サングリフェリン系化合物
とりわけ、シクロフィリン阻害剤として有用な式(I)の化合物が提供される。
【化1】
【化1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(序論)
本発明は、例えば、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのウイルスによるウイルス感染の治療における、シクロフィリン阻害剤として有用なサングリフェリンアナログに関する。本発明は、特にHCV、HBV、及びHIV感染の治療のための、医学におけるそれらの使用方法、及び筋ジストロフィーなどのミトコンドリア膜透過性遷移孔(mPTP)の阻害が有用な疾病におけるそれらの使用方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
(C型肝炎)
C型肝炎ウイルス(HCV)はプラス鎖のRNAウイルスであり、感染は輸血後肝炎の主な原因である。HCVは最もよく見られる慢性の血液由来の感染であり、米国における肝臓疾患による死亡の主な原因である。世界保健機関は、1億7千万人を超えるHCV感染の慢性キャリアがいると推定しており、これは世界の人口の約3%である。治療していないHCV感染患者のうち、約70%〜85%は慢性HCV感染を起こし、そのため肝硬変及び肝細胞癌を起こすリスクが高い。先進国では、肝臓癌の全症例の50〜76%及び全肝臓移植の3分の2は慢性HCV感染によるものである(Mannsら、2007)。
【0003】
肝疾患に加え、慢性感染患者は、他の慢性HCV関連疾患も起こすことがあり、他者への伝染の源となる。HCV感染は、関節痛(関節の疼痛)、皮膚の発疹、及び圧倒的に腎臓への内臓の損傷などの、非肝臓合併症を起こす。HCV感染は重大な世界的な医療の負担であり、現在C型肝炎に利用できるワクチンはない(Straderら、2004; Jacobsonら、2007; Mannsら、2007 Pawlotsky、2005; Zeuzem及びHermann、2002)。
【0004】
(HCVの治療)
現在の標準治療(SoC)は、24〜48週間のペグ化インターフェロンα(pIFNα)の皮下注射及び抗ウイルス薬リバビリンの経口投薬である。治療の成功は持続性ウイルス陰性化(SVR)により定義されるが、これは治療期間の最後及び6ヶ月後に血清中にHCV RNAが存在しないことにより定義される。SoCに対する全奏効率は、主に遺伝子型及び治療前HCV RNAレベルによる。遺伝子型2及び3の患者は、遺伝子型1に感染している患者よりもSoCに対して、より反応しそうである(Melnikova, 2008; Jacobsonら、2007)。
【0005】
相当数のHCV患者はSoC治療に十分に反応しないか、又は副作用のために療法に耐えることができず、フルコースの完了に関する頻発する問題につながる。SoCの全臨床SVR率(overall clinical SVR rate)はわずか50%ほどである(Melnikova, 2008)。耐性の発生は、治療の失敗の裏にあるもう1つの因子である(Jacobsonら、2007)。SoCは、うつ病の過去の顕著なエピソード又は心臓病を持つ患者など、治療の候補ではないと考えられる患者においても禁忌である。治療の中断につながることの多いSoCの副作用には、感冒様の病気、熱、疲労、血液病、貧血、白血球減少、血小板減少、脱毛症、及びうつ病がある(Mannsら、2007)。
【0006】
SoCを利用する長い治療に関連する副作用、耐性の発生、及び最適以下の全成功率を考慮すると、より安全で効き目のある新しい治療が、HCV感染の治療に切実に求められている。新しい治療の目的は、向上した効力、向上した毒性プロファイル、向上した耐性プロファイル、向上した生活の質、及びその結果得られる患者のコンプライアンスの向上を含む。HCVは生活環が短く、そのため、薬物療法の間の薬物耐性の発生はよく見られる。
【0007】
ウイルスRNAポリメラーゼNS5B又はウイルスプロテアーゼNS3などのウイルスタンパク質を標的とする、C型肝炎の新規の特異的標的抗ウイルス療法(STAT-C)薬が開発されつつある(Jacobsonら、2007; Parfieniukら、2007)。さらに、ウイルスの標的でなくヒトのタンパク質(例えば、シクロフィリン)を標的とする新規の化合物も開発されつつあり、薬物療法の間の耐性の発生率低減につながると期待されている(Mannsら、2007; Pockros, 2008; Pawlotsky J-M, 2005)。
【0008】
(シクロフィリン阻害剤)
シクロフィリン(CyP)は、タンパク質のコンフォメーション変化と折りたたみを容易にするペプチジル-プロリルシス-トランスイソメラーゼ活性を示す細胞タンパク質のファミリーである。CyPは、転写調節、免疫応答、タンパク質分泌、及びミトコンドリア機能などの細胞プロセスに関与している。HCVウイルスは、ヒトの感染の間その生活環のためにCyPをリクルートする。元々は、CyPが、RNA複製を促進するHCV非構造的タンパク質NS5B RNAポリメラーゼのRNA結合活性を刺激すると考えられていたが、CyP PPIアーゼ活性の要求を含む、代わりの仮説もいくつか提案されてきた。A及びBを含むCyPの種々のアイソフォームが、HCVの生活環に関与していると考えられている(Yangら、2008; Appelら、2006; Chatterjiら、2009; Gaitherら、2010)。マウス(Colganら、2000)及びヒトT細胞(Braaten及びLuban、2001)においてノックアウトを発生させる能力は、CyPAが細胞の成長及び生存にとって任意であることを示している。類似の結果が、細菌(Herrlerら、1994)、ニューロスポラ(Neurospore)(Tropschugら、1989)、及びサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(Dolinskiら、1997)におけるCyPAホモログの分裂により観察された。したがって、CyPの阻害は、HCV感染を治療するための新規で魅力的な宿主標的であり、SVRを高め、耐性の出現を防止し、治療の副作用を低減する目的で、現行のSoC又はSTAT-C薬に対する新しい潜在的な追加物である。
【化1】
【0009】
シクロスポリンA(Inoueら、2003)(「CsA」)及び構造が密接に関連しているその非免疫抑制臨床アナログDEBIO-025(Paeshuyseら、2006; Flisiakら、2008)、NIM811(Mathyら、2008)、及びSCY-635(Hopkinsら、2009)はシクロフィリンに結合することが知られており、シクロフィリン阻害剤としてHCV感染の治療におけるインビトロ及び臨床的な効能を示した(Crabbeら、2009; Flisiakら、2008; Mathyら、2008; Inoueら、2007; Ishiiら、2006; Paeshuyseら、2006)。早期のCsAに関する耐性研究はHCV NS5B RNAポリメラーゼにおける変異を示し、シクロフィリンBのみがHCV複製プロセスに関与するだろうということを示唆したが(Robidaら、2007)、最近の研究はHCV複製におけるシクロフィリンAの欠くことのできない役割を示唆した(Chatterjiら、2009; Yangら、2008)。NS5Aウイルスタンパク質における変異がCsA耐性にも関連し、NS5AがCyPA及びCypBの両方とそれらの特異的ペプチジル-プロリルシス/トランスイソメラーゼ(PPIアーゼ)活性に関して相互作用することを考慮すると、ウイルスの生活環における両シクロフィリンの役割がさらに示唆される(Hanoulleら、2009)。
【0010】
シクロスポリンアナログの抗HCV効果は免疫抑制性に依存せず、免疫抑制性はカルシニューリンに依存する。これは、HCV活性に必須な要件がCyP結合であり、カルシニューリン結合は必要でないことを示した。DEBIO-025は、HCV治療用の臨床的に最も進んだシクロフィリン阻害剤であり、最も優勢な4種のHCV遺伝子型(遺伝子型1、2、3、及び4)に対してインビトロ及びインビボの効力を示した。耐性研究は、DEBIO-025に対する耐性を与える変異がポリメラーゼ及びプロテアーゼの阻害剤に関して報告されていたものとは異なり、STAT-C耐性ウイルスレプリコンとは交叉耐性が全くないことを示した。より重要であるが、DEBIO-025は、プロテアーゼ及びポリメラーゼの両方の阻害剤に対する耐性を与えるエスケープ変異の発生も防止した(Crabbeら、2009)。
【0011】
しかし、臨床開発中のCsA系シクロフィリン阻害剤には、それらの共通の構造クラスに関連すると思われるいくつかの問題、例えば、療法の中止につながることがあり臨床の投与レベルを限定してきた特定の有害事象;可変的な効能を生み出し得る可変的な薬物動態;及び投薬問題を生み出し得る薬物-薬物相互作用の増大したリスクなどがある。
【0012】
DEBIO-025を服用する患者に最も頻繁に起こる有害事象(AE)には、黄疸、腹痛、嘔吐、疲労、及び発熱があった。臨床的に最も重要なAEは、高ビリルビン血症及び血小板数の減少(血小板減少症)であった。ペグ-IFNは重度の血小板減少症を起こすことがあり、DEBIO-025と組み合わせれば重大な臨床上の問題となるだろう。ビリルビンの増加及び血小板の減少は両方とも、NIM-811による早期の臨床試験において記載されてきた(Keら、2009)。DEBIO-025臨床試験の間に観察された高ビリルビン血症は治療の中止の後で逆転したが、それは16人の患者のうち4人の治療中断の原因であり、将来の試験のための投与レベルの低下の原因であった。HCVにおけるシクロフィリン阻害剤の抗ウイルス効果は投与量に関連するので、投与量の低下は抗ウイルス効果の低下につながり、単独療法として投与された場合、CsA系シクロフィリン阻害剤の後のいくつかの試験は、HCVウイルス量の低下が全くないか、又はあまり低下しないことを示した(Lawitzら、2009; Hopkinsら、2009; Nelsonら、2009)。DEBIO-025及びシクロスポリンAは、胆汁酸塩輸送ポンプなどの胆汁酸トランスポーター及び他の肝トランスポーター(特にMRP2/cMOAT/ABCC2)の阻害剤であることが知られている(Crabbeら、2009)。胆汁酸トランスポーター、特にMRP2との相互作用が、DEBIO-025の高投与レベルで見られる高ビリルビン血症の原因であり得ることが示唆された(Nelsonら、2009)。
【0013】
さらに、DEBIO-025及びシクロスポリンAはチトクロムP450(特にCYP3A4)による代謝の基質であり、ヒトP糖タンパク質(MDR1)の基質及び阻害剤であることが知られている(Crabbeら、2009)。シクロスポリンAは、インビトロでCYP3A4の阻害剤であることも示された(Niwaら、2007)。これは、例えば、ケトコナゾール、シメチジン、及びリファンピシンなど、CYP3A4の基質、誘導剤、又は阻害剤である他の薬物との薬物-薬物相互作用の増大したリスクがあり得ることを示している。さらに、P糖タンパク質による輸送を受けやすい薬物(例えば、ジゴキシン)との相互作用も予想され、これは付随する他の疾病の治療を受けているHCV患者に重症の薬物-薬物相互作用を起こし得る(Crabbeら、2009)。CsAは非常に変わりやすい薬物動態を持つことも知られており、初期の製剤は1〜89%の経口バイオアベイラビリティーを示した(Kapurtzakら、2004)。費用のかかる患者の血中濃度のモニタリングがないと、これは、血漿中濃度上昇による副作用の出現率の上昇をもたらすことがあり、或いは血漿中濃度低下による臨床反応の低下をもたらすことがある。
【0014】
シクロフィリンの阻害がHCVの治療に対する有望な新しい手法を表すことを考慮すると、HCV感染に対する併用療法において使用するための、より強力で安全なCyP阻害剤を発見し、かつ開発する必要がある。
【0015】
(サングリフェリン)
サングリフェリンA(SfA)及びその天然の同族体は、ストレプトマイセス属(Streptomyces sp.)A92-308110(DSM 9954としても知られる)(国際公開第97/02285号参照)により産生される混合非リボソームペプチド/ポリケチドのクラスに属し、シクロフィリンA(CyPA)に対する高い親和性に基づいて元々発見された。SfAは、発酵ブロス中に最も豊富にある成分であり、CsAに比べてCyPAに対しておよそ20倍高い親和性を示す。これは、サングリフェリンがHCVの治療に有用になり得るという示唆をもたらした(国際公開第2006/138507号)。サングリフェリンは、インビトロで試験される場合CsAよりも低い免疫抑制活性を示すことも示された(Sanglierら、1999; Fehrら、1999)。SfAは、CyPAのCsA結合部位に高い親和性で結合する(Kallenら、2005)。
【化2】
【0016】
SfAの免疫抑制作用機構は、CsA、FK506、及びラパマイシンなどの他の公知のイムノフィリン-結合性免疫抑制薬の機構とは異なる。SfAは、CsAの標的であるカルシニューリンのホスファターゼ活性を阻害せず(Zenkeら、2001)、その代わりに、その免疫抑制活性は、インターロイキン-6の阻害(Hartelら、2005)、インターロイキン-12の阻害(Steinschulteら、2003)、及びインターロイキン-2-依存性T細胞増殖の阻害(Zhang及びLiu、2001)によるものとされてきた。しかし、SfAがその免疫抑制効果を発揮する分子標的及び機構は今のところ未知である。
【0017】
SfAの分子構造は複雑であり、CyPAとのその相互作用は、主に該分子のマクロ環部分により媒介されていると考えられている。実際、SfAの酸化開裂から誘導されたマクロ環化合物(ヒドロキシマクロ環)はCyPAに対して強い親和性を示した(Sedraniら、2003)。X線結晶構造データは、ヒドロキシマクロ環がCsAと同じCyPAの活性部位に結合することを示した。SfAのマクロ環部分に基づくアナログは免疫抑制性が欠けていることも示されており(Sedraniら、2003)、HCV療法における潜在的な使用のための非免疫抑制CyP阻害剤の設計の機会を与える。
【0018】
サングリフェリンなどの化合物の薬物開発における問題の1つは、親油性が高い分子の場合の低溶解度である。これは、低いバイオアベイラビリティ、食効の機会増大、剤形からの不完全な放出の頻度増大、及び患者間の差違増大につながることがある。難溶性分子は、厳しく限定された送達技術の選択及び複雑さを増す溶解試験などの製剤に関する多くの問題も呈し、インビボの吸収と限定された相関又は低い相関を持つ。これらの問題は、多くの化合物の開発を停止させるほど手強いことが多い(Hiteら、2003)。
【0019】
(シクロフィリン阻害剤の他の治療的使用)
(ヒト免疫不全ウイルス(HIV))
CsA及びDEBIO-025などのシクロフィリン阻害剤は、HIV複製の阻害にも潜在的な効用を示した。シクロフィリン阻害剤は、HIV逆転写の進行/完了の間のCyPAの機能と干渉すると考えられている(Ptakら、2008)。しかし、臨床試験では、DEBIO-025は、それぞれ9名及び2名の患者でHIV-1 RNAレベルを≧0.5及び>1 log10 コピー/mLに低減しただけであり、治療された患者のうち27名はHIV-1 RNAレベルの低下を全く示さなかった(Steynら、2006)。この後で、DEBIO-025はHCV/HIV共感染患者で試験され、HCVに対してより良い効能を示し、HIV臨床試験は中止された(Watashiら、2010参照)。
【0020】
(HIVの治療)
世界中で3000万人を超える人々がHIV-1に感染しており、毎年300万の新しい症例がある。治療選択は、高活性抗レトロウイルス療法(HAART)の導入と共に劇的に向上した(Schopmanら、2010)。2008年までに、およそ25種の抗レトロウイルス薬がHIV-1の治療用に認可され、9種のヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、4種の非-ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、9種のプロテアーゼ阻害剤(PI)、1種の融合阻害剤、1種のCCR5阻害剤、及び1種のインテグラーゼ阻害剤(Shafer及びSchapiro、2008)が含まれる。しかし、これらの現行のレジメンのうち9種は完全なウイルス排除をもたらすが、それらは重症の副作用をもたらすことがあり、抗ウイルス耐性も未だ大きな懸念である。したがって、特に、シクロフィリン阻害剤の場合のように、認可された薬物がない作用機序クラスにおいて、新しい抗ウイルス療法の必要がいまだ存在する。
【0021】
(B型肝炎ウイルス)
B型肝炎はヘパドナウイルス科のDNAウイルスであり、B型肝炎の原因因子である。HCV及びHIVの場合とは異なり、B型肝炎ウイルスに対するシクロフィリン阻害剤の活性の発表された記述は非常に少なかった。Ptakら、2008は、HBVに対するDebio-025の弱い活性(IC50は4.1μM)を記載したが、Xieら、2007はHBVに対するCsAのいくらかの活性(IC50>1.3μg/mL)を記載した。これはHIV及びHCVとは対照的であり、HIV及びHCVではシクロフィリン阻害剤のナノモーラーの抗ウイルス活性の報告が多数ある。
【0022】
(HBVの治療)
HBVは世界中で4億人を感染させており、ウイルス性慢性肝炎及び肝細胞癌の主な原因である。2008年現在、HBVの治療に認可された薬物が6種ある;インターフェロンアルファ及びペグ化インターフェロンアルファ、3種のヌクレオシドアナログ(ラミブジン、エンテカビル、及びテルビブジン)、及び1種のヌクレオチドアナログ(アデホビルジピボキシル)。しかし、耐性の率の高さ、許容性の低さ、及び起こり得る副作用のため、新しい治療選択が必要とされる(Ferirら、2008)。
【0023】
(ミトコンドリア膜透過性遷移孔(mPTP)の阻害)
ミトコンドリアの高伝導性透過性遷移孔(high conductance permeability transition pores)の開口は、ミトコンドリア透過性遷移(MPT)のオンセットを開始する。これは原因となる事象であり、酸化ストレス、Ca2+毒性、及び虚血/再潅流後の肝細胞における壊死及びアポトーシスをもたらす。シクロフィリン阻害剤によるシクロフィリンD(シクロフィリンFとしても知られる)の阻害は、透過性遷移孔の開口を遮断することが示されており、これらのストレスの後の細胞死を保護する。したがって、シクロフィリンD阻害剤は、筋ジストロフィー、特にウールリッヒ型先天性筋ジストロフィー及びベスレムミオパチー(Millayら、2008、国際公開第2008/084368号、Palmaら、2009)、多発性硬化症(Forteら、2009)、糖尿病(Fujimotoら、2010)、筋萎縮性側索硬化症(Martin 2009)、双極性障害(Kubotaら、2010)、アルツハイマー病(Du及びYan、2010)、ハンチントン病(Perryら、2010)、心筋梗塞後の回復(Gomezら、2007)、及び慢性のアルコール消費(Kingら、2010)など、mPTP開口が関与するとされてきた適応症において有用になり得る。
【0024】
(さらなる治療用途)
シクロフィリン阻害剤は、水痘帯状疱疹ウイルス(Ptakら、2008)、A型インフルエンザウイルス(Liuら、2009)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス並びに他のヒト及びネココロナウイルス(Chenら、2005、Ptakら、2008)、デングウイルス(Kaulら、2009)、黄熱病ウイルス(Qingら、2009)、西ナイルウイルス(Qingら、2009)、西部馬脳炎ウイルス(Qingら、2009)、サイトメガロウイルス(Kawasakiら、2007)、及びワクシニアウイルス(Castroら、2003)などの他のウイルスに対して潜在的な活性を有し、そのためこれらウイルス感染の治療において潜在的な活性を有する。
癌など、他の治療分野におけるシクロフィリン阻害剤及びシクロフィリン阻害の効用についても報告がある(Hanら、2009)。
【0025】
したがって、特にHCV感染の治療に効用を持ち得るが、ウイルス感染、特にHIV感染及びHBV感染、筋ジストロフィー、ウールリッヒ型先天性筋ジストロフィー、ベスレムミオパチー、多発性硬化症、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症、双極性障害、アルツハイマー病、ハンチントン病、心筋梗塞、及び慢性アルコール消費など、シクロフィリンの阻害が有用になり得る他の疾病分野の治療にも効用を持ち得る新規のシクロフィリン阻害剤を特定する必要が未だ存在する。好ましくは、そのようなシクロフィリン阻害剤は、下記の性質の1つ以上を含む、現在利用可能なシクロフィリン阻害剤よりも向上した性質を有する:向上した水への溶解度、HCV、HIV、若しくはHBV、又は他のウイルスに対する向上した抗ウイルス効力、低減された毒性(肝毒性を含む)、標的臓器(例えば、HCVの場合肝臓)に対する高い曝露及び/又は長い半減期(投薬頻度の減少を可能にする)などの向上した薬理プロファイル、低減されたレベルのCYP3A4の代謝及び阻害並びに低減された(Pgp)阻害(より容易な多剤組み合わせを可能にする)による低減された薬物-薬物相互作用、高ビリルビン血症の機会低下をもたらす、MTP2への低い結合など、向上した副作用プロファイル、混合リンパ球反応(MLR)試験により示されるかもしれないものなど、より低い免疫抑制効果、特にCsA及びCsAアナログ(例えば、DEBIO-025)耐性ウイルス種などの、耐性ウイルス種に対する向上した活性、並びにより高い治療(及び/又は選択性)指数。本発明は、上記の性質の1つ以上を有し得る新規なサングリフェリンアナログを開示する。特に、本発明は、下記の有益な性質の1つ以上を有すると予期される、新規なアミド誘導体を開示する:向上した溶解度、したがって向上した製剤、低減された免疫抑制、並びにHCV、HIV、及びHBVを含む特定のウイルス型に対する向上した効力。
【発明の概要】
【0026】
本発明は、天然型サングリフェリンの半合成修飾により生成された新規なマクロ環サングリフェリンアナログを提供する。これらのアナログは、SfAなどのサングリフェリンのジヒドロキシ化、それに続く開裂によるアルデヒド性マクロ環の生成、それに続くホーナー・エモンズ型反応を含むさらなる化学作用による、アルデヒドに変わる種々の置換基を有する分子の生成により生成され得る。結果として、本発明は、SfAのマクロ環アミドアナログ、これらの化合物の製造方法、及び医学における、又はさらなる化合物の製造における中間体としてのこれらの化合物の使用方法を提供する。
【0027】
したがって、第1の態様において、本発明は、互変異性体;又はトランスとして示されているC26、27 C=C結合がシスである異性体を含み;かつC-53ケト(存在する場合)及びC-15ヒドロキシル基とメタノールとの組み合わせによりケタールが形成されるメタノール付加物を含む、下記の式(I)によるマクロ環アミド及びその誘導体、又はその医薬として許容し得る塩を提供する:
【化3】
(式中、
R1又はR2は、独立に、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルシクロアルキル、アルキルシクロアルケニル、アルケニルシクロアルキル、アルケニルシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルアリール、又はアルケニルヘテロアリールを表し、これらの基のいずれも単環式(monocylic)アリール又は単環式ヘテロアリールにより任意に置換されていてよく;
或いは、R1及び/又はR2は水素を表し;
かつ、アリール又はヘテロアリール基の一部でないR1及び/又はR2の1つ以上の炭素原子は、O、N、及びS(O)pから選択されるヘテロ原子により任意に置換されており、式中pは、0、1、又は2を表し、R1及び/又はR2の1つ以上の炭素原子はカルボニルにより任意に置換されており;
或いは、R1とR2とは結合して、示されている窒素原子を含む飽和又は不飽和の複素環を形成し、かつ該環の1つ以上の炭素原子は、O、N、及びS(O)pから選択されるヘテロ原子により任意に置換されており、式中pは0、1、又は2を表し、該環の1つ以上の炭素原子は任意にカルボニルにより置換されており、該複素環は任意にアリール又はヘテロアリール環に縮合していてよく;
R1及び/又はR2基の1つ以上の炭素原子は、1つ以上のハロゲン原子により任意に置換されていてよく;
R3は、H、-(CO)xアルキルを表し;
R4は、H又はOHを表し;
R5は、H、OH、又は=Oを表し;
nが二重結合を表す場合にR4がHを表す場合を除いて、nは単結合又は二重結合を表し;かつ
mが二重結合を表す場合にR5がHを表す場合を除いて、mは単結合又は二重結合を表し;
xは0又は1を表す)。
【0028】
上記の構造は代表的な互変異性体を示し、本発明は、例えばエノール化合物が示されている場合のケト化合物及びその逆など、式(I)の化合物の全互変異性体を包含する。
【0029】
式(I)の定義に含まれる具体的な互変異性体は、(i)C-53ケト基がC-15ヒドロキシルとヘミケタールを形成するもの、又は(ii)C-15及びC-17ヒドロキシルがC-53ケトと合わさってケタールを形成できるものである。番号付けは全て、親のサングリフェリンA構造の系を使用する。
【0030】
他の態様において、本発明は、互変異性体;又はC-53ケト及びC-15ヒドロキシル基とメタノールとの組み合わせによりケタールが形成されるメタノール付加物を含む、下記の式(III)又は式(IV)によるサングリフェリンアナログ及びその誘導体又はその医薬として許容し得る塩を提供する:
【化4】
。
【0031】
上記の構造は代表的な互変異性体を示し、本発明は、例えばエノール化合物が示されている場合のケト化合物及びその逆など、式(III)又は(IV)の化合物の全互変異性体を包含する。
【0032】
式(III)又は(IV)の定義に含まれる具体的な互変異性体は、(i)C-53ケト基がC-15ヒドロキシルとヘミケタールを形成するものである。番号付けは全て、親のサングリフェリンA構造の系を使用する。
【0033】
式(III)及び(IV)の化合物は、本明細書に記載される特定の化合物の合成に有用な新規の中間体である。それらは、それだけで有用なサングリフェリン様生物活性を有し、それ自体医薬として有用になり得る。
【0034】
(定義)
冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)の該冠詞の文法的な対象を意味するように本明細書において使用される。例としては、「1つのアナログ」は、1つのアナログ又は2つ以上のアナログを意味する。
【0035】
本明細書では、用語「アナログ(複数可)」は、互いに構造的に類似しているが組成がわずかに異なる(1つの原子を他の原子で置換する、又は特定の官能基の有無など)化合物を意味する。
【0036】
本明細書では、用語「サングリフェリン(複数可)」は、サングリフェリンAに構造的に類似しているが組成がわずかに異なる(1つの原子を他の原子で置換する、又は特定の官能基の有無など)化合物、特にストレプトマイセス属A92-308110の発酵により生成したものを意味する。例には、サングリフェリンBなど、国際公開第97/02285号及び国際公開第98/07743号で議論されているサングリフェリン様化合物がある。
【0037】
本明細書では、用語「HCV」は、C型肝炎ウイルス、フラビウイルス科の一本鎖のRNAエンベロープウイルスを意味する。
本明細書では、用語「HIV」は、ヒト免疫不全ウイルス、ヒト後天性免疫不全症候群の原因因子を意味する。
本明細書では、用語「HBV」は、B型肝炎ウイルス、ヘパドナウイルス科の環状DNAエンベロープウイルスであり、B型肝炎の原因因子を意味する。
【0038】
本明細書では、用語「バイオアベイラビリティ」は、薬物又は他の物質が、投与後に吸収されるか、又は生物活性の部位で利用可能になる程度又は速度を意味する。この性質は、化合物の溶解度、消化管中の吸収速度、タンパク結合及び代謝の程度などを含むいくつかの因子に依存する。当業者によく知られているだろうバイオアベイラビリティの種々の試験が本明細書に記載される(Egorinら、2002も参照されたい)。
【0039】
本願で使用される用語「水への溶解度」は、水性媒体、例えば、pH7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS)又は5%グルコース溶液への溶解度を意味する。水への溶解度の試験は、以下に、「水への溶解度アッセイ」として実施例に与えられている。
【0040】
本明細書では、用語「マクロ環アミド」は、本発明をその最も広い態様で表すと上記で言及されたアミド、例えば、上記式(I)の化合物又はその医薬として許容し得る塩を意味する。これらの化合物は、「本発明の化合物」又は「サングリフェリンの誘導体」又は「サングリフェリンアナログ」とも呼ばれ、これらの用語は本願において交換可能に使用される。
【0041】
式(I)の化合物などの本発明の化合物の医薬として許容し得る塩は、医薬として許容し得る無機又は有機の酸又は塩基から形成される従来の塩並びに四級アンモニウム酸付加塩を含む。好適な酸性塩のより具体的な例には、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ギ酸、乳酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、パルモン酸(palmoic)、マロン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ヒドロキシナフトエ酸、ヨウ化水素酸、リンゴ酸、ステロン酸(steroic)、タンニン酸などがある。塩酸塩は特に興味深い。シュウ酸などの他の酸は、それ自体医薬として許容し得るものではないが、本発明の化合物及びその医薬として許容し得る塩を得る際に中間体として有用な塩の製造に有用になり得る。好適な塩基性塩のより具体的な例には、ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、亜鉛、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、及びプロカイン塩がある。以下での本発明の化合物への言及は、式(I)の化合物とそれらの医薬として許容し得る塩の両方を含む。
【0042】
本明細書では、用語「アルキル」は、典型的には1〜10個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖のアルキル基、例えばC1-6アルキル基を表す。「アルケニル」は、2個以上の炭素(例えば、2〜10個の炭素、例えば2〜6個の炭素)を含み、1個以上の二重結合を持ち不飽和であるアルキル基を意味する。
【0043】
アルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、及びn-ブチルなどのC1-4アルキル基がある。アルケニル基の例には、-CH=CH2及び-CH2CH=CH2などのC2-4アルケニル基がある。
【0044】
本明細書では、用語「シクロアルキル」は、典型的には3〜10個の炭素原子を含み、任意に分岐している環式アルキル基を表し、例えば、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、又はシクロヘプチルがある。分岐鎖の例は2-メチルシクロペンチルである。「シクロアルケニル」は、典型的には5〜10個の炭素原子を含む環式アルケニル基を意味し、例えば、シクロペンチル、シクロヘキセニル、又はシクロヘプテニルがある。シクロアルキル及びシクロアルケニル基は、例えば、単環式でも二環式(スピロ環を含む)でもよいが、好適には単環式である。
【0045】
本明細書では、用語「ヘテロシクリル」は、1個以上1個以上の環炭素原子(例えば、1又は2個、例えば1個などの1、2、又は3個の環炭素原子)がO、N、及びSから選択されるヘテロ原子により置換されているシクロアルキル基を表す。例には、モルホリニル、ピペリジニル、ピロリジニル、ピペラジニル、及びN-メチルピペラジニルがある。
【0046】
本明細書では、用語「ヘテロシクレニル」は、1個以上1個以上の環炭素原子(例えば、1又は2個、例えば1個などの1、2、又は3個の環炭素原子)がO、N、及びSから選択されるヘテロ原子により置換されているシクロアルケニル基を表す。
【0047】
アリール基の例には、(示された場合を除き)単環式の基、例えばフェニル、及び芳香族であるか又は(二環式の環の場合少なくとも1個の芳香族環を含む)二環式の環(例えば、9員及び10員の環)がある。例えば、二環式の環は、全芳香族、例えばナフチルでよく、或いは、テトラリン、インデン、又はインダンなど、半芳香族(例えば、1個の芳香族環を含む)でもよい。好ましいアリールはフェニルである。アリール基は、例えば、アルキル(例えば、C1-4アルキル)、ヒドロキシル、CF3、ハロゲン、アルコキシ(例えば、C1-4アルコキシ)、ニトロ、-SO2Me、シアノ、及び-CONH2から選択される、例えば、1個以上(例えば、1、2、又は3個)の置換基により任意に置換されていてよい。
【0048】
ヘテロアリール基の例には、(示された場合を除き)単環式の基(例えば、5員及び6員の環)、及び芳香族であるか又は(二環式の環の場合少なくとも1個の芳香族環を含む)、1個以上のヘテロ原子N、O、及びSから選択された(例えば、1、2、3、又は4個)のヘテロ原子を含む二環式の環(例えば、9員及び10員の環)がある。5員のヘテロアリール環の例には、ピロール、フラン、チオフェン、オキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、及びトリアゾールがある。6員のヘテロアリール環の例には、ピリジン、ピリミジン、及びピラジンがある。二環式環の例には、全芳香族環、例えば、キノリン、キナゾリン、イソキノリン、インドール、シンノリン、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、プリン、及びキノキサリン、並びに半芳香族環、例えば、クロメン、クロマン、テトラヒドロキノリン、ジヒドロキノリン、イソインドリン、及びインドリンがある。単環式ヘテロアリール基が好ましい。上述のヘテロアリール基は、アリール基に関して先に記載されたとおり任意に置換されていてよい。
【0049】
二環式アリール及びヘテロアリール基が半芳香族である場合、分子の残りの部分への結合は、芳香族部分によっても、非芳香族部分によってもよい。
用語「治療」には、予防的処置並びに治療的処置が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
(図の説明)
【図1A】サングリフェリンA、5及びサングリフェリンB、7の回収全ブロス試料のHPLCプロファイルである(240nmでモニター)。
【図1B】サングリフェリンA、5のUVスペクトルである。
【図2】化合物10の1H NMRである。
【図3】化合物13の1H NMRである。
【図4】化合物16の1H NMRである。
【図5】化合物19の1H NMRである。
【図6】化合物22の1H NMRである。
【図7】化合物25の1H NMRである。
【図8】化合物28の1H NMRである。
【図9】化合物29の1H NMRである。
【図10】化合物32の1H NMRである。
【図11】化合物35の1H NMRである。
【図12】化合物41の1H NMRである。
【図13】化合物45の1H NMRである。
【図14】化合物51の1H NMRである。
【図15】化合物55の1H NMRである。
【図16】サングリフェリンモジュール12の還元ループの上流の相同領域を含む合成DNAフラグメント(配列番号1)である。
【図17】位置1978でGが挿入されたMGo013 + MGo14 PCR産物である(配列番号4)。
【図18】化合物144の1H NMRである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
(発明の説明)
本発明は、上述のサングリフェリンマクロ環アミドアナログ、これらの化合物の製造方法、及び医学におけるこれらの化合物の使用方法を提供する。
【0052】
一実施態様において、該化合物は、C-53ケト(存在する場合)及びC-15ヒドロキシル基とメタノールとの組み合わせによりケタールが形成される、そのメタノール付加物である。他の実施態様において、それはそうではない。
【0053】
R1及び/又はR2がS(O)p基を含む場合、変数pは好適には0又は1を表す。一実施態様において、pは0を表し、他の実施態様において、pは1を表す。他の実施態様において、pは2を表す。
【0054】
R1及び/又はR2が-アルキルアリールを表す場合、例にはC1-2アルキルアリール、例えばベンジルがある。
R1及び/又はR2が-アルケニルアリールを表す場合、例にはC2-3アルケニルアリール、例えば-エテニルフェニルがある。
R1及び/又はR2が-アルキルヘテロアリールを表す場合、例にはC1-2アルキルヘテロアリール、例えば-メチルピリジニルがある。
R1及び/又はR2が-アルケニルヘテロアリールを表す場合、例にはC2-3アルケニルヘテロアリール、例えば-エテニルピリジニルがある。
【0055】
一実施態様において、R1は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルシクロアルキル、アルキルシクロアルケニル、アルケニルシクロアルキル、アルケニルシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルアリール、又はアルケニルヘテロアリールを表す。
【0056】
一実施態様において、R2は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルシクロアルキル、アルキルシクロアルケニル、アルケニルシクロアルキル、アルケニルシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルアリール、又はアルケニルヘテロアリールを表す。
【0057】
一実施態様において、R1は、単環式アリール又は単環式ヘテロアリールにより任意に置換されているアリール又はヘテロアリールを表す。R1は、例えば、フェニル環の一方が任意に置換されている4-ビフェニリルを表すことがある。
【0058】
特定の実施態様において、R1及び/又はR2の炭素原子はヘテロ原子により置換されており、例えば、R1及び/又はR2の1、2、又は3個の、例えば1又は2個の、例えば1個の炭素原子(複数可)はヘテロ原子により置換されている。例えば、特定の実施態様において、-NR1R2部分において、1、2、又は3個の、例えば、1又は2個の、例えば1個の炭素原子(複数可)はヘテロ原子により置換されている。
【0059】
-CH3がNにより置換されている場合、形成される基は-NH2-である。-CH2-がNにより置換されている場合、形成される基は-NH-である。-CHR-がNにより置換されると、形成される基は-NR-である。したがって、R1及びR2内の窒素原子は、一級、二級、又は三級窒素原子になり得る。
R1及び/又はR2の炭素原子がヘテロ原子により置換される場合、好適にはO又はNにより、特にOにより置換される。
【0060】
特定の実施態様において、R1及び/又はR2の炭素原子は、R1及び/又はR2が、ヘテロシクリル、ヘテロシレニル(heterocylenyl)、アルキルヘテロシクリル、アルキルヘテロシクレニル、アルケニルヘテロシクリル、又はアルケニルヘテロシクレニルを表すように、ヘテロ原子により置換されている。
一実施態様において、R1は、単環式アリール若しくは単環式ヘテロアリールにより置換されているアリール若しくはヘテロアリール、-C1-4アルキル、-OC1-4アルキル、-COC1-4アルキル、又は-C2-4アルケニルを表し得る。
【0061】
R1とR2とが結合した場合に形成される複素環は、典型的には4〜8個の環原子、例えば5〜7個の環原子、特に5又は6個の環原子を含む。
R1とR2とが結合した場合に形成される複素環は、典型的には示されている窒素原子のみを含むか、又は1若しくは2個(例えば、1個)の追加のへテロ原子、特に窒素又は酸素原子を含む。
【0062】
R1及び/又はR2が2個以上のヘテロ原子を含む場合、これらは、典型的には2個以上の炭素原子により分離されているはずである。
例えば、R1とR2とが結合した場合に形成される環は、モルホリニル又は1,2-オキサジナンでよい。
R1とR2とが結合して、示されている窒素原子を含む飽和又は不飽和の複素環を形成する場合であって、該環の1個以上の炭素原子がO、N、及びS(O)p(式中、pは0、1、又は2を表す)から選択されるヘテロ原子により任意に置換されており、該環の1個以上の炭素原子がカルボニルにより任意に置換されており、該複素環がアリール又はヘテロアリール環に縮合している場合、例はテトラヒドロキノリニルである。
【0063】
R1又はR2の炭素原子がカルボニルにより置換されている場合、該カルボニルは、好適には別の炭素原子又は窒素原子に隣接して位置する。好適には、カルボニル基は、硫黄原子又は酸素原子に隣接して位置しない。
例えば、R1及び/又はR2は-COC1-4アルキル、例えば-COMeを表すことがある。
好適には、R1の炭素原子はカルボニルにより置換されていない。
好適には、R2の炭素原子はカルボニルにより置換されていない。
好適には、R1は水素を表さない。
好適には、R1及びR2は両方とも水素を表さない。
【0064】
好適には、R1及びR2基は、ヘテロ原子に隣接するC=C部分を含まない。好適には、R1及びR2基は、式(I)に示されているN基に隣接する末端C=C部分を含まない。
好適には、R2の炭素原子はヘテロ原子により全く置換されていない。
いくつかの実施態様において、R1の炭素原子はヘテロ原子により全く置換されていない。
好適には、R2は、水素、アルキル、又はアルケニルを表す。
【0065】
好適には、R2は、水素、C1-4アルキル、又はC1-4アルケニルを表し、特に、水素、C1-4アルキルを表す。一実施態様において、R2は水素を表す。他の実施態様において、R2はC1-4アルキルを表す。
或いは、好適には、R1とR2とはそれらが結合している窒素と共に、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、又はピペラジン環などの5員〜7員の複素環を表し、ピペラジンの4窒素がC1-4アルキルにより任意に置換されている。
【0066】
他の実施態様において、好適には、R1とR2とは、それらが結合している窒素と共に、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、又はピペラジン環などの5員〜7員の複素環を表し、ピペラジンの4窒素がC1-4アルキルにより任意に置換されており、該環内の窒素原子に隣接する炭素原子が任意にカルボニルにより置換されている。このように、例えば、R1とR2とは、それらが結合している窒素と共にピペリジノンを表す。
【0067】
他の実施態様において、酸素原子は、R1及びR2が結合している窒素原子に隣接している。例えば、R1は、R1が結合している窒素原子に隣接している炭素原子がOを表すアルキル又はアルケニルを表すことがある。例えば、R1は、-OC1-4アルキル、例えばOMeを表し得る。或いは、R1とR2とは結合し、R1が結合している窒素原子に隣接している炭素原子はOを表し、例えば、1,2-オキサジナン環を形成する。好適には、xは0を表す。
【0068】
R1及び/又はR2基の1つ以上の炭素原子が1個以上のハロゲン原子により置換される場合、例示的なハロゲン原子はF、Cl、及びBrであり、特にF及びCl、特にFである。
例えば、R1及び/又はR2部分は、最高6個のハロゲン原子(例えばF原子)、例えば最高3個のハロゲン原子(例えばF原子)により置換され得る。
例示的なハロゲン化されたR1及び/又はR2部分は-CF3である。
【0069】
好適には、R1及び/又はR2基の炭素原子は、1つ以上のハロゲン原子により置換されておらず、すなわち、R1又はR2は、独立に、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルシクロアルキル、アルキルシクロアルケニル、アルケニルシクロアルキル、アルケニルシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルアリール、又はアルケニルヘテロアリールを表し、これらの基のいずれも、単環式アリール又は単環式ヘテロアリールにより任意に置換されていてよく;
或いは、R1及び/又はR2は水素を表し;
アリール又はヘテロアリール基の一部でないR1及び/又はR2の1つ以上の炭素原子は、O、N、及びS(O)pから選択されるヘテロ原子により任意に置換されており、式中pは、0、1、又は2を表し、R1及び/又はR2の1つ以上の炭素原子はカルボニルにより任意に置換されており;
或いは、R1とR2とは結合して、示されている窒素原子を含む飽和又は不飽和の複素環を形成し、かつ該環の1つ以上の炭素原子は、O、N、及びS(O)pから選択されるヘテロ原子により任意に置換されており、式中pは0、1、又は2を表し、該環の1つ以上の炭素原子は任意にカルボニルにより置換されており、該複素環は任意にアリール又はヘテロアリール環に縮合していてよい。
【0070】
例示的なR1基には、メチル、-CF3、エチル、プロピル(例えば、n-プロピル又はi-プロピル)、-CH2CH=CH、又はブチル(例えば、n-ブチル、t-ブチル、又はi-ブチル)がある。上述の例示的な基は、例えば、H、Me、エチル、プロピル(例えば、n-プロピル又はi-プロピル)、又はブチル(例えば、n-ブチル、t-ブチル、又はi-ブチル)を表すR2とまとめられることがある。
【0071】
さらなる例示的なR1基にはシクロペンチル又はシクロヘキシルがある。上述の例示的な基は、例えば、H、Me、エチル、プロピル(例えば、n-プロピル又はi-プロピル))又は-OMeを表すR2とまとめられることがある。
さらなる例示的なR1基には、任意に置換されているピリジニル又は任意に置換されているフェニル、例えば、フェニルにより置換されているフェニルがある。上述の例示的な基は、H、Me、又は-OMeを表すR2とまとめられることがある。
【0072】
さらなる例示的なR1基には、-OMe、-OCF3、-Oエチル、O-i-プロピル、-SMe、O-n-プロピル、-O-n-ブチル、-O-t-ブチル、O-i-ブチル、O-CH2C(Me)3がある。上述の例示的な基は、例えば、H、Me、エチル、i-プロピル、又はt-ブチルを表すR2とまとめられることがある。
さらなる例示的なR1基には、-O-(任意に置換されているフェニル)又は-O-(任意に置換されているピリジニル)がある。上述の例示的な基は、例えば、H又はMeを表すR2とまとめられることがある。
【0073】
NR1R2が共に形成する例示的な部分には、モルホリニル、ピペリジニル、ピロリジニル、オキサジナン(例えば、1,2-オキサジナン)、及び下記の表に開示されているものがある。
【化5】
【0074】
好適には、R3は、H又は(CO)xC1-4アルキル、例えば、H又はメチルなどのH又はC1-4アルキル、特にHを表す。
好適には、nは単結合を表す。
好適には、mは単結合を表す。
好適には、R4はOHを表す。
好適には、R5は=Oを表す。
【0075】
本発明の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はOCH3を表し、R2はMeを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化6】
。
【0076】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はエチルを表し、R2はエチルを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化7】
。
【0077】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1は-CHMe2を表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化8】
。
【0078】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はメチルを表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化9】
。
【0079】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はメチルを表し、R2はHを表し、R3はMeを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化10】
。
【0080】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1は-CH2CH=CH2を表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化11】
。
【0081】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はメチルを表し、R2はメチルを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは結合を表し、mは結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化12】
。
【0082】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1は-CH2CHMe2を表し、R2は-CH2CHMe2を表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化13】
。
【0083】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はOCH3を表し、R2はMeを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは二重結合を表し、かつ、R5はHを表す:
【化14】
。
【0084】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はOCH3を表し、R2はMeを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは二重結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化15】
。
【0085】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1とR2とは共に6員の複素環に結合した-CH2CH2OCH2CH2-を表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化16】
。
【0086】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1は4-ビフェニリルを表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化17】
。
【0087】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はシクロヘキシルを表し、R2はMeを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化18】
。
【0088】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はシクロヘキシルを表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化19】
。
【0089】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1とR2とは共に6員の複素環に結合した-OCH2CH2CH2CH2-を表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化20】
。
【0090】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1は2-ピリジニルを表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化21】
。
【0091】
本発明の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はOCH3を表し、R2はMeを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5はOHを表す:
【化22】
。
【0092】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はOCH3を表し、R2はMeを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化23】
。
【0093】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はエチルを表し、R2はエチルを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化24】
。
【0094】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1は-CHMe2を表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化25】
。
【0095】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はメチルを表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化26】
。
【0096】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はメチルを表し、R2はHを表し、R3はMeを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化27】
。
【0097】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1は-CH2CH=CH2を表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化28】
。
【0098】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はメチルを表し、R2はメチルを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは結合を表し、mは結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化29】
。
【0099】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1は-CH2CHMe2を表し、R2は-CH2CHMe2を表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化30】
。
【0100】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はOCH3を表し、R2はMeを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは二重結合を表し、かつ、R5はHを表す:
【化31】
。
【0101】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1とR2とは共に6員の複素環に結合した-CH2CH2OCH2CH2-を表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化32】
。
【0102】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1は4-ビフェニリルを表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化33】
。
【0103】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はシクロヘキシルを表し、R2はMeを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化34】
。
【0104】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はシクロヘキシルを表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化35】
。
【0105】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1とR2とは共に6員の複素環に結合した-OCH2CH2CH2CH2-を表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化36】
。
【0106】
本発明の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1は2-ピリジニルを表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化37】
。
【0107】
好適な実施態様の他の系列において、下記の構造により示されるとおり、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化38】
。
【0108】
これらの実施態様において、R10は下記の部分の1つを表す。
【化39】
【0109】
いくつかの実施態様において、(サングリフェリンAの構造を参照して)C26, 27位の二重結合は、トランス形態の代わりにシス形態でもよい。
本発明の好適な実施態様において、C26, 27位の二重結合は、下記の式により表されるとおり、シス形態である。
【化40】
そのような化合物は化学合成の間に製造できる。
【0110】
一般に、本発明の化合物は、サングリフェリンの半合成誘導体化により製造される。サングリフェリンは、その全体が組み込まれる国際公開第97/02285号及び国際公開第98/07743号に記載される方法又は本明細書に記載される追加の方法を利用して製造できる。サングリフェリンは、広範な実験操作の後で少量の物質を製造できる複雑な全合成化学によっても製造されてきた。サングリフェリンマクロ環アルデヒドを生成させる半合成方法は、米国特許第6,124,453号、Metternichら、1999年、Banteliら、2001年、及びSedraniら、2003年に記載されている。
【0111】
一般的に、式(I)の特定の化合物又はその医薬として許容し得る塩を製造する方法は、下記を含む:
(a)サングリフェリンA又はサングリフェリンの他の天然のアナログ(例えば、サングリフェリンB)又は変数R3、R4、R5、n、及びmにより示される部位での変動を有するそのアナログのジヒドロキシ化;
(b)1,2-ジオールの酸化開裂によるアルデヒドの生成;及び
(c)前記アルデヒドと、式IIの化合物を利用するホスホン酸エステルカルバニオンなどの安定化されたカルバニオン(又はその標準的な形態)とのカップリング。
【0112】
これは、下記に逆合成的に示される。
【化41】
式中、サングリフェリンAでは、R7は
【化42】
である。
【0113】
R8基は、同じでも異なっていてもよいが、独立に、アルキル(例えば、C1-4アルキル)又はベンジルを表す。
このため、本発明の化合物を製造する方法は、式IIの化合物をアルデヒド性マクロ環(式IIIの化合物)と反応させることを含む。
【0114】
式IIIの化合物の製造は既に報告されている(Metternichら、1999)。簡単に述べると、SfAなどのサングリフェリンは、修飾されたシャープレス条件(触媒性四酸化オスミウム)を利用してジヒドロキシ化される。キラルなリガンドを使用すると選択性を高める助けになる。次いで、得られたジオールは、例えば過ヨウ素酸ナトリウムを利用して酸化開裂できる。次いで、得られた式IIIの化合物は、ホモログ化されたアミドへの誘導体化の基質として使用できる。典型的には、式IIの化合物は、非プロトン性溶媒に溶解され、冷却され、塩基、例えば水素化ナトリウムにより処理される。次いで、式IIIの化合物が加えられ、反応物は加温される。好適な期間の後、反応は停止されて、式Iの化合物は標準的な条件により(例えば、分取HPLC、分取TLCなど)精製される。
【0115】
基R4、R5、n、及びmに変化を導入するための誘導体化は、式IIIの化合物の生成前でも、ホモログ化されたアミドを形成する反応の後でも実施できる。簡単に述べると、R4のヒドロキシルは、トリエンを生成するために酸性条件中で好適な基質の処理により除去できる。R5のケトンは、水素化ホウ素ナトリウムなどの好適な還元剤による処理によりヒドロキシル基に還元できる。ヒドロキシル基はヨードに転化でき、次いでDBUなどの好適な塩基による処理により除去できる。
【0116】
式IIの化合物は、公知であるか、又は入手可能なアミン(R1R2NH)から容易に合成できる。スキーム1(下記)に示されているとおり、アミンを使用してクロロアセチルクロリド又は類似物を処理して、α-クロロアミドを形成できる。次いで、α-クロロアミドをアルブゾフ反応において処理して、式IIの化合物を生成させる。式IIの化合物に至る他の経路は当業者には明らかであろう。
【化43】
【0117】
望まれる場合又は必要な場合、T. W. Green, P. G. M. Wutsの文献、「有機合成における保護基(Prtotective Groups in Organic Synthesis)」、Wiley-Interscience、New York、1999年、49-54、708-711に記載されるとおり、保護基を利用して、アルデヒド性マクロ環、酸性マクロ環若しくはアミン、又は式(II)の化合物における官能基を保護できる。
メタノール付加物は、発酵及びブロスからの単離により製造でき、或いはサングリフェリンA(国際公開第97/02285号)から製造できる。
【0118】
本明細書に提供される具体的な方法及び引用文献に加え、当業者は、合成法に関して、「ボーゲルの実用有機化学の教科書(Vogel's Textbook of Practical Organic Chemistry)」(Furnissら、1989)及び「マーチの先端有機化学(March's Advanced Organic Chemistry)」(Smith及びMarch、2001)を含むが、これらに限定されない標準的な教科書を調べることもできる。
【0119】
R4=Hかつn=結合である式(I)の化合物(先に示されている式(III)及び(IV)の化合物参照)の生成を可能にするポリケチド生合成工学法も記載されている。これは、サングリフェリンモジュール12の還元ループ(国際公開第2010/034243号及びQuら、2011参照)を、活性デヒドラターゼ(DH)、エノールレダクターゼ(ER)、及びケトレダクターゼ(KR)領域を与える還元ループ(例えば、ラパマイシンモジュール13、7、又は1(Aparicioら、1996)、エリスロマイシンモジュール4(Bevittら、1992)、又はサングリフェリンモジュール6(Quら、2011)由来の還元ループ)により置換することを含む。当業者は、公表された配列(例えば、Aparicioら、1996)に対する相同性に基づいてI型ポリケチドシンターゼモジュールにおいて好適な還元ループを特定でき、したがって、この変化が3種の活性領域DH、ER、及びKRを含む任意のそのようなループの導入により達成可能であることを認識するだろう。ポリケチド生合成工学の方法及び還元ループの概念は、国際公開第98/01546号及び国際公開第00/01827号に記載されている。これらの化合物が市販の化合物から新たに合成できる、すなわち全合成できることは当業者には明らかである。トリペプチドの合成及びその後のマクロ環形成は記載されている(Cabrejasら、1999)。このような方法を変更すれば、本発明の化合物を生成することができる。
【0120】
本発明の他の化合物は、それ自体で公知である方法又は先に記載されたものに類似の方法により製造できる。
本発明のサングリフェリンマクロ環は、単独又は他の治療剤と組み合わせて投与できる。2種(以上)の薬剤の同時投与により、それぞれのより低い投与量を利用でき、そのため副作用が低減され、効力の向上をもたらすことができ、そのためより高いSVR及び耐性の低減をもたらすことができる。
【0121】
したがって、一実施態様において、本発明のサングリフェリンマクロ環は、標準治療から採用された、HCV感染の治療のための1種以上の治療剤と共に同時投与される。これはインターフェロンのことがある(例えば、pIFNα及び/又はリバビリン)。
【0122】
代わりとなる実施態様において、本発明のサングリフェリンマクロ環は、STAT-C(HCV治療の特異的標的薬)などの1種以上の抗ウイルス剤と共に同時投与されるが、それは下記の1種以上になり得る:非ヌクレオシドポリメラーゼ阻害剤(例えば、ABT-333、ABT-072、BMS 791325、IDX375、VCH-222、BI 207127、ANA598、VCH-916、GS 9190、PF-00868554(フィリブビル)、若しくはVX-759)、ヌクレオシド又はヌクレオチドポリメラーゼ阻害剤(例えば、2'-C-メチルシチジン、2'-C-メチルアデノシン、R1479、PSI-6130、R7128、R1626、PSI 7977、若しくはIDX 184)、プロテアーゼ阻害剤(例えば、ABT-450、ACH-1625、BI 201355、BILN-2061、BMS-650032、CTS 1027、ダノプレビル、GS 9256、GS 9451、MK 5172、IDX 320、VX-950(テラプレビル)、SCH503034(ボセプレビル)、TMC435350、MK-7009(バネプリビル(Vaneprivir))、R7227/ITMN-191、EA-058、EA-063、若しくはVX 985)、NS5A阻害剤(例えば、A-831、BMS 790052、BMS 824393、CY-102、若しくはPPI-461)、シリマリン、NS4b阻害剤、セリンC-パルミトイルトランスフェラーゼ阻害剤、ニタゾキサニド、又はウイルス侵入阻害剤(例えば、PRO 206)。
【0123】
代わりとなる実施態様において、本発明のサングリフェリンマクロ環は、HIV治療のための1種以上の他の抗ウイルス剤(高活性抗レトロウイルス療法(HAART)など)と共に同時投与されるが、それは下記の1種以上になり得る:ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)(例えば、エムトリシタビン若しくはテノホビル)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)(例えば、リリピビリン(Rilipivirine)若しくはエファビレンツ)、プロテアーゼ阻害剤(PI)(例えば、リトナビル若しくはロピナビル)、融合阻害剤(例えば、マラビロク若しくはエンフビルチド)、CCR5阻害剤(例えば、アプラビロク若しくはビクリビロク)、成熟阻害剤(例えば、ベビリマート(Bevirimat))、CD4モノクローナル抗体(例えば、イバリツマブ(Ibalizumab))、及びインテグラーゼ阻害剤(例えば、エルチエグラビル(Eltiegravir))。
【0124】
代わりとなる実施態様において、本発明のサングリフェリンマクロ環は、HBV治療のための1種以上の他の抗ウイルス剤と共に同時投与されるが、それは下記の1種以上になり得る:インターフェロン(例えば、インターフェロンアルファ若しくはペグ化インターフェロンアルファ)、ヌクレオシド若しくはヌクレオチドアナログ(例えば、ラミブジン、エンテカビル、アデホビルジピボキシル、若しくはテルビブジン)、他の免疫調節剤(例えば、チモシンアルファ、CYT107、若しくはDV-601)、又はHMG CoAレダクターゼ阻害剤(例えば、シンバスタチン)。
【0125】
製剤は、簡便には単位剤形で呈すことができ、薬学の分野に周知である方法のいずれによっても製造できる。そのような方法は、有効成分(本発明の化合物)を1種以上の副成分を構成する担体と混合する工程を含む。一般的に、製剤は、有効成分を、液体担体又は微粉砕固体担体又は両方と均一かつ密接に混合し、次いで、必要な場合生成物を成形することにより製造される。
【0126】
本発明の化合物は、通常、医薬として許容し得る剤形で、任意に非毒性の有機又は無機の酸、又は塩基、付加塩の形態にある有効成分を含む医薬製剤の形態で経口投与されるだろう。治療すべき疾患及び患者、並びに投与経路によって、組成物は種々の投与量で投与され得る。
【0127】
例えば、本発明の化合物は、即放、遅延放出、又は制御放出用途のために、着香剤又は着色剤を含み得る、錠剤、カプセル剤、座薬(ovules)、エリキシル剤、液剤、又は懸濁剤の形態で経口的に、頬側的に、又は舌下的に投与できる。
【0128】
そのような錠剤は、微結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、及びグリシンなどの賦形剤、スターチ(好ましくは、コーン、ポテト、又はタピオカスターチ)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、及び特定の複合ケイ酸塩などの崩壊剤、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチン、及びアラビアゴムなどの造粒結合剤を含み得る。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、及びタルクなどの滑沢剤も含まれ得る。
【0129】
類似の種類の固体組成物は、ゼラチンカプセル中の充填剤としても利用できる。この点で好ましい賦形剤には、ラクトース、スターチ、セルロース、乳糖、又は高分子量ポリエチレングリコールがある。水性懸濁剤及び/又はエリキシル剤では、本発明の化合物は、種々の甘味剤若しくは着香剤、着色剤若しくは染料と、乳化剤及び/又は懸濁化剤と、水、エタノール、プロピレングリコール、及びグリセリンなどの希釈剤と、及びこれらの組み合わせと組み合わせてもよい。
【0130】
錠剤は、任意に1種以上の副成分と共に圧縮又は成型により製造できる。圧縮錠は、好適な機械中で、結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性な希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤又は分散剤と任意に混合された、粉末又は顆粒などの自由流動形態にある有効成分を圧縮することにより製造できる。湿性錠は、好適な機械中で、不活性な液体希釈剤により湿らした粉末状化合物の混合物を成型することにより製造できる。錠剤は任意にコーティング又は溝をつけてもよく、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを種々の比率で利用して有効成分の緩徐放出又は徐放性放出を与えて所望の放出プロファイルを与えるように製剤できる。
【0131】
経口投与に好適な本発明による製剤は、それぞれ所定量の有効成分を含む、カプセル剤、カシェ剤、若しくは錠剤などの分離した単位として;散剤若しくは顆粒剤として;水性液体若しくは非水性液体の液剤又は懸濁剤として;又は水中油型液体エマルション若しくは油中水型液体エマルションとして呈することができる。有効成分は、ボーラス、舐剤、又はペースト剤として呈することもできる。
【0132】
上記に詳細に言及された成分に加えて、本発明の製剤は、問題とする製剤の種類に関する分野に従来ある他の薬剤を含んでよく、例えば、経口投与に好適なものは着香剤を含んでよいことを理解されたい。
【0133】
好都合なことに、保存剤及び緩衝剤などの薬剤はビヒクル中に溶かすことができる。安定性を増すために、組成物を、バイアルに充填した後に凍結し、真空下で水を除去できる。次いで、凍結乾燥された乾燥散剤をバイアルに密封し、注射用の水の付随するバイアルを供給して、使用前に液体を再構成できる。
【0134】
本発明の化合物の投与すべき用量は、特定の化合物、関与する疾病、対象、及び疾病の性質及び重症度並びに対象の肉体的状態、選択された投与経路により変わるだろう。適切な用量は当業者により容易に決定できる。
組成物は、投与の方法により、0.1重量%、好ましくは5〜60%、より好ましくは10〜30重量%の本発明の化合物を含み得る。
【0135】
本発明の化合物の個別の用量の最適量及び間隔が、治療すべき病態の性質及び程度、投与の形態、経路、及び部位、並びに治療される特定の対象の年齢及び病態により決定され、最終的には利用すべき適切な用量を医師が決定するだろうことを当業者は認識するだろう。この用量は、適切なだけ頻繁に繰り返すことができる。副作用が現れた場合、用量の量及び/又は頻度を、通常の診療に従って、変更又は低減できる。
【0136】
本発明のさらなる態様は下記を含む:
医薬として使用するための本発明の化合物;
HCV、HBV、若しくはHIV感染などのウイルス感染(特にRNAウイルス感染)又は筋ジストロフィー、ウールリッヒ型先天性筋ジストロフィー、ベスレムミオパチー、多発性硬化症、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症、双極性障害、アルツハイマー病、ハンチントン病、心筋梗塞、若しくは慢性アルコール消費などの他の疾病の治療のための医薬として使用するための本発明の化合物;
本発明の化合物を、医薬として許容し得る希釈剤又は担体と共に含む医薬組成物;
本発明の化合物を、医薬として許容し得る希釈剤又は担体と共に含み、第2又はそれに次ぐ有効成分、特にHCV、HBV、若しくはHIV感染などのウイルス感染又は筋ジストロフィー、ウールリッヒ型先天性筋ジストロフィー、ベスレムミオパチー、多発性硬化症、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症、双極性障害、アルツハイマー病、ハンチントン病、心筋梗塞、若しくは慢性アルコール消費の治療に適応される有効成分をさらに含む、医薬組成物;
HCV、HBV、若しくはHIV感染などのウイルス感染(特にRNAウイルス感染)又は筋ジストロフィー、ウールリッヒ型先天性筋ジストロフィー、ベスレムミオパチー、多発性硬化症、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症、双極性障害、アルツハイマー病、ハンチントン病、心筋梗塞、若しくは慢性アルコール消費の治療の方法であって、対象に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含む方法;
HCV、HBV、若しくはHIV感染などのウイルス感染又は筋ジストロフィー、ウールリッヒ型先天性筋ジストロフィー、ベスレムミオパチー、多発性硬化症、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症、双極性障害、アルツハイマー病、ハンチントン病、心筋梗塞、若しくは慢性アルコール消費の治療のための医薬の製造のための本発明の化合物の使用。
【0137】
一実施態様において、上述の病態は、HCV、HIV感染、及び筋ジストロフィーから選択される。他の実施態様において、上述の病態はHBV感染である。
【0138】
(全般的方法)
(材料及び方法)
(菌株及び増殖条件)
BIOT-4253及びBIOT-4370とも称されるサングリフェリン産生株ストレプトマイセス属A92-308110(DSM no 9954、ドイツ、ブラウンシュヴァイクのDSMZから購入)を、オートミール寒天培地、MAM、又はISP2(下記参照)上で28℃で維持する。
【0139】
ストレプトマイセス属A92-308110を、オートミール寒天上で、28℃で7〜10日増殖させた。寒天板の表面からでた胞子を、蒸留した20%w/v滅菌グリセロール中に回収し、0.5mlのアリコートで-80℃で保存した。凍結胞子ストックを、シード培地SGS又はSM25-3の接種に使用した。接種されたシード培地を、5.0又は2.5 cmの行程で200〜300 rpmで振盪しながら、27℃で24時間インキュベートした。発酵培地SGP-2又はBT6を2.5%〜10%のシード培養物により接種し、5又は2.5 cmの行程で200〜300 rpmで振盪しながら、24℃で4〜5日間インキュベートした。次いで、培養物を抽出のために回収した。
【0140】
(培地処方)
培地の調製に使用した水は、Millipore Elix Analytical Grade Water Purification Systemを使用して調製した。
【表1】
【0141】
滅菌前のpHは、10M NaOH/10M H2SO4でpH 7.0に調整した
121℃、20〜30分加熱により滅菌(オートクレーブ処理)
備考
*消泡剤は、シードフラスコではなく、シード発酵槽にのみ使用
**最終体積を適宜調整して、シード体積とする
【0142】
【表2】
【表3】
【0143】
滅菌前のpHは、10M NaOHでpH 6.8に調整
121℃、20〜30分加熱により滅菌(オートクレーブ処理)
備考
*最終体積を適宜調整して、シード体積とする
**消泡剤は、フラスコではなく、発酵槽にのみ使用
【0144】
(LC-UV及びLC-UV-MSによる培養ブロスの分析)
培養ブロス(1 mL)及び酢酸エチル(1 mL)を加え、15〜30分間混合し、次いで10分間遠心分離する。0.4 mLの有機層を回収し、蒸発乾固させ、次いで0.20 mLのアセトニトリルに再溶解させる。
HPLC条件:
C18 Hyperclone BDS C18 カラム 3μ, 4.6 mm×150 mm
Phenomenex Analytical C18 Security Guard Cartridge(KJ0-4282)を備える
カラム温度50℃
流速1 mL/分
240 nmで紫外モニター
20 μLアリコートを注入
【0145】
溶媒勾配:
0分:55% B
1.0分:55% B
6.5分:100% B
10.0分:100% B
10.05分:55% B
13.0分:55% B
【0146】
溶媒Aは、水+0.1%ギ酸である。
溶媒Bは、アセトニトリル+0.1%ギ酸である。
これらの条件下でSfAは5.5分に溶離する。
これらの条件下でSfBは6.5分に溶離する。
【0147】
LCMSは、上述のクロマトグラフィー及び溶媒を利用する、ポジティブイオンモードで運転しているBruker Daltonics Esquire 3000+ エレクトロスプレー質量分析器と組み合わせた一体型Agilent HP1100 HPLCシステムで実施する。
【0148】
(合成)
特記されない限り、反応は全て無水の条件下で、オーブン乾燥させ真空下で冷却したガラス器具中で、乾燥させた溶媒を使用して実施する。反応は、適切な方法、例えば、培養ブロスのモニタリングに関して先に記載された方法を利用して、LC-UV-MSによりモニタリングする。
【0149】
(QC LC-MS法)
(HPLC条件)
C18 Hyperclone BDS C18カラム3μ, 4.6 mm×150 mm
Phenomenex Analytical C18 Security Guard Cartridge (KJ0-4282)を備える
カラム温度50℃
流速1 mL/分
210、240、及び254 nmで紫外モニター
【0150】
溶媒勾配:
0分:10% B
2.0分:10% B
15分:100% B
17分:100% B
17.05分:10% B
20分:10% B
溶媒Aは、水+0.1% ギ酸である。
溶媒Bは、アセトニトリル+0.1% ギ酸である。
【0151】
(MS条件)
MSは、150〜1500amuをスキャンする、スイッチングモード(ポジティブとネガティブの間をスイッチング)で運転する。
(インビトロ分析LC-MS法(例えば、溶解度のアッセイ))
API-4000装置を使用
(HPLC条件):
Ultimate AQ-C18 (2.1×50mm, 3μM)
カラム温度XX℃
流速0.4 mL/分
【0152】
(溶媒勾配A1 (例えば、化合物1及び13用)):
0.2分:10% B
0.7分:60% B
1.1分:60% B
1.4分:98% B
2.3分:98% B
2.4分:10% B
3.5分:停止
【0153】
(溶媒勾配A2 (例えば、化合物5及び10用)):
0.3分:10% B
0.9分:95% B
1.9分:95% B
2.0分:10% B
3.0分:停止
溶媒Aは、H2O-0.025% FA-1 mM NH4OACである。
溶媒Bは、MeOH-0.025% FA-1 mM NH4OACである。
【0154】
(ネガティブスキャンモード)
【表4】
【0155】
(ポジティブスキャンモード)
【表5】
【0156】
(HCV抗ウイルス活性の評価のためのインビトロレプリコンアッセイ)
遺伝子型1HCVに対する抗ウイルス効能を下記にように試験できる:試験物質の添加の1日前に、HCV遺伝子型1b I389luc-ubi-neo/NS3-3'/5.1レプリコン(Vrolijkら、2003)を含み、細胞増殖培地[10% FCS、1%非必須アミノ酸(11140035)、1% ペニシリン/ストレプトマイシン(15140148)、及び2%ジェネティシン(10131027); Invitrogen社製を補ったDMEM(カタログ番号41965039)]中で1.3〜1.4の比で3〜4日間75cm2の組織培養フラスコ(Techno Plastic Products社製)で継代培養したHuh5.2細胞を回収し、6500細胞/ウェル(100μL/ウェル)の密度で96-ウェル組織培養マイクロタイタープレート(抗代謝効果の評価にはFalcon、Beckton Dickinson社製、抗ウイルス効果の評価にはCulturPlate、Perkin Elmer社製)中で、アッセイ培地(DMEM、10% FCS、1%非必須アミノ酸、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)に播種した。マイクロタイタープレートを一晩インキュベートすると(37℃、5% CO2、相対湿度95〜99%)、非コンフルエントな細胞単層を生じる。希釈系列を準備する;各希釈系列を少なくとも二連で実施する。アッセイのセットアップ後に、マイクロタイタープレートを72時間(37℃、5% CO2、相対湿度95〜99%)インキュベートする。
【0157】
抗代謝効果の評価のために、アッセイ培地を吸引し、フェノールレッド不含培地中の75μLの5% MTS(Promega社製)溶液と替え、1.5時間(37℃、5% CO2、相対湿度95〜99%)インキュベートする。吸光度を498nmの波長で測定し(Safire2、Tecan社製)、光学濃度(OD値)を、非処理対照のパーセンテージに変換する。
【0158】
抗ウイルス効果の評価には、アッセイ培地を吸引し、細胞単層をPBSにより洗浄する。洗浄バッファを吸引し、25μLのGlo Lysis Buffer(カタログ番号E2661、Promega社製)を加え、その後室温で5分間溶解を進行させる。その後、50μLのLuciferase Assay System(カタログ番号E1501、Promega社製)を加え、ルシフェラーゼ発光シグナルを直ちに定量化する(1000ms積分時間/ウェル、Safire2、Tecan社製)。相対発光単位を非処理対照のパーセンテージに変換する。
【0159】
EC50及びEC90(用量-反応曲線から誘導した値)は、それぞれ、ウイルス複製の50%及び90%の阻害が観察される濃度を表す。CC50(用量-反応曲線から誘導した値)は、細胞の代謝活性が非処理細胞の代謝活性の50%に低下する濃度を表す。選択指数(SI)は、化合物の治療域を表すものであるが、CC50/EC50として計算する。
【0160】
ある濃度の化合物は、特定の濃度で抗レプリコン効果が閾値の70%を超え、代謝活性の30%以下の低減が見られる場合に、HCVレプリコン系における真の抗ウイルス効果を惹起すると考えられる。
【0161】
(水への溶解度の評価)
水への溶解度を下記のように試験できる:サングリフェリンアナログの10 mMストック溶液を室温で100% DMSOに調製する。三連の0.01 mLのアリコートを、アンバーバイアル中で、pH 7.3の0.1 M PBS溶液又は100% DMSOにより0.5mLにする。得られた0.2 mM溶液を、IKA(登録商標)vibrax VXRシェーカーで、室温で6時間振盪し、次いで得られた溶液又は懸濁液を2 mLエッペンドルフ管に移し、13200 rpmで30分間遠心分離する。次いで、上清液体のアリコートを上述のLCMS法により分析する。
【0162】
別法としては、pH7.4のPBSへの溶解度を下記のように試験できる:被験化合物及び対照化合物を、50%MeOH水溶液により40μM、16μM、4μM、1.6μM、0.4μM、0.16μM、0.04μM、及び0.002μMに希釈することにより、検量線を作成する。次いで、基準点をMeOH:PBS 1:1により1:20にさらに希釈する。1:20希釈後の最終濃度は、2000nM、800nM、200nM、80nM、20nM、8nM、2nM、及び1nMである。次いで、基準を、内部標準(ヒドロキシマクロ環、6)を含む同体積(1:1)のACNと混合する。試料を遠心分離し(5分間、12000rpm)、次いでLC/MSにより分析する。
【表6】
【0163】
被験化合物を、10mMの濃度でDMSO中のストック溶液として調製する。ストック溶液を、二連で、1.5mLエッペンドルフ管中でpH7.4のPBSに希釈して、最終DMSO濃度1%で100μMの標的濃度にする(例えば、4μLの10mM DMSOストック溶液を396μL 100mMリン酸緩衝液に入れる)。次いで、試料管を室温で穏やかに4時間振盪する。試料を遠心分離し(10分間、15000rpm)、未溶解の粒子を沈殿させる。次いで、上清を新しい管に移し、PBSで希釈する(各被験物質の希釈率は、利用される分析装置での化合物のシグナルレベルにより確認する)。次いで、希釈した試料を、同体積(1:1)のMeOHと混合する。最後に、試料を、LC-MS/MS分析用の内部標準(ヒドロキシマクロ環、6)を含む同体積(1:1)のACNと混合する。
【0164】
(細胞透過性の評価)
細胞透過性を下記のように試験できる:被験化合物をDMSOに溶かして10mMにし、次いで緩衝液にさらに希釈して、最終10μM投薬濃度を与える。蛍光マーカールシファーイエローも含めて、膜統合性をモニターする。次いで、被験化合物をCaco-2細胞単層の頂端膜側にアプライし、基底面コンパートメントへの化合物透過を測定する。これを逆方向に実施し(基底面から頂端へ)、能動輸送を調べる。LC-MS/MSを利用して、被験化合物及び標準対照化合物(プロパノロール及びアセブトロールなど)の両方のレベルを定量化する。
【0165】
(薬物動態のインビボ評価)
インビボアッセイを利用して、化合物のバイオアベイラビリティを測定できる。一般的に、化合物を、静脈内(i.v.)及び経口的(p.o.)の両方で試験動物(例えば、マウス又はラット)に投与し、一定間隔で採血して、薬物の血漿濃度が時間とともに変動する様子を調査する。経時的な血漿濃度の経時変化を利用して、標準モデルを利用して化合物の絶対的なバイオアベイラビリティをパーセンテージとして計算できる。典型的なプロトコルの例を以下に記載する。
マウスに、1、10、又は100 mg/kgの本発明の化合物又は親化合物を、i.v.又はp.o.で投薬する。5分、10分、15分、30分、45分、60分、90分、120分、180分、240分、360分、420分、及び2880分に採血し、試料中の本発明の化合物又は親化合物の濃度をHPLCにより決定する。次いで、血漿濃度の経時変化を利用して、血漿濃度-時間曲線下面積(AUC-体循環に達する未変化の薬物の総量に正比例する)、最大(ピーク)血漿中薬物濃度、最大血漿中薬物濃度が起こる時間(ピーク時間)などのキーパラメーターを誘導できるが、バイオアベイラビリティの正確な決定に利用できる追加の因子には下記がある:化合物の終末半減期、全身クリアランス、定常状態分布容積、及びF%。次いで、これらのパラメーターを、非コンパートメント法又はコンパートメント法により分析して、計算されたバイオアベイラビリティのパーセンテージを与えるが、この種類の方法に関しては、Egorinら、2002、及び該文献の引用文献を参照されたい。
【0166】
(MDR1及びMRP2トランスポーターの阻害のインビトロ評価)
MDR1(P糖タンパク質1)及びMRP2トランスポーターの阻害及び活性化の評価には、Solvo Biotechnology社のインビトロATPアーゼアッセイ(Glavinasら、2003)が利用できる。化合物(0.1、1、10、及び100μM)を、バナジン酸塩の非存在下と存在下の両方で、MDR1又はMRP2膜小胞と共にインキュベートし、潜在的なATPアーゼ活性化を試験する。さらに、トランスポーターATPアーゼ活性の起こりうる阻害を検出するために、ベラパミル/スルファサラジンの存在下で類似のインキュベーションを実施する。ATPアーゼ活性は、無機のリン酸塩を分光測定により定量化して測定する。活性化は、ATPアーゼ活性のバナジン酸感受性増加から計算する。阻害は、ベラパミル/スルファサラジンに媒介されるATPアーゼ活性の低下から決定する。
【0167】
(HIV抗ウイルス活性の評価のためのインビトロアッセイ)
HIVに対する抗ウイルス効能を下記のとおり試験できる:血液由来のCD4+T-リンパ球及びマクロファージを、既報のとおり単離する(Bobardtら、2008)。簡単に述べると、ヒトPBMCをFicoll-Hypaqueで層状にする(30分間、800g、25℃)ことにより鮮血から精製した。一次ヒトCD4+ T細胞を、抗CD4ダイナビーズによるポジティブ選択及びそれに続くデタッチャビーズを利用する放出により、PBMCから精製した。細胞を、10% FCS、MEMアミノ酸、L-グルタミン、MEMビタミン類、ピルビン酸ナトリウム、及びペニシリンプラスストレプトマイシンを補ったRPMI培地1640(Invitrogen社製)中で培養し、その後、細菌性超抗原ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB; 100 ng/ml)及び他のドナー由来のマイトマイシンCに殺傷されたPBMC(10:1 PBMC:CD4 細胞比)で活性化した。刺激の3日後、細胞を、IL-2を含む培地(200 単位/ml 最終濃度)中で1:2に分けた。次いで、培養物をIL-2培地中で2日ごとに1:2に分け、刺激の7日後にHIVに感染させた。初代ヒトマクロファージを発生させるために、単球をネガティブ選択によりヒトPBMCから精製し、106/mlの細胞濃度で、10% FCS、MEMアミノ酸、L-グルタミン、MEMビタミン、ピルビン酸ナトリウム、及びペニシリン(100単位/ml)、ストレプトマイシン(100 mg/ml)、及び50 ng/mlのリコンビナントヒト顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を補ったDMEM中で活性化及び培養し、5% CO2を補った加湿雰囲気中で37℃に維持した。単球誘導マクロファージを得るために、細胞をプラスチックに付着させ、6日間培養して分化させた。
【0168】
CD4+ HeLa細胞、Jurkat細胞、活性化CD4+ 末梢血T-リンパ球、及びマクロファージ(500,000 細胞/100 μL)を、濃度を上げた被験物質の存在下でpNL4.3-GFP(X4ウイルス)又はpNL4.3-BaL-GFP(R5ウイルス)(100 ngのp24)と共にインキュベートした。48時間後、FACSによりGFP陽性細胞のパーセンテージを分析して感染を点数化し、EC50を計算した。
【0169】
(HBV抗ウイルス活性の評価のためのインビトロアッセイ)
HBVに対する抗ウイルス効能を下記のように試験できる:HepG2 2.2.15細胞を96-ウェルマイクロタイタープレートに播種する。16〜24時間後、HepG2 2.2.15細胞のコンフルエントな単層を洗浄し、三連で種々の濃度の被験化合物(例えば、6回のハーフログ濃度(half-log concentrations))を含む完全培地と替える。3日後、培地を、適切に希釈された被験化合物を含む新鮮な培地に替える。被験物質の最初の投与の6日後、細胞培養物上清を回収し、プロナーゼで処理し、次いで、リアルタイム定量的TaqMan qPCRアッセイに使用する。増幅されたHBV DNAにハイブリダイズするクエンチされた蛍光プローブ分子のエキソヌクレアーゼ分解から生じる蛍光シグナルの増加をモニタリングすることにより、PCR増幅されたHBV DNAをリアルタイムに検出する。各PCR増幅に対して、精製されたHBV DNAの希釈物を使用して、検量線が同時に生成される。抗ウイルス活性は、HBV DNAレベルの低下から計算される(IC50)。次いで、色素取り込みアッセイを利用して、細胞生存率を計算し、それを利用して毒性(TC50)を計算する。治療指数(TI)をTC50/IC50として計算する。
【0170】
(免疫抑制活性の評価のためのインビトロ混合リンパ球(MLR)アッセイ)
免疫抑制活性を下記のとおり試験した:末梢血単核細胞(PBMC)集団を、ヒストパック上での遠心分離を利用して、2名の正常な関連性のないボランティアドナー(A及びB)の血液から精製した。細胞を計数し、補助剤及び2%ヒトAB血清を含むRPMI培地中で、96ウェルプレート中で1×105細胞/ウェルで播種した。
培養条件は下記のとおりであった:それぞれ6種の異なる濃度での被験物質の存在下又は非存在下の、細胞集団A及びBのみ並びに細胞A及びBの混合集団。化合物を、1-logの増加分で10μM〜0.0001μMの範囲の投与量で試験した。対照ウェルは、被験化合物ウェルに存在するものに相当する濃度のビヒクル(0.5% DMSO)を含んでいた。培養物を三連で96ウェルプレートに確立し、加湿雰囲気中で5% CO2中37℃でインキュベートした。3H-チミジンをアッセイセットアップの6日後に加え、24時間後に採取した。次いで、異なる培養条件の間の増殖のレベルを比較した。
被験化合物の各希釈物がMLR中の増殖を阻害する能力を、阻害パーセンテージとして計算した。これにより、IC50(1分あたりのカウントの50%低減をもたらす被験化合物の濃度)の評価ができた。IC50を計算するために、X軸を対数スケールに変換した。非線形回帰を利用して、平均のデータポイントにフィッティングした。S状の可変の傾きを選択した。
【0171】
(Cyp-NS5A相互作用のELISA分析)
このアッセイを利用してCyp-NS5A複合体の分裂を測定したが、これはシクロフィリンDとの相互作用の効力を示すのに使用できる。簡単に述べると、リコンビナントGST、GST-CypD、及びCon1 NS5A-Hisタンパク質の産生及び精製を既報のとおり実施した(Chatterjiら、2010)。Nunc MaxiSorb 8-ウェルストリッププレートをGST又はGST-CypDにより4℃で16時間コーティングし、ブロックした。リコンビナントNS5A-His(1 ng/mL)を、50μLの結合緩衝液(20 mM Tris pH 7.9、0.5 M NaCl、10% グリセロール、10 mM DTT、及び1% NP-40)中4℃で16時間ウェルに加えた。次いで、捕捉されたNS5A-Hisを、マウス抗His抗体(1 μg/mL)(抗-6xHis、Clontech社製)及びウサギ抗マウスホースラディッシュペルオキシダーゼホスファターゼ(HRP)抗体(1:1000希釈)を使用して検出した。実験は全て、2つの異なるバッチのリコンビナントCypD及びNS5Aタンパク質を使用して2回行った。
【0172】
(シクロフィリン阻害の抗PPIアーゼ分析)
シクロフィリンとの相互作用を分析するための別な方法論が下記のとおり記載される:GST-CypDのトロンビン開裂により生じるリコンビナントCypDのPPIアーゼ活性を、キモトリプシンによるN-スクシニル-Ala-Ala-Pro-Phe-p-ニトロアニリドの加水分解速度を追跡することにより決定した。キモトリプシンはトランス型のペプチドのみを加水分解し、シス型は、その濃度が470 mM LiClを含むトリフルオロエタノールに溶解しているストックを用いることにより最大になるが、その加水分解はシストランス異性化の速度により限定されている。CypDを、選択された被験物質と0.1〜20 nMの薬物濃度範囲を利用して5℃で1時間平衡化させた。ペプチドの添加により反応を開始させ、吸光度の変化を1秒あたり10データポイントで分光測定によりモニターした。加水分解のブランク速度(CypDの非存在下)を、CypDの存在下での速度から引く。酵素反応の初期速度を、吸光度変化の経時変化の一次回帰分析により分析した。
【実施例】
【0173】
(実施例1-二次シードによる15L攪拌バイオリアクターにおけるサングリフェリンA及びその天然の同族体(congers)の産生)
植物培養液は、フォームプラグ付き2Lアーレンマイヤーフラスコ中で、ストレプトマイセス属A92-308110の胞子ストックから0.2 mLを400mLのシード培地SGSに接種することにより調製した。
【0174】
培養フラスコを27℃、250 rpm(2.5 cm行程)で24時間インキュベートした。シード培養物から、300 mLを、15 L Braun発酵器中の0.02%消泡剤SAG 471を含む15リットルの一次シード培地SGSに移した。出発攪拌の設定を300rpm以上、通気速度0.5 V/V/M、溶存酸素(DO)レベルを撹拌カスケード(agitation cascade)により制御して30%空気飽和以上にして、発酵を27℃で24時間実施した。発酵器中で調製された二次シード培養物から、600 mLを無菌状態で取り出し、15 L Braun発酵器中の、0.02%消泡剤SAG 471を含む15リットルの産生培地SGP-2に移した。出発攪拌の設定を300rpm、通気速度0.5 V/V/M、溶存酸素(DO)レベルを撹拌カスケードにより制御して30%空気飽和以上にして、発酵を24℃で5日間実施した。SfAは、発酵ブロス中10〜20 mg/Lで産生されたのが観察された。
【0175】
(実施例2-サングリフェリンAの抽出及び精製)
全ブロス(30 L)を遠心分離により清澄化した。得られた細胞ペレットを酢酸エチルで2回抽出したが(2×10 L)、それぞれオーバーヘッドパドル攪拌機により1時間攪拌し、溶媒をポンプで吸引する前に放置して沈降させることにより抽出した。次いで、酢酸エチル層を合わせ(約20 L)、溶媒を減圧下40℃で除去して、油状の残渣を得た。次いで、この油状残渣を、80:20 メタノール:水(総体積500 mL)に懸濁させ、ヘキサンで2回抽出した(2×500 mL)。次いで、80:20 メタノール:水分画を減圧下で乾燥させると、SfA及びSfBを含む粗製乾燥抽出物を与えた。この抽出物をメタノール(100 ml)に溶解させ、15 gのシリカゲルと混合して乾燥させて粉末とした。該粉末を、100% CHCl3に充填されているシリカゲルカラム(5×20 cm)に入れた。溶離溶媒1リットルごとに、メタノール濃度を段階的に1%ずつ増加させ、250 mlのフラクションを集めた。3リットルの溶媒溶離の後、メタノール濃度を段階的に2%ずつ増加させて8%にした。SfA及び/又はSfBを含むフラクションを合わせて、真空中で蒸発乾固させ、SfA及びSfBを分取HPLCにより精製した。分取HPLCは、下記の時間表で20 ml/分で溶媒A(水)及び溶媒B(アセトニトリル)を流すWaters Xterra Prep MS C18 OBD 10mm(19×250 mm)カラムで行った。
t=0分、55% B
t=4分、55% B
t=30分、100% B
t=32分、100% B
t=36分、55% B
SfAを含むフラクションを合わせて、乾燥させた。
【0176】
(実施例3-8(アルデヒド性マクロ環)の合成)
(3.1 26,27-ジヒドロキシサングリフェリン、9の製造)
【化44】
tert-ブチルアルコール(4 mL)中のサングリフェリンA、5(135 mg, 0.1238 mmol)、(DHQ)2PHAL(5.76 mg, 0.0074 mmol)、四酸化オスミウムの2.5 wt % tert-ブチルアルコール溶液(47 μL, 0.0037 mmol)、及びメタンスルホンアミド(23.6 mg, 0.2476 mmol)の攪拌溶液に、室温で、4 mLの水中のフェリシアン化カリウム(122.3 mg, 0.3714 mmol)及び炭酸カリウム(51.3 mg, 0.3714 mmol)の溶液を加えた。1時間攪拌後、亜硫酸ナトリウム(187.3 mg, 1.4857 mmol)の飽和水溶液を加えた。生じた混合物を30分間攪拌し、次いで3回分の酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を、逆相カラムを使用して(C18カラム、A=H2O、B=アセトニトリル、t=2分、B=0%;t=4分、B=30%、t=9分、B=35%;t=12分、B=45%;t=16分、B=70%)Combiflashにより精製すると、26,27-ジヒドロキシサングリフェリン、9(102 mg, 70 %)を白色の固体として与えた。QC LC-MS, RT = 5.3 分, m/z = 1124.8 [M+H]+, 1122.7 [M-H]-。
【0177】
(3.2 アルデヒド性マクロ環、8の製造)
【化45】
26,27-ジヒドロキシサングリフェリン、9(60.0 mg, 0.053 mmol)のTHF及び水(2:1, 5 mL)中の溶液に、過ヨウ素酸ナトリウム(22.8 mg,0.107 mmol)を加えた。生じた混合物を室温で2時間攪拌し、重炭酸ナトリウム飽和水溶液を加えた。この混合物を、3回分の酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を、逆相カラムを使用して(C18カラム、A=水、B=CH3CN、t=3分、B=0%;t=12分、B=40%;t=17分、B=40%、t=21分、B=70%)Combiflashにより精製すると、アルデヒド性マクロ環、8(35 mg, 90 %)を白色の固体として与えた。QC LC-MS, RT = 4.0分、m/z = 761.4 [M+Na]+, 737.3 [M-H]-。
【0178】
(実施例4-10の合成)
【化46】
NaH(0.974 mg, 0.041 mmol)の無水THF(1.0 ml)中の懸濁液に、ジエチル2-(メトキシ(メチル)アミノ)-2-オキソエチルホスホナート(25.8 mg, 0.108 mmol)の無水THF(0.2 ml)溶液をN2雰囲気下で、-3℃で攪拌しながら滴加した。次いで、該溶液を、透明になるまで室温で攪拌した。8(20 mg, 0.027 mmol)の無水THF(0.2 ml)溶液を該透明溶液に滴加し、混合物を室温で30分間攪拌した。該混合物を水によりクエンチし、THFを減圧下で除去した。残渣を酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、次いで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去すると、14 mgの残渣を与えた。粗製の化合物(アセトンに溶解)をTLCプレート(1mm, 20×20 cm)に載せ、アセトン/石油エーテル=3:2で展開した。目標とするバンド(UVで可視化)を回収し、アセトンと混合し、次いでシリカゲルのパッド(高さ2〜3 cm、不純物を除くためアセトンで事前にすすぐ)で濾過した。濾過を真空下で濃縮した。最後に、得られた試料にアセトニトリル及び水を加え、溶液を凍結乾燥させると、所望の生成物を白色の固形粉末として与えた(8.2 mg, 37 %)。LC-MS: 824 [M+1]+。1H NMRに関しては図2参照。
【0179】
(実施例5-13の合成)
【化47】
【0180】
(5.1中間体12の合成)
【化48】
N,N-ジエチルクロロアセトアミド(17.5 mL, 0.127 mmol)及び亜リン酸トリメチル(22 mL, 0.1309 mmol)の混合物を180℃で8時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、蒸留すると、中間体12(15g, 47%)を無色の油として与えた。
【0181】
(5.2 13の合成)
【化49】
NaH(0.776 mg, 0.0324 mmol)の無水THF(1.0 mL)中の懸濁液に、ジエチル2-(ジエチルアミノ)-2-オキソエチルホスホナート(28.5 mg, 0.1134 mol)の無水THF(0.2 mL)溶液を、N2雰囲気下で-3℃で攪拌しながら滴加した。次いで、該溶液を、透明になるまで室温で攪拌した。8(20 mg, 0.027 mmol)の無水THF(0.2 mL)溶液を、該透明溶液に滴加し、混合物を室温で30分間攪拌した。該混合物を水でクエンチし、THFを減圧下で蒸発させた。残渣をEAで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、次いで乾燥させた。溶媒を蒸発させて除くと、17 mgの残渣を与えたが、それを分取TLCにより精製した。粗製化合物(アセトンに溶解)をTLCプレート(1mm, 20×20 cm)に載せ、アセトン/石油エーテル=3:2で展開した。目標とするバンド(UVにより可視化)を回収し、アセトンと混合し、次いでシリカゲルのパッド(高さ2〜3 cm、不純物を除くためにアセトンで事前にすすぐ)で濾過した。濾過を真空下で濃縮した。最後に、得られた試料にアセトニトリル及び水を加え、溶液を凍結乾燥させると、所望の生成物を白色の固形粉末として与えた(9.0 mg, 40%)。LC-MS: 836 [M+1]+。1H NMRに関しては図3参照。
【0182】
(実施例6-16の合成)
【化50】
(6.1中間体15の合成)
【化51】
N,-イソプロピルクロロアセトアミド(1g, 7.41mmol)及び亜リン酸トリエチル(1.6mL, 9.09mmol)の混合物を140℃で8時間攪拌した。該反応混合物を室温に冷却し、200 mgの試料を分取HPLCによる精製に使用すると、中間体15(60mg, 34%)を無色の油として与えた。
【0183】
(6.2 16の合成)
【化52】
NaH(0.972 mg, 0.0405 mmol)の無水THF(1.0 mL)中の懸濁液に、ジエチル2-(イソプロピルアミノ)-2-オキソエチルホスホナート(26 mg, 0.108 mmol)の無水THF(0.2 mL)溶液を、N2雰囲気下で、-3℃で、攪拌しながら滴加した。次いで、該溶液を透明になるまで室温で攪拌した。8(20 mg, 0.027 mmol)の無水THF(0.2 ml)溶液を、該透明溶液に滴加し、室温で30分間攪拌した。該混合物を水でクエンチし、THFを減圧下で蒸発させた。残渣をEAで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、次いで乾燥させた。溶媒を蒸発させて除くと、18 mgの残渣を与え、それを分取TLCにより精製した。粗製化合物(アセトンに溶解)をTLCプレート(1mm, 20×20 cm)に載せ、アセトン/石油エーテル=3:2で展開した。目標とするバンド(UVにより可視化)を回収し、アセトンと混合し、次いでシリカゲルのパッド(高さ2〜3 cm、不純物を除くためにアセトンで事前にすすぐ)で濾過した。濾過を真空下で濃縮した。最後に、得られた試料にアセトニトリル及び水を加え、溶液を凍結乾燥させると、所望の生成物を白色の固形粉末として与えた(8.5 mg, 38%)。LC-MS: 822 [M+1]+。1H NMRに関しては図4参照。
【0184】
(実施例7-19の合成)
【化53】
(7.1中間体18の合成)
【化54】
N-メチルクロロアセトアミド(200mg, 1.87mmol)及び亜リン酸トリエチル(0.67mL, 3.74mmol)の混合物を130℃で8時間攪拌した。該反応混合物を室温に冷却し、分取HPLCにより精製すると、中間体18(60mg, 15%)を無色の油として与えた。
【0185】
(7.2 19の合成)
【化55】
NaH(0.972 mg, 0.0405 mmol)の無水THF(1.0 ml)中の懸濁液に、ジエチル2-(メチルアミノ)-2-オキソエチルホスホナート(23 mg, 0.108 mmol)の無水THF(0.2 ml)溶液を、N2雰囲気下で、-3℃で、攪拌しながら、滴加した。次いで、該溶液を透明になるまで室温で攪拌した。8(20 mg, 0.027 mmol)の無水THF(0.2 ml)溶液を、該透明溶液に滴加し、混合物を室温で30分間攪拌した。該混合物を水でクエンチし、THFを減圧下で蒸発させた。残渣をEAで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、次いで乾燥させた。溶媒を蒸発により除くと、14 mgの残渣を与え、これを分取TLCにより精製した。粗製化合物(アセトンに溶解)をTLCプレート(1 mm, 20×20 cm)に載せ、アセトン/石油エーテル=3:2で展開した。目標とするバンド(UVにより可視化)を回収し、アセトンと混合し、次いでシリカゲルのパッド(高さ2〜3 cm、不純物を除くためにアセトンで事前にすすぐ)で濾過した。濾過を真空下で濃縮した。最後に、アセトニトリル及び水を得られた試料に加え、溶液を凍結乾燥させると、所望の生成物を白色の固形粉末として与えた(7.0 mg, 37%)。LC-MS: 794 [M+1]+。1H NMRに関しては図5参照。
【0186】
(実施例8-22の合成)
【化56】
(8.1中間体21の合成)
【化57】
2-クロロ-N,N-ジメチルアセトアミド(300 mg, 2.47 mmol)及び亜リン酸トリエチル(820 mg, 4.94 mmol)の混合物を150℃で一晩攪拌した。該反応混合物を室温に冷却し、分取HPLCにより精製すると、中間体21(105 mg, 20%)を与えた。
【0187】
(8.2 22の合成)
【化58】
21(50 mg, 0.224 mmol)のTHF(1.0 mL)溶液に、無水THF(0.2 mL)中のNaH(1.6 mg, 0.068 mmol)を0℃で攪拌しながら加えた。次いで、該溶液を透明になるまで室温で攪拌した。次いで、8(40 mg, 0.054 mmol)を該透明溶液に加え、混合物を室温で1時間攪拌した。該混合物を水(10 mL)でクエンチし、EAで抽出した(3×20 mL)。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を分取HPLC[カラム:Spring C18(25×250mm, 10μm)、移動相:A:H2O B:アセトニトリル、勾配:10分間で30%から40%になるB]により精製すると、22を白色の固体として得た(12.4 mg, 28%)。LC-MS: 808 [M+1]+。1H NMRに関しては図6参照。
【0188】
(実施例9-25の合成)
【化59】
(9.1中間体24の合成)
【化60】
P(Oet)3(0.63 ml, 3.75 mmol)及び23(500 mg, 3.74 mmol)の混合物を180℃で6時間攪拌した。該反応物を冷却し、分取HPLCにより精製すると、中間体24を無色の油として得た(100 mg, 11%)。
【0189】
(9.2 25の合成)
【化61】
THF(1 mL)に溶かした24(38 mg, 0.1624 mmol)の溶液に、NaH(1.5 mg, 0.0625 mmol)を0℃で加え、10分間攪拌した。次いで、該溶液を室温で攪拌し、化合物8(30 mg, 0.0406 mmol)を加えた。該反応物を室温で30分間攪拌し、水(5 mL)でクエンチした。該反応物を酢酸エチルで抽出した(3×20 mL)。合わせた有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で蒸発させた。残渣を分取HPLCにより精製すると、25を白色の固体として得た(7.4 mg, 22%)。1H NMRに関しては図7参照。
【0190】
(実施例10-26及び28の合成)
【化62】
(10.1 26の合成)
【化63】
メタノール(2 mL)に溶かした10(25 mg, 0.0304 mmol, 1当量)の0℃の溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(2.3 mg, 0.0608 mmol, 2当量)を加えた。該反応混合物を0℃で3時間攪拌した。該反応物を重炭酸ナトリウム溶液に加え、酢酸エチルで抽出した(3×20 mL)。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で除去した。残渣を直接次の工程に使用した。
【0191】
(10.2中間体27の合成)
【化64】
CH2Cl2(1.5 ml)に溶かしたトリフェニルホスフィン(24 mg, 0.0915 mmol, 3当量)の溶液に、イミダゾール(8.2 mg, 0.1206 mmol, 4当量)及びヨウ素(23 mg, 0.0914 mmol, 3当量)を加えた。該反応混合物を30分間攪拌し、0℃に冷却した。化合物27(粗製25 mg, 0.0303 mmol, 1当量)を加え、該反応物を室温で4.5時間攪拌した。該反応物を、重炭酸ナトリウム飽和水溶液(2 mL)でクエンチし、酢酸エチルで抽出した(3×10 mL)。合わせた有機層をNa2S2O3飽和水溶液(10 mL)及びブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させた。残渣を直接次の工程で使用した。
【0192】
(10.3 28の合成)
【化65】
CH2Cl2(1.5 mL)に溶かした27(25 mg, 0.02673 mmol, 1当量)の溶液に、0℃のDBU(8.2 mg, 0.1206 mmol, 4当量)を加えた。該反応混合物を室温で2時間攪拌した。該反応物を、重炭酸ナトリウム飽和水溶液(4 mL)でクエンチし、酢酸エチルで抽出した(3×20 mL)。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させた。残渣を分取HPLCにより精製すると、28を白色の固体として与えた(7 mg, 29%)。1H NMRに関しては図8参照。
【0193】
(実施例11-29の合成)
【化66】
ジオキサン(2 mL)に溶かした10(30 mg, 0.0365 mmol)の溶液に、HCl水溶液(2 M, 0.18 ml, 0.36 mmol)を加えた。該反応物を室温で4日間攪拌し、該反応物を水でクエンチし、酢酸エチルで抽出した(3×10 mL)。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させた。残渣を分取HPLCにより精製すると、29を白色の固体として与えた(11 mg, 38%)。1H NMRに関しては図9参照。
【0194】
(実施例12-32の合成)
【化67】
(12.1中間体31の合成)
【化68】
2-クロロ-N,N-ジイソブチルアセトアミド、31(206 mg, 1.00 mmol)及び亜リン酸トリエチル(332 mg, 2.00 mmol)の混合物を140℃で6時間攪拌した。該反応混合物を室温に冷却し、combiflashにより精製すると、中間体31(222 mg, 20%)を与えた。
【0195】
(12.2 32の合成)
【化69】
31(58 mg, 0.188 mmol)のTHF(1.0 mL)溶液に、無水THF(0.2 mL)中のNaH(1.4 mg, 0.0564 mmol)を室温で攪拌しながら加えた。次いで、8(35 mg, 0.047 mmol)を該透明溶液に加え、該混合物を室温で3時間攪拌した。該混合物を水(10 mL)でクエンチし、EAで抽出した(3×30 mL)。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を分取HPLCにより精製すると、32を白色の固体として得た(16.2 mg 38%)。LC-MS: 892 [M+1]+。1H NMRに関しては図10参照。
【0196】
(実施例13-35の合成)
【化70】
(13.1中間体34の合成)
【化71】
2-クロロ-1-モルホリノエタノン33(327 mg, 2 mmol)及び亜リン酸トリエチル(665 mg, 4 mmol)の混合物を140℃で一晩攪拌した。該反応混合物を室温に冷却し、combiflashにより精製すると、中間体34を無色の油として与えた(190 mg, 36%)。
【0197】
(13.2 35の合成)
【化72】
34(50 mg, 0.188 mmol)のTHF(1.0 mL)溶液に、無水THF(0.2 mL)中のNaH(1.4 mg, 0.056 mmol)を0℃で攪拌しながら加えた。次いで、該溶液を透明になるまで室温で攪拌した。次いで、8(35 mg, 0.047 mmol)を該透明溶液に加え、該混合物を室温で3時間攪拌した。該混合物を水(10 mL)でクエンチし、EAで抽出した(20 mL×3)。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を分取HPLCにより精製すると、14 mgの純粋な生成物35を白色の固体として得た(収率35%)。LC-MS: 850 [M+1]+。1H NMRに関しては図11参照。
【0198】
(実施例14-41の合成)
【化73】
(14.1中間体37の合成)
【化74】
4-ブロモビフェニル36(5 g, 21.55 mmol)、アリルアミン(2.4 mL, 32.33 mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド(3.11 g, 32.33 mmol)、Pd(DPPF)Cl2(0.79 g, 1.08 mmol)、及びDPPF(1.79 g, 3.23 mmol)の20 mLの無水THF中の混合物を80℃に4時間加熱した。TLCにより、出発物質4-ブロモビフェニルの完全な消失が示された。暗赤色の反応混合物をセライトに通して濾過し、真空中で濃縮すると、暗色の油を残した。該油を、PE/EA(5:1)を使用するシリカゲルのクロマトグラフィーにかけると、37(3.5 g, 収率60%)を黄色の固体として与えた。
【0199】
(14.2中間体38の合成)
【化75】
50 mLの無水エタノール中のN-アリルビフェニル-4-アミン37(3 g, 14.35 mmol)、10% Pd/C(0.3 g)、及びメタンスルホン酸(922μL, 14.35 mmol, 1当量)の混合物を2時間還流した。TLCにより、出発物質N-アリルビフェニル-4-アミンの消失が示された。該反応混合物をセライトのパッドに通して濾過し、NaOH水溶液(10 %)で洗浄し、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮すると、1.6 gの粗生成物38を与え、これをさらに精製することなく次の工程で使用した。
【0200】
(14.3中間体39の合成)
【化76】
乾燥DCM(50 mL)中の粗製物38(1.6 g, 9.462 mmol)、Et3N(1.052 g, 10.408 mmol)の溶液に、クロロアセチルクロリド(1.165 g, 10.408 mmol)を滴加した。該反応混合物を0〜10℃で3時間攪拌し、氷水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮すると、薄黄色の固体を与えた。該固体を、PE/EA (4:1)により分取TLCにより精製すると、所望の化合物39(200 mg, 2工程で収率6%)を与えた。
【0201】
(14.4中間体40の合成)
【化77】
N-(ビフェニル-4-イル)-2-クロロアセトアミド39(200 mg, 0.8161 mmol)及び亜リン酸トリエチル(271 mg, 1.6323 mmol)の混合物を140□で一晩攪拌した。該反応混合物を室温に冷却し、combiflashにより精製すると、中間体40(77 mg, 27%)を薄黄色の固体として与えた。
【0202】
(14.5 41の合成)
【化78】
40(65 mg, 0.188 mmol)のTHF(1.0 mL)溶液に、無水THF(0.2 mL)中のNaH(1.4 mg, 0.056 mmol)を0℃で攪拌しながら加えた。次いで、該溶液を透明になるまで室温で攪拌した。次いで、8(35 mg, 0.047 mmol)を該透明溶液に加え、該混合物を室温で3時間攪拌した。該混合物を水(10 mL)でクエンチし、EAで抽出した(20 mL×3)。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を分取HPLCにより精製すると、9.4 mgの純粋な生成物41を白色の固体として得た(収率21%)。LC-MS: 932 [M+1]+。1H NMRに関しては図12参照。
【0203】
(実施例15-45の合成)
【化79】
(15.1中間体43の合成)
【化80】
42(1 g, 8.834 mmol)、Et3N (0.983 g, 9.724 mmol)の乾燥DCM(10 mL)溶液に、クロロアセチルクロリド(1.088 g, 9.724 mmol)を滴加した。該反応混合物を0〜10℃で3時間攪拌し、氷水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮すると、薄黄色の液体(1.95 g)を与え、これをさらに精製することなく次の工程に使用した。
【0204】
(15.2中間体44の合成)
【化81】
43(粗製物、400 mg, 2.11 mmol)及び亜リン酸トリエチル(701 mg, 4.22 mmol)の混合物を140℃で一晩攪拌した。該反応混合物を室温に冷却し、combiflashにより精製すると、中間体44(265 mg, 43 %)を薄黄色の液体として与えた。
【0205】
(15.3 45の合成)
【化82】
44(55 mg, 0.188 mmol)のTHF(1.0 mL)溶液に、無水THF(0.2 mL)中のNaH(1.4 mg, 0.056 mmol)を0℃で攪拌しながら加えた。次いで、該溶液を、透明になるまで室温で攪拌した。次いで、8(35 mg, 0.047 mmol)を該透明溶液に加え、該混合物を室温で3時間攪拌した。該混合物を水(10 mL)でクエンチし、EAで抽出した(20 mL×3)。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を分取HPLCにより精製すると、2.5 mgの純粋な生成物45を白色の固体として得た(収率6%)。LC-MS: 876 [M+1]+。1H NMRに関しては図13参照。
【0206】
(実施例16-48の合成)
【化83】
(16.1中間体47の合成)
【化84】
2-クロロ-N-(ピリジン-2-イル)アセトアミド(170 mg, 1.00 mmol)及び亜リン酸トリエチル(332 mg, 2.00 mmol)の混合物を140℃で6時間攪拌した。該反応混合物を室温に冷却し、combiflashにより精製すると、中間体47(48 mg, 18%)を与えた。
【0207】
(16.2 48の合成)
【化85】
47(51 mg, 0.188 mmol)のTHF(1.0 mL)溶液に、無水THF(0.2 mL)中のNaH(1.4 mg, 0.0564 mmol)を室温で攪拌しながら加えた。次いで、8(35 mg, 0.047 mmol)を該透明溶液に加え、該混合物を室温で3時間攪拌した。該混合物を水(10 mL)でクエンチし、EAで抽出した(30 mL×3)。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を分取HPLCにより精製し、19.7 mgの純粋な生成物48を白色の固体として得た(収率48.5%)。LC-MS: 857 [M+1]+。
【0208】
(実施例17-51の合成)
【化86】
(17.1中間体49の合成)
【化87】
49及び2当量の亜リン酸トリエチルを120℃で一晩攪拌した。該反応混合物を室温に冷却し、結晶化により精製すると、中間体50を与えた。
【0209】
(17.2 51の合成)
【化88】
50のTHF溶液に、無水THF中のNaHを0℃で攪拌しながら加えた。次いで、該溶液を透明になるまで室温で攪拌した。次いで、8(30 mg)を該透明溶液に加え、該混合物を室温で3時間攪拌した。該混合物を水でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を分取TLC及び分取HPLCにより精製すると、2.4 mgの純粋な生成物51を白色の固体として得た。LC-MS: 862 [M+1]+。1H NMRに関しては図14参照。
【0210】
(実施例18-55の合成)
【化89】
(18.1中間体53の合成)
【化90】
52、Et3Nの乾燥DCM溶液に、クロロアセチルクロリドを滴加した。該反応混合物を0〜10℃で30分間攪拌し、酢酸エチルで抽出した。有機層を洗浄すると液体を与え、これをさらに精製することなく次の工程に使用した。
【0211】
(18.2中間体54の合成)
【化91】
53及び亜リン酸トリエチルの混合物を120℃で一晩攪拌した。該反応混合物を室温に冷却し、combiflashにより精製すると、中間体54を与えた。
(18.3 55の合成)
【化92】
54のTHF溶液に、無水THF中のNaHを0℃で攪拌しながら加えた。次いで、該溶液を透明になるまで室温で攪拌した。次いで、8を該透明溶液に加え、該混合物を室温で攪拌した。該混合物を水でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を分取HPLCにより精製すると、55を白色の固体として得た。LC-MS: 850 [M+1]+。
【0212】
(実施例19-生物学的データ-レプリコン系におけるHCV抗ウイルス活性のインビトロ評価)
全般的方法に記載されたとおりレプリコンアッセイにおいて化合物を分析した。シクロスポリンA、1、サングリフェリンA、5、及びヒドロキシマクロ環、6を比較として含めた。
【表7】
分かるとおり、10、13、16、22、28、29、32、41、45、48、51、及び55は全てHuh5.2レプリコンアッセイにおいて非常に強力であり(低いEC50により示される)、それらの大多数は該細胞系に対して低い細胞傷害性も示す(高いCC50により示される)。先に記載されたマクロ環サングリフェリンヒドロキシマクロ環、6はHCV阻害では効力が低く、シクロスポリンA、1及びサングリフェリンA、5は両方ともより高い細胞傷害性を示す。
【0213】
(実施例20-PBSへの溶解度)
pH 7.4のPBSへの化合物の溶解度を、全般的方法に記載されたとおり分析した。シクロスポリンA、1及びサングリフェリンA、5を比較として含めた。
【表8】
分かるとおり、本発明の化合物10、13、19、22、25、28、29、48、及び55は全てサングリフェリンA(5)と比較して高い溶解度を有し、シクロスポリンA(1)より高い溶解度を有する。
【0214】
(実施例21-生物学的データ-HIVに対する活性)
化合物を、全般的方法に記載されたとおり不死化細胞及び一次標的細胞を利用してHIV抗ウイルスアッセイにおいて分析した。シクロスポリンA、1及びサングリフェリンB、7を比較として含めた。
【表9】
分かるとおり、本発明の化合物29、48、55は全て、4種の細胞型のHIV感染の阻害でシクロスポリンA、1よりも著しく強力であった。
【0215】
(実施例22-生物学的データ-HBVに対する活性)
化合物を、全般的方法に記載されたとおりレプリコンアッセイにおいて分析した。シクロスポリンA、1及びサングリフェリンA、7を比較として含めた。
【表10】
分かるとおり、本発明の化合物29は、HBVの複製の阻害に著しく強力であり、32μMまでの濃度で細胞傷害性を全く示さず、高い治療指数をもたらす。
【0216】
(実施例23-生物学的データ-混合リンパ球反応(MLR)における免疫抑制活性の評価)
免疫抑制活性は、抗ウイルス療法としての使用には望まれない副作用である。したがって、化合物を、全般的方法に記載されたとおり混合リンパ球反応(MLR)において試験した。シクロスポリンA、1及びサングリフェリンA、5を比較として含めた。
【表11】
分かるとおり、本発明の化合物48及び55は両方とも非常に低レベルの免疫抑制活性を示し、CsA、1及びSfA、5よりも免疫抑制が低い。
【0217】
(実施例23-生物学的データ-シクロフィリンDの阻害)
被験化合物とシクロフィリンDとの相互作用を調査するため、全般的方法に記載されたとおり、CypD-NS5A分裂系を利用した。
【表12】
分かるとおり、本発明の化合物29、48、及び55は全て、CsA、1及びSfA、5よりも強力なレベルで、CypD-NS5A複合体の強力な分裂を示す。これらのアッセイが、CypDイソメラーゼ活性の直接阻害を測定するPPIアーゼアッセイ(データ示さず-方法論の詳細は全般的方法参照)に匹敵するデータ(及び類似のランク順序)を与えることも確認した。
【0218】
(実施例24-サングリフェリン生合成用の生合成クラスターのモジュール12の還元ループが、還元ループ交換戦略(reductive loop swap strategy)を利用してラパマイシンモジュール13又はサングリフェリンモジュール6由来の還元ループにより置換されている、生物工学でつくられたストレプトマイセス属A92-308110(DSM9954)(BIOT-4370)株の生成)
サングリフェリンモジュール12の還元ループは、サングリフェリン分子のC17のヒドロキシル基に関与するケトレダクターゼを含む。ラパマイシンモジュール13及びサングリフェリンモジュール6の両方由来の還元ループは、機能的領域の全てを含み、βケト基の完全な処理をもたらしメチレンを生み出す;具体的には、それらは、ケトをヒドロキシル基に還元するケトレダクターゼ、水を除いて二重結合をつくるデヒドラターゼ、及び二重結合をメチレンに還元するエノイルレダクターゼを含む。ベクターpMGo136及びpMGo137は、サングリフェリン生合成用の生合成クラスターのモジュール12の還元ループの、それぞれラパマイシンモジュール13又はサングリフェリンモジュール6由来の還元ループへの置換を操作するベクターである。
【0219】
この実施例に使用するDNAフラグメントの位置は2011年1月に利用可能な配列に基づいて与えられるが、Genbank DNA配列は更新され得るのでおおよその報告である。
ベクターは下記のとおり構築する。
【0220】
(24.1 サングリフェリンモジュール12の還元ループの上流フランキング領域に相同なDNA)
図16に示されるこの2072 bp DNAフラグメント(配列番号1)は、サングリフェリンモジュール12の還元ループの上流に相同領域(Genbank受託番号FJ809786.1公表配列において、およそ86654 bp〜88798 bp)を、追加の配列5'及び3'の両方を共に含み、クローニングを助ける制限酵素配列を組み込んでいる。このフラグメント(配列番号1)は、GenScript(860 センテニアルアベニュー、ピスカタウェイ、ニュージャージー州、08854、アメリカ合衆国)により合成され、GenScriptプロトコルにしたがって、この点を超えてクローニングに関与しない12の保護的フランキング塩基を両側に含んでpUC57中に提供され、プラスミドpMGo128をもたらした。
【0221】
(24.2 サングリフェリンモジュール12の還元ループの下流フランキング領域に相同なDNAのクローニング)
オリゴMGo013(配列番号2)及びMGo014(配列番号3)を使用し、テンプレートとしてのコスミドpTL3102(Quら、2011)DNA及びKOD Hot Start DNAポリメラーゼを使用して、1994 bp DNAフラグメント(配列番号4)を標準的なPCR反応で増幅した。5'伸長は、制限部位を導入して増幅されたフラグメントのクローニングを促進するように各オリゴにおいて設計した。或いは、ストレプトマイセス属A92-308110 (DSM9954)(BIOT-4370)由来のゲノムDNAを、このPCR反応のテンプレートとして使用して同じDNAフラグメントを与えることも可能であり、又はDNAフラグメントを、例えばGenScript(860 センテニアルアベニュー、ピスカタウェイ、ニュージャージー州、08854、アメリカ合衆国)を利用してDNA合成から得ることも可能であった。生じた1995 bp PCR産物(配列番号4)は、サングリフェリンモジュール12の還元ループの下流に相同領域(genbank受託番号FJ809786.1公表配列において、およそ90415 bp〜92381 bp)を含むが、望ましくない挿入Gが位置1978にある(図17参照;挿入されたGは太字で下線が引いてある)。1995 bp PCR産物(配列番号4)は、SmaIにより直線化され脱リン酸化されたpUC19(New England Biolabs社製)中にクローニングされ、プラスミドpMGo123をもたらした。
【化93】
pUC19中の1995 bp PCR産物(配列番号4)の配向は、インサートのHindIII部位がpUC19ポリリンカーのHindIII部位に隣接するようなものであった。pMGo123中のインサートの配列は、シーケンシングにより確認した。
【0222】
追加の塩基を含む領域を避けるため、より短い下流領域を下記のとおり目標に定めた:オリゴMGo037(配列番号5)及びMGo038(配列番号6)を使用し、テンプレートとしてのプラスミドpMGo123 DNA及びKOD Hot Start DNAポリメラーゼを使用して、1956 bp DNAフラグメント(配列番号7)を標準的なPCR反応で増幅した。5'伸長は、制限部位を導入して増幅されたフラグメントのクローニングを促進するように各オリゴにおいて設計した。1956 bp PCR産物(配列番号7)は、サングリフェリンモジュール12の還元ループの下流に相同領域(Genbank受託番号FJ809786.1公表配列において、およそ90415 bp〜92343 bp)を含む。1956 bp PCR産物(配列番号7)は、SmaIにより直線化され脱リン酸化されたpUC19(New England Biolabs社製)中にクローニングされ、プラスミドpMGo125をもたらした。
【化94】
【0223】
pUC19中の1956 bp PCR産物(配列番号7)の配向は、インサートのHindIII部位がpUC19ポリリンカーのHindIII部位に隣接するようなものであった。pMGo125中のインサートの配列は、シーケンシングにより確認した。
【0224】
(24.3 pMGo136及びpMGo137を生成させるクローニング戦略)
モジュール12のサングリフェリン還元ループの上流及び下流相同領域は、下記のとおり一緒にクローニングされる:2065 bp上流領域を、EcoRI及びXhoIによる消化でpMGo128から切除し、1944 bp下流領域を、XhoI及びHindIIIによる消化でpMGo125から切除する。両フラグメントを、pUC19(New England Biolabs社製)がEcoRI及びHindIIIにより消化されるときに生じる大きな骨格フラグメントに、3パート・ライゲーションで一緒にクローニングする。両インサートを含む正しくクローニングされたプラスミドを制限酵素分析により特定し、正しいプラスミドの1つをpMGo130と称する。
【0225】
pMGo130を、好適なNheI/BglIIフラグメント上の還元ループが、NheI及びBglII部位にクローニングされて、DNA配列がインフレームであるI型PKSモジュールの一部を生み出し、翻訳されてアミノ酸配列を与えるように設計する。入来ループ(in-coming loop)におけるこれらの部位の正確な配置は、配列のフレームの維持及び機能性アミノ酸配列へのこの翻訳において重要である。
【0226】
ラパマイシンモジュール13還元ループの源:ラパマイシンモジュール13還元ループは、他の系におけるドナーループとして既に使用されてきた(例えば、Gaisserら、2003)。ラパマイシンモジュール13ループは、その両側にアベルメクチンモジュール2由来の適切な相同領域があり、pPF137に存在する(Gaisserら、2003)。pPF137は、Gaisserら、2003により記載されたとおりpJLK137から構築される。pJLK137の構築の完全な説明は、国際公開第00/01827/1998号及びその中の引用文献に含まれている。手短な概要は下記のとおりである:ラパマイシンモジュール13ループを、導入された制限酵素部位を含む下記のオリゴを使用し、テンプレートラパマイシンコス31(Schweckeら、1995)を使用して、PCR増幅により単離した。
【化95】
このフラグメントを、SmaIにより先に消化され脱リン酸化されているpUC18中にクローニングしてpJLK120を与えた。次いで、このループを、下記のとおり構築したpJLK133に導入した:BglII/NheIフラグメント上でpJLK117からリンカーを除き、アベルメクチンモジュール2の2つの相同領域の間でクローニングして、pJLK133を与えた。ラパマイシンモジュール13還元ループを、BglII/NsiIフラグメントとしてpJLK120から、Bglll/NsiIにより消化されたpJLK133中にクローニングした。
【0227】
pJLK117(国際公開第00/01827/1998号及びその中の引用文献参照)は、エリスロマイシン装入モジュール(loading module)、エリスロマイシンPKSの第1及び第2の伸長モジュール、及びエリスロマイシン鎖停止チオエステラーゼを含むPKS遺伝子を含む発現プラスミドであるが、アシルトランスフェラーゼ(AT)の最後とアシルキャリアタンパク質(ACP)の最初の間のDNAセグメントが、下記の制限酵素、AvrII、BglII、SnaBI、PstI、SpeI、NsiI、Bsu36I、及びNheIの認識部位を含む合成オリゴヌクレオチドリンカーにより置換されている点が異なり、該特許出願に記載されるとおりに複数の工程で製造した。これらの制限酵素部位は、エリスロマイシンPKSのモジュール2における元のタンパク質配列の崩壊を最小限にして組み込むことができるので選択した。第1のリンカー含有ベクター、pJLK114は、アニーリングにより生成したオリゴPlf(配列番号10)及びPlb(配列番号11)を含む。
【化96】
【0228】
プラスミドpJLK117は、pJLK114のリンカーの5'末端を、唯一の違いが、HpaI部位、GTTAACがNheI部位、GCTAGCにより置換されていることであるフラグメントにより置換して構築した。
【0229】
この実施例のラパマイシンモジュール13還元ループの源はpPF137である。当業者は、このフラグメントを得るために、この複雑な工程の系列を追う必要がないことを認識するだろう。同じフラグメントは下記のとおり得られる:最初に、pUC18、又はpUC19の多重クローニング領域を、部位BglII、NsiI、及びNheIを含む合成リンカーにより置換できるが、例えば、これは、pUCベクターを、EcoRI及びHindIIIにより消化させ、アニールされると適切なオーバーハングを残し消化された骨格にライゲートする2つのオリゴヌクレオチドを使用して先に列記された部位を持つ合成リンカーを作ることにより達成できる。NsiI部位とNheI部位との間にpJLK117のリンカーの配列を組み込むことは、要求される配列の一部を与え、残りは、ラパマイシンコス31などのコスミド又はストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)NRRL 5491のゲノムDNA並びに配列番号08及び配列番号09として示されるオリゴから、PCR増幅により得ることができる。これは、ラパマイシンモジュール13ループをBglII/NsiIフラグメント上に与え、これを修飾pUCベクターのBglII/NsiI部位中にクローニングして、次いで、所望のループをBglII/NheIフラグメントとしてクローニングする。
【0230】
或いは、ラパマイシンモジュール13ループは、例えば、先に示したオリゴ配列番号8及び配列番号12を利用して、BglII/NheIフラグメントとして直接増幅できる。
【化97】
【0231】
ラパマイシンモジュール13還元ループを、pPF137からpKC1139WMB02中にBglII/NheIフラグメントとしてクローニングして、pKC1139WMB02-137を与えた。pKC1139WMB02はpKC1139-系プラスミドであり、ラパマイシンモジュール11還元ループ及びフランキング領域を含む7.8 kb DNAフラグメントを含む。それは、還元ループがBglII/NheIフラグメントとして切断でき、他のループと置換できるように操作された。pKC1139WMB02-137は、ラパマイシンにおけるループ交換を実施するように構築され、ラパマイシンモジュール13還元ループをラパマイシンモジュール11由来のフランキング領域と共に含む。この実施例において、ラパマイシンモジュール13ループをpKC1139WMB02-137からBglII/NheIフラグメントとしてクローニングする。これは、pPF137又はpJLK120から、或いは、与えられているオリゴ配列及びゲノムDNAを利用して等価なPCR反応を実施し、それをpUC18又はpUC19などの好適なベクターにクローニングすることにより得ることのできる同じフラグメントである。
【0232】
モジュール6のサングリフェリン還元ループは下記のとおり得られる:オリゴMGo019(配列番号13)及びMGo020(配列番号14)を使用して、KOD Hot Start DNAポリメラーゼ及びテンプレートとしてのストレプトマイセス属A92-308110(DSM9954)(BIOT-4370)由来のAlwNIにより消化されたゲノムDNAの5 kb〜6 kbフラクションを使用して、3176 bp DNAフラグメント(配列番号15)を標準的なPCR反応において増幅する。このフラクションは、サングリフェリン遺伝子クラスターの5402 bp AlwNIフラグメント(genbank受託番号FJ809786.1公表配列において、およそ56578 bp〜61979 bp)を含む。或いは、ストレプトマイセス属A92-308110(DSM9954)(BIOT-4370)由来の未消化のゲノムDNAをテンプレートとして使用する。ゲノムDNAは、Edge BioSystems社製細菌ゲノムDNA精製キット(Edge BioSystems, 201 ペリーパークウェイ、スイート5、ゲイザースバーグ、メリーランド州、20877、アメリカ合衆国)を使用して得られる。5'伸長は、制限部位を導入して、増幅されたフラグメントのフランキング領域とインフレームでのクローニングを促進するように、各オリゴにおいて設計する。3176 bp PCR産物(配列番号15)は、サングリフェリンモジュール6の還元ループを含む(genbank受託番号FJ809786.1公表配列において、およそ57166 bp〜60326 bp)。3176 bp PCR産物(配列番号15)を、SmaIにより直線化され脱リン酸化されているpUC19(New England Biolabs社製)中にクローニングして、プラスミドpMGo127をもたらす。
【化98】
【0233】
pKC1139WMB02-137及びpMGo127は、それぞれNheI及びBglIIにより消化されて、ラパマイシンモジュール13還元ループ及びサングリフェリンモジュール6還元ループを単離する。各ループは、NheI及びBglIIにより消化されたpMGo130中にクローニングされる。インサートを含むプラスミドを制限酵素分析により分析し、ラパマイシンモジュール13還元ループを含む1つの正しいプラスミドをpMGo132と称し、サングリフェリンモジュール6還元ループを含む1つの正しいプラスミドをpMGo133と称する。
【0234】
pMGo132及びpMGo133は、二重組換えによりサングリフェリンモジュール12中で還元ループ交換を実施するのに適切なDNAインサートをそれぞれ含む。各インサートを、EcoRI/HindIIIフラグメントとして、EcoRI及びHindIIIにより消化されたpKC1139中にクローニングして、ストレプトマイセス属の形質転換及び形質転換体の選別のための好適なプラスミド機能並びに温度感受性起源を与える。インサート含有プラスミドを制限酵素分析により分析し、ラパマイシンモジュール13還元ループを持つフラグメントを含む1つの正しいプラスミドをpMGo136と称し、サングリフェリンモジュール6還元ループを持つフラグメントを含む1つの正しいプラスミドをpMGo137と称する。
【0235】
(23.4 ストレプトマイセス属A92-308110(DSM9954)(BIOT-4370)の接合及びサングリフェリンモジュール12における還元ループ交換の操作)
プラスミドpMGo136及びpMGo137を、標準的な技術を利用してエシェリキア・コリ(E. Coli)ET12567 pUZ8002中に形質転換し、アプラマイシン(50 μg/mL)、カナマイシン(25 μg/mL)、及びクロラムフェニコール(12.5 μg/mL)を含む2TYプレート上で選別する。生じた株を使用して、アプラマイシン(50 μg/ml)、カナマイシン(25 μg/mL)、及びクロラムフェニコール(12.5 μg/mL)を含む3 mLの液体2TYに接種し、37℃、250rpmで一晩インキュベートする。各培養物の0.8 mLを使用して、50 mL Falcon管中で、アプラマイシン(50 μg/mL)、カナマイシン(25 μg/mL)、及びクロラムフェニコール(12.5 μg/mL)を含む10 mLの液体2TYに接種し、約0.5のOD600nmに達するまで、37℃、250 rpmでインキュベートする。生じた培養物を、4℃、3500 rpmで10分間遠心分離し、遠心分離を利用して10 mLの2TY培地で2回洗浄し、各洗浄後に細胞をペレットにする。生じたペレットを0.5 mLの2TYに再懸濁させ、すぐ使用できるよう氷の上に保つ。このプロセスを、以下に記載するストレプトマイセス胞子の調製の完了と同時になるように時間を合わせる。
【0236】
ストレプトマイセス属A92-308110(DSM9954)(BIOT-4370)の胞子を、1〜2週経ったコンフルエントなプレートから、約3 mLの20 %グリセロールに再懸濁させ、2つのエッペンドルフ管に等分することにより回収する。或いは、同様に調製した、約1.5 mLの凍結保存された胞子懸濁液を使用する。胞子を遠心分離し(6000 rpm, 5 分、室温)、0.5 mL 50 mM TES緩衝液に再懸濁させる前に1 mLの50 mM TES緩衝液で2回洗浄する。この管に、水浴中で50℃で10分間ヒートショックを与え、その後0.5 mLのTSB培地を加え、Eppendorf Thermomixer compact中で、37℃で4〜5時間インキュベートする。
【0237】
調製したエシェリキア・コリET12567 pUZ8002 pMGo136及びエシェリキア・コリET12567 pUZ8002 pMGo137を、それぞれ、1:1の比(各株100 μL)及び1:3の比(100 μL エシェリキア・コリ+300 μL BIOT-4370)でBIOT-4370と混合し、直ちにR6プレートに拡げ、37℃のインキュベーターに移す。およそ2時間のインキュベーションの後、これらのプレートを、ナリジクス酸を含む2mLの滅菌水で覆い、50 μg/Lの最終プレート内濃度を与える。プレートを37℃のインキュベーターに一晩戻し、アプラマイシンを含む2mLの滅菌水で覆い、20〜25 μg/Lの最終プレート内濃度を与える。或いは、プレートを最初に16〜18時間インキュベートし、次いでナリジクス酸溶液で覆い、1〜2時間乾燥させ、アプラマイシン溶液で覆う。接合完了体コロニーは約4〜7日後に現れ、アプラマイシン(25 μg/L)及びナリジクス酸(50 μg/L)を含むISP4培地にパッチし、37℃でインキュベートする。温度感受性起源がこの温度では機能しないので、アプラマイシン存在下での37℃でのインキュベーションは、プラスミドの一体化が起こることを確実にするはずである。一体化は、ゲノムとプラスミドインサートとの間に相同性のあるフランキング領域の一方で起こるはずである。十分な菌糸成長が観察されると、アプラマイシン(25 μg/L)を含む37℃のISP4培地に再パッチし、胞子形成させる。次いで、ISP4(抗生物質無し)にパッチし、37℃で各回3〜4日間インキュベートすることにより、株を3回継代培養する(温度感受性プラスミドの除去を促進するため)。最後に、株をISP4にパッチし、28℃でインキュベートして胞子形成させる(5〜7日)。胞子を回収し、28℃のISP4プレートで段階希釈し、単一のコロニーの選別を可能にする。胞子形成した単一のコロニーを、アプラマイシン(25 μg/L)を含む、又は含まないISP4プレートに二重にパッチして、プラスミドを放出するコロニーを特定し、約7日間成長させ、サングリフェリン及びサングリフェリンアナログの産生に関して試験する。分析のために選択された株は、アプラマイシンの存在下で成長しないものであり、望ましくは二次組換えによる耐性マーカーの損失を示している。
【0238】
(24.5 ファルコン管中のサングリフェリン及びサングリフェリンアナログの産生の株のスクリーニング)
良好に胞子形成したパッチのそれぞれの単一の約7mm寒天プラグを使用して、7 mLの滅菌SM25-3培地に接種し、2インチ工程のシェーカーで27℃、200 rpmでインキュベートする。48時間の成長後、各培養物0.7 mLを、5 % HP20樹脂と共に、7 mLのSGP6培地(30 g/L Nutrisoy(きな粉)、60 g/L グリセロール、21 g/L MOPS; pH 6.8)を含む滅菌ファルコン管に移す。培養物を、1インチ工程の振盪インキュベーターで、24℃、300 rpmで5日間成長させてから、採取する。各細菌培養物の0.8 mLを除き、小分けの前に培養物中の樹脂の適切な廃棄を確実にしながら、2 mLエッペンドルフ管に小分けする。0.8 mLのアセトニトリル及び15 μLのギ酸を加え、管を30分間混合する。混合物を遠心分離により清澄化し、150 μLの抽出物を除いてHPLCバイアルに入れ、HPLCにより分析する。
【0239】
(24.6野生型への復帰又はモジュール12ループ交換の株の分析)
株の抽出物をHPLCにより分析する。サングリフェリンA及びBを産生した株は、その結果が野生型への復帰を示すので、さらに分析しない。サングリフェリンA及びBの産生を欠き、17-デオキシ-サングリフェリンA及び17-デオキシ-サングリフェリンBの産生と一致するピークを示す株を先に進める。
【0240】
(実施例25-17-デオキシサングリフェリンAの単離及び半合成誘導体の生成)
次いで、17-デオキシサングリフェリンA及び/又はBを産生する株を、実施例1に記載された方法に類似の方法を利用して成長させ、実施例2に記載された方法に類似の方法を利用して化合物を単離し、実施例3に記載された方法に類似の方法を利用してアルデヒドを生成させる。次いで、これを、記載される半合成のためのテンプレートとして使用して、式1の化合物を生成させる。
【0241】
(実施例26-144の合成)
(中間体146の合成)
【化99】
N-メチルクロロアセトアミド(145, 200 mg, 1.87 mmol)及び亜リン酸トリエチル(0.67 mL, 3.74 mmol)の混合物を、130℃で8時間攪拌した。該反応混合物を室温に冷却し、分取HPLCにより精製すると、中間体146(60 mg, 15%)を無色の油として与えた。
【0242】
(147の合成)
【化100】
CH3I(13.5 μL, 0.203 mmol)を、室温の8(50 mg, 0.068 mmol)及びCs2CO3(75 mg, 0.203 mmol)の攪拌アセトン(4.0 mL)溶液に加えた。該混合物を室温で一晩攪拌し、真空中で濃縮した。残渣を酢酸エチルで抽出し、水で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させ、残渣を分取TLC(アセトン/石油=1.2/1)により精製すると、22 mgの147(純度86%)を得て、次の工程に直接使用した。
【0243】
(144の合成)
【化101】
無水THF(0.2 mL)中のNaH(1.052 mg, 0.044 mmol)の懸濁液に、146(24.5 mg, 0.117 mmol)の無水THF(0.2 mL)溶液を、N2雰囲気下-3℃で攪拌しながら滴加した。次いで、該溶液を透明になるまで室温で攪拌した。147(22 mg)の無水THF(0.6 mL)溶液を該透明溶液に滴加し、混合物を室温で30分間攪拌した。該混合物を水でクエンチし、THFを減圧下で蒸発させた。残渣を酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、次いで乾燥させた。溶媒を真空中で除去し、残渣を分取TLC(アセトン/石油=1.3/1)により精製すると、12 mgの粗製の144を得たが、これを再び分取HPLCにより精製すると、生成物を白色の固体として与えた(5 mg, 20 %)。LC-MS: 808 [M+H]+。
【0244】
(引用文献)
【化102】
【0245】
本願において言及された特許及び特許出願を含む全引用文献は、引用により最大限に本明細書に組み込まれる。
明細書及び以下の請求項において、文脈から反対の意味が要求されない限り、「含む(comprise)」という言葉並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」などの変形体は、述べられた整数若しくは工程又は整数の群の包含を意味するが、他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群の排除を意味しないと理解されるだろう。
【図1】
【技術分野】
【0001】
(序論)
本発明は、例えば、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのウイルスによるウイルス感染の治療における、シクロフィリン阻害剤として有用なサングリフェリンアナログに関する。本発明は、特にHCV、HBV、及びHIV感染の治療のための、医学におけるそれらの使用方法、及び筋ジストロフィーなどのミトコンドリア膜透過性遷移孔(mPTP)の阻害が有用な疾病におけるそれらの使用方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
(C型肝炎)
C型肝炎ウイルス(HCV)はプラス鎖のRNAウイルスであり、感染は輸血後肝炎の主な原因である。HCVは最もよく見られる慢性の血液由来の感染であり、米国における肝臓疾患による死亡の主な原因である。世界保健機関は、1億7千万人を超えるHCV感染の慢性キャリアがいると推定しており、これは世界の人口の約3%である。治療していないHCV感染患者のうち、約70%〜85%は慢性HCV感染を起こし、そのため肝硬変及び肝細胞癌を起こすリスクが高い。先進国では、肝臓癌の全症例の50〜76%及び全肝臓移植の3分の2は慢性HCV感染によるものである(Mannsら、2007)。
【0003】
肝疾患に加え、慢性感染患者は、他の慢性HCV関連疾患も起こすことがあり、他者への伝染の源となる。HCV感染は、関節痛(関節の疼痛)、皮膚の発疹、及び圧倒的に腎臓への内臓の損傷などの、非肝臓合併症を起こす。HCV感染は重大な世界的な医療の負担であり、現在C型肝炎に利用できるワクチンはない(Straderら、2004; Jacobsonら、2007; Mannsら、2007 Pawlotsky、2005; Zeuzem及びHermann、2002)。
【0004】
(HCVの治療)
現在の標準治療(SoC)は、24〜48週間のペグ化インターフェロンα(pIFNα)の皮下注射及び抗ウイルス薬リバビリンの経口投薬である。治療の成功は持続性ウイルス陰性化(SVR)により定義されるが、これは治療期間の最後及び6ヶ月後に血清中にHCV RNAが存在しないことにより定義される。SoCに対する全奏効率は、主に遺伝子型及び治療前HCV RNAレベルによる。遺伝子型2及び3の患者は、遺伝子型1に感染している患者よりもSoCに対して、より反応しそうである(Melnikova, 2008; Jacobsonら、2007)。
【0005】
相当数のHCV患者はSoC治療に十分に反応しないか、又は副作用のために療法に耐えることができず、フルコースの完了に関する頻発する問題につながる。SoCの全臨床SVR率(overall clinical SVR rate)はわずか50%ほどである(Melnikova, 2008)。耐性の発生は、治療の失敗の裏にあるもう1つの因子である(Jacobsonら、2007)。SoCは、うつ病の過去の顕著なエピソード又は心臓病を持つ患者など、治療の候補ではないと考えられる患者においても禁忌である。治療の中断につながることの多いSoCの副作用には、感冒様の病気、熱、疲労、血液病、貧血、白血球減少、血小板減少、脱毛症、及びうつ病がある(Mannsら、2007)。
【0006】
SoCを利用する長い治療に関連する副作用、耐性の発生、及び最適以下の全成功率を考慮すると、より安全で効き目のある新しい治療が、HCV感染の治療に切実に求められている。新しい治療の目的は、向上した効力、向上した毒性プロファイル、向上した耐性プロファイル、向上した生活の質、及びその結果得られる患者のコンプライアンスの向上を含む。HCVは生活環が短く、そのため、薬物療法の間の薬物耐性の発生はよく見られる。
【0007】
ウイルスRNAポリメラーゼNS5B又はウイルスプロテアーゼNS3などのウイルスタンパク質を標的とする、C型肝炎の新規の特異的標的抗ウイルス療法(STAT-C)薬が開発されつつある(Jacobsonら、2007; Parfieniukら、2007)。さらに、ウイルスの標的でなくヒトのタンパク質(例えば、シクロフィリン)を標的とする新規の化合物も開発されつつあり、薬物療法の間の耐性の発生率低減につながると期待されている(Mannsら、2007; Pockros, 2008; Pawlotsky J-M, 2005)。
【0008】
(シクロフィリン阻害剤)
シクロフィリン(CyP)は、タンパク質のコンフォメーション変化と折りたたみを容易にするペプチジル-プロリルシス-トランスイソメラーゼ活性を示す細胞タンパク質のファミリーである。CyPは、転写調節、免疫応答、タンパク質分泌、及びミトコンドリア機能などの細胞プロセスに関与している。HCVウイルスは、ヒトの感染の間その生活環のためにCyPをリクルートする。元々は、CyPが、RNA複製を促進するHCV非構造的タンパク質NS5B RNAポリメラーゼのRNA結合活性を刺激すると考えられていたが、CyP PPIアーゼ活性の要求を含む、代わりの仮説もいくつか提案されてきた。A及びBを含むCyPの種々のアイソフォームが、HCVの生活環に関与していると考えられている(Yangら、2008; Appelら、2006; Chatterjiら、2009; Gaitherら、2010)。マウス(Colganら、2000)及びヒトT細胞(Braaten及びLuban、2001)においてノックアウトを発生させる能力は、CyPAが細胞の成長及び生存にとって任意であることを示している。類似の結果が、細菌(Herrlerら、1994)、ニューロスポラ(Neurospore)(Tropschugら、1989)、及びサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(Dolinskiら、1997)におけるCyPAホモログの分裂により観察された。したがって、CyPの阻害は、HCV感染を治療するための新規で魅力的な宿主標的であり、SVRを高め、耐性の出現を防止し、治療の副作用を低減する目的で、現行のSoC又はSTAT-C薬に対する新しい潜在的な追加物である。
【化1】
【0009】
シクロスポリンA(Inoueら、2003)(「CsA」)及び構造が密接に関連しているその非免疫抑制臨床アナログDEBIO-025(Paeshuyseら、2006; Flisiakら、2008)、NIM811(Mathyら、2008)、及びSCY-635(Hopkinsら、2009)はシクロフィリンに結合することが知られており、シクロフィリン阻害剤としてHCV感染の治療におけるインビトロ及び臨床的な効能を示した(Crabbeら、2009; Flisiakら、2008; Mathyら、2008; Inoueら、2007; Ishiiら、2006; Paeshuyseら、2006)。早期のCsAに関する耐性研究はHCV NS5B RNAポリメラーゼにおける変異を示し、シクロフィリンBのみがHCV複製プロセスに関与するだろうということを示唆したが(Robidaら、2007)、最近の研究はHCV複製におけるシクロフィリンAの欠くことのできない役割を示唆した(Chatterjiら、2009; Yangら、2008)。NS5Aウイルスタンパク質における変異がCsA耐性にも関連し、NS5AがCyPA及びCypBの両方とそれらの特異的ペプチジル-プロリルシス/トランスイソメラーゼ(PPIアーゼ)活性に関して相互作用することを考慮すると、ウイルスの生活環における両シクロフィリンの役割がさらに示唆される(Hanoulleら、2009)。
【0010】
シクロスポリンアナログの抗HCV効果は免疫抑制性に依存せず、免疫抑制性はカルシニューリンに依存する。これは、HCV活性に必須な要件がCyP結合であり、カルシニューリン結合は必要でないことを示した。DEBIO-025は、HCV治療用の臨床的に最も進んだシクロフィリン阻害剤であり、最も優勢な4種のHCV遺伝子型(遺伝子型1、2、3、及び4)に対してインビトロ及びインビボの効力を示した。耐性研究は、DEBIO-025に対する耐性を与える変異がポリメラーゼ及びプロテアーゼの阻害剤に関して報告されていたものとは異なり、STAT-C耐性ウイルスレプリコンとは交叉耐性が全くないことを示した。より重要であるが、DEBIO-025は、プロテアーゼ及びポリメラーゼの両方の阻害剤に対する耐性を与えるエスケープ変異の発生も防止した(Crabbeら、2009)。
【0011】
しかし、臨床開発中のCsA系シクロフィリン阻害剤には、それらの共通の構造クラスに関連すると思われるいくつかの問題、例えば、療法の中止につながることがあり臨床の投与レベルを限定してきた特定の有害事象;可変的な効能を生み出し得る可変的な薬物動態;及び投薬問題を生み出し得る薬物-薬物相互作用の増大したリスクなどがある。
【0012】
DEBIO-025を服用する患者に最も頻繁に起こる有害事象(AE)には、黄疸、腹痛、嘔吐、疲労、及び発熱があった。臨床的に最も重要なAEは、高ビリルビン血症及び血小板数の減少(血小板減少症)であった。ペグ-IFNは重度の血小板減少症を起こすことがあり、DEBIO-025と組み合わせれば重大な臨床上の問題となるだろう。ビリルビンの増加及び血小板の減少は両方とも、NIM-811による早期の臨床試験において記載されてきた(Keら、2009)。DEBIO-025臨床試験の間に観察された高ビリルビン血症は治療の中止の後で逆転したが、それは16人の患者のうち4人の治療中断の原因であり、将来の試験のための投与レベルの低下の原因であった。HCVにおけるシクロフィリン阻害剤の抗ウイルス効果は投与量に関連するので、投与量の低下は抗ウイルス効果の低下につながり、単独療法として投与された場合、CsA系シクロフィリン阻害剤の後のいくつかの試験は、HCVウイルス量の低下が全くないか、又はあまり低下しないことを示した(Lawitzら、2009; Hopkinsら、2009; Nelsonら、2009)。DEBIO-025及びシクロスポリンAは、胆汁酸塩輸送ポンプなどの胆汁酸トランスポーター及び他の肝トランスポーター(特にMRP2/cMOAT/ABCC2)の阻害剤であることが知られている(Crabbeら、2009)。胆汁酸トランスポーター、特にMRP2との相互作用が、DEBIO-025の高投与レベルで見られる高ビリルビン血症の原因であり得ることが示唆された(Nelsonら、2009)。
【0013】
さらに、DEBIO-025及びシクロスポリンAはチトクロムP450(特にCYP3A4)による代謝の基質であり、ヒトP糖タンパク質(MDR1)の基質及び阻害剤であることが知られている(Crabbeら、2009)。シクロスポリンAは、インビトロでCYP3A4の阻害剤であることも示された(Niwaら、2007)。これは、例えば、ケトコナゾール、シメチジン、及びリファンピシンなど、CYP3A4の基質、誘導剤、又は阻害剤である他の薬物との薬物-薬物相互作用の増大したリスクがあり得ることを示している。さらに、P糖タンパク質による輸送を受けやすい薬物(例えば、ジゴキシン)との相互作用も予想され、これは付随する他の疾病の治療を受けているHCV患者に重症の薬物-薬物相互作用を起こし得る(Crabbeら、2009)。CsAは非常に変わりやすい薬物動態を持つことも知られており、初期の製剤は1〜89%の経口バイオアベイラビリティーを示した(Kapurtzakら、2004)。費用のかかる患者の血中濃度のモニタリングがないと、これは、血漿中濃度上昇による副作用の出現率の上昇をもたらすことがあり、或いは血漿中濃度低下による臨床反応の低下をもたらすことがある。
【0014】
シクロフィリンの阻害がHCVの治療に対する有望な新しい手法を表すことを考慮すると、HCV感染に対する併用療法において使用するための、より強力で安全なCyP阻害剤を発見し、かつ開発する必要がある。
【0015】
(サングリフェリン)
サングリフェリンA(SfA)及びその天然の同族体は、ストレプトマイセス属(Streptomyces sp.)A92-308110(DSM 9954としても知られる)(国際公開第97/02285号参照)により産生される混合非リボソームペプチド/ポリケチドのクラスに属し、シクロフィリンA(CyPA)に対する高い親和性に基づいて元々発見された。SfAは、発酵ブロス中に最も豊富にある成分であり、CsAに比べてCyPAに対しておよそ20倍高い親和性を示す。これは、サングリフェリンがHCVの治療に有用になり得るという示唆をもたらした(国際公開第2006/138507号)。サングリフェリンは、インビトロで試験される場合CsAよりも低い免疫抑制活性を示すことも示された(Sanglierら、1999; Fehrら、1999)。SfAは、CyPAのCsA結合部位に高い親和性で結合する(Kallenら、2005)。
【化2】
【0016】
SfAの免疫抑制作用機構は、CsA、FK506、及びラパマイシンなどの他の公知のイムノフィリン-結合性免疫抑制薬の機構とは異なる。SfAは、CsAの標的であるカルシニューリンのホスファターゼ活性を阻害せず(Zenkeら、2001)、その代わりに、その免疫抑制活性は、インターロイキン-6の阻害(Hartelら、2005)、インターロイキン-12の阻害(Steinschulteら、2003)、及びインターロイキン-2-依存性T細胞増殖の阻害(Zhang及びLiu、2001)によるものとされてきた。しかし、SfAがその免疫抑制効果を発揮する分子標的及び機構は今のところ未知である。
【0017】
SfAの分子構造は複雑であり、CyPAとのその相互作用は、主に該分子のマクロ環部分により媒介されていると考えられている。実際、SfAの酸化開裂から誘導されたマクロ環化合物(ヒドロキシマクロ環)はCyPAに対して強い親和性を示した(Sedraniら、2003)。X線結晶構造データは、ヒドロキシマクロ環がCsAと同じCyPAの活性部位に結合することを示した。SfAのマクロ環部分に基づくアナログは免疫抑制性が欠けていることも示されており(Sedraniら、2003)、HCV療法における潜在的な使用のための非免疫抑制CyP阻害剤の設計の機会を与える。
【0018】
サングリフェリンなどの化合物の薬物開発における問題の1つは、親油性が高い分子の場合の低溶解度である。これは、低いバイオアベイラビリティ、食効の機会増大、剤形からの不完全な放出の頻度増大、及び患者間の差違増大につながることがある。難溶性分子は、厳しく限定された送達技術の選択及び複雑さを増す溶解試験などの製剤に関する多くの問題も呈し、インビボの吸収と限定された相関又は低い相関を持つ。これらの問題は、多くの化合物の開発を停止させるほど手強いことが多い(Hiteら、2003)。
【0019】
(シクロフィリン阻害剤の他の治療的使用)
(ヒト免疫不全ウイルス(HIV))
CsA及びDEBIO-025などのシクロフィリン阻害剤は、HIV複製の阻害にも潜在的な効用を示した。シクロフィリン阻害剤は、HIV逆転写の進行/完了の間のCyPAの機能と干渉すると考えられている(Ptakら、2008)。しかし、臨床試験では、DEBIO-025は、それぞれ9名及び2名の患者でHIV-1 RNAレベルを≧0.5及び>1 log10 コピー/mLに低減しただけであり、治療された患者のうち27名はHIV-1 RNAレベルの低下を全く示さなかった(Steynら、2006)。この後で、DEBIO-025はHCV/HIV共感染患者で試験され、HCVに対してより良い効能を示し、HIV臨床試験は中止された(Watashiら、2010参照)。
【0020】
(HIVの治療)
世界中で3000万人を超える人々がHIV-1に感染しており、毎年300万の新しい症例がある。治療選択は、高活性抗レトロウイルス療法(HAART)の導入と共に劇的に向上した(Schopmanら、2010)。2008年までに、およそ25種の抗レトロウイルス薬がHIV-1の治療用に認可され、9種のヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、4種の非-ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、9種のプロテアーゼ阻害剤(PI)、1種の融合阻害剤、1種のCCR5阻害剤、及び1種のインテグラーゼ阻害剤(Shafer及びSchapiro、2008)が含まれる。しかし、これらの現行のレジメンのうち9種は完全なウイルス排除をもたらすが、それらは重症の副作用をもたらすことがあり、抗ウイルス耐性も未だ大きな懸念である。したがって、特に、シクロフィリン阻害剤の場合のように、認可された薬物がない作用機序クラスにおいて、新しい抗ウイルス療法の必要がいまだ存在する。
【0021】
(B型肝炎ウイルス)
B型肝炎はヘパドナウイルス科のDNAウイルスであり、B型肝炎の原因因子である。HCV及びHIVの場合とは異なり、B型肝炎ウイルスに対するシクロフィリン阻害剤の活性の発表された記述は非常に少なかった。Ptakら、2008は、HBVに対するDebio-025の弱い活性(IC50は4.1μM)を記載したが、Xieら、2007はHBVに対するCsAのいくらかの活性(IC50>1.3μg/mL)を記載した。これはHIV及びHCVとは対照的であり、HIV及びHCVではシクロフィリン阻害剤のナノモーラーの抗ウイルス活性の報告が多数ある。
【0022】
(HBVの治療)
HBVは世界中で4億人を感染させており、ウイルス性慢性肝炎及び肝細胞癌の主な原因である。2008年現在、HBVの治療に認可された薬物が6種ある;インターフェロンアルファ及びペグ化インターフェロンアルファ、3種のヌクレオシドアナログ(ラミブジン、エンテカビル、及びテルビブジン)、及び1種のヌクレオチドアナログ(アデホビルジピボキシル)。しかし、耐性の率の高さ、許容性の低さ、及び起こり得る副作用のため、新しい治療選択が必要とされる(Ferirら、2008)。
【0023】
(ミトコンドリア膜透過性遷移孔(mPTP)の阻害)
ミトコンドリアの高伝導性透過性遷移孔(high conductance permeability transition pores)の開口は、ミトコンドリア透過性遷移(MPT)のオンセットを開始する。これは原因となる事象であり、酸化ストレス、Ca2+毒性、及び虚血/再潅流後の肝細胞における壊死及びアポトーシスをもたらす。シクロフィリン阻害剤によるシクロフィリンD(シクロフィリンFとしても知られる)の阻害は、透過性遷移孔の開口を遮断することが示されており、これらのストレスの後の細胞死を保護する。したがって、シクロフィリンD阻害剤は、筋ジストロフィー、特にウールリッヒ型先天性筋ジストロフィー及びベスレムミオパチー(Millayら、2008、国際公開第2008/084368号、Palmaら、2009)、多発性硬化症(Forteら、2009)、糖尿病(Fujimotoら、2010)、筋萎縮性側索硬化症(Martin 2009)、双極性障害(Kubotaら、2010)、アルツハイマー病(Du及びYan、2010)、ハンチントン病(Perryら、2010)、心筋梗塞後の回復(Gomezら、2007)、及び慢性のアルコール消費(Kingら、2010)など、mPTP開口が関与するとされてきた適応症において有用になり得る。
【0024】
(さらなる治療用途)
シクロフィリン阻害剤は、水痘帯状疱疹ウイルス(Ptakら、2008)、A型インフルエンザウイルス(Liuら、2009)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス並びに他のヒト及びネココロナウイルス(Chenら、2005、Ptakら、2008)、デングウイルス(Kaulら、2009)、黄熱病ウイルス(Qingら、2009)、西ナイルウイルス(Qingら、2009)、西部馬脳炎ウイルス(Qingら、2009)、サイトメガロウイルス(Kawasakiら、2007)、及びワクシニアウイルス(Castroら、2003)などの他のウイルスに対して潜在的な活性を有し、そのためこれらウイルス感染の治療において潜在的な活性を有する。
癌など、他の治療分野におけるシクロフィリン阻害剤及びシクロフィリン阻害の効用についても報告がある(Hanら、2009)。
【0025】
したがって、特にHCV感染の治療に効用を持ち得るが、ウイルス感染、特にHIV感染及びHBV感染、筋ジストロフィー、ウールリッヒ型先天性筋ジストロフィー、ベスレムミオパチー、多発性硬化症、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症、双極性障害、アルツハイマー病、ハンチントン病、心筋梗塞、及び慢性アルコール消費など、シクロフィリンの阻害が有用になり得る他の疾病分野の治療にも効用を持ち得る新規のシクロフィリン阻害剤を特定する必要が未だ存在する。好ましくは、そのようなシクロフィリン阻害剤は、下記の性質の1つ以上を含む、現在利用可能なシクロフィリン阻害剤よりも向上した性質を有する:向上した水への溶解度、HCV、HIV、若しくはHBV、又は他のウイルスに対する向上した抗ウイルス効力、低減された毒性(肝毒性を含む)、標的臓器(例えば、HCVの場合肝臓)に対する高い曝露及び/又は長い半減期(投薬頻度の減少を可能にする)などの向上した薬理プロファイル、低減されたレベルのCYP3A4の代謝及び阻害並びに低減された(Pgp)阻害(より容易な多剤組み合わせを可能にする)による低減された薬物-薬物相互作用、高ビリルビン血症の機会低下をもたらす、MTP2への低い結合など、向上した副作用プロファイル、混合リンパ球反応(MLR)試験により示されるかもしれないものなど、より低い免疫抑制効果、特にCsA及びCsAアナログ(例えば、DEBIO-025)耐性ウイルス種などの、耐性ウイルス種に対する向上した活性、並びにより高い治療(及び/又は選択性)指数。本発明は、上記の性質の1つ以上を有し得る新規なサングリフェリンアナログを開示する。特に、本発明は、下記の有益な性質の1つ以上を有すると予期される、新規なアミド誘導体を開示する:向上した溶解度、したがって向上した製剤、低減された免疫抑制、並びにHCV、HIV、及びHBVを含む特定のウイルス型に対する向上した効力。
【発明の概要】
【0026】
本発明は、天然型サングリフェリンの半合成修飾により生成された新規なマクロ環サングリフェリンアナログを提供する。これらのアナログは、SfAなどのサングリフェリンのジヒドロキシ化、それに続く開裂によるアルデヒド性マクロ環の生成、それに続くホーナー・エモンズ型反応を含むさらなる化学作用による、アルデヒドに変わる種々の置換基を有する分子の生成により生成され得る。結果として、本発明は、SfAのマクロ環アミドアナログ、これらの化合物の製造方法、及び医学における、又はさらなる化合物の製造における中間体としてのこれらの化合物の使用方法を提供する。
【0027】
したがって、第1の態様において、本発明は、互変異性体;又はトランスとして示されているC26、27 C=C結合がシスである異性体を含み;かつC-53ケト(存在する場合)及びC-15ヒドロキシル基とメタノールとの組み合わせによりケタールが形成されるメタノール付加物を含む、下記の式(I)によるマクロ環アミド及びその誘導体、又はその医薬として許容し得る塩を提供する:
【化3】
(式中、
R1又はR2は、独立に、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルシクロアルキル、アルキルシクロアルケニル、アルケニルシクロアルキル、アルケニルシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルアリール、又はアルケニルヘテロアリールを表し、これらの基のいずれも単環式(monocylic)アリール又は単環式ヘテロアリールにより任意に置換されていてよく;
或いは、R1及び/又はR2は水素を表し;
かつ、アリール又はヘテロアリール基の一部でないR1及び/又はR2の1つ以上の炭素原子は、O、N、及びS(O)pから選択されるヘテロ原子により任意に置換されており、式中pは、0、1、又は2を表し、R1及び/又はR2の1つ以上の炭素原子はカルボニルにより任意に置換されており;
或いは、R1とR2とは結合して、示されている窒素原子を含む飽和又は不飽和の複素環を形成し、かつ該環の1つ以上の炭素原子は、O、N、及びS(O)pから選択されるヘテロ原子により任意に置換されており、式中pは0、1、又は2を表し、該環の1つ以上の炭素原子は任意にカルボニルにより置換されており、該複素環は任意にアリール又はヘテロアリール環に縮合していてよく;
R1及び/又はR2基の1つ以上の炭素原子は、1つ以上のハロゲン原子により任意に置換されていてよく;
R3は、H、-(CO)xアルキルを表し;
R4は、H又はOHを表し;
R5は、H、OH、又は=Oを表し;
nが二重結合を表す場合にR4がHを表す場合を除いて、nは単結合又は二重結合を表し;かつ
mが二重結合を表す場合にR5がHを表す場合を除いて、mは単結合又は二重結合を表し;
xは0又は1を表す)。
【0028】
上記の構造は代表的な互変異性体を示し、本発明は、例えばエノール化合物が示されている場合のケト化合物及びその逆など、式(I)の化合物の全互変異性体を包含する。
【0029】
式(I)の定義に含まれる具体的な互変異性体は、(i)C-53ケト基がC-15ヒドロキシルとヘミケタールを形成するもの、又は(ii)C-15及びC-17ヒドロキシルがC-53ケトと合わさってケタールを形成できるものである。番号付けは全て、親のサングリフェリンA構造の系を使用する。
【0030】
他の態様において、本発明は、互変異性体;又はC-53ケト及びC-15ヒドロキシル基とメタノールとの組み合わせによりケタールが形成されるメタノール付加物を含む、下記の式(III)又は式(IV)によるサングリフェリンアナログ及びその誘導体又はその医薬として許容し得る塩を提供する:
【化4】
。
【0031】
上記の構造は代表的な互変異性体を示し、本発明は、例えばエノール化合物が示されている場合のケト化合物及びその逆など、式(III)又は(IV)の化合物の全互変異性体を包含する。
【0032】
式(III)又は(IV)の定義に含まれる具体的な互変異性体は、(i)C-53ケト基がC-15ヒドロキシルとヘミケタールを形成するものである。番号付けは全て、親のサングリフェリンA構造の系を使用する。
【0033】
式(III)及び(IV)の化合物は、本明細書に記載される特定の化合物の合成に有用な新規の中間体である。それらは、それだけで有用なサングリフェリン様生物活性を有し、それ自体医薬として有用になり得る。
【0034】
(定義)
冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)の該冠詞の文法的な対象を意味するように本明細書において使用される。例としては、「1つのアナログ」は、1つのアナログ又は2つ以上のアナログを意味する。
【0035】
本明細書では、用語「アナログ(複数可)」は、互いに構造的に類似しているが組成がわずかに異なる(1つの原子を他の原子で置換する、又は特定の官能基の有無など)化合物を意味する。
【0036】
本明細書では、用語「サングリフェリン(複数可)」は、サングリフェリンAに構造的に類似しているが組成がわずかに異なる(1つの原子を他の原子で置換する、又は特定の官能基の有無など)化合物、特にストレプトマイセス属A92-308110の発酵により生成したものを意味する。例には、サングリフェリンBなど、国際公開第97/02285号及び国際公開第98/07743号で議論されているサングリフェリン様化合物がある。
【0037】
本明細書では、用語「HCV」は、C型肝炎ウイルス、フラビウイルス科の一本鎖のRNAエンベロープウイルスを意味する。
本明細書では、用語「HIV」は、ヒト免疫不全ウイルス、ヒト後天性免疫不全症候群の原因因子を意味する。
本明細書では、用語「HBV」は、B型肝炎ウイルス、ヘパドナウイルス科の環状DNAエンベロープウイルスであり、B型肝炎の原因因子を意味する。
【0038】
本明細書では、用語「バイオアベイラビリティ」は、薬物又は他の物質が、投与後に吸収されるか、又は生物活性の部位で利用可能になる程度又は速度を意味する。この性質は、化合物の溶解度、消化管中の吸収速度、タンパク結合及び代謝の程度などを含むいくつかの因子に依存する。当業者によく知られているだろうバイオアベイラビリティの種々の試験が本明細書に記載される(Egorinら、2002も参照されたい)。
【0039】
本願で使用される用語「水への溶解度」は、水性媒体、例えば、pH7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS)又は5%グルコース溶液への溶解度を意味する。水への溶解度の試験は、以下に、「水への溶解度アッセイ」として実施例に与えられている。
【0040】
本明細書では、用語「マクロ環アミド」は、本発明をその最も広い態様で表すと上記で言及されたアミド、例えば、上記式(I)の化合物又はその医薬として許容し得る塩を意味する。これらの化合物は、「本発明の化合物」又は「サングリフェリンの誘導体」又は「サングリフェリンアナログ」とも呼ばれ、これらの用語は本願において交換可能に使用される。
【0041】
式(I)の化合物などの本発明の化合物の医薬として許容し得る塩は、医薬として許容し得る無機又は有機の酸又は塩基から形成される従来の塩並びに四級アンモニウム酸付加塩を含む。好適な酸性塩のより具体的な例には、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ギ酸、乳酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、パルモン酸(palmoic)、マロン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ヒドロキシナフトエ酸、ヨウ化水素酸、リンゴ酸、ステロン酸(steroic)、タンニン酸などがある。塩酸塩は特に興味深い。シュウ酸などの他の酸は、それ自体医薬として許容し得るものではないが、本発明の化合物及びその医薬として許容し得る塩を得る際に中間体として有用な塩の製造に有用になり得る。好適な塩基性塩のより具体的な例には、ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、亜鉛、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、及びプロカイン塩がある。以下での本発明の化合物への言及は、式(I)の化合物とそれらの医薬として許容し得る塩の両方を含む。
【0042】
本明細書では、用語「アルキル」は、典型的には1〜10個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖のアルキル基、例えばC1-6アルキル基を表す。「アルケニル」は、2個以上の炭素(例えば、2〜10個の炭素、例えば2〜6個の炭素)を含み、1個以上の二重結合を持ち不飽和であるアルキル基を意味する。
【0043】
アルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、及びn-ブチルなどのC1-4アルキル基がある。アルケニル基の例には、-CH=CH2及び-CH2CH=CH2などのC2-4アルケニル基がある。
【0044】
本明細書では、用語「シクロアルキル」は、典型的には3〜10個の炭素原子を含み、任意に分岐している環式アルキル基を表し、例えば、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、又はシクロヘプチルがある。分岐鎖の例は2-メチルシクロペンチルである。「シクロアルケニル」は、典型的には5〜10個の炭素原子を含む環式アルケニル基を意味し、例えば、シクロペンチル、シクロヘキセニル、又はシクロヘプテニルがある。シクロアルキル及びシクロアルケニル基は、例えば、単環式でも二環式(スピロ環を含む)でもよいが、好適には単環式である。
【0045】
本明細書では、用語「ヘテロシクリル」は、1個以上1個以上の環炭素原子(例えば、1又は2個、例えば1個などの1、2、又は3個の環炭素原子)がO、N、及びSから選択されるヘテロ原子により置換されているシクロアルキル基を表す。例には、モルホリニル、ピペリジニル、ピロリジニル、ピペラジニル、及びN-メチルピペラジニルがある。
【0046】
本明細書では、用語「ヘテロシクレニル」は、1個以上1個以上の環炭素原子(例えば、1又は2個、例えば1個などの1、2、又は3個の環炭素原子)がO、N、及びSから選択されるヘテロ原子により置換されているシクロアルケニル基を表す。
【0047】
アリール基の例には、(示された場合を除き)単環式の基、例えばフェニル、及び芳香族であるか又は(二環式の環の場合少なくとも1個の芳香族環を含む)二環式の環(例えば、9員及び10員の環)がある。例えば、二環式の環は、全芳香族、例えばナフチルでよく、或いは、テトラリン、インデン、又はインダンなど、半芳香族(例えば、1個の芳香族環を含む)でもよい。好ましいアリールはフェニルである。アリール基は、例えば、アルキル(例えば、C1-4アルキル)、ヒドロキシル、CF3、ハロゲン、アルコキシ(例えば、C1-4アルコキシ)、ニトロ、-SO2Me、シアノ、及び-CONH2から選択される、例えば、1個以上(例えば、1、2、又は3個)の置換基により任意に置換されていてよい。
【0048】
ヘテロアリール基の例には、(示された場合を除き)単環式の基(例えば、5員及び6員の環)、及び芳香族であるか又は(二環式の環の場合少なくとも1個の芳香族環を含む)、1個以上のヘテロ原子N、O、及びSから選択された(例えば、1、2、3、又は4個)のヘテロ原子を含む二環式の環(例えば、9員及び10員の環)がある。5員のヘテロアリール環の例には、ピロール、フラン、チオフェン、オキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、及びトリアゾールがある。6員のヘテロアリール環の例には、ピリジン、ピリミジン、及びピラジンがある。二環式環の例には、全芳香族環、例えば、キノリン、キナゾリン、イソキノリン、インドール、シンノリン、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、プリン、及びキノキサリン、並びに半芳香族環、例えば、クロメン、クロマン、テトラヒドロキノリン、ジヒドロキノリン、イソインドリン、及びインドリンがある。単環式ヘテロアリール基が好ましい。上述のヘテロアリール基は、アリール基に関して先に記載されたとおり任意に置換されていてよい。
【0049】
二環式アリール及びヘテロアリール基が半芳香族である場合、分子の残りの部分への結合は、芳香族部分によっても、非芳香族部分によってもよい。
用語「治療」には、予防的処置並びに治療的処置が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
(図の説明)
【図1A】サングリフェリンA、5及びサングリフェリンB、7の回収全ブロス試料のHPLCプロファイルである(240nmでモニター)。
【図1B】サングリフェリンA、5のUVスペクトルである。
【図2】化合物10の1H NMRである。
【図3】化合物13の1H NMRである。
【図4】化合物16の1H NMRである。
【図5】化合物19の1H NMRである。
【図6】化合物22の1H NMRである。
【図7】化合物25の1H NMRである。
【図8】化合物28の1H NMRである。
【図9】化合物29の1H NMRである。
【図10】化合物32の1H NMRである。
【図11】化合物35の1H NMRである。
【図12】化合物41の1H NMRである。
【図13】化合物45の1H NMRである。
【図14】化合物51の1H NMRである。
【図15】化合物55の1H NMRである。
【図16】サングリフェリンモジュール12の還元ループの上流の相同領域を含む合成DNAフラグメント(配列番号1)である。
【図17】位置1978でGが挿入されたMGo013 + MGo14 PCR産物である(配列番号4)。
【図18】化合物144の1H NMRである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
(発明の説明)
本発明は、上述のサングリフェリンマクロ環アミドアナログ、これらの化合物の製造方法、及び医学におけるこれらの化合物の使用方法を提供する。
【0052】
一実施態様において、該化合物は、C-53ケト(存在する場合)及びC-15ヒドロキシル基とメタノールとの組み合わせによりケタールが形成される、そのメタノール付加物である。他の実施態様において、それはそうではない。
【0053】
R1及び/又はR2がS(O)p基を含む場合、変数pは好適には0又は1を表す。一実施態様において、pは0を表し、他の実施態様において、pは1を表す。他の実施態様において、pは2を表す。
【0054】
R1及び/又はR2が-アルキルアリールを表す場合、例にはC1-2アルキルアリール、例えばベンジルがある。
R1及び/又はR2が-アルケニルアリールを表す場合、例にはC2-3アルケニルアリール、例えば-エテニルフェニルがある。
R1及び/又はR2が-アルキルヘテロアリールを表す場合、例にはC1-2アルキルヘテロアリール、例えば-メチルピリジニルがある。
R1及び/又はR2が-アルケニルヘテロアリールを表す場合、例にはC2-3アルケニルヘテロアリール、例えば-エテニルピリジニルがある。
【0055】
一実施態様において、R1は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルシクロアルキル、アルキルシクロアルケニル、アルケニルシクロアルキル、アルケニルシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルアリール、又はアルケニルヘテロアリールを表す。
【0056】
一実施態様において、R2は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルシクロアルキル、アルキルシクロアルケニル、アルケニルシクロアルキル、アルケニルシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルアリール、又はアルケニルヘテロアリールを表す。
【0057】
一実施態様において、R1は、単環式アリール又は単環式ヘテロアリールにより任意に置換されているアリール又はヘテロアリールを表す。R1は、例えば、フェニル環の一方が任意に置換されている4-ビフェニリルを表すことがある。
【0058】
特定の実施態様において、R1及び/又はR2の炭素原子はヘテロ原子により置換されており、例えば、R1及び/又はR2の1、2、又は3個の、例えば1又は2個の、例えば1個の炭素原子(複数可)はヘテロ原子により置換されている。例えば、特定の実施態様において、-NR1R2部分において、1、2、又は3個の、例えば、1又は2個の、例えば1個の炭素原子(複数可)はヘテロ原子により置換されている。
【0059】
-CH3がNにより置換されている場合、形成される基は-NH2-である。-CH2-がNにより置換されている場合、形成される基は-NH-である。-CHR-がNにより置換されると、形成される基は-NR-である。したがって、R1及びR2内の窒素原子は、一級、二級、又は三級窒素原子になり得る。
R1及び/又はR2の炭素原子がヘテロ原子により置換される場合、好適にはO又はNにより、特にOにより置換される。
【0060】
特定の実施態様において、R1及び/又はR2の炭素原子は、R1及び/又はR2が、ヘテロシクリル、ヘテロシレニル(heterocylenyl)、アルキルヘテロシクリル、アルキルヘテロシクレニル、アルケニルヘテロシクリル、又はアルケニルヘテロシクレニルを表すように、ヘテロ原子により置換されている。
一実施態様において、R1は、単環式アリール若しくは単環式ヘテロアリールにより置換されているアリール若しくはヘテロアリール、-C1-4アルキル、-OC1-4アルキル、-COC1-4アルキル、又は-C2-4アルケニルを表し得る。
【0061】
R1とR2とが結合した場合に形成される複素環は、典型的には4〜8個の環原子、例えば5〜7個の環原子、特に5又は6個の環原子を含む。
R1とR2とが結合した場合に形成される複素環は、典型的には示されている窒素原子のみを含むか、又は1若しくは2個(例えば、1個)の追加のへテロ原子、特に窒素又は酸素原子を含む。
【0062】
R1及び/又はR2が2個以上のヘテロ原子を含む場合、これらは、典型的には2個以上の炭素原子により分離されているはずである。
例えば、R1とR2とが結合した場合に形成される環は、モルホリニル又は1,2-オキサジナンでよい。
R1とR2とが結合して、示されている窒素原子を含む飽和又は不飽和の複素環を形成する場合であって、該環の1個以上の炭素原子がO、N、及びS(O)p(式中、pは0、1、又は2を表す)から選択されるヘテロ原子により任意に置換されており、該環の1個以上の炭素原子がカルボニルにより任意に置換されており、該複素環がアリール又はヘテロアリール環に縮合している場合、例はテトラヒドロキノリニルである。
【0063】
R1又はR2の炭素原子がカルボニルにより置換されている場合、該カルボニルは、好適には別の炭素原子又は窒素原子に隣接して位置する。好適には、カルボニル基は、硫黄原子又は酸素原子に隣接して位置しない。
例えば、R1及び/又はR2は-COC1-4アルキル、例えば-COMeを表すことがある。
好適には、R1の炭素原子はカルボニルにより置換されていない。
好適には、R2の炭素原子はカルボニルにより置換されていない。
好適には、R1は水素を表さない。
好適には、R1及びR2は両方とも水素を表さない。
【0064】
好適には、R1及びR2基は、ヘテロ原子に隣接するC=C部分を含まない。好適には、R1及びR2基は、式(I)に示されているN基に隣接する末端C=C部分を含まない。
好適には、R2の炭素原子はヘテロ原子により全く置換されていない。
いくつかの実施態様において、R1の炭素原子はヘテロ原子により全く置換されていない。
好適には、R2は、水素、アルキル、又はアルケニルを表す。
【0065】
好適には、R2は、水素、C1-4アルキル、又はC1-4アルケニルを表し、特に、水素、C1-4アルキルを表す。一実施態様において、R2は水素を表す。他の実施態様において、R2はC1-4アルキルを表す。
或いは、好適には、R1とR2とはそれらが結合している窒素と共に、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、又はピペラジン環などの5員〜7員の複素環を表し、ピペラジンの4窒素がC1-4アルキルにより任意に置換されている。
【0066】
他の実施態様において、好適には、R1とR2とは、それらが結合している窒素と共に、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、又はピペラジン環などの5員〜7員の複素環を表し、ピペラジンの4窒素がC1-4アルキルにより任意に置換されており、該環内の窒素原子に隣接する炭素原子が任意にカルボニルにより置換されている。このように、例えば、R1とR2とは、それらが結合している窒素と共にピペリジノンを表す。
【0067】
他の実施態様において、酸素原子は、R1及びR2が結合している窒素原子に隣接している。例えば、R1は、R1が結合している窒素原子に隣接している炭素原子がOを表すアルキル又はアルケニルを表すことがある。例えば、R1は、-OC1-4アルキル、例えばOMeを表し得る。或いは、R1とR2とは結合し、R1が結合している窒素原子に隣接している炭素原子はOを表し、例えば、1,2-オキサジナン環を形成する。好適には、xは0を表す。
【0068】
R1及び/又はR2基の1つ以上の炭素原子が1個以上のハロゲン原子により置換される場合、例示的なハロゲン原子はF、Cl、及びBrであり、特にF及びCl、特にFである。
例えば、R1及び/又はR2部分は、最高6個のハロゲン原子(例えばF原子)、例えば最高3個のハロゲン原子(例えばF原子)により置換され得る。
例示的なハロゲン化されたR1及び/又はR2部分は-CF3である。
【0069】
好適には、R1及び/又はR2基の炭素原子は、1つ以上のハロゲン原子により置換されておらず、すなわち、R1又はR2は、独立に、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルシクロアルキル、アルキルシクロアルケニル、アルケニルシクロアルキル、アルケニルシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルアリール、又はアルケニルヘテロアリールを表し、これらの基のいずれも、単環式アリール又は単環式ヘテロアリールにより任意に置換されていてよく;
或いは、R1及び/又はR2は水素を表し;
アリール又はヘテロアリール基の一部でないR1及び/又はR2の1つ以上の炭素原子は、O、N、及びS(O)pから選択されるヘテロ原子により任意に置換されており、式中pは、0、1、又は2を表し、R1及び/又はR2の1つ以上の炭素原子はカルボニルにより任意に置換されており;
或いは、R1とR2とは結合して、示されている窒素原子を含む飽和又は不飽和の複素環を形成し、かつ該環の1つ以上の炭素原子は、O、N、及びS(O)pから選択されるヘテロ原子により任意に置換されており、式中pは0、1、又は2を表し、該環の1つ以上の炭素原子は任意にカルボニルにより置換されており、該複素環は任意にアリール又はヘテロアリール環に縮合していてよい。
【0070】
例示的なR1基には、メチル、-CF3、エチル、プロピル(例えば、n-プロピル又はi-プロピル)、-CH2CH=CH、又はブチル(例えば、n-ブチル、t-ブチル、又はi-ブチル)がある。上述の例示的な基は、例えば、H、Me、エチル、プロピル(例えば、n-プロピル又はi-プロピル)、又はブチル(例えば、n-ブチル、t-ブチル、又はi-ブチル)を表すR2とまとめられることがある。
【0071】
さらなる例示的なR1基にはシクロペンチル又はシクロヘキシルがある。上述の例示的な基は、例えば、H、Me、エチル、プロピル(例えば、n-プロピル又はi-プロピル))又は-OMeを表すR2とまとめられることがある。
さらなる例示的なR1基には、任意に置換されているピリジニル又は任意に置換されているフェニル、例えば、フェニルにより置換されているフェニルがある。上述の例示的な基は、H、Me、又は-OMeを表すR2とまとめられることがある。
【0072】
さらなる例示的なR1基には、-OMe、-OCF3、-Oエチル、O-i-プロピル、-SMe、O-n-プロピル、-O-n-ブチル、-O-t-ブチル、O-i-ブチル、O-CH2C(Me)3がある。上述の例示的な基は、例えば、H、Me、エチル、i-プロピル、又はt-ブチルを表すR2とまとめられることがある。
さらなる例示的なR1基には、-O-(任意に置換されているフェニル)又は-O-(任意に置換されているピリジニル)がある。上述の例示的な基は、例えば、H又はMeを表すR2とまとめられることがある。
【0073】
NR1R2が共に形成する例示的な部分には、モルホリニル、ピペリジニル、ピロリジニル、オキサジナン(例えば、1,2-オキサジナン)、及び下記の表に開示されているものがある。
【化5】
【0074】
好適には、R3は、H又は(CO)xC1-4アルキル、例えば、H又はメチルなどのH又はC1-4アルキル、特にHを表す。
好適には、nは単結合を表す。
好適には、mは単結合を表す。
好適には、R4はOHを表す。
好適には、R5は=Oを表す。
【0075】
本発明の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はOCH3を表し、R2はMeを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化6】
。
【0076】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はエチルを表し、R2はエチルを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化7】
。
【0077】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1は-CHMe2を表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化8】
。
【0078】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はメチルを表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化9】
。
【0079】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はメチルを表し、R2はHを表し、R3はMeを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化10】
。
【0080】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1は-CH2CH=CH2を表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化11】
。
【0081】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はメチルを表し、R2はメチルを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは結合を表し、mは結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化12】
。
【0082】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1は-CH2CHMe2を表し、R2は-CH2CHMe2を表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化13】
。
【0083】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はOCH3を表し、R2はMeを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは二重結合を表し、かつ、R5はHを表す:
【化14】
。
【0084】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はOCH3を表し、R2はMeを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは二重結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化15】
。
【0085】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1とR2とは共に6員の複素環に結合した-CH2CH2OCH2CH2-を表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化16】
。
【0086】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1は4-ビフェニリルを表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化17】
。
【0087】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はシクロヘキシルを表し、R2はMeを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化18】
。
【0088】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はシクロヘキシルを表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化19】
。
【0089】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1とR2とは共に6員の複素環に結合した-OCH2CH2CH2CH2-を表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化20】
。
【0090】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1は2-ピリジニルを表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化21】
。
【0091】
本発明の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はOCH3を表し、R2はMeを表し、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5はOHを表す:
【化22】
。
【0092】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はOCH3を表し、R2はMeを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化23】
。
【0093】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はエチルを表し、R2はエチルを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化24】
。
【0094】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1は-CHMe2を表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化25】
。
【0095】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はメチルを表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化26】
。
【0096】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はメチルを表し、R2はHを表し、R3はMeを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化27】
。
【0097】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1は-CH2CH=CH2を表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化28】
。
【0098】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はメチルを表し、R2はメチルを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは結合を表し、mは結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化29】
。
【0099】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1は-CH2CHMe2を表し、R2は-CH2CHMe2を表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化30】
。
【0100】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はOCH3を表し、R2はMeを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは二重結合を表し、かつ、R5はHを表す:
【化31】
。
【0101】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1とR2とは共に6員の複素環に結合した-CH2CH2OCH2CH2-を表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化32】
。
【0102】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1は4-ビフェニリルを表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化33】
。
【0103】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はシクロヘキシルを表し、R2はMeを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化34】
。
【0104】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1はシクロヘキシルを表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化35】
。
【0105】
本発明の他の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1とR2とは共に6員の複素環に結合した-OCH2CH2CH2CH2-を表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化36】
。
【0106】
本発明の好適な実施態様において、下記の構造により表されるとおり、R1は2-ピリジニルを表し、R2はHを表し、R3はHを表し、R4はHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化37】
。
【0107】
好適な実施態様の他の系列において、下記の構造により示されるとおり、R3はHを表し、R4はOHを表し、nは単結合を表し、mは単結合を表し、かつ、R5は=Oを表す:
【化38】
。
【0108】
これらの実施態様において、R10は下記の部分の1つを表す。
【化39】
【0109】
いくつかの実施態様において、(サングリフェリンAの構造を参照して)C26, 27位の二重結合は、トランス形態の代わりにシス形態でもよい。
本発明の好適な実施態様において、C26, 27位の二重結合は、下記の式により表されるとおり、シス形態である。
【化40】
そのような化合物は化学合成の間に製造できる。
【0110】
一般に、本発明の化合物は、サングリフェリンの半合成誘導体化により製造される。サングリフェリンは、その全体が組み込まれる国際公開第97/02285号及び国際公開第98/07743号に記載される方法又は本明細書に記載される追加の方法を利用して製造できる。サングリフェリンは、広範な実験操作の後で少量の物質を製造できる複雑な全合成化学によっても製造されてきた。サングリフェリンマクロ環アルデヒドを生成させる半合成方法は、米国特許第6,124,453号、Metternichら、1999年、Banteliら、2001年、及びSedraniら、2003年に記載されている。
【0111】
一般的に、式(I)の特定の化合物又はその医薬として許容し得る塩を製造する方法は、下記を含む:
(a)サングリフェリンA又はサングリフェリンの他の天然のアナログ(例えば、サングリフェリンB)又は変数R3、R4、R5、n、及びmにより示される部位での変動を有するそのアナログのジヒドロキシ化;
(b)1,2-ジオールの酸化開裂によるアルデヒドの生成;及び
(c)前記アルデヒドと、式IIの化合物を利用するホスホン酸エステルカルバニオンなどの安定化されたカルバニオン(又はその標準的な形態)とのカップリング。
【0112】
これは、下記に逆合成的に示される。
【化41】
式中、サングリフェリンAでは、R7は
【化42】
である。
【0113】
R8基は、同じでも異なっていてもよいが、独立に、アルキル(例えば、C1-4アルキル)又はベンジルを表す。
このため、本発明の化合物を製造する方法は、式IIの化合物をアルデヒド性マクロ環(式IIIの化合物)と反応させることを含む。
【0114】
式IIIの化合物の製造は既に報告されている(Metternichら、1999)。簡単に述べると、SfAなどのサングリフェリンは、修飾されたシャープレス条件(触媒性四酸化オスミウム)を利用してジヒドロキシ化される。キラルなリガンドを使用すると選択性を高める助けになる。次いで、得られたジオールは、例えば過ヨウ素酸ナトリウムを利用して酸化開裂できる。次いで、得られた式IIIの化合物は、ホモログ化されたアミドへの誘導体化の基質として使用できる。典型的には、式IIの化合物は、非プロトン性溶媒に溶解され、冷却され、塩基、例えば水素化ナトリウムにより処理される。次いで、式IIIの化合物が加えられ、反応物は加温される。好適な期間の後、反応は停止されて、式Iの化合物は標準的な条件により(例えば、分取HPLC、分取TLCなど)精製される。
【0115】
基R4、R5、n、及びmに変化を導入するための誘導体化は、式IIIの化合物の生成前でも、ホモログ化されたアミドを形成する反応の後でも実施できる。簡単に述べると、R4のヒドロキシルは、トリエンを生成するために酸性条件中で好適な基質の処理により除去できる。R5のケトンは、水素化ホウ素ナトリウムなどの好適な還元剤による処理によりヒドロキシル基に還元できる。ヒドロキシル基はヨードに転化でき、次いでDBUなどの好適な塩基による処理により除去できる。
【0116】
式IIの化合物は、公知であるか、又は入手可能なアミン(R1R2NH)から容易に合成できる。スキーム1(下記)に示されているとおり、アミンを使用してクロロアセチルクロリド又は類似物を処理して、α-クロロアミドを形成できる。次いで、α-クロロアミドをアルブゾフ反応において処理して、式IIの化合物を生成させる。式IIの化合物に至る他の経路は当業者には明らかであろう。
【化43】
【0117】
望まれる場合又は必要な場合、T. W. Green, P. G. M. Wutsの文献、「有機合成における保護基(Prtotective Groups in Organic Synthesis)」、Wiley-Interscience、New York、1999年、49-54、708-711に記載されるとおり、保護基を利用して、アルデヒド性マクロ環、酸性マクロ環若しくはアミン、又は式(II)の化合物における官能基を保護できる。
メタノール付加物は、発酵及びブロスからの単離により製造でき、或いはサングリフェリンA(国際公開第97/02285号)から製造できる。
【0118】
本明細書に提供される具体的な方法及び引用文献に加え、当業者は、合成法に関して、「ボーゲルの実用有機化学の教科書(Vogel's Textbook of Practical Organic Chemistry)」(Furnissら、1989)及び「マーチの先端有機化学(March's Advanced Organic Chemistry)」(Smith及びMarch、2001)を含むが、これらに限定されない標準的な教科書を調べることもできる。
【0119】
R4=Hかつn=結合である式(I)の化合物(先に示されている式(III)及び(IV)の化合物参照)の生成を可能にするポリケチド生合成工学法も記載されている。これは、サングリフェリンモジュール12の還元ループ(国際公開第2010/034243号及びQuら、2011参照)を、活性デヒドラターゼ(DH)、エノールレダクターゼ(ER)、及びケトレダクターゼ(KR)領域を与える還元ループ(例えば、ラパマイシンモジュール13、7、又は1(Aparicioら、1996)、エリスロマイシンモジュール4(Bevittら、1992)、又はサングリフェリンモジュール6(Quら、2011)由来の還元ループ)により置換することを含む。当業者は、公表された配列(例えば、Aparicioら、1996)に対する相同性に基づいてI型ポリケチドシンターゼモジュールにおいて好適な還元ループを特定でき、したがって、この変化が3種の活性領域DH、ER、及びKRを含む任意のそのようなループの導入により達成可能であることを認識するだろう。ポリケチド生合成工学の方法及び還元ループの概念は、国際公開第98/01546号及び国際公開第00/01827号に記載されている。これらの化合物が市販の化合物から新たに合成できる、すなわち全合成できることは当業者には明らかである。トリペプチドの合成及びその後のマクロ環形成は記載されている(Cabrejasら、1999)。このような方法を変更すれば、本発明の化合物を生成することができる。
【0120】
本発明の他の化合物は、それ自体で公知である方法又は先に記載されたものに類似の方法により製造できる。
本発明のサングリフェリンマクロ環は、単独又は他の治療剤と組み合わせて投与できる。2種(以上)の薬剤の同時投与により、それぞれのより低い投与量を利用でき、そのため副作用が低減され、効力の向上をもたらすことができ、そのためより高いSVR及び耐性の低減をもたらすことができる。
【0121】
したがって、一実施態様において、本発明のサングリフェリンマクロ環は、標準治療から採用された、HCV感染の治療のための1種以上の治療剤と共に同時投与される。これはインターフェロンのことがある(例えば、pIFNα及び/又はリバビリン)。
【0122】
代わりとなる実施態様において、本発明のサングリフェリンマクロ環は、STAT-C(HCV治療の特異的標的薬)などの1種以上の抗ウイルス剤と共に同時投与されるが、それは下記の1種以上になり得る:非ヌクレオシドポリメラーゼ阻害剤(例えば、ABT-333、ABT-072、BMS 791325、IDX375、VCH-222、BI 207127、ANA598、VCH-916、GS 9190、PF-00868554(フィリブビル)、若しくはVX-759)、ヌクレオシド又はヌクレオチドポリメラーゼ阻害剤(例えば、2'-C-メチルシチジン、2'-C-メチルアデノシン、R1479、PSI-6130、R7128、R1626、PSI 7977、若しくはIDX 184)、プロテアーゼ阻害剤(例えば、ABT-450、ACH-1625、BI 201355、BILN-2061、BMS-650032、CTS 1027、ダノプレビル、GS 9256、GS 9451、MK 5172、IDX 320、VX-950(テラプレビル)、SCH503034(ボセプレビル)、TMC435350、MK-7009(バネプリビル(Vaneprivir))、R7227/ITMN-191、EA-058、EA-063、若しくはVX 985)、NS5A阻害剤(例えば、A-831、BMS 790052、BMS 824393、CY-102、若しくはPPI-461)、シリマリン、NS4b阻害剤、セリンC-パルミトイルトランスフェラーゼ阻害剤、ニタゾキサニド、又はウイルス侵入阻害剤(例えば、PRO 206)。
【0123】
代わりとなる実施態様において、本発明のサングリフェリンマクロ環は、HIV治療のための1種以上の他の抗ウイルス剤(高活性抗レトロウイルス療法(HAART)など)と共に同時投与されるが、それは下記の1種以上になり得る:ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)(例えば、エムトリシタビン若しくはテノホビル)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)(例えば、リリピビリン(Rilipivirine)若しくはエファビレンツ)、プロテアーゼ阻害剤(PI)(例えば、リトナビル若しくはロピナビル)、融合阻害剤(例えば、マラビロク若しくはエンフビルチド)、CCR5阻害剤(例えば、アプラビロク若しくはビクリビロク)、成熟阻害剤(例えば、ベビリマート(Bevirimat))、CD4モノクローナル抗体(例えば、イバリツマブ(Ibalizumab))、及びインテグラーゼ阻害剤(例えば、エルチエグラビル(Eltiegravir))。
【0124】
代わりとなる実施態様において、本発明のサングリフェリンマクロ環は、HBV治療のための1種以上の他の抗ウイルス剤と共に同時投与されるが、それは下記の1種以上になり得る:インターフェロン(例えば、インターフェロンアルファ若しくはペグ化インターフェロンアルファ)、ヌクレオシド若しくはヌクレオチドアナログ(例えば、ラミブジン、エンテカビル、アデホビルジピボキシル、若しくはテルビブジン)、他の免疫調節剤(例えば、チモシンアルファ、CYT107、若しくはDV-601)、又はHMG CoAレダクターゼ阻害剤(例えば、シンバスタチン)。
【0125】
製剤は、簡便には単位剤形で呈すことができ、薬学の分野に周知である方法のいずれによっても製造できる。そのような方法は、有効成分(本発明の化合物)を1種以上の副成分を構成する担体と混合する工程を含む。一般的に、製剤は、有効成分を、液体担体又は微粉砕固体担体又は両方と均一かつ密接に混合し、次いで、必要な場合生成物を成形することにより製造される。
【0126】
本発明の化合物は、通常、医薬として許容し得る剤形で、任意に非毒性の有機又は無機の酸、又は塩基、付加塩の形態にある有効成分を含む医薬製剤の形態で経口投与されるだろう。治療すべき疾患及び患者、並びに投与経路によって、組成物は種々の投与量で投与され得る。
【0127】
例えば、本発明の化合物は、即放、遅延放出、又は制御放出用途のために、着香剤又は着色剤を含み得る、錠剤、カプセル剤、座薬(ovules)、エリキシル剤、液剤、又は懸濁剤の形態で経口的に、頬側的に、又は舌下的に投与できる。
【0128】
そのような錠剤は、微結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、及びグリシンなどの賦形剤、スターチ(好ましくは、コーン、ポテト、又はタピオカスターチ)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、及び特定の複合ケイ酸塩などの崩壊剤、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチン、及びアラビアゴムなどの造粒結合剤を含み得る。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、及びタルクなどの滑沢剤も含まれ得る。
【0129】
類似の種類の固体組成物は、ゼラチンカプセル中の充填剤としても利用できる。この点で好ましい賦形剤には、ラクトース、スターチ、セルロース、乳糖、又は高分子量ポリエチレングリコールがある。水性懸濁剤及び/又はエリキシル剤では、本発明の化合物は、種々の甘味剤若しくは着香剤、着色剤若しくは染料と、乳化剤及び/又は懸濁化剤と、水、エタノール、プロピレングリコール、及びグリセリンなどの希釈剤と、及びこれらの組み合わせと組み合わせてもよい。
【0130】
錠剤は、任意に1種以上の副成分と共に圧縮又は成型により製造できる。圧縮錠は、好適な機械中で、結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性な希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤又は分散剤と任意に混合された、粉末又は顆粒などの自由流動形態にある有効成分を圧縮することにより製造できる。湿性錠は、好適な機械中で、不活性な液体希釈剤により湿らした粉末状化合物の混合物を成型することにより製造できる。錠剤は任意にコーティング又は溝をつけてもよく、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを種々の比率で利用して有効成分の緩徐放出又は徐放性放出を与えて所望の放出プロファイルを与えるように製剤できる。
【0131】
経口投与に好適な本発明による製剤は、それぞれ所定量の有効成分を含む、カプセル剤、カシェ剤、若しくは錠剤などの分離した単位として;散剤若しくは顆粒剤として;水性液体若しくは非水性液体の液剤又は懸濁剤として;又は水中油型液体エマルション若しくは油中水型液体エマルションとして呈することができる。有効成分は、ボーラス、舐剤、又はペースト剤として呈することもできる。
【0132】
上記に詳細に言及された成分に加えて、本発明の製剤は、問題とする製剤の種類に関する分野に従来ある他の薬剤を含んでよく、例えば、経口投与に好適なものは着香剤を含んでよいことを理解されたい。
【0133】
好都合なことに、保存剤及び緩衝剤などの薬剤はビヒクル中に溶かすことができる。安定性を増すために、組成物を、バイアルに充填した後に凍結し、真空下で水を除去できる。次いで、凍結乾燥された乾燥散剤をバイアルに密封し、注射用の水の付随するバイアルを供給して、使用前に液体を再構成できる。
【0134】
本発明の化合物の投与すべき用量は、特定の化合物、関与する疾病、対象、及び疾病の性質及び重症度並びに対象の肉体的状態、選択された投与経路により変わるだろう。適切な用量は当業者により容易に決定できる。
組成物は、投与の方法により、0.1重量%、好ましくは5〜60%、より好ましくは10〜30重量%の本発明の化合物を含み得る。
【0135】
本発明の化合物の個別の用量の最適量及び間隔が、治療すべき病態の性質及び程度、投与の形態、経路、及び部位、並びに治療される特定の対象の年齢及び病態により決定され、最終的には利用すべき適切な用量を医師が決定するだろうことを当業者は認識するだろう。この用量は、適切なだけ頻繁に繰り返すことができる。副作用が現れた場合、用量の量及び/又は頻度を、通常の診療に従って、変更又は低減できる。
【0136】
本発明のさらなる態様は下記を含む:
医薬として使用するための本発明の化合物;
HCV、HBV、若しくはHIV感染などのウイルス感染(特にRNAウイルス感染)又は筋ジストロフィー、ウールリッヒ型先天性筋ジストロフィー、ベスレムミオパチー、多発性硬化症、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症、双極性障害、アルツハイマー病、ハンチントン病、心筋梗塞、若しくは慢性アルコール消費などの他の疾病の治療のための医薬として使用するための本発明の化合物;
本発明の化合物を、医薬として許容し得る希釈剤又は担体と共に含む医薬組成物;
本発明の化合物を、医薬として許容し得る希釈剤又は担体と共に含み、第2又はそれに次ぐ有効成分、特にHCV、HBV、若しくはHIV感染などのウイルス感染又は筋ジストロフィー、ウールリッヒ型先天性筋ジストロフィー、ベスレムミオパチー、多発性硬化症、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症、双極性障害、アルツハイマー病、ハンチントン病、心筋梗塞、若しくは慢性アルコール消費の治療に適応される有効成分をさらに含む、医薬組成物;
HCV、HBV、若しくはHIV感染などのウイルス感染(特にRNAウイルス感染)又は筋ジストロフィー、ウールリッヒ型先天性筋ジストロフィー、ベスレムミオパチー、多発性硬化症、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症、双極性障害、アルツハイマー病、ハンチントン病、心筋梗塞、若しくは慢性アルコール消費の治療の方法であって、対象に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含む方法;
HCV、HBV、若しくはHIV感染などのウイルス感染又は筋ジストロフィー、ウールリッヒ型先天性筋ジストロフィー、ベスレムミオパチー、多発性硬化症、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症、双極性障害、アルツハイマー病、ハンチントン病、心筋梗塞、若しくは慢性アルコール消費の治療のための医薬の製造のための本発明の化合物の使用。
【0137】
一実施態様において、上述の病態は、HCV、HIV感染、及び筋ジストロフィーから選択される。他の実施態様において、上述の病態はHBV感染である。
【0138】
(全般的方法)
(材料及び方法)
(菌株及び増殖条件)
BIOT-4253及びBIOT-4370とも称されるサングリフェリン産生株ストレプトマイセス属A92-308110(DSM no 9954、ドイツ、ブラウンシュヴァイクのDSMZから購入)を、オートミール寒天培地、MAM、又はISP2(下記参照)上で28℃で維持する。
【0139】
ストレプトマイセス属A92-308110を、オートミール寒天上で、28℃で7〜10日増殖させた。寒天板の表面からでた胞子を、蒸留した20%w/v滅菌グリセロール中に回収し、0.5mlのアリコートで-80℃で保存した。凍結胞子ストックを、シード培地SGS又はSM25-3の接種に使用した。接種されたシード培地を、5.0又は2.5 cmの行程で200〜300 rpmで振盪しながら、27℃で24時間インキュベートした。発酵培地SGP-2又はBT6を2.5%〜10%のシード培養物により接種し、5又は2.5 cmの行程で200〜300 rpmで振盪しながら、24℃で4〜5日間インキュベートした。次いで、培養物を抽出のために回収した。
【0140】
(培地処方)
培地の調製に使用した水は、Millipore Elix Analytical Grade Water Purification Systemを使用して調製した。
【表1】
【0141】
滅菌前のpHは、10M NaOH/10M H2SO4でpH 7.0に調整した
121℃、20〜30分加熱により滅菌(オートクレーブ処理)
備考
*消泡剤は、シードフラスコではなく、シード発酵槽にのみ使用
**最終体積を適宜調整して、シード体積とする
【0142】
【表2】
【表3】
【0143】
滅菌前のpHは、10M NaOHでpH 6.8に調整
121℃、20〜30分加熱により滅菌(オートクレーブ処理)
備考
*最終体積を適宜調整して、シード体積とする
**消泡剤は、フラスコではなく、発酵槽にのみ使用
【0144】
(LC-UV及びLC-UV-MSによる培養ブロスの分析)
培養ブロス(1 mL)及び酢酸エチル(1 mL)を加え、15〜30分間混合し、次いで10分間遠心分離する。0.4 mLの有機層を回収し、蒸発乾固させ、次いで0.20 mLのアセトニトリルに再溶解させる。
HPLC条件:
C18 Hyperclone BDS C18 カラム 3μ, 4.6 mm×150 mm
Phenomenex Analytical C18 Security Guard Cartridge(KJ0-4282)を備える
カラム温度50℃
流速1 mL/分
240 nmで紫外モニター
20 μLアリコートを注入
【0145】
溶媒勾配:
0分:55% B
1.0分:55% B
6.5分:100% B
10.0分:100% B
10.05分:55% B
13.0分:55% B
【0146】
溶媒Aは、水+0.1%ギ酸である。
溶媒Bは、アセトニトリル+0.1%ギ酸である。
これらの条件下でSfAは5.5分に溶離する。
これらの条件下でSfBは6.5分に溶離する。
【0147】
LCMSは、上述のクロマトグラフィー及び溶媒を利用する、ポジティブイオンモードで運転しているBruker Daltonics Esquire 3000+ エレクトロスプレー質量分析器と組み合わせた一体型Agilent HP1100 HPLCシステムで実施する。
【0148】
(合成)
特記されない限り、反応は全て無水の条件下で、オーブン乾燥させ真空下で冷却したガラス器具中で、乾燥させた溶媒を使用して実施する。反応は、適切な方法、例えば、培養ブロスのモニタリングに関して先に記載された方法を利用して、LC-UV-MSによりモニタリングする。
【0149】
(QC LC-MS法)
(HPLC条件)
C18 Hyperclone BDS C18カラム3μ, 4.6 mm×150 mm
Phenomenex Analytical C18 Security Guard Cartridge (KJ0-4282)を備える
カラム温度50℃
流速1 mL/分
210、240、及び254 nmで紫外モニター
【0150】
溶媒勾配:
0分:10% B
2.0分:10% B
15分:100% B
17分:100% B
17.05分:10% B
20分:10% B
溶媒Aは、水+0.1% ギ酸である。
溶媒Bは、アセトニトリル+0.1% ギ酸である。
【0151】
(MS条件)
MSは、150〜1500amuをスキャンする、スイッチングモード(ポジティブとネガティブの間をスイッチング)で運転する。
(インビトロ分析LC-MS法(例えば、溶解度のアッセイ))
API-4000装置を使用
(HPLC条件):
Ultimate AQ-C18 (2.1×50mm, 3μM)
カラム温度XX℃
流速0.4 mL/分
【0152】
(溶媒勾配A1 (例えば、化合物1及び13用)):
0.2分:10% B
0.7分:60% B
1.1分:60% B
1.4分:98% B
2.3分:98% B
2.4分:10% B
3.5分:停止
【0153】
(溶媒勾配A2 (例えば、化合物5及び10用)):
0.3分:10% B
0.9分:95% B
1.9分:95% B
2.0分:10% B
3.0分:停止
溶媒Aは、H2O-0.025% FA-1 mM NH4OACである。
溶媒Bは、MeOH-0.025% FA-1 mM NH4OACである。
【0154】
(ネガティブスキャンモード)
【表4】
【0155】
(ポジティブスキャンモード)
【表5】
【0156】
(HCV抗ウイルス活性の評価のためのインビトロレプリコンアッセイ)
遺伝子型1HCVに対する抗ウイルス効能を下記にように試験できる:試験物質の添加の1日前に、HCV遺伝子型1b I389luc-ubi-neo/NS3-3'/5.1レプリコン(Vrolijkら、2003)を含み、細胞増殖培地[10% FCS、1%非必須アミノ酸(11140035)、1% ペニシリン/ストレプトマイシン(15140148)、及び2%ジェネティシン(10131027); Invitrogen社製を補ったDMEM(カタログ番号41965039)]中で1.3〜1.4の比で3〜4日間75cm2の組織培養フラスコ(Techno Plastic Products社製)で継代培養したHuh5.2細胞を回収し、6500細胞/ウェル(100μL/ウェル)の密度で96-ウェル組織培養マイクロタイタープレート(抗代謝効果の評価にはFalcon、Beckton Dickinson社製、抗ウイルス効果の評価にはCulturPlate、Perkin Elmer社製)中で、アッセイ培地(DMEM、10% FCS、1%非必須アミノ酸、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)に播種した。マイクロタイタープレートを一晩インキュベートすると(37℃、5% CO2、相対湿度95〜99%)、非コンフルエントな細胞単層を生じる。希釈系列を準備する;各希釈系列を少なくとも二連で実施する。アッセイのセットアップ後に、マイクロタイタープレートを72時間(37℃、5% CO2、相対湿度95〜99%)インキュベートする。
【0157】
抗代謝効果の評価のために、アッセイ培地を吸引し、フェノールレッド不含培地中の75μLの5% MTS(Promega社製)溶液と替え、1.5時間(37℃、5% CO2、相対湿度95〜99%)インキュベートする。吸光度を498nmの波長で測定し(Safire2、Tecan社製)、光学濃度(OD値)を、非処理対照のパーセンテージに変換する。
【0158】
抗ウイルス効果の評価には、アッセイ培地を吸引し、細胞単層をPBSにより洗浄する。洗浄バッファを吸引し、25μLのGlo Lysis Buffer(カタログ番号E2661、Promega社製)を加え、その後室温で5分間溶解を進行させる。その後、50μLのLuciferase Assay System(カタログ番号E1501、Promega社製)を加え、ルシフェラーゼ発光シグナルを直ちに定量化する(1000ms積分時間/ウェル、Safire2、Tecan社製)。相対発光単位を非処理対照のパーセンテージに変換する。
【0159】
EC50及びEC90(用量-反応曲線から誘導した値)は、それぞれ、ウイルス複製の50%及び90%の阻害が観察される濃度を表す。CC50(用量-反応曲線から誘導した値)は、細胞の代謝活性が非処理細胞の代謝活性の50%に低下する濃度を表す。選択指数(SI)は、化合物の治療域を表すものであるが、CC50/EC50として計算する。
【0160】
ある濃度の化合物は、特定の濃度で抗レプリコン効果が閾値の70%を超え、代謝活性の30%以下の低減が見られる場合に、HCVレプリコン系における真の抗ウイルス効果を惹起すると考えられる。
【0161】
(水への溶解度の評価)
水への溶解度を下記のように試験できる:サングリフェリンアナログの10 mMストック溶液を室温で100% DMSOに調製する。三連の0.01 mLのアリコートを、アンバーバイアル中で、pH 7.3の0.1 M PBS溶液又は100% DMSOにより0.5mLにする。得られた0.2 mM溶液を、IKA(登録商標)vibrax VXRシェーカーで、室温で6時間振盪し、次いで得られた溶液又は懸濁液を2 mLエッペンドルフ管に移し、13200 rpmで30分間遠心分離する。次いで、上清液体のアリコートを上述のLCMS法により分析する。
【0162】
別法としては、pH7.4のPBSへの溶解度を下記のように試験できる:被験化合物及び対照化合物を、50%MeOH水溶液により40μM、16μM、4μM、1.6μM、0.4μM、0.16μM、0.04μM、及び0.002μMに希釈することにより、検量線を作成する。次いで、基準点をMeOH:PBS 1:1により1:20にさらに希釈する。1:20希釈後の最終濃度は、2000nM、800nM、200nM、80nM、20nM、8nM、2nM、及び1nMである。次いで、基準を、内部標準(ヒドロキシマクロ環、6)を含む同体積(1:1)のACNと混合する。試料を遠心分離し(5分間、12000rpm)、次いでLC/MSにより分析する。
【表6】
【0163】
被験化合物を、10mMの濃度でDMSO中のストック溶液として調製する。ストック溶液を、二連で、1.5mLエッペンドルフ管中でpH7.4のPBSに希釈して、最終DMSO濃度1%で100μMの標的濃度にする(例えば、4μLの10mM DMSOストック溶液を396μL 100mMリン酸緩衝液に入れる)。次いで、試料管を室温で穏やかに4時間振盪する。試料を遠心分離し(10分間、15000rpm)、未溶解の粒子を沈殿させる。次いで、上清を新しい管に移し、PBSで希釈する(各被験物質の希釈率は、利用される分析装置での化合物のシグナルレベルにより確認する)。次いで、希釈した試料を、同体積(1:1)のMeOHと混合する。最後に、試料を、LC-MS/MS分析用の内部標準(ヒドロキシマクロ環、6)を含む同体積(1:1)のACNと混合する。
【0164】
(細胞透過性の評価)
細胞透過性を下記のように試験できる:被験化合物をDMSOに溶かして10mMにし、次いで緩衝液にさらに希釈して、最終10μM投薬濃度を与える。蛍光マーカールシファーイエローも含めて、膜統合性をモニターする。次いで、被験化合物をCaco-2細胞単層の頂端膜側にアプライし、基底面コンパートメントへの化合物透過を測定する。これを逆方向に実施し(基底面から頂端へ)、能動輸送を調べる。LC-MS/MSを利用して、被験化合物及び標準対照化合物(プロパノロール及びアセブトロールなど)の両方のレベルを定量化する。
【0165】
(薬物動態のインビボ評価)
インビボアッセイを利用して、化合物のバイオアベイラビリティを測定できる。一般的に、化合物を、静脈内(i.v.)及び経口的(p.o.)の両方で試験動物(例えば、マウス又はラット)に投与し、一定間隔で採血して、薬物の血漿濃度が時間とともに変動する様子を調査する。経時的な血漿濃度の経時変化を利用して、標準モデルを利用して化合物の絶対的なバイオアベイラビリティをパーセンテージとして計算できる。典型的なプロトコルの例を以下に記載する。
マウスに、1、10、又は100 mg/kgの本発明の化合物又は親化合物を、i.v.又はp.o.で投薬する。5分、10分、15分、30分、45分、60分、90分、120分、180分、240分、360分、420分、及び2880分に採血し、試料中の本発明の化合物又は親化合物の濃度をHPLCにより決定する。次いで、血漿濃度の経時変化を利用して、血漿濃度-時間曲線下面積(AUC-体循環に達する未変化の薬物の総量に正比例する)、最大(ピーク)血漿中薬物濃度、最大血漿中薬物濃度が起こる時間(ピーク時間)などのキーパラメーターを誘導できるが、バイオアベイラビリティの正確な決定に利用できる追加の因子には下記がある:化合物の終末半減期、全身クリアランス、定常状態分布容積、及びF%。次いで、これらのパラメーターを、非コンパートメント法又はコンパートメント法により分析して、計算されたバイオアベイラビリティのパーセンテージを与えるが、この種類の方法に関しては、Egorinら、2002、及び該文献の引用文献を参照されたい。
【0166】
(MDR1及びMRP2トランスポーターの阻害のインビトロ評価)
MDR1(P糖タンパク質1)及びMRP2トランスポーターの阻害及び活性化の評価には、Solvo Biotechnology社のインビトロATPアーゼアッセイ(Glavinasら、2003)が利用できる。化合物(0.1、1、10、及び100μM)を、バナジン酸塩の非存在下と存在下の両方で、MDR1又はMRP2膜小胞と共にインキュベートし、潜在的なATPアーゼ活性化を試験する。さらに、トランスポーターATPアーゼ活性の起こりうる阻害を検出するために、ベラパミル/スルファサラジンの存在下で類似のインキュベーションを実施する。ATPアーゼ活性は、無機のリン酸塩を分光測定により定量化して測定する。活性化は、ATPアーゼ活性のバナジン酸感受性増加から計算する。阻害は、ベラパミル/スルファサラジンに媒介されるATPアーゼ活性の低下から決定する。
【0167】
(HIV抗ウイルス活性の評価のためのインビトロアッセイ)
HIVに対する抗ウイルス効能を下記のとおり試験できる:血液由来のCD4+T-リンパ球及びマクロファージを、既報のとおり単離する(Bobardtら、2008)。簡単に述べると、ヒトPBMCをFicoll-Hypaqueで層状にする(30分間、800g、25℃)ことにより鮮血から精製した。一次ヒトCD4+ T細胞を、抗CD4ダイナビーズによるポジティブ選択及びそれに続くデタッチャビーズを利用する放出により、PBMCから精製した。細胞を、10% FCS、MEMアミノ酸、L-グルタミン、MEMビタミン類、ピルビン酸ナトリウム、及びペニシリンプラスストレプトマイシンを補ったRPMI培地1640(Invitrogen社製)中で培養し、その後、細菌性超抗原ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB; 100 ng/ml)及び他のドナー由来のマイトマイシンCに殺傷されたPBMC(10:1 PBMC:CD4 細胞比)で活性化した。刺激の3日後、細胞を、IL-2を含む培地(200 単位/ml 最終濃度)中で1:2に分けた。次いで、培養物をIL-2培地中で2日ごとに1:2に分け、刺激の7日後にHIVに感染させた。初代ヒトマクロファージを発生させるために、単球をネガティブ選択によりヒトPBMCから精製し、106/mlの細胞濃度で、10% FCS、MEMアミノ酸、L-グルタミン、MEMビタミン、ピルビン酸ナトリウム、及びペニシリン(100単位/ml)、ストレプトマイシン(100 mg/ml)、及び50 ng/mlのリコンビナントヒト顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を補ったDMEM中で活性化及び培養し、5% CO2を補った加湿雰囲気中で37℃に維持した。単球誘導マクロファージを得るために、細胞をプラスチックに付着させ、6日間培養して分化させた。
【0168】
CD4+ HeLa細胞、Jurkat細胞、活性化CD4+ 末梢血T-リンパ球、及びマクロファージ(500,000 細胞/100 μL)を、濃度を上げた被験物質の存在下でpNL4.3-GFP(X4ウイルス)又はpNL4.3-BaL-GFP(R5ウイルス)(100 ngのp24)と共にインキュベートした。48時間後、FACSによりGFP陽性細胞のパーセンテージを分析して感染を点数化し、EC50を計算した。
【0169】
(HBV抗ウイルス活性の評価のためのインビトロアッセイ)
HBVに対する抗ウイルス効能を下記のように試験できる:HepG2 2.2.15細胞を96-ウェルマイクロタイタープレートに播種する。16〜24時間後、HepG2 2.2.15細胞のコンフルエントな単層を洗浄し、三連で種々の濃度の被験化合物(例えば、6回のハーフログ濃度(half-log concentrations))を含む完全培地と替える。3日後、培地を、適切に希釈された被験化合物を含む新鮮な培地に替える。被験物質の最初の投与の6日後、細胞培養物上清を回収し、プロナーゼで処理し、次いで、リアルタイム定量的TaqMan qPCRアッセイに使用する。増幅されたHBV DNAにハイブリダイズするクエンチされた蛍光プローブ分子のエキソヌクレアーゼ分解から生じる蛍光シグナルの増加をモニタリングすることにより、PCR増幅されたHBV DNAをリアルタイムに検出する。各PCR増幅に対して、精製されたHBV DNAの希釈物を使用して、検量線が同時に生成される。抗ウイルス活性は、HBV DNAレベルの低下から計算される(IC50)。次いで、色素取り込みアッセイを利用して、細胞生存率を計算し、それを利用して毒性(TC50)を計算する。治療指数(TI)をTC50/IC50として計算する。
【0170】
(免疫抑制活性の評価のためのインビトロ混合リンパ球(MLR)アッセイ)
免疫抑制活性を下記のとおり試験した:末梢血単核細胞(PBMC)集団を、ヒストパック上での遠心分離を利用して、2名の正常な関連性のないボランティアドナー(A及びB)の血液から精製した。細胞を計数し、補助剤及び2%ヒトAB血清を含むRPMI培地中で、96ウェルプレート中で1×105細胞/ウェルで播種した。
培養条件は下記のとおりであった:それぞれ6種の異なる濃度での被験物質の存在下又は非存在下の、細胞集団A及びBのみ並びに細胞A及びBの混合集団。化合物を、1-logの増加分で10μM〜0.0001μMの範囲の投与量で試験した。対照ウェルは、被験化合物ウェルに存在するものに相当する濃度のビヒクル(0.5% DMSO)を含んでいた。培養物を三連で96ウェルプレートに確立し、加湿雰囲気中で5% CO2中37℃でインキュベートした。3H-チミジンをアッセイセットアップの6日後に加え、24時間後に採取した。次いで、異なる培養条件の間の増殖のレベルを比較した。
被験化合物の各希釈物がMLR中の増殖を阻害する能力を、阻害パーセンテージとして計算した。これにより、IC50(1分あたりのカウントの50%低減をもたらす被験化合物の濃度)の評価ができた。IC50を計算するために、X軸を対数スケールに変換した。非線形回帰を利用して、平均のデータポイントにフィッティングした。S状の可変の傾きを選択した。
【0171】
(Cyp-NS5A相互作用のELISA分析)
このアッセイを利用してCyp-NS5A複合体の分裂を測定したが、これはシクロフィリンDとの相互作用の効力を示すのに使用できる。簡単に述べると、リコンビナントGST、GST-CypD、及びCon1 NS5A-Hisタンパク質の産生及び精製を既報のとおり実施した(Chatterjiら、2010)。Nunc MaxiSorb 8-ウェルストリッププレートをGST又はGST-CypDにより4℃で16時間コーティングし、ブロックした。リコンビナントNS5A-His(1 ng/mL)を、50μLの結合緩衝液(20 mM Tris pH 7.9、0.5 M NaCl、10% グリセロール、10 mM DTT、及び1% NP-40)中4℃で16時間ウェルに加えた。次いで、捕捉されたNS5A-Hisを、マウス抗His抗体(1 μg/mL)(抗-6xHis、Clontech社製)及びウサギ抗マウスホースラディッシュペルオキシダーゼホスファターゼ(HRP)抗体(1:1000希釈)を使用して検出した。実験は全て、2つの異なるバッチのリコンビナントCypD及びNS5Aタンパク質を使用して2回行った。
【0172】
(シクロフィリン阻害の抗PPIアーゼ分析)
シクロフィリンとの相互作用を分析するための別な方法論が下記のとおり記載される:GST-CypDのトロンビン開裂により生じるリコンビナントCypDのPPIアーゼ活性を、キモトリプシンによるN-スクシニル-Ala-Ala-Pro-Phe-p-ニトロアニリドの加水分解速度を追跡することにより決定した。キモトリプシンはトランス型のペプチドのみを加水分解し、シス型は、その濃度が470 mM LiClを含むトリフルオロエタノールに溶解しているストックを用いることにより最大になるが、その加水分解はシストランス異性化の速度により限定されている。CypDを、選択された被験物質と0.1〜20 nMの薬物濃度範囲を利用して5℃で1時間平衡化させた。ペプチドの添加により反応を開始させ、吸光度の変化を1秒あたり10データポイントで分光測定によりモニターした。加水分解のブランク速度(CypDの非存在下)を、CypDの存在下での速度から引く。酵素反応の初期速度を、吸光度変化の経時変化の一次回帰分析により分析した。
【実施例】
【0173】
(実施例1-二次シードによる15L攪拌バイオリアクターにおけるサングリフェリンA及びその天然の同族体(congers)の産生)
植物培養液は、フォームプラグ付き2Lアーレンマイヤーフラスコ中で、ストレプトマイセス属A92-308110の胞子ストックから0.2 mLを400mLのシード培地SGSに接種することにより調製した。
【0174】
培養フラスコを27℃、250 rpm(2.5 cm行程)で24時間インキュベートした。シード培養物から、300 mLを、15 L Braun発酵器中の0.02%消泡剤SAG 471を含む15リットルの一次シード培地SGSに移した。出発攪拌の設定を300rpm以上、通気速度0.5 V/V/M、溶存酸素(DO)レベルを撹拌カスケード(agitation cascade)により制御して30%空気飽和以上にして、発酵を27℃で24時間実施した。発酵器中で調製された二次シード培養物から、600 mLを無菌状態で取り出し、15 L Braun発酵器中の、0.02%消泡剤SAG 471を含む15リットルの産生培地SGP-2に移した。出発攪拌の設定を300rpm、通気速度0.5 V/V/M、溶存酸素(DO)レベルを撹拌カスケードにより制御して30%空気飽和以上にして、発酵を24℃で5日間実施した。SfAは、発酵ブロス中10〜20 mg/Lで産生されたのが観察された。
【0175】
(実施例2-サングリフェリンAの抽出及び精製)
全ブロス(30 L)を遠心分離により清澄化した。得られた細胞ペレットを酢酸エチルで2回抽出したが(2×10 L)、それぞれオーバーヘッドパドル攪拌機により1時間攪拌し、溶媒をポンプで吸引する前に放置して沈降させることにより抽出した。次いで、酢酸エチル層を合わせ(約20 L)、溶媒を減圧下40℃で除去して、油状の残渣を得た。次いで、この油状残渣を、80:20 メタノール:水(総体積500 mL)に懸濁させ、ヘキサンで2回抽出した(2×500 mL)。次いで、80:20 メタノール:水分画を減圧下で乾燥させると、SfA及びSfBを含む粗製乾燥抽出物を与えた。この抽出物をメタノール(100 ml)に溶解させ、15 gのシリカゲルと混合して乾燥させて粉末とした。該粉末を、100% CHCl3に充填されているシリカゲルカラム(5×20 cm)に入れた。溶離溶媒1リットルごとに、メタノール濃度を段階的に1%ずつ増加させ、250 mlのフラクションを集めた。3リットルの溶媒溶離の後、メタノール濃度を段階的に2%ずつ増加させて8%にした。SfA及び/又はSfBを含むフラクションを合わせて、真空中で蒸発乾固させ、SfA及びSfBを分取HPLCにより精製した。分取HPLCは、下記の時間表で20 ml/分で溶媒A(水)及び溶媒B(アセトニトリル)を流すWaters Xterra Prep MS C18 OBD 10mm(19×250 mm)カラムで行った。
t=0分、55% B
t=4分、55% B
t=30分、100% B
t=32分、100% B
t=36分、55% B
SfAを含むフラクションを合わせて、乾燥させた。
【0176】
(実施例3-8(アルデヒド性マクロ環)の合成)
(3.1 26,27-ジヒドロキシサングリフェリン、9の製造)
【化44】
tert-ブチルアルコール(4 mL)中のサングリフェリンA、5(135 mg, 0.1238 mmol)、(DHQ)2PHAL(5.76 mg, 0.0074 mmol)、四酸化オスミウムの2.5 wt % tert-ブチルアルコール溶液(47 μL, 0.0037 mmol)、及びメタンスルホンアミド(23.6 mg, 0.2476 mmol)の攪拌溶液に、室温で、4 mLの水中のフェリシアン化カリウム(122.3 mg, 0.3714 mmol)及び炭酸カリウム(51.3 mg, 0.3714 mmol)の溶液を加えた。1時間攪拌後、亜硫酸ナトリウム(187.3 mg, 1.4857 mmol)の飽和水溶液を加えた。生じた混合物を30分間攪拌し、次いで3回分の酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を、逆相カラムを使用して(C18カラム、A=H2O、B=アセトニトリル、t=2分、B=0%;t=4分、B=30%、t=9分、B=35%;t=12分、B=45%;t=16分、B=70%)Combiflashにより精製すると、26,27-ジヒドロキシサングリフェリン、9(102 mg, 70 %)を白色の固体として与えた。QC LC-MS, RT = 5.3 分, m/z = 1124.8 [M+H]+, 1122.7 [M-H]-。
【0177】
(3.2 アルデヒド性マクロ環、8の製造)
【化45】
26,27-ジヒドロキシサングリフェリン、9(60.0 mg, 0.053 mmol)のTHF及び水(2:1, 5 mL)中の溶液に、過ヨウ素酸ナトリウム(22.8 mg,0.107 mmol)を加えた。生じた混合物を室温で2時間攪拌し、重炭酸ナトリウム飽和水溶液を加えた。この混合物を、3回分の酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を、逆相カラムを使用して(C18カラム、A=水、B=CH3CN、t=3分、B=0%;t=12分、B=40%;t=17分、B=40%、t=21分、B=70%)Combiflashにより精製すると、アルデヒド性マクロ環、8(35 mg, 90 %)を白色の固体として与えた。QC LC-MS, RT = 4.0分、m/z = 761.4 [M+Na]+, 737.3 [M-H]-。
【0178】
(実施例4-10の合成)
【化46】
NaH(0.974 mg, 0.041 mmol)の無水THF(1.0 ml)中の懸濁液に、ジエチル2-(メトキシ(メチル)アミノ)-2-オキソエチルホスホナート(25.8 mg, 0.108 mmol)の無水THF(0.2 ml)溶液をN2雰囲気下で、-3℃で攪拌しながら滴加した。次いで、該溶液を、透明になるまで室温で攪拌した。8(20 mg, 0.027 mmol)の無水THF(0.2 ml)溶液を該透明溶液に滴加し、混合物を室温で30分間攪拌した。該混合物を水によりクエンチし、THFを減圧下で除去した。残渣を酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、次いで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去すると、14 mgの残渣を与えた。粗製の化合物(アセトンに溶解)をTLCプレート(1mm, 20×20 cm)に載せ、アセトン/石油エーテル=3:2で展開した。目標とするバンド(UVで可視化)を回収し、アセトンと混合し、次いでシリカゲルのパッド(高さ2〜3 cm、不純物を除くためアセトンで事前にすすぐ)で濾過した。濾過を真空下で濃縮した。最後に、得られた試料にアセトニトリル及び水を加え、溶液を凍結乾燥させると、所望の生成物を白色の固形粉末として与えた(8.2 mg, 37 %)。LC-MS: 824 [M+1]+。1H NMRに関しては図2参照。
【0179】
(実施例5-13の合成)
【化47】
【0180】
(5.1中間体12の合成)
【化48】
N,N-ジエチルクロロアセトアミド(17.5 mL, 0.127 mmol)及び亜リン酸トリメチル(22 mL, 0.1309 mmol)の混合物を180℃で8時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、蒸留すると、中間体12(15g, 47%)を無色の油として与えた。
【0181】
(5.2 13の合成)
【化49】
NaH(0.776 mg, 0.0324 mmol)の無水THF(1.0 mL)中の懸濁液に、ジエチル2-(ジエチルアミノ)-2-オキソエチルホスホナート(28.5 mg, 0.1134 mol)の無水THF(0.2 mL)溶液を、N2雰囲気下で-3℃で攪拌しながら滴加した。次いで、該溶液を、透明になるまで室温で攪拌した。8(20 mg, 0.027 mmol)の無水THF(0.2 mL)溶液を、該透明溶液に滴加し、混合物を室温で30分間攪拌した。該混合物を水でクエンチし、THFを減圧下で蒸発させた。残渣をEAで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、次いで乾燥させた。溶媒を蒸発させて除くと、17 mgの残渣を与えたが、それを分取TLCにより精製した。粗製化合物(アセトンに溶解)をTLCプレート(1mm, 20×20 cm)に載せ、アセトン/石油エーテル=3:2で展開した。目標とするバンド(UVにより可視化)を回収し、アセトンと混合し、次いでシリカゲルのパッド(高さ2〜3 cm、不純物を除くためにアセトンで事前にすすぐ)で濾過した。濾過を真空下で濃縮した。最後に、得られた試料にアセトニトリル及び水を加え、溶液を凍結乾燥させると、所望の生成物を白色の固形粉末として与えた(9.0 mg, 40%)。LC-MS: 836 [M+1]+。1H NMRに関しては図3参照。
【0182】
(実施例6-16の合成)
【化50】
(6.1中間体15の合成)
【化51】
N,-イソプロピルクロロアセトアミド(1g, 7.41mmol)及び亜リン酸トリエチル(1.6mL, 9.09mmol)の混合物を140℃で8時間攪拌した。該反応混合物を室温に冷却し、200 mgの試料を分取HPLCによる精製に使用すると、中間体15(60mg, 34%)を無色の油として与えた。
【0183】
(6.2 16の合成)
【化52】
NaH(0.972 mg, 0.0405 mmol)の無水THF(1.0 mL)中の懸濁液に、ジエチル2-(イソプロピルアミノ)-2-オキソエチルホスホナート(26 mg, 0.108 mmol)の無水THF(0.2 mL)溶液を、N2雰囲気下で、-3℃で、攪拌しながら滴加した。次いで、該溶液を透明になるまで室温で攪拌した。8(20 mg, 0.027 mmol)の無水THF(0.2 ml)溶液を、該透明溶液に滴加し、室温で30分間攪拌した。該混合物を水でクエンチし、THFを減圧下で蒸発させた。残渣をEAで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、次いで乾燥させた。溶媒を蒸発させて除くと、18 mgの残渣を与え、それを分取TLCにより精製した。粗製化合物(アセトンに溶解)をTLCプレート(1mm, 20×20 cm)に載せ、アセトン/石油エーテル=3:2で展開した。目標とするバンド(UVにより可視化)を回収し、アセトンと混合し、次いでシリカゲルのパッド(高さ2〜3 cm、不純物を除くためにアセトンで事前にすすぐ)で濾過した。濾過を真空下で濃縮した。最後に、得られた試料にアセトニトリル及び水を加え、溶液を凍結乾燥させると、所望の生成物を白色の固形粉末として与えた(8.5 mg, 38%)。LC-MS: 822 [M+1]+。1H NMRに関しては図4参照。
【0184】
(実施例7-19の合成)
【化53】
(7.1中間体18の合成)
【化54】
N-メチルクロロアセトアミド(200mg, 1.87mmol)及び亜リン酸トリエチル(0.67mL, 3.74mmol)の混合物を130℃で8時間攪拌した。該反応混合物を室温に冷却し、分取HPLCにより精製すると、中間体18(60mg, 15%)を無色の油として与えた。
【0185】
(7.2 19の合成)
【化55】
NaH(0.972 mg, 0.0405 mmol)の無水THF(1.0 ml)中の懸濁液に、ジエチル2-(メチルアミノ)-2-オキソエチルホスホナート(23 mg, 0.108 mmol)の無水THF(0.2 ml)溶液を、N2雰囲気下で、-3℃で、攪拌しながら、滴加した。次いで、該溶液を透明になるまで室温で攪拌した。8(20 mg, 0.027 mmol)の無水THF(0.2 ml)溶液を、該透明溶液に滴加し、混合物を室温で30分間攪拌した。該混合物を水でクエンチし、THFを減圧下で蒸発させた。残渣をEAで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、次いで乾燥させた。溶媒を蒸発により除くと、14 mgの残渣を与え、これを分取TLCにより精製した。粗製化合物(アセトンに溶解)をTLCプレート(1 mm, 20×20 cm)に載せ、アセトン/石油エーテル=3:2で展開した。目標とするバンド(UVにより可視化)を回収し、アセトンと混合し、次いでシリカゲルのパッド(高さ2〜3 cm、不純物を除くためにアセトンで事前にすすぐ)で濾過した。濾過を真空下で濃縮した。最後に、アセトニトリル及び水を得られた試料に加え、溶液を凍結乾燥させると、所望の生成物を白色の固形粉末として与えた(7.0 mg, 37%)。LC-MS: 794 [M+1]+。1H NMRに関しては図5参照。
【0186】
(実施例8-22の合成)
【化56】
(8.1中間体21の合成)
【化57】
2-クロロ-N,N-ジメチルアセトアミド(300 mg, 2.47 mmol)及び亜リン酸トリエチル(820 mg, 4.94 mmol)の混合物を150℃で一晩攪拌した。該反応混合物を室温に冷却し、分取HPLCにより精製すると、中間体21(105 mg, 20%)を与えた。
【0187】
(8.2 22の合成)
【化58】
21(50 mg, 0.224 mmol)のTHF(1.0 mL)溶液に、無水THF(0.2 mL)中のNaH(1.6 mg, 0.068 mmol)を0℃で攪拌しながら加えた。次いで、該溶液を透明になるまで室温で攪拌した。次いで、8(40 mg, 0.054 mmol)を該透明溶液に加え、混合物を室温で1時間攪拌した。該混合物を水(10 mL)でクエンチし、EAで抽出した(3×20 mL)。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を分取HPLC[カラム:Spring C18(25×250mm, 10μm)、移動相:A:H2O B:アセトニトリル、勾配:10分間で30%から40%になるB]により精製すると、22を白色の固体として得た(12.4 mg, 28%)。LC-MS: 808 [M+1]+。1H NMRに関しては図6参照。
【0188】
(実施例9-25の合成)
【化59】
(9.1中間体24の合成)
【化60】
P(Oet)3(0.63 ml, 3.75 mmol)及び23(500 mg, 3.74 mmol)の混合物を180℃で6時間攪拌した。該反応物を冷却し、分取HPLCにより精製すると、中間体24を無色の油として得た(100 mg, 11%)。
【0189】
(9.2 25の合成)
【化61】
THF(1 mL)に溶かした24(38 mg, 0.1624 mmol)の溶液に、NaH(1.5 mg, 0.0625 mmol)を0℃で加え、10分間攪拌した。次いで、該溶液を室温で攪拌し、化合物8(30 mg, 0.0406 mmol)を加えた。該反応物を室温で30分間攪拌し、水(5 mL)でクエンチした。該反応物を酢酸エチルで抽出した(3×20 mL)。合わせた有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で蒸発させた。残渣を分取HPLCにより精製すると、25を白色の固体として得た(7.4 mg, 22%)。1H NMRに関しては図7参照。
【0190】
(実施例10-26及び28の合成)
【化62】
(10.1 26の合成)
【化63】
メタノール(2 mL)に溶かした10(25 mg, 0.0304 mmol, 1当量)の0℃の溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(2.3 mg, 0.0608 mmol, 2当量)を加えた。該反応混合物を0℃で3時間攪拌した。該反応物を重炭酸ナトリウム溶液に加え、酢酸エチルで抽出した(3×20 mL)。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で除去した。残渣を直接次の工程に使用した。
【0191】
(10.2中間体27の合成)
【化64】
CH2Cl2(1.5 ml)に溶かしたトリフェニルホスフィン(24 mg, 0.0915 mmol, 3当量)の溶液に、イミダゾール(8.2 mg, 0.1206 mmol, 4当量)及びヨウ素(23 mg, 0.0914 mmol, 3当量)を加えた。該反応混合物を30分間攪拌し、0℃に冷却した。化合物27(粗製25 mg, 0.0303 mmol, 1当量)を加え、該反応物を室温で4.5時間攪拌した。該反応物を、重炭酸ナトリウム飽和水溶液(2 mL)でクエンチし、酢酸エチルで抽出した(3×10 mL)。合わせた有機層をNa2S2O3飽和水溶液(10 mL)及びブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させた。残渣を直接次の工程で使用した。
【0192】
(10.3 28の合成)
【化65】
CH2Cl2(1.5 mL)に溶かした27(25 mg, 0.02673 mmol, 1当量)の溶液に、0℃のDBU(8.2 mg, 0.1206 mmol, 4当量)を加えた。該反応混合物を室温で2時間攪拌した。該反応物を、重炭酸ナトリウム飽和水溶液(4 mL)でクエンチし、酢酸エチルで抽出した(3×20 mL)。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させた。残渣を分取HPLCにより精製すると、28を白色の固体として与えた(7 mg, 29%)。1H NMRに関しては図8参照。
【0193】
(実施例11-29の合成)
【化66】
ジオキサン(2 mL)に溶かした10(30 mg, 0.0365 mmol)の溶液に、HCl水溶液(2 M, 0.18 ml, 0.36 mmol)を加えた。該反応物を室温で4日間攪拌し、該反応物を水でクエンチし、酢酸エチルで抽出した(3×10 mL)。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させた。残渣を分取HPLCにより精製すると、29を白色の固体として与えた(11 mg, 38%)。1H NMRに関しては図9参照。
【0194】
(実施例12-32の合成)
【化67】
(12.1中間体31の合成)
【化68】
2-クロロ-N,N-ジイソブチルアセトアミド、31(206 mg, 1.00 mmol)及び亜リン酸トリエチル(332 mg, 2.00 mmol)の混合物を140℃で6時間攪拌した。該反応混合物を室温に冷却し、combiflashにより精製すると、中間体31(222 mg, 20%)を与えた。
【0195】
(12.2 32の合成)
【化69】
31(58 mg, 0.188 mmol)のTHF(1.0 mL)溶液に、無水THF(0.2 mL)中のNaH(1.4 mg, 0.0564 mmol)を室温で攪拌しながら加えた。次いで、8(35 mg, 0.047 mmol)を該透明溶液に加え、該混合物を室温で3時間攪拌した。該混合物を水(10 mL)でクエンチし、EAで抽出した(3×30 mL)。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を分取HPLCにより精製すると、32を白色の固体として得た(16.2 mg 38%)。LC-MS: 892 [M+1]+。1H NMRに関しては図10参照。
【0196】
(実施例13-35の合成)
【化70】
(13.1中間体34の合成)
【化71】
2-クロロ-1-モルホリノエタノン33(327 mg, 2 mmol)及び亜リン酸トリエチル(665 mg, 4 mmol)の混合物を140℃で一晩攪拌した。該反応混合物を室温に冷却し、combiflashにより精製すると、中間体34を無色の油として与えた(190 mg, 36%)。
【0197】
(13.2 35の合成)
【化72】
34(50 mg, 0.188 mmol)のTHF(1.0 mL)溶液に、無水THF(0.2 mL)中のNaH(1.4 mg, 0.056 mmol)を0℃で攪拌しながら加えた。次いで、該溶液を透明になるまで室温で攪拌した。次いで、8(35 mg, 0.047 mmol)を該透明溶液に加え、該混合物を室温で3時間攪拌した。該混合物を水(10 mL)でクエンチし、EAで抽出した(20 mL×3)。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を分取HPLCにより精製すると、14 mgの純粋な生成物35を白色の固体として得た(収率35%)。LC-MS: 850 [M+1]+。1H NMRに関しては図11参照。
【0198】
(実施例14-41の合成)
【化73】
(14.1中間体37の合成)
【化74】
4-ブロモビフェニル36(5 g, 21.55 mmol)、アリルアミン(2.4 mL, 32.33 mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド(3.11 g, 32.33 mmol)、Pd(DPPF)Cl2(0.79 g, 1.08 mmol)、及びDPPF(1.79 g, 3.23 mmol)の20 mLの無水THF中の混合物を80℃に4時間加熱した。TLCにより、出発物質4-ブロモビフェニルの完全な消失が示された。暗赤色の反応混合物をセライトに通して濾過し、真空中で濃縮すると、暗色の油を残した。該油を、PE/EA(5:1)を使用するシリカゲルのクロマトグラフィーにかけると、37(3.5 g, 収率60%)を黄色の固体として与えた。
【0199】
(14.2中間体38の合成)
【化75】
50 mLの無水エタノール中のN-アリルビフェニル-4-アミン37(3 g, 14.35 mmol)、10% Pd/C(0.3 g)、及びメタンスルホン酸(922μL, 14.35 mmol, 1当量)の混合物を2時間還流した。TLCにより、出発物質N-アリルビフェニル-4-アミンの消失が示された。該反応混合物をセライトのパッドに通して濾過し、NaOH水溶液(10 %)で洗浄し、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮すると、1.6 gの粗生成物38を与え、これをさらに精製することなく次の工程で使用した。
【0200】
(14.3中間体39の合成)
【化76】
乾燥DCM(50 mL)中の粗製物38(1.6 g, 9.462 mmol)、Et3N(1.052 g, 10.408 mmol)の溶液に、クロロアセチルクロリド(1.165 g, 10.408 mmol)を滴加した。該反応混合物を0〜10℃で3時間攪拌し、氷水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮すると、薄黄色の固体を与えた。該固体を、PE/EA (4:1)により分取TLCにより精製すると、所望の化合物39(200 mg, 2工程で収率6%)を与えた。
【0201】
(14.4中間体40の合成)
【化77】
N-(ビフェニル-4-イル)-2-クロロアセトアミド39(200 mg, 0.8161 mmol)及び亜リン酸トリエチル(271 mg, 1.6323 mmol)の混合物を140□で一晩攪拌した。該反応混合物を室温に冷却し、combiflashにより精製すると、中間体40(77 mg, 27%)を薄黄色の固体として与えた。
【0202】
(14.5 41の合成)
【化78】
40(65 mg, 0.188 mmol)のTHF(1.0 mL)溶液に、無水THF(0.2 mL)中のNaH(1.4 mg, 0.056 mmol)を0℃で攪拌しながら加えた。次いで、該溶液を透明になるまで室温で攪拌した。次いで、8(35 mg, 0.047 mmol)を該透明溶液に加え、該混合物を室温で3時間攪拌した。該混合物を水(10 mL)でクエンチし、EAで抽出した(20 mL×3)。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を分取HPLCにより精製すると、9.4 mgの純粋な生成物41を白色の固体として得た(収率21%)。LC-MS: 932 [M+1]+。1H NMRに関しては図12参照。
【0203】
(実施例15-45の合成)
【化79】
(15.1中間体43の合成)
【化80】
42(1 g, 8.834 mmol)、Et3N (0.983 g, 9.724 mmol)の乾燥DCM(10 mL)溶液に、クロロアセチルクロリド(1.088 g, 9.724 mmol)を滴加した。該反応混合物を0〜10℃で3時間攪拌し、氷水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮すると、薄黄色の液体(1.95 g)を与え、これをさらに精製することなく次の工程に使用した。
【0204】
(15.2中間体44の合成)
【化81】
43(粗製物、400 mg, 2.11 mmol)及び亜リン酸トリエチル(701 mg, 4.22 mmol)の混合物を140℃で一晩攪拌した。該反応混合物を室温に冷却し、combiflashにより精製すると、中間体44(265 mg, 43 %)を薄黄色の液体として与えた。
【0205】
(15.3 45の合成)
【化82】
44(55 mg, 0.188 mmol)のTHF(1.0 mL)溶液に、無水THF(0.2 mL)中のNaH(1.4 mg, 0.056 mmol)を0℃で攪拌しながら加えた。次いで、該溶液を、透明になるまで室温で攪拌した。次いで、8(35 mg, 0.047 mmol)を該透明溶液に加え、該混合物を室温で3時間攪拌した。該混合物を水(10 mL)でクエンチし、EAで抽出した(20 mL×3)。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を分取HPLCにより精製すると、2.5 mgの純粋な生成物45を白色の固体として得た(収率6%)。LC-MS: 876 [M+1]+。1H NMRに関しては図13参照。
【0206】
(実施例16-48の合成)
【化83】
(16.1中間体47の合成)
【化84】
2-クロロ-N-(ピリジン-2-イル)アセトアミド(170 mg, 1.00 mmol)及び亜リン酸トリエチル(332 mg, 2.00 mmol)の混合物を140℃で6時間攪拌した。該反応混合物を室温に冷却し、combiflashにより精製すると、中間体47(48 mg, 18%)を与えた。
【0207】
(16.2 48の合成)
【化85】
47(51 mg, 0.188 mmol)のTHF(1.0 mL)溶液に、無水THF(0.2 mL)中のNaH(1.4 mg, 0.0564 mmol)を室温で攪拌しながら加えた。次いで、8(35 mg, 0.047 mmol)を該透明溶液に加え、該混合物を室温で3時間攪拌した。該混合物を水(10 mL)でクエンチし、EAで抽出した(30 mL×3)。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を分取HPLCにより精製し、19.7 mgの純粋な生成物48を白色の固体として得た(収率48.5%)。LC-MS: 857 [M+1]+。
【0208】
(実施例17-51の合成)
【化86】
(17.1中間体49の合成)
【化87】
49及び2当量の亜リン酸トリエチルを120℃で一晩攪拌した。該反応混合物を室温に冷却し、結晶化により精製すると、中間体50を与えた。
【0209】
(17.2 51の合成)
【化88】
50のTHF溶液に、無水THF中のNaHを0℃で攪拌しながら加えた。次いで、該溶液を透明になるまで室温で攪拌した。次いで、8(30 mg)を該透明溶液に加え、該混合物を室温で3時間攪拌した。該混合物を水でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を分取TLC及び分取HPLCにより精製すると、2.4 mgの純粋な生成物51を白色の固体として得た。LC-MS: 862 [M+1]+。1H NMRに関しては図14参照。
【0210】
(実施例18-55の合成)
【化89】
(18.1中間体53の合成)
【化90】
52、Et3Nの乾燥DCM溶液に、クロロアセチルクロリドを滴加した。該反応混合物を0〜10℃で30分間攪拌し、酢酸エチルで抽出した。有機層を洗浄すると液体を与え、これをさらに精製することなく次の工程に使用した。
【0211】
(18.2中間体54の合成)
【化91】
53及び亜リン酸トリエチルの混合物を120℃で一晩攪拌した。該反応混合物を室温に冷却し、combiflashにより精製すると、中間体54を与えた。
(18.3 55の合成)
【化92】
54のTHF溶液に、無水THF中のNaHを0℃で攪拌しながら加えた。次いで、該溶液を透明になるまで室温で攪拌した。次いで、8を該透明溶液に加え、該混合物を室温で攪拌した。該混合物を水でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を分取HPLCにより精製すると、55を白色の固体として得た。LC-MS: 850 [M+1]+。
【0212】
(実施例19-生物学的データ-レプリコン系におけるHCV抗ウイルス活性のインビトロ評価)
全般的方法に記載されたとおりレプリコンアッセイにおいて化合物を分析した。シクロスポリンA、1、サングリフェリンA、5、及びヒドロキシマクロ環、6を比較として含めた。
【表7】
分かるとおり、10、13、16、22、28、29、32、41、45、48、51、及び55は全てHuh5.2レプリコンアッセイにおいて非常に強力であり(低いEC50により示される)、それらの大多数は該細胞系に対して低い細胞傷害性も示す(高いCC50により示される)。先に記載されたマクロ環サングリフェリンヒドロキシマクロ環、6はHCV阻害では効力が低く、シクロスポリンA、1及びサングリフェリンA、5は両方ともより高い細胞傷害性を示す。
【0213】
(実施例20-PBSへの溶解度)
pH 7.4のPBSへの化合物の溶解度を、全般的方法に記載されたとおり分析した。シクロスポリンA、1及びサングリフェリンA、5を比較として含めた。
【表8】
分かるとおり、本発明の化合物10、13、19、22、25、28、29、48、及び55は全てサングリフェリンA(5)と比較して高い溶解度を有し、シクロスポリンA(1)より高い溶解度を有する。
【0214】
(実施例21-生物学的データ-HIVに対する活性)
化合物を、全般的方法に記載されたとおり不死化細胞及び一次標的細胞を利用してHIV抗ウイルスアッセイにおいて分析した。シクロスポリンA、1及びサングリフェリンB、7を比較として含めた。
【表9】
分かるとおり、本発明の化合物29、48、55は全て、4種の細胞型のHIV感染の阻害でシクロスポリンA、1よりも著しく強力であった。
【0215】
(実施例22-生物学的データ-HBVに対する活性)
化合物を、全般的方法に記載されたとおりレプリコンアッセイにおいて分析した。シクロスポリンA、1及びサングリフェリンA、7を比較として含めた。
【表10】
分かるとおり、本発明の化合物29は、HBVの複製の阻害に著しく強力であり、32μMまでの濃度で細胞傷害性を全く示さず、高い治療指数をもたらす。
【0216】
(実施例23-生物学的データ-混合リンパ球反応(MLR)における免疫抑制活性の評価)
免疫抑制活性は、抗ウイルス療法としての使用には望まれない副作用である。したがって、化合物を、全般的方法に記載されたとおり混合リンパ球反応(MLR)において試験した。シクロスポリンA、1及びサングリフェリンA、5を比較として含めた。
【表11】
分かるとおり、本発明の化合物48及び55は両方とも非常に低レベルの免疫抑制活性を示し、CsA、1及びSfA、5よりも免疫抑制が低い。
【0217】
(実施例23-生物学的データ-シクロフィリンDの阻害)
被験化合物とシクロフィリンDとの相互作用を調査するため、全般的方法に記載されたとおり、CypD-NS5A分裂系を利用した。
【表12】
分かるとおり、本発明の化合物29、48、及び55は全て、CsA、1及びSfA、5よりも強力なレベルで、CypD-NS5A複合体の強力な分裂を示す。これらのアッセイが、CypDイソメラーゼ活性の直接阻害を測定するPPIアーゼアッセイ(データ示さず-方法論の詳細は全般的方法参照)に匹敵するデータ(及び類似のランク順序)を与えることも確認した。
【0218】
(実施例24-サングリフェリン生合成用の生合成クラスターのモジュール12の還元ループが、還元ループ交換戦略(reductive loop swap strategy)を利用してラパマイシンモジュール13又はサングリフェリンモジュール6由来の還元ループにより置換されている、生物工学でつくられたストレプトマイセス属A92-308110(DSM9954)(BIOT-4370)株の生成)
サングリフェリンモジュール12の還元ループは、サングリフェリン分子のC17のヒドロキシル基に関与するケトレダクターゼを含む。ラパマイシンモジュール13及びサングリフェリンモジュール6の両方由来の還元ループは、機能的領域の全てを含み、βケト基の完全な処理をもたらしメチレンを生み出す;具体的には、それらは、ケトをヒドロキシル基に還元するケトレダクターゼ、水を除いて二重結合をつくるデヒドラターゼ、及び二重結合をメチレンに還元するエノイルレダクターゼを含む。ベクターpMGo136及びpMGo137は、サングリフェリン生合成用の生合成クラスターのモジュール12の還元ループの、それぞれラパマイシンモジュール13又はサングリフェリンモジュール6由来の還元ループへの置換を操作するベクターである。
【0219】
この実施例に使用するDNAフラグメントの位置は2011年1月に利用可能な配列に基づいて与えられるが、Genbank DNA配列は更新され得るのでおおよその報告である。
ベクターは下記のとおり構築する。
【0220】
(24.1 サングリフェリンモジュール12の還元ループの上流フランキング領域に相同なDNA)
図16に示されるこの2072 bp DNAフラグメント(配列番号1)は、サングリフェリンモジュール12の還元ループの上流に相同領域(Genbank受託番号FJ809786.1公表配列において、およそ86654 bp〜88798 bp)を、追加の配列5'及び3'の両方を共に含み、クローニングを助ける制限酵素配列を組み込んでいる。このフラグメント(配列番号1)は、GenScript(860 センテニアルアベニュー、ピスカタウェイ、ニュージャージー州、08854、アメリカ合衆国)により合成され、GenScriptプロトコルにしたがって、この点を超えてクローニングに関与しない12の保護的フランキング塩基を両側に含んでpUC57中に提供され、プラスミドpMGo128をもたらした。
【0221】
(24.2 サングリフェリンモジュール12の還元ループの下流フランキング領域に相同なDNAのクローニング)
オリゴMGo013(配列番号2)及びMGo014(配列番号3)を使用し、テンプレートとしてのコスミドpTL3102(Quら、2011)DNA及びKOD Hot Start DNAポリメラーゼを使用して、1994 bp DNAフラグメント(配列番号4)を標準的なPCR反応で増幅した。5'伸長は、制限部位を導入して増幅されたフラグメントのクローニングを促進するように各オリゴにおいて設計した。或いは、ストレプトマイセス属A92-308110 (DSM9954)(BIOT-4370)由来のゲノムDNAを、このPCR反応のテンプレートとして使用して同じDNAフラグメントを与えることも可能であり、又はDNAフラグメントを、例えばGenScript(860 センテニアルアベニュー、ピスカタウェイ、ニュージャージー州、08854、アメリカ合衆国)を利用してDNA合成から得ることも可能であった。生じた1995 bp PCR産物(配列番号4)は、サングリフェリンモジュール12の還元ループの下流に相同領域(genbank受託番号FJ809786.1公表配列において、およそ90415 bp〜92381 bp)を含むが、望ましくない挿入Gが位置1978にある(図17参照;挿入されたGは太字で下線が引いてある)。1995 bp PCR産物(配列番号4)は、SmaIにより直線化され脱リン酸化されたpUC19(New England Biolabs社製)中にクローニングされ、プラスミドpMGo123をもたらした。
【化93】
pUC19中の1995 bp PCR産物(配列番号4)の配向は、インサートのHindIII部位がpUC19ポリリンカーのHindIII部位に隣接するようなものであった。pMGo123中のインサートの配列は、シーケンシングにより確認した。
【0222】
追加の塩基を含む領域を避けるため、より短い下流領域を下記のとおり目標に定めた:オリゴMGo037(配列番号5)及びMGo038(配列番号6)を使用し、テンプレートとしてのプラスミドpMGo123 DNA及びKOD Hot Start DNAポリメラーゼを使用して、1956 bp DNAフラグメント(配列番号7)を標準的なPCR反応で増幅した。5'伸長は、制限部位を導入して増幅されたフラグメントのクローニングを促進するように各オリゴにおいて設計した。1956 bp PCR産物(配列番号7)は、サングリフェリンモジュール12の還元ループの下流に相同領域(Genbank受託番号FJ809786.1公表配列において、およそ90415 bp〜92343 bp)を含む。1956 bp PCR産物(配列番号7)は、SmaIにより直線化され脱リン酸化されたpUC19(New England Biolabs社製)中にクローニングされ、プラスミドpMGo125をもたらした。
【化94】
【0223】
pUC19中の1956 bp PCR産物(配列番号7)の配向は、インサートのHindIII部位がpUC19ポリリンカーのHindIII部位に隣接するようなものであった。pMGo125中のインサートの配列は、シーケンシングにより確認した。
【0224】
(24.3 pMGo136及びpMGo137を生成させるクローニング戦略)
モジュール12のサングリフェリン還元ループの上流及び下流相同領域は、下記のとおり一緒にクローニングされる:2065 bp上流領域を、EcoRI及びXhoIによる消化でpMGo128から切除し、1944 bp下流領域を、XhoI及びHindIIIによる消化でpMGo125から切除する。両フラグメントを、pUC19(New England Biolabs社製)がEcoRI及びHindIIIにより消化されるときに生じる大きな骨格フラグメントに、3パート・ライゲーションで一緒にクローニングする。両インサートを含む正しくクローニングされたプラスミドを制限酵素分析により特定し、正しいプラスミドの1つをpMGo130と称する。
【0225】
pMGo130を、好適なNheI/BglIIフラグメント上の還元ループが、NheI及びBglII部位にクローニングされて、DNA配列がインフレームであるI型PKSモジュールの一部を生み出し、翻訳されてアミノ酸配列を与えるように設計する。入来ループ(in-coming loop)におけるこれらの部位の正確な配置は、配列のフレームの維持及び機能性アミノ酸配列へのこの翻訳において重要である。
【0226】
ラパマイシンモジュール13還元ループの源:ラパマイシンモジュール13還元ループは、他の系におけるドナーループとして既に使用されてきた(例えば、Gaisserら、2003)。ラパマイシンモジュール13ループは、その両側にアベルメクチンモジュール2由来の適切な相同領域があり、pPF137に存在する(Gaisserら、2003)。pPF137は、Gaisserら、2003により記載されたとおりpJLK137から構築される。pJLK137の構築の完全な説明は、国際公開第00/01827/1998号及びその中の引用文献に含まれている。手短な概要は下記のとおりである:ラパマイシンモジュール13ループを、導入された制限酵素部位を含む下記のオリゴを使用し、テンプレートラパマイシンコス31(Schweckeら、1995)を使用して、PCR増幅により単離した。
【化95】
このフラグメントを、SmaIにより先に消化され脱リン酸化されているpUC18中にクローニングしてpJLK120を与えた。次いで、このループを、下記のとおり構築したpJLK133に導入した:BglII/NheIフラグメント上でpJLK117からリンカーを除き、アベルメクチンモジュール2の2つの相同領域の間でクローニングして、pJLK133を与えた。ラパマイシンモジュール13還元ループを、BglII/NsiIフラグメントとしてpJLK120から、Bglll/NsiIにより消化されたpJLK133中にクローニングした。
【0227】
pJLK117(国際公開第00/01827/1998号及びその中の引用文献参照)は、エリスロマイシン装入モジュール(loading module)、エリスロマイシンPKSの第1及び第2の伸長モジュール、及びエリスロマイシン鎖停止チオエステラーゼを含むPKS遺伝子を含む発現プラスミドであるが、アシルトランスフェラーゼ(AT)の最後とアシルキャリアタンパク質(ACP)の最初の間のDNAセグメントが、下記の制限酵素、AvrII、BglII、SnaBI、PstI、SpeI、NsiI、Bsu36I、及びNheIの認識部位を含む合成オリゴヌクレオチドリンカーにより置換されている点が異なり、該特許出願に記載されるとおりに複数の工程で製造した。これらの制限酵素部位は、エリスロマイシンPKSのモジュール2における元のタンパク質配列の崩壊を最小限にして組み込むことができるので選択した。第1のリンカー含有ベクター、pJLK114は、アニーリングにより生成したオリゴPlf(配列番号10)及びPlb(配列番号11)を含む。
【化96】
【0228】
プラスミドpJLK117は、pJLK114のリンカーの5'末端を、唯一の違いが、HpaI部位、GTTAACがNheI部位、GCTAGCにより置換されていることであるフラグメントにより置換して構築した。
【0229】
この実施例のラパマイシンモジュール13還元ループの源はpPF137である。当業者は、このフラグメントを得るために、この複雑な工程の系列を追う必要がないことを認識するだろう。同じフラグメントは下記のとおり得られる:最初に、pUC18、又はpUC19の多重クローニング領域を、部位BglII、NsiI、及びNheIを含む合成リンカーにより置換できるが、例えば、これは、pUCベクターを、EcoRI及びHindIIIにより消化させ、アニールされると適切なオーバーハングを残し消化された骨格にライゲートする2つのオリゴヌクレオチドを使用して先に列記された部位を持つ合成リンカーを作ることにより達成できる。NsiI部位とNheI部位との間にpJLK117のリンカーの配列を組み込むことは、要求される配列の一部を与え、残りは、ラパマイシンコス31などのコスミド又はストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)NRRL 5491のゲノムDNA並びに配列番号08及び配列番号09として示されるオリゴから、PCR増幅により得ることができる。これは、ラパマイシンモジュール13ループをBglII/NsiIフラグメント上に与え、これを修飾pUCベクターのBglII/NsiI部位中にクローニングして、次いで、所望のループをBglII/NheIフラグメントとしてクローニングする。
【0230】
或いは、ラパマイシンモジュール13ループは、例えば、先に示したオリゴ配列番号8及び配列番号12を利用して、BglII/NheIフラグメントとして直接増幅できる。
【化97】
【0231】
ラパマイシンモジュール13還元ループを、pPF137からpKC1139WMB02中にBglII/NheIフラグメントとしてクローニングして、pKC1139WMB02-137を与えた。pKC1139WMB02はpKC1139-系プラスミドであり、ラパマイシンモジュール11還元ループ及びフランキング領域を含む7.8 kb DNAフラグメントを含む。それは、還元ループがBglII/NheIフラグメントとして切断でき、他のループと置換できるように操作された。pKC1139WMB02-137は、ラパマイシンにおけるループ交換を実施するように構築され、ラパマイシンモジュール13還元ループをラパマイシンモジュール11由来のフランキング領域と共に含む。この実施例において、ラパマイシンモジュール13ループをpKC1139WMB02-137からBglII/NheIフラグメントとしてクローニングする。これは、pPF137又はpJLK120から、或いは、与えられているオリゴ配列及びゲノムDNAを利用して等価なPCR反応を実施し、それをpUC18又はpUC19などの好適なベクターにクローニングすることにより得ることのできる同じフラグメントである。
【0232】
モジュール6のサングリフェリン還元ループは下記のとおり得られる:オリゴMGo019(配列番号13)及びMGo020(配列番号14)を使用して、KOD Hot Start DNAポリメラーゼ及びテンプレートとしてのストレプトマイセス属A92-308110(DSM9954)(BIOT-4370)由来のAlwNIにより消化されたゲノムDNAの5 kb〜6 kbフラクションを使用して、3176 bp DNAフラグメント(配列番号15)を標準的なPCR反応において増幅する。このフラクションは、サングリフェリン遺伝子クラスターの5402 bp AlwNIフラグメント(genbank受託番号FJ809786.1公表配列において、およそ56578 bp〜61979 bp)を含む。或いは、ストレプトマイセス属A92-308110(DSM9954)(BIOT-4370)由来の未消化のゲノムDNAをテンプレートとして使用する。ゲノムDNAは、Edge BioSystems社製細菌ゲノムDNA精製キット(Edge BioSystems, 201 ペリーパークウェイ、スイート5、ゲイザースバーグ、メリーランド州、20877、アメリカ合衆国)を使用して得られる。5'伸長は、制限部位を導入して、増幅されたフラグメントのフランキング領域とインフレームでのクローニングを促進するように、各オリゴにおいて設計する。3176 bp PCR産物(配列番号15)は、サングリフェリンモジュール6の還元ループを含む(genbank受託番号FJ809786.1公表配列において、およそ57166 bp〜60326 bp)。3176 bp PCR産物(配列番号15)を、SmaIにより直線化され脱リン酸化されているpUC19(New England Biolabs社製)中にクローニングして、プラスミドpMGo127をもたらす。
【化98】
【0233】
pKC1139WMB02-137及びpMGo127は、それぞれNheI及びBglIIにより消化されて、ラパマイシンモジュール13還元ループ及びサングリフェリンモジュール6還元ループを単離する。各ループは、NheI及びBglIIにより消化されたpMGo130中にクローニングされる。インサートを含むプラスミドを制限酵素分析により分析し、ラパマイシンモジュール13還元ループを含む1つの正しいプラスミドをpMGo132と称し、サングリフェリンモジュール6還元ループを含む1つの正しいプラスミドをpMGo133と称する。
【0234】
pMGo132及びpMGo133は、二重組換えによりサングリフェリンモジュール12中で還元ループ交換を実施するのに適切なDNAインサートをそれぞれ含む。各インサートを、EcoRI/HindIIIフラグメントとして、EcoRI及びHindIIIにより消化されたpKC1139中にクローニングして、ストレプトマイセス属の形質転換及び形質転換体の選別のための好適なプラスミド機能並びに温度感受性起源を与える。インサート含有プラスミドを制限酵素分析により分析し、ラパマイシンモジュール13還元ループを持つフラグメントを含む1つの正しいプラスミドをpMGo136と称し、サングリフェリンモジュール6還元ループを持つフラグメントを含む1つの正しいプラスミドをpMGo137と称する。
【0235】
(23.4 ストレプトマイセス属A92-308110(DSM9954)(BIOT-4370)の接合及びサングリフェリンモジュール12における還元ループ交換の操作)
プラスミドpMGo136及びpMGo137を、標準的な技術を利用してエシェリキア・コリ(E. Coli)ET12567 pUZ8002中に形質転換し、アプラマイシン(50 μg/mL)、カナマイシン(25 μg/mL)、及びクロラムフェニコール(12.5 μg/mL)を含む2TYプレート上で選別する。生じた株を使用して、アプラマイシン(50 μg/ml)、カナマイシン(25 μg/mL)、及びクロラムフェニコール(12.5 μg/mL)を含む3 mLの液体2TYに接種し、37℃、250rpmで一晩インキュベートする。各培養物の0.8 mLを使用して、50 mL Falcon管中で、アプラマイシン(50 μg/mL)、カナマイシン(25 μg/mL)、及びクロラムフェニコール(12.5 μg/mL)を含む10 mLの液体2TYに接種し、約0.5のOD600nmに達するまで、37℃、250 rpmでインキュベートする。生じた培養物を、4℃、3500 rpmで10分間遠心分離し、遠心分離を利用して10 mLの2TY培地で2回洗浄し、各洗浄後に細胞をペレットにする。生じたペレットを0.5 mLの2TYに再懸濁させ、すぐ使用できるよう氷の上に保つ。このプロセスを、以下に記載するストレプトマイセス胞子の調製の完了と同時になるように時間を合わせる。
【0236】
ストレプトマイセス属A92-308110(DSM9954)(BIOT-4370)の胞子を、1〜2週経ったコンフルエントなプレートから、約3 mLの20 %グリセロールに再懸濁させ、2つのエッペンドルフ管に等分することにより回収する。或いは、同様に調製した、約1.5 mLの凍結保存された胞子懸濁液を使用する。胞子を遠心分離し(6000 rpm, 5 分、室温)、0.5 mL 50 mM TES緩衝液に再懸濁させる前に1 mLの50 mM TES緩衝液で2回洗浄する。この管に、水浴中で50℃で10分間ヒートショックを与え、その後0.5 mLのTSB培地を加え、Eppendorf Thermomixer compact中で、37℃で4〜5時間インキュベートする。
【0237】
調製したエシェリキア・コリET12567 pUZ8002 pMGo136及びエシェリキア・コリET12567 pUZ8002 pMGo137を、それぞれ、1:1の比(各株100 μL)及び1:3の比(100 μL エシェリキア・コリ+300 μL BIOT-4370)でBIOT-4370と混合し、直ちにR6プレートに拡げ、37℃のインキュベーターに移す。およそ2時間のインキュベーションの後、これらのプレートを、ナリジクス酸を含む2mLの滅菌水で覆い、50 μg/Lの最終プレート内濃度を与える。プレートを37℃のインキュベーターに一晩戻し、アプラマイシンを含む2mLの滅菌水で覆い、20〜25 μg/Lの最終プレート内濃度を与える。或いは、プレートを最初に16〜18時間インキュベートし、次いでナリジクス酸溶液で覆い、1〜2時間乾燥させ、アプラマイシン溶液で覆う。接合完了体コロニーは約4〜7日後に現れ、アプラマイシン(25 μg/L)及びナリジクス酸(50 μg/L)を含むISP4培地にパッチし、37℃でインキュベートする。温度感受性起源がこの温度では機能しないので、アプラマイシン存在下での37℃でのインキュベーションは、プラスミドの一体化が起こることを確実にするはずである。一体化は、ゲノムとプラスミドインサートとの間に相同性のあるフランキング領域の一方で起こるはずである。十分な菌糸成長が観察されると、アプラマイシン(25 μg/L)を含む37℃のISP4培地に再パッチし、胞子形成させる。次いで、ISP4(抗生物質無し)にパッチし、37℃で各回3〜4日間インキュベートすることにより、株を3回継代培養する(温度感受性プラスミドの除去を促進するため)。最後に、株をISP4にパッチし、28℃でインキュベートして胞子形成させる(5〜7日)。胞子を回収し、28℃のISP4プレートで段階希釈し、単一のコロニーの選別を可能にする。胞子形成した単一のコロニーを、アプラマイシン(25 μg/L)を含む、又は含まないISP4プレートに二重にパッチして、プラスミドを放出するコロニーを特定し、約7日間成長させ、サングリフェリン及びサングリフェリンアナログの産生に関して試験する。分析のために選択された株は、アプラマイシンの存在下で成長しないものであり、望ましくは二次組換えによる耐性マーカーの損失を示している。
【0238】
(24.5 ファルコン管中のサングリフェリン及びサングリフェリンアナログの産生の株のスクリーニング)
良好に胞子形成したパッチのそれぞれの単一の約7mm寒天プラグを使用して、7 mLの滅菌SM25-3培地に接種し、2インチ工程のシェーカーで27℃、200 rpmでインキュベートする。48時間の成長後、各培養物0.7 mLを、5 % HP20樹脂と共に、7 mLのSGP6培地(30 g/L Nutrisoy(きな粉)、60 g/L グリセロール、21 g/L MOPS; pH 6.8)を含む滅菌ファルコン管に移す。培養物を、1インチ工程の振盪インキュベーターで、24℃、300 rpmで5日間成長させてから、採取する。各細菌培養物の0.8 mLを除き、小分けの前に培養物中の樹脂の適切な廃棄を確実にしながら、2 mLエッペンドルフ管に小分けする。0.8 mLのアセトニトリル及び15 μLのギ酸を加え、管を30分間混合する。混合物を遠心分離により清澄化し、150 μLの抽出物を除いてHPLCバイアルに入れ、HPLCにより分析する。
【0239】
(24.6野生型への復帰又はモジュール12ループ交換の株の分析)
株の抽出物をHPLCにより分析する。サングリフェリンA及びBを産生した株は、その結果が野生型への復帰を示すので、さらに分析しない。サングリフェリンA及びBの産生を欠き、17-デオキシ-サングリフェリンA及び17-デオキシ-サングリフェリンBの産生と一致するピークを示す株を先に進める。
【0240】
(実施例25-17-デオキシサングリフェリンAの単離及び半合成誘導体の生成)
次いで、17-デオキシサングリフェリンA及び/又はBを産生する株を、実施例1に記載された方法に類似の方法を利用して成長させ、実施例2に記載された方法に類似の方法を利用して化合物を単離し、実施例3に記載された方法に類似の方法を利用してアルデヒドを生成させる。次いで、これを、記載される半合成のためのテンプレートとして使用して、式1の化合物を生成させる。
【0241】
(実施例26-144の合成)
(中間体146の合成)
【化99】
N-メチルクロロアセトアミド(145, 200 mg, 1.87 mmol)及び亜リン酸トリエチル(0.67 mL, 3.74 mmol)の混合物を、130℃で8時間攪拌した。該反応混合物を室温に冷却し、分取HPLCにより精製すると、中間体146(60 mg, 15%)を無色の油として与えた。
【0242】
(147の合成)
【化100】
CH3I(13.5 μL, 0.203 mmol)を、室温の8(50 mg, 0.068 mmol)及びCs2CO3(75 mg, 0.203 mmol)の攪拌アセトン(4.0 mL)溶液に加えた。該混合物を室温で一晩攪拌し、真空中で濃縮した。残渣を酢酸エチルで抽出し、水で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させ、残渣を分取TLC(アセトン/石油=1.2/1)により精製すると、22 mgの147(純度86%)を得て、次の工程に直接使用した。
【0243】
(144の合成)
【化101】
無水THF(0.2 mL)中のNaH(1.052 mg, 0.044 mmol)の懸濁液に、146(24.5 mg, 0.117 mmol)の無水THF(0.2 mL)溶液を、N2雰囲気下-3℃で攪拌しながら滴加した。次いで、該溶液を透明になるまで室温で攪拌した。147(22 mg)の無水THF(0.6 mL)溶液を該透明溶液に滴加し、混合物を室温で30分間攪拌した。該混合物を水でクエンチし、THFを減圧下で蒸発させた。残渣を酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、次いで乾燥させた。溶媒を真空中で除去し、残渣を分取TLC(アセトン/石油=1.3/1)により精製すると、12 mgの粗製の144を得たが、これを再び分取HPLCにより精製すると、生成物を白色の固体として与えた(5 mg, 20 %)。LC-MS: 808 [M+H]+。
【0244】
(引用文献)
【化102】
【0245】
本願において言及された特許及び特許出願を含む全引用文献は、引用により最大限に本明細書に組み込まれる。
明細書及び以下の請求項において、文脈から反対の意味が要求されない限り、「含む(comprise)」という言葉並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」などの変形体は、述べられた整数若しくは工程又は整数の群の包含を意味するが、他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群の排除を意味しないと理解されるだろう。
【図1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互変異性体;又はトランスとして示されているC26、27 C=C結合がシスである異性体を含み;かつC-53ケト(存在する場合)及びC-15ヒドロキシル基とメタノールとの組み合わせによりケタールが形成されるメタノール付加物を含む、下記の式(I)の化合物又はその医薬として許容し得る塩:
【化1】
(式中、
R1及びR2は、独立に、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルシクロアルキル、アルキルシクロアルケニル、アルケニルシクロアルキル、アルケニルシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルアリール、又はアルケニルヘテロアリールを表し、これらの基のいずれも単環式アリール又は単環式ヘテロアリールにより任意に置換されていてよく;
或いは、R1は水素を表し;かつ、アリール又はヘテロアリール基の一部でないR1及び/又はR2の1つ以上の炭素原子は、O、N、及びS(O)pから選択されるヘテロ原子により任意に置換されており、式中pは、0、1、又は2を表し、R1及び/又はR2の1つ以上の炭素原子はカルボニルにより任意に置換されており;
或いは、R1とR2とは結合して、示されている窒素原子を含む飽和又は不飽和の複素環を形成し、かつ該環の1つ以上の炭素原子は、O、N、及びS(O)pから選択されるヘテロ原子により任意に置換されており、式中pは0、1、又は2を表し、該環の1つ以上の炭素原子は任意にカルボニルにより置換されており、該複素環は任意にアリール又はヘテロアリール環に縮合していてよく;
R1及び/又はR2基の1つ以上の炭素原子は、1つ以上のハロゲン原子により任意に置換されていてよく;
R3は、H、-(CO)xアルキルを表し;
R4は、H又はOHを表し;
R5は、H、OH、又は=Oを表し;
nが二重結合を表す場合にR4がHを表す場合を除いて、nは単結合又は二重結合を表し;かつ
mが二重結合を表す場合にR5がHを表す場合を除いて、mは単結合又は二重結合を表し;
xは0又は1を表す)。
【請求項2】
R1及びR2が、独立に、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルシクロアルキル、アルキルシクロアルケニル、アルケニルシクロアルキル、アルケニルシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルアリール、又はアルケニルヘテロアリールを表し、これらの基のいずれも単環式アリール又は単環式ヘテロアリールにより任意に置換されていてよく;
或いは、R1が水素を表し;かつ、アリール又はヘテロアリール基の一部でないR1及び/又はR2の1つ以上の炭素原子が、O、N、及びS(O)pから選択されるヘテロ原子により任意に置換されており、式中pが、0、1、又は2を表し、R1及び/又はR2の1つ以上の炭素原子がカルボニルにより任意に置換されており;
或いは、R1とR2とが結合して、示されている窒素原子を含む飽和又は不飽和の複素環を形成し、かつ該環の1つ以上の炭素原子が、O、N、及びS(O)pから選択されるヘテロ原子により任意に置換されており、式中pが0、1、又は2を表し、該環の1つ以上の炭素原子が任意にカルボニルにより置換されており、該複素環が任意にアリール又はヘテロアリール環に縮合していてよい、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R1が、単環式アリール若しくは単環式ヘテロアリールにより置換されているアリール若しくはヘテロアリール、-C1-4アルキル、-OC1-4アルキル、-COC1-4アルキル、又は-C2-4アルケニルを表す、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
R2が、水素、C1-4アルキル、又はC1-4アルケニルを表す、請求項1〜3のいずれか一項記載の化合物。
【請求項5】
R2が、水素又はC1-4アルキルを表す、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
R1とR2とが、それらが結合している窒素と共に、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、又はピペラジン環などの5員〜7員の複素環を表し、ピペラジンの4窒素がC1-4アルキルにより任意に置換されており、該環内の窒素原子に隣接する炭素原子が任意にカルボニルにより置換されている、請求項2記載の化合物。
【請求項7】
独立に、又は任意の組み合わせで:
R3が、H又は(CO)xC1-4アルキルを表し、式中xが請求項1で定義されたとおりであり;
nが単結合を表し;
mが単結合を表し;
R4がOHを表し;
R5が=Oを表す、請求項1〜6のいずれか一項記載の化合物。
【請求項8】
xが0を表す、請求項1〜7のいずれか一項記載の化合物。
【請求項9】
互変異性体;又はトランスとして示されているC26、27 C=C結合がシスである異性体を含み;かつC-53ケト(存在する場合)及びC-15ヒドロキシル基とメタノールとの組み合わせによりケタールが形成されるメタノール付加物を含む、
下記の構造により表されるとおり、R1がOCH3を表し、R2がMeを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化2】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がエチルを表し、R2がエチルを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化3】
又は
下記の構造により表されるとおり、R1が-CHMe2を表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化4】
又は
下記の構造により表されるとおり、R1がメチルを表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化5】
又は
下記の構造により表されるとおり、R1がメチルを表し、R2がHを表し、R3がMeを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化6】
又は
下記の構造により表されるとおり、R1が-CH2CH=CH2を表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化7】
又は
下記の構造により表されるとおり、R1がメチルを表し、R2がメチルを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが結合を表し、mが結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化8】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1が-CH2CHMe2を表し、R2が-CH2CHMe2を表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化9】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がOCH3を表し、R2がMeを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが二重結合を表し、かつ、R5がHを表す:
【化10】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がOCH3を表し、R2がMeを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが二重結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化11】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1とR2とが共に6員の複素環に結合した-CH2CH2OCH2CH2-を表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化12】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1が4-ビフェニリルを表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化13】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がシクロヘキシルを表し、R2がMeを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化14】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1とR2とが共に6員の複素環に結合した-OCH2CH2CH2CH2-を表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化15】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1が2-ピリジニルを表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化16】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がシクロヘキシルを表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化17】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がOCH3を表し、R2がMeを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5がOHを表す:
【化18】
請求項1記載の化合物又はそのいずれか1つの医薬として許容し得る塩。
【請求項10】
互変異性体;又はトランスとして示されているC26、27 C=C結合がシスである異性体を含み;かつC-53ケト(存在する場合)及びC-15ヒドロキシル基とメタノールとの組み合わせによりケタールが形成されるメタノール付加物を含む、
下記の構造により表されるとおり、R1がOCH3を表し、R2がMeを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化19】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がエチルを表し、R2がエチルを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化20】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1が-CHMe2を表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化21】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がメチルを表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化22】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がメチルを表し、R2がHを表し、R3がMeを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化23】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1が-CH2CH=CH2を表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化24】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がメチルを表し、R2がメチルを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが結合を表し、mが結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化25】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1が-CH2CHMe2を表し、R2が-CH2CHMe2を表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化26】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がOCH3を表し、R2がMeを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが二重結合を表し、かつ、R5がHを表す:
【化27】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1とR2とが共に6員の複素環に結合した-CH2CH2OCH2CH2-を表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化28】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1が4-ビフェニリルを表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化29】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がシクロヘキシルを表し、R2がMeを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化30】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がシクロヘキシルを表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化31】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1とR2とが共に6員の複素環に結合した-OCH2CH2CH2CH2-を表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化32】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1が2-ピリジニルを表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化33】
請求項1記載の化合物又はそのいずれか1つの医薬として許容し得る塩。
【請求項11】
互変異性体;又はトランスとして示されているC26、27 C=C結合がシスである異性体を含み;かつC-53ケト(存在する場合)及びC-15ヒドロキシル基とメタノールとの組み合わせによりケタールが形成されるメタノール付加物を含む、
下記の構造により表されるとおり、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表し:
【化34】
式中、R10が下記の表に示される基を表す:
【化35】
請求項1記載の化合物又はそのいずれか1つの医薬として許容し得る塩。
【請求項12】
医薬として使用するための、請求項1〜11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項13】
HCV、HBV、又はHIV感染などのウイルス感染の治療のための医薬として使用するための、請求項1〜11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項記載の化合物を、医薬として許容し得る希釈剤又は担体と共に含む医薬組成物。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか一項記載の化合物を、医薬として許容し得る希釈剤又は担体と共に含み、第二の有効成分又はその後の有効成分をさらに含む医薬組成物。
【請求項16】
HCV、HBV、又はHIVなどのウイルス感染の治療の方法であって、対象に、治療上有効な量の請求項1〜11のいずれか一項記載の化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項17】
請求項1〜11のいずれか一項記載の化合物を製造する方法であって、式IIの化合物を:
【化36】
(式中、R1及びR2は請求項1〜11のいずれか一項に定義されたとおりであり、かつ、R8はC1-4アルキル又はベンジルを表す);
アルデヒド性マクロ環(式IIIの化合物)と反応させることを含む、前記方法:
【化37】
(式中、R3、R4、R5、m、及びnは請求項1〜11のいずれか一項に定義されたとおりである)。
【請求項18】
互変異性体を含み;かつC-53ケト及びC-15ヒドロキシル基とメタノールとの組み合わせによりケタールが形成されるメタノール付加物を含む、下記の式(III)若しくは式(IV)の化合物又はその医薬として許容し得る塩:
【化38】
。
【請求項1】
互変異性体;又はトランスとして示されているC26、27 C=C結合がシスである異性体を含み;かつC-53ケト(存在する場合)及びC-15ヒドロキシル基とメタノールとの組み合わせによりケタールが形成されるメタノール付加物を含む、下記の式(I)の化合物又はその医薬として許容し得る塩:
【化1】
(式中、
R1及びR2は、独立に、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルシクロアルキル、アルキルシクロアルケニル、アルケニルシクロアルキル、アルケニルシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルアリール、又はアルケニルヘテロアリールを表し、これらの基のいずれも単環式アリール又は単環式ヘテロアリールにより任意に置換されていてよく;
或いは、R1は水素を表し;かつ、アリール又はヘテロアリール基の一部でないR1及び/又はR2の1つ以上の炭素原子は、O、N、及びS(O)pから選択されるヘテロ原子により任意に置換されており、式中pは、0、1、又は2を表し、R1及び/又はR2の1つ以上の炭素原子はカルボニルにより任意に置換されており;
或いは、R1とR2とは結合して、示されている窒素原子を含む飽和又は不飽和の複素環を形成し、かつ該環の1つ以上の炭素原子は、O、N、及びS(O)pから選択されるヘテロ原子により任意に置換されており、式中pは0、1、又は2を表し、該環の1つ以上の炭素原子は任意にカルボニルにより置換されており、該複素環は任意にアリール又はヘテロアリール環に縮合していてよく;
R1及び/又はR2基の1つ以上の炭素原子は、1つ以上のハロゲン原子により任意に置換されていてよく;
R3は、H、-(CO)xアルキルを表し;
R4は、H又はOHを表し;
R5は、H、OH、又は=Oを表し;
nが二重結合を表す場合にR4がHを表す場合を除いて、nは単結合又は二重結合を表し;かつ
mが二重結合を表す場合にR5がHを表す場合を除いて、mは単結合又は二重結合を表し;
xは0又は1を表す)。
【請求項2】
R1及びR2が、独立に、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルシクロアルキル、アルキルシクロアルケニル、アルケニルシクロアルキル、アルケニルシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルアリール、又はアルケニルヘテロアリールを表し、これらの基のいずれも単環式アリール又は単環式ヘテロアリールにより任意に置換されていてよく;
或いは、R1が水素を表し;かつ、アリール又はヘテロアリール基の一部でないR1及び/又はR2の1つ以上の炭素原子が、O、N、及びS(O)pから選択されるヘテロ原子により任意に置換されており、式中pが、0、1、又は2を表し、R1及び/又はR2の1つ以上の炭素原子がカルボニルにより任意に置換されており;
或いは、R1とR2とが結合して、示されている窒素原子を含む飽和又は不飽和の複素環を形成し、かつ該環の1つ以上の炭素原子が、O、N、及びS(O)pから選択されるヘテロ原子により任意に置換されており、式中pが0、1、又は2を表し、該環の1つ以上の炭素原子が任意にカルボニルにより置換されており、該複素環が任意にアリール又はヘテロアリール環に縮合していてよい、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R1が、単環式アリール若しくは単環式ヘテロアリールにより置換されているアリール若しくはヘテロアリール、-C1-4アルキル、-OC1-4アルキル、-COC1-4アルキル、又は-C2-4アルケニルを表す、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
R2が、水素、C1-4アルキル、又はC1-4アルケニルを表す、請求項1〜3のいずれか一項記載の化合物。
【請求項5】
R2が、水素又はC1-4アルキルを表す、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
R1とR2とが、それらが結合している窒素と共に、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、又はピペラジン環などの5員〜7員の複素環を表し、ピペラジンの4窒素がC1-4アルキルにより任意に置換されており、該環内の窒素原子に隣接する炭素原子が任意にカルボニルにより置換されている、請求項2記載の化合物。
【請求項7】
独立に、又は任意の組み合わせで:
R3が、H又は(CO)xC1-4アルキルを表し、式中xが請求項1で定義されたとおりであり;
nが単結合を表し;
mが単結合を表し;
R4がOHを表し;
R5が=Oを表す、請求項1〜6のいずれか一項記載の化合物。
【請求項8】
xが0を表す、請求項1〜7のいずれか一項記載の化合物。
【請求項9】
互変異性体;又はトランスとして示されているC26、27 C=C結合がシスである異性体を含み;かつC-53ケト(存在する場合)及びC-15ヒドロキシル基とメタノールとの組み合わせによりケタールが形成されるメタノール付加物を含む、
下記の構造により表されるとおり、R1がOCH3を表し、R2がMeを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化2】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がエチルを表し、R2がエチルを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化3】
又は
下記の構造により表されるとおり、R1が-CHMe2を表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化4】
又は
下記の構造により表されるとおり、R1がメチルを表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化5】
又は
下記の構造により表されるとおり、R1がメチルを表し、R2がHを表し、R3がMeを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化6】
又は
下記の構造により表されるとおり、R1が-CH2CH=CH2を表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化7】
又は
下記の構造により表されるとおり、R1がメチルを表し、R2がメチルを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが結合を表し、mが結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化8】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1が-CH2CHMe2を表し、R2が-CH2CHMe2を表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化9】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がOCH3を表し、R2がMeを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが二重結合を表し、かつ、R5がHを表す:
【化10】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がOCH3を表し、R2がMeを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが二重結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化11】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1とR2とが共に6員の複素環に結合した-CH2CH2OCH2CH2-を表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化12】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1が4-ビフェニリルを表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化13】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がシクロヘキシルを表し、R2がMeを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化14】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1とR2とが共に6員の複素環に結合した-OCH2CH2CH2CH2-を表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化15】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1が2-ピリジニルを表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化16】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がシクロヘキシルを表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化17】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がOCH3を表し、R2がMeを表し、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5がOHを表す:
【化18】
請求項1記載の化合物又はそのいずれか1つの医薬として許容し得る塩。
【請求項10】
互変異性体;又はトランスとして示されているC26、27 C=C結合がシスである異性体を含み;かつC-53ケト(存在する場合)及びC-15ヒドロキシル基とメタノールとの組み合わせによりケタールが形成されるメタノール付加物を含む、
下記の構造により表されるとおり、R1がOCH3を表し、R2がMeを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化19】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がエチルを表し、R2がエチルを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化20】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1が-CHMe2を表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化21】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がメチルを表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化22】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がメチルを表し、R2がHを表し、R3がMeを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化23】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1が-CH2CH=CH2を表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化24】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がメチルを表し、R2がメチルを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが結合を表し、mが結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化25】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1が-CH2CHMe2を表し、R2が-CH2CHMe2を表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化26】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がOCH3を表し、R2がMeを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが二重結合を表し、かつ、R5がHを表す:
【化27】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1とR2とが共に6員の複素環に結合した-CH2CH2OCH2CH2-を表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化28】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1が4-ビフェニリルを表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化29】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がシクロヘキシルを表し、R2がMeを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化30】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1がシクロヘキシルを表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化31】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1とR2とが共に6員の複素環に結合した-OCH2CH2CH2CH2-を表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化32】
;又は
下記の構造により表されるとおり、R1が2-ピリジニルを表し、R2がHを表し、R3がHを表し、R4がHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表す:
【化33】
請求項1記載の化合物又はそのいずれか1つの医薬として許容し得る塩。
【請求項11】
互変異性体;又はトランスとして示されているC26、27 C=C結合がシスである異性体を含み;かつC-53ケト(存在する場合)及びC-15ヒドロキシル基とメタノールとの組み合わせによりケタールが形成されるメタノール付加物を含む、
下記の構造により表されるとおり、R3がHを表し、R4がOHを表し、nが単結合を表し、mが単結合を表し、かつ、R5が=Oを表し:
【化34】
式中、R10が下記の表に示される基を表す:
【化35】
請求項1記載の化合物又はそのいずれか1つの医薬として許容し得る塩。
【請求項12】
医薬として使用するための、請求項1〜11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項13】
HCV、HBV、又はHIV感染などのウイルス感染の治療のための医薬として使用するための、請求項1〜11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項記載の化合物を、医薬として許容し得る希釈剤又は担体と共に含む医薬組成物。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか一項記載の化合物を、医薬として許容し得る希釈剤又は担体と共に含み、第二の有効成分又はその後の有効成分をさらに含む医薬組成物。
【請求項16】
HCV、HBV、又はHIVなどのウイルス感染の治療の方法であって、対象に、治療上有効な量の請求項1〜11のいずれか一項記載の化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項17】
請求項1〜11のいずれか一項記載の化合物を製造する方法であって、式IIの化合物を:
【化36】
(式中、R1及びR2は請求項1〜11のいずれか一項に定義されたとおりであり、かつ、R8はC1-4アルキル又はベンジルを表す);
アルデヒド性マクロ環(式IIIの化合物)と反応させることを含む、前記方法:
【化37】
(式中、R3、R4、R5、m、及びnは請求項1〜11のいずれか一項に定義されたとおりである)。
【請求項18】
互変異性体を含み;かつC-53ケト及びC-15ヒドロキシル基とメタノールとの組み合わせによりケタールが形成されるメタノール付加物を含む、下記の式(III)若しくは式(IV)の化合物又はその医薬として許容し得る塩:
【化38】
。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2013−518923(P2013−518923A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552469(P2012−552469)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【国際出願番号】PCT/GB2011/050236
【国際公開番号】WO2011/098809
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(505012977)バイオチカ テクノロジー リミテッド (14)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【国際出願番号】PCT/GB2011/050236
【国際公開番号】WO2011/098809
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(505012977)バイオチカ テクノロジー リミテッド (14)
【Fターム(参考)】
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