説明

シリコーンベース発泡体の製造方法

本発明の対象は、ポリマー網目構造の形成に貢献し、かつ一般式[1a]、[1b]、又は[1c]([1a]:Si−O−(R1)(R2)(R3)、[1b]:=Si(R5)−O−C(R1)(R2)(R3)、[1c]:≡Si−O−C(O)−U)の少なくとも1つのアルコキシシリル基を有する少なくとも1つの化合物(V)(この化合物から、加工時には気体状の少なくとも1つの分子(XY)がポリマー混合体(A)の硬化の際に脱離し、ポリマー混合体(A)における発泡形成を引き起こす)と、ブレンステッド酸、ブレンステッド塩基、ルイス酸、及びルイス塩基から選択される触媒(K)とを使用し、前記式中、R1、R2、R3は水素、ハロゲン、炭素原子を介して結合された基(ここで基R1、R2、R3は相互に結合されていてよい)、又は一般式[1a]、[1b]、又は[1c]の2つのアルコキシシリル基を結合させる炭素原子を介して結合された二価の基であるが、ただし、基R1、R2、R3のうち最高2つが水素であり、かつ式≡Si−O−CH2−R4のアルコキシシリル基は除外されており、R4は1〜12個の炭素原子を有する非分枝状の脂肪族炭化水素基であり、R5は水素、ハロゲン、1〜12個の炭素原子を有する非置換の、又は置換された脂肪族、オレフィン性、又は芳香族の炭化水素基、OH基、−OR6基、−OC(O)R6基、−OC(O)OR6基、−OC(O)OM基、メタロキシ基M−O−、又はCH2−Wであり(ここでWはヘテロ原子であり、その自由原子価は炭化水素基によって飽和されている)、Uは−OR6基、又は−NR6a6b基であり、R6、R6a、R6bは水素、1〜12個の炭素原子を有する非置換の、又は置換された脂肪族、オレフィン性、又は芳香族の炭化水素基であり、かつMは配位子によって飽和されている自由原子価を有していてよい金属原子であり、かつこの際、架橋の際にSiO2を形成するポリマー混合体(A)が除外されている、シリコーン含有ポリマー混合体(A)からシリコーンベースの発泡体を製造する方法、発泡層、発泡成形体、接着材料、又は封止材料の製造方法、並びに前記方法に従ってポリマー混合体(A)から得られる、シリコーンベースの発泡体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金不含のシリコーンベースの発泡体、発泡層、発泡成形体、接着材料又は封止材料、並びにシリコーンベースの発泡体に関する。
【0002】
発泡プラスチック物品、並びに発泡形成のための相応する発泡系は、刊行物及び特許文献から多くの例が従来技術である。プラスチック部材の発泡はとりわけ、質量低減のため、及び新たな特性獲得のために行われる。エラストマー技術では、さらに所望の特徴として、高められた圧縮率が加わる。可能な限り高い耐性、例えば温度作用若しくは薬品に対して高い耐性を有する発泡体を得るために、好ましくはシリコーンエラストマーがゴムベースとして使用される。
【0003】
エラストマーフォームは、大抵は、例えば高められた温度で、又は助剤ガスの添加により、例えば窒素、酸素、CO2、水素及び水蒸気を放出する化学発泡剤を用いて製造される。例えばEP 0 553 889 B1では水によって、EP 0 506 241 B1ではアルコールによって発泡させている。しかしながらこれら2つの発泡剤は、極性物質としてシリコーンと原則的に非相溶性であるという欠点を有する。従って、前記発泡剤はエラストマーマトリックス中で乳化されねばならず、これは取り扱い及び安定性に関して強度の制限を招き、その結果、例えば偏析現象及び不均質性を招く。他の発泡系、例えばホスフィンは、例えば特許文献EP0355429B1に記載されており、同一の問題を有している。
【0004】
例えばEP0416229A2に記載されているような水素ベースの発泡体は、その使用に関して極めて制限されており、それというのも、この発泡体は成分混合の後に現場で使用されねばならないためである。更に、前記発泡体も、低い密度を達成し得るものの、わずかな機械的強度を有するに過ぎない。
【0005】
更に、古典的な窒素ベースの発泡剤、例えばアゾジカルボンアミド及び2,2’−アゾビス−イソブチロニトリルAIBNの使用は、例えばReinl, W., Erkrankungen durch Tetramethylbernsteinsaeuredinitril bei der Schaumstoffherstellung, Archiv fuer Toxikologie, 第16巻, 第367380頁, 1957及びAzobisisobutyronitrile, Health Council of the Netherlands, 2002, Publication 2002/01 OSHに記載されているように、毒物学的な考察に基づいて、並びに例えば該刊行物の実施例8、第1表に示されているように、大きな圧縮永久歪みが原因で、適していると見なすことはできない。
【0006】
最後に、刊行物、例えば特許文献DE19750697A1及びEP0751173B1には、炭酸塩の分解に基づくCO2形成性発泡体が記載されている。この発泡体の欠点は、固体がポリマー混合物と限定的にしか混ざらないこと、並びに不均質で、再現可能性が低いその発泡構造である。DE 102005053697A1は、膨張可能なシリコーン組成物(発泡形成のために固体物質で結合された発泡剤が添加されているもの)を記載しており、この組成物は例えば塩の形で、挿入液体(Interchalatfluessigkeit)、又は結晶液体(Kristallfluessigkeit)を含む。この際に発泡形成は好ましくは、水の蒸発によって引き起こされる。ここでも欠点となるのは、固体とポリマー混合物とは限定的にしか混ざらないことであり、またそれが網目構造構成に貢献しないという状況である。
【0007】
発泡生成のための手法にはこうした欠点がある上、公知のシリコーンベース混合体は、その適用と加工においてさらに制限されてしまう。
【0008】
発泡シロキサン含有材料の従来の適用は、一部多段階の、そのためコストのかかる製造方法及び加工方法によって特徴付けられているか、若しくは、シリコーン混合体をベースとして、これを高価な白金触媒で、又は過酸化的に架橋させなければならない。
【0009】
そのためJP7292504A2では、単に水着用カップの製造のために発泡シリコーン−プリフォームが、白金を用いた付加架橋により製造され、そして熱可塑性樹脂に施与される。
【0010】
KR20010077825Aでは、一種の人工皮革を得るために、パラフィン紙上でシリコーンが予備発泡され、そして事前にシリコーンで接着被覆された繊維と転移被覆(Transferbeschichtung)によって貼り合わされる。
【0011】
JP63282381A2も、発泡シリコーンを、過酸化的に架橋された(それゆえ臭気の強い)固体シリコーンを用いて繊維上に貼り合わせるという同じくコストのかかる(多段階の)方法をとっている。最後にDE 41 01 884 A1は、付加架橋性、つまり白金依存性のシリコーン混合物について言及しており、この混合物は圧縮空気によって発泡体になる。
【0012】
ヒドロシリル化により硬化可能なポリマーの欠点は、硬化に必要な貴金属触媒が、非常に高価な原料であるということである。貴金属触媒の高コストが問題となるのはとりわけ、触媒は通常、製品中に残り、再び回収できないからである。
【0013】
シリコーン混合体の貴金属触媒による付加架橋、又は過酸化架橋のための代替手段としては、シラノール基(≡Si−O−H)の縮合による、ポリマー網目構造の形成が公知である。これらの反応性単位が、混合体中に存在する加水分解可能なシリル基、例えば≡Si−O−Ac、又は≡Si−Clから形成されれば、硬化すべきポリマー中の加水分解可能なシリル基への水の拡散によって硬化速度が決まる。とりわけ比較的厚い層の硬化(例えば発泡体の生成の際に起こる)は、しばしばあまりにも遅い工程であり、このことによってこれらのポリマーは、多くの適用に使用することが困難に、又はそれどころか不可能になっている。
【0014】
アルコキシシラノールの分解により生成されるSiO2層を半導体基板上に堆積させることは、US 7135418 B1に記載されている。このために、SiO2を堆積させるための表面を短時間、繰り返し、t−ペントキシシリル基を有する二酸化ケイ素放出性前駆体の雰囲気に供する。この際、高められた温度で、例えばトリス(t−ペントキシ)シラノールからとりわけ水とアルケンが脱離して二酸化ケイ素が形成される。
【0015】
Adv, Mater. 2001, 13, 331-335 (Don Tilley et al.)には、トリス(t−ブトキシ)シリル基を有する分子状前駆体の熱分解による、混合酸化物の製造が記載されている。混合酸化物の形成はこの際、90℃〜150℃の温度で、イソブチレンと水を脱離しながら(空気)湿分が生じることなく行われる。
【0016】
WO 2005/035630 A1には、t−ブトキシ官能性シリコーン樹脂が記載されている。
【0017】
Bull. Chem. Soc . Japan 1969, 42, 1118-1123 (Y. Abe et al.)には、高分子化合物中での、触媒作用によらないt−ブトキシシラン(シロキサン)の熱変換が記載されている。
【0018】
J. Beckmann et al.はAppl. Organomet . Chem. 2003, 17, 52-62において、t−ブトキシシラノールの合成と、触媒作用によらない熱縮合を記載している。
【0019】
J. Photopolym. Sei. Techn. 1992, 5, 181-190には、t−ブトキシ官能性シロキサンを、電子照射によって光酸(Photosaeure)の存在下でSiO2に変換することが記載されている。
【0020】
網目構造、例えばシロキサン及び有機ポリマーから発泡体を製造するために、相応する≡Si−O−H基の縮合反応による、アルコキシシラノール若しくはアルコキシシリル基の熱分解を利用することは、これまで文献には未だ記載されていない。
【0021】
シリコーンベースのポリマー混合体を発泡体へと生成及び加工することを可能にする方法であって、コスト的に有利であり、かつ技術的に容易に変換可能であり、かつ上記欠点を有さない、又はもはやほとんど有さない方法は、これまで公知ではない。
【0022】
本発明の対象は、シリコーン含有ポリマー混合体(A)からシリコーンベースの発泡体を製造する方法であって、
ポリマー網目構造の形成に貢献し、かつ一般式[1a]、[1b]、又は[1c]
【化1】

[式中、
1、R2、R3は水素、ハロゲン、炭素原子を介して結合された基(ここで基R1、R2、R3は相互に結合されていてよい)、又は一般式[1a]、[1b]、又は[1c]の2つのアルコキシシリル基を結合させる炭素原子を介して結合された二価の基であるが、ただし、基R1、R2、R3のうち最高2つが水素であり、かつ式≡Si−O−CH2−R4のアルコキシシリル基は除外されており、
4は1〜12個の炭素原子を有する非分枝状の脂肪族炭化水素基であり、
5は水素、ハロゲン、1〜12個の炭素原子を有する非置換の、又は置換された脂肪族、オレフィン性、又は芳香族の炭化水素基、OH基、−OR6基、−OC(O)R6基、−OC(O)OR6基、−OC(O)OM基、メタロキシ基M−O−、又はCH2−Wであり(ここでWはヘテロ原子であり、その自由原子価は炭化水素基によって飽和されている)、
Uは−OR6基、又は−NR6a6b基であり、
6、R6a、R6bは水素、1〜12個の炭素原子を有する非置換の、又は置換された脂肪族、オレフィン性、又は芳香族の炭化水素基であり、かつ
Mは配位子によって飽和されている自由原子価を有していてよい金属原子である]
の少なくとも1つのアルコキシシリル基を有する少なくとも1つの化合物(V)(この化合物から、加工時には気体状の少なくとも1つの分子(XY)がポリマー混合体(A)の硬化の際に脱離し、ポリマー混合体(A)における発泡形成を引き起こす)と、
ブレンステッド酸、ブレンステッド塩基、ルイス酸、及びルイス塩基から選択される触媒(K)とを使用し、
この際、架橋の際にSiO2を形成するポリマー混合体(A)が除外されている、前記製造方法である。
【0023】
シリコーン含有ポリマー発泡体(A)からはシリコーンベースの発泡体を製造することができ、この際、
1)貴金属触媒、例えば白金族金属を使用せずに、とりわけ白金無しで網目構造の構築を行い、
2)ポリマー網目構造構築の際に形成される開裂生成物によって発泡形成を行い、そして
3)発泡体を生成するため、若しくは発泡体を基材に生成するために充分に長い加工時間を有する、流動性のある混合体が得られる。
【0024】
発泡体の形成は、ポリマー混合体(A)の硬化によって、成形体又は層として担体上、又は担体の間で行う。ポリマー混合体(A)は、厚い層で(空気)湿分が入り込むことなく、熱硬化させることができる。
【0025】
一般式[1a]、[1b]、及び[1c]中においてケイ素原子は、≡Siで表された価のところで任意の基によって飽和されていてよい。
【0026】
基R1、R2、R3はとりわけ、水素、塩素、非置換若しくは置換された脂肪族、オレフィン性、又は芳香族炭化水素基、又は炭素原子を介して結合されたシロキサン基、カルボニル基−C(O)R6、カルボン酸エステル基−C(O)OR6、シアノ基−C≡N、又はアミド基−C(O)NR6a6bであり、ここでR6、R6a、R6bは上述の意味を有する。基R1、R2、R3は好適には、1〜12個、とりわけ1〜6個の炭素原子を有する。基R1、R2、R3は好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基、又はカルボキシル基−C(O)OCH3である。
【0027】
基R1、R2、R3は特に好ましくは、メチル基、エチル基、又はプロピル基である。
【0028】
基R1、R2、R3のうち2つ又は3つは相互に結合されていてよく、例えばR2とR3は、ジオールから形成されていてよい。
【0029】
基R5は好ましくは、水素、塩素、メチル、エチル、プロピル、フェニル、メトキシ、エトキシ、アセトキシ、ビニル、OH、カーボネート、メタロキシ基−O−M、又は基CH2−Wであり、ここでヘテロ原子Wは好適には、N、O、P、Sであり、その自由原子価は、好適には1〜10個の炭素原子を有する好適にはアルキル基又はアリール基によって飽和されている。
【0030】
基R6、R6a、R6bは好ましくは、水素、メチル、エチル、プロピル、ビニル、又はフェニルである。
【0031】
基Mは好適には、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ホウ素、アルミニウム、ジルコニウム、ガリウム、鉄、銅、チタン、亜鉛、ビスマス、セリウム、及びスズから選択される金属原子である。多価金属の場合、金属の自由原子価は、ハロゲン化物、好適には塩化物と臭化物、アルコキシ基、好適にはメトキシ基、エトキシ基、若しくはイソプロポキシ基、アルキル基、好適にはメチル基、エチル基、及びフェニル基、カルボン酸基、好適には2〜16個の炭素原子を有するカルボン酸基によって、又は慣用の単座及び多座錯体配位子、典型的には有機金属合成で使用されるもの(例えばアセチルアセトン)によって飽和されている。
【0032】
一般式[1a]の基≡Si−O−C(R1)(R2)(R3)は好ましくは、β位で酸素に対して水素を有する。好ましい例は、式[3]〜[9]
【化2】

である。
【0033】
化合物(V)は、低分子化合物(N)であるか、又は高分子若しくはポリマーの化合物(P)であってよい。
【0034】
本発明の好ましい実施態様において化合物(V)は、一般式[1a]の基を少なくとも1つ有する低分子化合物(N)である。低分子化合物(N)は典型的には、一般式[10]
【化3】

のシラン、又はその加水分解生成物と縮合生成物の形で存在し、この式中、nは1、2、又は3であり、R5aはR5の意味を有し、R1、R2、R3及びR5は前述の意味を有する。
【0035】
特に好ましくは、化合物(N)として式[11]〜[22]の物質
【化4】

及びこれらの加水分解生成物と縮合生成物を使用し、前記式中、LはCl、OH、メチル、エチル、ビニル、フェニル、1〜6個の炭素原子を有するカルボキシル基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基、又はメタロキシ基Ma−O−であり、かつMaはMの意味を有する。
【0036】
極めて特に好ましくは、化合物(N)として式[23]〜[70]の物質
【化5−1】

【化5−2】

及びこれらの加水分解生成物と縮合生成物を使用し、前記式中、Meはメチル基である。
【0037】
本発明のさらなる実施態様において化合物(V)は、一般式[1a]、[1b]、又は[1c]のアルコキシシリル基が自由原子価を介してケイ素原子に1つ又は複数のポリマー基(PR)のところで共有結合により結合されている、高分子若しくはポリマーの化合物(P)である。
【0038】
同様にまた、基R1、R2、R3はポリマー基(PR)であるか又はポリマー基を含んでいてよく、この際、この基(PR)は、炭素スペーサーを介して一般式[1a]、[1b]、又は[1c]の炭素原子に結合されている。
【0039】
ここでポリマー基(PR)としては、あらゆる有機ポリマー及びオルガノポリシロキサンが使用できる。非分枝状、及び分枝状の形態での、適切なポリマーの例は、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリアクリレート、エポキシ樹脂、ポリメタクリレート、並びにオルガノポリシロキサン、例えば線状、分枝状、及び環状のオルガノポリシロキサン、及びオルガノポリシロキサン樹脂、及びこれらのコポリマーである。ポリマー基(PR)が共有結合により自由原子価に、一般式[1a]、[1b]、又は[1c]のアルコキシシリル基のケイ素原子のところで結合されているポリマー(P)の例は、一般式[1]又は[2]の鎖状アルコキシシリル基を有する、ポリエチレン又はポリビニルアセテートである。
【0040】
ポリマー基(PR)がそれぞれ相互に独立して基R1、R2、R3に相応する、又はそれぞれ相互に独立して基R1、R2、R3の一部である、ポリマー(P)の例は、一般式[71]
【化6】

[式中、xは10〜100の整数であり、かつ≡Siで表されるケイ素原子の自由原子価は、任意の基で飽和されている]
のポリシロキサンである。
【0041】
好ましいポリマー(P)は、一般式[72]
【化7】

の線状の、分枝状の及び環状のオルガノポリシロキサンであり、
前記式中、
7はR5の意味を有し、基R7のうち少なくとも1つが−O−C(R1)(R2)(R3)であり、
a、b、c、及びdは0、又は0より大きい整数の値であるが、ただし、a+b+cの総和は少なくとも1であり、かつ
1、R2、R3、及びR5はそれぞれ相互に独立して前述の意味を有することができる。
【0042】
基R7は好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、フェニル基、OH基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、アセトキシ、又は基−O−C(R1)(R2)(R3)である。
【0043】
ポリマー(P)は特に好ましくは、末端位又は側位に一般式[1a]、[1b]、又は[1c]のアルコキシシリル基を有する、線状のシロキサンである。
【0044】
アルコキシシリル官能性ポリマー(P)を製造するためには、慣用の、当業者によく使われる合成法を使用することができる。アルコキシシリル官能性ポリエーテルは例えば、配位重合によって、例えばチーグラーナッタ触媒若しくはメタロセン触媒を用いて、又は一般式[1a]、[1b]、又は[1c]の基を有するビニル官能性アルコキシシランをポリエチレン上にラジカルグラフトすることによって得られる。アルコキシシリル官能性ポリビニルアセテートの製造は例えば、一般式[1a]、[1b]、又は[1c]の基を有するビニル官能性アルコキシシランと、酢酸ビニルとのラジカル重合によって得られる。一般式[1a]、[1b]、又は[1c]の基を有する、アルコキシシラン変性ポリメタクリレートを製造するために、メタクリレート官能性アルコキシシランをメタクリレートと共重合させることができる。アルコキシシラン官能性ポリウレタンの製造は例えば、イソシアネート官能性プレポリマーと、一般式[1a]、[1b]、又は[1c]の基を有するアミノ官能性アルコキシシランとの反応によって可能である。
【0045】
アルコキシシラン官能性ポリマー(P)は例えば、α,ω−SiOH官能性シロキサン又はSiOH官能性シリコーン樹脂と、一般式[10]
【化8】

[式中、
nは1、2、又は3の値であり、
1、R2、R3、及びR5aは前掲の意味を有する]
のシラン、若しくはその加水分解生成物及び縮合生成物との反応によって、又は
一般式[10]のシランの縮合、又は一般式[10]のシランと、一般式[73]
【化9】

[式中、
Yは、水素、OH基、ハロゲン、1〜12個の炭素原子を有するアルコキシ基、1〜12個の炭素原子を有するカルボキシル基であり、
8は、場合によりヘテロ原子で置換された、1〜12個の炭素原子を有する脂肪族若しくは芳香族炭化水素基であり、かつ
eは1、2、3、又は4の値を取ることができる]
のシランとの、若しくはその加水分解生成物及び縮合生成物との共縮合、又は、
一般式[72]のオルガノポリシロキサンを、1つ若しくは複数の一般式[10]のシランと、又はその加水分解生成物若しくは縮合生成物と平衡させるための当業者に公知の方法によって、得ることができる。
【0046】
化合物(V)は1分子当たり平均で、1〜10000個の一般式[1a]、[1b]、又は[1c]のアルコキシシリル基を有する。化合物(V)が低分子化合物(N)であれば、一般式[1a]、[1b]、又は[1c]のアルコキシシリル基の数は、好ましくは1である。基−O−C(R1)(R2)(R3)の数は、アルコキシシリル基1つ当たり1、2、又は3である。特に好ましくは、その数は2又は3である。
【0047】
化合物(V)がポリマー(P)であれば、一般式[1a]、[1b]、又は[1c]のアルコキシシリル基の数は、好ましくは1〜10000である。特に好ましくは、一般式[1a]、[1b]、又は[1c]のアルコキシシリル基の数は5〜1000である。ここで基−O−C(R1)(R2)(R3)の数は、アルコキシシリル基1つ当たり1、2、又は3である。特に好ましくは、その数は2又は3である。
【0048】
さらにポリマー混合体(A)は、有機ポリマー及びシロキサンを含むことができる。好ましいポリマーとシロキサンは、水との反応によりSiOH基を形成する基、又はSiOHを有する分子との縮合反応を引き起こすことができる基、又はSiOH基を有する基、を有するものである。このような有機ポリマーとシロキサンの例は、SiOH官能性シリコーン油及びシリコーン樹脂、並びに加水分解可能なSiOアルキル基、例えばDE 10 2006 022 095 A1に記載されている基を有する、シロキサン及び有機ポリマーである。
【0049】
ポリマー混合体(A)は特に好ましくは、一般式[72]の線状又は環状のオルガノポリシロキサンを含み、前記式中、
7は基R5の意味を有し、
a、b、c、及びdは0、又は0より大きい整数であるが、ただし、a+b+cの合計は少なくとも1であり、
1、R2、R3、及びR5は、上記の意味を有していてよく、
ここで基R7は好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、フェニル基、OH基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、アセトキシ、又は基−O−C(R1)(R2)(R3)である。
【0050】
特に好ましくは、ポリマー混合体(A)の構成成分として使用される、一般式[72]の線状、分枝状、又は環状のオルガノポリシロキサンは、末端及び/又は側位にアルコキシシリル基を、或いは末端位にOH基を有するシロキサンである。
【0051】
本発明による方法において化合物(V)から脱離により生じる分子(XY)は、加工条件のもとで好ましくは、ポリマー混合体(A)中で発泡形成につながる気体状分子として存在し、無機又は有機の化合物であってよい。分子(XY)は例えば、炭化水素、例えばアルカン、アルケン、アルキン、又は芳香族化合物であってよく、又はアルコール、エーテル、アミン、エステル、アミド、複素環式化合物、CO2、窒素、又は水であってよい。
【0052】
分子(XY)は好ましくは、不飽和有機化合物、及び二酸化炭素であり、特に好ましいのは不飽和有機化合物、特に一般式[73a]
【化10】

のものであり、ここで、R10、R11、R12、及びR13は、R1、R2、及びR3について挙げた意味を有する。
【0053】
特に好ましい分子(XY)の例は、化合物[74]〜[87]
【化11】

である。
【0054】
化合物(XY)は本発明による方法の場合、好ましくは式[1a]、[1b]、又は[1c]のアルコキシシリル基の変換によって、例えば熱誘導、ラジカル誘導、又は照射誘導による脱離によって生成する。
【0055】
化合物(XY)は例えば、式[a]〜[c]
【化12】

に記載されているように形成することができる。
【0056】
化合物(V)から分子(XY)を形成する際に好ましくは、反応性基、例えばシラノール≡Si−O−Hが生成し、このシラノール基は、相互に反応可能な、若しくは縮合反応に役立つ、ポリマー混合体の他の官能基、例えば別のシラノール基≡Si−OH、アルコキシシリル基、又はSi−Cl基と反応可能なものであり、それゆえポリマー混合体(A)の硬化に貢献するものである。
【0057】
好ましい触媒(K)は、ルイス酸とブレンステッド酸である。適切なルイス酸の例は、スズ、酸化スズ、並びにスズ化合物、例えばジラウリン酸ジブチルスズ(DBTL)、チタン、酸化チタン、並びにチタン化合物、例えばチタン(IV)イソプロパノレート、銅、酸化銅、並びに銅化合物、例えば銅(I)トリフルオロメタンスルホネート、鉄、酸化鉄、並びに鉄化合物、例えば塩化鉄(III)、鉄(III)アセチルアセトネート、マンガン、酸化マンガン、並びにマンガン化合物、例えばマンガン(II)アセチルアセトネート、アルミニウム、酸化アルミニウム、並びにアルミニウム化合物、例えば塩化アルミニウム(III)、アルミニウム(III)イソプロパノレート、トリメチルアルミニウム、ホウ素、酸化ホウ素、並びにホウ素化合物、例えば三塩化ホウ素、ジルコニウム、酸化ジルコニウム、並びにジルコニウム化合物、例えばZr(IV)アセチルアセトネート、ガリウム、酸化ガリウム、並びにガリウム化合物、例えばガリウム(III)アセチルアセトネート、セリウム、酸化セリウム、並びにセリウム化合物、例えば塩化セリウム(III)、及び亜鉛、酸化亜鉛、並びに亜鉛化合物、例えばラウリン酸亜鉛、若しくはピバリン酸亜鉛である。
【0058】
適切なブレンステッド酸の例は、カルボン酸、例えばラウリン酸、スルホン酸、例えばトリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、並びにドデシルベンゼンスルホン酸、鉱酸、例えば塩酸、硝酸、及びリン酸である。加えて、高エネルギー光線、例えばUV光又は電子線による照射の際に、陽子を放出して分解する化合物も適している。このような化合物の例として挙げられるのは、ジアリールヨードニウム化合物、例えば{4−[(2−ヒドロキシテトラデシル)−オキシ]フェニル}フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムニトレート、ビス(4−tーブチルフェニル)ヨードニウム−p−トルエンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニルヨードニウム−トリフルオロメタンスルホネート、トリアリールスルホニウム化合物、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−(チオフェンオキシフェニル)−ジフェニルスルホニウム−ヘキサフルオロアンチモネート、(4−ブロモフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、及びN−ヒドロキシナフタルイミドトリフルオロメタンスルホネート、並びに2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンである。
【0059】
とりわけ、2つのシラノール基間の縮合、1つのシラノール基と、1つのアルコキシシリル基との縮合、1つのシラノール基と、1つのSi−Cl基との縮合、又は1つのアルコキシシリル基若しくはSi−Cl基と、水との縮合を加速させる触媒(K)を使用する。加えて、異なる触媒(K)の混合物を使用することができる。触媒(K)は好ましくは、ポリマー混合体(A)に対してその都度、少なくとも10ppmの濃度、特に好ましくは少なくとも0.1質量%の濃度で使用する。触媒(K)は好ましくは、ポリマー混合体(A)に対してその都度、最高20質量%、特に好ましくは最高10質量%、とりわけ最高5質量%の濃度で使用する。
【0060】
ポリマー混合体(A)は、溶剤不含であるか又は溶剤を含有していてもよい。適切な有機溶剤の例は、ベンジン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、1〜6個の炭素原子を有するハロゲン化アルカン、エーテル、エステル、例えば酢酸エチル、ケトン、例えばアセトン若しくはメチルエチルケトン、アミド、例えばジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホキシド、アルコール、例えばエタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、又はn−ブタノールである。
【0061】
さらにポリマー混合体(A)は、添加剤(Q)、例えば均展剤、水捕捉剤、殺菌剤、難燃剤、分散助剤、着色剤、可塑剤、熱安定剤、剥離力(Trennkraft)調節剤、抗ミスチング剤(Anti-Misting-Additive)、例えばWO 2006/133769に記載されているもの、芳香剤、表面活性物質、接着プライマー、繊維、例えばガラス繊維、プラスチック繊維、光保護剤、例えばUV吸収材とラジカル捕捉剤、及び微粒子状充填材、例えばカーボンブラック、顔料、例えば酸化鉄黒、石英、タルク、熱分解ケイ酸、白亜、又は酸化アルミニウムを含むことができる。
【0062】
特に好ましくは添加剤(Q)として、沈降ケイ酸と熱分解ケイ酸、並びにこれらの混合物を使用する。これらの充填材の比表面積は、BET法に従って測定して少なくとも50m2/gであるか、又は好適には100〜400m2/gの範囲である。挙げられたケイ酸充填物質は、親水特性を有していてよく、公知の方法によって疎水化されていてもよく、又は他の方法で表面が化学的に官能化されていてよい。ポリマー混合体(A)中の添加剤(Q)の含分は典型的には、0〜70質量%の範囲、好適には0〜50質量%の範囲である。
【0063】
加えてポリマー混合体(A)は、熱の影響下で、又はUV光による照射によって遊離ラジカルを形成する化合物(I)を含むことができる。これらの化合物(I)の例は、当業者に公知の熱的な、及び光化学的な重合開始剤であり、例えば"Handbook of Free Radical Initiators" E. T. Denisov, T. G. Denisova及びT. S. Pokidova著、Wiley-Verlag、2003に記載されているものである。
【0064】
熱開始剤(I)の例は、t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルオキソピバレート、t−ブチル−ペルオキソ−2−エチルヘキサノエート、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルペルオキソベンゾエート、又はクミルヒドロペルオキシドである。光開始剤(I)の例は、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニル−1−プロパノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、又はメチルベンゾイルホルミエートである。
【0065】
ポリマー混合体(A)を製造するために、それぞれの成分を任意の順序で相互に混合することができる。ここでポリマー混合体(A)の製造は、連続的な、又は非連続的な方法で行うことができる。ポリマー混合体(A)は好適には、1成分系(1K)、又は2成分系(2K)として製造することができる。
【0066】
シリコーンベース発泡体の製造方法においては、ポリマー混合体(A)を好適には1秒〜48時間、化合物(V)の反応によって生成する分子(XY)が気体であり、かつ混合物の発泡につながる温度にする。この際に発泡形成は、ポリマー混合体(A)の加工の際に、大気圧(=加工場所に存在する空気圧)で、低減された圧力、例えば0.01〜0.1MPaで、又は高められた圧力でも行うことができる。
【0067】
加工は好ましくは、低減された圧力、又は大気圧で行う。特に好ましくは、加工は大気圧で行う。
【0068】
ポリマー混合体(A)を好適には、少なくとも5℃、特に好適には少なくとも20℃、とりわけ少なくとも80℃〜300℃、特に好ましくは〜250℃、とりわけ〜200℃で加熱する。ポリマー混合体(A)が化合物(V)として、ポリマー基(PR)がオルガノポリシロキサンのポリマー(P)を含む場合、硬化は好ましくは5℃〜200℃の温度で行う。これに対して、ポリマー混合体(A)が化合物(V)として低分子化合物(N)、又はポリマー基(PR)が有機ポリマー基のポリマー(P)を含む場合、硬化は5℃〜300℃で行う。
【0069】
熱によってポリマー混合体(A)を架橋させるためのエネルギー源として好適には、炉、例えば空気強制循環式乾燥炉、加熱ダクト、加熱ローラ、加熱プレート、赤外線熱照射器、又はマイクロ波を使用する。ポリマー混合体(A)はまた、紫外光による照射、又は電子線照射によって架橋することもできる。
【0070】
本方法の特に好ましい実施態様では、シラノール基≡Si−OHが形成される一般式[1]のアルコキシシリル基の熱分解と、引き続き、シラノール基≡Si−OH相互の縮合、又はシラノール基と、縮合反応に役立つ、ポリマー混合体の他の官能基、例えばシラノール≡Si−OH基、アルコキシシリル基、又はSi−Cl基との縮合によって硬化を行う。
【0071】
ポリマー混合体(A)は好ましくは、1成分系(1K)、又は2成分系(2K)として加工することができる。1Kシステムの形ではポリマー混合体(A)を、上述のさらなる成分を添加することなく、硬化のために加熱する。
【0072】
2Kシステムの場合、相互に別々に貯蔵された構成成分である化合物(V)と触媒(K)を、加工の直前に初めてポリマー混合体(A)のためのさらなる成分と混合する。この際に化合物(V)又は触媒(K)はそれぞれ、ポリマー混合体(A)の構成成分と、貯蔵安定性の混合物を形成する。
【0073】
ポリマー混合体(A)が加工可能な状態で存在する時間(=可使時間)は、添加剤(Q)又は溶剤の添加によって調整可能である。可使時間は好ましくは、溶剤、例えばアルコールの添加によって調整する。特に好ましくは、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、又はn−ブタノールの添加によって調整する。
【0074】
ポリマー混合体(A)の白金不含硬化によって発泡体を製造するための本発明による方法は、あらゆる目的に使用可能であり、典型的には、発泡形状ポリマーの製造方法、とりわけ発泡形状エラストマーのシロキサン、発泡形状シリコーン樹脂、及び発泡形状有機ポリマーの製造方法に使用できる。
【0075】
本発明による製造方法が特に適しているのは、発泡層及び発泡成形体を、テキスタイル平面体、例えば織物、フリース、ニット、編物(Gelege)、ニットウェア、フェルト、又は経編生地(Kettwirkwaren)の上、又はその間に製造することである。ここでテキスタイル平面体は、天然繊維、例えば木綿、ウール、絹等から、又は、合成繊維、例えばポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、アラミド等から製造されていてよい。テキスタイルはまた、鉱物繊維、例えばガラス若しくはケイ酸塩、又は金属繊維から製造されていてもよい。本方法の好ましい利用は、弾性のある発泡ラミネートを、テキスタイル平面体上に、及びテキスタイル平面体の間に生成させることである。
【0076】
本発明による方法はさらにまた、鉱物性物質、例えば石、煉瓦、タイル、コンクリート、モルタル、プラスチック、天然物質、又は金属からの表面上又は表面の間に発泡層及び発泡成形体を製造するために使用することができる。本発明による方法に従って製造された発泡層及び発泡成形体はまた、耐熱性の、蒸気が当たる金属上の被覆に適した材料である。その組成次第で、発泡層及び発泡成形体は、最大700℃の温度で使用可能である。このような材料の適用として挙げられるのは例えば、グリル部材、オーブン部材、エンジン部材、排気部材であり、自動車構造から、及び航空技術と宇宙航空技術からのさらなる構成要素である。
【0077】
本発明の方法に従って製造された発泡層及び発泡成形体は同様に、被覆された材料の耐蝕性を改善させることができる。
【0078】
本発明による製造方法が同様に適しているのは、紙、プラスチックシート(例えばポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリエステルシート)、木材、コルク、ケイ酸塩基材と金属基材、並びにその他のポリマー基材、例えばポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、及びポリエステルの上やその間への、発泡層及び発泡成形体の製造である。
【0079】
使用される紙は、低質紙種、例えば吸収紙、例えばクラフト原紙、すなわち化学物質及び/又は高分子天然物質で前処理されていない60〜150g/mの質量を有するクラフト紙、未サイズ紙、低い叩解度を有する紙、木材パルプ紙、光沢仕上げされていないか若しくはカレンダー仕上げされていない紙、製造の際に乾燥平滑ローラの使用によって、コストのかかるさらなる工程無しで片面が平滑になっている紙、未コーティング紙、又は紙くずから製造された紙であってよい。しかしながら紙はまた、高質紙種、例えば低吸収紙、サイズ紙、高い叩解度を有する紙、木材不含の紙、カレンダ仕上紙又は光沢紙、グラシン紙、パーチメント紙、又はプレコート紙であってもよい。
【0080】
本発明による方法に従って発泡層及び発泡成形体で覆われた紙及びシートは例えば、剥離紙、裏紙、あい紙(例えば注型シート若しくは装飾シート、又は発泡物質の製造時に使用されるあい紙を含む)に適している。前記紙及びシートはさらに、例えば剥離紙、裏紙、及びあい紙、そういったシート及び布の製造のため、粘着テープ又は粘着フィルムの裏側の仕上げのため、又は粘着ラベルの貼り付け側(beschrifteten Seite)の仕上げのために適している。発泡層及び発泡成形体を製造するための本発明による方法はまた、包装材料、例えば紙、段ボール箱、金属シート、及び繊維からの包装材料の仕上げに適しており、例えば接着性物品、例えば接着剤及び接着性日用品の貯蔵及び/又は輸送が意図されている。
【0081】
本発明による方法に従って覆われた表面の適用のさらなる例は、いわゆる"転写法"に際して感圧接着層を転写するための担体の最終仕上げである。
【0082】
発泡層及び発泡成形体への本発明による加工という目的のために、ポリマー混合体(A)を上記表面の上、及びその間に適用するためには、当業者に慣用の方法、例えばブレード塗布法、浸漬法、押出成型法、射出成型法、又はスプレー法、並びにスピン法(Schleuderverfahren)が使用される。また、あらゆる種類のロール被覆、例えばグラビアロール塗、パジング又は多ロール系による塗布、並びにスクリーン印刷も可能である。
【0083】
生成する発泡層及び発泡成形体の厚さは好適には、適用目的と加工法に従って、0.5μm〜100cmである。
【0084】
本発明による方法は同様に、担体を含む発泡成形体の製造に適している。よってポリマー混合体(A)は例えば、発泡ケーブル被覆、及び管被覆に加工することができる。
【0085】
本発明による方法は同様に、発泡形状接着剤、封止剤、及び目地材、又はセメントコンパウンドに適している。使用可能性は例えば、窓構造、水族館又はショーケースの製造、並びに電気的又は電子的な装置の絶縁である。ここで下部構造としては典型的に、鉱物性下部構造、金属、プラスチック、ガラス、及びセラミックが適している。
【0086】
前述の式の全ての記号は、それらの意味を、それぞれ互いに無関係に有する。全ての式中でケイ素原子は四価である。
【0087】
別記しない限りは、全ての量及び%は質量によるものであって、全ての圧力は0.10MPa(絶対圧)であり、かつ全ての温度は20℃である。
【0088】
実施例1:ポリマー混合体の硬化
α,ω−SiOH末端のポリジメチルシロキサン(Mw=15000g/mol;粘度=1000〜1200mPas)18.75g(1.25mmol)、トリス(t−ペントキシ)シラノール(CASNo.17906-35-3)0.75g(2.475mmol)、n−ブタノール0.09g、並びにドデシルベンゼンスルホン酸0.023gを酢酸エチル0.25mL中に溶かした溶液を含む混合物を、ポリアミド織布(235dtex、150g/m2)上に、層厚2mmで塗布する。引き続き、被覆された織布を空気強制循環式乾燥炉にて170℃で4分間、加熱する。ポリアミド織布に付着した発泡層が生成する。
【0089】
実施例2:ポリマー混合体の硬化
高分散性ケイ酸(BET比表面積=130m2/g)2.2g、α,ω−SiOH末端のポリジメチルシロキサン(平均Mw=46000g/mol;粘度=18000〜22000mPas)4.5g、α,ω−SiOH末端のポリジメチルシロキサン(平均Mw=71000g/mol;粘度=70000〜80000mPas)3.3g、α,ω−SiOH末端のポリジメチルシロキサン(平均Mw=15000g/mol;粘度=1000〜1200mPas)5.0g、トリス(t−ペントキシ)シラノール(CAS No 17906-35-3;Mw=303.03g/mol)2.5g(8.25mmol)、n−ブタノール0.68g、並びにドデシルベンゼンスルホン酸0.075gを酢酸エチル0.8ml中に溶かした溶液を含む混合物を、ポリアミド織布(235dtx、150g/m2)上に層厚2mmで塗布する。引き続き、被覆された織布を空気強制循環式乾燥炉にて170℃で4分間、加熱する。ポリアミド織布に付着した発泡層が生成する。
【0090】
実施例3:ポリマー混合体の硬化
α,ω−SiOH末端のポリジメチルシロキサン(平均Mw=71000g/mol;粘度=70000〜80000mPas)12.00g(0.169mmol)、トリス(t−ペントキシ)シラノール(CASNo.17906-35-3;Mw=303.03g/mol)1.5g(4.95mmol)、n−ブタノール0.03g、並びにドデシルベンゼンスルホン酸0.045gを酢酸エチル0.5mL中に溶かした溶液を含む混合物を、ポリアミド織布(235dtex、150g/m2)上に、層厚2mmで塗布する。引き続き、被覆された織布を空気強制循環式乾燥炉にて170℃で4分間、加熱する。ポリアミド織布に付着した発泡層が生成する。
【0091】
実施例4:ポリマー混合体の硬化
α,ω−SiOH末端のポリジメチルシロキサン(平均Mw=46000g/mol;粘度=18000〜22000mPas)18.75g(0.408mmol)、トリス(t−ペントキシ)シラノール(CASNo.17906-35-3;Mw=303.03g/mol)0.75g(2.48mmol)、並びにドデシルベンゼンスルホン酸0.023gを酢酸エチル0.25mL中に溶かした溶液を含む混合物を、ポリアミド織布(235dtex、150g/m2)上に、層厚2mmで塗布する。引き続き、被覆された織布を空気強制循環式乾燥炉にて170℃で4分間、加熱する。ポリアミド織布に付着した発泡層が生成する。
【0092】
実施例5:ポリマー混合体の硬化
α,ω−SiOH末端のポリジメチルシロキサン(平均Mw=15000g/mol;粘度=1000〜1200mPas)15.63g(1.04mmol)、トリス(t−ペントキシ)シラノール(CASNo.17906-35-3;Mw=303.03g/mol)1.25g(4.125mmol)、並びにドデシルベンゼンスルホン酸0.0375gを酢酸エチル0.41mL中に溶かした溶液を含む混合物を、ポリアミド織布(235dtex、150g/m2)上に、層厚2mmで塗布する。引き続き、被覆された織布を空気強制循環式乾燥炉にて170℃で4分間、加熱する。ポリアミド織布に付着した発泡層が生成する。
【0093】
実施例6:ポリマー混合体の硬化
α,ω−SiOH末端のポリジメチルシロキサン(平均Mw=11100g/mol;粘度=450〜600mPas)15.00g(1.35mmol)、トリス(t−ペントキシ)シラノール(CASNo.17906-35-3;Mw=303.03g/mol)1.5g(4.95mmol)、並びにドデシルベンゼンスルホン酸0.045gを酢酸エチル0.5mL中に溶かした溶液を含む混合物を、ポリアミド織布(235dtex、150g/m2)上に、層厚2mmで塗布する。引き続き、被覆された織布を空気強制循環式乾燥炉にて170℃で4分間、加熱する。ポリアミド織布に付着した発泡層が生成する。
【0094】
実施例7:ポリマー混合体の硬化
α,ω−SiOH末端のポリジメチルシロキサン(平均Mw=3000g/mol;粘度=50〜100mPas)15.00g(5mmol)、ジ−t−ブトキシジアセトキシシラン(CASNo.13170-23-5;Mw=292.4g/mol)1.36g(4.65mmol)、並びにトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート0.068gをアセトン0.5mL中に溶かした溶液を含む混合物を、ポリアミド織布(235dtex、150g/m2)上に、層厚2mmで塗布する。引き続き、被覆された織布に30秒間、波長254nmのUV光を照射する。ポリアミド織布に付着した発泡層が生成する。
【0095】
実施例8:ポリマー混合体の硬化
α,ω−SiOH末端のポリジメチルシロキサン(平均Mw=3000g/mol;粘度=50〜100mPas)15.00g(5mmol)、ジ−t−ブトキシジアセトキシシラン(CASNo.13170-23-5;Mw=292.4g/mol)1.36g(4.65mmol)、並びに酢酸エチル中で4%のチタンアセチルアセトネート(CAS No. 97281-09-9)溶液2gを含む混合物を、ポリアミド織布(235dtex、150g/m2)上に、層厚2mmで塗布する。引き続き、被覆された織布を空気強制循環式乾燥炉にて170℃で5分間、加熱する。ポリアミド織布に付着した発泡層が生成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン含有ポリマー混合体(A)からシリコーンベースの発泡体を製造する方法であって、
ポリマー網目構造の形成に貢献し、かつ一般式[1a]、[1b]、又は[1c]
【化1】

[式中、
1、R2、R3は水素、ハロゲン、炭素原子を介して結合された基(ここで基R1、R2、R3は相互に結合されていてよい)、又は一般式[1a]、[1b]、又は[1c]の2つのアルコキシシリル基を結合させる炭素原子を介して結合された二価の基であるが、ただし、基R1、R2、R3のうち最高2つが水素であり、かつ式≡Si−O−CH2−R4のアルコキシシリル基は除外されており、
4は1〜12個の炭素原子を有する非分枝状の脂肪族炭化水素基であり、
5は水素、ハロゲン、1〜12個の炭素原子を有する非置換の、又は置換された脂肪族、オレフィン性、又は芳香族の炭化水素基、OH基、−OR6基、OC(O)R6基、−OC(O)OR6基、−OC(O)OM基、メタロキシ基M−O−、又はCH2−Wであり(ここでWはヘテロ原子であり、その自由原子価は炭化水素基によって飽和されている)、
Uは−OR6基、又は−NR6a6b基であり、
6、R6a、R6bは水素、1〜12個の炭素原子を有する非置換の、又は置換された脂肪族、オレフィン性、又は芳香族の炭化水素基であり、かつ
Mは配位子によって飽和されている自由原子価を有していてよい金属原子である]
の少なくとも1つのアルコキシシリル基を有する少なくとも1つの化合物(V)(この化合物から、加工時には気体状の少なくとも1つの分子(XY)がポリマー混合体(A)の硬化の際に脱離し、ポリマー混合体(A)における発泡形成を引き起こす)と、
ブレンステッド酸、ブレンステッド塩基、ルイス酸、及びルイス塩基から選択される触媒(K)とを使用し、
この際、架橋の際にSiO2を形成するポリマー混合体(A)が除外されている、前記製造方法。
【請求項2】
基R1、R2、R3が、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基、又はカルボキシル基−C(O)OR6である(ここでR6は、請求項1で挙げた意味を有する)、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物(V)が、一般式[10]
【化2】

[式中、
nは1、2、又は3の値であり、
5aはR5の意味であり、かつ
1、R2、R3、及びR5は請求項1又は2で挙げた意味を有する]
のシランの形で、又はその加水分解生成物及び縮合生成物の形で存在している、低分子化合物(N)である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ポリマー混合体(A)が、一般式[72]
【化3】

[式中、
7は基R5の意味を有し、かつ少なくとも1つの基R7は−O−C(R1)(R2)(R3)の意味を有し、
a、b、c、及びdは、0に等しいか、又は0より大きい整数の値を意味するが、ただし、a+b+cの合計が少なくとも1であり、かつ
1、R2、R3、及びR5はその都度独立して請求項1又は2で挙げた意味を有することができる]
の線状、分枝状、又は環状のオルガノポリシロキサンであるポリマー(P)を含む、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記分子(XY)が、一般式[73a]
【化4】

[式中、R10、R11、R12、及びR13は、R1、R2、及びR3に対して請求項1又は2で挙げた意味を有する]
の不飽和有機化合物である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒(K)が、チタン化合物、ジルコニウム化合物、及びセリウム化合物から、並びにカルボン酸、スルホン酸、塩酸、硝酸、リン酸、及びトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネートから選択される、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマー混合体(A)を、20℃〜250℃の温度に加熱する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
発泡層、発泡成形体、接着材料、又は封止材料が製造される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法に従ってポリマー混合体(A)から得られる、シリコーンベースの発泡体。

【公表番号】特表2011−529996(P2011−529996A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521504(P2011−521504)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058986
【国際公開番号】WO2010/015491
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】