説明

ゴムローラの製造方法

【課題】成形金型内に液状ゴム材料を注入し、硬化させて製造するゴムローラにおいて、振れ精度の良いゴムローラの製造方法を提供する。
【解決手段】円筒状の金型本体とその両端に嵌合する駒3の少なくとも3部材からなる成形金型の内部に軸体4を配置し、金型キャビティ内にゴム材料を注入し、硬化して成形するゴムローラの製造方法において、成形金型にゴム材料を注入するために注入ノズル5を成形金型に押しあてる際に、位置調節機構により該注入ノズル5を成形金型の円形端面の中心に向けて移動するゴムローラの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形金型内に液状ゴム材料を注入し、硬化させて成形されるゴムローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に成形金型内にゴム材料を注入して製造されるゴムローラは、円筒状のパイプ型とその両端に取り付ける駒の少なくとも3部材から構成されている。ゴム材料を注入し、硬化する際はパイプ型と両端の駒をシリンダやバネやネジ等で上下方向から型締めする。その後、ゴム材料を注入する際に、成形金型にノズルを押し当てる。この時、成型金型の両端面や型締め部材で、円周方向で均一に押さえつけられていても、注入ノズルにより成形金型に偏荷重が加わる。この時、成形金型には、曲げモーメントが発生し、成形金型の位置ずれが発生し、型締め時の軸線がずれる。その状態で、材料を硬化するために、成形したゴムローラも曲がった状態となり、振れ精度が悪くなる。この振れ精度の悪化は、電子写真技術におけるローラにおいては電気抵抗のムラや画像不良の原因となっていた。
【0003】
また、成形金型と注入ノズルの円形端面の中心軸がほぼ一致しないと、成形金型と注入ノズルの間に隙間が生じ、材料漏れの問題も生じる。
【0004】
従来技術として、金型との位置調整機構として、成形金型及び、型締め部の円筒座を用いたものがある。しかし、更に振れ精度の良化をするためには、金型に力を与える部分の位置ずれなどによる影響をなくす必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、金型に力を与える部分の位置ずれなどによる影響が無く、振れ精度の良いゴムローラの製造方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、以下の手段により解決される。
【0007】
(1)円筒状の金型本体とその両端に嵌合する駒の少なくとも3部材からなる成形金型の内部に軸体を配置し、金型キャビティ内にゴム材料を注入し、硬化して成形するゴムローラの製造方法において、該成形金型にゴム材料を注入するために注入ノズルを該成形金型に押しあてる際に、位置調節機構により該注入ノズルを該成形金型の円形端面の中心に向けて移動することを特徴とするゴムローラの製造方法。
【0008】
(2)該位置調節機構により該注入ノズルを、該成形金型の円形端面の中心を中心とする該円形端面上の直径10mmの円周内から該円形端面の中心に移動することを特徴とする上記(1)のゴムローラの製造方法。
【0009】
(3)該成形金型が複数個あり、該複数個の成形金型に注入ノズルを順次押しあてる際に、センタリング機構により該注入ノズルの位置を、該複数個の成形金型のほぼ中心位置に順次合わせることを特徴とする上記(1)のゴムローラの製造方法。
【0010】
(4)該ゴム材料が液状ゴム材料であることを特徴とする上記(1)のゴムローラの製造方法。
【0011】
(5)該液状ゴム材料がシリコーンゴムであることを特徴とする上記(4)のゴムローラの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のゴムローラの製造方法においては、位置調節機構により適切な位置に注入ノズルを移動できるため、成形金型の駒に偏荷重が加わることが抑えられ、その結果、金型のたわみが抑えられ、金型に力を与える部分の位置ずれなどによる影響が無く、所望する位置に芯金が配置されるので、振れ精度の良いゴムローラが成形できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
注入ノズル部は、金型の円形端面の中心を中心に直径10mmの円周範囲に移動可能なノズル先端部とノズルベース部の間に隙間を設け、位置を移動できる位置修正機構を有する。位置修正機構を用いると、成形金型を型締めした後、注入する際に、ノズル位置が金型の円形端面の中心に配置されていなくても、金型の円形端面の中心に位置修正する。また、複数の金型に注入する際には、ノズルをノズルベースに3方向または、それ以上に配置されたシリンダ、ばねまたは、位置決めブロックによる押し当てにより、複数の金型のほぼセンターに配置可能センタリング機構を付加し、金型端面に対応できる。
【0014】
こうして、型締めされた成形金型に注入ノズルが押し当てられる際に、金型円形端面の中心で注入ノズルが押しあてるために、成形金型端面に偏荷重が加わらず曲げモーメントが発生しない。このため、成形金型は、湾曲せず、従って、中心の芯金も成形したゴムローラもまっすぐとなり、振れ精度が良くなる。
【実施例】
【0015】
本発明のゴムローラの製造方法を電子写真用現像ローラの成形に適用した実施例を図面を参照して説明する。実施例1として、図1に示すような内面形状が内径φ12mm、長さ240mmの円筒形状である金型本体2aと金型本体の両端に嵌合される上駒1及び下駒3の3つの構成部材からなる成形金型を用いた。
【0016】
このときに、注入ノズル5は、図2に示すように、成形金型の円形端面の中心に向けて位置修正できる位置修正機構10(図5参照)を有する。
比較例1として、図1に示すような内面形状が内径φ12mm、長さ240mmの円筒形状である金型本体2aと金型本体の両端に嵌合される上駒1及び下駒3の3つの構成部材からなる成形金型を用いた。このときに、注入ノズルは、図3に示すように、成形金型の円形端面の中心に向けて位置修正できる位置修正機構を有さない固定式ノズル7とした。
【0017】
実施例1及び比較例1に用いた成形金型内にφ6mm、長さ250mmの軸体(芯金)4を挿入し、固定板6a、可動板6b、エアシリンダ6c、シャフト6d、バックアップ板6eから構成される型締め装置にて上駒1、金型本体(パイプ)2a、下駒3を固定した。このとき、型締め装置の固定板6a、可動板6eは平面である。型締め装置に成形金型が固定され、その後、注入ノズル5あるいは7が成形金型に押し当てられ、金型に材料が注入される。押し当てられるときに、金型毎に、型締め軸の中心2bとノズル5あるいは7の位置関係は変化するために、金型毎に位置修正をすることが必要である。そのため、本発明においては、複数の金型位置へ注入する際には、複数の型締め装置と円形端面の中心を通る中心軸9を合わせる機構として、センタリング機構11を用いている(図4、5参照)。図5中、12は弾性体である。
【0018】
実施例1、比較例1に用いた成形金型それぞれに、熱硬化性液状シリコーンゴムを注入し、100℃で10分硬化させた後、得られたゴムローラの振れを測定した。成形に用いた液状シリコーンゴムは、2液混合タイプの熱硬化性シリコーンゴムで、粘度150Pa・sである。また、導電性を持たせるためカーボンブラックが配合されている。
【0019】
実施例1及び比較例1で成形したゴムローラの振れをゴム両端部から10mmの点及び中央部の3点においてゴムローラの振れを測定すると、表1に示すとおり実施例1のゴムローラは、比較例1と比較して振れが小さい。特に、比較例1では、中央部の振れが大きく、金型がたわんでいることを表している。なお、振れの測定方法は、株式会社キーエンス製 レーザ寸法測定器を用いて基準からローラ外径までの隙間を測定し、その値の最大値から最小値を引いた値を振れとして、評価した。
【0020】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1、比較例1で用いた金型を示す概略図である。
【図2】実施例1で用いた金型及び型締め装置、並びに注入ノズルを示す概略図である。
【図3】比較例1で用いた金型及び型締め装置、並びに注入ノズルを示す概略図である。
【図4】実施例1で用いた複数の金型とノズルを示す概略図である。
【図5】実施例1で用いたノズルの位置調整機構とセンタリング機構を示す概略図である。
【符号の説明】
【0022】
1.上駒
2a.円筒状金型本体
2b.金型中心軸あるいは、型締め装置と金型に共通する中心軸
3.下駒
4.芯金
5.位置調整ノズル
6a.型締め装置固定板
6b.型締め装置可動板
6c.型締め装置エアシリンダ
6d.型締め装置シャフト
6e.型締め装置バックアップ板
7.固定ノズル
8.ノズル移動範囲
9.複数金型使用時金型位置
10.位置調整機構(幅)
11.センタリング機構
12.弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の金型本体とその両端に嵌合する駒の少なくとも3部材からなる成形金型の内部に軸体を配置し、金型キャビティ内にゴム材料を注入し、硬化して成形するゴムローラの製造方法において、該成形金型にゴム材料を注入するために注入ノズルを該成形金型に押しあてる際に、位置調節機構により該注入ノズルを該成形金型の円形端面の中心に向けて移動することを特徴とするゴムローラの製造方法。
【請求項2】
該位置調節機構により該注入ノズルを、該成形金型の円形端面の中心を中心とする該円形端面上の直径10mmの円周内から該円形端面の中心に移動することを特徴とする請求項1に記載のゴムローラの製造方法。
【請求項3】
該成形金型が複数個あり、該複数個の成形金型に注入ノズルを順次押しあてる際に、センタリング機構により該注入ノズルの位置を、該複数個の成形金型のほぼ中心位置に順次合わせることを特徴とする請求項1に記載のゴムローラの製造方法。
【請求項4】
該ゴム材料が液状ゴム材料であることを特徴とする請求項1に記載のゴムローラの製造方法。
【請求項5】
該液状ゴム材料がシリコーンゴムであることを特徴とする請求項4に記載のゴムローラの製造方法。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−15211(P2007−15211A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198858(P2005−198858)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】