説明

シュリンクフィルム、シュリンクラベル及びラベル付き容器

【課題】 優れた収縮特性と圧縮強度を有するシュリンクフィルムであって、さらに積層体のフィルム層間の層間強度が高い優れたシュリンクフィルムと、該フィルムを用いた、優れた生産性を有するシュリンクラベル及び該ラベルを装着したラベル付き容器を提供することにある。
【解決手段】 本発明のシュリンクフィルムは、スチレン−ブタジエン共重合体を50〜90重量%、ポリブテンを10〜30重量%含有するフィルム層の少なくとも片側に、ポリエステル系樹脂からなるフィルム層を有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性と収縮特性に優れ、なおかつ、層間強度の高いシュリンクフィルム、シュリンクラベル及び該ラベルを装着した容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、お茶や清涼飲料水等の飲料用容器として、PETボトルなどのプラスチック製ボトルや、ボトル缶等の金属製ボトル等が広く用いられている。これらの容器には、表示や装飾性、機能性の付与のためプラスチックラベルを装着する場合が多く、近年、容器に対する追従性が良好であり、表示面積を増大できる等のメリットから、水蒸気や熱風により収縮させることにより容器に追従・装着させる熱収縮性プラスチックフィルム(シュリンクフィルム)が広く使用されている。
【0003】
上記シュリンクフィルムには、被覆処理時の容器への良好な追従性を得るための収縮性、ラベルを容器に装着する際の挫屈等を防止するための剛性(腰の強さ)や、工業的に安定に生産・供給する観点からは、保存安定性(自然収縮が小さいこと)などが要求される。
【0004】
これら、収縮性と剛性を両立させるために、良好な収縮性を有するポリスチレン系樹脂からなる中間層と剛性の高いポリエステル系樹脂からなる表層を有する積層体からなるシュリンクフィルムが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。しかし、上記の積層体からなるシュリンクフィルムは、異素材を積層しているために、フィルム層同士の層間強度が比較的弱く、加工や使用の際に、特にセンターシール部分から、フィルム層同士が剥離してしまう問題点を有していた。
【0005】
一方、スチレン−ブタジエン共重合体などのエラストマーに配合して粘着効果を発揮する樹脂(タッキファイヤー)として石油樹脂が知られており、シュリンクフィルムの分野とは異なるが、耐油性、ガスバリアー性を目的として、ポリスチレン系樹脂と石油樹脂からなる基材層とシクロヘキサンジメタノールから誘導されたポリエステル系樹脂からなる表面層を有する積層シートが知られている(例えば、特許文献3参照)。しかし、上記石油樹脂は高価であるため高コストである。さらには、高分子量の固体石油樹脂を用いているため分散性が不良で、層間強度を増加させるために石油樹脂の含有量を増加させると相分離を生じて透明性、耐衝撃性が低下するという二律背反の問題点を有していた。
【0006】
【特許文献1】特開2002−351332号公報
【特許文献2】特開2004−170715号公報
【特許文献3】特開平7−290659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、透明性の低下がなく、収縮特性と剛性を両立させることにより、高い生産性と美しい仕上がり性を有し、さらに、層間剥離によるトラブルの生じない優れたシュリンクフィルム、シュリンクラベル及び該ラベルを装着した容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、スチレン−ブタジエン共重合体からなる中間層とポリエステル樹脂からなる積層部を有するフィルムを用いることにより、収縮性と剛性を両立し、なおかつ、ポリスチレン樹脂に特定量のポリブテンを添加することにより、透明性、フィルム層同士の層間強度の高い優れたシュリンクフィルム及び該シュリンクフィルムを用いたシュリンクラベル及び該ラベルを装着した容器を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、スチレン−ブタジエン共重合体を50〜90重量%、ポリブテンを10〜30重量%含有するフィルム層(A層)の少なくとも片側に、ポリエステル系樹脂からなるフィルム層(B層)を有することを特徴とするシュリンクフィルムを提供する。
【0010】
さらに、本発明は、A層とB層が他の層を介さずに積層されている上記のシュリンクフィルムを提供する。
【0011】
さらに、本発明は、A層、B層、および、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブテンおよびポリエステル系樹脂からなるC層を有するシュリンクフィルムであって、A層/C層/B層の順に、それぞれの層が他の層を介さずに積層されている上記のシュリンクフィルムを提供する。
【0012】
さらに、本発明は、上記本発明のシュリンクフィルムの少なくとも一方の表面に印刷層を設けてなるシュリンクラベルを提供する。
【0013】
さらに、本発明は、上記本発明のシュリンクラベルが装着されたラベル付き容器を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシュリンクフィルムは、高い収縮性を有するため、複雑な形状の容器に装着加工した際も美しい仕上がりとなる。また、剛性が高く、ラベルが薄肉化した際でも装着時の挫屈などのトラブルがなく、加工時の不良品の発生による生産性の低下がない。さらには、層間剥離が発生しにくく、生産工程や市場での剥離によるトラブルが低減される。従って、PETボトルなどに用いられるラベルとして特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本発明のシュリンクフィルムの一例を示す概略断面図である。図1に示されるシュリンクフィルム1は、基層部3(A層)とその両側の積層部2(B層)の3層のフィルム層からなる。
【0016】
本発明のシュリンクフィルムは、少なくとも、スチレン−ブタジエン共重合体とポリブテンを主成分としてなるフィルム層(A層という)と、ポリエステル系樹脂を主成分としてなるフィルム層(B層という)の2つのフィルム層を有する。また、必要に応じて、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブテンおよびポリエステル系樹脂からなるフィルム層であってA層とB層の中間層として設けられる層(C層という)を含んでもよい。これらの中で、A層は、主に(C層を設けない場合の)A層とB層の層間強度及び収縮特性(ゆっくりと収縮し、しわが発生しにくい特性)を発揮する役割を担い、B層は収縮特性(高収縮性)と剛性を付与する役割を有する。C層が設けられる場合は、C層は収縮性を損なうことなくフィルム層同士の層間強度を高める役割を担う。
【0017】
本発明のシュリンクフィルムの積層構成は、A層の少なくとも一方にB層が積層されてなる。A層およびB層のみからなる場合には、A層/B層からなる2層構成でもよいし、B層/A層/B層からなる3層構成であってもよいが、剛性付与、フィルムの「そり」防止等の観点からは、B層/A層/B層からなる3層構成が最も好ましい。特に、シュリンクフィルム全体の剛性を向上させるためには、強度の高いフィルム層(すなわち、B層)を表層に設けることが好ましい。また、B層は、耐溶剤性、耐油性などの観点からも、表層(最外層)に設けることが好ましい。さらに、C層を設ける場合には、C層はA層とB層の中間に位置するように設け、積層構成としては、A層/C層/B層からなる3層構成やB層/C層/A層/C層/B層からなる5層構成が例示される。また、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)から構成されるフィルム層の、少なくとも一方にA層/B層が設けられた構成であってもよい(例えば、B層/A層/SBS層やB層/A層/SBS層/A層/B層などの構成が例示される)。特に中心層をSBS層にすると、経済性と透明性に優れたシュリンクラベルが達成できる。この場合、A層は更にSBS層とB層の層間強度を向上する役割を担う。なお、本発明の樹脂組成を用いることにより、接着剤層なしでも優れた層間強度を達成することが出来るため、生産性等の観点から、上記のA層、B層、C層及びSBS層は、接着剤層などの他の層を介さずに直接積層されていることが好ましい。より好ましくは、共押出による積層である。
【0018】
本発明のシュリンクフィルムは、少なくとも1方向に配向していることが好ましい。なお、この場合、少なくともA層が配向しておればよいが、好ましくは全てのフィルム層が配向していることが好ましい。全ての層が無配向の場合には、本発明の良好な収縮特性、剛性、層間強度を達成することが困難となる場合が多い。
【0019】
本発明のシュリンクフィルムのA層は、スチレン−ブタジエン共重合体とポリブテンを含有してなる。
【0020】
本発明のA層に用いられるスチレン−ブタジエン共重合体は、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)である。ランダム共重合体の場合には本発明の効果が得られない。共重合体中のスチレンブロックの含有量は、特に限定されないが、加工性などの観点から、65〜90重量%(ブタジエンブロック含有量:10〜35重量%)が好ましく、より好ましくは75〜88重量%(ブタジエンブロック含有量:12〜25重量%)である。また、スチレン−ブタジエンブロック共重合体のメルトフローレート(MFR)(JIS K 7210 :温度200℃/荷重49N。)は、1〜20g/10分が好ましく、より好ましくは3〜10g/10分である。スチレン−ブタジエンブロック共重合体は、旭化成ケミカルズ(株)製「アサフレックス」、フィリップス(株)製「K−レジン」等が市場で入手可能である。
【0021】
本発明のA層中のスチレン−ブタジエン共重合体の含有量は、A層の樹脂成分中、50〜90重量%であり、好ましくは70〜90重量%である。スチレン−ブタジエンの含有量が50重量%未満である場合には、熱収縮率が低下するため、加工性が低下する。
【0022】
本発明のA層に用いられるポリブテンは、1−ブテン、2−ブテン等を重合して得られる。また、特に限定されないが、安定化の観点から、ポリブテンは水添されていてもよい。ポリエチレンやポリプロピレンの場合、結晶性が高いため、スチレン−ブタジエン共重合体と相分離して透明性や製膜安定性を低下させるため、本発明に用いることは出来ない。また、ポリペンテンなどのポリブテンよりも繰り返し単位の炭素数が大きい石油樹脂の場合には、樹脂自体が高価となるためコストアップとなったり、樹脂が高粘度となるため、スチレン−ブタジエン共重合体と良好な混合状態とするためには、一旦溶融押出によりブレンドポリマーを作製する必要があり、工程が煩雑となる上、高コストとなる。ポリブテンを用いる場合には、粘度と低結晶性のバランスが好適であり、スチレン−ブタジエン共重合体との混合性を維持しつつ、溶融成形、配向の際の結晶化による相分離を抑制できるため好ましい。また、安価で入手可能であり、溶融押出の際にも、マスターペレット化せずに溶融押出機に直接添加・混合が可能であり、生産性にも優れる。
【0023】
本発明のA層に用いられるポリブテンの重量平均分子量は、200〜5000が好ましく、より好ましくは350〜3000である。
【0024】
本発明のA層に用いられるポリブテンの温度100℃における動粘度(JIS K 2283)は、4〜4000cstが好ましく、より好ましくは30〜1000cstである。
【0025】
これらの好ましい範囲を満たすポリブテンとしては、既存の市販品を用いてもよく、例えば、出光興産(株)製「出光ポリブテン(Hシリーズ、Rシリーズ)」などが市場で入手可能である。
【0026】
本発明のA層中のポリブテンの含有量は、A層の樹脂成分中、10〜30重量%であり、好ましくは10〜25重量%、さらに好ましくは12〜18重量%である。ポリブテンの含有量が10重量%未満である場合には、層間強度が低下して、フィルム層同士の剥離が生じやすくなる。また、含有量が30重量%を超える場合には、スチレン−ブタジエン共重合体とポリブテンが相分離を起こし、透明性が悪化する。なお、ポリブテンの含有量とA層−B層の層間強度は、驚くべきことに、線形の関係ではなく、5重量%程度の少量添加の場合には、添加しない場合よりも層間強度は一旦低下し、さらに添加量を高めると層間強度向上に寄与するようになる。すなわち、ポリブテン添加量と層間強度は、添加量が約5重量%を極小とする曲線関係を示す。
【0027】
本発明のA層中のスチレン−ブタジエン共重合体とポリブテンは実質的に相溶していることが好ましい。それぞれが相分離している場合には、延伸工程でフィルム破れが生じるなど生産性が低下したり、フィルムに白濁が生じたりして、本発明の効果を得ることが出来ない場合がある。A層中の樹脂を相溶させる方法としては、スチレン−ブタジエン共重合体とポリブテンのの含有量を上記範囲に制御する他、MFR、粘度、分子量等を上記範囲にすることが好ましく例示される。
【0028】
本発明のA層には、本発明の効果を損なわない範囲内で、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブテン以外の樹脂や添加剤を添加してもよい。添加される樹脂としては、例えば、B層に用いられるものと同様のポリエステル系樹脂が好ましく例示される。B層に用いられるポリエステル系樹脂は、回収原料としてA層に添加される場合であってもよいし、また、A層とB層の層間強度を向上させる目的で添加される場合であってもよい。この場合、ポリエステル系樹脂の添加量は、A層の樹脂成分中、5〜20重量%が好ましい。また、添加剤としては、例えば、顔料、染料、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消臭剤、安定剤などが挙げられる。中でも、本発明のシュリンクフィルムに遮光効果などを付与する場合には、顔料を添加することが好ましい。その場合、顔料としては、酸化チタン(二酸化チタン)等の白顔料、銅フタロシアニンブルー等の藍顔料、カーボンブラック、アルミフレーク、雲母(マイカ)、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、アクリルビーズ等が用途に合わせて選択、使用できる。中でも、特に好ましくは、酸化チタンである。これら顔料は、A層の樹脂成分100重量部に対して、外添で10〜30重量部添加されることが好ましい。
【0029】
本発明のシュリンクフィルムのB層は、ポリエステル系樹脂を主成分としてなる。「主成分としてなる」とは、上述の通り、ポリエステル系樹脂が、B層の樹脂成分中、80重量%以上であることをいう。好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上である。本発明のB層に用いられるポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸成分とジオール成分とで構成される種々のポリエステルが挙げられる。ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、5−t−ブチルイソフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トランス−3,3’−スチルベンジカルボン酸、トランス−4,4’−スチルベンジカルボン酸、4,4’−ジベンジルジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,2,6,6−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、1,1,3−トリメチル−3−フェニルインデン−4,5−ジカルボン酸、1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、及びこれらの置換体等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、イコサン二酸、ドコサン二酸、1,12−ドデカンジオン酸、及びこれらの置換体等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、1,5−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,6−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、シス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及びこれらの置換体等の脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0030】
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2,4−ジメチル−1,3−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族ジオール;1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール等の脂環式ジオール;2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシジフェニル)プロパン、ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン等のビスフェノール系化合物のエチレンオキシド付加物、キシリレングリコール等の芳香族ジオールなどが挙げられる。これらのジオール成分は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0031】
前記ポリエステル系樹脂は、上記以外にも、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸等のオキシカルボン酸;安息香酸、ベンゾイル安息香酸等のモノカルボン酸;トリメリット酸等の多価カルボン酸;ポリアルキレングリコールモノメチルエーテル等の1価アルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールなどの構成単位を含んでいてもよい。
【0032】
本発明のB層に用いられるポリエステル系樹脂は、特に限定されないが、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを主成分、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を共重合成分として用いた共重合ポリエステル(以後、CHDM共重合PETという)が、コスト、生産性、A層との層間強度向上の観点で、特に好ましい。また、この場合、CHDMの共重合の割合はエチレングリコールに対して10〜40(モル%)が好ましく、さらに好ましくは20〜30(モル%)である。上記の割合でCHDMを共重合させることによって、ポリエステル系樹脂が非晶性となるため、製造の際にB層のA層に対する追従性が良好となり、層間の密着性が高くなるため好ましい。CHDM共重合PETは、既存品を用いることも可能であり、例えば、Eastman Chemical社製「EasterCopolyester」や「Embrace」等が市場で入手できる。
【0033】
上述のとおり、本発明のB層に用いられるポリエステル樹脂は、特に限定されないが、実質的に非晶性であることが好ましい。なお、「実質的に非晶質」とは、DSC法(10℃/分の昇温スピードで測定)により測定した結晶化度の値が10%以下のものであり、好ましくは5%以下、より好ましくは、上記DSC法による融点がほとんど見うけられないもの(すなわち、結晶化度0%)である。上記、結晶化度は、DSC測定より得られる融解熱の値から、X線法等により固定した結晶化度の明確なサンプルを標準として、算出することができる。なお、結晶融解熱の測定は、セイコーインスツルメンツ社製DSC(示差走査熱量測定)装置を用い、試料量10mg、昇温速度10℃/分で窒素シールを行い、一度融点以上まで昇温し、常温まで降温した後、再度昇温したときの融解ピークの面積から求めたものである。結晶化度は、単一の樹脂から測定されることが好ましいが、混合状態で測定される場合には、混合される樹脂の融解ピークを差し引いて、融解ピークを求めればよい。
【0034】
本発明のシュリンクフィルムがC層を有する場合、C層に用いられるポリエステル系樹脂は上述で例示した樹脂を用いることが可能である。中でも、B層で用いたポリエステル系樹脂と同一の樹脂を用いる場合に、それぞれのフィルム層との層間強度が向上するため好ましい。特に、ポリエステル系樹脂は実質的に非晶質であることが好ましく、結晶性のポリエステルを用いると、ポリスチレン系樹脂と混合した際に、相分離を起こし、フィルムが白濁するため、透明性が低下する場合がある。本来、結晶性の樹脂は、他の樹脂と混合した際に、相分離を起こしやすいうえに、仮に溶融時に相溶したとしても、フィルム加工の際にポリエステル成分だけが結晶化し相分離を引き起こす場合があるためである。また、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブテンも、A層に用いたものと同様の分子量、組成のものを用いることが、層間強度向上の観点から好ましい。
【0035】
本発明のシュリンクフィルムがC層を有する場合、C層の樹脂成分中のスチレン−エチレンブタジエン共重合体の含有量は、10〜80重量%が好ましく、より好ましくは20〜70重量%である。また、ポリブテンの含有量は10〜30重量%が好ましく、より好ましくは10〜20重量%である。さらに、ポリエステル系樹脂の含有量は10〜50重量%が好ましく、より好ましくは20〜40重量%である。
【0036】
本発明のシュリンクフィルムの特徴は、(1)柔軟で優れた収縮特性を有するA層を基層とし、表層部に高い剛性を有するB層を設けることにより、フィルムの腰の強さ(曲げ剛性)と収縮性の高さを両立したこと、及び、(2)A層のポリスチレン系樹脂中に一定量のポリブテンを含有させることによって、収縮率低下や白濁を発生させることなく、ポリエステルとの親和性を高めて層間強度を向上させたことである。通常、ポリエステル系樹脂とポリスチレン系樹脂は親和性が低いため、共押出などにより積層されたそれぞれのフィルム層同士の層間強度は弱く、界面で剥離しやすい。本発明では、A層にポリブテンを添加することによって、層間の密着力が高まると考えられる。また、容器への密着性も向上する。なお、さらに高い層間強度が必要な用途の場合は、A層樹脂とB層樹脂からなるC層を中間層とすることによって、より親和性が高まり密着力が高くなる。上述のように、本発明においては、フィルム層樹脂同士は、接着剤などを介さずに、物理的、化学的に密着することが可能である。本発明のA層とB層(C層を設ける場合にはC層も含む)の間には接着剤などの層を設けない方が好ましい。易接着コーティングなどの接着剤層を設けると、工程が煩雑となり、コスト的に不利となったり、透明性が低下する場合がある。また、熱等により劣化しやすくなる場合がある。
【0037】
本発明のシュリンクフィルムの厚みは、用途によっても異なり、特に限定されないが、10〜80μmが好ましく、さらに好ましくは20〜60μmである。また、A層の厚みは、特に限定されないが、5〜60μmが好ましく、さらに好ましくは10〜40μm、B層(片側)の厚みは、特に限定されないが、2〜10μmが好ましく、さらに好ましくは5〜10μmである。また、A層の両側に設けられるB層の層厚みは、それぞれ異なっていてもよいが、同じ厚みのフィルム層である方が好ましい。両側のB層の厚みが大きく異なる場合には、加工工程で受けた熱によって、フィルムに「そり」などが生じ、生産性、加工性を低下させる場合がある。また、C層を設ける場合、C層の厚みは2〜10μmが好ましく、さらに好ましくは2〜5μmである。
【0038】
本発明のA層とB層の厚み比は、特に限定されないが、A層/B層(B層が2層の場合には合計)が5/5〜9/1が好ましく、より好ましくは6/4〜8/2である。上記範囲よりも、A層の厚みが相対的に薄くなると、収縮特性が悪化して容器への装着工程での仕上がりが悪くなる場合がある。また、上記範囲よりもB層が相対的に薄くなると、フィルムの腰が弱くなり、製造・加工工程で挫屈などのトラブルが生じる場合がある。
【0039】
本発明のシュリンクフィルムの強度(圧縮強度:JIS P 8126)は、3N以上が好ましく、さらに好ましくは5N以上である。なお、圧縮強度が3N未満の場合には、円筒状にしたシュリンクラベルを、容器に装着する工程でラベルが挫屈しやすくなる。
【0040】
本発明のシュリンクフィルムの幅方向の100℃10秒(温水処理)における熱収縮率は、50%以上であることが好ましく、より好ましくは60〜80%である。熱収縮率が50%未満の場合には、シュリンクラベルを容器に熱で密着させる工程において、収縮が十分でないため、容器の形に追従困難となり、特に複雑な形状の容器に対して仕上がりが悪くなることがある。
【0041】
本発明のシュリンクフィルムの長手方向の90℃10秒における熱収縮率は、シュリンクラベルの装着性、加工性などの観点から、−3〜15%が好ましく、より好ましくは、−1〜10%である。
【0042】
なお、ここでいう、フィルムの長手方向とは、フィルム製造ラインの、ライン方向のことをいい、筒状のシュリンクラベルの場合には、通常ラベルの高さ方向になる。また、フィルムの幅方向とは、上記長手方向と直交する方向のことをいい、筒状のシュリンクラベルの場合には、通常ラベルの円周方向になるように用いられる。
【0043】
本発明のシュリンクフィルムの保存安定性(自然収縮率:40℃7日間経過したときの収縮率)は、2%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5%以下である。フィルムの自然収縮率が2%を超える場合には、シュリンクラベルを製造したのち、加工までに保管する間に、大きな変形(収縮)を起こすため、その後の加工が困難となり、生産性が低下したり、容器への装着不良が生じクレームの原因となったりする。
【0044】
本発明のシュリンクフィルムが、透明性を必要とする用途に用いられる場合には、透明性(ヘイズ値:JIS K 7136)は、7.0以下であることが好ましく、より好ましくは5.0以下である。ヘイズ値が7.0を超える場合には、シュリンクフィルムの内側(ラベルを容器に装着した時に容器側になる面側)に印刷を施し、フィルムを通して、印刷を見せるシュリンクラベルの場合、製品とした際に、印刷が曇り、装飾性が低下することがある。
【0045】
本発明のシュリンクフィルムの層間強度は、1.0(N/30mm)以上が好ましく、より好ましくは1.5(N/30mm)以上である。層間強度が1.0(N/30mm)未満の場合には、加工工程や製品化した後に、フィルム層同士がはがれて、生産性を低下させたり、クレームの原因となったりする。
【0046】
本発明のシュリンクフィルムの表層には、さらに、印刷層、コーティング層、樹脂層、アンカーコート層、プライマーコート層、接着剤層、接着性樹脂層、感熱接着剤層などを設けることができ、不織布、紙、プラスチック等の層を必要に応じて設けてもよい。特に、本発明のシュリンクフィルムの少なくとも1方の表層に印刷層を設けることによって、シュリンクラベルとすることができる。印刷層は、好ましくはどちらか片方の表面に設ければよく、容器に装着する場合に内側(すなわち容器側)になる側の面に施すと、市場で流通する際の印刷層のはがれや汚れなどがなく、好ましい。中でも、印刷層はB層の表面に設けることが好ましい。
【0047】
本発明の印刷層は、商品名やイラスト、取り扱い注意事項等を表示した層であり、グラビア印刷やフレキソ印刷等の慣用の印刷方法により形成することができる。印刷層の形成に用いられる印刷インキは、例えば顔料、バインダー樹脂、溶剤からなり、前記バインダー樹脂としては、アクリル系、ウレタン系、ポリアミド系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系、セルロース系、ニトロセルロース系などの一般的な樹脂が使用できる。印刷層の厚みとしては、特に制限されず、例えば0.1〜10μm程度である。
【0048】
上記シュリンクラベルを容器に装着することによって、ラベル付き容器とすることができる。このような容器には、例えば、PETボトルなどのソフトドリンク用ボトル、宅配用牛乳瓶、調味料などの食品用容器、アルコール飲料用ボトル、医薬品容器、洗剤、スプレーなどの化学製品の容器、カップ麺容器などが含まれる。容器の形状としても、円筒状、角形のボトルや、カップタイプなど様々な形状が含まれる。また、容器の材質としても、PETなどのプラスチック製、ガラス製、金属製などが含まれる。
【0049】
以下に、本発明のシュリンクフィルム及び該シュリンクフィルムを用いたシュリンクラベルおよびラベル付き容器の製造方法を説明する。なお、本発明の製造方法はこれに限定したものではない。
【0050】
なお、下記説明において、工程順に、延伸後のフィルム原反を「シュリンクフィルム」、これに印刷処理を施したものを「長尺状シュリンクラベル」、さらに長尺のまま筒状に加工したものを「長尺筒状シュリンクラベル」と記載する。
【0051】
[シュリンクフィルム]
本発明のシュリンクフィルムに用いる、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブテン及びポリエステル系樹脂は、既知の手法を用いて重合することができる。また、これらの樹脂は市場で入手することも可能である。
【0052】
A層に用いる、スチレン−ブタジエン共重合体とポリブテンを混合する方法としては、あらかじめブレンドポリマーを作成しておいてもよいが、スチレン−ブタジエン共重合体を溶融押出する際に、液状のポリブテンを直接添加する方法が生産性向上の観点から好ましい。ブレンドポリマーを作製する場合は、ブレンド方法としては2軸混練機による溶融混練によるブレンドや共溶媒への溶解・脱溶媒によるブレンドなどが好ましく例示される。
【0053】
次に得られた原料を用いて、未延伸積層フィルムを作成する。積層の方法としては、慣用の方法、例えば、共押出法、押出ラミネート法などを用いることが可能であるが、生産性の観点からは、共押出法が好ましく用いられる。以下には、共押出法の例を示す。
【0054】
所定の温度に設定した押出機aにはスチレン−ブタジエン共重合体(または、スチレン−ブタジエンとポリブテンのブレンドポリマー)を、押出機bにはポリエステル系樹脂を投入し、ポリマーを溶融させ送り出す。この際、必要に応じて、ギアポンプを用いて供給量を調節すると、ポリマー供給量が安定し、フィルム層の厚み精度が向上するため好ましい。共押出ポリブテンの直接添加を行う場合には、押出機aのポートから液状のポリブテンを所定量計量して添加することが好ましい。また、押出機から合流部までの間にフィルターを用いて異物を除去するとフィルム破れが低減できるため好ましい。次いで、マニホールドや合流ブロック等を用いて、押出機a、押出機bのポリマーを合流させ、所定の積層構成としたのち、Tダイ、サーキュラーダイなどから押出する。冷却ドラムなどを用いて急冷し、未延伸積層フィルムを作成する。
なお、流動性や劣化防止の観点から、押出機aの温度は130〜200℃が好ましく、押出機bの温度は200〜250℃が好ましい。さらに、必要に応じて、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、酸化防止剤などの他の混合剤を混合してもよい。また、C層を設ける場合やA層の両側にそれぞれ異なる厚みのB層を設ける場合などには、3台の押出機を用いて、共押出を行ってもよい。
【0055】
次に、得られた未延伸積層フィルムを延伸し、長尺状のシュリンクフィルムを作成する。延伸は、長手方向(縦方向;MD方向)および幅方向(横方向;TD方向)の2軸延伸でもよいし、長手、または、幅方向の1軸延伸でもよい。また、延伸方式は、ロール方式、テンター方式、チューブ方式の何れの方式を用いてもよい。延伸処理は、70〜110℃程度の温度で、必要に応じて長手方向に例えば1.01〜1.5倍、好ましくは1.05〜1.3倍程度に延伸した後、幅方向に3〜6倍、好ましくは4〜5.5倍程度延伸することにより行う場合が多い。
【0056】
本発明のシュリンクフィルムの表面には、必要に応じて、コロナ放電処理やインラインコーティング等の慣用の表面処理が施されていてもよい。
【0057】
[シュリンクラベル]
次に、上記のようにして得られた長尺状のシュリンクフィルムの少なくとも一方の面に印刷層を形成し、長尺状シュリンクラベルを作製したのち、円筒状に成形して長尺筒状シュリンクラベルを作製する。以下にその方法を示す。
【0058】
得られた長尺状のシュリンクフィルムに印刷処理を施す。印刷手法としては、慣用の方法を用いることができるが、例えば、グラビア印刷やフレキソ印刷により形成することができる。印刷を施したのち、所定の幅にスリットして、ロール状に巻回し、長尺シュリンクラベルのロール状物とする。
【0059】
次に、上記ロール状物を繰り出しながら、シュリンクフィルムの幅方向がラベルの円周方向で印刷層が内側となるように円筒状に成形する。具体的には、長尺状シュリンクラベルを筒状に形成した後、ラベルの一方の側縁部に、長手方向に帯状に約2〜4mm幅で、テトラヒドロフラン(THF)などの溶剤や接着剤(以下溶剤等)を内面に塗布し、該溶剤等塗布部を、他方の側縁部から5〜10mmの位置に重ね合わせて外面に接着(センターシール)し、長尺筒状のシュリンクラベル連続体とし、長尺筒状シュリンクラベルを得る。なお、上記の溶剤などを塗工する部分には、印刷が施されていないことが好ましい。
【0060】
なお、ラベル切除用のミシン目を設ける場合は、所定の長さ及びピッチのミシン目を長手方向に形成する。ミシン目は慣用の方法(例えば、周囲に切断部と非切断部とが繰り返し形成された円板状の刃物を押し当てる方法やレーザーを用いる方法等)により施すことができる。ミシン目を施す工程段階は、印刷工程の後や、筒状加工工程の前後など、適宜選択ことができる。
【0061】
[ラベル付き容器]
最後に、上記で得られた長尺筒状シュリンクラベルを切断後、所定の容器に装着し、加熱処理によって、ラベルを収縮、容器に追従密着させることによってラベル付き容器を作製する。
【0062】
上記長尺筒状シュリンクラベルを、自動ラベル装着装置(シュリンクラベラー)に供給し、必要な長さに切断した後、内容物を充填した容器に外嵌し、所定温度の熱風トンネルやスチームトンネルを通過させたり、赤外線等の輻射熱で加熱して熱収縮させ、容器に密着させて、ラベル付き容器を得る。上記加熱処理としては、例えば、90℃のスチームで処理することなどが例示される。
【0063】
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
【0064】
(1)層間強度(T型剥離)
実施例、比較例の未延伸フィルム(厚み300μm)を用いて評価を行った。シュリンクフィルム長手方向(製膜方向)に30mmの幅で、シュリンクフィルム幅方向に長い短冊状のサンプルを採取した。以下で、サンプル幅方向とはシュリンクフィルムの長手方向をさす。
サンプルの長辺方向(シュリンクフィルムの幅方向)を測定方向として、T型剥離試験(JIS K 6854−3に準拠)を行った。サンプルの端部よりA層とB層を剥離し、それぞれA層側とB層側の端部をチャックして、引張試験機で引っ張ることにより、下記の条件で、T型剥離試験を行った。なお、実施例4については、B層とC層の間の層間強度を測定した。
剥離長さ(クロスヘッド移動距離)が50mmから250mmの剥離加重の平均値をもって層間強度(N/30mm)とし、該層間強度が1.5N以上であれば層間強度が大(○)、1N以上、1.5N未満の場合には使用可能なレベル(△)、1N未満の場合には層間強度が不足(×)と判断した。
測定装置 : 島津製作所(株)製オートグラフ(AGS−50G:ロードセルタイプ500N)
温湿度 : 温度23±2℃、湿度50±5%RH(JIS K 7000標準温度状態2級)
初期チャック間隔 : 50mm
サンプル幅 : 30mm
試験回数 : 3回
クロスヘッド移動速度 : 200mm/分
【0065】
(2)圧縮強度(リングクラッシュ法)
実施例、比較例の方法で得られたシュリンクフィルム(フィルム厚み40μm)を用いて評価を行った。
JIS P 8126に準拠して、シュリンクフィルムの圧縮強度を、以下の条件で、測定した。測定方向は長手方向である。測定の結果、圧縮強度が5N以上のものは耐挫屈性が良好(○)、3N以上、5N未満のものは使用可能なレベル(△)、3N未満のものは耐挫屈性不良(×)と判断した。
測定装置 : 島津製作所(株)製オートグラフ(AGS−50G:ロードセルタイプ500N)
サンプルサイズ : 15mm(長手方向)×152.4mm(幅方向)
試験回数: 5回
【0066】
(3)収縮率(100℃熱収縮率)
得られたシュリンクフィルムから、100mm(フィルム長手方向)×100mm(フィルム幅方向)の正方形のサンプル片を作成した。
サンプル片を100℃の沸水中で、10秒熱処理(無荷重下)し、熱処理前後のサンプルの寸法(幅方向)を読み取り、以下の計算式で熱収縮率を算出した。試験回数5回の平均値を収縮率とした。
収縮率が60%以上のものは収縮特性良好(○)、50%以上、60%未満のものは使用可能なレベル(△)、50%未満のものは収縮特性不良(×)と判断した。
収縮率(%) = (L0−L1)/L0×100
L0 : 熱処理前のサンプルの寸法(長手方向又は幅方向)
L1 : 熱処理後のサンプルの寸法(L0と同じ方向)
【0067】
(4)透明性(ヘイズ値)
実施例、比較例の方法で得られたシュリンクフィルム(フィルム厚み40μm)を用いて評価を行った。
JIS K 7136に準じて測定を行った。ヘイズが5以下の場合は透明性良好(○)、5を超え7以下の場合はラベル用途として使用可能なレベル(△)、7を超える場合は透明性不良(×)と判断した。
なお、厚みが異なるサンプルについては、40μm厚みに換算して評価すればよい。
【実施例】
【0068】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0069】
実施例1
A層のスチレン−ブタジエン・ブロック共重合体(SBS)として、旭化成ケミカルズ(株)製「アサフレックス825」(スチレン/ブタジエン=80/20、MFR(200℃、5kgf)=6)(樹脂A1)を用いた。ポリブテンとしては、出光興産(株)製「300H」(分子量:1500、粘度(100℃)=810cst)(樹脂A2)を用いた。
B層のポリエステル系樹脂として、CHDM共重合PET(Eastman Chemical社製「EMBRACE」;エチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールの共重合比(モル比)70:30)(樹脂B1)を用いた。DSC法により測定した樹脂B1の結晶化度は0%であり(結晶融解ピークは観察されなかった)、実質的に非晶質なポリエステルであった。
170〜200℃に加熱した押出機aに、樹脂A1(90重量部)をホッパーより投入して溶融させ、押出機途中に設けられたポートより樹脂A2(10重量部)を計量しながら供給し混合させた。200〜250℃に加熱した押出機bには、樹脂B1を100重量部を投入した。上記2台の押出機を用いて、溶融押出を行った。押出機bから押出される樹脂が、押出機aから押出される樹脂層の両側となるように、合流ブロックを用いて合流させ、Tダイ(スリット間隔1.0mm)より押出した後、25℃に冷却したキャスティングドラム上で急冷して、B1/(A1とA2の混合ポリマー)/B1の2種3層積層未延伸フィルム(厚み300μm)を得た。未延伸フィルムの積層厚み比は、積層部/基層部/積層部=1/3/1であった。得られた未延伸フィルムは、表1に示すとおり、良好な層間強度を有していた。
次に、厚みを調節した未延伸フィルムを、ロール延伸機を用いて、長手方向に、85℃で1.10倍延伸した後、幅方向に95℃で5.0倍テンター延伸することにより、主に1軸方向に収縮する2軸延伸フィルムを得た。製膜速度を調節して、フィルムの総厚みが、40μm(層厚み比:1/3/1)のシュリンクフィルムを得た。
この得られたシュリンクフィルムは、表1に示すとおり、圧縮強度、収縮性、透明性などにおいて、優れた特性を有していた。
続いて、得られたシュリンクフィルム(厚み40μm)の片面にウレタン系インキ(商品名「NT−ハイラミック」、大日精化工業(株)製)をグラビア印刷により塗布、印刷層を形成し、長尺シュリンクラベルを得た。さらに、印刷面が内側となり、且つ、フィルムの幅方向が円周方向となるように筒状に丸めて、テトラヒドロフラン(THF)でセンタシールし、長尺筒状シュリンクラベルを得た。最後に、上記長尺筒状シュリンクラベルを、自動ラベル装着装置(フジアステック社製STS−1936)に供給し、各ラベルに切断しながら、容器(東洋製罐(株)製500ml耐熱角形PETボトル)に装着し、雰囲気温度90℃のスチームトンネルで加熱収縮して、ラベル付き容器を得た。
上記の印刷工程、ラベル装着工程等では塗布不良や挫屈などのトラブルも生じず、生産性は良好で、また、得られたラベル付き容器も優れた仕上がりであった。
【0070】
実施例2、3
押出機aに投入するA1とA2の混合比を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、未延伸フィルム(フィルム厚み300μm)、シュリンクフィルム(フィルム厚み40μm)、および、ラベル付き容器を得た。
得られた未延伸フィルム、シュリンクフィルムは、表1に示すとおり、優れた特性を有していた。また、生産性も良好で、得られたラベル付き容器の仕上がりも優れていた。
【0071】
実施例4
3台の押出機(押出機a、押出機b、押出機c)を用いた。押出機cから押出される樹脂が、押出機aから押出される樹脂層の両側となり、さらに押出機bから押出される樹脂がその両側となるように、合流ブロックを用いて合流させ、実施例1と同様にして、5層積層の未延伸フィルム(フィルム厚み300μm)、シュリンクフィルム(フィルム厚み40μm)、および、ラベル付き容器を得た。なお、表1に示すように、押出機aにはA1とA2、押出機bにはB1、押出機cにはA1、A2及びB1を用いた。
得られた未延伸フィルム、シュリンクフィルムは、表1に示すとおり、優れた特性を有していた。また、生産性も良好で、得られたラベル付き容器の仕上がりも優れていた。
【0072】
比較例1
表1に示すように、押出機aに投入する原料として、樹脂A2を用いず、樹脂A1のみで、実施例1と同様にして、未延伸フィルム、シュリンクフィルム、および、ラベル付き容器を得た。
結果、未延伸フィルムは、表1に示すように、層間強度の劣るものであった。また、シュリンクラベル、ラベル付き容器の生産工程では、層間剥離によるトラブルが発生し、生産性が低下した。
【0073】
比較例2、3
押出機aに投入するA1とA2の混合比を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして未延伸フィルム、シュリンクフィルム、および、ラベル付き容器を得た。
得られた未延伸フィルムは、ポリブテン添加量が少ない場合(比較例2)は、層間強度の劣るものであった。添加量が多い場合(比較例3)は、製造工程でフィルム破れが起こりやすく生産性が劣っており、さらに表1に示すとおり、未延伸フィルムの層間強度は優れていたもの、シュリンクフィルムの圧縮強度、収縮性、透明性の劣るものであった。また、シュリンクラベル、ラベル付き容器の生産工程では、比較例2の場合は層間剥離によるトラブルが発生し、比較例3の場合は挫屈が発生して、いずれも生産性が低下した。さらにラベル付き容器の仕上がりも劣っていた。
【0074】
比較例4
押出機aに投入する原料として、樹脂A1の代わりに、GPPS(一般用ポリスチレン)(東洋スチレン(株)製、「トーヨースチロールG200C」)を用いた以外は、実施例1と同様にして、未延伸フィルム、シュリンクフィルム、および、ラベル付き容器を得た。
得られた未延伸フィルムは層間強度の劣るものであった。さらに、シュリンクフィルムの収縮性にも劣るものであった。また、シュリンクラベル、ラベル付き容器の生産工程では、層間剥離によるトラブルにより生産性が低下し、ラベル付き容器の仕上がりも劣っていた。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明のシュリンクラベルの一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 シュリンクフィルム
2 積層部(B層)
3 基層部(A層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン−ブタジエン共重合体を50〜90重量%、ポリブテンを10〜30重量%含有するフィルム層(A層)の少なくとも片側に、ポリエステル系樹脂からなるフィルム層(B層)を有することを特徴とするシュリンクフィルム。
【請求項2】
A層とB層が他の層を介さずに積層されている請求項1に記載のシュリンクフィルム。
【請求項3】
A層、B層、および、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブテンおよびポリエステル系樹脂からなるC層を有するシュリンクフィルムであって、A層/C層/B層の順に、それぞれの層が他の層を介さずに積層されている請求項1に記載のシュリンクフィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載のシュリンクフィルムの少なくとも一方の表面に印刷層を設けてなるシュリンクラベル。
【請求項5】
請求項4に記載のシュリンクラベルが装着されたラベル付き容器。

【図1】
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【公開番号】特開2007−130970(P2007−130970A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328730(P2005−328730)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】