説明

シート束搬送システム

【課題】シート束に生じた束ずれによって包装不良が生じるのを防止でき、しかも、タクトタイムを大きく延長することなく、高い歩留まりを達成できるシート束搬送システムの提供。
【解決手段】所定の方向に搬送されるシート束の所定方向に沿った寸法を測定する寸法測定部と、前記寸法測定部において前記シート束を測定した測定寸法と予め定められた基準寸法とを比較し、前記測定寸法と基準寸法との差に基づき、前記シート束について、良品、要修正品、不良品の何れに属するかを判定する判定部とを有するシート束搬送システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート束搬送システムにかかり、特に、シート束包装ラインにおいてタクトタイムを延長することなく、シート材間のずれが大きな不良品が包装工程に搬送されるのを防止できるシート束搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷版は、集積装置で厚さ方向に集積されて平版印刷版束とされ、ベルトコンベアやローラコンベアなどの各種搬送装置で搬送されて包装工程で包装される。
【0003】
しかしながら、近年広範囲に使用されているレーザ露光型の平版印刷版においては、製版面が滑りやすいのと、間に合紙を挿入することなく集積するのとで、平版印刷版束に集積後、搬送時に平版印刷版同士がずれる束ずれを生じ易い。
【0004】
そして束ずれが生じた平版印刷版束をそのまま包装工程に送って包装すると、ジャミングや内装紙に孔が開く孔開きなどの包装不良が発生する。
【0005】
したがって、包装工程の手前で平版印刷版が正しく積層されているか否かを判定し、束ずれの生じた平版印刷版束については、ラインから排出する必要がある。
【0006】
平版印刷版束が正しく積層されたか否かを判定する装置としては、たとえば特許文献1に記載の集積排出装置がある。
【特許文献1】特開平9−077324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記集積排出装置は、板紙を所定の枚数だけ積層した集積体について重量を測定し、測定された重量を、予め定められた重量設定値と比較して前記集積体を良品と不良品とに分け、不良品をライン外に排出する。
【0008】
しかしながら、平版印刷版束においては、束ずれの生じた平版印刷版束であっても、束ずれの大きなものばかりではなく、修正すれば包装工程に回せる程度に束ずれの小さなものもある。
【0009】
したがって、束ずれの生じた平版印刷版束を全て不良品としてライン外に排出するのは不合理である。
【0010】
しかし、全ての平版印刷版束について束ずれを修正して包装工程に回すのではタクトタイムが長くなり過ぎる。また、束ずれの大きな平版印刷版束は束ずれの修正幅が過大になるから、製版面が損傷する可能性が高い。
【0011】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、平版印刷版のようなシート材を積層したシート束を包装工程に送るシート束搬送システムであって、シート束に生じた束ずれによって包装不良が生じるのを防止でき、しかも、タクトタイムを大きく延長することなく、高い歩留まりを達成できるものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、所定の方向に搬送されるシート束の所定方向に沿った寸法を測定する寸法測定部と、前記寸法測定部において前記シート束を測定した測定寸法と予め定められた基準寸法とを比較し、前記測定寸法と基準寸法との差に基づき、前記シート束について、良品、要修正品、不良品の何れに属するかを判定する判定部とを有することを特徴とするシート束搬送システムに関する。
【0013】
前記シート束搬送システムにおいては、前記測定寸法と基準寸法との差に基づき、前記シート束について、良品、要修正品、不良品の何れに属するかを判定している。
【0014】
したがって、前記良品についてはそのまま、前記要修正品については寸法のずれを修正してから後工程、たとえば包装工程に回すことにより、全てのシート束の寸法を修正してから後工程に回す場合に比較してタクトタイムを短縮できる。また、寸法のずれの大きなシート束については、不良品と判定してライン外に排出することにより、寸法ずれを修正することによりシート材が折れたり、表面が擦れて損傷したりしたシート束が後工程に混入することを効果的に防止できる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、前記判定部が、前記寸法測定部で寸法を測定したシート束について、前記測定寸法と基準寸法との差が予め定められた第1の許容値以下であるときは良品と、前記第1の許容値より大きく、前記第1の許容値より大きな第2の許容値以下であるときは要修正品と、前記第2の許容値よりも大きなときは不良品と判定する請求項1に記載のシート束搬送システムに関する。
【0016】
前記シート束搬送システムにおいては、前記測定寸法と基準寸法との差と前記第1および第2の許容値との関係に基づいてシート束が良品、要修正品、不良品の何れに属するかの判定を行っている。
【0017】
したがって、前記第1および第2の許容値を適切に設定することにより、後工程で不良を引き起こすほど寸法のずれの大きなシート束が後工程に紛れ込むことを効果的に防止しつつ、歩留まりおよびタクトタイムの低下を防止できる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、前記寸法測定部が測定するシート束の寸法は、前記シート束の搬送方向に沿った寸法であるシート束長さ、および前記シート束の搬送方向に直交する方向に沿った寸法であるシート束幅の少なくとも一方であり、前記判定部においては、前記シート束長さは、シート束の搬送方向に沿った基準寸法である基準長さと比較され、前記シート束幅は、シート束の搬送方向に直交する方向沿った基準寸法である基準幅と比較される請求項1または2に記載のシート束搬送システムに関する。
【0019】
請求項4に記載の発明は、前記寸法測定部においては、前記シート束長さおよび前記シート束幅の両方が測定される請求項3に記載のシート束搬送システムに関する。
【0020】
前記シート束搬送システムにおいては、シート束の寸法としてシート束長さおよびシート束幅の一方または両方を測定しているから、シート束を搬送しつつ寸法を測定することが可能である。したがって、寸法を測定するためにシート束を一旦停止させる必要がないから、タクトタイムを更に短縮できる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、前記寸法測定部が、前記シート束の搬送経路に平行な平面への前記シート束の投影長および投影幅を測定し、測定された投影長および投影幅に基づいてシート束長さおよびシート束幅を求める請求項3または4に記載のシート束搬送システムに関する。
【0022】
前記シート束搬送システムにおいては、前記シート束の投影長および投影幅は、前記シート束の搬送経路に平行な平面に前記シート束を投影した寸法であるから、夫々シート束長さおよびシート束幅に等しい。
【0023】
そして、前記シート束の投影長は、前記シート束の面に対して垂直な方向から前記シート束に光を当てつつ一定速度で前記シート束を搬送したときの前記シート束が光を遮った時間と搬送速度との積として求めることができる。一方、前記シート束の投影幅は、前記シート束の面に対して垂直な方向から前記シート束に光を当てつつ一定速度で前記シート束を搬送したときの前記シート束が前記光を遮った幅として求められる。
【0024】
請求項6に記載の発明は、前記判定部において、シート束の長さ方向および幅方向の夫々について前記第1の許容値および第2の許容値を定め、前記判定部は、シート束長さと基準長さとの差が、前記第1の許容値より大きく、第2の許容値以下であるときは長さ方向の修正を要する要カットずれ修正品と判定し、シート束幅と基準幅との差が、第1の許容値より大きく、第2の許容値以下であるときは幅方向の修正を要する要幅ずれ修正品と判定する請求項3〜5の何れか1項に記載のシート束搬送システムに関する。
【0025】
シート束に生じるシート材のずれは、長さ方向のカットずれと幅方向の幅ずれとに分けられる。
【0026】
前記シート束搬送システムにおいては、シート束に生じたずれの種類に応じてシート束を要カットずれ修正品および要幅ずれ修正品の何れかに分類するから、生じたずれの種類に応じて木目細かな修正が可能である。
【0027】
請求項7に記載の発明は、前記判定部における判定結果に基づいてシート束を分別、修正する分別修正部を備え、前記分別修正部においては、前記判定部において良品と判定されたシート束についてはそのまま後工程に回し、前記判定部において要修正品と判定されたシート束についてはシート材間のずれを修正して後工程に回すとともに、前記判定部において不良品と判定されたシート束についてはライン外に排出する請求項1〜6の何れか1項に記載のシート束搬送システムに関する。
【0028】
前記シート束搬送システムにおいては、判定部で下した判定に基づいて分別修正部でシート束をそのまま包装工程に回すか、シート材間のずれを修正して包装工程に回すか、不良品としてライン外に排出するかを決定している。
【0029】
したがって、シート束を全て修正する場合に比較して包装工程に回されるシート束の歩留まりを向上させることができ、タクトタイムを短縮できる。
【0030】
請求項8に記載の発明は、前記分別修正部においては、前記判定部において要カットずれ修正品と判定されたシート束についてはシート材間の長さ方向のずれを修正し、前記判定部において要幅ずれ修正品と判定されたシート束についてはシート材間の幅方向のずれを修正してから包装工程に回す請求項7に記載のシート束搬送システムに関する。
【0031】
前記シート束搬送システムにおいては、 前記シート束搬送システムにおいては、シート束の寸法としてシート束長さおよびシート束幅の一方または両方を測定しているから、シート束を搬送しつつ寸法を測定することが可能である。
【0032】
したがって、寸法を測定するためにシート束を一旦停止させる必要がない。
【0033】
また、前記分別修正部においては、シート束に生じたずれの種類に応じてシート材間の長さ方向のずれおよび幅方向のずれを修正しているから、生じたずれの種類に応じて木目細かな修正が可能である。
【0034】
請求項9に記載の発明は、前記寸法測定部において、前記シート束の長さおよび幅を光学的に測定する請求項1〜8の何れか1項に記載のシート束搬送システムに関する。
【0035】
前記シート束搬送システムにおいては、前記寸法測定部で前記シート束の長さおよび幅を光学的に測定しているから、前記シート束の寸法を非接触で測定できる。
【0036】
したがって、寸法測定時にシート束にずれが生じることが防止される。
【発明の効果】
【0037】
以上説明したように本発明によれば、シート束に生じた束ずれによって包装不良が生じるのを防止でき、しかも、タクトタイムを大きく延長することなく、高い歩留まりでシート束を包装工程に送り出すことのできるシート束搬送システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
1.実施形態1
本発明に係るシート束搬送システムの一例である平版印刷版束分別搬送システムについて以下に説明する。
【0039】
実施形態1に係る平版印刷版束分別搬送システム1000は、図1に示すように、本発明におけるシート束の一例である平版印刷版束Pを搬入する搬入コンベア2と、搬入コンベア2によって搬入される平版印刷版束Pの幅を光学的に測定する幅測定センサ4と、幅測定センサ4の中央部に設けられ、幅測定センサ4を通過する平版印刷版束Pを光学的に検出する光学センサ6と、搬入コンベア2の下流側のローラに設けられたエンコーダ8と、幅測定センサ4、光学センサ6、およびエンコーダ8における測定結果に基づいて平版印刷版束Pを良品および要修正品とNG品とに分別する分別コンベア10と、分別コンベア10で分別されたNG品をNGストックスペース(図示せず。)に搬出するNG品コンベア12と、分別コンベア10で分別された良品を搬送方向aに沿って下流の包装装置に向かって搬送する良品搬出コンベア14と、分別コンベア10と良品搬出コンベア14との間に位置し、分別コンベア10で分別された要修正品の寸法ずれを修正するずれ修正コンベア16と、中央制御コンピュータ100とを備える。幅測定センサ4、光学センサ6、およびエンコーダ8は、本発明における寸法測定部に、中央制御コンピュータ100は本発明における判定部に、分別コンベア10、NG品コンベア12、良品搬出コンベア14、およびずれ修正コンベア16は本発明における分別修正部に対応する。
【0040】
中央制御コンピュータ100には、幅測定センサ4、光学センサ6、およびエンコーダ8における測定結果が入力されるとともに、入力された入力結果に基づいて平版印刷版束Pが良品、要修正品、NG品の何れに相当するかを判定し、判定結果に基づいて分別コンベア10、NG品コンベア12、良品搬出コンベア14、およびずれ修正コンベア16を制御する機能を有する。
【0041】
幅測定センサ4は、図2に示すように平版印刷版束Pの搬送経路を挟んで配設された1対の門型センサ42および44を備える。門型センサ42および44は、何れも平版印刷版束Pの搬送経路に向かって開口するC型の形態を有する。門型センサ42および44の上端には前記搬送経路に向かって測定光を出射する出射部42Aおよび44Aが夫々前記搬送経路に向かって突出し、下端には、前記出射部42Aおよび44Aから出射された測定光を受光する受光部42Bおよび44Bが、前記搬送経路を挟んで出射部42Aおよび44Bに相対するように設けられている。
【0042】
光学センサ6は、図3において(A)に示すように、平版印刷版束Pの搬送経路に向かって測定光を出射する発光部と発光部から出射された測定光を受光する受光部とを備える。そして、平版印刷版束Pが幅測定センサ4を通過すると、図3において(B)に示すように、発光部から測定された測定光が平版印刷版束Pに反射されて受光部で受光され、onになる。ここで、平版印刷版束Pは、搬入コンベア2によって搬送方向aに沿って一定速度で搬送されるから、エンコーダ8で生じるパルスの間隔も一定である。したがって、光学センサ6がonのときのパルス数とパルス間隔とから平版印刷版束Pの投影長さが求められる。
【0043】
分別コンベア10は、図1および図4に示すように、一定間隔で配設され、平版印刷版束Pを搬送方向aに沿って搬送する搬送ローラ10Aと、隣接する2つの搬送ローラ10Aの間に配設されたベルトコンベア10Bを備える。ベルトコンベア10Bは、図4において(A)に示すように搬送ローラ10Aに対して昇降可能に設けられているとともに、同図において(B)に示すように、矢印bの方向に回転する。平版印刷版束Pをずれ修正コンベア16に向かって搬送するときは、同図の(A)において実線で示すように、ベルトコンベア10Bは下降した位置にあり、ベルトコンベア10Bの搬送面は搬送ローラ10Aの搬送面よりも低い。一方、平版印刷版束PをNG品コンベア12に向かって搬送するときは、二点鎖線で示すように、ベルトコンベア10Bは、搬送面が搬送ローラ10Aの搬送面よりも高くなるように上昇する。ここで、ベルトコンベア10Bの搬送方向bは、図1に示すようにNG品コンベア12に向かう方向であるから、ベルトコンベア10Bが上昇すると、平版印刷版束PはMG品コンベア2に向かって搬送される。
【0044】
ずれ修正コンベア16は、図1および図5に示すように、平版印刷版束Pを搬送方向aに沿って搬送するローラコンベア16Aと、ローラコンベア16Aの上方における下流側に設けられた突き当てパッド16Bと、突き当てパッド16Bよりも上流側において突き当てパッド16Bに相対するように設けられたプッシャ16Cと、突き当てパッド16Bとプッシャ16Cとの間に、平版印刷版束Pの搬送経路aを挟んで相対するように設けられたプッシャ16Dおよび16Eとを備える。
【0045】
プッシャ16C、16D、16Eは、図5に示すように、夫々空気シリンダ17と空気シリンダの先端に位置するプッシャ板18とを備えている。空気シリンダ17は、夫々基台19に立設されている。基台19には、夫々リニアブッシュ20が1対づつ設けられている。
【0046】
プッシャ板18の裏面、即ち平版印刷版束Pに当接する側とは反対側の面には、ガイド棒18Aが1対づつ立設されている。ガイド棒18Aは、リニアブッシュ20に挿通されてプッシャ板18を平版印刷版束Pに近接しまたは離間する方向に案内する。
【0047】
プッシャ16C、16D、16Eは、夫々、基台19を昇降可能に支持する支持板21を備える。支持板21は、プッシャ18に対して平行に設けられている。したがって、支持板21は、プッシャ16Cにおいては突き当てパッド18Bに相対するように設けられ、プッシャ16Dおよび16Eにおいては平版印刷版束Pの搬送経路aを挟んで相対するように設けられている。夫々の支持板21の上方にはボール螺子23が設けられ、支持板21の上端にはボール螺子23に螺合するボールナット22が設けられている。ボール螺子23は、何れも水平に設けられ、しかも、プッシャ16Cにおいてはローラコンベア16Aにおける平版印刷版束Pの搬送方向aに対して平行に設けられ、プッシャ16Dおよび16Eにおいては前記搬送方向aに対して直交する方向に設けられている。ボール螺子23の一端にはモータ24が設けられている。モータ24によってボール螺子23が回転することにより、ボールナット22および支持板21がボール螺子23に沿って移動し、これに伴い、プッシャ16C、16D、16Eもボール螺子23の方向に沿って移動する。
【0048】
支持板21と基台との間には昇降用リニアガイドウェイ25が1対設けられている。支持板21には、昇降用リニアガイドウェイ25のレール25Aが垂直方向に沿って設けられ、基台19には、レール25Aに係合して上下方向に移動するブロック25Bが設けられている。支持板21には、また、基台19を昇降させるための昇降エアシリンダ26が設けられている。
【0049】
突き当てパッド16B、プッシャ16C、16D、16Eは、同一の高さに設けられ、また、昇降可能である。更に、プッシャ16Dおよび16Eは、平版印刷版束Pの幅に応じて互いに近接、離間できる。同様に、プッシャ16Cは、平版印刷版束Pの長さに応じて突き当てパッド16Bとの距離を調節できる。突き当てパッド16B、プッシャ16C、16D、16Eは、通常は、平版印刷版束Pの通過に支承がないように上昇した状態にあり、平版印刷版束Pの寸法ずれを修正するときだけ、ローラコンベア16A上に下降する。
【0050】
以下、平版印刷版束分別搬送システム1000の作用について説明する。
【0051】
搬入コンベア2によって平版印刷版束分別搬送システム1000に搬入された平版印刷版束Pは、幅測定センサ4を通過することにより幅が測定され、同時に、光学センサ6によって長さが測定される。幅測定センサ4を通過した平版印刷版束Pは、分別コンベア10に搬入され、同時に幅測定センサ4および光学センサ6で測定された平版印刷版束Pの幅および長さは、中央制御コンピュータ100に入力される。
【0052】
中央制御コンピュータ100は、入力された長さおよび幅を、予め記憶された基準長さおよび基準幅と比較し、その差を求める。そして、長さの測定値と基準長さとの差ΔLおよび幅の測定値と基準幅との差ΔWが第2の許容値より小さいか否か判定する。ここで第2の許容値は、平版印刷版束Pを幅方向および長さ方向に修正したときに、平版印刷版束Pを構成する平版印刷版の製版面が損傷したり、平版印刷版に折れが生じたりする危険のない最大限の差ΔLおよびΔWであり、実施形態1の例では長さおよび幅の何れについても5mmと設定されている。
【0053】
差ΔLおよび差ΔWの少なくとも一方が第2の許容値よりも大きなときは、中央制御コンピュータ100からの指示により、分別コンベア10においてはベルトコンベア10Bが上昇する。ここで、前述のようにベルトコンベア10Bは矢印bの方向に回転しているから、平版印刷版束PはNG品コンベア12に向かって搬送され、NG品コンベア12によってNG品ストックスペースに排出される。
【0054】
差ΔLおよび差ΔWの何れも第2の許容値以下であるときは、分別コンベア10においてはベルトコンベア10Bが下降した状態で搬送ローラ10Aが回転し、平版印刷版束Pを矢印aの方向に、ずれ修正コンベア16に向かって搬送する。そして、中央制御コンピュータ100は、更に、前記差ΔLおよび差ΔWが第1の許容値以下であるか否か判定する。ここで第1の許容値は、平版印刷版束Pを良品と判定できる最大限の差ΔLおよびΔWであり、実施形態1の例では長さおよび幅の何れについても1mmと設定されている。
【0055】
差ΔLおよび差ΔWの少なくとも一方が第1の許容値よりも大きなときは、中央制御コンピュータ100からの指示により、先ず突き当てパッド16Bがローラコンベア16A上に下降する。そして、ローラコンベア16A上を搬送されてきた平版印刷版束Pの先端が突き当てパッド16Bに当接したら、プッシャ16C〜16Eにおいて昇降エアシリンダ26が伸張して基台19が支持板21上をローラコンベア16Aに向かって下降する。
【0056】
差ΔLが第1の許容値よりも大きなときは、修正中に幅方向のずれが生じないように、プッシャ16Dとプッシャ16Eとにおいて空気シリンダ17が伸張してプッシャ板18が平版印刷版束Pの長手方向の側縁に当接する。そして、プッシャ16Cにおいて空気シリンダ17が伸張、収縮を繰り返し、平版印刷版束Pの突き当てパッド16Bに当接した側とは反対側の側縁に繰り返しプッシャ板18を当接させる。これにより、たとえば平版印刷版束Pにおいて図6の(B)に示すような側面に生じたずれが解消されて同図において(A)に示すような垂直な側面に修正される。これにより、長さ方向のずれが修正される。
【0057】
一方、差ΔWが第1の許容値よりも大きなときは、修正中に長さ方向のずれが生じないように、プッシャ16Cにおいて空気シリンダ17が伸張して平版印刷版束Pの突き当てパッド16Bに当接した側とは反対側の側縁にプッシャ板18が当接する。そして、プッシャ16Dおよび16Eにおいて空気シリンダ17が伸張、収縮を繰り返し、平版印刷版束Pの長手方向の1対の側縁に繰り返しプッシャ板18を当接させ、幅さ方向の平版印刷版のずれを修正する。
【0058】
更に、差ΔLおよび差ΔWの何れも第1の許容値よりも大きなときは、長さ方向および幅方向のずれのうち、小さいほうのずれを修正してから大きいほうのずれを修正する。
【0059】
このようにして長さ方向および幅方向のずれが修正されたら、突き当てパッド16Bおよびプッシャ16C〜16Eを上昇させ、平版印刷版束Pを良品搬出コンベア14に向かって搬出する。
【0060】
良品搬出コンベア14に搬出された平版印刷版束Pは、包装工程に向かって搬出される。
【0061】
差ΔLおよび差ΔWが何れも第1の許容値よりも小さなときは、中央制御コンピュータ100からの指示により、突き当てパッド16Bおよびプッシャ16C〜16Eの何れもローラコンベア16Aから上昇した状態で、平版印刷版束Pはローラコンベア16Aによって良品搬出コンベア14に向かって搬出する。
【0062】
良品搬出コンベア14に搬出された平版印刷版束Pは、包装工程に向かって搬出される。
【0063】
平版印刷版束分別搬送システム1000においては、平版印刷版束Pの長さおよび幅を測定し、長さおよび幅の測定値と、予め中央制御コンピュータ100に記憶された基準長さおよび基準幅との差を求め、前記差が第2の許容値(5mm)より大きなときはNG品としてライン外に排出し、前記差が第1の許容値(1mm)より大きく第2の許容値(5mm)以下であるときは、ずれ修正コンベア16でずれを修正してから包装工程へ搬出する。そして、前記差が第1の許容値(1mm)以下であるときは、ずれ修正コンベア16でずれを修正することなく、包装工程へ搬出する。
【0064】
したがって、タクトタイムを大きく延長することなく、包装工程に搬出される平版印刷版束Pの歩留まりを高めることができ、また、大きなずれの生じた平版印刷版束Pが包装工程に送られることがない。故に、図6において(C)に示すように平版印刷版束Pに生じたずれによって包装後に内装紙が破損するというトラブルを回避できる。
【0065】
更に、幅測定センサ4および光学センサ6で平版印刷版束Pの幅および長さを光学的に測定しているから、幅および長さは非接触で測定される。したがって、幅および長さの測定によって平版印刷版束Pに新たにずれが生じることがない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のシート束搬送システムは、平版印刷版だけでなく、アルミニウム板、塗装鋼板、およびステンレス鋼板などの各種金属シート、プラスチックシート、および枚葉紙など、各種のシート材を厚さ方向に積層したシート束の搬送、包装工程において好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、実施形態1に係る平版印刷版束分別搬送システムの構成の概要を示す平面図である。
【図2】図2は、図1に示す平版印刷版束分別搬送システムの備える幅測定センサの構成の概要を示す拡大正面図である。
【図3】図3は、図1に示す平版印刷版束分別搬送システムの備える光学センサおよびその周辺の構成を示す拡大図である。
【図4】図4は、図1に示す平版印刷版束分別搬送システムの備える分別コンベアの構成を示す部分斜視図である。
【図5】図5は、図1に示す平版印刷版束分別搬送システムの備えるずれ修正コンベアの構成を示す拡大斜視図である。
【図6】図6は、図1に示す平版印刷版束分別搬送システムで分別、搬送される平版印刷版束Pに生じるずれ、および包装後に前記ずれによって引き起こされる内装紙の破損の様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0068】
2 搬入コンベア
4 幅測定センサ
6 光学センサ
8 エンコーダ
10 分別コンベア
10A 搬送ローラ
10B ベルトコンベア
12 NG品コンベア
14 良品搬出コンベア
16 ずれ修正コンベア
16A ローラコンベア
16B パッド
16C プッシャ
16D プッシャ
16E プッシャ
17 空気シリンダ
18 パッド
42 門型センサ
42A 出射部
42B 受光部
44 門型センサ
44A 出射部
44B 受光部
100 中央制御コンピュータ
1000 平版印刷版束分別搬送システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に搬送されるシート束の所定方向に沿った寸法を測定する寸法測定部と、
前記寸法測定部において前記シート束を測定した測定寸法と予め定められた基準寸法とを比較し、前記測定寸法と基準寸法との差に基づき、前記シート束について、良品、要修正品、不良品の何れに属するかを判定する判定部と
を有することを特徴とするシート束搬送システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記寸法測定部で寸法を測定したシート束について、前記測定寸法と基準寸法との差が予め定められた第1の許容値以下であるときは良品と、前記第1の許容値より大きく、前記第1の許容値より大きな第2の許容値以下であるときは要修正品と、前記第2の許容値よりも大きなときは不良品と判定する請求項1に記載のシート束搬送システム。
【請求項3】
前記寸法測定部が測定するシート束の寸法は、前記シート束の搬送方向に沿った寸法であるシート束長さ、および前記シート束の搬送方向に直交する方向に沿った寸法であるシート束幅の少なくとも一方であり、
前記判定部においては、前記シート束長さは、シート束の搬送方向に沿った基準寸法である基準長さと比較され、前記シート束幅は、シート束の搬送方向に直交する方向沿った基準寸法である基準幅と比較される
請求項1または2に記載のシート束搬送システム。
【請求項4】
前記寸法測定部においては、前記シート束長さおよび前記シート束幅の両方が測定される請求項3に記載のシート束搬送システム。
【請求項5】
前記寸法測定部は、前記シート束の搬送経路に平行な平面への前記シート束の投影長および投影幅を測定し、測定された投影長および投影幅に基づいてシート束長さおよびシート束幅を求める請求項3または4に記載のシート束搬送システム。
【請求項6】
前記判定部においては、シート束の長さ方向および幅方向の夫々について前記第1の許容値および第2の許容値を定め、
前記判定部は、シート束長さと基準長さとの差が、前記第1の許容値より大きく、第2の許容値以下であるときは長さ方向の修正を要する要カットずれ修正品と判定し、シート束幅と基準幅との差が、第1の許容値より大きく、第2の許容値以下であるときは幅方向の修正を要する要幅ずれ修正品と判定する請求項3〜5の何れか1項に記載のシート束搬送システム。
【請求項7】
前記判定部における判定結果に基づいてシート束を分別、修正する分別修正部を備え、
前記分別修正部においては、前記判定部において良品と判定されたシート束についてはそのまま後工程に回し、前記判定部において要修正品と判定されたシート束についてはシート材間のずれを修正して後工程に回すとともに、前記判定部において不良品と判定されたシート束についてはライン外に排出する請求項1〜6の何れか1項に記載のシート束搬送システム。
【請求項8】
前記分別修正部においては、前記判定部において要カットずれ修正品と判定されたシート束についてはシート材間の長さ方向のずれを修正し、前記判定部において要幅ずれ修正品と判定されたシート束についてはシート材間の幅方向のずれを修正してから後工程に回す請求項7に記載のシート束搬送システム。
【請求項9】
前記寸法測定部においては、前記シート束の長さおよび幅を光学的に測定する請求項1〜8の何れか1項に記載のシート束搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−254006(P2007−254006A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81392(P2006−81392)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】