説明

ゴム製品の製造方法および装置

【課題】無駄な材料の発生を阻止しながら生産コストを低下させ、設備の大型化を防止する。
【解決手段】帯状部材12の接合面(側端面)に多数の突起47が設けられた加工具38の加工面43を摺接させるとともに、帯状部材12を加工具38に対して移動させることで前記接合面を粗面化したので、該接合面の粘着性が長期保管等により低下していても、前記粗面化により新鮮な未加硫ゴムが接合面に露出するとともに、該接合面は接合に好適な平坦形状に整えられる。その後、ゴム部材の接合面同士を接合するようにすれば、その接合強度を容易に向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カーカスプライ、ベルトプライ等のゴム製品を製造する製造方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のゴム製品の製造方法および装置としては、例えば以下の特許文献1に記載されているようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−291225号公報
【0004】
このものは、複数本のコードの周囲をカレンダー装置により未加硫ゴムで被覆することによりカレンダー済み原反を成形した後、該カレンダー済み原反を原反保管用ライナークロスに重ね合わせながら一旦巻き取って巻物を成形する。その後、前記巻物をある期間この状態で保管した後、必要に応じて該カレンダー済み巻物から原反を巻出す一方、該カレンダー済み原反を幅方向に裁断して裁断片を次々に成形し、次に、これら裁断片のコード長さ方向に延びる側端面同士を接合してカーカスプライ用シート原反を成形するようにしている。
【0005】
ここで、前記カレンダー済み原反を巻き取った巻物は前述のようにある期間保管されるが、この保管期間が長くなると、被覆した未加硫ゴム表面の粘着力が低下し、この結果、裁断片同士の接合強度が低下してしまうという課題がある。このような課題を解決するため、従来においては、裁断片に裁断する直前にカレンダー済み原反の両側端部をコード間においてカッターによりコードに沿って切断し、少数本のコードが埋設されている狭幅の屑部材を切り離すことで、カレンダー済み原反の両側端面に新鮮な未加硫ゴムを露出させ、その後、新鮮な未加硫ゴムが露出した裁断片の側端面同士を接合するようにしていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来のゴム製品の製造方法および装置にあっては、前述のような幅狭の屑部材が発生するため、材料が無駄となるとともに、屑部材の廃棄費用が必要となり、ゴム製品の生産コストが高くなってしまうという課題があった。また、発生した屑部材を排出するための設備が必要となり、この結果、装置全体が大型化してしまうという課題もあった。
【0007】
この発明は、無駄な材料の発生を阻止するとともに、生産コストを容易に低下させることができ、しかも、設備の大型化を防止することができるゴム製品の製造方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、第1に、未加硫ゴムを含むゴム部材の接合面に、多数の突起が設けられた加工具の加工面を摺接させながら、該加工具とゴム部材とを相対的に移動させることにより、該ゴム部材の接合面を粗面化させる工程と、接合面が粗面化したゴム部材の接合面とゴム部材の接合面とを圧接して接合する工程とを備えたゴム製品の製造方法により、達成することができる。
【0009】
第2に、加工面に多数の突起が設けられ、未加硫ゴムを含むゴム部材の接合面に前記加工面が摺接可能な加工具と、加工具の加工面がゴム部材の接合面に摺接しているとき、該加工具とゴム部材とを相対的に移動させることで、該ゴム部材の接合面を粗面化させる移動手段と、接合面が粗面化したゴム部材の接合面とゴム部材の接合面とを圧接して接合する接合手段とを備えたゴム製品の製造装置により、達成することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明においては、ゴム部材の接合面に多数の突起が設けられた加工具の加工面が摺接しているとき、加工具とゴム部材とを相対的に移動させて前記接合面を粗面化したので、該接合面の粘着力が長期保管等により低下していても、前記粗面化により新鮮な未加硫ゴムが接合面に露出するとともに、接合面の形状が整えられる。その後、該ゴム部材の粗面化された接合面とゴム部材の接合面とを圧接して接合するようにしたので、これら接合面の接合強度を容易に向上させることができる。このとき、接合面を粗面化するだけでよく、接合面近傍を切断する必要はないため、幅狭の屑部材が発生することはなく、この結果、無駄な材料の発生阻止、および、生産コストの低下を容易に図ることができ、また、設備の大型化を防止することもできる。
【0011】
また、請求項2に記載のように構成すれば、接合面に露出した新鮮な未加硫ゴムの粘着力を高い値に保持することができる。また、請求項3に記載のように構成すれば、接合面が予備架橋されていても、前記粗面化により内部の新鮮な未加硫ゴムを露出させることができ。さらに、請求項5に記載のように構成すれば、高能率で簡単に接合面を粗面化することができ、また、請求項6に記載のように構成すれば、加工具の構造が簡単となり、安価に製作することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施形態1を示す概略正面図である。
【図2】その平面図である。
【図3】加工具により接合面を粗面化している状態を説明する斜視図である。
【図4】加工具の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。
図1、2において、11はゴム部材としての帯状部材12とライナー13とが互いに重なり合った状態で多数回ロール状に巻き取られることで構成された巻きロールであり、この巻きロール11はある程度の期間この状態で保管された後、必要に応じて回転されると、該巻きロール11から帯状部材12およびライナー13が分離されながら巻出される。ここで、前記帯状部材12は、例えば、複数本の引き揃えられた補強コード14の周囲を図示していないカレンダー装置等を用いて未加硫ゴム15により被覆することで構成され、その一部に未加硫ゴムを含んでおり、特にその表面部は未加硫ゴムから構成されている。また、前記ライナー13としては、例えば、長尺帯状のポリエチレンシート、布反物等が用いられる。
【0014】
そして、前述のように巻きロール11から巻出されたライナー13は図示していないモータにより駆動回転される巻取りリール16の周囲に次々とロール状に巻き取られる。一方、巻きロール11から巻出された帯状部材12は、モータ17および該モータ17により駆動回転される一対の供給ローラ18からなる移動手段19により引き取られるが、このとき、前記帯状部材12は巻きロール11と移動手段19との間に配置された複数のガイドローラ20、21、22によりガイドされながら移動手段19に向かって移動走行し、また、前記移動手段19を通過後は水平な板状のガイドプレート23上に供給される。24は前記ガイドプレート23に近接して配置され前後方向に延びるとともに、図示していないモータにより間欠的に走行する第1コンベアであり、この第1コンベア24の後端部には前記ガイドプレート23を通じて帯状部材12が第1コンベア24の幅方向から供給される。
【0015】
26は前記第1コンベア24の後端部(上流端部)に設置されカッター27を有する切断手段であり、この切断手段26のカッター27が前後方向に移動すると、第1コンベア24の後端部上に供給された帯状部材12の始端部が該カッター27により帯状部材12の幅方向に切断され、帯状部材12から矩形のシート片28が切り出される。このようにして帯状部材12から切り出されたシート片28は前記第1コンベア24の走行により前方に向かって搬送されるが、このとき、シート片28の補強コード14は第1コンベア24の幅方向に延在している。
【0016】
31は前記第1コンベア24の直前に設置され該第1コンベア24の延長線に沿って延びる第2コンベアであり、この第2コンベア31は図示していないモータにより駆動されて間欠的に前後方向に走行する。32は第1コンベア24と第2コンベア31との間に設置された接合手段であり、この接合手段32は第1コンベア24上に位置し後行であるシート片28(ゴム部材)の前側端面28a(接合面)と、第2コンベア31上に位置し先行しているシート片28(ゴム部材)の後側端面28b(接合面)とを第1、第2コンベア24、31間の接合位置において突き合わせ接合する。
【0017】
ここで、前述した後行のシート片28(ゴム部材)と先行のシート片28(ゴム部材)との突き合わせ接合は、第2コンベア31の走行により先行のシート片28を補強コード14の長手方向に延びるその後側端面28bが第1、第2コンベア24、31間に到達するまで後方に搬送する一方、第1コンベア24の走行により後行のシート片28を補強コード14の長手方向に延びるその前側端面28aが第1、第2コンベア24、31間に到達するまで前方に搬送して、これら後行、先行のシート片28の前、後側端面28a、b間に一定幅の僅かな間隙を形成した後、前記接合手段32によりこれら後行、先行のシート片28の前、後側端面28a、bを互いに引き寄せ圧接することにより行う。
【0018】
そして、このように先行するシート片28の後側端面28bに後行のシート片28の前側端面28aを次々に接合して継ぎ足すことで、補強コード14が埋設されているゴム製品としてのカーカスプライ用シート状部材33を成形する。ここで、前述の後行、先行のシート片28は共に帯状部材12から切り出されたものであるため、同様に本願発明におけるゴム部材に相当する。なお、この発明においては、前記帯状部材12を第1コンベア24に対して斜めに供給して平行四辺形のシート片を切り出した後、これらシート片の接合面(前、後側端面)同士を次々に接合することで、ゴム製品としてのベルトプライ用シート状部材を成形するようにしてもよい。この場合には、シート状部材内の補強コードは長手方向に対して所定角度で傾斜している。
【0019】
ここで、前述のように巻きロール11はある程度の期間ロール状のままで保管された後、巻きロール11から帯状部材12が巻出されるが、この保管期間が長くなると、補強コード14の周囲を被覆している未加硫ゴム15の表面における粘着力が低下し、この結果、シート片28同士の接合強度が低下してしまうことがある。このため、従来においては、帯状部材12からシート片28を切り出す直前に、詳しくは、ガイドローラ20とガイドローラ21との間において帯状部材12の両側端部をカッターにより切断し、少数本の補強コード14が埋設されている狭幅の屑部材を切り離すことで、帯状部材12(シート片28)の両側端面(前、後側端面28a、b)に新鮮な未加硫ゴム15を露出させるようにしていた。
【0020】
しかしながら、このようにすると、幅狭の屑部材が発生するため、材料が無駄となるとともに、屑部材の廃棄費用が必要となり、この結果、シート状部材33の生産コストが高くなり、さらに、発生した屑部材を排出して巻き取るための設備、例えば、巻取りリールおよび該巻取りリールを回転させるためのモータを設置する必要があり、装置全体が大型化していた。
【0021】
このため、この実施形態においては、図1、3、4に示すように、ガイドローラ20、21間の前記カッターが配置されている位置に帯状部材12の両側端面(シート片28では前、後側端面28a、b)をそれぞれ粗面化する一対の粗面化機構36を設置したのである。各粗面化機構36は帯状部材12の側端面に近接配置され帯状部材12に沿って延びる支持プレート37を有し、該支持プレート37には帯状部材12の厚さ方向に軸線が延在している円柱状の加工具38が回転可能に支持され、該加工具38には前記支持プレート37に取り付けられた駆動モータ40の図示していない出力軸が連結されている。そして、前記駆動モータ40が作動すると、前記加工具38は自身の軸線回りに高速回転するが、このときの加工具38の周速は帯状部材12の走行(移動)速度よりかなり大である。このように加工具38は軸線回りに回転する回転体から構成されている。
【0022】
前述した各加工具38は外周面に加工面43を有し、該加工面43には軸線方向に対して一方向に傾斜し螺旋状に延びる多数本の互いに平行な細溝44と、軸線方向に対して他方向(前記一方向と逆方向)に傾斜し螺旋状に延びる多数本の互いに平行な細溝45とが形成され、これら細溝44、45はいずれも断面V形であり、途中の多数箇所で互いに交差している。このように各加工具38の加工面43に互いに交差する多数本の細溝44、45が形成されると、加工面43にはこれら細溝44、45間に半径方向外側に向かうに従い先細りとなった四角錐形あるいは截頭四角錐形を呈する多数の突起47が画成される。
【0023】
そして、前述のように加工具38が高速回転しているとき、該加工具38の加工面43が帯状部材12の両側端面にそれぞれ押し付けられると、該加工具38の加工面43は帯状部材12の両側端面に摺接するが、このとき、各加工具38の加工面43には多数の突起47が画成されているので、加工面43に接している部位の両側端面は加工面43の突起47に多数回接触してささくれ立ち、粗面化される。なお、50、51は前記加工具38より上流側および下流側にそれぞれ設置されるとともに、支持プレート37に回転可能に支持されたガイドローラであり、これらのガイドローラ50、51は帯状部材12の両側端面に転がり接触して前記加工面43が帯状部材12の両側端面に確実に摺接するよう帯状部材12をガイドする。また、この発明においては、加工面に多数の突起が形成されたブロック状の加工具をゴム部材の長手方向あるいは厚さ方向に往復動させることで、該加工面をゴム部材の接合面に摺接させるようにしてもよい。
【0024】
このとき、帯状部材12が移動手段19によって適正な張力を付与されながら加工具38に対し移動(走行)していると、帯状部材12の両側端面は加工具38により次々と粗面化され、新鮮な未加硫ゴム15が帯状部材12の両側端面(シート片28では前、後側端面28a、b)に次々に露出する。その後、接合面(両側端面)全体が粗面化された帯状部材12から前述のように切断手段26によってシート片28を次々と切り出した後、ゴム部材(後行のシート片28)の粗面化された接合面(前側端面28a)と、ゴム部材(先行のシート片28)の粗面化された接合面(後側端面28b)とを接合手段32により圧接して、これら両シート片28を互いに接合する。
【0025】
前述のように帯状部材12の接合面(側端面)に多数の突起47が設けられた加工具38の加工面43が摺接しているとき、帯状部材12を加工具38に対して移動させることで前記接合面を粗面化したので、該接合面の粘着力が長期保管等により低下していても、前記粗面化により新鮮な未加硫ゴム15が接合面に露出し、しかも、接合面に凹凸が存在していても、該接合面は接合に好適な平坦形状に整えられる。その後、該帯状部材12から切り出されたゴム部材としてのシート片28の接合面、ここでは後行シート片28の前側端面28aと、先行シート片28の後側端面28bとを圧接して両シート片28の接合面同士を接合するようにしたので、接合面同士の接合強度を容易に向上させることができる。
【0026】
しかも、シート片28の接合面を粗面化するだけでよく、従来のように接合面近傍を切断する必要はないため、幅狭の屑部材が発生することはなく、この結果、無駄な材料の発生阻止、および、生産コストの低下を容易に図ることができ、また、発生した屑部材を排出して巻き取るための設備が不要となって、設備の大型化を防止することもできる。このとき、前述のようにゴム部材(後行のシート片28)の接合面(前側端面28a)とゴム部材(先行のシート片28)の接合面(後側端面28b)とを共に粗面化するようにすれば、接合面同士の接合強度が向上するので、好ましい。なお、いずれか一方のゴム部材の接合面に新鮮な未加硫ゴムが露出しているような場合には、該未加硫ゴムが露出しているゴム部材の接合面に対する粗面化を省略することもできる。
【0027】
ここで、この実施形態においては、前述のように加工具38の加工面43に多数本の平行な細溝44、45を形成することで、細溝44、45間に多数の突起47を画成するようにしたので、加工具38の構造が簡単となり、安価に製作することもできる。なお、この発明においては、断面が矩形あるいはU字形で互いに交差する細溝を加工具38の加工面43に多数本形成することで、これら細溝間に多数の突起を画成するようにしてもよく、この場合には、該突起は四角柱状となる。また、前記細溝は一方向または他方向に傾斜したものだけであってもよく、この場合の突起は螺旋状に延びる突条となる。
【0028】
さらに、この発明においては、加工具を研削砥石から構成してもよく、この場合には、該研削砥石の結合剤表面から突出した砥粒が本願発明の突起となる。このように加工具を研削砥石から構成した場合には、接合面を粗面化する際、接合面が削り取られるため、僅かな切り粉が発生するが、このような切り粉が接合面に付着すると、接合強度が低下するおそれがあるとともに、前記切り粉が予備架橋等により半加硫状態であると、異物となって品質低下を招くおそれがあり、さらに、作業環境を悪化させることもある。これに対し、この実施形態のように細溝により突起を画成するようにすれば、接合面を粗面化する際に接合面に切り傷を形成するだけであるため、切り粉が生じることはなく、この結果、前述のような問題を確実に解消することができる。また、前述の実施形態においては、加工具38を軸線回りに回転する回転体から構成するとともに、該加工具38の外周面である加工面43に多数の突起47を設けたので、加工具を例えばブロック状とするとともに、該加工具を往復動させることで、帯状部材12の両側端面を粗面化する場合に比較し、高能率で簡単に接合面を粗面化することができる。
【0029】
また、前述の実施形態においては、帯状部材12の両側端面(接合面)を加工具38により粗面化した直後に、帯状部材12から切り出されたシート片28の接合面(前、後側端面28a、b)同士を接合するようにしたが、この発明においては、加工具によりゴム部材の接合面を粗面化した時点から24時間以内に、該粗面化された接合面とゴム部材の接合面とを圧接するようにすることが好ましい。その理由は、前述の時間内に圧接接合するようにすれば、接合面に露出した新鮮な未加硫ゴムの粘着力を高い値に保持することができ、接合強度を容易に向上させることができるからである。
【0030】
ここで、前記帯状部材12の接合面の少なくとも一部に対しエネルギー線が照射されて予備架橋が施されている場合があるが、この場合には長期保管されていなくても、予備架橋されている部位の接合面には新鮮な未加硫ゴム15は露出していない。このような場合にも加工具により接合面全体を粗面化し、接合面全体に内部の新鮮な未加硫ゴムを露出させれば、接合強度を容易に向上させることができる。ここで、前述のエネルギー線としては、例えば、電子線、紫外線、X線、ガンマ線等を挙げることができる。
【0031】
なお、この発明においては、ゴム部材は全体が未加硫ゴムからなる帯状のトレッドゴムやインナーライナー、有端の動力伝達用ベルト等であってもよく、この場合には、このゴム部材の接合面である始、終端面を粗面化した後、これらゴム部材の始、終端面同士を接合してゴム製品(リング状のトレッドゴム等)を成形するようにしてもよい。また、この発明においては、接合面がを粗面化されたゴム部材の接合面と、該ゴム部材と種類の異なるゴム部材の接合面とを接合し種々のゴム製品を製造するようにしてもよい。さらに、この発明においては、ゴム部材を停止させる一方、加工具を移動させたり、あるいは、ゴム部材、加工具の双方を移動させることで、これらゴム部材と加工具とを相対的に移動させるようにしてもよい。
【0032】
次に、前記実施形態1の作用について説明する。
今、巻きロール11が回転し、該巻きロール11から帯状部材12およびライナー13が分離されながら巻出されているとする。このとき、巻きロール11から巻出されたライナー13は巻取りリール16に引き取られ、該巻取りリール16の周囲に次々とロール状に巻き取られる。一方、巻きロール11から巻出されたゴム部材としての帯状部材12は移動手段19により引き取られることで、ガイドローラ20、21、22により次々とガイドされながら移動手段19に向かって移動走行するが、このとき、ガイドローラ20、21間に設置された粗面化機構36の加工具38は高速回転するとともに、その加工面43が帯状部材12の両側端面にそれぞれ押し付けられているため、これら加工具38の加工面43は帯状部材12の両側端面にそれぞれ摺接する。
【0033】
このとき、各加工具38の加工面43には多数の突起47が設けられているので、加工面43に接している部位の両側端面は加工面43の突起47に多数回接触してささくれ立ち粗面化される。また、このとき、帯状部材12は前述のように移動手段19によって加工具38に対し移動(走行)しているため、加工具38は帯状部材12の両側端面(接合面)を長手方向に次々と粗面化し、新鮮な未加硫ゴム15を帯状部材12の両側端面に次々に露出させる。そして、前記帯状部材12が移動手段19の供給ローラ18間を通過すると、該帯状部材12はガイドプレート23および第1コンベア24の後端部に供給されるが、このとき、切断手段26のカッター27により帯状部材12の始端部が帯状部材12の幅方向に切断され、該帯状部材12から矩形のシート片28が切り出される。
【0034】
このとき、該シート片28の前側端面28aおよび後側端面28bは共に、補強コード14の長手方向に延びる粗面化された接合面となる。次に、第2コンベア31が走行して先行のシート片28の後側端面28bが第1、第2コンベア24、31間に到達するまで後方に搬送されるとともに、第1コンベア24が走行して後行のシート片28の前側端面28aが同様に第1、第2コンベア24、31間に到達するまで前方に搬送され、これら後行、先行のシート片28の前、後側端面28a、b間に一定幅の僅かな間隙が形成される。
【0035】
その後、これら後行、先行のシート片28の前、後側端面28a、bが接合手段32によって引き寄られて圧接され互いに接合される。このように先行するシート片28(ゴム部材)の粗面化された後側端面28b(接合面)に、後行であるシート片28(ゴム部材)の粗面化された前側端面28a(接合面)を次々に接合して継ぎ足し、長手方向に対して直交する方向に補強コード14が延在しているゴム製品としてのカーカスプライ用シート状部材33を成形する。このとき、帯状部材12の長期間保管等により接合面の粘着力が低下していても、前述のように加工具38によりシート片28の接合面(前、後側端面28a、b)は粗面化されて新鮮な未加硫ゴム15が露出するとともに、接合に好適な形状に整えられるため、これら接合面(前、後側端面28a、b)同士は容易に高強度で接合される。その後、前記シート状部材33は第2コンベア31の走行により前方に向かって搬送される。
【実施例1】
【0036】
次に、試験例について説明する。この試験に当たっては、帯状部材の両側端部をカッターにより切断して幅狭の屑部材を形成することで、該帯状部材の両側端面(接合面)に新規な未加硫ゴムを露出させた従来ゴム部材と、帯状部材の両側端面を超硬合金からなる回転体(加工具)の加工面により粗面化することで、該帯状部材の両側端面(接合面)に新規な未加硫ゴムを露出させた実施ゴム部材1〜6と、帯状部材の両側端面(接合面)をダイヤモンド砥石の加工面により粗面化することで、該帯状部材の両側端面(接合面)に新規な未加硫ゴムを露出させた実施ゴム部材7とを準備した。なお、前記実施ゴム部材1〜6の成形時には切り粉は生じなかったが、実施ゴム部材7の成形時には僅かな切り粉が発生した。
【0037】
ここで、実施ゴム部材1〜6の成形に用いた回転体の直径(mm)および加工面(外周面)における周速(m/min )は以下の表1に示す通りである。なお、直径が 6、16mmの回転体における1周当たりの突起数はそれぞれ21、39個であった。また、前記実施ゴム部材7の成形に用いたダイヤモンド砥石の直径(mm)および加工面(外周面)における周速(m/min )は以下の表1に示す通りである。なお、前記ダイヤモンド砥石の砥粒の粒度は 140番であった。次に、前述した従来ゴム部材および実施ゴム部材1〜7の接合面同士を突き合わせ接合した後、各ゴム部材の接合部における接合割合(%)を測定したが、その結果を以下の表1に示す。ここで、接合割合が 100とは、接合面の全面、即ち 100%の面積で接合しているということである。
【0038】
【表1】

【0039】
次に、市販のタックメーターを用いて各ゴム部材の粘着力(N)、即ちタック値をそれぞれ測定したが、その結果を前記表1に示す。また、接合された各ゴム部材に対し30± 2mm/minの速度で引張し、これらゴム部材に対し伸び率 400%という極めて厳しい強度試験を行った。このとき、接合部における接合が外れたかどうかを検出したが、その結果を接合強度として前記表1に示す。ここで、実施ゴム部材7の粘着力が実施ゴム部材1、4の粘着力より高いにも拘わらず、強度試験において接合に外れが生じたのは、実施ゴム部材7の成形時に生じた切り粉が接合面に付着したためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
この発明は、カーカスプライ、ベルトプライ等のゴム製品を製造する産業分野に適用できる。
【符号の説明】
【0041】
12、28…ゴム部材 15…未加硫ゴム
28a、b…接合面 38…加工具
43…加工面 44、45…細溝
47…突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加硫ゴムを含むゴム部材の接合面に、多数の突起が設けられた加工具の加工面を摺接させながら、該加工具とゴム部材とを相対的に移動させることにより、該ゴム部材の接合面を粗面化させる工程と、接合面が粗面化したゴム部材の接合面とゴム部材の接合面とを圧接して接合する工程とを備えたことを特徴とするゴム製品の製造方法。
【請求項2】
前記加工具によりゴム部材の接合面を粗面化した時点から24時間以内に接合面同士を圧接するようにした請求項1記載のゴム製品の製造方法。
【請求項3】
前記ゴム部材の接合面の少なくとも一部はエネルギー線の照射により予備架橋が施されている請求項1または2記載のゴム製品の製造方法。
【請求項4】
加工面に多数の突起が設けられ、未加硫ゴムを含むゴム部材の接合面に前記加工面が摺接可能な加工具と、加工具の加工面がゴム部材の接合面に摺接しているとき、該加工具とゴム部材とを相対的に移動させることで、該ゴム部材の接合面を粗面化させる移動手段と、接合面が粗面化したゴム部材の接合面とゴム部材の接合面とを圧接して接合する接合手段とを備えたことを特徴とするゴム製品の製造装置。
【請求項5】
前記加工具を軸線回りに回転する回転体から構成するとともに、その加工面である外周面に多数の突起を設けた請求項4記載のゴム製品の製造装置。
【請求項6】
前記加工具の加工面に多数本の平行な細溝を形成することで、細溝間に多数の突起を画成するようにした請求項4または5記載のゴム製品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−167928(P2011−167928A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33773(P2010−33773)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】