説明

ゴム組成物の製造方法、ゴム組成物及びそれを用いたタイヤ

【課題】より高弾性でかつ破断伸びが大きい特性を有するゴム組成物を得ることが可能なゴム組成物の製造方法、ゴム組成物及びそれを用いたタイヤ提供する。
【解決手段】ゴム成分、樹脂、補強用充填剤及び架橋剤を含むゴム組成物の製造方法であって、前記樹脂を前記ゴム成分に添加してマスターバッチを作製する第一工程と、該マスターバッチに前記補強用充填剤を混練りして充填マスターバッチを作製する第二工程と、該充填マスターバッチに前記架橋剤を混練りする第三工程とを有するゴム組成物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物の製造方法、ゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関し、詳しくは、ゴム組成物の特性改良に係るゴム組成物の製造方法、ゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤのカーカス部材及びスティフナー(ビードフィラー)等に使用するゴム組成物には高弾性なゴムが用いられている。ゴムを高弾性化する手段としては、カーボンブラック等の充填剤を増量したり(例えば、特許文献1参照)、加硫剤の硫黄を増量して架橋点を増やす等の手法が知られているが、カーボンブラック等の充填剤を増量した場合、ゴム組成物の工場作業性や破断時伸び等の耐破壊性が悪化したり、ゴム組成物の発熱特性が悪化したりするという課題がある。また、加硫剤の硫黄を増量した場合も、破断時伸びが低下し、熱劣化による物性変化が大きくなるという課題がある。
【0003】
これに対して、ゴム組成物の破断時伸びの低下を抑えながら高弾性化する手段として、例えば、フェノール類とアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合反応させて得られる未変性のノボラック型フェノール系樹脂や、トール油あるいはカシュー油等の不飽和油、またはキシレンあるいはメシチレン等の芳香族炭化水素で変性した変性ノボラック型フェノール系樹脂と、これらの樹脂を硬化させるヘキサメチレンテトラミンを硬化剤として添加する方法が提案されている(例えば、特許文献2及び3参照)。
【0004】
また、ゴム組成物の硬度を高めつつ破断伸びも向上させる方法として、ジエン系ゴムを溶媒に溶解させ、これにフェノール樹脂及びカーボンブラックを加えて攪拌し、ウェットマスターバッチを調製する工程を用いたゴム組成物の製造方法も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
しかしながら、これらの方法においても、前記高弾性化としては不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−272307号公報
【特許文献2】特開平5−98081号公報
【特許文献3】特開2001−226528号公報
【特許文献4】特開2008−156419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる状況に鑑みなされたもので、より高弾性でかつ破断伸びが大きい特性を有するゴム組成物を得ることが可能なゴム組成物の製造方法、ゴム組成物及びそれを用いたタイヤ提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、下記本発明により解決される。
すなわち本発明は、
〔1〕 ゴム成分、樹脂、補強用充填剤及び架橋剤を含むゴム組成物の製造方法であって、
前記樹脂を前記ゴム成分に添加してマスターバッチを作製する第一工程と、該マスターバッチに前記補強用充填剤を混練りして充填マスターバッチを作製する第二工程と、該充填マスターバッチに前記架橋剤を混練りする第三工程とを有するゴム組成物の製造方法、
〔2〕 前記第一工程が、ドライマスターバッチを作製する工程である〔1〕に記載のゴム組成物の製造方法、
〔3〕 前記樹脂が、熱硬化性樹脂である〔1〕または〔2〕に記載のゴム組成物の製造方法、
〔4〕 前記熱硬化性樹脂が、フェノール系熱硬化性樹脂である〔3〕に記載のゴム組成物の製造方法、
〔5〕 前記フェノール系熱硬化性樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、ノボラック型キシレノール樹脂、ノボラック型レゾルシノール樹脂及びこれらの樹脂をオイルで変性した樹脂、並びに、ノボラック型レゾルシン樹脂及びレゾール型フェノール樹脂を含む樹脂組成物から選ばれる少なくとも1種である〔4〕に記載のゴム組成物の製造方法、
〔6〕 前記フェノール系熱硬化性樹脂が、メチレン供与体を該フェノール系熱硬化性樹脂全量に対して0.1質量%以上80質量%以下含む〔4〕または〔5〕に記載のゴム組成物の製造方法、
〔7〕 前記ノボラック型レゾルシン樹脂が、レゾルシンとアルデヒド類とをモル比(アルデヒド類/レゾルシン)0.4以上0.8以下で反応させて得られるものである〔5〕に記載のゴム組成物の製造方法、
〔8〕 前記レゾール型フェノール系樹脂におけるジメチレンエーテル基量が、フェノール類に由来する芳香環同士を結合しているアルデヒド類に由来する全結合基量に対して、20モル%以上80モル%以下である〔5〕に記載のゴム組成物の製造方法、
〔9〕 前記樹脂のオイル変性に用いるオイルが、ロジン油、トール油、カシュー油、リノール酸、オレイン酸及びリノレイン酸から選ばれる少なくとも1種のオイルである〔5〕に記載のゴム組成物の製造方法、
〔10〕 前記樹脂の配合量が、ゴム成分100質量部に対して2質量部以上50質量部以下である〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法、
〔11〕 前記補強用充填剤の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して5質量部以上200質量部以下である〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法、
〔12〕 〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法により得られるゴム組成物、及び、
〔13〕 〔12〕に記載のゴム組成物を用いたタイヤ、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より高弾性でかつ破断伸びが大きい特性を有するゴム組成物を得ることが可能なゴム組成物の製造方法、ゴム組成物及びそれを用いたタイヤ提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施形態により説明する。
<ゴム組成物の製造方法及びゴム組成物>
本実施形態のゴム組成物の製造方法は、ゴム成分、樹脂、補強用充填剤及び架橋剤を含むゴム組成物の製造方法であって、前記樹脂を前記ゴム成分に添加してマスターバッチを作製する第一工程と、該マスターバッチに前記補強用充填剤を混練りして充填マスターバッチを作製する第二工程と、該充填マスターバッチに前記架橋剤を混練りする第三工程とを有するものである。
【0010】
本実施形態においては、樹脂をあらかじめゴム成分とマスターバッチ化してから、補強用充填剤さらに架橋剤と混練するため、得られるゴム組成物中での樹脂の分散性が向上する。また、樹脂がゴム成分中に十分分散してから補強用充填剤が加えられるため、補強用充填剤表面が樹脂により大部分覆われてしまうということが少なくなり、補強用充填剤とゴム成分中のポリマーとの補強反応の阻害が抑制される。これにより、従来法に比して、破壊特性を維持しつつ高弾性を実現したゴム組成物を得ることが可能となった。
【0011】
(ゴム成分)
本実施形態のゴム組成物の製造方法に使用可能なゴム成分としては、天然ゴム(NR)及び種々の合成ゴムから選択される少なくとも1種が挙げられる。上記合成ゴムの具体例としては、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、架橋ポリエチレンゴム、クロロプレンゴム及びニトリルゴム等が挙げられる。これらのゴム成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよく、これらのいずれを用いても後述する熱硬化性樹脂の硬化等により、高弾性でかつ破断伸びが大きいといった本実施形態の特有の効果が得られる。
また上記のうちでは、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)などのジエン系ゴムを用いることが、より高弾性でかつ破断伸びが大きい特性を有するゴム組成物が得られる点から好ましい。
【0012】
(樹脂)
本実施形態のゴム組成物には、樹脂が含有される。該樹脂は特に制限されないが、熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。該熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂(メラミン−フォルムアルデヒド樹脂)、ユリア樹脂(尿素−フォルムアルデヒド樹脂)、ポリカーボネート樹脂、フェノール系熱硬化性樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、グアナミン樹脂、ポリウレタン樹脂等を挙げることができ、その他、これら樹脂に匹敵する硬度を有する樹脂も使用することが可能である。
【0013】
上記のうち、本実施形態に用いる熱硬化性樹脂としてはフェノール系熱硬化性樹脂が好ましい。本実施形態において、フェノール系熱硬化性樹脂とは熱を加えることによって硬化するフェノール系樹脂を意味し、該フェノール系樹脂とは、フェノールのみを原料とする重縮合物のみでなく、クレゾール及びキシレノールなどのフェノール類を原料とする重縮合物を含めた広範なフェノール樹脂を意味するものである。
【0014】
本実施形態に用いるフェノール系熱硬化性樹脂は、ゴムの耐破壊性の低下を抑えながらゴムを高弾性化するために用いられるものであり、好ましくはノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、ノボラック型キシレノール樹脂、ノボラック型レゾルシノール樹脂及びこれらの樹脂をオイルで変性した樹脂から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
また、上記フェノール系熱硬化性樹脂のオイル変性に用いる好適なオイルとしては、ロジン油、トール油、カシュー油、リノール酸、オレイン酸及びリノレイン酸から選ばれる少なくとも1種のオイルが挙げられる。
【0015】
上記のフェノール系熱硬化性樹脂には硬化剤を用いることが必要であり、この硬化剤としてはメチレン供与体を挙げることができる。該メチレン供与体としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン等の多価メチロールメラミン誘導体;オキサゾリジン誘導体;多価メチロール化アセチレン尿素;アセトアルデヒドアンモニア;α−ポリオキシメチレン及びパラホルムアルデヒドなどから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
これらの中でも、硬化速度が速く、より高弾性化したゴム組成物が得られるという点から、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサメトキシメチルメラミンの使用が望ましい。
【0016】
これらのメチレン供与体の含有量は、前記フェノール系熱硬化性樹脂全量に対して、好ましくは0.1質量%以上80質量%以下である。メチレン供与体の含有量がこの範囲にあると、ゴムの架橋系に悪影響を及ぼすことなくフェノール系熱硬化性樹脂の硬化を十分に進めることができる。
上記含有量は、より好ましくは5質量%以上70質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上60質量%以下である。
【0017】
本実施形態に用いるフェノール系熱硬化性樹脂としては、また、ノボラック型レゾルシン樹脂及びレゾール型フェノール系樹脂を含む樹脂組成物が挙げられる。
前記ノボラック型レゾルシン樹脂等単独では、末端にメチロール基がないので硬化剤なしで硬化することができない。一方、レゾール型フェノール系樹脂は末端等にメチロール基を有するので、硬化剤がなくても硬化することができる。ただし、レゾール型フェノール系樹脂単独では樹脂の硬化性が遅く、ゴムの加硫時に樹脂の硬化が十分に進行しないので、ノボラック型レゾルシン樹脂及びレゾール型フェノール系樹脂を含む樹脂組成物とすることで、硬化剤を用いることなくゴム組成物における弾性率を増大させ、しかも大きな破断時伸びをも得ることができる。
【0018】
本実施形態に用いるレゾール型フェノール系樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを反応させて合成される。実際には前記レゾール型フェノール系樹脂は、硬化前の前駆体として得られるが、前記反応においてアルカリ触媒を用いると主に付加反応が進行して低重合度のレゾール型フェノール系樹脂となる。
【0019】
本実施形態におけるレゾール型フェノール系樹脂に用いるフェノール類としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等のクレゾ−ル類;2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等のキシレノール類;o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール等のエチルフェノール類;イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール等のブチルフェノール類;p−tert−アミルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−クミルフェノール等のアルキルフェノール類;フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノール等のハロゲン化フェノール類;p−フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール等の1価フェノール置換体、及び、1−ナフトール、2−ナフトール等の1価のフェノール類;レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、プロログルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシナフタリン等の多価フェノール類;などが挙げられる。これらを単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。
これらのフェノール類の中でも、経済的に有利なフェノール、クレゾール類、及びビスフェノールAから選ばれるものが好ましい。
【0020】
本実施形態におけるレゾール型フェノール系樹脂及びノボラック型レゾルシン樹脂に用いるアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。これらを単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
これらのアルデヒド類の中でも、反応性が優れ、安価であるホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドから選ばれるものが好ましい。
【0021】
前記レゾール型フェノール系樹脂は、上述したフェノール類及びアルデヒド類を、アルカリ金属やアミン類、二価金属塩などの触媒の存在下で反応させることによって合成することができる。
前記合成する際に用いる触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カルシウム、マグネシウム、バリウムなどアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物;炭酸ナトリウム、アンモニア水、トリエチルアミン、ヘキサメチレンテトラミンなどのアミン類;酢酸マグネシウムや酢酸亜鉛などの二価金属塩;などの物質を単独または2種以上併用することができる。
【0022】
前記レゾール型フェノール系樹脂の合成において、フェノール類とアルデヒド類との反応モル比としては、フェノール類1モルに対して、アルデヒド類を0.80モル以上2.50モル以下とすることが好ましく、より好ましくは、1.00モル以上2.30モル以下とする。モル比が前記範囲であると、反応制御が容易でありレゾール型フェノール系樹脂を確実に得ることができる。
【0023】
また、本実施形態に用いるレゾール型フェノール系樹脂のジメチレンエーテル基量は、フェノール類に由来する芳香環同士を結合しているアルデヒド類に由来する全結合基量に対して、20モル%以上80モル%以下であることが好ましく、25モル%以上75モル%以下であることがより好ましい。ジメチレンエーテル基量が上記範囲にあると、硬化性が良好で、かつ熱安定性に優れ品質ばらつきのないフェノール系樹脂組成物を得ることができる。
【0024】
前記レゾール型フェノール系樹脂における結合基の比率は、1H−NMR法に準拠して測定したものである。具体的には、レゾール型フェノール樹脂をピリジン触媒中、無水酢酸で処理して、メチロール基をアセチル化し、このアセチル化物の1H−NMRを測定した。
各結合基量は、測定されたスペクトルからアセトンのピーク(2.04ppm)を基準に、各々メチレン基(約3.8ppm)、ジメチレンエーテル基(約4.5ppm)、メチロール基(約5.0ppm)とし、これらピークの積分強度比を、メチレン基、メチロール基については1/2倍、ジメチレンエーテル基については1/4倍とした値の比率より、アルデヒド類に由来する全結合基量(メチレン基量、ジメチレンエーテル基量及びメチロール基量の和)に対するジメチレンエーテル基量の比率(モル%)を算出した。
【0025】
装置は、日本電子社製NMR測定装置「JNM−AL300」(周波数:300MHz)を使用した。なお、上記測定方法は、レゾール型フェノール系樹脂の原料としてフェノールとホルムアルデヒドとを用いた場合であるが、これ以外のフェノール類及びアルデヒド類を用いた場合でも、基本的に同じ原理で測定することができる。
【0026】
一方、前記ノボラック型レゾルシン樹脂に用いるレゾルシン類としては、例えば、レゾルシン、2−メチルレゾルシン、5−メチルレゾルシン及び2,5−ジメチルレゾルシン等のメチルレゾルシン類、4−エチルレゾルシン、4−クロロレゾルシン、2−ニトロレゾルシン、4−ブロモレゾルシン、4−n−へキシルレゾルシンなどが挙げられる。これらを単独あるいは2種以上混合して使用することができる。
これらのレゾルシン類の中でも、経済的に有利なレゾルシン及びメチルレゾルシン類から選ばれるものが好ましい。
【0027】
上記ノボラック型レゾルシン樹脂は、レゾルシン及び上述したアルデヒド類を、酸性触媒の存在下で反応させた後、脱水工程により水を除去して合成することができる。また、ノボラック型レゾルシン樹脂の合成に用いる触媒としては、シュウ酸、塩酸、硫酸、ジエチル硫酸、パラトルエンスルホン酸等の酸類を、単独または2種類以上併用して使用できる。また、レゾルシンそのものが酸性を示すため、無触媒でも合成することができる。
【0028】
前記ノボラック型レゾルシン樹脂の合成において、レゾルシンとアルデヒド類との反応モル比としては、レゾルシン1モルに対して、アルデヒド類を0.40モル以上0.80モル以下とすることが好ましく、より好ましくは、アルデヒド類を0.45モル以上0.75モル以下とする。モル比が前記範囲あると、反応の制御や樹脂の取り扱いが容易となる。
【0029】
前記樹脂組成物におけるノボラック型レゾルシン樹脂の含有量としては、樹脂組成物全体に対して、18質量%以上50質量%以下とすることが好ましく、20質量%以上45質量%以上とすることがより好ましい。
ノボラック型レゾルシン樹脂の含有量を上記範囲とすることにより、本実施形態における樹脂成分の硬化性を向上させることができ、高弾性で発熱性の低いゴム組成物を得ることができる。
【0030】
更に、本実施形態における樹脂組成物には、それ自身の放置によるブロッキング性を改良するために、予め充填剤を添加することも可能である。前記充填剤としては、種々のものが使用できるが、例えば、炭酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウム、タルク、クレー、黒鉛等が挙げられ、これらを単独または2種以上を併用して用いることができる。これらの中でもシリカを用いることが好ましく、特に乾式シリカであることが、ゴム組成物としたときの物性に対するデメリットが少ない点で好ましい。
前記充填剤の添加量としては、樹脂組成物100質量部に対して、充填剤を1質量部以上40質量部以下で使用するのが好ましい。これにより、ゴム組成物の弾性率や破断時伸びを阻害することなく、樹脂組成物の放置によるブロッキング性を改善することができる。
【0031】
本実施形態における樹脂組成物を得るため、前記レゾール型フェノール系樹脂とノボラック型レゾルシン樹脂とを混合する方法は、両成分が均一に混合分散し得る方法であればよく、特に限定されない。例えば、反応途中のレゾール型フェノール系樹脂中にノボラック型フェノール系樹脂を添加し混合する方法、反応途中のノボラック型フェノール系樹脂中にレゾール型フェノール系樹脂を添加し混合する方法、あるいは、レゾール型フェノール系樹脂とノボラック型フェノール系樹脂とを単に粉砕混合する方法、さらには、二軸押出機やオープンロール、加圧式混練機で混練する方法等がある。
【0032】
本実施形態においては、以上説明したフェノール系熱硬化性樹脂から選ばれる少なくとも1種を用いることが好適である。すなわち、前記のフェノール系熱硬化性樹脂の1種を用いてもよいし、2種以上を合わせて用いてもよい。
本実施形態のゴム組成物における前記樹脂の配合量は、前記ゴム成分100質量部に対して2質量部以上50質量部以下とすることが好ましい。配合量が上記範囲にあると、ゴム組成物の柔軟性が損なわれることなく高弾性なゴム組成物を得ることができる。
上記配合量は、3質量部以上45質量部以下とすることがより好ましく、5質量部以上40質量部以下とすることがさらに好ましく、10質量部以上30質量部以下が特に好ましい。
【0033】
(補強用充填剤)
本実施形態における補強用充填剤としては、従来ゴム組成物に用いられているもののうちから適宜選択して用いることができる。具体的には例えば、カーボンブラック、シリカ及び下記一般式(I)で表される無機化合物を挙げることができる。
nM・xSiOy・zH2O ・・・ (I)
上記式中、Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウムおよびジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物または水酸化物、およびそれらの水和物、またはこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、n、x、yおよびzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数および0〜10の整数である。
これら補強用充填剤は、一種を単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
前記カーボンブラックとしては、通常ゴム工業に用いられるものが使用できる。例えば、SAF、HAF、ISAF、FEF、SRF、GPFなど種々のグレードのカーボンブラックを単独または混合して使用することができる。
また、前記シリカは特に限定されないが、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカが好ましい。これらは単独に又は混合して使用することができる。
【0035】
さらに、前記一般式(I)で表される無機化合物としては、γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ(Al23)、ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al23・H2O)、ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、炭酸アルミニウム[Al2(CO32]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al23)、クレー(Al23・2SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al23・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al23・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5 、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al23・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO32]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩などが使用できる。
また、一般式(I)で表される無機化合物としては、Mがアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物又は水酸化物、それらの水和物、及びアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも一種のものが好ましい。
中でも補強用充填剤としては、カーボンブラック、シリカ及び水酸化アルミニウムが好ましい。
【0036】
上記補強用充填剤の配合量は、前記ゴム成分100質量部に対して5質量部以上200質量部以下とすることが好ましい。配合量をこの範囲とすることにより、ゴム組成物中に前記熱硬化性樹脂が含まれても十分な補強効果を得ることができ、また発熱性の悪化を防ぎ、耐摩耗性、加工性等の物性を維持することができる。
上記配合量は、10質量部以上180質量部以下とすることがより好ましく、20質量部以上150質量部以下とすることがさらに好ましい。
【0037】
(架橋剤)
本実施形態における架橋剤は、加硫剤および加硫促進剤を含む概念である。加硫剤としては、硫黄、硫黄含有化合物等が挙げられる。その配合量は、通常ゴム組成物に配合される範囲内とすることができ、例えば、前記ゴム成分100質量部に対し、硫黄分として0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、より好適には1質量部以上5質量部以下である。
また、加硫促進剤としては、例えば、1,3−ジフェニルグアニジン、ジベンゾチアジルジスルフィド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。加硫促進剤の配合量についても、通常ゴム組成物に配合される範囲内とすることができ、例えば、前記ゴム成分100質量部に対し、0.1質量部以上7質量部以下とすることが好ましく、より好適には1質量部以上5質量部以下である。
【0038】
(その他の成分)
本実施形態のゴム組成物の製造方法においては、その他、ゴム業界で一般に使用されている配合剤、例えば、プロセスオイル、老化防止剤、軟化剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、オゾン劣化防止剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、酸化防止剤、カップリング剤、発泡剤、発泡助剤等を、本発明の目的を害しない範囲で適宜配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0039】
前記プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系等が挙げられる。その使用量は、ゴム成分100質量部に対し0質量部以上100質量部以下が好ましく、100質量部を超えると、加硫ゴムの引張強度や低発熱性が悪化する傾向がある。
更に、前記老化防止剤としては、例えば3C(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、6C[N−(1,3−ジメチルブチル)−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン]、AW(6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)、ジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物等を挙げることができる。その使用量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上6.0質量部以下が好ましく、更に好ましくは0.3質量部以上5.0質量部以下である。
【0040】
(ゴム組成物の製造)
本実施形態のゴム組成物の製造方法は、前述の第一工程、第二工程及び第三工程を有する。
−第一工程−
本工程は、前記樹脂を前記ゴム成分に添加してマスターバッチを作製する工程である。本実施形態では、ゴム組成物における樹脂の分散性を高めるため、さらには樹脂による補強用充填剤表面の被覆をなるべく避けるために、補強用充填剤の混合前に予めゴム成分及び樹脂のマスターバッチ(ゴム・樹脂複合体)を作製する。
上記ゴム成分及び樹脂を含むマスターバッチを製造する方法については特に制限はなく、ウェットマスターバッチまたはドライマスターバッチによって得ることができる。ここで、ウェットマスターバッチとは溶媒等を用いて原料成分を液状として混合したマスターバッチであり、ドライマスターバッチとは原料成分を固体状のまま機械的に混合したマスターバッチである。混合後の乾燥等の後処理が不要であること、後工程を連続的に行うことができることなどから、ドライマスターバッチが好ましい。
【0041】
以下に、本実施形態におけるマスターバッチの作製方法を例示する。
(ドライマスターバッチの場合)
ゴム成分及び樹脂を含むドライマスターバッチは、通常、ブロッック状の天然ゴムや合成ゴムとフェノール系熱硬化性樹脂などの熱硬化性樹脂とを混練りすることによって得ることができる(ゴム・樹脂作製工程)。代表的な混練機(第一混練機)としては、ロール、接線式(非噛合式)インターナルミキサー(以下接線式バンバリーミキサーと称することがある)、または二軸混練押出機が挙げられるが、ブロック状のゴムの噛み込みがよいロールや接線式バンバリーミキサーが好ましい。
また、ゴム成分及び樹脂を含むウェットマスターバッチの製法については後に詳述するが、用いる混練機としては、脱水乾燥、充填剤のゴム成分への分散が同時に可能な二軸混練押出機が好ましい。また、スクイザや遠心吸水機、エクスパンジョン、乾燥機を組み合わせてもよい。
【0042】
(ウェットマスターバッチの場合)
次に、上記ゴム成分及び樹脂を含むウェットマスターバッチの作製方法について説明する。
この場合には、(a)ゴム配合材料を液状とする工程、(a’)これらを混合する工程、(a”)混合液を凝固処理する工程、(b)前記(a)工程で形成された凝固物を取り出す工程、及び(c)前記(b)工程で取り出された凝固物を第一混練機を用いて捏和し乾燥させると共に樹脂を分散させる工程、を経ることが好適である。
【0043】
・(a)工程
この工程は、ゴム配合材料を液状のゴム液とする工程である。
当該(a)工程において用いられるゴム液としては、天然ゴムラテックス及び/または合成ゴムラテックス、あるいは溶液重合による合成ゴムの有機溶媒溶液などを挙げることができるが、これらの中で、得られるウェットマスターバッチの性能や製造しやすさなどの観点から、天然ゴムラテックス及び/または合成ゴムラテックスが好適である。
・(a’)工程
この工程は、前記(a)工程で得られた液状のゴム材料と樹脂とを混合する工程である。
本実施形態におけるウェットマスターバッチの作製方法においては、上記ゴム液に、前述の樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の樹脂を、ホモミキサー等を用いて分散させる。具体的には、例えば、ホモミキサー中に液状の熱硬化性樹脂を入れ、攪拌しながら、ラテックスを滴下する方法や、逆にラテックスを攪拌しながら、これに液状の熱硬化性樹脂を滴下する方法がある。また、一定の流量割合をもった熱硬化性樹脂液流とラテックス流とを、激しい水力攪拌の条件下で混合する方法などを用いることもできる。
・(a”)工程−
この工程は、前記混合工程で得られた混合液を凝固処理する工程である。具体的には、前記のようにして得られた熱硬化性樹脂を含むゴム液を凝固処理して、凝固物を形成させる。この凝固方法としては、従来公知の方法、例えば蟻酸、硫酸などの酸や、塩化ナトリウムなどの塩の凝固剤を熱や攪拌などによるせん断力を与えることによって行われる。また、複数の手段を組み合わせてもよい。
【0044】
・(b)工程及び(c)工程−
(b)工程は、前記(a)工程で形成された凝固物を、従来公知の固液分離手段を用いて取り出し、充分に洗浄する工程である。洗浄は、通常水洗法が採用される。
(c)工程は、前記(b)工程で取り出され、充分に洗浄された凝固物を第一混練機を用いて機械的せん断力をかけながら捏和し乾燥させると共に充填剤を分散させる工程である。
上記(c)工程においては、混練機を用いて機械的せん断力をかけながら捏和し乾燥させるため、工業的生産性の観点から、連続的に操作することが好ましい。単軸スクリュを備える装置を用いることもできるが、同方向回転、あるいは異方向回転の多軸混練押出機を用いることがより好ましく、特に二軸混練押出機を用いることが好ましい。
【0045】
−第二工程−
本工程は、前記の第一工程で得られたマスターバッチに前記補強用充填剤を混練りして充填マスターバッチを作製する工程である。具体的には、前述のマスターバッチ(ドライ・ウェット)に対して、第二混練機を用いて、さらに補強用充填剤を混合することが好適である。
前記第二混練機としては、2本のローターが互いに噛み合っている噛合式インターナルミキサー(以下、噛合式バンバリミキサーと称することがある)接線式バンバリミキサー、オープンロール及びニーダーの中から選ばれるいずれかであることが好ましい。
【0046】
中でも、第二混練機としては接線式または噛合式バンバリミキサーのようなバッチ式混練機を用いることが好ましい。
また、通常、二軸押出混練機に代表される連続式の混練機(連続式混練装置)はバンバリミキサーに代表されるバッチ式の混練機(バッチ式混練装置)に比べて単位体積当りの配合量のバラツキが大きく、補強用充填剤をゴム組成物中に均一に分散させるためにはバンバリミキサーのようなバッチ式の混練機が好ましい。
なお、この第二工程の時点で、補強用充填剤に加え架橋剤を除く前記ゴム用配合剤を加えてもよい。また、上記ウェットマスターバッチに関する、第一混練機及び第二混練機については、前述の説明と同様である。
【0047】
−第三工程−
本工程は、前記の第二工程で得られた充填マスターバッチに前記架橋剤を混練りする工程である。
混練りに用いる好適な混練機等は、前記第二工程で用いられるものと基本的に同様である。また、用いる架橋剤種や混練り条件などによっては、前記第二工程と第三工程とを1つの工程として行ってもよい。
【0048】
このように構成される本実施形態のゴム組成物の製造方法により、天然ゴム、合成イソプレンゴム及び合成ジエン系ゴム等のゴム成分に対して、熱硬化性樹脂を含有せしめることにより、従来よりも更に高弾性かつ高破断時伸びを有する本実施形態のゴム組成物が得られることとなる。
【0049】
<タイヤ>
本実施形態のタイヤは、前記のゴム組成物を用いたものである。すなわち、本実施形態のタイヤは、前記ゴム組成物をタイヤ構成部材のいずれかに含有させてなる。該タイヤ構成部材としては、例えば、トレッド、アンダートレッド、サイドウォール、カーカスコーティングゴム、ベルトコーティングゴム、ビードフィラーゴム、チェーファー、ビードコーティングゴム、クッションゴム等が挙げられる。
【0050】
本実施形態のゴム組成物を用いて空気入りタイヤを製造する場合は、例えば、押し出し機やカレンダー等によりビードフィラー部材、または、ランフラットタイヤ用サイド補強ゴムを作製し、これらを成型ドラム上で他の部材と張り合わせること等でグリーンタイヤを作製し、このグリーンタイヤをタイヤモールドに収め、内側から圧を加えながら加硫する方法などにより行うことができる。また、本実施形態のタイヤの内部には、空気の他に窒素や不活性ガスを充填することができる。
【0051】
前記空気入りタイヤの一例としては、一対のビード部、該ビード部にトロイド状をなして連なるカーカス、該カーカスのクラウン部をたが締めするベルト及びトレッドを有してなる空気入りタイヤなどが好適に挙げられる。なお、本実施形態の空気入りタイヤは、ラジアル構造を有していてもよいし、バイアス構造を有していてもよい。
このようにして得られた本実施形態の空気入りタイヤは、補強性、耐摩耗性などに優れ、かつ軽量化が図られている。
【0052】
以上、実施形態により本発明を説明したが、本発明は、上記の形態に限定されず、その発明の目的から逸脱しない範囲内において、任意の変更、改変を行うことができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。なお以下において、特に断りのない限り、「部」は質量部を、「%」は質量%を各々意味する。
【0054】
<樹脂組成物(フェノール系熱硬化性樹脂)の製造>
(レゾール型フェノール樹脂)
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置に、フェノール1000部及び37%ホルムアルデヒド水溶液1294部を加え(モル比(ホルムアルデヒド/フェノール)=1.50)、さらに酢酸亜鉛5部を加えた。1時間還流させ、反応によって生じる水の真空除去を行い、90℃になった時点でさらに1時間反応させ、常温(25℃)で固形のレゾール型フェノール樹脂1145部を得た。
このレゾール型フェノール樹脂について、前述の条件で1H−NMRにて解析した結果、アルデヒドに由来する全結合基量に対するジメチレンエーテル基量は、45モル%であった。
【0055】
(ノボラック型レゾルシン樹脂)
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置に、レゾルシン1000部及びシュウ酸3部を加えた。内温が100℃になるまで加熱して、温度到達後、37%ホルムアルデヒド水溶液369部を30分間かけて逐添した(モル比(ホルムアルデヒド/フェノール)=0.50)。その後1時間還流させ、反応によって生じる水の常圧除去、真空除去を170℃になるまで行い、常温で固形のノボラック型レゾルシン樹脂1040部を得た。
【0056】
(樹脂組成物)
上記で得られた各ノボラック型レゾルシン樹脂及びレゾール型フェノール系樹脂を、混合質量比(ノボラック型レゾルシン樹脂/レゾール型フェノール系樹脂)が30/70となるように混合し、衝撃式粉砕機により粉砕して、粉末状の樹脂組成物(1)を得た。
【0057】
<マスターバッチの作製>
第1表に示す配合処方に従い、天然ゴムと各種フェノール系熱硬化性樹脂とを、8インチのオープンロールを用いて80℃にて混練して、ドライマスターバッチ(1)〜(5)を作製した(第一工程)。
【0058】
【表1】

[注]
1)天然ゴム:RSS#3
2)カーボンブラック:旭カーボン(株)製、旭#70(N330)
3)ノボラック型フェノール樹脂:住友ベークライト(株)製、スミライトレジン「PR50235」
4)カシュー変性フェノール樹脂:住友ベークライト(株)製、スミライトレジン「PR12686」
5)フェノール系樹脂組成物:樹脂組成物の製造で得た樹脂組成物(1)
【0059】
<実施例1>
下記表2に示す配合処方のうち、亜鉛華、加硫促進剤及び硫黄を除く成分を、バンバリーミキサーを使用して混練りし、充填マスターバッチを得た(第二工程)。次に、8インチのオープンロールを用いて、この充填マスターバッチに亜鉛華、加硫促進剤及び硫黄を添加して混練りし、未加硫のゴム組成物を得た(第三工程)。次いで、厚さ2mmにシーティングした後、145℃で30分間加硫した。得られた加硫ゴムに対して以下の方法での各特性を評価した。
【0060】
(1)破断時伸び及び破断強度
得られた加硫ゴムを、JISダンベル状3号形に打ち抜いたサンプルについて、JISK6251に準拠して25℃で引っ張り試験を行い、破断時伸びと破断強度とを測定した。結果を表2に示す。
【0061】
(2)動的弾性率E’
得られた加硫ゴムについて、東洋精機社製スぺクトロメータを用い、初期荷重100g、歪み2%、測定周波数50Hz、測定温度60℃にて動的弾性率E’を測定した。結果を表2に示す。
【0062】
<実施例2〜4、比較例1〜4>
実施例1において、ゴム組成物として、表2に示した各配合処方からなるものを各々用いた以外は、実施例1と同様にして加硫ゴムを作製し、同様の評価を行った。
結果を表2にまとめて示す。
【0063】
【表2】

【0064】
[注]
1)天然ゴム:RSS#3
2)ノボラック型フェノール樹脂:住友ベークライト(株)製、スミライトレジン「PR50235」
3)カシュー変性フェノール樹脂:住友ベークライト(株)製、スミライトレジン「PR12686」
4)フェノール系樹脂組成物:樹脂組成物の製造で得た樹脂組成物(1)
5)カーボンブラック:旭カーボン(株)製、旭#70(N330)
6)老化防止剤:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C」
7)サイテック(株)製、商品名「CYREZ964RPC」
8)加硫促進剤:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーCZ」
9)硫黄:フレキシス社製、商品名「CRYSTEX HS OT 10」
【0065】
表2に示す結果から明らかなように、実施例のフェノール系熱硬化性樹脂を予め混練りしたマスターバッチを用いて製造した組成物では、該マスターバッチを用いないで製造した比較例1〜4のゴム組成物に比べ、動的弾性率E’が向上し、また破断時伸びも大きいことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分、樹脂、補強用充填剤及び架橋剤を含むゴム組成物の製造方法であって、
前記樹脂を前記ゴム成分に添加してマスターバッチを作製する第一工程と、該マスターバッチに前記補強用充填剤を混練りして充填マスターバッチを作製する第二工程と、該充填マスターバッチに前記架橋剤を混練りする第三工程とを有するゴム組成物の製造方法。
【請求項2】
前記第一工程が、ドライマスターバッチを作製する工程である請求項1に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂が、熱硬化性樹脂である請求項1または2に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂が、フェノール系熱硬化性樹脂である請求項3に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項5】
前記フェノール系熱硬化性樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、ノボラック型キシレノール樹脂、ノボラック型レゾルシノール樹脂及びこれらの樹脂をオイルで変性した樹脂、並びに、ノボラック型レゾルシン樹脂及びレゾール型フェノール樹脂を含む樹脂組成物から選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項6】
前記フェノール系熱硬化性樹脂が、メチレン供与体を該フェノール系熱硬化性樹脂全量に対して0.1質量%以上80質量%以下含む請求項4または5に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項7】
前記ノボラック型レゾルシン樹脂が、レゾルシンとアルデヒド類とをモル比(アルデヒド類/レゾルシン)0.4以上0.8以下で反応させて得られるものである請求項5に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項8】
前記レゾール型フェノール系樹脂におけるジメチレンエーテル基量が、フェノール類に由来する芳香環同士を結合しているアルデヒド類に由来する全結合基量に対して、20モル%以上80モル%以下である請求項5に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂のオイル変性に用いるオイルが、ロジン油、トール油、カシュー油、リノール酸、オレイン酸及びリノレイン酸から選ばれる少なくとも1種のオイルである請求項5に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂の配合量が、ゴム成分100質量部に対して2質量部以上50質量部以下である請求項1〜9のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項11】
前記補強用充填剤の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して5質量部以上200質量部以下である請求項1〜10のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法により得られるゴム組成物。
【請求項13】
請求項12に記載のゴム組成物を用いたタイヤ。

【公開番号】特開2012−46670(P2012−46670A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191141(P2010−191141)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】