説明

サスペンションスプリングの被覆部材

本発明は、サスペンションスプリング(1)、サスペンションスプリング(1)の少なくともエンドコイル(2)の一部の上に位置する被覆部材(3)、及びサスペンションスプリング(1)の前記の覆われた端部が配置されるセンタリングカップ(7)、センタリングカップ(7)に対する被覆部材(3)の角度位置の指標となるのに適切な手段(6)、及び被覆部材(3)に対するサスペンションスプリング(1)の角度位置の指標となるのに適切な手段(8)を備える自動車のサスペンションスプリングに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のスプリング付きサスペンションシステムに関し、具体的には、スプリング付きサスペンションシステムのスプリングに使用される被覆デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記スプリングの、センタリングカップに通常配置されているエンドコイルの前記カップに接触している部分は、この領域における水及び/又は土石の蓄積に関連した侵食に曝される。更に、前記エンドコイルのセンタリングカップとの摩擦により、不愉快なノイズが発生する可能性もある。このため上記のようなスプリングのエンドコイルの、少なくともセンタリングカップと接触する部分を被覆することは公知の手法であり、これにより腐食からの保護及び摩擦又は振動によって発生するノイズの抑制の両方を行う。
【0003】
特許文献1には従って、例えば内部周囲に設けられた開口部により、腐食の発生の原因となる土石及び水の蓄積から前記スプリングの前記端部を保護する、螺旋状のサスペンションスプリングのエンドコイルの一部の被覆が提案されている。特許文献1に提案されている被覆は、半径方向及び軸方向のスペーサ手段を更に含み、これによりサスペンションスプリングをカップ上で繰り返し中央に配置することができる。
【0004】
しかしながら上記装置では、被覆部材におけるエンドコイルの角度位置、よってスプリングの角度位置は固定的に規定されていない。また、スプリングが一旦被覆部材に配置されると、センタリングカップ上における全体の角度位置も規定されない。これによる特有な結果の一つは、螺旋状のサスペンションスプリングによりもたらされる合成力の、前記スプリングの軸に対する方向が、一定ではないということである。具体的には、前記合成力は一般に、前記スプリングの軸に正確に沿った方向には向いておらず、これにより、車両の車軸アセンブリに寄生的な力が加わり、例えば前記車両のオーバーステアの原因となる。
【特許文献1】仏国特許出願第2840966号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の1つの目的は、被覆部材及びセンタリングカップ上において、サスペンションスプリングを繰り返し角度位置に配置することを可能にし、全体の組立を簡単にする装置である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、サスペンションスプリング、サスペンションスプリングのエンドコイルの少なくとも一部の上に配置される被覆部材、及びサスペンションスプリングの覆われた端部が配置されるセンタリングカップを備え、被覆部材とセンタリングカップが、センタリングカップに対するサスペンションスプリングの角度位置の指標となるのに適切な手段を備えることを特徴とする、自動車のサスペンション組立体により達成される。
【0007】
有利には、適切な手段が、センタリングカップに対する被覆部材の角度位置の指標となる第1組の手段と、被覆部材に対するサスペンションスプリングの角度位置の指標となる第2組の手段を備える。
【0008】
有利には、第1組の手段が、適切な相補的雌性要素と協働することが可能な雄性要素を含み、雄性及び雌性要素が、それぞれ被覆部材及びセンタリングカップ上に配置されるか、或いはそれぞれセンタリングカップ及び被覆部材上に配置される。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、第1組の手段の雄性要素は、少なくとも1つの適切で相補的な穴と協働することができるラグであり、第2組の手段は被覆部材上に配置された端停止部で構成されている。
【0010】
更なる特徴及び利点は、添付の図を参照しながら下記の説明を読むことによって明らかとなる。
【0011】
図1は、サスペンションスプリング1の端部及びエンドコイル2と、エンドコイル2の少なくとも一部が挿入される被覆部材3を含む適切なハウジング4を示す概略図である。
【0012】
本発明によるサスペンション装置では、センタリングカップ7に対するサスペンションスプリング1の角度位置が、適切な手段によって示される。これらの手段は一方で、センタリングカップ7に対する被覆部材3の角度位置の指標となる第1組の手段6を備え、他方では、被覆部材3に対するサスペンションスプリング1の角度位置の指標となる第2組の手段8を備える。
【0013】
本発明の好ましい実施形態では、センタリングカップ7に対する被覆部材3の角度位置を指標し、繰り返し設定するのに適切な手段6は、被覆部材3(又はセンタリングカップ7)上に位置し、センタリングカップ7(又は被覆部材3)上に位置する適切な相補的雌性要素62と協働することができる少なくとも1つの雄性要素61を含む。図に示す実施形態では、雄性要素61は被覆部材3に固定され、例えば留め具によりセンタリングカップ7上に配置された適切な相補的穴62と協働できるラグである。本発明の代替形態では、このラグ61をセンタリングカップ7に配置し、次いで前記相補的穴62を被覆部材3上に設けることができる。組立を簡単ために、好ましくは前記ラグ61の端部が円錐形のテーパー形状を有する。
【0014】
被覆部材3に対するスプリング1の角度位置の指標となる第2組の手段8は、図に示す好ましい実施形態において、スプリング1のエンドコイル2の少なくとも一部が挿入される、ハウジング4の被覆部材3の一方の端部10に位置する端停止部9で構成される。
【0015】
図3に示すように、センタリング7の上面、つまりスプリングが静止する面は、スプリング1を覆う被覆部材3を収容できるくぼんだ部分を形成する、ほぼ円形の凹部11を含む。凹部の深さは、凹部の外周全体にわたって連続的に変化し、これにより形成された傾斜がその長さ全体にわたって、被覆部材3とスプリング1のエンドコイル2と協働することができる。よって、凹部11の一番深い部分は被覆部材3の端部10の停止手段12を形成する。
【0016】
従って、隆起部13がほぼ円形の凹部11の内部に形成される。被覆部材3の内周上にはリブ14があり、これらのリブは、カップ7の隆起部13に接して静止可能な形状を有する。これらのリブ14は、摩擦に関連するノイズを第一に改善し、よって本発明との関連においてセンタリングカップ7に対する被覆部材3の位置の指標となるのに役立つ。
【0017】
スプリング1と被覆部材3が組み立てられる時に、端停止部9により、前記スプリング1は、このために設けられたハウジング4の被覆部材3において規定の繰り返し可能な位置におさまる。スプリング1と被覆部材3が一旦組み立てられると、前記被覆部材3とセンタリングカップ7に配置された適切な手段6により、関連する組立ラインオペレータは、「被覆部材3/サスペンションスプリング1」の組立体を、センタリングカップ7に対する設定された繰り返し可能な位置に配置することができる。特にこれは、サスペンションスプリング1から発生する合成力の方向が一定になることを意味し、これは上記サスペンション装置を搭載する車両の動きを改善するものである。前記被覆部材3とセンタリングカップ7に配置された適切な手段6は、被覆部材3が凹部11によって形成された傾斜に導入されること、被覆部材3上に形成されたリブの一部がカップ7の隆起部13と協働すること、並びに被覆部材3の端部10が、凹部11に形成された停止手段12に接していることにより、互いに簡単に結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による装置のサスペンションスプリングのエンドコイル及び被覆部材の概略斜視図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態のスプリングのエンドコイル及び被覆部材の概略断面図である。
【図3】本発明の一実施形態によるセンタリングカップを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のサスペンション組立体であって、
サスペンションスプリング(1)と、
前記サスペンションスプリング(1)のエンドコイル(2)の少なくとも一部の上に配置される被覆部材(3)と、
サスペンションスプリング(1)の前記の覆われた端部が配置されるセンタリングカップ(7)と
を備え、前記被覆部材(3)と前記センタリングカップ(7)が、前記センタリングカップ(7)に対する前記サスペンションスプリング(1)の角度位置の指標となるのに適切な手段を含むことを特徴とする、自動車のサスペンション組立体。
【請求項2】
前記適切な手段が、センタリングカップ(7)に対する被覆部材(3)の角度位置の指標となる第1組の手段(6)と、被覆部材(3)に対するサスペンションスプリング(1)の角度位置の指標となる第2組の手段(8)とを含むことを特徴とする、請求項1に記載のサスペンション組立体。
【請求項3】
前記第1組の手段(6)が、被覆部材(3)に設けられ且つセンタリングカップ(7)に設けられた相補的な雌性要素(62)と協働することが可能な雄性要素(61)を備えることを特徴とする、請求項2に記載のサスペンション組立体。
【請求項4】
前記第1組の手段(6)が、センタリングカップ(7)に設けられ且つ被覆部材(3)に設けられた相補的な雌性要素(62)と協働することが可能な雄性要素(61)を備えることを特徴とする、請求項2に記載のサスペンション組立体。
【請求項5】
前記第2組の手段(8)が、スプリング(1)のエンドコイル(2)の少なくとも一部が挿入される、ハウジング(4)の被覆部材(3)の一方の端部(10)に配置される端停止部(9)で構成されることを特徴とする、請求項2に記載のサスペンション組立体。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のサスペンション組立体を搭載した自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−511340(P2009−511340A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535067(P2008−535067)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050956
【国際公開番号】WO2007/042694
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】