説明

サスペンションタワー

【課題】車両上下方向を軸方向とする捩れによるスプリングサポートの面外変形を効果的に抑制させる。
【解決手段】サスペンションタワー100は、スプリングサポート110の一般面114に車両上下方向にビード150が形成されているので、コイルスプリングから突き上げ荷重等が入力された際の一般面114の車両幅方向の面外変形が抑制される。更に、スプリングサポート110の一般面114に形成されたビード150は、車両後方側下部が湾曲し車両後方側に延在する末広がりのビード形状となっている。このようなビード形状により、車両上下方向を軸方向とする捩れが加わった面外変形に対して強くなる。よって、スプリングサポート110の面外変形が効果的に抑制される。これにより、スプリングプレート120におけるコイルスプリング250を支持する支持部120Aの変位が小さくなり、車両の乗り心地性能に影響を及ぼす着力点剛性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサスペンションタワーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のサスペンションを構成するコイルスプリングを支持するスプリングプレートと、コイルスプリングを取り囲むように配置され且つ上方の縁部がスプリングプレートに溶接されたスプリングサポートと、が主要な部材として構成されているサスペンションタワーが知られている。
【0003】
サスペンションタワーには、コイルスプリングから入力される突き上げ荷重等に対する充分な強度が要求される。また、サスペンションタワーの剛性が充分でないと、車体の振動騒音性能において悪影響を及ぼすことがある。
【0004】
よって、図8に示すように、サスペンションタワー900を構成するスプリングサポート(サスペンションタワーパネル)910の上端部に延長部912を設け、この延長部912をエプロンアッパメンバ920の閉断面の中に挟み接合することによって、エプロンアッパメンバ920の剛性が高められると共に、この剛性の高められた部分とサスペンションタワー900(スプリングサポート910)とが延長部912によって連結されることによって、突き上げ荷重等に対する剛性を向上させた構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−85410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、スプリングサポート910の上端部に延長部912を形成すると、重量が増加する。
【0007】
また、サスペンションタワー(スプリングサポート)の車両前方側に配置され、スプリングサポートの車両前方側端部が接合されたエプロンフロントにエンジンマウント部が設けられている構成の場合、エンジンマウント部に入力される荷重により、車両上下方向を軸方向とする捩れがスプリングサポートに加わる。しかし、このように捩れによるスプリングサポートの面外変形に対しては、十分に考慮されていなかった。
【0008】
本発明は、上記を考慮し、重量の増加を抑えつつ、車両上下方向を軸方向とする捩れによるスプリングサポートの面外変形を効果的に抑制させることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、車両前後方向を長手方向として配置されたエプロンアッパメンバに車両幅方向外側端部が接合されると共に、サスペンションを構成するスプリングの上方に配置され前記スプリングを支持するスプリングプレートと、車両幅方向内側に膨出し且つ前記スプリングの周囲を取り囲むように配置され、上端部が前記スプリングプレートに接合されると共に下端部が前記エプロンアッパメンバの下方に車両前後方向に沿って配置されたサイドメンバに接合され、更に車両幅方向外側端部が前記エプロンアッパメンバ及び前記フロントサイドメンバに接合され且つエンジンマウント部が設けられたエプロンパネルに接合されたスプリングサポートと、前記スプリングサポートの車両幅方向内側を構成する一般面に、車両幅方向内側又は車両幅方向外側に向けて凸とされ、車両前方側の稜線が車両上下方向に沿って形成され、車両後方側の稜線が車両上下方向に沿って形成され且つ下端部側が車両前後方向に沿って車両後方側に延在するように形成されたビードと、を備えている。
【0010】
請求項1の発明では、サスペンションタワーにはサスペンションからの突き上げ荷重等の入力に加え、サスペンションタワーの車両前方側に配置されたエプロンパネルのエンジンマウント部から上下方向及び前後方向の荷重が入力される。このため、サスペンションタワーを構成するスプリングサポートは、車両前方側に配置されたエンジンマウント部の荷重の入力方向に引っ張られ、車両上下方向を軸方向とする捩れが加わる(捩れが入力される)。
【0011】
しかし、スプリングサポートの車両幅方向内側を構成する一般面に形成されたビードは、車両後方側の稜線が車両上下方向に沿って形成され且つ下端部側が車両前後方向に沿って車両後方側に延在するように形成されているので、車両上下方向を軸方向とする捩れによるスプリングサポートの面外変形に対して強くなる(車両上下方向を軸方向とする捩れの入力に対して強くなる)。したがって、車両上下方向を軸方向とする捩れによるスプリングサポートの面外変形が効果的に抑制する。
【0012】
また、これにより、スプリングプレートにおけるスプリングを支持する支持部位の変位が小さくなり、その結果、車両の乗り心地性能に影響を及ぼす着力点剛性が向上する。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記車両後方側の稜線の前記下端部側は、車両後方側に湾曲し、車両後方側に延在している。
【0014】
請求項2の発明では、車両後方側の稜線の下端部側は車両後方側に湾曲して車両後方側に延在する。よって、稜線に折れ曲げ部(角)がないので、応力集中が防止又は抑制される。
【0015】
請求項3の発明は、前記スプリングサポートの前記一般面は、上方側が略円筒形状とされ且つ下方側が略平面形状とされ、前記ビードの車両後方側の稜線の前記下端部側は、前記スプリングサポートの一般面における下方側の略平面形状部分に形成されている。
【0016】
請求項3の発明では、ビードの車両後方側の稜線における車両後方側に湾曲し車両前後方向に沿って車両後方側に延在する下方側部は、スプリングサポートの一般面における下方側の略平面形状部分に形成されている。これにより、車両前方側の稜線と車両後方側との稜線との幅が末広がりの形状となる。つまり、両前方側の稜線と車両後方側との稜線との間の平面部分が、スプリングサポートの一般面における略平面状の下方側に向かって徐々に広がっていく。
【0017】
よって、スプリングサポートの一般面における略半円筒形状の上方側と略平面状の下方側との境界部分おける略半円形状から略平面形状への急激な形状変化が抑えられる。これにより、スプリングサポートのプレス成形時における略半円筒形状と上方側と略平面状の下方側との境界部分のシワの発生が抑えられ、その結果、成形性が向上する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、重量の増加を抑えつつ、車両上下方向を軸方向とする捩れによるスプリングサポートの面外変形を効果的に抑制させることができる。
【0019】
請求項2に記載の発明よれば、車両後方側の稜線の下端部側の特定の部位への応力集中を防止又は抑制することができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、上方側が略円筒形状とされ且つ下方側が略平面形状とされたスプリングサポートの成形性を向上させることがきる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るサスペンションタワーを示す斜視図である。
【図2】(A)は、本発明の実施形態に係るサスペンションタワーを構成するスプリングサポートを示す斜視図であり、(B)は(A)のB−B線に沿った水平断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るサスペンションタワーを示す図1のA−A線に沿ったに垂直断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るサスペンションタワーを示す図1のC−C線に沿ったに水平断面図である。
【図5】(A)は第一参考例のサスペンションタワーを構成するスプリングサポートを示す斜視図であり、(B)は(A)のB−B線に沿った水平断面図である。
【図6】第二参考例のサスペンションタワーを示す斜視図である。
【図7】(A)は本発明で適用されていないスプリングサポートの斜視図であり、(B)は(A)のB−B線に沿った水平断面図であり、(B)は(A)のC−C線に沿った水平断面図である。
【図8】(A)は従来のサスペンションタワーを示す斜視図であり、(B)はスプリングサポートを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1〜図4を用いて、本発明の実施形態の係るサスペンションタワーについて説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係るサスペンションタワーを示す斜視図である。図2(A)は、サスペンションタワーを構成するスプリングサポートを示す斜視図であり、(B)は(A)のB−B線に沿った水平断面図である。図3は本発明の実施形態に係るサスペンションタワーを示す図1のA−A線に沿ったに垂直断面図である。図4は本発明の実施形態に係るサスペンションタワーを示す図1のC−C線に沿ったに水平断面図である。
【0024】
なお、図中矢印FRは車体前方方向を、矢印UPは車体上方方向を、矢印OUTは車両車幅方向外側方向を示す。また、各図は車両幅方向の一方側のみが図示されているが、他方側も左右対称である以外は同様の構成である。
【0025】
また、本実施形態の車両10は、フロントにエンジンが搭載された前輪駆動車、所謂FF車(フロントエンジン・フロントドライブ方式)とされている。
【0026】
まず、本実施形態の車両10における車両前部の概略構成について説明する。
【0027】
図1に示すように、車両10の前部における車両幅方向両端上部には、エプロンアッパメンバ20が車両前後方向に沿って配設されている。このエプロンアッパメンバ20の車両下方内側には車両前後方向に沿ってフロントサイドメンバ30が配設されている。
【0028】
図3に示すように、エプロンアッパメンバ20は、エプロンアッパメンバアッパ22とエプロンアッパメンバロア24とで構成されており、車両前後方向に延設された閉断面構造となっている。また、フロントサイドメンバ30は、フロントサイドメンバアウタ32とフロントサイドメンバインナ34とで構成されており、車両前後方向に延設された閉断面構造となっている。
【0029】
図1に示すように、エプロンアッパメンバ20とフロントサイドメンバ30との間には、エプロンフロント40が配設されている。エプロンフロント40の上端部は、エプロンアッパメンバ20の車幅方向内側壁部20Aに接合され、エプロンフロント40の下端部Bは、フロントサイドメンバ30の上部に形成された接合フランジ30Aに接合されている。また、エプロンフロント40の車両後方向側には、サスペンションタワー100を構成する車両幅内側方向に膨出したスプリングサポート110が接合されている。
【0030】
エプロンフロント40における車両上下方向の中央部よりも若干上部から下部にかけて、車両幅方向内側に膨出した膨出部42が形成されている。そして、この膨出部42の頂部の平坦部分がエンジンマウント部42Aとされている(図4も参照)。
【0031】
また、フロントサイドメンバ30の上部には、車両前後方向に間隔をあけてエンジンブラケットフロント50とエンジンブラケットリア60とが配置され接合されている。
【0032】
車両前方側のエンジンブラケットフロント50は、エプロンフロント40の車両前方側端部よりも若干車両後方側に配置され、エプロンフロント40に接合されている。
【0033】
車両後方側のエンジンブラケットリア60は、エプロンフロント40の車両後方側端部とスプリングサポート110のフランジ部112とが重なって接合された接合部位を跨って配置され、エプロンフロント40とフロントスプリングサポート110とに接合されている。
【0034】
そして、エンジンブラケットフロント50の上部50A、エンジンブラケットリア60の上部60A、及び前述したエプロンフロント40の膨出部42した上部のエンジンマウント部42Aの合計三箇所(正確には左右の合計六箇所)に、車両前部に配置されたエンジン(図示略)が締結されている。
【0035】
図3に示すように、車両10のフロントサスペンション200は、ピストンロッド212を有するショックアブソーバ210を備えている。ピストンロッド212は、軸方向(車両上下方向)がショックアブソーバ210の軸方向(車両上下方向)と略同方向とされた棒状部材で、下側部分が外筒214に収容されている。外筒214の上端部には座金状のロアシート216が備えられている。このロアシート216よりも上側にはショックアブソーバ210と共に振動緩和手段を構成するコイルスプリング250が設けられており、このコイルスプリング250の下端がロアシート216に接し支持されている。
【0036】
ピストンロッド212の上端部にはアッパシート218が設けられており、コイルスプリング250の上端がアッパシート218に接し支持されている。また、アッパシート218は、スプリングプレート120の支持部120Aに設けられている取付部220(詳細は後述)にボルト締結されている。
【0037】
つぎに、本発明の実施形態に係るサスペンションタワー100について説明する。
【0038】
図3に示すように、サスペンションタワー100は、スプリングプレート120とスプリングサポート110とを有している。
【0039】
図1と図3とに示すように、スプリングプレート120は全体が板状とされると共に、中央部分には車両上方側に凸状となった略円形状の支持部120Aが形成されている。図3に示すように、スプリングプレート120はコイルスプリング250の上方に配置され、支持部120Aの下面(凹内)に取付部220が設けられている。そして、スプリングプレート1220は、取付部220及びアッパシート218を介してコイルスプリング250を支持している。
【0040】
スプリングサポート110は、車両幅方向内側に膨出され、上端部がスプリングプレート120に接合されコイルスプリング250の周囲を取り囲むように車両下方側に延在されている。また、下端部がフロントサイドメンバ30のフランジ部30Aに接合されている。なお、スプリングサポート110の下端部とフロントサイドメンバ30のフランジ部30Aとは、スポット溶接によって接合されており、図1における×印がスポット溶接の打点を示している。
【0041】
また、図1と図4とに示すように、スプリングサポート110の車両前方側端部のフランジ部112(図2も参照)は、エプロンフロント40の車両後方側端部と接合されている。
【0042】
スプリングサポート110の上壁部は、前述したサスペンシヨン200を構成するコイルスプリング250を支持するスプリングプレート120となっている。スプリングプレート120の車両幅方向外側端部はエプロンアッパメンバ20に接合されている。
【0043】
図2に示すように、スプリングサポート110は上方側110Aが略半円筒形状とされているが、下方側110Bはフロントサイドメンバ30に接合されるため略平面形状とされている。また、スプリングサポート110は、略円筒形状の上方側110Aの車両後方側には、略平面状の下方側110Bから連続する車両幅方向外側に向かって上り勾配とされた傾斜面(フランジ部)110Cが形成されている。
【0044】
スプリングサポート110の車両幅方向内側を構成する一般面114には、車両幅方向内側に向けて凸とされたビード150が形成されている。ビード150は車両上下方向を長手方向として形成されている。また、ビード150の水平断面形状は略台形状とされている(図2(B)参照)。なお、水平断面略台形状のビード150の車両幅方向側側面150A(台形の上底部分)と周囲の斜面150B(台形の側辺部分)との境界を稜線150Yとする。なお、逆U字状の稜線150Yの車両前方側を稜線150Y1,車両後方側を稜線150Y2とする。
【0045】
ビード150の車両後方側下部は車両後方側に湾曲され車両後方側に延在されている。言い換えると、車両前方側の稜線150Y1及び斜面150B1は、車両上下方向に沿って形成されているが、車両後方側の稜線150Y2及び斜面150B2は、下端部が車両後方側に向けて湾曲し、且つ車両前後方向に沿って車両後方側に延在するように形成されている。
【0046】
つまり、ビード150の車両後方側の稜線150Y2の下方側部150Y2は、車両後方側に円弧状に湾曲し車両前後方向に沿って車両後方側に延在する。
【0047】
なお、ビード150の車両後方側の稜線150Y2における車両後方側に延在する下方側部150Y22は、略平面状の下方側110Bに形成されている。また、ビード150の斜面150B2は、傾斜面110Cに繋がるように形成されている。
【0048】
また、ビード150の車両後方側の稜線150Y2における車両後方側に延在する下方側部150Y22は、車両後方側に円弧状に湾曲している。これにより、車両前方側の稜線150Y1と車両後方側との稜線150Y2との幅が末広がりの形状となる。つまり、車両前方側の稜線150Y1と車両後方側との稜線150Y2との間の平面部分が、下方側に向かって徐々に広がっていく。
【0049】
つぎに本実施形態の作用について説明する。
【0050】
図3に示すように、フロントサスペンション200(コイルスプリング250)からの突き上げ荷重等がスプリングプレート120に入力されると、図中の二点破線(想像線)で示すように、スプリングサポート110の一般面114が、車両幅方向に波打つように面外変形する。
【0051】
しかし、本実施形態のサスペンションタワー100は、スプリングサポート110の一般面114に車両上下方向にビード150(の稜線150Y1)が形成されているので、フロントサスペンション200(コイルスプリング250)から突き上げ荷重等が入力された際の、スプリングサポート110(の一般面114)の車両幅方向の面外変形(図3参照)が抑制される。
【0052】
また、図4に示すように、サスペンションタワー100(スプリングサポート110)には、車両前方側のエプロンフロント40のエンジンマウント部42Aに荷重が入力される。エンジンマウント部42Aは、スプリングプレート120のコイルスプリング250の支持部120Aよりも車両前方側に配置されている。よって、スプリングサポート110は、エンジンマウント部42Aの荷重の入力方向Fに引っ張られ、図中の二点破線(想像線)に示すように、車両上下方向を軸方向とする車両幅方向内側への捩れが加わる。
【0053】
しかし、本実施形態のサスペンションタワー100は、スプリングサポート110の一般面114に形成されたビード150は、車両後方側下部が車両後方側に湾曲し、稜線150Y2が車両後方側に延在する末広がりのビード形状となっている。言い換えると、ビード150における車両後方側の稜線150Y2の下方側部150Y22は、車両前後方向に沿って形成されている。そして、このようなビード形状にすることにより、車両上下方向を軸方向とする捩れ(図4参照)に対して強くなる。
【0054】
したがって、捩れが加わったスプリングサポート110の面外変形が効果的に抑制される。これにより、スプリングプレート120におけるコイルスプリング250を支持する支持部120Aの変位が小さくなり、この結果、車両の乗り心地性能に影響を及ぼす着力点剛性が向上する。
【0055】
また、スプングサポート110の捩れが抑制されるので、スプリングサポート110の下端部とフロントサイドメンバ30のフランジ部30Aとのスポット溶接の打点(図1の×印を参照)に加わる応力が低減される。言い換えると、必要とするスポット溶接の打点強度が低くなる。
【0056】
また、スプリングサポート110の一般面114にビード150が形成されているので、スプリングサポート110の剛性が向上する。これにより、スプリングサポート110の疲労強度性能が向上する。
【0057】
ここで、図7に示すように、ビード150が形成されていない(本発明で適用されていない)スプリングサポート810を考える。なお、図7(A)はビード150が形成されていないスプリングサポート810の斜視図である。また、(B)は(A)のB−B線に沿った水平断面図であり、(C)は(A)のC−C線に沿った水平断面図である。
【0058】
この図7のスプリングサポート810に対して、本実施形態のスプリングサポート110は、着力点剛性が約5%向上する。なお、図7のスプリングサポート810の板厚を、0.8mmから0.9mmとしても着力点剛性は約2%しか向上しない。つまり、本発明を適用することで、板厚を厚くすることなく、つまり、重量を増加させることなく、効果的に着力点剛性が向上することが判る。
【0059】
また、図7のスプリングサポート810の一般面が受ける応力は400MPaに対して、本実施形態のスプリングサポート110の一般面が受ける応力は190MPaに減少する。つまり、入力の疲労強度が本発明を適用することが効果的に向上することが判る。
【0060】
更に、フロントサイドメンバ30のフランジ部30Aとのスポット溶接の打点(図1の×印を参照)に加わる応力が、280MPaから185MPaに低減される。
【0061】
また、プレス成形において、形状が急激に変化する部位にシワが発生しやすい。よって、図7(A)に示すように、スプリングサポート810の略半円筒形状の上方側110Aと略平面状の下方側110Bとの境界部分、特に傾斜面110Cとの境界部分は急激に形状が変化するので、プレス成形時にシワWが発生しやすい。
【0062】
これに対して、図2に示すように本実施形態のスプリングサポート110は、車両前方側の稜線150Y1と車両後方側との稜線150Y2との幅が下方側に向かって徐々に広がっていく末広がりの形状となる(稜線150Y1と稜線150Y2との間の平面部分が下方側に向かって徐々に広がっている)。また、ビード150車両後方側に斜面150B2は、傾斜面110Cに繋がるように形成されている。
【0063】
よって、スプリングサポート110の一般面114おける略半円筒形状から略平面状への急激な形状変化が抑えられる。したがって、スプリングサポート110のプレス成形時における略半円筒形状の上方側110Aと略平面状の下方側110Bとの境界部分、特に傾斜面110Cとの境界部分のシワW(図7(A)参照)の発生が抑えられ、成形性が向上する。
【0064】
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【0065】
例えば、上記実施形態では、ビード150は車両幅内側に向けて凸となっていたが、これに限定されない。車両幅方向外側に向けて凸となっていてもよい。
【0066】
また、例えば、上記実施形態では、ビード150の車両後方側の稜線150Y2の下方側部150Y22は、車両後方側に円弧状に湾曲し、車両後方側に延在しているが、これに限定されない。例えば、稜線における上下方向に沿った線部と車両前後方向に沿って延在している線部とが、円弧(曲線)でなく、一つ又は複数の線分で結ばれた形状であってもよい。或いは、略L字状に屈曲されていてもよい。
【0067】
つぎに、本発明が適用されていない参考例としてのサスペンションタワーについて説明する。
【0068】
まず、第一参考例のサスペンションタワーについて、図5を用いて説明する。図5(A)は、第一参考例のサスペンションタワーを構成するスプリングサポート810を示す斜視図である。図5(B)は、(A)のB−B線に沿った水平断面図である。
【0069】
図5に示すように、スプリングサポート610は上方側110Aが略半円筒形状とされているが、下方側110Bは略平面形状とされている。また、スプリングサポート110の車両幅方向内側を構成する一般面114には、車両幅方向内側に向けて凸とされたビード650が形成されている。ビード650は車両上下方向を長手方向として形成されている。また、ビード650の水平断面形状は略台形状とされている(図5(B)参照)。
【0070】
ビード650の車両前方側の稜線650Y1及び斜面650B1は、車両上下方向に沿って形成されている。同様に、車両後方側の稜線650Y2及び斜面650B2も、車両上下方向に沿って形成されている。
【0071】
このように、第一参考例のサスペンションタワーは、スプリングサポート610の一般面114に車両上下方向に沿ってビード650が形成されているので、サスペンション(コイルスプリング)から突き上げ荷重等が入力された際の一般面114の車両幅方向の面外変形(図3参照)が抑制される。
【0072】
つぎに、第二参考例のサスペンションタワーについて、図6を用いて説明する。図6は第二参考例のサスペンションタワー700を示す斜視図である。
【0073】
図6に示すように、略半円筒形状のスプリングサポート710の一般面714には、車両幅方向内側に向けて凸とされた水平断面略矩形状のリインフォース750が溶接されている。リインフォース7500は車両上下方向に沿って溶接されている。
【0074】
このように第二参考例のサスペンションタワー700は、スプリングサポート710の一般面714に車両上下方向に沿ってリインフォース750が溶接されているので、サスペンション(コイルスプリング)からの突き上げ荷重等が入力された際の一般面714の車両幅方向の面外変形(図3参照)が抑制される。
【符号の説明】
【0075】
20 エプロンアッパメンバ
30 フロントサイドメンバ(サイドメンバ)
40 エプロンフロント(エプロンパネル)
42A エンジンマウント部
100 サスペンションタワー
110 スプリングサポート
110A 上方側
110B 下方側(略平面形状部分)
114 一般面
120 スプリングプレート
150 ビード
150Y1 稜線
150Y2 稜線
150Y22 下端部側(下端部側)
200 フロントサスペンション(サスペンション)
250 コイルスプリング(スプリング)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向を長手方向として配置されたエプロンアッパメンバに車両幅方向外側端部が接合されると共に、サスペンションを構成するスプリングの上方に配置され前記スプリングを支持するスプリングプレートと、
車両幅方向内側に膨出し且つ前記スプリングの周囲を取り囲むように配置され、上端部が前記スプリングプレートに接合されると共に下端部が前記エプロンアッパメンバの下方に車両前後方向に沿って配置されたサイドメンバに接合され、更に車両幅方向外側端部が前記エプロンアッパメンバ及び前記フロントサイドメンバに接合され且つエンジンマウント部が設けられたエプロンパネルに接合されたスプリングサポートと、
前記スプリングサポートの車両幅方向内側を構成する一般面に、車両幅方向内側又は車両幅方向外側に向けて凸とされ、車両前方側の稜線が車両上下方向に沿って形成され、車両後方側の稜線が車両上下方向に沿って形成され且つ下端部側が車両前後方向に沿って車両後方側に延在するように形成されたビードと、
を備えるサスペンションタワー。
【請求項2】
前記車両後方側の稜線の前記下端部側は、車両後方側に湾曲し、車両後方側に延在する請求項1に記載のサスペンションタワー。
【請求項3】
前記スプリングサポートの前記一般面は、上方側が略円筒形状とされ且つ下方側が略平面形状とされ、
前記ビードの車両後方側の稜線における前記下端部側は、前記スプリングサポートの一般面における下方側の略平面形状部分に形成されている請求項2に記載のサスペンションタワー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−167949(P2010−167949A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13333(P2009−13333)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】