説明

ゴム製筒体の製造方法、ゴムチューブの製造方法及び加硫成形型

【課題】未加硫ゴム筒を外金型で覆って内側から加圧する加硫成形方式を採用しつつ、中尺のゴム製筒体をも製造することのできるゴムチューブの製造方法の提供。
【解決手段】筒状ゴム5を金属管6の周りに配置してマンドレル7を構成する。筒状ゴム5に、補強コード12を傾斜させつつ周方向に配列して二層の補強コード層11を設ける。各層11a、11bの補強コード12の傾斜方向を互いに交差するよう設定する。筒状ゴム5の両端を引っ張って補強コード12の傾斜角度(θ)を変化させながら筒状ゴム5を縮径させる。マンドレル7の周りに未加硫ゴム筒8を成型して加硫缶9に挿入する。筒状ゴム5の縮径を解除して、未加硫ゴム筒8を加硫缶9の内周面に押し付けて加圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばゴムチューブなどを製造するためのゴム製筒体の製造方法、ゴムチューブの製造方法及び加硫成形型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゴムチューブなどのゴム製筒体は、未加硫ゴム筒を成型し、これを加圧しつつ加熱することにより加硫成形して製造される。未加硫ゴム筒の加硫成形には、例えば内側にマンドレルを配置して外側から加圧する方法として、布締め方式、外バッグ方式、あるいは二つ割り外金型方式などが採用される。
【0003】
未加硫ゴム筒を外側から加圧する方法のうち、布締め方式や外バッグ方式は、成形するゴム製筒体の外径精度が低くなりやすく、所望の表面光沢を得ることもできない。また、二つ割り外金型方式は、未加硫ゴム筒の未加硫ゴム量を多めに設定しておくことにより、外金型を組み立てて加圧しつつ、外金型の割り面から余分な未加硫ゴムを流出させるものであり、成形するゴム製筒体が長くなるほど、未加硫ゴム量の調節が難しく、しかも、外面未加硫ゴムが割り面から不均一に流出することにより、埋設した補強繊維を露出させるおそれがある。
【0004】
一方、未加硫ゴム筒を外金型で覆って内側から加圧する加硫成形方法として、例えば特許文献1に開示されるような、内バッグと外金型とを用いる方法を採用することがある。この方法は、外金型を使用する分、成形後のゴム製筒体の外径精度が高く、所望の表面光沢を得ることもでき、しかも、外金型に割り面が不要であるため、未加硫ゴムの流出による補強繊維の露出もない。ただ、中尺以上のゴム製筒体を成形する場合には、加硫成形型をセットする際に、内バッグを中尺の未加硫ゴム筒に挿入することができないため、この方法を採用することはできない。
【0005】
これに対して、芯材の周りに筒状ゴムを配置してマンドレルを構成し、このマンドレルの周りに未加硫ゴム筒を成型して、この未加硫ゴム筒をマンドレルと共に外金型に挿入して加圧するという方法が考えられる。この方法は、筒状ゴムを中心軸方向に圧縮して拡径することにより、内バッグ方式と同様、未加硫ゴム筒を内側から加圧するものであり、しかも、中尺のゴム製筒体の成形においても、加硫成形型のセットが容易である。
【特許文献1】特開平5−237848
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記の芯材と筒状ゴムとからなるマンドレルは、未加硫ゴム筒及び筒状ゴムが長いほど、筒状ゴムと芯材あるいは未加硫ゴム筒との摩擦が大きいため、筒状ゴムの両端に力を加えて中心軸方向に圧縮しようとしても、その圧縮力が中央部にまで伝わらず、筒状ゴムの中央部を十分に拡径して未加硫ゴム筒を加圧することができない。
【0007】
本発明は、未加硫ゴム筒を外金型で覆って内側から加圧する加硫成形方式を採用しつつ、中尺のゴム製筒体をも製造することのできるゴム製筒体の製造方法、ゴムチューブの製造方法及び加硫成形型の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るゴム製筒体の製造方法は、マンドレルの周りに未加硫ゴム筒を成型して加硫成形するものであり、そのマンドレルは、芯材の周りに筒状ゴムを配置してなり、この筒状ゴムに、補強コードをマンドレル中心軸に対して傾斜させつつ周方向かつ偶数列に配列すると共に、対をなす列の補強コードの傾斜方向を互いに交差するよう設定してなる補強コード層を設けている。
【0009】
ゴム製筒体を製造する手順を具体的に説明すると、まず、筒状ゴムの両端を引っ張ることにより、マンドレル中心軸に対する補強コードの傾斜角度を変化させながら、筒状ゴムをマンドレル中心軸方向に引き伸ばしつつ縮径させる。次いで、マンドレルの周りに未加硫ゴム筒を成型して、これらを加硫缶に挿入した後、筒状ゴムの引き伸ばしを解除して拡径することにより、未加硫ゴム筒を加硫缶の内周面に押し付けて加圧しつつ加熱して加硫成形する。その後、筒状ゴムを再び引き伸ばしつつ縮径させて、マンドレル及び加硫缶からゴム製筒体を取り出す。
【0010】
上記構成によれば、引き伸ばして縮径させた筒状ゴムの周りに未加硫ゴムを成型するので、これを外金型としての加硫缶に容易に挿入することができる。しかも、筒状ゴムをその引き伸ばしの解除により拡径して、未加硫ゴム筒を加硫成形した後、再び筒状ゴムを引き伸ばして縮径させるので、加硫成形後のゴム製筒体の取り出しを容易にすることができる。
【0011】
さらに、マンドレルの筒状ゴムに補強コード層を設けるので、中尺のゴム製筒体を成形するよう筒状ゴムを中尺に設定したとしても、筒状ゴムの両端を引っ張る力を、芯材あるいは未加硫ゴム筒との摩擦に抗して、マンドレル中心軸方向における中央部にまで伝えることができる。しかも、対をなす列の補強コードの傾斜方向を互いに交差させるので、補強コードのいわゆるパンタグラフ作用により、筒状ゴムの両端から中央部に至る全体を引き伸ばしつつ縮径、あるいは引き伸ばしを解除しつつ拡径することができる。
【0012】
マンドレル及び未加硫ゴム筒を加硫缶に挿入した後、筒状ゴムの引き伸ばしを解除すると共に、筒状ゴムをマンドレル中心軸方向に圧縮して拡径することにより、未加硫ゴム筒を加硫缶の内周面に押し付けて加圧するようにすれば、筒状ゴムの引き伸ばしを解除するだけの場合よりも、未加硫ゴム筒をより強く加圧してゴムの物性を高めることができる。
【0013】
本発明の製造方法は、中心軸方向長さ(L)と外径(D)との比(L/D)を3〜20の範囲に設定したゴム製筒体の製造に採用するのが好適である。
【0014】
つまり、(L/D)が3未満であれば、筒状ゴムに補強コード層を設けなくても、その中央部まで十分に縮径及びその解除による拡径をすることができるため、筒状ゴムに補強コード層を設けることによる効果を得ることができない。一方、(L/D)が20を超過すると、筒状ゴムの縮径に伴って芯材との摩擦が極端に大きくなるため、筒状ゴムの中央部にまで引張力を伝えることができず、引き伸ばしによる縮径及びその解除による拡径をすることができない。
【0015】
未加硫ゴム筒に補強繊維を埋設したものは、その製造に本発明の方法を採用するのが好適である。つまり、本発明の製造方法では、中尺のゴム製筒体の製造においても、その未加硫ゴム筒を外金型としての加硫缶で覆いつつ内側から加圧するので、所望の外径精度及び表面光沢を得るのに二つ割りの外金型を使用する必要がない。そのため、未加硫ゴム筒に補強繊維を埋設したとしても、外金型の割り面からの外面未加硫ゴムの不均一な流出による補強繊維の露出を生じさせることがない。
【0016】
上記の製造方法は、空気ばねのダイヤフラムやタイヤ、配管継手など、あらゆるゴム製筒体の製造に採用することができるが、一般に中心軸方向長さ(L)と外径(D)との比(L/D)の大きいゴムチューブは、その製造に本発明の製造方法を採用するのが特に好適である。
【0017】
また、本発明は、上記の製造方法に使用する加硫成形型を提供する。すなわち、本発明は、周囲に未加硫ゴム筒を成型するマンドレルと、該マンドレルと共に挿入された未加硫ゴム筒を加圧及び加熱する加硫缶とを備え、前記マンドレルは、芯材の周りに筒状ゴムを配置してなり、該筒状ゴムに、補強コードをマンドレル中心軸に対して傾斜させつつ周方向かつ偶数列に配列すると共に、対をなす列の補強コードの傾斜方向を互いに交差するよう設定してなる補強コード層が設けられたことを特徴とする加硫成形型を提供する。
【0018】
この加硫成形型の構成を採用することにより、上記のゴム製筒体及びゴムチューブの製造方法の構成を採用することによる効果と同じ効果を得ることができる。なお、補強コードとしては、加硫成形時の温度に耐え得る耐熱性のものであればよいが、筒状ゴムの中央部にまで引張力を伝えるには、引っ張りに対する伸びの小さなものが好ましく、アラミッドコードやスチールコードを例示できる。特に、スパナイズドヤーンであるアラミッド中繊維コードは、接着剤などの処理が不要であり、好適である。
【0019】
マンドレルの両端よりも中央ほど、マンドレル中心軸に対する補強コードの傾斜角度を大きく設定すれば、筒状ゴムをその全長に渡って均一に縮径及びその解除による拡径をすることができる。つまり、筒状ゴムの中央部は、芯材などとの摩擦の影響によって、両端から受けた引張力が小さくなりやすいので、この中央部における補強コードの傾斜角度を大きく設定して、引張力に対する中央部の剛性を両端部よりも小さくすることにより、筒状ゴムの縮径及び拡径を全長に渡って均一にすることができる。
【0020】
筒状ゴムは、加硫成形時の温度に耐え得る耐熱性ゴムから形成したものであればよいが、この耐熱性ゴムとして、特に熱膨張率の高いシリコンゴムを採用すれば、加硫成形時の筒状ゴムの熱膨張により、未加硫ゴム筒をより強く加圧して、ゴムの物性を高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のとおり、本発明によると、芯材の周りに筒状ゴムを配置してマンドレルを構成すると共に、その筒状ゴムに補強コード層を設けるので、筒状ゴムの引き伸ばし及びその解除により、筒状ゴムを全長に渡って縮径及び拡径することができる。これにより、中尺のゴム製筒体の製造に、未加硫ゴム筒を外金型で覆って内側から加圧する加硫成形方式を採用することができ、成形後のゴム製筒体の外径精度を高めると共に、所望の表面光沢を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係るゴム製筒体の製造方法、ゴムチューブの製造方法及び加硫成形型を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。
【0023】
まず、本発明に係る方法で製造するゴム製筒体としてのゴムチューブの構成を説明する。図1は本発明に係る方法で製造するゴムチューブを示す図であり、上半分は断面図、下半分は側面図である。
【0024】
ゴムチューブ1は、例えば生コンクリートなどを圧送するためのスクイーズ式ポンプに装備されるポンピングチューブとして使用されるものであり、中尺のゴム筒2に補強繊維3を埋設した構造とされ、その中心軸方向長さ(L)と外径(D)との比(L/D)が3〜20の範囲に設定される。
【0025】
次に、本発明に係るゴムチューブの製造方法を説明する。図2はマンドレルを示す図であり、上半分は断面図、下半分は側面図である。図2において、下半分の中央部は、筒状ゴムの外面ゴムを剥がして外面側及び内面側の補強コード層を示している。図3はゴムチューブの製造方法の前半の工程を示す図であり、図4はゴムチューブの製造方法の後半の工程を示す図である。
【0026】
まず、本発明に係る加硫成形型の構成を説明する。
【0027】
加硫成形型4は、十分な厚さの筒状ゴム5を芯材としての金属管6の周りに配置してなるマンドレル7と、マンドレル7の周囲に成型した未加硫ゴム筒8をマンドレル7と共に挿入する加硫缶9と、加硫缶9に挿入した未加硫ゴム筒8の端部を押さえる端部押さえ金具10とを備え、未加硫ゴム筒8を、筒状ゴム5を拡径して加圧しつつ、マンドレル7及び加硫缶9を介して内外から加熱して加硫成形するようになっている。
【0028】
筒状ゴム5は、加硫温度に耐え得る耐熱性を有すると共に、容易に変形する硬さで、かつ熱膨張率の高いシリコンゴムから形成され、マンドレル中心軸方向に十分に圧縮できるよう、周りに成型される未加硫ゴム筒8及び加硫缶9よりも長く設定されている。この筒状ゴム5は、例えば7mm程度の十分な厚さで、金属管6に沿ってマンドレル中心軸方向に引き伸ばして縮径し、また、この縮径の解除、マンドレル中心軸方向への圧縮、及び加硫成形時の熱膨張によって拡径するようになっている。
【0029】
筒状ゴム5の外面付近には、両端に加えた引張力を中央部にまで伝えるための補強コード層11が設けられている。
【0030】
補強コード層11は、例えば太さ0.3mmのアラミッド中繊維からなる補強コード12をマンドレル中心軸に対して傾斜させつつ周方向かつ二層に、6本/cmの本数密度で配列してなり、各層11a、11bの補強コード12の傾斜方向が互いに交差するよう設定されている。マンドレル中心軸に対する補強コード12の傾斜角度(θ)は、筒状ゴム5の両端における傾斜角度(θ1、例えば46°)から中央における傾斜角度(θ2、例えば58°)の範囲で、マンドレル7の両端よりも中央ほど大きくなるよう設定されている(θ1≦θ≦θ2)。
【0031】
金属管6は、その内側にシリコンオイルやグリセリンなどの熱媒体を給入して循環させることにより、筒状ゴム5を介して、未加硫ゴム筒8を内側から加熱するようになっている。この金属管6は、その中央部の周りに配置される筒状ゴム5よりも十分に長く設定され、筒状ゴム5をマンドレル中心軸方向に引き伸ばす際、あるいは圧縮する際のガイドとしても機能する。
【0032】
加硫缶9は、ゴムチューブ1の外径に等しい内径で、両端に接続フランジ13を有し、かつ全周に空洞14を有する二重管とされ、給入口(図示せず)から空洞14にシリコンオイルやグリセリンなどの熱媒体を給入して循環させることにより、未加硫ゴム筒8を外側から加熱するようになっている。この加硫缶9は、未加硫ゴム筒8をその全長に渡って収納可能なよう、未加硫ゴム筒8よりも長く設定される。
【0033】
端部押さえ金具10は、筒状ゴム5の端部に設けられた筒状ゴム端部カラー15を押さえる断面L字形の筒状ゴム押さえ金具16と、未加硫ゴム筒8の端部形状を形成する端部カラー17と、端部カラー17を押さえる断面L字形の未加硫ゴム筒押さえ金具18と、筒状ゴム押さえ金具16のフランジを貫通すると共に加硫缶9の接続フランジ13に螺合される筒状ゴム押さえボルト19と、筒状ゴム押さえ金具16のフランジに螺合されると共に、先端を未加硫ゴム筒押さえ金具18のフランジに当接される未加硫ゴム筒押さえボルト20とから構成される。
【0034】
この端部押さえ金具10は、筒状ゴム押さえボルト19を調節して筒状ゴム5を引き伸ばし又は圧縮しつつ、未加硫ゴム筒押さえボルト20を調節して、未加硫ゴム筒8を所定の長さのまま押さえるようになっている。
【0035】
次に、上記の加硫成形型を使用したゴムチューブの製造方法を説明する。図3(a)に示すように、マンドレル7の筒状ゴム5は、自由状態において、その長さがL1で、外径がD1(例えばφ36mm)である。
【0036】
まず、図3(b)に示すように、筒状ゴム5の外側の所定の位置に端部カラー17を配置する。それと共に、筒状ゴム5の両端をマンドレル中心軸方向に引っ張ることにより、筒状ゴム5の長さをL2まで引き伸ばしつつ、外径をD2(例えばφ34mm)まで縮径させる。
【0037】
このとき、筒状ゴム5は、補強コード層11のパンタグラフ作用により、マンドレル中心軸に対する補強コード12の傾斜角度(θ)を変化させながら、マンドレル中心軸方向に引き伸ばされつつ縮径する。しかも、引張力が小さくなる中央部ほど、補強コード12の傾斜角度(θ)を大きくして、引っ張りに対する筒状ゴム5の剛性を小さくしているので、筒状ゴム5が全長に渡って均一に縮径する。
【0038】
次いで、図3(c)に示すように、筒状ゴム5の周りに内面未加硫ゴムを巻き付け、その外側に補強繊維3を配置して、その外側に外面未加硫ゴムを巻き付けることにより、補強繊維3を埋設した未加硫ゴム筒8を成型する。この未加硫ゴム筒8は、内径及び外径がゴムチューブ1よりも小さく、かつ、加硫成形後に所望の厚さのゴムチューブ1が得られる厚さに設定される。なお、筒状ゴム5は、図4(d)に示すように、引き伸ばしを解除することにより、長さがL1で外径がD1の自由状態に戻ろうとする。
【0039】
図4(e)に示すように、マンドレル7及び未加硫ゴム筒8を加硫缶9に挿入する。このとき、筒状ゴム5の外径をD2まで縮径しているので、未加硫ゴム筒8の外径がゴムチューブ1の外径、すなわち加硫缶9の内径よりも小さく、その挿入が容易である。
【0040】
さらに、加硫缶9に端部押さえ金具10を装着して、その未加硫ゴム筒押さえボルト20を調節して、未加硫ゴム筒8の端部を押さえる。また、金属管6及び加硫缶9に熱媒体を給入して循環させることにより、未加硫ゴム筒8を内外から加熱する。この加熱の開始と共に、端部押さえ金具10の筒状ゴム押さえボルト19を調節して筒状ゴム5の引き伸ばしを解除して、筒状ゴム5の長さをL1にしつつ外径をD1まで拡径した後、さらに筒状ゴム押さえボルト19を調節して筒状ゴム5の長さをL3まで圧縮しつつ外径を拡径させる。また、筒状ゴム5の熱膨張によって外径をD3(例えばφ38mm)まで拡径する。これにより、未加硫ゴム筒8が加熱されつつ、加硫缶9の内周面に押し付けられて加圧されて加硫成形される。
【0041】
その後、図4(f)に示すように、筒状ゴム5の長さを再びL2まで引き伸ばしつつ、外径をD2まで縮径させて、マンドレル7及び加硫缶9から加硫成形後のゴムチューブ1を取り出す。このとき、筒状ゴム5をD2まで縮径しているのでゴムチューブ1の取り出しが容易である。
【0042】
上記構成によれば、筒状ゴム5に補強コード層11を設けるので、筒状ゴム5の両端に加えた力を中央部にまで伝えると共に、補強コード層11のパンタグラフ作用により、筒状ゴム5を縮径及び拡径させることができる。しかも、補強コード12の傾斜角度(θ)を筒状ゴム5の中央部ほど大きく設定するので、筒状ゴム5を全長に渡って均一に縮径及び拡径することができ、未加硫ゴム筒8を全長に渡って強くかつ均一に加圧することができる。
【0043】
これにより、中心軸方向長さ(L)と外径(D)との比(L/D)が3〜20程度の小口径で中尺、かつ高品質のゴムチューブ1を製造することができる。また、筒状ゴム5を縮径した状態で加硫缶9に挿入し、かつ引き出すので加硫成形型4のセット及び取り外しを容易にすることができる。
【0044】
未加硫ゴム筒8を外金型としての加硫缶9で覆って内側から加圧するので、ゴムチューブ1の外径精度を高め、かつ所望の表面光沢を得ることができる。また、二つ割りの外金型を使用しないので、割り面からの未加硫ゴムの不均一な流出によって補強繊維3を露出させることがなく、補強繊維を有し、かつ外面ゴムの薄いゴムチューブを製造することができる。
【0045】
二つ割りの外型が不要な分、加硫缶9が安価であり、しかも、安価かつ寿命の長いシリコンゴムからなる筒状ゴム5を使用するので、加硫成形型4の初期コスト及びその消耗品のコストを抑えることができる。
【0046】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、ゴムチューブ1に代えて、空気ばねのダイヤフラムや、タイヤ、配管継手などの、あらゆるゴム製筒体を製造することができる。
【0047】
補強コード層11は、1本の補強コード12をその傾斜角度(θ)を変化させながら繰り返し巻き付けて形成してもよく、数本の補強コード12をそのコード間隔を変化させつつ巻き付けて形成してもよい。また、二層の補強コード層11に代えて、補強コード12を偶数列に配列するようにしてもよい。この場合、補強コード11をマンドレル中心軸に対して傾斜させつつ周方向かつ偶数列に配列すると共に、対をなす列の補強コード12の傾斜方向(θ)を互いに交差するよう設定すればよい。
【0048】
筒状ゴム5は、シリコンゴム以外の耐熱性ゴムから形成することもできる。補強コード12は、アラミッド中繊維からなるコードに代えて、伸びにくいスチールコードなどの他のコードを使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る方法で製造するゴムチューブを示す図であり、上半分は断面図、下半分は側面図
【図2】マンドレルを示す図であり、上半分は断面図、下半分は側面図
【図3】ゴムチューブの製造方法の前半の工程を示す図
【図4】ゴムチューブの製造方法の後半の工程を示す図
【符号の説明】
【0050】
1 ゴムチューブ
3 補強繊維
4 加硫成形型
5 筒状ゴム
6 金属管
7 マンドレル
8 未加硫ゴム筒
9 加硫缶
11 補強コード層
12 補強コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンドレルの周りに未加硫ゴム筒を成型して加硫成形するゴム製筒体の製造方法であって、
前記マンドレルは、芯材の周りに筒状ゴムを配置してなり、該筒状ゴムに、補強コードをマンドレル中心軸に対して傾斜させつつ周方向かつ偶数列に配列すると共に、対をなす列の補強コードの傾斜方向を互いに交差するよう設定してなる補強コード層が設けられ、
前記筒状ゴムの両端を引っ張ることにより、マンドレル中心軸に対する前記補強コードの傾斜角度を変化させながら、筒状ゴムをマンドレル中心軸方向に引き伸ばしつつ縮径させ、次いで、マンドレルの周りに未加硫ゴム筒を成型してこれらを加硫缶に挿入した後、前記筒状ゴムの引き伸ばしを解除して拡径することにより、前記未加硫ゴム筒を加硫缶の内周面に押し付けて加圧しつつ加熱して加硫成形し、その後、前記筒状ゴムを再び引き伸ばしつつ縮径させて、マンドレル及び加硫缶からゴム製筒体を取り出すことを特徴とするゴム製筒体の製造方法。
【請求項2】
前記マンドレル及び未加硫ゴム筒を加硫缶に挿入した後、筒状ゴムの引き伸ばしを解除すると共に、筒状ゴムをマンドレル中心軸方向に圧縮して拡径することにより、前記未加硫ゴム筒を加硫缶の内周面に押し付けて加圧することを特徴とする請求項1に記載のゴム製筒体の製造方法。
【請求項3】
前記ゴム製筒体の中心軸方向長さ(L)と外径(D)との比(L/D)を3〜20の範囲に設定することを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム製筒体の製造方法。
【請求項4】
前記未加硫ゴム筒に補強繊維を埋設することを特徴とする請求項1、2又は3に記載のゴム製筒体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法によってゴムチューブを製造することを特徴とするゴムチューブの製造方法。
【請求項6】
周囲に未加硫ゴム筒を成型するマンドレルと、該マンドレルと共に挿入された未加硫ゴム筒を加圧及び加熱する加硫缶とを備え、前記マンドレルは、芯材の周りに筒状ゴムを配置してなり、該筒状ゴムに、補強コードをマンドレル中心軸に対して傾斜させつつ周方向かつ偶数列に配列すると共に、対をなす列の補強コードの傾斜方向を互いに交差するよう設定してなる補強コード層が設けられたことを特徴とする加硫成形型。
【請求項7】
前記補強コードは、マンドレルの両端よりも中央ほど、マンドレル中心軸に対する傾斜角度が大きく設定されたことを特徴とする請求項6に記載の加硫成形型。
【請求項8】
前記筒状ゴムは、シリコンゴムから形成されたことを特徴とする請求項6又は7に記載の加硫成形型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−200974(P2008−200974A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39056(P2007−39056)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】