その際、内型10と外型3の間に空間18を形成し、空間18に未加硫ゴムGを射出する。射出装置60は、外型3により、未加硫ゴムクローラ90に設けられる複数の突起96を、1ユニット又は複数ユニットずつ成型する。ここでは、突起96を1つ(1ユニット)ずつ成型する。これにより、トレッドゴム95の周方向の一部を成型する。また、内型10を回転させて、空間18の形成と未加硫ゴムGの射出を内型10の全周で繰り返し、内型10にトレッドゴム95の一部を順に成型する。
【0044】
このように、外型2、3を、それぞれ内型10の周方向の一部に組み合わせて、外型2、3と内型10の間に空間17、18を形成する。また、空間17、18に未加硫ゴムGを射出して、未加硫ゴムクローラ90の一部を成型する。空間17、18の形成と未加硫ゴムGの射出を内型10の全周で繰り返して、未加硫ゴムクローラ90を成型する。本実施形態では、内型10を回転させて、内型10に、未加硫ゴムクローラ90の一部である環状ゴム(内周ゴム91、トレッドゴム95)の周方向の一部を順に成型する。即ち、未加硫ゴムクローラ90の一部の成型を、内型10の全周で複数周繰り返して、環状の未加硫ゴムクローラ90を、内型10の外周に形成する。
【0045】
次に、未加硫ゴムクローラ90を内型10とともに加硫缶71(図10参照)に入れる。加硫缶71内で未加硫ゴムクローラ90を加硫して、ゴムクローラ97を製造する。その後、内型10をゴムクローラ97から取り外し、内型10を使用して、次の未加硫ゴムクローラ90を形成する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態では、内型10と外型2、3により、未加硫ゴムクローラ90の一部を順に射出成型して、環状の未加硫ゴムクローラ90を形成する。そのため、内型10と外型2、3を小さくできるとともに、内型10と外型2、3の構造を単純にできる。内型10と外型2、3のコストを削減することもできる。内型10を簡易な分割構造にすることで、内型10の取り扱いも容易になる。1周分の外型2、3を準備する必要がないため、外型2、3のコストを大幅に低減できる。また、外型2、3を交換するだけで、種々の未加硫ゴムクローラ90を形成できる。トレッドゴム95に形成するトレッドパターンを、容易に変更することもできる。
【0047】
未加硫ゴムクローラ90は、加硫缶71内で外型を使用せずに加硫するため、未加硫ゴムクローラ90の加硫を、簡便かつ低コストで行うことができる。また、未加硫ゴムクローラ90は、1つの加硫缶71に複数入れられるため、加硫工程の生産性を向上できる。さらに、ゴムクローラ97にバリが発生するのを抑制できるため、バリを除去する手間を低減できる。加硫用外型を分解して清掃する必要もない。そのため、ゴムクローラ97の製造に要する手間や工数を削減できる。
【0048】
従って、本実施形態によれば、簡便にゴムクローラ97を製造できるとともに、ゴムクローラ97にバリが発生するのを抑制できる。また、ゴムクローラ97の生産性を向上させることができる。複数の突起96を1ユニットずつ成型するときには、外型3を小さくすることができる。複数の突起96を複数ユニットずつ成型するときには、複数の突起96の成型時間を短縮できる。
【0049】
補強層94を形成するときには、コードCを、内型10の中央から両外側に向かって同時に巻き付ける。これにより、一対のコードCのテンションが内型10に均等に加わるため、未加硫ゴムクローラ90に歪みが生じるのを抑制できる。また、未加硫ゴムクローラ90の形状の精度と均一性を向上させることができる。補強層94が、内型10の周方向に連続するコードCからなるため、補強層94とゴムクローラ97の耐久性を向上させることもできる。
【0050】
上記したように、内型10を回転させて、内型10に未加硫ゴムクローラ90の一部を順に成型する。これに対し、内型10を回転させずに、外型2、3を内型10の周方向に移動させて、未加硫ゴムクローラ90の一部を順に成型するようにしてもよい。また、未加硫ゴムクローラ90(図10参照)を加硫する際には、ホルダーを未加硫ゴムクローラ90に装着するようにしてもよい。
【0051】
図11は、未加硫ゴムクローラ90のホルダーを示す斜視図である。
ホルダー80は、図示のように、周方向に複数に分割されている。ホルダー80は、環状に組み合わされて、固定手段(図示せず)により固定される。固定手段は、例えば、ボルトとナットからなる。また、ホルダー80は、複数の矩形状の孔(貫通孔)81を有する。複数の孔81は、ホルダー80の周方向に等間隔に形成される。ホルダー80は、金属又は耐熱樹脂からなる。耐熱樹脂には、ゴムの熱膨張係数に近い熱膨張係数の樹脂を使用するのが好ましい。
【0052】
未加硫ゴムクローラ90を加硫缶71に入れる前に、ホルダー80を、内型10に形成した未加硫ゴムクローラ90に装着する。ホルダー80により、環状の未加硫ゴムクローラ90の形状を保持する。その際、未加硫ゴムクローラ90の突起96が孔81に入るように、ホルダー80を未加硫ゴムクローラ90の外周に装着する。ホルダー80は、上記した固定手段により固定する。未加硫ゴムクローラ90は、ホルダー80により囲まれる。加硫時には、内型10と、ホルダー80を装着した未加硫ゴムクローラ90を加硫缶71に入れる。ホルダー80は、加硫缶71の底面に接し、底面により支持される。加硫缶71内で、ホルダー80を装着した未加硫ゴムクローラ90を加硫する。
【0053】
未加硫ゴムクローラ90の加硫時に、未加硫ゴムGは、温度の上昇に伴い軟化する。そのため、未加硫ゴムクローラ90の大きさや形状によっては、加硫中に、重力の影響で、未加硫ゴムクローラ90が変形する虞がある。これに対し、ホルダー80を使用することで、未加硫ゴムクローラ90の変形を確実に防止できる。突起96の形状を維持することもできる。
【0054】
なお、未加硫ゴムクローラ90は、2つの射出装置30、60を使用せずに、1つの射出装置により形成するようにしてもよい。この場合には、射出装置の外型2、3を交換して、内周ゴム91とトレッドゴム95を形成する。トレッドゴム95のトレッドパターンは、上記した例に限定されず、種々のパターンに形成できる。例えば、内型10の幅方向に対して傾斜した突起により、トレッドパターンを構成してもよい。また、内型10の幅方向に並んだ複数の突起を、未加硫ゴムクローラ90の周方向に複数設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1・・・未加硫ゴムクローラの形成装置、2・・・外型、2A・・・成型部、2B・・・突起、2C・・・流路、3・・・外型、3A・・・成型部、3B・・・キャビティ、3C・・・流路、10・・・内型、10A・・・成型部、11・・・セグメント、12・・・セグメント、13・・・固定部材、14・・・キャビティ、15・・・凹部、16・・・ボルト、17・・・空間、18・・・空間、20・・・回転装置、21・・・支柱、22・・・回転軸、23・・・保持部材、30・・・射出装置、31・・・シリンダ、32・・・プランジャ、33・・・押出機、34・・・ノズル、40・・・巻付装置、41・・・ロール、42・・・送出手段、43・・・計測手段、50・・・回転装置、51・・・支柱、52・・・回転軸、53・・・保持部材、60・・・射出装置、61・・・シリンダ、62・・・プランジャ、63・・・押出機、64・・・ノズル、70・・・加硫機、71・・・加硫缶、72・・・容器、73・・・蓋、80・・・ホルダー、81・・・孔、90・・・未加硫ゴムクローラ、91・・・内周ゴム、92・・・芯金、92A・・・突起、93・・・中間ゴム、94・・・補強層、95・・・トレッドゴム、96・・・突起、97・・・ゴムクローラ、C・・・コード、G・・・未加硫ゴム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、未加硫ゴムクローラを加硫してゴムクローラを製造するゴムクローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クローラ式の車両では、ゴム製のクローラ(ゴムクローラ)が使用されている。ゴムクローラは、ゴム等からなる構成部材により環状に形成される。また、ゴムクローラは、加硫機により加硫成型されて製造される。従来、ゴムクローラを帯状部材から形成する製造方法が知られている。
【0003】
図12は、従来の製造方法により製造されるゴムクローラを示す斜視図である。
ゴムクローラ100は、図示のように、帯状部材110から製造される。帯状部材110(図12A参照)は、未加硫ゴムにより帯状に形成され、プレス加硫機が備える上型と下型の間に挟み込まれる。プレス加硫機は、上型と下型により帯状部材110をプレスして、帯状部材110を成型する。同時に、帯状部材110を加熱して加硫する。帯状部材110の両端には、接合部111が設けられる。接合部111(図12B参照)は、重ねた状態で、接合用型により加硫されて接合される。これにより、ゴムクローラ100が環状に形成される。ゴムクローラ100の内周と外周には、複数の突起101、102が形成される。
【0004】
この従来の製造方法では、長尺状に延在する帯状部材110を、ゴムクローラ100の長さに接合部111の長さを加えた長さに形成する。その結果、上型と下型が長くなるため、プレス加硫機を設置するスペースが大きくなり、かつ、プレス加硫機のコストが高くなる。また、上型と下型により帯状部材110を一旦加硫した後、接合用型により接合部111を再び加硫する。そのため、ゴムクローラ100の製造工程が複雑になる傾向がある。ゴムクローラ100を少ない数だけ製造するときでも、長い上型と下型、及び、接合用型を予め準備する必要もある。従って、ゴムクローラ100をより簡便に製造する観点から、改良が求められている。
【0005】
これに対し、従来、環状の未加硫ゴムクローラを加硫して、接合部のないゴムクローラを製造する製造方法が知られている(特許文献1参照)。
従来のゴムクローラの製造方法では、成形ドラムの外周に、環状の未加硫ゴムクローラを形成する。未加硫ゴムクローラは、成形ドラムと環状の外型の間で加硫成型される。外型は、周方向に複数に分割され、未加硫ゴムクローラに押し付けられる。
【0006】
ところが、ゴムクローラの内周には複数の突起があるため、成形ドラムは、ゴムクローラから単純に取り外すことはできない。これに伴い、成形ドラムの構造は、複雑になる。外型は、分割して移動させるとともに、大きな荷重に耐えられるように形成する必要がある。そのため、外型は、大型になり、構造も複雑になる。また、外型は、ゴムクローラのトレッドパターン毎に、1周分作製する必要がある。従って、ゴムクローラを簡便に製造するのは難しく、複雑さに起因して、成形ドラムと外型に故障が発生する虞がある。成形ドラムと外型のコストも高くなる。
【0007】
未加硫ゴムクローラは、加硫中に熱膨張するため、膨張した未加硫ゴムが、成形ドラムや外型の隙間に入り込み、隙間内で加硫されることがある。これにより、加硫後のゴムクローラにバリが生じたときには、バリを複雑な形状のゴムクローラから除去する。また、バリが、成形ドラムや外型の隙間に残ったときには、高温の成形ドラムや外型を分解して清掃する。このように、バリが発生するときには、ゴムクローラの製造に要する手間や工数が増加するため、ゴムクローラの生産性が低下する。
【0008】
また、従来、筒型と外型の間に未加硫ゴムを充填し、外型内で未加硫ゴムを加硫するゴムクローラの成形方法が知られている(特許文献2参照)。
しかしながら、従来のゴムクローラの成形方法では、上記と同様に外型のコストが高くなる。外型の隙間にバリが発生する虞もある。加えて、分割された複数の外型により、未加硫ゴムを加硫しつつ、ゴムクローラを周方向に沿って順に形成する。ゴムクローラの最初と最後の部分は、完全には加硫せずに、繋いだ後に加硫を完了させる。そのため、ゴムクローラの製造工程が複雑になる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−291299号公報
【特許文献2】特開2002−301774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、簡便にゴムクローラを製造するとともに、ゴムクローラにバリが発生するのを抑制することである。また、ゴムクローラの生産性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、外周に環状のゴムクローラの成型部を備えた内型に未加硫ゴムクローラを形成する形成工程と、未加硫ゴムクローラを加硫する加硫工程とを有するゴムクローラの製造方法であって、前記形成工程が、内型の周方向の一部に組み合わされる外型と内型の間に空間を形成する第1の工程と、外型と内型の間の空間に未加硫ゴムを射出して未加硫ゴムクローラの一部を成型する第2の工程と、第1の工程及び第2の工程を内型の全周で繰り返して未加硫ゴムクローラを成型する工程とを有し、前記加硫工程が、内型と未加硫ゴムクローラを加硫缶に入れて、未加硫ゴムクローラを加硫する工程を有するゴムクローラの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡便にゴムクローラを製造できるとともに、ゴムクローラにバリが発生するのを抑制できる。また、ゴムクローラの生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の内型を示す斜視図である。
【図2】内型を図1のX−X線で切断した断面図である。
【図3】内型を図1の矢印Y方向から見た側面図である。
【図4】未加硫ゴムクローラの形成装置を示す斜視図である。
【図5】未加硫ゴムクローラを成型する外型と内型を示す図である。
【図6】形成途中の未加硫ゴムクローラと内型を示す図である。
【図7】トレッドゴムを形成する射出装置を示す斜視図である。
【図8】トレッドゴムを成型する外型と内型を示す図である。
【図9】未加硫ゴムクローラと内型を示す図である。
【図10】加硫機の要部を示す斜視図である。
【図11】未加硫ゴムクローラのホルダーを示す斜視図である。
【図12】従来の製造方法により製造されるゴムクローラを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のゴムクローラの製造方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態のゴムクローラの製造方法では、環状ゴムが設けられた環状の未加硫ゴムクローラを加硫して、ゴムクローラを製造する。ゴムクローラは、外周に環状のゴムクローラの成型部を備えた内型により製造される。環状ゴムは、環状に形成された未加硫ゴム部材であり、未加硫ゴムクローラに1又は複数設けられる。未加硫ゴムクローラは、未加硫ゴムにより無端状に形成された環状体であり、内型の外周(成型部)に形成される。ゴムクローラは、内型を備えた製造装置により、内型の周りで、環状の形状に、かつ、エンドレスな構造に形成される。
【0015】
図1は、内型を示す斜視図である。図2は、内型を図1のX−X線で切断した断面図である。
内型10は、図示のように、周方向に複数に分割された分割型である。内型10は、複数のセグメント11、12と、一対の固定部材13と、キャビティ14と、複数の凹部15とを有する。セグメント11、12は、それぞれ弧状に形成され、内型10の周方向に隙間なく組み合わされる。これにより、セグメント11、12は、全体として環状をなし、内型10の外周を構成する。固定部材13は、環状の固定リングであり、環状のセグメント11、12の側面に取り付けられる。固定部材13は、ボルト16により、各セグメント11、12に固定される。セグメント11、12は、固定部材13により、環状の形状で保持される。
【0016】
キャビティ14は、ゴムクローラの成型部10Aであり、内型10の外周に環状に形成される。キャビティ14は、セグメント11、12に凹状に形成され、内型10の周方向の全体に設けられる。キャビティ14は、ゴムクローラの内周側の形状と同じ形状をなし、未加硫ゴムクローラの内周部分を収容する。内型10は、キャビティ14内で、未加硫ゴムクローラの内周部分を成型する。凹部15は、キャビティ14内で、内型10の幅方向に並べて2つ(一対)配置される。一対の凹部15は、内型10の周方向に所定間隔で形成され、内型10の周方向の全体に設けられる。一対の凹部15内には、後述するように、ゴムクローラの芯金が配置される。セグメント11、12は、形状の異なる2種類の板状部材からなり、内型10の周方向に沿って交互に配置される。
【0017】
図3は、内型10を図1の矢印Y方向から見た側面図である。図3では、固定部材13を透視して、セグメント11、12を示している。
一方のセグメント11は、図示のように、側面から見て、内型10の半径方向内側に向かって次第に広がる形状に形成されている。他方のセグメント12は、側面から見て、内型10の半径方向外側に向かって次第に広がる形状に形成されている。セグメント11、12の端面11A、12Aは、同じ角度で傾斜する。端面11A、12Aが密着して、セグメント11、12が環状に組み合わされる。
【0018】
内型10をゴムクローラから取り外すときには、まず、一対の固定部材13をセグメント11、12から外す。次に、一方のセグメント11を、内型10の半径方向内側に移動させて、ゴムクローラ内から取り出す。続いて、他方のセグメント12を、内型10の半径方向内側に移動させて、ゴムクローラ内から取り出す。これにより、内型10を分解して加硫後のゴムクローラから取り外す。内型10を組み立てるときには、セグメント11、12を環状に配置して、一対の固定部材13を、ボルト16により、セグメント11、12に固定する。内型10の外周には、ゴムクローラの構成部材が順に配置されて、未加硫ゴムクローラが形成される。
【0019】
図4は、未加硫ゴムクローラの形成装置(以下、単に形成装置という)を示す斜視図である。本実施形態の形成装置1は、複数の装置により構成される。図4では、形成装置1の一部の装置を示している。
形成装置1は、図示のように、内型10の回転装置20と、未加硫ゴムの射出装置30(第1の射出装置)と、コードCの巻付装置40とを備えている。
【0020】
回転装置20は、支柱21と、支柱21に支持された回転軸22と、回転軸22に固定された保持部材23と、回転軸22を回転させる回転手段(図示せず)とを有する。内型10は、円盤状の保持部材23に取り付けられる。回転手段は、モータにより回転軸22を回転させて、保持部材23と内型10を回転させる。内型10は、回転装置20により、所定のタイミングで回転及び停止する。また、回転装置20は、内型10を所定の角度ずつ回転させる。
【0021】
射出装置30は、円筒状のシリンダ31と、円柱状のプランジャ32と、未加硫ゴムの押出機33と、ノズル34と、外型(第1の外型)2とを有する。また、射出装置30は、移動手段(図示せず)により移動する。押出機33は、シリンダ31に取り付けられ、シリンダ31内に未加硫ゴムを押し出す。シリンダ31内には、所定量の未加硫ゴムが充填される。プランジャ32は、シリンダ31内に押し込まれて、未加硫ゴムをシリンダ31から射出する。シリンダ31の先端には、ノズル34が取り付けられている。外型2は、ノズル34の先端に取り付けられ、内型10に向けて配置される。射出装置30は、未加硫ゴムをノズル34から外型2内に射出する。
【0022】
外型2は、ブロック状をなし、内型10の周方向の一部に組み合わされる。外型2の内型10に対向する面は、ゴムクローラを成型する成型部2Aであり、円弧状に形成されている。成型部2Aは、未加硫ゴムクローラが有する環状ゴムの周方向の一部を成型する。外型2は、内型10の外周に組み合わされて、内型10の周方向の所定範囲に配置される。移動手段は、射出装置30を内型10に接近させて、外型2を内型10に押し付ける。また、移動手段は、射出装置30を内型10から離して、外型2を内型10から離す。外型2は、射出装置30に1つ設けられて、未加硫ゴムクローラの周方向(循環方向)の一部を成型する。
【0023】
図5は、未加硫ゴムクローラを成型する外型2と内型10を示す図である。図5では、外型2と内型10を模式的に断面図で示している。図5Aでは、図2と同じ内型10を示す。図5Bでは、外型2と内型10を、図5Aの矢印Z方向から見て透視して示す。
図示のように、外型2が内型10に組み合わされたときに、外型2の下面(成型部2A)が、内型10の外周面(成型部10A)に対向する。成型部2Aは、内型10のキャビティ14内に配置されて、未加硫ゴムGの外周面を成型する。外型2に設けられた突起2Bは、内型10の凹部15内に配置される。キャビティ14外で、外型2の縁部が、内型10の外周面に接する。
【0024】
外型2は、キャビティ14内に、未加硫ゴムGが充填される空間17を区画する。空間17は、内型10の一部と外型2(成型部2A)の間に形成される。外型2は、ノズル34から空間17まで繋がる流路2Cを内部に有する。射出装置30は、未加硫ゴムGを流路2Cに射出し、内型10と外型2の間の空間17に未加硫ゴムGを充填する。未加硫ゴムGは、内型10と外型2により、空間17内で所定形状に成型される。これにより、内周ゴム91の一部が成型される。内周ゴム91は、ゴムクローラを構成する環状ゴムであり、未加硫ゴムクローラの内周に設けられる。
【0025】
内周ゴム91用の外型2(図5B参照)は、内型10の外周に、内周ゴム91の周方向の一部を成型する。続いて、外型2を内型10から離して、回転装置20により、内型10を回転させる。内型10は、外型2が成型する内周ゴム91の長さに応じた所定角度だけ回転する。外型2は、内型10の周方向に沿って相対的に移動する。これにより、内型10の外周で、内周ゴム91を成型する位置を変える。射出装置30は、成型済みの内周ゴム91に続けて、次の内周ゴム91の一部を成型する。形成装置1は、内型10を回転させて、空間17の形成と未加硫ゴムGの射出を内型10の全周で繰り返す。外型2は、内型10の外周に、内周ゴム91の一部を順に成型する。内周ゴム91は、内型10の周方向に沿って成型され、内型10の外周に環状に形成される。その後、内型10の外周に、他の構成部材を配置して、未加硫ゴムクローラを形成する。
【0026】
図6は、形成途中の未加硫ゴムクローラと内型10を示す図である。図6A、図6Bは、それぞれ図5A、図5Bに対応する図である。
図示のように、内周ゴム91を形成した後、複数の芯金92が内型10に配置される。芯金92に設けられた一対の突起92Aは、内型10の一対の凹部15に挿入される。芯金92は、内周ゴム91の外面に押し付けられ、内型10の外周に等間隔に配置される。
【0027】
続いて、一対の帯状の中間ゴム93が、内型10の外周に巻き付けられる。中間ゴム93は、内型10に1周配置されて、複数の芯金92を押さえる。複数の芯金92は、中間ゴム93の巻き付けまで、押さえ治具(図示せず)により押さえられる。その後、一対のコードCにより、一対の補強層94を形成する。補強層94は、ゴムクローラの構成部材であり、未加硫ゴムクローラの内部に設けられる。補強層94は、コードCからなり、ゴムクローラを補強する。一対のコードCは、巻付装置40により、中間ゴム93の外周に同期して巻き付けられる。
【0028】
巻付装置40(図4参照)は、コードCが巻き付けられた一対のロール41と、コードCの送出手段42と、コードCの計測手段43とを有する。コードCは、一対のロール41から送出手段42へ供給される。一対のコードCは、送出手段42に設けられた2つの回転体42Aに巻き付けられる。送出手段42は、回転体42Aを回転させて、一対のコードCを内型10へ向かって送り出す。一対のコードCは、送出手段42により、一定のテンションを維持して内型10へ供給される。計測手段43は、回転体42Aの回転を検出して、送り出されたコードCの長さを計測する。
【0029】
コードCの先端は、内型10上の中間ゴム93に押し付けられて、内型10に固定される。形成装置1は、内型10を回転させて、巻付装置40から一対のコードCを引き出す。巻付装置40は、変位機構(図示せず)により、一対のコードCを、内型10の幅方向に変位させる。これにより、コードCが、内型10の外周に螺旋状に巻き付けられる。
【0030】
本実施形態では、スチール製のコードC(スチールコード)を内型10に巻き付ける。また、一対のコードCは、巻付装置40により、内型10の幅方向の中央から両外側へ向かって巻き付けられる。巻付装置40は、一対のコードCを、内型10に同時に、かつ、対称に巻き付ける。これにより、内型10の外周に一対の補強層94を形成する。その後、内型10の外周にトレッドゴム(外周ゴム)が形成される。トレッドゴムは、ゴムクローラを構成する環状ゴムであり、未加硫ゴムクローラの外周に設けられる。形成装置1は、射出装置により、環状のトレッドゴムを、形成中の未加硫ゴムクローラの外周に形成する。
【0031】
図7は、トレッドゴムを形成する射出装置を示す斜視図である。図7では、形成後のトレッドゴム95も示す。
形成装置1は、図示のように、内型10の回転装置50と、未加硫ゴムGの射出装置60(第2の射出装置)とを備えている。回転装置50は、上記した回転装置20と同様に構成されている。即ち、回転装置50は、支柱51と、回転軸52と、保持部材53と、回転手段(図示せず)とを有する。回転装置50は、保持部材53により、補強層94を形成した内型10を保持し、内型10を回転させる。
【0032】
射出装置60は、上記した射出装置30と同様に構成されている。即ち、射出装置60は、シリンダ61と、プランジャ62と、押出機63と、ノズル64と、外型(第2の外型)3と、移動手段(図示せず)とを有する。未加硫ゴムGは、押出機63から押し出されて、シリンダ61内に充填される。射出装置60は、プランジャ62をシリンダ61内に押し込んで、未加硫ゴムGをノズル64から外型3内に射出する。
【0033】
外型3は、ブロック状をなし、内型10の周方向の一部に組み合わされる。外型3の内型10に対向する面は、ゴムクローラを成型する成型部3Aであり、円弧状に形成されている。成型部3Aは、トレッドゴム95の周方向の一部を成型する。外型3は、内型10の外周に組み合わされて、内型10の周方向の所定範囲に配置される。移動手段は、射出装置60を移動させて、外型3を内型10に押し付ける。また、移動手段は、外型3を内型10から離す。外型3は、射出装置60に1つ設けられて、トレッドゴム95の一部を成型する。これにより、未加硫ゴムクローラ90の周方向の一部を成型する。
【0034】
トレッドゴム95には、複数の突起96が形成される。突起96は、ゴムからなるブロック状のラグであり、未加硫ゴムクローラ90(トレッドゴム95)の外周に、周方向に沿って繰り返し設けられる。複数の突起96は、それぞれ未加硫ゴムクローラ90の幅方向に延び、トレッドゴム95の外周に等間隔に形成される。射出装置60は、外型3により、複数の突起96を1ユニット又は複数ユニットずつ成型する。本実施形態では、1つの突起96が、1ユニットを構成する。外型3は、1つの突起96を成型する。形成装置1は、突起96を1ユニットずつ成型して、トレッドゴム95を環状に形成する。
【0035】
図8は、トレッドゴム95を成型する外型3と内型10を示す図である。図8A、図8Bは、それぞれ図5A、図5Bに対応する図である。
外型3は、図示のように、凹状のキャビティ3Bと、流路3Cとを有する。キャビティ3Bは、成型部3Aであり、ゴムクローラの外周側の形状と同じ形状に形成されている。キャビティ3Bは、未加硫ゴムクローラ90の外周部分を成型する。流路3Cは、外型3の内部に設けられて、ノズル64からキャビティ3Bまで繋がる。外型3は、キャビティ3B内で、1つの突起96を成型する。
【0036】
外型3が内型10に組み合わされたときに、外型3の下面(成型部3A)が、内型10に対向する。外型3の縁部は、キャビティ3B外で、内型10の外周面に接する。外型3は、内型2との間に、未加硫ゴムGが充填される空間18を区画する。空間18は、内型10の一部と外型3(成型部3A)の間に形成される。射出装置60は、未加硫ゴムGを流路3Cに射出し、内型10と外型3の間の空間18に未加硫ゴムGを充填する。未加硫ゴムGは、内型10と外型3により、空間18内で所定形状に成型される。成型部3Aは、未加硫ゴムGの外周面を成型する。これにより、1つの突起96とトレッドゴム95の一部が成型される。同時に、トレッドゴム95内で、複数の突起96の間の部分も成型される。
【0037】
トレッドゴム95用の外型3(図8B参照)は、内型10の外周に、トレッドゴム95の周方向の一部を成型する。トレッドゴム95の一部には、1つの突起96が含まれる。続いて、外型3を内型10から離して、回転装置50により、内型10を回転させる。内型10は、外型3が成型するトレッドゴム95の長さに応じた所定角度だけ回転する。回転装置50は、隣り合う突起96の間隔分だけ内型10を回転させる。外型3は、内型10の周方向に沿って相対的に移動する。これにより、内型10の外周で、トレッドゴム95を成型する位置を変える。
【0038】
射出装置60は、成型済みのトレッドゴム95に続けて、次のトレッドゴム95の一部を成型する。次のトレッドゴム95は、前のトレッドゴム95の縁に接合される。形成装置1は、内型10を回転させて、空間18の形成と未加硫ゴムGの射出を内型10の全周で繰り返す。外型3は、内型10の外周に、トレッドゴム95の一部を順に成型する。トレッドゴム95は、内型10の周方向に沿って成型され、内型10の外周に環状に形成される。複数の突起96も、1つずつ順に成型され、トレッドゴム95の周方向の全体に配置される。
【0039】
図9は、形成後の未加硫ゴムクローラ90と内型10を示す図である。図9A、図9Bは、それぞれ図5A、図5Bに対応する図である。
未加硫ゴムクローラ90は、図示のように、内型10の外周に環状に形成される。続いて、内型10を回転装置50から取り外す。内型10と未加硫ゴムクローラ90は、一体のまま加硫機まで搬送される。
【0040】
図10は、加硫機の要部を示す斜視図である。
加硫機70は、図示のように、加硫缶71と、加熱媒体の供給手段(図示せず)とを備えている。加硫缶71は、圧力容器であり、容器72と蓋73とを有する。蓋73を容器72に組み付けることで、加硫缶71が密閉される。内型10は、容器72内に寝かせて配置される。内型10と環状の未加硫ゴムクローラ90は、加硫缶71内に一体に収容される。加硫機70は、供給手段により、加硫缶71内に所定温度の加熱媒体を供給する。未加硫ゴムクローラ90は、加熱媒体により加硫缶71内で加熱される。
【0041】
本実施形態では、130℃〜180℃に加熱した蒸気を加硫缶71内に注入する。蒸気の温度と圧力により、未加硫ゴムクローラ90の加硫を進行させる。これにより、未加硫ゴムクローラ90を、加硫用外型を使用せずに、内型10の外周で加硫する。加硫完了後、内型10と加硫後のゴムクローラ97を加硫缶71から取り出す。内型10を分解して、ゴムクローラ97から内型10を取り外す。
【0042】
次に、ゴムクローラ97を製造する手順と工程を説明する。
まず、射出装置30の外型2(図4、図5参照)により、内型10に、内周ゴム91の一部を順に成型して、環状の内周ゴム91を形成する。その際、内型10と外型2の間に空間17を形成し、空間17に未加硫ゴムGを射出する。これにより、内周ゴム91の周方向の一部を成型する。また、内型10を回転させて、空間17の形成と未加硫ゴムGの射出を内型10の全周で繰り返し、内型10に内周ゴム91の一部を順に成型する。次に、内型10(図6参照)に、複数の芯金92と一対の中間ゴム93を組み付け、巻付装置40により一対の補強層94を形成する。巻付装置40(図4参照)は、内型10の幅方向の中央から両外側に向かって、コードCを内型10に同時に巻き付けて、補強層94を形成する。
【0043】
続いて、射出装置60の外型3(図7〜図9参照)により、内型10に、トレッドゴム95の一部を順に成型して、環状のトレッドゴム95を形成する。その際、内型10と外型3の間に空間18を形成し、空間18に未加硫ゴムGを射出する。射出装置60は、外型3により、未加硫ゴムクローラ90に設けられる複数の突起96を、1ユニット又は複数ユニットずつ成型する。ここでは、突起96を1つ(1ユニット)ずつ成型する。これにより、トレッドゴム95の周方向の一部を成型する。また、内型10を回転させて、空間18の形成と未加硫ゴムGの射出を内型10の全周で繰り返し、内型10にトレッドゴム95の一部を順に成型する。
【0044】
このように、外型2、3を、それぞれ内型10の周方向の一部に組み合わせて、外型2、3と内型10の間に空間17、18を形成する。また、空間17、18に未加硫ゴムGを射出して、未加硫ゴムクローラ90の一部を成型する。空間17、18の形成と未加硫ゴムGの射出を内型10の全周で繰り返して、未加硫ゴムクローラ90を成型する。本実施形態では、内型10を回転させて、内型10に、未加硫ゴムクローラ90の一部である環状ゴム(内周ゴム91、トレッドゴム95)の周方向の一部を順に成型する。即ち、未加硫ゴムクローラ90の一部の成型を、内型10の全周で複数周繰り返して、環状の未加硫ゴムクローラ90を、内型10の外周に形成する。
【0045】
次に、未加硫ゴムクローラ90を内型10とともに加硫缶71(図10参照)に入れる。加硫缶71内で未加硫ゴムクローラ90を加硫して、ゴムクローラ97を製造する。その後、内型10をゴムクローラ97から取り外し、内型10を使用して、次の未加硫ゴムクローラ90を形成する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態では、内型10と外型2、3により、未加硫ゴムクローラ90の一部を順に射出成型して、環状の未加硫ゴムクローラ90を形成する。そのため、内型10と外型2、3を小さくできるとともに、内型10と外型2、3の構造を単純にできる。内型10と外型2、3のコストを削減することもできる。内型10を簡易な分割構造にすることで、内型10の取り扱いも容易になる。1周分の外型2、3を準備する必要がないため、外型2、3のコストを大幅に低減できる。また、外型2、3を交換するだけで、種々の未加硫ゴムクローラ90を形成できる。トレッドゴム95に形成するトレッドパターンを、容易に変更することもできる。
【0047】
未加硫ゴムクローラ90は、加硫缶71内で外型を使用せずに加硫するため、未加硫ゴムクローラ90の加硫を、簡便かつ低コストで行うことができる。また、未加硫ゴムクローラ90は、1つの加硫缶71に複数入れられるため、加硫工程の生産性を向上できる。さらに、ゴムクローラ97にバリが発生するのを抑制できるため、バリを除去する手間を低減できる。加硫用外型を分解して清掃する必要もない。そのため、ゴムクローラ97の製造に要する手間や工数を削減できる。
【0048】
従って、本実施形態によれば、簡便にゴムクローラ97を製造できるとともに、ゴムクローラ97にバリが発生するのを抑制できる。また、ゴムクローラ97の生産性を向上させることができる。複数の突起96を1ユニットずつ成型するときには、外型3を小さくすることができる。複数の突起96を複数ユニットずつ成型するときには、複数の突起96の成型時間を短縮できる。
【0049】
補強層94を形成するときには、コードCを、内型10の中央から両外側に向かって同時に巻き付ける。これにより、一対のコードCのテンションが内型10に均等に加わるため、未加硫ゴムクローラ90に歪みが生じるのを抑制できる。また、未加硫ゴムクローラ90の形状の精度と均一性を向上させることができる。補強層94が、内型10の周方向に連続するコードCからなるため、補強層94とゴムクローラ97の耐久性を向上させることもできる。
【0050】
上記したように、内型10を回転させて、内型10に未加硫ゴムクローラ90の一部を順に成型する。これに対し、内型10を回転させずに、外型2、3を内型10の周方向に移動させて、未加硫ゴムクローラ90の一部を順に成型するようにしてもよい。また、未加硫ゴムクローラ90(図10参照)を加硫する際には、ホルダーを未加硫ゴムクローラ90に装着するようにしてもよい。
【0051】
図11は、未加硫ゴムクローラ90のホルダーを示す斜視図である。
ホルダー80は、図示のように、周方向に複数に分割されている。ホルダー80は、環状に組み合わされて、固定手段(図示せず)により固定される。固定手段は、例えば、ボルトとナットからなる。また、ホルダー80は、複数の矩形状の孔(貫通孔)81を有する。複数の孔81は、ホルダー80の周方向に等間隔に形成される。ホルダー80は、金属又は耐熱樹脂からなる。耐熱樹脂には、ゴムの熱膨張係数に近い熱膨張係数の樹脂を使用するのが好ましい。
【0052】
未加硫ゴムクローラ90を加硫缶71に入れる前に、ホルダー80を、内型10に形成した未加硫ゴムクローラ90に装着する。ホルダー80により、環状の未加硫ゴムクローラ90の形状を保持する。その際、未加硫ゴムクローラ90の突起96が孔81に入るように、ホルダー80を未加硫ゴムクローラ90の外周に装着する。ホルダー80は、上記した固定手段により固定する。未加硫ゴムクローラ90は、ホルダー80により囲まれる。加硫時には、内型10と、ホルダー80を装着した未加硫ゴムクローラ90を加硫缶71に入れる。ホルダー80は、加硫缶71の底面に接し、底面により支持される。加硫缶71内で、ホルダー80を装着した未加硫ゴムクローラ90を加硫する。
【0053】
未加硫ゴムクローラ90の加硫時に、未加硫ゴムGは、温度の上昇に伴い軟化する。そのため、未加硫ゴムクローラ90の大きさや形状によっては、加硫中に、重力の影響で、未加硫ゴムクローラ90が変形する虞がある。これに対し、ホルダー80を使用することで、未加硫ゴムクローラ90の変形を確実に防止できる。突起96の形状を維持することもできる。
【0054】
なお、未加硫ゴムクローラ90は、2つの射出装置30、60を使用せずに、1つの射出装置により形成するようにしてもよい。この場合には、射出装置の外型2、3を交換して、内周ゴム91とトレッドゴム95を形成する。トレッドゴム95のトレッドパターンは、上記した例に限定されず、種々のパターンに形成できる。例えば、内型10の幅方向に対して傾斜した突起により、トレッドパターンを構成してもよい。また、内型10の幅方向に並んだ複数の突起を、未加硫ゴムクローラ90の周方向に複数設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1・・・未加硫ゴムクローラの形成装置、2・・・外型、2A・・・成型部、2B・・・突起、2C・・・流路、3・・・外型、3A・・・成型部、3B・・・キャビティ、3C・・・流路、10・・・内型、10A・・・成型部、11・・・セグメント、12・・・セグメント、13・・・固定部材、14・・・キャビティ、15・・・凹部、16・・・ボルト、17・・・空間、18・・・空間、20・・・回転装置、21・・・支柱、22・・・回転軸、23・・・保持部材、30・・・射出装置、31・・・シリンダ、32・・・プランジャ、33・・・押出機、34・・・ノズル、40・・・巻付装置、41・・・ロール、42・・・送出手段、43・・・計測手段、50・・・回転装置、51・・・支柱、52・・・回転軸、53・・・保持部材、60・・・射出装置、61・・・シリンダ、62・・・プランジャ、63・・・押出機、64・・・ノズル、70・・・加硫機、71・・・加硫缶、72・・・容器、73・・・蓋、80・・・ホルダー、81・・・孔、90・・・未加硫ゴムクローラ、91・・・内周ゴム、92・・・芯金、92A・・・突起、93・・・中間ゴム、94・・・補強層、95・・・トレッドゴム、96・・・突起、97・・・ゴムクローラ、C・・・コード、G・・・未加硫ゴム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に環状のゴムクローラの成型部を備えた内型に未加硫ゴムクローラを形成する形成工程と、未加硫ゴムクローラを加硫する加硫工程とを有するゴムクローラの製造方法であって、
前記形成工程が、内型の周方向の一部に組み合わされる外型と内型の間に空間を形成する第1の工程と、外型と内型の間の空間に未加硫ゴムを射出して未加硫ゴムクローラの一部を成型する第2の工程と、第1の工程及び第2の工程を内型の全周で繰り返して未加硫ゴムクローラを成型する工程とを有し、
前記加硫工程が、内型と未加硫ゴムクローラを加硫缶に入れて、未加硫ゴムクローラを加硫する工程を有するゴムクローラの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたゴムクローラの製造方法において、
前記形成工程が、内型を回転させて、内型に未加硫ゴムクローラの一部を順に成型する工程を有するゴムクローラの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたゴムクローラの製造方法において、
環状の未加硫ゴムクローラの形状を保持するホルダーを、内型に形成した未加硫ゴムクローラに装着する工程を有し、
前記加硫工程が、ホルダーを装着した未加硫ゴムクローラを加硫缶内で加硫する工程を有するゴムクローラの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載されたゴムクローラの製造方法において、
前記形成工程が、外型により、未加硫ゴムクローラに設けられる複数の突起を1ユニット又は複数ユニットずつ成型する工程を有するゴムクローラの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載されたゴムクローラの製造方法において、
内型の幅方向の中央から両外側に向かって、コードを内型に同時に巻き付けて、補強層を形成する工程を有するゴムクローラの製造方法。
【請求項1】
外周に環状のゴムクローラの成型部を備えた内型に未加硫ゴムクローラを形成する形成工程と、未加硫ゴムクローラを加硫する加硫工程とを有するゴムクローラの製造方法であって、
前記形成工程が、内型の周方向の一部に組み合わされる外型と内型の間に空間を形成する第1の工程と、外型と内型の間の空間に未加硫ゴムを射出して未加硫ゴムクローラの一部を成型する第2の工程と、第1の工程及び第2の工程を内型の全周で繰り返して未加硫ゴムクローラを成型する工程とを有し、
前記加硫工程が、内型と未加硫ゴムクローラを加硫缶に入れて、未加硫ゴムクローラを加硫する工程を有するゴムクローラの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたゴムクローラの製造方法において、
前記形成工程が、内型を回転させて、内型に未加硫ゴムクローラの一部を順に成型する工程を有するゴムクローラの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたゴムクローラの製造方法において、
環状の未加硫ゴムクローラの形状を保持するホルダーを、内型に形成した未加硫ゴムクローラに装着する工程を有し、
前記加硫工程が、ホルダーを装着した未加硫ゴムクローラを加硫缶内で加硫する工程を有するゴムクローラの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載されたゴムクローラの製造方法において、
前記形成工程が、外型により、未加硫ゴムクローラに設けられる複数の突起を1ユニット又は複数ユニットずつ成型する工程を有するゴムクローラの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載されたゴムクローラの製造方法において、
内型の幅方向の中央から両外側に向かって、コードを内型に同時に巻き付けて、補強層を形成する工程を有するゴムクローラの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−228825(P2012−228825A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98663(P2011−98663)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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