説明

サーボ制御装置およびこの制御装置の電流検出方法

【課題】本発明は、停止時の電流検出の分解能を上げるとともに、停止時の振動を抑えることができる方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ΔΣ方式のA/D変換器による電流検出手段を備えたサーボ制御装置の電流検出方法において、前記サーボ制御装置は、フィルタ10のフィルタリング時間が切替えられる切換手段11を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボモータで機械等を駆動するサーボ制御装置およびこの制御装置の電流検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気飽和のために低速時に電流制御ゲインを下げて、電流制御の不安定を抑えていた(例えば、特許文献1参照)。また、エレベータ等では積載状況に応じてモータ停止時、電流分解能を切り替えているものもある(例えば、特許文献2参照)。
図6において、7は電流検出装置、 8は比較器、 9は電流制御部、 13は電流制御ゲイン低減部であり、電流制御ゲイン低減部13で電流制御ゲインを下げている。
図7において、24は電流スケール演算部、 26は電流切替器、 27はA/D変換器、 28は3相/2相座標変換、 29は電流制御部であり、負荷に応じて電流切替器26及び電流スケール演算部24で電流分解能を切替えている。
このように、従来の制御装置では、低速時に電流制御ゲインを下げたり或いは負荷状況に応じて電流分解能を切替えるという手順がとられていた。
【特許文献1】特開2003−189652号公報(第7頁、図1)
【特許文献2】特許3310166号公報(第6頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の方法では、低速時電流制御ゲインを下げるという手順をとっているので、電流制御ゲインを下げると負荷変動に弱いという問題があった。また、文献2のような場合は積載状況という負荷が変動する時だけ、効果があり停止時には負荷状況によるので有効でないという問題もあった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、停止時の電流検出の分解能を上げるとともに、停止時の振動を抑えることができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、本発明は、次のようにしたのである。
請求項1記載の発明は、ΔΣ方式のA/D変換による電流検出手段を備えたサーボ制御装置の電流検出方法において、前記サーボ制御装置が、フィルタのフィルタリング時間が切替えられる切換手段を備えたものである。
また、請求項2記載の発明は、前記フィルタが、モータ停止時には電流検出のフィルタリング時間を長くし、モータ移動時は電流検出のフィルタリング時間を短くするように切替えるものである。
また、請求項3記載の発明は、前記フィルタ切換手段は、前記モータの停止または移動状態についてエンコーダ信号を基に行うものである。
また、請求項4記載の発明は、ΔΣ方式のA/D変換による電流検出手段を備えたサーボ制御装置において、モータ停止時が電流検出のフィルタを長くし、モータ移動時が電流検出のフィルタを短くする切換手段を備えたものである。
また、請求項5記載の発明は、ΔΣ方式のA/D変換による電流検出手段を備えたサーボ制御装置において、前記サーボ制御装置が、速度制御モードと電流制御モードを切替える切換手段を備えたものである。
また、請求項6記載の発明は、前記サーボ制御装置は、前記モータ停止時は速度制御および位置制御で停止されるものである。
また、請求項7記載の発明は、前記切換手段は、前記モータの停止または移動状態についてエンコーダ信号を基に行うものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1から4に記載の発明によると、モータ停止時は電流検出のフィルタを長くし電流検出の分解能を上げることができるので、停止時振動を抑えることができる。
また、請求項5から7に記載の発明によると、モータ停止時、電流制御をしないのでエンコーダの分解能での振動に抑えることができ、高分解能のエンコーダでは停止時振動を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の方法の具体的実施例について、図に基づいて説明する。
【実施例1】
【0007】
実際のサーボ制御装置には様々な機能や手段が内蔵されているが、図には本発明に関係する機能や手段のみを記載し説明することとする。
図1は、本発明の方法を実施するサーボ制御装置の構成を示す図である。図において1はマイクロコンピュータ、2は電流アンプ、3はベースドライブ回路、4はパワートランジスタモジュール、5はモータ、6はエンコーダ、7はエンコーダ入力回路、8は電流検出用シャント抵抗、9はA/D変換器、10はフィルタ、11はフィルタ切替手段である。
以上のように構成された回路において、その動作を図1を用いて説明する。 まずマイクロコンピュータ1は位置指令又は速度指令を外部のコントローラ等から受取る。そして位置制御の場合は、位置指令よりエンコーダ6からの位置をエンコーダ入力回路7で入力し、その位置フィードバックを差し引き、制御ゲインをかけて位置制御を行い、その出力の速度指令より速度フィードバックを差し引き、制御ゲインをかけて速度制御を行う。そして電流アンプ2にてその出力の電流指令から電流フィードバックを差し引き、制御ゲインをかけて電流制御を行う。その電流制御の出力でベースドライブ駆動回路3を通して、パワートランジスタ4を駆動してモータ5を制御する。電流フィードバックは電流検出用シャント抵抗8でモータ5の電流を電圧として検出する。その電圧はΔΣ方式のA/D変換器9とフィルタ10でデータ化して電流フィードバックする。ここで、ΔΣ方式について簡単に説明する。ΔΣ方式とは、積分器とコンパレータを用いて出力を入力にフィードバックすることでアナログ信号をパルス列のパルス密度に変換する方式である。
パルス列の密度を数値化するのは、例えばある時間内のパルス列をカウンタ等で計測すれば良く、この計測値にフィルタ10でフィルタリングしてデータ化する。
フィルタ10はフィルタ切替手段11でフィルタの時定数を変えることにより、電流フィードバックの分解能を変えることができる。マイクロコンピュータ1は電流フィードバックの分解能を変える時は、電流アンプ2に指令する電流指令とフィルタ切換手段11を変えることにより行う。
一例としてフィルタが移動平均フィルタの場合、時定数を長くするとパルス列の密度を長く平均化して計測したことになる。パルス列の密度は積分器やコンパレータ等の性能に依存するが、変換速度は速く細かいので長く計測するとより細かく計測できる。このようにしてフィルタ時定数を長くすると、分解能を上げることができる。
【0008】
図2は電流検出の方法を示すフローチャートである。この図を用いて本発明の方法について順を追って説明する。
はじめにステップ21でモータ停止かどうか確認する。モータ停止の場合は、ステップ22でフィルタ切替え11を用いてフィルタ設定を長くする。つまり、フィルタリング時間を18μsに設定して電流フィードバック分解能を約12ビットにして細かく制御する。モータ停止でない場合は、ステップ23でフィルタ切替え11は通常のフィルタ設定とする。つまり、フィルタリング時間を5μsに設定して電流フィードバック分解能を約8ビットで通常制御する。ステップ24ではフィルタ設定したフィルタとA/D変換器で、電流を入力する。
このように、モータ停止中A/D変換器のフィルタを長くするので、電流フィードバックの分解能を変えることができ、小さい電流の制御をすることにより停止時の振動等を抑えることができるのである。 つまり停止時は負荷外乱等が小さければ、移動時のような過渡的な応答は必要としないので、フィルタを長くして多少応答が落ちても停止時の振動等を抑えることができるのである。 なお電流アンプ2はマイクロコンピュータ1で行っても良い。
【実施例2】
【0009】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。構成について図3に示す。動作については実施例1と同様であるので説明を省略する。 電流フィードバックはフィルタ切替えがなく、電流検出用シャント抵抗8とA/D変換器9とフィルタ10で変換して入力する。
図5は電流制御の制御ブロック図である。図において51は電流制御、52、54はモータ、パワー変換、53は電圧指令変換定数である。モータ停止時は下側に切替えて、電流指令は電圧指令変換定数53で電圧指令に変換し、モータ、パワー変換54でモータに電流が流れる。但し、電流制御はないのでモータに電流が流れてトルクが発生し、速度として現れた時に速度制御で抑えることになる。
図4は電流制御の方法を示すフローチャートである。この図を用いて本発明の方法について順を追って説明する。
はじめにステップ41でモータ停止かどうか確認する。モータ停止の場合は、ステップ42で電流指令を電圧指令に変換して電流制御なしでモータを停止させる。この場合は電流制御ではないので、速度制御でモータを停止させることになる。速度制御で停止させることになるので、速度制御は分解能が高く、応答が高いことが要求されるが、電流の分解能による変動はなくなる。モータ停止でない場合は、ステップ43で通常の電流制御でモータを制御する。
【0010】
このように、モータ停止中電流制御をなくすので、電流フィードバックの分解能と関係なく制御することにより、停止時振動等を抑えることができる つまり停止時は負荷外乱等が小さければ、移動時のような過渡的な応答は必要としないので、速度制御の分解能が高くかつ速度制御の応答が高ければ、速度制御で電流制御を補うことができ、多少応答が落ちても停止時の振動等を抑えることができるのである。 なお電流アンプ2はマイクロコンピュータ1で行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の方法を適用するサーボ制御装置の構成を示す構成図
【図2】本発明の要部の処理手順を示すフローチャート
【図3】本発明の第2の方法を適用するサーボ制御装置の構成を示す構成図
【図4】本発明の第2の方法の処理手順を示すフローチャート
【図5】本発明の第2の方法の処理を示す電流制御ブロック図
【図6】従来の方法を適用した電流制御装置の構成を示す図
【図7】従来の第2の方法を適用した電流制御装置の構成を示す図
【符号の説明】
【0012】
1 マイクロコンピュータ
2 電流アンプ
3 ベースドライブ回路
4 パワートランジスタモジュール
5 モータ
6 エンコーダ
7 入力回路
8 電流検出用シャント抵抗
9 A/D変換器
10 フィルタ
11 フィルタ切替え
51 電流制御
52、54 モータ、パワー変換
53 電圧指令変換定数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ΔΣ方式のA/D変換器による電流検出手段を備えたサーボ制御装置の電流検出方法において、
前記サーボ制御装置は、前記A/D変換器のフィルタのフィルタリング時間が切替えられる切換手段を備えたことを特徴とするサーボ制御装置の電流検出方法。
【請求項2】
前記フィルタは、モータ停止時には電流検出のフィルタリング時間を長くし、モータ移動時は電流検出のフィルタリング時間を短くするように切替えることを特徴とする請求項1記載のサーボ制御装置の電流検出方法。
【請求項3】
前記フィルタ切換手段は、前記モータの停止または移動状態についてエンコーダ信号を基に行うことを特徴とする請求項1記載のサーボ制御装置の電流検出方法。
【請求項4】
ΔΣ方式のA/D変換による電流検出手段を備えたサーボ制御装置において、
モータ停止時は電流検出のフィルタを長くし、モータ移動時は電流検出のフィルタを短くする切換手段を備えたことを特徴とするサーボ制御装置。
【請求項5】
ΔΣ方式のA/D変換による電流検出手段を備えたサーボ制御装置において、
前記サーボ制御装置は、速度制御モードと電流制御モードを切替える切換手段を備えたことを特徴とするサーボ制御装置。
【請求項6】
前記サーボ制御装置は、前記モータ停止時は速度制御及び位置制御で停止されることを特徴とする請求項5記載のサーボ制御装置。
【請求項7】
前記切換手段は、前記モータの停止または移動状態についてエンコーダ信号を基に行うことを特徴とする請求項5記載のサーボ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−118750(P2008−118750A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298084(P2006−298084)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】