説明

サクシノイルトレハロース脂質組成物、その溶液、ならびに乳化組成物およびその製造方法

【課題】白色であり、水性の溶媒に容易に溶解し、無色透明の水溶液となり得る、固形のサクシノイルトレハロース脂質(STL)組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る固形のSTL組成物は、炭素源を含む培地中で微生物を培養し、該培地を独自の精製方法により精製することによって取得し得、白色であり、水性の溶媒に容易に溶解し、無色透明の水溶液となり得、水性成分および油性成分とともに安定したエマルションを形成し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオサーファクタントに関するものであり、特に、サクシノイルトレハロース脂質(STL:Succinoyl Trehalose Lipid)組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微生物が作り出す機能性物質であるバイオサーファクタントは、疎水性部分と親水性部分とを有する両親媒性物質である。特に、糖脂質型のバイオサーファクタントは、優れた生分解性を示す天然の界面活性剤として注目されており、さらに高い保湿効果および乳化作用を示すため、化粧品、食品等の添加剤としても用いられ得ることが知られている(非特許文献1)。
【0003】
糖脂質型のバイオサーファクタントの一つとして、サクシノイルトレハロース脂質がある。サクシノイルトレハロース脂質は、次のような手法により取得される。
【0004】
特許文献1および非特許文献2では、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)SD−74株を、脂肪酸または植物油脂を含む培地中で好気的に培養することによって、サクシノイルトレハロース脂質混合物を生産している。また、特許文献2においては、ロドコッカス エスピー(Rhodococcus sp.)TB−42株を、不飽和炭化水素、ハロゲン炭化水素等を含む培地中で好気的に培養することによって、サクシノイルトレハロース脂質混合物を生産している。
【0005】
このように、サクシノイルトレハロース脂質は、炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られるため、不純物が混ざった混合物として生産される。化粧品、食品等に用いる場合は、上記混合物を精製することが好ましい。特に、脱水および脱油を施し、固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物を得ることは、保存、輸送、使用等の観点から見ても好ましい。
【0006】
例えば、非特許文献3では、サクシノイルトレハロース脂質混合物を含む培養液から菌体、残存基質等を除去した後、培養液を酸性にすることでサクシノイルトレハロース脂質を析出させている。そして、この酸析物を水で2回洗浄後にメタノールに溶解させ、この溶液をヘキサンにより3回洗浄した後に、メタノールを留去することによって、固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物を回収している。
【特許文献1】特開昭62−83896号公報(1987年4月17日公開)
【特許文献2】特開平10−72478号公報(1998年3月17日公開)
【非特許文献1】Y.Ishigamiら、J.Jpn.Oil Chem.Soc.,36(11):847−851(1987)
【非特許文献2】Y.Uchidaら、Agric.Biol.Chem.,53(3):765−769(1989)
【非特許文献3】Y.Uchidaら、Agric.Biol.Chem.,53(3):757−763(1989)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の手法により取得された固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、薄茶色であった。有色のサクシノイルトレハロース脂質組成物を化粧品、食品等の添加剤として用いる場合、これらの製品を不必要に着色してしまい好ましくない。
【0008】
また、本発明者らが検討した結果、従来の手法により取得された固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、水性の溶媒にほとんど溶解せず、得られた溶液も濁っていることを見出した。すなわち、従来の固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、水溶液として利用することは困難であった。そのため、機械攪拌等の手法により乳化組成物を得ることも困難であった。
【0009】
以上のように、従来の手法により取得された固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、(1)有色であり、(2)水性の溶媒にほとんど溶解せず、(3)該組成物を含む溶液を濁らせるという問題を有していた。
【0010】
本発明には、上記の問題に鑑みてなされたものであり、上記の問題の少なくとも何れか一つが解消された、高品質なサクシノイルトレハロース脂質組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、独自の精製方法により得られた固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物において、上記問題が解消されていることを見出し、発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、以下(A)〜(E)の何れか一つ以上を特徴としている:(A)炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られ、水に少なくとも1質量%溶解し得る;(B)炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られ、白色である;(C)メタノールに5質量%溶解させたときの溶液の吸光度が、波長400nm〜700nmの領域にわたって0.05以下である;(D)水に少なくとも5質量%溶解し得る;または(E)水に1質量%溶解させたときの水溶液の波長660nmにおける光透過率が95%以上である。
【0013】
本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、上記のような特徴を有しており、少なくとも、白色であるか、水性の溶媒に容易に溶解するか、または、水性の溶媒に溶解させたとき透明な溶液となる。したがって、水溶液として扱うことが可能であり、任意の製品の添加剤として用いた場合であっても該製品に不要な着色をしないため、様々な用途に好適に用いることができる。
【0014】
本発明に係るサクシノイルトレハロース脂質溶液は、本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物が溶媒に溶解されてなることを特徴としている。上記溶媒は、水性の溶媒であってもよい。
【0015】
本発明に係るサクシノイルトレハロース脂質溶液はまた、炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られるサクシノイルトレハロース脂質が、1質量%以上、水性の溶媒に溶解されてなるものであり得る。
【0016】
上記サクシノイルトレハロース脂質溶液は、該サクシノイルトレハロース脂質が5質量%以上、上記水性の溶媒に溶解されているものであり得る。
【0017】
上記サクシノイルトレハロース脂質溶液は、波長660nmにおける光透過率が95%以上であり得る。
【0018】
以上のように、本発明に係るサクシノイルトレハロース脂質溶液は、水性の溶媒にサクシノイルトレハロース脂質が溶解しており、透明である。したがって、水溶液であり、任意の製品の添加剤として用いた場合であっても該製品に不要な着色をしないため、様々な用途に好適に用いることができる。
【0019】
上記サクシノイルトレハロース脂質溶液は、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンをさらに含有することが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、サクシノイルトレハロース脂質を水性の溶媒に好適に溶解させることができる。
【0021】
本発明に係る乳化組成物は、本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質と、水性成分と、油性成分とを含んでいることを特徴としている。
【0022】
上記の構成によれば、乳白色の安定した乳化組成物を提供することができる。
【0023】
本発明に係る乳化組成物の製造方法は、本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質を水性の溶媒に溶解してサクシノイルトレハロース脂質水溶液を調製する工程、および該サクシノイルトレハロース脂質水溶液と、油性成分とを乳化する工程を包含することを特徴としている。
【0024】
上記の構成によれば、本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質は、容易に水性の溶媒に溶解し得るので、容易に乳化組成物を製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、少なくとも、白色であるか、水性の溶媒に容易に溶解するか、または、水性の溶媒に溶解させたとき透明な溶液となる。したがって、水溶液または乳化組成物として扱うことが可能であり、任意の製品の添加剤として用いた場合であっても該製品に不要な着色をしないため、様々な用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
〔1:固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物〕
本発明は、固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物を提供する。本明細書において用いられる場合、用語「組成物」とは、各種成分が一物質中に含有されている形態が意図され、「サクシノイルトレハロース脂質組成物」とは、サクシノイルトレハロース脂質を一成分とする組成物が意図される。一実施形態において、サクシノイルトレハロース脂質は、サクシノイルトレハロース脂質組成物に50質量%以上含まれていればよく、80質量%以上含まれていることが好ましく、90質量%以上含まれていることがより好ましい。また、用語「固形」とは、粉状、顆粒状等を含む、一定の形状を有している物質の性質が意図され、「固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物」とは、サクシノイルトレハロース脂質を一成分とする組成物であって、一定の形状を有しているものが意図される。
【0027】
一実施形態において、本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られる。
【0028】
本明細書中で使用する限り、「微生物」は、サクシノイルトレハロース脂質を生産し得る微生物であることが意図される。このような微生物は、特に限定されないが、ロドコッカス属に属する微生物であることが好ましく、ロドコッカス・エリスロポリス SD−74株、ロドコッカス・エスピー TB−42株、またはロドコッカス・バイコヌレンシス NBRC 100611株であることが好ましい。
【0029】
本明細書中で使用する限り、「炭素源」とは、上記微生物が培養中に吸収利用する炭素化合物であり、特に天然油脂、炭化水素、脂肪酸、脂肪酸エステル、または高級アルコールであることが好ましい。ここで、炭素化合物は、炭素と水素、窒素等との化合物が意図される。一実施形態において、本発明に係る製造方法において用いられる炭素源は天然油脂であり得、動物油脂であっても植物油脂であってもよいが、入手がより容易であるため、植物油脂であることが好ましい。上記製造方法において用いられる植物油脂は、例えばパーム油、ヤシ油、大豆油、オリーブ油、サフラワー油、菜種油、トウモロコシ油、綿実油、トール油等であることが好ましいが、これに限定されない。
【0030】
また、炭素源として用いる炭化水素としては、n−デカン、n−ウンデカン、n−トリデカン、n−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカン、n−ノナデカン等のノルマルアルカン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン等のノルマルアルケン、等を好適に使用することが可能である。
【0031】
炭素源として用いる脂肪酸としては、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸(ラウリン酸)、トリデカン酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、オレイン酸等を好適に使用することが可能である。また、脂肪酸エステル、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール(ラウリルアルコール)等の高級アルコールを炭素源として用いてもよい。
【0032】
一つの局面において、炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られるサクシノイルトレハロース脂質は、糖部分がトレハロースであり、トレハロース1モル当りコハク酸および脂肪酸がそれぞれ1〜2モルエステル結合した糖脂質である。この糖脂質の脂肪酸部分は、培養基質である炭素源を変えることによって、それぞれ異なった脂肪酸が結合する。
【0033】
一実施形態において、本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、白色であり得る。一つの局面において、本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物をメタノールに5質量%溶解させた溶液は、可視光領域(波長400nm〜700nmの領域)にわたって、吸光度が0.15を超えることがなく、好ましくは0.1を超えることがなく、より好ましくは0.05を超えることがない。なお、上記吸光度は分光光度計(UV−2550、島津製作所)によって測定された値である。
【0034】
一方、従来技術に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、薄茶色であり(非特許文献3参照)、白色ではなかった。従来技術に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物をメタノールに5質量%溶解させた溶液は、波長が400nm〜550nmの領域において吸光度が0.05を超え、波長が400nm〜450nmの領域において吸光度が0.1を超え、波長が400nm〜420nmの領域において吸光度が0.15を超えていた。
【0035】
本実施形態に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、白色であるので、様々な用途に好適に用いることができる。例えば、食品、化粧品等の添加剤として本実施形態に係る組成物を用いた場合、食品、化粧品等を不要に着色しないため、好適に用いることができる。
【0036】
一実施形態において、本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、水性の溶媒に対する良好な可溶性を有している。一つの局面において、上記組成物は、水に少なくとも1質量%均質に溶解し得、好ましくは、3質量%、5質量%、7質量%、または7.5質量%均質に溶解し得る。一方、従来技術に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、後述するように、水に1質量%以上溶解しない。本実施形態に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、水に均質に溶解するため、水溶液として扱うことが可能であり、水を主成分とした食品または化粧品において好適に用いることができるが、用途はこれに限定されず、水溶液として用い得る用途であれば如何なる用途にも用い得る。
【0037】
さらに、一実施形態において、本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、後述するように、水に溶解させたとき無色透明の溶液となる。上記無色透明を、水溶液の濁度を示す指標として一般に用いられる波長660nmにおける光透過率によって表せば、該光透過率は、95%以上であり得、好ましくは97%以上であり得、より好ましくは99%以上であり得る。なお、上記光透過率は、上記サクシノイルトレハロース脂質組成物を純度が95%以上の水に1質量%溶解し、上記分光光度計を用いて、波長660nmでの光透過率を測定して得られる。
【0038】
後述する実施例において示すように、一実施形態において、本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物をpH7.0で水に1質量%溶解させたときの水溶液の、波長660nmにおける光透過率は99.5%となる。一方、従来技術に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、後述する実施例に示すように、水に1質量%混合したときの水溶液の、波長660nmにおける光透過率が4.8%となる。以上のように、本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、従来技術に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物と比べ、非常に透明度の高い溶液を形成し得る。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物を用いれば、後述するような無色透明のサクシノイルトレハロース脂質溶液を作製し得る。
【0040】
本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、一実施形態において、炭素源を含む培地中で微生物を培養する工程と、上記培養工程によって得られた生成物を析出させる析出工程と、上記析出工程によって得られた析出物からSTL組成物を抽出する抽出工程と、上記抽出工程によって得られた抽出物から脂溶性物質を取り除く脂溶性物質除去工程とを包含する製造方法により製造され得る。以下上記製造方法について詳細に説明する。
【0041】
(培養工程)
炭素源を含む培地中で微生物を培養する工程は慣用的な方法に従って行われ、炭素源を添加した培地に、必要に応じて窒素源、無機塩等の栄養分を添加してもよい。培地中に添加される炭素源としては、上述した各炭素源が好適に用いられ、培地中の炭素源の添加濃度は、5〜20質量%であることが好ましく、10質量%であればより好ましい。培地中に添加される窒素源としては、微生物の培養に際して通常使用される窒素含有の有機物または無機物が用いられ、例えば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム等を使用可能である。上述した他に、微生物の生育に必要であれば、酵母エキス、ペプトン等の栄養素を培地に添加してもよい。
【0042】
培養は、振とう攪拌による好気的条件下で行われ、培養温度は、20〜35℃であることが好ましく、30℃であることがより好ましい。培養pHは、5.5〜9.5であることが好ましい。また、培養期間は、15〜50g/lの濃度のサクシノイルトレハロース脂質混合物が生成されるまで培養することが好ましく、後述する実施例においては、培養5日後にサクシノイルトレハロース脂質濃度が15g/lに達していることから、5〜12日間培養することが好ましい。
【0043】
炭素源を含む培地中で微生物を培養する工程においては、当該微生物を本培養する前にシード培養してもよい。微生物をシード培養することによって、最適な条件に微生物を調整することが可能であり、その結果効率良くサクシノイルトレハロース脂質を製造することができる。
【0044】
(析出工程)
次に、上記培養工程によって微生物によって産生された生成物(STL)を析出させる(析出工程)。つまり、微生物が培地中に生成するSTLを含む培地あるいは培養液に対して析出を行う。このとき、析出の対象となる当該培地あるいは当該培養液は、微生物を培養した培養液を遠心分離し、培養液中から菌体および残存基質を取り除いたものであってもよい。ここで、「析出させる」とは、培地中に溶解した物質を、固体として取り出すことが意図される。すなわち、本発明に係る析出工程においては、培養工程において微生物が培地中に生成した糖脂質を、培地中から固形物として取り出すことができる。
【0045】
析出工程では、培養液中からSTLを固形物として分離することができる方法であれば特に限定されず、慣用的な方法が用いられ得る。たとえば、上記培養工程において微生物を培養した培地を酸性にし、培地中の酸性物質を析出させることによって酸性の糖脂質であるSTLを析出させることができる(酸析)。具体的には、培養液中(対象物)のpHを低下させることにより析出させる。培養液のpHを低下させるためには、酸性物質、たとえば、HClを添加すればよい。その後、たとえば、遠心処理を行い析出物を取り出す。以下、析出工程を経て得られた生成物を、「析出生成物」と称する。
【0046】
(抽出工程)
次に、析出生成物からSTL組成物を抽出する(抽出工程)。抽出工程では、析出生成物に、水と相溶せず、かつ糖脂質が可溶である溶媒を添加することによって、析出生成物中に含まれるSTLを溶媒層に溶解させる。ついで、STLが溶解した溶媒層を分離することによって、水溶性物質を除去したSTL組成物を得ることができる。なお、「水溶性物質」は、水に対して可溶な物質であり、培地中から析出させた固形物状の析出物が水と共に包含している塩等の水溶性の不純物であるといえる。ここで、「塩」とは酸の水素原子を金属または他の金属性基で置き換えた化合物である。
【0047】
微生物を培養した培地から析出させた上述の析出生成物は、含水しており水溶性の不純物を多く含んでいる。このような析出生成物は、さらに脂溶性の不純物を含んでおり、固形物状であるため、これを水で洗浄しても析出物内部に含まれる水溶性物質を十分に取り除くことは困難であったが、水と相溶せず、かつ糖脂質が可溶である溶媒を用いた抽出工程により、水溶性物質を除去したSTL組成物を得ることができる。
【0048】
抽出工程においては、溶媒を添加して抽出する対象物である析出物から完全に水溶性物質を取り除く必要はなく、抽出処理の前後において、析出物中の水溶性物質の量が減少していればよい。これにより、不純物の含有量が低下したSTL組成物を得ることが可能である。
【0049】
ここで、析出物に添加する溶媒としては、水溶性物質を溶解しえる他の溶媒(たとえば水)と相溶せず、かつ糖脂質が可溶である溶媒を用いることができる。そのような溶媒としては、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、または炭化水素系溶媒が挙げられ、具体的には、例えば酢酸エチル、1−ブタノール、キシレン等が挙げられる。析出物に添加する溶媒の量は、析出物量に対して0.1〜10倍質量であることが好ましく、析出物量と同等であることがより好ましい。
【0050】
抽出工程について、溶媒として酢酸エチルを用いた場合を例にして説明する。まず、培養液から培養生成物を析出させ、析出した析出物に酢酸エチルを添加し十分に攪拌し、酢酸エチル層および水層の2層に分離させる。ついで、上層に形成された酢酸エチル層を分液漏斗等によって分離する。酢酸エチル層には水溶性物質は溶解せず、STLが溶解しているため、酢酸エチル層を分離することによって糖脂質から水溶性物質を除去することが可能である。ついで、例えばエヴァポレーター等を用いて、酢酸エチル層から酢酸エチルを除去することによって、水溶性物質が除去された固体状のSTL組成物を得ることができる。
【0051】
なお、上述の説明では、析出工程と抽出工程とを順次行う場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、培養生成物を培地または培養液中から析出させずに、生成物が溶解した培地または培養液に溶媒を添加し溶媒層を分離することによって、水溶性物質を取り除いたSTL組成物を得ることも可能である。このとき、微生物を培養した培養液から、遠心分離等によって、菌体および残存基質を取り除いたものを、溶媒を用いて水溶性物質を除去する対象としてもよい。すなわち、抽出工程において、溶媒を用いて水溶性物質を除去する対象となる物質は、培養中の微生物が培地中に生成するSTLを含む培地あるいは培養液、または、反応系から分離された固体状のSTL混合物であってもよい。
【0052】
この抽出工程までを経て得られた生成物を「抽出生成物」と称する。
【0053】
(脂溶性物質除去工程)
次に、上記脱水生成物から、脂溶性物質を取り除く(脂溶性物質除去工程)。ここで「脂溶性物質」とは、油脂に対して可溶な物質であることが意図される。
【0054】
水溶性物質が取り除かれた固形物状のSTL組成物から脂溶性物質を取り除く方法は、STLと脂溶性物質とを分離させることが可能な方法であれば特に限定されず、慣用的な方法を用いることができる。例えば、まず、抽出生成物から溶媒を留去し、ついで、溶媒を留去して得られた固形物に糖脂質と脂溶性物質とを分離させることが可能な溶媒を添加し、当該溶媒層を除去することによって、脂溶性物質が除去された糖脂質を得ることができる。これにより、糖脂質から効率よく脂溶性の不純物を取り除くことができる。
【0055】
ここで、糖脂質と脂溶性物質とを分離させることが可能な溶媒とは、糖脂質が難溶または不溶であり、脂溶性物質が可溶な溶媒である。このような溶媒として、例えばヘキサンを用いた場合、培養液から析出した生成物から、溶媒を用いて水溶性物質を除去した後、この溶媒を留去して得られる固形物をヘキサンに懸濁し、ろ過または遠心分離してヘキサンを除去する。これにより、STL組成物から効率よく脂溶性の不純物を取り除くことができる。
【0056】
〔2.サクシノイルトレハロース脂質溶液〕
本発明はまた、サクシノイルトレハロース脂質溶液を提供する。用語「サクシノイルトレハロース脂質溶液」とは、サクシノイルトレハロース脂質を包含する溶液が意図される。
【0057】
一実施形態において、本発明に係るサクシノイルトレハロース脂質溶液は、本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物が溶媒に溶解されてなる。上記溶媒は、サクシノイルトレハロース脂質を溶解し得る溶媒であればよく、そのような溶媒としては、上述したように、水性の溶媒、またはその他の溶媒(有機溶媒等)を用い得る。当業者であれば、上記溶液の用途に合わせて適宜溶媒を選択し得る。
【0058】
本明細書において、用語「水性の溶媒」は、水または親水性の溶媒を主体とした溶媒が意図される。つまり、水性の溶媒の成分としては、水以外に水と相溶(混和)し得る物質を用いることができる。水性の溶媒には、特に、疎水性の液体が全く含まれていないものが好ましい。このような水性の溶媒の成分としては、水または炭素数1〜4の低級アルコール、多価アルコールおよびその混合溶媒等を好ましく用いることができる。
【0059】
炭素数1〜4の低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールを例示することができる。また、多価アルコールとしては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ポリプロピレングリコール、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールを例示することができる。
【0060】
一実施形態において、本発明に係るサクシノイルトレハロース脂質溶液は、炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られるサクシノイルトレハロース脂質が1質量%以上、水性の溶媒に溶解されてなり、好ましくは、サクシノイルトレハロース脂質が3質量%、5質量%、または7質量%以上、水性の溶媒に溶解されてなる。後述するように、従来技術に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、1質量%以上水性の溶媒に溶解し得ず、したがって、従来、炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られるサクシノイルトレハロース脂質が1質量%以上水性の溶媒に溶解されてなる溶液は存在していなかった。本実施形態に係るサクシノイルトレハロース脂質溶液は、水性の溶媒にサクシノイルトレハロース脂質が高濃度に溶解しているので、保存、輸送、使用等の際に好適に用いることができる。
【0061】
一つの局面において、本実施形態に係るサクシノイルトレハロース脂質溶液は無色透明である。上記無色透明を、水溶液の濁度を示す指標として一般に用いられる波長660nmにおける光透過率によって表せば、該光透過率は、95%以上であり得、好ましくは97%以上であり得、より好ましくは99%以上であり得る。なお、上記光透過率は、上記分光光度計を用いて、波長660nmでの光透過率を測定して得られる。上述したように、従来技術に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物は、溶解した溶液を濁らせるため、従来、サクシノイルトレハロース脂質が1質量%以上水性の溶媒に溶解されてなる溶液において、波長660nmでの光透過率が5%以上である溶液は存在していなかった。本実施形態に係るサクシノイルトレハロース脂質溶液は、無色透明の水溶液なので、例えば、食品、化粧品等の添加剤として用いた場合、食品、化粧品等を不要に着色しないため好ましい。
【0062】
(調製方法)
本発明に係るサクシノイルトレハロース脂質溶液の調製方法について以下に説明する。一実施形態において、本発明に係るサクシノイルトレハロース脂質溶液は、炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られる固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物を溶媒に溶解させることによって調製させる。上記溶媒が有機溶媒である場合、定法を用いれば容易にサクシノイルトレハロース脂質溶液を調製し得る。
【0063】
上記溶媒が水性の溶媒である場合は、例えば、以下の方法によってサクシノイルトレハロース脂質溶液を調製し得る。
【0064】
まず、上記固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物と水性の溶媒とを混合して混合液とする。このとき、上記固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物の主成分であるサクシノイルトレハロース脂質は、分子構造中にカルボキシル基を有する酸性の物質であるため、上記混合液は、通常酸性となっている。
【0065】
ここで、上記サクシノイルトレハロース脂質組成物を十分に溶解させるためには、上記混合液を中性にすることが好ましい。上記混合液の中和は、例えば、水酸化ナトリウム溶液などのアルカリ性物質を該混合液に添加して、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンを該混合液にさらに包含させることによって行い得る。
【0066】
アルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等を用い得、アルカリ土類金属イオンとしては、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ベリリウムイオン等を用い得るが、これらに限られない。上記溶媒のpHを適切に調整し得るイオンであればよい。
【0067】
また、高濃度の上記固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物を水性の溶媒に溶解させる場合、完全に溶解させるために、上記混合液を超音波処理することが好ましい。
【0068】
〔3:乳化組成物〕
本発明はさらに、乳化組成物を提供する。用語「乳化組成物」とは、乳化によって得られる組成物が意図され、エマルションと称されることもある。
【0069】
一実施形態において、本発明に係る乳化組成物は、本発明の固形のサクシノイルトレハロース脂質と、水性成分と、油性成分とを含んでいる。本実施形態に係る乳化組成物は、乳白色であり、長期にわたって安定している。また、乳化成分であるサクシノイルトレハロース脂質の含量が低い場合であっても良好に乳化させることができるため、低コストで大量の乳化組成物を製造することができる。
【0070】
上記水性成分としては、本発明に係るサクシノイルトレハロース脂質溶液に用いられる水性の溶媒を好適に用いることができる。
【0071】
上記油性成分としては、1気圧25℃において液状またはペースト状のものが好ましく、特に液状油が好ましい。
【0072】
このような液状油としては、たとえば、炭化水素類、高級アルコールエステル類、高級脂肪酸エステル類、トリグリセリド類、シリコーン油類、高級アルコール類、高級脂肪酸類、動植物油類、コレステロール脂肪酸エステル類、ステロール類、ステロールエステル類、ポリフェノール類が挙げられ、好ましいものとしては、ミネラル油、流動パラフィン、スクアラン、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソオクチル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸オクタデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリルコレステリルエステル、2−エチルヘキサン酸トリグリセリド、2−エチルヘキサン酸セチル、ヒマワリ油、オリーブ油、ホホバ油、ツバキ油、グレープシード油、アボカド油、マカダミアナッツ油、アーモンド油、米胚芽油、丁字油、オレンジ油、トウヒ油、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサンなどのジメチルシリコーン油;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロサン、メチルシクロポリシロキサン、メチルポリシクロシロキサンなどの環状シリコーン油;ポリエーテル変性シリコーン油、メチルフェニルポリシロキサンなどのメチルフェニルシリコーン油などが挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
本発明にかかる乳化組成物において、STLの含有量は、0.01質量%〜5質量%であることが好ましく、0.05質量%〜1質量%であることがより好ましい。乳化組成物に対して、STLの含有量が、0.01質量%より小さい場合には、乳化が不十分になるおそれがあるという問題があり、5質量%を超える場合には、使用量が多くなり経済的ではないという問題がある。
【0074】
また、本発明に係る乳化組成物において、含まれる水性成分と油性成分との質量比は、水性成分:油性成分が、95:5〜30:70であることが好ましく、95:5〜50:50であることがより好ましい。上記質量比が、30:70よりも油性成分の比率が高い場合には、油が完全に乳化しないおそれがあるという問題がある。
【0075】
なお、本発明に係る乳化組成物に用いられる固形のSTLは、STLの塩であってもよい。本明細書において、STLの塩とは、上述の製造方法により得られたSTLにおいて、1分子あるいは2分子エステル結合しているコハク酸のカルボキシル基のうち、一方あるいは両方のカルボキシル基の水素原子が他の金属カチオンまたは金属性基により置き換えられたものを指す。
【0076】
本発明に係る乳化組成物に含まれるSTLの塩は、STLと、アルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩であることが好ましい。この場合、STLを水性の溶媒に良好に溶解することができる。
【0077】
STLとの塩を構成するアルカリ金属として、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等、アルカリ土類金属として、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム等が挙げられ、ナトリウムまたはカリウムが好ましく、特にナトリウムが好ましい。STLのナトリウム塩は、水溶性が高く、溶媒に対する溶解度がさらに向上するという利点がある。
【0078】
STLの塩は、STLを、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含むアルカリ性化合物を用いて中和することによって得られる。具体的には、以下の手法によりSTLの塩を得ることができる。まず、STLを1質量%〜5質量%の水溶液となるように水と混合し、スターラーにより攪拌しながら任意のアルカリ性化合物を添加して水溶液を中和し、STLを溶解させる。このとき、最終的なpHが、7.0〜7.2となるようにアルカリ性化合物の添加量などを制御する。ついで、得られた水溶液を凍結乾燥することにより、STLの塩を得ることができる。なお、後述する本発明に係る乳化組成物の製造方法においては、上述のように得られた固形のSTLの塩を用いてもよく、凍結乾燥する前のアルカリにより中和されたSTL溶解液(STLの塩が溶解した水溶液)を用いてもよい。
【0079】
(製造方法)
次に、本発明にかかる乳化組成物の製造方法について説明する。乳化組成物の製造方法は、目的とする乳化組成物を得ることができればその製造方法は特に限定されることはなく、様々な方法をとることができる。
【0080】
一実施形態において、本発明に係る乳化組成物の製造方法は、本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質を水性の溶媒に溶解してサクシノイルトレハロース脂質水溶液を調製する工程、および該サクシノイルトレハロース脂質水溶液と、油性成分とを乳化する工程を包含している。上述したように、本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質は、容易に水性の溶媒に溶解し得るので、本実施形態に係る乳化組成物の製造方法によれば、容易に乳化組成物を製造することができる。
【0081】
上記サクシノイルトレハロース脂質水溶液の調製は、本発明に係るSTLを水性の溶媒に溶解させればよいのであって、上述のように行うことができる。なお、水性の溶媒に溶解させるSTLは、STLの塩であってもよい。
【0082】
上記サクシノイルトレハロース脂質水溶液と、油性成分との乳化は、例えば、上記サクシノイルトレハロース水溶液に対して、上述したような質量比となるように油性成分を添加し、ホモジナイザー等の周知慣用技術を用いて攪拌することによって行うことができる。
【0083】
また、他にも、STLの塩を水性の溶媒に溶解させることによって上記サクシノイルトレハロース脂質水溶液を調製した場合、該サクシノイルトレハロース脂質水溶液から水性ゲル状組成物を調製した後に、該水性ゲル状組成物に対して、上記と同様に油性成分を添加し、攪拌することによっても上記乳化を行うことができる。
【0084】
上記サクシノイルトレハロース脂質水溶液からの水性ゲル状組成物の調製は、以下のような手順により行うことができる。まず、STLの塩を含む溶液を酸性にする。この処理は、例えば、STLの塩を含む溶液に塩酸等の酸性物質を添加することによって行われ得る。STLの塩を含む溶液は中性であり、当該溶液中に酸性物質を添加することによって、溶液を酸性、好ましくはpH6.0〜6.9にする。これにより、STLの塩を含む溶液を容易にゲル化させることができる。
【0085】
なお、溶液の状態を安定させるために、溶液を一定時間静置することが好ましい。また、水性ゲル状組成物を調製するための上記サクシノイルトレハロース脂質液は、溶液全量に対してSTLの塩が2質量%〜30質量%の濃度で溶解されていることが好ましい。さらに、上記水溶液中の水性成分の含有量は、水性ゲル状組成物全量の70質量%〜98質量%であることが好ましく、より好ましくは90質量%〜97質量%である。
【0086】
〔その他〕
本発明に係る固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物、サクシノイルトレハロース脂質溶液、および乳化組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、紫外線吸収剤、抗酸化剤および香料が配合されていてもよい。
【0087】
紫外線吸収剤とは、通常サンスクリーン化粧品などに用いられ、紫外線A波あるいは紫外線B波、またはその両方を低減させ、皮膚に対する紫外線の有害作用を低減させることのできる物質のことをいう。
【0088】
このような紫外線吸収剤としては、p−アミノ安息香酸、グリセリル−p−アミノ安息香酸、アミル−p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸、2−エチルヘキシル−p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸などのp−アミノ安息香酸誘導体;2,4−ジイソプロピルケイ皮酸メチル、2,4−ジイソプロピルケイ皮酸エチル、p−メトキシケイ皮酸カリウム、p−メトキシケイ皮酸ナトリウム、p−メトキシケイ皮酸イソプロピル、p−メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、p−メトキシケイ皮酸2−エトキシエチル、p−エトキシケイ皮酸エチルなどのケイ皮酸誘導体;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノンナトリウム、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノンナトリウムなどのベンゾフェノン誘導体;サリチル酸−2−エチルヘキシル、サリチル酸フェニル、サリチル酸−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルなどのサリチル酸誘導体;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、4−tert−ブチル−4’−メトキシベンゾイルメタンなどが挙げられる。
【0089】
これらのうち、常温で固体のものは液状油に溶解または分散させて用いることができる。常温で液状またはペースト状のものは、それ自身液状油として用いることもできるし、他の液状油と混合して用いることもできる。それ自身液状油として用いることができるもののうち好ましいのは、p−メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、または4−tert−ブチル−4’−メトキシベンゾイルメタンのp−メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル溶液である。
【0090】
また、抗酸化剤および香料は、常温で固体のものは液状油に溶解または分散して用いることができる。常温で液状またはペースト状のものは、それ自身液状油として用いることもできるし、他の液状油と混合して用いることもできる。用いることのできる抗酸化剤としては、たとえば、トコフェロール、酢酸トコフェロール、およびビタミンA類(たとえば、レチノイン酸、レチノイン酸エステル、レチノール、レチノイドなど)が挙げられる。
【0091】
本発明の固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物、サクシノイルトレハロース脂質溶液、および乳化組成物の用途としては、好ましくは化粧品、またはその添加剤が挙げられ、たとえばクリーム、ローション、クレンジングジェル、クレンジングクリームなどの基礎化粧料;ファンデーション、アイシャドウ、リップカラー、リップグロスなどのメーキャップ化粧料;ヘアクリーム、スタイリングジェル、ヘアワックスなどの頭髪用化粧料;シャンプー、リンス、ハンドソープ、ボディーソープ、洗顔フォームなどの洗浄料などに好適に用いることができる。
【0092】
本発明の固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物、サクシノイルトレハロース脂質溶液、および乳化組成物を化粧料またはその添加剤の用途に使用する場合には、化粧料に通常用いられる任意の成分を、本発明の効果を損なわない範囲において、配合することができる。
【0093】
このような成分としては、たとえば、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素類;ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピルなどのエステル類、トリイソオクタン酸グリセリル、オリーブ油などのトリグリセライド類;メチルフェニルポリシロキサン、メチルポリシロキサンなどのシリコーン油類;セタノール、ベヘニルアルコールなどの高級アルコール類、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸類;グリセリン、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコールなどの多価アルコール類;エタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール類;非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、増粘剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、エモリエント剤、乳化剤、可溶化剤、抗炎症剤、保湿剤、防腐剤、pH調整剤、色素、香料、粉体類、水などが挙げられる。中でもステアリン酸、ベヘニルアルコールが好ましい。これらの好ましい含有量は、化粧料全量に対して0.01質量%〜10質量%であり、さらに好ましくは0.1質量%〜5質量%である。このようにして得られる化粧料は、皮膚刺激が少なく、クレンジング剤、保湿剤、クリーム、およびローションとしてきわめて優れている。
【0094】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0095】
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【0096】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されない。
【実施例】
【0097】
〔実施例1:STLの生産〕
非特許文献2に記載の方法に従って、ロドコッカス・エリスロポリス SD−74株を以下の条件でシード培養した。本実施例において用いたロドコッカス・エリスロポリス SD−74株は、植物油脂資化性菌として分離され、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、「受託番号:FERM P−21299」として寄託されている。
【0098】
500ml容坂口フラスコ中のFPY培地100ml(フルクトース2%、ポリペプトン0.5%、酵母エキス0.5%、NaNO0.1%、KHPO0.1%、MgSO−7HO0.02%)にプレート上に形成された菌体コロニーを植菌し、30℃で38時間振とう培養を行った。
【0099】
改変MedD培地(1L当たり、KHPO5.44g、KHPO10.45g、KNO3g、MgSO−7HO0.1g、KSO35g、酵母エキス3g、パーム油100mlを含む溶液を、水道水で1Lにメスアップ)6000mlに、シード培養後の培養液全量を接種し、以下の条件で本培養を開始した。10Lジャー培養槽を用いて、培養温度30℃で、500rpmで攪拌させながら培養した。培地のpHを7.0に設定し、5N KOHを自動添加することによって培地のpHを維持した。
【0100】
〔実施例2:STLの定量〕
上記本培養中の培地から、2日に1回程度サンプリングを行い、培養液中のSTL濃度を以下に示すように定量した。
【0101】
サンプリングした培養液を15000rpmで10分間遠心分離し、上層の油成分が混入しないように注意して水層を抜き出した。抜き出した液体を適宜希釈した後、以下に示すアンスロン硫酸法によってトレハロース濃度を定量した。まず、希釈した試料1mlにアンスロン試薬(75%硫酸に0.2%の濃度でアンスロンを溶解させることによって、測定時に調製)5mlを添加し攪拌した。攪拌後の溶液を沸騰水中で10分間反応させ、5分間氷冷することによって反応を停止させた後、室温で20分間放置した。
【0102】
得られた反応液に対して波長620nmの吸光度を測定した。スタンダードとして4mMトレハロースを20倍希釈したものを用いた。STLは1分子のトレハロースを含んでいるため、トレハロース濃度としてSTL濃度を定量した。STLの分子量を840としてSTLの質量濃度を算出した。結果を図1に示す。培養開始120時間後にパーム油600mlを追加し、200時間後にパーム油300mlをさらに追加した。図1のSTL生産のタイムコースに示すように、培養285時間後に培養液のSTL濃度が37g/Lになった。
【0103】
〔実施例3:STLの分離・精製〕
実施例1で得られた培養285時間後の培養液860mlを、6000rpmで30分間遠心分離し、液中の菌体および残存基質を除去した後、6N HClを40ml添加し、溶液のpHを2.98にした。溶液中に白色のゲル状析出物が析出した。この溶液を6000rpmで30分間遠心分離することによって、液層を除去した結果、湿重量182gの析出物が得られた。
【0104】
得られた析出物に186gの酢酸エチルを添加し、十分に攪拌した。水層と酢酸エチル層とに分離した溶液を、分液漏斗を用いて分離し上層の酢酸エチル層を回収した。回収した酢酸エチル溶液から、エヴァポレーターを用いて酢酸エチルを除去した。酢酸エチルを除去して得られた固形物を等量のヘキサンで懸濁した後、懸濁液を遠心分離してヘキサンを除去する工程を3回繰り返した。ヘキサンを除去して得られた液体をエヴァポレーターで乾固し、白色固形物12.6gを得た。この白色固形物を50g/lの濃度で蒸留水中に加え、NaOHを添加して中性にしたところ、白色固形物が蒸留水中で溶解し始めた。さらに溶液を超音波処理したところ、約5分後には白色固形物が蒸留水中に完全に溶解した。
【0105】
さらに検討しところ、上述の方法で得た白色固形物は、7.5%の濃度であっても水溶液中に均質に溶解させることが可能であった。
【0106】
〔比較例1:従来技術に係るSTLの分離・精製〕
実施例1で得られた培養液を、6000rpmで30分間遠心分離し、液中の菌体および残存基質を除去した後、6N HClを加え、溶液のpHを3以下とした。析出した酸析物(271.5g)に滅菌水500mLを加えてよく懸濁させた後に遠心分離し、上澄みを捨てることによって、該酸析物を洗浄した。洗浄後の酸析物の湿重量は125.9gであった。
【0107】
次に、メタノールを500mLを加えて上記酸析物を完全に溶かし、ヘキサンを500mL加えてよく攪拌した後に、メタノール層を分液した。このヘキサンを用いた操作を3回繰り返した。最後に、メタノールを留去し、薄茶色の固形物(17.1g)を得た。以上に記載の、従来の方法で製造したSTLの固形物(薄茶色)は、1%の濃度でも水溶液中に溶解しなかった。以下、実施例上記の方法で製造したSTLの固形物(以下、新法STLと称する)および、従来の方法で製造したSTLの固形物(以下、従来法STLと称する)とについて、さらに詳しく比較する。
【0108】
〔実施例4:STL溶液の吸光スペクトルの測定〕
上記の方法で製造したSTLの固形物は、上述したように、従来の方法で製造したSTLの固形物とは異なり、白色であった。これを定量的に観察するために、STL溶液の可視光領域での吸光スペクトルを測定した。
【0109】
新法STLおよび従来法STLをそれぞれメタノールに溶解させ、濃度が5質量%のSTL溶液を調製した。なお、新法STLはメタノールに完全に溶解したが、従来法STLはメタノールに完全に溶解せず、一部成分がとけ残っていた。そのため、従来法STL溶液については、フィルター(0.45μm)を通し、透明な液体とした。
【0110】
上記のように調製したSTL溶液の可視光領域での吸光スペクトルを分光光度計(UV−2550、島津製作所)を用いて測定した。結果を図2に示す。図2に示すように、新法STL溶液は、全領域で吸光度が0.05を超えることは無かった。一方、従来法STLは、波長が550nm以下の領域において、吸光度が高くなって(0.05を超えて)いた。すなわち、新法STLは白色であり、従来法STLが着色されていることが定量的に示された。
【0111】
〔実施例5:STL水溶液の光透過率の測定〕
新法STLを用いて、pH7.0、濃度1%(w/v)のSTL水溶液を調製した。また、同様に、従来法STLについても、pH7.0にて、1%(w/v)となる量にて、純水に混合した。ただし、従来法STLは1%(w/v)の濃度では、水に完全に溶解しなかった。
【0112】
次に、波長660nmにおけるそれぞれの光透過率を上記分光光度計を用いて測定した。その結果、波長660nmにおける光透過率は、新法STLの水溶液が99.5%、従来法STLの混合液が4.8%となった。新法STLは、従来法STLに比べ非常に透明度の高い水溶液を形成し得ることができることが示された。
【0113】
〔実施例6:STLの保水力測定〕
実施例3で得られたSTLの保水力測定を以下の方法で行った。まず、5質量%の濃度でSTLを蒸留水に溶解し、NaOHによりpHを7.0にすることによって、STL(ナトリウム塩)の5質量%水溶液を調製した。また、比較対照として、グリセリンの5質量%水溶液を調製した。
【0114】
ついで、5×5cmに切り取ったろ紙に、上記のように調製した各5質量%水溶液10μlを浸透させ、ろ紙の質量変化を毎分8分まで測定した。経時的な質量変化をグラフ化し、グラフの傾きから水分蒸発速度を算出した。さらに水のみを浸透させたろ紙の質量変化を測定し、算出した傾きを100として、相対水分蒸発速度を算出した。相対水分蒸発速度から、次式により相対保水力を算出した。結果を表1に示す。
相対保水力(%)=100−相対水分蒸発速度
【0115】
【表1】

【0116】
表1に示すように、保水力を有することが一般的に知られているグリセリンよりも、本発明により得られたSTLは高い保水力を示した。すなわち、本発明に係る製造方法によって製造したSTLは、高い保水力を有しているため、例えば保湿剤として化粧品用途等に好適に用いられ得る。
【0117】
〔実施例7:STLの耐硬水性試験〕
実施例3で得られたSTLの耐硬水性試験を以下の方法で行った。まず、0.1質量%のSTL水溶液(pH7.0)を調製した。また、比較対照として、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)の0.1質量%水溶液を調製した。
【0118】
ついで、上記のように調製した各0.1質量%水溶液80gに対して、CaCl水溶液(炭酸カルシウム換算で10質量%)を添加して、5分間攪拌することにより様々な硬度を有する水溶液を調製した。得られた水溶液について、波長650nmにおける光透過率を測定した。光透過率の測定結果を図3に示す。
【0119】
図3に示すように、STL水溶液は、300ppmの硬度においても不溶性の塩を形成せず、LASに比べ非常に優れた耐硬水性を示した。すなわち、本発明に係るSTLは、優れた耐硬水性を有しているため、例えば、様々な成分が配合される化粧品においても濁りまたは沈殿を生じさせることがないため、化粧品添加剤等として好適に用いることができる。
【0120】
〔実施例8:STLの起泡力の測定〕
実施例3で得られたSTLの起泡力の測定を以下の方法で行った。まず、0.1質量%のSTL水溶液(pH7.0)を調製した。また、比較対照として、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)の0.1質量%水溶液を調製した。
【0121】
ついで、上記のように調製した各0.1質量%水溶液50gをそれぞれ異なるミキサーに充填した。そして、各水溶液を、3000rpmの回転速度で、一回につき15秒間ずつ複数回にわたって攪拌した。各回の攪拌直後における液面の高さを図4に示す。
【0122】
図4に示すように、STL水溶液は、攪拌してもほとんど泡を発生させず、LASに比べ低発泡性の界面活性剤であることが示された。すなわち、低発泡性の界面活性剤である本発明に係るSTLは、例えば、化粧品の一成分として用いた場合、製品を泡立たせることないため、化粧品添加剤等として好適に用いることができる。
【0123】
〔実施例9:乳化組成物の調製〕
実施例3で得られたSTLを、NaOHにより中和しながら蒸留水に溶解させ、0.1質量%の濃度でSTLのナトリウム塩を含むSTL水溶液を調製した。
【0124】
ついで、後述する4種の油性成分5mlそれぞれに対して、調製したSTL水溶液5mlを添加して、ホモジナイザー(株式会社ニチオン製ヒスコトロン)にて、1分間処理を行なった。油性成分としては、スクアラン(関東化学社製特級)、流動パラフィン(和光純薬製一級)、菜種油(MPバイオメディカルズ)、シリコーン油(KF−968、信越シリコーン社)をそれぞれ用いた。このようにして、調製された乳化組成物は、4種ともに乳白色であり、10分経過しても、分離することのない安定したエマルションであった。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明を用いれば、サクシノイルトレハロース脂質を水溶液として扱うことが可能であり、任意の製品の添加剤として用いた場合であっても該製品に不要な着色をしないため、様々な用途、たとえば、化粧品の保湿剤、乳化剤、化粧水の分散剤、食品の乳化剤、塗料の乳化剤等、化粧品、食品、塗料等の製造分野において好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】図1は、STL生産のタイムコースを示す図である。
【図2】図2は、STL溶液の吸光スペクトルを示す図である。
【図3】図3は、STL溶液の耐硬水性試験の結果を示す図である。
【図4】図4は、STL溶液の起泡力の測定結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られ、水に少なくとも1質量%溶解し得ることを特徴とする固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物。
【請求項2】
炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られ、白色であることを特徴とする固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物。
【請求項3】
メタノールに5質量%溶解させたときの溶液の吸光度が、波長400nm〜700nmの領域にわたって0.05以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物。
【請求項4】
水に少なくとも5質量%溶解し得ることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物。
【請求項5】
水に1質量%溶解させたときの水溶液の、波長660nmにおける光透過率が95%以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物が溶媒に溶解されてなることを特徴とするサクシノイルトレハロース脂質溶液。
【請求項7】
上記溶媒が、水性の溶媒であることを特徴とする請求項6に記載のサクシノイルトレハロース脂質溶液。
【請求項8】
炭素源を含む培地中で微生物を培養して得られるサクシノイルトレハロース脂質が、1質量%以上、水性の溶媒に溶解されてなることを特徴とするサクシノイルトレハロース脂質溶液。
【請求項9】
上記サクシノイルトレハロース脂質が5質量%以上、上記溶媒に溶解されていることを特徴とする請求項8に記載のサクシノイルトレハロース脂質溶液。
【請求項10】
波長660nmにおける光透過率が95%以上であることを特徴とする請求項8または9に記載のサクシノイルトレハロース脂質溶液。
【請求項11】
アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンをさらに含有することを特徴とする請求項7〜10の何れか一項に記載のサクシノイルトレハロース脂質溶液。
【請求項12】
請求項1〜5の何れか一項に記載の固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物と、水性成分と、油性成分とを含んでいることを特徴とする乳化組成物。
【請求項13】
請求項1〜5の何れか一項に記載の固形のサクシノイルトレハロース脂質組成物を水性の溶媒に溶解してサクシノイルトレハロース脂質水溶液を調製する工程、および
該サクシノイルトレハロース脂質水溶液と、油性成分とを乳化する工程
を包含することを特徴とする乳化組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−13160(P2009−13160A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16386(P2008−16386)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】