説明

サウンドを発生させるための装置および方法

【課題】妥当なコストで電気信号から強調させたサウンドを発生させることができるシステム、特にサウンドの空間広大性が改良されたシステムを提供する。
【解決手段】サウンド再生の方法および装置は、発生させるサウンドの空間広大性を強調するために少なくとも部分的に重複させた周波数レンジにわたって同時に駆動を受ける分散モード・スピーカ186、187とピストン式スピーカの両方を利用する。本装置は、モノ音響式、ステレオ音響式およびマルチチャンネル式サウンド再生システム、ならびにディジタル式ピアノなどの電子音響機器を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サウンドを発生させるための装置および方法に関するものであり、新規性のあるスピーカ・アセンブリと、このスピーカ・アセンブリを駆動するための新規性のある電子回路と、を含む。本発明は特に、記録されたサウンドまたは放送配信されたサウンドの再生、ならびに電子音響機器(特に、ディジタル式ピアノ)からのサウンドの発生に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
ここ数10年にわたり、サウンドを電気的に発生および再生させることが常に研究開発の対象となってきた。こうした研究の一態様は、スピーカの動作性能に関係してスピーカが発生させるサウンドの忠実度および品質の向上を目的としており、たとえばスピーカの可動素子がこれを駆動させる電気信号の変動に忠実に従うようなスピーカの生産を目的としている。研究開発の別の態様は、サウンドを示す電気信号をエンコード、記録、放送配信およびデコードするための技法に関係して、デコードされた信号によって駆動されたスピーカで再生させる際にサウンドの臨場感(realism)を向上させることを目的としている。
【0003】
忠実度およびスピーカ設計
スピーカの改良に関する調査結果から、それぞれ異なる原理に基づいて動作する多くの数の異なるタイプのスピーカが目下のところ入手可能である。
【0004】
たとえば、比較的剛性の材料からなる応従性(compliantly)に装着したコーンが可動コイルや可動磁石によって電磁的に駆動されている従来式コーン・スピーカがある。このタイプのスピーカは、おそらく最も広い支持を得ているものであり、その各々がそれ自体に特異的な設計要件を有するような多種多様なさまざまな用途で使用されている。こうした用途の例は、音楽、スピーチまたは視聴覚素材を再生するためのホーム・エンターテイメント・システム、公衆用拡声システム、コンピュータのオーディオ出力、映画館および劇場のサウンド・システム、車両内エンターテイメント、公衆用拡声システム、ならびにディジタル式ピアノなどの電気または電子的音響機器におけるものである。
【0005】
可聴周波数の全レンジ(具体的には、50Hz以下から約20kHzまで)にわたって良好な忠実度のサウンドを発生させることができるような無コーンのスピーカは未だ考案されていない。したがって、良質のサウンド(たとえば、忠実性のよい音楽再生の場合)は、コーン・スピーカを用いて、その各々がある特定の周波数バンド向けに設計されている2つ以上のユニットを組み合わせて利用する際にのみこれを達成することができる。これらのユニットに対する駆動用信号はこれに応じて、駆動用信号の異なる周波数バンドを適当なコーン・スピーカに導いているクロスオーバー回路と呼ぶ回路を通過させている。多くの高品質のスピーカ・システムは典型的には少なくとも3つのコーン・スピーカを利用しており、その1つは高周波数用のツイータと呼ぶスピーカであり、別の1つはミッドレンジ用のスピーカであり、また3つ目は低周波数用のウーファまたはサブウーファと呼ぶスピーカである。最近のコーン・スピーカ・システムは、人間に聞こえる周波数レンジの実質的に全体にわたって比較的高い忠実度で比較的平坦な周波数応答をもってサウンドを再生することができ、これまでのところ音楽の再生に最も広範に使用されているタイプのスピーカとなっている。
【0006】
使用されている別のタイプのスピーカは、軽量の引き延ばしたプラスチック膜を、この膜がその間に位置するようにした1対の電極によって駆動用信号から生成させた静電気場を交替させることにより振動させているような静電式スピーカである。この膜は特に軽量であり、このため有する機械的慣性が小さいために、高周波数であってもこの膜の動きによって加えられた信号を比較的高い忠実度で再生することができる。静電式スピーカの特徴の具体的な1つは、別の形態のスピーカと比較してその発生させるサウンドの明瞭度が高いことである。しかし、目下のところ市場で入手可能な静電式スピーカは音楽において出される最も低い周波数を発生させることができない。このことや、静電式スピーカが発生させる音圧レベルがコーン・スピーカが発生できる音圧レベルと比べてより低いことがあるものの、多くの者は静電式スピーカは動作可能な周波数レンジにわたって特に高い忠実度を提供できると考えている。
【0007】
上述のコーン・スピーカおよび静電式スピーカは、コーンまたは膜のピストン式運動によってサウンドを発生させている。
【0008】
近年になって、ピストン式運動に依存しない第3のタイプのスピーカが使用に供せられている。このスピーカは分散モード・スピーカと呼ばれている。これについては、たとえば以下に示すような多くの発表物に記載されている。
(a)PCT出願WO第97/09842号
(b)米国特許第6399870号
(c)Hachette Filipacchi Magazines Inc.が刊行する雑誌「Audio」の1998年9月号に掲載されたHenry Azimaによる「NXT Up Against the Wall」と題する記事
(d)第103回Audio Engineering Society Convention(1997年9月26〜29日、New York)で発表されたNeil HarrisおよびMalcolm Omar Hawksfordによる「The Distributed Mode Loudspeaker (DML)as a Broad−Band Acoustic Radiator」と題する論文
(e)第103回Audio Engineering Society Convention(1997年9月26〜29日、New York)で発表されたHenry AzimaおよびNeil Harrisによる「Boundary Interaction of Diffuse Field Distributed Mode Radiators」と題する論文
(f)第104回Audio Engineering Society Convention(1998年5月16〜19日、Amsterdam)で発表されたJoerg W.PanzerおよびNeil Harrisによる「Distributed Mode Loudspeaker Simulation Model」と題する論文
(g)第105回Audio Engineering Society Convention(1998年9月26〜29日、San Francisco、California)で発表されたJoerg PanzerおよびNeil Harrisによる「Distributed Mode Loudspeaker Radiation Simulation」と題する論文
【0009】
これらの公表物の内容は、参照により本明細書に組み込むものとする。こうした分散モード・スピーカの構造および動作は、公表された別の多くの論文にも記載されており、このうちの幾つかは上に掲げた記事や論文において参照されている。
【0010】
上述の公表物に記載されていることであるが、分散モード・スピーカは、1つのパネルと、該パネルに取り付けられておりかつ電気音響信号による起動を受けたときに該パネルに対して該パネルの表面全体(または、該表面の必要な部分)にわたって複雑なパターンで分散される共振性屈曲波を発生させている1つまたは複数のトランスジューサと、を備えている。トランスジューサによってパネルをこうした分散共振モードにするように励振させるには、そのパネルがこれらの共振モードになるように励振させ得るように製作されていること、ならびにその1つまたは複数のトランスジューサがパネルに必要とされる共振モードが生成されるようにそのパネルの特性を考慮に入れて慎重に位置決めされることが必要である。分散モード・スピーカに関する当業者であれば、こうしたスピーカを、多様なサイズでかつトランスジューサの多様な異なる材料および異なる形態を使用して設計することが可能である。
【0011】
パネルを振動させる方式やその周波数応答は、パネルの幅、高さ、厚さ、材料、材料の密度、ポアッソン比、曲げ剛性、減衰率、せん断比、せん断係数、トランスジューサの性質および配置、ならびに利用するトランスジューサの数を含む多数の異なるパラメータに依存するため、分散モード・スピーカの適正な設計は複雑な操作となる。実際に、この周波数応答は数式から計算することが必要である(これに関しては、分散モード・スピーカに関連する上で示した公表物を参照されたい)。これらの計算を実行し、これにより分散モード・スピーカの適正な設計を容易にするためのコンピュータ・プログラムは、New Transducers Limited(Signet House、Kingfisher Way、Hinchingbrook Business Park、Huntingdon;郵便番号PE29 6FW)から市場入手可能である。このコンピュータ・プログラムによれば、設計者は提唱されたスピーカに関するさまざまな関連パラメータを入力または選択することが可能となり、このコンピュータ・プログラムは提唱されたスピーカについて得られる周波数応答および振動特性を計算し設計者に対して適当な設計決定を可能にしている。
【0012】
上述のコンピュータ・プログラム以外にも、分散モード・スピーカは、たとえば、Amina Technologies Ltd(Cirrus House、Glebe Road、Huntingdon、Cambridgeshire PE29 7DX、England);Tannoy Limited(Coatbridge ML5 4TF、Scotland);Mission(UK)Ltd(Stonehill、Huntingdon、Cambridgeshire PE29 6EY、England);あるいはArmstrong World Industries(2500 Columbia Avenue、Lancaster、PA 17603、USA)など多くの異なる供給元から市場入手可能である。
【0013】
分散モード・スピーカの別の形態のスピーカを組み合わせた配備に関してはさまざまな提案がなされてきた。たとえば、目下のところ入手可能な分散モード・スピーカは約100Hz未満の周波数を忠実に再生することができないため、これらを分散モード・スピーカとは別のサブウーファと共に使用し、これら2つのスピーカを適当なフィルタ処理(クロスオーバー)回路を介して駆動することが提唱されている。さらに、ツイータとして使用される分散モード・スピーカ、ウーファの役割をする1つまたは複数の従来式コーン・スピーカおよび/またはミッドレンジ・スピーカ、ならびに従来式クロスオーバー回路を組み合わせて共通のケーシング内に設け、この分散モード・スピーカはツイータに適したバンドにある周波数によって排他的に駆動させており、かつこの1つまたは複数のコーン・スピーカはウーファおよびミッドレンジ・スピーカに適したバンドにある周波数によって排他的に駆動させているようなスピーカ・アセンブリが市場入手可能となっている。
【0014】
分散モード・スピーカを利用する全周波数レンジのスピーカ・システムに関する別の提案は、米国特許第6351542号(Azimaら)に記載されている。この特許では、分散モード・スピーカが、パイプを介して低周波数スピーカ(ウーファ)を包含した筐体に接続されている閉じたチェンバの1つの壁を形成しており、これによりウーファを包含した筐体内に発生させた空気圧の変動がパイプを介して閉じたチェンバに伝達される。この分散モード・スピーカは、その辺縁の位置において応従性材料によって支持することによって閉じたチェンバ内における空気圧変動に応答してピストン式に動くことができ、このためウーファと同調したピストン式の振動によって低周波数サウンドを効率よく発生させることができる。
【0015】
すでに上で言及した公表済みのPCT出願WO第97/09842号は、これ自身で分散モード・スピーカに関する数多くの潜在的な応用および配置について開示している。このPCT出願に開示されている配置の1つは、そのサウンドをある特定の方向に収束させるために分散モード・スピーカ内における湾曲したパネルの利用を提唱している。別の配置(PCT出願の図65)は、従来式スピーカのケーシングの少なくとも1つの壁を、共振モード振動が可能であるが電磁式トランスジューサを介するのではなく、ウーファ、ミッドレンジおよびツイータを含む従来式コーン・スピーカを駆動させたときにスピーカ筐体内部に生じた空気圧変動によって誘導される共振によって振動させているような受動式パネルとして形成させることを提唱している。この配置は望ましい特性の達成を可能にすると言われている。
【0016】
分散モード・スピーカの重要な利点の1つは、これらは比較的平坦な側面形状で製作することが可能であり、これによりこれらをコーン・スピーカでは不都合であったり視覚的に邪魔となるような状況で使用することが可能となることである。しかし、分散モード・スピーカは高忠実度の音楽再生の分野では未だに広範な利用を達成できていない、その理由はおそらく、このスピーカが人間に聞こえる周波数レンジの大部分にわたるサウンドを発生することはできるが、その周波数応答が未だ適当に設計されたコーン・スピーカで達成可能な応答ほど平坦でないためである。
【0017】
臨場感およびサウンド・エンコード技法
再生されるサウンドの臨場感を改良させる研究によって、記録または放送配信が、別々のチャンネルで提供される場合に、聴き手の前方で聴き手の左寄りおよび右寄りに位置決めされたスピーカを駆動するために異なる信号を含むようなステレオ音響式システムの開発が得られている。これらのシステムは、1950代および1960代に市場で広く利用されるようになり、引き続いて利用されている。これによれば、聴き手に対して、自分の前方の異なる箇所でサウンドが発生しており、かつサウンド「ステージ」を横切るようにサウンドが移動しているような印象を生成させることができる。これによればさらに、たとえば交響楽団やピアノなどの音響機器が発生させるような空間広大性(spaciousness)およびフルサウンドの印象を提供することができ、単一の信号チャンネルを使用してサウンドを再生することにより得られるものよりも優れている。
【0018】
空間広大性の印象をさらに改善させ、かつ聴き手が位置している3次元空間を通過して見掛け上音源が移動するなどの特殊効果の可能性を提供するために、1960代には4チャンネル・システム(クアドラフォニック・システム(quadraphonic system)と呼ぶ)が開発された。この時点において記録のうちの幾つかや放送配信のうちの幾つかは製作されていたが、クアドラフォニック・システムは当時は広範に使用されるに至っていなかった。このシステムに関する問題点の1つは、異なる信号が異なるチャンネルでエンコードを受ける特殊な記録および放送配信技法を必要とし、かつ4つのスピーカを本質的には聴取室の4隅に位置決めして、聴き手をこの4つのスピーカの間の空間の中央の領域に位置させることを必要とすることにある。これらのシステムは当時は広範に使用されるに至っていなかったが、空間広大性の印象(すなわち、聴き手が自分が実際に聞いている部屋と比べて実質的により大きな室内でサウンドを聞いているという印象)、ならびに「エンベロープ性(envelopment)」(すなわち、聴き手に自分がサウンドに包まれているような感覚を生じさせること)の両方に関して、ステレオ音響式システムと比べてある種の改良を得ることができていた。これらの印象は一体となって聴き手に対して、その音響特性が壁からのサウンドに関する適当な反射レベルおよび適当な残響時間を提供するためなどであるようなコンサートホールで音楽を聞いている際に得られると思われる体験に極めて類似した心理音響学的体験を提供している。
【0019】
近年では、特に映画館やいわゆる「ホームシネマ」エンターテイメント・システムにおいて、いわゆる「サラウンドサウンド(surround sound)」システムが使用されるようになっている。サラウンドサウンド・システムの主目的の1つは、サラウンドサウンド・システムおよび聴き手を包含した空間を通過する車両による音のシミュレーションなどの特殊音響効果を発生させることである。典型的には、サラウンドサウンド・システムは、聴き手の前方の左および右スピーカ、聴き手の側面にある左および右スピーカ、ならびに前方中央スピーカをそれぞれ駆動するために5つのチャンネルを備えている。このシステムでは、別々の各スピーカがその専用信号によって個々に駆動できるように、信号の記録または放送配信に関するエンコードの際に、その再生させようとする信号が5つの異なるチャンネルの各々において個別にエンコードを受けている必要がある。適当な信号エンコードによれば、サラウンド・システムはステレオ音響式システムと比較したサウンドの空間広大性およびエンベロープ性の改良を提供することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
発明
検討したような過去数10年にわたって達成されたスピーカ設計および信号エンコードに関する広範な改良にもかかわらず、妥当なコストで電気信号から強調させたサウンドを発生させることができるシステム、特にサウンドの空間広大性が改良されたシステムに対する要求が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0023】
一態様では、本発明は、スピーカが動作する周波数レンジが人間に聞こえる周波数レンジの少なくとも一部分で重複するような少なくとも1つのピストン式スピーカと少なくとも1つの分散モード・スピーカとを同時に駆動することによって、空間広大性および/またはエンベロープ性に関する改良を達成している。この周波数レンジの重複部分は比較的低い周波数を少なくとも含むことが好ましい。
【0024】
意外にも、この方式でサウンドを再生することによって、単一のチャンネル(モノ)システムにおいても空間広大性および/またはエンベロープ性の強調を達成することができることが分かった。したがって、本発明は単一のチャンネル、ステレオ音響式およびマルチチャンネルのサウンド再生システムに適用可能である。
【0025】
空間広大性の強調、またさらにはエンベロープ性の強調やそのサウンドの暖かさ(warmth)について、実施してその結果を添付の図面のうちの図1〜7に示した比較実験に言及することによって以下でさらに検討することにする。本発明の実用的な実施形態については、添付の図面のうちの図8〜31を参照しながら記載することにする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態による従来式コーン・スピーカの単独、分散モード・スピーカ単独、あるいはこれら両者の組み合わせを使用して得られるラテラル初期エネルギー比率(LEF)を比較している、ステレオ音響式サウンド再生システムを使用した第1の実験で計測されるLEFを表した棒グラフである。
【図2】図1に関連して言及した実験で計測される聴覚間相互相関係数(IACC)を表した棒グラフである。
【図3】モノ・サウンド再生システムを使用した第2の実験で得られたLEFを表した図1と同様の棒グラフである。
【図4】モノ・サウンド再生システムを使用した第2の実験で得られたIACCを表した図2と同様の棒グラフである。
【図5】本発明に関連した第3の実験で使用した従来式コーン・スピーカの周波数応答を表した図である。
【図6】本発明に関連した第3の実験で使用した分散モード・スピーカの周波数応答を表した図である。
【図7】2つのスピーカの相対音圧レベルを変化させたときに得られた結果をそのそれぞれ異なる曲線によって表している図5および6に対応するスピーカを同時に駆動させたときに得られる周波数応答の図である。
【図8】本発明の第1の実施形態によるステレオ音響式サウンド再生装置のブロック図である。
【図9】図8の装置内に含ませたスピーカ・アセンブリの概略斜視図である。
【図10】電磁式アクチュエータがスピーカ・パネルに取り付けられた様子を示した、図9のアセンブリ内に含ませた分散モード・スピーカの一部分を表した概略断面図である。
【図11】支持用フレーム内へのスピーカ・パネルの装着を表している、図9のアセンブリの分散モード・スピーカの一部分の概略斜視図である。
【図12】アセンブリの概略ブロック回路図を表している、図9のスピーカ・アセンブリの概略側面断面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態によるステレオ音響式サウンド再生装置のブロック図である。
【図14】図13の装置内に含まれるその内部に含ませた分散モード・スピーカを駆動するための信号調整回路の電気ブロック図である。
【図15】図14の回路の一修正形態を表している、本発明の第3の実施形態による部分的電気ブロック図を構成する電気ブロック図である。
【図16】本発明の第4の実施形態によるステレオ音響式サウンド再生装置のブロック図である。
【図17】本発明の第5の実施形態によるステレオ音響式サウンド再生装置のブロック図である。
【図18】本発明の第6の実施形態によるステレオ音響式サウンド再生装置のブロック図である。
【図19】図18の装置内に含まれるステレオ音響式増幅器の電気ブロック図である。
【図20】本発明の第7の実施形態によるステレオ音響式サウンド再生システムのブロック図である。
【図21】本発明の第8の実施形態によるステレオ音響式サウンド再生システムのブロック図である。
【図22】本発明の第9の実施形態によるステレオ音響式サウンド再生装置の概略斜視図である。
【図23】図22に示した装置の一部分の概略回路図である。
【図24】本発明の第10の実施形態によるステレオ音響式サウンド再生システムのブロック図である。
【図25】本発明の第11の実施形態による「サラウンドサウンド」サウンド再生システムのブロック図である。
【図26】本発明の一実施形態によるディジタル式グランドピアノの斜視図である。
【図27】図26のディジタル式ピアノのブロック概要図である。
【図28】本発明の一実施形態によるディジタル式アップライトピアノの背面斜視図である。
【図29】図28のディジタル式ピアノのブロック図である。
【図30】本発明によるディジタル式ピアノの別の実施形態のブロック図である。
【図31】従来式ディジタル式ピアノと組み合わせて本発明を実現するように従来式ディジタル式ピアノと接続させた状態で表した本発明の別の実施形態によるアドオン・ユニットのブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
実験
実験に対する全般的な緒言
本発明により分散モード・スピーカとピストン式スピーカを組み合わせることによって達成される空間広大性の印象の驚異的な増大を調べるために、多くの異なる環境において、またこの異なる環境で異なるスピーカおよび別の装置を利用して多くの実験を実施した。
【0028】
これらの実験のすべてについて、最上品質のスタジオモニタ用コーン・スピーカ・システムおよび最上品質の分散モード・スピーカの使用が不可欠であった。各実験には、専門家の聴き手に対して実施された主観的聴取テストが含まれるが、実験が異なればその対象の聴き手も異なっている。
【0029】
ある実験(以下で詳細に記載しようとする第1の実験)は、自宅のリビングルームにあるような音響的に典型的な聴取条件を模すように設計された専門的な聴取室に配置させたステレオ音響式システムを利用している。この聴取室は、ランダムに分散させた壁の周りの反射性および非反射性の表面と、床面のカーペットと、吸収性が高い幾つかの家具と、を備える広いリビングルームとサイズについて概ね同等である。この音響特性は、軟らかな調度品やカーテンを含んだリビングルーム内と同様に比較的「デッド(dead)」とした。
【0030】
第2の実験は、上の初めに言及した実験で使用した室に対してサイズが半分であり、かつ10,000Hzを超える周波数を吸収するような異なる専門の聴取室内にあるモノ装置を使用して実施した。第1の聴取室と同様に、その音響特性は比較的「デッド」とした。モノ装置を使用した。
【0031】
モノ装置はさらに記載する第3の実験にも使用した。スピーカは幅がそれぞれ約2メートルでありかつ互いに直角に延びる2つのコリドー(corridor)の交点の位置で特に不都合な音響特性に位置決めした。聴取テストは、対象をこのコリドーのうちの一方内でスピーカから約3メートルの位置とし、聴き手を位置させたコリドーに対してスピーカを対面させた向きとして実施した。
【0032】
すべての実験に関して、その主観的聴取テストによって、分散モード・スピーカおよびコーン・スピーカを同時に駆動した際の空間広大性はコーン・スピーカを単独で駆動させた場合や、分散モード・スピーカを単独で駆動させた場合と比較して知覚可能な改良が見られた。空間広大性の知覚可能な増大が単に主観的なものであるのか否か、すなわちそれが科学的基礎を有しているか否かを判断するために、第1および第2の実験では従来の計測技法に従ってラテラル初期エネルギー比率(Lateral Early Energy Fraction:LEF)および聴覚間相互相関係数(Inter Aural Cross Correlation Coefficient:IACC)を計測した。LEFおよびIACCの性質については、以下でより十分に説明することにする。
【0033】
これらの実験で使用した異なる装置によって発生させたサウンドの主観的品質も聴取テストにおいて考察している。第1の実験(ステレオ音響式)では、分散モード・スピーカおよびコーン・スピーカの音圧レベルは計測用マイクロフォンの位置において実質的に同じ値になるように設定すると共に、コーン・スピーカが単独であるいは分散モード・スピーカが単独で発生させるサウンドの品質と比べて複合式スピーカからのサウンドの品質がより良好であると主観的に考察された。
【0034】
第2の実験では、分散モード・スピーカの音圧レベルを、コーン・スピーカが発生させる音圧レベル(マイクロフォンの位置で計測)より4.2デシベルだけ低くなるように設定した。この数値は、多くの異なる相対音圧レベルを試みた後に決定したものである。複合式スピーカによって発生させたサウンドの品質もまた、コーン・スピーカが単独であるいは分散モード・スピーカが単独で発生させるサウンドと比べてより良好であると考察された。
【0035】
第3の実験では、分散モード・スピーカとコーン・スピーカの相対音圧レベルを変化させることのサウンドの主観的品質に対する効果をテストし、コーン・スピーカより5デシベル±3デシベルだけ低い値で分散モード・スピーカを駆動することによって最適な知覚品質が得られることが分かった、さらにこの品質は分散モード・スピーカまたはコーン・スピーカを単独で聴取した場合に知覚される品質と比べてより良好であることも分かった。
【0036】
第3の実験にはさらに、2つのスピーカの単独での周波数応答と複合式スピーカの周波数応答とを決定するための計測も含めた。複合式スピーカの周波数応答は、このスピーカが駆動を受ける多くの異なる相対レベルに対して決定した。これらの実験および計算から、複合式スピーカでは分散モード・スピーカ単独での周波数応答と比べてより平滑となった周波数応答曲線を得ることができることが分かった。
ここで、これら3つの実験のそれぞれについてより詳しく記載することにする。
【0037】
第1の実験(ステレオ)の詳細
第1の実験は以下の条件の下で以下の装置を使用して実施したものである。
【0038】
(a)聴取室は、側面および背面の壁上に追加的な吸収パネルをランダムに配置した典型的な乾燥室とした。この部屋のサイズは長さ6.87m×幅4.6m×高さ2.79m=体積88.17立方メートルとした。
【0039】
(b)スピーカおよびマイクロフォンは正三角形の頂点の位置に配置させた。このスピーカとマイクロフォンの間の距離は2メートル(この三角形の各辺=2メートル)とした。スピーカは聴取室の壁から間隔を空けるように位置決めした。
【0040】
(c)このスピーカは、2つの従来式コーン・スピーカと2つの分散モード・スピーカとから構成した。
【0041】
(d)従来式コーン・スピーカは、一体型の増幅器を伴ったGenelecモデル1029A 40Wモニタとした。技術的データ:バス 5”駆動ユニット;トレブル 3/4”メタルドーム駆動ユニット;クロスオーバー周波数は3.3kHz;周波数応答70〜18,000Hz。
【0042】
(e)分散モード・スピーカはAmina Technologies Limited(上で言及済み)によって製造されたものであり、610mm×492mmのアルミニウム・コア、ポリエステル・スキン、4励振器(10W/励振器)を備えさせた。これらの各々は、40Wのオープンバック・パネルとした。周波数応答は80Hz〜20kHzとした。
【0043】
(f)LEF計測では、CALREC Soundfieldのマイクロフォン、モデルST250を使用した。使用したIACC計測では、B+KのHead and Torso Simulator(HATS)マイクロフォン、モデル4100を使用した。
【0044】
(g)これらの計測では、最大長シーケンス(Maximum Length Sequence)信号を使用し、そのインパルス応答を抽出し、さらにこのインパルス応答に対して空間的計測を実行した。使用したソフトウェアは、Aurora Pluginを伴ったCool Edit ProのP.C.版とした。
【0045】
(h)分散モード・スピーカおよびコーン・スピーカはマイクロフォンの位置において実質的に等しい音圧レベルが提供されるように駆動させた。
【0046】
コンサートホールなどの聴取空間内に位置させた聴き手は発生源(たとえば、オーケストラ)から直接のサウンド・エネルギーと、聴取空間の境界で反射された後のサウンド・エネルギーの両方を受け取る。総エネルギーのうち、直接のサウンドを受け取ってから概ね50ミリ秒の期間内に聴取空間の境界からの反射を受け取った聴き手が受け取るエネルギーの比率は、ラテラル初期エネルギー比率(LEF)として知られている。より高い周波数ほど、低い周波数の場合と比べてより多くが吸収され、さらに一般的に低周波数の場合と比べて包含するエネルギーがより少ないため、反射されたエネルギーの大部分はより低周波数のレンジ内にある。LEFは、多くの周波数バンド(特に、以下のバンド)で従来式に計測している。
88〜176Hz(125オクターブ・バンドと呼ぶ)
176〜353Hz(250オクターブ・バンドと呼ぶ)
353〜707Hz(500オクターブ・バンドと呼ぶ)
707〜1,414Hz(1,000オクターブ・バンドと呼ぶ)
【0047】
限界内において、これらの周波数バンドのLEFが高いほどコンサートホールの環境において空間広大性の印象がより大きいことが広く考察されている。本発明の目的は、空間広大性について改良された印象を生成させることにあるため、分散モード・スピーカとコーン・スピーカを同時に駆動することによって生成させた複合音場に関してLEFの計測を実施して、分散モード・スピーカおよびコーン・スピーカを個別に駆動させたとした場合のLEF計測と比較している。
【0048】
図1は、この結果を表した棒グラフである。この図から理解できるように、縦縞のバー500a、500b、500cおよび500dはそれぞれ、上で規定したオクターブ・バンドのそれぞれにおけるコーン・スピーカ単独に関するLEFを表している。横縞のバー502a〜502dは同じオクターブ・バンドにおける分散モード・スピーカ単独に関するLEFを表している。交差縞のバー504a〜504dは、本発明による分散モード・スピーカおよびコーン・スピーカの複合に関するLEFを表している。
【0049】
図1から理解できるように、オクターブ・バンドのそれぞれにおいて、本発明による複合式分散モード/コーン・スピーカが発生させる音場に関するLEFは、単独でコーン・スピーカが発生させる音場に関するLEFと比べて著しく高くなっている。したがって、図1は、コーン・スピーカと比較して本発明による複合式スピーカが達成させる空間広大性の印象の主観的に知覚される著しい増大は、これらのオクターブ・バンド内でのLEFの増加と整合しており、またこれによれば、これらの周波数バンドにおけるLEFの増加がコンサートホール環境における空間広大性の印象の増大を提供しているという広く保持されてきた見解と整合していることを示している。換言すると、第1の実験で本発明による複合式スピーカが発生させる音場は、この際には空間広大性に関する改良された印象に関連すると考えられる重要パラメータ(LEF)の値が増加するという点においてコーン・スピーカが単独で発生させる音場と異なっている。このことは、上で言及した主観的聴取テストで知覚された空間広大性の増大は、本発明による複合型を使用した際の音域の生成が、コーン・スピーカ単独による音場と物理的に異なる生成に起因するということの確証であると考察される。
【0050】
さらに、125と250オクターブの周波数バンドでは、複合式スピーカとコーン・スピーカのLEFの差の大きさは500と1,000オクターブの周波数バンドにおけるLEFの差と比べて実質的により大きく、したがってこの特性がサウンドの暖かさの増加に関連することも認められる。別の言い方をすると、図1に示した4つのオクターブ周波数バンドのそれぞれにおけるLEFの差の大きさが同じであったとすると、このことは空間広大性は増大するがそのサウンドの暖かさは増大しないことを示唆することになろう。
【0051】
図1からさらに、4つの周波数バンドのすべてについて分散モード・スピーカ単独のLEFはコーン・スピーカ単独のLEFより大きいことにも留意されたい。125および250オクターブ周波数バンドでは、分散モード・スピーカ単独のLEFは複合式スピーカのLEFより小さい。500および1,000オクターブ・バンドでは、分散モード・スピーカ単独と複合式スピーカのLEFは大きさが同様であり、これらのオクターブ・バンドにおいて見られる差はそれ自体ではほとんど確実に知覚不可能である。これらの結果は、主観的聴取テストにより裏付けられるように、分散モード・スピーカに対して本発明による複合式スピーカを使用した空間広大性はコーン・スピーカ単独の場合ほど大きくないこと、分散モード・スピーカはコーン・スピーカと比べてより大きな空間広大性を提供することが示唆される。しかし、本発明の重要性は、コーン・スピーカ単独で得られるものと比べた空間広大性のかなりの増大が忠実度を維持しながら提供されることにある。最高レベルの忠実度が要求される用途では分散モード・スピーカが未だ広範に使用されていないことに留意されたい。
【0052】
聴覚間相互相関係数(IACC)は、聴き手の両耳で受け取られる音圧信号間の相関の程度に関する1つの尺度である。IACCはしたがって、ヒトの外耳道の位置に開口を有するダミーの頭部と、各開口内の小型マイクロフォンと、を使用して従来式に計測される。1,000、2,000および4,000オクターブの周波数バンドのうちの1つまたは複数においてこの相関係数の値が低いことは、空間広大性の増大を示唆することが広く考察されており、これらのバンドにおける値は以下のようになる。
1,000バンド:707〜1,414Hz(上ですでに示したのと同じ)
2,000バンド:1,414〜2,825Hz
4,000バンド:2,825〜5,650Hz
【0053】
図2は、第1の実験で実施したIACC計測の結果を表した棒グラフである。図2では、縦縞のバー506a〜506d、横縞のバー508a〜508d、および交差縞のバー510a〜510dによってそれぞれ、4つのオクターブ・バンド(すなわち、500オクターブ・バンド(LEFに関連して上で記載済み)ならびに1,000、2,000および4,000オクターブ・バンド)のそれぞれにおけるコーン・スピーカ単独のIACC、分散モード・スピーカ単独のIACC、および本発明による両者を複合したもののIACCを表している。この図面から容易に理解できるように、1,000、2,000および4,000オクターブ・バンドにおいて、本発明による複合式スピーカに関するIACCの値はコーン・スピーカ単独のIACCの値と比べて著しく小さい。LEF値の場合と同様にここでも、このことはサウンドの空間広大性の増大を示唆しており、その理由はすでに説明したように、これらの周波数バンドにおいてこの係数の値が小さいほど空間広大性の印象がより大きくなるためである。
【0054】
図2は500オクターブ・バンドにおけるIACC計測を含んでいるが、この周波数バンドでのサウンド・エネルギーの波長は、周知のように聴き手の両耳が受け取るエネルギーにおいて高い相関係数が予期されるものであるため、これらの計測は実際には重要ではない。
【0055】
したがって、第1の実験で使用したステレオ音響式装置に関するLEFとIACCの計測は共に聴取テストにおいて観測された空間広大性の主観的印象と整合することが理解できよう。
【0056】
第2の実験(モノ)の詳細
第2の実験は以下の条件の下で以下の装置を使用して実施したものである。
【0057】
(a)聴取室は、10,000Hzを超えるサウンドを吸収する(平均残響時間0.3秒)ように音響的処置を施した。この部屋のサイズは、長さ5.6m×幅3.2m×高さ2.4m=体積43.28立方メートルとした。
【0058】
(b)これらの計測の際のマイクロフォンは、軸一致でスピーカから1.5メートルに配置させた。分散モード・スピーカの前面は、従来式コーン・スピーカのケーシングの背面と概ね垂直方向で一致させた。
【0059】
(c)コーン・スピーカは、44Hz〜20kHzの周波数応答を有するTannoyのNear Field Dual−Concentric Monitor Model 6NFM Mark IIとした。このユニットの利点は、計測においてHFおよびLFが同じ軸点の位置にあることである。使用した分散モード・スピーカ・パネルは、Amina Technologies Limitedによって製造したものであり、500×700mmの樹脂浸漬紙ハニカムコアおよび4つの励振器(10W/励振器)を有するスキンを備えている。これは、80Hz〜20kHzの周波数応答を有する40Wのオープンバック・パネルである。
【0060】
(d)LEF計測では、AKG C34のVariable Polar Microphoneを使用した。IACC計測では、Neuman Binaural Headを使用した。
【0061】
(e)ここでも、最大長信号からインパルス応答および空間データを抽出した。使用したソフトウェアは、MLSSA P.C.ソフトウェアとした。
【0062】
(f)別々の増幅器を使用し、DMLパネルをTannoyと比べて4.2dBだけ低く設定した。
【0063】
図3および4は、第2の実験で計測したLEFおよびIACCを表している棒グラフである。各バーに関する縞模様は図1および2の場合と同じ意味合いである。したがって、図3のバー512a〜512dと図4のバー518a〜518dはそれぞれ、コーン・スピーカ単独のLEFとIACCを示しており、また図3のバー514a〜514dと図4のバー520a〜520dは分散モード・スピーカ単独のLEFとIACCを示しており、また図3および4のバー516a〜516dおよび522a〜522dはそれぞれ、本発明による複合式ディジタル式モード/コーン・スピーカのLEFおよびIACCを示している。図1および2の場合と同様に、図3および4の各バーは、図面で示したように特定のオクターブの周波数バンドの関連する値を示している。
【0064】
図3の試験をすると、本発明による複合式スピーカのLEF値は、各オクターブ周波数バンドにおいて、従来式コーン・スピーカ単独でのLEFや分散モード・スピーカ単独でのLEFより高いことが示される。このことは、上で説明したように、主観的テストにおいて観測される知覚可能な空間広大性の増大と整合する。バー516bと512bの差の大きさがバー516cと512cの差の大きさよりも大きいこと(250および500オクターブ・バンドのLEF値)は、そのサウンドの暖かさの著しい改良を示している。
【0065】
図4は、1,000および4,000オクターブ・バンドにおいて、本発明による複合式スピーカのIACCがコーン・スピーカ単独でのIACCと比べてかなり低いことを表している。このことは、空間広大性の観測される増大と整合している。しかし、2,000オクターブ・バンドでは、IACC値518cおよび522cはほとんど同じである。図2を参照しながら記載したように、500オクターブ・バンドに関しては図4に示したIACC値は重要でない。
【0066】
図3および4は共に、第2の実験で使用したモノ・システムを用いた主観的テストで知覚される空間広大性の印象の驚異的で著しい増大と整合している。
【0067】
第3の実験(モノ)の詳細
この実験は、上述した第1および第2の実験の環境および装置と異なる環境において異なる装置を用いて実施したものである。この実験は、スピーカを不都合な音響特性(すでに上述したものと同じ)とした単一のチャンネル(モノ)を用いた主観的テスト、ならびに無響のチェンバ内で実施した周波数応答計測からなる。LEFおよびIACCの計測はこの実験では実施しなかった。
【0068】
これらの計測全体を通じて使用した従来式のコーン・スピーカは、概ね30Hz〜20kHzの周波数レンジをカバーする3つの駆動ユニットを備えるJBL LSR32パッシブ・スタジオモニタとした。DMLは、Amina Technologies Ltd.が製造したものとした。DMLパネルは、樹脂含浸のガラス繊維スキンを伴う樹脂浸漬紙ハニカムコアからなると共に、大きさは60cm×60cmとした。4つの電磁式励振器を存在させると共に、その周波数応答は80Hz〜20kHzとした。
【0069】
DMLパネルは、従来式スピーカの最上部に配置すると共に強力な両面粘着テープを用いて取り付けた。関心対象のすべての周波数における適正な信号対雑音比を保証するために、すべての計測に関してテスト信号としてピンクノイズ(ピンクノイズは、1オクターブのバンド幅あたり等しい信号エネルギーを含んだ広帯域のランダム信号である)を使用した。信号発生器からの出力信号は、各スピーカに供給される信号の周波数レンジに対する調整を可能とするために、1対のユニバーサル・フィルタ組を介して2チャンネル・パワー増幅器の入力に接続した。2つのスピーカの相対出力レベルは、従来式スピーカにパワー供給する増幅器に対する駆動のインラインに切り替え可能な減衰器を使用することによって調整した。
【0070】
軸一致時周波数応答
図5は、従来式コーン・スピーカの軸一致時(on−axis)周波数応答の大きさを表しており、また図6は、DMLパネルに関する軸一致時周波数応答の大きさを表している。DMLパネルの低周波数応答は製造者の推奨に従って100Hz未満でカットした。インライン減衰器は、500Hzから5kHzまでの周波数レンジにある2つのスピーカから概ね同じ軸一致時レベルが得られるように調整した。
【0071】
図5および6に示した周波数応答は、位相を考慮に入れる場合と入れない場合の両者に関してコンピュータ上で足し合わせた。得られた周波数応答間の比較、ならびにスピーカを明瞭に複合させた場合に得られた周波数応答の計測によって、この2つのスピーカの間に位相の付加、したがって干渉、が生じることが分かった。要するに、意外にも、この2つのスピーカからの合成出力の周波数応答は個々に計測した応答を位相を考慮しながら足し合わせることによって正確に決定できることになる。これが成り立つとすると、任意の相対出力レベルで合成した応答を決定することができる。図7は、直ぐ前で記載したようにコンピュータ上で足し合わせて決定したこうした合成の周波数応答を表しており、DMLのレベルは従来式スピーカを基準として−12dBから+12dBまで3dBステップで変化させている。
【0072】
主観的評価
主観的テストは、計測で使用したのと同じ装置としたが、無響チェンバ内ではなく半残響性空間(上述のような遮断用コリドー)内において2つのスピーカに関して実施した。
【0073】
すべての聴取は、コンパクトディスクから再生させた市場入手可能な多様な音楽記録物を用いて単一チャンネルのモノで実施した。第1に、DMLパネルをインやアウトに切り換えると空間広大性の著しい変化が知覚された。被験者は皆、パネルの追加によって空間広大性の感覚が従来式コーン・スピーカ単独の場合と比較して改善されたと認めている。第2に、この2つのスピーカの相対レベルは全被験者が知覚可能な改良を得るのに最適なレベルで意見が一致するまで変更した。このことは、増幅器に対する「バランス」制御を用いて全体的レベルを一定に維持しながら実施した。全被験者は、上述の計測で使用したレベル(500Hzから5kHzまでの等しいレベル)を基準としてDMLパネルから−5dB出力の最適レベル設定で一致した。全被験者は、この値に関して±3dBの域内で一致した。
【0074】
追加のテストでは、一方のスピーカをインとアウトで切り換え、かつもう一方は一定に保持したときに検出可能なサウンドの変化がその値を超えないような相対レベルのしきい値を確定することが不可欠であった。このレベルは、DMLパネルでは約−35dBの検出しきい値、また従来式スピーカでは−20dBであると迅速に決定された。
【0075】
検討
この周波数応答の計測は、DMLパネルが従来式コーン・スピーカと比べて平滑性がより低い周波数応答を有することを明瞭に示している。このことは、さまざまな放射機構を検討する際にそれほど驚くことではない。DMLパネルではさらに、7kHzの周辺において応答の顕著な低下が見られる。しかし意外なことは、DMLパネルと従来式スピーカがどの程度干渉するかにある。パネルの表面全体にわたる振動場は本質的に概ね拡散性であるため、DMLパネルは自身が動作する方向にサウンドを放射する。したがって、放射された音場に関連する特定の位相は存在しないと予測することは極めて妥当であるが、これらの計測の結果は、少なくとも空間内の単一の点で、かつある狭い周波数バンド(ただし、すべて可聴周波数に対する)においては、このパネルは別のスピーカからのサウンド放射とで干渉による強め合い(constructive interference)を生じさせるような計測可能で反復可能な位相応答を有していることを示している。
【0076】
図7は、従来式コーン・スピーカのレベルを基準としてDMLパネルのレベルを変動させたときの2つのスピーカの合成出力に関する周波数応答を表している。予期できるように、DML出力のレベルが低いと従来式コーン・スピーカの応答に対してほとんど影響を及ぼすことがなく、また相対レベルが高いと該パネルの応答によって圧倒された応答が示される。しかし、この図に関して注目すべき最も興味深い点は、通常であれば平滑であるような従来式コーン・スピーカの応答がそのレベルにおいてはDMLの出力からの干渉によって乱されるような相対レベルである。この図は、この実験において−3dBを超える相対レベルでは、その応答がパネルによって悪影響を受けるが、これより低いレベルではこの限りではないことを示している。この主観的観測によれば、−5dBの相対レベルが好ましいサウンド品質にとって最適近辺にあり、またDML出力の相対レベルが高い場合は空間広大性の改良を周波数応答の悪化に対するトレードオフとさせることが可能である。
【0077】
この実験から結論のまとめ
第1および第2の実験と同様に、本主観的テストは空間広大性の印象の著しい増大を示したが、これはそのスピーカを不都合な音響特性としたモノラル・システムにおけるものである。周波数応答の計測および計算によって、本発明による複合式スピーカは、駆動用信号を適当なレベルとした場合、分散モード・スピーカ単独の場合と比べてかなり良好な周波数応答を達成できることが示された。
【0078】
実際的な実施形態
実施した実験(主観的テストと科学的計測の両者)に関する上述の検討から理解されるように、本発明によれば、スピーカによって発生させたサウンドの空間広大性を強調させる問題に対する実際的かつ簡単な解決法が提供される、具体的には高品質で広い周波数レンジのピストン式スピーカを利用することが可能となり、かつ分散モード・スピーカの追加によって発生させるサウンドの空間広大性を強調することが可能となり、この際サウンドの高忠実性が失われることがなく、また追加的な信号チャンネルや複雑な信号エンコードの必要がない。
【0079】
本発明を実施する際に、分散モード・スピーカおよびピストン式スピーカは可聴周波数バンドの共通部分にわたって動作しなければならない。この2つのスピーカは可聴周波数バンドの実質的に全体にわたって動作することが好ましく、たとえばそのピストン式スピーカが20Hzから20kHzまでで動作することがありかつその分散モード・スピーカが約100Hzから20kHzまでで動作することがあり、あるいは分散モード・スピーカの技術がさらに発展すれば、この2つのスピーカは可聴周波数レンジの全体(すなわち、20Hz〜20kHz)にわたって動作することもあり得る。コストや目的とする使用法など状況に応じてこれより狭い周波数バンドが利用されることも本発明の趣旨の域内にある。たとえば、分散モード・スピーカは上で指摘したバンドと比べてかなり狭い周波数バンドに制約される可能性もある、たとえば周波数バンド100から1,000Hzまで、あるいは周波数バンド200から2,000Hzまで、あるいは最大4,000Hzまでや最大6,000Hzまでのレンジ域内の1つまたは複数のオクターブをカバーする周波数バンドなどとする可能性がある。さらに別の具体的な一例として、分散モードの1つまたは複数のスピーカの周波数バンドは100から6,000Hzまでとすることがあり、またピストン式スピーカの周波数バンドは800から8,000kHzまでとすることがあり得る。
【0080】
別の代替形態として、分散モード・スピーカおよびピストン式スピーカが周波数レンジの共通部分にわたって動作する場合、ピストン式スピーカの最高周波数は分散モード・スピーカの最高周波数と比べて実質的により低く、高域周波数ではツイータが分散モード・スピーカによって構成されることもあり得る。
【0081】
したがって一般に、分散モード・スピーカの周波数レンジはピストン式スピーカの周波数レンジと比べてより広くすることもより狭くすることもでき、分散モード・スピーカの周波数レンジの低い方の端は、ピストン式スピーカの周波数レンジの低い方の端と比べてより高くすることやより低くすることがあり、また分散モード・スピーカの周波数レンジの上側の端は、ピストン式スピーカの周波数レンジの上側の端と比べてより高くすることやより低くすることがある。ピストン式および分散モード・スピーカの最適な周波数レンジは、用途やコストならびにさまざまな使用法やさまざまなマーケットにおける具体的な要件に応じて実験によって決定されることがある。
【0082】
本発明の多数の実際的な実施形態について以下で記載することにする。これらの実施形態の大部分では、特定の周波数を与えないことにする。これらは、実施形態の記載に従って設計しようとする具体的な製品の状況に応じて、上の検討ですでに示したレンジから選択されるものと捉えるべきである。
【0083】
さらに、以下の実施形態の使用時のスピーカまたはサウンド再生デバイスの配置については記載していない。ユーザまたはシステムの据え付け者によって具体的な任意の聴取空間内の最適な箇所が決定されることになろう。分散モード・スピーカをピストン式スピーカと物理的に別のユニットとする場合は、これら2つのスピーカは互いに隣同士の位置決め、互いの上に位置決め、あるいは別の箇所(たとえば、分散モード・スピーカを聴き手のために用意した領域の後ろ側や横側とするなど)に位置決めされることがある。この接続では、サラウンドサウンド・システム内でのスピーカの配置は重要でありかつ異なるチャンネルの信号に対するエンコード(エンコードはスピーカが事前に規定された位置にあると仮定して実行される)に依存するが、この制約は本発明にはあてはまらないことを理解すべきである。
【0084】
さらに、テストによって(実験に関する上の説明では言及していない)ピストン式および分散モード・スピーカの出力間に遅延の導入が利用されることがあること、また具体的には、分散モード・スピーカに加えられる信号はピストン式スピーカに加えられる信号を基準として遅延させることがあることが指摘されていることも理解すべきである。遅延を与える場合は一般に、これが80msecを超えないようにすべきであり、さらに35msecを超えないようにすることが好ましい。こうした遅延の導入によって、ステレオ音響式用途やサラウンドサウンド用途においてサウンドに対する「イメージ形成(imaging)」または「位置特定(localization)」が強調されることが非公式のテストによって分かっている。イメージ形成および位置特定に関するこうした改良によって音楽を聞く際の音楽的了解度が改善される。
【0085】
こうした改良が起こるのは、遅延の結果として、ピストン式スピーカからのサウンドのトランジェント(transient)は分散モード・スピーカからによってマスキングされないが、分散モード・スピーカからのトランジェントはピストン式スピーカからのトランジェントによってマスキングされるためであると考察される。
【0086】
LEFおよびIACCに関連する検討ならびに遅延の効果に関連する検討において、この効果の基本となる理論的な説明を与えているが、本出願はこれらの説明によって拘束されるものではないことを理解すべきである。ここに与えた説明は、オーディオ分野における目下のところの知見ならびに計測技法に基づいたものであるが、人間の自身が受けたサウンドに対する心理音響学的効果は極めて複雑な問題であり、正確な説明を与えることは困難(また、幾つかの状況では不可能)であることも同様に理解されたい。
ここで、本発明に関する多数の実際的な実施形態について記載することにする。
【0087】
第1の実施形態
図8〜12は、本発明の第1の実施形態によるステレオ音響式サウンド再生システムを表している。
【0088】
図8に示すように、このシステムは、音楽などのステレオ音響サウンドを再生するために、CDプレーヤ、ステレオFMチューナおよび/またはステレオ・テープ・プレーヤなどの多数の入力デバイス2と、従来の構成とした、したがって通常の前置増幅器、制御回路およびパワー増幅器を備えたステレオ音響式増幅器ユニット4と、増幅器4の左および右チャンネル出力にそれぞれ接続した1対のスピーカ・ユニット6と、を備えている。スピーカ・ユニット6のそれぞれは、本発明の教示に従って駆動を受けている従来式コーン・スピーカと分散モード・スピーカの両者を含んでいる。この2つのスピーカ・ユニット6は互いに同一である。
【0089】
図9に示したように、各スピーカ・ユニット6は、ベース/ミッドレンジ・スピーカ10およびツイータ12を備えた従来式の全周波数レンジの2ウェイ式コーン・スピーカ・システムを包含したケーシング8を備えている。コーン・スピーカ10および12の各々は、それぞれのコーンを駆動するために可動コイルまたは可動磁石タイプとすることがあるそれぞれの電磁式駆動ユニットを含んでいる。ケーシング8は、前面、背面、上面、底面および側面パネル8a、8b、8c、8d、8e、8fを有している。前面パネル8aは、スピーカ10、12のコーンをその後ろ側に配置させる開口14、16を有している。スピーカ10、12のコーンは開口14、16を閉鎖しており、これにより従来式と同様にケーシング8によって1つの閉じたチェンバが形成され、この内部にコーン・スピーカ10および12を配置させることによってこれらのスピーカにより従来方式で自由空気中にサウンドを発生させることができる。ケーシング8内の閉じたチェンバの内部は、従来式の任意の構造体または減衰材料を包含することがある。
【0090】
分散モード・スピーカ22はケーシング8の最上部に垂直の向きで確保されていると共に、スピーカ・パネル24と、このパネル24の背面に取り付けた電磁式アクチュエータ26と、を備えている。一方のエッジ30に沿ってケーシング8に確保された矩形のフレーム28によってケーシング8の前面と概ね同じ面内でパネル24を支持しており、かつ、アクチュエータ26によりパネル24をよく知られた方式で励振させ共振分散モード振動とすることが可能となるような方式で支持している。
【0091】
パネル24およびフレーム28は、ケーシング8の上面に位置決めされると共に、その側面、背面および上面壁32aのすべてが多数の開口を含んだ金属メッシュから製作されているようなハウジング32の前面壁を形成しており、これによりパネル24の背面から発生させるサウンドがこのメッシュ壁34を介して自由空気に実質的に自由に送出されることになる。
【0092】
励振器26は、非磁性の軽量で剛性の円筒状巻型34と、この巻型34上に巻きつけられかつこの巻型によって支持された電気コイル36と、マグネット38と、を備えており、これらのすべてを図10の概略断面図で表している。マグネット38は本質的にカップ状であり、かつ円形の端部または底部壁38aと、円筒状の側面壁38bと、中実の円筒状の中央コア38cと、を備えている。マグネット38の中央コア38cの外表面と、巻型34の内部円柱状表面との間には、巻型に対してマグネットを応従性に支持するために軟らかな応従性の材料39が接着剤によって確保されており、これによりコイル36を交流電気信号によって付勢した際に、コイル36とマグネット38の間に作用する合成電磁気力によって巻型34とマグネット38の間に相対的なバイブレータ運動が生じる。分散モード・スピーカに関する当技術分野で知られているように、マグネットは、上述した以外には支持されていないが、マグネットは巻型より実質的により重いため、この重量によるマグネット38の機械的慣性の結果として、振動をパネル24に伝達することができる。分散モード・スピーカに関する当技術分野には周知のように、マグネット38に対して追加的な支持体(こうした追加的な支持体は図10では示しておらず、またこの実施形態に含めていない)を提供することが可能であるが、この支持体はそれでもマグネットのバイブレータ運動を許容していなければならない。
【0093】
図10に概略図で示したパネル24は、構造の前面から背面まで延びる通路を包含した内部ハニカム構造24aを備えており、これらの通路は前面および背面層24bおよび24cのそれぞれによって閉じられている。この構造は、分散モード・スピーカの設計原理に従って軽量となるように、またすでに上述したように励振器26の起動によって屈曲波の形態の共振分散モード振動に設定することが可能となるように選択されており、この励振器26は分散モード・スピーカに対する設計原理に従って適当に設計されていると共にこの目的のためにパネル24上に位置決めされている。
【0094】
すでに指摘したように、これらの振動を許容するためには、パネル24はフレーム28内で応従性に装着されている。図11は、この目的に適した応従性装着手段(すなわち、パネル24のエッジ領域24dとフレーム28(L字形の断面で示す)の背面28aの間に接着により確保した軟らかな発泡体ストリップ40)の一例を表している。ストリップ40は、パネル24のエッジ領域24eが領域24eの位置でフレーム24に全く付着しないで自由に振動できるように、その内部が不連続となっている。その分散モード・スピーカに関する設計原理に従って、パネル24の領域24dおよび24eの選択は、パネルを共振分散モード振動させるように励振できる能力を最適化するようにして実施される。
【0095】
図12に概略図で表したように、各スピーカ・ユニット6は、図8に示した従来式増幅器4の出力への適当な配線を介した接続のためにありかつコーン・スピーカ10および12ならびに分散モード・スピーカ22に駆動用信号を供給するような1対の入力端子42を含んでいる。これらの信号は、一緒になって従来式クロスオーバー回路を構成する低域通過フィルタ44および高域通過フィルタ46を介してウーファおよびツイータのコーン・スピーカ10および12のそれぞれに供給され、またさらに高域通過保護フィルタ/減衰回路48を介して分散モード・スピーカ22に供給されている。このコーン・スピーカ10および12ならびにフィルタ44および46は、スピーカ14および16が一体となって可聴周波数レンジ(すなわち、20Hz〜20kHz)の実質的にすべてを再生でき、これにより従来式コーン・スピーカ・システムを構成できるように設計かつ配置されている。回路48内に高域通過保護フィルタを包含している分散モード・スピーカ22は、現在のトポロジー状態では分散モード・スピーカが少なくとも一般的には周波数が100Hz未満のサウンドを事実上再生できないことを考慮に入れながら、全周波数レンジのうちのできる限り多くを発生できるように設計かつ配置されている。したがって、この回路48は、100Hz未満の周波数を有する信号をカットオフし、分散モード・スピーカ22が100Hz〜20kHzのレンジ域内の周波数を再生できるように配置させている。分散モード・スピーカ22がコーン・スピーカ14および16が発生させる音圧レベル未満の音圧レベルを発生できるように、この回路48内には減衰器を含めてある。たとえば(実施した実験の内容に関して上で説明したように)−5db+3dbまたは−3dbの音圧レベルが好ましい音圧レベル差である。
【0096】
したがって図8〜12の実施形態は、適当な品質の構成要素から製作すれば、従来式スピーカ単独、分散モード・スピーカ単独、あるいはウーファとして使用した従来式スピーカと組み合わせて分散モード・スピーカが単にツイータとして使用させている配置によって得られる空間広大性と比べて、空間広大性をより改善させた高忠実度の音楽再生システムを提供することができる。
【0097】
高域通過保護フィルタ/減衰器回路48はユーザによって調節可能とし、これによりユーザがその選好および室内音響特性に応じて試行錯誤によって異なるレベルの減衰に設定できることが好ましく、さらにこの回路は、分散モード・スピーカに加えられる信号が0〜35msecレンジの遅延で導入できるように調節可能であることが好ましい。
【0098】
使用時において、図8〜12を参照しながら記載したシステムのスピーカは従来の方式で位置決めされることがあるが、分散モード・スピーカが前方向だけではなく後方向にも放射できることをできるだけ保証すべきである、すなわちスピーカの背面は分散モード・スピーカからのサウンドの背面方向の伝播を妨げるような壁やその他のものに直に押しあてて配置させるべきではない。
【0099】
第2の実施形態
図13は、上で記載したような従来式入力デバイス、従来式ステレオ増幅器、および1対の従来式コーン・スピーカ50を備えた従来式の高忠実度音楽再生システムが、従来式高忠実度システムを本発明の教示に従ったシステムに変換する右チャンネル用に1つおよび左チャンネル用に1つとした1対の補助サウンド再生ユニット52によって補助されているような本発明の代替的な実施形態を表している。
【0100】
各補助ユニット52は、分散モード・スピーカ54と、増幅器4の左および右スピーカ出力のそれぞれの1つに接続された入力端子58を有する信号調節処理増幅器56と、それぞれの分散モード・スピーカ54に接続された出力端子60と、を備えている。各信号調節処理増幅器56は、参照番号62で示すように主電源供給を受けている。便宜上、入力端子58は、スピーカ・ユニット50の端子までそれぞれ短い配線長で接続されており、このため追加的な長い配線が増幅器4の出力と補助ユニット52の入力の間に接続されるのを回避することができる。
【0101】
図14は、各信号調節処理増幅器56のブロック図である。図示したように、減衰器64が入力端子58に接続されており、この減衰器64はディジタル制御式のボリューム制御回路66に信号を供給しており、このボリューム制御回路66の出力は7バンド・イコライザー68を介してパワー増幅器70に供給されており、またこのパワー増幅器70の出力は端子60に接続されている。
【0102】
減衰器64は、上で低レベル信号と呼んだ信号をディジタル式ボリューム制御66に供給するためのタップ74を有する端子58の両端に接続した高抵抗値抵抗器72を備えている。この抵抗器72の抵抗値は、信号調節処理増幅器56とスピーカ50の両者を増幅器4の出力端子間に接続することによって生じる総インピーダンスがスピーカ50単独の場合に提供されるインピーダンスとできるだけ近くなるようにその値を選択し、これにより従来式コーン・スピーカ50に加えて補助ユニットに接続したことによって増幅器4が悪影響を受けないようにしている。
【0103】
7バンド・イコライザーは、7つの異なる周波数バンドで加えられる相対的増幅をプリセットするための多数のプリセット制御68aを含んでいる。制御68aの設定は、分散モード・スピーカ54の周波数応答の任意の変動に対して少なくともある程度補償するように、ならびに、100Hz未満の周波数など分散モード・スピーカによって満足の行く再生が不可能であるような任意の低い周波数をカットオフするように選択される。
【0104】
マイクロコントローラ76は、ディジタル式ボリューム制御回路66、イコライザー68およびパワー増幅器70を制御している。一方マイクロコントローラ76は、システムのユーザ、ならびにハンドヘルド式のリモート制御デバイス(図示せず)に応答してボリュームを調整するための赤外線検出器80からの信号によって動作可能なマニュアル式のボリューム制御デバイス78によって制御を受け、これにより、システムのユーザは分散モード・スピーカが発生させるサウンドのボリュームをコーン・スピーカが発生させるボリュームを基準として調整することができる。電力の無駄を防ぐために、デバイス56は、増幅器4から全く信号が供給されない場合にパワーダウン・モードに入るように製作されている。入力検出器回路82は、タップ74に接続されており、またタップ74の位置に現れる信号の検出に応答して制御信号をマイクロコントローラ76に供給しており、これによってマイクロコントローラ76は回路が動作しているモードであるパワーアップ・モードに入るようにプログラムされている。
【0105】
図13および14の実施形態では、従来式コーン・スピーカ50は全周波数レンジにわたって動作し、また分散モード・スピーカ54は上の実施形態に関連してすでに検討したように当該レンジのうちのできるだけ広い範囲にわたって動作しており、またこの結果として、図13および14を参照しながら記載したように1対の補助ユニットを既存の高忠実度サウンド再生システムに追加することによって、既存のシステムを本発明を実現しておりかつ空間広大性の改善を提供する改良型のシステムに変換することができる。
【0106】
したがって補助ユニット52は、全体として高忠実度システムとは別に製作されかつ販売されているため、これを既存の高忠実度システムに追加することができる。信号調節処理増幅器56は、分散モード・スピーカを支持するベースまたはハウジングの上または中に物理的に装着させることや、さらに別法としてこれとは分離させることがある。
【0107】
さらに、図13は2つの別々の信号調節処理増幅器56を表しているが、別法として、2チャンネル信号調節処理増幅器に対して、入力減衰器64と、ディジタル式ボリューム制御66と、イコライザー68と、これら2つのチャンネルを制御する単一のマイクロコントローラとしてすでに示したパワー増幅器70と、を備えたチャンネルを設けることも可能である。こうした配置では、入力検出器はこれら2つの入力減衰器に接続させると共に、チャンネルのうちのいずれか一方、またはこれら両チャンネル上の信号に応答して回路をパワーアップ・モードに入らせるように配置されている。こうした2チャンネル信号調節処理増幅器は、そのすべての構成要素を単一のハウジングの内部に包含させて有することがあり、これらの構成要素は分散モード・スピーカのうちの1つのためのベースまたは支持用ハウジング内に組み込まれることや、また別法として、分散モード・スピーカとは別のものとして製作されることもある。単一のマイクロコントローラを提供するとさらにコストも低減される。
【0108】
既存のサウンド再生システムに対する補助ユニット52の接続動作をできるだけ簡略化するために、各補助ユニット52には入力端子58に直接接続されておりかつ短い配線長(図示せず)による既存の従来式コーン・スピーカへの接続のための追加的な出力端子(図示せず)が設けられることがあり、これは製作および販売の際に補助ユニット内に包含させることがある。上述のような2チャンネル信号調節処理増幅器を設けている修正形態では、各チャンネルごとに1つとして、こうした追加的な出力端子が2組存在することになる。
【0109】
第3の実施形態
図15は、信号調節処理増幅器に対して高(スピーカ)レベル(図14の配置の場合と同様)のみならずラインレベルでも入力を受け取ることを可能とさせるための、図14に示した回路の入力端に対する修正を表している。この目的のためには、入力スイッチ84のうちの一方の入力に接続させてラインレベル入力端子82を設けており、このもう一方の入力は減衰器64の出力に接続させている。入力検出器回路80は、その一方がタップ74に接続されかつもう一方がライン入力82に接続された2つの入力を有する検出器回路86によって置き換えられている。入力検出器回路86は、マイクロコントローラ76にライン入力82またはタップ74の位置に信号が現れたことを示す信号を送信するように配置されており、またマイクロコントローラは、この信号を解釈し、入力スイッチ84をライン入力とタップ74のいずれかにその出力が接続されるように適当に設定している。図14を参照しながら記載したように、マイクロコントローラはさらに、入力検出器86からの信号に応答して回路をパワーアップ・モードの入らせている。
【0110】
図14の実施形態の場合と同様に、左チャンネルと右チャンネルの両者は、すでに記載したように、単一のユニットの内部に設けられると共に、単一のマイクロコントローラによって制御を受けることが可能である。
【0111】
さらに上述のように、既存のサウンド再生システムに対する補助ユニットの接続動作を簡略化するために、入力端子58に直接接続させておりかつ従来式コーン・スピーカ50への接続のためにある追加的な出力端子を設けることがある。
【0112】
第4の実施形態
図16は、従来式の高忠実度システムを本発明の実施形態に変換するための補助ユニットの代替的形態を表している。図16では、この従来式高忠実度ユニットは、入力デバイス2および従来式増幅器4および1対の従来式コーン・スピーカ50(この実施形態では、このシステムに付加する分散モード・スピーカと比べてより高効率であると仮定している)を備えている。したがって、図16は、その各々が入力端子90に接続された分散モード・スピーカ54と、従来式コーン・スピーカ50への接続を目的とした入力端子90と出力端子94の間に接続された減衰器回路92と、を備える左および右補助ユニット88を表している。
【0113】
図16に示した配置は、スピーカをすべて接続したときに端子90間のインピーダンスが、増幅器4が取り扱い可能なインピーダンスのレンジ域内に来るものと仮定している。
【0114】
第5の実施形態
図17は、分散モード・スピーカ54がコーン・スピーカ50と比べてより高効率であると仮定した配置である点を除けば図16に示したのと同様の配置である。したがって、減衰器回路92は、入力端子90と出力端子94の間ではなく、入力端子90と分散モード・スピーカ54の間に接続されている。図16の場合と同様に、図17では、スピーカをすべて接続したときの端子90間の総インピーダンスは増幅器4が取り扱い可能なインピーダンスのレンジ域内に来るものと仮定している。
【0115】
第6の実施形態
図18を参照すると、サウンド再生システムは、上で記載したような従来式入力デバイス2と、第1および第2の左チャンネル・ステレオ出力端子102、104を分散モード・スピーカ106と従来式コーン・スピーカ108のそれぞれに接続させて有しかつ第1および第2の右チャンネル・ステレオ出力端子110、112を分散モード・スピーカ114と従来式コーン・スピーカ116のそれぞれに接続させて有している目的別構築のステレオ音響式増幅器100と、を備えている。従来式コーン・スピーカ108および116はその両方が全周波数レンジ・スピーカであることが好ましく、またたとえば、従来式クロスオーバー回路を備えて2ウェイまたは3ウェイ式デバイスとし、これらのコーン・スピーカが協働してこのレンジ(すなわち、20Hz〜20kHz)内のサウンドを再生することがある。さらに上で記載したように、分散モード・スピーカ106および114によって全レンジのうちのできる限り広いレンジをカバーさせ、上で記載したように少なくとも100Hz〜20kHzのレンジ内のサウンドを発生させている。
【0116】
図19に示したように、増幅器100は、従来式デバイス2からユーザ選択の入力を受け取るための左および右出力端子120、122をそれぞれ有する従来式入力選択器回路118を含んでいる。左出力端子120は、その出力がそれぞれ端子102および104に接続されている左分散モード・スピーカ信号処理チャンネル124と左コーン・スピーカ信号処理チャンネル126の両方の入力端子に接続されている。入力選択器118の右出力端子122は、その出力がそれぞれ端子110および112に接続されている右分散モード・スピーカ信号処理チャンネル128と右コーン・スピーカ信号処理チャンネル130の両方の入力に接続されている。
【0117】
チャンネル124、126、128および130は、従来式制御136および相対ボリューム制御140からなる組からの制御入力を受け取っているマイクロコントローラ132によって制御を受けている。従来式制御136はシステムのユーザによって作動させるように配置されていると共に、左右バランス制御、トレブルおよびバス制御、グラフィック・イコライザー制御その他などの通常の制御のすべてを含むことがある。相対ボリューム制御140はさらに、ユーザ作動を受けるように配置させており、また一方では分散モード・スピーカ106および114と、もう一方では従来式コーン・スピーカ108および116との間の相対ボリュームを設定するためのものである。
【0118】
分散モード・スピーカ・チャンネル124の各々は、ディジタル式ボリューム制御と、プリセットを備えた7バンド・イコライザーと、図14を参照しながら記載したような構成要素66、68、68a、70と同様のパワー増幅器と、を備えている。コーン・スピーカ・チャンネル126および128の各々は、通常のフィルタ、ボリューム制御(このケースではディジタル制御式)、パワー増幅器およびグラフィック・イコライザーなどの従来式コーン・スピーカを適宜または所望により駆動するための従来式回路を備えている。
【0119】
従来式制御136は、4つのチャンネル124、126、128、130を制御して従来式制御138の設定(ボリューム、フィルタ処理、均等化など)に従った要求された出力を発生させている。相対ボリューム制御140は、一方では端子102および110に加えられる信号のまたもう一方では端子104および112の相対パワーレベルを調整し、これにより従来式コーン・スピーカ108および106が発生させるボリュームまたは音圧レベルを基準として分散モード・スピーカ106および114が発生させるボリュームまたは音圧レベルを調整することができ、好ましくは分散モード・スピーカの出力を上で説明したように従来式コーン・スピーカの出力に対して−5デシベル±3デシベルに設定することが可能となり、またさらにユーザ選好や室内の音響特性ならびに使用するスピーカの特性を考慮に入れるための別の可能な設定が提供される。
【0120】
したがって、この実施形態によれば、記載したような分散モード・スピーカおよびコーン・スピーカに対する単純接続により本発明を実現するための、第1および第2の左チャンネルと第1および第2の右チャンネルとを有する新規性のあるステレオ音響式増幅器が提供される。
【0121】
第7の実施形態
図20は、自己完結型サウンド再生装置142を備えた本発明の別の実施形態のブロック図である。自己完結型装置142は、アクティブ分散モード・スピーカ145およびアクティブ従来式コーン・スピーカ146のそれぞれに接続するための第1および第2の左ラインレベルのコネクタ・ソケット143および144と、アクティブ分散モード・スピーカ149およびアクティブ従来式コーン・スピーカ150のそれぞれに接続するための第1および第2の右ラインレベルのコネクタ・ソケット147および148と、を有している。スピーカに関して「アクティブ(active)」という単語は、従来式においてもまた図面での例示においても、そのスピーカに組み込み式のパワー増幅器が設けられており、これによりスピーカはラインレベル信号からのサウンドの再生が可能であることを意味している。
【0122】
自己完結型再生装置142は、左および右出力が左および右チャンネル152および153のそれぞれに供給されている1つまたは複数のステレオ信号源151(たとえば、FMラジオチューナおよび/またはコンパクトディスク・プレーヤ)を含んでいる。これらのチャンネルの各々は、相対ボリューム制御回路156の入力と、主パワー増幅器157の入力と、左チャンネルの場合では出力ソケット144また右チャンネルの場合では出力ソケット148と、に接続されている出力端子155を有するボリューム制御154を備えている。装置142内には左および右の従来式の組み込みコーン・スピーカ158が含まれていると共に、それぞれのスイッチ159を介してそれぞれパワー増幅器157の出力に接続されている。コネクタ143、144、147、148は、標準プラグを受け容れるための標準ソケットであることが好ましい。ソケット144および148からそれぞれスイッチ159までの間には機械的接続が設けられておりプラグ(図示せず)をこれらのソケット内に挿入したときにこれらのスイッチが開放されて組み込み式のスピーカを切り離すことができる。
【0123】
ユーザによる操作を受ける主ボリューム制御デバイス160が、この2つのチャンネルの主ボリューム制御回路154を同時に制御している。相対ボリューム制御回路156を調整して分散モード・スピーカの出力をコーン・スピーカの出力を基準として調整するために、ノブなどのユーザ操作のコントロール素子が設けられている。この実施形態では、この2つの相対ボリューム制御回路の各々は、それ自身の個別のユーザ操作のコントロール素子を有しており、これにより左および右チャンネルのそれぞれにおける分散モード・スピーカおよびコーン・スピーカの相対ボリュームを個々に調整することができる。所望であれば、この回路は、左および右チャンネルの各相対ボリュームを同時に調整するようにユーザにより作動させる単一の相対ボリューム制御素子が提供されるように修正されることがある。
【0124】
スピーカ145、146、149および150により再生させる周波数レンジは分散モード・スピーカおよび従来式コーン・スピーカ向けとして上で記載したようにすること、ならびに相対ボリュームはこの明細書のさまざまな箇所ですでに記載したようにして調整できることが好ましい。
【0125】
図20の説明から明らかであろうように、分散モード・スピーカ145および149は、外部のコーン・スピーカ146および149との組み合わせること、あるいは組み込み式のスピーカ158と一緒にすることのいずれにおいても使用することができる。
【0126】
自己完結型サウンド再生装置142は、ポータブル・ラジオ、ポータブルCDプレーヤ、あるいはポータブル・ラジオ/CDプレーヤなどのポータブル・デバイスの形態とさせることがあり、またたとえば、テレビジョン受像器のサウンド・システムやポータブル・コンピュータなどのコンピュータのサウンド・システムとすることがある。
【0127】
第8の実施形態
図21の実施形態は、組み込み式のスピーカ158、主増幅器157およびスイッチ159(ならびに、ソケット144および148への関連する機械的リンク)が省略されている点を除けば図20の実施形態と同じである。
【0128】
第9の実施形態
図22および23は、左および右チャンネルのラインレベル出力166および167のそれぞれを有する、CDプレーヤやテープ・プレーヤなどの従来式ポータブル・プレーヤ165によって増幅器ユニット164を介して駆動を受ける図18を参照しながら記載したような左分散モード・スピーカおよび従来式コーン・スピーカと、右分散モード・スピーカおよび従来式コーン・スピーカ106、108、114および116と、を備える本発明の一実施形態を表している。
【0129】
この増幅器ユニットは、左および右チャンネル・バッファ増幅器169、170、第1および第2の左チャンネル・パワー増幅器171、172、ならびに第1および第2の右チャンネル・パワー増幅器173および174を包含するハウジング168を備えている。左および右チャンネル入力リード線175および176は従来式プラグ177、178によってラインレベル出力166および167のそれぞれに接続させ、ポータブル・プレーヤ165が発生させる左および右ラインレベル信号をバッファ増幅器169および170の入力のそれぞれに供給している。左チャンネル・パワー増幅器171、172は、端子179および180を介して分散モード・スピーカ106と従来式コーン・スピーカ108のそれぞれを駆動するためにバッファ増幅器169が発生させる信号を独立に増幅している。同様に、右チャンネル・パワー増幅器173および174は、端子181および182のそれぞれを介して右分散モード・スピーカ114および右従来式コーン・スピーカ116を駆動するためにバッファ増幅器170によって供給される信号を増幅している。
【0130】
4つのパワー増幅器171、172、173、174は、これら4つのスピーカ出力を個々に調整できるようにするためにそれぞれのボリューム制御回路を含んでいる。この実施形態において分散モード・スピーカおよび従来式コーン・スピーカを動作させる領域である周波数レンジは上で記載したようにしており、また分散モード・スピーカと従来式コーン・スピーカの間の音圧出力の差もまた上で記載したレンジ域内で調節可能としている。
【0131】
したがって増幅器ユニット164は、2つの従来式コーン・スピーカとこの従来式ステレオ・プレーヤの外部にある2つの分散モード・スピーカとを付加することによって、ラインレベル出力を有する従来式ステレオ・プレーヤを使用して本発明を実現することが可能である。増幅器ユニットはこれ以外の構成要素とは別に製作され販売されることがある。また接続用のリード線と一緒に販売されることやこうしたリード線なしで販売されることがある。
【0132】
図22および23に図示した個々のプラグ177および178は、一修正形態では、そのプレーヤに受け容れられるタイプの従来式ソケットが設けられていれば「ミニプラグ」などの標準ステレオ・プラグに置き換えられることがある。
【0133】
第10の実施形態
図24は、自己完結型サウンド再生装置の形態をさせた本発明の別の実施形態を表している。この装置は、本発明の実現形態で必要となる構成要素をすべて包含するような参照番号185で概略図として示したハウジングを備えている。したがって、ハウジング185は、左および右分散モード・スピーカ186、187と、その各々がツイータ188aおよび189a、ウーファ188bおよび189bならびに従来式クロスオーバー回路188cおよび189cを備えた左および右の2ウェイ従来式コーン・スピーカ・システム188および189と、を包含している。1つまたは複数のステレオ信号源は、必要とされる制御およびスピーカ駆動回路と一緒にして、その全体を参照番号190で示しており、これらもまたハウジング185内に包含されていると共にボリューム、バランス、トレブルおよびバス制御などの通常のユーザ作動式制御が設けられている。分散モード・スピーカおよび従来式コーン・スピーカを駆動しかつ制御するための信号チャンネルは上で記載したのと同様とすることがあり、またしたがって分散モード・スピーカと従来式スピーカのボリューム・レベルを互いに対して相対的に調整するために全体ボリューム制御と相対ボリューム制御の両方を含むことがある。
【0134】
上の実施形態の場合と同様に、分散モード・スピーカが発生させる周波数レンジは従来式コーン・スピーカが発生させる周波数レンジと、実質的に重複しているか、または好ましくは実質的に同じである。ただし自己完結型ポータブル・デバイスの場合では、その周波数レンジは、たとえば自宅において使用するためなどの高忠実度システムの場合と比べてより小さいことがある。自己完結型デバイス185はポータブル・ラジオおよび/またはCDおよび/またはテープ・プレーヤ、テレビジョン受像器またはポータブル・コンピュータなど多様な異なる形態のうちのいずれをとることもあり得る。本発明をコンピュータ内で具現化させる場合、その制御のうちの一部または全部をソフトウェアで実現させることがある。
【0135】
第11の実施形態
本発明は、いわゆる「サラウンドサウンド」システムで使用することができる。図25は、こうした実現形態の一例を表している。
【0136】
図25を参照すると、従来式サラウンドサウンド入力デバイス191が、聴取室内の適当な箇所に位置決めされたそれぞれ異なるスピーカ6にその各々が接続されている5つのチャンネル(すなわち、左側、中央および右側の前チャンネルと左側面および右側面チャンネル)を有する従来式サラウンドサウンド増幅器192に接続されている。スピーカ6は、その各々が図9〜13を参照しながら詳細に記載したものと同様であり、これによりサラウンドサウンド・システムにおいて本発明を実現することができる。
【0137】
ディジタル式ピアノにおける本発明の実施形態
目下のところ入手可能な最良品質のディジタル式ピアノであっても、発生させるサウンドはかなり非音楽的(unmusical)であることはよく知られている。ディジタル式ピアノにおいて本発明の教示を具現化することによれば、ディジタル式ピアノからさらにより臨場感のある音楽サウンドを発生させることが可能となる。具体的には、本発明によるディジタル式ピアノは、そのピアノが適当な品質に製作されている場合に聴き手に対して、発生させたサウンドが高品質の音響グランドピアノのサウンドと品質的に近いとの印象を与えられるようなランダムな成分を備えた極めてリッチさを高めたサウンドを発生させることができる。最上品質の音響ピアノのコストと比べてかなり低いコストでこれを達成することができる。
【0138】
グランドピアノ
図26は、本発明の一実施形態によるディジタル式グランドピアノの斜視図を表している。ピアノは、脚部201上に支持されると共に、従来式の支線203によって開放位置に支持されている状態を図示している従来式ヒンジ付ふた202を有するケーシング200を備えている。通常の機能を実行するディジタル式ピアノで使用される従来タイプの鍵盤204と1組のペダル205は、ケーシング200によって通常の位置で支持されている。このピアノは(ディジタル式ピアノの技術分野ではすでに知られているように)演奏者に対して良質のコンサート用グランドの感覚を提供する目的で鍵盤に接続された従来式の高品質グランドピアノ・アクション(図示せず)を含むことが好ましい。
【0139】
ケーシング4は、鍵盤のうちのトレブル、ミッドレンジおよびベースの部分とそれぞれ整列するように配置されたツイータ216、ミッドレンジ・ユニット214およびサブウーファ218をその各々が備えている2つのスピーカ・アセンブリ210および212を支持している。スピーカ216、214および218の各々は、そのコーンが垂直に上方向を向いており、かつこれにより発生させたサウンドがピアノのふたによって反射されるように配置させた従来式の電磁駆動式のコーン・スピーカである。この向きはツイータおよびミッドレンジ・スピーカに関して特に好ましいものであるが、サブウーファの向きはそれほど重要ではない。
【0140】
ケーシング4はさらに、上方向および下方向にサウンドを放射するために水平に位置決めされた2つの分散モード・スピーカ220および222を支持している。一例として、分散モード・スピーカ220、222のパネルはそれぞれの寸法を700×500mmとすることもあり得る。
【0141】
従来式スピーカを鍵盤の近くでグループにしかつ分散モード・スピーカを鍵盤から離している図26に示したスピーカの配置は、単に例示であることを理解すべきである。別法として、従来式および分散モード・スピーカを交互に配置させることや、図面に示した配置と逆の関係の位置とさせることもある。さらに、従来式スピーカ・アセンブリのツイータ、ミッドレンジ・ユニットおよびサブウーファは分離させて分散モード・スピーカと交互配置させることもある。
【0142】
図27に示すように、フットペダル・スイッチ206からの信号、ならびにピアノの鍵盤204の下側に配置させた赤外線ピックアップ207(図26では図示せず)からの信号に応答して発生させたMIDI信号は、グランドピアノのサウンドを複製した音響信号を発生させるためにそのいずれもがMIDI信号およびフットペダル・スイッチ107に応答するように配置されている第1のオーディオ信号発生器230と第2のオーディオ信号発生器231に送られる。この第1および第2の発生器230、231はこの目的に関して知られているソフトウェアを包含した従来式コンピュータによって実現されることがある。
【0143】
この実施形態では、第1のオーディオ信号発生器230は、第1の高品質サンプル・ライブラリ232と、第1のサウンド・モジュール234と、を備えている。第2のオーディオ信号発生器は、第2の高品質サンプル・ライブラリ237と、第2のサウンド・モジュール238と、物理モデル化ユニット239と、を備えている。それぞれのライブラリ232および237は、異なる高品質グランドピアノ(好ましくは、コンサート用グランド)から記録されディジタル式サンプルを含んでいる。したがってたとえば、第1のサウンド・サンプル・ライブラリ232は1.6Gb Steinwayサンプル・ライブラリを含むことがあり、また第2のサンプル・ライブラリ237はYamaha 30Mb サンプルサウンド・ライブラリを含むことがある。サウンド・モジュール234、238は受信したMIDI信号およびフットペダル・スイッチ107からの信号に応答してサウンド・ライブラリ232、237からサウンド・サンプルを選択するためのソフトウェア・プログラムを備えている。第2のサンプル・ライブラリ237が(この実施形態の場合)第1のサンプル・ライブラリ232と比べてかなり小さいため、第2のオーディオ信号発生器231はさらに、第2のサウンド・モジュール238によって選択したサウンド・サンプルを従来の方式で変更するように配置させた物理モデル化ユニット239を含んでいる。
【0144】
発生器230からの音響信号は、増幅器240によって増幅され、またこの増幅された信号によってその2つの分散モード・スピーカ220、222に対応するこの2つを駆動している。
【0145】
発生器231からの音響信号は増幅器245によって増幅され、さらに2つの従来式スピーカ210、212を駆動するためにクロスオーバー・ユニット247に供給される。クロスオーバー・ユニット247は、高周波数、ミッドレンジおよび低周波数信号を従来式スピーカ210、212のそれぞれツイータ216、ウーファ214およびベース218に従来の方式で送っている。
【0146】
このコーン・スピーカは、可聴周波数レンジの実質的に全レンジ(すなわち、20Hzから20kHzまで、あるいは45Hzから20kHzまで)にわたるサウンドを再生する。この分散モード・スピーカは、このレンジのうちのできるだけ多くの部分(すなわち、80Hzから20kHzまで、あるいは100Hzから20kHzまで)にわたるサウンドを発生させる。分散モード・スピーカによって提供される音圧レベルは、この場合も上で記載したのと同様にして、あるいはこのピアノが演奏される音楽堂や聴取室の音響特性に応じて従来式コーン・スピーカが発生させる音圧レベルと比べてより低くなるように調整されることがあり、また分散モード・スピーカの出力は従来式コーン・スピーカの音圧レベルに対して実質的に同じ音圧レベルを有することや、これよりさらに高い音圧レベルを有することがある。分散モード・スピーカの音圧レベルを従来式コーン・スピーカの音圧レベルと独立に変更可能とするには、分散モード・スピーカとコーン・スピーカに対して独立したボリューム制御を設けることが好ましい、ただしこれらは図面には図示していない。
【0147】
ピアノが演奏されているときに、分散モード・スピーカと従来式スピーカは同時に駆動を受ける。その結果、分散モード・スピーカおよび従来式コーン・スピーカがそれぞれに伝播させる異なる空気じょう乱パターンが複合されてこの異なるパターン間の相互作用がランダムに変化することに起因して複雑さやリッチさを有する空気じょう乱パターンが生成され、これにより、いずれか一方のタイプのスピーカが個々に発生させるとした場合と比較して実質的によりリッチなサウンドを発生させることができる。さらに、このリッチさは分散モード・スピーカを駆動するために使用される信号が従来式スピーカを駆動するために使用される信号と異なるという意味で強調される。
【0148】
さらに、上述の実験に関連して説明したように、分散モード・スピーカと従来式コーン・スピーカのこの組み合わせによって空間広大性に関する改良が達成される。
【0149】
この実施形態では、グランドピアノの2つの異なるモデルからのサンプルを利用しているが、3つ以上の異なるグランドピアノからのサンプル(この場合、スピーカのうちの異なるスピーカがそれぞれ異なる組のサンプルから導出された信号によって駆動されることもあり得る)を利用することによって一層のリッチさを達成することができる。さらに、SteinwayやYamahaのサンプル以外のサンプルを使用することがあり、また利用されるサウンド・ライブラリは、これら両者が目下のところ最新技術を考慮に入れて利用可能な最大サンプル数を包含するようにすることがある(また、最高品質機器の場合では、このようであることが好ましい)。より具体的には、コンピュータ・メモリの容量が増加しかつコストが低下するに従って、益々多くのサンプルを包含したサウンド・ライブラリを提供することが可能となり、したがってサウンドの品質が益々向上する可能性がある。
【0150】
ディジタル式アップライトピアノ
図28を参照すると、図26および27のピアノが発生させるサウンドと比べてより品質が低いサウンドを発生させることがあるが、コストはより低いことがあるようなディジタル式アップライトピアノは、1対の分散モード・スピーカ253ならびに1対の従来式コーン・スピーカ254を支持しているバックパネル252を有するケーシング251を備えている。この実施形態では、上の実施形態と異なり、コストを低減させるために、設けているコーン・スピーカは2つだけである。分散モード・スピーカ253はケーシング251のバックパネル252の面と平行の向きに設けられている。この2つの従来式スピーカ254のコーンは、コーンの軸がバックパネル252の面と直交するように方向付けされている。
【0151】
図29は、図28のピアノのブロック概要図である。上の実施形態と異なり、コストの節減のために、サウンド・ライブラリ262およびサウンド発生モジュール260を備えた単一のオーディオ信号発生器230だけが設けられている。発生器230は、赤外線ピックアップ207およびフットペダル・スイッチ207から受け取った信号に基づいて、サウンド・ライブラリ262を用いて音響信号を発生させている。
【0152】
上の実施形態の場合と同様に、分散モード・スピーカ253および従来式コーン・スピーカ254は、増幅器245、247を介して同時に駆動を受けるように配置させ、電子ピアノに対して分散モード・スピーカ253および従来式スピーカ254によるサウンド出力の合成にあたる空気じょう乱パターンを生成させ、これにより上で説明したような音響機器が発生させるサウンド伝播に対する類似をより緊密にすることができる。さらに、図29から明らかであるようにこれら2つのコーン・スピーカ254は同一のものであるため比較的制限された周波数レンジを有するものと仮定しているためにクロスオーバー回路を全く含めていないが、分散モード・スピーカの周波数レンジは従来式コーン・スピーカの周波数レンジとできるだけ深く重複させ、実験に関連して上で検討したようにサウンドの空間広大性を強調させるべきである。図28および29の実施形態によって発生させるサウンドの品質は図26および27の実施形態によって発生させるサウンドの品質と同程度にすることはできないが、構成要素の品質を適当にすれば、図28および29の実施形態であっても多くの目下のところ入手可能なディジタル式ピアノと比べてより高い全体的品質を達成することも可能である。
【0153】
ある種の追加的な改良を提供するために、図29の回路に対する修正について図30に表している。この図では、発生器230、260が発生させた音響信号がディジタル式信号処理ユニットなどの信号修正ユニット265に送られ、この信号修正ユニット265はコーン・スピーカ254を駆動させる増幅器247に送られて修正済み信号を発生させている。信号修正ユニット265は、サウンド発生ユニット260が出力した音響信号のタイミングおよび音質を変更するように配置させることがある。この信号修正ユニット265は、サウンド発生ユニット260が出力した信号を修正する方式のユーザによる選択を可能にしている従来式のユーザインタフェース(図示せず)を含んでいる。この方式によれば、コーン・スピーカを駆動する信号の品質が分散モード・スピーカを駆動する信号の品質と異なるため、サウンドのリッチさをある程度まで強調することができる。所望であれば、追加的な信号修正ユニットをサウンド発生モジュール260と分散モード・スピーカを駆動する増幅器245との間に配置させ、さらにリッチさを導入することも可能である。
【0154】
上の3つの実施形態では、分散モード・スピーカの対と従来式スピーカの対とを介してサウンドが出力されるように記載したが、空気じょう乱パターンに関する同様のランダムな混合は、単一の分散モード・スピーカおよび単一のコーン・スピーカを介して同じ音に対応したサウンドを同時に出力することにより達成可能であることを理解されたい。
【0155】
上の実施形態では、キーの動きを検出するための赤外線式運動検出システムが赤外線式の運動検出を利用するように記載したが、キーの押下を検出するために別の手段が使用されることもあり、たとえば、キー起動の位置、圧力および速度を検出するため電気機械的運動検出システムを使用することも可能である。
【0156】
ディジタル式ピアノ向けの補助ユニット
多くの人々がすでに自分でディジタル式ピアノを所有している。図31は、本発明を具現化したピアノを形成するために補助ユニット302に接続させた従来式ディジタル式ピアノ300を表している。
【0157】
図4で分かるように、補助ユニット302は、目下のところ入手可能なディジタル式ピアノ上に従来式に設けられているケーブル310およびプラグ312を介してMIDI信号出力314に接続されているオーディオ信号発生器(上で記載したものと同様のもの)からの信号を受け取る増幅器306によって駆動される分散モード・スピーカ304を備えている。
【0158】
従来式ディジタル式ピアノ300は、ウーファ318、ミッドレンジ・ユニット320およびツイータ322を備えた3ウェイ従来式コーン・スピーカ・システム316を含んでいる。従来式クロスオーバー回路(図示せず)を介して駆動を受け、これにより可聴周波数レンジ(すなわち、20Hzから20kHzまで)の実質的に全周波数を発生させるように動作可能である。分散モード・スピーカ304は、スピーカ・システム316が発生させる周波数レンジ(たとえば100Hzから20kHzまで)のうちのかなりの部分にわたる周波数を発生させるように動作可能である。
【0159】
図31では図示していないが、従来式ディジタル式ピアノ300は典型的には良質のコンサート用グランドから記録されたサンプルからなるサウンド・ライブラリを用いて動作する。オーディオ信号発生器230も、図26および27の実施形態に関連して説明した理由によって、好ましくは良質のコンサート用グランドの別のモデルから記録されたサンプルを包含するサウンド・ライブラリを包含している。
【0160】
補助ユニット302は、購入者が所有している既存のディジタル式ピアノに接続できるようにディジタル式ピアノとは別に製作されて販売されることがある。補助ユニット302をディジタル式ピアノの既存のMIDI出力に単に接続すること、ならびにディジタル式ピアノのボリューム制御が、分散モード・スピーカ304によって発生しているサウンドに加えて従来式スピーカ・システム316によってサウンドが発生されるようなレベルに確実に設定されるようにすること、によって本発明の恩恵を達成することができる。
【0161】
変形形態および修正形態
上の説明から理解できるように、本発明は広範なさまざまな方法で具現化することができる。上述したものに関する多くの別の修正形態または変形形態も本発明の趣旨の域内とすることができる。
【0162】
たとえば、本発明は公衆用拡声システム、劇場や映画館内のサウンド・システム、車両内エンターテイメント・システム、あるいは記録または放送配信用スタジオ内の監視システムにおいて具現化されることがある。
【0163】
ディジタル式ピアノ以外にも、本発明は、エレキギターなどの別の電気または電子音響機器からのサウンドを再生するために利用されることがある。
【0164】
上で記載しかつ図示した実施形態の各々では従来式コーン・スピーカを利用しているが、少なくともある種の状況では、これに代えてバイブレータ運動をさせるように装着されかつ圧電式トランスジューサによる駆動を受けるフラットパネルや膜を備えた静電式スピーカや圧電式スピーカなどのピストン式スピーカの代替的形態を使用することも可能である。しかし大部分の状況では、電磁駆動式のコーン・スピーカとすることが好ましい。
【0165】
図8〜24のサウンド再生装置の実施形態のすべてにおいてステレオ音響式装置を図示しているが、これらの実施形態のいずれも単一のチャンネルのモノ装置に修正することが可能である。すでに説明したように、本発明の効果はモノ用途においても達成される。
【0166】
上において、ピストン式スピーカに加えられる信号を基準として分散モード・スピーカに加えられる信号に遅延を導入することを記載してきた。この遅延は、図面を参照しながら記載した実施形態のいずれかの形で、また別の任意の実施形態で設けることができる。遅延を設けている場合、これは本発明が展開される状況に適合するようにユーザによって調節可能となっていることが好ましい。
【0167】
さらに、分散モードおよび/またはピストン式スピーカに加えられる信号に対してたとえば残響、均等化、または別の効果を提供するための追加的な同様の処理を設けることも可能である。
【0168】
上述の多くの実施形態に関する説明において、さまざまな好ましい周波数レンジおよび相対出力レベルについて提供してきた。これらは単に例示であって、多くの変形形態が可能であることを理解すべきである。しかし、分散モードの1つまたは複数のスピーカの周波数レンジをピストン式の1つまたは複数のスピーカの周波数レンジと重複させることが重要である。さらに、多くの場合(特に、本発明を具現化しているサウンド再生システム)では、分散モード・スピーカの音圧レベルをコーン・スピーカの音圧レベルと比べて若干小さくする(たとえば数デシベルの差だけとする)ように配置させることによって最適な成果が達成されることになるが、分散モード・スピーカがコーン・スピーカと比べて実質的により低い音圧レベルを発生させる場合に改良が達成される(ただしもちろん、分散モード・スピーカの圧力レベルはあまり低くないためこれにより発生させるサウンドは知覚不可能である)。これらの実験では、コーン・スピーカに対して分散モード・スピーカの音圧レベルを−35デシベル程度に低くすることによっても依然として(ただし、このレベルでは最低限であるが)知覚可能な改良が達成される。
【0169】
ある種の状況では、分散モード・スピーカが発生させる音圧レベルをピストン式スピーカが発生させる音圧レベルより大きくすることが望ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生しようとするサウンドを表す電気信号によって分散モード・スピーカ手段とピストン式スピーカ手段を同時に駆動する工程であって、分散モード・スピーカ手段およびピストン式スピーカ手段が動作する周波数レンジが可聴周波数レンジの少なくとも一部分内で重複している駆動工程を含むサウンド発生処理過程。
【請求項2】
前記分散モード・スピーカおよびピストン式スピーカは実質的に同じ周波数レンジ範囲にわたって動作する請求項1に記載の処理過程。
【請求項3】
前記分散モード・スピーカは前記ピストン式スピーカと比べてより狭いレンジにわたって動作する請求項1に記載の処理過程。
【請求項4】
前記分散モード・スピーカの周波数レンジはその全体が前記ピストン式スピーカの周波数レンジの内部にある請求項3に記載の処理過程。
【請求項5】
前記分散モード・スピーカは少なくとも100から1,000Hzまでの周波数レンジにわたって動作する請求項1に記載の処理過程。
【請求項6】
前記分散モード・スピーカは少なくとも200から2,000Hzまでの周波数レンジにわたって動作する請求項1に記載の処理過程。
【請求項7】
前記分散モード・スピーカはその上限が6,000Hzを下回らない周波数レンジにわたって動作する請求項1に記載の処理過程。
【請求項8】
前記分散モード・スピーカは、該分散モード・スピーカがその帯域にわたっては動作しない周波数帯域によって分離されているが、そのうちの少なくとも一方が前記ピストン式スピーカの周波数レンジの少なくとも一部分と重複するような第1および第2の周波数レンジにわたって動作している請求項1に記載のサウンド発生処理過程。
【請求項9】
前記分散モード・スピーカ手段が発生させる音圧レベルは前記ピストン式スピーカ手段が発生させる音圧レベルと比べてより小さい請求項1乃至8のいずれか1項に記載の処理過程。
【請求項10】
前記分散モード・スピーカ手段が発生させる音圧レベルは前記ピストン式スピーカ手段が発生させる音圧レベルと比べて5±3デシベルだけ小さい請求項9に記載の処理過程。
【請求項11】
前記分散モード・スピーカ手段が発生させるサウンドは前記ピストン式スピーカ手段が発生させるサウンドと比較して遅延を受けている請求項1乃至10のいずれか1項に記載の処理過程。
【請求項12】
前記遅延は80msecを超えない請求項11に記載の処理過程。
【請求項13】
前記遅延は35msecを超えない請求項12に記載の処理過程。
【請求項14】
前記分散モード・スピーカ手段はその設計パラメータの選択値に基づいて該分散モード・スピーカ手段の挙動に関する数学的計算を利用して設計されている請求項1乃至13のいずれか1項に記載の処理過程。
【請求項15】
そのサウンドが記録信号または放送配信信号から再生されている請求項1乃至14のいずれか1項に記載の処理過程。
【請求項16】
モノ・サウンドを発生させるために単一チャンネル内で実施されている請求項1乃至15のいずれか1項に記載の処理過程。
【請求項17】
ステレオ音響サウンドを再生するために2つのチャンネルで同時に実行されている請求項1乃至15のいずれか1項に記載の処理過程。
【請求項18】
サラウンドサウンド・システムのチャンネルの各々で同時に実行されている請求項1乃至15のいずれか1項に記載の処理過程。
【請求項19】
車両または輸送船において実行されている請求項1乃至18のいずれか1項に記載の処理過程。
【請求項20】
ドメスティック環境で実行されている請求項1乃至18のいずれか1項に記載の処理過程。
【請求項21】
ピストン式スピーカおよび分散モード・スピーカと、再生しようとするサウンドを表す電気信号によって前記スピーカを駆動するための回路手段と、を備えたスピーカ・アセンブリであって、前記スピーカが可聴周波数レンジの少なくとも一部分で重複する周波数レンジにわたって動作するようにしたスピーカ・アセンブリ。
【請求項22】
前記分散モード・スピーカおよびピストン式スピーカは実質的に同じ周波数レンジ範囲にわたって動作可能である請求項21に記載のアセンブリ。
【請求項23】
前記分散モード・スピーカは前記ピストン式スピーカと比べてより狭いレンジにわたって動作可能である請求項21に記載のアセンブリ。
【請求項24】
前記分散モード・スピーカの周波数レンジはその全体が前記ピストン式スピーカの周波数レンジの内部にある請求項23に記載のアセンブリ。
【請求項25】
前記分散モード・スピーカは少なくとも100から1,000Hzまでの周波数レンジにわたって動作可能である請求項21に記載のアセンブリ。
【請求項26】
前記分散モード・スピーカは少なくとも200から2,000Hzまでの周波数レンジにわたって動作可能である請求項21に記載のアセンブリ。
【請求項27】
前記分散モード・スピーカはその上限が6,000Hzを下回らない周波数レンジにわたって動作可能である請求項21に記載のアセンブリ。
【請求項28】
前記分散モード・スピーカは、該分散モード・スピーカがその帯域にわたっては動作しない周波数帯域によって分離されているが、そのうちの少なくとも一方が前記ピストン式スピーカの周波数レンジの少なくとも一部分と重複するような第1および第2の周波数レンジにわたって動作可能である請求項21に記載のアセンブリ。
【請求項29】
前記分散モード・スピーカ手段は、前記ピストン式スピーカ手段が発生させる音圧レベルと比べてより小さい音圧レベルを発生させるように設計されている請求項21乃至28のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項30】
前記分散モード・スピーカ手段は、前記ピストン式スピーカ手段が発生させる音圧レベルと比べて5±3デシベルだけ小さい音圧レベルを発生させるように設計されている請求項29に記載のアセンブリ。
【請求項31】
前記分散モード・スピーカ手段が発生させるサウンドを前記ピストン式スピーカ手段が発生させるサウンドと比較して遅延させるための手段を含む請求項1乃至30のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項32】
前記遅延は80msecを超えない請求項11に記載のアセンブリ。
【請求項33】
前記遅延は35msecを超えない請求項12に記載のアセンブリ。
【請求項34】
少なくとも1つの信号源と、増幅器手段と、該増幅器手段によって駆動を受けるように設計した請求項21乃至33のいずれか1項に記載のスピーカ・アセンブリと、を備えるモノ音響式サウンド再生システム。
【請求項35】
請求項21乃至33のいずれか1項に記載の第1および第2のスピーカ・アセンブリと、前記スピーカを駆動させるために該第1および第2のスピーカ・アセンブリと接続された第1および第2のチャンネルを備えるステレオ音響式増幅器と、を備えたステレオ音響式サウンド再生装置。
【請求項36】
鍵盤と、ペダルと、該鍵盤およびペダルの起動に応答してピアノサウンドを表す電気信号を発生させるための手段と、前記電気信号によって駆動を受けるように設計した請求項21乃至33のいずれか1項に記載のスピーカ・アセンブリと、を備えるディジタル式ピアノ。
【請求項37】
再生しようとする音楽サウンドを表す電気信号を発生させるように動作可能な電気音響機器、ならびに前記電気信号によって駆動を受けるように設計した請求項21乃至33のいずれか1項に記載のスピーカ・アセンブリ。
【請求項38】
分散モード・スピーカ手段と、高インピーダンス入力手段および増幅器を備えた該高インピーダンス入力手段から導出された信号を増幅しかつ該分散モード・スピーカ手段を駆動するための回路と、を備える補助装置であって、請求項1に記載の処理過程を実行するために増幅器およびピストン式スピーカを備えたサウンド再生システムに接続させるように適合させた補助装置。
【請求項39】
前記回路は少なくとも1つのボリューム制御を含む請求項38に記載の装置。
【請求項40】
第1および第2の分散モード・スピーカ手段を備えると共に、前記回路は、請求項1に記載の処理過程を実行するためにステレオ音響式増幅器ならびに少なくとも第1および第2のピストン式スピーカを備えたステレオ音響式サウンド再生システムへの該補助装置の接続を可能にさせるための第1および第2のチャンネルを備えている請求項38または39に記載の装置。
【請求項41】
信号源、増幅器および少なくとも1つのピストン式スピーカ手段を備えた既存のサウンド再生システムを修正するための処理過程であって、請求項1乃至20のいずれか1項に記載の処理過程の動作にシステムを適合させるために分散モード・スピーカ手段を前記システムに接続することを含む処理過程。
【請求項42】
ピストン式スピーカ手段を備えたディジタル式ピアノを修正するための処理過程であって、請求項1乃至20のいずれか1項に記載の処理過程の動作にディジタル式ピアノを適合させるためにディジタル式ピアノに分散モード・スピーカ手段を接続することを含む処理過程。
【請求項43】
ピストン式スピーカ手段を備えた電気機器を修正するための処理過程であって、請求項1乃至20のいずれか1項に記載の処理過程の動作に電子音響機器を適合させるために前記音響機器に分散モード・スピーカ手段を接続することを含む処理過程。
【請求項44】
少なくとも1つの信号源と、請求項21乃至33のいずれか1項に記載の少なくとも1つのスピーカ・アセンブリと、信号源からの信号を増幅し該増幅信号によって該スピーカ・アセンブリを駆動するための手段と、を備える自己完結型サウンド再生装置。
【請求項45】
左チャンネル手段および右チャンネル手段を備えたサウンドを示す信号を増幅するために増幅器であって、該チャンネル手段は分散モード・スピーカを駆動するための第1のチャンネルとピストン式スピーカを駆動するための第2のチャンネルとを備えている増幅器。
【請求項46】
ステレオ音響式信号発生デバイスの左側および右側出力への接続のための左側および右側入力と、該左側および右側入力に接続された加えられる信号をそれぞれバッファリングするための第1および第2のバッファ増幅器と、を備えた電気回路であって、前記バッファ増幅器のそれぞれはその出力をそれぞれ1対の追加的増幅器に接続させて有しており、前記増幅器対は左分散モード・スピーカおよび左ピストン式スピーカを駆動するための第1および第2の左チャンネル出力信号と右チャンネル分散モード・スピーカおよび右チャンネルピストン式スピーカをそれぞれ駆動するための第1および第2の右チャンネル出力信号とをそれぞれ提供するように動作可能である電気回路。
【請求項47】
各1対の増幅器によって提供される出力信号の相対レベルを調整するための手段を含む請求項46に記載の回路。
【請求項48】
ディジタル式ピアノに接続するための補助装置であって、該ディジタル式ピアノから鍵盤およびペダルの起動を示す信号を受け取るための入力と、ピアノサウンドのディジタル式ライブラリおよび入力信号に従って該ライブラリから信号を選択するための手段を備えた音響信号発生手段と、該ライブラリからの選択によって導出された信号を増幅するための増幅器と、該増幅器が発生させた信号によって駆動を受けるように適合させた分散モード・スピーカ手段と、を備える補助装置。
【請求項49】
境界によって画定された聴取空間内で、再生しようとするサウンドを表す信号によって駆動される少なくとも1つのスピーカが発生させるサウンドの空間広大性を強調する処理過程であって、合成音場を生成させるために前記信号によって少なくとも1つの別のスピーカを駆動する工程であって、少なくとも1つのパラメータの値が前記少なくとも1つのスピーカが単独で発生させる音場内のその値と異なり、前記値の差が空間広大性の強調のためになるような駆動工程を含む処理過程。
【請求項50】
前記パラメータはラテラル初期エネルギー比率であり、かつ前記差はその値の増分である請求項49に記載の処理過程。
【請求項51】
前記パラメータは聴覚間相互相関係数であり、かつ前記差はその値の増分である請求項49に記載の処理過程。
【請求項52】
境界によって画定された聴取空間内で、再生しようとするサウンドを表す信号によって駆動される少なくとも1つのスピーカが発生させるサウンドの空間広大性を強調する処理過程であって、合成音場を生成させるために前記信号によって少なくとも1つの別のスピーカを駆動する工程であって、少なくとも1つのパラメータの値が前記少なくとも1つのスピーカが単独で発生させる音場内のその値と比較してラテラル初期エネルギー比率の値が増加し、かつ聴覚間相互相関係数の値が減少するような駆動工程を含む処理過程。
【請求項53】
鍵盤、ペダル、ならびに該鍵盤およびペダルの起動に応答して前記起動を表す制御信号を発生させる制御信号発生器を有するディジタル式ピアノにおいて、
前記制御信号に応答して、その各々が前記起動を表しており、かつその各々が互いに異なる第1および第2のピアノのそれぞれが発生させるサウンドを表すようにサウンドをそれぞれモデル化している第1および第2の駆動用信号を発生させる駆動用信号発生器と、
前記第1の駆動用信号による駆動を受けるように設計されると共に、第1のタイプの空気じょう乱パターンを発生させることによってサウンドを伝播するように動作可能である少なくとも1つの第1のスピーカと、
前記第1のスピーカと同時に前記第2の駆動用信号による駆動を受けるように設計されると共に、第2のタイプの空気じょう乱パターンを発生させることによってサウンドを伝播するように動作可能である少なくとも1つの第2のスピーカと、
を備えるようにした改良。
【請求項54】
前記少なくとも1つの第1のスピーカは分散モード・スピーカであり、かつ前記少なくとも1つの第2のスピーカはサウンドを伝播するためのピストン式に移動可能な素子を備える請求項53に記載の改良。
【請求項55】
前記少なくとも1つの第1のスピーカは分散モード・スピーカであり、かつ前記少なくとも1つの第2のスピーカはコーン・スピーカである請求項53に記載の改良。
【請求項56】
鍵盤と、ペダルと、該鍵盤およびペダルの起動に応答して前記起動を表す制御信号を発生させる信号発生器と、を有するディジタル式ピアノにおいて、
グランドピアノの第1のモデルからのサウンドを表すディジタル式サンプルを備えた第1のライブラリと、
前記制御信号に応答して前記起動を表しかつ前記第1のライブラリの前記ディジタル式サンプルから導出された第1の駆動用信号を発生させる第1の駆動回路と、
グランドピアノの第2のモデルからのサウンドを表すディジタル式サンプルを備えた第2のライブラリと、
前記制御信号に応答して前記起動を表しかつ前記第2のライブラリの前記ディジタル式サンプルから導出された第2の駆動用信号を発生させる第2の駆動回路であって、該第1および第2の駆動回路は前記それぞれ第1および第2の駆動用信号を同時に発生させている第2の駆動回路と、
前記第1の駆動用信号による駆動を受けるように設計した少なくとも1つの分散モード・スピーカと、
前記第2の駆動用信号による駆動を受けるように設計した少なくとも1つのコーン・スピーカと、
を備えるようにした改良。
【請求項57】
鍵盤と、ペダルと、該鍵盤およびペダルの起動に応答して前記起動を表す制御信号を発生させる信号発生器と、を有するディジタル式ピアノにおいて、
グランドピアノからのサウンドを表すディジタル式サンプルを備えるライブラリと、
前記制御信号に応答して前記起動を表しかつ前記ライブラリの前記ディジタル式サンプルから導出された駆動用信号を発生させる駆動回路と、
前記駆動用信号による駆動を受けるように設計した少なくとも1つの分散モード・スピーカと、
前記少なくとも1つの分散モード・スピーカと同時に前記駆動用信号による駆動を受けるように設計した少なくとも1つのコーン・スピーカと、
を備えるようにした改良。
【請求項58】
鍵盤と、ペダルと、該鍵盤およびペダルの起動に応答して前記起動を表す制御信号を発生させる信号発生器と、を有するディジタル式ピアノにおいて、
グランドピアノからのサウンドを表すディジタル式サンプルを備えるライブラリと、
前記制御信号に応答して、前記起動を表しかつ前記ディジタル式サンプルから導出された第1の駆動用信号を発生させると共に、前記起動を表しかつ前記ディジタル式サンプルから導出された第2の駆動用信号を発生させる駆動回路であって、前記第2の駆動用信号は第1の駆動用信号に対してその少なくとも1つのパラメータが修正されている駆動回路と、
前記駆動用信号のうちの一方による駆動を受けるように設計した少なくとも1つの分散モード・スピーカと、
前記少なくとも1つの分散モード・スピーカの前記駆動と同時に前記駆動用信号のうちのもう一方による駆動を受けるように設計した少なくとも1つのコーン・スピーカと、
を備えるようにした改良。
【請求項59】
鍵盤と、ペダルと、該鍵盤およびペダルの起動に応答して前記起動を表す制御信号を発生させる信号発生器と、少なくとも1つのグランドピアノからのサウンドを表すディジタル式サンプルを備える少なくとも1つのライブラリと、前記制御信号に応答して前記起動を表しかつ前記少なくとも1つのライブラリの前記ディジタル式サンプルから導出された駆動用信号を発生させる駆動回路と、を有するディジタル式ピアノにおいて、
前記駆動用信号による駆動を受けるように設計されると共に、第1のタイプの空気じょう乱パターンを発生させることによってサウンドを伝播するように動作可能である少なくとも1つの第1のスピーカと、
前記第1のスピーカと同時に前記駆動用信号による駆動を受けるように設計されると共に、第2のタイプの空気じょう乱パターンを発生させることによってサウンドを伝播するように動作可能である少なくとも1つの第2のスピーカと、
を備えるようにした改良。
【請求項60】
音符に対応したキーを備えた鍵盤と、
該鍵盤に接続されると共に該鍵盤の起動に応答して対応する駆動用信号を発生させる信号発生器と、
該信号発生器に接続されると共に該信号発生器の駆動用信号に応答して音符に対応するサウンドを発生させる第1のサウンド発生ユニットであって、パネル・スピーカならびに音響信号に応答して該パネル・スピーカ内に共鳴振動を誘導する少なくとも1つのトランスジューサを備えている第1のサウンド発生ユニットと、
該信号発生器に接続されると共に前記第1のサウンド発生ユニットと同時に該信号発生器の駆動用信号に応答して音符に対応するサウンドを発生させる第2のサウンド発生ユニットであって、少なくとも1つのコーン・スピーカを備えている第2のサウンド発生ユニットと、
を備える電子機器。
【請求項61】
前記第1および第2のサウンド発生ユニットは前記信号発生器からの同一の駆動用信号を受け取るように動作可能であり、前記第1および第2のサウンド発生ユニットは前記駆動用信号の受け取りに応答してサウンドを発生させている請求項60に記載の電子機器。
【請求項62】
前記第1のサウンド発生ユニットは第1のレンジのサウンド周波数にわたるサウンドを発生させるように動作可能であり、かつ前記第2のサウンド発生ユニットは第2のレンジのサウンド周波数にわたるサウンドを発生させるように動作可能であり、前記第1および第2の周波数レンジのかなりの部分が重複している請求項60に記載の電子機器。
【請求項63】
前記信号発生器は、該鍵盤の起動に応答して、第1のピアノが該第1のピアノの該鍵盤の対応する起動に応答して発生させるサウンドを示す第1の駆動用信号、ならびに第2のピアノが該第2のピアノの該鍵盤の対応する起動に応答して発生させるサウンドを示す第2の駆動用信号を発生させており、前記第1のサウンド発生ユニットは前記第1の駆動用信号に対応したサウンドを発生させるように応答しており、前記第2のサウンド発生ユニットは前記第2の駆動用信号に対応したサウンドを発生させるように応答している請求項62に記載の電子機器。
【請求項64】
前記信号発生器は、信号修正器を介して前記第1のサウンド発生ユニットと前記第2のサウンド発生ユニットの一方に接続されており、該信号修正器は前記信号発生器が発生させる駆動用信号のタイミング、音質、残響およびボリュームのうちの少なくとも1つを修正して修正済信号を発生させるように動作可能であり、前記第1のサウンド発生ユニットと前記第2のサウンド発生ユニットのうちの前記一方は前記修正済信号に応答して音符に対応するサウンドを発生させるように応答している請求項60に記載の電子機器。
【請求項65】
前記第1のサウンド発生ユニットは1つまたは複数の分散モード・スピーカを備える請求項60に記載の電子機器。
【請求項66】
前記第2のサウンド発生ユニットは、
その各々が規定された周波数レンジの域内のサウンドを出力するように動作可能である複数のコーン・スピーカと、
前記信号発生器から駆動用信号を受け取り、かつ規定された周波数レンジの域内の駆動用信号を前記複数のコーン・スピーカのうちの選択したスピーカに送るように動作可能であるクロスオーバー・ユニットと、
を備える請求項60に記載の電子機器。
【請求項67】
前記第1および第2のサウンド発生ユニットのそれぞれは、前記サウンド発生ユニットによる異なる周波数を有するサウンドの出力を等化するように動作可能なイコライザーを備えている請求項60に記載の電子機器。
【請求項68】
鍵盤楽器のサウンドをシミュレートする方法であって、
音符に対応したキーを備えた鍵盤を提供する工程と、
前記鍵盤の起動に応答して対応する駆動用信号を発生させる信号発生器を提供する工程と、
前記鍵盤を起動させて対応する駆動用信号を発生させる工程と、
前記発生させた駆動用信号を利用して、平面状のサウンドボードおよび前記サウンドボード内に共鳴振動を誘導するように前記音響信号に応答するトランスジューサを備える第1のサウンド発生ユニットと、コーン・スピーカを備える第2のサウンド発生ユニットと、を同時に起動させる工程と、
を含む方法。
【請求項69】
前記同じ駆動用信号は、前記第1のサウンド発生ユニットと前記第2のサウンド発生ユニットの両者を起動してサウンドを発生させるために利用されている請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記第1および前記第2のサウンド発生ユニットは第1および第2のサウンド周波数レンジを有するサウンドを発生するように起動されており、前記第1および第2の周波数レンジのかなりの部分が重複している請求項69に記載の方法。
【請求項71】
駆動用信号の前記発生は、前記提供された鍵盤に合わせた前記ピアノの該鍵盤の対応する起動に応答して第1および第2のピアノのサウンドを示す第1および第2の駆動用信号の発生を含んでおり、サウンドを出力させるために前記第1の駆動用信号が前記第1のサウンド発生ユニットによって利用されかつ前記第2の駆動用信号が前記第2のサウンド発生ユニットによって利用されている請求項69に記載の方法。
【請求項72】
発生させた駆動用信号の前記利用は、発生させた駆動用信号のタイミング、残響およびボリュームのうちの少なくとも1つを修正し該修正済信号を利用して前記第1と第2のサウンド発生ユニットのうちの一方を起動させること、ならびに前記未修正の信号を利用して前記サウンド発生ユニットのもう一方を起動させることを含む請求項68に記載の方法。
【請求項73】
前記第1のサウンド発生ユニットは1つまたは複数のNXTスピーカを備えている請求項68に記載の方法。
【請求項74】
前記第2のサウンド発生ユニットは、異なる周波数の駆動用信号を前記複数のスピーカのうちの選択したスピーカに選択的に適用するための複数のコーン・スピーカおよびクロスオーバー・ユニットを備えていると共に、該方法は、異なる周波数の前記音響信号を選択を使用して前記複数のスピーカを起動する一方で、同時に前記複数のスピーカの起動に利用されるものに対応する周波数を有する信号によって前記少なくとも1つのトランスジューサを起動することを含む請求項68に記載の方法。
【請求項75】
前記第1および第2のサウンド発生ユニットの周波数応答が前記サウンド発生ユニットによって出力される周波数レンジにわたって実質的に一定となるように、前記第1および第2のサウンド発生ユニットの起動に利用される音響信号を等化することをさらに含む請求項74に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2009−189027(P2009−189027A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66198(P2009−66198)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【分割の表示】特願2004−567034(P2004−567034)の分割
【原出願日】平成15年1月22日(2003.1.22)
【出願人】(505277646)
【Fターム(参考)】