説明

シクロアルキル置換ピリミジンジアミン化合物およびそれらの用途

本開示は、抗増殖活性を有する2,4−ピリミジンジアミン化合物、これらの化合物を含有する組成物、およびこれらの化合物を使用して細胞増殖を阻止し増殖疾患(例えば、腫瘍形成癌)を治療する方法を提供する。さらに別の局面では、これらの化合物および/または立体異性的に富んだ化合物のプロドラッグを提供する。このようなプロドラッグは、それらのプロドラッグ形状で活性であり得るか、または生理学的条件下もしくは使用条件下にて活性薬剤形状に変換されるまで、不活性であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.関連出願の相互参照)
本願は、35 U.S.C.§119(e)に基づいて、米国特許出願第60/572,534号(これは、2004年5月18日に出願された)、米国特許出願第60/572,507号(これは、2004年5月18日に出願された),米国特許出願第60/580,765号(これは、2004年6月18日に出願された)、米国特許出願第60/628,496号(これは、2004年11月15日に出願された)、米国特許出願第60/628,199号(これは、2004年11月15日に出願された)および米国特許出願第60/650,195号(これは、2005年2月3日に出願された)から優先権を主張しており、これらの開示内容は、それらの全体として、本明細書中で参考として援用されている。
【0002】
(2.分野)
本開示は、抗増殖活性を示す2,4−ピリミジンジアミン化合物、これらの化合物のプロドラッグ、これらの化合物および/またはプロドラッグを合成する中間体および方法、これらの化合物および/またはプロドラッグを含有する医薬組成物、およびこれらの化合物および/またはプロドラッグを種々の状況(例えば、増殖障害(例えば、腫瘍および癌)の治療を含めて)で使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(3.背景)
癌は、異常細胞の制御できない成長および転移に特徴がある群の多様な疾患である。一般に、全ての種類の癌には、細胞の成長および分裂の制御における何らかの異常性が関与している。細胞分裂および/または細胞伝達を調節する経路は、細胞の成長を抑制し制限する際のこれらの調節機構の効果が失われるか迂回されるように、変化する。継続した回数の突然変異および自然淘汰によって、異常細胞の群(これは、一般に、単一の突然変異細胞に起源する)は、追加突然変異を蓄積し、それは、他の細胞よりも選択的に成長上で有利となり、それゆえ、細胞塊において優勢な細胞型に進展する。この突然変異および自然淘汰のプロセスは、多くの種類の癌細胞により示される遺伝的な不安定性、体細胞の突然変異または生殖系列に由来の遺伝のいずれかによって獲得される不安定性により、高められる。癌細胞の変異性が高められると、それらが悪性細胞の形成に向かって進展する可能性が高まる。癌細胞がさらに発生するにつれて、一部は、局所的に侵襲性となり、次いで、最初の癌細胞組織以外の組織をコロナイズするように転移する。腫瘍細胞の異質性と共に、この性質によって、癌は、治療し根絶するのが特に困難な病気となっている。
【0004】
伝統的な癌の治療は、癌細胞の高い増殖能力およびそれらのDNA損傷に対する高い感受性を利用している。電離放射線(γ線、X線を含めて)および細胞毒性剤(例えば、ブレオマイシン、シスプラチン、ビンブラスチン、シクロホスファミド、5’−フルオロウラシルおよびメトトレキセート)は、DNAに対する一般的な損傷および染色体構造の不安定化(これらは、最終的に、癌細胞の破壊に至る)に頼っている。これらの治療は、細胞分裂周期のチェックポイントにおいて欠陥を有する種類の癌に、特に有効であり、それは、これらの細胞が細胞分裂を受ける前に損傷したDNAを修復する能力を制限する。しかしながら、これらの治療の非選択的な性質により、しばしば、身体を衰弱させる激しい副作用が起こる。これらの薬剤を全身的に使用すると、通常は健康な臓器および組織を損傷し得、患者の長期的な健康を損ない得る。
【0005】
いかにして癌細胞が発生するかという知見に基づいて、さらに選択的な化学療法(例えば、抗エストロゲン化合物であるタモキシフェン)が開発されているものの、全ての化学療法の有効性は、これらの薬剤に対する耐性の発生に晒される。特に、細胞膜結合輸送体(例えば、MdrI)の発現が高まると、その細胞からの薬剤の流出が高まることに特徴がある多剤耐性表現型が生じる。癌細胞によるこれらの種類の適応によって、特定の種類の化学療法の有効性が制限される。結果的に、増殖疾患の異質性を攻撃し他の化合物を使う療法の過程で発生し得る耐性を克服するのに有効な療法を確立するために、他の化学療法薬を識別することが重要である。さらに、異なる特性および細胞標的を有し得る化学療法薬を組み合わせて使用すると、化学療法の有効性が高まり、薬剤耐性の発生が制限される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(4.要旨)
1局面では、本開示は、生物活性(例えば、インビトロアッセイにおいて、多数の種類の癌細胞の増殖を阻止する性能)を示す2,4−ピリミジンジアミン化合物を提供する。これらの化合物は、一般に、構造式(I)に従った2,4−ピリミジンジアミン(それらの塩、水和物、溶媒和物およびN−オキシドを含めて)を含む:
【0007】
【化11】

構造式(I)の化合物において、Rは、アミドまたはエステルR置換基を含む飽和または不飽和で必要に応じて架橋したシクロアルキルを表わすものの、このシクロアルキル環が2個またはそれ以上の架橋炭素原子を含むかまたは不飽和である場合、このR置換基は、任意である。このR置換基は、このシクロアルキル環の任意の炭素原子(橋頭または架橋炭素原子を含めて)で位置できる。いくつかの実施態様では、このR置換基は、このシクロアルキル環を分子の残りに結合する炭素原子に位置している。いくつかの実施態様では、この置換基は、このシクロアルキル環を分子の残りに結合する炭素原子に隣接した炭素原子、またはその次の最も近いものに位置している。
【0008】
基の性質は、広く変えることができる。例えば、R基は、必要に応じて置換したアリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル基であり得る。いくつかの実施態様では、Rは、1個〜3個の同一または異なる置換基を含むフェニル基である。これらの置換基は、事実上任意の置換基から選択でき、これには、分枝、直鎖または環状アルキル、単環式または多環式アリール、分枝、直鎖または環状ヘテロアルキル、単環式または多環式ヘテロアリール、ハロ、分枝、直鎖または環状ハロアルキル、ヒドロキシル、オキソ、チオキソ、分枝、直鎖または環状アルコキシ、分枝、直鎖または環状ハロアルコキシ、トリフルオロメトキシ、単環式または多環式アリールオキシ、単環式または多環式ヘテロアリールオキシ、エーテル、アルコール、スルフィド、チオエーテル、スルファニル(チオール)、イミン、アゾ、アジド、アミン(第一級、第二級および第三級)、ニトリル(任意の異性体)、シアネート(任意の異性体)、イソシアネート(任意の異性体)、ニトロソ、ニトロ、ジアゾ、スルホキシド、スルホニル、スルホン酸、スルファミド、スルホンアミド、スルファミン酸エステル、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、アミジン、ホルムアミド、アミノ酸、アセチレン、カーバメート、ラクトン、ラクタム、グルコシド、グルコヌリド(gluconuride)、スルホン、ケタール、アセタール、チオケタール、オキシム、オキサミン酸、オキサミン酸エステルなど、およびこれらの基の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。反応性官能基を持つ置換基は、当該技術分野で周知であるように、保護または非保護であり得る。いくつかの実施態様では、これらの置換基の少なくとも1個は、水可溶化基である。
【0009】
は、水素、必要に応じて置換した低級アルキル基または電気陰性基である。この2,4−ピリミジンジアミン化合物をR位置で置換するのに適当な典型的な電気陰性基には、シアノ(−CN)、イソニトリル(−NC)、ニトロ(−NO)、ハロ、ブロモ、クロロ、フルオロ、(C〜C)ハロアルキル、(C〜C)パーハロアルキル、(C〜C)フルオロアルキル、(C〜C)パーフルオロアルキル、−CF、(C〜C)ハロアルコキシ、(C〜C)パーハロアルコキシ、(C〜C)フルオロアルコキシ、(C〜C)パーフルオロアルコキシ、−OCF、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)CFおよび−C(O)OCFが挙げられるが、これらに限定されない。
【0010】
当業者が理解するように、R環は、キラル中心を含むことができる。例えば、R環を分子の残りに連結する炭素原子およびR置換基を含む炭素原子は、キラル中心を含むことができる。もし、R環が、例えば、非等価架橋を含むなら、その橋頭炭素原子もまた、キラル中心を含むことができる。これらの(および他の)キラル中心の結果として、この2,4−ピリミジンジアミン化合物は、ラセミ形状または富化(enriched)形状で、種々のジアステレオマーを含むことができる。例えば、R環が、このシクロアルキル環を分子の残りに結合する炭素原子に隣接した炭素原子上でR置換基を含む未架橋飽和または不飽和シクロアルキル環であるとき、式(I)の化合物には、2種のラセミ化合物、すなわち、シスラセミ化合物およびトランスラセミ化合物が挙げられ、これらは、一緒になって、以下の構造式(IIa)〜(IId)で表わされる2種のジアステレオマーを構成する(Rがエステルまたはアミド基であり、そしてRがシクロアルキル環の炭素2に存在し、ピリミジンの4−窒素がシクロアルキル環の炭素1に存在していると仮定して決定された絶対的な立体配置の割り当て):
【0011】
【化12】

構造(IIa)〜(IId)では、R置換基を含む図示された環は、任意の低級未架橋飽和または不飽和シクロアルキル環であり得る。さらに、R置換基は、特定の位置で図示されているものの、他の位置にあり得る。
【0012】
が、エキソ−エンド相対位置を可能にする架橋と、このシクロアルキル環を分子の残りに結合する炭素原子に隣接する炭素原子上のR置換基とを含む飽和または不飽和架橋シクロアルキルであるとき、式(I)の化合物には、2種のシスラセミ化合物(すなわち、エキソ−エキソおよびエンド−エンド)、および2種のトランスラセミ化合物(すなわち、エキソ−エンドおよびエンド−エキソ)が挙げられる。例えば、Rが、その2位置で分子の残りに結合されたノルボルニルまたはノルボルネニルを含むとき、これらのラセミ化合物は、以下の構造式(IIIa)〜(IIId)で表わされる:
【0013】
【化13】

これらの4種のラセミ化合物は、一緒になって、以下の構造式(IVa)〜(IVh)で表わされる8種のジアステレオマーを構成する(Rがエステルまたはアミド基と仮定して決定された絶対的な立体配置の割り当て):
【0014】
【化14】

構造式(IIIa)〜(IIId)および(IVa)〜(IVh)では、点線を含む結合は、単結合または二重結合であり得る。
【0015】
構造式(IIIa)〜(IIId)のラセミ化合物および構造式(IVa)〜(IVh)のジアステレオマーは、特定の架橋シクロアルキルR環を有して図示されているものの、R環は、事実上任意の飽和または不飽和架橋シクロアルキル(ここで、図示された1−、2−、3−および4−炭素原子に対応する炭素原子は、キラル中心である)であり得ることが理解できるはずである。さらに、図示された環は、特定の架橋位置および単一架橋炭素原子を含むものの、この環は、それより多い架橋原子を含み得、その橋頭炭素原子は、このシクロアルキル環内の異なる位置に位置できる。それに加えて、この環は、追加橋頭および架橋炭素原子(これは、1個より多い架橋を含有する)を含み得る。また、その構造に依存して、この飽和または不飽和架橋シクロアルキルでは、追加キラル中心が存在し得る。
【0016】
シクロアルキル環がシクロペンチルであり、Rが−C(O)NHであり、そしてRが4−(1−メチルピペラジン−4−イル)−3−メチルフェニルである構造式(IIa)〜(IId)に従った化合物について、2種のシス(1S,2R)および(1R,2S)ジアステレオマーとトランス(1R,2R)ジアステレオマーとは、インビトロアッセイにおいて、種々の異なる腫瘍細胞型に対して、抗増殖活性を示すのに対して、トランス(1S,2S)ジアステレオマーは、これらの同じ腫瘍細胞に対して、比較的に不活性であることが発見された。この観察に基づいて、本明細書中で記述した他の2,4−ピリミジンジアミン化合物のシスラセミ化合物と2種のシスジアステレオマーおよびトランスジアステレオマーであって、それぞれ、構造式(IIa)、(IIb)および(IIe)に従って、絶対的な立体化学的配置において、活性シスおよびトランスジアステレオマーに対応するものは、類似の抗増殖活性を示すと予想される。
【0017】
が−C(O)NHであり、そしてRが4−(1−メチルピペラジン−4−イル)−3−メチルフェニルである構造式(IVc)−(IVh)に従った化合物について、両方のシスラセミ化合物は、インビトロアッセイにおいて、腫瘍細胞に対して、著しい抗増殖活性を示す。しかしながら、そのエキソ−エキソラセミ化合物は、そのエンド−エンドラセミ化合物よりも、およそ20倍強力である。さらに、このエキソ−エキソラセミ化合物について、構造式(IVa)に対応する鏡像異性体、すなわち、(1R,2R,3S,4S)ジアステレオマーは、このラセミ化合物の効力に大いに関与しており、対応する鏡像異性体、すなわち、(1S,2S,3R,4R)ジアステレオマー(IVb)よりも、およそ1000倍強力である。この(1R,2R,3S,4S)ジアステレオマーはまた、そのエンド−エンドラセミ化合物((IVc)および(IVd)の混合物)よりも、およそ20〜50倍強力である。
【0018】
この観察に基づいて、本明細書中で記述した他の2,4−ピリミジンジアミン化合物のラセミ化合物およびジアステレオマーであって、絶対的な立体化学的配置において、構造式(IIIa)および(IIIb)のエキソ−エキソおよびエンド−エンドシスラセミ化合物に対応するもの、ならびに構造式(IVa)の(1R,2R,3S,4S)ジアステレオマーに対応するものは、類似の抗増殖活性を示すと予想される。さらに、絶対的な立体化学的配置において、構造式(IVa)のジアステレオマーに対応する任意のジアステレオマーは、これらの他のジアステレオマーと比較したとき、類似の優れた効力を示すと予想される。
【0019】
シクロアルキル環がノルボルニルまたはノルボルネニルであるとき、そのトランスラセミ化合物およびジアステレオマーを合成することは、立体的な束縛が原因で、困難であり得る。しかしながら、架橋シクロアルキル基のトランスジアステレオマーが可能である場合、構造式(IVf)および(IVg)(上記)に対応するジアステレオマーは、抗増殖活性を示すと予想される。
【0020】
それゆえ、別の局面では、本開示は、上記のものに対応する1種またはそれ以上の活性ジアステレオマーに富んだ2,4−ピリミジンジアミン化合物を提供する。いくつかの実施態様では、この立体異性的に富んだ化合物(the stereoisomerically enriched compounds)は、シスラセミ化合物である。特定の実施態様では、この立体異性的に富んだ化合物は、構造式(IIIa)および(IIIb)に対応するエキソ−エキソまたはエンド−エンドシスラセミ化合物である。いくつかの実施態様では、この立体異性的に富んだ化合物は、1種またはそれ以上のシスジアステレオマーである。いくつかの実施態様では、この立体異性的に富んだ化合物は、構造式(IIa)、(IIb)および(IIc)に対応する1種またはそれ以上のジアステレオマーである。特定の実施態様では、この立体異性的に富んだ化合物は、構造式(IIa)、(IIb)または(IIc)に対応するジアステレオマー(これは、他の全てのジアステレオマーを実質的に含まない)である。いくつかの実施態様では、この立体異性的に富んだ化合物は、構造式(IVa)に対応するジアステレオマーに富んでいる。特定の実施態様では、この立体異性的に富んだ化合物は、構造式(IVa)に対応するジアステレオマー(これは、他の全てのジアステレオマーを実質的に含まない)である。
【0021】
さらに別の局面では、これらの化合物および/または立体異性的に富んだ化合物(これらは、総称しで、「化合物」と呼ぶ)のプロドラッグが提供される。このようなプロドラッグは、それらのプロドラッグ形状で活性であり得るか、または生理学的条件下または使用条件下にて活性薬剤形状に変換されるまで、不活性であり得る。これらのプロドラッグにおいて、これらの化合物の1個またはそれ以上の官能基は、プロ部分に含まれ、これらのプロ部分は、使用条件下にて、典型的には、加水分解、酵素開裂またはいくつかの他の開裂機構を経由して、分子から開裂して、これらの官能基を生じる。例えば、第一級または第二級アミノ基は、アミノプロ部分に含まれ得、これらのアミノプロ部分は、使用条件下にて、開裂して、この第一級または第二級アミノ基を生成する。それゆえ、これらのプロドラッグは、これらの化合物の1個またはそれ以上の官能基をマスクする特定の種類の保護基(これは、「プロ基」と称する)を含み、これらの保護基は、使用条件下にて、開裂して、活性薬剤化合物を生じる。これらの化合物内にて、プロ部分に含めるためにプロ基でマスクされ得る官能基には、アミン(第一級および第二級)、ヒドロキシル、スルフィニル(チオール)、カルボキシル、カルボニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。このような官能基をマスクしてプロ部分(これらは、所望の使用条件下にて、開裂可能である)を生じるのに適当な無数のプロ基は、当該技術分野で公知である。これらのプロ基の全ては、単独で、または組み合わせて、これらのプロドラッグに含まれ得る。これらのプロドラッグに含めることができる第一級または第二級アミン基を生じるプロ部分の具体例には、アミド、カーバメート、イミン、尿素、ホスフェニル、ホスホリルおよびスルフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。これらのプロドラッグに含めることができるスルファニル基を生じるプロ部分の具体例には、例えば、S−メチル誘導体(モノチオ、ジチオ、オキシチオ、アミノチオアセチル)、シリルチオエーテル、チオエステル、チオカーボネート、チオカーバメート、非対称ジスルフィドなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらのプロドラッグに含めることができるヒドロキシル基を生じるプロ部分の具体例には、スルホネート、エステル、カーボネート、ホスフェート(ホスホノキシ)、ならびにそれらと有機塩基および金属との塩基が挙げられるが、これらに限定されない。これらのプロドラッグに含めることができるカルボキシル基を生じるプロ部分の具体例には、エステル(シリルエステル、オキサミン酸エステルおよびチオエステルを含めて)、アミドおよびヒドラジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
別の局面では、本開示は、本明細書中で記述した化合物および/またはプロドラッグを合成するのに有用な中間体を提供する。例証的な実施態様では、これらの中間体は、構造式(V)に従った化合物である:
【0023】
【化15】

ここで、RおよびRは、構造式(I)について定義したとおりであり、そしてLGは、脱離基を表わす。適当な脱離基には、四級アンモニウム塩、−S(O)Me、−SMeおよびハロ(例えば、F、Cl、−Br、I)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
特定の実施態様では、脱離基LGは、クロロである。構造式(V)の中間体は、上述の種々のジアステレオマーの1種またはそれ以上に富んだ化合物を合成するのに使用できるように、1種またはそれ以上のジアステレオマーで立体異性的に富み得る。これらの中間体の特定の実施態様では、Rは、
【0025】
【化16】

またはそれらの立体異性的に富んだジアステレオマー(ここで、Rは、−C(O)NHである)ではない。別の特定の実施態様では、この中間体は、出願番号第011/016,403(これは、2004年12月17日に出願された)および/またはUS2004/042971(これは、2004年12月17日に出願された)(これらの開示内容は、本明細書中で参考として援用されている)で記載されたいずれの化合物でもない。
【0026】
さらに別の局面では、本明細書中で記述した1種またはそれ以上の化合物を含有する組成物が提供される。これらの組成物は、一般に、これらの化合物、および/またはそれらのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物および/またはN−オキシドと、適当な担体、賦形剤および/または希釈剤とを含有する。この担体、賦形剤および/または希釈剤の正確な性質は、この組成物の所望の用途に依存しており、また、インビトロ用途で適当または許容できるものから、獣医学用途で適当または許容できるもの、ヒトで使用するのに適当または許容できるものまでの範囲であり得る。
【0027】
本明細書中で記述した化合物は、インビトロアッセイにおいて、異常細胞(例えば、腫瘍細胞)の増殖の強力な阻害剤である。それゆえ、さらに別の局面では、異常細胞(特に、腫瘍細胞)の増殖を阻止する方法が提供される。これらの方法は、一般に、異常細胞(例えば、腫瘍細胞)を、これらの細胞の増殖を阻止するのに有効な量の本明細書中で記述した1種またはそれ以上の化合物、および/またはそれらのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物および/またはN−オキシドと接触させる工程を包含する。これらの細胞は、これらの化合物それ自体と接触できるか、またはこの化合物は、組成物に処方できる。これらの方法は、インビトロ状況で、または増殖障害(例えば、腫瘍形成性の癌)に治療または予防に向けた治療アプローチとして、インビボ状況で、実行され得る。
【0028】
さらに別の局面では、増殖障害を治療する方法が提供される。これらの方法は、獣医学的な状況で動物において、またはヒトにおいて、実行され得る。これらの方法は、一般に、動物またはヒト被験体に、増殖障害を治療または予防するのに有効な量の本明細書中で記述した1種またはそれ以上の化合物、および/またはそれらのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物および/またはN−オキシドを投与する工程を包含する。これらの化合物それ自体が被験体に投与できるか、これらの化合物は、組成物の形状で、投与できる。これらの方法に従って治療できる増殖障害には、腫瘍形成性の癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
本明細書中で記述した化合物はまた、Auroraキナーゼの強力な阻害剤である。Auroraキナーゼは、細胞分裂の重要な制御因子であることが知られている系統の酵素である。いくつかの種類のヒトの癌細胞(例えば、乳癌、大腸癌、腎臓癌、子宮頚癌、神経芽細胞腫、黒色腫、リンパ腫、膵臓癌、膀胱癌および他の種類の固形腫瘍)において、高いレベルのAuroraキナーゼが存在しており(例えば、Bischottら、1998,EMBO J.17:3052−3065;Geopfert & Brinkley,2000,Curr.Top.Dev.Biol.49:331−342;Sakakuraら,,2001,Br.J.Cancer 84:824−831を参照のこと)、Auroraキナーゼの過剰発現は、細胞形質変換(異常細胞が癌になるプロセス)を招くことが明らかとなっている。いずれの特定の作用理論にも束縛するつもりはないものの、本明細書中で記述した化合物だけでなく、それらの活性プロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物および/またはN−オキシドは、1種またはそれ以上のAuroraキナーゼを阻害することにより、それらの抗増殖活性を発揮すると考えられている。
【0030】
それゆえ、さらに別の局面では、Auroraキナーゼの活性を阻害する方法が提供される。これらの方法は、一般に、Auroraキナーゼを、その活性を阻害するのに有効な量の本明細書中で記述した1種またはそれ以上の化合物、および/またはそれらの活性プロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物および/またはN−オキシドと接触させる工程を包含する。これらの方法は、精製または部分精製Auroraキナーゼ酵素(例えば、キナーゼを発現する細胞の抽出物)を使うインビトロ状況で、Auroraキナーゼを発現する無傷細胞を使うインビトロ状況で、またはAuroraキナーゼ媒介プロセス(例えば、細胞有糸分裂)を阻害するインビボ状況で、および/またはAuroraキナーゼ活性により少なくとも部分的に媒介される疾患または障害の治療または予防に向けた治療アプローチとして、実行できる。
【0031】
さらに別の局面では、Auroraキナーゼ媒介疾患または障害を治療または予防する方法が提供される。これらの方法は、一般に、動物またはヒト被験体に、Auroraキナーゼ媒介疾患または障害を治療または予防するのに有効なの量の本明細書中で記述した1種またはそれ以上の化合物、および/またはそれらの活性プロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物および/またはN−オキシドを投与する工程を包含する。Auroraキナーゼ媒介疾患および障害には、Auroraキナーゼ系統の酵素のメンバーが一定の役割を果たす任意の疾患、障害、または他の有害な状態が挙げられる。このようなAuroraキナーゼ媒介疾患または障害の具体例には、例えば、大腸癌、乳癌、胃癌、卵巣癌、子宮頚癌、黒色腫、腎臓癌、前立腺癌、リンパ腫、神経芽細胞腫、膵臓癌および膀胱癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
他の局面には、以下でさらに詳細に記述するように、立体異性的に富んだ化合物およびプロドラッグを合成するのに有用な中間体および方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
(6.詳細な説明)
(6.1 定義)
本明細書中で使用する以下の用語は、以下の意味を有すると解釈される:
「アルキル」とは、単独で、または他の置換基の一部として、親アルカン、アルケンまたはアルキンの単一炭素原子から1個の水素原子を除去することにより誘導された規定数の炭素原子(すなわち、C1〜C6とは、1個〜6個の炭素原子を意味する)を有する飽和または不飽和で直鎖または環状の一価炭化水素ラジカルを意味する。環状アルキルは、0個の橋頭炭素原子あるいは2個またはそれ以上の架橋炭素原子を含有できる。それゆえ、環状アルキルは、単環式、二環式または多環式の構造であり得る。典型的なアルキル基には、メチル;エチル(例えば、エタニル、エテニル、エチニル);プロピル(例えば、プロパン−1−イル、プロパン−2−イル、シクロプロパン−1−イル、プロパ−1−エン−1−イル、プロパ−1−エン−2−イル、プロパ−2−エン−1−イル、シクロプロパ−1−エン−1−イル;シクロプロパ−2−エン−1−イル、プロパ−1−イン−1−イル、プロパ−2−イン−1−イル等);ブチル(例えば、ブタン−1−イル、ブタン−2−イル、2−メチル−プロパン−1−イル、2−メチル−プロパン−2−イル、シクロブタン−1−イル、ブタ−1−エン−1−イル、ブタ−1−エン−2−イル、2−メチル−プロパ−1−エン−1−イル、ブタ−2−エン−1−イル、ブタ−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブタ−1−エン−1−イル、シクロブタ−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1−イン−1−イル、ブタ−1−イン−3−イル、ブタ−3−イン−1−イル等)などが挙げられるが、これらに限定されない。特定レベルの飽和を含むことを意図している場合、以下で定義する「アルカニル」、「アルケニル」および/または「アルキニル」との術語が使用される。「低級アルキル」とは、1個〜8個の炭素原子を含有するアルキル基を意味する。
【0034】
「アルカニル」とは、単独で、または他の置換基の一部として、親アルカンの単一炭素原子から1個の水素原子を除去することにより誘導された飽和または不飽和で直鎖または環状のアルキルを意味する。典型的なアルカニルには、メタニル;エタニル;プロパニル(例えば、プロパン−1−イル、プロパン−2−イル(イソプロピル)、シクロプロパン−1−イル等);ブタニル(例えば、ブタン−1−イル、ブタン−2−イル(第二級ブチル)、2−メチル−プロパン−1−イル(イソブチル)、2−メチル−プロパン−2−イル(t−ブチル)、シクロブタン−1−イル等)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
「アルケニル」とは、単独で、または他の置換基の一部として、親アルケンの単一炭素原子から1個の水素原子を除去することにより誘導された少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有する飽和または不飽和で直鎖または環状のアルキルを意味する。この基は、この二重結合の周りで、シスまたはトランスのいずれかの立体配座であり得る。典型的なアルケニル基には、エテニル;プロペニル(例えば、プロパ−1−エン−1−イル、プロパ−1−エン−2−イル、プロパ−2−エン−1−イル、プロパ−2−エン−2−イル、シクロプロパ−1−エン−1−イル);シクロプロパ−2−エン−1−イル;ブテニル(例えば、ブタ−1−エン−1−イル、ブタ−1−エン−2−イル、2−メチル−プロパ−1−エン−1−イル、ブタ−2−エン−1−イル、ブタ−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブタ−1−エン−1−イル、シクロブタ−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イル等)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
「アルキニル」とは、単独で、または他の置換基の一部として、親アルキンの単一炭素原子から1個の水素原子を除去することにより誘導された少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有する飽和または不飽和で直鎖または環状のアルキルを意味する。典型的なアルキニル基には、エチニル;プロピニル(例えば、プロパ−1−イン−1−イル、プロパ−2−イン−1−イル等);ブチニル(例えば、ブタ−1−イン−1−イル、ブタ−1−イン−3−イル、ブタ−3−イン−1−イル等)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
「アルキルジル」とは、単独で、または他の置換基の一部として、親アルカン、アルケンまたはアルキンの2個の異なる炭素原子の各々から1個の水素原子を除去するか親アルカン、アルケンまたはアルキンの単一の炭素原子から2個の炭素原子を除去することにより誘導された規定数の炭素原子(すなわち、C1〜C6とは、1個〜6個の炭素原子を意味する)を有する飽和または不飽和で直鎖または環状の一価炭化水素基を意味する。その2個の一価ラジカル中心または二価ラジカル中心の各原子価は、同一または異なる原子と結合を形成できる。典型的なアルキルジル基には、メタンジイル;エチルジイル(例えば、エタン−1,1−ジイル、エタン−1,2−ジイル、エテン−1,1−ジイル、エテン−1,2−ジイル);プロピルジイル(例えば、プロパン−1,1−ジイル、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−2、2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、シクロプロパン−1,1−ジイル、シクロプロパン−1,2−ジイル、プロパ−1−エン−1,1−ジイル、プロパ−1−エン−1,2−ジイル、プロパ−2−エン−1,2−ジイル、プロパ−1−エン−1,3−ジイル、シクロプロパ−1−エン−1,2−ジイル、シクロプロパ−2−エン−1,2−ジイル、シクロプロパ−2−エン−1,1−ジイル、プロパ−1−イン−1,3−ジイル等);ブチルジイル(例えば、ブタン−1,1−ジイル、ブタン−1,2−ジイル、ブタン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ブタン−2,2−ジイル、2−メチル−プロパン−1,1−ジイル、2−メチル−プロパン−1,2−ジイル、シクロブタン−1,1−ジイル;シクロブタン−1,2−ジイル、シクロブタン−1,3−ジイル、ブタ−1−エン−1,1−ジイル、ブタ−1−エン−1,2−ジイル、ブタ−1−エン−1,3−ジイル、ブタ−1−エン−1、4−ジイル、2−メチル−プロパ−1−エン−1,1−ジイル、2−メタニリデン−プロパン−1,1−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,1−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,2−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,3−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1、4−ジイル、シクロブタ−1−エン−1,2−ジイル、シクロブタ−1−エン−1,3−ジイル、シクロブタ−2−エン−1,2−ジイル、シクロブタ−1,3−ジエン−1,2−ジイル、シクロブタ−1,3−ジエン−1,3−ジイル、ブタ−1−イン−1,3−ジイル、ブタ−1−イン−1、4−ジイル、ブタ−1,3−ジイン−1、4−ジイル等)などが挙げられるが、これらに限定されない。特定レベルの飽和を含むことを意図している場合、アルカニルジル、アルケニルジルおよび/またはアルキニルジルとの術語が使用される。2個の原子価が同じ炭素原子上にあることを特に意図している場合、「アルキリデン」との術語が使用される。「低級アルキルジル」とは、1個〜8個の炭素原子を含有するアルキルジル基を意味する。いくつかの実施態様では、このアルキルジル基は、そのラジカル中心が末端炭素にある飽和非環式アルカニルジル基(例えば、メタンジイル(メタノ);エタン−1,2−ジイル(エタノ);プロパン−1,3−ジイル(プロパノ);ブタン−1、4−ジイル(ブタン)など(これらはまた、以下で定義するアルキレノとも呼ばれている))である。
【0038】
「アルキレン」とは、単独で、または他の置換基の一部として、直鎖の親アルカン、アルケンまたはアルキンの2個の末端炭素原子の各々から1個の水素原子を除去することにより誘導された2個の末端一価ラジカル中心を有する直鎖の飽和または不飽和アルキルジル基を意味する。特定のアルキレン中の二重結合または三重結合の位置は、もし存在するなら、鍵括弧で示されている。典型的なアルキレン基には、メチレン(メタノ);エチレン(例えば、エタノ、エテノ、エチノ);プロピレン(例えば、プロパノ、プロパ[1]エノ、プロパ[1,2]ジエノ、プロパ[1]イノ等);ブチレン(例えば、ブタノ、ブタ[1]エノ、ブタ[2]エノ、ブタ[1,3]ジエノ、ブタ[1]イノ、ブタ[2]イノ、ブタ[1,3]ジイノ等)などが挙げられるが、これらに限定されない。特定レベルの飽和を含むことを意図している場合、「アルカノ」、「アルケノ」および/または「アルキノ」との術語が使用される。「低級アルキレン」基は、1個〜8個の炭素原子を含有するアルキレン基である。いくつかの実施態様では、このアルキレン基は、直鎖の飽和アルカノ基(例えば、メタノ、エタノ、プロパノ、ブタノなど)である。
【0039】
「シクロアルキル」とは、単独で、または他の置換基の一部として、「アルキル」基の環状型を意味する。シクロアルキル基は、0個の橋頭炭素原子または2個またはそれ以上の架橋炭素原子を含有し得る。それゆえ、シクロアルキルは、橋頭および架橋炭素原子の数に依存して、単環式、二環式または多環式であり得る。0個の橋頭炭素原子を含有するシクロアルキル基は、本明細書中では、「単環式シクロアルキル」または「未架橋シクロアルキル」と呼ぶ。少なくとも2個の橋頭炭素原子および少なくとも1個の架橋炭素原子を含有するシクロアルキルは、本明細書中では、「架橋シクロアルキル」と呼ぶ。2個の橋頭炭素原子を含有する「架橋シクロアルキル」は、本明細書中では、「二環式架橋シクロアルキル」と呼ぶ。2個より多い橋頭炭素原子を含有する「架橋シクロアルキル」は、本明細書中では、「多環式架橋シクロアルキル」と呼ぶ。典型的な未架橋シクロアルキル基には、シクロプロピル;シクロブチル(例えば、シクロブタニルおよびシクロブテニル);シクロペンチル(例えば、シクロペンタニルおよびシクロペンテニル);シクロヘキシル(例えば、シクロヘキサニルおよびシクロヘキセニル)などが挙げられるが、これらに限定されない。典型的な架橋シクロアルキルには、アダマンチル、ノルアダマンチル、ビシクロ[1.1.0]ブタニル、ノルボラニル(ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル)、ノルボルネニル(ビシクロ[2.2.ljヘプタニル)、ノルボルナジエニル(ビシクロ[2.2.1]ヘプタジエニル)、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプタニル、ビシクロ[3.2.1]オクタニル、ビシクロ[3.2.1]オクタニル、ビシクロ[3.2.1]オクタジエニル、ビシクロ[2.2.2]オクタニル、ビシクロ[2.2.2]オクテニル、ビシクロ[2.2.2]オクタジエニル、ビシクロ[5、2、0]ノナニル、ビシクロ[4.3.2]ウンデカニル、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。特定のレベルの飽和が意図される場合、シクロアルカニルおよびシクロアルケニルとの術語が使用される。「低級」未架橋シクロアルキルは、3個〜8個の炭素原子を含有する。「低級」架橋シクロアルキルは、5個〜16個の炭素原子を含有する。
【0040】
「親芳香環系」とは、共役π電子系を有する不飽和で環式または非環式の環系を意味する。具体的には、「親芳香環系」の定義には、環の1個またはそれ以上が芳香族でありかつ環の1個またはそれ以上が飽和または不飽和である縮合環系(例えば、フルオレン、インダン、インデン、フェナレン、テトラヒドロナフタレン等)が含まれる。典型的な親芳香環系には、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ−2,4−ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、テトラヒドロナフタレン、トリフェニレン、トリナフタレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
「アリール」とは、単独で、または他の置換基の一部として、親芳香環系の単一の炭素原子から1個の水素原子を除去することにより誘導された規定数の炭素原子(すなわち、C5〜C15とは、5個〜15個の炭素原子を意味する)を有する一価芳香族炭化水素基を意味する。典型的なアリール基には、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ−2,4−ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどだけでなく、それらの種々のヒドロ異性体から誘導された基が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様では、このアリール基は、(C5〜C15)アリールであり、(C5〜C10)がさらに典型的である。具体例には、フェニルおよびナフチルがある。
【0042】
「ハロゲン」または「ハロ」とは、単独で、または他の置換基の一部として、特に明記しない限り、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
【0043】
「ハロアルキル」とは、単独で、または他の置換基の一部として、その水素原子の1個またはそれ以上をハロゲンで置き換えたアルキル基を意味する。それゆえ、「ハロアルキル」との用語は、モノハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキルなどからパーハロアルキルまでを含むことを意味する。例えば、「(C1〜C2)ハロアルキル」との表現は、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1−フルオロエチル、1,1−ジフルオロエチル、1,2−ジフルオロエチル、1,1,1−トリフルオロエチル、パーフルオロエチルなどを含む。
【0044】
「ヒドロキシアルキル」とは、単独で、または他の置換基の一部として、その水素原子の1個またはそれ以上をヒドロキシル置換基で置き換えたアルキル基を意味する。それゆえ、「ヒドロキシアルキル」との用語は、モノヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、トリヒドロキシアルキルなどを含むことを意味する。
【0045】
上で定義した基は、よく認識された別の置換基を作り出すために通例使用されている接頭辞および/または接尾辞を含み得る。例として、「アルキルオキシ」または「アルコキシ」とは、式−ORの基を意味し、「アルキルアミン」とは、式−NHRの基を意味し、そして「ジアルキルアミン」とは、式−NRRの基を意味し、ここで、各Rは、別個に、アルキルである。他の例として、「ハロアルコキシ」または「ハロアルキルオキシ」とは、式−OR’の基を意味し、ここで、R’は、ハロアルキルである。
【0046】
「プロドラッグ」とは、使用条件(例えば、体内)下にて活性薬剤を放出するように変換を必要とし得る活性化合物(薬剤)の誘導体を意味する。プロドラッグは、しばしば、必ずしもそうではないが、その活性薬剤に変換されるまで、薬理学的に不活性である。プロドラッグは、典型的には、薬剤化合物中の官能基をマスクすることにより得られ、これは、その官能基を放出する特定の使用条件下にて変換(例えば、開裂)を受けるプロ部分を形成するように、それゆえ、この活性薬剤を形成するように、プロ基(以下で定義する)と共に活性に部分的に必要であると考えられている。このプロ部分の開裂は、例えば、加水分解反応を経由して、自発的に進行し得、または、例えば、酵素により、光により、酸または塩基により、または物理的または環境パラメータの変化(例えば、温度変化)またはそれに晒すことにより、触媒または誘発され得る。この薬剤は、使用条件に対して内生的であり得(例えば、そのプロドラッグが投与される細胞内に存在している酵素、または胃の酸性状態)、または外因的に供給され得る。
【0047】
本明細書中で記述した活性な立体異性的に富んだ化合物の官能基をマスクしてプロドラッグを生じるのに適当な種々のプロ基だけでなく、得られたプロ部分は、当該技術分野で周知である。例えば、ヒドロキシル官能基は、スルホネート、エステルまたはカーボネートプロ部分としてマスクされ得、これは、インビボで加水分解されて、水酸基を提供し得る。アミノ官能基は、アミド、カーバメート、イミン、尿素、ホスフェニル、ホスホリルまたはスルフェニルプロ部分としてマスクされ得、これは、インビボで加水分解されて、アミノ基を提供し得る。カルボキシル基は、エステル(シリルエステルおよびチオエステルを含めて)、アミドまたはヒドラジドプロ部分としてマスクされ得、これは、インビボで加水分解されて、カルボキシル基を提供し得る。適当なプロ基およびそれらの各個のプロ部分の他の具体的な例は、当業者に明らかである。
【0048】
「プロ基」とは、活性な立体異性的に富んだ化合物内の官能基をマスクしてプロ部分を形成するのに使用したとき、その薬剤をプロドラッグに変換する種類の保護基を意味する。プロ基は、典型的には、特定の使用条件下にて開裂可能な結合を介して、この薬剤の官能基に結合される。それゆえ、プロ基は、特定の使用条件下にて官能基を放出するように開裂するプロ部分の一部である。特定の例として、式−NH−C(O)CHのアミドプロ部分は、プロ基−C(O)CHを含む。
【0049】
「増殖障害」とは、例えば、細胞がそれらの対応する正常な細胞より多く分裂する場合、異常な細胞増殖に特徴がある疾患または障害を意味する。この異常な細胞増殖は、任意の作用機構または作用機構の組み合わせにより、引き起こされ得る。例えば、1個またはそれ以上の細胞の細胞分裂周期は、細胞がそれらの対応する正常な細胞よりも頻繁に分裂するように影響され得、または、別の例として、1個またはそれ以上の細胞は、抑制信号(これは、通常、それらの分裂数を制限する)を迂回し得る。増殖疾患には、成長が遅いまたは速い腫瘍および癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
「抗増殖性化合物」とは、類似の型の未処理対照細胞と比較して、細胞の増殖を阻止する化合物を意味する。この阻止は、任意の機構または機構の組み合わせにより引き起こされ得、そして細胞増殖抑制的または細胞毒性的に、増殖を阻止するように作動し得る。具体的な例として、本明細書中で使用する阻止には、任意の作用機構(例えば、アポトーシスを含めて)による細胞分裂の停止、細胞が分裂、増殖および/または成長する速度の低下、および/または細胞死の誘発が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
「オーロラキナーゼ」は、一般に「オーロラ」キナーゼ類と呼ばれる、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼのファミリーのメンバーをいう。セリン/トレオニンタンパク質キナーゼのオーロラファミリーは、細胞増殖のために必須である(例えば、BischhoffおよびPlowman,1999,Trends Cell Biol.9:454−459;GietおよびPrigent,1999,J.Cell Science 112:3591−3601;Nigg,2001,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.2:21−32;Adamsら,2001,Trends Cell Biol.11:49−54を参照)。現在、3種の哺乳動物ファミリーメンバーが存在する:オーロラ−A(「2」)、オーロラ−B(「1」)およびオーロラ−C(「3」)(例えば、GietおよびPrigent,1999,J.Cell Sci.112:3591−3601;BischoffおよびPlowman,1999,Trends Cell Biol.9:454−459を参照;これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)。本明細書中で使用される場合、「オーロラキナーゼ」は、これらの3種の既知の哺乳動物ファミリーメンバーのみでなく、後に発見される哺乳動物ファミリーメンバー、ならびに他の種および生物に由来する相同なタンパク質をも含む(他の種および生物に由来するオーロラキナーゼファミリーの相同なメンバーの非限定的な例については、Schumacherら,1998,J.Cell Biol.143:1635−1646;Kimuraら,1997,J.Biol.Chem.272:13766−13771を参照、これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)。
【0052】
「オーロラキナーゼ媒介性プロセス」または「オーロラキナーゼ媒介性疾患もしくはオーロラキナーゼ媒介性障害」は、オーロラキナーゼが役割を果たすところの細胞内プロセス、疾患または障害をいう。オーロラキナーゼ類は、タンパク質リン酸化事象において、細胞周期の分裂期を調節する重要な役割を果たすと考えられる。ヒトオーロラキナーゼは、有糸分裂の間、異なる細胞下局在を示す。例えば、オーロラ−Aは、細胞周期のM期の間アップレギュレートされ、そして有志分裂の間紡錘極に局在する。このことは、中心体機能への関与を示唆している。オーロラ−A活性は前期の間に最大化されるが、オーロラ−Bは、染色分体分離ならびに後期および終期における切断溝(cleavage furrow)の形成の間、重要な役割を果たすと考えられる。オーロラ−Cの役割は、あまり明らかでないが、有糸分裂の間の後期から細胞質分裂まで、中心体に局在することが示されている。さらに、哺乳動物細胞におけるオーロラキナーゼ活性の阻害は、異常細胞増殖および倍数性をもたらす(Teradaら,1998,EMBO J:17:667−676)。従って、オーロラキナーゼ類は、細胞分裂、染色体分離、紡錘体形成および細胞質分裂を調節すると考えられる。本明細書中で使用される場合、これらの種々のプロセスの全ては、「オーロラキナーゼ媒介性プロセス」の範囲内である。
【0053】
さらに、1977におけるその発見以来、哺乳動物オーロラキナーゼファミリーは、腫瘍形成と密接に関連付けられている。その最も説得力のある証拠は、オーロラ−Aの過剰発現が、げっ歯類線維芽細胞を変換させることである(Bischoffら,1998,EMBO J.17:3052−3065)。高いレベルのこのキナーゼを有する細胞は、多数の中心体および多極性の紡錘体を含み、急速に異数体になる。オーロラキナーゼの腫瘍形成活性は、このような遺伝的不安定性の発生に関連している可能性が高い。実際、オーロラ−A遺伝子座の増幅と染色体不安定性との間の相関性が、乳房および胃の腫瘍において観察されている(Miyoshiら,2001,Int.J.Cancer 92:370−373;Sakakuraら,2001,Brit:J.Cancer 84:824−831)。
【0054】
オーロラキナーゼ類は、広範なヒト腫瘍において過剰発現されることが報告されている。オーロラ−Aの発現の上昇は、50%を超える結腸直腸腫瘍(Bischoffら,1998,EMBO J.17:3052−3065;Takahashiら,2000,Jpn.J.Cancer Res.91:1007−1014)、卵巣腫瘍(Gritskoら,2003,Clinical Cancer Research 9:1420−1426)、および胃腫瘍(Sakakura,2001,Brit.J.Cancer 84:824−831)で検出されており、そして94%を超える乳房の侵襲性腺管腺癌(Tanaka,1999,Cancer Research 59:2041−2044)で検出されている。高レベルのオーロラ−Aはまた、腎臓腫瘍細胞株、子宮頚部腫瘍細胞株、神経芽腫細胞株、メラノーマ細胞株、リンパ腫細胞株、膵臓腫瘍細胞株および前立腺腫瘍細胞株においても報告されている(Bischoffら,1998,EMBO J.17:3052−3065;Kimuraら,1999,J.Biol.Chem.274:7334−7340;Zhouら,1998,Nature Genetics 20:189−193;Liら,2003,Clin Cancer Res.9(3):991−7)。オーロラ−Aの増幅/過剰発現は、ヒト膀胱ガンにおいて観察されており、そしてオーロラ−Aの増幅は、倍数性および攻撃的臨床行動に関連する(Senら,2002,J Natl Cancer Inst.94(17):1320−9)。さらに、オーロラ−A遺伝子座(20q13)の増幅は、リンパ節陰性乳ガンを有する患者の予後の悪さと相関する(Isolaら,1995,American Journal of Pathology 147:905−911)。オーロラ−Bは、多数のヒト腫瘍細胞株において高度に発現される。これらの細胞株としては、白血病細胞が挙げられる(Katayamaら,1998,Gene 244:1−7)。この酵素のレベルは、原発性結腸直腸ガンにおけるデュークス段階の関数として上昇する(Katayamaら,1999,J.Nat’l Cancer Inst.91:1160−1162)。通常は生殖細胞にのみ見出されるオーロラ−Cもまた、高い割合の原発性結腸直腸ガンおよび種々の腫瘍細胞株(子宮頚部腺癌細胞および乳房癌腫細胞を含む)において高度に発現される(Kimuraら,1999,J.Biol.Chem.274:7334−7340;Takahashiら,2000,Jpn.J.Cancer Res.91:1007−1014)。
【0055】
対照的に、オーロラキナーゼファミリーは、正常組織の大部分で低レベルで発現される。例外は、高い割合の分裂中の細胞を有する組織(例えば、胸腺および精巣)である(Bischoffら,1998,EMBO J.,17:3052−3065)。増殖性障害においてキナーゼの果たす役割のさらなる総説については、BischhoffおよびPlowman,1999,Trends Cell Biol.9:454−459;GietおよびPrigent,1999,J.Cell Science 112:3591−3601;Nigg,2001,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.2:21−32;Adamsら,2001,Trends Cell Biol.11:49−54ならびにDutertreら,2002,Oncogene 21:6175−6183を参照。
【0056】
ガン細胞によるタンパク質の過剰発現は、抗腫瘍効果を生じるタンパク質活性の阻害を常に表すわけではないが、機能性アッセイにおいて、少なくとも以下の腫瘍細胞型が、オーロラキナーゼ活性の阻害に感受性であることが確認されている:前立腺腫瘍細胞(DU145)、子宮頚部腫瘍細胞(Hela)、膵臓腫瘍細胞(Mia−Paca2、BX−PC3)、組織学的白血病(U937)、肺腺癌細胞、肺類表皮腫瘍細胞、小細胞肺癌細胞、乳房癌腫細胞、腎臓癌腫細胞、MolT3(全て)およびMolt4(全て)。
【0057】
種々のガンにおけるオーロラキナーゼの確率された役割に基づき、「オーロラキナーゼ媒介性疾患およびオーロラキナーゼ媒介性障害」の例としては、メラノーマ、白血病および固形腫瘍ガン(例えば上に列挙したような種々の固形腫瘍)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
「治療的に有効な量」は、特定の障害もしくは疾患、またはその1以上の症状を処置するために十分な化合物の量をいう。腫瘍形成性増殖性障害に関して、治療的に有効な量は、他の中でとりわけ、腫瘍を縮小させるか、もしくは腫瘍の増殖速度を低下させるために、十分な量を含む。
【0059】
多くの状況で、腫瘍形成性増殖障害のための標準的処置は、腫瘍を除去するための外科的介入を、単独でまたは薬物(化学)治療および/または放射線治療と併用して含む。本明細書中で使用される場合、化合物の「治療的に有効な量」は、腫瘍を除去された被験体における腫瘍の再発を予防するか、もしくはそのような被験体における腫瘍の再発速度を遅くする。
【0060】
従って、本明細書中で使用される場合、外科的介入および/または他の抗増殖性薬剤(例えば、5−フルオロウラシル、ビノレルビン、タキソール、ビンブラスチン、シスプラチン、トポテカンなどが挙げられる)のような別の治療型に加えて治療利益をもたらす化合物の量は、「治療的に有効な量」の意味の中に包含される。
【0061】
「予防的に有効な量」は、被験体が特定の障害または疾患を発症することを防ぐために十分な化合物の量をいう。代表的に、予防が実施される被験体は、特定の疾患または障害に罹患していないが、マーカーもしくは家族歴に基づき、この疾患もしくは障害を発症する危険性が高いと認識される。
【0062】
(6.2 化合物)
発明の要旨の項で述べたように、本開示は、無数の有用な生物学的活性(インビトロアッセイにおいて、種々の異なる腫瘍細胞型に対する抗増殖活性を含めて)を有する2,4−ピリミジンジアミン化合物を提供する。例証的な実施態様では、これらの化合物は、構造式(I)に従った2,4−ピリミジンジアミンである:
【0063】
【化17】

該化合物は、それらの活性塩、水和物、溶媒和物およびN−オキシドを含み、ここで:
は、1個またはそれ以上の同一または異なるR基で必要に応じて置換した(C6〜C20)アリール、1個またはそれ以上の同一または異なるR基で必要に応じて置換した5員〜20員ヘテロアリール、1個またはそれ以上の同一または異なるR基で必要に応じて置換した(C7〜C28)アリールアルキル、および1個またはそれ以上の同一または異なるR基で必要に応じて置換した6員〜28員ヘテロアリールアルキルから選択される;
は、水素、1個またはそれ以上の同一または異なるR基で必要に応じて置換した低級アルキル、および電気陰性基から選択される;
は、全体で3個〜16個の炭素原子を含有する飽和または不飽和で架橋または未架橋のシクロアルキル(これは、R基で置換されている)であるが、但し、Rが不飽和未架橋シクロアルキルまたは飽和架橋シクロアルキルであるとき、このR置換基は、任意である;
は、エステルまたはアミド基であり、これは、いくつかの実施態様では、−C(O)ORおよび−C(O)NRから選択される;
各R基は、他のものとは別個に、水可溶化基、R、R、1個またはそれ以上の同一または異なるRおよび/またはR基で必要に応じて置換した低級シクロアルキル、1個またはそれ以上の同一または異なるRおよび/またはR基で必要に応じて置換した低級ヘテロシクロアルキル、1個またはそれ以上の同一または異なるR基で必要に応じて置換した低級アルコキシ、および−O−(CH−Rから選択され、ここで、xは、1〜6の範囲の整数である;
各Rは、他のものとは別個に、水素、低級アルキル、低級シクロアルキル、(C6〜C14)アリール、フェニル、ナフチル、(C7〜C20)アリールアルキルおよびベンジルから選択される;
各Rは、他のものとは別個に、=O、−OR、(C1〜C3)ハロアルキルオキシ、−OCF、=S、−SR、=NR、=NOR、−NR、ハロゲン、−CF、−CN、−NC、−OCN、−SCN、−NO、−NO、=N、−N、−S(O)R、−S(O)、−S(O)OR、−S(O)NR、−S(O)NR、−OS(O)R、−OS(O)、−OS(O)OR、−OS(O)NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(NH)NR、−C(NR)NR、−C(NOH)R、−C(NOH)NR、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(O)NR、−OC(NH)NRおよび−OC(NR)NRから選択される;
各Rは、他のものとは別個に、Rであるか、あるいは、同じ窒素原子に結合された2個のRは、この窒素原子と一緒になって、5員〜8員ヘテロシクロアルキル基を形成し、該ヘテロシクロアルキル基は、必要に応じて、1個〜3個の追加ヘテロ原子基を含み得、該追加ヘテロ原子基は、O、S、N−(CH−R、N−(CH−C(O)R、N−(CH−C(O)OR、N−(CH−S(O)、N−(CH−S(O)ORおよびN−(CH−C(O)NRから選択され、ここで、yは、0〜6の範囲の整数であり、そして、必要に応じて、1個またはそれ以上の同一または異なるRおよび/または低級アルキル置換基を含み得る;そして
各Rは、他のものとは別個に、R、Rおよびキラル補助基から選択される。
【0064】
構造式(I)から分かるように、本明細書中で記述した化合物は、3つの「主な」特徴または部分を含む:(i)必要に応じて置換した飽和または不飽和で架橋または未架橋のシクロアルキル環(置換基R);(ii)必要に応じて5−置換した2,4−ピリミジンジアミン環;および(iii)必要に応じて置換したアリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル部分(置換基R)。これらの3つの主な特徴(それらは、互いに組み合わせることができる)の種々の特定の実施態様は、以下で、さらに詳細に記述する。
【0065】
これらの化合物の多くの実施態様では、そのピリミジンジアミン部分は、5位置で、電気陰性置換基(R置換基)で置換されている。この電気陰性置換基の正確な種類は、重要ではない。それゆえ、このR置換基には、電気陰性特性を有する事実上いずれの置換基も挙げることができる。適当な電気陰性基の具体例には、シアノ(−CN)、イソニトリル(−NC)、ニトロ(−NO)、ハロ(例えば、Br、Cl、F)、(C〜C)ハロアルキル、(C〜C)パーハロアルキル、(C〜C)フルオロアルキル、(C〜C)パーフルオロアルキル、トリフルオロメチル(−CF)、(C〜C)ハロアルコキシ、(C〜C)パーハロアルコキシ、(C〜C)フルオロアルコキシ、(C〜C)パーフルオロアルコキシ、トリフルオロメトキシ(−OCF)、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)CFおよび−C(O)OCFが挙げられるが、これらに限定されず、ここで、Rは、構造式(I)について定義したとおりである。特定の実施態様では、Rは、シアノ、ニトロ、ハロ、ブロモ、クロロ、フルオロ、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシから選択される。別の特定の実施態様では、Rは、フルオロである。
【0066】
置換基または部分は、事実上任意の置換または非置換アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル基を含むことができる。さらに、存在している任意の置換基の性質は、広く変わり得る。必要に応じて置換したアリール、ヘテロアリール、アリールアルキルおよびヘテロアリールアルキルR置換基を有し生物活性を示す多くの2,4−ピリミジンジアミン化合物は、文献で報告されている(例えば、米国出願番号第10/355,543号(これは、2003年1月31日に出願された)(US 2004/0029902)、WO 03/063794、米国出願番号第10/631,029号(これは、2003年7月29日に出願された)、WO 2004/014382、米国出願番号第10/903,263号(これは、2004年7月31日に出願された)、国際出願第PCT/US2004/24716号(これは、2004年7月30日に出願された)、および米国特許第6,235,746号を参照のこと;これらの開示内容は、本明細書中で参考として援用されている)。R置換基の全ては、本明細書中で記述した2,4−ピリミジンジアミン化合物で有用であると予想される。
【0067】
いくつかの実施態様では、R部分は、置換アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリール基であり、ここで、それらの置換基の少なくとも1個は、水可溶化基である。このような水可溶化基は、R部分が著しい疎水性を有するとき、例えば、Rがアリール(例えば、フェニルまたはナフチル)またはアリールアルキル(例えば、ベンジル)であるとき、特に有用である。
【0068】
本明細書中で使用する「水可溶化基」とは、その基を含まない類似化合物と比較したとき、それを含む化合物の水溶性を向上させるか高めるのに十分な親水性を有する基である。この疎水性は、任意の手段により、例えば、使用条件下にてイオン化して荷電部分を形成する官能基(例えば、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、アミンなど);永久的な電荷を含む基(例えば、四級アンモニウム基);および/またはヘテロ原子またはヘテロ原子基(例えば、O、S、N、NH、N−(CH−R、N−(CH−C(O)R、N−(CH−C(O)OR、N−(CH−S(O)、N−(CH−S(O)OR、N−(CH−C(O)NRなどであって、ここで、Rおよびyは、構造式(I)について先に定義したとおりである)を取り込むことにより、達成できる。いくつかの実施態様では、この水可溶化基は、必要に応じて1個〜5個の置換基(これらは、それ自体、水可溶化基である)を含むシクロヘテロアルキルである。特定の実施態様では、この水可溶化基は、次式を有する:
【0069】
【化18】

ここで、Yは、CHおよびNから選択され、Zは、CH、O、S、N、NH、N−(CH−R、N−(CH−C(O)R、N−(CH−C(O)OR、N−(CH−S(O)、N−(CH−S(O)ORおよびN−(CH−C(O)NRから選択され、ここで、R、Rおよび/またはyは、構造式(I)について先に定義したとおりであるが、但し、YおよびZは、それぞれ、両方とも同時にCHおよびCHになることはない。別の特定の実施態様では、この水可溶化基は、モルホリノ、ピペリジニル、(C1〜C6)N−アルキルピペリジニル、N−メチルピペリジニル、ピペラジニル、(C1〜C6)N−アルキルピペラジニル、N−メチルピペラジニル、N−エチルピペリジニル、N−エチルピペラジニル、ピロリジニル、N−アルキルピロリジニル、N−メチルピロリジニル、ジアゼピニル、N−エチルピロリジニル、N−アルキルアゼピニル、N−メチルアゼピニル、N−エチルアゼピニル、ホモピペラジニル、N−メチルホモピペラジニル、N−エチルホモピペラジニル、イミダゾイルなどから選択される。
【0070】
本明細書中で記述した2,4−ピリミジンジアミン化合物の特定の実施態様では、Rは、次式の置換フェニルである:
【0071】
【化19】

ここで、R11、R12またはR13の1個は、水可溶化基であり、そしてR11、R12およびR13の他の2個は、それぞれ、互いに別個に、水素、低級アルキル、(C〜C)アルキル、メチル、ハロ、クロロ、フルオロ、ヒドロキシ、(C〜C)ヒドロキシアルキル、−O(CH−R、−NR、−C(O)NR、−C(O)NHRおよび−C(O)NHCHから選択され、ここで、R、R、Rおよびxは、構造式(I)について先に定義したとおりである.特定の代表的な実施態様では、R11は、水素である;R12は、水可溶化基であり、これは、好ましくは、上記水可溶化基の特定の実施態様のうちの1個から選択される;そしてR12は、メチル、ハロ、クロロ、フルオロ、(C〜C)アルコキシ、−CHORおよび−C(O)NHRから選択され、ここで、Rは、水素、メチルおよび(C〜C)アルキルから選択される。
【0072】
別の特定の代表的な実施態様では、R11は、水素、低級アルキル、−(CH−OH、−OR、−O(CH−R、−O(CH−R、−C(O)OR、ハロ、−CFおよび−OCFから選択される;そしてR12およびR13は、それぞれ、互いに別個に、水素、低級アルキル、−OR、−O(CH−R、−O(CH−R、−NH−C(O)R、ハロ、−CF、−OCF
【0073】
【化20】

から選択され、ここで、R、R、Rおよびxは、構造式(I)について先に定義したとおりであり、そしてYおよびZは、上で定義したとおりである。
【0074】
特定の実施態様では、R11は、水素である;R12は、
【0075】
【化21】

モルホリノ、ピペリジニル、(C〜C)N−アルキルピペリジニル、N−メチルピペリジニル、ピペラジニル、(C〜C)N−アルキルピペラジニル、N−メチルピペラジニル、N−エチルピペリジニル、N−エチルピペラジニル、ピロリジニル、N−アルキルピロリジニル、N−メチルピロリジニル、ジアゼピニル、N−エチルピロリジニル、N−アルキルアゼピニル、N−メチルアゼピニル、N−エチルアゼピニル、ホモピペラジニル、N−メチルホモピペラジニル、N−エチルホモピペラジニルおよびイミダゾイルから選択される;そしてR13は、
【0076】
【化22】

以外のものである。
【0077】
別の特定の実施態様では、R11は、水素である;R12は、
【0078】
【化23】

モルホリノ、ピペリジニル、(C〜C)N−アルキルピペリジニル、N−メチルピペリジニル、ピペラジニル、(C〜C)N−アルキルピペラジニル、N−メチルピペラジニル、N−エチルピペリジニル、N−エチルピペラジニル、ピロリジニル、N−アルキルピロリジニル、N−メチルピロリジニル、ジアゼピニル、N−エチルピロリジニル、N−アルキルアゼピニル、N−メチルアゼピニル、N−エチルアゼピニル、ホモピペラジニル、N−メチルホモピペラジニル、N−エチルホモピペラジニルおよびイミダゾイルから選択される;そしてR13は、水素、メチル、メトキシ、トリフルオロメチルおよびクロロから選択される。
【0079】
さらに別の特定の実施態様では、R11は、水素である;R12は、
【0080】
【化24】

以外のものである;そしてR13は、
【0081】
【化25】

モルホリノ、ピペリジニル、(C〜C)N−アルキルピペリジニル、N−メチルピペリジニル、ピペラジニル、(C〜C)N−アルキルピペラジニル、N−メチルピペラジニル、N−エチルピペリジニル、N−エチルピペラジニル、ピロリジニル、N−アルキルピロリジニル、N−メチルピロリジニル、ジアゼピニル、N−エチルピロリジニル、N−アルキルアゼピニル、N−メチルアゼピニル、N−エチルアゼピニル、ホモピペラジニル、N−メチルホモピペラジニル、N−エチルホモピペラジニルおよびイミダゾイルから選択される。
【0082】
さらに別の特定の実施態様では、R11は、水素である;そしてR12およびR13は、それぞれ、
【0083】
【化26】

以外のものである。
【0084】
さらに別の特定の実施態様では、R11およびR12は、それぞれ、水素であり、そしてR13は、−OCHNHRである。
【0085】
さらに他の実施態様では、R11、R12およびR13は、それぞれ、互いに別個に、水素、メチル、メトキシ、トリフルオロメチルおよびクロロから選択されるが、但し、R11、R12およびR13の少なくとも2個は、水素以外のものである。
【0086】
さらに他の実施態様では、R11は、水素である;R12は、水素、
【0087】
【化27】

モルホリノ、ピペリジニル、(C〜C)N−アルキルピペリジニル、N−メチルピペリジニル、ピペラジニル、(C〜C)N−アルキルピペラジニルおよびN−メチルピペラジニル、N−エチルピペリジニル、N−エチルピペラジニル、ピロリジニル、N−アルキルピロリジニル、N−メチルピロリジニル、ジアゼピニル、N−エチルピロリジニル、N−アルキルアゼピニル、N−メチルアゼピニル、N−エチルアゼピニル、ホモピペラジニル、N−メチルホモピペラジニル、N−エチルホモピペラジニルおよびイミダゾイルから選択される;そしてR13は、水素、低級アルキル、ハロおよび−CFから選択される。特定の実施態様では、R13は、水素、メチル、クロロおよび−CFから選択される。
【0088】
さらに別の特定の実施態様では、R11は、水素である;R12は、水素である;そしてR13は、
【0089】
【化28】

さらに別の特定の実施態様では、R11は、水素である;R12は、(C〜C)N−アルキルピペラジニルおよびN−メチルピペラジニルから選択される;そしてR13は、メチルである。
【0090】
いくつかの他の代表的な実施態様では、Rは、必要に応じて置換したヘテロアリール基である。特定の代表的な実施態様では、Rは、
【0091】
【化29】

から選択され、ここで、Yは、O、S、N、NH、N−(CH−R、N−(CH−C(O)R、N−(CH−C(O)OR、N−(CH−S(O)、N−(CH−S(O)ORおよびN−(CH−C(O)NRから選択され、ここで、R、Rおよびyは、先に定義したとおりであり、Yは、O、SおよびS(O)から選択され、そして点線を含む結合は、単結合または二重結合であり得る。
【0092】
いずれの特定の作用理論にも束縛するつもりはないものの、本明細書中で記述した化合物の抗増殖活性だけでなく、それらがAuroraキナーゼを阻害する性能は、大部分は、R部分に由来すると考えられるが、Rもまた、重要度は低いものの、選択性について重要であると考えられる。本明細書中で記述した化合物の多くの実施態様では、R基は、それらの炭素原子の1個にR置換基を含む飽和または不飽和で架橋または未架橋のシクロアルキルである。R置換基は、任意の炭素原子に結合できるが、特定の実施態様では、R基をN4−窒素原子に連結する炭素原子、この炭素原子に隣接した炭素原子、またはその次に最も近い隣接基に結合される。それゆえ、いくつかの実施態様では、構造式(I)の化合物は、構造式(I.1)、(I.2)および/または(I.3)から選択される:
【0093】
【化30】

ここで、R置換基を含む例示の環は、飽和または不飽和で架橋または未架橋のシクロアルキル環を表わし、そしてR、RおよびRは、構造式(I)について先に定義したとおりである。
【0094】
構造式(I)の化合物のR基は、未架橋シクロアルキルを含むとき、典型的には、3個〜8個の炭素原子を含有する。この未架橋シクロアルキルが不飽和であるとき、その環は、1個、2個またはそれ以上の二重結合を含み得、これらは、任意の環位置に位置し得るが、最も一般的には、R環を分子の残りに結合する炭素原子を含まないように、位置している。多くの実施態様では、単一の二重結合を含む飽和環および不飽和環が好ましい。未架橋の飽和または単一不飽和シクロアルキル環を含むR基の具体例には、
【0095】
【化31】

が挙げられるが、これらに限定されず、ここで、Rは、構造式(I)について先に定義したとおりであり、そして点線は、単結合または二重結合を表わす。
【0096】
基は、架橋シクロアルキルを含むとき、典型的には、5個〜16個の炭素原子を含有する。この架橋シクロアルキルは、不飽和であるとき、1個、2個またはそれ以上の二重結合を含み得、これらは、任意の環位置に位置し得るが、最も一般的には、R環を分子の残りに結合する炭素原子、または橋頭炭素原子を含まないように、位置している。不飽和架橋シクロアルキルの多くの実施態様では、単一の二重結合を含むものが好ましい。架橋シクロアルキル環を含むR基の具体例には、
【0097】
【化32】

【0098】
【化33】

が挙げられるが、これらに限定されず、ここで、Rは、構造式(I)について先に定義したとおりであり、そして点線は、単結合または二重結合を表わす。
【0099】
は、エステルまたはアミド基である。いくつかの実施態様では、Rは、式−C(O)NΗRのアミドまたは式−C(O)ORのエステルであり、ここで、Rは、構造式(I)について先に定義したとおりである。いくつかの実施態様では、Rは、水素である。いくつかの実施態様では、Rは、低級アルキルである。いくつかの実施態様では、Rは、キラル補助基である。
【0100】
適当なキラル補助基の例には、以下が挙げられるが、これらに限定されない;
【0101】
【化34】

ここで、Rは、水素および低級アルキル(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、シクロプロピル、CH−シクロプロピル、シクロブチル、−CH−シクロブチルなど)から選択される。さらに他の実施態様では、Rは、式−C(O)NRのアミドであり、ここで、Rは、構造式(I)について先に定義したとおりである。さらに他の実施態様では、Rは、式−C(O)NHRのアミドであり、ここで、Rは、構造式(I)について先に定義したとおりである。特定の実施態様では、Rは、水素である。
【0102】
(6.3 立体異性的に富んだ化合物および立体異性的に純粋な化合物)
当業者が理解するように、構造式(I)に従った化合物の多くの実施態様では、R基は、キラル中心を含む。例えば、RがR基を分子の残りに結合する炭素原子に隣接した炭素原子で置換された未架橋シクロアルキルである化合物の実施態様は、以下の2個のキラル炭素原子を含む:R基を分子の残りに結合する炭素原子、およびR置換基を含む炭素原子。このような化合物には、2種のラセミ化合物、すなわち、シスラセミ化合物およびトランスラセミ化合物が挙げられ、これらは、一緒になって、以下の構造式(IIa)〜(IId)で表わされる2種のジアステレオマーを構成する(Rがエステルまたはアミド基であり、そしてRがシクロアルキル環の炭素2に存在し、ピリミジンの4−窒素がシクロアルキル環の炭素1に存在していると仮定して決定された絶対的な立体配置の割り当て):
【0103】
【化35】

構造(IIa)〜(IId)では、R置換基を含む図示された環は、任意の低級未架橋飽和または不飽和シクロアルキル環(例えば、先に図示した代表的な環の1つ)であり得る。さらに、R置換基は、特定の位置で図示されているのものの、他の位置にあり得る。
【0104】
特定の化合物であるN4−(2−アミノカルボニルシクロペンタ−1−イル)−5−フルオロ−N2−[4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−3−メチルフェニル]−2,4−ピリミジンジアミンについて、トランス(1R,2R)ジアステレオマーと、2種のシスジアステレオマーであるシス(1S,2R)およびシス(1R,2S)とは、インビトロアッセイにおいて、種々の腫瘍細胞系の増殖を阻止するのに対して、トランス(1S,2S)ジアステレオマーは、この同じアッセイにおいて、比較的に不活性であることが発見された(例えば、上記の7.16の項を参照のこと)。この化合物の活性に基づいて、絶対立体配置でシスラセミ化合物に対応する構造式(I)に従った全ての化合物の種々のジアステレオマーと構造式(IIa)〜(IIc)のシスおよびトランスジアステレオマーとは、類似の抗増殖活性の差を示すと予想される。
【0105】
が置換架橋シクロアルキルである化合物には、以下の構造式(IIIa)および(IIIb)で表わされる2種のシスラセミ化合物(すなわち、エキソ−エキソおよびエンド−エンド)および以下の構造式(IIIc)および(IIId)で図示される2種のトランスラセミ化合物(すなわち、エキソ−エンドおよびエンド−エキソ)を挙げることができる。
【0106】
【化36】

これらの4種のラセミ化合物は、一緒になって、以下の構造式(IVa)〜(IVh)で表わされる8種のジアステレオマーを構成する:
【0107】
【化37】

構造式(IIIa)〜(IIId)および(IVa)〜(IVh)において、点線を含む結合は、単結合または二重結合のいずれかであり得る。構造(IIIa)〜(IIId)および(IVa)〜(IIh)のラセミ化合物およびジアステレオマーは、特定の架橋R環を参照して図示されているものの、これらの構造図は、互いに関するキラル中心の絶対的な原子の空間的配置を典型的に示すためだけの例示の目的のためにあり、架橋R環の種類、この架橋の位置、架橋を構成する炭素原子数および/またはR置換基の位置に関して限定する意図はないことに注目すべきである。それゆえ、これらの構造は、立体特異的な配置において構造式(IIIa)〜(IIId)および(IVa)〜(IVh)の構造に対応するラセミ化合物およびジアステレオマーを含む任意の架橋R環を例示することを意図している。本願では、「エキソ」および「エンド」との用語は、Rがビシクロ[2.2.1]へプタンまたはへプテンを含む化合物を命名するための便利な様式として、使用される。エキソおよびエンドとの術語は、最初は、ビシクロ[2.2.1]へプテン環系(これらは、偶然、化学的に異なる架橋(−CH−架橋および−CH=CH−架橋)を有する)の二重結合に対する試薬による優先的な攻撃を記述するために、開発された。例えば、一部には、これらの化学的に異なる架橋によってR環系に与えられたキラリティーによって、式(IVa)〜(IVh)で表わされる8種のジアステレオマーが存在している。Rが二環式または三環式環系(ここで、それらの架橋は、化学的に異なる)であるとき、類似のラセミ化合物およびジアステレオマーが存在している。このような対応するラセミ化合物およびジアステレオマーを有するR環の具体例には、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプテン、ビシクロ[2.2.2]オクテン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[3.2.1]オクテンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
特定の分子であるN4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンについて、これらの2種のシスラセミ化合物は、インビトロアッセイにおいて、種々の腫瘍細胞型に対して抗増殖活性を示すことが発見された。しかしながら、そのシスエキソ−エキソラセミ化合物は、試験した全ての細胞系において、そのシスエンド−エンドラセミ化合物よりも、およそ20倍強力である。さらに、構造式(IVa)の(1R,2R,3S,4S)ジアステレオマーに対応する鏡像異性体は、このエキソ−エキソラセミ化合物の効力に大いに関与していることが発見された。単離した立体異性体として試験したとき、この化合物の(1R,2R,3S,4S)は、ナノモル範囲のIC50を示したのに対して、この化合物の(1S,2S,3R,4R)ジアステレオマーは、同じ細胞系に対して、マイクロモル範囲のIC50を示した。すなわち、一般に、この化合物の(1R,2R,3S,4S)は、(1S,2S,3R,4R)ジアステレオマーよりも、およそ1000倍強力である。この(1R,2R,3S,4S)ジアステレオマーは、AuroraキナーゼBに対する細胞系阻害アッセイにおいて、(1S,2S,3R,4R)ジアステレオマーに匹敵する同様に優れた結果を示した。
【0109】
この(1R,2R,3S,4S)ジアステレオマーの観察された効力に基づいて、構造式(IVa)のジアステレオマーに対応する全範囲のジアステレオマーは、それらの鏡像異性体であるエキソ−エキソおよびエンド−エンドシスラセミ化合物ならびにそれらの他のジアステレオマーと比較したとき、同様に優れた効力を示すと予想される。
【0110】
それゆえ、これらの化合物の特定の追加実施態様には、これらの活性ジアステレオマーの1種またはそれ以上に富んだ化合物、あるいはインビトロおよび/またはインビボ抗増殖アッセイにおいて優れた効力を示すジアステレオマーの1種またはそれ以上に富んだ化合物、および/または不活性ジアステレオマーを実質的に含まない化合物が挙げられる。
【0111】
いくつかの実施態様では、この立体異性的に富んだ化合物は、Rが構造式(IIa)、(IIb)および/または(IIc)に対応するジアステレオマーの1種またはそれ以上に富んだ未架橋飽和または不飽和シクロアルキルを含む構造式(I)に従った化合物である。特定の実施態様では、この化合物は、構造式(IId)に対応するジアステレオマーを実質的に含まない。別の特定の実施態様では、この化合物は、構造式(IIa)および(IIb)に対応するジアステレオマーの混合物(ラセミ混合物を含めて)である。さらに別の特定の実施態様では、この化合物は、構造(IIa)、(IIb)または(IIc)に対応するジアステレオマーを実質的に含まない。
【0112】
いくつかの実施態様では、この立体異性的に富んだ化合物は、Rが架橋飽和または不飽和シクロアルキルあるいは飽和または不飽和ビシクロアルキルを含む構造式(I)に従った化合物であり、これらは、構造式(IVa)、(IVb)、(IVc)および/または(IVd)に対応するジアステレオマーに富んでいる。特定の実施態様では、この化合物は、構造式(IIIa)または(IIIb)に対応するシス異性体のラセミ混合物である。別の特定の実施態様では、この化合物は、構造式(IVa)に対応するジアステレオマーで実質的に純粋である。例証的な1実施態様では、この立体異性的に富んだ化合物は、構造式(VI)に対応する化合物(それらの塩、水和物、溶媒和物およびN−オキシドを含めて)であり、
【0113】
【化38】

これらは、構造式(VIa)、(VIb)および/または(VIc)に従った1種またはそれ以上のジアステレオマーに富んでいる:
【0114】
【化39】

ここで、sは、0〜5の範囲の整数である;R、RおよびRは、構造式(I)について先に定義したとおりである;そして点線は、1個またはそれ以上の任意の二重結合を表わし、それらの位置は、変われ得るが、但し、sが0であるとき、この環は、二重結合を含まない。特定の実施態様では、sは、1、2、3または4であり、そして点線を含む結合は、単結合である。
【0115】
別の例証的な実施態様では、この立体異性的に富んだ化合物は、構造式(VII)に対応する化合物(それらの塩、水和物、溶媒和物およびN−オキシドを含めて)であり、
【0116】
【化40】

これらは、構造式(VIIa)、(VIIb)または(VIIc)に従った1種またはそれ以上のジアステレオマーに富んでいる:
【0117】
【化41】

ここで、tは、1〜3の範囲の整数であり、そしてR、RおよびRは、構造式(VI)について先に定義したとおりである。特定の実施態様では、tは、1または2である。
【0118】
さらに別の例証的な実施態様では、この立体異性的に富んだ化合物は、構造式(VI)に従った化合物であり、これらは、構造式(VId)のジアステレオマーを実質的に含まない:
【0119】
【化42】

さらに別の例証的な実施態様では、この立体異性的に富んだ化合物は、構造式(VII)に従った化合物であり、これらは、構造式(VIId)のジアステレオマーを実質的に含まない:
【0120】
【化43】

さらに別の例証的な実施態様では、この立体異性的に富んだ化合物は、構造式(VIa)または(VIIa)に従った化合物であり、これらは、他の鏡像異性体および/またはジアステレオマーの全てを実質的に含まない。
【0121】
さらに別の例証的な実施態様では、この立体異性的に富んだ化合物は、構造式(VIII)従った化合物(それらの塩、水和物、溶媒和物およびN−オキシドを含めて)であり、
【0122】
【化44】

これらは、構造式(VIIIa)のジアステレオマーに富んでいる:
【0123】
【化45】

ここで、R、RおよびRは、構造式(I)について先に定義したとおりであり、そして点線は、単結合または二重結合を表わす。
【0124】
さらに別の例証的な実施態様では、この立体異性的に富んだ化合物は、構造式(VIIIa)に従った化合物であり、これらは、他の鏡像異性体およびジアステレオマーを実質的に含まない。
【0125】
本明細書中で記述した立体異性的に富んだ化合物のいくつかの特定の実施態様では、Rは、先に定義した特定の実施態様の1つであり、そしてRは、式
【0126】
【化46】

のフェニルであり、ここで、R11およびR12およびR13は、先に述べた特定の実施態様のいずれかに関連して、先に定義したとおりである。
【0127】
本明細書中で使用する場合、化合物は、特定のジアステレオマーが化合物中にて他のいずれのジアステレオマーよりも過剰に存在しているとき、そのジアステレオマーに富んでいる。富んだ化合物を構成する特定のジアステレオマーの実際の割合は、存在している他のジアステレオマーの数に依存している。具体例として、ラセミ混合物は、特定の鏡像異性体がその混合物の50%より多くを構成するとき、その鏡像異性体に富んでいる。存在しているジアステレオマーの数にかかわらず、特定のジアステレオマーに富んだ化合物は、典型的には、少なくとも約60%、70%、80%、90%またはそれ以上の特定のジアステレオマーを含む。特定のジアステレオマーに富んだ量は、以下でさらに詳細に述べるように、当業者に日常的に使用される通常の分析方法を使用して、確認できる。
【0128】
立体異性的に富んだ化合物のいくつかの実施態様は、鏡像異性体および/またはジアステレオマーを実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、当業者に日常的に使用される通常の分析方法(これらは、以下で詳細に述べる)を使用して確立されるように、その化合物が望ましくないジアステレオマーおよび/または鏡像異性体を約10%未満で含有することを意味する。いくつかの実施態様では、望ましくない立体異性体の量は、10%未満、例えば、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはそれ以下であり得る。約95%以上の望ましい立体異性体を含有する立体異性的に富んだ化合物は、本明細書中では、「実質的に純粋な」立体異性体と呼ぶ。約99%以上の望ましい立体異性体を含有する立体異性的に富んだ化合物は、本明細書中では、「純粋な」立体異性体と呼ぶ。任意の立体異性的に富んだ化合物の純度(ジアステレオマーの純度;%de)は、以下で詳細に記述するように、通常の分析方法を使用して、確認できる。
【0129】
本明細書中で記述した化合物の種々の特定の代表的な実施態様は、実施例の項において、表1で提供されている。この表では、特定のジアステレオマーとして合成または単離のいずれかを行った化合物が図示されており、これらは、R環のキラル中心の周りの絶対的な原子の空間的配置を示す。特定の絶対的な原子の空間的配置と共に図示されていないR環にキラル中心を有する化合物は、ラセミ化合物として、合成した。
【0130】
当業者は、本明細書中で記述した化合物がプロ基でマスクしてプロドラッグを作成できる官能基を含み得ることを理解する。このようなプロドラッグは、通常、それらの薬剤形状に変換されるまで、薬理学的に不活性であるが、そうである必要はない。例えば、エステル基は、通例、胃の酸性状態に晒されたとき、酸触媒加水分解を受けて、親カルボン酸を生じるか、腸または血液の塩基性状態に晒されるとき、塩基触媒加水分解を受ける。それゆえ、被験体に経口投与したとき、エステル部分を含む化合物は、そのエステル形状が薬理学的に活性であるかどうかとは関係なく、それらの対応するカルボン酸のプロドラッグと見なされ得る。
【0131】
本明細書中で記述した種々の化合物のプロドラッグは、本発明の範囲内に含まれる。このようなプロドラッグでは、任意の利用可能な官能部分は、プロ基でマスクされ得、プロドラッグで生じる。本明細書中で記述した化合物内にて、プロ部分に含めるためにプロ基でマスクされ得る官能基には、アミン(第一級および第二級)、ヒドロキシル、スルフィニル(チオール)、カルボキシル、カルボニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。このような官能基をマスクしてプロ部分(これらは、所望の使用条件下にて、開裂可能である)を生じるのに適当な無数のプロ基は、当該技術分野で公知である。これらのプロ基の全ては、単独で、または組み合わせて、これらのプロドラッグに含まれ得る。
【0132】
例証的な1実施態様では、これらのプロドラッグは、構造式(I)(上記)に従った化合物であり、ここで、R、RおよびRは、それらの先に定義した代替物に加えて、プロ基であり得る。
【0133】
当業者は、本明細書中で記述した化合物およびプロドラッグの多くだけでなく、本明細書中で具体的に記述および/または図示した種々の化合物が、互変異性および配座異性を示し得ることを理解する。例えば、これらの化合物およびプロドラッグは、いくつかの互変異性形状(エノール形状、ケト形状およびそれらの混合物)で、存在し得る。これらの化合物はまた、本明細書中で具体的に述べたものに加えて、キラル中心を含み得、従って、光学異性体として存在し得る。本明細書および請求の範囲内の化合物名、式および化合物の図は、可能な互変異性形状または立体異性形状の1つだけを表わし得るので、本発明は、本明細書中で記述した有用性の1つまたはそれ以上を有する化合物またはプロドラッグの任意の互変異性体、立体異性体または光学体だけでなく、これらの種々の異なる異性体形状の混合物を包含し得ることが理解できるはずである。この2,4−ピリミジンジアミンの核構造の周りでの回転が限られている場合、アトロープ異性体もまた可能であり、これらもまた、本発明の化合物および/またはプロドラッグに具体的に含まれる。
【0134】
種々の置換基の性質に依存して、これらの化合物およびプロドラッグは、塩の形状であり得る。このような塩には、医薬品用途に適当な塩(「薬学的に受容可能な塩」)、獣医学用途に適当な塩などが挙げられる。このような塩は、当該技術分野で周知であるように、酸または塩基から誘導され得る。
【0135】
いくつかの実施態様では、この塩は、薬学的に受容可能な塩である。一般に、薬学的に受容可能な塩は、その親化合物の所望の薬理活性の1つまたはそれ以上を実質的に保持しかつヒトに投与するのに適当なものである。薬学的に受容可能な塩には、無機酸または有機酸を使って形成された酸付加塩が挙げられる。薬学的に受容可能な酸付加塩を形成するのに適当な無機酸には、限定ではなく例として、ハロゲン化水素酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸など)、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。薬学的に受容可能な酸付加塩を形成するのに適当な有機酸には、限定ではなく例として、アジピン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、パルミチン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、アルキルスルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸など)、アリールスルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ショウノウスルホン酸など)、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクタ−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプタン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などが挙げられる。
【0136】
薬学的に受容可能な塩には、また、その親化合物に存在している酸性部分が金属イオン(例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアルミニウムイオン)で置き換えられるかあるいは無機または有機塩基(例えば、アンモニア、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルグルカミン、モルホリン、ピペリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミンなど)と配位するかいずれかのときに形成された塩が挙げられる。
【0137】
これらの化合物およびプロドラッグだけでなく、それらの塩はまた、当該技術分野で周知であるように、水和物、溶媒和物およびN−オキシドの形状であり得る。
【0138】
特定のジアステレオマーに富んだ化合物の実施態様について、その立体異性富化度および/または純度は、当業者に周知の通常の分析方法により、確立され得る。例えば、特定の立体異性体の立体異性富化度および/または純度を確立するために、キラルNMRシフト試薬、キラルカラムを使用するガスクロマトグラフィー分析、キラルカラムを使用する高圧液体クロマトグラフィー分析、キラル試薬および通常の分析を使う反応によるジアステレオマー誘導体の形成が使用され得る。あるいは、本明細書中で記述した化合物の立体異性富化度および/または純度を確立するために、公知の立体異性富化度および/または純度を有する出発物質を使用する合成が使用され得る。立体異性均質性を証明する他の分析方法は、十分に、当業者の領域内である。
【0139】
(6.4 合成方法)
これらの化合物およびプロドラッグは、市販の出発物質および/または通常の合成方法により調製された出発物質を使用して、種々の異なる合成経路を経由して、合成され得る。これらの化合物およびプロドラッグを合成するのに使用できる種々の代表的な合成経路は、WO 03/063794およびUS 2004−0029902で記載されており、その開示内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0140】
例示の目的のために、本明細書中で記述した全範囲の化合物を合成するのに使用できる代表的な合成スキームは、以下のスキーム(I)で図示されている:
【0141】
【化47】

スキーム(I)では、R、RおよびRは、構造式(I)(上記)について先に定義したとおりであり、Xは、ハロゲン(例えば、F、Cl、BrまたはI)であり、そして各Gは、他のものとは別個に、OおよびSから選択される。
【0142】
スキーム(I)を参照すると、ウラシルまたはチオウラシル2は、標準的な条件下にて、標準的なハロゲン化剤POX(または他の標準的なハロゲン化剤)を使用して、その2位置および4位置で二ハロゲン化されて、2,4−ビス−ハロピリミジン4が生じる。このハロゲン化物は、そのC4位置にて、ピリミジン4におけるC2位置よりも、求核試薬に対して反応性が高い。この反応性の差を利用して、まず、2,4−ビス−ハロピリミジン4を1当量のアミン6と反応させて8を得ることにより、続いて、アミン10と反応させて構造式(I)に対応する化合物(12)を得ることにより、本明細書中で記述した化合物およびプロドラッグを合成できる。
【0143】
大ていの状況では、このC4ハロゲン化物は、このスキームで図示しているように、求核試薬に対して反応性が高い。しかしながら、当業者が認識するように、R置換基の種類は、この反応を変え得る。例えば、Rがトリフルオロメチルであるとき、4N−置換−4−ピリミジンアミン8と対応する2N−置換−2−ピリミジンアミンとの50:50の混合物が得られる。R置換基の種類とは関係なく、この反応物のレギオ選択性は、当該技術分野で周知であるように、溶媒および他の合成条件(例えば、温度)を調節することにより、制御できる。
【0144】
スキーム(I)で描写された反応は、その反応混合物がマイクロ波によって加熱されるとき、より迅速に進行し得る。この様式で加熱するとき、以下の条件が使用され得る:Smith Reactor(Personal Chemistry,Biotage AB,Sweden)において、封管(20バールの圧力)中にて、エタノール中で、5〜20分間にわたって、175℃まで加熱すること。
【0145】
ウラシルまたはチオウラシル2出発物質は、業者から購入され得るか、または標準的な有機化学技術を使用して調製され得る。スキーム(I)において出発物質として使用できる市販のウラシルおよびチオウラシルには、限定ではなく例として、ウラシル(Aldrich #13,078−8;CAS Registry 66−22−8);2−チオ−ウラシル(Aldrich #11,558−4;CAS Registry 141−90−2);2,4−ジチオウラシル(Aldrich #15,846−1;CAS Registry 2001−93−6);5−ブロモウラシル(Aldrich #85,247−3;CAS Registry 51−20−7;5−フルオロウラシル(Aldrich #85,847−1;CAS Registry 51−21−8);5−ヨードウラシル(Aldrich #85,785−8;CAS Registry 696−07−1);5−ニトロウラシル(Aldrich #85,276−7;CAS Registry 611−08−5);5−(トリフルオロメチル)−ウラシル(Aldrich #22、,327−1;CAS Registry 54−20−6)が挙げられる。別の5−置換ウラシルおよび/またはチオウラシルは、General Intermediates of Canada,Inc.,Edmonton,CA(http://www.general中間体.com)および/またはInterchim,Cedex,France(http://www.interchim.com)から市販されているか、または標準的な技術を使用して調製され得る。適当な合成方法を教示している無数の教本参考文献は、以下で提供する。
【0146】
アミン6および10は、業者から購入され得るか、あるいは、標準的な技術を利用して調製され得る。例えば、アミンは、標準的な化学反応を使用して、ニトロ前駆体から合成され得る。特定の代表的な反応は、実施例の項で提供されている。また、Vogel,1989,.Practical Organic Chemistry,Addison Wesley Longman,Ltd.and John Wiley & Sons,Inc.を参照のこと。
【0147】
当業者は、いくつかの場合において、アミン6および/または10が、合成中に保護を必要な官能基を含み得ることを認識する。使用される任意の保護基の正確な種類は、保護する官能基の種類に依存しており、そして当業者に明らかとなる。適当な保護基だけでなく、それらを結合および除去する合成戦略の指針は、例えば、Greene & Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3d Edition,John Wiley & Sons,Inc.,New York(1999)およびその中で引用された参考文献(以下、「Greene & Wuts」)で見られる。
【0148】
本明細書中で記述したプロドラッグは、上記方法の常套的な改良により、調製され得る。
【0149】
特定のジアステレオマーに富んだ、実質的に純粋な、および/または純粋な化合物は、キラル分離により、または他の標準的な技術により、単離され得る。特定のジアステレオマーをキラル分割する方法は、実施例の項において、さらに詳細に記述する。
【0150】
あるいは、立体異性的に富んだ、実質的に立体異性的に純粋な、および/または立体異性的に純粋な化合物は、望ましい原子の空間的配置を有するかまたはキラル分離を助けるキラル補助剤を含むアミン6出発物質から合成され得る。例えば、特定のラセミ混合物は、適当なラセミアミン6を使用して、合成できる。別の具体例として、立体異性的に純粋な化合物は、適当な立体異性的に純粋なアミン6から合成できる。
【0151】
以下のスキーム(II)で図示されている代表的な1実施態様では、望ましいジアステレオマーは、キラル補助剤として、(R)−メチル−p−メトキシベンジルアミンを使用して、化学的に分割される。
【0152】
【化48】

スキーム(II)では、2−エキソ−3−エキソラセミβ−ラクタム14(これは、Stajarら、1984,Tetrahedron 40(12):2385で記載されているように、調製した)は、Boc基で保護されて、対応するラセミBoc−保護β−ラクタム16を生じる。β−ラクタム14および16では、その環は、任意の飽和または不飽和で架橋または未架橋のシクロアルキルを表わす。次いで、Boc−保護ラセミ化合物16は、(R)−メチル−パラ−メトキシベンジルアミン18と反応されて、ジアステレオマー20aおよび20bの混合物が生じる。このジアステレオマー混合物は、酸(例えば、TFA)で処理されて、そのBoc基を開裂し、ジアステレオマー22aおよび22bの混合物が生じ、これらは、2,4−ジハロピリミジン4と反応でき、化合物24aおよび24bのラセミ混合物が得られる。この段階にて、化合物24aおよび24bは、結晶化により、互いから分割でき、各々の単離されたジアステレオマーは、アミン10と反応され、そしてキラル補助剤は、開裂されて、単離されたジアステレオマー25aおよび25bが得られる。次いで、単離されたジアステレオマー25aおよび25bに由来のキラル補助剤は、開裂でき、これらの化合物は、もし望ましいなら、さらに誘導体化される。あるいは、これらのキラル補助剤は、キラル補助剤を含む2,4−ピリミジンジアミンが抗増殖活性を有するので、開裂する必要はない。
【0153】
がフルオロであり、そしてR
【0154】
【化49】

である化合物(ここで、R11は、水素であり、R12は、4−メチル−ピペラジン−2−イルであり、そしてR13は、メチルである)について、このキラル補助剤の開裂は、困難であることが証明されている。このような開裂が困難であるこれらの化合物および他の化合物について、このキラル補助剤は、化合物24aおよび24bから開裂でき、得られた単離された化合物は、アミン10と反応される。
【0155】
特定のジアステレオマーにおいて、立体異性的に富んだ、実質的に立体異性的に純粋なおよび/または立体異性的に純粋な化合物はまた、立体異性的に富んだ、実質的に立体異性的に純粋な、および/または立体異性的に純粋なβ−ラクタムから合成できる。このような立体異性的に富んだおよび/または(実質的に)立体異性的に純粋なβ−ラクタムは、酵素的に分割され単離できる。代表的な1実施態様では、(実質的に)立体異性的に純粋なβ−ラクタムは、Enikoら、2004,Tetrahedron Asymmetry 15:573−575で記載されているように、固定化リポラーゼ(immobilized lipolase)(これは、Sigma Chemical Co.,カタログ番号第L4777号から市販されている)を使用して、2−エキソ−3−エキソβ−ラクタム14のラセミ混合物から分割され単離できる。別の代表的な実施態様では、(実質的に)立体異性的に純粋なβ−ラクタムは、係属中の出願番号第No.60/628,401(これは、2004年11月5日に出願され、弁護士整理番号第185954/US号として識別される)で記載されているように、樹脂結合し固定化されたキラザイム(chirazyme)L−2 B型、c.f.酵素(Candida Antarctica Type B,c−f;これは、Biocatalytics,Inc.,Pasadena,CAから市販されている)を使用して、2−エキソ−3−エキソBoc−保護ラセミβ−ラクタム16から分割され単離できる。この酵素を使用してβ−ラクタムの特定のジアステレオマーを分割する具体例は、2−エキソ−3−エキソラセミβ−ラクタム16を合成する方法と同様に、実施例の項で記述されている。
【0156】
酵素反応を利用して特定のジアステレオマーを合成する例は、以下のスキーム(III)および(IV)で図示されている。スキーム(III)および(IV)では、立体異性的に富んだ、実質的に立体異性的に純粋なおよび/または立体異性的に純粋な化合物(ここで、Rは、N−置換アミドである)は、標準的な技術を使用して、対応するカルボキサミドから調製できる。このカルボキサミドは、それぞれ、酸性加水分解によって、または塩基性アルコキシドで処理することによって、対応する酸および/またはエステルに変換できる。スキーム(IV)で図示されているように、Novozyme 435酵素(これは、上で述べられスキーム(III)で図示されたChirazyme酵素と似ている)を使用する具体例は、ラセミβ−ラクタムから鏡像異性体を分割するのに使用でき、実施例の項で記述する。
【0157】
【化50】

【0158】
【化51】

(6.5 抗増殖性化合物の活性)
活性化合物は、標準的なインビトロ細胞増殖アッセイで測定したとき、約1mM以下の範囲のIC50で、所望の細胞(例えば、腫瘍細胞)の増殖を阻止する。もちろん、当業者は、例えば、10μM、1μM、500nM、100nM、10nM、1nMまたはそれ以下の程度のそれより低いIC50を示す化合物が治療用途で特に有用であり得ることを理解する。この抗増殖活性は、細胞増殖抑制性または細胞毒性であり得る。特定の細胞型に特異的な抗増殖活性が望ましい場合、この化合物は、所望の細胞型での活性についてアッセイされ得、そして他の細胞型に対する活性の欠如についてカウンタースクリーンされ得る。このようなカウンタースクリーンでの「不活性」の程度、または活性対不活性の所望の割合は、異なる状況について変わり得、そして使用者により選択され得る。
【0159】
活性化合物はまた、約20μM以下の範囲、典型的には、約10μM、1μM、500nM、100nM、10nM、1nMまたはそれ以下の範囲のIC50で、Auroraキナーゼの活性を阻害する。Auroraキナーゼに対するIC50は、単離したAuroraキナーゼを使う標準的なインビトロアッセイで、または機能細胞アッセイで、決定できる。Auroraキナーゼ活性の程度を決定するのに使用できる適当な酵素カップリングアッセイは、Foxら、1998,Protein Sci.7:2249−2255で記載されている。Auroraキナーゼ−A、Auroraキナーゼ−Bおよび/またはAuroraキナーゼ−Cに対する基質として、ケムプチドペプチド配列LRRASLG(Bochern Ltd.,UK)が使用でき、そして反応は、30℃で、100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl、25mM NaCl、1mM DTTを含有する溶液中にて、実行できる。IC50値は、市販のソフトウェア(例えば、Prism 3.0,GraphPed Software,San Diego,CA)を使って、コンピューター処理された非線形回帰を使用して、決定できる。適当な細胞ベースの機能アッセイは、実施例の項で記載されている。
【0160】
(6.6 抗増殖性化合物の用途)
この活性化合物(それらの種々のプロドラッグ、塩、水和物および/またはN−オキシドを含めて)は、種々の状況において、Auroraキナーゼ、Auroraキナーゼ媒介プロセスおよび/または細胞増殖を阻止するのに使用され得る。いくつかの実施態様によれば、細胞または細胞集団は、Auroraキナーゼの活性、Auroraキナーゼ媒介プロセス、および/または細胞または細胞集団の増殖を阻止するのに有用な量のこのような化合物と接触される。この化合物は、細胞増殖を阻止するのに使用されるとき、細胞毒性的に細胞を殺すように作用するか、または細胞を殺すことなく増殖を阻止するように作用する。
【0161】
いくつかの実施態様では、これらの方法は、Auroraキナーゼ媒介疾患または障害(特に、増殖障害)の治療または予防に対する療法アプローチとして、インビボで実行され得る。それゆえ、特定の実施態様では、本明細書中で記述した立体異性的に富んだ化合物(および本明細書中で記述した種々の形状)は、動物被験体(ヒトを含めて)における増殖障害を治療または予防するのに使用され得る。この方法は、一般に、この被験体に、この障害を治療するのに有効な量の本発明の化合物あるいはそれらのプロドラッグ、塩、水和物またはN−オキシドを投与する工程を包含する。1実施態様では、この被験体は、哺乳動物であり、これには、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、齧歯類および霊長類が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施態様では、この被験体は、ヒトである。
【0162】
種々の細胞増殖障害は、本明細書中で記述した化合物で治療または予防され得る。いくつかの実施態様では、これらの化合物は、罹患した被験体における種々の癌を治療するのに使用される。癌は、伝統的に、癌細胞が生じる組織および細胞型に基づいて、分類される。癌腫は、上皮細胞から生じる癌と見なされているのに対して、肉腫は、結合組織または筋肉から生じる癌と見なされている。他の癌の種類には、白血病(これは、造血細胞から生じる)、および神経系細胞の癌(これは、神経組織から生じる)が挙げられる。非侵襲性腫瘍については、腺腫は、腺性組織を備えた良性上皮性腫瘍と見なされているのに対して、軟骨腫(chondomas)は、軟骨から生じる良性腫瘍と見なされている。本発明では、記述した化合物は、癌腫、肉腫、白血病、神経細胞腫瘍および非侵襲性腫瘍に含まれる増殖障害を治療するのに使用され得る。
【0163】
特定の実施態様では、これらの化合物は、種々の組織型から生じる固形腫瘍を治療するのに使用され、これには、骨、乳房、気道、脳、生殖器、消化管、尿路、膀胱、眼、肝臓、皮膚、頭部、頸部、甲状腺、副甲状腺、腎臓、膵臓、血液、卵巣、大腸、胚/前立腺の癌およびそれらの転移性形態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0164】
具体的な増殖障害には、以下が挙げられる:a)乳房増殖障害には、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌腫、乳管癌、非浸潤性小葉癌および転移性乳癌が挙げられるが、これらに限定されない;b)皮膚の増殖障害には、基底細胞腫、扁平上皮癌、悪性黒色腫およびカポジ肉腫が挙げられるが、これらに限定されない;c)気道の増殖障害には、小細胞および非小細胞肺癌腫、気管支狭窄(adema)、胸膜肺芽細胞腫および悪性中皮腫が挙げられるが、これらに限定されない;d)脳の増殖障害には、脳幹および視床下部の神経膠腫、小脳および大脳の星細胞腫、髄質芽細胞腫、上衣腫瘍、オリゴデンドログリア髄膜腫、および神経外笂葉性および松果体腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない;e)雄性生殖器の増殖障害には、前立腺癌、精巣癌および陰茎癌が挙げられるが、これらに限定されない;f)雌性生殖器の増殖障害には、子宮癌(子宮内膜)子宮頚部、卵巣、膣、産卵口癌、子宮肉腫、卵巣肺細胞腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない;g)消化管の増殖障害には、肛門、大腸、結腸直腸、食道、胆嚢、胃(胃)、膵臓の癌−島細胞、直腸、小腸および唾液腺の癌が挙げられるが、これらに限定されない;h)肝臓の増殖障害には、肝臓癌、胆管癌、混合肝細胞性胆管癌および一次肝臓癌が挙げられるが、これらに限定されない;i)眼の増殖障害には、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫および横紋筋肉腫が挙げられるが、これらに限定されない;j)頭部の増殖障害および癌には、喉頭、下咽頭、鼻咽頭、中咽頭の癌、および唇および口腔の癌、扁平上皮頸部癌、転移性副鼻腔癌が挙げられるが、これらに限定されない;k)リンパ腫の増殖障害には、多様なT細胞およびB細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、腎臓癌および癌性T細胞リンパ腫、および中枢神経系のリンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない;1)白血病には、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病および有毛細胞白血病が挙げられるが、これらに限定されない;m)甲状腺の増殖障害には、甲状腺癌、胸腺腫および悪性胸腺腫が挙げられる;n)肉腫には、軟組織の肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫および横紋筋肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0165】
増殖障害の記載は、上記の病気には限定されず、制御できない成長および悪性腫瘍に特徴がある他の障害を包含することが理解できるはずである。さらに、増殖障害には、本明細書中で記述された種類の腫瘍および癌の転移性形態が挙げられることが理解できる。本発明の化合物は、本明細書中で記述された障害に対する有効性、および定評のある治療的に有効なレジメンについて、試験され得る。有効性には、以下でさらに記述するように、腫瘍の減少または緩解、細胞増殖速度の低下、または細胞の成長に対する細胞増殖抑制効果または細胞毒性効果が挙げられる。
【0166】
(6.7 併用療法)
本明細書中で記述した化合物は、単独で、または互いに組み合わせて、または他の定評のある抗増殖療法に対する補助剤として、またはそれらと併用して、使用され得る。それゆえ、これらの化合物は、伝統的な癌療法(例えば、γ−線およびX線の形態での電離放射線)と併用され得、放射性化合物の移植により外部または内部に送達され得、そして腫瘍の外科的な除去に対する追跡治療として使用され得る。
【0167】
別の局面では、これらのの化合物は、治療する障害または病気に有用な他の化学療法薬と併用され得る。これらの化合物は、同時に、順次に、同じ投与経路により、または異なる経路により、投与され得る。
【0168】
いくつかの実施態様では、本発明の化合物は、他の抗癌剤または細胞毒性剤と併用される。種々の種類の抗癌および抗新生物化合物には、アルキル化剤、代謝拮抗剤、ビンカアルキロイド、タキサン、抗生物質、酵素、サイトカイン、白金配位錯体、置換尿素、チロシンキナーゼ阻害薬、ホルモンおよびホルモンアンタゴニストが挙げられるが、これらに限定されない。代表的なアルキル化剤には、限定ではなく例として、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロランブシル、エチレンイミン、メチルメラミン、スルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン)およびカルムスチンが挙げられる。代表的な代謝拮抗剤には、限定ではなく例として、葉酸類似メトトレキセート;ピリミジン類似フルオロウラシル、シトシンアルビノシド(arbinoside);プリン類似メルカプトプリン、チオグアニンおよびアザチオプリンが挙げられる。代表的なビンカアルキロイドには、限定ではなく例として、ビンブラスチン、ビンクリスチン、パクリタキセルおよびコルヒチンが挙げられる。代表的な抗生物質には、限定ではなく例として、アクチノマイシンD、ダウノルビシンおよびブレオマイシンが挙げられる。抗新生物剤として代表的な酵素には、L−アスパラギナーゼが挙げられる。代表的な配位化合物には、限定ではなく例として、シスプラチンおよびカルボプラチンが挙げられる。代表的なホルモンおよびホルモン関連化合物には、限定ではなく例として、副腎皮質ステロイドプレドニゾンおよびデキサメサゾン;芳香化酵素阻害薬アミノグルテチミド、フォルメスタンおよびアナストロゾール;黄体ホルモン化合物ヒドロキシプロゲステロンカプロエート、メドロキシプロゲステロン;および抗女性ホルモン化合物タモキシフェンが挙げられる。
【0169】
これらのおよび他の有用な抗癌化合物は、Merck Index,13th Ed.(O’Neil M.J.ら著) Merck Publishing Group(2001)およびGoodman and Gilmans The Pharmacological Basis of Therapeutics,10th Edition,Hardman,J.G.and Limbird,L.E.著、pg.1381−1387,McGraw Hill,(2001)で記載されており、両方の内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0170】
本明細書中で記述した化合物と併用して有用な別の抗増殖性化合物物には、限定ではなく例として、成長因子レセプタに対して向けられた抗体(例えば、抗−Her2);T細胞を活性化する抗体(例えば、抗−CTLA−4 抗体);およびサイトカイン(例えば、インターフェロン−αおよびインターフェロン−γ、インターロイキン−2およびGM−CSF)が挙げられる。
【0171】
(6.8 処方および投与)
このような疾患を治療または予防するのに使用するとき、これらの活性化合物およびプロドラッグは、単独で、1種またはそれ以上の活性化合物の混合物として、またはこのような疾患および/またはこのような疾患に付随した症状を治療するのに有用な他の薬剤との混合物または配合で、投与され得る。これらの活性化合物およびプロドラッグはまた、他の障害または疾患を治療するのに有用な薬剤(例えば、ステロイド、膜安定化剤)との混合物または配合で、投与され得る。これらの活性化合物またはプロドラッグは、そのまま投与され得るか、もしくは活性化合物またはプロドラッグを含有する医薬組成物として投与され得る。
【0172】
これらの活性化合物(またはそれらのプロドラッグ)を含有する医薬組成物は、通常の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠製造のすり潰し、乳化、カプセル化、取り込みまたは凍結乾燥プロセスによって、製造され得る。この組成物は、1種またはそれ以上の生理学的に受容可能なキャリア、希釈剤、賦形剤または補助剤(これらは、これらの活性化合物を医薬として使用できる製剤に加工するのを促進する)を使用して、処方され得る(Remingtons’s Pharmaceutical Sciences,15th Ed.,Hoover,J.E.ed.,Mack Publishing Co.(2003)を参照のこと)。
【0173】
この活性化合物またはプロドラッグは、先に記述したように、これらの医薬組成物にそのまま処方され得るか、もしくは水和物、溶媒和物、N−オキシドまたは薬学的に受容可能な塩の形状で処方され得る。典型的には、このような塩は、対応する遊離酸および塩基よりも水溶液中で溶解性が高いが、対応する遊離酸および塩基よりも溶解度が低い塩もまた、形成され得る。
【0174】
本発明の医薬組成物は、事実上いずれの投与様式(例えば、局所、眼内、経口、口内、全身、経鼻、注射、経皮、直腸、膣内など)にも適当な形態をとり得、もしくは吸入またはガス注入による投与に適当な形態をとり得る。
【0175】
局所投与には、この活性化合物またはプロドラッグは、当該技術分野で周知であるように、溶液、ゲル、軟膏、クリーム、座剤などとして、処方され得る。
【0176】
全身処方には、注射(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、くも膜下腔内または腹腔内注射)による投与向けのものだけでなく、経皮、経粘膜、経口または肺投与向けのものが挙げられる。
【0177】
有用な注射可能製剤には、この活性化合物の水性または油性ビヒクル無菌懸濁液、溶液または乳濁液が挙げられる。これらの組成物はまた、処方化剤(例えば、懸濁液、安定化剤および/または分散剤)を含有し得る。注射用の処方は、単位剤形(例えば、アンプル)または多用量容器で存在し得、そして追加防腐剤を含有し得る。
【0178】
あるいは、この注射可能処方は、使用前、適当なビヒクルで再構成するための粉末形状で提供され得、これには、無菌で発熱物質のない水、緩衝液、デキストロース溶液などが挙げられるが、これらに限定されない。この目的のために、この活性化合物は、任意の公知技術(例えば、凍結乾燥)で乾燥され得、そして使用前に再構成され得る。
【0179】
経皮投与には、その処方において、バリアを浸透するのに適当な浸透剤が使用される。このような浸透剤は、当該技術分野で公知である。
【0180】
経口投与には、これらの医薬組成物は、例えば、薬用ドロップ、錠剤またはカプセル剤の形態をとり得、これらは、薬学的に受容可能な賦形剤(例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶メチルセルロースまたはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはグルコール酸ナトリウムデンプン);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、レシチン))を使う通常の手段によって、調製される。これらの錠剤は、例えば、糖、フィルムまたは腸溶剤皮を使う当該技術分野で周知の方法により、被覆され得る。
【0181】
経口投与用の液状製剤は、例えば、エリキシル剤、溶液、シロップまたは懸濁液の形態をとり得るか、もしくは、使用前に水または他の適当なビヒクルで再構成するための乾燥製品として提供され得る。このような液状製剤は、薬学的に受容可能な添加剤(例えば、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンドオイル、油性エステル、エチルアルコール、クレモフォアまたは分別した植物油);および防腐剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピル、またはソルビン酸))を使う通常の方法により、調製され得る。これらの製剤はまた、適当なら、緩衝塩、防腐剤、香味料、着色剤および甘味料を含有し得る。
【0182】
経口投与用の製剤は、当該技術分野で周知のように、この活性化合物またはプロドラッグを徐放するように適当に処方され得る。
【0183】
舌下投与には、これらの組成物は、通常の様式で処方された錠剤または薬用ドロップの形態をとり得る。
【0184】
直腸および膣内投与経路には、この活性化合物は、(滞留浣腸用の)溶液、座剤または軟膏として処方され得、これは、ココアバターまたは他のグリセリドのような通常の座剤基剤を含有する。
【0185】
経鼻投与、もしくは吸入またはガス注入による投与には、この活性化合物またはプロドラッグは、好都合には、適当な推進剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、フルオロカーボン、二酸化炭素または他の適当な気体)を使用して、加圧パックからのエアロゾル噴霧剤または噴霧器の形態で、送達できる。加圧エアロゾルの場合、その投薬単位は、計量した量を送達するバルブを提供することにより、決定され得る。吸入器または注入器で使用するカプセルまたはカートリッジ(例えば、ゼラチンから構成されるカプセルおよびカートリッジ)は、この化合物と適当な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプン)との粉末ミックスを含有して、処方され得る。
【0186】
眼内投与には、この活性化合物またはプロドラッグは、目に投与するのに適当な溶液、乳濁液、懸濁液などとして、処方され得る。化合物を目に投与するのに適当な種々のビヒクルは、当該技術分野で公知である。非限定的な具体例は、米国特許第6,261,547号;米国特許第6,197,934号;米国特許第6,056,950号;米国特許第5,800,807号;米国特許第5,776,445号;米国特許第5,698,219号;米国特許第5,521,222号;米国特許第5,403,841号;米国特許第5,077,033号;米国特許第4,882,150号;および米国特許第4,738,851号で記載されている。
【0187】
長期間にわたる送達には、この活性化合物またはプロドラッグは、移植または筋肉内注射により投与するためのデポー製剤として、処方できる。その活性成分は、適当な高分子または疎水性材料(例えば、適当なオイル中の乳濁液として)またはイオン交換樹脂を使って、または難溶性誘導体(例えば、難溶性塩)として、処方され得る。あるいは、付着性ディスクまたはパッチ(これは、経皮吸収のために、この活性化合物をゆっくりと放出する)として製造された経皮送達系が使用され得る。この目的のために、この活性化合物の経皮浸透を促進するために、浸透向上剤が使用され得る。適当な経皮パッチは、例えば、米国特許第5,407,713.号;米国特許第5,352,456号;米国特許第5,332,213号;米国特許第5,336,168号;米国特許第5,290,561号;米国特許第5,254,346号;米国特許第5,164,189号;米国特許第5,163,899号;米国特許第5,088,977号;米国特許第5,087,240号;米国特許第5,008,110号;および米国特許第4,921,475号で記載されている。
【0188】
あるいは、他の医薬送達系が使用され得る。リポソームおよび乳濁液は、この活性化合物またはプロドラッグを送達するのに使用され得る送達ビヒクルの周知の例である。ある種の有機溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO))または他のビヒクル(例えば、CREMOPHOR(1種の非イオン性可溶化剤および乳化剤であり、これは、BASF Corporation,Florham Park,NJにより、製造されている))もまた使用され得るが、通常、高い毒性という代償を払うことになる。
【0189】
これらの医薬組成物は、もし望ましいなら、パックまたはディスペンサー装置で提供され得、これは、この活性化合物を含有する1個またはそれ以上の単位剤形を含み得る。このパックは、例えば、金属またはプラスチック箔(例えば、ブリスター包装)を含み得る。このパックまたはディスペンサー装置には、投与説明書が添付され得る。
【0190】
(6.9 有効投薬量)
これらの活性化合物またはプロドラッグ、もしくはそれらの組成物は、一般に、所期の結果を達成するのに有効な量(例えば、治療する特定の疾患を治療または予防するのに有効な量)で、使用される。この化合物は、治療上の恩恵を得るように、治療的な投与され得る。治療上の恩恵とは、治療する基礎障害の根絶または改善、および/または患者が依然として基礎障害に苦しんでいるにもかかわらず、その基礎障害に関連した1つまたはそれ以上の症状の根絶または改善を意味する。治療上の恩恵には、また、改善が実感されるかどうかとは無関係に、その疾患の進行を停止または遅延することが挙げられる。
【0191】
投与される化合物の量は、種々の要因に依存しており、これには、例えば、治療する特定の適応症、投与様式、治療する適応症の重症度、および患者の年齢および体重、特定の活性化合物のバイオアベイラビリティーなどが挙げられる。有効投薬量の決定は、当業者の能力の範囲内である。
【0192】
有効投薬量は、最初は、インビトロアッセイから概算され得る。例えば、動物に使用する初期投薬量は、インビトロアッセイ(例えば、実施例の項で記述したインビトロアッセイ)で測定される特定化合物のIC50以上である活性化合物の循環血液または血清濃度を達成するように、処方され得る。特定化合物のバイオアベイラビリティーを考慮して、このような循環血液または血清濃度を達成する投薬量を計算することは、当業者の能力の範囲内である。指針として、Fingl & Woodbury,「General Principles」、In:Goodman and Gilman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics,最新版(上記)およびその中で引用された参考文献を参照のこと。
【0193】
初期投薬量はまた、インビボデータ(例えば、動物モデル)から概算され得る。化合物が上記種々の疾患を治療または予防する効力を試験するのに有用な動物モデルは、当該技術分野で周知である。投薬量は、典型的には、約0.0001または0.001または0.01mg/kg/日〜約100mg/kg/日の範囲であるが、特に、その化合物の活性、そのバイオアベイラビリティー、投与様式および上述の種々の要因に依存して、これより高くまたは低くされ得る。投薬量および投薬間隔は、治療効果または予防効果を維持するのに十分な血漿レベルの化合物を生じるように、個別に調節され得る。例えば、これらの化合物は、特に、投与様式、治療する特定の適応症および担当医の判断に依存して、1週間に1回、1週間に数回(例えば、1日おき)、1日に1回または1日に複数回で、投与され得る。局所投与または選択的摂取(例えば、局部局所投与)の場合、この活性化合物の有効局部濃度は、血漿濃度には関係し得ない。当業者は、過度の実験をすることなしに、有効局部投薬量を最適化できる。
【0194】
好ましくは、この化合物は、実質的な毒性を引き起こすことなく、治療または予防の恩恵をもたらす。この化合物の毒性は、標準的な医薬手順を使用して、測定され得る。毒性と治療(または予防)効果との用量比(LD50/ED50)は、治療指数である(LD50は、集団の50%を死なせる用量であり、そしてED50は、集団の50%に治療的に有効な用量である)。高い治療指数を示す化合物が好ましい。
【0195】
(6.10 キット)
本明細書中で記述した化合物および/またはプロドラッグは、キットの形態で組み立てられ得る。いくつかの実施態様では、このキットは、投与用の組成物を調製する化合物および試薬を提供する。この組成物は、乾燥または凍結乾燥形態、または溶液(特に、無菌溶液)中であり得る。この組成物が乾燥形態であるとき、その試薬は、液状処方を調製する薬学的に受容可能な希釈剤を含有し得る。このキットは、これらの組成物を投与または調剤する装置(これには、注射器、ピペット、経皮パッチまたは吸入剤が挙げられるが、これらに限定されない)を含み得る。
【0196】
これらのキットは、本明細書中で記述した化合物と併用する他の治療化合物を含み得る。いくつかの実施態様では、これらの治療薬は、他の抗癌および抗新生物化合物である。これらの化合物は、別個の形態で提供され得るか、または本発明の化合物と混合され得る。
【0197】
これらのキットは、この組成物の調製および投与、組成物の副作用、および何らかの他の関連情報についての使用説明書を含む。これらの使用説明書は、任意の適当な形式であり得、これには、印刷物、ビデオテープ、コンピューター読み取り可能ディスク、または光ディスクが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0198】
(7.実施例)
本発明は、以下の実施例を参照して、さらに規定されるが、これらは、本明細書中で記述した化合物のいくつかの代表的な実施態様の調製、それらの生物学的活性をアッセイする方法、およびそれらの使用方法を記述する。物質および方法の両方に対して、本発明の範囲から逸脱することなく、多くの改良が実行され得ることは、当業者に明らかとなる。
【0199】
(7.1 4−(4−メチルピペラジニル)−3−メチルニトロベンゼンの調製)
反応:
【0200】
【化52】

手順:N−メチルピロリドン(NMP)(10mL)中の4−フルオロ−3−メチルニトロベンゼン1(20g、129mmol)およびN−メチルピペラジン 3(25.82g、258mmol)の均一混合物を、N下にて、24時間還流した(120℃)。その反応混合物を、室温まで冷却するとすぐに、飽和NaCl溶液(100mL)に注いだ。得られた固形物を約30秒間超音波処理し、濾過し、氷−冷水(2×10mL)で洗浄し、そして高真空下にて乾燥して、4−(4−メチルピペラジニル)−3−メチルニトロベンゼン5(28g、92%)を得た。
【0201】
【化53】

(7.2 4−(4−メチルピペラジニル)−3−メチルアニリンの調製)
反応:
【0202】
【化54】

手順:メタノール(1.2リットル)中の4−(4−メチルピペラジニル)−3−メチルニトロベンゼン5(20g、85mmol)、10%Pd/C(1.3g)の均一混合物を、40 PSIで、3時間にわたって、水素化した[H]。このパラジウム触媒をセライトパッドで濾過し、メタノール(3×50mL)で洗浄し、そして合わせた濾液を濃縮して、4−(4−メチルピペラジニル)−3−メチルアニリン7(15g、86%)を得た。
【0203】
【化55】

(7.3 (1S,2R)−N4−(2−アミノカルボニルシクロペンタ−1−イル)−5−フルオロ−N2−[4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−3−メチルフェニル]−2,4−ピリミジンジアミンの合成)
【0204】
【化56】

(1S,2R)−2−アミノシクロペンタンカルボン酸HCl塩(100mg)9a、2,4−ジクロロ−5−フルオロピリミジン(200mg)10、炭酸水素ナトリウム(50mg)、メタノール(5mL)および水(1mL)の混合物を、室温から60℃まで温めつつ、一晩撹拌した。その反応溶液を蒸発させて、(1S,2R)−シクロペンタンカルボン酸11aを得た。
【0205】
粗残渣11aをジクロロメタン(10mL)に溶解し、そしてクロロギ酸イソブチル(0.15mL)およびジイソプロピルエチルアミン(0.27mL)を加えた。その反応混合物を、周囲温度で、30分間撹拌し、メタノール(10mL)中の2.0Mアンモニアでクエンチし、室温で、30分間撹拌し、水(100mL)で希釈し、そして酢酸エチル(2×100mL)で抽出した。合わせた有機層を蒸発させて、粗(1S,2R)−カルボキサミド13aを得た。
【0206】
(1S,2R)−カルボキサミド13aを、メタノール(5mL)および水(0.5mL)の溶液中にて、触媒量のトリフルオロ酢酸とと共に、100℃で、一晩にわたって、3−メチル−4−(4−メチル)ピペラジノアニリン7と反応させた。その反応混合物を蒸発させ、そしてフラッシュクロマトグラフィー(CHCl=1〜5%中のメタノール中の2.0M NH)で精製した。酢酸エチルおよびヘキサンから再結晶すると、白色固形物として、表題(1S,2R)カルボキサミド15a(30mg)が得られた。
【0207】
(7.4 (1R,2S)−N4−(2−アミノカルボニルシクロペンタ−1−イル)−5−フルオロ−N2−[4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−3−メチルフェニル]−2,4−ピリミジンジアミンの合成)
【0208】
【化57】

セクション7.3の方法を使用し、(1R,2S)−2−アミノシクロペンタンカルボン酸9a(250mg)で出発すると、白色固形物(10mg)として、表題化合物15bが得られた。
【0209】
(7.5 (1S,2S)−N4−(2−アミノカルボニルシクロペンタ−1−イル)−5−フルオロ−N2−[4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−3−メチルフェニル]−2,4−ピリミジンジアミンの合成)
【0210】
【化58】

Gellmanら、J.Org.Chem.2001,66,5629−5632の手順に従って、(1S,2S)−2−アミノシクロペンタンカルボン酸エチル23dを製造した。2−カルボキシシクロペンタノンのエチルエステル17(4mL)、(S)−(−)−メチルベンジルアミン(6.96mL)19aおよび氷酢酸(3.08mL)をエタノール(32mL)に溶解し、そして室温で、一晩撹拌した。その反応溶液をエタノール(64mL)で希釈し、そして72℃まで加熱した。次いで、NaBHCN(4.24g)を少しずつ加え、その混合物を、72℃で、5時間撹拌した。水(150mL)を加え、そして真空中でエタノールを除去した。残留している水溶液をエーテル(2×150mL)で抽出し、そしてエーテル層をシリカプラグに通し、これを、エーテル(150mL)で溶出した。その濾液を蒸発させ、そして残油を酢酸エチル(120mL)に溶解した。次いで、撹拌しつつ、ジオキサン(6.5mL)中の4.0N HClを滴下した。その溶液を、0℃で、1時間保持し、次いで、白色沈殿物を濾過し、そして酢酸エチルで洗浄した。得られた白色固形物をエタノールから再結晶した(エタノール40mL中で6.5g)。生成物を、さらに、アセトニトリルから再結晶して、ベンジル化β−アミノシクロペンタンカルボン酸のエチルエステルのHCl塩21dを得た。
【0211】
ベンジル化β−アミノシクロペンタンカルボン酸のエチルエステルのHCl塩21d(300mg)をメタノールに溶解し、そして10%Pd−Cを加えた。その溶液を、H下にて、50psiで、3日間振盪し、セライトで濾過し、そしてメタノールで洗浄した。その濾液を蒸発させて、(1S,2S)−2−アミノシクロペンタンカルボン酸エチル23dを得た。
【0212】
カルボン酸エステルのHCl塩23d、2,4−ジクロロ−5−フルオロピリミジン10(200mg)、炭酸水素ナトリウム(100mg)、メタノール(5mL)および水(1mL)の混合物を、室温で、一晩撹拌した。その反応溶液を水(100mL)で希釈した。この水溶液を酢酸エチル(2×100mL)で抽出し、そして有機層を蒸発させて、モノ−SNAr生成物27dを得た。
【0213】
モノ−SNAr生成物27dを、メタノール(1mL)および水(0.2mL)の溶液中にて、触媒量のトリフルオロ酢酸と共に、100℃で、一晩にわたって、3−メチル−4−(4−メチル)ピペラジノアニリン7と反応させた。その反応混合物を蒸発させ、そしてフラッシュカラムクロマトグラフィー(CHCl=1〜3%中のメタノール中の2.0M NH)で精製して、(1S,2S)−シクロペンタンカルボン酸エチル29dを得た。
【0214】
(1S,2S)−シクロペンタンカルボン酸エチル29d(100mg)をTHF/MeOH/HOの6:3:1溶液に溶解し、そしてLiOH(46mg)を加えた。その反応溶液を、室温で、一晩撹拌し、1N HClで中和し、その水溶液のpHをpH6に調節した。溶媒を蒸発させ、そして固形物をメタノールおよび酢酸エチルから再結晶して、(1S,2S)−シクロペンタンカルボン酸31dを得た。
【0215】
ジクロロメタン(10mL)中の(1S,2S)−シクロペンタンカルボン酸31d(100mg)をジイソプロピルエチルアミン(0.08mL)およびクロロギ酸イソブチル(0.045mL)で処理し、その反応混合物を、室温で、30分間撹拌し、メタノール(10mL)中の2.0M NHでクエンチし、室温で、30分間撹拌し、次いで、蒸発させた。その残渣をフラッシュクロマトグラフィー(CHCl=1〜5%中のメタノール中の2.0M NH)で精製した。酢酸エチルおよびヘキサンから再結晶すると、白色固形物として、表題化合物である(1S,2S)−1−(2,4−ピペリジンジアミノ)−2−−シクロペンタンカルボキサミド15dが得られた。
【0216】
(7.6 (1R,2R)−N4−(2−アミノカルボニルシクロペンタ−1−イル)−5−フルオロ−N2−[4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−3−メチルフェニル]−2,4−ピリミジンジアミンの合成)
【0217】
【化59】

第一工程において、(S)−(+)−メチルベンジルアミンに代えて、(R)−(−)−メチルベンジルアミン(6.96mL)を使用して、セクション7.5の手順に従って、表題化合物である(1R,2R)−1−(2,4−ピペリジンジアミノ)−2−シクロペンタンカルボキサミド15c(30mg)を得た。
【0218】
(7.7 (1S,2R)−N4−(2−アミノカルボニルシクロペンタ−1−イル)−5−フルオロ−N2−[4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−3−メチルフェニル]−2,4−ピリミジンジアミンの合成)
【0219】
【化60】

シクロペンテン33(18.7mL)およびイソシアン酸クロロスルホニル(18.4mL)を、0℃で、ジクロロメタン(30mL)に溶解し、そして1時間撹拌した。その反応混合物を、24時間にわたって、40℃まで加熱し、氷浴中にて、冷水でゆっくりとクエンチし、次いで、0℃で、NaSO(13.36g)の水(40mL)溶液を滴下した。その間、20%NaOH水溶液(125mL)を加えて、この溶液のpHを5〜7で保持した。この溶液の温度を、25℃未満にとどまるように、制御した。添加後、この溶液を、0℃で、1時間撹拌し、そしてジクロロメタン(2×200mL)で抽出した。このジクロロメタン溶液を蒸発させ、そしてエーテルおよびヘキサンから再結晶して、固形物(10g)として、シクロペンタンのラセミβ−ラクタム35を得た。
【0220】
ラセミ化合物35(4g)をイソプロピルエーテル(80mL)に溶解した。イソポラーゼ(アクリル樹脂上のリパーゼ、4g)および水(0.32mL)を加えた。その反応溶液を、60℃で、10日間撹拌した。固形物37aを濾過により除き、そしてイソプロピルエーテルで洗浄した。その濾液を蒸発させ、そしてイソプロピルエーテルおよびヘキサンから再結晶して、生成物35b(2g)として、淡黄色固形物を得た。
【0221】
化合物35b(2g)をジクロロメタン(20mL)に溶解し、続いて、BocO(4.4g)、4−ジメチルアミノピリジン(「DMAP」)(0.22g)を加えた。その反応混合物を、室温で、一晩撹拌し、酢酸エチル(100mL)で希釈し、水(100mL)およびブライン(100mL)で洗浄した。酢酸エチルを蒸発させ、そして得られた混合物をショートシリカゲルカラム(これは、1:1の酢酸エチルおよびヘキサンで溶出する)に通した。真空中で溶媒を除去し、そしてヘキサンから再結晶して、生成物として、白色固形物39bを得た。
【0222】
化合物39bをメタノール(30mL)中の2.0M NHに溶解し、そして室温で、一晩反応させた。その溶液を蒸発させ、そして酢酸エチル/ヘキサンから再結晶して、白色固形物41a(800mg)を得た。その濾液を蒸発させて、油状物として、43aの対応するメチルエステルを得た。
【0223】
化合物43a(800mg)を、ジオキサン(10mL)中の4.0M HClにて、室温で、2時間反応させ、その溶液を蒸発させて、45aのHCl塩を得た。
【0224】
45aのHCl塩をメタノール(10mL)および水(1mL)に溶解した。その溶液に2,4−ジクロロ−5−フルオロピリミジン(1g)および炭酸水素ナトリウム(500mg)を加え、そして室温で、一晩撹拌した。この溶液を水(100mL)で希釈し、そして酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。有機層を蒸発させ、そして酢酸エチル/ヘキサンから再結晶して、モノ−SNAr生成物(750mg)として、白色固形物を得た。
【0225】
4−フルオロ−3−メチルニトロベンゼン(4g)をメタノール(10mL)に溶解し、その溶液にメチルピペラジン(4mL)を加え、これを、一晩にわたって、100℃まで加熱し、次いで、水(100mL)で希釈した。この溶液を酢酸エチル(2×100mL)で抽出し、有機抽出物を蒸発させ、そして酢酸エチル/ヘキサンから再結晶して、黄色固形物として、3−メチル−4−(4−メチル)ピペラジノニトロベンゼンを得た。固形物をメタノール(50mL)に溶解し、そして10%Pd−Cを加えた。その反応溶液を、40psiのH下にて、1時間反応させた。濾過により触媒を除去し、そしてメタノールで洗浄した。その濾液を蒸発させて、3−メチル−4−(4−メチル)ピペラジノアニリンを得た。
【0226】
このモノ−SNAr生成物(700mg)を、メタノール(5mL)および水(0.5mL)の溶液中にて、触媒量のトリフルオロ酢酸と共に、100℃で、一晩にわたって、3−メチル−4−(4−メチル)ピペラジノアニリンと反応させた。その反応混合物を蒸発させ、そしてフラッシュカラムクロマトグラフィー(CHCl=1〜7%中のメタノール中の2.0M NH)で精製した。酢酸エチルおよびヘキサンから再結晶すると、白色固形物15a(700mg)が得られた。化合物15aをメタノール(10mL)に溶解し、そして室温で、30分間にわたって、ジオキサン(0.9mL)中の4.0M HClと反応させた。その溶液を蒸発させ、そして乾燥して、固形物を得た。冷メタノールおよび酢酸エチルから再結晶すると、15aのHCl塩が得られた。
【0227】
(7.8 3−アザ−4−オキソ−トリシクロ[4.2.1.0(2、5)]ノナ−7−エンの調製)
反応:
【0228】
【化61】

手順:1部:2,5−ノルボナジエン47(25.0mL、0.246モル)のCHCl(110mL、フレッシュボトル)溶液を、氷/NaCl浴(−10℃)にて、冷却した。これに、その温度を5℃未満で維持する速度で、CSI(21.4mL、0.246モル)のCHCl(45mL、フレッシュボトル)溶液を滴下する(この添加は、およそ1.25時間かかった)。この添加が完了すると、その反応混合物を、0〜5℃で、1時間撹拌し、次いで、冷却浴から除去し、そして20℃まで温めた。この反応混合物を水(60mL)でクエンチし、そして数分間激しく撹拌した。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、そしてNaSOで乾燥した。濃縮すると、淡褐色油状物が得られた。
【0229】
2部:NaSO(24.5g)、水(70mL)およびCHCl(30mL)の混合物を氷/NaCl浴で冷却した。1部から得た油状物を、CHClで、100mLまで希釈し、その温度を15℃未満で維持する速度で、上記混合物に滴下した(この添加は、およそ1.75時間かかった)。その反応混合物のpHをpHメーターでモニターし、そして10%NaOH(w/v)(必要に応じて)で調節することにより、塩基性に保った(pH7〜10)。この添加が完了すると、この反応混合物を、5〜10℃で、1時間撹拌した(最終pHは、8.5であった)。この反応混合物を分液漏斗に注ぎ、そしてCHCl層を分離した。この有機相は、濃厚でゲル様の固形懸濁液であった。それを水(およそ400mL)で希釈して、より自由に流動する溶液にした。水層をCHCl(4×100mL)でさらに抽出した。(あるいは、固形物は、遠心分離により、CHClから分離できる。次いで、これらの固形物は、(殆ど全て溶解するまで)、水で希釈でき、そしてCHClで抽出できる)。水層をCHCl(10×100mL)でさらに抽出した。CHCl抽出物を、生成物の存在について、TLCでモニターした。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥し、そしてセライトで濾過した。溶媒を除去すると、白色固形物(20.5.g、62%)として、所望生成物であるラセミ−2−エキソ−3−エンド 3−アザ−4−オキソ−トリシクロ[4.2.1.0(2、5)]ノナ−7−エン49が得られた。
【0230】
【化62】

(7.9 4−オキソ−3−第三級ブトキシカルボニルアザ−トリシクロ[4.2.1.0(2、5)]ノナ−7−エンの調製)
反応:
【0231】
【化63】

手順:CHCl中の3−アザ−4−オキソ−トリシクロ[4.2.1.0(2、5)]ノナ−7−エン(49;ラセミ−2−エキソ−3−エキソ;10.0g、74mmol)、(BOC)O(16.1g、74mmol)およびDMAP(1.1g)の均一混合物を、N下にて、室温で、24時間撹拌した。この反応混合物に、EtOAc(100mL)を加え、続いて、HO(100mL)を加え、さらに1時間撹拌した。有機層を分離し、そしてHO(2×100mL)で洗浄した。この有機層を無水NaSOで乾燥し、そして減圧下にて溶媒を除去して、4−オキソ−3−第三級ブトキシカルボニルアザ−トリシクロ[4.2.1.0(2、5)]ノナ−7−エン(51;ラセミ−2−エキソ−3−エキソ)(16.5g、70%)を得た;
【0232】
【化64】

(7.10 (±)ラセミ(2−エキソ−3−エキソ)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンからの立体異性的に純粋なジアステレオマーの調製および単離)
2−アミノビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−3−カルボキサミドの2−エキソ−3−エキソラセミ化合物から、表題化合物のラセミ混合物を調製した。
【0233】
反応:
【0234】
【化65】

手順:ゴム製隔壁および磁気撹拌棒を備え付けた丸底フラスコに、窒素の正圧下にて、ラセミN−BOC−p−ラクタム51(2.0g)を充填した。これに、酢酸エチル(25mL)を加え、続いて、水(25mL)中の30%アンモニアを加え、そして室温で、3時間撹拌した。酢酸エチル層を分離し、NaHCO(20mL)の5%水溶液で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、そして溶媒を蒸発させて、1.10gmのラセミN−BOCカルボキシアミド53を得た。
【0235】
反応:
【0236】
【化66】

手順:N入口および磁気撹拌棒を備え付けた丸底フラスコに、ラセミN−BOCラクタム51(2.00g、7.9mmol)を充填し、次いで、室温で、2時間にわたって、CHCl中の20%TFAで処理した。得られた溶液を、減圧下にて、濃縮した。高真空下にて、数時間にわたって、TFAの痕跡を除去して、中間体であるTFA塩(55、ラセミ)を得た。得られたラセミTFA塩55を、NaHCO(1.33g、15.84mmol)の存在下にて、室温で、48時間にわたって、MeOH:HO(20:10mL)中の2,4−ジクロロ−5−フルオロピリミジン10(1.58g、9.51mM)で処理した。その反応混合物をHO(25mL)で希釈し、NaClで飽和させ、そしてEtOAc(3×50mL)で抽出した。無水NaSOで乾燥するとすぐに、溶媒を蒸発させ、その残渣を(シリカゲル、CHClに次いで、CHCl中の2〜4%2N NH/MeOH)にかけて、1.3gのラセミモノ−SNAr生成物57を得た。
【0237】
反応:
【0238】
【化67】

手順:ラセミモノ−SNAr生成物57(1.1g、8mmol)、アニリン7(0.90g、4.4mmol)、TFA(0.6mL)およびメタノール(9mL)を充填した封管を、100℃で、24時間撹拌した。得られた粘稠で均一な溶液を濃縮し、その残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、CHClに次いで、CHCl中の2〜5%の2N NH/MeOH)にかけて、予想される2−エキソ−3−エキソラセミ2,4−ジアミノピリミジン誘導体60(1.12g;純度:95%)を得た:
鏡像異性体の単離:キラル分取HPLCクロマトグラフィーPhenomenex Chirex 3020 250×10mmカラム(これは、6mL/分の流速で、ヘキサン:ジクロロメタン:メタノールの35:63:2(容量:容量:容量)の混合物で溶出する)により、ラセミ化合物R1から、ジアステレオマーを分割した。9.44分で溶出する鏡像異性体は、E1鏡像異性体と命名し、そして12.74分で溶出する鏡像異性体は、E2鏡像異性体と命名した。
【0239】
(7.11 Chirazymeを使用する立体異性的に純粋な(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンの酵素的調製)
(7.11.1 立体異性的に純粋なN−Boc−β−ラクタム反応物の調製)
反応:
【0240】
【化68】

手順:4−オキソ−3−第三級ブトキシカルボニルアザ−トリシクロ[4.2.1.0(2、5)]ノナ−7−エン(51;ラセミ−2−エキソ−3−エキソ)(4.0g、17.02mmol)、樹脂結合/固定化キラザイムL−2、B型、c.f.(8.0g、BioCatalytics Inc.,Pasadena,CAから購入した)およびジイソプロピルエーテル(80mL)を充填した乾燥封管を、インキュベーター中にて、60℃で、60時間穏やかに振盪した。(ラセミN−BOC−β−ラクタム51の酵素的分割に続いて、プロトンNMRにかけた。鏡像異性的に純粋なN−BOCラクタム51aおよびN−BOCカルボン酸の第三級ブチル基の積分は、1:1の比で見られた)。得られた反応混合物を濾過し、そして固形樹脂をジイソプロピルエーテル(2×40mL)で洗浄した。その濾液を濃縮して、鏡像異性的に純粋なN−BOC−p−ラクタム51aおよびN−BOCカルボン酸の混合物(全質量:4.0gm)を得た。
【0241】
反応:
【0242】
【化69】

手順:ゴム製隔壁および磁気撹拌棒を備え付けた丸底フラスコに、窒素の正圧下にて、鏡像異性的に純粋なN−BOC−ラクタム7aおよびN−BOC カルボン酸(4.0g)の混合物を充填した。これに、酢酸エチル(50mL)を加え、続いて、水(50mL)中の25%アンモニアを加え、そして室温で、3時間撹拌した。その反応の進行をTLCでモニターした。酢酸エチル層を分離し、NaHCO(40mL)の5%水溶液で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、そして溶媒を蒸発させて、2.00gmの所望の鏡像異性的に純粋なN−BOCカルボキシアミド53aを得、これを、水溶液中のN−BOCアンモニウムカルボキシレートの後に保持した。
【0243】
(7.11.2 立体異性的に純粋なモノSNAr生成物の調製)
反応:
【0244】
【化70】

手順:N入口および磁気撹拌棒を備え付けた丸底フラスコに、鏡像異性的に純粋なN−BOC カルボキシアミド53a(2.00g、7.9mmol)を充填し、次いで、室温で、2時間にわたって、CHCl中の20%TFAで処理した。その反応の進行をTLCでモニターした。得られた溶液を、減圧下にて、濃縮した。数時間.高真空下にて、TFAの痕跡を除去して、鏡像異性的に純粋な中間体であるTFA塩55aを得た。得られたTFA塩55aを、MeOH:HO(20:10mL)中で、NaHCO(1.33g、15.84mmol)の存在下にて、室温で、48時間にわたって、2,4−ジクロロ−5−フルオロピリミジン 10(1.58g、9.51mmol)で処理した。その反応混合物をHO(25mL)で希釈し、NaClで飽和し、そしてEtOAc(3×50mL)で抽出した。無水NaSOで乾燥して溶媒を蒸発させるとすぐに、その残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、CHClに次いで、CHCl中の2〜4%の2N NH/MeOH)にかけて、1.2g(54%)の所望のモノ−SNAr生成物57aを得た。その鏡像異性体純度は、キラルHPLCで測定したとき、99%より高かった;[α]+61.10°(c 1.0、MeOH)。
【0245】
(7.11.3 立体異性的に純粋な(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンの調製)
反応:
【0246】
【化71】

手順:鏡像異性的に純粋なモノ−SNAr生成物57a(2.25g、8mmol)、アニリン7(1.80g、8.8mmol)、TFA(1.12mL)およびメタノール(18mL)を充填した封管を、100℃で、24時間撹拌した。得られた粘稠であるが均一な溶液を濃縮し、その残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、CHClに次いで、CHCl中の2〜5%の2N NH/MeOH)にかけて、予想される2,4−ジアミノピリミジン誘導体60a(2.28g、63%;純度:95%AUC;鏡像異性体純度:キラルHPLCで測定したとき、99%より高い)を得た。そのキラル分析データ、H NMRおよびLCMS分析により、E1と命名された鏡像異性体と同じであることが分かった;[α]RI +44.4°(c 1.0、MeOH)。
【0247】
(7.12 Novazyme435酵素を使用する立体異性的に純粋な(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンの酵素的調製)
(7.12.1 立体異性的に純粋なβ−ラクタムの調製)
反応:
【0248】
【化72】

手順:圧力フラスコ中にて、固定化リポラーゼ(8.0g、Sigma製、製造番号L4777)、β−ラクタム49(ラセミ:2−エキソ−3−エキソ)(4.0g、7.4mmol)および水(0.13mL、7.4mmol)をジイソプロピルエーテル250mLに加えた。その混合物を窒素で20分間脱気し、封止し、そして70℃で、14日間インキュベートした。この混合物を室温まで冷却し、セライトで濾過し、そしてジイソプロピルエーテル300mLで洗浄した。合わせた濾液を乾燥状態まで濃縮し、その残渣をジイソプロピルエーテルから結晶化して、無色針状物(1.22g、61%)として、鏡像異性的に純粋なβ−ラクタム49を得た。この鏡像異性体の純度は、キラルHPLCで測定したとき、99%より高かった。
【0249】
(7.12.2 立体異性的に純粋な2−N−Boe−アミノ−3−アミノカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エンの調製)
反応:
【0250】
【化73】

手順:CHCl中の鏡像異性的に純粋な3−アザ−4−オキソ−トリシクロ[4.2.1.0(2、5)]ノナ−7−エン49a(1.1g、8.2mmol)、(BOC)O(2.76g、12.3mmol)およびDMAP(100mg)の均一混合物を、N下にて、室温で、3時間撹拌して、鏡像異性的に純粋なN−BOCラクタム51aを得、これを、単離することなく、さらに使用した。その反応混合物に、25%水酸化アンモニウム水溶液20mLを加え、そして撹拌をさらに4時間継続した。水を加え、この反応混合物をジクロロメタン(2×50ml)で抽出した。合わせた有機相をHCl水溶液(5%)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、そして減圧下にて乾燥状態まで減らして、白色固形物として、鏡像異性的に純粋なN−BOCカルボキシアミド53a(2.51g)を得、これを、さらに精製することなく、次の工程で使用した。
【0251】
(7.12.3 立体異性的に純粋なモノSNAr生成物(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノコボニル(Aminocobonyl)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−2−クロロ−5−フルオロ−4−アミノピリジンの調製)
反応:
【0252】
【化74】

手順:鏡像異性的に純粋なN−BOCカルボキシアミド53a(2.51g)をジクロロメタン10mLに溶解し、そしてTFA(10mL)で処理した。その混合物を、室温で、1時間撹拌し、そして減圧下にて、乾燥状態まで濃縮した。その残渣をトルエンに懸濁し、再度、乾燥状態まで濃縮した。得られた固形物をメタノール:水(30mL:3mL)に溶解し、そして炭酸水素ナトリウム1.5gで処理した。5−フルオロ−2,4−ジクロロピリミジン(3g、17.9mmol)を加え、その混合物を、室温で、2日間撹拌した。真空下にて揮発性物質を除去し、その残渣をブラインに懸濁した。沈殿物を濾過し、乾燥し、そしてカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン−メタノール、20:1)にかけて、白色固形物(1.7g、74%)として、所望の鏡像異性的に純粋なモノ−SNAr生成物57aを得た。
【0253】
(7.12.4 立体異性的に純粋な(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンの調製)
反応:
【0254】
【化75】

手順:イソプロパノール4mL中のアニリン7(400mg、1.95mmol)、鏡像異性的に純粋なモノ−SNAr生成物57a(400mg、1.41mmol)およびTFA(0.2mL)の均一混合物を、封管中にて、100℃で、20時間撹拌した。この混合物を室温まで冷却し、ジエチルエーテル2mLで希釈し、得られた沈殿物を濾過し、そしてジエチルエーテルで洗浄した。残留している固形物を水に溶解し、そして25%水酸化アンモニウム水溶液で処理した。得られた沈殿物を濾過し、水で洗浄し、そして乾燥して、灰白色固形物として、527mg(83%)の所望生成物である2,4−ジアミノピリミジン誘導体60aを得た。LCMSにより、純度を測定したところ、97%より高く、その鏡像異性体の純度は、キラルHPLCで測定したところ、99%より高かった。キラル分析データ、H NMRおよびLCMS分析は、命名したE1である鏡像異性体と同じであ」った。
【0255】
(7.13 キラル補助剤として(R)−メチル−p−メトキシベンジルアミンを使用する立体異性的に純粋な化合物の調製)
(7.13.1 2−エキソ−3−エキソラセミアミンの調製)
反応:
【0256】
【化76】

手順:乾燥THF(75mL)中の4−オキソ−3−第三級ブトキシカルボニルアザ−トリシクロ[4.2.1.0(2、5)]ノナ−7−エン(51;ラセミ−2−エキソ−3−エキソ)(9.2g、40mmol)および(R)−メチル−4−メトキシベンジルアミン13(18、24g、48mmol)の均一混合物を、室温で、48時間撹拌した。その反応混合物を濃縮し、ヘキサン(5mL)に懸濁し、超音波処理し、そして固形物を濾過により分離して、ジアステレオマー61aおよび61bの混合物(12mg)を得た。あるいは、この精製は、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサンに次いで、ヘキサン中の5%、10%、20%および50%EtOAc)を使用して、行うことができる。
【0257】
(7.13.2 2−エキソ−3−エキソラセミモノSNAr生成物の調製に続いて結晶化反応による鏡像異性的に純粋な化合物の分離)
反応:
【0258】
【化77】

手順:CHCl中のジアステレオ異性体61aおよび61b(6.0g、17mmol)、TFA(20mL)の均一混合物を、室温で、2時間撹拌した。TLCを使用して、この反応の進行をモニターした。得られた反応物を乾燥状態まで濃縮し、そして高真空下にて、数時間乾燥して、中間体63aおよび63bのジアステレオ異性体混合物を得た。次いで、この混合物を、NaHCO(5.7g、68mmol)の存在下にて、MeOH:HO(それぞれ50mL)中で、室温で、24時間にわたって、2,4−ジクロロ−5−フルオロピリミジン10(3.4g、20mmol)と反応させた。次いで、この反応混合物をNaCl−飽和水(50mL)で希釈し、そしてCHClで抽出した。抽出物を無水NaSOで乾燥し、続いて、減圧下にて溶媒を除去して、残渣を得、これを、クロマトグラフィー(シリカゲル、CHClに次いで、CHCl中の2%の2N NH/MeOH)にかけた。このクロマトグラフィー精製により、ジアステレオ異性体65aおよび65bの混合物(4.0g)(逆相LCMSにおいて、明らかな分離と共に、1:1の比が見える)が得られた。得られた4.0グラムを、EtOAc:ヘキサン(30:150mL;v/v)を使用して結晶化すると、中間体65aの結晶性物質が得られ、これを、X線結晶構造により、確認した;化学的純度:96%および%de:96%。[α]−36.7°(c、0.18 MeOH)。他の異性体を含有する母液は、%deが低く(70〜80%)、これは、ジアステレオ異性体65bであると推測される。
【0259】
(7.13.3 キラル補助剤を含有する立体異性的に純粋な生成物の調製)
反応:
【0260】
【化78】

手順:MeOH(10mL)中のジアステレオ異性体65a(1.42g、3.4mmol)、アニリン7(0.834g、4.0mmol)およびTFA(700mg)の混合物を、封管中にて、100℃で、24時間加熱した。得られた残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、CHClに次いで、CHCl中の2%の2N NH/MeOH)にかけて、無色固形物(化学的純度:96%)として、生成物67aを得た。
【0261】
(7.13.4 キラル補助剤の開裂)
17aからのキラル補助剤の開裂は、困難であることが分かったので、従って、以下のようにして、中間体化合物16aおよび16bからのキラル補助剤の開裂に続いて、アニリン4との第二SNAr反応を実行した。
【0262】
(7.13.5 立体異性的な純粋な中間体65aからのキラル補助剤の開裂および立体異性的に純粋な(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンの調製)
反応:
【0263】
【化79】

手順:キラル補助剤65aとのモノ−SNAr生成物を、CHCl:HO中にて、室温で、DDQ(3当量)と反応させて、所望のモノ−SNAr生成物11aを得た。このモノ−SNAr生成物をカラムクロマトグラフィーで精製すると、酵素経路によって得た化合物11aと同じであることが分かり、このことは、キラル分析用HPLC、LCMSおよびH NMRで確認した。さらに、MeOH:TFA中にて、100℃で、封管中にて、24時間にわたって、モノ−SNAr生成物11aとアニリン7とを反応させると、所望生成物60aが得られた。それをカラムクロマトグラフィーで精製し、そしてH NMR、LCMSおよびキラル分析用HPLC、LCMSおよびHNMRで分析した。このキラル分析用HPLC、LCMSおよびHNMR分析により、生成物60aに対するデータがE1と命名した鏡像異性体と一致することが明らかとなった。
【0264】
(7.13.6 中間体65bからのキラル補助剤の開裂および立体異性的に純粋な(1S,2R,3S,4R)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンの調製)
反応:
【0265】
【化80】

手順:モノ−SNAr生成物65bを、CHCl:HO中にて、室温で、DDQ(3当量)と反応させて、所望のモノ−SNAr生成物11bを得た。このモノ−SNAr生成物をカラムクロマトグラフィーで精製すると、酵素経路によって得たものと異なることが分かり、このことは、キラル分析用HPLCで確認した。さらに、MeOH:TFA中にて、100℃で、封管中にて、24時間にわたって、モノ−SNAr生成物11bとアニリン7とを反応させると、所望生成物60bが得られた。それをカラムクロマトグラフィーで精製し、そしてH NMR、LCMSおよびキラル分析用HPLC、LCMSおよびHNMRで分析した。このキラル分析用HPLC、LCMSおよびHNMR分析により、生成物60bに対するデータがE2と命名した鏡像異性体と一致することが明らかとなった。[α]−85.9°(c、1.17 MeOH)。
【0266】
(7.14 HCl塩の調製)
下記のようにして、2−エキソ−3−エキソラセミ化合物R1化合物60および立体異性的に純粋な鏡像異性体E1化合物60aのHCl塩を調製した。これらのHCl塩は、それぞれ、ラセミ化合物R3(化合物228)および鏡像異性体E3(化合物234)と命名した。
【0267】
(7.14.1 ラセミN4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミン塩化水素塩の調製)
2−エキソ−3−エキソラセミN4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミン(ラセミ化合物R1;化合物60)(0.140g、0.3mmol)のMeOH(3mL)溶液に、0℃で、HCl(4M、ジオキサン、0.170mL、0.681mmol)を滴下し、次いで、0℃で、1時間、そして室温で、15分間撹拌した。その透明な均一溶液を濾過し、濃縮し、そしてEtOHに再溶解した。この含エーテル溶液を抗溶媒(EtOAC)で沈殿させると、沈殿物が得られ、これを単離して、2−エキソ−3−エキソ ラセミN4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンビス塩化水素塩(ラセミ化合物R2;化合物185)を得た。LCMS:純度:98%;MS(m/e):453(MH)。
【0268】
(7.14.2 立体異性的に純粋な(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミン塩化水素塩の調製)
ラセミ化合物R1(化合物60)の調製(上記)と同様の様式で、2当量のHCl(4M、ジオキサン)と、立体異性的に純粋な(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミン(鏡像異性体E1;化合物60a)とを相互作用させると、立体異性的に純粋な(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミン塩化水素塩(鏡像異性体E3)(化合物234)が得られた。LCMS:純度:97%;MS(m/e):453(MH+);[α]+46.3°(c、0.04 MeOH)。
【0269】
(7.15 他の化合物の調製)
上記合成および/またはスキーム(I)を常套的に適応することにより、構造式(I)に従った種々の他の化合物を調製した。これらの化合物は、それらのクロマトグラフィー、NMRおよび/またはスペクトルデータと共に、以下の表1で提示する。物理的な特性付けデータが提示されていない化合物は、単一ジアステレオマーとして、合成または精製しなかった。
【0270】
(7.16 インビトロでの細胞増殖の阻止)
本明細書中に記載される多くの種々の化合物を、標準的なインビトロ抗増殖アッセイを使用して、増殖を阻害する能力についてA549細胞およびH1299細胞に対して試験した。6ポイントアッセイにおいて測定したIC50値を、表1に提供する。表1において、「+」は、10μM以下のIC50値を示し、「++」は、1μM以下のIC50値を示し、「+++」は、100μM以下のIC50値を示し、そして「−」は、10μMより大きいIC50値を示す。ブランクは、化合物を特定の細胞株に対して試験しなかったことを示す。
【0271】
【化81】

【0272】
【化82】

【0273】
【化83】

【0274】
【化84】

【0275】
【化85】

【0276】
【化86】

【0277】
【化87】

【0278】
【化88】

【0279】
【化89】

【0280】
【化90】

【0281】
【化91】

【0282】
【化92】

【0283】
【化93】

【0284】
【化94】

【0285】
【化95】

【0286】
【化96】

【0287】
【化97】

【0288】
【化98】

【0289】
【化99】

【0290】
【化100】

【0291】
【化101】

【0292】
【化102】

【0293】
【化103】

【0294】
【化104】

【0295】
【化105】

【0296】
【化106】

【0297】
【化107】

【0298】
【化108】

【0299】
【化109】

【0300】
【化110】

【0301】
【化111】

【0302】
【化112】

【0303】
【化113】

【0304】
【化114】

【0305】
【化115】

【0306】
【化116】

【0307】
【化117】

【0308】
【化118】

【0309】
【化119】

【0310】
【化120】

【0311】
【化121】

【0312】
【化122】

【0313】
【化123】

【0314】
【化124】

【0315】
【化125】

【0316】
【化126】

【0317】
【化127】

【0318】
【化128】

【0319】
【化129】

【0320】
【化130】

【0321】
【化131】

【0322】
【化132】

【0323】
【化133】

【0324】
【化134】

【0325】
【化135】

【0326】
【化136】

【0327】
【化137】

【0328】
【化138】

【0329】
【化139】

【0330】
【化140】

【0331】
【化141】

【0332】
【化142】

【0333】
【化143】

【0334】
【化144】

【0335】
【化145】

また、シスラセミ化合物15、(1S,2R)鏡像異性化合物15aおよび(1S,2R)鏡像異性化合物15bを、DU145(前立腺癌腫)細胞株、HCT116(結腸直腸癌腫)細胞株およびMiaPaCa−2(膵臓癌腫)細胞株に対して試験した。ラセミ化合物(化合物15)および(1S,2R)鏡像異性体(化合物a)は、これらの細胞株に対し、1μM未満のIC50を示した。(1S,2R)鏡像異性体(化合物b)は、5μM未満のIC50を示した。
【0336】
特定の化合物を、標準的抗増殖アッセイにおいて増殖を阻害する能力について、他の細胞型に対して試験した。試験した種々の細胞株としては、以下が挙げられる:A549(肺癌腫);ASPC−1(膵臓腺癌);BXPC−3(膵臓腺癌(pabcreatic adenocarcinoma));CaOV−3(卵巣腺癌);COLO 205(結腸直腸腺癌);DU145(前立腺癌腫);ES−2(卵巣明細胞癌腫);H1299(非小細胞肺癌)H1155(非小細胞肺癌);H460(大細胞肺癌);HELA(子宮頚部腺癌);HL160(前骨髄芽細胞白血病);K562(骨髄慢性骨髄性白血病);L1210(マウスリンパ性白血病);MiaPaCa−2(膵臓癌腫);MOLT4(Tリンパ芽球急性リンパ芽球性白血病);OVCAR−3(卵巣腺癌);MOLT3(Tリンパ芽球急性リンパ芽球性白血病);OVCAR−8(卵巣癌腫);PC3(前立腺腺癌);SK−OV−3(卵巣腺癌);SU86.86(膵臓癌腫);SW620(結腸直腸腺癌);THP−1(単球球性単球性白血病);TOV−21G(卵巣明細胞癌腫);U20S(骨肉腫);ならびにU937(細網肉腫)。
【0337】
ラセミ化合物60およびそのビスHCl塩(化合物228;ラセミ化合物(racdemate)R3)、ラセミ化合物60r2、ジアステレオマー(diasteromer)60aおよびそのビスHCl塩(化合物234;鏡像異性体E3)、ならびにジアステレオマー60bによって得られたIC50値を、以下の表2において提供する。表2において、「+」は1μM以下のIC50値を示し、「++」は20nM以下のIC50値を示し、「+++」は10nM以下のIC50値を示し、そして「−」は1μMを超えるIC50値を示す。空欄は、その特定の細胞株に対して試験しなかったことを示す。
【0338】
【表2】

(7.17 機能性細胞アッセイにおけるオーロラキナーゼ類の阻害)
鏡像異性体E1およびE2(それぞれ化合物60aおよび60b)を、オーロラキナーゼ−Bを阻害する能力について、機能性細胞アッセイ(基質であるヒストンH3のリン酸化を含む)において試験した。このアッセイのために、A549細胞を、1日目の午後遅くにマイクロタイター皿のウェル内に播種した(100μlのF12K培地中で5000細胞/ウェル)。細胞を、一晩増殖させた(37℃、5% CO)。2日目に、50μlのノコダゾール(培地中1μM)を各ウェルに添加し、333nMの終濃度にした。細胞を、同じ条件下で、さらに18時間増殖させた。
【0339】
3日目に、種々の濃度の試験化合物の50μlのアリコートを、ウェルに添加した。試験化合物を、2mMストック溶液(DMSO中)の2倍の連続希釈によって調製した。次いで、DMSO中の希釈した化合物を、培地でさらに1:50に希釈し、4×試験化合物、98%培地、2%DMSOを含む最終溶液を得た。インキュベーション後、この培地/試験化合物を洗浄し、そして細胞を2%パラホルムアルデヒドで固定した(Dulbeccoリン酸緩衝化食塩水「DPBS」中で、25μl/ウェル、20mmを超えるインキュベーション)。固定した細胞を、DPBS(200μl/ウェル)で1回洗浄し、ホスホ−ヒストンH3で染色し(細胞シグナリング技術;DPBS中1:500、10%正常ヤギ血清「NGS」、0.05% Triton X−100;室温で1〜2時間)、そしてDPBS(200μl/ウェル)で2回洗浄した。次いで、この細胞を、蛍光色素で標識された二次抗体(二次抗体ロバ抗マウスAlexFluor 488(Invitrogen Molecular Probes;1:2000))により室温で1時間、そしてDAPI(lmg/mlストック溶液の1:15,000)により室温で1時間染色し、DPBS(200μl/ウェル)で3回洗浄し、そして4℃のDPBS(100μl/ウェル)下で分析の準備が整うまで保存した。
【0340】
Plan−NEOFLUAR 10×対物レンズ、Hamamatsu Lightningcure 200水銀−キセノン光源およびOmega Optical XF57四重フィルターを備えたZeiss Axiovert S100倒立蛍光顕微鏡を、全てのデータ収集に使用した。このシステムは、X/Y/Zコントロール、Ludlフィルターホイール、Zymark TwisterロボットアームおよびQuantixデジタルカメラを備えるLudl Mac2000電動ステージ(Roper Scientific)に備え付けられる。全てのハードウェアを、ImagePro 4.5により、ScopePro/StagePro 4.1モジュール(Media Cybernetics)を用いて、Win2000を実行しているPC上で管理した。ハードウェア管理および画像収集を自動化するため、Visual BasicスクリプトをImageProのために作成した。焦点合わせを、StageProに慣用的に含まれるauto−focusソフトウェアによって実施し、最大局所コントラストを使用して、各ウェルにおいて1回捕捉される焦点のZ系列から得られる最高の面を決定した。一旦適切な焦点が達成された後、画像を3×3グリッドパターン(焦点合わせの位置に隣接するがこれを含まない画像)で捕捉した。画像を、細分化(segmentation)およびImageProソフトウェアパッケージ中に含まれる形態学的慣用手法を用いて、12ビットフォーマットで捕捉しそして分析した。同定された核を計数し、そして実験条件に沿う各細胞について、MySQL 4.0.14を用いてデータベースにピクセルデータを保存した。実験結果およびグラフ作成のその後の分析を、Matlab 6.5を用いて行った。
【0341】
データのホスホ−ヒストンH3分析を、Facsファイルに変換し、そしてFlowJoを用いて分析した。ホスホ−H3細胞の百分率を、各化合物濃度でプロットし、オーロラB阻害についてのEC50を決定した。
【0342】
結果。鏡像異性体E1(化合物60a)は、このアッセイにおいて、オーロラキナーゼ−Bにより、約7nMのIC50で阻害された。対照的に、鏡像異性体E2(化合物60b)のIC50は、2.49μMであり、約350倍高かった。
【0343】
(7.18 化合物60aは、インビボで腫瘍を縮小する)
化合物60aのビスHCl塩(鏡像異性体E3;化合物234)の能力を、A549腫瘍およびColo205腫瘍を縮小させる能力について、SCIDマウスの標準的異種移植治療モデルにおいて試験し、ならびに、Colo205腫瘍およびMiaPaCa腫瘍を縮小させる能力について、SCIDマウスの標準的異種移植再発モデルにおいて試験した。明らかな腫瘍が表れ、そして事前に選択した容量(処置モデルにつき約100mm、再発モデルにつき300mmより大)であった場合、以下の表3(処置プロトコール))および表4(再発プロトコール)に特定した量でかつ特定した投薬レジメンに従い、マウスに試験化合物を投与した。
【0344】
【表3】

【0345】
【表4】

結果。処置モデルにおける、Colo205腫瘍増殖における化合物234の阻害効果を、図1および図2に図示する。毎日の投薬レジメンの結果を、図1に示す;パルス投薬レジメンの結果を、図2に示す。両投薬レジメンは、試験した全ての投薬レベルについてビヒクルコントロールと比較して、腫瘍増殖速度の有意な(p<0.050)低下を示した。549腫瘍は、処置に対しより反応性が低く、5日間投薬/2日間休薬および10mg/kg qd(p>0.05)の用量レベルでの投薬レジメン後に、平均腫瘍容積の約40%の減少を生じた。
【0346】
再発モデルにおけるColo205腫瘍増殖における化合物234の阻害効果を、図3に図示する。再発モデルにおけるMiaPaCa腫瘍における化合物234の効果を、図4に図示する。腫瘍増殖速度における有意な低下を、両腫瘍系統で観察した。これらの低下は、投与の様式とは独立していた。さらに、MiaPaCa腫瘍において観察された低下は、タキソールによって観察された低下と類似していた(図4を参照)。
【0347】
本発明は、理解し易くするために、ある程度詳細に記述しているものの、添付の請求の範囲内において、ある種の変更および改良が実行され得ることは明らかである。従って、記述した実施態様は、限定ではなく例示と見なされ、本発明は、本明細書中で示した詳細には限定されず、添付の請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内で変更され得る。
【0348】
本願全体にわたって引用した全ての文献および特許の参考文献の内容は、全ての目的について、本願で参考として援用されている。
【図面の簡単な説明】
【0349】
【図1】図1は、標準的な異種移植治療および回帰モデルにおける種々の異なる種類の腫瘍に対する化合物234(鏡像異性体E3)の阻害効果を図示している。
【図2】図2は、標準的な異種移植治療および回帰モデルにおける種々の異なる種類の腫瘍に対する化合物234(鏡像異性体E3)の阻害効果を図示している。
【図3】図3は、標準的な異種移植治療および回帰モデルにおける種々の異なる種類の腫瘍に対する化合物234(鏡像異性体E3)の阻害効果を図示している。
【図4】図4は、標準的な異種移植治療および回帰モデルにおける種々の異なる種類の腫瘍に対する化合物234(鏡像異性体E3)の阻害効果を図示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(I)に従った化合物:
【化1】

該化合物は、それらの活性塩、水和物、溶媒和物およびN−オキシドを含み、ここで:
は、必要に応じて置換したアリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル基である;
は、飽和または不飽和で架橋または未架橋のシクロアルキル環であり、該シクロアルキル環は、R置換基を含むが、但し、該シクロアルキル環が飽和架橋シクロアルキルあるいは不飽和架橋または未架橋シクロアルキルであるとき、このR置換基は、任意である;
は、水素、必要に応じて置換した低級アルキルおよび電気陰性基から選択される;そして
は、アミドまたはエステル基である、
化合物。
【請求項2】
が、電気陰性基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、ニトロ、シアノ、ハロ、フルオロ、ブロモ、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシから選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
が、次式の置換フェニルである、請求項1に記載の化合物:
【化2】

ここで、R11、R12およびR13の1個は、水可溶化基であり、そしてR11、R12およびR13の他の2個は、互いに別個に、水素、低級アルキル、(C〜C)アルキル、メチル、ハロ、クロロ、フルオロ、ヒドロキシ、(C〜C)ヒドロキシアルキル、−O(CH−R、−NR、−C(O)NR、−C(O)NHRおよび−C(O)NHCHから選択され、ここで:
は、水素、低級アルキル、低級シクロアルキル、(C〜C14)アリール、フェニル、ナフチル、(C〜C20)アリールアルキルおよびベンジルから選択される;
は、他のものとは別個に、−OR、(C〜C)ハロアルキルオキシ、−OCF、−SR、−NR、ハロゲン、−CF、−CN、−NC、−OCN、−SCN、−NO、−NO、−N、−S(O)R、−S(O)、−S(O)OR、−S(O)NR、−S(O)NR、−OS(O)R、−OS(O)、−OS(O)OR、−OS(O)NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(NH)NR、−C(NR)NR、−C(NOH)R、−C(NOH)NR、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(O)NR、−OC(NH)NRおよび−OC(NR)NRから選択される;
各Rは、他のものとは別個に、Rであるか、あるいは、同じ窒素原子に結合された2個のRは、この窒素原子と一緒になって、5員〜8員ヘテロシクロアルキル基を形成し、該ヘテロシクロアルキル基は、必要に応じて、1個〜3個の追加ヘテロ原子基を含み得、該追加ヘテロ原子基は、O、S、N−(CH−R、N−(CH−C(O)R、N−(CH−C(O)OR、N−(CH−S(O)、N−(CH−S(O)ORおよびN−(CH−C(O)NRから選択され、ここで、yは、0〜6の範囲の整数であり、そして、必要に応じて、1個またはそれ以上の同一または異なるRおよび/または低級アルキル置換基を含み得る;
xは、1〜6の範囲の整数;そして
yは、0〜6の範囲の整数である、
化合物。
【請求項5】
前記水可溶化基が、
【化3】

モルホリノ、ピペリジニル、(C1〜C6)N−アルキルピペリジニル、N−メチルピペリジニル、ピペラジニル、(C1〜C6)N−アルキルピペラジニル、N−メチルピペラジニル、N−エチルピペリジニル、N−エチルピペラジニル、ピロリジニル、N−アルキルピロリジニル、N−メチルピロリジニル、ジアゼピニル、N−エチルピロリジニル、N−アルキルアゼピニル、N−メチルアゼピニル、N−エチルアゼピニル、ホモピペラジニル、N−メチルホモピペラジニル、N−エチルホモピペラジニルおよびイミダゾイルから選択され、ここで、Yが、CHおよびNから選択され、Zが、CH、O、S、N、NH、N−(CH−R、N−(CH−C(O)R、N−(CHC(O)OR、N−(CHS(O)、N−(CHS(O)ORおよびN−(CHC(O)NRから選択され、そしてR、R、Rおよびyが、定義したとおりである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
11が、水素であり、そしてR12およびR13の1個が、前記水可溶化基である、請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
12が、前記水可溶化基であり、そしてR13が、水素、(C〜C)アルキル、メチルおよび電気陰性基から選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記電気陰性基が、(C〜C)アルコキシ、メトキシ、クロロ、フルオロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、−(CH−ORおよび−(CH−C(O)NRHRから選択され、ここで、xが、先に定義したとおりであり、そしてRが、水素、低級アルキルおよび(C〜C)アルカニルから選択される、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
が、3−メチル−4−(1−メチル〜ピペラジン−4−イル)フェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
が、
【化4】

から選択され、ここで:
は、O、S、N、NH、N−(CH−R、N−(CH−C(O)R、N−(CH−C(O)OR、N−(CH−S(O)、N−(CH−S(O)ORおよびN−(CH−C(O)NRから選択される;
は、O、SおよびS(O)から選択される;
各Rは、他のものとは別個に、Rであるか、あるいは、同じ窒素原子に結合された2個のRは、この窒素原子と一緒になって、5員〜8員ヘテロシクロアルキル基を形成し、該ヘテロシクロアルキル基は、必要に応じて、1個〜3個の追加ヘテロ原子基を含み得、該追加ヘテロ原子基は、O、S、N−(CH−R、N−(CH−C(O)R、N−(CH−C(O)OR、N−(CH−S(O)、N−(CH−S(O)ORおよびN−(CH−C(O)NRから選択され、そして、必要に応じて、1個またはそれ以上の同一または異なる低級アルキル置換基を含み得る;
yは、0〜6の範囲の整数である;そして
点線を含む結合は、単結合または二重結合であり得る、
請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
が、式
【化5】

の置換未架橋飽和低級アルキルであり、ここで、xが、1〜6の範囲の整数であるか、または
【化6】

【化7】

から選択される置換不飽和未架橋低級シクロアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
(1S,2R)、(1R,2S)および/または(1R,2R)ジアステレオマーの1個またはそれ以上に富んでいる、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
(1R,2S)ジアステレオマーに富んでいる、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
(1S,2S)ジアステレオマーを実質的に含まない、請求項11に記載の化合物。
【請求項15】
(1R,2S)ジアステレオマーで実質的に純粋である、請求項11に記載の化合物。
【請求項16】
が、
【化8】

から選択される不飽和未架橋低級シクロアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
(1S,3Sまたは4S)、(1S,3Rまたは4R)、(1R,3Sまたは4S)および(1R,3Rまたは4R)から選択される1個またはそれ以上の各個のジアステレオマーに富んでいる、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
(1R,3Sまたは4S)ジアステレオマーに富んでいる、請求項16に記載の化合物。
【請求項19】
(1S,3Sまたは4S)ジアステレオマーを実質的に含まない、請求項16に記載の化合物。
【請求項20】
(1R,3Sまたは4S)ジアステレオマーで実質的に純粋である、請求項16に記載の化合物。
【請求項21】
が、式
【化9】

の飽和または不飽和架橋シクロアルキルであり、ここで、点線を含む結合が、単結合または二重結合であり得る、請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
(2−エキソ、3−エキソ)または(2−エンド、3−エンド)シスラセミ化合物である、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
(1R,2R,3S,4S)ジアステレオマーに富んでいる、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
(1R,2R,3S,4S)ジアステレオマーで実質的に純粋である、請求項22に記載の化合物。
【請求項25】
構造式(V)に従った中間体化合物:
【化10】

ここで、RおよびRは、請求項1において定義したとおりであり、そしてLGは、脱離基であるが、但し、Rは、2−アミノカルボニルシクロペンタ−1−イルあるいはそれらのラセミ化合物またはジアステレオマーではない、
中間体化合物。
【請求項26】
前記脱離基が、四級アンモニウム塩、−S(O)Me、−SMeおよびハロから選択される、請求項25に記載の中間体化合物。
【請求項27】
請求項1に記載の化合物と、担体、賦形剤および/または希釈剤とを含有する組成物。
【請求項28】
前記担体、賦形剤および/または希釈剤が、医薬用途に受容可能である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
細胞の増殖を阻止する方法であって、該細胞を、その増殖を阻止するのに有効な量の請求項1に記載の化合物と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項30】
前記細胞が、腫瘍細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記腫瘍細胞が、肺、大腸、乳房、胃、卵巣、子宮頚部、黒色腫、腎臓、前立腺、リンパ腫、神経芽細胞腫、膵臓、膀胱または肝臓の腫瘍細胞である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
Auroraキナーゼの活性を阻害する方法であって、該Auroraキナーゼを、その活性を阻害するのに有効な量の請求項1に記載の化合物と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項33】
単離または部分的に単離されたAuroraキナーゼを使ってインビトロで実行される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
Auroraキナーゼを発現する細胞を使ってインビトロで実行される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
Auroraキナーゼ媒介プロセスを阻害する方法であって、Auroraキナーゼを発現する細胞を、Auroraキナーゼ媒介プロセスを阻害するのに有効な量の請求項1に記載の化合物と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項36】
前記Auroraキナーゼ媒介プロセスが、有糸分裂を阻害する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞が、腫瘍細胞である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞が、インビトロアッセイにおいて測定されるそのIC50に等しいかそれより高い濃度の前記化合物と接触される、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
Auroraキナーゼ媒介疾患を治療する方法であって、それを必要とする被験体に、該疾患を治療するのに有効な量の請求項1に記載の化合物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項40】
前記Auroraキナーゼ媒介疾患が、増殖疾患である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記増殖疾患が、癌である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記癌が、転移性腫瘍である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記癌が、肺癌、大腸癌、乳癌、胃癌、卵巣癌、子宮頚癌、黒色腫、腎臓癌、前立腺癌、リンパ腫、神経芽細胞腫、膵臓癌、膀胱癌および肝臓癌から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記化合物が、医薬組成物の形態で投与される、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記化合物が、経口投与される、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記化合物が、静脈内投与される、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記被験体が、ヒトである、請求項39に記載の方法。
【請求項48】
前記化合物が、インビトロアッセイで測定したとき、該化合物のIC50またはそれ以上である血清濃度を達成するのに有効な量で、投与される、請求項39に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2007−538092(P2007−538092A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527426(P2007−527426)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/017470
【国際公開番号】WO2005/118544
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(504294145)ライジェル ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (63)
【Fターム(参考)】