説明

シクロアルキルピペリジンタキキニン受容体拮抗剤

本発明は、ニューロキニン−1(NK−1)受容体拮抗薬、及びタキキニンの、特にサブスタンスPの阻害剤として有用なある種のピペリジン化合物を対象とする。本発明はまた、活性成分としてこれらの化合物を含む医薬製剤並びに嘔吐、尿失禁、抑鬱及び不安を含むある種の疾患の治療におけるこれらの化合物及び製剤の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
サブスタンスPは、タキキニンファミリーのペプチドに属する天然ウンデカペプチドであり、タキキニンの名は、血管外平滑筋組織に対するその迅速な収縮作用によって付けられたものである。タキキニン類は、保存されたカルボキシル末端配列によって区別される。サブスタンスP以外に、公知の哺乳動物タキキニンには、ニューロキニンA及びニューロキニンBが含まれる。現在の命名法では、サブスタンスP、ニューロキニンA及びニューロキニンBに対する受容体を、それぞれニューロキニン−1(NK−1)、ニューロキニン−2(NK−2)及びニューロキニン−3(NK−3)と称する。タキキニン、特にサブスタンスPの拮抗薬は、中枢神経系の障害、痛覚及び疼痛、胃腸障害、膀胱機能の障害並びに呼吸器疾患を含むタキキニン、特にサブスタンスPの活性の過剰存在を特徴とする臨床状態の治療に有用である。前述の様々な障害及び疾患をより効果的に治療するために、サブスタンスP及びその他のタキキニンペプチドの受容体の拮抗薬をもたらす試みがなされてきた。
【発明の開示】
【0002】
発明の要旨
本発明は、ニューロキニン−1(NK−1)受容体拮抗薬及びタキキニン、特にサブスタンスPの阻害剤として有用なある種のアミノラクタム化合物を対象とする。本発明はまた、活性成分としてこれらの化合物を含む医薬製剤並びに嘔吐、尿失禁、抑鬱及び不安を含むある種の疾患の治療におけるこれらの化合物及び製剤の使用に関する。
【0003】
本発明は、式Iの化合物
【0004】
発明の詳細な説明
【化6】

(式中、Qは、
(1)水素、
(2)C1〜6アルキル、及び
(3)C1〜6アルキル−OHからなる群から選択され、
は、
(1)シクロペンチル、
(2)シクロヘキシル、及び
(3)シクロペンテノンからなる群から選択され、
1a、R1b及びR1cによって置換されており、R1a、R1b及びR1cは独立して、
(a)水素、
(b)C1〜6アルキル、
(c)(C1〜6アルキル)−フェニル、
(d)(C1〜6アルキル)−ヒドロキシ、
(e)(C1〜6アルキル)−(C1〜4アルコキシ)、
(f)ヒドロキシ、
(g)オキソ、
(h)C1〜6アルコキシ、
(i)フェニル−C1〜3アルコキシ、
(j)フェニル、
(k)−CN、
(l)ハロ、
(m)−NR1010(式中、R及びR10は独立して、
(I)水素、
(II)C1〜6アルキル、
(III)フェニル、
(IV)(C1〜6アルキル)−フェニル、
(V)(C1〜6アルキル)−ヒドロキシ、及び
(VI)(C1〜6アルキル)−(C1〜4アルコキシ)から選択される。)、
(n)−NR−COR10
(o)−NR−CO10
(p)複素環(前記複素環は、
(A)イミダゾリル、
(B)イソオキサゾリル、
(C)オキサジアゾリル、
(D)オキサゾリル、
(E)ピラジニル、
(F)ピラゾリル、
(G)ピリダジニル、
(H)ピリジル、
(I)ピリミジル、
(J)ピロリル、
(K)キノリル、
(L)テトラゾリル、及び
(M)トリアゾリルからなる群から選択され、
前記複素環は非置換であるか、又はC1〜6アルキル若しくはハロによって置換されている。)、
(q)−シクロペンテノン(前記非置換であるか、又はC1〜6アルキルによって置換されている。)、
(r)−NR−シクロペンテノン(前記シクロペンテンは非置換であるか、又はC1〜6アルキルによって置換されている。)、
(s)−CO−NR10
(t)−SO−NR10
(u)−SO−NR10
(v)−COR、及び
(w)−COからなる群から選択され、
、R及びRは独立して、
(1)水素、
(2)C1〜6アルコキシ、
(3)ハロ、
(4)C1〜6アルキル(非置換であるか、又は
(a)ヒドロキシ、
(b)オキソ、
(c)C1〜6アルコキシ、
(d)フェニル−C1〜3アルコキシ、
(e)フェニル、
(f)−CN、
(g)ハロ、
(h)−NR10
(i)−NR−COR10
(j)−NR−CO10
(k)−CO−NR10
(l)−COR
(m)−COから選択された1個又は複数の置換基で置換されている。)、
(5)ヒドロキシ、
(6)−CN、
(7)−CF
(8)−NO
(9)−SR14(R14は水素又はC1〜6アルキルである。)、
(10)−SOR14
(11)−SO14
(12)−NR−COR10
(13)−CO−NR−COR10
(14)−NR10
(15)−NR−CO10
(16)−COR、及び
(17)−COからなる群から選択され、
11、R12及びR13は独立して、
(1)水素、
(2)C1〜6アルキル(非置換であるか、又は
(a)ヒドロキシ、
(b)オキソ、
(c)C1〜6アルコキシ、
(d)フェニル−C1〜3アルコキシ、
(e)フェニル、
(f)−CN、
(g)ハロ、
(h)−NR10
(i)−NR−COR10
(j)−NR−CO10
(k)−CO−NR10
(l)−COR
(m)−COから選択された1個又は複数の置換基で置換されている。)
(3)ハロ、
(4)−CN、
(5)−CF
(6)−NO
(7)ヒドロキシ、
(8)C1〜6アルコキシ、
(9)−COR、及び
(10)−COから選択される。)
並びにその薬剤として許容される塩及び個々のジアステレオマーを対象とする。
【0005】
本発明の一実施形態は、式Iaの化合物
【0006】
【化7】

(式中、Rは本明細書で定義されている。)
並びにその薬剤として許容される塩及びそれらの個々のエナンチオマー及びジアステレオマーを含む。
【0007】
本発明の一実施形態は、式Ibの化合物
【0008】
【化8】

(式中、Rは本明細書で定義されている。)
並びにその薬剤として許容される塩及びその個々のエナンチオマー及びジアステレオマーを含む。
【0009】
本発明の一実施形態は、式Icの化合物
【0010】
【化9】

(式中、R1a、R1b及びR1cは本明細書で定義されている。)
並びにその薬剤として許容される塩及びその個々のエナンチオマー及びジアステレオマーを含む。
【0011】
本発明の一実施形態は、式Idの化合物
【0012】
【化10】

(式中、R1a、R1b及びR1cは本明細書で定義されている。)
並びにその薬剤として許容される塩及びその個々のエナンチオマー及びジアステレオマーを含む。
【0013】
本発明の一実施形態は、Qが
(1)水素、及び
(2)メチル
から成る群から選択された化合物を含む。
【0014】
この実施形態において、本発明はQがメチルである化合物を含む。
【0015】
本発明の一実施形態は、RがR1a、R1b及びR1cで置換されたシクロペンチルである化合物を含む。
【0016】
本発明の一実施形態は、RがR1a、R1b及びR1cで置換されたシクロヘキシルである化合物を含む。
【0017】
本発明の一実施形態は、R1a、R1b及びR1cが独立して
(a)水素、
(b)複素環(前記複素環は、
(A)オキサジアゾリル、
(B)ピラジニル、
(C)ピリジル、
(D)ピリミジル、及び
(E)トリアゾリルからなる群から選択され、
前記複素環は非置換であるか、又はC1〜6アルキル若しくはハロによって置換されている。)、
(c)−シクロペンテノン(非置換であるか、又はC1〜6アルキルによって置換されている。)
から選択された化合物を含む。
【0018】
この実施形態において、本発明は、R1a、R1b及びR1cの2個が水素であり、R1a、R1b及びR1cの1個が独立して、
(a)複素環(前記複素環は、
(A)オキサジアゾリル、
(B)ピラジニル、
(C)ピリジル、
(D)ピリミジル、及び
(E)トリアゾリルからなる群から選択され、
前記複素環は非置換であるか、又はメチル若しくはブロモで置換されている。)
(b)−シクロペンテノン(非置換であるか、又はメチルによって置換されている。)
から選択された化合物を含む。
【0019】
本発明の一実施形態は、R、R、及びRが独立して、
(1)水素、及び
(2)−CFからなる群から選択される化合物を含む。
【0020】
この実施形態において、本発明はR、R、及びR及びこれらが結合しているフェニル環が3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル環を形成する化合物を含む。
【0021】
発明の一実施形態は、R11、R12、及びR13が独立して、
(1)水素、及び
(2)−フルオロからなる群から選択される化合物を含む。
【0022】
この実施形態において、本発明はR11、R12、及びR13及びこれらが結合しているフェニル環が4−フルオロフェニル環を形成する化合物を含む。
【0023】
本発明の具体的な実施形態は、本明細書の実施例の対象化合物並びにその薬剤として許容される塩及びその個々のエナンチオマー及びジアステレオマーからなる群から選択された化合物を含む。
【0024】
本発明の化合物は、1個又は複数の不斉中心を含有してよく、したがってラセミ体及びラセミ混合物、単一のエナンチオマー、ジアステレオマー混合物及び個々のジアステレオマーとなることができる。分子の様々な置換基の性質に応じて、他の不斉中心も存在してよい。このような不斉中心はそれぞれ独立して2個の光学異性体を生じ、可能な光学異性体及びジアステレオマーは全て、混合物で、及び純粋な、若しくは部分的に精製された化合物として、本発明の範囲内に含まれるものとする。本発明は、これらの化合物のこのような異性体型全てを包含することを意味する。式Iは、立体化学的選択性のない化合物種の構造を示す。これらのジアステレオマーの独立合成及びそれらのクロマトグラフィーによる分離は、本明細書で開示した方法を適切に変更することによって、当業界で知られているように実施することができる。絶対的な立体化学構造は、結晶生成物又は、必要ならば、絶対構造が公知の不斉中心を含有する試薬で誘導体化した結晶中間体のx線結晶学によって決定することができる。所望するならば、個々のエナンチオマーが単離されるように、化合物のラセミ混合物を分離することができる。分離は、化合物のラセミ混合物を鏡像異性的に純粋な化合物に結合させてジアステレオマー混合物を形成し、次いで分画結晶化又はクロマトグラフィーなどの標準的方法による個々のジアステレオマーの分離などの当業界で周知の方法によって実施することができる。この結合反応は、鏡像異性的に純粋な酸又は塩基を使用した塩の形成であることが多い。次に、ジアステレオマー誘導体は、付加されたキラル残基の切断によって純粋なエナンチオマーに変換され得る。この化合物のラセミ混合物はまた、当業界で周知の方法であるキラル固定相を利用したクロマトグラフィー方によって直接分離することができる。或いは、化合物の任意のエナンチオマーは、当業界で周知の方法によって立体構造が公知の光学的に純粋な開始物質又は試薬を使用した立体選択的合成によって得ることができる。
【0025】
当業者に明らかなように、本明細書ではハロ又はハロゲンはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素を含むものとする。同様に、C1〜6アルキルにおけるようなC1〜6は、直鎖又は分枝鎖の配置の1、2、3、4、5又は6個の炭素を有する基を識別するために定義され、したがって、C1〜6アルキルは、具体的に、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、ペンチル及びヘキシルを含む。置換基で独立して置換されていることが示された基は、複数のこのような置換基で独立して置換されることが可能である。
【0026】
「薬剤として許容される塩」という用語は、無機又は有機塩基及び無機又は有機酸を含む薬剤として許容される非毒性塩基又は酸から調製された塩のことである。無機塩基から得られた塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第三鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン塩、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが含まれる。特に好ましいのは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩である。固形状の塩は、複数の結晶構造で存在することができ、水和物の形態でも存在することができる。薬剤として許容される有機非毒性塩基から得られる塩には、1級、2級及び3級アミン、天然の置換アミンを含む置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂の塩が含まれ、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂類、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどがある。本発明の化合物が塩基性であるとき、塩は、無機及び有機酸を含む薬剤として許容される非毒性酸から調製することができる。このような酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンホスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩化水素酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などが含まれる。特に好ましいのは、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、臭化水素酸、塩化水素酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸及び酒石酸である。本明細書では、本発明の化合物について触れる場合は、薬剤として許容される塩を含むことも意味することに理解されたい。
【0027】
本発明の実例は、実施例及び本明細書で開示した化合物の使用である。本発明の具体的な化合物には、以下の実施例で開示された化合物からなる群から選択される化合物及びそれらの薬剤として許容される塩及びそれらの個々のジアステレオマーが含まれる。
【0028】
本発明の化合物は、過剰なタキキニン、特にサブスタンスP活性の存在によって特徴付けられる様々な臨床状態の予防及び治療に有用である。したがって、例えば、過剰なタキキニン、特にサブスタンスP活性は、中枢神経系の様々な障害に関与する。このような障害には、例えば単発性若しくは再発性の主要な抑鬱障害及び気分変調障害などの抑鬱若しくはより詳細には抑鬱性障害、又は、例えば双極性I障害、双極性II障害及び循環病などの双極性障害などの気分障害;広所恐怖症を伴う又は伴わないパニック障害、パニック障害歴のない広所恐怖症、特異的恐怖症、例えば、特定動物恐怖症、社会恐怖症、強迫性障害、外傷後ストレス障害及び急性ストレス障害を含むストレス障害、並びに全般性不安障害などの不安障害;例えば統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想障害、短期精神病障害、2人組精神病及び妄想若しくは幻覚を伴う精神病障害などの統合失調症及び他の精神障害;アルツハイマー病、老年認知症、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、及び、例えばHIV疾患、頭部外傷、パーキンソン病、ハンチングトン病、ピック病、クロイツフェルト−ヤコブ病又は多発的病因による他の認知症などの、譫妄障害、認知症、及び健忘性障害及び他の認識障害又は神経変性障害;パーキンソン病並びに、例えば、神経抑制薬誘発性パーキンソニズム、神経抑制薬性悪性症候群、神経抑制薬誘発性急性ジストニア、神経抑制薬誘発性急性静座不能、神経抑制薬誘発性遅発性運動異常及び薬剤誘発性体位性振戦のような薬剤誘発性運動障害などの他の錐体外路性運動障害;アルコール、アンフェタミン類(若しくはアンフェタミン様物質)、カフェイン、マリファナ、コカイン、幻覚剤、吸入薬及びエアロゾル噴霧剤、ニコチン、オピオイド、フェニルグリシジン誘導体、鎮静剤、睡眠薬及び不安緩解薬の使用によって生じる物質関連の障害(薬物の依存及び乱用、中毒、禁断症状、中毒性譫妄、禁断症状性譫妄、持続性認知症、精神障害、気分障害、不安障害、性的機能障害及び睡眠障害を含む。);癲癇;ダウン症候群;MS及びALSなどの脱髄性疾患、及び、例えば糖尿病性及び化学療法誘発性神経障害のような末梢神経障害などの他の神経病理障害、並びに帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、分節性神経痛若しくは肋間神経痛及び他の神経痛;並びに脳梗塞、クモ膜下出血又は脳浮腫などの急性若しくは慢性脳血管損傷による脳血管障害が含まれる。
【0029】
タキキニン、特にサブスタンスP活性はまた、痛覚及び疼痛に関与する。したがって、本発明の化合物は、疼痛が強い疾患及び状態の予防又は治療において有用であり、そのような疾患及び状態には、急性外傷、骨関節炎、関節リウマチ、筋骨格疼痛、特に外傷後の疼痛、脊髄疼痛、筋筋膜疼痛症候群、頭痛、会陰切開痛及び火傷などの軟組織及び末梢の損傷;心臓痛、筋肉痛、眼球痛、口顔痛、例えば、歯痛、腹痛、婦人科系疼痛、例えば、月経困難症、及び陣痛などの深部痛及び内臓痛;例えば、神経絞扼及び腕神経叢裂離、切断術、末梢神経障害、三叉神経痛、非定型顔面痛、神経根損傷及びクモ膜炎などの末梢神経障害関連の疼痛などの神経及び神経根の損傷に関連する疼痛;多くの場合癌性疼痛と称される癌に関連する疼痛;脊髄又は脳幹の損傷による疼痛などの中枢神経系痛;腰痛;坐骨神経痛;強直性脊椎炎、痛風;並びに瘢痕痛が含まれる。
【0030】
タキキニン拮抗薬、特にサブスタンスP拮抗薬は、呼吸器系疾患、特に、慢性気道閉塞疾患、気管支肺炎、慢性気管支炎、嚢胞性繊維症及び喘息、成人呼吸窮迫症候群並びに気管支痙攣などの過剰な粘液分泌に関連する呼吸器系疾患;炎症性腸疾患、乾癬、線維炎、骨関節炎、関節リウマチ、掻痒症及び日焼けなどの炎症性疾患;湿疹及び鼻炎などのアレルギー;毒ツタ症などの過敏障害;結膜炎、春季カタルなどの眼球疾患;増殖性硝子体網膜症などの細胞増殖に関連する眼球状態;接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹及びそ他の湿疹様皮膚炎などの皮膚疾患の治療にも有用であり得る。タキキニン拮抗薬、特にサブスタンスP拮抗薬は、乳房腫瘍、神経節芽細胞腫及び小細胞肺癌などの小細胞癌を含む新生物の治療にも有用であり得る。
【0031】
タキキニン拮抗薬、特にサブスタンスP拮抗薬は、胃炎、胃十二指腸潰瘍、胃癌、胃リンパ腫、内臓の神経調節に関連する障害、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群などのGI管の炎症性障害及び疾患、並びに、例えば、化学療法、放射線、毒物、ウイルス若しくは細菌感染、妊娠、例えば、乗物酔い、眩暈、立ち眩み及びメニエール病などの前庭障害、手術、片頭痛、脳圧変動によって誘発された嘔吐などの急性、遅発性若しくは期待性の嘔吐を含む嘔吐、胃食道逆流病、胃酸過多、食物若しくは飲料における耽溺、胃酸過多症、胸焼け若しくは逆流、例えば偶発性、夜間性若しくは食事誘発の胸焼けなどの胸焼け、並びに消化不良を含む胃腸管(GI)障害の治療にも有用であり得る。
【0032】
タキキニン拮抗薬、特にサブスタンスP拮抗薬は、ストレス関連の身体障害;肩/手症候群などの反射交感神経ジストロフィー;移植組織の拒絶などの有害免疫反応及び全身性紅斑性狼瘡などの免疫の促進若しくは抑制に関連する障害;サイトカイン化学療法によって生じる血漿血管外漏出、緊急性で頻発する切迫性尿失禁の症状を伴う過活動性膀胱の予防又は治療を含む膀胱炎、膀胱利尿筋反射亢進、頻尿及び失禁などの膀胱機能の障害;強皮症及び好酸球性肝蛭症などの線維症及び膠原病;狭心症、血管性頭痛、片頭痛及びレイノルズ病などの血管拡張性疾患及び血管痙攣性疾患によって生じる血流の障害;並びに前記の状態のいずれかが原因であるか又はそれに関連する疼痛若しくは侵害受容、特に、片頭痛における疼痛の伝播を含むその他の各種状態の治療にも有用であり得る。本発明の化合物はまた、前記状態の組合せの治療、特に手術後疼痛と手術後の悪心及び嘔吐の組合せの治療にも価値がある。
【0033】
本発明の化合物は、化学療法、放射線、毒物、妊娠、前庭障害、運動、手術、片頭痛及び脳圧変動によって誘発される嘔吐などの急性、遅発性若しくは期待性の嘔吐を含む嘔吐の予防又は治療に特に有用である。例えば、本発明の化合物は、急性及び遅発性悪心並びに高用量シスプラチンを含む催嘔吐性が中等度の、若しくは高度の癌化学療法の初期及び反復期に関連した嘔吐の予防のためのその他の制吐剤と場合によって組合わせて使用される。とりわけ、本発明の化合物は、癌の化学療法に通常使われるものなどの抗新生物剤(細胞毒物)によって誘発される嘔吐、並びに、例えばロリプラムのようなその他の薬物誘発の嘔吐の治療に有用である。このような化学療法剤の例には、エチレンイミン化合物、アルキルスルホン酸塩及びニトロソ尿素、シスプラチン及びダカルバジンのようなアルキル化作用を有するその他の化合物などのアルキル化剤;葉酸、プリン若しくはピリミジン拮抗薬などの代謝拮抗物質;ビンカアルカロイド及びポドフィロトキシン誘導体などの分裂阻害剤;並びに細胞毒性抗生物質が含まれる。化学療法剤の特定の例は、例えば、D.J.スチュワート著 Nausea and Vomitting: Recent Research and Clinical Advances,J.Kucharczyk他編、CRC Press Inc.、Boca Raton、Florida、USA(1991)、pp.177〜203(特に188ページ))に記載されている。一般に使用される化学療法剤には、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロレタミン、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン及びクロラムブシルが含まれる(R.J.Gralla他、Cancer Treatment Reports(1984)、68(1)、pp.163〜172)。本発明のさらに他の態様は、哺乳類において、時間生物学的(日内周期相移動)効果を達成し、日内周期障害を軽減するための本発明の化合物の使用を含む。本発明はさらに、哺乳類における光の相移動効果を遮断するための本発明の化合物の使用に関するものでもある。
【0034】
本発明はさらに、哺乳類において、睡眠の質の向上若しくは改善並びに睡眠障害及び睡眠の乱れの予防及び治療のための、本発明の化合物又はその薬剤として許容される塩の使用を対象とする。特に、本発明は、睡眠効率を高め、睡眠維持を増大させることで睡眠の質を向上又は改善する方法を提供する。さらに本発明は、本発明の化合物又はそれの薬剤として許容される塩の投与を含む、哺乳類において睡眠障害及び睡眠の乱れを予防及び治療する方法を提供する。本発明は、精神生理学的原因から、(特に不安に関係する)精神障害の結果として、並びに薬物及びアルコールの使用及び乱用(特に、禁断症状段階時)から生じ得る睡眠の開始及び維持の障害(不眠症)(「DIMS」)、小児期発症DIMS、夜間ミオクローヌス、筋肉痛、睡眠時無呼吸及び下肢静止不能並びに加齢で認められるような非特異性REM障害を含む睡眠障害の治療において有用である。
【0035】
本発明の特に好ましい実施形態は、治療を必要とする対象(ヒト又はペット)に対して本発明の化合物を投与することによる嘔吐、尿失禁、抑鬱及び不安の治療である。
【0036】
本発明は、本発明の化合物と医薬担体又は希釈剤と一緒にすることを含む、哺乳類においてサブスタンスPのその受容体での効果に拮抗するための、又はニューロキニン−1受容体を遮断するための薬剤を製造するための方法を対象とする。本発明はさらに、本発明の化合物と医薬担体又は希釈剤と一緒にすることを含む、哺乳類におけるタキキニン過剰に関連した生理学的障害の治療のための薬剤を製造するための方法を対象とする。
【0037】
本発明はまた、タキキニン、特にサブスタンスPの過剰に関連する生理的障害の治療又は予防方法であって、タキキニンを減少させる量の本発明の化合物又は本発明の化合物を含む組成物を、それらを必要とする患者に投与することを含む方法を提供する。本明細書では、「治療」又は「治療する」という用語は、疾患状態を患っているか、又はそれらの臨床的指標を示す対象(ヒト若しくは動物)での、顕著な状態の症状又は基礎原因を軽減、緩和又は排除するために、本発明の化合物を投与することを意味する。「予防」又は「予防する」という用語は、疾患状態に対して感受性であるか又はその素因を有する対象(ヒト若しくは動物)での、顕著な状態の危険性又は発生の可能性を軽減、緩和又は排除するために本発明の化合物を投与することを意味する。
【0038】
本発明の化合物は、胃腸障害、中枢神経系障害、炎症疾患、疼痛又は偏頭痛及び喘息の治療を必要とする哺乳類でのこのような治療におけるタキキニン、特にサブスタンスPを拮抗するために有用である。この活性は、以下の測定法によって示すことができる。
【0039】
COSでの受容体発現:クローニングされたヒトニューロキニン−1受容体(NK1R)をCOSにおいて一時的に発現させるために、SacII部位にアンピシリン耐性遺伝子(BLUESCRIPT SK+のヌクレオチド1973から2964)を挿入することによって、pCDM8(INVITROGEN)から得られた発現ベクターpCDN9にヒトNK1RのcDNAをクローニングした。COS細胞1000万個へのプラスミドDNA20μgの形質移入は、形質移入緩衝液(NaCl 135mM、CaCl 1.2mM、MgCl 1.2mM、KHPO 2.4mM、KHPO 06mM、グルコース 10mM、HEPES 10mM、pH7.4))800μl中でIBI GENEZAPPER(IBI、New Haven、CT)を使用して260V及び950uFで電気穿孔導入することによって実施した。細胞は、測定前3日間は5%CO内で、37℃で、牛胎児血清10%、グルタミン2mM、ペニシリン−ストレプトマイシン100U/ml及びDMEM培地(GIBCO、Grand Island、NY)90%中で温置した。
【0040】
CHOでの安定的発現:クローニングされたヒトNK1Rを発現する安定な細胞株を確立するために、cDNAをベクターpRcCMV(INVITROGEN)にサブクローニングした。CHO細胞へのプラスミドDNA20μgの形質移入は、IBI GENEZAPPER(IBI)を使用して、300V及び950uFで、ニシン精子DNA0.625mg/mlを補給した形質移入緩衝液800μl中で電気穿孔導入することによって実施した。コロニーが視認されるまで、形質移入した細胞を、CHO培地(牛胎児血清10%、ペニシリン−ストレプトマイシン100U/ml、グルタミン2mM、ヒポキサンチン−チミジン(ATCC)1/500、90%IMDM培地(JRH BIOSCIENCES、Lenexa、KS)、G418(GIBCO)0.7mg/ml)中で、5%CO内で37℃で温置した。各コロニーを分離し、増殖させた。ヒトNK1Rの数が最も多いクローン細胞を薬剤スクリーニングなどその後利用するために選択した。
【0041】
COS又はCHOを使用する測定方法:COS又はCHOのいずれかで発現したヒトNK1Rの結合測定は、ヒトNK1Rに対する結合について非標識サブスタンスP又はその他のリガンドと競合する放射活性標識リガンドとして125I−サブスタンスP(125I−SP、DU PONT、ボストン、MA)を使用することを基礎としている。COS又はCHOの単層細胞培養物を、細胞懸濁物200μlが特異的125I−SP結合の約10000cpmを生じるように(細胞約50000個から200000個)、非酵素溶液(SPECIALTY MEDIA、Lavalette、NJ)によって解離させ、適切な量の結合緩衝液(Tris 50mM pH7.5、MnCl 5mM、NaCl 150mM、バシトラシン 0.04mg/ml、ロイペプシン0.004mg/ml、BSA0.2mg/ml、ホスホラミドン 0.01mM)に再懸濁した。この結合測定法では、1.5から2.5nMの125I−SP20μl及び非標識サブスタンスP又はその他の任意の試験化合物20μlを含有する試験管に細胞200μlを添加した。この試験管を4℃又は室温で1時間ゆっくり撹拌しながら温置した。ポリエチレンイミン0.1%で予め湿られたGF/Cフィルター(BRANDEL、Gaithersburg、MD)によって、未結合放射活性から結合放射活性を分離した。フィルターを緩衝液(トリス 50mM pH7.5、MnCl 5mM、NaCl 150mM)3mlで3回洗浄し、その放射能をガンマカウンターによって測定した。NK1Rによるホスホリパーゼの活性化も、IPの分解産物であるモノリン酸イノシトールの蓄積を測定することによって、ヒトNK1Rを発現するCHO細胞で測定することができる。CHO細胞を、12ウェルプレートにウェル当たり細胞250000個で接種する。CHO培地で4日間温置した後、細胞に0.025μCi/mLのH−ミオイノシトールを一晩温置することによって負荷する。細胞外放射能を、リン酸緩衝生理食塩水で洗浄することで除去する。被験化合物の存在下又は非存在下で、LiClを最終濃度0.1mMでウェルに加え、温置を37℃で15分間続ける。サブスタンスPを最終濃度0.3nMでウェルに加えて、ヒトNK1Rを活性化する。37℃で30分間温置した後、培地を除去し、HCl0.1Nを加える。各ウェルを4℃で超音波処理し、CHCl/メタノール(1:1)で抽出する。水相を、Dowex AG1X8イオン交換カラム1mlに添加する。カラムをギ酸0.1N、次いでギ酸アンモニウム0.025M−ギ酸0.1Nで洗浄する。モノリン酸イノシトールを、ギ酸アンモニウム0.2M−ギ酸0.1Nで溶出させ、ベータカウンターによって定量する。特に、本発明の化合物の固有のタキキニン受容体拮抗薬活性はこの測定法によって示すことができる。以下の実施例の化合物は、前記測定法では0.05nMから10□Mの範囲で活性を有する。本発明の化合物の活性は、レイ他、British J. Pharmacol.、105、261〜262(1992)によって開示された測定法によっても示すことができる。
【0042】
さらなる、又は他の態様では、本発明は、身体中のタキキニン又はサブスタンスPの量を減らす必要がある対象に対して投与することができる組成物として使用するための本発明の化合物を提供する。
【0043】
本明細書では、「組成物」という用語は、所定の量又は割合の特定の成分を含有する生成物、並びに直接的もしくは間接的に、特定の成分を特定の量と組み合わせることによって得られる生成物を包含するものとする。医薬組成物に関係するこの用語は、1種又は複数の有効成分及び不活性成分を含む任意の担体を含む生成物、並びに2種以上の成分の組合わせ、複合体若しくは凝集体から、又は1種又は複数の成分の解離から、又は1種又は複数の成分の他の種類の反応若しくは相互作用から、直接的若しくは間接的に生じる生成物を包含するものである。一般に、医薬組成物は、活性成分を液体担体若しくは微粉砕固体担体又はそれらの両方と均一かつ十分に混合し、次に必要に応じて、この生成物を所望する製剤に成形することによって調製される。この医薬組成物において、活性のある目的化合物は、疾患の過程又は状態に所望する効果を及ぼすのに十分な量で含まれる。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物及び薬剤として許容される担体を混合することによって製造されるあらゆる組成物を包含する。「薬剤として許容される」とは、担体、希釈剤又は賦形剤が製剤の他の成分と適合するべきであり、それの受容者に対して有害であってはならないことを意味する。
【0044】
経口使用を目的とする医薬組成物は、医薬組成物の製造に関する当業界で公知の方法に従って調製することができ、そのような組成物は、薬剤として見た目が良く口当たりの良い製剤を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤及び保存剤からなる群から選択される1種又は複数の薬剤を含有することができる。錠剤は、錠剤の製造に適切な、毒性のない、薬剤として許容される賦形剤と混合して活性成分を含有する。これらの賦形剤は、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤、例えば、コーンスターチ又はアルギン酸などの造粒剤及び崩壊剤、例えばデンプン、ゼラチン又はアカシアなどの結合剤、及び、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクなどの潤沢剤であることができる。錠剤は被覆されていないか、又は公知の技術によって被覆が施されて、胃腸管での崩壊及び吸収を遅延させ、それによって長期間にわたって持続的作用を提供するようにすることができる。経口用の組成物はまた、活性成分を例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム若しくはカオリンなどの不活性固体希釈剤と混合した硬ゼラチンカプセルとして、或いは活性成分を、水又は例えば落花生油、液体パラフィン若しくはオリーブ油などの油系媒体と混合した軟ゼラチンカプセルとして存在させることができる。水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合した活性材料を含有する。油性懸濁液は、適切な油に活性成分を懸濁することによって製剤することができる。油中水型エマルジョンも使用できる。水を加えることで水性懸濁液を調製するのに適した分散性粉体及び粒剤では、活性成分を、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤及び1種又は複数の保存剤と混合して提供する。
【0045】
本発明の医薬組成物は、無菌注射用水性若しくは油性懸濁液の形態にすることができる。本発明の化合物はまた、直腸投与用の坐剤の形態で投与することができる。局所用には、本発明の化合物を含有するクリーム、軟膏、ゼリー、液剤又は懸濁液などを用いることができる。本発明の化合物はまた、吸入によって投与するために製剤することができる。本発明の化合物はまた、当業界で公知の方法によって経皮パッチによって投与することができる。
【0046】
本発明の化合物を含有する組成物は、単位投与形態で存在させることができ、製薬業界で周知のいずれかの方法によって調製することができる。「単位製剤」という用語は、患者又は患者に薬剤を投与する者が、全用量の入った単一の容器又は包装を開けることができ、2種以上の容器又は包装から成分を一緒に混合する必要がないように、活性成分及び非活性成分全てが適切な系で組合わされている単一用量を意味する。単位投与形態の代表例は、経口用の錠剤若しくはカプセル、注射用の単位用量バイアル又は直腸投与用の坐剤である。単位投与形態としてこのように列記したものは、いかなる形でも限定されるものではなく、単に単位投与形態の製薬業界での代表例を表すにすぎない。本発明の化合物を含む組成物はまた、キットとして存在することもでき、このキットには、活性もしくは非活性成分、担体、希釈剤などであることができる2種以上の成分が、患者又は患者に薬剤を投与する者が実際の剤形を準備するための説明書と共に提供されている。このようなキットには、必要な材料全て及びそれに含まれる成分が提供されていてよく、或いは患者又は患者に薬剤を投与する者が独立して得なければならない材料又は成分の使用又は作製に関する説明書が含まれていてよい。
【0047】
「薬剤として許容される」とは、担体、希釈剤又は賦形剤が製剤のその他の成分と適合するべきであり、それの受容者に対して有害であってはならないことを意味する。
【0048】
化合物の「投与」又は化合物を「投与する」という用語は、錠剤、カプセル、シロップ、懸濁液などの経口用剤形、IV、IM又はIPなどの注射用剤形;クリーム、ゼリー、粉剤又は貼付剤を含む経皮剤形;口腔剤形;吸入用粉剤、噴霧剤、懸濁液など;及び直腸坐剤などを含むがこれらに限定はしない、治療上有用な形態及び治療上有効な量で個体の身体に導入することができる形態で、治療を必要とする個体に対して本発明の化合物を提供することを意味するものと理解すべきである。「治療上有効量」という用語は、適切な組成及び適切な剤形中における本発明の化合物の、記載した疾患状態を治療又は予防するのに十分な量を意味する。
【0049】
本発明の化合物は、本発明のタキキニン及びサブスタンスP阻害剤に対して補助的な効果を有する他の物質と併用して投与することができる。したがって、嘔吐の予防又は治療において、本発明の化合物は、他の制吐薬、特にオンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、パレノセトロン及びザチセトロンなどの5HT受容体拮抗薬、デキサメサゾンなどのコルチコステロイド又はバクロフェンなどのGABAβ受容体作働薬と併用することができる。同様に、片頭痛の予防又は治療において、本発明の化合物は、エルゴタミン類又は5HT作働薬などの他の抗片頭痛薬、特にスマトリプタン、ナラトリプタン、ゾルマトリプタン(zolmatriptan)又はリザトリプタンと併用することができる。
【0050】
抑鬱又は不安の治療において、本発明の化合物は、ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(MAOI)、モノアミンオキシダーゼの可逆性阻害薬(RIMA)、セロトニン及びノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、α−アドレナリン受容体拮抗薬、非定型抗抑鬱薬、ベンゾジアゼピン、5−HT1A作動薬又は拮抗薬、特に5−HT1A部分的作動薬、コルチコトロピン放出因子(CRF)拮抗薬及びこれらの薬剤として許容される塩などの他の抗鬱薬又は抗不安薬と併用することが可能であることは明らかである。肥満、神経性過食症及び強迫性摂食障害を含む摂食障害の治療又は予防においては、本発明の化合物を他の食欲抑制剤と併用することができる。疼痛又は侵害受容又は炎症疾患の治療もしくは予防の場合、本発明の化合物は、オピエート作働薬などの抗炎症薬若しくは鎮痛剤、5−リポオキシゲナーゼ阻害薬などのリポオキシゲナーゼ阻害薬、シクロオキシゲナーゼ−2阻害薬などのシクロオキシゲナーゼ阻害薬、インターロイキン−1阻害薬などのインターロイキン阻害薬、NMDA拮抗薬、一酸化窒素阻害薬若しくは一酸化窒素合成阻害薬、非ステロイド系抗炎症剤又はサイトカイン抑制抗炎症剤と併用可能であることは理解される。
【0051】
本明細書に記載の組み合わせを使用する場合は、本発明の化合物及びその他の活性薬剤(類)はいずれも、妥当な期間内に患者に投与されることは明らかである。これらの化合物は、薬剤として許容される同じ担体に入れ、したがって同時に投与することができる。これらは、同時に服用する従来の経口用剤形などの別々の医薬担体に入っていてもよい。「組合わせ」という用語はまた、これら化合物を別個の製剤として提供し、順次投与する場合を意味する。したがって、1例として挙げると、1種の活性成分を錠剤として投与し、その後妥当な時間内に、第2の活性成分を、錠剤又は急速に溶解する経口用剤形などの経口用剤形として投与することができる。「急速に溶解する経口製剤」とは、患者の舌の上に載ったとき、約10秒以内に溶解する経口送達型を意味する。「妥当な期間」とは、約1時間を超えない期間を意味する。すなわち、例えば、第1の活性成分が錠剤として提供される場合、その1時間以内に、第2の活性成分を、同じ種類の剤形で、又はその薬剤の効果的な送達をもたらす別の剤形で投与しなければならない。
【0052】
本発明の化合物は、最適な薬剤効果を提供する投薬量で、このような治療を必要とする患者(ヒト並びに、イヌ、ネコ及びウマなどのペットを含めた動物)に投与することができる。いずれかの特定の適用で使用するのに必要な用量は、選択した特定の化合物又は組成物だけでなく、投与経路、治療対象である状態の性質、患者の年齢及び状態、併用薬剤又は患者が従う特殊な食事療法並びに当業者には明らかな他の因子によっても、患者ごとに変動するものであることは明らかであり、適切な用量は最終的には担当医の裁量によって決められる。
【0053】
過剰のタキキニンに関連する状態の治療においては、本発明の化合物又はその薬剤として許容される塩の適切な投与レベルは、1日約0.001から50mg/kg、特に約0.01から約25mg/kg、例えば1日約0.05から約10mg/kgである。その用量範囲は通常、患者1人当たり1日当たり約0.5から1000mgであり、単回投与又は多回投与で投与することができる。好ましくは、用量範囲は、患者1人当たり1日当たり約0.5mgから500mgで、より好ましくは患者1人当たり1日当たり約0.5mgから200mgであり、さらに好ましくは患者1人当たり1日当たり約5mgから50mgである。投与における本発明の化合物又はその薬剤として許容される塩の具体的な用量には、1mg、5mg、10mg、30mg、100mg及び500mgが含まれる。本発明の医薬組成物は、活性成分約0.5mgから1000mg、より好ましくは活性成分約0.5mgから500mg、又は活性成分0.5mgから250mg、又は活性成分1mgから100mgを含む製剤で提供することができる。過剰のタキキニン類の治療又は予防のための具体的な医薬組成物は、活性成分を約1mg、5mg、10mg、30mg、100mg及び500mg含む。
【0054】
本発明の化合物を調製するためのいくつかの方法は、以下の実施例に例示する。開始材料及び必要な中間体は、場合によって市販されているか、又は文献の方法に従って、又は本明細書で例示したように調製することができる。NMRスペクトルは全て、CDCl若しくはCDODのいずれかで、磁場強度400若しくは500MHzの機器によって得ることができ、化学シフトはδで報告した。HPLC/MS分析は、Waters Micromass ZQ質量分析器を組合わせたAgilent 1100シリーズHPLCを使用して得られた。HPLC RPカラムは、Waters Exterra MS−C18(5μm)3.0x50nmカラムで、アセトニトリル/水(いずれもTFA0.05%含有)10〜100%勾配で3.75分かけて溶出し、操作時間5.50分であった。UVモニターは、210nMで実施した。滞留時間(Rt)は、MSデータに基づいて分で報告した。報告されたm/e値は、100%イオンが指示したような親イオンでない場合以外は通常親分子イオンであった。調製用キラルHPLCは、指示したChiracel 25x250mmカラムで、指示した割合のイソプロパノール/ヘプタン溶媒混合物で1分当たり9mLで溶出して実施した。滞留時間(Rt)は、210又は254nmでモニターしたUVクロマトグラムに基づいて分で報告した。
【実施例】
【0055】
(実施例1)
tert−ブチル(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−カルボキシレート
ステップA:tert−ブチル3−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピペリジン−1−カルボキシレート
アルゴンを充填したバルーンを装着した丸底フラスコに、N−BOC4−ピペリドン5.0g(25.1mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド2.89g(30.1mmol)、酢酸パラジウム0.056g(0.30mmol)及び2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’−メチルビフェニル0.183g(0.5mmol)を添加した。THF150mLを添加し、次いで4−フルオロ−1−ブロモベンゼンを添加した。排気/アルゴン置換を5回繰り返した後、反応物を80℃で24時間加熱した。周囲温度まで冷却した後、この反応混合物を塩化アンモニウムの飽和(水)溶液で反応停止し、セライトのパッドで濾過し、このパッドを多量の酢酸エチルで洗浄した。層を分離した後、有機層を食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮し、シリカゲル(1〜15%EtOAc/ヘキサン直線勾配、次いで15%EtOAc/ヘキサン)で精製した。これによって表題化合物が得られた。H−NMR(CDCl):δ1.53(s、9H)、2.54〜2.64(m、2H)、3.40〜3.60(m、2H)、3.64〜3.76(m、1H)、4.18〜4.40(m、2H)、7.07(dd、2H、J=9,9Hz)、7.17(dd、2H、J=6,9Hz)ppm。
【0056】
ステップB:トランス−tert−ブチル3−(4−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシピペリジン−1−カルボキシレート
ジエチルエーテル200mLに溶かしたステップAのケトン4.61g(15.7mmol)の冷却(−78℃)溶液に、LAHの1.0M溶液(THF溶液)を添加した。この反応物を室温で7時間撹拌し、その時点でHO(0.72mL)、NaOH 5N(0.72mL)及びHO(2.16mL)を次々と添加することによって反応を停止させた。この混合物を一晩で周囲温度まで温めた。次に、この反応混合物をセライトのパッドで濾過し、大量のEtOAcで洗浄し、真空中で濃縮して、粗残渣をシリカゲルで精製して(10から40%EtOAc/ヘキサンの直線勾配で溶出)、より極性の高いトランス−ジアステレオマーを得た。或いは、この粗残渣を20%EtOAc/ヘキサンで再結晶化して、純粋なトランス−ジアステレオマーを得た。H−NMR(CDCl):δ1.50(s、9H)、2.05〜2.12(m、1H)、2.58〜2.66(m、1H)、2.70〜3.00(m、3H)、3.85(ddd、1H、J=5,11、11Hz)、4.00〜4.30(m、2H)、7.05〜7.12(m、2H)、7.24〜7.30(m、2H)ppm。
【0057】
ステップC:(1S)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル2,2,2−トリクロロエタンイミド酸
窒素雰囲気下で乾燥ジエチルエーテル200mLに溶かした(1S)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタノール25.82g(100mmol)の溶液を氷水槽で冷却した。DBU正味3mL(20mmol、0.2当量)を反応フラスコに添加し、次いでこの混合物を0℃で10分間撹拌した。トリクロロアセトニトリル15mL(150mmol、1.5当量)を15分かけてゆっくり滴下して添加した。この反応物を0℃で2時間撹拌し、その間に色は暗黄色になった。真空下で冷却槽(<35℃)を使用して揮発物を除去し、淡褐色の移動液体を得て、これをシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(3”×10”パッド)によって、ヘキサン/EtOAc(9/1)、次いでヘキサン/EtOAc(4/1)の2つのバッチで溶出して精製した。生成物画分を一緒にして、真空下で溶媒を除去し、表題化合物を淡黄色油状物として得た。H−NMR(CDCl):δ:1.74(d、3H、6.5Hz)、6.07(q、1H、6.5Hz)、7.82(s、1H)、7.86(s、2H)、8.40(br.s、1H)ppm。
【0058】
ステップD:tert−ブチル(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−カルボキシレート
クロロヘキサン−1,2−ジクロロエタンの2:1混合物(360mL)に溶かしたステップBのトランス−ラセミアルコール(30.05mmol)9.0gの冷却溶液(−5℃)に、(1S)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル−2,2,2−トリクロロエタンイミド酸24.53g(61.0mmol)次いで(ジエチルエーテルに溶かした)HBF54%(0.5mL)を添加した。18時間後、さらにHBF 0.5mLを添加し、この反応を−5℃でさらに6時間維持し、その時点で反応混合物をEtOAcで希釈した。有機物をNaHCO飽和溶液、食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。粗残渣をシリカゲル(1から15%EtOAc/ヘキサンの直線勾配を使用して溶出)で精製した。これによって、所望するジアステレオマー及び開始アルコールがもたらされた。H−NMR(CDCl):δ1.35(d、3H、J=7Hz)、1.50(s、9H)、1.56〜1.64(m、1H)、2.16〜2.24(m、1H)、2.66〜2.90(m、3H)、3.39(ddd、1H、J=5、11、11Hz)、3.90〜4.40(m、2H)、4.54(q、1H、J=7Hz)、6.92(dd、2H、J=9,9Hz),7.01(dd、2H、J=6,9Hz)、7.30(s、2H)、7.73(s、1H)ppm。
【0059】
ステップD:(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジニウムクロリド
ステップCから得られたN−BOC保護ピペリジン2.5g(4.66mmol)をEtOAc10mLに溶かした溶液に、HCl飽和溶液(EtOAc溶液)を添加した。この溶液を3時間放置し、その時点で揮発物を真空中で除去した。純度を高めるために、この粗塩をジエチルエーテルで磨砕した。遊離塩基型を得るために、HCl塩をDCMに懸濁して、NaHCOの飽和溶液で処理した。水層をDCMで抽出した。一緒にした有機層をNaSOで乾燥し、濾過して、真空中で濃縮し、粗残渣をシリカゲル(10%メタノール/DCM)で精製し、表題化合物の遊離塩基型(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン)を得た。H−NMR(CDOD):δ1.29(d、3H、J=7Hz)、1.53(dddd、1H、J=5,13、13、13Hz)、2.30〜2.37(m、1H)、2.55〜2.70(m、3H)、2.90〜2.95(m、1H)、3.47(ddd、1H、J=5、11、11Hz)、4.69(q、1H、J=7Hz)、6.84(dd、2H、J=9、9Hz)、7.03(dd、2H、J=6、9Hz)、7.41(s、2H)、7.73(s、1H)ppm。
【0060】
(実施例2)
3−[(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]シクロペント−2−エン−1−オン
ステップ1Dの中間体(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン)のラセミ混合物0.10g(0.23mmol)から開始して、1,3−シクロペンタンジオン0.028g(0.28mmol)及びp−トルエンスルホン酸0.005gを添加して、トルエン5mLに溶解した。この反応混合物を還流するまで加熱した。冷却後、この混合物をNaHCOの飽和(水)溶液で反応停止した。水層をDCMで数回抽出した。揮発物を真空中で除去し、粗残渣をシリカゲル(10%メタノール/DCMで溶出)で精製した。エナンチオマーを、CHIRACEL ASカラムを使用し、ヘキサン/EtOH(8/2)で溶出したキラルHPLCで分離して、第1溶出異性体(E1)及び第2溶出異性体(E2)を得た。MS:E1(MH)516、E2(MH)516。
【0061】
(実施例3)
3−[(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]−2−メチルシクロペント−2−エン−1−オン
この表題化合物は、実施例2ステップAで使用した方法によって、実施例1ステップD(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン)の中間体から調製した。MS:(MH)530。
【0062】
(実施例3B)
4−(4−{[(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]メチル}ピペリジン−1−イル)ピリミジン
ステップA:メチル1−(2−クロロピリミジン−4−イル)ピペリジン−4−カルボキシレート
メチルピペリジン−4−カルボキシレート1.43g(10mmol)を、メタノール50mL中で2,4−ジクロロピリミジン2.01g(13.5mmol)及びトリエチルアミン3.04gと混合した。この反応物を80℃で24時間加熱した。揮発物を真空中で除去し、粗残渣をシリカゲルから40〜60%EtOAc/ヘキサンの直線勾配で溶出して精製した。これによって表題化合物が得られた。H−NMR(CDCl):δ1.72〜1.82(m、2H)、2.00〜2.07(m、2H)、2.65(tt、1H、J=4、11Hz)、3.14(ddd、2H、J=3、11、14Hz)、3.74(s、3H)、4.22(bs、2H)、6.42(d、1H、J=7Hz)、8.05(d、1H、J=7Hz)ppm。
【0063】
ステップB:メチル−1−ピリミジン−4−イルピペリジン−4−カルボキシレート
実施例11ステップAの中間体(1.8g、7.06mmol)を10%Pd/炭素400mgと一緒にして、メタノール20mLに懸濁した。このフラスコに水素充填バルーンを装着した3方コックを装備した。排出/水素フラッシングを数回繰り返した後、反応物を水素1気圧下で2時間撹拌した。この混合物をセライトのパッドで濾過し、このパッドを多量のメタノールで洗浄した。揮発物を真空中で除去し、粗固形物をジエチルエーテルで高純度まで磨砕した。これによって表題化合物が得られた。H−NMR(CDCl):δ1.90〜2.00(m、1H)、2.13(dd、1H、J=2、11Hz)、2.78(dddd、1H、J=5、5、9、9Hz)、3.48(dd、2H、J=11、11Hz)、3.74(s、3H)、3.90〜4.20(m、1H)、4.60〜5.0(m、1H)、6.89(d、1H、J=8Hz)、8.24d、1H、J=8Hz)、8.62(s、1H)。
【0064】
ステップC:1−ピリミジン−4−イルピペリジン−4−カルボアルデヒド
実施例11ステップBで得られた中間体(825mg、3.75mmol)をDCM10mlに溶解し、この溶液を−78℃に冷却し、次いでDIBAL−Hの1.0M溶液(トルエン溶液)をゆっくり滴下によって添加した。20分後、この溶液を0℃まで温め、2時間維持した。その後、この反応をNaHCOの水溶液で停止し、2時間撹拌した。この反応混合物をセライトのパッドで濾過し、多量のDCMで洗浄した。有機混合物を食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。粗残渣をシリカゲルで精製し、EtOAcで溶出した。これによって表題化合物21mgがもたらされた。H−NMR(CDCl):δ1.71(dddd、2H、J=5、10、10、14Hz)、2.05(dddd、2H、J=4、4、4、14Hz)、2.61(dddd、1H、J=5、5、10、10Hz)、3.23(ddd、2H、J=3、10、13Hz)、4.26(d、2H、J=13Hz)、6.54(d、1H、J=6Hz)、8.23(d、1H、J=6Hz)、8.63(s、1H)、9.74(s、1H)ppm。
【0065】
ステップD:4−(4−{[(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]メチル}ピペリジン−1−イル)ピリミジン
実施例1ステップEの中間体の遊離塩基型(106mg、0.2442mmol)をTHF5mlに溶かした実施例11ステップCから得られた中間体55mg(0.3053mmol)と一緒にして、次いで実施例10ステップAで説明した一般的方法に従ってチタンイソプロポキシド(IV)97mg(0.10mmol)を滴下した。これによって表題化合物が得られた。H−NMR(CDOD):δ1.34(d、3H、J=7Hz)、1.34〜1.50(m、1H)、2.00〜2.20(m、2H)、2.32〜2.42(m、1H)、2.64(bd、1H、J=12Hz)、3.08〜3.30(m、5H)、3.37(bt、1H、J=8Hz)、3.66〜3.74(m、1H)、3.82(bd、1H、J=12Hz)、4.28(d、1H、J=14Hz)、4.73(q、1H、J=7Hz)、5.17(d、1H、J=14Hz)、6.94(dd、2H、J=9、9Hz)、7.10〜7.20(m、3H)、7.43(s、2H)、7.78(s、1H)、8.15(dd、1H、J=2,8Hz)、8.66(s、1H)ppm。MS:(MH)611。
【0066】
(実施例4)
(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1−[シス−4−(4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル)シクロヘキシル]ピペリジン及び(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1−{[トランス−4−(4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル)シクロヘキシル]ピペリジン
ステップA:トランス−4−(4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル)シクロヘキサノール
トランス−4−アミノシクロヘキサノール(2.2g、19.1mmol)、N’−[(1E)−(ジメチルアミノ)メチレン]−N,N−ジメチルヒドラゾノホルムアミド0.xxxg(xxxmmol)及びp−トルエンスルホン酸xxxmg。試薬をトルエン15mLに溶解し、112℃まで24時間加熱した。周囲温度まで冷却して、生じた白色の沈殿物をフリット漏斗で収集し、多量のトルエン/ヘキサン(1:1)で洗浄した。トランス−4−アミノシクロヘキサノール(2.2g、19.1mmol)を実施例4ステップBで説明した一般的条件下で反応させた。これによって表題化合物が得られた。H−NMR(CDOD):δ1.48(dddd、2H、J=4、4、14、14Hz)、1.86(dddd、2H、J=4、4、13、13Hz)、2.04〜2.20(m、4H)、3.68(dddd、1H、J=4、4、11、11Hz)、4.24(dddd、1H、J=4、4、12、12Hz)8.61(s、2H)ppm。
【0067】
ステップB:4−(4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル)シクロヘキサノン
実施例4ステップAで得られた中間体(500mg、2.994mmol)をDCM20mlに溶解し、デス−マーチンペルヨージナン1.53g(3.593mmol)で処理した。3時間後、揮発物を真空中で除去し、粗残渣をシリカゲルで精製し、1〜10%メタノール/DCM(勾配溶出)で溶出した。これによって表題化合物が得られた。H−NMR(CDCl):δ2.20〜2.32(m、2H)、2.50〜2.70(m、6H)、4.64(dddd、1H、J=3、3、12、12Hz)8.32(s、2H)ppm。
【0068】
ステップC:tert−ブチル(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1,3−ビピペリジン−1’−カルボキシレート
実施例1ステップEの中間体の遊離塩基型(100mg、0.2312mmol)を1,2−ジクロロエタン5mL中でtert−ブチル−4−(4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル)シクロヘキサノン42mg(0.2554mmol)と一緒にして、次いで酢酸1滴及びトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム98mg(0.4624mmol)を次々と添加した。この反応をNaHCOの飽和溶液で停止した。20分後、水層をEtOAcで数回抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。粗残渣をシリカゲルプレートで精製し、5%メタノール/DCMで数回溶出した。速く移動する成分をシス異性体と同定し、遅く移動する成分をトランス異性体と同定した。シス異性体のH−NMR(CDOD):δ1.29(d、3H J=7Hz)、1.50〜1.82(m、5H)、1.88〜1.98(m、2H)、2.10〜2.20(m、2H)、2.22〜2.36(m、3H)、2.38〜2.44(m、1H)、2.83(ddd、1H、J=4,4,12Hz)、2.95(ddd、1H、J=8,8,12Hz)、3.14〜3.24(m、2H)、3.32〜3.40(m、2H)、4.36(dddd、1H、J=4,4,8,8Hz)、4.70(q、1H、J=7Hz)、6.86(dd、2H、J=9,9Hz)、7.05(dd、2H、J=6,9Hz)、7.41(s、2H)、7.74(s、1H)、8.67(2H)ppm。MS:(MH)585、トランス異性体のH−NMR(CDOD):□□□□J=7Hz)、1.52(dddd、2H、J=3、3、13、13Hz)、1.67(dddd、1H、J=4、4、11、11Hz)、1.80(dddd、2H、J=4、4、12、12Hz)、2.05(dddd、2H、J=3、3、13、13Hz)、2.20(bd、2H、J=13Hz)、2.39(bt、2H、J=11Hz)、2.44(dd、1H、J=3、13Hz)、2.55(dddd、1H、J=3、3、12、12Hz)、2.78〜2.90(m、2H)、3.08(bd、1H、J=11Hz)、4.18(dddd、1H、J=4、4、12、12Hz)、4.70(q、1H、J=7Hz)、6.86(dd、2H、J=9、9Hz)、7.07(dd、2H、J=6、9Hz)、7.42(s、2H)、7.74(s、1H)、8.58(s、2H)ppm。MS:(MH)585。
【0069】
(実施例5)
4−[(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]−1−ピリミジン−4−イルシクロヘキサノール
ステップA:8−(5−ブロモピリミジン−4−イル)−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−8−オール
ジエチルエーテル40mLに溶かしたジイソプロピルアミン4.3mLの溶液に、0℃で(シクロペンタンに溶かした)n−BuLiの2M溶液16mLを添加した。30分後、新たに調製したLDA溶液を、ジエチルエーテル40mLに溶かした5−ブロモピリミジン5g(31mmol)及び1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−8−オン4.9g(31mmol)の溶液にカニューレによって−10℃で移した。2時間後、この反応混合物を水/2N HClの4:1混合物250mLで停止した。水層をジエチルエーテルで数回抽出した。一緒にした有機画分をNaSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。粗残渣をシリカゲルで精製し、10〜50%EtOAc/ヘキサン(勾配溶出)で溶出した。これによって表題化合物が得られた。
【0070】
ステップB:4−(5−ブロモピリミジン−4−イル)−4−ヒドロキシシクロヘキサノン
実施例5ステップAで得られた中間体(150mg、0.47mmol)をアセトニトリル1mlに溶解し、70℃に加熱して、このとき、HO2mLに溶かした硝酸アンモニウムセリウム(644mg、1.20mmol)の溶液。2分間すると褐色が消失し、このとき、この反応物をHOに注いだ。水性混合物をジエチルエーテルで数回抽出した。一緒にした有機画分をNaSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。これによって表題化合物が得られた。
【0071】
ステップC:4−[(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]−1−(5−ブロモピリミジン−4−イル)シクロヘキサノール
実施例1ステップEの中間体のHCl型(40mg、0.0.08mmol)を1,2−ジクロロエタン2mlに懸濁し、次いでジイソプロピルエチルアミン52mg(0.40mmol)を添加した。数分後、実施例5ステップBの中間体34mg(0.12mmol)及びトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム34mg(0.0.16mmol)を添加した。この反応物を2日間撹拌し、このとき、NaHCOの飽和溶液を添加した。20分後、水層をEtOAcで数回抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。粗残渣をシリカゲルプレートで精製し、5%メタノール/DCMで数回溶出した。速く移動する成分をD1と称し、遅く移動する成分をD2と称した。
【0072】
ステップD:4−[(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]−1−ピリミジン−4−イルシクロヘキサノール
実施例5ステップCの中間体(D1)(10mg、7.06mmol)を10%Pd/炭素2mgと一緒にして、メタノール1mL及びトリエチルアミン(7.8mg、0.08mmol)に懸濁した。この反応は、実施例11ステップBで説明したように実施した。これによって表題化合物が得られた。
【0073】
ステップE:4−[(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]−1−ピリミジン−4−イルシクロヘキサノール
実施例5ステップCの中間体(D2)(10mg、7.06mmol)を10%Pd/炭素2mgと一緒にして、メタノール1mL及びトリエチルアミン(7.8mg、0.08mmol)に懸濁した。この反応は、実施例11ステップBで説明したように実施した。これによって表題化合物が得られた。
【0074】
(実施例6)
(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1−[(3S)−3−(4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル)シクロペンチル]ピペリジン
ステップA:tert−ブチル{(1S)−3−[(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]シクロペンチル}カルバマート
1,2−ジクロロエタン2.5mlに溶かした実施例1ステップEの中間体のHCl型(72mg、0.1529mmol)をジイソプロピルエチルアミン98.8mg(0.7645mmol)で処理した。5分後、tert−ブチル[(1S)−3−オキソシクロペンチル]カルバマート35mg(0.1759mmol)及びトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム49mg(0.2293mmol)を添加した。この反応をNaHCOの飽和溶液で停止した。20分後、水層をEtOAcで数回抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。粗残渣をシリカゲルプレートで精製し、EtOAc/アセトニトリル/HO/メタノール70/15/13/2で溶出した。速く移動するジアステレオマーをD1と称し、遅く移動するジアステレオマーをD2と称した。MS:Dl(MH)619;D2(MH)619。
【0075】
ステップB:{(1S)−3−[(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]シクロペンチル}アミン
実施例6ステップAの中間体(D1)をEtOAc2mlに溶解し、次いでEtOAcに溶かしたHClの飽和溶液を過剰に添加した。この反応混合物を周囲温度で3時間放置し、その時点で揮発物を真空中で除去した。粗塩をNaHCOの飽和溶液で処理し、得られた水層をDCMで数回抽出した。一緒にした有機層をNaSOで乾燥し、濾過して、真空中で濃縮し、粗残渣をシリカゲルプレートで精製し、DCM−メタノール9:1で溶出した。これによって表題化合物が得られた。H−NMR(CDOD):δ1.32(d、3H、J=7Hz)、1.82〜1.92(m、1H)、2.00〜2.20(m、4H)、2.60〜2.72(m、2H)、3.18〜3.26(m、3H)、3.46〜3.56(m、2H)、3.60〜3.78(m、4H)、4.71(q、1H、J=7Hz)、6.93(dd、2H、J=9、9Hz)、7.15(dd、2H、J=5、9Hz)、7.41(s、2H)、7.77(s、1H)ppm。MS:(MH)519。
【0076】
ステップC:{(1S)−3−[(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]シクロペンチル}アミン
実施例6ステップAの中間体(D2)を実施例6ステップBで説明した一般的条件下でHClと反応させた。これによって表題化合物が得られた。H−NMR(CDOD):δ1.32(d、3H、J=7Hz)、1.66〜1.76(m、1H)、1.94〜2.06(m、2H)、2.14(ddd、1H、J=5、9、15Hz)、2.32〜2.48(m、3H)、2.62〜2.68(m、1H)、3.16〜3.28(m、3H)、3.46(ddd、1H、J=3、3、9Hz)、3.70(ddd、1H、J=5、11、11Hz)、3.72〜3.78(m、1H)、3.79〜3.86(m、2H)、4.72(q、1H、J=7Hz)、6.93(dd、2H、J=9、9Hz)、7.17(dd、2H、J=6、9Hz)、7.41(s、2H)、7.77(s、1H)ppm。MS:(MH)519。
【0077】
ステップD:(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1’−ピラジン−2−イル−1,3’−ビピペリジン
実施例6ステップBの中間体(20mg、0.0385mmol)を、N’−[(1E)−(ジメチルアミノ)メチレン]−N,N−ジメチルヒドラゾノホルムアミド(22mg、0.1541mmol)と一緒にし、ピリジン1.5mLに溶解した。塩化トリメチルシリル10mgを添加し、この反応混合物を95℃で3時間加熱した。周囲温度まで冷却した後、揮発物を真空中で除去し、粗油状物をシリカゲルプレート(10%メタノール/DCM)で精製した。これによって表題化合物が得られた。H−NMR(CDOD):δ1.32(d、3H、J=7Hz)、1.66〜1.76(m、1H)、1.78〜2.04(m、4H)、2.14〜2.34(m、3H)、2.36〜2.43(m、1H)、2.61(ddd、1H、J=7、7、13Hz)、2.82〜2.90(m、2H)、2.97〜3.20(m、1H)、3.14〜3.21(m、1H)、3.43(ddd、1H、J=5、11、11Hz)、4.68〜4.76(m、2H)、6.89(dd、2H、J=9、9Hz)、7.09(dd、2H、J=5、9Hz)、7.43(s、2H)、7.76(s、1H)、8.67(s、2H)ppm。MS:(MH)571。
【0078】
ステップE:(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1’−ピラジン−2−イル−1,3’−ビピペリジン
実施例6ステップCの中間体(40mg、0.0771mmol)を、N’−[(1E)−(ジメチルアミノ)メチレン]−N,N−ジメチルヒドラゾノホルムアミド(44mg、0.3082mmol)と一緒にし、ピリジン1.5mLに溶解した。塩化トリメチルシリル10mgを添加し、この反応混合物を100℃で15時間加熱した。周囲温度まで冷却した後、揮発物を真空中で除去し、粗油状物を飽和NaHCOで反応停止した。水層をDCMで数回抽出した。一緒にした有機画分を食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。粗残渣を最初にシリカゲルプレートで精製し(EtOAc/アセトニトリル/HO/メタノール70/10/10/10で溶出した)。やや純粋な物質を、逆相HPLCを使用してさらに精製した。これによって表題化合物が得られた。H−NMR(CDOD):δ1.34(d、3H、J=7Hz)、1.84〜2.16(m、3H)、2.38〜2.52(m、2H)、2.54〜2.64(m、2H)、2.64〜2.74(m、1H)、3.04〜3.12(m、1H)、3.22(ddd、2H、J=13、13、13Hz)、3.50〜3.56(m、1H)、3.67(ddd、1H、J=5、11、11Hz)、3.76〜3.86(m、1H)、3.86〜3.98(m、1H)、4.72(q、1H、J=7Hz)、4.98(dddd、1H、J=7、7、7、7Hz)、6.95(dd、2H、J=9、9Hz)、7.14(dd、2H、J=6、9Hz)、7.42(s、2H)、7.79(s、1H)、8.92(s、2H)ppm。MS:(MH)571。
【0079】
(実施例7)
(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1−[(3S)−3−(4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル)シクロペンチル]ピペリジン
ステップA:tert−ブチル{(1R)−3−[(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]シクロペンチル}カルバマート
1,2−ジクロロエタン3.0mLに溶かした実施例1ステップEの中間体のHCl型(77mg、0.1628mmol)をジイソプロピルエチルアミン105.0mg(0.8140mmol)で処理した。5分後、tert−ブチル[(1R)−3−オキソシクロペンチル]カルバマート37mg(0.1872mmol)及びトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム52mg(0.2442mmol)を添加した。この反応をNaHCOの飽和溶液で停止した。20分後、水層をEtOAcで数回抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。粗残渣をシリカゲルプレートで精製し、EtOAc/アセトニトリル/HO/メタノール70/15/13/2で溶出した。これによって、分離不可能なジアステレオマー混合物として表題化合物が得られた。MS:(MH)619。
【0080】
ステップB:{(1R)−3−[(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]シクロペンチル}アミン
実施例7ステップAの中間体を実施例6ステップBで説明した一般的条件下でHClと反応させた。これによって、分離不可能なジアステレオマー混合物として表題化合物が得られた。MS:(MH)519。
【0081】
ステップC:(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1−[(3S)−3−(4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル)シクロペンチル]ピペリジン
実施例7ステップBの中間体(54mg、0.1040mmol)を、N’−[(1E)−(ジメチルアミノ)メチレン]−N,N−ジメチルヒドラゾノホルムアミド(59mg、0.4162mmol)と一緒にし、ピリジン2.0mLに溶解した。塩化トリメチルシリル13.6mgを添加し、この反応混合物を95℃で3時間加熱した。周囲温度まで冷却した後、揮発物を真空中で除去し、粗油状物を飽和NaHCOで反応停止した。水層をDCMで数回抽出した。一緒にした有機画分を食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。粗残渣を、逆相HPLCによって精製した。速く移動する成分をD1と称し、遅く移動する成分をD2と称した。D1 MS:(MH)571、D2(MH)571。
【0082】
表1
表1の化合物は、前述の方法を使用して合成したが、前述の実施例で説明したように適切に置換試薬で置換されている。必要な開始材料は、市販されているか、文献に記載されているか、又は実験上不都合なく有機合成の当業者によって容易に合成された。
【0083】
【表1】



【0084】
本発明は、その特定の実施形態を参照にして説明され、例示されているが、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、方法及びプロトコールの様々な改変、変化、変更、置換、削除又は付加を行うことができることは当業者には明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化1】

(式中、Qは、
(1)水素、
(2)C1〜6アルキル、及び
(3)C1〜6アルキル−OHからなる群から選択され、
は、
(1)シクロペンチル、
(2)シクロヘキシル、及び
(3)シクロペンテノンからなる群から選択され、
1a、R1b及びR1cによって置換されており、R1a、R1b及びR1cは独立して、
(a)水素、
(b)C1〜6アルキル、
(c)(C1〜6アルキル)−フェニル、
(d)(C1〜6アルキル)−ヒドロキシ、
(e)(C1〜6アルキル)−(C1〜4アルコキシ)、
(f)ヒドロキシ、
(g)オキソ、
(h)C1〜6アルコキシ、
(i)フェニル−C1〜3アルコキシ、
(j)フェニル、
(k)−CN、
(l)ハロ、
(m)−NR1010(式中、R及びR10は独立して、
(I)水素、
(II)C1〜6アルキル、
(III)フェニル、
(IV)(C1〜6アルキル)−フェニル、
(V)(C1〜6アルキル)−ヒドロキシ、及び
(VI)(C1〜6アルキル)−(C1〜4アルコキシ)から選択される。)、
(n)−NR−COR10
(o)−NR−CO10
(p)複素環(前記複素環は、
(A)イミダゾリル、
(B)イソオキサゾリル、
(C)オキサジアゾリル、
(D)オキサゾリル、
(E)ピラジニル、
(F)ピラゾリル、
(G)ピリダジニル、
(H)ピリジル、
(I)ピリミジル、
(J)ピロリル、
(K)キノリル、
(L)テトラゾリル、及び
(M)トリアゾリルからなる群から選択され、
前記複素環は、非置換であるか、又はC1〜6アルキル若しくはハロによって置換されている。)、
(q)−シクロペンテノン(非置換であるか、又はC1〜6アルキルによって置換されている。)、
(r)−NR−シクロペンテノン(前記シクロペンテンは、非置換であるか、又はC1〜6アルキルによって置換されている。)、
(s)−CO−NR10
(t)−SO−NR10
(u)−SO−NR10
(v)−COR、及び
(w)−COからなる群から選択され、
、R及びRは独立して、
(1)水素、
(2)C1〜6アルコキシ、
(3)ハロ、
(4)C1〜6アルキル(非置換であるか、又は
(a)ヒドロキシ、
(b)オキソ、
(c)C1〜6アルコキシ、
(d)フェニル−C1〜3アルコキシ、
(e)フェニル、
(f)−CN、
(g)ハロ、
(h)−NR10
(i)−NR−COR10
(j)−NR−CO10
(k)−CO−NR10
(l)−COR
(m)−COから選択された1個又は複数の置換基で置換されている。)、
(5)ヒドロキシ、
(6)−CN、
(7)−CF
(8)−NO
(9)−SR14(R14は水素又はC1〜6アルキルである。)、
(10)−SOR14
(11)−SO14
(12)−NR−COR10
(13)−CO−NR−COR10
(14)−NR10
(15)−NR−CO10
(16)−COR、及び
(17)−COからなる群から選択され、
11、R12及びR13は独立して、
(1)水素、
(2)C1〜6アルキル(非置換であるか、又は
(a)ヒドロキシ、
(b)オキソ、
(c)C1〜6アルコキシ、
(d)フェニル−C1〜3アルコキシ、
(e)フェニル、
(f)−CN、
(g)ハロ、
(h)−NR10
(i)−NR−COR10
(j)−NR−CO10
(k)−CO−NR10
(l)−COR
(m)−COから選択された1個又は複数の置換基で置換されている。)
(3)ハロ、
(4)−CN、
(5)−CF
(6)−NO
(7)ヒドロキシ、
(8)C1〜6アルコキシ、
(9)−COR、及び
(10)−COから選択される。)
並びにその薬剤として許容される塩及びその個々のエナンチオマー及びジアステレオマー。
【請求項2】
式Iaの請求項1に記載の化合物
【化2】

並びにその薬剤として許容される塩及びその個々のエナンチオマー及びジアステレオマー。
【請求項3】
式Ibの請求項2に記載の化合物
【化3】

並びにその薬剤として許容される塩及びその個々のエナンチオマー及びジアステレオマー。
【請求項4】
式Icの請求項3に記載の化合物
【化4】

並びにその薬剤として許容される塩及びその個々のエナンチオマー及びジアステレオマー。
【請求項5】
式Idの請求項3に記載の化合物
【化5】

並びにその薬剤として許容される塩及びその個々のエナンチオマー及びジアステレオマー。
【請求項6】
が、R1a、R1b及びR1cで置換されたシクロペンチルである請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
が、R1a、R1b及びR1cで置換されたシクロヘキシルである請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
1a、R1b及びR1cが独立して
(a)水素、
(b)複素環(前記複素環は、
(A)オキサジアゾリル、
(B)ピラジニル、
(C)ピリジル、
(D)ピリミジル、及び
(E)トリアゾリルからなる群から選択され、
前記複素環は非置換であるか、又はC1〜6アルキル若しくはハロによって置換されている。)、
(c)−シクロペンテノン(非置換であるか、又はC1〜6アルキルによって置換されている。)、
から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
1a、R1b及びR1cの2つは水素であり、R1a、R1b及びR1cの1つは独立して
(a)複素環(前記複素環は、
(A)オキサジアゾリル、
(B)ピラジニル、
(C)ピリジル、
(D)ピリミジル、及び
(E)トリアゾリルからなる群から選択され、
前記複素環は非置換であるか、又はメチル若しくはブロモによって置換されている。)、
(b)−シクロペンテノン(非置換であるか、又はC1〜6アルキルによって置換されている。)、
から選択される請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
、R、及びRが独立して、
(1)水素、及び
(2)−CFからなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
11、R12、及びR13が独立して、
(1)水素、及び
(2)−フルオロからなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
3−[(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]シクロペント−2−エン−1−オン、
3−[(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]−2−エン−1−オン、
4−(4−{[(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]メチル}ピペリジン−1−イル)ピリミジン、
(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1−{シス−4−(4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル)シクロヘキシル]ピペリジン、
(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1−{トランス−4−(4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル)シクロヘキシル]ピペリジン、
4−[(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]−1−ピリミジン−4−イルシクロヘキサノール、
(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1−[(3S)−3−(4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル)シクロペンチル]ピペリジン、
(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1−[(3S)−3−(4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル)シクロペンチル]ピペリジン
からなる群から選択される化合物及びその薬剤として許容される塩。
【請求項13】
不活性担体及び請求項1に記載の化合物又はその薬剤として許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項14】
本発明の化合物又はその薬剤として許容される塩及び医薬担体又は希釈剤を一緒にすることを含む、哺乳類のサブスタンスPの受容体での作用に拮抗するための、又はニューロキニン−1受容体を遮断するための薬剤の製造方法。
【請求項15】
本発明の化合物又はその薬剤として許容される塩及び医薬担体又は希釈剤を一緒にすることを含む、哺乳類のタキキニン過剰に関連した生理学的疾患を治療するための薬剤の製造方法。

【公表番号】特表2008−520725(P2008−520725A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543374(P2007−543374)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/042202
【国際公開番号】WO2006/057977
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】