説明

シート用ダンパ装置

【課題】衝撃後のシート部の振動を短時間で減衰できる上に当該シート部の振動振幅を小さく抑えることができ、しかも、設置空間をそれ程必要としなく、自動車等の狭い空間にも容易に適用できるシート用ダンパ装置を提供すること。
【解決手段】自動車シート1は、シート部2と、シート部2に対して回転自在となるように組み付けられた背もたれ3と、背もたれ3の上部に取り付けられたヘッドレスト4と、前後方向であるA方向において間隔をもって配された一対の固定フレーム5及び6間に張設されると共にシート部2を当該シート部2のシート面11に直交する方向であって上下方向であるB方向において弾性的に支持するC方向(A方向と略同方向)に弾性的に伸縮自在な複数のSばね7〜10と、シート部2のB方向の撓み振動を減衰するシート用ダンパ装置12とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート用ダンパ装置、特に自動車のシート部に用いて好適なシート用ダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2004−129751号公報
【0003】
自動車のシートは、例えば、シート部と、このシート部に対して回転自在となるように組み付けられた背もたれと、背もたれの上部に取り付けられたヘッドレストとを具備しており、斯かる自動車のシートにおいて、ウレタンフォーム等のシートクッション体からなるシート部は多くはSばねにより弾性的に支持されている。Sばねによりシートクッション体が弾性的に支持されたシート部には、自動車走行時に、路面やエンジン等から振動が伝達される結果、この振動により乗員に不快感を与えることになるが、これを防止するために、特許文献1に記載のようにSばねとプレートとの間にダンパーとしてのオリフィス付きベローズを設ける技術が提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、斯かる提案の技術では、Sばねの伸縮方向と直交する方向、即ちSばねの撓み方向であって上下方向に伸縮方向が一致するようにベローズを設置するために、シート部には、Sばねの上下方向の撓み振動のための上下方向の空間とベローズを設置するための上下方向の空間とを合わせた空間を必要とし、上下方向においてシート部の嵩が高くなって、自動車等の狭い空間ではベローズの設置が困難となる場合がある。
【0005】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、自動車走行時に路面やエンジン等から伝達される振動のように、外部からシート部に伝達された振動を短時間で減衰できる上に当該シート部の振動振幅を小さく抑えることができ、しかも、設置空間をそれ程必要としなく、自動車等の狭い空間にも容易に適用できるシート用ダンパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシート用ダンパ装置は、一対の固定フレーム間に張設されると共にシート部を弾性的に支持する伸縮自在なシートスプリングの一の部位又は固定部位に一端が固着される可撓性の長尺部材と、シートスプリングの伸縮に基づく長尺部材のシートスプリングに対する振動に減衰を与えるダンパとを有している。
【0007】
本発明のシート用ダンパ装置によれば、ダンパがシートスプリングの伸縮に基づく長尺部材のシートスプリングに対する振動に減衰を与えるようになっているために、設置空間をそれ程必要としなく、自動車等の狭い空間にも容易に適用でき、しかも、自動車走行時に路面やエンジン等から伝達される振動のように、外部からシート部に伝達された振動を短時間で減衰できる上に当該シート部の振動振幅を小さく抑えることができる。
【0008】
好ましい例では、シート部はウレタンフォームからなるシート板を含んでおり、可撓性の長尺部材はピアノ線等の鋼線からなるが、本発明はこれらに限定されず、着座において適度なクッション性を与える可撓性であっで弾性を有するシート部であればよく、可撓性の長尺部材もまた、シートスプリングの伸縮に起因するシートスプリングの撓み変形に伴って同様に撓み変形し得る一方、伸びの極めて少ない非伸縮性であって、鋼、非鉄金属及び樹脂のうちの少なくとも一つからなっていてもよく、その形態もワイヤー等の線状、棒状、紐状又は帯状等であってもよい。長尺部材は、その一端で、シートスプリングの一の部位に固着されても、これに代えて、シートスプリングの一端が支持される固定フレーム等の固定部位に固着されてもよい。長尺部材は、好ましい例では、シート部のシート面と略平行であってシートスプリングの張設方向に沿って配設されているが、これに代えて、シート部のシート面と略平行であってシートスプリングの張設方向に直交する方向に沿って配設されていてもよい。シートスプリングとしては、Sばね、ジグザグばね又はフォームドワイヤー等からなるものを好ましい例として挙げることができる。
【0009】
本発明におけるダンパは、好ましくは、オイルダンパ、粘性ダンパ、粘弾性ダンパ若しくは摩擦ダンパ又はこれらの少なくとも二つを組み合わせてなるダンパであるが、気体ダンパ等の他のダンパであってもよい。
【0010】
具体的には、ダンパは、流体を保持する保持体と、この保持体内を二室に分割すると共に保持体に対して可動なピストンと、保持体内の二室を互いに連通するオリフィスととを具備していてもよく、この場合、一方では、ピストンに連結されており、他方では、長尺部材に連結された棒部材を更に具備して斯かる棒部材が保持体に対して可動となっていてもよく、これに代えて、長尺部材自体が保持体に対して可動となっていると共にピストンに連結されていてもよい。
【0011】
またダンパは、具体的には、摩擦体を保持する保持体を具備していてもよく、この場合、摩擦体に接触していると共に長尺部材に連結された棒部材を更に具備して棒部材が保持体に対して可動となっていてもよく、これに代えて、長尺部材が摩擦体に接触していると共に保持体に対して可動となっていてもよい。
【0012】
更にまたダンパは、具体的には、粘性体又は粘弾性体を保持する保持体を具備していてもよく、この場合も、粘性体又は粘弾性体に接触していると共に長尺部材に連結された棒部材を更に具備して棒部材が保持体に対して可動となっていても、これに代えて、長尺部材が粘性体又は粘弾性体に接触していると共に保持体に対して可動となっていてもよい。
【0013】
好ましい例では、保持体は、シートスプリングの一の部位からシートスプリングの伸縮方向に離れたシートスプリングの他の一の部位に固着されており、他の好ましい例では、保持体は一方の固定フレームに固着されている。
【0014】
本発明のシート用ダンパ装置は、シートスプリングの一の部位とダンパとの間においてシートスプリングの伸縮に起因するシートスプリングの撓み変形に長尺部材を強制的に倣わせる強制倣い手段を更に具備していてもよく、この場合、強制倣い手段は、シートスプリングの一の部位とダンパとの間においてシートスプリングに固定されていると共に長尺部材が移動自在に貫通した筒部材を具備しているとよい。強制倣い手段は、長尺部材の撓み変形を長尺部材に倣わせる機能のみでもよいが、斯かる機能に加えて、シートスプリングの伸縮に基づく長尺部材のシートスプリングに対する振動に減衰を与えるダンパと同様な減衰機能を有していてもよい。長尺部材は、好ましくは、シートスプリングの中央部を横断して張設されるが、斯かる場合等では、シートスプリングの中央部に長尺部材を接触又は近接させて張設すると、強制倣い手段を必ずしも設けなくてもよい。
【0015】
本発明のシート用ダンパ装置は、外部からの振動伝達後にシート部にシートスプリングに起因する振動が生じるような一般のシートに用いることができるが、自動車シートに特に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、自動車走行時に路面やエンジン等から伝達される振動のように、外部からシート部に伝達された振動を短時間で減衰できる上に当該シート部の振動振幅を小さく抑えることができ、しかも、設置空間をそれ程必要としなく、自動車等の狭い空間にも容易に適用できるシート用ダンパ装置を提供することができる。
【0017】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例を参照して更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に何等限定されないのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1から図4において、本例の自動車シート1は、シート部2と、シート部2に対して回転自在となるように組み付けられた背もたれ3と、背もたれ3の上部に取り付けられたヘッドレスト4と、前後方向であるA方向において間隔をもって配された一対の固定フレーム5及び6間に張設されると共にシート部2を当該シート部2のシート面11に直交する方向であって上下方向であるB方向において弾性的に支持するC方向(A方向と略同方向)に弾性的に伸縮自在な複数のシートスプリングとしてのSばね7〜10と、シート部2のB方向の撓み振動を減衰するシート用ダンパ装置12とを具備している。
【0019】
ウレタンフォームからなって着座において適度なクッション性を与えるシート板を含んでいるシート部2は、その前縁部及び後縁部では、固定フレーム5及び6に直接に、固定フレーム5及び6間ではSばね7〜10を介して固定フレーム5及び6に間接的に夫々支持されており、固定フレーム5及び6は、当該固定フレーム5及び6が固着された基部フレーム及び当該基部フレームが移動自在に載置されたレールを介して車体に支持されている。これら固定フレーム5及び6、基部フレーム並びにレール等の機構は、既に知られているので詳細な説明を省略する。
【0020】
シート面11に平行な面内でA方向に直交する方向に並置された複数のSばね7〜10の夫々は、シート部2に掛かる荷重を支持できるように弾性的にC方向に引き伸ばされてC方向の一端部15では固定フレーム5に、C方向の他端部16では固定フレーム6に夫々係止されている。
【0021】
シート用ダンパ装置12は、Sばね8とSばね9とについて設けられており、Sばね9について設けられたシート用ダンパ装置12は、Sばね8について設けられたシート用ダンパ装置12と同様の形態を有しているので、以下、Sばね8について設けられたシート用ダンパ装置12について説明する。Sばね8及び9以外のSばね7及び10にもシート用ダンパ装置12を設けてもよく、要は、Sばね7及び10のうちの少なくとも一つにシート用ダンパ装置12を設けて所望の減衰特性が得られるようにすればよい。
【0022】
Sばね8について設けられたシート用ダンパ装置12は、固定フレーム5の近傍におけるSばね8の部位21に一端22が溶接等により固着されると共にピアノ線等からなる可撓性の長尺部材23と、Sばね8のC方向の伸縮に基づく長尺部材23のSばね8に対する相対的なC方向の振動に減衰を与えるダンパ24と、Sばね8の部位21とダンパ24との間においてSばね8の伸縮に起因するSばね8のB方向の撓み振動に長尺部材23を強制的に倣わせる強制倣い手段25とを有している。
【0023】
長尺部材23は、Sばね7〜10による伸縮に起因するSばね7〜10のB方向の撓み性に影響を与えない程度の可撓性及び弾性をもち、しかも、伸び縮みの少ない剛性の非伸縮性の線材からなるものが好ましい。
【0024】
ダンパ24は、シリコーンオイル等の流体30を内部に保持する中空の保持体31と、保持体31内を二室32及び33に分割すると共に保持体31に対してC方向に可動なピストン34と、保持体31内の二室32及び33を互いに連通するようにピストン34に設けられたオリフィス35と、一方では、ピストン34に連結されており、他方では、長尺部材23の他端36に連結された棒部材37と、一方の円筒状の縁部38では棒部材37に接着剤等により固着されており、他方の環状の膨大縁部39では保持体31に固着されている可撓性のダイアフラムシール40とを具備している。
【0025】
所謂シリンダである保持体31は、固定フレーム6にスナップフィット、ネジ止め、C形止め輪、Eリング、溶接等により固着されている有底の筒状本体45と、筒状本体45の開口端を閉塞するように筒状本体45の開口端に固着された蓋46とを具備しており、ピストンロッドであって蓋46をC方向に可動に貫通して保持体31に対してC方向に可動となっている棒部材37は、その一端47でナット48及び螺合部49を介してピストン34に固着されてピストン34に連結されており、その他端50で溶接等を介して長尺部材23の他端36に固着されて長尺部材23の他端36に連結されており、ダイアフラムシール40は、その他方の膨大縁部39で筒状本体45と蓋46の環状突起51とに挟持されて保持体31に固着されており、室32からのシリコーンオイル等の流体30の保持体31外への漏出を防止すると共に保持体31内外に対する棒部材37の進退においてダイアフラムシール40と蓋46との間の空気室52の容積を減増させて保持体31内外に対する棒部材37の進退体積の増減を補償するようになっている。空気室52と保持体31外とを連通する貫通孔53を蓋46に設けてもよい。
【0026】
オイルダンパであるダンパ24は、棒部材37のC方向の振動に起因するピストン34の同方向の振動で二室32及び33内の流体30がオリフィス35を介して二室32及び33間を相互に流出入することによる流動抵抗で棒部材37のC方向の振動に減衰を生じさせるようになっている。
【0027】
強制倣い手段25は、Sばね8の部位21とダンパ24との間において互いに離間してSばね8に固定されていると共に長尺部材23がC方向に移動自在に貫通した複数の筒部材55を具備しており、C方向に一列に配された複数の筒部材55の夫々の内周面56は、Sばね8のB方向の撓み振動おいて長尺部材23に傷を生じさせないで筒部材55に対して長尺部材23が容易にC方向に相対的に振動できるように筒部材55の両端面57及び58側に円弧状面又はテーパ面59を有している。
【0028】
以上の自動車シート1は、シート部2に着座した乗員をシート部2のシート板及びSばね7〜10により適度なクッション性をもって支持する。そして、自動車の車体に路面やエンジン等から振動が加えられると、Sばね7〜10は、図5に示すように固定フレーム5及び6を支点(節)としてB方向に撓んで乗員への衝撃を和らげる。
【0029】
ところで、自動車シート1のシート用ダンパ装置12は、自動車の車体の振動に起因するSばね7〜10のB方向の撓み振動でSばね8が同じくB方向に撓み振動すると、強制倣い手段25を介してSばね8のB方向の撓み振動に倣って長尺部材23がSばね8に、延いては保持体31に対して相対的にC方向に振動する結果、長尺部材23に連結された棒部材37もまた、保持体31に対して相対的にC方向に振動してピストン34を同じく保持体31に対して相対的にC方向に振動させる。ピストン34のC方向の振動で二室32及び33内の流体30がオリフィス35を介して二室32及び33間を相互に流出入することにより棒部材37のC方向の振動に減衰を生じさせる結果、Sばね7〜10のB方向の撓み振動は減衰されることになって、シート部2のB方向の撓み振動も減衰されることになる。Sばね9に対するシート用ダンパ装置12も同様に動作する。
【0030】
而して、シート用ダンパ装置12によれば、ダンパ24がSばね8のC方向の伸縮に基づく長尺部材23のSばね8に対するC方向の振動に減衰を与えるようになっているために、設置空間をそれ程必要としなく、自動車等の狭い空間にも容易に適用でき、しかも、自動車走行時に路面やエンジン等から伝達される振動のように、外部からシート部2に伝達されたシート部2のB方向の撓み振動を短時間で減衰できる上にシート部2のB方向の撓み振動の振幅を小さく抑えることができる。
【0031】
上記のダンパ24は棒部材37を具備しているが、長尺部材23の他端36を直接にピストン34に連結して、長尺部材23の他端36側を棒部材37の代わりに用いてもよく、この場合、長尺部材23は、他端36側で蓋46をC方向に可動に貫通して保持体31に対してC方向に可動となっている。
【0032】
上記の例のダンパ24は、シリコーンオイルを用いたオイルダンパであるが、これに代えて、一方では固定フレーム6に固定されていると共に他方では長尺部材23又は棒部材37の外周面にC方向に可動に摩擦接触する摩擦部材と、この可動な摩擦接触部位において摩擦部材を長尺部材23又は棒部材37に押さえ付けさせる押圧手段とを具備し、長尺部材23又は棒部材37のC方向の振動に起因する長尺部材23又は棒部材37の外周面と摩擦部材との摺動摩擦抵抗で長尺部材23又は棒部材37のC方向の振動に減衰を生じさせるようにした摩擦ダンパでもよく、斯かる摩擦ダンパを具備したシート用ダンパ装置12は、自動車の車体に路面やエンジン等から伝達される振動に起因するSばね7〜10のB方向の撓み振動でSばね8が同じくB方向に撓み振動すると、強制倣い手段25を介してSばね8のB方向の撓み振動に倣って長尺部材23又は棒部材37がSばね8に対して、延いては摩擦部材に対して相対的にC方向に振動する結果、長尺部材23又は棒部材37のC方向の振動における長尺部材23又は棒部材37の外周面と摩擦部材との摺動摩擦抵抗でSばね7〜10のB方向の撓み振動を減衰させることになって、シート部2のB方向の撓み振動も減衰させることになる。而して、摩擦ダンパを具備したシート用ダンパ装置12によっても、摩擦ダンパがSばね8の伸縮に基づく長尺部材23又は棒部材37のSばね8に対するC方向の振動に減衰を与えるようになっているために、設置空間をそれ程必要としなく、自動車等の狭い空間にも容易に適用でき、しかも、自動車走行時に路面やエンジン等から伝達される振動のように、外部からシート部2に伝達された振動を短時間で減衰できる上にシート部2のB方向の撓み振動の振幅を小さく抑えることができる。
【0033】
更には、上記のようなオイルダンパ又は摩擦ダンパに代えて、図6に示すように硬化されたシリコーンゲル等のゲル状物質からなる粘弾性体を用いた粘弾性ダンパであってもよく、図6に示すダンパ61は、硬化されたゲル状物質からなる円筒状の粘弾性体62と、粘弾性体62を内部に保持する中空の保持体63と、粘弾性体62の円筒状の内周面が接触してしかも固着されている外周面69を有すると共に長尺部材23の他端36に連結された棒部材64とを具備しており、保持体63は、固定フレーム6にスナップフィット、ネジ止め、C形止め輪、Eリング、溶接等により固着される円筒部材65と、円筒部材65の各開口端面側に嵌装されて円筒部材65に固着された蓋66及び67とを具備しており、粘弾性体62は、円筒状のその外周面で円筒部材65の円筒内周面68に固着されており、粘弾性体62の内周面が外周面69に接触して固着されている棒部材64は、保持体63内を通っていると共に蓋66及び67をC方向に可動に貫通して保持体63に対してC方向に可動となっている。
【0034】
粘弾性ダンパであるダンパ61は、棒部材64のC方向の振動に起因する粘弾性体62の二点鎖線で示すような剪断変形による粘弾性剪断抵抗で棒部材64のC方向の振動に減衰を生じさせるようになっており、斯かるダンパ61を具備したシート用ダンパ装置12は、自動車の車体に路面やエンジン等から伝達される振動に起因するSばね7〜10のB方向の撓み振動でSばね8が同じくB方向に撓み振動すると、強制倣い手段25を介してSばね8のB方向の撓み振動に倣ってB方向に撓み振動する長尺部材23がSばね8に対して、延いては保持体63に対して相対的にC方向に振動する結果、長尺部材23に連結された棒部材64もまた、保持体63に対して相対的にC方向に振動し、棒部材64のC方向の振動における粘弾性体62の粘弾性剪断抵抗でSばね7〜10のB方向の撓み振動を減衰させることになって、シート部2のB方向の撓み振動も減衰させることになる。
【0035】
而して、ダンパ61を具備したシート用ダンパ装置12によっても、ダンパ61がSばね8の伸縮に基づく長尺部材23のSばね8に対するC方向の振動に減衰を与えるようになっているために、設置空間をそれ程必要としなく、自動車等の狭い空間にも容易に適用でき、しかも、自動車走行時に路面やエンジン等から伝達される振動のように、外部からシート部2に伝達された振動を短時間で減衰できる上にシート部2のB方向の撓み振動の振幅を小さく抑えることができる。
【0036】
ダンパ61でも、棒部材64を具備しているが、長尺部材23の他端36側に粘弾性体62を固着させるように当該長尺部材23の他端36側を円筒部材65内に配置し、長尺部材23の他端36側を棒部材64の代わりに用いてもよく、この場合、長尺部材23は、他端36側で保持体63内を通っていると共に蓋66及び67をC方向に可動に貫通して保持体63に対してC方向に可動となっているとよい。
【0037】
更にシート用ダンパ装置12は、上記のダンパ24、摩擦ダンパ若しくはダンパ61に代えて又はこれらと共に図7に示すように粘性体を用いた粘性ダンパを具備していてもよい。図7に示すダンパ71は、粘性体72を内部に保持する中空の保持体73と、粘性体72に接触していると共に長尺部材23の他端36に連結された棒部材74とを具備しており、保持体73は、固定フレーム6にスナップフィット、ネジ止め、C形止め輪、Eリング、溶接等により固着される円筒部材75と、円筒部材75の各開口端面側に嵌装されて円筒部材75に固着された蓋76及び77と、蓋76側のシール手段78と、蓋77側のシール手段79とを具備しており、粘性体72に外周面80で相対的にC方向に可動に接触する棒部材74は、蓋76及び77並びにシール手段78及び79をC方向に可動に貫通して保持体73に対してC方向に可動となっており、シール手段78は、棒部材74の外周面80に接触したポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂製の円筒状のシール部材81と、シール部材81を取り囲んでシール部材81と同心に配されたOリング82と、円筒部材75の一方の内側環状段部83に接触したスペーサ部材84と、シール部材81、Oリング82及びスペーサ部材84と蓋76との間に配されたワッシャ85とを具備しており、シール手段79は、シール手段78と同様に、棒部材74の外周面80に接触したポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂製の円筒状のシール部材86と、シール部材86を取り囲んでシール部材86と同心に配されたOリング87と、円筒部材75の他方の内側環状段部88に接触したスペーサ部材89と、シール部材86、Oリング87及びスペーサ部材89と蓋77との間に配されたワッシャ90とを具備しており、シール手段78は、蓋76側からの粘性体72の円筒部材75外への漏出を防止し、シール手段79は、蓋77側からの粘性体72の円筒部材75外への漏出を防止しており、粘性体72は、円筒部材75の円筒内周面91と棒部材74の外周面80との間の円筒空間にぴたりと隙間なしに配されている。
【0038】
粘性ダンパであるダンパ71は、棒部材74のC方向の振動に起因する棒部材74の外周面80と粘性体72とのC方向の相対変位による粘性抵抗で棒部材74のC方向の振動に減衰を生じさせるようになっており、斯かるダンパ71を具備したシート用ダンパ装置12は、自動車の車体に路面やエンジン等から伝達された振動に起因するSばね7〜10のB方向の撓み振動でSばね8が同じくB方向に撓み振動すると、強制倣い手段25を介してSばね8のB方向の撓み振動に倣ってB方向に撓み振動する長尺部材23がSばね8に対して、延いては保持体73に対して相対的にC方向に振動する結果、長尺部材23に連結された棒部材74もまた、保持体73に対して相対的にC方向に振動し、棒部材74のC方向の振動における棒部材74の外周面80と粘性体72とのC方向の相対変位による粘性抵抗でSばね7〜10のB方向の撓み振動を減衰させることになって、シート部2のB方向の撓み振動も減衰させることになる。
【0039】
而して、ダンパ71を具備したシート用ダンパ装置12によっても、ダンパ71がSばね8の伸縮に基づく長尺部材23のSばね8に対するC方向の振動に減衰を与えるようになっているために、設置空間をそれ程必要としなく、自動車等の狭い空間にも容易に適用でき、しかも、自動車走行時に路面やエンジン等から伝達される振動のように、外部からシート部2に伝達された振動を短時間で減衰できる上にシート部2の振動の振幅を小さく抑えることができ、その上、シート部2の高い周波数の振動も小さく抑えることができる。
【0040】
ダンパ71でも、棒部材74を具備しているが、長尺部材23の他端36側を粘性体72に接触するように円筒部材75内に配置し、長尺部材23の他端36側を棒部材74の代わりに用いてもよく、この場合、長尺部材23は、他端36側で蓋76及び77並びにシール手段78及び79をC方向に可動に貫通して保持体73に対してC方向に可動となっている。ダンパ71においては、シール部材81及び86を省いてシール手段78及び79を形成してもよい。
【0041】
上記の例では、保持体31、63及び73の夫々を固定フレーム6にスナップフィット、ネジ止め、C形止め輪、Eリング、溶接等により固着したが、これに代えて、保持体31、63及び73の夫々をSばね8の部位21からSばね8の伸縮方向であるC方向に離れたSばね8の他の部位に固着してもよいが、大きな減衰性を得るには、Sばね8の部位21から最もC方向に離れたSばね8の他の部位又は固定フレーム6にスナップフィット、ネジ止め、C形止め輪、Eリング、溶接等により固着するとよい。また、上記ではSばねのS字部分の中央部を横断して長尺部材23を張設したが、これに代えて、Sばね7〜10を横断して長尺部材23を張設し、強制倣い手段25をSばね7〜10の夫々に設けてもよい。この場合には、長尺部材23の一端22を、Sばね8の部位21に固着する代わりに、Sばね7若しくは10の部位又は固定フレーム5及び6が固着された固定部位としての基部フレーム等に固着するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の好ましい実施の形態の一例の断面説明図である。
【図2】図1に示す例のシート部の平面説明図である。
【図3】図1に示す例のダンパの断面説明図である。
【図4】図1に示す例の強制倣い手段の断面説明図である。
【図5】図1に示す例の動作説明図である。
【図6】図1に示す例におけるダンパの他の好ましい例の断面説明図である。
【図7】図1に示す例におけるダンパの更に他の好ましい例の断面説明図である。
【符号の説明】
【0043】
5 固定フレーム
8 Sばね
12 シート用ダンパ装置
21 部位
23 長尺部材
24 ダンパ
25 強制倣い手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の固定フレーム間に張設されると共にシート部を弾性的に支持する伸縮自在なシートスプリングの一の部位又は固定部位に一端が固着される可撓性の長尺部材と、シートスプリングの伸縮に基づく長尺部材のシートスプリングに対する振動に減衰を与えるダンパとを有しているシート用ダンパ装置。
【請求項2】
シート用ダンパ装置は、車両用のシートに用いられるものである請求項1に記載のシート用ダンパ装置。
【請求項3】
シート部は、ウレタンフォームからなるシート板を含んでおり、可撓性の長尺部材は、非伸縮性であって、鋼、非鉄金属及び樹脂のうちの少なくとも一つからなっている請求項1又は2に記載のシート用ダンパ装置。
【請求項4】
ダンパは、オイルダンパ、粘性ダンパ、粘弾性ダンパ若しくは摩擦ダンパ又はこれらの少なくとも二つを組み合わせてなるダンパである請求項1から3のいずれか一項に記載のシート用ダンパ装置。
【請求項5】
ダンパは、流体を保持する保持体と、この保持体内を二室に分割すると共に保持体に対して可動なピストンと、保持体内の二室を互いに連通するオリフィスと、一方では、ピストンに連結されており、他方では、長尺部材に連結された棒部材とを具備しており、棒部材は保持体に対して可動となっている請求項1から4のいずれか一項に記載のシート用ダンパ装置。
【請求項6】
ダンパは、流体を保持する保持体と、この保持体内を二室に分割すると共に保持体に対して可動なピストンと、保持体内の二室を互いに連通するオリフィスとを具備しており、長尺部材は、保持体に対して可動となっていると共にピストンに連結されている請求項1から4のいずれか一項に記載のシート用ダンパ装置。
【請求項7】
ダンパは、摩擦体を保持する保持体と、摩擦体に摩擦接触していると共に長尺部材に連結された棒部材とを具備しており、棒部材は、保持体に対して可動となっている請求項1から4のいずれか一項に記載のシート用ダンパ装置。
【請求項8】
ダンパは、摩擦体を保持する保持体を具備しており、長尺部材は、摩擦体に接触していると共に保持体に対して可動となっている請求項1から4のいずれか一項に記載のシート用ダンパ装置。
【請求項9】
ダンパは、粘性体又は粘弾性体を保持する保持体と、粘性体又は粘弾性体に接触していると共に長尺部材に連結された棒部材とを具備しており、棒部材は、保持体に対して可動となっている請求項1から4のいずれか一項に記載のシート用ダンパ装置。
【請求項10】
ダンパは、粘性体又は粘弾性体を保持する保持体を具備しており、長尺部材は、粘性体又は粘弾性体に接触していると共に保持体に対して可動となっている請求項1から4のいずれか一項に記載のシート用ダンパ装置。
【請求項11】
保持体は、シートスプリングの一の部位からシートスプリングの伸縮方向に離れたシートスプリングの他の一の部位に固着されている請求項5から10のいずれか一項に記載のシート用ダンパ装置。
【請求項12】
保持体は、一方の固定フレームに固着されている請求項5から10のいずれか一項に記載のシート用ダンパ装置。
【請求項13】
シートスプリングの一の部位とダンパとの間においてシートスプリングの伸縮に起因するシートスプリングの撓み変形に長尺部材を強制的に倣わせる強制倣い手段を具備する請求項1から12のいずれか一項に記載のシート用ダンパ装置。
【請求項14】
強制倣い手段は、シートスプリングの一の部位とダンパとの間においてシートスプリングに固定されていると共に長尺部材が移動自在に貫通した筒部材を具備している請求項13に記載のシート用ダンパ装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載のシート用ダンパ装置を具備した自動車シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−282865(P2007−282865A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113918(P2006−113918)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)
【Fターム(参考)】