説明

ゴム部材搬送装置及びゴム部材搬送方法

【課題】未加硫ゴム部材の加温時間の短縮、加温スペースのコンパクト化を図る。
【解決手段】ゴム部材搬送装置10は、第1搬送コンベア14と第2搬送コンベア16を有し、第1搬送コンベア14の搬入側には部材巻き取り台車12が配置され、第2搬送コンベア16の搬出側には成型ドラム28が配置される。部材巻き取り台車12から未加硫ゴム部材22が第1搬送コンベア14に送り出され、所定長さに切断される。切断された未加硫ゴム部材22は、第1搬送コンベア14の上で加温される。第1搬送コンベア14の搬送ローラ42の間には下部電極30が設けられ、第1搬送コンベア14の上方には上部電極32が設けられ、それぞれがコントローラ34に接続されている。未加硫ゴム部材22の温度を検出する温度センサ36の出力もコントローラ34に出力されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム部材搬送装置及びゴム部材搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
成型ドラムに搬送された未加硫ゴム部材は、成型ドラム上で他の部材に貼り付けられ、順次、生タイヤが形成される。このとき、未加硫ゴム部材が厚い場合、剛性が強いため、圧着装置を用いて長時間かけて貼り付ける必要がある。また、貼り付け相手となる他の部材の表面に凹凸が存在している場合には、凹凸面に沿って貼り付けることが困難となり、他の部材との間で凹凸面において部材間隙間が発生し、この部材間隙間に空気が残留する可能性がある。
【0003】
未加硫ゴム部材の剛性を下げるには、加温により柔らかくするのが効果的であり、加温室で、未加硫ゴム部材を搬送しながら加温する、更生タイヤ用生タイヤ形成方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
図2に示すように、特許文献1の更生タイヤ用生タイヤ形成方法は、使用済みタイヤのトレッド部をバフして調整した台タイヤ60のバフ面に、未加硫ゴムからなる帯状のトレッド62を貼り付けて生タイヤを形成する方法である。
【0005】
具体的には、帯状のトレッド62を巻き出し台66から巻き出して、加温室64へ搬送装置68で搬送する工程と、搬送されたトレッド62を加温室64内の搬送装置69で搬送しながら加温する工程と、加温され柔らかさの増したトレッド62を搬送装置70で搬送して台タイヤ60に巻き付け、所定長さに切断する貼り付け工程と、を経て生タイヤを形成している。
【0006】
しかし、作業効率をより高めるため、加温時間の短縮、加温室64のコンパクト化が求められている。なお、マイクロ波を利用する方法も考えられるが、マイクロ波の流出を防ぐため設備全体を囲む必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−309880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事実に鑑み、未加硫ゴム部材の加温時間の短縮、加温スペースのコンパクト化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明に係るゴム部材搬送装置は、送られてきた未加硫ゴム部材を成型ドラムに搬送する搬送手段と、前記搬送手段に設けられ、前記未加硫ゴム部材を加温する高周波誘電加熱手段と、を有することを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、ゴム部材搬送装置は、搬送手段に送られてきた未加硫ゴム部材を成型ドラムに搬送する。このとき、搬送途中において、搬送手段に設けられた高周波誘電加熱手段で未加硫ゴム部材を加温する。
【0011】
高周波誘電加熱手段は、未加硫ゴム部材の分子に直接振動を与えて発熱させる方式で加温するため、未加硫ゴム部材を短時間で加温できる。更に、未加硫ゴム部材を直接加温するため加温室を必要とせず、加温スペースのコンパクト化が図れる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載のゴム部材搬送装置において、前記搬送手段は、前記高周波誘電加熱手段が設けられた第1搬送手段と、前記第1搬送手段と前記成型ドラムの間に設けられ、加温された前記未加硫ゴム部材を前記成型ドラムに搬送する第2搬送手段と、を有することを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、ゴム部材搬送装置は、第1搬送手段と第2搬送手段で構成されている。第1搬送手段には高周波誘電加熱手段が設けられ、第2搬送手段は、第1搬送手段と成型ドラムの間に、第1搬送手段と連続して設けられ、加温された未加硫ゴム部材を成型ドラムに搬送する。
【0014】
これにより、第1搬送手段で加温された未加硫ゴム部材が第2搬送手段まで搬送され、第2搬送手段が、加温された未加硫ゴム部材を成型ドラムまで搬送する。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1又は2のいずれか1項に記載のゴム部材搬送装置において、前記高周波誘電加熱手段は、前記第1搬送手段に下部電極が設けられ、前記第1搬送手段の上方に上部電極が設けられ、前記下部電極と前記上部電極との間で前記未加硫ゴム部材に電界の変化を与えて加温することを特徴としている。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、高周波誘電加熱手段の下部電極が第1搬送手段に設けられ、上部電極が第1搬送手段の上方に設けられている。そして、下部電極と上部電極との間で未加硫ゴム部材に電界の変化を与えて加温する。
【0017】
これにより、第1搬送手段で搬送途中の未加硫ゴム部材を、第1搬送手段に載置したまま加温でき、加温スペースのコンパクト化が図れる。
【0018】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム部材搬送装置において、前記高周波誘電加熱手段には、前記高周波誘電加熱手段の出力を制御する制御手段が設けられ、前記制御手段は、前記未加硫ゴム部材の温度を計測する温度計測手段の出力に基づき、前記下部電極及び前記上部電極への印加電圧又は電流値を調整することを特徴としている。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、制御手段が、未加硫ゴム部材の温度に基づいて、下部電極及び上部電極への印加電圧又は電流値を調整する。
これにより、高周波誘電加熱手段の出力や加温時間が制御され、未加硫ゴム部材の温度を、最適温度に加温した状態で成型ドラムに搬送できる。
【0020】
請求項5の発明に係るゴム部材搬送方法は、高周波誘電加熱手段が設けられた第1搬送手段に送られてきた未加硫ゴム部材を、前記第1搬送手段に設けられた下部電極と、前記第1搬送手段の上方に設けられた上部電極の間で電界の変化を与えて加温する工程と、加温された前記未加硫ゴム部材を、前記第1搬送手段と成型ドラムの間に設けられた第2搬送手段に搬送する工程と、第2搬送手段で、前記未加硫ゴム部材を前記成型ドラムに搬送する工程と、を有することを特徴としている。
【0021】
これにより、高周波誘電加熱手段は、未加硫ゴム部材の分子に直接振動を与えて発熱させる方式で加温するため、未加硫ゴム部材を短時間で加温できる。更に、未加硫ゴム部材を直接加温するため加温室を必要とせず、加温スペースのコンパクト化が図れる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、上記構成としてあるので、未加硫ゴム部材の加温時間の短縮、加温スペースのコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るゴム部材搬送装置の基本構成を示す図である。
【図2】従来例のゴム部材搬装置の基本構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、第1の実施の形態に係るゴム部材搬送装置10は、直列に並べられた第1搬送コンベア14と第2搬送コンベア16を有している。第1搬送コンベア14と第2搬送コンベア16には、複数の搬送ローラ42が横方向に設けられ、第1搬送コンベア14から第2搬送コンベア16に、搬送対象物を連続して搬送する。
【0025】
第1搬送コンベア14の搬入側には、前の処理工程を終えてロール状に巻かれた、未加硫ゴム部材の帯状体20を搭載した部材巻き取り台車12が配置され、第2搬送コンベア16の搬出側には、未加硫ゴム部材が貼り付けられる成型ドラム28が配置されている。
【0026】
未加硫ゴム部材22の帯状体20は、部材巻き取り台車12から第1搬送コンベア14に送り出され、ポシシート26が外されて、切断手段24で所定長さに切断される。所定長さに切断された未加硫ゴム部材22は、第1搬送コンベア14の搬送ローラ42で、一方の端部から、第2搬送コンベア16に向けて搬送される。
【0027】
第1搬送コンベア14の搬送ローラ42と、隣接する搬送ローラ42の間には、高周波誘電加熱機40の下部電極30が設けられ、下部電極30の一端はコントローラ34に接続されている。
【0028】
第1搬送コンベア14の上方には上部加温器18が、第1搬送コンベア14と平行に設けられている。上部加温器18の内部には、下部電極30と対向する位置に上部電極32が配置されている。上部電極30の一端はコントローラ34に接続されている。この下部電極30、上部電極32、及びコントローラ34で高周波誘電加熱機40が構成されている。
【0029】
未加硫ゴム部材22の温度は、温度センサ36で計測され、増幅器38で増幅されてコントローラ34に出力される。
コントローラ34は、温度の計測結果に基づいて下部電極30、上部電極32に印加する電圧、電流、周波数等を調整し、高周波誘電加熱機40の出力、加温時間等を制御する。
【0030】
なお、高周波誘電加熱機40は、数MHz〜数百MHzの高周波で電界を変化させ、未加硫ゴム部材の分子を直接振動させて未加硫ゴム部材全体を短時間で加温する。そして、加温されて剛性が低減された未加硫ゴム部材が第2搬送コンベア16に送られ、第2搬送コンベア16で成型ドラム28に搬送され、成型ドラム28上に形成されている前の処理を終えた他の部材の上に貼り付けられる。
【0031】
上述した構成とすることにより、高周波誘電加熱機40で、下部電極と上部電極との間に設置された未加硫ゴム部材に電界の変化を与え、未加硫ゴム部材の全体分子を直接加温するため、加温時間を短縮できる。
【0032】
これにより、未加硫ゴム部材が、成型ドラム28上の他の部材形状に追従しやすくなり、貼り付ける面に多少の部材間の凹凸があっても、部材間隙間を回避できる。更に、加温により未加硫ゴム部材22の粘着強度が向上し、接着剤を省略できる。
【0033】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係るゴム部材搬送方法は、第1の実施の形態で説明したゴム部材搬送装置を用いた、未加硫ゴム部材の搬送方法である。図1を用いて説明する。なお、第1の実施の形態と重複する部分の説明は省略する。
【0034】
先ず、第1搬送コンベア14に送られてきた未加硫ゴム部材22を、第1搬送コンベア14に設けられた高周波誘電加熱機40で加温する。このとき、第1搬送コンベア14に設けられた下部電極30と、第1搬送コンベア14の上方に設けられた上部電極32の間に未加硫ゴム部材22を配置し、未加硫ゴム部材22の分子に直接電界の変化を与え、発熱させる。
【0035】
次に、加温された未加硫ゴム部材22を、第1搬送コンベア14から、第1搬送コンベア14と成型ドラム28の間に設けられた第2搬送コンベア16に搬送する。
最後に、第2搬送コンベア16で、未加硫ゴム部材22を成型ドラム28まで搬送する。
【0036】
これにより、高周波誘電加熱機40を利用することで、未加硫ゴム部材22の全体を、第1搬送コンベア14において短時間で加温できる。そして、加温されて剛性が低減された未加硫ゴム部材が成型ドラム28に搬送される。この結果、未加硫ゴム部材22が、成型ドラム28表面の形状に追従しやすくなり、貼り付け位置に部材間の凹凸が生じていても、部材間隙間を回避できる。
【0037】
また、加温時間を短縮できる。更に、加温により未加硫ゴム部材の粘着強度が向上し、接着剤を省略できる。
【符号の説明】
【0038】
10 ゴム部材搬送装置
14 第1コンベア(第1搬送手段)
16 第2コンベア(第2搬送手段)
22 未加硫ゴム部材
28 成型ドラム
30 下部電極
32 上部電極
34 コントローラ(制御手段)
36 温度センサ(温度計測手段)
40 高周波誘電加熱機(高周波誘電加熱手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送られてきた未加硫ゴム部材を成型ドラムに搬送する搬送手段と、
前記搬送手段に設けられ、前記未加硫ゴム部材を加温する高周波誘電加熱手段と、
を有するゴム部材搬送装置。
【請求項2】
前記搬送手段は、前記高周波誘電加熱手段が設けられた第1搬送手段と、前記第1搬送手段と前記成型ドラムの間に設けられ、加温された前記未加硫ゴム部材を前記成型ドラムに搬送する第2搬送手段と、を有する請求項1に記載のゴム部材搬送装置。
【請求項3】
前記高周波誘電加熱手段は、前記第1搬送手段に下部電極が設けられ、前記第1搬送手段の上方に上部電極が設けられ、前記下部電極と前記上部電極との間で前記未加硫ゴム部材に電界の変化を与えて加温する請求項1又は2に記載のゴム部材搬送装置。
【請求項4】
前記高周波誘電加熱手段には、前記高周波誘電加熱手段の出力を制御する制御手段が設けられ、前記制御手段は、前記未加硫ゴム部材の温度を計測する温度計測手段の出力に基づき、前記下部電極及び前記上部電極への印加電圧又は電流値を調整する請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム部材搬送装置。
【請求項5】
高周波誘電加熱手段が設けられた第1搬送手段に送られてきた未加硫ゴム部材を、前記第1搬送手段に設けられた下部電極と、前記第1搬送手段の上方に設けられた上部電極の間で電界の変化を与えて加温する工程と、
加温された前記未加硫ゴム部材を、前記第1搬送手段と成型ドラムの間に設けられた第2搬送手段に搬送する工程と、
前記第2搬送手段で、前記未加硫ゴム部材を前記成型ドラムに搬送する工程と、
を有するゴム部材搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−161726(P2011−161726A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25564(P2010−25564)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】