説明

サポートプレートの貼り付け方法

【課題】 半導体ウェーハ等の基板とサポートプレートの間に挟まったガスを容易に除去しつつ圧着できる貼り付け方法を提供する。
【解決手段】 半導体ウェーハ等の基板Wの回路形成面に接着剤を塗布して回路形成面の上に接着剤層1を形成し、次いでこの接着剤層1を加熱して乾燥固化せしめ、この後、前記接着剤層1の上に厚み方向の貫通孔3をプレートの全域に亘って設けたサポートプレート2を重ね、この状態で減圧雰囲気且つ加熱下においてサポートプレート2を接着剤層1に押し付けて圧着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等の基板を薄板化する際にバックアップのために基板にサポートプレートを貼り付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードや携帯電話の薄型化、小型化、軽量化が要求されており、この要求を満たすためには組み込まれる半導体チップについても薄厚の半導体チップとしなければならない。このため半導体チップの基になるウェーハの厚さは現状では125μm〜150μmであるが、次世代のチップ用には25μm〜50μmにしなければならないと言われている。
【0003】
半導体ウェーハの薄板化には従来から図4に示す工程を経ている。即ち、半導体ウェーハの回路(素子)形成面(A面)に保護テープを貼り付け、これを反転して半導体ウェーハの裏面(B面)をグラインダーで研削して薄板化し、この薄板化した半導体ウェーハの裏面をダイシングフレームに保持されているダイシングテープ上に固定し、この状態で半導体ウェーハの回路(素子)形成面(A面)を覆っている保護テープを剥離し、この後ダイシング装置によって各チップ毎に切り離すようにしている。
【0004】
上記した方法は特許文献1に開示されている。尚、特許文献1にあっては、保護テープとして耐熱性保護テープを用い、剥離する際にはこの保護テープの一端に強粘着テープを粘着して薄板化した半導体ウェーハから引き剥がすようにしている。
【0005】
また特許文献2には、保護テープの代わりに窒化アルミニウム−窒化硼素気孔焼結体にラダー型シリコーンオリゴマーを含浸せしめた保護基板を用い、この保護基板と半導体ウェーハとを熱可塑性フィルムを用いて接着する内容が開示されている。
【0006】
また特許文献3には、保護基板として半導体ウェーハと実質的に同一の熱膨張率のアルミナ、窒化アルミニウム、窒化硼素、炭化珪素などの材料を用い、また保護基板と半導体ウェーハとを接着する接着剤としてポリイミドなどの熱可塑性樹脂を用い、この接着剤の適用法として、10〜100μmの厚さのフィルムとする方法或いは接着剤樹脂溶液をスピンコートし、乾燥させて20μm以下のフィルムにする方法が提案されている。
【0007】
上記の一連の工程のうち、半導体ウェーハをグラインダーなどによって薄板化する工程では、半導体ウェーハの回路形成面側をテープや板材でサポートする必要がある。特許文献4には、半導体ウェーハにサポートプレートを貼り付ける内容が開示されている。
【0008】
特許文献4に開示される内容は、上下一対のホットプレートを配置するとともに、これらホットプレートの外側に上下一対の真空ポットを設け、上下のホットプレート間で半導体ウェーハとサポートプレートとの積層体を圧着する間、減圧雰囲気で行うようにしている。特に、特許文献1では上方のホットプレートを昇降動せしめる手段として油圧式のプレス機を用いず、ダンパーとしても機能するエアプランジャーを用いることで、ホットプレートからの熱で積層体が膨張した際に発生する逆圧力で半導体ウェーハが破損することを防止している。
【0009】
【特許文献1】特開2002−270676号公報 段落(0035)
【特許文献2】特開2002−203821号公報 段落(0018)
【特許文献3】特開2001−77304号公報 段落(0010)、(0017)
【特許文献4】特開2002−192394号公報 段落(0012)、(0014)、(0019)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来の貼り合わせ方法では、接着剤中の溶剤が完全に揮発せずにボイドが発生することがある。このボイドが発生すると半導体ウェーハとサポートプレートとの積層体の厚みが部分的に不均一になり、グラインダーで基板を削る際に基板の厚みが不均一になる。
【0011】
特に特許文献4では、貼り合せを減圧且つ加熱下で行うことが開示されているが、それでも完全にボイドの発生を防ぐことができない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決すべく本発明に係る貼り付け方法は、半導体ウェーハ等の基板の回路形成面に接着剤を塗布して回路形成面の上に接着剤層を形成し、次いでこの接着剤層を加熱して乾燥固化せしめ、この後、前記接着剤層の上に厚み方向の貫通孔をプレートの全域に亘って設けたサポートプレートを重ね、この状態で減圧雰囲気且つ加熱下においてサポートプレートを接着剤層に押し付けて圧着するようにした。
【0013】
このように、サポートプレートを圧着する前に接着剤層を加熱して乾燥固化せしめることでボイドの発生を有効に阻止できる。また、圧着の際に加熱することで一旦乾燥した接着剤層が柔らかくなり基板とサポートプレートとを接着することができ、更にサポートプレートとして多孔板を用いることで圧着の際に孔を介して接着剤中の溶剤を揮発せしめることができ、ボイドの原因を除去できる。
【0014】
前記基板とサポートプレートとの圧着は、保持台と押圧板との間で基板とサポートプレートとの積層体を加圧することで行い、更に前記押圧板をサーボモータを駆動することで昇降動せしめる構成とすれば、トルク(圧力)制御または位置制御することで積層体に加わる圧力を調整することが可能になり、基板の厚み変更などに容易に対処できる。
【0015】
ここで、基板の回路形成面に塗布した接着剤の乾燥は250℃以下の温度で行うことが好ましい。高温で乾燥せしめると、表面のみが乾燥し中が乾燥していない状態になり、後にボイドの原因となる。また減圧雰囲気における積層体の加熱温度は200℃以下とすることが好ましい。高温で圧着するとやはりボイドが生じやすい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半導体ウェーハ等の基板とサポートプレートを圧着せしめる際に、ボイド及びガスの発生を抑制でき、基板とサポートプレートとの貼り付け精度も向上する。
また、積層体の厚みも均一になるので、従来よりも基板を更に薄厚化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る貼り付け方法を組み込んだ半導体ウェーハの薄板化工程を説明した図、図2は本発明に係る方法の実施に用いる半導体ウェーハの貼り付け装置の全体断面図、図3は剥離用の溶剤供給について説明した図であり、最初に薄板化工程の全体を説明する。
【0018】
先ず図1(a)に示すように、半導体ウェーハWの回路(素子)形成面(A面)に接着剤液を塗布する。塗布には例えばスピンナーを用いる。接着剤液としてはアクリル樹脂またはノボラックタイプのフェノール樹脂系材料が挙げられるが、これに限定されない。また接着剤の厚みは数μm〜100μm程度とする。
【0019】
次いで、図1(b)に示すように、上記の接着剤をベークして焼き固めて流動性をなくした接着剤層1を基板Wの表面に形成する。加熱には例えばオーブンを用いる。接着剤層1の厚みは上記に限らず、半導体ウェーハWの表面(A面)に形成した回路の凹凸に応じて決定する。尚、一回の塗布では必要な厚みを出せない場合には、塗布と予備乾燥を複数回繰り返して行う。この場合、最上層以外の接着剤層の予備乾燥は接着剤に流動性を残さないように乾燥の度合いを強める。
【0020】
以上によって所定厚みの接着剤層1が形成された半導体ウェーハWに、本発明に係る貼り付け方法によってサポートプレート2を貼り付ける。貼り付け装置の詳細は後述する。サポートプレート2は例えば厚み方向の貫通孔3を全域に形成したガラス板(厚み1.0mm、外径201.0mm)とする。尚、サポートプレート2の材質はこれに限定されない。
【0021】
この後、一体化した半導体ウェーハWとサポートプレート2からなる積層体を反転し、半導体ウェーハWの裏面(B面)をグラインダー4で研削し、半導体ウェーハWを薄板化する。尚、研削にあたってはグラインダー4と半導体ウェーハWとの間に生じる摩擦熱を抑えるために水(研削液)を半導体ウェーハWの裏面に供給しつつ行う。ここで、前記接着剤は水に不溶(アルコールに可溶)なものを選定しているため、研削の際に半導体ウェーハWからサポートプレート2が剥がれることがない。
【0022】
上記薄板化した半導体ウェーハWの裏面(B面)に必要に応じて回路などを形成した後、当該裏面をダイシングテープ5上に固定する。このダイシングテープ5は粘着性を有するとともにフレーム6に保持されている。
【0023】
この後、サポートプレート2の上から溶剤としてアルコールを注ぐ。アルコールはサポートプレート2の貫通孔3を介して接着剤層1に到達し接着剤層1を溶解する。この場合、フレーム6を図示しないスピンナーにて回転せしめることで、アルコールを短時間のうちに接着剤層1の全面に行き渡らせることができる。用いるアルコールとしてはエタノールやメタノールなどの分子量が小さいものほど溶解性が高いので好ましい。また複数のアルコールを混合してもよい。またアルコールの代わりにケトンまたはアルコールとケトンとの混合溶液を用いてもよい。
【0024】
アルコールなどを接着剤層1に供給する手段としては、溶剤を満たした槽にサポートプレート2が接着された半導体ウェーハWを浸漬してもよい、この場合超音波振動を加えれば更に効果的である。
【0025】
以上の如くして接着剤層1を溶解せしめたならば、サポートプレート2上の余分な溶剤を除去した後、治具を用いてサポートプレート2を基板Wの周辺部から徐々に剥離する。
【0026】
そして、サポートプレート2を剥離した後、ダイシングカッター7によって半導体ウェーハWをチップサイズに切断する。切断後は、ダイシングテープ5に紫外線を照射し、ダイシングテープ5の粘着力を低下せしめて、切断したチップを個々に取り出す。
【0027】
次に、本発明に係る貼り付け方法の実施に利用する貼り付け装置について図2に基づいて説明する。貼り付け装置10は減圧チャンバー11を備えている。この減圧チャンバー11は配管12を介して真空引き装置につながり、また一側面には搬入・搬出用の開口13が形成され、この開口13をシャッター14で開閉するようにしている。
【0028】
シャッター14はシリンダユニット15にて昇降動せしめられ、上昇した位置で側方からプッシャー16にて押圧することで、シャッター14の内側面に設けたシールが開口13の周囲に密に当接し、チャンバー11内を気密に維持する。またプッシャー16を後退させシャッター14を下降させることで、開口13が開となり、この状態で搬送装置を用いてウェーハWとサポートプレート2との積層体を出し入れする。
【0029】
前記チャンバー11内には前記積層体を圧着する保持台17と押圧板18が配置されている。保持台17は炭化珪素(SiC)からなり押圧板18はアルミナ(Al)からなる。尚、セラミックス焼結体にて押圧板を構成し、このセラミックス焼結体に排気管を接続する構成も考えられるが、この構成にすると十分に接着剤中のガスが抜けないおそれがある。
【0030】
前記保持台17には貫通孔19が形成され、この貫通孔19に昇降ピン20が挿通している。この昇降ピン20はチャンバー11の下方に設けられたシリンダユニット21で昇降動するプレート22に取り付けられている。
【0031】
また、前記保持台17にはヒータ23が埋設され、このヒータ23によって前記積層体を200℃程度まで加熱し、一旦硬化した接着剤を柔らかくする。尚ヒータは押圧板18側に設けてもよい。
【0032】
一方、前記押圧板18はバックプレート24に保持され、このバックプレート24はチャンバー11を貫通する軸25の下端に取り付けられている。この軸25の中間部にはフランジ26が設けられ、このフランジ26とチャンバー11上面との間に蛇腹27が取り付けられ、チャンバー11内の気密状態を維持している。
【0033】
また前記チャンバー11からは上方にフレーム28が伸び、このフレーム28にサーボモータ29が支持され、このサーボモータ29によって回転せしめられるスクリューネジ30に昇降体31のナット部32が螺合し、この昇降体31にボールジョイント33を介して前記軸25の上端部が支持されている。更に、軸25の側方には軸25の上下位置を検出するセンサ34を配置している。
【0034】
以上において半導体ウェーハWとサポートプレート2の積層体を圧着するには、
先ず押圧板18の平行度の調整を行う。平行度を出すには、ボールジョイント33のボルトを緩めボールジョイント33をフリーの状態にする。そして、この状態のまま押圧板18を自重で下降せしめ、押圧板18の下面を保持台17の上面に当接させる。この時点で保持台17と押圧板18とは平行になる。次いで、ボルトを締め付けボールジョイント33を固定した後、押圧板18を上昇せしめる。
【0035】
平行度の調整は毎回行う必要はなく、適当な回数ごとに行う。また、上記では積層体を挟まずに平行度の調整を行ったが、圧着する積層体と同一厚みの板材を保持台17と押圧板18との間に介在させて平行度を調整してもよい。
【0036】
以上によって平行度の調整が終了したら、窒素ガスがパージされて大気圧状態にあるチャンバー11の開口13をシャッター14を下げることで開とする。そして、図示しない搬送装置で半導体ウェーハWとサポートプレート2の積層体をチャンバー11内に入れ、ピン20上に受け渡し、シャッター14で開口13を閉じ、チャンバー11内を気密な状態にする。図2はこの状態を示している。
【0037】
次いでチャンバー11内を減圧し、圧力が1kPa以下になった時点で、シリンダユニット21を駆動してピン20を下げ、積層体を150℃程度まで加熱されている保持台17上に載置する。
【0038】
上記と並行して、サーボモータ29を駆動して押圧板18を予め設定した位置まで降下せしめ、保持台17と押圧板18との間で積層体を加圧する。この状態で約1分間保持して基板Wとサポートプレート2とを熱圧着する。
【0039】
この後、窒素ガスをパージしてチャンバー11内を大気圧に戻し、押圧板18を上昇せしめ、シャッター14を下げ、熱圧着せしめられた積層体をチャンバー11外へ搬出する。
尚、上記実施例ではチャンバー11内の減圧状態を大気圧に戻した後に押圧板18を上昇せしめるようにしたが、先に押圧板18を上昇せしめ、この後にチャンバー11内を大気圧に戻してもよい。
【0040】
サポートプレート2の上から溶剤としてのアルコールを注いで接着剤を溶解させる。図3は溶剤供給手段の具体例を示し、この例にあっては溶剤供給手段を溶剤供給プレート40の下面にOリング41を設けている。溶剤供給プレート40には溶剤(剥離液)供給管42及び溶剤排出管43が接続されている。而して、図3(a)の状態から溶剤供給プレート40を降下させ、図3(b)に示すように、サポートプレート2の上面にOリング41を介して溶剤供給プレート40を重ね、次いでサポートプレート2、Oリング41及び溶剤供給プレート40で囲まれる空間に溶剤供給管42から溶剤を供給し、サポートプレート2に形成した貫通孔3を介して接着剤層1を溶解し除去する。
【0041】
このように、Oリング41によって溶剤が供給される空間を制限することで、溶剤がダイシングテープに極力溶剤がかかることを防げる。またテープにアルコールが触れた場合、アルコールによって溶解したテープののりがウェーハ表面を汚染する懸念があるが、この機構ではそれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る半導体ウェーハの貼付け方法を組み込んだ半導体ウェーハの薄板化工程を説明した図
【図2】本発明に係る方法の実施に用いる半導体ウェーハの貼付け装置の全体断面図
【図3】(a)は溶剤供給手段が上昇している状態を示す図、(b)は溶剤供給手段が下降している状態を示す図
【図4】従来の半導体ウェーハの薄板化工程を説明した図
【符号の説明】
【0043】
1…接着剤層、2…サポートプレート、3…貫通孔、4…グラインダー、5…ダイシングテープ、6…フレーム、7…ダイシング装置、10…貼付け装置、11…減圧チャンバー、12…減圧用配管、13…開口、14…シャッター、15…シリンダユニット、16…プッシャー、17…保持台、18…押圧板、19…貫通孔、20…昇降ピン、21…シリンダユニット、22…プレート、23…ヒータ、24…バックプレート、25…軸、26…フランジ、27…蛇腹、28…フレーム、29…サーボモータ、30…スクリューネジ、31…昇降体、32…ナット部、33…ボールジョイント、34…センサ、40…溶剤供給プレート、41…Oリング、42…溶剤(剥離液)供給管、43…溶剤排出管、W…半導体ウェーハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハ等の基板の回路形成面をサポートプレートに貼り付ける方法であって、基板の回路形成面に接着剤を塗布して回路形成面の上に接着剤層を形成し、次いでこの接着剤層を加熱して乾燥固化せしめ、この後、前記接着剤層の上に厚み方向の貫通孔をプレートの全域に亘って設けたサポートプレートを重ね、この状態で減圧雰囲気且つ加熱下においてサポートプレートを接着剤層に押し付けて圧着することを特徴とするサポートプレートの貼り付け方法。
【請求項2】
請求項1に記載の貼り合わせ方法において、前記基板とサポートプレートとの圧着は、保持台と押圧板との間で基板とサポートプレートとの積層体を加圧することで行い、更に前記押圧板をトルク(圧力)制御または位置制御することで積層体に加わる圧力を調整することを特徴とするサポートプレートの貼り付け方法。
【請求項3】
請求項1に記載の貼り合わせ方法において、前記基板の回路形成面に塗布した接着剤の乾燥は250℃以下の温度で行い、減圧雰囲気における積層体の加熱温度は200℃以下とすることを特徴とするサポートプレートの貼り付け方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−156683(P2006−156683A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344737(P2004−344737)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】