説明

シャフト型リニアモータの位置決め装置

【課題】リニアスケールによる高精度な位置決めを行うものでありながら、その検出区間を限定して磁気スケールの設置範囲を小さくすることにより、コンパクト化が求められる分野でも利用することができるようになり、しかも、磁気スケールが設置されていない区間においても、可動子の位置検出を可能にする。
【解決手段】 可動子3の直線駆動範囲に部分的に設定された検出区間で位置検出を行う第一位置検出手段4Aと、直線駆動範囲全域で位置検出を行う第二位置検出手段4Bとを備え、第一位置検出手段4Aは、精密な位置検出が可能なリニアスケールで構成し、第二位置検出手段4Bは、可動子3に設けられる磁気センサSでシャフト2の磁束を検出することにより可動子3の位置検出を行うものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動子をシャフトに沿って直線的に駆動させるシャフト型リニアモータの位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、直線駆動する電気アクチュエータとしてシャフト型リニアモータが注目されている。この種のシャフト型リニアモータは、複数の棒状磁石が直列状に配列されたシャフトと、該シャフトにスライド自在に外嵌する可動子とを備え、該可動子の内周部に設けられるコイルの励磁により、可動子を直線的に駆動させる。このような構成によれば、コギングや速度ムラが少ないので、様々な分野での応用が検討されている。
【0003】
シャフト型リニアモータを位置決め制御する場合は、通常、可動子の位置を検出する位置検出手段が別途付加される(例えば、特許文献1〜3参照)。この種の位置検出手段としては、リニアスケール(リニアエンコーダ)が一般的であり、精密な位置決めが可能になる。しかしながら、リニアスケールは、可動子に設けられる磁気ヘッド(位置情報読み取り部)と、該磁気ヘッドの移動軌跡に沿って対向状に配置される磁気スケール(位置情報記憶部)とからなり、磁気ヘッドで磁気スケールの磁気目盛を読み取ることにより可動子の位置を検出するので、シャフトの全長に亘って磁気スケールを並設しなければならない。その結果、シャフト型リニアモータの周辺が大型化し、コンパクト化が求められる分野での利用が制限されるという問題があった。
【特許文献1】特開2004−125699号公報
【特許文献2】特開2004−129440号公報
【特許文献3】特開2004−129441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の如き問題点を一掃すべく創案されたものであって、リニアスケールによる高精度な位置決めを行うものでありながら、その検出区間を限定して磁気スケールの設置範囲を小さくすることにより、コンパクト化が求められる分野でも利用することができるようになり、しかも、磁気スケールが設置されていない区間においても、可動子の位置検出を行うことができるシャフト型リニアモータの位置決め装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明のシャフト型リニアモータの位置決め装置は、複数の棒状磁石が直列状に配列されたシャフトと、該シャフトにスライド自在に外嵌する可動子とを備え、該可動子の内周部に設けられるコイルの励磁により、前記可動子を直線的に駆動させるシャフト型リニアモータの位置決め装置であって、前記可動子の直線駆動範囲に部分的に設定された検出区間で前記可動子の位置検出を行う第一位置検出手段と、前記第一位置検出手段の検出区間を除く直線駆動範囲、又は直線駆動範囲全域で前記可動子の位置検出を行う第二位置検出手段とを備え、前記第一位置検出手段は、前記可動子に設けられる位置情報読み取り部と、該位置情報読み取り部の移動軌跡に沿って対向状に配置される位置情報記憶部とを有し、前記位置情報読み取り部で前記位置情報記憶部の位置情報を読み取ることにより前記可動子の位置検出を行い、前記第二位置検出手段は、前記可動子に設けられる磁気センサを有し、該磁気センサで前記シャフトの磁束を検出することにより前記可動子の位置検出を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、上記のように構成したことにより、リニアスケールによる高精度な位置決めを行うものでありながら、その検出区間を限定して磁気スケールの設置範囲を小さくすることにより、コンパクト化が求められる分野でも利用することができるようになり、しかも、磁気スケールが設置されていない区間においても、可動子の位置検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を好適な実施の形態として例示するシャフト型リニアモータの位置決め装置を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るシャフト型リニアモータ(磁気スケールは省略)の斜視図である。この図に示すように、シャフト型リニアモータ1は、複数の棒状磁石2aが直列状に配列されたシャフト2と、該シャフト2にスライド自在に外嵌する可動子3とを備え、該可動子3の内周部に設けられるコイル(図示せず)の励磁により、可動子3を直線的に駆動させる。
【0008】
このようなシャフト型リニアモータ1を位置決め制御する場合は、可動子3の位置を検出する位置検出手段4が付加される。本発明に係るシャフト型リニアモータ1の位置決め装置は、可動子3の直線駆動範囲に部分的に設定された検出区間で可動子3の位置検出を行う第一位置検出手段4Aと、第一位置検出手段4Aの検出区間を除く直線駆動範囲、又は直線駆動範囲全域で可動子3の位置検出を行う第二位置検出手段4Bとを備える点に特徴があり、以下、第一位置検出手段4A及び第二位置検出手段4Bについて説明する。
【0009】
第二位置検出手段4Bは、可動子3に設けられる磁気センサ(ホール素子等)Sを備えて構成され、該磁気センサSが検出するシャフト2の磁束変化に基づいて可動子3の位置検出を行う。すなわち、この第二位置検出手段4Bによれば、リニアスケールのように磁気スケールを設けることなく、シャフト2の磁束変化を利用して可動子3の位置を検出するので、位置検出機能を備えるシャフト型リニアモータ1のコンパクト化が図れる。
【0010】
磁気センサSによる可動子3の位置検出方式としては、まず、二つの磁気センサSが出力する二相のアナログ信号からの演算で位置(機械角)を得る方式が考えられる。この方式は、二つの磁気センサSから得られるアナログ信号が互に直交する正弦波であることが前提となる。つまり、シャフト2の磁束分布が正弦波状でない場合は、得られる位置情報に誤差が生じる。実際のシャフト2では、磁束分布が正弦波状とは言い難く、多くの空間高調波を含んでいる。そこで、磁気センサSをシャフト2から遠ざけることにより、磁気センサSを貫く磁束を平滑化して空間高調波を除去することが考えられるが、高調波の完全な除去は難しい。しかも、磁気センサSの出力レベルの低下するので、SN比の悪化や外部磁束による外乱の影響が懸念される。
【0011】
図2は、本発明の実施形態に係るシャフト型リニアモータの位置決め装置に適用される第二位置検出手段の検出概念を示すブロック図である。この図に示すように、本発明の実施形態に係る第二位置検出手段4Bの位置検出方式は、シャフト2の軸線方向に所定の間隔を存して配列される複数(例えば4つ)の磁気センサS0〜S3を用い、各磁気センサS0〜S3の出力にそれぞれ所定の重み係数を乗じて加算することにより二相のアナログ信号を得る。磁気センサSの個数は、得ようとするフィルタリング特性によって適切に選ぶ必要があるが、少なくとも2つは必要となる。実用にあたっては、磁気センサSを多数使うことによるコスト上昇や磁気センサSの検出感度のバラツキ等の解決すべき問題があるものの、個数の選択によってフィルタリング特性を容易に決定できるという利点がある。尚、シャフトのマグネット部より、正弦波に近い波形を取り出すことができれば、磁気センサ(例えば、S0〜S3)が出力するアナログ信号を直接位置検出に利用することも可能である。
【0012】
重み係数演算及び加算演算をオペアンプ回路で行った場合、きわめて簡単な回路構成で二相のアナログ信号(A相、B相の直交信号)が得られる。この場合、得られた二相信号をコントローラに入力すればよいので、コントローラのA/D入力は従来と同様に二つでよく、既存のコントローラをそのまま利用することが可能となる。一方、重み係数演算及び加算演算をコントローラのマイコン内部で行う場合は、磁気センサSの数だけA/D入力が必要となるが、磁気センサSの感度のバラツキ等をソフト的な処理で吸収できるという利点がある。また、重み係数を必要に応じてマイコン内部で変化させることも可能となる。
【0013】
図3は、シャフトの磁束密度分布例を示すグラフ図である。この図に示すように、シャフト2の表面近傍における磁束密度分布は、正弦波ではなく、多くの空間高調波を含んでいる。ここで、磁気センサSを7個用い、それらを5mm間隔で配置した構成について考えてみる。各磁気センサS0〜S6に乗じる重み係数は、図4に示すように設定する。磁気センサS0〜S6の間隔が5mm、磁束分布の周期が60mmとした場合、磁束の周期の12倍でサンプリングしていると考えれば、磁束周期の約1.44倍調波以下を通過させる設定といえる。この係数設定を用いて得られた二相信号を図5に示す。この図に示すように、高調波は大幅に低減され、ほぼ正弦波状になっていることがわかる。また、図6は、この二相信号からの演算で求めた位置の誤差を示している。
【0014】
図8は、磁気センサS0〜S5を5mm間隔で6個配置して、シャフト2の磁束分布に含まれる3次高調波の成分のみを取り出すように帯域通過フィルタを構成したときのアナログ二相出力である。なお、重み係数は、図7に示すように設定した。ここでは、3次高調波を利用しているため、0.1mmの分解能を必要とした場合、演算では1.8degの分解能が要求されるが、基本波を利用する方式に比べれば高精度化が容易になる。図9は、演算により位置検出を行った際の誤差を示している。更なる高分解能を目標とする場合には、補正等の微調整が必要となる。
【0015】
シャフト2の表面における空間高調波は、5次調波もかなり大きく、磁気センサSを可及的にシャフト2に近づければ、5次調波を利用した位置検出も十分可能である。この場合、磁気センサSの個数は多数となるが、安定して高精度が得られる。図11は、磁気センサSを3mm間隔で10個使用して5次調波を検出した結果を示している。なお、重み係数は、図10に示すように設定した。ここでは、磁気センサSの間隔が狭いので、磁気センサSを一列に並べることが困難になることが予想されるが、サイズが小さい表面実装タイプのチップ型磁気センサであれば、一列に並べることができる。
【0016】
また、図12の(A)〜(C)に示すように、磁気センサSを複数列に分けて配置してもよい。例えば、図12の(A)に示すように、シャフト2を挟んで180゜対向するように磁気センサSを5個ずつ配置してもよい。この場合、各列の磁気センサSは、実質的な間隔が3mmとなるように6mm間隔で配置する。このような配置にしても、位置検出に利用可能な5次調波の二相信号が得られる。また、磁気センサSの各列を対称(正対面)に配設し、或いは位置ズレさせて配設することにより、例えば10個の磁気センサSを一列に並べる場合に比し、可動子3の長さを1/2に短くでき、コンパクト化に有効である。また、各列を位置ズレさせて配設した場合、磁束の位相差の値に対してセンサリングが行え、検知精度や検知効率を高めることができる。
【0017】
つぎに、第二位置検出手段4Bによる位置決め制御について、図13を参照して説明する。図13は、本発明の実施形態に係るシャフト型リニアモータの位置決め制御システム(第二位置検出手段)を示すブロック図である。この図に示すように、第二位置検出手段4Bによりシャフト型リニアモータ1を位置決めする位置決め制御システムは、複数の磁気センサS、ミキシング部5、A/D変換部6、デジタル信号処理部7、D/A変換部8、電流アンプ部9等を備えて構成することができる。
【0018】
本実施形態では、磁気センサS0〜S9を3mm間隔で10個配置している。磁気センサS0〜S9としては、例えばホール素子が使用される。各ホール素子の出力は、それぞれ差動アンプで検出している。このようにして得られた10本のアナログ信号は、ミキシング部5でミキシングされる。
【0019】
ミキシング部5は、前述したように、磁気センサS0〜S9の出力にそれぞれ所定の重み係数を乗じて加算することにより二相のアナログ信号を得る。例えば、本実施形態のミキシング部5は、24個のOPアンプで構成されるが、8〜12個のOPアンプでも実現可能と思われる。
【0020】
A/D変換部6は、5次調波の二相信号(5A、5B)と、基本波の二相信号(1A、1B)をデジタル信号処理部7に取り込むために、A/D変換器6aを備えて構成されている。
【0021】
デジタル信号処理部7は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)であり、その内部には、位置推定部11、推定位置補正部12、モータ駆動部13等が構成される。位置推定部11は、A/D変換器で取り込まれた5次調波の二相信号(5A、5B)から演算ブロック11aで位相角θを演算する。5次調波を検出しているので、実際の磁束周期60mmの1/5、すなわち12mm移動すると、θが2π変化する。このθを周回カウンタブロック11bで監視し、位相角θの周回数Nをカウントする。そして、位相角θ及び周回数Nを用いて推定位置取得ブロック11cで推定位置を演算する。
【0022】
推定位置補正部12は、位置推定部11が演算した推定位置の補正を行う。すなわち、位置推定部11で得られた推定位置には、磁石長や磁束密度のバラツキに起因する誤差が含まれているので、補正データを用いて推定位置の補正を行う。補正データは、補正データテーブルブロック12aにより予め作成されたものであり、例えば、リニアスケール値と推定位置の差を0.1mm間隔で記録したものであり、補正データテーブルブロック12aは、推定位置に応じた誤差値を与える。例えば、推定位置5.23mmの誤差値は、5.2mmと5.3mmの誤差値をテーブルから読み、その2点を直線補間して近似値を得る。そして、推定位置から補正データを減じて補正済み推定位置が得られ、この補正済み推定位置をモータ駆動部13に入力してPID制御が実行される。
【0023】
モータ駆動部13は、コイル電流指令を基本波の二相信号(1A、1B)から生成している。位相シフトブロック13aでは、二相信号(1A、1B)の位相を調整し、トルク角が適切になるようにしている。位相を調整した後、1B相のみ30゜シフトして120゜の位相差を持つ二相信号を得ている。この二相信号にPIDブロック13bの出力値を掛けることでPID出力に比例した推進力が得られるコイル電流値が出力される。なお、電流アンプ部9は、パワーOPアンプ9aを用いて構成される。つまり、シャフト型リニアモータ1への電力供給はPWM方式ではなく、パワーOPアンプ9aを用いて、指令信号に比例した電流を供給するようにしている。勿論、PWM方式の電流アンプも利用可能である。この電流アンプ部9に対する指令信号は、D/A変換器8aを備えるD/A変換部8を介して行われる。
【0024】
つぎに、本発明の実施形態に係る第二位置検出手段4Bの検出精度について、図14〜図17を参照して説明する。図14は、補正データテーブルによる補正を行わなかった場合の位置検出誤差を示している。この図に示すように、補正データテーブルによる補正を行わなかった場合、±0.6mm程度の誤差が生じているが、高精度を要求しない用途では、補正なしでも使用可能と考えられる。
【0025】
図15は、リニアスケール値と推定位置の差を0.5mm間隔で記録した補正データテーブルによる補正後の位置検出誤差を示し、図16は、リニアスケール値と推定位置の差を0.2mm間隔で記録した補正データテーブルによる補正後の位置検出誤差を示し、図17は、リニアスケール値と推定位置の差を0.1mm間隔で記録した補正データテーブルによる補正後の位置検出誤差を示している。これらの図に示すように、補正データテーブルによる補正後の誤差は、補正データ間隔に応じて小さくなるが、補正データ数の増加を考慮すると、本実施形態の例ではバランス的に0.2mm間隔の補正データが好ましい。
【0026】
つぎに、第一位置検出手段4Aについて、図18を参照して説明する。図18は、本発明の実施形態に係るシャフト型リニアモータの位置決め装置に適用される第一位置検出手段の構成を示す説明図である。この図に示すように、第一位置検出手段4Aは、可動子3に設けられる位置情報読み取り部としての磁気ヘッドTと、磁気ヘッドTの移動軌跡に沿って対向状に配置される位置情報記憶部としての磁気スケールUとを有し、磁気ヘッドTで磁気スケールUの磁気目盛(位置情報)を読み取ることにより可動子3の位置検出を行う磁気方式のリニアスケール(位置検出装置)であるが、その他、発光源の半導体レーザ,受光部のフォトディテクタに,回折格子であるホログラムスケール(ホログラム格子)を組み合わせたレーザ式のもの、基本的にロータリーエンコンーダと同じ動作原理による方式で電気信号をカウンタで計数し変位量を測定する光電方式のもの等を用いても良い。つまり、第一位置検出手段4Aは、前述のように可動子3の直線駆動範囲に部分的に任意設定された検出区間(例えば、図18の夫々異なる検出ストローク区間として設定したA区間、C区間、E区間)でのみ可動子3の位置検出を行うよう構成したものとになっている。すなわち、高精度な位置決めが要求される区間でのみ第一位置検出手段4Aによる位置検出を行うことにより、磁気スケールUの設置範囲を小さくすることができるので、シャフト2の全長に亘って磁気スケールUを並設する場合に比べ、シャフト型リニアモータ1の周辺をコンパクト化することが可能になり、その結果、コンパクト化が求められる分野でもシャフト型リニアモータ1の利用を促進することができる。
【0027】
磁気スケールUが設置されていない区間(例えば、図18のB区間、D区間)においては、第二位置検出手段4Bで可動子3の位置検出を行うことができる。第一位置検出手段4Aによる位置決め動作(リニアスケール駆動)と、第二位置検出手段4Bによる位置決め動作(センサレス駆動)は、第一位置検出手段4Aの磁気ヘッドTが磁気スケールUの磁気目盛を読み取っているか否かに基づいて切換えることが可能であるが、位置決め動作の切換え(リニアスケール用カウンタのリセット処理等)を確実かつ迅速に行うには、磁気ヘッドTに原点センサVを設け、磁気スケールUの原点位置を検出することが好ましい。原点センサVは、磁気スケールUの原点位置に設けられる原点検出子Wを磁気ヘッドTとは異なる方式で検出するものであり、例えば、反射式の光学センサを用いて構成することができる。
【0028】
次に、第一位置検出手段4A(リニアスケール位置検出システム)及び第二位置検出手段4B(センサレス位置検出システム)を併用したシャフト型リニアモータ1の具体的な位置決め制御について、図19及び図20を参照して説明する。図19に示すように、第一位置検出手段4A及び第二位置検出手段4Bによる可動子3の位置情報は、ドライバX(又はコントローラ)に入力される。第一位置検出手段4AからドライバXに入力される位置情報は、任意区間の精密位置情報であり、また、原点センサVの検出信号も含まれる。一方、第二位置検出手段4BからドライバXに入力される位置情報は、全区間の粗雑位置情報である。
【0029】
ドライバXは、第一位置検出手段4A及び第二位置検出手段4Bから入力した位置情報を内部でソフトウエア的に処理し、シャフト型リニアモータ1を位置決め駆動させる。具体的には、図20に示すように、まず、第一位置検出手段4Aの磁気ヘッドTが磁気スケールUを検出しているか否かを判断し(S1)、この判断結果がYESの場合は、第一位置検出手段4Aの位置情報に基づいた位置決め動作(リニアスケール駆動)を行う(S2)。また、リニアスケール駆動状態であっても、第二位置検出手段4Bによる位置検出動作は続行される。一方、上記ステップS1の判断結果がNOの場合は、第二位置検出手段4Bの位置情報に基づいた位置決め動作(センサレス駆動)を行う(S3)。この状態では、原点センサVによる原点検出を判断しており(S4)、この判断結果がYESになったら、リニアスケール用カウンタをリセットし(S5)、リニアスケール駆動(S2)に移行する。
【0030】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、シャフト型リニアモータ1の位置決め装置は、リニアスケールからなる第一位置検出手段4Aを有し、可動子3の位置を精密に検出するのであるが、第一位置検出手段4Aによる位置検出は、可動子3の直線駆動範囲に部分的に1又は複数の任意ストローク(異なるストロークであっても良い)に設定された検出区間でのみ行うようになっているので、磁気スケールU(位置情報記憶部)の設置範囲を小さくすることができる。これにより、シャフト2の全長に亘って磁気スケールUを並設する場合に比べ、シャフト型リニアモータ1の周辺をコンパクト化することが可能になり、その結果、コンパクト化が求められる分野でもシャフト型リニアモータ1の利用を促進することができる。
【0031】
また、磁気スケールUが設置されていない区間においては、第二位置検出手段4Bで可動子3の位置検出を行うことができる。すなわち、第二位置検出手段4Bは、シャフト2の磁束検出により可動子3の位置を検出するものであり、磁気スケールUが設置されていない区間でも位置検出を行うことができる。
【0032】
そして、第一位置検出手段4Aによる位置決め動作と、第二位置検出手段4Bによる位置決め動作は、第一位置検出手段4Aの磁気ヘッドTが磁気スケールUの磁気目盛を読み取っているか否かに基づいて切換えることが可能であるが、本実施形態では、磁気ヘッドTに原点センサVを設け、磁気スケールUの原点位置を検出するようにしたので、位置決め動作の切換えを確実かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係るシャフト型リニアモータ(磁気スケールは省略)の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るシャフト型リニアモータの位置決め装置に適用される第二位置検出手段の検出概念を示すブロック図である。
【図3】シャフトの磁束密度分布例を示すグラフ図である。
【図4】高調波低減のための重み係数を示す表図である。
【図5】図4の重み係数により得られた二相アナログ信号の波形図である。
【図6】図5の二相アナログ信号から演算した推定位置の誤差を示す説明図である。
【図7】3次調波抽出のための重み係数を示す表図である。
【図8】図7の重み係数により得られた二相アナログ信号の波形図である。
【図9】図8の二相アナログ信号から演算した推定位置の誤差を示す説明図である。
【図10】5次調波抽出のための重み係数を示す表図である。
【図11】図10の重み係数により得られた二相アナログ信号の波形図である。
【図12】(A)〜(C)は磁気センサの配置例を示す斜視図である。
【図13】本発明の実施形態に係るシャフト型リニアモータの位置決め制御システム(第二位置検出手段)を示すブロック図である。
【図14】図13の位置決め制御システムにおいて、補正データテーブルによる補正を行わなかった場合の位置検出誤差を示す説明図である。
【図15】図13の位置決め制御システムにおいて、リニアスケール値と推定位置の差を0.5mm間隔で記録した補正データテーブルによる補正後の位置検出誤差を示す説明図である。
【図16】図13の位置決め制御システムにおいて、リニアスケール値と推定位置の差を0.2mm間隔で記録した補正データテーブルによる補正後の位置検出誤差を示す説明図である。
【図17】図13の位置決め制御システムにおいて、リニアスケール値と推定位置の差を0.1mm間隔で記録した補正データテーブルによる補正後の位置検出誤差を示す説明図である。
【図18】第二位置検出手段の説明図である。
【図19】第一位置検出手段及び第二位置検出手段を併用する位置決め制御システムのブロック図である。
【図20】第一位置検出手段及び第二位置検出手段を併用する位置決め制御システムのフローチャートである。
【符号の説明】
【0034】
1 シャフト型リニアモータ
2 シャフト
2a 棒状磁石
3 可動子
4A 第一位置検出手段
4B 第二位置検出手段
5 ミキシング部
6 A/D変換部
6a A/D変換器
7 デジタル信号処理部
8 D/A変換部
8a D/A変換器
9 電流アンプ部
9a パワーOPアンプ
11 位置推定部
11a 演算ブロック
11b 周回カウンタブロック
11c 推定位置取得ブロック
11d オフセットブロック
12 推定位置補正部
12a 補正データテーブルブロック
13 モータ駆動部
13a 位相シフトブロック
13b PIDブロック
14 カウンタブロック
S 磁気センサ
T 磁気ヘッド
U 磁気スケール
V 原点センサ
W 原点検出子
X ドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の棒状磁石が直列状に配列されたシャフトと、該シャフトにスライド自在に外嵌する可動子とを備え、該可動子の内周部に設けられるコイルの励磁により、前記可動子を直線的に駆動させるシャフト型リニアモータの位置決め装置であって、
前記可動子の直線駆動範囲に部分的に設定された検出区間で前記可動子の位置検出を行う第一位置検出手段と、
前記第一位置検出手段の検出区間を除く直線駆動範囲、又は直線駆動範囲全域で前記可動子の位置検出を行う第二位置検出手段とを備え、
前記第一位置検出手段は、前記可動子に設けられる位置情報読み取り部と、該位置情報読み取り部の移動軌跡に沿って対向状に配置される位置情報記憶部とを有し、前記位置情報読み取り部で前記位置情報記憶部の位置情報を読み取ることにより前記可動子の位置検出を行い、
前記第二位置検出手段は、前記可動子に設けられる磁気センサを有し、該磁気センサで前記シャフトの磁束を検出することにより前記可動子の位置検出を行う
ことを特徴とするシャフト型リニアモータの位置決め装置。
【請求項2】
前記位置情報読み取り部は、前記位置情報記憶部の原点位置を検出する原点センサを備えることを特徴とする請求項1記載のシャフト型リニアモータの位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−148484(P2008−148484A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334235(P2006−334235)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000229645)日本パルスモーター株式会社 (46)
【Fターム(参考)】