説明

シート剥離装置及び剥離方法

【課題】接着シートに貼付した剥離用テープが剥がれることを防止することができるようにすること。
【解決手段】シート剥離装置10は、半導体ウエハWを支持する支持手段11と、剥離用テープPTとを移動手段15により相対移動させて半導体ウエハWから接着シートSを剥離する。この剥離において、未剥離の接着シートSに対向するように剥離された接着シートSの接着面に剥離補助手段14が当接し、剥離補助手段14が剥離された接着シートS領域を面で支持しながら接着シートSを半導体ウエハWから剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート剥離装置及び剥離方法に係り、更に詳しくは、被着体に貼付された接着シートに剥離用テープを接着し、当該剥離用テープを介して接着シートを剥離することができるシート剥離装置及び剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」と称する場合がある)の処理工程では、ウエハはその回路面に保護用の接着シートが貼付され、裏面研削等、種々の処理が行われ、ダイシングシートを介してリングフレームにマウントされた後、ダイシング前にこの接着シートは剥離される。このような接着シートの剥離装置としては、例えば、特許文献1に開示されている。同文献において、ウエハから接着シートを剥離する工程は、押圧ヘッドによって剥離用テープを接着シートに押圧して貼付する。その後、剥離用テープを掛け回すローラをウエハに対して移動し、剥離用テープをウエハの上方に移動させることにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−36111号公報
【特許文献2】特開2004−31535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の剥離装置にあっては、ウエハの大径化等により接着シートの剥離に大きな力が必要になると、接着シートから剥離用テープが剥がれてしまい、接着シートの剥離不良が発生する、という不都合がある。また、同装置にあっては、接着シートが剥離されたウエハの上方をローラや剥離された接着シートが通過する構成となっているため、ローラや剥離された接着シートを介して塵がウエハの回路面上に落下してしまう。これにより、当該回路を損傷させ半導体チップの歩留まりを大幅に低下させてしまう、という不都合がある。これは、近年の半導体製造工程において、1の塵が検出されると、統計的にその塵を中心とした半径数十ミリメートル(例えば25mm)の円内に位置するチップは、全て不良チップとして扱われ、これらチップを再検査したり、破棄したりする検査基準が設けられており、チップサイズによっては、数百個もの不良として扱われるチップを出してしまうからである。特に、先ダイシング法によってウエハが個片化されている場合、ウエハの外周に形成された三角形状等の細かい不定形チップが接着シートやローラ等に付着し、これが回路面上へ落下することがあるため、前記不都合が発生し易くなる。
【0005】
特許文献2の剥離装置にあっては、板状体からなる折返手段によって、折り返した接着シートを被着体となる半導体チップ側に押圧して剥離しているが、板状体が接着シートの剥離動作中に接着シートが剥離された半導体チップの回路面上に位置することとなる。このため、同装置においても、板状体に付着した塵が半導体チップ上に落下することとなり、これによっても半導体チップの歩留まり低下を招来する、という不都合がある。
【0006】
[発明の目的]
本発明の目的は、接着シートに貼付した剥離用テープが剥がれることで、接着シートの剥離不良を発生することを防止することができるシート剥離装置及び剥離方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、被着体上に塵が落下して当該被着体の製造における歩留まりが低下することを抑制することができるシート剥離装置及び剥離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、被着体の一方の面に貼付された接着シートを剥離用テープを介して剥離するシート剥離装置であって、
前記被着体を支持する支持手段と、前記剥離用テープを繰り出す繰出手段と、前記接着シートに剥離用テープを貼付する貼付手段と、未剥離の接着シートに対向するように剥離された接着シートの接着面に接触し、剥離された接着シート領域を面で支持する剥離補助手段と、支持手段と剥離用テープとを相対移動させる移動手段と、前記各手段の動作を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記剥離用テープ、前記被着体から剥離された接着シート、前記繰出手段、前記貼付手段、前記剥離補助手段及び前記移動手段の内、前記接着シートが剥離された被着体上に位置するものを当該接着シートが剥離された被着体上から相対移動によって退避させ、当該被着体から接着シートを剥離するように制御可能に設けられる、という構成を採っている。
【0008】
本発明において、前記制御手段は、被着体から接着シートを剥離するときに、平面視で前記剥離補助手段と接着シートが剥離された被着体との間に表出する折返しシート部を形成する、という構成を採ることが好ましい。
【0009】
また、前記剥離補助手段は、ベルト部材と、これに掛け回される複数のローラとを含み、
前記ベルト部材の近傍には、ベルト部材に付着した塵を除去する除塵手段が設けられる、という構成が好ましくは採用される。
【0010】
更に、前記剥離補助手段と剥離された接着シートの接着面との接触面積を変更可能な接触面積変更手段を有するとよい。
【0011】
また、本発明の剥離方法は、被着体の一方の面に貼付された接着シートを剥離用テープを介して剥離するシート剥離方法であって、
前記被着体を支持手段により支持する工程と、
前記剥離用テープを繰出手段により繰り出す工程と、
前記接着シートに剥離用テープを貼付手段により貼付する工程と、
未剥離の接着シートに対向するように剥離された接着シートの接着面に接触し、剥離された接着シート領域を剥離補助手段により面で支持する工程と、
前記支持手段と剥離用テープとを移動手段により相対移動させる工程と、
前記剥離用テープ、前記被着体から剥離された接着シート、前記繰出手段、前記貼付手段、前記剥離補助手段及び前記移動手段の内、前記接着シートが剥離された被着体上に位置するものを当該接着シートが剥離された被着体上から相対移動によって退避させる工程とを備える、という方法を採っている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、剥離補助手段によって、剥離された接着シート領域を面で支持して接着シートの剥離補助を行うことができるので、ウエハの大径化等により接着シートの剥離に大きな力が必要となっても、接着シートから剥離用テープが剥がれてしまうことを防止することができ、接着シートの剥離不良を回避することが可能となる。しかも、剥離用テープと被着体から剥離された接着シートと繰出手段や貼付手段や剥離補助手段といった各手段とを、接着シートが剥離された被着体上に位置させることなく当該被着体から接着シートを剥離するように制御可能としたことで、被着体上に位置する部材から塵が落下して被着体を攻撃することはなくなり、被着体が例えばウエハや半導体チップの場合であっても、それらの製造における歩留まりを低下させるといった不都合を解消することができる。また、剥離補助手段が剥離された接着シート領域を面で支持可能に設けられているため、完全に剥離が完了した接着シートが他の部位に接触することを防止することができる。これにより、例えば、リングフレームにダイシングテープを介して一体化され、表面に接着シートが貼付されたウエハから、当該接着シートを剥離した場合、剥離された接着シートがダイシングテープに接触して接着してしまうことで剥離不良が発生することを確実に防止することが可能となる。
【0013】
また、剥離補助手段と被着体との間に位置する接着シートに折返しシート部を形成するので、接着シートの剥離によって発生した塵が剥離補助手段に付着しても、その塵を折返しシート部上に落下させることができる。これにより、被着体上に塵が落下することを防止でき、被着体がウエハである場合、半導体チップの歩留まり低下を防止することが可能となる。
【0014】
更に、ベルト部材に付着した塵を除去する除塵手段を設けた場合、塵が被着体上へ落下することをより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係るシート剥離装置の概略正面図。
【図2】接着シートの剥離途中を示す部分正面図。
【図3】(A)〜(D)は、剥離用テープの貼付動作説明図。
【図4】(A)及び(B)は、変形例に係るシート剥離装置の部分正面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1〜図3において、シート剥離装置10は、回路面(図1中上面)に接着シートSが貼付された被着体としてのウエハWを保持する支持手段11と、帯状の剥離用テープPTを繰り出す繰出手段12と、剥離用テープPTを接着シートSの外縁側に貼付する貼付手段13と、剥離用テープPTを介してウエハWに貼付された接着シートSの剥離時に剥離された接着シート領域を面で支持する剥離補助手段14と、接着シートSに貼付された剥離用テープPTと支持手段11とを反対方向に相対移動させる移動手段15と、前記各手段11〜15の動作を制御する制御手段17とを備えて構成されている。なお、剥離用テープPTは感熱接着性の接着テープを採用している。また、本実施形態における接着シートSは、基材シートの一方の面に接着剤層を有し、この接着剤層を介してウエハWに貼付されている。
【0018】
前記支持手段11は、リングフレームRFの開口内部に配置され回路面の反対面(図1中下面)側からダイシングシートDSを介して当該リングフレームRFと一体化されるとともに、回路面に接着シートSが貼付されたウエハWを図1中上面で吸着して保持するテーブルからなる。
【0019】
前記繰出手段12は、図示しないフレームに支持されて巻回された剥離用テープPTを繰出可能に支持する支持軸18と、駆動機器としてのモータM1を介して回転可能な駆動ローラ20と、当該駆動ローラ20との間に剥離用テープPTを挟み込むピンチローラ21と、剥離用テープPTを図1中下方から支持する板状のガイド部材23と、このガイド部材23とで剥離用テープPTを挟み込む回転自在なプレスローラ25と、このプレスローラ25を昇降させる駆動機器としての昇降用シリンダ26とを備えて構成されている。ガイド部材23は、駆動機器としてのシリンダ27を介して図1中左右方向に移動可能に設けられ、図3(A)に示されるように、プレスローラ25で挟み込んだ剥離用テープPTのリード端領域を後述するチャック47により把持できる位置に導くことが可能となっている。
【0020】
前記貼付手段13は、駆動機器としての直動モータ49と、当該直動モータ49によって上下方向に進退可能に設けられたヒータ50Aを有する押圧ヘッド50とを備えている。この貼付手段13は、後述するチャック47により接着シートSの上面側に繰り出された剥離用テープPTを押圧ヘッド50で押圧して加熱することで、剥離用テープPTを接着シートSに接着するようになっている。貼付手段13の図1中左側には、カッター刃53と、このカッター刃53の下方に設けられた凹部を有するテープ受け板54と、カッター刃53を図1中紙面直交方向及び上下方向に移動させる駆動機器としてのシリンダ55及び駆動機器としてのシリンダ56とにより構成されたテープ切断手段52が設けられている。
【0021】
前記剥離補助手段14は、ベルト回行手段59と、このベルト回行手段59の図2中上方に併設された除塵手段60と、これらベルト回行手段59及び除塵手段60を同図中上下方向に変位可能な駆動機器としての直動モータ61と、この直動モータ61に連結され、支持手段11の上方で当該直動モータ61を同図中左右方向に移動可能な図示しない駆動機器と備えている。
【0022】
前記ベルト回行手段59は、駆動機器としてのモータM2により回転可能なドライブローラ63と、このドライブローラ63の下方で支持手段11に支持されたウエハWの面方向に平行に配置された一対のローラ64と、これらローラ64及びドライブローラ63に掛け回される閉ループ状のベルト部材66と、各ローラ64に当接するサポート手段としてのサポートローラ67とを備えている。各ローラ64及びサポートローラ67は、ベルト部材66を介してドライブローラ63の回転によって追従回転可能に設けられている。このような構成により、図2に示されるように、ベルト部材66は、未剥離の接着シートSに対向するように、剥離された接着シートSの接着面(図2中剥離された接着シートの上側の面)に当接し、剥離された接着シートS領域を面で支持することができるようになっている。なお、ベルト部材66や各ローラ63、64、67の幅(図2中紙面直交方向の長さ)は、ウエハWの最大幅よりも長くてもよいし、短くてもよい。
【0023】
前記除塵手段60は、ベルト部材66側すなわち図中下側を開放する開口部69Aを備えたチャンバ69と、図示しない吸引手段に接続され、チャンバ69の内部に連通するホース70とを備えている。
【0024】
前記移動手段15は、支持手段11を図1中左右方向に移動させるための駆動機器としての直動モータ44及びそのスライダ45と、貼付手段13の下方に設けられ、剥離用テープPTを把持部材47Aで把持可能な駆動機器としてのチャック47とを備えている。チャック47は、図示しない駆動機器を介して図1中左右方向に移動可能に構成されている。
【0025】
前記制御手段17は、シーケンサやパーソナルコンピュータ等で構成することができる。制御手段17には、操作パネル等からなる図示しない入力手段が接続され、この入力手段により前記各駆動機器の作動条件やデータ等を入力可能となっている。また、制御手段17は、前記各駆動機器の動作方向、動作量、動作速度等の条件を決定し、これらを制御する機能を備えている。
【0026】
次に、前記シート剥離装置10による接着シートSの剥離方法について説明する。
【0027】
初めに、支持軸18から剥離用テープPTを引き出し、駆動ローラ20及びピンチローラ21の間を通過させた後、剥離用テープPTのリード端側がガイド部材23の先端からはみ出た状態としつつ、プレスローラ25とガイド部材23とで剥離用テープPTを挟み込んだ状態とする。
【0028】
そして、図示しない搬送手段を介して、支持手段11の上面にリングフレームRFと一体化されるとともに、回路面に接着シートSが貼付されたウエハWを支持させると、接着シートSの図1中右側外縁位置が押圧ヘッド50の直下で停止するように、直動モータ44が支持手段11を移動させる。
【0029】
次いで、図3(A)に示されるように、シリンダ27を介してガイド部材23を同図中右方向に進行させると同時に、モータM1を作動して駆動ローラ20を回転させて剥離用テープPTを繰り出す。これにより、チャック47の把持部材47A間にガイド部材23及び剥離用テープPTのリード端側が位置する。そして、プレスローラ25が上方へ退避し、ガイド部材23を後退させると、把持部材47A間に剥離用テープPTが残されてチャック47の動作によって把持される。その後、図示しない駆動装置によってチャック47を図3(A)の二点鎖線で示される位置に移動させて剥離用テープPTを引き出し、押圧ヘッド50の下方で接着シートSに対向するように剥離用テープPTを位置させる。
【0030】
次に、図3(B)に示されるように、押圧ヘッド50を直動モータ49によって下方へ移動させると、剥離用テープPTが押し下げられて接着シートSに当接し、剥離用テープPTがヒータ50Aによって加熱されて接着シートSに接着する。その後、プレスローラ25とガイド部材23とで剥離用テープPTを挟み込み、シリンダ55、56を作動させてテープ受け板54上でカッター刃53により剥離用テープPTを切断する(図3(C)参照)。
【0031】
剥離用テープPT切断後、図3(D)に示されるように、図示しない駆動機器によってチャック47を左方向に移動させ、ウエハW上の接着シートSに剥離用テープPTが対向するように折り返す。次いで、図示しない駆動機器を介してその折り返し位置の上方にベルト部材66が位置するように剥離補助手段14を移動させる。次に、直動モータ61を介してベルト回行手段59を上下方向に変位させ、ベルト部材66の下面とウエハWとの間隔H(図2参照)が調整される。
【0032】
その後、接着シートSに貼付された剥離用テープPTと支持手段11とが反対方向に相対移動するように、制御手段17が直動モータ44等を介して、チャック47を図中左方向へ、支持手段11を図中右方向へ同速で移動させる。これにより、剥離された接着シートSと、未剥離の接着シートSとが対向するように折り返され、接着シートSの折り返し位置Spが形成されて当該接着シートSがウエハWから剥離される。このとき、平面視でベルト部材66と接着シートSが剥離されたウエハWとの間に折返しシート部SAを形成する。
【0033】
図2に示されるように、接着シートSの剥離の最中において、剥離補助手段14は、ベルト部材66を剥離された接着シートSの接着面側に当接し、且つ、モータM2を作動してドライブローラ63を回転することで、折返しシート部SAを形成した状態で所定の位置に停止し続ける。また、折り返された接着シートSの弾性力により上向きの力がベルト部材66を介してローラ64に作用し、その抗力として下向きの力がローラ64及びサポートローラ67によって発揮される。これにより、ウエハWが支持手段11側すなわち下側に押圧されつつ、接着シートSの折り返し位置Sp周りでの剥離姿勢が形成される。この際、サポートローラ67によりローラ64が上方から押さえ付けられ、折り返された接着シートSの弾性力によってローラ64が撓み変形することが抑制される。
【0034】
ここで、剥離された接着シートSを介してベルト部材66に付着した塵は、除塵手段60で除去される。しかし、除塵手段60で除去されずにベルト部材66に残った塵が落下しても、折返しシート部SAが存在することで、ウエハWの回路面上にその塵が落下してウエハWの回路面に損傷を与えることを防止可能となる。また、接着シートSの剥離中、剥離用テープPT、ウエハWから剥離された接着シートS、繰出手段12、貼付手段13、剥離補助手段14及び移動手段15の内、接着シートSが剥離されたウエハW上に位置するものを当該接着シートSが剥離されたウエハW上から相対移動によって退避させるために、制御手段17は、直動モータ44や図示しない駆動機器を駆動して支持手段11、剥離補助手段14及びチャック47を全体的に図1中右方向へ移動させる。
【0035】
接着シートSの剥離を終えると、図示しない搬送手段によりウエハWが次工程に搬送され、接着シートSとそれに貼付された剥離用テープPTは図示しない回収手段によって回収させる。そして、保持手段11、ベルト回行手段59、除塵手段60及びチャック47が初期位置に復帰した後、上記同様の動作が繰り返されることとなる。
【0036】
従って、このような実施形態によれば、剥離された接着シートSをウエハWと相対移動させる力が、チャック47の移動だけでなく、ベルト部材66の回行によっても付与することが可能となる。これにより、剥離用テープPTに生じる引っ張り力を軽減でき、ウエハWの大径化等により支持手段11と剥離用テープPTとを相対移動する力が大きくなっても、剥離用テープPTが接着シートSから剥離して剥離不良が発生することを防止することができる。また、各ローラ64間でベルト部材66を接着シートSの剥離方向に回行するので、ベルト部材66と接着シートSとの接触面積を広くすることができる。この結果、接着シートSを下方に押さえ付ける力と、接着シートSを剥離方向に移動させて当該接着シートSを剥離する力との両方を増大化でき、剥離用テープPTが接着シートSから剥離して剥離不良が発生することをより確実に防止することが可能となる。
【0037】
更に、サポートローラ67が各ローラ64の上側に接するので、ローラ64を細くして剛性が低下しても、接着シートSの弾性力によりローラ64が撓み変形することを防止することができる。これにより、ローラ64とサポートローラ67とにより接着シートSを介してウエハWに押圧力を付与でき、ウエハWが持ち上がって変形したりストレスが生じたりすることを回避することが可能となる。
【0038】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0039】
例えば、前記実施形態において、剥離補助手段14におけるサポートローラ67を省略した構成としてもよいが、サポートローラ67を設けた方が、ローラ64の前記撓み変形を抑制してウエハWへの押圧力をより良く発揮できる点で有利となる。
【0040】
また、本発明における被着体としては、半導体ウエハに限定されるものではなく、ガラス板、鋼板、または、樹脂板等、その他の被着体も対象とすることができ、半導体ウエハは、シリコンウエハや化合物ウエハであってもよい。
更に、剥離用テープPTは、感熱接着性の接着テープ以外に感圧接着性の接着テープを採用してもよい。
【0041】
また、接着シートSの剥離動作は、前述のように剥離を行える限りにおいて、チャック47の図中左右方向の動作を停止させ、剥離補助手段14及び支持手段11を移動させてもよいし、支持手段11の図中左右方向の動作を停止させ、剥離補助手段14及びチャック47を移動させるように制御手段17で制御してもよい。
更に、接着シートSにエネルギー線硬化型の接着シートが採用され、当該接着シートSが剥離される前にエネルギー線が照射され、その接着力が低下されているものである場合、ベルト部材66は、剥離された接着シートSの濡れ性によって、当該接着シートSが接着して、ウエハWから接着シートSを剥す剥離力が付与できるような樹脂ベルトやゴムベルトを採用することができる。
また、ベルト部材66に複数の孔や通気性を有するサクションベルトを採用するとともに、ベルト回行手段59に吸引手段を設け、サクションベルトを介してウエハWから剥離された接着シートSを吸着支持し、ウエハWから接着シートSを剥す剥離力が付与できるように構成してもよい。
【0042】
更に、剥離補助手段14は、図4(A)及び(B)に示されるように、接触面積変更手段80を備えた構成としてもよい。この接触面積変更手段80は、各ローラ64を離間接近する方向に移動可能な駆動機器としての直動モータからなる。接触面積変更手段80は、各ローラ64を離間させることで、ベルト部材66と接着シートSとの接触面積が拡大する一方、各ローラ64を接近させることで、ベルト部材66と接着シートSとの接触面積を縮小可能となる。ここで、円形の接着シートSを剥離する場合、剥離が進行して剥離補助手段14が接着シートSの中心に近付くに従って剥離力が大きくなり、接着シートSの中心から離れるに従って剥離力が小さくなる。従って、剥離力の増減に応じて接触面積変更手段80を作動させ、ベルト部材66と接着シートSとの接触面積を拡縮可能となり、接着シートSを下方に押さえ付ける力や接着シートSを剥離方向に移動させる力を安定して付与することが可能となる。なお、同図において、チャンバ69を同図中上下動させる駆動機器を設けることが好ましい。
また、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
更に、剥離用テープPT、ウエハWから剥離された接着シートS、繰出手段12、貼付手段13、剥離補助手段14及び移動手段15の内、接着シートSが剥離されたウエハW上に位置するものを全体的に移動させる駆動機器を設け、接着シートSが剥離されたウエハW上から相対移動によって退避させるように構成してもよいし、上記実施形態と組み合わせてそれら両方が移動して、接着シートSが剥離されたウエハW上から相対移動によって退避させるように構成してもよい。要は、接着シートSが剥離されたウエハW上にシート剥離装置10を構成する部材が何もない状態で、ウエハWから接着シートSを剥離できる構成であれば足りる。
【符号の説明】
【0043】
10 シート剥離装置
11 支持手段
12 繰出手段
13 貼付手段
14 剥離補助手段
15 移動手段
17 制御手段
59 ベルト回行手段
60 除塵手段
64 ローラ
66 ベルト部材
PT 剥離用テープ
S 接着シート
SA 折返しシート部
W 半導体ウエハ(被着体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体の一方の面に貼付された接着シートを剥離用テープを介して剥離するシート剥離装置であって、
前記被着体を支持する支持手段と、前記剥離用テープを繰り出す繰出手段と、前記接着シートに剥離用テープを貼付する貼付手段と、未剥離の接着シートに対向するように剥離された接着シートの接着面に接触し、剥離された接着シート領域を面で支持する剥離補助手段と、支持手段と剥離用テープとを相対移動させる移動手段と、前記各手段の動作を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記剥離用テープ、前記被着体から剥離された接着シート、前記繰出手段、前記貼付手段、前記剥離補助手段及び前記移動手段の内、前記接着シートが剥離された被着体上に位置するものを当該接着シートが剥離された被着体上から相対移動によって退避させ、当該被着体から接着シートを剥離するように制御可能に設けられていることを特徴とするシート剥離装置。
【請求項2】
前記制御手段は、被着体から接着シートを剥離するときに、平面視で前記剥離補助手段と接着シートが剥離された被着体との間に表出する折返しシート部を形成するように制御することを特徴とする請求項1記載のシート剥離装置。
【請求項3】
前記剥離補助手段は、ベルト部材と、これに掛け回される複数のローラとを含み、
前記ベルト部材の近傍には、ベルト部材に付着した塵を除去する除塵手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のシート剥離装置。
【請求項4】
前記剥離補助手段と剥離された接着シートの接着面との接触面積を変更可能な接触面積変更手段を有することを特徴とする請求項1、2又は3記載のシート剥離装置。
【請求項5】
被着体の一方の面に貼付された接着シートを剥離用テープを介して剥離するシート剥離方法であって、
前記被着体を支持手段により支持する工程と、
前記剥離用テープを繰出手段により繰り出す工程と、
前記接着シートに剥離用テープを貼付手段により貼付する工程と、
未剥離の接着シートに対向するように剥離された接着シートの接着面に接触し、剥離された接着シート領域を剥離補助手段により面で支持する工程と、
前記支持手段と剥離用テープとを移動手段により相対移動させる工程と、
前記剥離用テープ、前記被着体から剥離された接着シート、前記繰出手段、前記貼付手段、前記剥離補助手段及び前記移動手段の内、前記接着シートが剥離された被着体上に位置するものを当該接着シートが剥離された被着体上から相対移動によって退避させる工程とを備えていることを特徴とするシート剥離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−233698(P2011−233698A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102279(P2010−102279)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】